説明

帯電防止性シート及び包装用成形品

【課題】耐摩耗性が高く、外観にも優れる帯電防止性シートを提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂(A1)、ポリエチレン系樹脂(A2)及び充填剤(A3)で構成された基材層(A)の少なくとも一方の面に、ポリエチレン系樹脂(B1)、ポリプロピレン系樹脂(B2)及び高分子型帯電防止剤(B3)で構成された帯電防止層(B)を積層して、帯電防止性シートを得る。前記帯電防止層(B)において、ポリエチレン系樹脂(B1)とポリプロピレン系樹脂(B2)との割合(重量比)は、ポリエチレン系樹脂(B1)/ポリプロピレン系樹脂(B2)=55/45〜70/30程度である。この帯電防止性シートは、電子部品などの包装用成形品として適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密部品(半導体や電子部品)などの包装材料として適した帯電防止性シート及びこのシートを用いて形成された包装用成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や電子部品用包装材料は、静電気による障害又は破壊や粉塵の付着を防ぐために、帯電防止レベルの表面導電性が付与され、様々な条件下でその機能が発現することを要求されている。通常、絶縁レベルのプラスチックを帯電防止レベルにするための方法としては、(1)シート表面に帯電防止剤を塗布する方法、(2)カーボンブラック、金属酸化物などの無機系充填剤を練り込む方法、(3)低分子型帯電防止剤を練り込み、表面にブリードさせる方法などが挙げられる。しかし、塗布による方法(1)では、熱成形時に部分的に塗膜が破壊したり、磨耗によって塗膜が消失し、帯電防止性が損なわれる場合がある。
【0003】
無機系充填剤を練り込む方法(2)としては、例えば、特公平05−8097号公報(特許文献1)には、ポリプロピレン樹脂と充填剤10〜50重量%から成る樹脂組成物シート基材の片面もしくは両面に、カーボンブラックを5〜50重量部含有し、その表面比抵抗が1010Ω以下であるポリプロピレン樹脂組成物シートを積層した耐熱性複合ポリプロピレンシートが開示されている。しかし、この方法では、無機系充填剤が脱落しやすく、それが電子部品に付着することで回路の短絡などの不具合を生じさせる原因となりやすい。
【0004】
さらに、低分子型帯電防止剤を練り込む方法(3)は、帯電防止剤が表面にブリードすることにより帯電防止性能を発現する方法であり、例えば、特許3137697号公報(特許文献2)には、ポリプロピレン系樹脂組成物と充填剤10〜70重量%から成る合成樹脂製シート基材の両面に形成された表面層のうちの少なくとも1つの層に低分子量の帯電防止剤を含有した合成樹脂製シートが開示されている。しかし、この方法では、帯電防止剤の特性上、低湿度下における性能低下が激しい。また、帯電防止効果の持続性及び回復性を持たせるためには、大量の帯電防止剤が必要なため、樹脂組成物の特性が低下しやすく、コスト的にも不利である。
【0005】
そこで、帯電防止効果の持続性及び回復性を向上させるために、帯電防止剤として、高分子型帯電防止剤の使用も検討されている。一方、包装体として使用した場合に、輸送などで振動すると、電子部品などの被包装物との摩擦により、シート表面が削れて粉塵が発生するため、粉塵の発生を抑制する必要がある。また、液晶などの薄型パネル用包装材料においては、パネルの薄型化に伴いパネルが破損し易くなってきており、容器使用時の容器変形によるパネルの割れや輸送時の振動によるパネルの割れを防ぐ必要がある。そのため、様々な樹脂がその用途や目的によって使い分けられている。
【0006】
容器の変形を防ぐ目的では、剛性が高いポリスチレン樹脂が使用されることが多く、例えば、特開2006−305848号公報(特許文献3)には、ポリスチレン系樹脂の基材層の少なくとも片面に、ポリスチレン系樹脂及び高分子型帯電防止剤を含有する表皮層を有する積層シートが開示されている。しかし、ポリスチレン系シートで構成された成形体では、収納物品の形状によっては、摩耗によりシート表面が削れ易く、樹脂粉塵による異物付着の危険性がある。
【0007】
一方、耐熱性や耐摩耗性の要求される分野では、ポリプロピレン系樹脂が使用されることが多い。しかし、ポリプロピレン系樹脂は、剛性が低く、容器の変形によるパネルの割れが発生し易い。そこで、剛性を改善する方法として、ポリプロピレン系樹脂に充填剤としてタルクや炭酸カルシウムなどを添加することが一般に行われている。
【0008】
例えば、特開2006−205433号公報(特許文献4)には、ポリオレフィン系樹脂に充填剤20〜50質量部含有してなる樹脂層の少なくとも片面に、ポリプロピレン系樹脂98〜50質量部、ポリエチレン系樹脂2〜50質量部に、高分子型帯電防止剤を配合してなる表皮層を有する複合シートが開示されている。この文献には、表皮層のポリエチレン系樹脂の割合について、ポリエチレン系樹脂はシートを包装容器へ2次成形する際の加工性を向上する効果があり、2質量部未満ではその効果は十分に得られず、50質量部を超えるとシートの剛性等力学特性が損なわれると記載されている。
【0009】
しかし、このシートは、剛性に優れ、持続性のある帯電防止効果を有するものの、表面の硬度が硬すぎるため、薄型パネルなど被収納物の種類によっては、輸送途中の振動により、パネルと容器との接触により、パネルが破損する虞がある。また、ポリプロピレン系樹脂は、表面の耐摩耗性に優れるが、用途によっては十分ではなく、例えば、金属製品との摩擦により、粉塵が発生する。さらに、シートの外観も悪い。
【特許文献1】特公平05−8097号公報(特許請求の範囲第1項、実施例)
【特許文献2】特許第3137697号公報(請求項1、実施例)
【特許文献3】特開2006−305848号公報(請求項1及び5)
【特許文献4】特開2006−205433号公報(請求項1、段落[0020]、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、耐摩耗性が高く、外観に優れた帯電防止性シート及びこのシートで形成された包装用成形体を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、剛性と緩衝性とを両立し、包装材として電子部品などの内容物を破損から有効に保護可能な帯電防止性シート及びこのシートで形成された包装用成形体を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、低湿度下でも持続性に優れた帯電防止性能を有し、包装材として電子部品などの内容物を腐食からも有効に保護可能な帯電防止性シート及びこのシートで形成された包装用成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のポリオレフィン系樹脂及び充填剤で構成された基材層の上に、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを特定の割合で組み合わせて高分子型帯電防止剤を配合した帯電防止層を積層することにより、耐摩耗性が高く、外観に優れた積層シートが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の帯電防止性シートは、ポリプロピレン系樹脂(A1)、ポリエチレン系樹脂(A2)及び充填剤(A3)で構成された基材層(A)の少なくとも一方の面に、ポリエチレン系樹脂(B1)、ポリプロピレン系樹脂(B2)及び高分子型帯電防止剤(B3)で構成された帯電防止層(B)が積層された帯電防止性シートであって、ポリエチレン系樹脂(B1)とポリプロピレン系樹脂(B2)との割合(重量比)が、ポリエチレン系樹脂(B1)/ポリプロピレン系樹脂(B2)=55/45〜70/30である。前記帯電防止層(B)において、前記ポリエチレン系樹脂(B1)は、少なくとも高密度ポリエチレンを含んでいてもよい。前記ポリプロピレン系樹脂(A1)及びポリプロピレン系樹脂(B2)は、同種であり且つJIS K 7210の付属書A表1の条件Mで測定したメルトフローレート(MFR)が、それぞれ0.1〜2g/10分程度であってもよい。前記ポリエチレン系樹脂(A2)及びポリエチレン系樹脂(B1)は同種のポリエチレン系樹脂を含み且つJIS K 7210の付属書A表1の条件Dで測定したMFRが、それぞれ0.1〜2g/10分程度であってもよい。前記高分子型帯電防止剤(B3)の割合は、ポリエチレン系樹脂(B1)及びポリプロピレン系樹脂(B2)の合計100重量部に対して5〜40重量部程度である。前記高分子型帯電防止剤(B3)は、オレフィン系ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体で構成され、かつ高分子型帯電防止剤(B3)中のナトリウムイオン及び硫酸イオンの含有量は、それぞれ1〜100ppm程度であってもよい。前記基材層(A)において、ポリプロピレン系樹脂(A1)とポリエチレン系樹脂(A2)との割合(重量比)は、ポリプロピレン系樹脂(A1)/ポリエチレン系樹脂(A2)=70/30〜80/20程度であり、かつ充填剤(A3)の割合は、ポリプロピレン系樹脂(A1)及びポリエチレン系樹脂(A2)の合計100重量部に対して20〜30重量部程度である。
【0015】
本発明には、前記帯電防止性シートで形成された包装用成形品(電子部品包装用成形品など)も含まれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の帯電防止性シートは、帯電防止層において、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを特定の割合で組み合わせているため、耐摩耗性が高く、かつシートの外観にも優れている。従って、耐磨耗性が高いため、内容物の摩擦による粉塵の発生を抑制できる。また、剛性と緩衝性とを両立し、包装材として電子部品などの内容物を破損から有効に保護できる。すなわち、電子部品の包装材として、容器としては剛性があるにも拘わらず、表面状態は柔らかく、内容物を破損から有効に保護できる。さらに、低湿度下でも持続性に優れた帯電防止性能を有し、包装材として電子部品などの内容物を腐食からも有効に保護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の帯電防止性シートは、基材層(A)の少なくとも一方の面に、帯電防止層(B)が形成されている。
【0018】
[基材層(A)]
基材層(A)は、ポリプロピレン系樹脂(A1)、ポリエチレン系樹脂(A2)及び充填剤(A3)で構成されている。
【0019】
(A1)ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂(A1)は、プロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)の他、プロピレンコポリマー(プロピレン系共重合体)であってもよい。コポリマーとしては、プロピレンとα−オレフィン類[例えば、エチレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチルペンテン、4−メチルペンテン、4−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどのプロピレン以外のα−C2-16オレフィン(特にα−C2-6オレフィン)など]との共重合体、例えば、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム三元共重合体などが挙げられる。共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれでもよい。
【0020】
共重合体において、プロピレンとα−オレフィンとの割合(モル比)は、プロピレン/α−オレフィン=70/30〜100/0、好ましくは80/20〜99.9/0.1、さらに好ましくは90/10〜99.5/0.5(特に95/5〜99/1)程度である。α−オレフィンの割合が30モル%を超えると、剛性や耐熱性が低下し易い。さらに、ポリプロピレン系樹脂は、結晶性(又は結晶質)ポリプロピレン系樹脂であってもよく、非結晶性(又は非結晶質)ポリプロピレン系樹脂であってもよい。
【0021】
これらのポリプロピレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、剛性や耐熱性などの点から、結晶性ポリプロピレン系樹脂、特に、ポリプロピレンホモポリマー(結晶性ポリプロピレンホモポリマー)が好ましい。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂(A1)は、アタクチック重合体であってもよく、アイソタクチック、シンジオタクチック、メタロセン触媒を用いて得られるポリプロピレン系樹脂などの立体規則性を有する構造であってもよい。これらのうち、結晶性や簡便性などの点から、アイソタクチック構造を有するポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂(A1)のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜2g/10分、好ましくは0.15〜1.5g/10分、さらに好ましくは0.2〜1g/10分(特に0.25〜0.5g/10分)程度である。MFRが高すぎると、熱成形時にドローダウンし易くなり、二次成形が困難となる。また、成形品の厚みが不均一になるだけでなく、しわの原因になる。一方、MFRが低すぎると、押出成形が困難となる。なお、MFRは、JIS K 7210に準じて、JIS K 7210の付属書A表1の条件M(試験温度230℃、公称荷重2.16kgf(21.18N))で測定できる。
【0024】
(A2)ポリエチレン系樹脂
ポリエチレン系樹脂(A2)は、エチレンホモポリマー(エチレン単独重合体)の他、エチレンコポリマー(エチレン系共重合体)であってもよい。コポリマーとしては、プロピレンの他、前記ポリプロピレン系樹脂(A1)の項で例示されたα−C4-16オレフィンとの共重合体などが例示できる。α−オレフィンは、例えば、1−ヘキサンや1−オクテンなどの直鎖状α−C5-8オレフィンなどであってもよい。エチレンと、エチレン以外の他のα−オレフィンとの割合(モル比)は、エチレン/他のα−オレフィン=70/30〜100/0、好ましくは80/20〜99.9/0.1、さらに好ましくは85/15〜99.5/0.5(特に90/10〜99/1)程度であってもよい。エチレンコポリマーには、さらに他の共重合性単量体(例えば、(メタ)アクリル系単量体など)が含まれていてもよい。
【0025】
具体的に、ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン(例えば、直鎖状低密度ポリエチレンなど)、分岐鎖状ポリエチレン、低分子量ポリエチレン、アイオノマー、塩素化ポリエチレンなどが例示できる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリエチレン系樹脂のうち、ポリエチレン系樹脂(A2)は、通常、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレンなどである。
【0026】
さらに、ポリエチレン系樹脂(A2)は、シート(容器などの成形体)に剛性を付与する点から、高密度のポリエチレンを含むのが好ましい。このようなポリエチレンの密度は、例えば、940〜970kg/m3、好ましくは945〜965kg/m3、さらに好ましくは950〜970kg/m3程度である。
【0027】
さらに、ポリエチレン系樹脂(A2)は、シート成形におけるドローダウンを抑制する点から、前記高密度のポリエチレンと、低密度のポリエチレンとを組み合わせるのが好ましい。低密度のポリエチレンの密度は、例えば、900kg/m3以上940kg/m3未満、好ましくは905〜930kg/m3、さらに好ましくは910〜925kg/m3程度である。このような密度の低いポリエチレンとしては、例えば、いわゆる低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。本発明では、前記高密度ポリエチレンに加えて、低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレン(シート成形におけるドローダウンを抑制でき、かつ帯電防止性も向上できる観点から、特に低密度ポリエチレン)を含むのが好ましい。
【0028】
高密度のポリエチレンと低密度のポリエチレンとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=50/50〜100/0(例えば、55/45〜99/1)、好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましくは70/30〜90/10程度である。
【0029】
ポリエチレン系樹脂(A2)のメルトフローレート(MFR)も、ポリプロピレン系樹脂(A1)と同様の理由から、例えば、0.1〜2g/10分、好ましくは0.15〜1.5g/10分、さらに好ましくは0.2〜1g/10分(特に0.2〜0.5g/10分)程度である。なお、MFRは、JIS K 7210に準じて、JIS K 7210の付属書A表1の条件D(試験温度190℃、公称荷重2.16kgf(21.18N))で測定できる。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂(A1)とポリエチレン系樹脂(A2)との割合(重量比)は、ポリプロピレン系樹脂(A1)/ポリエチレン系樹脂(A2)=40/60〜99/1、好ましくは50/50〜90/10、さらに好ましくは60/40〜80/20程度である。ポリプロピレン系樹脂(A1)の割合が少なすぎると、耐熱性や剛性、弾力性など等が低下する。ポリエチレン系樹脂(A2)の割合が少なすぎると、ドローダウンの抑制効果が低下する。
【0031】
(A3)充填剤
基材層(A)は、シートの剛性を向上させるために、充填剤(A3)を含む。充填剤(A3)には、繊維状充填剤、板状又は粒状充填剤が含まれる。
【0032】
繊維状補強剤としては、例えば、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウム繊維など)、有機繊維(アラミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維など)などが挙げられる。
【0033】
板状又は粒状充填剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、炭化ケイ素、シリカ、石英粉末、ハイドロタルサイト、ガラス類(ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドガラスファイバー)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、マイカ、カオリン、クレー、ケイ藻土、ウォラストナイトなど)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなど)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、金属箔などが挙げられる。
【0034】
これらの充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。さらに、これらの充填剤は、樹脂中での分散性を向上させるため、オレフィン系樹脂(特にポリプロピレン系樹脂)と組み合わせてマスターバッチとしてもよく、マスターバッチ中での充填剤の含有量は、例えば、30〜95重量%、好ましくは50〜90重量%程度である。
【0035】
これらの充填剤のうち、剛性や強度や透明性などの点から、ガラス繊維などの無機繊維、タルクやマイカなどの板状又は粒状充填剤が好ましく、なかでも、板状又は粒状充填剤(特に、タルク)が好ましい。板状又は粒状充填剤の平均粒径は、例えば、1〜20μm、好ましくは2〜15μm、さらに好ましくは3〜10μm程度である。
【0036】
充填剤(A3)の割合は、ポリプロピレン系樹脂(A1)及びポリエチレン系樹脂(A2)の合計100重量部に対して、例えば、5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部、さらに好ましくは20〜30重量部程度である。
【0037】
(他の添加剤)
また、基材層(A)には、帯電防止剤(低分子帯電防止剤や後述する高分子型帯電防止剤など)、金属酸化物、カーボンブラック、導電性付与剤、高級アルコールなどを添加してもよい。
【0038】
さらに、基材層(A)には、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂(アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリビニルケトン系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂など)、加工助剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、核剤、滑剤、可塑剤、離型剤、耐衝撃改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料など)、分散剤、抗菌剤などを添加してもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0039】
基材層(A)の厚みは、例えば、100〜2000μm、好ましくは200〜1500μm、さらに好ましくは400〜1000μm程度である。
【0040】
[帯電防止層(B)]
帯電防止層(B)は、ポリエチレン系樹脂(B1)、ポリプロピレン系樹脂(B2)及び高分子型帯電防止剤(B3)で構成されている。
【0041】
(B1)ポリエチレン系樹脂
ポリエチレン系樹脂(B1)としては、前記ポリエチレン系樹脂(A2)の項で例示されたポリエチレン系樹脂が挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0042】
ポリエチレン系樹脂(B1)は、前記ポリエチレン系樹脂(A2)と同種であってもよく、異なっていてもよいが、同種のポリエチレン系樹脂を含むのが好ましい。さらに、ポリエチレン系樹脂(B1)も、ポリエチレン系樹脂(A2)と同様に、シートに剛性及び耐摩耗性を付与する点から、少なくとも高密度のポリエチレンを含むのが好ましい。なお、ポリエチレン系樹脂(B1)は、表層としての緩衝効果を向上させる点から、高密度のポリエチレンと低密度のポリエチレンとを組み合わせてもよいが、剛性及び耐摩耗性の点から、実質的に低密度のポリエチレンを含まないのが好ましい。
【0043】
高密度のポリエチレンと低密度のポリエチレンとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=70/30〜100/0、好ましくは80/20〜100/0、さらに好ましくは90/10〜100/0(例えば、90/10〜99/1)程度である。
【0044】
ポリエチレン系樹脂(B1)のメルトフローレート(MFR)は、ポリエチレン系樹脂(A2)と同様である。
【0045】
(B2)ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂(B2)としては、前記ポリプロピレン系樹脂(A1)の項で例示されたポリプロピレン系樹脂が挙げられる。これらのポリプロピレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
ポリプロピレン系樹脂(B2)は、前記ポリプロピレン系樹脂(A1)と同種であってもよく、異なっていてもよいが、同種であるのが好ましく、ポリプロピレン系樹脂(A1)と同様の理由で、結晶性ポリプロピレン系樹脂、特に、ポリプロピレンホモポリマー(結晶性ポリプロピレンホモポリマー)が好ましい。立体構造についても、アイソタクチック構造を有するポリプロピレン系樹脂が好ましく、メルトフローレート(MFR)もポリプロピレン系樹脂(A1)と同様である。
【0047】
ポリエチレン系樹脂(B1)とポリプロピレン系樹脂(B2)との割合(重量比)は、ポリエチレン系樹脂(B1)/ポリプロピレン系樹脂(B2)=55/45〜70/30、好ましくは57/43〜65/35、さらに好ましくは58/42〜63/37程度である。本発明では、表面層である帯電防止層(B)において、両樹脂の割合を特定の範囲にすることにより、耐摩耗性に優れるだけでなく、押出成形して得られたシートの外観をも向上できる。
【0048】
一方、ポリエチレン系樹脂(B1)の割合が少なすぎると、緩衝性及び耐摩耗性が低下し、ポリプロピレン系樹脂(B2)の割合が少なすぎると、耐熱性や剛性が低下し、シートの外観も低下する。特に、ポリエチレン系樹脂(B1)及びポリプロピレン系樹脂(B2)の合計量に対してポリプロピレン系樹脂(B2)の割合が50重量%を超えると、ポリプロピレン系樹脂の割合が増加するに従って、急激に摩耗量が増加する。
【0049】
(B3)高分子型帯電防止剤
高分子型帯電防止剤(B3)としては、高分子量(例えば、数平均分子量1000以上)の帯電防止剤であればよく、特に制限されず、例えば、オレフィン系ブロック及び/又はポリアミド系ブロックと、親水性ブロックとのブロック共重合体などが挙げられるが、本発明では、前記ポリエチレン系樹脂(B1)及びポリプロピレン系樹脂(B2)との親和性や分散性などの点から、オレフィン系ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体が好ましい。
【0050】
前記オレフィン系ブロックを構成するオレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのC2−6オレフィンが例示できる。これらのオレフィンのうち、エチレン及びプロピレンから選択された少なくとも一種が好ましく、特に、少なくともプロピレンを含むのが好ましい。オレフィン系単量体のうち、プロピレンの割合は80モル%以上(特に90モル%以上)が好ましい。ポリオレフィンブロックにおいて、オレフィン系単量体(C2−6オレフィン、特にエチレン及び/又はプロピレン)の含有量は、80モル%以上(特に90モル%以上)程度である。ポリオレフィンブロックの数平均分子量は、2000〜50000、好ましくは3000〜40000、さらに好ましくは5000〜30000程度である。
【0051】
親水性ブロックとしては、例えば、ポリエーテル系ポリマー(又はノニオン性ポリマー)、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーなどが例示できる。親水性ブロックを構成する親水性単量体としては、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのC2−6アルキレンオキシド)、特にエチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのC2−4アルキレンオキシドなどが好ましい。好ましい親水性ブロックとしては、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドなどのポリC2−4アルキレンオキシド)が好ましい。ポリアルキレンオキシドの重合度は2〜300(例えば、5〜200)、好ましくは10〜150、さらに好ましくは10〜100(例えば、20〜80)程度である。
【0052】
前記オレフィン系ブロックと、親水性ブロックとは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などを介して結合されている。これらの結合は、例えば、ポリオレフィンを変性剤で変性した後、親水性ブロックを導入することにより形成できる。例えば、ポリオレフィンを変性剤で変性して活性水素原子を導入した後、アルキレンオキシドなどの親水性単量体を付加重合することによって導入される。このような変性剤としては、例えば、不飽和カルボン酸又はその無水物((無水)マレイン酸など)、ラクタム又はアミノカルボン酸(カプロラクタムなど)、酸素又はオゾン、ヒドロキシルアミン(2−アミノエタノールなど)、ジアミン(エチレンジアミンなど)又はこれらの組み合わせなどが例示できる。
【0053】
高分子型帯電防止剤(B3)の数平均分子量は、1000以上(例えば、1000〜100000)、好ましくは2000〜60000、さらに好ましくは2000〜50000(特に3000〜20000)程度である。
【0054】
このような高分子型帯電防止剤(B3)は、単独でも高い帯電防止性を有しているが、さらに金属塩類と組み合わせて用いてもよい。金属塩類と帯電防止性樹脂(B3)とを組み合わせると、金属塩類から解離した金属イオンが、高分子型帯電防止剤の親水性ブロックに対して作用してイオン伝導性を発現することにより、高分子型帯電防止剤の持続性などをさらに向上できる。
【0055】
金属塩類としては、通常、アルカリ金属塩類、アルカリ土類金属塩類が使用され、例えば、過塩素酸アルカリ金属塩(過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウムなど)、過塩素酸アルカリ土類金属塩(過塩素酸マグネシウムなど)、トリフルオロメタンスルホン酸アルカリ金属塩(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムなど)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウムなど]、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドのアルカリ金属塩[トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウム、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドナトリウム]などが挙げられる。これらの金属塩類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属塩類の中でも、リチウム塩類、特に、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムなどのフッ素原子及びスルホニル基又はスルホン酸基を有するリチウム金属塩が好ましい。
【0056】
金属塩類の割合は、高分子型帯電防止剤(B3)100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.01〜10重量部程度である。
【0057】
高分子型帯電防止剤(B3)は、前述のように、帯電防止性を向上するためには、金属塩類(金属イオン)を含有するのが好ましいが、本発明のシートを金属製品や半導体などの電子部品の包装材として用いる場合など、金属の腐食や汚染を抑制する観点から、イオン含有量が適度な範囲にあるのが好ましい。具体的には、帯電防止剤中のナトリウムイオン(Na+)の含有量は、例えば、1〜100ppm、好ましくは2〜95ppm、さらに好ましくは10〜90ppm(特に50〜90ppm)程度である。さらに、硫酸イオン(SO42-)の含有量は、例えば、1〜100ppm、好ましくは2〜90ppm、さらに好ましくは10〜70ppm(特に30〜70ppm)程度である。
【0058】
高分子型帯電防止剤(B3)の割合(重量比)は、ポリエチレン系樹脂(B1)及びポリプロピレン系樹脂(B2)の合計100重量部に対して、例えば、5〜40重量部、好ましくは10〜30重量部、さらに好ましくは15〜25重量部程度である。
【0059】
帯電防止層(B)には、ポリエチレン系樹脂(B1)とポリプロピレン系樹脂(B2)と高分子型帯電防止剤(B3)との分散性を向上させ、表面概観、衝撃強度などを改善する目的で相溶化剤(例えば、エチレンプロピレンゴムなど)を添加してもよい。さらに、帯電防止層(B)にも、必要に応じて、前記基材層(A)の項で例示された慣用の添加剤を添加してもよい。
【0060】
帯電防止層(B)の厚み(基材層(A)の両面に形成する場合は各層の厚み)は、例えば、5〜200μm、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは20〜100μm(特に30〜80μm)程度である。
【0061】
[帯電防止性シート]
本発明の帯電防止性シートは、前記基材層(A)の少なくとも一方の面に、前記帯電防止層(B)が積層され、用途によっては片面のみに帯電防止層(B)を積層すれば充分な場合もあるが、通常、基材層(A)の両面に帯電防止層(B)が積層されているのが好ましい。
【0062】
本発明の帯電防止性シートの厚みは、300〜2500μm、好ましくは400〜2000μm、さらに好ましくは500〜1800μm程度である。
【0063】
基材層(A)と帯電防止層(B)(基材の層の両面に導電層を形成する場合は、各導電層)との厚み比は、基材層(A)/帯電防止層(B)=3/1〜50/1程度の範囲から選択でき、例えば、5/1〜30/1、好ましくは6/1〜25/1、さらに好ましくは7/1〜20/1(特に8/1〜18/1)程度である。
【0064】
本発明の帯電防止性シートは導電性に優れ、その表面固有抵抗率は、JIS K 7194に準拠した方法(成形後温度20℃、湿度20%RHで2日間経過したとき)において、例えば、1012Ω/□以下、好ましくは107〜1011Ω/□程度)、さらに好ましくは108〜1010Ω/□程度である。本発明では、シートの導電性だけでなく、シートを二次成形しても、高い導電性を有している。例えば、二次成形で延伸や配向した場合や金型非接触面であっても、高い帯電防止性を維持できるため、成形品全体に亘り均一に帯電防止できる。
【0065】
[帯電防止性シートの製造方法]
帯電防止性シートは、特に制限されず、各層の各成分を混合して樹脂組成物を調製した後、慣用の方法によりシート状に成形することにより製造できる。樹脂組成物は、各成分の粉粒体の混合物であってもよく、各成分を混練して調製してもよい。混練には、慣用の方法を用いることができ、例えば、各成分をヘンシェルミキサーやリボンミキサーで乾式混合し、単軸や2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの慣用の溶融混合機に供給して溶融混練することができる。樹脂組成物は、ペレットの形態であってもよい。また、混練の配合順序は限定されず、例えば、基材層の場合、全成分を同時に溶融混練してもよいし、ポリプロピレン系樹脂(A1)と充填剤(A3)とを溶融混練したペレットと、ポリエチレン系樹脂(A3)のペレットとをブレンドしてもよい。
【0066】
シート状に成形する方法としては、例えば、エキストルージョン法[ダイ(フラット状、T状(Tダイ)、円筒状(サーキュラダイ)等)法、インフレーション法など]などの押出成形法、テンター方式、チューブ方式、インフレーション方式などによる延伸法などが挙げられる。樹脂シートは、延伸(一軸延伸、二軸延伸など)してもよいし、未延伸であってもよい。樹脂シートは、得られた各シートをヒートラミネーションやドライラミネーションなどの方法により調製してもよいが、各構成層用の樹脂組成物を、汎用のフィードブロック付きダイやマルチマニホールドダイ等を使用して共押出する方法により調製するのが好ましい。共押出法では、薄い表面層を得ることができ、かつ量産性に優れる。尚、ラミネーション法においては、必ずしも接着剤は必要としない。
【0067】
[二次成形品]
このようにして得られた帯電防止性シートは、自由吹込成形、真空成形、折り曲げ加工、圧空成形、マッチモールド成形、熱板成形などの慣用の熱成形などで二次成形することができる。二次成形品の形態は、被収容物を静電気から保護できる限り、特に限定されない。容器の場合、例えば、被収容物を収容するための凹部を有する容器本体だけでなく、容器本体及び蓋体で構成されていてもよい。二次成形品としては、例えば、包装用材料、食品用容器、薬品用容器、トレー、エンボステープ又はキャリアテープ、マガジンなどが挙げられる。
【0068】
本発明の帯電防止性シートから得られた二次成形品は、前述の如く、金型に対する非接触面のみならず、延伸や配向が生じる熱成形域での帯電防止性も大きく向上されている。より具体的には、収容凹部を成形すると、収容凹部の底壁の内外面及び側壁の内外面での帯電防止性を早期に発現でき、しかも持続できる。そのため、成形容器の積重ねや積重ねた成形容器の取り出し、テープの巻回や巻回したテープの巻き戻しにおいて、剥離帯電することもない。
【0069】
シートや二次成形品の表面は、表面処理(例えば、コロナ放電やグロー放電等の放電処理、酸処理、焔処理など)を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の積層シートは、帯電防止性に優れるとともに、成形性、耐熱性、機械的特性などの各種特性に優れるので、前記二次成形品の中でも、静電気障害が懸念される電子部品又は部材の包装用成形品、例えば、液晶などの電子部品用包装材料、半導体や電子部品の包装材料、半導体や電子部品を収容するための収容凹部を有する搬送用成形品(例えば、電子部品搬送用トレー、キャリアテープなど)に有用である。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、文中、特に断わりのない限り、「部」及び「%」は重量基準である。また、実施例における各評価項目の評価方法、及び用いた各成分の内容は以下の通りである。
【0072】
[表面固有抵抗]
得られた積層シートについて、温度20℃、湿度20%RHの条件下で2日間調湿した後、低抵抗率計[三菱化学(株)製、ロレスタ(Loresta)−GP(MCP−T600)]を用いて、JIS K69114に準じて、測定温度20℃、測定湿度60%RH、印加電圧100V、印加時間60秒、外界遮断型ボックス内にて、シートの表面(キャストロール側)及び裏面(タッチロール側)の両面について表面抵抗値を測定した。
【0073】
[引張弾性率]
得られた積層シートについて、JIS K 7113に準拠して、引張速度50mm/分でシートの引張弾性率を測定した。
【0074】
[シート外観]
得られた積層シートの外観について、目視によりシート表面の荒れ具合を観察し、以下の基準で評価した。
【0075】
○:表面が均一で平滑に見える
△:表面に凹凸は見られないが、ムラが見える
×:表面に凹凸が見える。
【0076】
[耐磨耗性]
JIS K 7204に準拠して、摩耗輪CS−17、加重4.9N×2、測定回数1000回転、回転速度72rpmの条件でテーパー摩擦試験を行った後、サンプルの質量を測定し、摩擦試験前の質量からの差を摩耗量とした。測定はn=3で行い、平均値で示した。
【0077】
[表面硬度]
JIS K 5400に準拠して、鉛筆硬度(加重250g)を測定した。
【0078】
[剛性(容器撓み)]
330mm×550mmサイズの成形品の長辺の片側150mmを固定し、反対側に413.6gの錘を乗せ、錘を乗せた後10秒後のたわみ量を測定した。
【0079】
[イオン溶出量]
各試料6gを精秤し、超純水を15g加えた後、室温にてよく振とうしながら20分間抽出し、この液中に溶出したイオン量をイオンクロマトグラフにて測定した。
【0080】
[各成分の内容]
PP:プロピレンホモポリマー((株)プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロ E110G」、MFR:0.3g/10分、密度900kg/m
HDPE:高密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名「ニポロンハード 6200」、MFR=0.21g/10分、密度=960kg/m
LDPE:低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名「ペトロセン 173」、MFR=0.3g/10分、密度=920kg/m
充填剤:タルクマスターバッチ(竹原化学工業(株)製、商品名「MAX8080T」、タルクの平均粒子径=9μm、タルクの含量=80%、ベース樹脂:ポリプロピレン)
帯電防止剤1:オレフィン系高分子型帯電防止剤(三洋化成工業(株)製、商品名「ペレスタット 212」、MFR=12g/10分、密度=1000kg/m3、含有イオン量=Na+:80ppm、SO42-:62ppm)
帯電防止剤2:オレフィン系高分子型帯電防止剤(三洋化成工業(株)製、商品名「ペレスタット 230」、MFR=12g/10分、密度=1000kg/m3、含有イオン量=Na+:221ppm、SO42-:177ppm)。
【0081】
実施例1〜5及び比較例1〜7
多層押出機(二種三層押出機)の第1の単軸押出機(スクリュー径50mm、L/D=25)に、表1に示す帯電防止層を構成するペレットをシリンダー温度230℃で供給し、第2の単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=32)に、表1に示す基材層を構成する樹脂組成物をシリンダー温度230℃で供給し、フィードブロック内で、基材層の両面に帯電防止層を合流させて積層し、Tダイキャスト法によりシート状に押し出した後、冷却ロールによって冷却し、幅700mm、総厚み800μmの積層シートを得た。エアギャップは150mmとし、引き取り速度は1.8〜1.9m/分とし、積層比を1/15/1とした。得られた積層シートの評価結果を表1に示す。さらに、得られた積層シートについて、帯電防止層におけるオレフィン系樹脂(ポリエチレン及びポリプロピレンの合計量)に対するポリプロピレンの割合と摩耗量(耐摩耗性)との関係を図1に示す
【0082】
【表1】

【0083】
表1の結果より、実施例1〜5のシートは、帯電防止性、引張弾性率、シート外観、耐摩耗性、剛性に優れ、イオンの溶出量も少ない。これに対して、比較例1〜2では、帯電防止層中のポリプロピレンの割合が多すぎるため、摩耗が大きい。比較例3及び5のシートでも、帯電防止層中のポリプロピレンの割合が多いため、シート外観が低下している。比較例5〜7のシートでは、ポリプロピレンの割合が少ないため、シート外観が低下している。
【0084】
さらに、図1の結果から明らかなように、帯電防止層におけるオレフィン系樹脂中のポリプロピレン含有量が50%を超えると、ポリプロピレンの割合が増加するにつれて、急激に摩耗量が増加している。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、実施例1〜5及び比較例1〜7で得られた積層シートにおける帯電防止層のオレフィン系樹脂中のポリプロピレンの割合と摩耗量との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂(A1)、ポリエチレン系樹脂(A2)及び充填剤(A3)で構成された基材層(A)の少なくとも一方の面に、ポリエチレン系樹脂(B1)、ポリプロピレン系樹脂(B2)及び高分子型帯電防止剤(B3)で構成された帯電防止層(B)が積層された帯電防止性シートであって、ポリエチレン系樹脂(B1)とポリプロピレン系樹脂(B2)との割合(重量比)が、ポリエチレン系樹脂(B1)/ポリプロピレン系樹脂(B2)=55/45〜70/30である帯電防止性シート。
【請求項2】
ポリエチレン系樹脂(B1)が、少なくとも高密度ポリエチレンを含む請求項1記載の帯電防止性シート。
【請求項3】
ポリプロピレン系樹脂(A1)及びポリプロピレン系樹脂(B2)が同種であり且つJIS K 7210の付属書A表1の条件Mで測定したメルトフローレート(MFR)が、それぞれ0.1〜2g/10分であり、ポリエチレン系樹脂(A2)及びポリエチレン系樹脂(B1)が同種のポリエチレン系樹脂を含み且つJIS K 7210の付属書A表1の条件Dで測定したMFRが、それぞれ0.1〜2g/10分であり、高分子型帯電防止剤(B3)の割合が、ポリエチレン系樹脂(B1)及びポリプロピレン系樹脂(B2)の合計100重量部に対して5〜40重量部である請求項1又は2記載の帯電防止性シート。
【請求項4】
高分子型帯電防止剤(B3)が、オレフィン系ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体で構成され、かつ高分子型帯電防止剤(B3)中のナトリウムイオン及び硫酸イオンの含有量が、それぞれ1〜100ppmである請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止性シート。
【請求項5】
ポリプロピレン系樹脂(A1)とポリエチレン系樹脂(A2)との割合(重量比)が、ポリプロピレン系樹脂(A1)/ポリエチレン系樹脂(A2)=70/30〜80/20であり、かつ充填剤(A3)の割合が、ポリプロピレン系樹脂(A1)及びポリエチレン系樹脂(A2)の合計100重量部に対して20〜30重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止性シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の帯電防止性シートで形成された包装用成形品。
【請求項7】
電子部品の包装に用いられる請求項6記載の包装用成形品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−143031(P2009−143031A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320361(P2007−320361)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(501073426)ダイセルパックシステムズ株式会社 (20)
【出願人】(594012667)シーダム株式会社 (5)
【Fターム(参考)】