説明

希土類ボンド磁石の製造方法

【課題】十分に優れた保磁力と角型を有する希土類ボンド磁石を製造することが可能な製造方法を提供すること。
【解決手段】軽希土類元素を含み、水素化分解・脱水素再結合法によって得られた磁性粉末と、重希土類元素を含む拡散材と、を含む混合粉末を、磁場中成形して成形体を作製する第1工程と、成形体に樹脂を含浸して樹脂を硬化することにより希土類ボンド磁石を得る第2工程と、を有し、第1工程における磁性粉末は、平均粒径が1〜30μmである第1の磁性粉末と、平均粒径が80〜200μmである第2の磁性粉末と、の混合物であり、第1工程において、混合粉末及び成形体の少なくとも一方を加熱して、重希土類元素を第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末の粒内に拡散させる希土類ボンド磁石の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は希土類ボンド磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素を含有する希土類磁石の一形態として、希土類ボンド磁石が知られている。希土類ボンド磁石は、優れた磁気特性を有するとともに、複雑な形状にも比較的容易に対応できることから、モータなどの各種機器に使用されている。最近、各種機器は、小型化・高効率化が図られており、それに伴って、優れた磁気特性を有する希土類ボンド磁石が求められている。
【0003】
希土類ボンド磁石の製造方法としては、例えば、希土類合金からなる磁性粉末と樹脂とを混練して、磁場中で所定の形状に成形した後、樹脂を硬化させて製造する技術が知られている。また、希土類ボンド磁石の別の製造方法として、特許文献1には、粒度分布に2つのピークを有する希土類磁石粉末を、磁場中成形して熱処理する工程と、樹脂を含浸させて当該樹脂を硬化させる工程とからなる製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−114409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータ等の各種機器の性能向上を図るため、保磁力や角型などの磁気特性に優れた希土類ボンド磁石が求められている。希土類ボンド磁石の磁気特性を向上する方法としては、希土類合金からなる磁性粉末を磁場中成形して成形体を作製する際に、成形圧力を上げて密度の向上を図る方法が考えられる。しかしながら、成形圧力を上げると磁性粉末が破砕したり、粒子の配向の乱れが生じたりしてしまうことが懸念される。このため、希土類ボンド磁石の原料として磁気的な異方性を有する磁性粉末を用いても、磁性粉末の特性を十分に生かすことができず、磁気特性を向上することは困難である。このような事情の下、磁性粉末の特性を有効に活用することが可能な希土類ボンド磁石の製造方法を確立することが求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分に優れた保磁力と角型を有する希土類ボンド磁石を製造することが可能な希土類ボンド磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、軽希土類元素を含み、水素化分解・脱水素再結合法によって得られた磁性粉末と、重希土類元素を含む拡散材と、を含む混合粉末を、磁場中成形して成形体を作製する第1工程と、成形体に樹脂を含浸して樹脂を硬化することにより希土類ボンド磁石を得る第2工程と、を有し、第1工程における磁性粉末は、平均粒径が1〜30μmである第1の磁性粉末と、平均粒径が80〜200μmである第2の磁性粉末と、の混合物であり、第1工程において、混合粉末及び/又は成形体を加熱して、重希土類元素を第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末の粒内に拡散させる希土類ボンド磁石の製造方法を提供する。
【0008】
この製造方法によれば、十分に優れた保磁力と角型を有する希土類ボンド磁石を製造することができる。このような効果が得られる要因は、以下のように推察される。すなわち、本発明の製造方法では、磁性粉末として水素化分解・脱水素再結合法によって得られた異方性を有する磁性粉末を用いている。そして、磁性粉末として、平均粒径が小さい第1の磁性粉末と、それよりも平均粒径が大きい第2の磁性粉末とを用いているため、粒径が揃った磁性粉末を用いる場合や、平均粒径が大きな磁性粉末のみを用いる場合に比べて、成形体密度を高くすることができる。また、平均粒径が小さい磁性粉末のみを用いる場合に比べて、保磁力を高くすることができる。
【0009】
さらに、第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末に、重希土類元素を含む拡散材を添加していることから、希土類元素が磁性粒子中に拡散し、優れた保磁力を有する希土類ボンド磁石を得ることができる。理由は明らかではないが、このようにして得られる希土類ボンド磁石の保磁力は、第1の磁性粉末のみ又は第2の磁性粉末のみに、それぞれ重希土類元素を拡散させて得られる保磁力から類推される値よりも大きい。
【0010】
また、成形体の密度を高くすることが容易である為、従来よりも成形圧力を低くすることが可能となる。このため、磁性粉末の破砕を抑制すること及び成形時の配向の乱れを抑制することができる。すなわち、水素化分解・脱水素再結合法によって得られた磁性粉末の特性を十分に活用することによって、希土類ボンド磁石の磁気特性を向上することができる。
【0011】
本発明では、第1工程における磁性粉末全体に対する第1の磁性粉末の質量比率が5〜70質量%であることが好ましい。これによって、一層優れた保磁力と角型を有する希土類ボンド磁石を製造することができる。
【0012】
本発明では、第1工程における混合粉末に対する拡散材の質量比率が0.5〜5質量%であることが好ましい。これによって、一層優れた保磁力と角型を有する希土類ボンド磁石を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分に優れた保磁力と角型を有する希土類ボンド磁石を製造することが可能な希土類ボンド磁石の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る希土類ボンド磁石の製造方法用いられる第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末の粒度分布を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る希土類ボンド磁石の製造方法によって得られる希土類ボンド磁石の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態の希土類ボンド磁石の製造方法は、
(1)軽希土類元素を含む合金に水素化分解・脱水素再結合法による処理を施して、平均粒径が1〜30μmである第1の磁性粉末と、平均粒径が80〜200μmである第2の磁性粉末と、を調製するHDDR処理工程、
(2)第1の磁性粉末、第2の磁性粉末、及び重希土類元素を含む拡散材、を含む混合粉末を混合する混合工程、
(3)混合粉末を磁場中成形して成形体を作製する成形工程、
(4)成形体を加熱して、重希土類元素を第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末の粒内に拡散させる拡散工程、及び
(5)成形体に樹脂を含浸して樹脂を硬化することにより希土類ボンド磁石を得る硬化工程、を有する。以下に、各工程の詳細を説明する。
【0017】
(1)HDDR処理工程では、まず、軽希土類元素を有する合金を準備する。合金は、通常の鋳造方法、例えばストリップキャスト法、ブックモールド法、又は遠心鋳造法によって得た合金を使用することができる。また、上述の方法によって得られた合金に均質化熱処理を施したものであってもよい。合金は、原料金属又は原料化合物や製造工程に由来する不可避な不純物を含んでいてもよい。
【0018】
軽希土類元素は、好ましくはNd及び/又はPrを含む。本明細書における希土類元素(場合により、「R」で表す。)は、長周期型周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイド元素のことをいう。ランタノイド元素には、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビニウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が含まれる。希土類元素は、軽希土類元素及び重希土類元素に分類することができる。本明細書における「重希土類元素」とはGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luをいい、「軽希土類元素」とはSc,Y,La,Ce,Pr,Nd、Sm,Euをいう。
【0019】
合金の好適な組成としては、軽希土類元素としてNd及びPrの少なくとも一方を含み、Bを0.5〜4.5質量%含み、残部がT(TはFe及び/又はCoを示す。)及び不可避的不純物であるR−T−B系の組成を有するものが挙げられる。また、合金は、必要に応じて、Co、Ni、Mn、Al、Cu、Nb、Zr、Ti、W、Mo、V、Ga、Zn、Si等の他の元素を更に含んでもよい。
【0020】
上述の組成を有する合金を準備した後、当該合金に水素化分解・脱水素再結合法(以下、単に「HDDR法」ということもある。)による処理を施す。HDDR法とは、水素化(Hydrogenation)、不均化(Disproportionation)、脱水素化(Desorption)、及び再結合(Recombination)を順次実行するプロセスである。HDDR法による処理の詳細について、以下に説明する。
【0021】
(水素化)
準備した合金の均質化熱処理を行う。具体的には、合金を、減圧雰囲気(1kPa以下)又はアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気中、温度1000〜1200℃で5〜48時間保持する。
【0022】
均質化させた合金を、スタンプミル又はジョークラッシャーなどの粉砕手段を用いて粉砕する。その後、篩分けを行ってもよい。これによって、粒径が10mm以下の合金粉末を調製することができる。
【0023】
次に、水素吸蔵処理を行う。具体的には、合金粉末を、水素分圧が100〜300kPaである水素雰囲気中、100〜200℃の温度で0.5〜2時間保持する。これによって、合金の結晶格子中に水素が吸蔵される。
【0024】
(不均化)
水素を吸蔵させた合金を、水素雰囲気中、所定の温度で保持することによって、水素化分解して分解生成物を得る。水素化分解時の水素分圧は10〜100kPa、温度は700〜850℃とすることが好ましい。このような条件で水素化分解を行うことによって、磁気的な異方性を有する粒子からなる磁性粉末を得ることができる。
【0025】
水素化分解によって得られる分解生成物は、RHなどの水素化物、α−Fe及びFeBなどの鉄化合物を含んでいる。この段階における分解生成物は、100nmオーダーの微細なマトリックスを形成している。
【0026】
(脱水素化、再結合)
水素分圧を低減することによって、分解生成物から水素を放出させ、軽希土類元素を有する希土類合金を含む異方性の磁性粉末を得る。この磁性粉末は、上述の合金と同等の組成を有する。この段階における磁性粉末の粒径は、好ましくは350μm以下であり、より好ましくは250μm以下であり、さらに好ましくは212μm以下である。磁性粉末の粒径の下限に特に制限はないが、実用上、例えば1μm以上とすることが好ましい。
【0027】
上述のHDDR法によって得られた磁性粉末(HDDR粉)は、例えばジェットミル、ボールミル、振動ミル、湿式アトライター等の微粉砕機を用いて粉砕することができる。HDDR法による処理を施した磁性粉末は、結晶粒の粒子径が小さく且つ異方性である。したがって、HDDR粉の有する磁気特性を十分に活用することができれば、優れた磁気特性を有する希土類ボンド磁石を得ることができる。
【0028】
粉砕した磁性粉末を、所望の篩いにかけて分級し、粒径が例えば212μm以下の磁性粉末を調製する。これよりも粒径の大きな磁性粉末は、再粉砕することによって、粒径が例えば212μm以下の磁性粉末とすることができる。このようにして得られた、平均粒径が所定の範囲内にある磁性粉末を第2の磁性粉末とすることができる。また、粉砕した磁性粉末の一部をジェットミル等を用いて粉砕することによって、第1の磁性粉末を調製することができる。このような手順で、第1の磁性粉末と第2の磁性粉末を調製すれば、粉砕前の磁性粉末を高い歩留まり(好ましくは100%)で使用することができる。
【0029】
図1は、第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末を混合した時の粒度分布の一例を示す図である。図1における小粒径側のピークは第1の磁性粉末、大粒径側のピークは第2の磁性粉末に由来する。このように、第1の磁性粉末と第2の磁性粉末の粒度分布は、一部が重なっていてもよい。
【0030】
第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末の平均粒径は、それぞれ、1〜30μm及び80〜200μmである。保磁力と角型を向上させる観点から、第1の磁性粉末の平均粒径は、好ましくは5〜20μmである。同様の観点から、第2の磁性粉末の平均粒径は、好ましくは100〜150μmである。なお、本明細書における平均粒径は、市販のレーザー回折式の粒度分布計を用いて測定される体積平均粒子径[d(50)]である。
【0031】
(2)混合工程では、まず、重希土類金属又は重希土類元素を有する重希土類化合物を含む、粉末状の拡散材を準備する。重希土類元素は、好ましくはDy又はTbである。拡散材は、好ましくは重希土類元素の水素化物、酸化物、ハロゲン化物及び水酸化物から選ばれる少なくとも一種の重希土類化合物を含む。
【0032】
重希土類化合物は、重希土類金属元素以外の元素を有していてもよく、例えば、重希土類金属と希土類金属以外の金属との合金であってもよい。一層優れた磁気特性を有する希土類ボンド磁石とする観点から、重希土類化合物は、好ましくは重希土類元素の水素化物及びフッ化物を含み、より好ましくは水素化物を含む。このような重希土類化合物を用いると、希土類ボンド磁石中に残存する不純物の量を十分に低くすることができる。また、重希土類元素の水素化物及びフッ化物は容易に分解することから、HDDR法による処理によって得られた、組織が微細である磁性粉末に対しても、十分に均一に重希土類元素を拡散させることができる。重希土類化合物の例としては、DyH、DyF及びTbHを挙げられる。
【0033】
重希土類化合物及び重希土類金属の粉末は、市販の又は通常の方法によって得られた重希土類化合物又は希土類金属を、ジェットミルを用いて乾式粉砕する方法、又は有機溶媒と混合してスラリーとした後、ボールミル等を用い湿式粉砕することによって調製することができる。
【0034】
拡散材の平均粒径は、好ましくは100nm〜30μmであり、より好ましくは0.5〜10μmであり、さらに好ましくは1〜5μmである。拡散材の平均粒径が30μmを超えると、重希土類元素が磁性粒子の内部に拡散し難くなって、保磁力及び角型の向上効果が損なわれる場合がある。一方、拡散材の平均粒径が100nm未満であると、重希土類元素が酸化して重希土類酸化物が生成しやすくなる傾向がある。重希土類酸化物が生成すると、重希土類元素の拡散量が少なくなり、保磁力及び角型の向上幅が小さくなる傾向にある。
【0035】
混合工程では、HDDR処理工程で得られた第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末(以下、場合により纏めて「磁性粉末」という。)、並びに上述のとおり調製した拡散材を配合して混合し、混合粉末を調製する。混合粉末は、所定の配合比で、平均粒径が異なる2種以上の磁性粉末と拡散材とを容器に投入後、スペックスミキサーを用いて、1〜30分間混合することによって得ることができる。混合は、拡散材や磁性粉末の酸化を抑制する観点から、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。なお、混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、Vミキサー、ボールミル、又はライカイ機などを用いることができる。なお、混合の際に成形助剤となるステアリン酸亜鉛などの潤滑材を添加してもよい。この場合、添加量は混合粉末に対して0.01〜0.5質量%とすることが好ましい。
【0036】
混合粉末において、第1の磁性粉末と第2の磁性粉末の合計量に対する第1の磁性粉末の質量比率αは、好ましくは5〜70質量%であり、より好ましくは10〜60質量%である。質量比率αが70質量%を超えると、希土類ボンド磁石の密度が低下して、優れた保磁力及び角型が得られ難くなる傾向にある。一方、質量比率αが5質量%未満であると、角型の向上効果が小さくなる傾向にある。一層優れた角型を有する希土類ボンド磁石を得る観点から、質量比率αは好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは30〜60質量%である。
【0037】
混合粉末において、第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末の合計量に対する拡散材の質量比率βは、一層高い保磁力を有する希土類ボンド磁石を得る観点から、好ましくは0.5〜5質量%であり、より好ましくは1〜4質量%である。質量比率βが0.5質量%未満であると、磁性粒子の内部に拡散する重希土類元素の量が少なくなって、保磁力の向上幅が小さくなる傾向にある。一方、質量比率βを5質量%より大きくしても、更なる保磁力の向上効果は殆ど得られず、製造コストが高くなる傾向にある。
【0038】
(3)成形工程では、上述の混合粉末を磁場中成形して所望の形状を有する成形体を作製する。磁場中成形は、磁場を印加しながら行い、これにより異方性を有する磁性粉末を所定方向に配向させた状態で固定する。成形は、例えば、機械プレスや油圧プレス等の圧縮成形機を用いた圧縮成形により行うことができる。具体的には、混合粉末を金型キャビティ内に充填した後、充填された粉末を上パンチと下パンチとの間で挟むようにして加圧することによって、混合粉末を所定形状に成形することができる。
【0039】
成形によって得られる成形体の形状は特に制限されず、柱状、平板状、リング状等、所望とする希土類ボンド磁石の形状に応じて決定する。磁場中成形時の加圧圧力は好ましくは2〜12ton/cmであり、配向磁界は好ましくは800〜2000kA/mである。なお、成形方法としては、上述のように混合粉末をそのまま成形する乾式成形のほか、混合粉末を油等の溶媒に分散させたスラリーを成形する湿式成形を適用することもできる。本実施形態の製造方法では、平均粒径が互いに異なる第1の磁性粉末と第2の磁性粉末とを用いているため、成形圧力を低くしても、成形体及び希土類ボンド磁石の密度を高くすることができる。
【0040】
(4)拡散工程では、磁場中成形によって得られた成形体を、拡散材に含まれる重希土類元素が磁性粉末の粒内に拡散することができる温度に加熱する。具体的には、成形体を減圧下又はアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下、好ましくは600〜950℃、より好ましくは700〜950℃、さらに好ましくは750〜850℃で、1〜12時間保持する。このような条件で加熱することにより、重希土類元素がHDDR処理を施して得られた磁性粉末の粒子内部に拡散し、拡散材から拡散した重希土類元素濃度が高い外層と、該外層に囲まれる重金属元素濃度が低い内層とを有する粒子が形成される。これによって、第1の磁性粉末と第2の磁性粉末とを含む混合粉末を用いて、第1の磁性粉末のみと第2の磁性粉末のみにそれぞれ重希土類元素を拡散させて得られる保磁力から類推できる値よりも大きい保磁力を有する希土類ボンド磁石を製造することができる。
【0041】
また、HDDR処理が施された磁性粉末には微細なクラックが存在するが、このクラックに拡散材が侵入してクラックを埋めることができる。このため、最終的に得られる希土類ボンド磁石の耐酸化性及び強度も向上させることができる。
【0042】
拡散工程において、成形体の加熱温度を高くし過ぎたり加熱時間を長くし過ぎたりすると、磁性粉末の粒成長が進行し、またはHDDR処理を施して得られた異方性の磁性粉末の相分解が生じ、高い磁気特性が損なわれる可能性がある。一方、成形体の加熱温度を低くし過ぎたり加熱時間を短くし過ぎたりすると、重希土類元素の拡散が十分に進行しない傾向がある。したがって、磁性粉末の種類や平均粒径に応じて、加熱温度及び加熱時間を設定することが好ましい。
【0043】
本実施形態の製造方法では、成形体とした状態で加熱処理を施しているため、磁性粉末と拡散材との密着性がよく、拡散材に含まれる重希土類元素を磁性粉末の粒内の外周部に、より均一に拡散させることが可能となる。したがって、角型や保磁力が十分に高い希土類ボンド磁石を得ることができる。
【0044】
(5)硬化工程では、成形体に樹脂を含浸させ、加熱して樹脂を硬化することにより、希土類化合物を含む磁性粒子と磁性粒子間に充填された樹脂とを含有する希土類ボンド磁石を得る。具体的には、まず、加熱処理を施した成形体を予め調製した樹脂含有溶液に浸漬し、密閉容器中で減圧することによって脱泡させて樹脂含有溶液を成形体の空隙内に浸透させる。その後、成形体を樹脂含有溶液中から取り出し、成形体の表面に付着した余剰の樹脂含有溶液を取り除く。余剰の樹脂含有溶液を取り除くには遠心分離機などを用いればよい。また、樹脂含有溶液に浸漬する前に成形体を密閉溶液中に入れて、減圧雰囲気に保持しつつトルエン等の溶剤に浸漬することが好ましい。これによって、脱泡が促進されて樹脂の含浸量を増やすことが可能となり、成形体中の空隙を減らすことができる。
【0045】
樹脂含有溶液に含まれる樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系のエラストマー、アイオノマー、エチレンプロピレン共重合体(EPM)、エチレン−エチルアクリレート共重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらのなかでも、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂がより好ましい。
【0046】
樹脂含有溶液は、上述の樹脂を溶媒に溶解させることによって調製することができる。溶媒としては、トルエン、アセトン、エチルアルコールなどの一般的な有機溶媒を用いることができる。溶媒は、樹脂を十分に溶解させるために、用いる樹脂の種類に応じて選択することが好ましい。樹脂含有溶液における樹脂含有量に特に制限はないが、密度が高く空隙の少ない希土類ボンド磁石を得るためには、樹脂の含有量は高い方が好ましい。
【0047】
樹脂含有溶液を空隙内に浸透させた成形体を、例えば恒温槽内で、減圧雰囲気(1kPa以下)又はアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下、120〜230℃で1〜10時間保持することによって、樹脂含有溶液に含まれる溶媒を蒸発させるとともに樹脂を硬化させる。その後、必要に応じて表面処理を施すことにより、異方性の希土類ボンド磁石を得ることができる。
【0048】
希土類ボンド磁石の樹脂含有量は、優れた磁気特性と優れた形状保持性とを両立させる観点から、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。この樹脂含有量は、樹脂含有溶液における樹脂濃度や、成形体作製時の成形圧力を変えることによって調整することができる。
【0049】
図2は、本実施形態の製造方法によって得られる希土類ボンド磁石の斜視図である。本実施形態の製造方法によって得られる希土類ボンド磁石10は、希土類化合物(希土類合金)を主成分として有する磁性粒子と、該磁性粒子間に充填された樹脂とを含有する。希土類化合物は、構成元素として希土類元素を有する。希土類ボンド磁石10は、拡散材に含まれる重希土類元素が磁性粒子の外周部に従来のものよりも均一に拡散しているため、十分に高い保磁力と角型比を有する。また、異方性の磁性粉末を、加熱処理及び樹脂と混合することなく磁場中成形しているために、各磁性粒子の配向を従来よりも揃えることが可能となり、配向度が高くなって磁気特性に優れた希土類ボンド磁石とすることができる。
【0050】
本実施形態では、平均粒径の異なる第1の磁性粉末と第2の磁性粉末とを用いているため、平均粒径の大きな第2の磁性粉末の間に平均粒径の小さな第1の磁性粉末が充填されて、密度を向上することができる。すなわち、HDDR処理によって得られる異方性の高い磁性粉末の磁気的な特性と密度向上の効果とが相俟って、特に保磁力と角型に優れた希土類ボンド磁石を得ることができる。このような希土類ボンド磁石は、モータなどの各種機器に好適に用いられる。
【0051】
本明細書において、角型に優れる希土類ボンド磁石とは、角型比が高い希土類ボンド磁石を意味する。「角型比」とは、(Hk/HcJ)×100で算出される値(%)である。ここで、HcJは保磁力であり、Hkは磁気ヒステリシスループ(4πI−Hカーブ)の第2象限における磁化がBr(残留磁束密度)の90%となるときの磁界強度である。この角型比は、外部磁界の作用や温度上昇による減磁のし易さを表すパラメータであり、角型比が小さいと、減磁の程度が大きい性質があることを意味する。したがって、角型比は高いことが好ましい。
【0052】
次に、本発明の製造方法の別の実施形態について説明する。本実施形態の製造方法は、
(1)軽希土類元素を含む合金に水素化分解・脱水素再結合法による処理を施して、平均粒径が1〜30μmである第1の磁性粉末と、平均粒径が80〜200μmである第2の磁性粉末と、を調製するHDDR処理工程、
(2)第1の磁性粉末、第2の磁性粉末、及び重希土類元素を含む拡散材、を含む混合粉末を混合する混合工程、
(3)混合粉末を加熱して、重希土類元素を第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末の粒内に拡散させる拡散工程、
(4)混合粉末を磁場中成形して成形体を作製する成形工程、及び
(5)成形体に樹脂を含浸して樹脂を硬化することにより希土類ボンド磁石を得る硬化工程、を有する。
【0053】
本実施形態の製造方法は、(3)拡散工程と(4)成形工程が、上記実施形態の製造方法と異なっている。なお、(1)HDDR処理工程、(2)混合工程及び(5)硬化工程は、上記実施形態の製造方法と同じであるため、ここでは説明を省略し、(3)拡散工程と(4)成形工程について説明する。
【0054】
(3)拡散工程では、混合工程によって得られた混合粉末を、拡散材に含まれる重希土類元素が磁性粉末の粒内に拡散することができる温度に加熱する。具体的には、混合粉末を減圧下又はアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下、好ましくは600〜950℃、より好ましくは700〜950℃、さらに好ましくは750〜850℃で1〜12時間保持する。このような条件で加熱することにより、重希土類元素がHDDR処理を施して得られた磁性粉末の粒子内部に拡散し、拡散材から拡散した重希土類元素濃度が高い外層と、該外層に囲まれる重金属元素濃度が低い内層とを有する粒子が形成される。これが希土類ボンド磁石全体の保磁力の向上に寄与する。
【0055】
また、HDDR処理された磁性粉末には微細なクラックが存在するが、このクラックに拡散材が侵入してクラックを埋めることができる。このため、最終的に得られる希土類ボンド磁石の耐酸化性及び強度も向上させることができる。
【0056】
拡散工程において、混合粉体の加熱温度を高くし過ぎたり加熱時間を長くし過ぎたりすると、粒成長が進行したり、HDDR処理を施して得られた異方性の磁性粉末の相分解が生じたりして、高い磁気特性が損なわれる可能性がある。一方、混合粉体の加熱温度を低くし過ぎたり加熱時間を短くし過ぎたりすると、重希土類元素の拡散が十分に進行しない傾向がある。
【0057】
(4)成形工程では、拡散工程で拡散処理を施した混合粉末を磁場中成形して所望の形状を有する成形体を作製する。磁場中成形は、磁場を印加しながら行い、これにより異方性を有する磁性粉末を所定方向に配向させた状態で固定する。成形は、例えば、機械プレスや油圧プレス等の圧縮成形機を用いた圧縮成形により行うことができる。具体的には、混合粉末を金型キャビティ内に充填した後、充填された粉末を上パンチと下パンチとの間で挟むようにして加圧することによって、混合粉末を所定形状に成形することができる。磁場中成形時の加圧は好ましくは2〜12ton/cmとし、配向磁界は好ましくは800〜2000kA/mである。
【0058】
成形方法としては、上述のように混合粉末をそのまま成形する乾式成形のほか、混合粉末を油等の溶媒に分散させたスラリーを成形する湿式成形を適用することもできる。成形工程の後、(5)硬化工程を行うことによって、希土類ボンド磁石を得ることができる。本実施形態でも、平均粒径が互いに異なる第1の磁性粉末と第2の磁性粉末とを用いているため、成形時に平均粒径の大きな第2の磁性粉末の間に平均粒径の小さな第1の磁性粉末が充填されることとなり、成形体及び希土類ボンド磁石の密度を向上することができる。すなわち、HDDR処理によって得られる異方性の高い磁性粉末の磁気的な特性と密度向上の効果とが相俟って、特に保磁力と角型に優れた希土類ボンド磁石を得ることができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
本発明の内容を実施例及び比較例を用いて以下に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1〜7、比較例1〜4)
[希土類ボンド磁石の作製]
ストリップキャスト法によって、主成分としてNdFe14Bを含有する、下記組成を有する合金を調製した。
【0062】
Nd:28.0質量%
B : 1.1質量%
Ga: 0.35質量%
Nb: 0.30質量%
Cu: 0.03質量%
Fe及び不可避不純物:残部
【0063】
この合金は、微量の不可避不純物(原料化合物全体で0.5質量%以下)を含んでいた。この合金を、減圧雰囲気中(1kPa以下)、1000〜1200℃の温度範囲で24時間保持した(均質化熱処理)。均質化熱処理で得られた生成物(主成分:NdFe14B)をスタンプミルで粉砕し、篩分けを行って、原料粉末(粒径1〜2mm)を得た。
【0064】
この原料粉末を、モリブテン製の容器に充填し、赤外線加熱方式を有する管状熱処理炉に装填し、以下の条件で水素化分解・脱水素再結合法による処理(HDDR処理)を施した。
【0065】
まず、水素ガス雰囲気下、水素分圧100〜300kPa、温度100℃で原料粉末を2時間保持する水素吸蔵工程を行った。続いて、炉内の水素分圧を下げるとともに炉内温度を昇温し、水素ガスを吸蔵した原料粉末を、水素分圧40kPa、温度850℃の条件で1.5時間保持する水素化分解工程を行った。
【0066】
その後、炉内850℃に維持しながら水素圧力を低減して脱水素再結合工程を行った。これによって、HDDR処理された異方性の磁性粉末(NdFe14B粉末)を得た。得られた磁性粉末を、窒素ガス雰囲気中でセラミックミルを用いて粉砕し、自動篩い機を用いて篩い分けを行った。これによって、下記の粒径範囲を有する磁性粉末(1)〜(3)に分級した。さらに、磁性粉末(1)〜(3)に分級されなかった磁性粉末を窒素ガス雰囲気中でジェットミルを用いて粉砕し、自動篩い機を用いて篩い分けを行った。これによって、下記の粒径範囲を有する磁性粉末(4)、(5)に分級した。なお、平均粒径は、市販のレーザー回折式の粒度分布計を用いて測定される体積平均粒子径[d(50)]である。
【0067】
磁性粉末(1): 212μm> (セラミックミルにて粉砕、平均粒径:122μm)
磁性粉末(2): 150μm> (セラミックミルにて粉砕、平均粒径:88μm)
磁性粉末(3): 53μm> (セラミックミルにて粉砕、平均粒径:40μm)
磁性粉末(4): 22μm> (ジェットミルにて粉砕、平均粒径:15μm)
磁性粉末(5): 10μm> (ジェットミルにて粉砕、平均粒径:5μm)
【0068】
次に、上記磁性粉末(1)〜(5)とは別に、以下の通りにして重希土類化合物の粉末を調製した。まず、Dy粉末を水素ガス雰囲気下、350℃で1時間加熱して水素を吸蔵させた。続いて、水素を吸蔵したDy粉末をアルゴンガス雰囲気下にて600℃で1時間加熱することによりDy水素化物を得た。得られたDy水素化物は、X線回折測定により、DyHであることを確認した。得られたDyH粉体をエタノール溶液に入れてボールミル粉砕を行い、平均粒径が3μmのDyH粉末とした。このようにして得られたDyH粉末を、以下の工程で拡散材として用いた。
【0069】
平均粒径が互いに異なる5種類の磁性粉末(1)〜(5)から1種類又は2種類の磁性粉末を選択し、選択した磁性粉末と拡散材(重希土類化合物の粉末)とを表1に示す質量比率で配合した。そして、磁性粉末と拡散材をスペックスミキサーで混合して混合粉末を調製した。表1中、磁性粉末(1)〜(5)の質量比率は、磁性粉末の合計量に対する各磁性粉末の比率を示し、希土類化合物の質量比率は、磁性粉末の合計量に対する拡散材の比率を示す。
【0070】
混合粉末全量に対し、ステアリン酸亜鉛を0.1質量%添加して混合した後、成形圧力5.0t/cm、配向磁界1.2Tの条件で磁場中成形を行って、図2に示すような直方体形状の成形体を得た。この成形体を、アルゴンガス雰囲気下、900℃で30分加熱して、拡散材に含まれるDyを磁性粒子(NdFe14B粒子)の内部に拡散させた。
【0071】
熱処理後の成形体をトルエンの入った容器と共に真空ベルジャー内に入れ、成形体をトルエンに浸漬して容器内の圧力を10kPa以下の状態で30分間保持する脱泡処理を行った後、常圧に戻した。
【0072】
上記成形体とは別に、トルエンにエポキシ樹脂を溶解させてエポキシ樹脂溶液(エポキシ樹脂含有量:50質量%)を調製した。真空ベルジャーに、上述のエポキシ樹脂溶液と、脱泡処理した成形体とを順次投入した。真空ベルジャー内を10kPa以下に減圧して60分間保持し、成形体内にエポキシ樹脂溶液を浸透させた。
【0073】
エポキシ樹脂溶液から成形体を取り出し、遠心分離機によって成形体表面に付着したエポキシ樹脂溶液を除去した。その後、エポキシ樹脂溶液を含浸させた成形体を、温度150℃の恒温槽中(雰囲気:窒素ガス)に5時間保持し、成形体中のエポキシ樹脂を硬化させ、各実施例及び各比較例の希土類ボンド磁石を得た。表1に示すように、場合により、同一の材料を用いて同一の条件で2つの希土類ボンド磁石を作製した(表1では、(1)、(2)の番号を付して、2つの希土類ボンド磁石を示した。)。得られた希土類ボンド磁石の寸法と質量を測定し、希土類ボンド磁石の密度を求めた。希土類ボンド磁石の密度を表1に示す。
【0074】
[磁気特性の評価]
各実施例及び各比較例で得られた希土類ボンド磁石の磁気特性を、B−Hトレーサーを用いて測定した。測定結果を表1に示す。なお、角型比は、HcJ(保磁力)とHkとを用いて、下記式(1)によって求めた。
【0075】
角型比(%)=Hk/HcJ×100 (1)
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示すように、互いに異なる所定の平均粒径を有する2種類の磁性粉末と拡散材とを用い、熱処理を施して得られた実施例1〜7の希土類ボンド磁石は、高い保磁力を維持しつつ高い優れた角型を有することが確認された。
【0078】
(実施例8〜11、比較例5〜12)
実施例1と同様にして、HDDR処理が施された磁性粉末を調製した。そして、磁性粉末を分級して、下記の粒径範囲を有する磁性粉末(6)を得た。また、実施例1と同様にして、拡散材(平均粒径が3μmのDyH粉末)を調製した。
磁性粉末(6):212μm> (平均粒径:116μm)
【0079】
磁性粉末(4)、磁性粉末(6)、及び拡散材を、表2に示す質量比率で配合し、スペックスミキサーで混合して混合粉末を調製した。そして、この混合粉末を用い、実施例1と同様にして、表2に示す各実施例及び各比較例の希土類ボンド磁石を作製した。表2に示すように、場合により、同一の材料を用いて同一の条件で2つの希土類ボンド磁石を作製した(表2では、(1)、(2)の番号を付して、2つの希土類ボンド磁石を示した。)。
【0080】
表2中、磁性粉末(4)及び磁性粉末(6)の質量比率は、磁性粉末(4)及び磁性粉末(6)の合計量に対する各磁性粉末の比率を示し、拡散材の質量比率は、磁性粉末(4)及び磁性粉末(6)の合計量に対する拡散材の比率を示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に示すように、互いに異なる所定の平均粒径を有する2種類の磁性粉末と拡散材とを用い、熱処理を施して得られた実施例8〜11の希土類ボンド磁石は、高い保磁力を維持しつつ高い優れた角型を有することが確認された。一方、1種類の磁性粉末を用いた比較例6〜12及び拡散材を用いなかった比較例5,10では、優れた角型を有する希土類ボンド磁石を得ることができなかった。
【0083】
(実施例12〜22、比較例13〜15)
磁性粉末(4)、磁性粉末(6)、及び拡散材を、表3に示す質量比率で配合し、スペックスミキサーで混合して混合粉末を調製した。混合粉末全量に対し、ステアリン酸亜鉛を0.1質量%添加して混合した後、表3に示す成形圧力及び配向磁界1.2Tの条件で、磁場中成形を行って、図2に示すような直方体形状の成形体を得た。この成形体を用い、実施例1と同様にして、表3に示す各実施例及び各比較例の希土類ボンド磁石を作製した。表3に示すように、同一の材料を用いて同一の条件で2つの希土類ボンド磁石を作製した(表3では、(1)、(2)の番号を付して、両方の希土類ボンド磁石の特性を示した。)。
【0084】
表3中、磁性粉末(4)及び磁性粉末(6)の質量比率は、磁性粉末(4)及び磁性粉末(6)の合計量に対する各磁性粉末の比率を示し、拡散材の質量比率は、磁性粉末(4)及び磁性粉末(6)の合計量に対する拡散材の比率を示す。
【0085】
【表3】

【0086】
表3に示すとおり、各実施例の希土類ボンド磁石は、成形圧力が低くなっても、高い保磁力を維持しつつ優れた角型を有することが確認された。
【符号の説明】
【0087】
10…希土類ボンド磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽希土類元素を含み、水素化分解・脱水素再結合法によって得られた磁性粉末と、重希土類元素を含む拡散材と、を含む混合粉末を、磁場中成形して成形体を作製する第1工程と、前記成形体に樹脂を含浸して前記樹脂を硬化することにより希土類ボンド磁石を得る第2工程と、を有し、
前記第1工程における前記磁性粉末は、平均粒径が1〜30μmである第1の磁性粉末と、平均粒径が80〜200μmである第2の磁性粉末と、の混合物であり、
前記第1工程において、前記混合粉末及び前記成形体の少なくとも一方を加熱して、前記重希土類元素を前記第1の磁性粉末及び前記第2の磁性粉末の粒内に拡散させる希土類ボンド磁石の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程における前記磁性粉末全体に対する前記第1の磁性粉末の質量比率が5〜70質量%である、請求項1に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程における前記混合粉末に対する前記拡散材の質量比率が0.5〜5質量%である、請求項1又は2に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−176014(P2011−176014A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37385(P2010−37385)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】