説明

帯電部材、帯電装置及び画像形成装置

【課題】 その表面にトナーが付着しても被帯電体表面に帯電ムラが生じることを抑制することができる帯電部材、並びに、これを備えた帯電装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】 被帯電体である感光体2表面を帯電させる帯電部材としての帯電ローラ3の最表面層である表面層203の樹脂材料に対して、トナーを構成する材料である表面処理を行ったシリカを分散させることで、転写残トナーが付着したとしてもその影響を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被帯電体を帯電させる帯電部材、これを備えた帯電装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プロセスを採用した画像形成装置では、潜像担持体である感光体表面を被帯電体表面として帯電させる帯電手段を備えている。帯電手段としては、コロナ放電を利用した非接触型の帯電装置が知られている。このような非接触型の帯電装置では、オゾンや窒素酸化物が大量に発生する、高圧電源が必要、周辺の部材と電気的に絶縁するためのスペースが必要などの不具合が生じる。
このような不具合を解決する帯電装置として、特許文献1や特許文献2のようにローラ状の帯電部材である帯電ローラを感光体表面に対して接触または近接させて、感光体表面を帯電させる帯電装置が知られている。
しかし、帯電ローラを感光体に接触または近接させて帯電を行う帯電装置は、感光体上の転写残トナーが付着するという問題がある。転写残トナーが帯電ローラに付着すると、帯電ローラ表面の抵抗値が不均一となる。これにより感光体と帯電ローラとの放電が不均一となり、感光体に帯電ムラが生じ、画像上に黒スジや白スジと呼ばれる異常画像となる不具合が生じる。
特許文献1では、感光体表面に接触する帯電ローラの表面層にフッ素樹脂を含有させることで、帯電ローラの表面に転写残トナーが付着しにくいようにしている。
また、特許文献2では、感光体表面に近接する帯電ローラの表面層をアクリル骨格中にフッ素成分とポリシロキサンオリゴマーを含有するハイブリッド樹脂で構成することで、帯電ローラの表面に転写残トナーが付着しにくいようにしている。
また、帯電ローラを感光体表面に接触させる帯電装置として、特許文献3では、帯電ローラの表面層に導電性フィラーと表面未処理のシリカとを有する水系樹脂を含有させている。これにより、帯電ローラ表面のトナーに対する非粘着性を向上させ、帯電ローラの表面層に転写残トナーが付着しにくいようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開平07−134467号公報
【特許文献2】特開2004−109528号公報
【特許文献3】特開2004−245863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように帯電ローラに転写残トナーが付着しにくいようにすることで、帯電ローラに転写残トナーが付着することによって帯電ローラの表面の抵抗値が不均一となることを抑制しているが、帯電ローラへの転写残トナーの付着を完全に防止することは困難である。
そして、帯電ローラに転写残トナーが付着してしまうと、転写残トナーが付着した部分と付着していない部分とで抵抗値が異なり、帯電ローラの表面の抵抗値が不均一となってしまう。帯電部材である帯電ローラの表面の抵抗値が不均一となると、感光体と帯電ローラとの放電が不均一となり、被帯電体である感光体に帯電ムラが生じることになる。
【0005】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、その表面にトナーが付着しても被帯電体表面に帯電ムラが生じることを抑制することができる帯電部材、並びに、これを備えた帯電装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、帯電部材表面と被帯電体表面との間で放電を生じさせ、該被帯電体表面を帯電させる帯電部材において、該被帯電体表面と対向する該帯電部材の最表面層は、トナーを構成するトナー構成材料が含有されていることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の帯電部材において、上記最表面層に含有される上記トナー構成材料は、トナーに外添処理されるシリカであることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の帯電部材において、上記最表面層に含有される上記トナー構成材料は、トナーに外添処理されるシリカと同じ表面処理が施されたシリカであることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3の帯電部材において、該帯電部材は環境による硬度の変化が小さい導電層を有し、該導電層上に上記最表面層を形成することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1、2、3または4の帯電部材において、該帯電部材は回転可能なローラ形状であり、上記被帯電体表面に対して接触または近接して用いることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、被帯電体表面に対向配置される帯電部材を具備し、該帯電部材を放電させて該被帯電体表面を帯電する帯電装置であって、該帯電部材として、請求項1、2、3、4または5の帯電部材を用いることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の帯電装置において、上記帯電部材と上記被帯電体表面とを非接触に維持するスペーサを備えることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、潜像担持体と、該潜像担持体を被帯電体として帯電する帯電手段と、該潜像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、該潜像担持体表面に形成された潜像をトナー像化する現像手段とを備えた画像形成装置において、該帯電手段として、請求項6または7の帯電装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の画像形成装置において、上記潜像担持体表面をクリーニングする潜像担持体クリーニング手段を有し、該潜像担持体クリーニング手段は該潜像担持体表面に接するファーブラシと、該ファーブラシに接する回収ローラと、該回収ローラに接触するスクレーパ部材とを備え、該ファーブラシまたは該回収ローラに電圧を印加し、電界を用いて該潜像担持体表面からトナーを回収することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項8または9の画像形成装置において、使用するトナーの円形度が0.96以上であることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項8、9または10の画像形成装置において、上記潜像担持体の表面層がアモルファスシリコンからなることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項8、9、10または11の画像形成装置において、上記潜像担持体の表面層にフィラーを分散したことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項8、9、10、11または12の画像形成装置において、上記潜像担持体に架橋型電荷輸送材料を使用したこと特徴とする画像形成装置。
また、請求項14の発明は、請求項8、9、10、11、12または13の画像形成装置において、上記潜像担持体の少なくと表面層がポリアリレート樹脂からなることを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項8、9、10、11、12、13または14の画像形成装置において、上記潜像担持体を複数備え、これら複数の該潜像担持体それぞれに異なる色のトナー像を形成し、該異なる色のトナー像を転写体に順に重ね合わせてカラー画像を得ることを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、請求項8、9、10、11、12、13または14の画像形成装置において、上記潜像担持体一つに対して上記現像手段としての現像装置を複数備え、これら複数の該現像装置がそれぞれに異なる色トナーを備え、該異なる色のトナーを順次用いて該潜像担持体上にトナー像を形成することを特徴とするものである。
また、請求項17の発明は、請求項8、9、10、11、12、13、14、15または16の画像形成装置において、上記帯電装置と上記潜像担持体とが、一体かつ本体に対して着脱可能に構成されたプロセスカートリッジ内に設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
上記請求項1乃至17の帯電部材においては、被帯電体表面と対向する帯電部材の最表面層は、トナーを構成するトナー構成材料が含有されている。このような帯電部材を用いて画像形成を行ったところ、帯電部材表面が汚れた場合も、画像上に黒スジや白スジと呼ばれる異常画像が発生しなかった。異常画像が発生しなかった正確な理由は不明だが、帯電部材自身の最表面と付着物が同一の材料のため、付着物がある部分とない部分とで電気特性の変化が小さく、付着物がある部分とない部分で放電の様子が変化しないと考えられる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1乃至17の発明によれば、付着物のある部分とない部分とで放電の様子が変化しないため、帯電部材の表面にトナーが付着しても被帯電体表面に帯電ムラが生じることを抑制することができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[実施形態1]
以下、本発明を、画像形成装置である粉体現像電子写真複写機(以下「複写機という」)に適用した一実施形態(以下、実施形態1という)について説明する。
図1は、実施形態1に係る複写機の画像形成部の一例として、タンデム型フルカラー複写機の画像形成部1の概略構成図である。駆動ローラ6aと転写ローラ6bに周回可能に張架した無端ベルト状で、複数の潜像担持体それぞれから異なる色のトナー像が転写される転写体である中間転写ベルト6を備えている。この中間転写ベルト6と対抗する位置にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)という4色のトナー像を形成する4つの潜像担持体である感光体2からなる作像ユニット10が配設してある。
また、4つの作像ユニット10との対抗部から中間転写ベルト6の表面移動方向下流側には、二次転写ローラ対である転写ローラ6bと二次転写ローラ7が設けてある。
【0010】
図2は作像ユニット10の一つの概略構成図である。
作像ユニット10の感光体2は表面に静電潜像を形成するもので、感光体2の周囲には、次に述べるものが配設されている。感光体2の表面を一様に帯電させる帯電部材である帯電ローラ3、感光体2の表面に像光を照射して潜像を形成する露光手段である露光装置4、感光体2上に形成した潜像にトナーを選択的に転移させて、トナー像を形成する現像手段である現像装置5が配置されている。
現像装置5との対抗部よりも感光体2の表面移動方向下流側には、感光体2に中間転写ベルト6を挟んで対向し、感光体2上のトナー像を中間転写ベルト6に転写する転写バイアスを印加する一次転写ローラ9が設けている。
一次転写ローラ9には図示しないバイアス回路により、トナー像を転写するのに必要な電圧を印加する。
また、感光体2の表面上に保護剤を供給する保護物質供給手段としての保護剤塗布部16には、保護物質収容部として保護剤を固形に固めた固形保護剤130と、固形保護剤130と感光体2表面とに接触し、ファーブラシからなる保護物質塗布部材としての保護剤塗布ブラシ160を備えている。また、固形保護剤130を保護剤塗布ブラシ160に押し当てるための押圧ばね131を備えている。
そして、保護剤塗布ブラシ160の感光体2表面移動方向下流側には転写後の感光体2上の残トナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレード13が配置されている。そして、クリーニングブレード13と帯電ローラ3との間には、除電部8が設けてある。
【0011】
次に画像形成の動作について説明する。
感光体2を図1中時計方向に回転駆動して、感光体2を帯電ローラ3で一様に帯電した後、露光装置4により画像データで変調されたレーザを照射して感光体2に静電潜像を形成する。静電潜像の形成された感光体2に現像装置5でトナーを付着させて現像する。
現像装置5で感光体2上に形成されたトナー画像は一次転写ローラ9によって、中間転写ベルト6への転写がなされる。このような画像形成が各作像ユニット10Y、10M、10C、10BKで行われ、中間転写ベルト6上にフルカラー画像が形成される。
また、実施形態1の複写機は、複数枚の記録紙Pを収納する不図示の給紙カセットを備えており、不図示の給紙ローラにより1枚ずつ記録体搬送路に搬送され、不図示のレジストローラ対の位置に達する。レジストローラ対まで達した記録紙Pは、中間転写ベルト6上のフルカラー画像の位置にあわせて、レジストローラ対でタイミング調整された後、転写ローラ6bと二次転写ローラ7との間に送り出される。
【0012】
中間転写ベルト6上に形成されたフルカラー画像は、二次転写部である転写ローラ6bと二次転写ローラ7との間に搬送されてきた記録紙Pに転写される。フルカラー画像が転写された記録体Pは定着部(不図示)に搬送される。
定着部は、内蔵ヒータにより所定の定着温度に加熱される定着ローラと、定着ローラに所定圧力で押圧される加圧ローラとを備えている。二次転写部から搬送されてきた記録紙Pを加熱、加圧して、記録紙P上のトナー画像を記録紙に定着させた後、不図示の排紙トレー上に排出する。
【0013】
一方、一次転写ローラ9との対抗部でトナー画像を中間転写ベルト6に転写した感光体2はさらに回転し、クリーニングブレード13により感光体2の表面に残留するトナーを除去される。作像ユニット10の感光体2はトナーを除去された後、除電部8で除電され、帯電ローラ3で一様に帯電されて、上記同様に次の画像形成を行う。
なお、クリーニング手段としてはクリーニングブレード13のように、ブレードで感光体2上の残留トナーを掻き落とすものに限るものではなく、例えばファーブラシで感光体2上の残留トナーを掻き落とすものであってもよい。
また、帯電部材である帯電ローラ3は、感光体2に対して微小なギャップを設けて配置された硬質の導電性ローラからなる。
【0014】
ここで従来の帯電手段の問題点について説明する。
電子写真プロセスの帯電手段としては感光体を一様に帯電させる帯電手段としてコロナ放電を利用する方法が知られている。この方法は、「オゾンが大量に発生する」、「窒素酸化物が大量に発生する」、「高圧原電が必要となる」、及び、「電気絶縁のためにスペースを必要とする」等の不具合点がある。
コロナ放電を用いた帯電手段の不具合点を解決する方法として、帯電部材を感光体に接触させて感光体を帯電させる接触帯電装置が提案、実用化されており、コロナ帯電器の課題を大幅に解決している。具体的には、ローラ状の帯電部材を感光体上に接触させ、従動させて感光体の帯電を行うものが知られている。
この方法の場合、感光体との接触を良好にするために、帯電部材である帯電ローラはゴム、ウレタン、エラストマーなどの材料を使用する必要がある。これらの材料は汚れが付着しやすい。このため、上述の特許文献1のように、帯電ローラは多層構造となり、最表面は表面改質やチューブ被覆などを行い、耐汚れ性を向上させているものがある。しかし、像担持体との接触性を重視する必要があり、最表面の材料は材料の選択の幅が限られており、さらに、十分な耐汚れ性が得られない。
【0015】
コロナ放電を用いた帯電手段の不具合や、接触型の帯電手段の不具合を軽減する方法として、スペーサ部材を用いて、帯電部材である帯電ローラを感光体表面に対して一定のギャップを設け近接配置させる方法がある。このような帯電手段としては、特開2001−194868号公報では、帯電ローラの弾性部材の両端部に、フィルム材を周方向に巻き付けて貼着し、帯電ローラと感光体の間に一定の微少ギャップを形成している。そして、加圧プリングによる帯電ローラの加圧で、帯電ローラの弾性部材が圧縮変形することによって、その外周面の形状に沿って変形するフィルム材の帯電ローラ径方向の最大変形量が、フィルム材の厚さよりも小さくなるようにしている。それにより、帯電ローラの弾性部材と感光体の表面との間にはギャップが形成されるので、弾性部材の両端部を除いた部分となる画像形成領域に対応する部分は、感光体の表面に接触しない。
近接配置する非接触ローラ帯電では、感光体との接触状態を良好にする必要がない。このため、帯電部材である帯電ローラの最表面に用いる材料の自由度は、接触型のローラの場合に比べて高い。このため、耐汚れ性のある材料の選択の幅が広くなる。このように非接触の帯電ローラで耐汚れ性のある材料を用いたものとしては、上述の特許文献2に記載のものがある。しかし、耐汚れ性のある材料を用いても帯電ローラに汚れは付着してしまう。
【0016】
また、帯電ローラにトナーが付着することを抑制する帯電ローラとして、上述の特許文献3のように、帯電ローラの表面層にシリカを含有させたものがある。この特許文献3では、最表面層の電性樹脂層が導電性フィラーと表面未処理シリカを有する水系樹脂を含有することを特徴とする帯電部材としている。しかし、初期的には、帯電ローラの表面にトナー粒子や紙粉等が付着したり、固着したりするのを抑制できるが、寿命の長い機械の場合、帯電ローラにトナーなど(特に、トナーに外添処理されたシリカ)が固着し、像担持体を均一に帯電することができなくなる。また、近年に用いられるトナーは、高画質な画像形成を行うなどの理由により、外添処理する外添剤の量が多い場合がある。この場合も、特許文献1にある方法では、十分な効果を得ることができない。
【0017】
なお、上述の帯電部材である帯電ローラの汚れの多くは、転写残トナーである。そして、転写残トナーに含まれるシリカが帯電ローラに付着すると出力された画像に縦スジの不良画像が発生する。この縦スジの不良画像は低温低湿環境で顕著であった。
【0018】
以下、低温低湿環境での縦スジ発生のメカニズムの検証結果について、図19を用いて説明する。
低温低湿環境では、感光体上の転写残トナーをクリーニングするクリーニングブレードの反発弾性が低下し、転写残トナーに含まれるシリカはクリーニングされ難くなる。クリーニングされ難い状態で、クリーニングブレードの接触箇所を部分的にシリカがすり抜けると、図19(a)に示すように、クリーニング不良として感光体表面でシリカが縦スジ状に成長してフィルミングする。
感光体上で縦スジ状となったシリカは、図19(b)に示すように帯電ローラとの対抗部で帯電ローラ側に移動し、帯電ローラ表面でフィルミングする。
帯電ローラ表面でシリカがフィルミングすると図19(c)に示すようにシリカ付着部が高抵抗部となる。高抵抗部となったシリカ付着部では放電効率が低下し、感光体表面上でシリカ付着部に対向する箇所と、シリカ未付着部に対向する箇所とで放電効率に差が発生し、帯電ムラが生じる。放電効率が低下したシリカ付着部に対向する箇所では帯電電位が低くなる。感光体の帯電電位にもよるが約10〜20[V]程度の相対的電位差となる。
このような帯電電位に差がある感光体を用いて、ハーフトーンの画像形成を行ったところ、シリカ付着部に対応する位置の画像濃度が濃くなる縦スジ状の不良画像が発生した。
なお、上述の説明では、縦スジ画像が顕著に発生する低温低湿環境における縦スジの発生について説明したが、低温低湿環境以外の状態であっても、程度の差はあるものの同様の不具合が発生すると考えられる。
【0019】
次に、実施形態1に適用した帯電部材としての帯電ローラ3について説明する。図3は、帯電ローラ3を備えた近接型帯電装置の概略図である。
帯電ローラ3は、導電性基体201とその周囲の抵抗層202を備えている。導電性基体201は、直径が4〜20[mm]、のステンレス綱の円筒部材である。導電性基体201は、導電性の高い金属であるアルミニウムや体積抵抗率が10[Ω・cm]オーダー以下の導電性樹脂を用いて、軽量化を図っても良い。
また、抵抗層202は、導電性材料をABS樹脂などに練り込んだ高分子材料からなる。導電性材料としては、金属イオン錯体、カーボンブラック、イオン系分子などがある。
例えば、抵抗層202が硬質の樹脂からなる場合、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50[重量%]及びABS樹脂(GR−0500、電気化学工業株式会社製)50[重量%]の混合物100[重量部]に対し、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂株式会社製)を4.5[重量部]加え、これを220[℃]で溶融混練した樹脂組成物を用いる。その他、均一な帯電を行うことが可能な材料を用いても良い。
【0020】
そして、抵抗層202の外側の最表面には、耐汚れ性の高い表面層203がある。表面層203は、樹脂材料に導電性材料とシリカを練りこんで抵抗を調整している。
表面層203の組成材料については、製膜性が良好であるという点から樹脂組成物が好適である。このような樹脂組成物に用いられる樹脂材料としては、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリビニルブチラール樹脂が非粘着性に優れ、帯電ローラ3におけるトナーの付着を有効に防止するので好ましい。
さらに、樹脂材料に対して各種の導電性材料(カーボン、金属酸化物等)を分散させることによって、表面層203の抵抗値を調整する。この表面層203の抵抗値は、抵抗層202の抵抗値よりも大きくなるように調整され、これにより感光体2の欠陥部への電圧集中、異常放電(リーク)が回避される。ただし、表面層203の抵抗値を大きくし過ぎると帯電効率が低下するため、表面層203と抵抗層202との抵抗値の単位の差が10[Ωcm]以下であることが好ましい。
【0021】
そして、表面層203の樹脂材料に対して、トナーを構成する材料を分散させることで、転写残トナーが付着したとしてもその影響を抑制することができる。帯電ローラ3に付着する汚れ物質を分析するとシリカが多く検出されるため、表面層203の樹脂材料にトナーに外添されるシリカを分散させるのが良い。シリカとしては、信越化学工業製のRTS−100Aと言う処理シリカがよい。また、クラリアント製のH1303、H2000などもよい。その配合量は、5〜50[wt%]、好ましくは、10〜30[wt%]がよい。なお、表面層203は、スプレー塗装法、ディッピング法などの方法により形成する。
このように、表面層203にトナーに外添されるシリカと同じシリカを分散させることにより、転写残トナーに含まれるシリカが帯電ローラに付着したとしても、シリカが付着した部分も電気特性の変化が小さく、シリカが付着した部分としていない部分とで放電の様子が変化しないと考えられる。これにより、帯電部材である帯電ローラ3の表面が汚れた場合も、出力画像上に、画像上に黒スジや白スジと呼ばれる異常画像が現れない。
なお、帯電部材表面に、トナーに外添処理されるシリカと同じ表面処理を施したシリカを含有しても、同様の効果を得ることができると考えられる。表面処理としては、例えば、結合の末端をメチル基で終端するものがあげられる。
また、表面層203の樹脂材料に対して、トナーに由来する材料を分散させることで、より高い耐汚れ性を得ることも期待できる。
【0022】
また、抵抗層202としては環境による硬度の変化が小さいもので、かつ、硬質の樹脂を用いる。表面層203の内側にある抵抗層202の弾性が大きいと、シリカなどの物質を含有する最表面層との密着性が悪くなる。密着性が悪くなると、抵抗層202と表面層203との間に微小なボイドが形成され、異常放電が発生し、感光体2を均一に帯電することができなくなると言う不具合が生じる。抵抗層202としては環境による硬度の変化が小さいものを用いることで、シリカなどの物質を含有する表面層203との密着性を安定させることができる。
【0023】
表面層203としては、例えば、アクリルシリコン樹脂(3000VH−P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤、カーボンブラック、及びシリカ(信越化学工業製のRTS−100A、全固形分に対して25[wt%])からなる混合物(表面抵抗:2×10[Ω])により、膜厚約0.01[mm]の表面層を形成する。
また、アクリルシリコン樹脂(3000VH−P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤、カーボンブラック、及びシリカ(クラリアント製のH2000、全固形分に対して10[wt%])からなる混合物(表面抵抗:2×10[Ω])により、膜厚約0.01[mm]の表面層を形成してもよい。
【0024】
なお、表面層203としては、別途チューブ状に形成し、抵抗層202にあとから被せても良い。
例えば、チューブは、ポリアミド樹脂(ダイセルヒュルス社製)、カーボンブラック(全固形分に対して、10[wt%])、及びシリカ(信越化学工業製のRTS−100A、全固形分に対して25[wt%])からなる混合物(抵抗;3×1010[Ωcm])を押出成形にてチューブ状に成形後、圧入にて抵抗層202上に被せた。チューブに用いる樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂などがある。
さらに、チューブを用いる場合、抵抗層202は、硬質の樹脂以外にも、弾性体(ゴム、エラストマー、ウレタン)、発泡体(ウレタン)、ブラシ(導電性ナイロンブラシ、導電性PETブラシ)等を用いても、相性良く、ローラを作成可能である。
【0025】
帯電ローラ3は、その表面が感光体2の表面と同じ方向移動する。ここで、帯電ローラ3は、感光体2と共に回転しないで静止した状態のものでも良い。帯電ローラ3は、その長手方向(軸方向)の寸法が最大画像幅A4横(約290[mm])よりも少し長く設定されている。帯電ローラ3は、その長手方向両端部にスペーサが設けてあり、これらスペーサを感光体2両端部の非画像形成領域に当接させる。これにより、感光体2表面の被帯電面と帯電ローラ3表面の帯電面との間の空隙Hを、その最近接部での距離が5〜100[μm]になるように保持している。この最近接距離は、さらに好ましくは、25〜65[μm]に設定すると良い。なお、本実施形態1では、55[μm]に設定した。
帯電ローラ3には、帯電用の電源が接続されている。これにより、感光体2表面の被帯電面と、帯電ローラ3表面の帯電面との間の空隙Hで放電により、被帯電面を均一に帯電する。印加電圧バイアスは、DC電圧にAC電圧を重畳した電圧波形を用い、AC電圧のピーク間電圧は帯電開始電圧の2倍以上にするのが良い。また、必要に応じて、DC電圧、好ましくは定電流方式の電圧を用いても良い。
【0026】
図4は、実施形態1の感光体2と帯電ローラ3との微小ギャップの維持方法の一例を示す図である。スペーサ302は、帯電ローラの両端部にフィルムを巻きつけて、スペーサ302とした。このスペーサ302は、感光体2の感光面に接触させ、帯電ローラ3と感光体2の画像領域にある一定の微小ギャップHを得るようになっている。印加バイアスは、AC重畳タイプの電圧を印加して、帯電ローラ3と感光体2との微小ギャップHに生じる放電により、感光体2を帯電させる。さらに、軸である導電性基体201をスプリング303などで加圧することで、微小ギャップの維持精度が向上する。
さらに、ギャップ部材であるスペーサ302を帯電ローラ3と一体成型にしても良い。このとき、スペーサ302は、すくなくともその表面を絶縁体にするのが良い。このようにすることにより、スペーサ302での放電をなくし、スペーサ302に放電生成物が堆積し、放電生成物に粘着性により、トナーがスペーサ302に固着し、ギャップが広がることがなくなる。
【0027】
また、ギャップ部材は、熱収縮チューブを用いてもよい。熱収縮チューブには、例えば105[℃]用のスミチューブ(商品名:F 105℃、住友化学社製)等がある。スミチューブの厚さは300[μm]で、装着する帯電部材の直径にもよるが、熱収縮チューブは50〜60[%]程度の収縮率を示し、熱収縮により0〜200[μm]程度増厚するため、帯電部材は増加分を加味した切削加工が必要となる。例えば、φ12[mm]の帯電ローラ3にスペーサ302を装着する場合には、切削深さを350[μm]とし、内径15[mm]程度の熱収縮チューブを使用すれば良い。帯電部材端部の切削部に熱収縮チューブを装着した後、帯電部材を回転させ端面より内側に向かって、120〜130[℃]の熱源で加熱しながら均一に熱収縮させることによって、帯電部材と潜像担持体間の空隙を約50μm程度に設定できる。熱融着し固定した熱収縮チューブは使用中に外れることは無いが、予防のために、端部にシアノアクリレート樹脂(例えば、アロンアルファ(商標)、シアノボンド(商標))などの液体状の接着剤を少量流し込み、固定させることができる。
【0028】
熱収縮チューブは厚みがあるのでスペーサ302にする場合は、図5に示すように段差601を取り、スペーサ302を装着する方法がある。
また、他には図6及び図7に示す方法がある。図6は抵抗層の端部を一部残して角溝602を形成し、その溝にエンドレスの伸縮性を有する角形リング状のスペーサ302を装着するものである。一方、図7は抵抗層202を、丸みを持たせて切削し丸溝603を形成し、丸形のリング状(通常Oリングと称する)のスペーサ302を装着する。端部を削り細目にして、スペーサ302を挿入しやすくするのが望ましく、また完全にカットして、接着剤で固定することも可能である。スペーサ302を切削部若しくは溝を形成した部位に装着し固定する場合には、上述した液体状接着剤の他、2液性のエポキシ樹脂などの接着剤を用いるのが望ましい。
【0029】
また、スペーサ302は、図8に示すように後から帯電ローラ3より径の太いコロ604を差し込んでもよい。コロ604の材料としては、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ABS、ポリアリレート(PAR)、PTFE、フェノール樹脂、ベークライト、テフロン(登録商標)樹脂ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリシクロへキシレン・ジメチレン・テレフタレート(PCT)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド11,12(PA11,12)、フッ素樹脂などがある。また、これらの樹脂のブレンドや、同じ樹脂でもグレードの異なるものを混合してコロ部材としてもよい。
【0030】
感光体2表面に凹凸があると、感光体2と帯電ローラ3との間に均一な放電を行えなくなる。均一な放電が行えないと強い放電が発生する部分で帯電ローラ3表面が改質され、帯電ローラ3表面に汚れが付着しやすくなる。そこで、感光体2にアモルファスシリコンを用いることで、感光体2の平滑性が劇的に向上する。これにより、感光体2と帯電ローラ3との間の放電が均一になり、強い放電に起因する帯電ローラ3表面の改質を防止することができる。
図9は、アモルファスシリコン感光体の層構成を説明するための模式的構成図である。図9(a)に示す電子写真用感光体500は、支持体501の上にa−Si:H、Xからなり光導電性を有する光導電層502が設けられている。図9(b)に示す電子写真用感光体500は、支持体501の上に、a−Si:H、Xからなり光導電性を有する光導電層502と、アモルファスシリコン系表面層503とから構成されている。図9(c)に示す電子写真用感光体500は、支持体501の上に、a−Si:H、Xからなり光導電性を有する光導電層502と、アモルファスシリコン系表面層503と、アモルファスシリコン系電荷注入阻止層504とから構成されている。図9(d)に示す電子写真用感光体500は、支持体501の上に、光導電層502が設けられている。光導電層502はa−Si:H、Xからなる電荷発生層505ならびに電荷輸送層506とからなり、その上にアモルファスシリコン系表面層503が設けられている。
【0031】
また、感光体2表面の平滑性を向上するために、感光体2は表面層にフィラーを分散した有機感光体(OPC)を使用しても良い。
有機感光体(OPC)のみを用いた感光体2では、帯電ローラ3での放電で感光体2はその表面が磨耗するが、磨耗が急速に進行する場合、感光体2の表面は不均一に磨耗する場合が多い。クリーニングプロセスで摺擦し、残留トナーを回収するため、感光体2はその表面が摩耗する。このとき、感光体2の表面が柔らかく、磨耗が急速に進行すると、感光体2の表面は不均一に摩耗する場合が多い。これにより、感光体2の表面に凹凸が発生し、感光体2と帯電ローラ3との間に均一な放電を行えなくなる。均一な放電が行えないと強い放電が発生する部分で帯電ローラ3表面が改質され、帯電ローラ3表面に汚れが付着しやすくなる。 そこで、硬度に優れるフィラーを表面層に分散し、表面層を強化した有機感光体(OPC)を用いるので、経時において摩耗量が少ない為、感光体2表面に凹凸が生じにくくなる。つまり、感光体2表面の平滑性を維持することができる。よって、感光体2と帯電ローラ3との間の放電が均一になり、強い放電に起因する帯電ローラ3表面の改質を防止することができる。
【0032】
また、感光体2表面の平滑性を向上するために、感光体2は表面層にABS樹脂などの架橋型電荷輸送材料を使用しても良い。硬度に優れるABS樹脂を用いるので、経時において摩耗量が少ない為、感光体2表面に凹凸が生じにくくなる。つまり、感光体2表面の平滑性を維持することができる。よって、感光体2と帯電ローラ3との間の放電が均一になり、強い放電に起因する帯電ローラ3表面の改質を防止することができる。
【0033】
また、感光体2表面の平滑性を向上するために、感光体2は表面層にポリアリレート樹脂を使用しても良い。
感光体2の表面層にポリアリレート樹脂を用いると、クリーニングプロセスで平滑に削れ、感光体2表面に凹凸が生じにくくなる。つまり、感光体2表面の平滑性を維持することができる。よって、感光体2と帯電ローラ3との間の放電が均一になり、強い放電に起因する帯電ローラ3表面の改質を防止することができる。
【0034】
次に、図1及び図2の作像ユニット10をプロセスカ−トリッジとした構成の概略構成を図10に示す。図10において、プロセスカートリッジ20は、感光体2、帯電ローラ3を備えた帯電装置、現像装置5、クリーニングブレード13、及び保護剤塗布部16を備えている。このように、プロセスカートリッジ20は、少なくとも感光体2と帯電装置とを含んだ複数の部材を複写機本体から着脱可能に構成されている。
帯電部材である帯電ローラ3を備えたプロセスカートリッジとした場合、帯電ローラ3が転写残トナーの汚れの影響を受けやすいと、帯電ローラ3の汚れを原因としてプロセスカートリッジ20を交換することになる。プロセスカートリッジ20単位の交換を行うと、部品点数が多くなり、頻繁に交換を行うと無駄が多くなる。実施形態1のように、帯電ローラ3が転写残トナーの汚れの影響を受けにくくすることにより、プロセスカートリッジの交換回数を少なくし、無駄を削減することができる。
【0035】
次に、実施形態1で用いられる感光体2について、その一例を記す。
図11は、実施形態1の感光体2の断面を示す模式図である。図11において、感光体2は、直径30[mm]のドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。
【0036】
基層としての導電性支持体50上には、絶縁層である下引き層51が設けられている。そして、その上に感光層としての電荷発生層(CGL)52、電荷輸送層(CTL)53が設けられている。さらにその上に表面保護層54が積層されている。
【0037】
導電性支持体50としては、体積抵抗1010[Ω・cm]以下の導電性を示すものを用いることができる。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したものがある。あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016 号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体50として用いることができる。
【0038】
この他、支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、導電性支持体50として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0039】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、実施形態1の導電性支持体として良好に用いることができる。
次に感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層と電荷輸送層とからなる積層構成の場合から述べる。
【0040】
電荷発生層52は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層52には公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ、これらは有用に用いられる。これら電荷発生物質は単独でも、2種以上混合して用いることも可能である。
【0041】
電荷発生層52は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上、あるいは下引き層上に塗布し、乾燥することにより形成される。
【0042】
電荷発生層52には、必要に応じて結着樹脂中に上記電荷発生物質を分散させることができる。用いることができる結着樹脂の例としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100[重量部]に対し0〜500[重量部]、好ましくは10〜300[重量部]が適当である。結着樹脂の添加は、分散前あるいは分散後どちらでも構わない。
【0043】
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
電荷発生層52は、電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていても良い。
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
電荷発生層52の膜厚は、0.01〜5[μm]程度が適当であり、好ましくは0.1〜2[μm]である。
【0044】
電荷輸送層53は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層52上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により単独あるいは2種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0045】
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
【0046】
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
【0047】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0048】
電荷輸送物質の量は結着樹脂100[重量部]に対し、20〜300[重量部]、好ましくは40〜150[重量部]が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は解像度・応答性の点から、25[μm]以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)に異なるが、5[μm]以上が好ましい。
【0049】
溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
【0050】
次に感光層が単層構成の場合について述べる。
感光層は、前述の電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂等を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを導電性支持体50上ないし下引き層51上に塗布、乾燥することによって形成できる。電荷輸送物質を含有させずに、電荷発生物質と結着樹脂とから構成してもよい。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0051】
結着樹脂としては先に電荷輸送層で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100[重量部]に対する電荷発生物質の量は5〜40[重量部]が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190[重量部]が好ましく、さらに50〜150[重量部]であればより好ましい。
【0052】
感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。感光層の膜厚は、5〜25[μm]程度が適当である。
【0053】
実施形態1に係る感光体2においては、導電性支持体50と感光層との間に下引き層51を設けることができる。
下引き層51は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。下引き層51にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。また、これらの下引き層51は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に実施形態1の下引き層51として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。
【0054】
この他、下引き層51には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層51の膜厚は0〜5[μm]が適当である。
【0055】
感光体2の最表面層に機械的磨耗を防止するために表面保護層54を設けることも可能である。表面保護層54は、例えば耐磨耗性を向上させるためにアモルファスシリコンで表面コートしたものや、電荷輸送層のさらに表面にアルミナや酸化スズ等を分散させたものを採用することができる。
【0056】
感光体2の構成はこれまで説明した構成に限定されるものではない。導電性支持体50の上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層のみを設けた1層構成でもよい。また、導電性支持体50の上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層52と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層53とが積層された構成でもよい。また、導電性支持体50の上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層を設ける。そして、その上に更に表面保護層54を設けた構成や、導電性支持体50の上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層52と電荷輸送物質53を主成分とする電荷輸送層とを積層し、その電荷輸送層53の上に保護層を設けた構成でもよい。また、導電性支持体50の上に電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層53と電荷発生物質を主成分とする電荷発生層32とを積層し、その電荷発生層52の上に表面保護層54を設けた構成でもよい。
【0057】
次に、架橋型電荷輸送材料を使用した有機感光体2について述べる。
表面保護層54のバインダー構成として、架橋構造のものを使用している。架橋構造の形成に関しては、1分子内に複数個の架橋性官能基を有する反応性モノマーを使用し、光や熱エネルギーを用いて架橋反応を起こさせ、3次元の網目構造を形成する。この網目構造がバインダー樹脂として機能し、高い耐摩耗性を発揮する。
【0058】
電気的な安定性、耐刷性、寿命の観点から、上述の反応性モノマーとして、全部もしくは一部に電荷輸送能を有するモノマーを使用することは非常に有効な手段である。このようなモノマーを使用することにより、網目構造中に電荷輸送部位が形成され、表面保護層54としての機能を十分に発現することが可能となる。
【0059】
電荷輸送能を有する反応性モノマーとしては、同一分子中に電荷輸送性成分と加水分解性の置換基を有する珪素原子とを少なくとも1つずつ以上含有する化合物がある。また、同一分子中に電荷輸送性成分とヒドロキシル基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とカルボキシル基とを含有する化合物もある。さらに、同一分子中に電荷輸送性成分とエポキシ基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とイソシアネート基とを含有する化合物等が挙げられる。これら反応性基を有する電荷輸送性材料は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
さらに好ましくは、電荷輸送能を有するモノマーとして、電気的・化学的安定性が高いこと、キャリアの移動度が速いこと等から、トリアリールアミン構造を有する反応性モノマーが有効に使用される。
【0060】
これ以外に塗工時の粘度調整、架橋型電荷輸送層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能の重合性モノマー及び重合性オリゴマーを併用することができる。これらの重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
【0061】
また、実施形態1の感光体2では、熱または光を用いて正孔輸送性化合物の重合または架橋を行うが、熱により重合反応を行う際には、熱エネルギーのみで重合反応が進行する場合と重合開始剤が必要となる場合がある。より低い温度で効率よく反応を進行させるためには、開始剤を添加することが好ましい。
【0062】
光により重合させる場合は、光として紫外線を用いることが好ましいが、光エネルギーのみで反応が進行することはごく稀であり、一般には光重合開始剤が併用される。この場合の重合開始剤とは、主には波長400[nm]以下の紫外線を吸収してラジカルやイオン等の活性種を生成し、重合を開始させるものである。なお、実施形態1においては、上述した熱及び光重合開始剤を併用することも可能である。
【0063】
このように形成した網目構造を有する電荷輸送層53は、耐摩耗性が高い反面、架橋反応時に体積収縮が大きく、あまり厚膜化するとクラックなどを生じる場合がある。このような場合には、表面保護層54を積層構造として、下層(感光層側)には低分子分散ポリマーの保護層を使用し、上層(表面側)に架橋構造を有する表面保護層54を形成しても良い。
【0064】
以上のような表面保護層54を設けた感光体2については、例えば、保護層塗工液、膜厚、作成条件を次に説明するように工夫する点の他は、周知の方法と同様にして製造することができる。即ち、まず、メチルトリメトキシシラン182[重量部]、ジヒドロキシメチルトリフェニルアミン40[重量部]、2−プロパノール225[重量部]、2%酢酸106[重量部]、及び アルミニウムトリスアセチルアセトナート1[重量部]を混合して表面保護層用の塗布液を得る。この塗布液を、電荷輸送層53の上に塗布して乾燥させた後、110[℃]の環境下で1時間の加熱硬化処理して、膜厚3[μm]の表面保護層54を形成する。
【0065】
また、例えば、保護層塗工液、膜厚、作成条件を次に説明するように工夫する点の他は、周知の方法と同様にしてもよい。即ち、化1で化学構造式を示した正孔輸送性化合物30[重量部]、及び化2で化学構造式を示したアクリルモノマーと光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)との混合物0.6[重量部]を、モノクロロベンゼン50[重量部]/ジクロロメタン50[重量部]の混合溶媒中に溶解して、表面保護層用塗料得る。この塗料をスプレーコーティング法により電荷輸送層53上に塗布し、メタルハライドランプを用いて500[mW/cm]の光強度で30[秒間]硬化させることによって膜厚5[μm]の表面保護層を形成する。
【化1】

【化2】

【0066】
次に、実施形態1で用いるトナーとしては、以下のものが好ましい。
実施形態1のトナーは、有機溶媒中に少なくとも、イソシアネート基を含有するポリエステル系プレポリマーAが溶解し、顔料系着色剤が分散し、離型剤が溶解ないし分散している油性分散液を水系媒体中に無機微粒子及び/又はポリマー微粒子の存在下で分散させるとともに、この分散液中でプレポリマーAをポリアミン及び/又は活性水素含有基を有するモノアミンBと反応させてウレア基を有するウレア変性ポリエステル系樹脂Cを形成させ、このウレア変性ポリエステル系樹脂Cを含む分散液からそれに含まれる液状媒体を除去することにより得られるものである。ウレア変性ポリエステル系樹脂Cにおいて、そのTgは40〜65[℃]、好ましくは45〜60[℃]である。その数平均分子量Mnは2500〜50000、好ましくは2500〜30000である。その重量平均分子量Mwは1万〜50万、好ましくは3万〜10万である。
【0067】
このトナーは、プレポリマーAとアミンBとの反応によって高分子量化されたウレア結合を有するウレア変性ポリエステル系樹脂Cをバインダー樹脂として含む。そして、そのバインダー樹脂中には着色剤が高分散している。
本発明者らは、このトナーについて鋭意検討を重ねた結果、トナー粒子中に含まれる顔料系着色剤の分散粒径が個数平均径を0.5[μm]以下に規定するとともに、その個数平均径が0.7[μm]以上の個数割合を5[%]以下にコントロールすることにより、低温定着性、帯電安定性及び流動性にすぐれるとともに、高品質の画像を与え、特に、透明性の良い光沢性にすぐれたカラー画像を与えるトナーが得られることを見出した。
本発明者らはさらに検討した結果、該着色剤の分散粒径を個数平均径で0.3[μm]以下に規定するとともに、個数平均径が0.5[μm]以上の個数割合を10[%]以下にコントロールすることにより、さらに高品質のトナーが得られることを知見した。このようなトナーは、画像解像力にすぐれ、デジタル方式の現像装置用トナーとして好適なものとなる。特に、実施形態1によるカラートナーの場合、解像力及び透明性にすぐれ、色再現性の良い高品質のカラー画像を与える。
【0068】
実施形態1で用いる着色剤が均一に分散したトナーを得るには、トナーの製造条件に工夫を講ずることが必要であり、従来の製造条件では、上述した如き高品質のトナーを得ることはできない。
実施形態1の場合、上述の高品質トナーを得るには、プレポリマーA、着色剤及び離型剤を含む油性分散液を形成させるに際し、この着色剤を粉砕する工程(湿式粉砕工程)を採用することが必要である。この場合の湿式粉砕工程を実施するための湿式粉砕装置としては、液体中で着色剤に衝撃力を与えて微粉砕し得る装置であればよく、任意のものを用いることができる。このようなものとしては、従来公知の各種の湿式粉砕装置、例えば、ボールミルやビーズミル等が挙げられる。
この湿式粉砕工程において、その温度は5〜20[℃]、好ましくは15〜20[℃]である。湿式粉砕条件を調節することにより、トナー粒子中に含まれる着色剤の分散粒径及び粒度分布を上述の範囲にコントールすることができる。この湿式粉砕工程は、必要に応じ、反応後の分散液に対しても適用することができる。
【0069】
更に、実施形態1の場合、上述の高品質トナーを得るには、樹脂中に着色剤を高濃度で分散させたマスターバッチ着色剤粒子を着色剤材料として有機溶媒中に添加し、攪拌分散させる方法を好ましく採用することができる。このマスターバッチ粒子を用いることにより、分散粒径の小さな着色剤が均一に分散した透明性の良いカラー画像を与えるトナーを得ることができる。
このようなマスターバッチ着色剤粒子を好ましく製造するには、熱溶融性の樹脂と着色剤との混合物をその樹脂の溶融温度で高せん断力で混練し、得られた混練物を冷却固化し、この固化物を粉砕する。
ここでの樹脂としては、プレポリマーA由来のウレア変性ポリエステル系樹脂Cと混和性の良い熱可塑性樹脂が用いられる。実施形態1の場合、ポリエステル系樹脂が好ましく用いられる。熱可塑性樹脂において、その軟化点は100〜200[℃]、好ましくは120〜160[℃]であり、その数平均分子量Mnは、2500〜5000、好ましくは2500〜30000である。
上述のマスターバッチ着色剤粒子中の着色剤濃度は、10〜60[重量%]、好ましくは25〜55[重量%]である。
【0070】
次に、トナー中の顔料系着色剤の分散粒径等トナー物性を測定する方法について詳述する。
トナー中の着色剤の分散粒径及び粒度分布を測定するには、トナーをエポキシ樹脂に包埋し、ミクロトームMT6000−XL(盟和商事)にてトナーを約100[nm]に超薄切片化した測定サンプルを用意する。
これを電子顕微鏡(日立製作所社製 H−9000NAR)を用いて加速電圧100[kV]にしてTEM写真を10000〜40000倍にて複数個撮影し、その画像情報をIMAGE ANALYZERの画像処理解析装置LUZEX IIIにて画像データに変換する。対象顔料系着色剤粒子は粒径にして0.1[μm]以上の粒径を有する粒子について無作為にサンプリングが300回を超えるまで測定を繰り返し、平均粒径と粒度(粒径)分布を求める。
【0071】
実施形態1のトナーにおいて、その重量平均粒径(Dv)は3〜7[μm]であり、その個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)は1.00≦Dv/Dn≦1.20である。Dv/Dnをこのように規定することにより、高解像度、高画質のトナーを得ることが可能となる。
また、より高品質の画像を得るには、着色剤の重量平均粒径(Dv)を3〜7[μm]にし、個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)を1.00≦Dv/Dn≦1.20にし、且つ3[μm]以下の粒子を[個数%]で1〜10[個数%]にするのがよい。
より好ましくは、重量平均粒径を3〜6[μm]にし、Dv/Dnを1.00≦Dv/Dn≦1.15にするのがよい。このようなトナーは、耐熱保存性、低温定着性、耐ホットオフセット性のいずれにも優れ、とりわけフルカラー複写機などに用いた場合に画像の光沢性に優れ、更に二成分現像剤においては、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中におけるトナーの粒子径の変動が少なくなり、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0072】
一般的には、トナーの粒子径は小さければ小さい程、高解像で高画質の画像を得る為に有利であると言われているが、逆に、転写性やクリーニング性に対しては不利である。また、実施形態1で規定した範囲よりもトナーの体積平均粒子径が小さい場合、二成分現像剤では現像装置における長期の攪拌においてキャリアの表面にトナーが融着して、キャリアの帯電能力を低下させる。一方、一成分現像剤として用いた場合には、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化する為のブレード等の部材へのトナーの融着が発生しやすくなる。これらの現象は、トナー中の微粉の含有率が大きく関係し、特に3[μm]以下の粒子含有量が10[%]を超えると、トナーのキャリアへの付着が生じにくくなる上、高いレベルで帯電の安定性を図ることが難しくなる。
逆に、トナーの粒子径が実施形態1で規定した範囲よりも大きい場合には、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなると共に、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなる場合が多い。また、重量平均粒子径/個数平均粒子径が1.25よりも大きい場合も同様であることが明らかとなった。
なお、トナーの平均粒径及び粒度分布は、カーコールターカウンター法により測定される。トナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)があげられる。実施形態1においてはコールターカウンターTA−II型を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科技研社製)と、PC9801パーソナルコンピューター(NEC製)とを接続し測定した。
【0073】
次に、トナーの個数分布及び体積分布の測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100〜150[ml]中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5[ml]加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて形成した約1[%]のNaCl水溶液である。例えば、ISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20[mg]加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3[分間]分散処理を行ない、上述の測定装置により、アパーチャーとして100[μm]アパーチャーを用いて、トナー粒子の体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。
チャンネルとしては、2.00〜2.52[μm]未満;2.52〜3.17[μm]未満;3.17〜4.00[μm]未満;4.00〜5.04[μm]未満;5.04〜6.35[μm]未満;6.35〜8.00[μm]未満;8.00〜10.08[μm]未満;10.08〜12.70[μm]未満;12.70〜16.00[μm]未満;16.00〜20.20[μm]未満;20.20〜25.40[μm]未満;25.40〜32.00[μm]未満;32.00〜40.30[μm]未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00[μm]以上乃至40.30[μm]未満の粒子を対象とする。
実施形態1のトナーに係わる体積分布から求めた体積基準の重量平均粒径(Dv)と、その個数分布から求めた個数平均粒径(Dn)により、その比Dv/Dnを求めた。
【0074】
トナーの耐ホットオフセット性に関しては、これまでにもバインダー樹脂の分子量分布の制御を含む様々な検討が行われてきた。低温定着性と耐ホットオフセット性という相反する性質の両立を図るための方法としては、分子量分布の広いバインダー樹脂を用いる方法や、分子量が数十万〜数百万の高分子量成分と、分子量が数千から数万の低分子量成分を含む少なくとも2つの分子量ピークを有する混合樹脂を用いる方法等がある。高分子量成分が架橋構造を持っているか又はゲルの状態であると、ホットオフセットにはより効果的である。しかし、光沢性や透明性なども求められているフルカラートナーにおいては、高分子量成分の多量の導入は好ましくない。実施形態1の場合、トナーはウレア結合を有する高分子量のウレア変性ポリエステル系樹脂を含むことから、透明性や光沢性を満足しながら、耐ホットオフセット性をも達成することが可能になった。
【0075】
実施形態1で用いるトナー中に含まれるバインダー樹脂成分の分子量分布は、GPCにより以下のようにして測定される。40[℃]のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラム溶媒としてTHFを毎分1[ml]の流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6[重量%]に調整した樹脂のTHF試料溶液を50〜200[μl]注入して測定操作を行う。
試料の分子量測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.あるいは東洋ソーダ工業社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いる。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0076】
トナー中に含まれる前記バインダー成分の分子量分布におけるそのメインピーク分子量は、通常2500〜10000、好ましくは2500〜8000、さらに好ましくは2500〜6000である。分子量1000未満の成分の量が増えると耐熱保存性が悪化する傾向となる。一方、分子量30000以上の成分が増えると単純には低温定着性が低下傾向になるが、バランスコントロールでその低下を極力押さえることも可能である。分子量30000以上の成分の含有量は1[%]〜10[%]で、トナー材料により異なるが、好ましくは3〜6[%]である。1[%]未満では充分な耐ホットオフセット性が得られず、10[%]超では光沢性、透明性が悪化するようになる。トナー中に含まれるバインダー樹脂のMnは2500〜50000で、Mw/Mnの値は10以下である。10を超えると、シャープメルト性に欠け、光沢性が損なわれる。
【0077】
実施形態1のトナーの円形度は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(シスメックス(株)製)により計測される。実施形態1のトナーにおいて、円形度が0.96以上の球形トナーを用いることで、転写部での転写率が劇的に向上し(例えば転写率93%程度だったものが転写率99%程度に向上)、未転写トナーがほとんどなくなる。このため、クリーニング部でのクリーニングも良好におこなえる。よって、帯電部分にやってくるトナーがほとんどなくなるので、帯電ローラの汚れが発生しにくくなる。
【0078】
トナー形状(円形度)の計測方法としては、粒子を含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知し、解析する光学的検知帯の手法が適当である。この手法では粒子の投影面積が得られるが、円形度は、この投影面積と面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値である。この値はフロー式粒子像分析装置FPIA−2000により平均円形度として計測した値である。具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150[ml]中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5[ml]加え、更に測定試料を0.1〜0.5[g]程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3[分間]分散処理を行い、分散液濃度を3000〜1万[個/μl]として前記装置によりトナーの形状及びトナーの形状分布を測定する。
【0079】
実施形態1で用いるトナーを製造する方法は、無機微粒子及び/又はポリマー微粒子を含む水系媒体中に分散させたイソシアネート基含有ポリエステル系プレポリマーAをアミンBと反応させる高分子量化工程を含む。この場合、イソシアネート基を含有するポリエステル系プレポリマー(A)は、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(PIC)と反応させることによって得ることができる。この場合、ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
ポリオール(PO)としては、ジオール(DIO)および3価以上のポリオール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)の混合物が好ましい。ジオール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
3価以上のポリオール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ポリカルボン酸(PC)としては、ジカルボン酸(DIO)および3価以上のポリカルボン酸(TC)が挙げられ、(DIO)単独、および(DIO)と少量の(TC)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(DIO)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(PO)と反応させてもよい。
ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
ポリイソシアネート(PIC)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
イソシアネート基を有するポリエステル系プレポリマーを得る場合、ポリイソシアネート(PIC)と活性水素を有するポリエステル系樹脂(PE)との比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]との当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40[重量%]、好ましくは1〜30[重量%]、さらに好ましくは2〜20[重量%]である。0.5[重量%]未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40[重量%]を超えると低温定着性が悪化する。
イソシアネート基を有するポリエステル系プレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、得られるウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
アミン(B)としては、ポリアミン及び/又は活性水素含有基を有するモノアミンが用いられる。この場合の活性水素含有基には、水酸基やメルカプト基が包含される。このようなアミンには、ジアミン(B1)、ケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
さらに、プレポリマーAとアミンBとを反応させる場合、必要により伸長停止剤を用いてポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、活性水素含有基を有しないモノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。その添加量は、生成するウレア変性ポリエステルに所望する分子量との関係で適宜選定される。
アミン(B)とイソシアネート基を有するプレポリマー(A)との比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン(B)中のアミノ基[NHx](xは1〜2の数を示す)の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2張架や1/2未満では、ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
実施形態1においては、水系媒体中でイソシアネート基含有プレポリマーAとアミンBとを反応させる際に、水系媒体中には、必要に応じ、アミンと非反応性のポリエステル系樹脂Dを存在させることができる。このポリエステル系樹脂Dにおいて、そのTgは35〜65[℃]、好ましくは45〜60[℃]であり、そのMnは2000〜10000、好ましくは2500〜8000である。このポリエステル系樹脂Dとしては、ウレア変性ポリエステル(UMPE)を用いることができるが、このポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10[%]未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
ウレア変性ポリエステル(UMPE)は、ワンショット法などの公知の方法により製造される。ウレア変性ポリエステル(UMPE)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜50万、さらに好ましくは3万〜10万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。
実施形態1においては、必要に応じて用いるウレア結合で変性されたポリエステル系樹脂(UMPE)は単独使用だけでなく、このものと共に、変性されていないポリエステル系樹脂(PE)をトナーバインダー成分として含有させることもできる。(PE)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、(UMPE)の単独使用の場合よりも好ましい。(PE)としては、前記(UMPE)のポリエステル成分と同様なポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物などが挙げられ、好ましいPEの分子量は(UMPE)の場合と同様である。また、(PE)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(UMPE)と(PE)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(UMPE)のポリエステル成分と(PE)は類似の組成が好ましい。(PE)を含有させる場合の(UMPE)と(PE)の重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(UMPE)の重量比が5[%]未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
(PE)の水酸基価は5以上であることが好ましい。(PE)の酸価(mgKOH/g)は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには紙への定着時紙とトナーの親和性がよく、低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性特に環境変動に対し悪化傾向がある。プレポリマーAとアミンBとの重付加反応においては酸価がふれると造粒工程でのぶれにつながり乳化における制御がむずかしくなる。
【0080】
実施形態1において、トナーバインダーのガラス転移点(Tg)は通常45〜65[℃]、好ましくは45〜60[℃]である。45[℃]未満では耐熱性が悪化し65[℃]を超えると低温定着性が不十分となる。
実施形態1で用いる顔料系着色剤としては、従来公知の各種の顔料が使用できる。このようなものは、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナー中、通常、1〜15[重量%]、好ましくは3〜10[重量%]である。
実施形態1で用いる着色剤は、上述したように、樹脂と複合化されたマスターバッチ着色剤粒子として用いることが好ましい。マスターバッチの製造において着色剤とともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性のポリエステル系樹脂の他に、ポリスチレン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独あるいは混合して使用される。
マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0081】
実施形態1のトナーには、トナーバインダー、着色剤とともに離型剤(ワックス)を含有させる。このワックスとしては従来公知の各種のものが使用できる。このようなものとしては、例えば、ポリオレフィンワッックス、ジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。ワックスの融点は、通常40〜160[℃]であり、好ましくは50〜120[℃]、さらに好ましくは60〜90[℃]である。融点が40[℃]未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160[℃]を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20[℃]高い温度での測定値として、5〜1000[cps]が好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は、通常0〜40[重量%]であり、好ましくは3〜30[重量%]である。
【0082】
実施形態1のトナーは、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては公知の各種のものが使用できる。このようなものには、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物等が挙げられる。
実施形態1において荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100[重量部]に対して、0.1〜10[重量部]の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5[重量部]の範囲がよい。10[重量部]を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤、離型剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練する事もできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えても良い。
実施形態1で得られた着色剤含有トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5[nm]〜2[μm]であることが好ましく、特に5[nm]〜500[nm]であることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500[m/g]であることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5[重量%]であることが好ましく、特に0.01〜2.0[重量%]であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、窒化ケイ素などを挙げることができる。
この他、高分子系微粒子を用いることができる。このようなものとしては、ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような外添剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においてもその流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルを好ましいものとして挙げることができる。
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01〜1[μm]のものが好ましい。
【0083】
次に、実施形態1のトナーの製造法について詳述する。
実施形態1のトナーを製造するには、先ず、油性分散液調製工程において、有機溶媒中に、イソシアネート基含有ポリエステル系プレポリマーAが溶解し、着色剤が分散し、離型剤が溶解ないし分散している油性分散液を調製する。
この油性分散液体は、それに含まれている着色剤を微粉砕し、均一分散させるために、これを、湿式粉砕工程において、湿式粉砕装置を用いて粉砕処理する。この場合、その粉砕処理時間は30〜120分程度である。
次に、前記のようにして得られた油性分散液は、これを、分散(乳化)工程において、水系媒体に無機微粒子及び/又はポリマー微粒子の存在下で分散(乳化)させて水中油型の分散液(乳化液)を形成させるとともに、この分散液中でそれに含まれるイソシアネート基含有ポリエステル系プレポリマーAを、反応工程において、アミンBと反応させてウレア結合を有するウレア変性ポリエステル系樹脂Cを生成させる。
この有機溶媒としては、ポリエステル系樹脂を溶解し、水に不溶であるか難溶もしくは微溶のものが用いられる。その沸点は、通常、60〜150[℃]、好ましくは70〜120[℃]である。このようなものとしては、例えば、酢酸エチルや、メチルエチルケトン等が挙げられる。
実施形態1においては、着色剤としては、前記したマスターバッチ着色剤粒子を用いることが好ましく、これによって、着色剤の均一分散を効率良く行うことができる。
実施形態1においては、有機溶媒には、補助成分として、アミンに対して非反応性のポリエステル系樹脂Dを溶解させるのが好ましい。また、このポリエステル系樹脂Dは、水系媒体に分散させることもできる。
実施形態1において、油性分散液を水系媒体中に分散させる場合、その分散装置としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の分散機が適用できる。分散粒子の粒径を2〜20[μm]にするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000[rpm]、好ましくは5000〜20000[rpm]である。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150[℃](加圧下)、好ましくは40〜98[℃]である。高温なほうが、分散液の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
油性分散液中に含まれるプレポリマーA、着色剤、離型剤及びポリエステル系樹脂D等のトナー固形物100部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000[重量部]、好ましくは100〜1000[重量部]である。50[重量部]未満ではトナー固形物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。2000[重量部]を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
湿式粉砕処理した油性液体をその処理後水系媒体中に分散させるまでの時間は、できるだけ短時間であることが好ましい。
実施形態1で用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
トナー固形物を含む油性相を水が含まれる液体(水系媒体)に乳化、分散するためには、分散剤として、各種の界面活性剤(乳化剤)を用いることができるが、このようなものとしては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性荊、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
また、実施形態1では、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(タイキン工莱社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を右する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−l21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEFーl32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
水系媒体中に存在させる無機微粒子としては、水に不溶ないし難溶な従来公知の各種の無機化合物が用いられる。このようなものとしては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。
水系媒体中に存在させるポリマー微粒子としては、水に不溶ないし難溶性な従来公知の各種のものが用いられる。このようなものとしては、炭化水素系樹脂、含フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の疎水性高分子の微粒子が挙げられる。この微粒子の粒径は、通常、トナーの粒径よりも小さくなり、粒径均一性の観点から、粒径比[微粒子の体積平均粒径]/[トナー体積平均粒径]の値が0.001〜0.3の範囲であるのが好ましい。かかる粒径比が、0.3より大きいと微粒子がトナーの表画に効率よく吸着しないため、得られるトナーの粒度分布が広くなる傾向がある。また、この微粒子の体積平均粒径は、所望の粒径のトナーを得るのに適した粒径になるように、上記粒径比の範囲で適宜調整することができる。例えば、体積平均粒子径5[μm]のトナーを得たい場合には、好ましくは0.0025〜1.5[μm]、特に好ましくは0.005〜1.0[μm]の範囲、10[μm]のトナーを得た場合には、好ましくは0.005〜3[μm]、特に好ましくは0.05〜2[μm]である。
実施形態1では、水系媒体中には、分散安定剤として、水系媒体中で高分子系保護コロイドを形成する各種の親水性高分子物質を存在させることができる。このような高分子物質において、それを構成するモノマー成分を示すと、以下のものを示すことができる。
アクリル酸、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するビニルモノマー等。
実施形態1において好ましく用いることのできる他の高分子物質としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類が挙げられる。
実施形態1において、プレポリマーAとアミンBとの重付加反応後に得られた乳化分散液からそれに含まれる液状媒体を除去するためには、液状媒体除去工程において、系全体を徐々に昇温し、有機溶媒を蒸発除去する工程を含む方法を採用することができる。この有機溶媒を除去する前の液攪拌の強さと有機溶媒の除去時間によりトナー円形度の制御が可能となる。ゆっくり脱溶媒することにより形状はより真球円形度で表わすと0.980以上になり攪拌を強く短時間に脱溶媒を行うことにより、凹凸状や不定形になり円形度で表わすと0.900〜0.950になる。水系媒体中に乳化分散させさらに反応させた後の乳化液を脱液媒中に攪拌槽にて温度30〜50[℃]の強い攪拌力で攪拌しながら脱液媒を行うことにより、円形度の制御が可能で0.850〜0.990の範囲の形状制御が可能となる。これは造粒中に含有される酢酸エチル等の有機溶媒が急激に除去されることにより体積収縮が起ったものと考えられる。
この液状媒体の除去は、乳化分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成するとともに、水系分散剤を蒸発除去する方法を採用することも可能である。乳化分散液が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、好ましくは使用される最高沸点の液状媒体の沸点以上に加熱された各種気流が用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で高品質トナーが得られる。
反応後の分散液を、その反応後脱溶媒するまでの時間は、短時間であることが好ましいが、通常、25[時間]以内である。
なお、無機微粒子としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、そのリン酸カルシウム塩等の無機微粒子を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー粒子から無機微粒子を除去することができる。その他、酵素による分解操作によっても除去できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、プレポリマーAとアミンBとの反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
さらに、反応後の分散液の粘度を低くするために、水系媒体中には、プレポリマーやウレア変性ポリエステルが可溶の溶剤を添加することもできる。溶剤を用いた場合、粒度分布がシャープになる点で好ましい。この溶剤は沸点が100[℃]未満の揮発性であることが、除去が容易である点から好ましい。この溶剤としては、例えば、トルエンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。プレポリマー(A)100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶剤を使用した場合は、プレポリマーAとアミンBとの反応後、常圧または減圧下にて加温してその溶剤を除去する。
プレポリマーAとアミンBとの反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10[分]〜40[時間]、好ましくは2〜24[時間]である。反応温度は、通常、0〜150[℃]、好ましくは40〜98[℃]である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
プレポリマーAとアミンBとの反応後の乳化分散液中におけるトナー粒子の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行うときには、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。この場合の分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。
用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
乾燥後のトナー粒子を、必要に応じての離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子などの異種粒子と混合して使用する場合、その混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって、トナー粒子表面でその異種粒子を固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0084】
実施形態1のトナーを二成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いれば良い。この現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100[重量部]に対してトナー1〜10[重量部]が好ましい。磁性キャリアとしては、粒子径20〜200[μm]程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど従来から公知のものが使用できる。また、被覆材料としては、シリコーン樹脂等が使用できる。また、必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1[μm]以下のものが好ましい。平均粒子径が1[μm]よりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。
また、実施形態1のトナーは、キャリアを使用しない1成分系の磁性トナー或いは、非磁性トナーとしても用いることができる。
【0085】
以下、実施形態1で記載の帯電ローラが適用可能な実施例について説明する。
[実施例1]
図12は、実施例1の模式図であり、図4で説明したものと同様に、感光体2と帯電ローラ3との間にギャップHを設けた状態である。
実施例1では、帯電ローラ3を感光体2に対して、非接触の状態で回転させている。非接触の状態であっても、クリーニングを通過したトナーは帯電ローラ3に付着する。このように帯電ローラ3にトナーが付着する場合であっても、実施形態1に記載の帯電ローラ3を用いることで、帯電部材である帯電ローラ3の表面が汚れた場合も、出力画像上に、画像上に黒スジや白スジと呼ばれる異常画像が発生することを抑制することができる。
なお、帯電部材である帯電ローラ3表面と被帯電体面である感光体2表面とが接触している場合、機械的な摺擦により、帯電ローラ3表面に細かな傷ができる。すると、傷により放電が不均一となりこの傷を基点として帯電ローラ3表面が改質され、帯電ローラ3表面に汚れが付着しやすくなる。一方、実施例1では、帯電ローラ3が感光体2に対して非接触であるため、機械的な摺擦が生じないようにでき、帯電ローラ3表面に細かな傷を発生させない。これにより、帯電ローラ3表面の傷に起因する帯電ローラ表面の改質を防止することができる。
【0086】
[実施例2]
図13は、実施例2の模式図である。実施例2では、帯電ローラ3を感光体2表面に接触させて、回転させている。従来の接触型の帯電ローラ3は感光体2からトナーが付着しやすく、帯電ローラ3にトナーが付着すると不良画像となる。
一方、接触型の帯電ローラ3に実施形態1に記載の帯電ローラ3を用いることで、帯電部材である帯電ローラ3の表面が汚れた場合も、出力画像上に、画像上に黒スジや白スジと呼ばれる異常画像が発生することを抑制することができる。
【0087】
なお、実施例1および実施例2のように、帯電ローラ3を回転させることにより、帯電部材である帯電ローラ3の放電を生じる面が逐次入れ替わる状態と知ることができる。
放電にさらされている面や放電領域近傍にある部材は、電界、放電によるエネルギーなどで非常に強いストレスにさらされる。このため、放電面が常に特定の場所で起きていると、熱の蓄積などにより、放電が徐々に強くなり、帯電部材の表面改質が進行してしまう。帯電部材の表面の改質が進行すると、帯電部材表面に汚れが付着しやすくなる。
一方、帯電ローラ3を回転させることにより、特定の場所だけでの放電を防止し、帯電部材の表面改質が進行することを防止することができる。
【0088】
[実施例3]
図14は、実施例3の模式図であり、図2で説明したものと同様に、感光体2と帯電ローラ3との対抗部よりも感光体2の表面移動方向上流側に保護剤塗布部16を設け、感光体2表面に潤滑剤を塗布してもよい。
感光体状に潤滑剤を塗布することで、クリーニングブレード13によるブレード磨耗を抑制することができるので感光体2の寿命を長くすることができる。
しかし、潤滑剤を塗布することにより、感光体2と転写残トナーとの付着力は弱くなる。感光体2に対す付着力が弱くなると、クリーニング効率は良くなるが、クリーニング部を通過し、帯電ローラ3との対向部に達したトナーは感光体2表面から帯電ローラ3表面に移動しやすい。このような状態では、帯電ローラ3の表面層に耐汚れ性を高める材料を用いても、帯電ローラ3へのトナーの付着を防止することは困難である。そして、帯電ローラ3にトナーが付着すると不良画像となる。
一方、帯電ローラ3に実施形態1に記載の帯電ローラ3を用いることで、帯電部材である帯電ローラ3の表面が汚れた場合も、出力画像上に、画像上に黒スジや白スジと呼ばれる異常画像が発生することを抑制することができる。
【0089】
[実施例4]
図15は、実施例4の模式図であり、クリーニング手段として、ブレード状のものではなく、回転するファーブラシからなるクリーニングブラシ113を用いている。実施例4のクリーニング手段は、感光体2表面に接するクリーニングブラシ113と、クリーニングブラシ113に接する回収ローラ213と、回収ローラ213に接触するスクレーパ部材214とを備えている。さらに、回収ローラ213に電圧を印加し、電界を用いて感光体2表面からトナーを回収するものである。
クリーニングブレードを用いたクリーニング手段でクリーニング不良が発生すると、帯電ローラ3と感光体2との間に大量のトナーが来る。特に、球形トナーを用い、感光体2をブレードによってクリーニングした場合、クリーニング不良が発生し易い。一方、実施例4では、ブレードと異なり、感光体2表面にNOxなどが付着して表面状態が変化した、あるいは静止摩擦係数が変化した場合においても、クリーニングブラシ113が感光体2の表面状態に合わせて変形して接触するので、良好なクリーニング性を保つことができる。さらに、入力トナー量の変動によるクリーニング余裕度低下を起こすことなく、感光体2上のトナーを良好にクリーニングできる。さらに、感光体2上の潜像を現像するトナーが、円形度0.96以上の球形トナーであっても、容易にクリーニングできる。このため、帯電部分にやってくるトナーがほとんどなくなる。これにより、帯電ローラ3にトナーが付着することを抑制することができる。さらに、帯電ローラとして実施形態1に記載の帯電ローラ3を用いることで、帯電部材である帯電ローラ3の表面が汚れたとしても、出力画像上に、画像上に黒スジや白スジと呼ばれる異常画像が発生することを抑制することができる。
【0090】
[実施例5]
図16は、実施例5の模式図であり、感光体2をクリーニングするクリーニング手段がなく、転写残トナーのクリーニングを現像装置5で行うシステムである。
実施例5のように、転写残トナーを現像装置5でクリーニングするシステムでは、トナーが帯電ローラ3と感光体2の間を通過するため、帯電ローラ3にトナーが付着しやすい。そして、帯電ローラ3にトナーが付着すると不良画像となる。
一方、帯電ローラ3に実施形態1に記載の帯電ローラ3を用いることで、帯電部材である帯電ローラ3の表面が汚れた場合も、出力画像上に、画像上に黒スジや白スジと呼ばれる異常画像が発生することを抑制することができる。
【0091】
[実施例6]
図17は、実施例6の模式図であり、帯電ローラ3に、その表面に付着した汚れをクリーニングする帯電部材クリーニング手段としての帯電ローラクリーニングブレード313を設けている。帯電ローラクリーニングブレード313を設けることにより、感光体2との対向部で帯電ローラ3にトナーが付着したとしても、感光体2との間の放電に影響を及ぼすことを防止することができる。しかし、帯電ローラクリーニングブレード313をトナーがすり抜けると、放電が不均一となり不良画像となる。
一方、帯電ローラ3に実施形態1に記載の帯電ローラを用いることで、帯電部材である帯電ローラ3の表面が汚れた場合も、出力画像上に、画像上に黒スジや白スジと呼ばれる異常画像が発生することを抑制することができるため、より確実に不良画像の発生を抑制することができる。
【0092】
[実験1]
次に、帯電ローラの最表層が従来の塗装品と、シリカを含有させた塗装品を用いた結果を比較する実験を行った。
帯電ローラの最表層の効果を調べるために、下記の条件で画像出力を行った。
マシン:IPSiO color 8200改造機
帯電装置:図3及び図4で説明した非接触で硬質タイプの帯電ローラ
帯電ローラの最表層:
アクリルシリコン樹脂(3000VH-P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤、カーボンブラック、及びシリカからなる混合物(表面抵抗:2×10[Ω])
最表層の膜厚:約0.01[mm]
ギャップ保持:図8で説明した方法で、絶縁性のギャップコロを用いた。
帯電への印加バイアス:AC成分 Vpp:2.4[kV]、f:1.35[kHz]、
DC成分:−700[V](加速評価の条件のため、実使用時とは異なる。)
トナーの外添剤:RTS−100A、H−2000
出力枚数:5000枚
上記の実験条件で、帯電ローラの最表層が従来の塗装品と、シリカを含有させた塗装品とを用いた結果を表1に示す。結果は、出力を5000枚行なった後のハーフトーン画像の出力画像の比較である。
【0093】
【表1】

【0094】
No.2〜No.4、No.7〜No.9にあるように、トナーの外添剤と同種類のシリカを、帯電ローラの最表層に含有した場合は、出力画像にも異状画像であるスジが現れなかった。
No.1及びNo.6の場合は、出力画像にスジが現れた。これは、シリカの量が少ないため、効果が得られないためだと考えられる。
No.5及びNo.10では、帯電ローラの表面の汚れはなかったが、出力画像には異状画像である斑点状のムラが現れた。この原因であるが、最表層のシリカの含有量が多くなりすぎたため、シリカの粒子による凹凸が帯電ローラ表面に現れ、帯電ローラの平滑性が失われ、放電が安定しなくなったためと考えられる。
【0095】
[実験2]
次に、帯電ローラと感光体間の微小ギャップの幅と異常画像(斑点状のムラ)との関係について検討した実験2について説明する。
帯電ローラと感光体間の微小ギャップが変動したときの、斑点状の異常画像の発生頻度を調べるために以下の実験を行った。
なお、実験は、通常の環境下で行った。
(実験装置と条件)
コピー機:IPSiO color 8200改造機
帯電装置:図3及び図4で説明した非接触で硬質タイプの帯電ローラ
帯電への印加バイアス:AC成分 Vpp:2.2[kV]、f:2[kHz]
DC成分:−700[V]
微小ギャップ保持方法:帯電ローラの両端に、ポリエチレンテレフタレート(PET)のテープを巻きつけた。(厚さ:30、50、80、100、120、150μm)。
環境条件:25[℃]、65[%]
出力画像:ハーフトーン画像
このときの画像の出力結果を、表2にまとめる。
【0096】
【表2】

【0097】
この結果より、帯電ローラと像担持体の間のギャップが120[μm]以上になると、斑点状のムラが出力画像に現れることがわかった。よって、正常な画像を出力する、つまり帯電部において均一帯電を行うためには、ギャップを100[μm]以下にする必要があることがわかった。
【0098】
[変形例1]
図1では各色毎に感光体2を設けた画像形成部1を示したが、これに限るものではない。各色毎に感光体2を設ける代わりに、一つの感光体2の周りに各色毎の現像装置5を配置した変形例1にかかる複写機の画像形成部について図18を用いて説明する。
一つの感光体2を用いたフルカラー画像形成部1は、現像装置5の動作を切り替えることによって1つの感光体2上に順次複数色のトナー像を現像していくのである。
そして、二次転写ローラ7と転写ローラ6bとの間で中間転写ベルト6上のカラートナー画像を記録紙Pに転写し、トナー画像の転写された記録紙Pを定着部(不図示)に搬送し、定着画像を得る。
一方、トナー画像を中間転写ベルト6に転写した感光体2をさらに回転して、クリーニングブレード13で感光体2表面に残留するトナーをブレードにより掻き落として除去した後、固形保護剤130を塗布する。保護剤が塗布された後、感光体2を帯電装置である帯電ローラ3で一様に帯電させ、上記同様に次の画像形成を行う。なお、クリーニング手段としては、クリーニングブレード13で感光体2上の残留トナーを掻き落とすものに限るものではなく、例えばファーブラシで感光体2上の残留トナーを掻き落とすクリーニングブラシであっても良い。
【0099】
以上、実施形態1によれば、被帯電体である感光体2表面を帯電させる帯電部材としての帯電ローラ3の最表面層である表面層203は、トナーを構成するトナー構成材料である信越化学工業製のRTS−100Aやクラリアント製のH1303、H2000といったシリカが含有されている。表面層203の樹脂材料に対して、トナーを構成するトナー構成材料を分散させることで、転写残トナーが付着したとしてもその影響を抑制することができる。なお、信越化学工業製のRTS−100Aやクラリアント製のH1303、H2000はトナーに外添処理されるシリカである。さらに、信越化学工業製のRTS−100Aやクラリアント製のH1303、H2000は、トナーに外添処理されるシリカと同じ表面処理が施されている。そして、本実施形体で用いたトナーにも、同上のシリカが含まれている。
また、帯電ローラ3は環境による硬度の変化が小さい導電層としての抵抗層202を有し、この抵抗層202上に最表面層である表面層203を形成している。これにより、シリカなどの物質を含有する表面層203との密着性を安定させることができる。
また、帯電部材として回転可能なローラ形状である帯電ローラ3を用い、被帯電体表面である感光体2に対して接触または近接して用いる。これにより、特定の場所だけでの放電を防止し、帯電ローラ3の表面改質が進行することを防止することができる。
また、帯電部材として、表面層203の樹脂材料に対してトナーを構成するトナー構成材料を分散させた帯電ローラ3を用いる帯電装置であれば、感光体2に転写残トナーが付着していても帯電ムラを生じにくい帯電装置とすることができる。
また、帯電ローラ3と感光体2とを非接触に維持するスペーサ302を備えることにより、帯電ローラ3が感光体2に対して非接触であるため、機械的な摺擦が生じないようにでき、帯電ローラ3表面に細かな傷を発生させない。これにより、帯電ローラ3表面の傷に起因する帯電ローラ表面の改質を防止することができる。
また、帯電ローラ3を備えた帯電装置を有する画像形成装置であれば、帯電ローラ3にトナーが付着しても帯電ムラが発生することを抑制することができるので、安定した画像形成を行うことができる。
また、クリーニング手段はとして、感光体2表面に接するクリーニングブラシ113と、クリーニングブラシ113に接する回収ローラ213と、回収ローラ213に接触するスクレーパ部材214とを備え、回収ローラ213に電圧を印加し、電界を用いて感光体2表面からトナーを回収することにより、感光体2表面にNOxなどが付着して表面状態が変化した、あるいは静止摩擦係数が変化した場合においても、クリーニングブラシ113が感光体2の表面状態に合わせて変形して接触するので、良好なクリーニング性を保つことができる。
また、感光体2にアモルファスシリコンを用いることで、感光体2の平滑性が劇的に向上し、感光体2と帯電ローラ3との間の放電が均一になり、部分的な強い放電に起因する帯電ローラ3表面の改質を防止することができる。
また、感光体2の表面層にフィラーを分散することで、感光体2表面に凹凸が生じにくくなることで、感光体2表面の平滑性を維持することができ、感光体2と帯電ローラ3との間の放電が均一になり、部分的な強い放電に起因する帯電ローラ3表面の改質を防止することができる。
また、感光体2は表面層にABS樹脂などの架橋型電荷輸送材料を使用することで、感光体2表面に凹凸が生じにくくなることで、感光体2表面の平滑性を維持することができ、感光体2と帯電ローラ3との間の放電が均一になり、部分的な強い放電に起因する帯電ローラ3表面の改質を防止することができる。
また、感光体2は表面層にポリアリレート樹脂を使用することで、感光体2表面に凹凸が生じにくくなることで、感光体2表面の平滑性を維持することができ、感光体2と帯電ローラ3との間の放電が均一になり、部分的な強い放電に起因する帯電ローラ3表面の改質を防止することができる。
また、帯電部材である帯電ローラ3を備えたプロセスカートリッジとした場合、帯電ローラ3が転写残トナーの汚れの影響を受けにくくすることにより、プロセスカートリッジの交換回数を少なくし、無駄を削減することができる。
また、感光体2を複数備え、これら複数の感光体2それぞれに異なる色のトナー像を形成する作像ユニット10Y、10M、10C、10BK備え、各色のトナー像を転写体である中間転写ベルト6に順に重ね合わせてカラー画像を得る複写機で、各作像ユニット10の帯電装置が帯電ローラ3を備えることで、帯電ローラ3にトナーが付着しても帯電ムラが発生することを抑制することができるので、各作像ユニット10が安定した画像形成を行うことができる。
また、感光体2一つに対して現像手段としての現像装置5を複数備え、これら複数の現像装置5がそれぞれに異なる色トナーを備え、異なる色のトナーを順次用いて感光体2上にフルカラートナー像を形成する複写機で、フルカラートナー像が形成される感光体2を帯電する帯電部材はトナーの付着量が多くなるが、帯電部材として帯電ローラ3を用いることにより、帯電ローラ3にトナーが付着しても帯電ムラが発生することを抑制することができるので、安定した画像形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施形態1に係る画像形成装置の画像形成部の概略構成図。
【図2】実施形態1に係る作像ユニットの概略構成図。
【図3】帯電ローラの概略図。
【図4】帯電ローラと感光体との微小ギャップの説明図。
【図5】帯電ローラのスペーサ装着方法の説明図。
【図6】帯電ローラのスペーサ装着方法の説明図。
【図7】帯電ローラのスペーサ装着方法の説明図。
【図8】帯電ローラのスペーサ装着方法の説明図。
【図9】アモルファスシリコン感光体の層構成の説明図。
【図10】実施形態1に係るプロセスカートリッジの模式図。
【図11】感光体の断面を示す模式図。
【図12】実施例1の模式図。
【図13】実施例2の模式図。
【図14】実施例3の模式図。
【図15】実施例4の模式図。
【図16】実施例5の模式図。
【図17】実施例6の模式図。
【図18】変形例1にかかる画像形成装置の画像形成部の概略構成図。
【図19】縦スジ発生のメカニズムの検証結果を説明する図。(a)は感光体上にシリカが付着する説明図、(b)は、感光体上のシリカが帯電ローラに移動する説明図、(c)は帯電ローラ表面で抵抗値にムラが生じることの説明図。
【符号の説明】
【0101】
1 画像形成部
2 感光体
3 帯電ローラ
4 露光装置
5 現像装置
6 中間転写ベルト
6a 駆動ローラ
6b 転写ローラ
7 二次転写ローラ
8 除電部
9 一次転写ローラ
10 作像ユニット
13 クリーニングブレード
16 保護剤塗布部
20 プロセスカートリッジ
50 導電性支持体
51 下引き層
52 電荷発生層
53 電荷輸送層
54 表面保護層
113 クリーニングブラシ
130 固形保護剤
131 押圧ばね
160 保護剤塗布ブラシ
201 導電性基体
202 抵抗層
203 表面層
213 回収ローラ
214 スクレーパ部材
302 スペーサ
303 スプリング
313 帯電ローラクリーニングブレード
500 電子写真用感光体
501 支持体
502 光導電層
503 アモルファスシリコン系表面層
504 アモルファスシリコン系電荷注入阻止層
505 電荷発生層
506 電荷輸送層
601 段差
602 角溝
603 丸溝
604 コロ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電部材表面と被帯電体表面との間で放電を生じさせ、該被帯電体表面を帯電させる帯電部材において、
該被帯電体表面と対向する該帯電部材の最表面層は、トナーを構成するトナー構成材料が含有されていることを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
請求項1の帯電部材において、
上記最表面層に含有される上記トナー構成材料は、トナーに外添処理されるシリカであることを特徴とする帯電部材。
【請求項3】
請求項1または2の帯電部材において、
上記最表面層に含有される上記トナー構成材料は、トナーに外添処理されるシリカと同じ表面処理が施されたシリカであることを特徴とする帯電部材。
【請求項4】
請求項1、2または3の帯電部材において、
該帯電部材は環境による硬度の変化が小さい導電層を有し、該導電層上に上記最表面層を形成することを特徴とする帯電部材。
【請求項5】
請求項1、2、3または4の帯電部材において、
該帯電部材は回転可能なローラ形状であり、上記被帯電体表面に対して接触または近接して用いることを特徴とする帯電部材。
【請求項6】
被帯電体表面に対向配置される帯電部材を具備し、該帯電部材を放電させて該被帯電体表面を帯電する帯電装置であって、
該帯電部材として、請求項1、2、3、4または5の帯電部材を用いることを特徴とする帯電装置。
【請求項7】
請求項6の帯電装置において、
上記帯電部材と上記被帯電体表面とを非接触に維持するスペーサを備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項8】
潜像担持体と、
該潜像担持体を被帯電体として帯電する帯電手段と、
該潜像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
該潜像担持体表面に形成された潜像をトナー像化する現像手段とを備えた画像形成装置において、
該帯電手段として、請求項6または7の帯電装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8の画像形成装置において、
上記潜像担持体表面をクリーニングする潜像担持体クリーニング手段を有し、
該潜像担持体クリーニング手段は該潜像担持体表面に接するファーブラシと、該ファーブラシに接する回収ローラと、
該回収ローラに接触するスクレーパ部材とを備え、
該ファーブラシまたは該回収ローラに電圧を印加し、電界を用いて該潜像担持体表面からトナーを回収することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項8または9の画像形成装置において、
使用するトナーの円形度が0.96以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項8、9または10の画像形成装置において、
上記潜像担持体の表面層がアモルファスシリコンからなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項8、9、10または11の画像形成装置において、
上記潜像担持体の表面層にフィラーを分散したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項8、9、10、11または12の画像形成装置において、
上記潜像担持体に架橋型電荷輸送材料を使用したこと特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項8、9、10、11、12または13の画像形成装置において、
上記潜像担持体の少なくと表面層がポリアリレート樹脂からなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項8、9、10、11、12、13または14の画像形成装置において、
上記潜像担持体を複数備え、これら複数の該潜像担持体それぞれに異なる色のトナー像を形成し、該異なる色のトナー像を転写体に順に重ね合わせてカラー画像を得ることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項8、9、10、11、12、13または14の画像形成装置において、
上記潜像担持体一つに対して上記現像手段としての現像装置を複数備え、これら複数の該現像装置がそれぞれに異なる色トナーを備え、該異なる色のトナーを順次用いて該潜像担持体上にトナー像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項8、9、10、11、12、13、14、15または16の画像形成装置において、
上記帯電装置と上記潜像担持体とが、一体かつ本体に対して着脱可能に構成されたプロセスカートリッジ内に設けられていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2007−108468(P2007−108468A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299826(P2005−299826)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】