差動クロック伝送装置、差動クロック送信装置、差動クロック受信装置、差動クロック伝送方法
【課題】 高周波、長距離伝送に伴うデューティ崩れや位相ずれを低減する差動クロック伝送装置、差動クロック送信装置、差動クロック受信装置、差動クロック伝送方法を提供する。
【解決手段】 1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送装置であって、受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う送信制御部11と、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部13と、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部14と、前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部22とを備えた。
【解決手段】 1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送装置であって、受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う送信制御部11と、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部13と、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部14と、前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部22とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波のクロック伝送のための差動クロック伝送装置、差動クロック送信装置、差動クロック受信装置、差動クロック伝送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波のクロックを用いるコンピュータシステム等において、差動クロック伝送が用いられている。これは、極性を反転させた1対の差動クロック信号を2本の配線で伝送するものであり、ノイズに強い特徴を持つ。図12は、従来の差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。この差動クロック伝送装置は、クロック送信側LSI901、クロック受信側LSI902を備える。クロック送信側LSI901は、送信制御部911、クロック発振部12、差動クロック送信部13を備える。また、クロック受信側LSI902は、差動クロック受信部22を備える。クロック発振部12はPLL(Phase Locked Loop)を備える。
【0003】
電源投入後、送信制御部911は、クロック送信側LSI901内部のリセット等の初期化処理を行う。次に、送信制御部911は、クロック発振部12のPLLの周波数設定を行う。クロック発振部12は、送信クロック信号を出力し、差動クロック送信部13は1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号Q’、/Q’に変換し、差動クロック受信部22は1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する。
【0004】
図13は、差動クロック送信部の構成の一例を示す回路図である。差動クロック送信部13は、4つのトランジスタ(Tr911,912,913,914)を備え、Tr911,913はHighを表す電位Hに接続され、Tr912,914はLowを表す電位Lに接続される。送信クロック信号がHighのとき、Tr911,914がON、Tr912,913がOFFとなることから、Q’はHigh、/Q’はLowとなる。また、送信クロック信号がLowのとき、Tr912,913がON、Tr911,914がOFFとなることから、Q’はLow、/Q’はHighとなる。このように、入力された送信クロック信号に応じて、互いに反転した1対の差動クロック信号Q’、/Q’を出力する。
【0005】
しかしながら、高周波、長距離の差動クロック伝送においては、信号伝搬時の高周波損失により波形が減衰する。従って、差動クロック信号の交差が浅くなり、デューティ崩れや位相ずれが発生し、結果としてクロック動作直後のタイミングずれやクロック抜け等の問題が生じる。図14は、従来の差動クロック受信部入力におけるクロック動作期間の差動クロック信号を示す波形である。ここで、クロック発振部12が送信クロック信号を出力してからの期間をクロック動作期間と呼ぶことにする。この波形は、クロック受信側LSI902における差動クロック受信部22の入力波形のシミュレーション結果である。クロック動作期間の開始時においてQ’と/Q’の電位差は大きく、時間が経つに従って電位が変化し、デューティと位相が不安定であることが確認できる。
【0006】
そこで、従来、ボード材料の低損失化、直流カット等による出力回路の駆動能力コントロール、伝送線路とのカップリングを行うイコライザ回路の搭載、等の対策を行っていた。
【0007】
なお、本発明の関連ある従来技術として、例えば、下記に示す特許文献1が知られている。この論理回路は、1対の信号の間に等化器を備え、この等化器を等化用のクロック信号で駆動するものである。
【特許文献1】特開2002−305437号公報 (第4−9頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した対策においては、コストの増大、回路の複雑化、実装面積の増大、等の問題が発生する。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、高周波、長距離伝送に伴うデューティ崩れや位相ずれを低減する差動クロック伝送装置、差動クロック送信装置、差動クロック受信装置、差動クロック伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送装置であって、受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部とを備えたものである。
【0011】
また、本発明に係る差動クロック伝送装置において、前記電位補正部は、前記1対の差動クロック信号の信号線の間を接続するトランジスタを備え、前記電位補正期間中に前記トランジスタをONにすることにより、電位差を小さくすることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る差動クロック伝送装置において、前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、前記電位補正部において、前記1対の差動クロック信号の信号線はいずれも前記第1の電位と前記第2の電位にそれぞれトランジスタを介して接続されており、前記電位補正期間中に前記トランジスタをすべてOFFにすることにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明に係る差動クロック伝送装置において、前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、前記電位補正部において、前記1対の差動クロック信号の信号線はいずれも前記第1の電位と前記第2の電位にそれぞれトランジスタを介して接続されており、前記電位補正期間中に前記トランジスタをすべてONにすることにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して外部の装置へ送信する差動クロック送信装置であって、外部の装置が差動クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部とを備えたものである。
【0015】
また、本発明は、外部から受信した1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信装置であって、受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、前記電位補正期間中に、外部から入力された1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部とを備えたものである。
【0016】
また、本発明は、外部から入力された1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送方法であって、受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御ステップと、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信ステップと、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正ステップと、前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信ステップとを備えたものである。
【0017】
また、本発明に係る差動クロック伝送方法において、前記電位補正ステップは、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線の間を接続することにより、電位差を小さくすることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る差動クロック伝送方法において、前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、前記電位補正ステップにおいて、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線をいずれも前記第1の電位と前記第2の電位から絶縁することにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明に係る差動クロック伝送方法において、前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、前記電位補正ステップにおいて、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線をいずれも前記第1の電位と前記第2の電位に接続することにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、回路規模やコストを増大させることなく、差動クロック信号波形のデューティや位相が安定し、クロック動作直後のタイミングずれやクロック抜けを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
実施の形態1.
本実施の形態では、送信側において電位補正を行う。図1は、実施の形態1に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。図1において、図12と同一符号は図12に示された対象と同一又は相当物を示しており、ここでの説明を省略する。図12の差動クロック伝送装置と比較すると図1の差動クロック伝送装置は、クロック送信側LSI901の代わりにクロック送信側LSI1を備え、クロック受信側LSI902の代わりにクロック受信側LSI2を備える。クロック送信側LSI901と比較するとクロック送信側LSI1は、新たに電位補正部14を備え、送信制御部911の代わりに送信制御部11を備える。また、クロック受信側LSI902と比較するとクロック受信側LSI2は、新たに受信制御部21を備える。
【0023】
まず、電位補正の制御について説明する。電源投入後、送信制御部11は、クロック送信側LSI1内部のリセット等の初期化処理を行う。次に、送信制御部11は、クロック発振部12のPLLの周波数設定を行う。また、送信制御部11は、電位補正の指示を電位補正制御信号として電位補正部14へ出力する。ここで、送信制御部11は、タイマー機能を持った電源監視素子を備え、電源投入から一定の期間後にHighとなる電位補正開始タイミング信号を生成する。一方、クロック受信側LSI2の受信制御部21は、Ready信号をクロック送信側LSI1へ出力する。送信制御部11は、Ready信号を受け取るとHighとなる電位補正終了タイミング信号を生成する。さらに送信制御部11は、電位補正開始タイミング信号と電位補正終了タイミング信号のEXCLUSIVE−OR演算の結果を電位補正制御信号として電位補正部14へ出力する。
【0024】
図2は、本発明に係る電位補正制御信号の生成の動作を示すタイムチャートである。横軸は時間、縦軸は電位を表す。また、上から順に、電位補正開始タイミング信号、電位補正終了タイミング信号、電位補正制御信号を表す。ここで、電位補正制御信号がHighとなる期間を電位補正期間、電位補正期間の後のクロック発振部12が送信クロック信号を出力する期間をクロック動作期間と呼ぶことにする。
【0025】
次に、電位補正期間における動作について説明する。電位補正部14は、差動クロック送信部13からの1対の差動クロック信号の電位を電位補正制御信号に従って補正したものを、差動クロック信号Q、/Qとしてクロック受信側LSI2へ出力する。ここで、電位補正部14は、電位補正期間において差動クロック信号Qと/Qの電位差が小さくなるように電位の補正を行う。
【0026】
図3は、本発明に係る電位補正部の構成の一例を示す回路図である。この図に示すように、電位補正部14は例えばトランジスタ(Tr31)で実現される。送信制御部11からの電位補正制御信号により、電位補正期間においてトランジスタはONとなり、1対の差動クロック信号Qと/Qの電位差は0に近づく。図4は、本発明に係る電位補正期間における差動クロック信号の電位差を示す波形である。横軸は時間、縦軸は電位を表す。電位補正期間前の差動クロック信号Q、/Qの電位差V1が、電位補正期間の終了時にはV2に減少する。ここで、電位補正期間として、V2が十分小さくなる時間が必要となる。また、V2が小さくなりすぎることによる誤動作が問題となる場合、V2は、差動クロック受信部22に規定される入力電圧閾値を満足する必要がある。
【0027】
次に、クロック動作期間における動作について説明する。電位補正期間の後に続くクロック動作期間において、クロック発振部12が送信クロック信号を出力すると、差動クロック送信部13は送信クロック信号を差動クロック信号に変換し、電位補正部14は入力された差動クロック信号をそのまま出力する。図5は、本発明に係るクロック送信側LSIにおける動作を示すタイムチャートである。横軸は時間、縦軸は電位を表す。上から順に、送信制御部11の出力である電位補正制御信号、クロック発振部12の出力である送信クロック信号、電位補正部14の出力である差動クロック信号Q、/Qの波形をそれぞれ示している。Qと/Qの電位は共に、電位補正期間の終了時に中間電位に近づき、クロック動作期間では中間電位付近で安定する。
【0028】
図6は、本発明に係る差動クロック受信部入力におけるクロック動作期間の差動クロック信号を示す波形である。この波形は、図14と同様、クロック受信側LSI2における差動クロック受信部22の入力波形のシミュレーション結果である。図14と比較すると、電位補正期間の終了時におけるQと/Qの電位差が小さく、クロック動作期間の開始時において波形が安定し、デューティと位相が安定することが確認できる。
【0029】
上述した実施の形態において、送信制御部11による電位補正開始信号のタイミングは、タイマー機能を持った電源監視素子を利用したが、初期化処理の制御信号を利用しても良いし、PLLの設定制御信号等を利用しても良い。また、送信制御部11による電位補正終了信号のタイミングは、受信制御部21のReady信号を利用したが、受信制御部21のEnable信号を利用しても良いし、受信制御部21を必要とせずに送信制御部11のEnable信号を利用しても良い。
【0030】
実施の形態2.
本実施の形態では、受信側において電位補正を行い、実施の形態1と同様の作用が得られる。図7は、実施の形態2に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。図7において、図1と同一符号は図1に示された対象と同一又は相当物を示しており、ここでの説明を省略する。図1の差動クロック伝送装置と比較すると図7の差動クロック伝送装置は、クロック送信側LSI1の代わりにクロック送信側LSI101を備え、クロック受信側LSI2の代わりにクロック受信側LSI102を備える。
【0031】
クロック送信側LSI1と比較するとクロック送信側LSI101は、送信制御部11の代わりに送信制御部111を備え、電位補正部14を必要としない。クロック受信側LSI2と比較するとクロック受信側LSI102は、受信制御部21の代わりに受信制御部121を備え、新たに電位補正部14を備える。動作は実施の形態1と同様であるが、実施の形態1と比較すると、送信側ではなく受信側に電位補正部14が備えられ、送信制御部11と同様にして受信制御部121が電位補正制御信号を電位補正部14へ出力する。また、受信制御部121からの電位補正制御信号等に従って、送信制御部111がクロック発振部12の設定を行う。
【0032】
実施の形態3.
本実施の形態では、送信側において電位補正を行うが、差動クロック信号へ変換する機能と電位補正の機能を合わせた構成とし、上述した他の実施の形態と同様の作用が得られる。図8は、実施の形態3に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。図8において、図1と同一符号は図1に示された対象と同一又は相当物を示しており、ここでの説明を省略する。図1の差動クロック伝送装置と比較すると図8の差動クロック伝送装置は、クロック送信側LSI1の代わりにクロック送信側LSI201を備え、クロック受信側LSI2の代わりにクロック受信側LSI202を備える。クロック送信側LSI1と比較するとクロック送信側LSI201は、クロック送信部13と電位補正部14の代わりに補正差動クロック送信部15を備える。
【0033】
図9は、本発明に係る補正差動クロック送信部の構成の一例を示すブロック図である。この例において、補正差動クロック送信部15は、4つのトランジスタ(Tr41,42,43,44)を備え、Tr41,43はHighを表す電位Hに接続され、Tr42,44はLowを表す電位Lに接続される。
【0034】
補正差動クロック送信部15は、クロック発振部12からの送信クロック信号と送信制御部11からの電位補正制御信号に基づいて、1対の差動クロック信号Q、/Qを生成する。図9の回路は、電位補正期間においてすべてのトランジスタをOFFにするように動作するものであり、このときQと/Qの電位がほとんど等しくなる。図10は、本発明に係る補正差動クロック送信部の動作の一例を示す表である。電位補正期間、すなわち電位補正制御信号が1(High)のとき、Qと/Qの電位はほとんど等しくなる。また、クロック動作期間、すなわち電位補正制御信号が0(Low)のとき、Qの電位は送信クロック信号に従い、/Qの電位はQを反転したものとなる。
【0035】
また、図11は、本発明に係る補正差動クロック送信部の構成の別の一例を示すブロック図である。この例において、補正差動クロック送信部15は、4つのトランジスタ(Tr51,52,53,54)を備え、Tr51,53はHighを表す電位Hに接続され、Tr52,54はLowを表す電位Lに接続される。図11の回路は、電位補正期間においてすべてのトランジスタをONにするように動作するものであり、このときQと/Qの電位がほとんど等しくなる。送信クロック信号と電位補正制御信号の入力に対するQ、/Qの出力は、図10と同じになる。
【0036】
なお、差動クロック送信装置とは、実施の形態におけるクロック送信側LSIに対応する。また、差動クロック受信装置とは、実施の形態におけるクロック受信側LSIに対応する。また、制御部とは、実施の形態1における送信制御部、実施の形態2における受信制御部、実施の形態3における送信制御部のことである。
【0037】
(付記1) 1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送装置であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部と、
を備えてなる差動クロック伝送装置。
(付記2) 付記1に記載の差動クロック伝送装置において、
前記電位補正部は、前記1対の差動クロック信号の信号線の間を接続するトランジスタを備え、前記電位補正期間中に前記トランジスタをONにすることにより、電位差を小さくすることを特徴とする差動クロック伝送装置。
(付記3) 付記1に記載の差動クロック伝送装置において、
前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、
前記電位補正部において、前記1対の差動クロック信号の信号線はいずれも前記第1の電位と前記第2の電位にそれぞれトランジスタを介して接続されており、前記電位補正期間中に前記トランジスタをすべてOFFにすることにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とする差動クロック伝送装置。
(付記4) 付記1に記載の差動クロック伝送装置において、
前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、
前記電位補正部において、前記1対の差動クロック信号の信号線はいずれも前記第1の電位と前記第2の電位にそれぞれトランジスタを介して接続されており、前記電位補正期間中に前記トランジスタをすべてONにすることにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とする差動クロック伝送装置。
(付記5) 1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して外部の装置へ送信する差動クロック送信装置であって、
外部の装置が差動クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
を備えてなる差動クロック送信装置。
(付記6) 外部から受信した1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信装置であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
前記電位補正期間中に、外部から入力された1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部と、
を備えてなる差動クロック受信装置。
(付記7) 外部から入力された1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送方法であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御ステップと、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信ステップと、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正ステップと、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信ステップと、
を備えてなる差動クロック伝送方法。
(付記8) 付記7に記載の差動クロック伝送方法において、
前記電位補正ステップは、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線の間を接続することにより、電位差を小さくすることを特徴とする差動クロック伝送方法。
(付記9) 付記7に記載の差動クロック伝送方法において、
前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、
前記電位補正ステップにおいて、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線をいずれも前記第1の電位と前記第2の電位から絶縁することにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とする差動クロック伝送方法。
(付記10) 付記7に記載の差動クロック伝送方法において、
前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、
前記電位補正ステップにおいて、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線をいずれも前記第1の電位と前記第2の電位に接続することにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とする差動クロック伝送方法。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態1に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電位補正制御信号の生成の動作を示すタイムチャートである。
【図3】本発明に係る電位補正部の構成の一例を示す回路図である。
【図4】本発明に係る電位補正期間における差動クロック信号の電位差を示す波形である。
【図5】本発明に係るクロック送信側LSIにおける動作を示すタイムチャートである。
【図6】本発明に係る差動クロック受信部入力におけるクロック動作期間の差動クロック信号を示す波形である。
【図7】実施の形態2に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】実施の形態3に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る補正差動クロック送信部の構成の一例を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る補正差動クロック送信部の動作の一例を示す表である。
【図11】本発明に係る補正差動クロック送信部の構成の別の一例を示すブロック図である。
【図12】従来の差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図13】差動クロック送信部の構成の一例を示す回路図である。
【図14】従来の差動クロック受信部入力におけるクロック動作期間の差動クロック信号を示す波形である。
【符号の説明】
【0039】
1,101,201 クロック送信側LSI、2,102,202 クロック受信側LSI、11,111 送信制御部、12 クロック発振部、13 差動クロック送信部、14 電位補正部、15 補正差動クロック送信部、21,121 受信制御部、22 差動クロック受信部、31,41,42,43,44,51,52,53,54 Tr。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波のクロック伝送のための差動クロック伝送装置、差動クロック送信装置、差動クロック受信装置、差動クロック伝送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波のクロックを用いるコンピュータシステム等において、差動クロック伝送が用いられている。これは、極性を反転させた1対の差動クロック信号を2本の配線で伝送するものであり、ノイズに強い特徴を持つ。図12は、従来の差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。この差動クロック伝送装置は、クロック送信側LSI901、クロック受信側LSI902を備える。クロック送信側LSI901は、送信制御部911、クロック発振部12、差動クロック送信部13を備える。また、クロック受信側LSI902は、差動クロック受信部22を備える。クロック発振部12はPLL(Phase Locked Loop)を備える。
【0003】
電源投入後、送信制御部911は、クロック送信側LSI901内部のリセット等の初期化処理を行う。次に、送信制御部911は、クロック発振部12のPLLの周波数設定を行う。クロック発振部12は、送信クロック信号を出力し、差動クロック送信部13は1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号Q’、/Q’に変換し、差動クロック受信部22は1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する。
【0004】
図13は、差動クロック送信部の構成の一例を示す回路図である。差動クロック送信部13は、4つのトランジスタ(Tr911,912,913,914)を備え、Tr911,913はHighを表す電位Hに接続され、Tr912,914はLowを表す電位Lに接続される。送信クロック信号がHighのとき、Tr911,914がON、Tr912,913がOFFとなることから、Q’はHigh、/Q’はLowとなる。また、送信クロック信号がLowのとき、Tr912,913がON、Tr911,914がOFFとなることから、Q’はLow、/Q’はHighとなる。このように、入力された送信クロック信号に応じて、互いに反転した1対の差動クロック信号Q’、/Q’を出力する。
【0005】
しかしながら、高周波、長距離の差動クロック伝送においては、信号伝搬時の高周波損失により波形が減衰する。従って、差動クロック信号の交差が浅くなり、デューティ崩れや位相ずれが発生し、結果としてクロック動作直後のタイミングずれやクロック抜け等の問題が生じる。図14は、従来の差動クロック受信部入力におけるクロック動作期間の差動クロック信号を示す波形である。ここで、クロック発振部12が送信クロック信号を出力してからの期間をクロック動作期間と呼ぶことにする。この波形は、クロック受信側LSI902における差動クロック受信部22の入力波形のシミュレーション結果である。クロック動作期間の開始時においてQ’と/Q’の電位差は大きく、時間が経つに従って電位が変化し、デューティと位相が不安定であることが確認できる。
【0006】
そこで、従来、ボード材料の低損失化、直流カット等による出力回路の駆動能力コントロール、伝送線路とのカップリングを行うイコライザ回路の搭載、等の対策を行っていた。
【0007】
なお、本発明の関連ある従来技術として、例えば、下記に示す特許文献1が知られている。この論理回路は、1対の信号の間に等化器を備え、この等化器を等化用のクロック信号で駆動するものである。
【特許文献1】特開2002−305437号公報 (第4−9頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した対策においては、コストの増大、回路の複雑化、実装面積の増大、等の問題が発生する。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、高周波、長距離伝送に伴うデューティ崩れや位相ずれを低減する差動クロック伝送装置、差動クロック送信装置、差動クロック受信装置、差動クロック伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送装置であって、受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部とを備えたものである。
【0011】
また、本発明に係る差動クロック伝送装置において、前記電位補正部は、前記1対の差動クロック信号の信号線の間を接続するトランジスタを備え、前記電位補正期間中に前記トランジスタをONにすることにより、電位差を小さくすることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る差動クロック伝送装置において、前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、前記電位補正部において、前記1対の差動クロック信号の信号線はいずれも前記第1の電位と前記第2の電位にそれぞれトランジスタを介して接続されており、前記電位補正期間中に前記トランジスタをすべてOFFにすることにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明に係る差動クロック伝送装置において、前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、前記電位補正部において、前記1対の差動クロック信号の信号線はいずれも前記第1の電位と前記第2の電位にそれぞれトランジスタを介して接続されており、前記電位補正期間中に前記トランジスタをすべてONにすることにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して外部の装置へ送信する差動クロック送信装置であって、外部の装置が差動クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部とを備えたものである。
【0015】
また、本発明は、外部から受信した1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信装置であって、受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、前記電位補正期間中に、外部から入力された1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部とを備えたものである。
【0016】
また、本発明は、外部から入力された1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送方法であって、受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御ステップと、1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信ステップと、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正ステップと、前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信ステップとを備えたものである。
【0017】
また、本発明に係る差動クロック伝送方法において、前記電位補正ステップは、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線の間を接続することにより、電位差を小さくすることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る差動クロック伝送方法において、前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、前記電位補正ステップにおいて、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線をいずれも前記第1の電位と前記第2の電位から絶縁することにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明に係る差動クロック伝送方法において、前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、前記電位補正ステップにおいて、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線をいずれも前記第1の電位と前記第2の電位に接続することにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、回路規模やコストを増大させることなく、差動クロック信号波形のデューティや位相が安定し、クロック動作直後のタイミングずれやクロック抜けを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
実施の形態1.
本実施の形態では、送信側において電位補正を行う。図1は、実施の形態1に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。図1において、図12と同一符号は図12に示された対象と同一又は相当物を示しており、ここでの説明を省略する。図12の差動クロック伝送装置と比較すると図1の差動クロック伝送装置は、クロック送信側LSI901の代わりにクロック送信側LSI1を備え、クロック受信側LSI902の代わりにクロック受信側LSI2を備える。クロック送信側LSI901と比較するとクロック送信側LSI1は、新たに電位補正部14を備え、送信制御部911の代わりに送信制御部11を備える。また、クロック受信側LSI902と比較するとクロック受信側LSI2は、新たに受信制御部21を備える。
【0023】
まず、電位補正の制御について説明する。電源投入後、送信制御部11は、クロック送信側LSI1内部のリセット等の初期化処理を行う。次に、送信制御部11は、クロック発振部12のPLLの周波数設定を行う。また、送信制御部11は、電位補正の指示を電位補正制御信号として電位補正部14へ出力する。ここで、送信制御部11は、タイマー機能を持った電源監視素子を備え、電源投入から一定の期間後にHighとなる電位補正開始タイミング信号を生成する。一方、クロック受信側LSI2の受信制御部21は、Ready信号をクロック送信側LSI1へ出力する。送信制御部11は、Ready信号を受け取るとHighとなる電位補正終了タイミング信号を生成する。さらに送信制御部11は、電位補正開始タイミング信号と電位補正終了タイミング信号のEXCLUSIVE−OR演算の結果を電位補正制御信号として電位補正部14へ出力する。
【0024】
図2は、本発明に係る電位補正制御信号の生成の動作を示すタイムチャートである。横軸は時間、縦軸は電位を表す。また、上から順に、電位補正開始タイミング信号、電位補正終了タイミング信号、電位補正制御信号を表す。ここで、電位補正制御信号がHighとなる期間を電位補正期間、電位補正期間の後のクロック発振部12が送信クロック信号を出力する期間をクロック動作期間と呼ぶことにする。
【0025】
次に、電位補正期間における動作について説明する。電位補正部14は、差動クロック送信部13からの1対の差動クロック信号の電位を電位補正制御信号に従って補正したものを、差動クロック信号Q、/Qとしてクロック受信側LSI2へ出力する。ここで、電位補正部14は、電位補正期間において差動クロック信号Qと/Qの電位差が小さくなるように電位の補正を行う。
【0026】
図3は、本発明に係る電位補正部の構成の一例を示す回路図である。この図に示すように、電位補正部14は例えばトランジスタ(Tr31)で実現される。送信制御部11からの電位補正制御信号により、電位補正期間においてトランジスタはONとなり、1対の差動クロック信号Qと/Qの電位差は0に近づく。図4は、本発明に係る電位補正期間における差動クロック信号の電位差を示す波形である。横軸は時間、縦軸は電位を表す。電位補正期間前の差動クロック信号Q、/Qの電位差V1が、電位補正期間の終了時にはV2に減少する。ここで、電位補正期間として、V2が十分小さくなる時間が必要となる。また、V2が小さくなりすぎることによる誤動作が問題となる場合、V2は、差動クロック受信部22に規定される入力電圧閾値を満足する必要がある。
【0027】
次に、クロック動作期間における動作について説明する。電位補正期間の後に続くクロック動作期間において、クロック発振部12が送信クロック信号を出力すると、差動クロック送信部13は送信クロック信号を差動クロック信号に変換し、電位補正部14は入力された差動クロック信号をそのまま出力する。図5は、本発明に係るクロック送信側LSIにおける動作を示すタイムチャートである。横軸は時間、縦軸は電位を表す。上から順に、送信制御部11の出力である電位補正制御信号、クロック発振部12の出力である送信クロック信号、電位補正部14の出力である差動クロック信号Q、/Qの波形をそれぞれ示している。Qと/Qの電位は共に、電位補正期間の終了時に中間電位に近づき、クロック動作期間では中間電位付近で安定する。
【0028】
図6は、本発明に係る差動クロック受信部入力におけるクロック動作期間の差動クロック信号を示す波形である。この波形は、図14と同様、クロック受信側LSI2における差動クロック受信部22の入力波形のシミュレーション結果である。図14と比較すると、電位補正期間の終了時におけるQと/Qの電位差が小さく、クロック動作期間の開始時において波形が安定し、デューティと位相が安定することが確認できる。
【0029】
上述した実施の形態において、送信制御部11による電位補正開始信号のタイミングは、タイマー機能を持った電源監視素子を利用したが、初期化処理の制御信号を利用しても良いし、PLLの設定制御信号等を利用しても良い。また、送信制御部11による電位補正終了信号のタイミングは、受信制御部21のReady信号を利用したが、受信制御部21のEnable信号を利用しても良いし、受信制御部21を必要とせずに送信制御部11のEnable信号を利用しても良い。
【0030】
実施の形態2.
本実施の形態では、受信側において電位補正を行い、実施の形態1と同様の作用が得られる。図7は、実施の形態2に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。図7において、図1と同一符号は図1に示された対象と同一又は相当物を示しており、ここでの説明を省略する。図1の差動クロック伝送装置と比較すると図7の差動クロック伝送装置は、クロック送信側LSI1の代わりにクロック送信側LSI101を備え、クロック受信側LSI2の代わりにクロック受信側LSI102を備える。
【0031】
クロック送信側LSI1と比較するとクロック送信側LSI101は、送信制御部11の代わりに送信制御部111を備え、電位補正部14を必要としない。クロック受信側LSI2と比較するとクロック受信側LSI102は、受信制御部21の代わりに受信制御部121を備え、新たに電位補正部14を備える。動作は実施の形態1と同様であるが、実施の形態1と比較すると、送信側ではなく受信側に電位補正部14が備えられ、送信制御部11と同様にして受信制御部121が電位補正制御信号を電位補正部14へ出力する。また、受信制御部121からの電位補正制御信号等に従って、送信制御部111がクロック発振部12の設定を行う。
【0032】
実施の形態3.
本実施の形態では、送信側において電位補正を行うが、差動クロック信号へ変換する機能と電位補正の機能を合わせた構成とし、上述した他の実施の形態と同様の作用が得られる。図8は、実施の形態3に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。図8において、図1と同一符号は図1に示された対象と同一又は相当物を示しており、ここでの説明を省略する。図1の差動クロック伝送装置と比較すると図8の差動クロック伝送装置は、クロック送信側LSI1の代わりにクロック送信側LSI201を備え、クロック受信側LSI2の代わりにクロック受信側LSI202を備える。クロック送信側LSI1と比較するとクロック送信側LSI201は、クロック送信部13と電位補正部14の代わりに補正差動クロック送信部15を備える。
【0033】
図9は、本発明に係る補正差動クロック送信部の構成の一例を示すブロック図である。この例において、補正差動クロック送信部15は、4つのトランジスタ(Tr41,42,43,44)を備え、Tr41,43はHighを表す電位Hに接続され、Tr42,44はLowを表す電位Lに接続される。
【0034】
補正差動クロック送信部15は、クロック発振部12からの送信クロック信号と送信制御部11からの電位補正制御信号に基づいて、1対の差動クロック信号Q、/Qを生成する。図9の回路は、電位補正期間においてすべてのトランジスタをOFFにするように動作するものであり、このときQと/Qの電位がほとんど等しくなる。図10は、本発明に係る補正差動クロック送信部の動作の一例を示す表である。電位補正期間、すなわち電位補正制御信号が1(High)のとき、Qと/Qの電位はほとんど等しくなる。また、クロック動作期間、すなわち電位補正制御信号が0(Low)のとき、Qの電位は送信クロック信号に従い、/Qの電位はQを反転したものとなる。
【0035】
また、図11は、本発明に係る補正差動クロック送信部の構成の別の一例を示すブロック図である。この例において、補正差動クロック送信部15は、4つのトランジスタ(Tr51,52,53,54)を備え、Tr51,53はHighを表す電位Hに接続され、Tr52,54はLowを表す電位Lに接続される。図11の回路は、電位補正期間においてすべてのトランジスタをONにするように動作するものであり、このときQと/Qの電位がほとんど等しくなる。送信クロック信号と電位補正制御信号の入力に対するQ、/Qの出力は、図10と同じになる。
【0036】
なお、差動クロック送信装置とは、実施の形態におけるクロック送信側LSIに対応する。また、差動クロック受信装置とは、実施の形態におけるクロック受信側LSIに対応する。また、制御部とは、実施の形態1における送信制御部、実施の形態2における受信制御部、実施の形態3における送信制御部のことである。
【0037】
(付記1) 1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送装置であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部と、
を備えてなる差動クロック伝送装置。
(付記2) 付記1に記載の差動クロック伝送装置において、
前記電位補正部は、前記1対の差動クロック信号の信号線の間を接続するトランジスタを備え、前記電位補正期間中に前記トランジスタをONにすることにより、電位差を小さくすることを特徴とする差動クロック伝送装置。
(付記3) 付記1に記載の差動クロック伝送装置において、
前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、
前記電位補正部において、前記1対の差動クロック信号の信号線はいずれも前記第1の電位と前記第2の電位にそれぞれトランジスタを介して接続されており、前記電位補正期間中に前記トランジスタをすべてOFFにすることにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とする差動クロック伝送装置。
(付記4) 付記1に記載の差動クロック伝送装置において、
前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、
前記電位補正部において、前記1対の差動クロック信号の信号線はいずれも前記第1の電位と前記第2の電位にそれぞれトランジスタを介して接続されており、前記電位補正期間中に前記トランジスタをすべてONにすることにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とする差動クロック伝送装置。
(付記5) 1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して外部の装置へ送信する差動クロック送信装置であって、
外部の装置が差動クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
を備えてなる差動クロック送信装置。
(付記6) 外部から受信した1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信装置であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
前記電位補正期間中に、外部から入力された1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部と、
を備えてなる差動クロック受信装置。
(付記7) 外部から入力された1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送方法であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御ステップと、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信ステップと、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正ステップと、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信ステップと、
を備えてなる差動クロック伝送方法。
(付記8) 付記7に記載の差動クロック伝送方法において、
前記電位補正ステップは、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線の間を接続することにより、電位差を小さくすることを特徴とする差動クロック伝送方法。
(付記9) 付記7に記載の差動クロック伝送方法において、
前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、
前記電位補正ステップにおいて、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線をいずれも前記第1の電位と前記第2の電位から絶縁することにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とする差動クロック伝送方法。
(付記10) 付記7に記載の差動クロック伝送方法において、
前記1対の差動クロック信号は、第1の電位と該第1の電位より低い第2の電位との2つの状態を持ち、
前記電位補正ステップにおいて、前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の信号線をいずれも前記第1の電位と前記第2の電位に接続することにより、前記1対の差動クロック信号は共に前記第1の電位と前記第2の電位の中間付近の電位となることを特徴とする差動クロック伝送方法。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態1に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電位補正制御信号の生成の動作を示すタイムチャートである。
【図3】本発明に係る電位補正部の構成の一例を示す回路図である。
【図4】本発明に係る電位補正期間における差動クロック信号の電位差を示す波形である。
【図5】本発明に係るクロック送信側LSIにおける動作を示すタイムチャートである。
【図6】本発明に係る差動クロック受信部入力におけるクロック動作期間の差動クロック信号を示す波形である。
【図7】実施の形態2に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】実施の形態3に係る差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る補正差動クロック送信部の構成の一例を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る補正差動クロック送信部の動作の一例を示す表である。
【図11】本発明に係る補正差動クロック送信部の構成の別の一例を示すブロック図である。
【図12】従来の差動クロック伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図13】差動クロック送信部の構成の一例を示す回路図である。
【図14】従来の差動クロック受信部入力におけるクロック動作期間の差動クロック信号を示す波形である。
【符号の説明】
【0039】
1,101,201 クロック送信側LSI、2,102,202 クロック受信側LSI、11,111 送信制御部、12 クロック発振部、13 差動クロック送信部、14 電位補正部、15 補正差動クロック送信部、21,121 受信制御部、22 差動クロック受信部、31,41,42,43,44,51,52,53,54 Tr。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送装置であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部と、
を備えてなる差動クロック伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の差動クロック伝送装置において、
前記電位補正部は、前記1対の差動クロック信号の信号線の間を接続するトランジスタを備え、前記電位補正期間中に前記トランジスタをONにすることにより、電位差を小さくすることを特徴とする差動クロック伝送装置。
【請求項3】
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して外部の装置へ送信する差動クロック送信装置であって、
外部の装置が差動クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
を備えてなる差動クロック送信装置。
【請求項4】
外部から受信した1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信装置であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
前記電位補正期間中に、外部から入力された1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部と、
を備えてなる差動クロック受信装置。
【請求項5】
外部から入力された1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送方法であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御ステップと、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信ステップと、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正ステップと、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信ステップと、
を備えてなる差動クロック伝送方法。
【請求項1】
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送装置であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部と、
を備えてなる差動クロック伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の差動クロック伝送装置において、
前記電位補正部は、前記1対の差動クロック信号の信号線の間を接続するトランジスタを備え、前記電位補正期間中に前記トランジスタをONにすることにより、電位差を小さくすることを特徴とする差動クロック伝送装置。
【請求項3】
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して外部の装置へ送信する差動クロック送信装置であって、
外部の装置が差動クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信部と、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
を備えてなる差動クロック送信装置。
【請求項4】
外部から受信した1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信装置であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御部と、
前記電位補正期間中に、外部から入力された1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正部と、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信部と、
を備えてなる差動クロック受信装置。
【請求項5】
外部から入力された1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換して伝送し、1つの受信クロック信号に変換する差動クロック伝送方法であって、
受信クロック信号を利用する前の所定の期間である電位補正期間の指示を行う制御ステップと、
1つの送信クロック信号を1対の差動クロック信号に変換する差動クロック送信ステップと、
前記電位補正期間中に、前記1対の差動クロック信号の電位差を小さくする電位補正ステップと、
前記1対の差動クロック信号を1つの受信クロック信号に変換する差動クロック受信ステップと、
を備えてなる差動クロック伝送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−157321(P2006−157321A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343280(P2004−343280)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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