説明

帯電防止特性または電気伝導特性を有する全芳香族ポリイミド粉末の製造方法

【課題】耐熱性及び機械的特性を従来のポリイミド樹脂の物性とほぼ同様に維持し、同時に優れた帯電防止特性または電気伝導特性を有する全芳香族ポリイミド粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による帯電防止特性または電気伝導特性を有する全芳香族ポリイミド粉末の製造方法は、電気伝導性カーボンブラックと多重壁カーボンナノチューブ(Multi Wall Carbon Nano−Tube、以下「MWCNT」)の粉末が分散されたフェノール系有機極性溶媒に芳香族テトラカルボン酸二無水物単量体と芳香族ジアミン単量体の混合物を投入して重合することを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止特性または電気伝導特性を有する全芳香族ポリイミド粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ポリイミド(以下、「PI」)樹脂とは、芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体と、芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネート(diisocyanate)を反応させた後、イミド化して製造される高耐熱樹脂をいう。PI樹脂は、使用される単量体の種類に応じて様々な分子構造を有するが、代表的な芳香族テトラカルボン酸成分としてピロメリット酸二無水物(PMDA)またはビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)が挙げられ、芳香族ジアミン成分としてオキシジアニリン(ODA)またはp−フェニレンジアミン(p−PDA)が挙げられる。最も代表的なPI樹脂は、繰り返し単位として次の化学式(1)の化学構造を有する。
【0003】
【化1】

(1)
【0004】
前記化学式(1)を繰り返し単位とする樹脂は、不溶、不融の超高耐熱性樹脂であり、優れた耐熱酸化性を有し、長期間使用温度は約280℃、短期使用温度は約480℃程度で、非常に優れた耐熱特性、優れた電気絶縁性、機械的特性、耐放射線性及び低温特性、耐薬品性を有するため、電気電子産業、自動車産業、半導体産業、及び宇宙航空産業などの様々な先端産業分野の核心耐熱部品として使用されている。
【0005】
しかし、最近、半導体、平板ディスプレイなどの産業でウェハ及びガラス基板の大面積化による静電気問題が発生して絶縁特性のポリイミド成形部品に電気伝導性を付与しようとする試みがあった。
【0006】
不溶、不融の全芳香族ポリイミドに電気伝導性を付与するための代表的な方法としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4のように電気伝導性カーボンブラックあるいは電気伝導性カーボンブラックと黒鉛粉末の組み合わせによる方法が挙げられるが、前駆体のポリアミド酸に分散させてポリイミドフィルムを製造する用途に限定されており、ポリイミド粉末を圧縮成形して加工用部品素材を生産するための成形用ポリイミド粉末に適用した例はない。また、特許文献5では様々な金属酸化物(Metal Oxide)を用いた電気伝導性の付与方法を使用しており、商用化した一部の製品では黒鉛とカーボンファイバー(Carbon fiber)を使用しているが、カーボンファイバーの配向に応じて局部的に電気的特性が異なり、表面に露出したカーボンファイバーが半導体製造工程及び平板ディスプレイ製造工程で半導体及びガラス基板に微細なスクラッチ(Scratch)を発生させるなどの問題がある。さらに、これら方法はフィラーの調節により106−109Ω/□の帯電防止領域を再現性よく発現し難いと知られており、105Ω/□以下の表面抵抗を発現するために、多量の電気伝導性フィラーが必要となり、粉末重合工程中に添加されたフィラーが溶媒を吸収して膨潤されることにより、スラリーを均一に混合することが難しく、これによって濾過、洗浄、乾燥に至る後処理過程の実施が困難である。その結果、成形品の製造時、機械的物性の低下、摩耗によるパーティクルの過剰発生と高温、高真空下での脱ガス放出などの問題が指摘されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】Canadian Patent 708,869
【特許文献2】USP 4,568,412
【特許文献3】USP 5,075,036
【特許文献4】USP 5,078,936
【特許文献5】USP2007/0152195A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた耐熱性と機械的特性を維持し、かつ電気的特性も優れた全芳香族ポリイミド粉末の製造方法に関するもので、106〜109Ω/□の表面抵抗を有する帯電防止性能に優れた不溶、不融のポリイミド樹脂粉末を製造する方法を提供することを第1の課題とする。また、本発明は、105Ω/□以下の表面抵抗を有する電気伝導性に優れた不溶、不融のポリイミド樹脂粉末を製造する方法を提供することを第2の課題とする。
さらに、本発明は、前記方法によりポリイミド樹脂粉末を用いて製造された成形体を提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記第1の課題を達成するために、本発明は、電気伝導性カーボンブラック粉末と多重壁カーボンナノチューブ粉末が分散されたフェノール系有機極性溶媒に芳香族ジアミンを溶解させた後、芳香族テトラカルボン酸二無水物単量体を投入して一段階で重合させることを含むポリイミド樹脂粉末の製造方法を提供する。
また、前記第2の課題を達成するために、本発明は、電気伝導性カーボンブラック粉末と多重壁カーボンナノチューブ粉末が分散されたフェノール系有機極性溶媒に芳香族ジアミンを溶解させた後、芳香族テトラカルボン酸二無水物単量体を投入して一段階で重合させ、製造されたポリイミド樹脂粉末に多重壁カーボンナノチューブ粉末をさらに加えて乾式ブレンドして複合化することにより電気伝導性を有するポリイミド樹脂粉末を製造する方法を提供する。
また、前記第3の課題を達成するために、本発明は、前記本発明の方法によるポリイミド複合素材粉末を用いて製造されたポリイミド成形体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、芳香族ジアミン単量体と芳香族テトラカルボン酸二無水物単量体の混合物を、伝導性カーボンブラックと多重壁カーボンナノチューブの2種類の伝導性無機粒子粉末が分散されたフェノール系有機極性溶媒に溶解させた後、徐々に昇温してイミド化重合及び複合化反応を同時に行うことにより、既存のポリイミドの耐熱性と機械的特性はそのまま維持しながら、伝導性無機粒子がポリイミド粉末内に均一に分散して表面抵抗106〜109Ω/□領域の帯電防止特性を有するポリイミド樹脂粉末及び成形体が得られ、さらに多重壁カーボンナノチューブ(MWCNT)をボールミル(Ball Mill)などの簡単な乾式ブレンド方法で複合化することにより、表面抵抗105Ω/□以下領域の電気伝導性ポリイミド粉末及び成形品を製造することができる。
したがって、耐熱性、耐摩耗性、機械的特性、及び電気伝導性が同時に得られるため、電気.電子、平板ディスプレイ産業、太陽電池産業などの静電気問題を解決した高耐熱性を必要とする先端核心機械部品に使用できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明により製造された106Ω/□〜109Ω/□の電気伝導度を有するポリイミド樹脂粉末に多重壁カーボンナノチューブを簡単に乾式ブレンドして得られる伝導性ポリイミド樹脂粉末の成形品に対する表面抵抗を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明は、従来の高耐熱性のポリイミド樹脂に電気伝導特性を付与した全芳香族性ポリイミド共重合体を製造するためのもので、溶液状態でのイミド化反応により得られる高耐熱性のポリイミド共重合体は次のような構造を有する。
【0013】
【化2】

(1)
【0014】

から選択された1種または2種以上である。)
【0015】
本発明で前記構造を有するポリイミド共重合体が電気伝導特性を有する方法は次の通りである。
伝導性カーボンブラックとMWCNTが容易に溶液状態で分散されるフェノール系有機極性有機溶媒に芳香族ジアミンを所定の濃度で溶解させる。次に、よく粉砕された電気伝導性カーボンブラックとMWCNTを所定の濃度で分散させる。
カーボンナノチューブは、構造に応じて単一壁(single wall)と多層からなる多重壁があるが、本発明では溶媒相に容易に分散されると知られた多重壁カーボンナノチューブを用いることを特徴とする。
前記多重壁ナノチューブに関してはPolymer(Korea)、Vol31、No5、P422−427、2007に詳しく記載されており、本発明では当業界で一般的に知られた多重壁ナノチューブを制限せず使用することができる。
【0016】
本発明による方法の一実施例としては下記の方法が挙げられる。具体的には、芳香族ジアミンが完全溶解され、カーボンブラック及びMWCNTがよく分散するように約30分間撹拌した後、反応液の温度を60〜80℃まで1〜2時間にわたって昇温しながらテトラカルボン酸二無水物を3回に分けて固体状態で徐々に注入する。
前記芳香族ジアミンとしては4,4'−オキシジアニリン(ODA)、パラフェニレンジアミン(p−PDA)、メタフェニレンジアミン(m−PDA)、4,4'−メチレンジアニリン(MDA)、2,2'−ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)、メタビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(m−BAPS)、パラビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(p−BAPS)、1,4−ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE−Q)、ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE−R)、2,2'−ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(BAPP)、2,2'−ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、及び4,4'−ベンズアニリド(DABA)から選択された1種または2種以上が必須成分として用いられるが、その他のポリイミド重合に用いられてきた通常の芳香族ジアミン単量体が用いられてもよい。
【0017】
また、前記テトラカルボン酸二無水物としてはピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビフタル酸二無水物、及びヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物から選択された1種または2種以上が必須成分として用いられるが、その他のポリイミド重合に用いられてきた通常の芳香族テトラカルボン酸二無水物単量体が用いられてもよい。
【0018】
次に、前記60〜80℃で1〜2時間撹拌した反応溶液を160〜200℃に徐々に昇温した後、1〜2時間維持して生成されるポリイミドスラリーを濾過する。濾過されたポリイミド粉末をアセトン、メチルアルコールなどの低沸点の有機溶媒で洗浄した後、100℃〜250℃の温度、10-1Torr以下の真空及び窒素ガス気流下で乾燥する。この時、乾燥温度は160℃〜220℃の温度が好ましく、さらに好ましくは190℃の温度である。
【0019】
本発明において、前記電気伝導性カーボンブラック粉末と多重壁カーボンナノチューブ粉末は、2つの粉末の総合が単量体の総使用量を基準として1〜30重量%の範囲で使用されることが好ましく、さらに具体的には伝導性カーボンブラックは、使用する単量体の総量に対して0.5〜18重量%を使用し、MWCNTは単量体の総量に対して0.5〜12重量%を使用することが好ましい。前記カーボンブラック粉末は、比表面積が300m2/g以上であることが好ましいが、これに限定することはない。
【0020】
本発明において、前記電気伝導性カーボンブラックと多重壁カーボンナノチューブの相対的な比率は電気伝導性カーボンブラックが60〜80重量%であり、多重壁カーボンナノチューブが40〜20重量%であることが好ましいが、これに限定することはない。
結果的に、生成されたポリイミド樹脂粉末は106〜109Ω/□の表面抵抗を有し、30%以下の低結晶化度と98%以上のイミド化度を有し、50〜400m/g範囲の高い比表面積を有するため、効果的に圧縮成形される。
【0021】
また、電気伝導特性を付与するために添加する伝導性カーボンブラックは、使用する単量体の総量に対して8〜12重量%を使用し、比表面積が300m/g以上であることが好ましく、MWCNTは単量体の総量に対して1〜5重量%であることが好ましい。
反応に用いられる高沸点のフェノール系有機極性溶媒は、メタクレゾールが好ましいが、オルト、メタ、パラの異性体が不均一に混合された混合クレゾールが使用されてもよい。
また、全体固形分の濃度は6重量%〜16重量%が好ましく、さらに好ましくは8重量%〜12重量%である。
【0022】
本発明の製造方法により製造されたポリイミド樹脂粉末は、固有粘度が0.7〜2.5dl/g範囲を維持し、結晶化度が20〜30%であり、比表面積は50〜400m/g範囲を維持し、また、イミド化度は98〜99%の範囲にあることが好ましい。
【0023】
本発明による製造方法で製造された電気伝導性ポリイミド樹脂粉末は50,000〜100,000psi(345〜690Mpa)の圧力で室温及び高温で圧縮成形し、窒素気流下で300℃〜500℃で1〜5時間焼成することにより、または、高温高圧を同時に加えることにより、高耐熱性及び優れた機械的強度を有する電気伝導性ポリイミド成形品を製造することができる。
【0024】
この時、成形品の引張強度は900kgf/cm2、延伸率は6.5%以上の優れた機械的物性を有し、成形品の表面抵抗は106〜109Ω/□の帯電防止領域を有する。
本発明による製造方法により製造されたポリイミド粉末は、表面抵抗106〜109Ω/□領域の静電気防止用帯電防止高耐熱部品として使用することができ、さらに同種のMWCNTを0.1〜1.0重量%だけ加えて粉末状態でボールミルなどの乾式ブレンドを行った後、前述した方法で圧縮成形しても引張強度900kgf/cm2、延伸率は6.5%以上の優れた機械的物性を維持し、かつ成形品の表面抵抗は105Ω/□以下の電気伝導性ポリイミド成形品を製造することができる。
【0025】
結果的に、この方法は、含量と比率が調節された伝導性カーボンブラックとMWCNT添加して一段階直接重合により表面抵抗106〜109Ω/□の帯電防止領域の母体粉末を製造した後、極少量のMWCNTを簡単な方法を用いて加えることにより、所望の領域帯の表面抵抗を有するように調節可能な容易な方法と、機械的物性の差の殆どない電気伝導性ポリイミド粉末及び成形品を効果的に簡単に製造する方法を提供する。
以下、実施例を参照して本発明をより詳しく説明するが、下記実施例は本発明を例示するだけで、本発明が必ずしもこれに限定されることはない。
【実施例】
【0026】
実施例1:カーボンブラック(10重量%)+MWCNT(3重量%)
撹拌器、温度調節装置、窒素注入装置が付着された2lの反応器に36.11gの4,4'−オキシジアニリン(ODA)と8.92gの伝導性カーボンブラック(AkzoNobel社、KETJENBLACK EC 300J)、2.68gのMWCNT(NANOCYL社、NC 7000)を入れ、653gの混合クレゾールに溶解、分散させた後、室温で窒素ガスを通過させる。
室温から60〜80℃まで1〜2時間にわたって徐々に昇温し、39.45gのピロメリット酸二無水物(PMDA)を3回に分けて同量注入する。この時、固形分の濃度は11重量%に固定し、60〜80℃で1〜2時間反応させて反応溶液の温度を160〜200℃の温度まで昇温した後、1〜2時間撹拌してイミド化反応を行う。反応が終了すると、沈殿されたポリイミド重合体を濾過し、2lのアセトンで洗浄した後、190℃、10-1torrの真空状態及び窒素気流下で16時間乾燥する。
製造されたポリイミド樹脂粉末は、濃硫酸を溶媒にして0.5g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.2dl/gであり、イミド化度は99%であった。
前記粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で3時間焼結してポリイミド成形品を製造した。
【0027】
実施例2:実施例1+0.1重量%のMWCNT
撹拌器、温度調節装置、窒素注入装置が付着された2lの反応器に36.11gの4,4'−オキシジアニリン(ODA)と8.92gの伝導性カーボンブラック、2.68gのMWCNTを入れ、653gの混合クレゾールに溶解、分散させた後、室温で窒素ガスを通過させる。
室温から60〜80℃まで1〜2時間にわたって徐々に昇温し、39.45gのピロメリット酸二無水物(PMDA)を3回に分けて同量注入する。この時、固形分の濃度は11重量%に固定し、60〜80℃で1〜2時間反応させて反応溶液の温度を160〜200℃の温度まで昇温した後、1〜2時間撹拌してイミド化反応を行う。反応が終了すると、沈殿されたポリイミド重合体を濾過し、2lのアセトンで洗浄した後、190℃、10-1torrの真空状態及び窒素気流下で16時間乾燥する。
次に、0.1重量%のMWCNTをさらに加えた後、回転式ボールミルを用いて60rpmで1〜3時間粉砕及び混合する。
前記粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で3時間焼結してポリイミド成形品を製造した。
【0028】
実施例3:実施例1+0.2重量%のMWCNT
撹拌器、温度調節装置、窒素注入装置が付着された2lの反応器に36.11gの4,4'−オキシジアニリン(ODA)と8.92gの伝導性カーボンブラック、2.68gのMWCNTを入れ、653gの混合クレゾールに溶解、分散させた後、室温で窒素ガスを通過させる。
室温から60〜80℃まで1〜2時間にわたって徐々に昇温し、39.45gのピロメリット酸二無水物(PMDA)を3回に分けて同量注入する。この時、固形分の濃度は11重量%に固定し、60〜80℃で1〜2時間反応させて反応溶液の温度を160〜200℃の温度まで昇温した後、1〜2時間撹拌してイミド化反応を行う。反応が終了すると、沈殿されたポリイミド重合体を濾過し、2lのアセトンで洗浄した後、190℃、10-1torrの真空状態及び窒素気流下で16時間乾燥する。
次に、0.2重量%のMWCNTをさらに加えた後、回転式ボールミルを用いて60rpmで1時間粉砕及び混合する。
前記粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で3時間焼結してポリイミド成形品を製造した。
【0029】
実施例4:実施例1+0.3重量%のMWCNT
撹拌器、温度調節装置、窒素注入装置が付着された2lの反応器に36.11gの4,4'−オキシジアニリン(ODA)と8.92gの伝導性カーボンブラック、2.68gのMWCNTを入れ、653gの混合クレゾールに溶解、分散させた後、室温で窒素ガスを通過させる。
室温から60〜80℃まで1〜2時間にわたって徐々に昇温し、39.45gのピロメリット酸二無水物(PMDA)を3回に分けて同量注入する。この時、固形分の濃度は11重量%に固定し、60〜80℃で1〜2時間反応させて反応溶液の温度を160〜200℃の温度まで昇温した後、1〜2時間撹拌してイミド化反応を行う。反応が終了すると、沈殿されたポリイミド重合体を濾過し、2lのアセトンで洗浄した後、190℃、10-1torrの真空状態及び窒素気流下で16時間乾燥する。
次に、0.3重量%のMWCNTをさらに加えた後、回転式ボールミルを用いて60rpmで1〜3時間粉砕及び混合する。
前記粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で3時間焼結してポリイミド成形品を製造した。
【0030】
実施例5:実施例1+0.4重量%のMWCNT
撹拌器、温度調節装置、窒素注入装置が付着された2lの反応器に36.11gの4,4'−オキシジアニリン(ODA)と8.92gの伝導性カーボンブラック、2.68gのMWCNTを入れ、653gの混合クレゾールに溶解、分散させた後、室温で窒素ガスを通過させる。
室温から60〜80℃まで1〜2時間にわたって徐々に昇温し、39.45gのピロメリット酸二無水物(PMDA)を3回に分けて同量注入する。この時、固形分の濃度は11重量%に固定し、60〜80℃で1〜2時間反応させて反応溶液の温度を160〜200℃の温度まで昇温した後、1〜2時間撹拌してイミド化反応を行う。反応が終了すると、沈殿されたポリイミド重合体を濾過し、2lのアセトンで洗浄した後、190℃、10-1torrの真空状態及び窒素気流下で16時間乾燥する。
次に、0.4重量%のMWCNTをさらに加えた後、回転式ボールミルを用いて60rpmで1時間粉砕及び混合する。
前記粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で3時間焼結してポリイミド成形品を製造した。
【0031】
実施例6:実施例1+0.5重量%のMWCNT
撹拌器、温度調節装置、窒素注入装置が付着された2lの反応器に36.11gの4,4'−オキシジアニリン(ODA)と8.92gの伝導性カーボンブラック、2.68gのMWCNTを入れ、653gの混合クレゾールに溶解、分散させた後、室温で窒素ガスを通過させる。
室温から60〜80℃まで1〜2時間にわたって徐々に昇温し、39.45gのピロメリット酸二無水物(PMDA)を3回に分けて同量注入する。この時、固形分の濃度は11重量%に固定し、60〜80℃で1〜2時間反応させて反応溶液の温度を160〜200℃の温度まで昇温した後、1〜2時間撹拌してイミド化反応を行う。反応が終了すると、沈殿されたポリイミド重合体を濾過し、2lのアセトンで洗浄した後、190℃、10-1torrの真空状態及び窒素気流下で16時間乾燥する。
次に、0.5重量%のMWCNTをさらに加えた後、回転式ボールミルを用いて60rpmで1時間粉砕及び混合する。
前記粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で3時間焼結してポリイミド成形品を製造した。
【0032】
比較例1:黒鉛粉末(15重量%)+カーボンブラック(10重量%)
撹拌器、温度調節装置、窒素注入装置が付着された2lの反応器に36.11gの4,4'−オキシジアニリン(ODA)と8.92gの伝導性カーボンブラック、13.40gの黒鉛粉末を入れ、705gの混合クレゾール、39.45gのピロメリット酸二無水物(PMDA)を用いて実施例1のような方法でポリイミド樹脂粉末と成形品を製造した。製造されたポリイミド粉末の固有粘度は0.9dl/gであり、イミド化度は98%であった。
【0033】
比較例2:カーボンブラック(20重量%)
撹拌器、温度調節装置、窒素注入装置が付着された2lの反応器に36.11gの4,4'−オキシジアニリン(ODA)と17.84gの伝導性カーボンブラック、755gの混合クレゾール、39.45gのピロメリット酸二無水物(PMDA)を用いて実施例1のような方法でポリイミド樹脂粉末と成形品を製造した。製造されたポリイミド粉末の固有粘度は0.95dl/gであり、イミド化度は98%であった。
結果を表1に示した。
【0034】
【表1】

1)引張強度及び延伸率は、ASTM D−1708方法で測定
2)表面抵抗は、JIS K7194(@90V)方法で測定
【0035】
結果的に、本発明は、帯電防止特性、電気伝導特性、及び最適の機械的特性を有するポリイミド樹脂粉末の製造に当たって、より効果的な電気伝導性フィラーの組成を見つけ、従来の技術よりも容易で、経済的にも競争力のある、優れた物性の製品を生産する新たな製造方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気伝導性カーボンブラック粉末と多重壁カーボンナノチューブ(MWCNT)粉末が分散されたフェノール系有機極性溶媒に芳香族ジアミンを溶解させた後、芳香族テトラカルボン酸二無水物を投入して重合反応を実施することを含む全芳香族ポリイミド複合素材粉末の製造方法。
【請求項2】
前記重合反応は、芳香族ジアミンが完全溶解され、カーボンブラック及びMWCNTが分散されるように撹拌した後、反応液の温度を60〜80℃まで1〜2時間にわたって昇温しながらテトラカルボン酸二無水物を固体状態で注入し、60〜80℃まで1〜2時間撹拌反応させた後、160〜200℃に昇温して1〜2時間維持することで行われることを特徴とする請求項1に記載の全芳香族ポリイミド複合素材粉末の製造方法。
【請求項3】
フェノール系有機極性溶媒は、メタクレゾールまたはオルトクレゾール、メタクレゾール及びパラクレゾールから選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の全芳香族ポリイミド複合素材粉末の製造方法。
【請求項4】
芳香族ジアミンは、4,4'−オキシジアニリン(ODA)、パラフェニレンジアミン(p−PDA)、メタフェニレンジアミン(m−PDA)、4,4'−メチレンジアニリン(MDA)、2,2'−ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)、メタビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(m−BAPS)、パラビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(p−BAPS)、1,4−ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE−Q)、ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE−R)、2,2'−ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(BAPP)、2,2'−ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、及び4,4'−ベンズアニリド(DABA)から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の全芳香族ポリイミド複合素材粉末の製造方法。
【請求項5】
テトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビフタル酸二無水物、及びヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の全芳香族ポリイミド複合素材粉末の製造方法。
【請求項6】
前記電気伝導性カーボンブラック粉末と多重壁カーボンナノチューブ粉末は、2つの粉末の総合が単量体の総使用量を基準として1〜30重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の全芳香族ポリイミド複合素材粉末の製造方法。
【請求項7】
前記電気伝導性カーボンブラックと多重壁カーボンナノチューブの比率は、電気伝導性カーボンブラックが60〜80重量%、多重壁カーボンナノチューブが40〜20重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の全芳香族ポリイミド複合素材粉末の製造方法。
【請求項8】
前記製造された複合素材粉末に対して0.1〜1.0重量%の多重壁カーボンナノチューブ(MWCNT)を加えて乾式ブレンドすることをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の全芳香族ポリイミド複合素材粉末の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載のポリイミド複合素材粉末を用いて製造されたポリイミド成形体。
【請求項10】
前記製造された電気伝導性ポリイミド樹脂粉末を50,000〜100,000psi(345〜690Mpa)の圧力で圧縮成形し、300℃〜500℃で1〜5時間焼成して製造されることを特徴とする請求項9に記載のポリイミド成形体。

【図1】
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【公表番号】特表2013−516509(P2013−516509A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546991(P2012−546991)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008743
【国際公開番号】WO2011/081314
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512174000)デリム コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】