説明

帯電防止性多層シートの製造方法

【課題】押出シート成形による透明性に優れ表面平滑性を有する帯電防止性能を有する多層シート、さらには帯電防止性能を有すると共に光拡散性を有する多層シートを提供する。
【解決手段】コア層(A)と、帯電防止層(B)と、多層シート表面の片面又は両面に位置する被覆層(C)で構成される帯電防止性多層シートの製造方法であって、前記(A)〜(C)層の各樹脂層形成用溶融物をダイ10に導入し、下記式(1)で表される前記ダイのリップ部分11の平行ランド部のせん断量を0.1〜170として、ダイ10から共押出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持続的な帯電防止性を有する帯電防止性の多層シートの製造方法に関する。さらには、帯電防止性を有すると共に光拡散性を有する多層シートに関し、照明器具、照明カバー、エレクトロニクス製品、家電製品、OA機器等の各種部品や看板、ディスプレー、各種機器の前面板等の静電気を防止し光拡散板用材料として好適な多層シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル系樹脂等を代表とする透明性の高い樹脂は優れた透明性と耐候性、剛性を有することから、例えば、エレクトロニクス製品や家電製品、OA機器等の各種部品や看板、装飾材料、ディスプレー、各種機器の前面板の素材として幅広く利用されてきており、また光拡散剤を含む光拡散シートは、ディスプレー拡散板、照明看板、照明カバーに広く利用されており、近年はテレビの液晶パネルやパソコンの液晶パネルのバックライトユニットの光拡散板に利用されてきている。
【0003】
照明器具、照明カバー、エレクトロニクス製品、家電製品、OA機器等の各種部品や看板、ディスプレー、各種機器などの光拡散シートとして光透過性および拡散性を有するアクリル系樹脂を主体とする樹脂シートが種々知られている。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等には特定の樹脂粒子を拡散剤として使用することが開示されており、特許文献3には特定の紫外線防止剤を含有する樹脂組成物が開示されている。
【0004】
一方、合成樹脂製品は一般に摩擦等により容易に帯電するため、ゴミや埃が付着して外観を損たり、あるいは電子機器部品等では静電気によるトラブルを発生する問題があり、透明性を維持しつつ帯電防止性を改良した透明性の高い樹脂シートの開発が要望されてきている。また、上記樹脂シートに光拡散剤を添加してなる光拡散シートにおいては、長期に渡って使用されるものであり、帯電により埃を吸着してしまうと、投射光の透過率を低下させる。また、加工、スリット時にも切子がシートに付着してトラブルになるなどの問題を抱えていた。そこで、高い透過性と光拡散性を維持しつつ、特に、持続的な帯電防止性を有する光拡散シートの開発が望まれていた。
【0005】
一般に合成樹脂製シートに帯電防止性を付与する方法としては、界面活性剤を基材樹脂に練り込んだり、製品シート表面に界面活性剤を塗布する方法が知られている。しかしながら、帯電防止剤として界面活性剤を使用した帯電防止方法では水洗や摩擦により帯電防止剤が除去されやすく持続的な帯電防止性能を付与することは不可能であった。
【0006】
一方、合成樹脂製シートに持続的な帯電防止性能を付与する方法として、高分子型帯電防止剤を基材樹脂に添加して製品シート中に帯電防止剤を含有させることにより持続的な帯電防止性能が得られることが知られている。このような高分子型帯電防止剤は、例えば、ポリエチレングリコール−メタクリレート共重合体、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリエチレンオキシド−エピクロルヒドリン共重合体が実用化されている。このような高分子型帯電防止剤を用いることにより、界面活性剤の場合にみられる帯電防止効果の消失を防ぐことはできる。
【0007】
特許文献4には、特に直下照射方式のバックライトユニットに用いられる光拡散板としてスチレン系樹脂に高分子型帯電防止剤を添加した帯電防止性を有する光拡散板が開示されている。また特許文献5には、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単位との共重合体樹脂に光拡散剤を含有する樹脂組成物の層に、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単位とが特定比率である共重合体の層からなる積層シートに高分子型帯電防止剤を添加した光拡散板が提案されている。
【0008】
これらの高分子型帯電防止剤を添加した光拡散板を押出シート成形法により連続して樹脂シートを製造すると、ポリッシングロール表面が高分子型帯電防止剤により汚染され、その影響によりシート表面に凹凸が生じ、表面が平滑な良好な製品を連続して得ることが困難であった。
【0009】
特許文献6には、高分子型帯電防止剤を使用したシートとして、基材のアクリル系樹脂層の少なくとも片面に、高分子型帯電防止剤を含有する樹脂層を積層し、さらにアクリル系樹脂及び/又はフッ化ビニリデンからなる樹脂層を積層した積層シートが開示されている。しかしながら、特許文献6には高分子型帯電防止剤を用いて押出シート成形法によりシート製品を連続的に製造する場合に発生するポリッシングロール表面の汚染、これに伴う製品シートの表面状態を悪化させるという課題については何ら考慮されていない。
【0010】
上記「押出シート成形法」は、押出機先端部に備えられたフラットダイ(Tダイ)のスリットから溶融樹脂をシート状に押出し、ダイの下流側に設けられた引取りロール(ポリッシングロール等)により引取り、シートに成形する方法をいう。通常、ポリッシングロールとしては、硬質クロムメッキでコーティングされて鏡面仕上げされた平滑表面を持つ金属ロールが使用される。
【0011】
高分子型帯電防止剤によりロール表面が汚染され、それが要因となって製品シートの表面状態を悪化させるという問題を解決する方法として、特許文献7には、ロール温度を50〜80℃という比較的低い温度にコントロールすることにより、高分子型帯電防止剤の移行を防止し、ロール汚染を解決し得ることが開示されている。しかし、このような低いロール温度では、厚みの厚いシートを製造した場合、得られるシートは反りが発生し易いと共に平滑な表面も得られ難い。表面が平滑で反りを生じないシートを製造するためには、ロール温度を高くせざるを得ない。しかしロール温度を高くするとロール汚染が生じ易くなり、ロール表面の汚染を除去する作業や、ロールを交換することが必要となり、長時間連続して安定した製造をすることができなくなり、生産効率が悪く、結果としてコストアップの要因になってしまうという問題がある。
【0012】
また、特許文献8に、ロール汚染性の低い高分子型帯電防止剤が提案され、該高分子型帯電防止剤を使用することにより、表面状態の良好な製品が得られることが開示されている。しかしながら、特許文献8においてロール汚染性については、厚さ200μmのような薄いフィルムを20℃に温調したロールで引取った場合のフィルムについて評価されており、押出シート成形によりフィルムよりも厚いシートを製造する際のポリッシングロールの汚染性の有無に関しては何ら言及されていない。上記の高分子型帯電防止剤を使用して押出シート成形により比較的高いロール温度によりシートを製造したときロールの汚染防止は十分満足できるものではなく、未だ十分に解決されていないのが現状である。
【0013】
また、高分子型帯電防止剤を使用し、表面特性の変化がなくイオン性不純物の溶出が少なく被包装物の汚染が押さえられた多層フィルムが特許文献9に開示されているが、特許文献9はキャスティングまたはインフレーションによる包装用の多層フィルムであり、押出シート成形により多層シートを製造する際のポリッシングロールの汚染性、製品シートの表面状態の悪化については何ら開示されていない。
【0014】
したがって、押出シート成形法による高分子型帯電防止剤を用いた透明で表面状態が良好なシート、特に厚みの厚いシートの生産は、実現出来ていないのが実状である。
また、光拡散シートにおいても、表面状態が良好で、厚みの厚いシートは得られていない。

【0015】
【特許文献1】特開平3−231954号公報
【特許文献2】特開平9−255839号公報
【特許文献3】特開2003−26888号公報
【特許文献4】特開2006−133567号公報
【特許文献5】特開2006−154445号公報
【特許文献6】特開平7−1682号公報
【特許文献7】特開平8−80599号公報
【特許文献8】特開2006−206894号公報
【特許文献9】特開2006−15741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、押出シート成形による透明性に優れ表面平滑性と良好な外観を有する帯電防止性能を有する多層シート、また、帯電防止性能を有すると共に表面平滑性と良好な外観を有し、光拡散性を有する多層シートを提供することにある。
【0017】
高分子型帯電防止剤を含有する表面層を持つシートが、押出シート成形に際してロール汚染を引起す原因は、高分子型帯電防止剤特有の性質によるものと推察される。すなわち、高分子型帯電防止剤は親水性ポリマー単位と親油性ポリマー単位とを有する共重合体で、その共重合体中にアルカリ金属塩を導入することによりイオン導電性の機能を付与し、さらに熱可塑性樹脂に混合された際に帯電防止性能を付与するために熱可塑性樹脂との相溶性を高めることが必要である。このような性質を具備するようにした場合には高分子型帯電防止剤は極性の高いものにならざるを得ない。さらには高分子型帯電防止剤には、帯電防止効果を高めるために加えられる低分子量有機物等も存在するため、通常の押出シート成形で使われる60〜180℃に温調された硬質クロムメッキしたポリッシングロール表面に付着し易くなるという根本的な問題があった。
そこで、本発明者等は、ロール汚染防止のために、透明樹脂に高分子型帯電防止剤を添加した樹脂組成物層の外側に、高分子型帯電防止剤を添加しない透明樹脂層が形成されるようにして共押出しする方法を試みた。その結果、長時間にわたってロール汚染が防止されることが確認された。
しかしながら、上記のように、共押出方法により多層化した場合では、得られる多層シートの各層の界面にウロコ模様が発生するという別な問題が発生した。
【0018】
本発明は上記の実情に鑑み為されたもので、押出シート成形におけるポリッシングロー
ル表面の汚染の発生が防止され、シートの外観を損なうことなく、安定的に厚みの厚い多
層シート製品の生産が可能な製造方法、かつ持続的な帯電防止性能を有する多層シート
並びに同様の作用効果を有する光拡散シートを提供することを目的とするものある。
なお、本発明において、「高分子型帯電防止剤」を単に「帯電防止剤」、「高分子型帯電防止剤を含有する層」を単に「帯電防止層」と表記することがある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、
(1)透明樹脂(a)を基材樹脂とするコア層(A)形成用溶融物と、透明樹脂(b)を基材樹脂として高分子型帯電防止剤を含む帯電防止層(B)形成用溶融物と、透明樹脂(c)を基材樹脂として高分子型帯電防止剤を実質的に含まない被覆層(C)形成用溶融物とを、ダイ内で積層合流させて共押出する帯電防止性多層シートの製造方法であって、前記被覆層が前記多層シートの少なくとも一方の最外面となり、且つ前記帯電防止層が前記被覆層の内面に接して、且つ前記コア層の少なくとも外面側となるように前記各溶融物をダイ内で積層合流することにより、積層合流物となし、下記式(1)で表される前記ダイのリップ部分の平行ランド部の前記積層合流物のせん断量を0.1〜170とすることを特徴とする帯電防止性多層シートの製造方法。
(数2)

【0020】
(2)前記帯電防止層において、前記高分子型帯電防止剤の溶融粘度と透明樹脂(b)の溶融粘度との比が1:35〜1:1.5であることを特徴とする前記(1)記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【0021】
(3)前記透明樹脂(b)の溶融粘度が600〜2500Pa・sであり、前記透明樹脂(c)の溶融粘度が前記透明樹脂(b)の溶融粘度以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【0022】
(4)前記帯電防止層において、前記高分子型帯電防止剤の添加量が、前記透明樹脂(b)と前記高分子型帯電防止剤との総和量に対して5重量%〜40重量%でありし、前記帯電防止層の厚みが20〜300μmであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【0023】
(5)前記帯電防止性多層シートにおける前記被覆層の厚みが2〜50μmであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【0024】
(6)前記帯電防止性多層シートの全体厚みが0.5〜15mmであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【0025】
(7)前記帯電防止性多層シートのイエローインデックス値が2.6以下であり、前記帯電防止性多層シートの帯電圧半減期測定における初期帯電圧が2.5kV以下である多層シートであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【0026】
(8)前記帯電防止性多層シートが、前記コア層又は帯電防止層の少なくとも一つの層に光拡散剤を含有する多層シートであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の帯電防止多層シートの製造方法。
【0027】
(9)前記被覆層において、耐候安定剤の添加量が、前記被覆層の基材樹脂100部に対して0.05〜0.8重量部であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【0028】
(10)前記帯電防止性多層シートを構成する各層の基材樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
を要旨とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明により得られる多層シートは、透明樹脂(a)を基材樹脂とするコア層(A)形成用溶融物と、透明樹脂(b)を基材樹脂として高分子型帯電防止剤を含む帯電防止層(B)形成用溶融物と、透明樹脂(c)を基材樹脂として高分子型帯電防止剤を実質的に含まない被覆層(C)形成用溶融物とを、ダイ内で積層合流させて、前記被覆層が前記多層シートの少なくとも一方の最外面となり、且つ前記帯電防止層が前記被覆層の内面に接して、且つ前記コア層の少なくとも外面側となるように前記各溶融物をダイ内で積層合流することにより製造される。
上記の共押出において、被押出物がダイリップの平行ランド部を通過する時にせん断によって帯電防止剤を含有する層と帯電防止剤を含有しない層、とりわけ帯電防止層と被覆層との界面でゆがみ(ズレ)を生じ、多層シートの表面全体に目視で確認できるウロコ模様が発生する。上記したウロコ模様は、シート外観を悪化させ、商品価値を低下させる。
【0030】
上記のウロコ模様は、多層のシート状に形成される各層溶融物の積層合流物がTダイのリップの平行ランド部を通過する際に受けるせん断をコントロールし、平行ランド部のせん断量を特定の範囲に調整して押出すことによりウロコ模様の発生を防止することができることを本発明者等は見出した。ここで、本発明において、平行ランド部とは、ダイの略平行状の最終部分をいう。
【0031】
前記せん断量は、ダイリップ間隙、リップの平行ランド長、ならびに押出量によってコントロールすることができ、前記式(1)により求められるせん断量を、この種のシートを製造する通常の場合よりも大きく低下させて共押出することによりウロコ模様が著しく減少した又はウロコ模様の存在しない外観が良好である多層シートが得られることを本発明者等は見出した。
【0032】
また、本発明の多層シートの製造方法により、様々な添加剤をコア層に導入した帯電防止性多層シートを製造することが可能となる。
また、前記多層シートを構成する少なくとも一つの層に光拡散剤を含有させることができるので、帯電によるゴミや埃の付着を防止することができ、静電気によるトラブルの発生を防止することができる、持続的な帯電防止性を有すると共に光拡散性を有する表面が平滑で外観が良好な光拡散性多層シートを提供することができる。
【0033】
本発明において、特に、光拡散剤が前記コア層及び/又は帯電防止層に含有されていることにより持続的な帯電防止性能を示すとともに、透過性を有し光拡散性を有する表面が平滑で外観が良好な光拡散性多層シートを提供することができる。
したがって、本発明の多層シートは、光拡散性を要求される照明器具のカバー材として、エレクトロニクス製品、家電製品、OA機器等の各種機器、計器等におけるディスプレー部の前面板として、また光拡散性並びに透過性と帯電防止性とが求められる他の用途に有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明により得られる帯電防止性多層シート(以下単に「多層シート」ということがある)を具体的に説明する。
本発明により得られる多層シートは、コア層(A)形成用溶融物と、高分子型帯電防止剤を含む帯電防止層(B)形成用溶融物と、被覆層(C)形成用溶融物とを、ダイ内で積層合流させ、前記被覆層が前記多層シートの少なくとも一方の最外面となり、且つ前記帯電防止層が前記被覆層の内面に接して、前記コア層の少なくとも片面側となるように前記各溶融物を積層したものである。
また、光拡散剤を添加する場合には、前記多層シートを構成するコア層(A)、帯電防止層(B)の少なくとも一つの層に光拡散剤が添加される。
【0035】
本発明に係る多層シートの製造方法によって、製造できるシートの実施態様を図面(模式図)により、具体的に光拡散剤を添加した例で説明する。
図1は、コア層(A)の両面に光拡散剤を含有させた帯電防止層(B1)が位置しており、該帯電防止層(B1)の外面に帯電防止剤および光拡散剤を含有しない被覆層(C)が存在する構成からなる多層シートである。
【0036】
図2は、コア層(A)に光拡散剤を含有し、該コア層(A)の両面に光拡散剤を含有しない帯電防止剤層(B)が位置しており、該帯電防止層(B)の外面に帯電防止剤および光拡散剤を含有しない被覆層(C)が存在する構成からなる多層シートであり、図2(1)は、光拡散剤をコア層全体に含有する(A1)態様を示す。図2(2)は、光拡散剤を含有する層(A2)をコア層(A)に偏在させて設けた態様を示す。
【0037】
図3は、コア層(A)及び帯電防止層(B)に光拡散剤を含有し、光拡散剤を含有しない被覆層(C)が帯電防止層の外面に存在する構成からなる多層シートであり、図3(1)は、コア層全体に光拡散剤を含有し(A1)、光拡散剤を含有する帯電防止層(B1)がコア層(A1)の両面に設けられている態様を示し、図3(2)は、光拡散剤を含有する層(A2)をコア層(A)に偏在させて設けた態様を示す。
【0038】
上記の態様以外に、図1〜図3において、さらに被覆層に少量の光拡散剤を含有させることもできる。上記図1〜図3には、コア層(A)の両面に帯電防止層(B)及び被覆層(C)を配した態様を示したが、図1〜図3において帯電防止層(B)及び被覆層(C)は、用途や使用分野等により、コア層の片面に配することもできる。
【0039】
本発明により得られる多層シートにおいて、光拡散剤は、前記のように、コア層及び/又は帯電防止層に含有される。コア層に光拡散剤を含有させる場合、図2(1)に示すように、コア層全体に光拡散剤を含有させてもよく、図2(2)に示すように、コア層内に光拡散剤を偏在させて設けてもよい。また図3に示すように、帯電防止層およびコア層に含有させることもできる。この場合にも図3(2)に示すように光拡散剤をコア層内に偏在させて設けることができる。また、図1に示すように帯電防止層のみに光拡散剤を含有させることができる。
【0040】
前記図2(2)および図3(2)に示すように、コア層内に光拡散剤を偏在させる場合、光拡散剤を含有する層(A2)は一層であっても二層以上の複数層であってもよく、光拡散剤の層の数、また光拡散剤を含有する層の位置は用途によって選別され、光源側に偏らせてコア層内に設けることもできる。
【0041】
本発明の帯電防止性を有する光拡散性多層シートの製造方法は、透明樹脂(a)を基材樹脂とするコア層(A)形成用溶融物と、透明樹脂(b)を基材樹脂として高分子型帯電防止剤を含む帯電防止層(B)形成用溶融物と、透明樹脂(c)を基材樹脂として高分子型帯電防止剤を実質的に含まない被覆層(C)形成用溶融物とを、ダイ内で積層合流させ、前記被覆層が前記多層シートの少なくとも一方の最外面となり、且つ前記帯電防止層が前記被覆層の内面に接して、前記コア層の少なくとも片面側となるように全規格溶融物を積層合流して共押出し、押出機に付設されたTダイを用いて、Tダイのリップ部分の平行ランド部のせん断量を0.1〜170とする押出条件で共押出した多層シートを、引取り用のポリッシングロール(以下、単に「ロール」とも表記する)を通して引取る多層シート成形法により製造される。
【0042】
前記図1に示す構成の本発明により得られる多層シートは、コア層(A)を形成する透明樹脂(a)の基材樹脂の溶融物と、帯電防止層(B)を形成する透明樹脂(b)の基材樹脂に高分子型帯電防止剤および光拡散剤を配合した溶融物と、被覆層(C)を形成する透明樹脂(c)の基材樹脂の溶融物とを、前記コア層の両面に前記帯電防止層が位置し、かつ多層シート表面に、帯電防止層(B)と接して被覆層(C)が位置するようにして、押出機に付設されたTダイを用いて所定の押出条件で共押出した多層シートを得る。
【0043】
前記図2に示す構成の本発明により得られる多層シートにおいて、図2(1)に示す構成の多層シート、すなわちコア層全体に光拡散剤を配合する場合は、コア層(A)を形成する透明樹脂(a)の基材樹脂に光拡散剤を配合した溶融物と、帯電防止層(B)を形成する透明樹脂(b)の基材樹脂に高分子型帯電防止剤を配合した溶融物と、被覆層(C)を形成する透明樹脂(c)の基材樹脂の溶融物とを、前記コア層(A)の両面に前記帯電防止層(B)が位置し、かつ多層シートの表面に、帯電防止層(B)と接して被覆層(C)が位置するようにして積層し押出機に付設されたTダイを用いて所定の押出条件で共押出して多層シートを得る。
【0044】
また前記図2(2)に示す構成の多層シート、すなわちコア層内に光拡散剤を偏在させる場合には、コア層(A)を形成する透明樹脂(a)の基材樹脂と、透明樹脂(a)に光拡散剤を含有させた溶融物(光拡散層(A2))と、帯電防止層(B)を形成する透明樹脂(b)の基材樹脂に高分子型帯電防止剤を配合した溶融物と、被覆層(C)を形成する透明樹脂(c)の基材樹脂の溶融物とを、前記コア層内の所望の位置に前記光拡散剤を含有させた溶融物(光拡散層(A2))が配置されるようにし、前記コア層(A)の両面に前記帯電防止層(B)が位置し、かつ多層シートの表面に、帯電防止層(B)と接して被覆層(C)が位置するように積層して、押出機に付設されたTダイを用いて所定の押出条件で共押出して多層シートを得る。
【0045】
前記図3に示す構成の多層シートにおいて、図3(1)に示す多層シート、すなわちコア層及び帯電防止層に光拡散剤を配合する場合は、コア層(A)を形成する透明樹脂(a)の基材樹脂に光拡散剤を配合した溶融物、及び帯電防止層(B)を形成する透明樹脂(b)の基材樹脂に帯電防止剤及び光拡散剤を配合した溶融物と、被覆層(C)を形成する透明樹脂(c)の基材樹脂の溶融物とを、前記コア層(A)の両面に前記帯電防止層(B)が位置し、かつ多層シートの表面に、帯電防止層(B)と接して被覆層(C)が位置するように積層して、押出機に付設されたTダイを用いて所定の押出条件で共押出して多層シートを得る。
【0046】
また図3(2)に示す構成の多層シート、すなわちコア層内に光拡散剤を偏在させると共に帯電防止層に光拡散剤を配合する場合には、コア層(A)を形成する透明樹脂(a)の基材樹脂と、透明樹脂(a)に光拡散剤を含有させた溶融物(光拡散層(A2))と、帯電防止層(B)を形成する透明樹脂(b)の基材樹脂に高分子型帯電防止剤及び光拡散剤を配合した溶融物と、被覆層(C)を形成する透明樹脂(c)の基材樹脂とを、前記コア層内の所望の位置に前記光拡散剤を含有させた溶融物(光拡散層(A2))が配置されるようにし、前記コア層(A)の両面に前記コア層内の所望の位置に前記光拡散剤を含有させた溶融物(光拡散層(A2))が配置されるようにし、前記コア層(A)の両面に光拡散剤を配合した前記帯電防止層が位置し、かつ多層シートの表面に、帯電防止層(B)と接して被覆層(C)が位置するように積層して、押出機に付設されたTダイを用いて所定の押出条件で共押出して多層シートを得る。
【0047】
また、本発明により得られる多層シートにおいては、所望により被覆層を片面のみに設けることもできる(図4〜図6)。また本発明により得られる多層シートの被覆層には帯電防止剤及び光拡散剤は、基本的には配合されないが、被覆層には表面平滑性や光沢を阻害しない範囲で光拡散剤が含有されてもよい。
さらには、図示はしないが、コア層と帯電防止層の層間や、被覆層よりも最外面側に、新たな層を積層させることも可能である。
【0048】
本発明により得られる多層シートは、高分子型帯電防止剤を含有する帯電防止層を被覆するように帯電防止剤を含有しない被覆層を、帯電防止層に接して形成させた構成としたことにより、比較的高いロール温度であっても高分子型帯電防止剤のロールへの付着を防ぎ、ロール表面の汚染を防止することができるため、反りのない、外観が良好な、帯電防止性に優れる光拡散性を有する多層シートを長時間に亘って効率よく安定的に製造することができる。
【0049】
本発明の多層シートを製造するには、押出時のダイ内部、特にリップの平行ランド部のせん断量を、下記式(1)から求められる特定の範囲に調整して共押出することが重要である。
【0050】
図8に押出シート成形におけるTダイ10の一例の縦断面の模式図を示す。図8において11はリップ部、hはリップ間隙、tは平行ランド長を示す。前記平行ランド部とは、シート厚みをコントロールするために設けられた溶融樹脂が接するダイの最終平行部分をいう。あるいは、略テーパ状であってもよい。平行ランド部のせん断量は、下記式(1)で求められる無次元の数値である。溶融樹脂は平行ランド部を層流状態にて流れていると考えられる。下記式(1)は、平行ランド部における溶融樹脂に対するせん断速度と、溶融樹脂が平行ランド部を通過する時間(平行ランド部通過時間)との積である。また、平行ランド部通過時間は、平行ランド部の空間の体積(cm)を溶融樹脂の1秒当たりの押出量(cm/s)で除した値である。平行ランド部の空間の体積は、平行ランド長tとリップ間隙hとリップの幅wとの積である。尚、該押出量(cm/s)は、1秒当たりに押出された被押出物の重量を溶融樹脂の密度で除して体積を求める必要があるが、いずれの樹脂層も溶融樹脂の密度を1g/cmとみなして計算する。一般的に、透明樹脂の常温下での密度は1.1g/cm前後であり、溶融状態での密度は常温下での密度よりも小さくなることから、前記押出量を求める際には、便宜上、溶融樹脂の密度を1g/cmとみなしても問題はない。
【0051】
(数3)

【0052】
本発明において、上記式(1)で得られる平行ランド部のせん断量の適正な範囲は、0.1〜170である。上記せん断量が大きすぎると、多層シートの各層の界面にウロコ模様が発生する(比較例2)。かかる観点から、上記せん断量は100以下が好ましく、50以下がより好ましい。一方、せん断量が小さすぎると押出安定性を阻害する。かかる観点から0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることが更に好ましい。
実施例1においては以下の方法によって、計算することができる。1時間当たりの吐出重量が60kgであり、この場合、1秒当たりの吐出重量は16.7g/秒(60000g÷3600秒)と計算される。上記より溶融時の樹脂の密度を、常温下での密度1.0g/cmとし、実施例1について、1秒当たりの押出量(Q)を計算すると、16.7cm/秒(27.8g/秒÷1.0g/cm)となる。
実施例1のケースでは、せん断量は図8の平行ランド部分のせん断量である。平行ランド部分における部分の樹脂の流路の体積は、長さ15mm、リップ幅(w)500mm、リップ間隙(h)4mmより、30cmと計算される。そして、平行ランド部を通過する溶融樹脂の滞留時間は、平行ランド部の体積を押出量で除すことにより1.8秒と計算される(30cm÷16.7cm/秒)。
せん断量を求めるためのせん断速度は、6Q/Whにより求められ、12.5(s−1)となる。以上をまとめると、せん断量は、平行ランド部分のせん断速度と滞留時間の積であるから、22.5と計算される(12.45秒−1×1.81秒)。
実施例1では、平行ランド部が平行スリット状であるとして計算したが、本明細書では、平行ランド部は、ダイの略平行状の最終部分をいう。上記せん断量の範囲であれば、たとえば、平行ランド部が略テーパ状であってもよい。この場合には、ランド部分の中点の断面でのせん断速度を採用し、同様に計算することができる。
【0053】
前記せん断量は、ダイリップ間隙、リップの平行ランド長、ならびに押出量によってコントロールすることができ、式(1)により求められるせん断量を、この種のシートを製造する通常の場合よりも大きく低下させて共押出することによりウロコ模様が著しく減少した又はウロコ模様の存在しない外観が良好である多層シートが得られることが可能となる。
上記式(1)は、平行ランド部における溶融樹脂に対するせん断速度と、溶融樹脂が平行ランド部を通過する時間(平行ランド部通過時間)との積で現される。故に、せん断速度は、3〜30s−1となる。好ましくは5〜25s−1であり、10〜20s−1であることが更に好ましい。
【0054】
一般に、透明樹脂を基材樹脂とする共押出による多層シートの各層の厚みを測定することは困難であるため、通常は一定時間の各層を形成する樹脂の押出量と、形成された各層の面積とから、当該層の1m当たりの重量である坪量を算出し、これを23℃における各層を形成する基材樹脂である透明樹脂の密度(JIS K7112(1999年)のA法による)で除すことにより算出される厚みが採用される。例えば、被覆層の坪量が50g/mであり、23℃における透明樹脂の密度が1.19g/cmの場合には、坪量の50g/mを該密度の1.19で除して得られる値42(μm)が被覆層の厚みとなる。他の層も同様にして計算することができる。尚、各層は、透明樹脂単独、透明樹脂同士の混合物、透明樹脂単独または透明樹脂同士の混合物に帯電防止剤や光拡散剤、他の原材料を混合した形態があるが、各層において坪量から厚みに換算する場合に使用する樹脂密度は、各層おいて50重量%以上を占める主成分である透明樹脂の23℃における密度が便宜的に採用される。なお、透明樹脂を2種類以上混合して使用する場合には、各透明樹脂の23℃における密度の平均値を採用する。
【0055】
本発明により得られる多層シートにおいて、光拡散剤をコア層に配合する場合、光拡散剤の配合量は、使用する光拡散剤の種類、例えば、無機系の光拡散剤、或いは有機系の光拡散剤などによっても多少異なるが、コア層全体に含有させる場合、コア層内に光拡散剤を偏在して設ける場合(光拡散剤を含有する層を複数層存在させる場合を含めて)、コア層の基材樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部添加できる。コア層内に光拡散剤を偏在させる場合、光拡散剤の層が単層の場合は、上記の配合量の範囲内でコア層全体に配合する量に比べ幾分多い配合量が採用され、多層の場合にはコア層全体に配合する量と略同程度の配合量で所望の光拡散性を得ることができる。
【0056】
また光拡散剤を帯電防止層に配合する場合は、コア層に配合する場合と同様に、使用する光拡散剤の種類によって多少異なるが、帯電防止層の基材樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部が配合される。
【0057】
上記の何れの場合においても、光拡散剤の配合量は多層シート全体に対して0.5〜5.0重量%となる量で配合されるのが望ましい。光拡散剤の配合量が余りに多くなると光透過性、成形性、流動性等に好ましくない影響を与え、一方少ない場合には所期の効果が得られない。また、光拡散剤の中には光透過性があるものと、光透過性が劣る若しくは透過性のないものとがある。実際の使用に当たっては、光拡散剤の種類や光透過性の度合い等をも考慮して適宜選択して使用される。
【0058】
本発明により得られる多層シートにおいて、コア層に用いられる基材樹脂としては、全光線透過率70%以上の透明樹脂(a)が使用される。またコア層の厚みが概ね積層シート自体の厚みとなり、前記の光拡散剤を含有する層を含めて、コア層の厚みは0.5〜15mmの厚みである。
【0059】
また、本発明により得られる多層シートにおいて、高分子型帯電防止剤を含有する帯電防止層に使用される基材樹脂も前記コア層と同様、基材樹脂は全光線透過率70%以上の透明樹脂(b)が使用される。高分子型帯電防止剤は、前記基材樹脂と前記高分子型帯電防止剤との総和量に対して5〜40重量%の範囲で添加される。添加量が5重量%未満では必要とされる帯電防止効果が得られず、飽和帯電圧が2.5kVを超え、帯電防止性能が発現されない。したがって、帯電防止性能を十分に発現させるには、帯電防止剤の配合量は好ましくは8重量%以上、より好ましくは12重量%以上である。一方、帯電防止剤の配合量が40重量%を超える場合には、帯電防止効果の観点からは特に問題はないが、帯電防止剤の配合に伴う黄変や耐候性に問題が生じるので、多量の配合は好ましくなく、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0060】
本発明により得られる多層シートにおいて、帯電防止剤の配合量は前記の範囲で配合されるが、帯電防止層は被覆層に接して配置されているために、少量の帯電防止剤で帯電防止効果を発揮することができる。帯電防止剤の配合量は多層シート全体に対して5重量%以下とすることが、帯電防止性能と、求められる光透過性や光拡散性などの光学特性や耐候性などのバランスの点から、好ましくは4重量%以下、最も好ましくは3重量%以下がよい。
【0061】
本発明により得られる多層シートが光拡散性シートの場合においては、光透過性と光拡散性を維持しながら帯電防止性能を発現するには多層シートを構成する層構成や各層の厚み、帯電防止剤や光拡散剤の配合量などのバランスをとることが重要であるが、本発明により得られる多層シートにおいて、前記した各層構成における各層の厚み、帯電防止剤や光拡散剤の配合量が本発明で特定される範囲であれば、十分に作用効果を発現できる。
【0062】
帯電防止剤と帯電防止層に使用される基材樹脂は屈折率が一致していることが望ましいが、両者の屈折率差が0.05以内であればよい。屈折率差が0.05を超える場合には、屈折率の異なる樹脂をブレンドした時に生じるヘーズが増加する。ヘーズが大きいと光線透過率を低下させるので好ましくない。したがって、前記屈折率差は、より好ましくは0.04以内、さらに好ましくは0.03以内であることが望ましい。
特に、アクリル系樹脂を選択すれば、高分子型帯電防止剤との屈折率が近いものとなる。
さらに、アクリル系樹脂が、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸エチル共重合体、又はメタクリル酸メチル/アクリル酸エチル共重合体であることが好ましい。
【0063】
帯電防止層の厚みは20μm〜300μmである。厚みが薄い場合には、帯電防止性能を発現することができない。したがって、帯電防止層の厚みはより好ましくは40μm以上、さらに好ましくは60μm以上である。一方、厚みが厚い場合には帯電防止性能の点からは特に問題はないが、高分子型帯電防止剤は若干黄色に着色している場合があり、その配合量も5〜40重量%と多く使用されることでもあり帯電防止層が厚いと得られる多層シートも着色され易くイエローインデックス値が高くなる虞がある。また、高分子型帯電防止剤は分子内にエーテル結合を有するものが多く耐候性の面で懸念がある。かかる観点から、厚みが300μm以下であれば経年変化があるとしても実用上問題とならないが、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは180μm以下がよい。帯電防止層をコア層の両面に設ける場合は各々の厚みが20〜300μmである。また、帯電防止層の厚みは、両面同じ厚みであってもよく、異なってもよく、用途に応じて変更することができる。製品の帯電防止性能のバランスの点からは両面の厚みは同一であることが望ましい。
【0064】
本発明により得られる多層シートにおいて、最外面に配置される被覆層に使用される基材樹脂も全光線透過率70%以上の透明樹脂(c)が用いられる。
多層シートの最外面に、帯電防止層(B)と接して位置する樹脂層である被覆層は厚み2〜50μmの薄膜である。該被覆層の厚みは薄いほど帯電防止性能を有効に発現できるが余りに薄い場合にはシート全体での厚みのコントロールが困難となり、ロール表面の汚染の問題が生じ表面が平滑で、外観が良好なシートが得られ難い。また安定した帯電防止性能を発現させることができない場合がある。かかる観点から、帯電防止層(B)と接して位置する必要があり、その厚さは好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上である。一方、被覆層の厚みが厚すぎると帯電防止効果を妨げる結果となり好ましくない。被覆層の厚さは、好ましくは25μm以下、より好ましくは15μm以下である。
また、ロール汚染を防止する観点から、被覆層には実質的に帯電防止剤が含まれていないことが必要である。ここで、実質的に帯電防止剤が含まれていないとは、含有量がゼロ又は、帯電防止性を有しない程度まで含まれていることをいう。具体的には、被覆層100部に対して0〜4重量部、好ましくは0〜2重量部である。
【0065】
該被覆層には耐候性を付与するために、耐候安定剤や紫外線吸収剤などを添加することが好ましい。耐候安定剤や紫外線吸収剤など含有量はシート全体に対して0.05〜0.8重量部である。多量の含有量は黄変の要因となり多層シートのイエローインデックス値を高める結果となり好ましくない。したがって、含有量は好ましくは0.07〜0.6重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。
【0066】
本発明により得られる帯電防止性多層シートが光拡散シートの場合には、全光線透過率は50%以上であることが好ましい。光拡散性シートである場合、光源のエネルギーロスを防ぐために、望ましくは全光線透過率は55%以上であることが好ましい。
一方、全光線透過率の最大値は概ね基材樹脂の透明樹脂の光線透過率と略等しく94%であるが、ヘーズとのバランスで93%以下が望ましい。
ヘーズは光透過性とのバランスを考慮することが必要で、光拡散性の観点から40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上であることが特に好ましい。一方その最大値は93%であるが、高すぎると光源のエネルギーロスを招く結果となり、好ましくは90%以下、85%以下が特に好ましい。
【0067】
本発明により得られる多層シートにおいて、イエローインデックス値が低ければ低い方が好ましいが、本発明による光拡散性多層シートには、帯電防止剤を含有する帯電防止層が存在するため幾分着色がある。イエローインデックス値は帯電防止剤の配合量や種類、多層シート全体の帯電防止層の比率などと相関性があり、これらをコントロールすることにより抑制することができるが、光拡散性積層シートの場合には、許容できるイエローインデックス値(YI値)は2.6以下であり、好ましくは2.3以下であり、より好ましくは2.0以下である。
イエローインデックス値は配合される光拡散剤の種類や量にもよるが概ね1.0以上となる。なお、イエローインデックス値はブルーイング剤と呼ばれる染料を添加することで、幾らかその数値を下げることが可能である。ただし、大量に添加した場合には、全光線透過率の減少を招く。
【0068】
本発明により得られる多層シートにおいて、表面抵抗率は1012Ω以上を有することが好ましい。通常、被覆層を有しない帯電防止性シートの表面抵抗率は1012Ω以下となるが、本発明の多層シートにあっては、被覆層を有するためにこれが当てはまらない。
本発明により得られる多層シートの表面抵抗率は5×1012Ω以上、望ましくは1013Ω以上となる。すなわち、被覆層の厚みが十分に確保されておりこれにより表面の平滑性が確保されており、該被覆層には耐候安定剤や紫外線吸収剤を含有させることができる。
【0069】
本発明により得られる多層シートにおいて、初期帯電圧は、2.5kV以下が好ましい。である。2.5kVよりも高い場合には用途範囲が特定のものに限られることになる。したがって、初期帯電圧は2.3kV以下が好ましく、さらに2.0kV以下であることが最も好ましい。
初期帯電圧は0(ゼロ)に近ければより好ましいが、帯電防止剤の性能およびロール汚染を防ぐ被覆層の存在から、概ね0.3kV以上となる。
先に記述したように、高分子型帯電防止剤の帯電防止層への配合量は多いほどまた帯電防止層の坪量が高いほど帯電防止効果は高まるが、一方で、光拡散性、透過性などの光学特性はヘーズやイエローインデックス値が高まり、耐候性も低下するために、光学特性とのバランスから要求される本発明の積層シートの初期帯電圧は0.4kV以上が好ましく、さらには0.5kV以上がより好ましい。
【0070】
本発明により得られる多層シートは、前記に記述したように、フィルム成形とは異なる押出シート成形法、すなわち押出機先端に付設されたTダイからシート状に押出された多層シートをロール(ポリッシングロール)を通過させて、シート厚みの均一な多層シートに成形される。得られる製品多層シートの厚み0.5〜15mm程度のシート状又は板状の形態とすることができる。
厚みが15mm以上の多層シートでは、ロール(ポリッシングロール)を通過させる際に、一定の板状の形状のものが得られなくなる。かかる観点から、厚みが0.5mm〜10mmであることが好ましい。このような多層シートは、例えば照明カバー、ディスプレー拡散板、照明看板等、各種の形状に成形され帯電防止性を有する光拡散性製品とされる。
本発明により得られる多層シートは、原料の基材樹脂の剛性にもよるが、厚みが1mm以下の比較的薄い積層シートは、一般にはロール形状に巻き取られて製品とされ、保管および搬送される。厚みの厚い板状の多層シートは、所要の長さに切断され保管および搬送される。
【0071】
本発明により得られる多層シートにおける各層の基材樹脂として使用される透明樹脂(透明樹脂(a)、透明樹脂(b)及び透明樹脂(c))は、いずれもJIS K7361(1997年)で知られた「透明プラスチック」が好適に使用される。
透明樹脂としては、具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、環状オレフィン樹脂等が挙げられる。アクリル系樹脂は、アクリル酸アルキルエステル又は/およびメタクリル酸アルキルエステル(これらを総称して以下、(メタ)アクリル酸エステルという)の単独重合体または(メタ)アクリル酸エステル同士の共重合体、(メタ)アクリル酸エステルに基づく単位が50モル%以上であり他のコモノマーに基づく単位が50モル%以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、及びこれらの2以上の混合物である。(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体、などが例示される。これらのうち、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体が好ましく、ポリメタクリル酸メチルがより好ましい。
【0072】
また上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、メタクリル酸メチル−スチレン−ブチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等が例示される。これらのうち、メタクリル酸メチル−スチレン−ブチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体が好ましい。
【0073】
スチレン系樹脂は、スチレンの単独重合体、スチレンに基づく単位が50モル%を超え、他のコモノマーに基づく単位が50モル%を下回るスチレン共重合体、及びこれらの2以上の混合物である。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、スチレンに基づく単位が50モル%を超えるメタクリル酸メチル−スチレン共重合体、スチレン−ジエンブロック共重合体等が例示される。
【0074】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ビスフェノールA(4,4'−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン)ポリカーボネート、ビスフェノールF(4,4'−ジヒドロキシジフェニル−2,2−メタン)ポリカーボネート、ビスフェノールS(4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン)ポリカーボネート、2,2−ビス(4−ジヒドロキシヘキシル)プロパン)ポリカーボネートなどが例示される。これらのうち特に光学グレードのポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0075】
その他に、所望に応じて熱可塑性ポリエステル樹脂、芳香環含有ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート)および脂肪族ポリエステル(例えばポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートおよびポリ−ε−カプロラクトン)、また、環状オレフィン系ポリマーは、環状オレフィンの単独重合体、環状オレフィン同士の共重合体、または環状オレフィンとエチレンやα−オレフィンとの共重合体、これらの2以上の混合物等を使用することができる。環状オレフィン系ポリマーとしては、例えば、三井化学株式会社の商品名「アペル」や「トーパス」、日本ゼオン株式会社の商品名「ゼオネックス」や「ゼオノア」等が挙げられる。
これらの樹脂は多層シートの透明性等の光学特性を損わない範囲で少量使用することができる。
【0076】
本発明により得られる多層シートを構成する各層に使用される前記透明樹脂は1種又は2種以上を混合して使用することができる。尚、1種の透明樹脂が使用される場合、各層に使用される樹脂は同一又は異なってもよい。透明樹脂の2種以上を混合して使用する場合、又は前記透明樹脂に本発明の目的を阻害しない範囲内で他の熱可塑性樹脂等を混合して使用する場合は、使用する各透明樹脂の屈折率が近似しているか等しいものがよい。各透明樹脂の屈折率差、又は透明樹脂と他の熱可塑性樹脂の屈折率差が大きいと、その混合割合にもよるが混合樹脂は白濁してしまうため、屈折率差は小さいことが望ましい。具体的には、その屈折率差は、0.05以内が好ましく、0.04以内がより好ましく、0.03以内がさらに好ましく、屈折率差は0(ゼロ)であることが最適である。
【0077】
本発明に用いられる高分子型帯電防止剤としては、ポリオレフィンのブロックと、体積固有抵抗値が1×10〜1×1011Ω・cmの親水性ポリマーのブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合およびイミド結合からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー(a)、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドおよびポリエーテルアミドイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル含有親水性ポリマー(b)、又はポリアミドおよび/またはポリアミドイミドからなるアミド基含有疎水性ポリマー、ポリエーテルジオールおよび/またはポリエーテルジアミンからなるポリエーテル含有親水性ポリマーおよび芳香環含有ポリエステルから構成されるブロックポリマー(c)等が例示される。
【0078】
上記のブロックポリマー(a)については特開2004−190028号に、上記のポリエーテル含有親水性ポリマー(b)については特開2006−206894号に、上記のブロックポリマー(c)については特開2006−233204号に、それぞれ詳細に示されている。
【0079】
本発明に使用される光拡散剤は従来から使用されている無機系光拡散剤及び有機系光拡散剤が挙げられ、無機系光拡散剤としては、具体的には、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、シリカ、ガラス、マイカ、等の粒子が挙げられる。これらは脂肪酸やシリコーンカップリング剤、チタネート系カップリング剤などで表面処理が施されたものであっても良い。また有機系光拡散剤としては、具体的には、スチレン系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子、シリコン樹脂粒子が挙げられ、これらの樹脂は架橋樹脂粒子であることが望ましい。架橋スチレン系樹脂粒子は少なくとも50質量%以上がスチレン単量体で構成される樹脂であり、架橋アクリル系樹脂粒子はメタクリル酸メチルやメタクリル酸ブチル、フッ素変性メタクリル酸メチルなどの少なくとも50質量%以上がアクリル系単量体で構成される樹脂である。またスチレン−アクリル系樹脂粒子は少なくともスチレン単量体とアクリル酸単量体から構成される架橋樹脂である。架橋シリコーン樹脂粒子は、一般的にはシリコーンゴムと呼ばれるものや、シリコーン樹脂と呼ばれるものであって常温で固体状のものが好適に使用される。
【0080】
光拡散剤と基材樹脂との屈折率差はその絶対値が0.02以上0.2以下が光拡散性と明るさ(輝度)の双方の要求を満たす点から好ましい。光拡散剤の平均粒径は1μm〜 20μm、好ましくは2〜15μmのもが使用される。平均粒径が1μm未満では、変色して黄味を帯びる場合がある。一方20μmを超える場合には、光拡散剤に添加による光拡散性の付与が十分でない場合がある。上記光拡散剤のうち本発明においては、特に耐候性に優れる架橋シリコーン系樹脂粒子、架橋アクリル系樹脂粒子が好適である。またその形状は球状、楕円状、半球状、などのものである。
【0081】
光拡散剤の使用量は、添加される光拡散剤の粒径や光拡散剤の種類、屈折率にもよるが、樹脂成分100重量部に対して0.1〜10重量部であり、好ましくは0.3〜5重量部である。0.1重量部では光拡散効果が十分に得られず、一方、10重量部を超える量では光拡散効果は大きくなるが、明るさ(輝度)が低下し好ましくない。なお、光拡散剤の量は積層シート全体の坪量に対する配合比である。
【0082】
本発明の多層シートをバックライトユニットの拡散板に使用する場合、冷陰極管の長時間点灯により生じた樹脂劣化による色変化を少なくするために被覆層には紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤を添加することが望ましい。
紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、マロン酸エステル系から選択される。紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系光安定剤の添加量は、被覆層100重量部に対して、0.05〜0.8重量部が好ましい。上記添加量が少ない場合には、光拡散シートに十分な耐光性を付与することが困難である。一方添加量が多い場合には、光拡散性シートの着色や明るさ(輝度)の低下を招き易く、さらにコストアップに繋がるため好ましくない。好ましくは0.1〜0.6重量部である。ここで、添加量は被覆層の坪量に対する量である。なお、紫外線吸収剤や耐候性安定剤は帯電防止層やコア層にも添加することができる。この場合、光拡散剤の添加量は積層シート全体として前記の添加量の範囲となるように調整することが必要である。多層シート全体に対する量が多くなると着色の要因となり好ましくない。
【0083】
本発明の多層シートの製造法を具体的に示すと、先に例示したように、本発明により得られる多層シートは、通常の押出シート成形法に使用される例えば図7に示す設備を用いて製造することができる。本発明により得られる、被覆層/帯電防止層/コア層/帯電防止層/被覆層からなる5層多層シートを製造する場合には、少なくとも3台の押出機を連結して共押出される。
前記5層の多層シートにおいて、コア層全体に光拡散剤を配合した構成とする場合は、コア層を形成する基材樹脂に光拡散剤を添加した樹脂組成物、帯電防止層を形成する基材樹脂に帯電防止剤を添加した樹脂組成物、および被覆層を形成する樹脂を夫々の押出機にて溶融混練し、溶融樹脂組成物をダイス内で積層し、Tダイを通してシート状に押出し、押出されたシートを少なくとも2本のロール(ポリッシングロール)を通過させてシート厚みの均一化を行って積層シートとして引取り製品とされる。
【0084】
本発明により得られる多層シートにおいて、光拡散剤をコア層内に偏在させた構成とする場合には、光拡散層(A2)をコア層内に偏在させるように、例えばコア層内の光拡散層(A2)が一層である場合には、光拡散剤を配合した樹脂組成物を形成させるようにさらに押出機を追加して共押出する。この場合コア層を形成する樹脂と、光拡散剤を配合した樹脂組成物、帯電防止剤を添加した樹脂組成物、および被覆層を形成する樹脂を夫々の押出機にて溶融混練し、溶融樹脂組成物をダイス内で積層し、Tダイを通してシート状に押出し、押出されたシートを少なくとも2本のロール(ポリッシングロール)を通過させてシート厚みの均一化を行って多層シートとして引取り製品とされる。
また、光拡散剤を帯電防止層に配合する場合には、帯電防止層形成用基材樹脂に、帯電防止剤及び光拡散剤を配合して、前記5層積層シートの場合と同様に押出して目的の多層シートが製造される。
また光拡散剤をコア層および帯電防止層に配合する場合は、光拡散剤を配合したコア層形成用樹脂組成物、光拡散剤を配合した帯電防止層形成用樹脂組成物及び被覆層形成用樹脂を前記5層積層シートの場合と同様に押出して目的の多層シートが製造される。
【0085】
本発明の多層シートの製造方法において、各層を形成する樹脂又は樹脂組成物を各押出機に供給し該押出機内で溶融混練し、ダイス内で各層を形成するように溶融樹脂又は溶融樹脂組成物を合流させて積層し、Tダイから共押出した多層シートを前記ロールを通過させて目的の多層シートとされる。前記ダイス内で溶融樹脂または溶融樹脂組成物を合流させる直前の各層の樹脂温度は、使用される基材樹脂の種類によって多少異なるが、通常は、180〜280℃である。上記の樹脂温度は、押出機の出口又はその先(下流側)に設置されたギヤポンプの出口に配置されたブレーカープレート部で測定される。合流により他の層の温度の影響を受けなければ略そのままの温度で共押出される。一般に高分子型帯電防止剤は、熱安定性が低いことから、高分子方帯電防止剤を添加した層の上記樹脂温度はやや低めに設定されていることが望ましく、通常180〜265℃が採用され、好ましくは195〜265℃、より好ましくは210〜250℃が採用される。
【0086】
帯電防止剤と基材樹脂との溶融混練に際しては、帯電防止剤を基材樹脂層内に網目状に分散して形成されていることが帯電防止性能を発現させる上で好ましい。帯電防止剤を上記のような状態に分散させるには同一温度において帯電防止剤は、基材樹脂よりも溶融粘度が小さいことが好ましい。帯電防止剤を含有する層の前記樹脂温度は、樹脂の種類によって多少変わり得るが、概ね230℃前後であることから、温度230℃、せん断速度100s−1で測定される溶融粘度(単位:Pa・s、この溶融粘度を以下単に溶融粘度という)とすると、帯電防止剤の溶融粘度:基材樹脂の溶融粘度の比は、1:35〜1:1.5が好ましく、1:25〜1:2がより好ましい。ただし、ポリカーボネート樹脂については、260℃で測定した値を採用する。
なお、帯電防止剤と混合される基材樹脂(透明樹脂)の各溶融粘度は、一般的には300〜3000Pa・s程度であるが、混練性や製膜性を高いものとするためには600〜2500Pa・s、さらに好ましくは900〜2200Pa・sが好ましい。
【0087】
本発明において、多層シートを構成する被覆層の基材樹脂である透明樹脂(c)は、押出に際してダイ内において、ダイの内壁面と接しているため、ダイ内においてより大きなせん断を受けやすく、被覆層に接した帯電防止層(B)との間でずれが生じやすく、表面性悪化の要因となる。従って、透明樹脂(c)の溶融粘度は、帯電防止層の透明樹脂(b)の溶融粘度以下であることが好ましい。具体的には、300〜2500Pa・sのものが好ましく、500〜2300Pa・sのものがより好ましく、700〜2000Pa・sのものが更に好ましい。
【0088】
なお、使用される基材樹脂の中には吸湿性を有するものもあるので押出機はベント式押出機が好ましい。また積層構成はフィードブロック方式による積層方法、またはマルチマにホールドダイ方式による積層方法が採用される。最外面へ薄膜の被覆層を形成するにはマルチマニホールドダイによる方法がより好ましい。
【0089】
シート引取り機としては、通常の硬質クロムメッキを施したポリッシングロールが用いられる。ポリッシングロールは、一般的には、3連のポリッシングロールが用いられるが、必要に応じて4連のものを用いることもできる。ポリッシングロールの配置の一例を図7に示す。
【0090】
ポリッシングロールの温度は、任意に選択されるが、使用される基材樹脂のガラス転移温度、目的とする製品厚みによって変わり得るが、シート表面の光沢が板状製品の反りが生じないような適宜の温度条件が採用される。ロール温度は、一般的には30〜180℃が採用され、好ましくは40〜160℃、最も好ましくは50〜140℃である。通常、シート厚みが薄い製品の場合には低温側が採用され、シート厚みが厚い製品の場合には高温側が採用される。またロール温度は、一般的には、下流側のロールほど高温に設定される。最も下流側のロール温度は、積層シートの反りを防止する点から85℃以上が好ましく、90〜170℃がより好ましく、90〜145℃が好ましく、さらには90〜140℃が好ましい。
【0091】
本発明の多層シートの評価方法および樹脂物性の測定方法を下記する。
[全光線透過率及びヘーズ]
多層シートより50mm×50mmのサイズ(厚みは多層シートの厚み)に複数枚切り出し、これらを試験片として、濁度計(日本電飾工業株式会社のNDH2000)を使用し、JIS K7136(2000年)に従って各試験片を測定し、各測定値をそれぞれ平均して全光線透過率とする。
尚、複数枚の試験片は、多層シートの無作為に選んだ幅方向の一方の端部から他方の端部側に50mm内側に入った箇所を第1の基点とし、第1の基点から、上記他方の端部側へ100mm毎の新たな箇所をそれぞれ基点とし(ただし最後の基点は上記他方の端部より50mm以上一方の端部側とする)、第1の基点も含め各基点を試験片の中心となるように、かつ試験片の一辺が多層シートの押出方向と一致するようにそれぞれ切り出されたものである。
透明樹脂については、厚み2mmの表面が平滑な平らな成形板(50mm×50mmのサイズ)を試験片とし、上記と同様に、濁度計(日本電飾工業株式会社のNDH2000)を使用し、JIS K7136(2000年)に従って全光線透過率及びヘーズを測定する。
【0092】
[イエローインデックス(YI値)](黄色度)
多層シートより50mm×50mmのサイズ(厚みは多層シートの厚み)に複数枚切り出し、これらを試験片として、分光式色差計(日本電色工業株式会社製 SE−2000)の透過法にてASTM D1925に従った方法にて各試験片を測定し、各測定値を平均してYI値とした。また、この測定における光源としてはCIE光源における視野角2度のC光源を選択する。
尚、複数枚の試験片は、上記全光線透過率及びヘーズ測定試験片と同様にして多層シートの異なる位置から切り出されたものである。
【0093】
[初期帯電圧]
多層シートより40mm×40mmのサイズ(厚みは積層シートの厚み)に複数枚切り出し、これらを試験片として、23℃、50%RH環境下にて24時間状態調節した後、スタティックオネストメーター(シシド静電気株式会社製 TIPE S−5109)を使用して23℃、50%RH環境下にてJIS L1094(1988年)A法に従って各試験片に電圧を印加し、印加を停止した際の初期帯電圧を測定値として、各測定値を平均して初期帯電圧とする。尚、複数枚の試験片は、上記全光線透過率及びヘーズ測定試験片と同様にして多層シートの異なる位置から切り出されたものである。また、各試験片は、切り出された後、60℃のイオン交換水に浸漬させた状態で10分間超音波洗浄機にて洗浄を行い、更にイオン交換水で十分に濯いだ後に60℃のオーブンにて1時間乾燥させてから、上記状態調節する。試験片を、温水に浸漬させる場合には、予め油分を除去した金属製の冶具にて試験片の端部を上から押さえて温水から浮かび上がらないようにする。
【0094】
[表面抵抗率]
多層シートより100×100mmのサイズ(厚みは多層シートの厚み)に複数枚切り出し、これらを試験片として、初期帯電圧の測定と同様に試験片を洗浄、濯ぎ、乾燥させた後、試験片を23℃、50%RH環境下にて24時間調湿した後、超絶縁抵抗/微小電流計(タケダ理研工業株式会社製 TR−8601)を使用して、23℃、50%RH環境下にてJIS K6911(1995年)に準拠して各試験片について表面抵抗を測定し、各測定値を平均して得られた表面抵抗値(装置の読取値)に、係数18.8を乗じて表面抵抗率とする。尚、測定は絶縁抵抗測定試料箱(タケダ理研工業株式会社製 TR42)内にて行い、測定に使用した電極は表面電極の内円の外形が50mm、表面の環状電極の内径が70mmのものを使用する。また、複数枚の試験片は、上記全光線透過率及びヘーズ測定試験片と同様にして多層シートの異なる位置から切り出されたものである。
【0095】
[多層シートの厚み]
多層シートの無作為に選んだ幅方向の一方の端部から他方の端部側へ30mm入った所を基点として50mm間隔で幅方向に株式会社ミツトヨ社製のデジタルマイクロメーターにて測定を行い、平均して厚みとする。
多層シートの無作為に選んだ幅方向の一方の端部から他方の端部側に30mm内側に入った箇所を第1の基点とし、第1の基点から、上記他方の端部側へ50mm毎の新たな箇所をそれぞれ基点とし(ただし最後の基点は上記他方の端部より30mm以上一方の端部側とする)、第1の基点も含め各基点のそれぞれ位置で多層シートの厚みを、株式会社ミツトヨ製のデジタルマイクロメーターにて測定を行い、各測定値を平均して多層シートの厚みとする。
【0096】
[樹脂溶融粘度]
本発明における溶融粘度は株式会社東洋精機製作所のキャピログラフ 型式1Dにて測定を行って得られた値である。測定の詳細は以下のとおりである。内径9.55mm(有効長さ250mm)のシリンダーの先端に穴径1.0mm、長さ10mmのキャピラリーを取付け、シリンダーおよびキャピラリーを230℃(ポリカーボネート樹脂のみ260℃とした)に昇温し、シリンダー内に測定試料(樹脂ペレット)を充填する。充填後、シリンダー内にピストンを装填し、4分間の予備加熱にて測定試料を溶融させる。なお、予備加熱中にピストンを一時的に押し下げ溶融状態の測定試料から気泡を十分に除去する。また、測定試料の充填量は、気泡除去後に測定試料が15cc以上確保できる十分な量にする。予備加熱終了後、ピストンにてキャピラリー部のせん断速度が100s−1となる様にシリンダー内の測定試料を押出し、そのときの溶融粘度を計測する。なお、溶融粘度の計測は押出荷重が安定した後に行う。
【実施例】
【0097】
以下に実施例により本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものでなく本発明の趣旨を超えない限り本発明の範囲に属する。
【0098】
以下の実施例、比較例に使用した装置は具体的には以下の通りである。
コア層を形成する押出機は、内径65mmの単軸押出機を使用し、帯電防止層形成用には内径40mmの単軸押出機、被服層形成用押出機には内径20mmの単軸押出機を用いた。
シート成形及び引取り機は、ロール径195mmの硬質クロムメッキでコーティングされた鏡面状の平滑面を持つ金属ロールからなる図7に示す3連ポリッシングロールを用いた。
各押出機内における各樹脂または樹脂組成物の最高温度は、表1中に示した樹脂温度プラス25℃を超えないように調整した。
上記内径65mmの混練押出機には、ギヤポンプを押出機出口に取付けた押出量を制御した。さらに3種5層の積層が可能なリップ幅(W)500mmのマルチマニホールドTダイを取付け、各層を合わせた総吐出量として吐出量60kg/hrとし、表3および表4に示した条件、層構成で共押出した。
引取り速度は目的の製品厚みに合わせて調整した。各層の厚みは、例示された樹脂ごとの比重から必要坪量(g/m)を計算し、さらにそれに応じて各層形成押出機の吐出量を変更することにより調整した。ロール温度は3台のオイルポンプを用いて個別に温度調整を行った。ロールの位置関係は図7に示した配置とした。表3、表4のロール温度の項1、2および3は、それぞれ図7に示した符号13、14、15のポリッシングロールを意味する。ロール温度はロール温度の温調オイルの温度を示した。
また、表3および表4の樹脂温度はコア層についてはギヤポンプ出口に設置されたブレーカープレート中央の温度を、帯電防止層及び被覆層については押出機出口に取付けられたブレーカープレートの中央部の温度を計測しそれぞれ示した。
【0099】
表1、2に実施例、比較例に用いた透明樹脂、帯電防止剤およびその物性を示した。表3、表4には多層シートの構成と製造条件を、表5には得られた積層シートの物性と評価結果を示した。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
実施例1
コア層、帯電防止層、および被覆層用透明樹脂としてアクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製 「VH5−000」)を用い、高分子型帯電防止剤として、VH5−000との屈折率差が0.01である三洋化成工業株式会社製のポリエーテル系高分子型帯電防止剤(VH230)を用いた。
帯電防止層には、帯電防止剤による着色を防止する為に、ブルーイング材と呼ばれる染料を、帯電防止層に対し0.02%となるようにマスターバッチを用いて添加した。
コア層には光拡散材として平均粒径3μmの架橋シリコーン樹脂粒子(東芝シリコーン トスパール130)、平均粒径6μmの架橋シリコーン樹脂粒子(東芝シリコーン トスパール200)をコア層基材100部に対して、それぞれ1.2部ずつ加えた(計 2.4部)。そして、被覆層および帯電防止層の基材樹脂100部に対して、耐候安定剤をその添加量がそれぞれ0.3重量部となるように添加した。添加の際には、マスターバッチを用いた。
なお、上記耐候安定剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャリテイケミカルズ社製 商品名「チヌビン234」)とヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャリテイケミカルズ社製 商品名「チヌビン770DF」)との重量比で2:1の混合物である。
表3に示す条件および層構成として共押出にて多層シートを得た。押出に用いたTダイリップはクリアランス4(h)mm、ランド長さ(t)15mmとし、せん断量を23にコントロールした。そして、厚さ2.0mmの5層構造からなる積層シートを得た。その結果、12時間連続押出ししてもロールには付着物によるロール表面の汚染は全く発生せず、安定して多層シートを得ることができた(表3)。測定結果を表5に示した。得られた多層シートは、光拡散性、帯電防止性に優れるものであった。
【0103】
実施例2
コア層、帯電防止層M及び被覆層用の透明樹脂としてメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(新日鐵化学株式会社製 「MS600」)を用い、高分子型帯電防止剤として、MS600との屈折率差が0である三洋化成工業株式会社製のポリエーテルエステルアミド系高分子型帯電防止剤(NC7530)を用いた。耐候安定剤を被覆層、帯電防止層に、ブルーイング材を帯電防止層に実施例1と同様に添加した。コア層には光拡散材として平均粒径2μmの架橋シリコーン粒子(信越化学社製 KMP−590)をコア層基材樹脂に対し1部加えた。表3に示す条件および層構成で共押出にて多層シートを得た。押出に用いたTダイリップはクリアランス4mm、ランド長さ3mmとし、せん断量を3にコントロールした。そして、厚さ2.0mmの5層構造からなる多層シートを得た。そして、厚さ2.0mmの5層構造からなる積層シートを得た。その結果、12時間連続押出ししてもロールには付着物によるロール表面の汚染は全く発生せず、安定して多層シートを得ることができた。測定結果を表5に示した。 得られた多層シートは光拡散性、帯電防止性に優れるものであった。
【0104】
実施例3
コア層用透明樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱エンプラ製「H4000」)、帯電防止層および被覆層用の透明樹脂としてアクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製「VH5−000」を用い、高分子型帯電防止剤として、VH5−000と屈折率差が0.01である三洋化成工業株式会社製のポリエーテル系高分子型帯電防止剤VH230を用いた。耐候安定剤を被覆層、帯電防止層に、ブルーイング材を帯電防止層に実施例1と同様に添加した。コア層には光拡散材として平均粒径2μmの架橋シリコーン粒子(東芝シリコーン社製、トスパール120)をコア層基材に対し0.3部加えて積層シートを得た。表3に示す条件および層構成として共押出して、実施例1と同じリップ部を有するものを用い、厚さ2.0mmの5層構造からなる多層シートを得た。その結果、12時間連続押出ししてもロールには付着物によるロール表面の汚染は全く発生せず、安定して多層シートを得ることができた。測定結果を表5に示した。得られた多層シートは光拡散性、帯電防止性に優れるものであった。
【0105】
実施例4
コア層基材としてポリスチレン樹脂(PSジャパン製 HH32)、帯電防止層及び被覆層用の透明樹脂としてメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(新日鐵化学株式会社製 「MS600」)を用い、高分子型帯電防止剤として、MS600との屈折率差が0である三洋化成工業株式会社製のポリエーテルエステルアミド系高分子型帯電防止剤(NC7530)を用いた。耐候安定剤を被覆層、帯電防止層に、ブルーイング材を帯電防止層に実施例1と同様に添加した。コア層には光拡散材として平均粒径8μmのアクリル系架橋粒子(積水化成品工業社製 MBX−8)をコア層基材樹脂100部に対し3部加えた。表3に示す条件および層構成で共押出して、実施例2と同じTダイリップ部を有するものを用い、厚さ2.0mmの5層構造からなる多層シートを得た。その結果、12時間連続押出ししてもロールには付着物によるロール表面の汚染は全く発生せず、安定して多層シートを得ることができた。測定結果を表5に示した。得られた多層シートは光拡散性、帯電防止性に優れるものであった。
【0106】
実施例5
被覆層厚みを10μm、コア層厚みを調整で1830μmとし、帯電防止剤の添加量を25%に上げた以外は実施例1と同様の押出条件でに多層シートを得た。被覆層厚みを上げると帯電防止性能が下がる傾向となるが、帯電防止剤の増量で、実施例1とほぼ同様な帯防性能となった。YI値は上昇傾向であるが十分に良好な範囲のものであった。測定結果を表3−1、表4に示した。
【0107】
実施例6
帯防層を150μm、コア層を1690μmとした以外は実施例1と同様に多層シートを得た。帯電防止層を厚くしたので帯電防止性能は良化した。一方でYI値は上がる傾向であったが十分に許容範囲のものであった。測定結果を表5に示した。
【0108】
実施例7
実施例1で用いた光拡散材平均粒径3μの架橋シリコーン樹脂粒子(東芝シリコーン トスパール130)、平均粒径6ミクロンの架橋シリコーン樹脂粒子(東芝シリコーン トスパール200)を、帯電防止層に、帯電防止層基材100部に対して、それぞれ0.5部ずつ加えた以外は実施例6と同様に積層シートを得た。帯電防止層に光拡散材を入れても特に問題なく帯電防止性能を持つ光拡散板を得ることができた。測定結果を表5に示した。
【0109】
実施例8
コア層、帯電防止層、および被覆層用透明樹脂としてアクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製 「VH5−000」)を用い、高分子型帯電防止剤として、VH5−000との屈折率差が0.01である三洋化成工業株式会社製のポリエーテル系高分子型帯電防止剤(VH230)を用いた。
帯電防止層には、帯電防止剤による着色を防止する為に、ブルーイング材と呼ばれる染料を、帯電防止層に対し0.02重量%となるようにマスターバッチを用いて添加した。
そして、被覆層および帯電防止層の基材樹脂100部に対して、耐候安定剤をその添加量がそれぞれ0.3重量部となるように添加した。添加の際には、マスターバッチを用いた。
なお、上記耐候安定剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャリテイケミカルズ社製 商品名「チヌビン234」)とヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャリテイケミカルズ社製 商品名「チヌビン770DF」)との重量比で2:1の混合物である。
表3に示す条件および層構成として共押出を行い多層シートを得た。押出に用いたTダイリップのクリアランス、ランド長さは実施例1と同様とし、厚さ2.0mmの5層構造からなる多層シートを得た。その結果、12時間連続押出ししてもロールには付着物によるロール表面の汚染は全く発生せず、安定して多層シートを得ることができた(表3)。得られた多層シートは、透明性、帯電防止性に優れるものであった。
【0110】
実施例9
被覆層を1μm、その分の厚みを調整して、コア層厚みを1848μmに設定した以外は実施例1と同様に多層シートを得た。測定結果を表5に示した。
【0111】
実施例10
被覆層を60μm、その分の厚みを調整して、コア層厚みを1730μmとした以外は実施例1と同様に積層シートを得た。測定結果を表5に示した。
【0112】
実施例11
帯電防止層を400μm、その分の厚みを調整して、コア層厚みを1190μmに設定した以外は、実施例1と同様に多層シートを得た。測定結果を表5に示した。
【0113】
実施例12
帯電防止層を10μm、その分の厚みを調整して、コア層厚みを1970μmに設定した以外は実施例1と同様に多層シートを得た。測定結果を表5に示した。
【0114】
実施例13
帯電防止層の帯電防止剤の配合量を3%にした以外は実施例1と同様に多層シートを得た。測定結果を表5に示した。
【0115】
実施例14
帯電防止層の帯電防止剤の配合量を50%にした以外は実施例1と同様に多層シートを得た。表面状態も帯電防止層の粘度低下のため、デコボコな多層シートであった。測定結果を表5に示した。
【0116】
実施例15
表3に示す製造条件において、表5に示す層構成としてマルチマニホールドTダイにて共押出して、引き取り速度を1.14m/分として厚さ1.6mmの5層構造からなる多層シートを得た。平行ランド部(リップクリアランス2.5mm、平行ランド長さ55mm)を変更し、平行ランド部のせん断量を132として成形を行った。その他の条件は、実施例1と同様である。その結果、得られた多層シートは、せん断量の増加のため、わずかにウロコ模様が認められたが、許容範囲であった。
【0117】
比較例1
被覆層をなくし、その分の厚みを調整して、コア層厚みを1850μmとした以外は実施例1と同様に多層シート製造した。しかし、数分でロールが汚れてしまいシート表面が凹凸になってしまった。したがって、光拡散性、帯電防止性の評価は行わなかった。
【0118】
比較例2
押出に用いたTダイリップのクリアランス2mm、ランド長さ60mmとし、せん断量を180にコントロールした。それ以外は、実施例2と同様に三種五層の多層シートを得た。
得られた多層シートは光拡散性、帯電防止性は実施例2と大きな遜色はないものの、表面に不均一なウロコ模様が発生しており、光拡散性シートとして使用できるものではなかった。
【0119】
【表3】

【0120】
【表4】

【0121】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の実施態様の一例で、帯電防止層に光拡散剤を配合した多層シートの模式図。
【図2】本発明の実施態様の一例で、コア層内に光拡散剤を配合した例で、図2(1)はコア層全体に光拡散剤を配合した多層シート、図2(2)は光拡散剤をコア層内に偏在させた多層シートの模式図。
【図3】本発明の実施態様の一例で、コア層及び帯電防止層に光拡散剤を配合した例で、図3(1)はコア層全体及び帯電防止層に光拡散剤を配合した多層シート、図3(2)は光拡散剤をコア層内に偏在させた多層シートの模式図。
【図4】図1の変形態様で被覆層を片面に設けた例を示す模式図。
【図5】図2の変形態様で、図5(1)は図2(1)、図5(2)は図2(2)において被覆層を片面に設けた例を示す模式図。
【図6】図3の変形態様で、図6(1)は図3(1)、図6(2)は図3(2)において被覆層を片面に設けた例を示す模式図。
【図7】押出シート成形法に使用される設備の一例を示す説明図。
【図8】押出シート成形におけるTダイの一例の縦断面の模式図を示す。
【符号の説明】
【0123】
A コア層
A1 光拡散剤含有コア層
A2 光拡散剤が偏在したコア層
B 帯電防止層
B1 光拡散剤含有帯電防止層
C 被覆層
10 ダイ
11 リップ部
12 押出機
13、14、15 ポリッシングロール
16 多層シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂(a)を基材樹脂とするコア層(A)形成用溶融物と、
透明樹脂(b)を基材樹脂として高分子型帯電防止剤を含む帯電防止層(B)形成用溶融物と、透明樹脂(c)を基材樹脂として高分子型帯電防止剤を実質的に含まない被覆層(C)形成用溶融物とを、ダイ内で積層合流させて共押出する帯電防止性多層シートの製造方法であって、
前記被覆層が前記多層シートの少なくとも一方の最外面となり、且つ前記帯電防止層が前記被覆層の内面に接して、且つ前記コア層の少なくとも外面側となるように前記各溶融物をダイ内で積層合流することにより、積層合流物となし、
下記式(1)で表される前記ダイのリップ部分の平行ランド部の前記積層合流物のせん断量を0.1〜170とすることを特徴とする帯電防止性多層シートの製造方法。
(数1)

【請求項2】
前記帯電防止層において、前記高分子型帯電防止剤の溶融粘度と透明樹脂(b)の溶融粘度との比が1:35〜1:1.5であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【請求項3】
前記透明樹脂(b)の溶融粘度が600〜2500Pa・sであり、前記透明樹脂(c)の溶融粘度が前記透明樹脂(b)の溶融粘度以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【請求項4】
前記帯電防止層において、前記高分子型帯電防止剤の添加量が、前記透明樹脂(b)と前記高分子型帯電防止剤との総和量に対して5重量%〜40重量%であり、前記帯電防止層の厚みが20〜300μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【請求項5】
前記帯電防止性多層シートにおける前記被覆層の厚みが2〜50μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【請求項6】
前記帯電防止性多層シートの全体厚みが0.5〜15mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【請求項7】
前記帯電防止性多層シートのイエローインデックス値が2.6以下であり、
前記帯電防止性多層シートの帯電圧半減期測定における初期帯電圧が2.5kV以下である多層シートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【請求項8】
前記帯電防止性多層シートが、前記コア層又は帯電防止層の少なくとも一つの層に光拡散剤を含有する多層シートであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【請求項9】
前記被覆層において、耐候安定剤の添加量が、前記被覆層の基材樹脂100重量部に対して0.05〜0.8重量部であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。
【請求項10】
前記帯電防止性多層シートを構成する各層の基材樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載の帯電防止性多層シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−42598(P2010−42598A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208271(P2008−208271)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】