説明

帳票プリンタおよび帳票プリンタの印字品位改善方法

【課題】印字ヘッドの寿命を短縮することなく、複写伝票の最下部に位置する紙への印字を適切に行う。
【解決手段】単票や通帳等の一般帳票と複写伝票を対象として印字を行なう帳票プリンタ1において、単票を含む一般帳票への高速印字に適した一般帳票用の制御パラメータと、高速印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間を冗長する複写伝票用の制御パラメータとを不揮発性メモリ12に保存しておき、帳票搬送路3に挿入された帳票5が一般帳票であるのか複写伝票であるのかに応じて一般帳票用の制御パラメータもしくは複写伝票用の制御パラメータの何れかを選択して印字ヘッド駆動回路11に設定する。叩打力を冗長せずに押し込み時間を冗長することで印字ヘッド4の寿命を短縮することなく複写伝票の最下部に位置する紙への印字を適切に行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帳票プリンタおよび帳票プリンタの印字品位改善方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使われる帳票プリンタにおいては、帳票搬送路に挿入された帳票の種類判別を行うものがあり、その判別は、帳票の幅,厚さ,磁気ストライプの有無などによって行っている。
例えば、特許文献1に開示される帳票処理装置では、挿入された帳票の幅,厚さ,磁気ストライプの有無によって帳票種別を判別しており、この帳票処理装置の厚さ検知機構は、図13に示されるように、帳票104の表面と当接して帳票104の厚さXに応じて上下動する検知用ローラ100と、検知用ローラ100の上下移動量に対応した厚さ検知信号を発生する検知信号発生部101と、検知信号発生部101に含まれ、初期位置からの回転角度θに対応する電圧を厚さ検知信号として発する回動部102と、先端に検知用ローラ100が取り付けられ、検知用ローラ100の上下移動量に応じて回動部102を回転させるアーム103によって構成される。
この厚さ検知機構は、帳票が到来してくると帳票104の厚み分だけ検知用ローラ100が浮上し、回動部102が角度θだけ回動する。このとき、検知信号発生部101からは回転角度θに対応した厚さ検知信号が発生して帳票104の厚さを検出する。
しかし、金融機関等の店舗に設置された帳票処理装置は、その稼動に伴って、搬送によって帳票が削られて生じる紙粉や伝票とじ部の糊のカス,インクリボンが削れて生じるリボンカス,冷却ファンの気流によって外部から進入してくる設置環境中の浮遊ゴミなどによって其の内部が汚染される。これらのゴミは、粘着成分があったり、帳票処理装置内部の油分と混合することによって、帳票処理装置内部のあらゆる部分に定着する。当然、帳票を搬送する帳票搬送ローラにも付着して帳票の搬送ミスや帳票停止位置の誤差が大きくなる障害の原因となる。
これと同様に、検知用ローラ100にもゴミが付着するが、検知用ローラ100や帳票搬送ローラは帳票の移動に伴って自転するため、帳票と擦れ合うことがない。そのため、保守時に清掃しない限り、検知用ローラ100や帳票搬送ローラの表面に付着したゴミを排除することは難しい。よって、検知信号発生部101から出力される厚さ検知信号には、ゴミの厚さが含まれ、正確な帳票の厚さを検知することが困難である。
【0003】
また、帳票プリンタにおける印字品位を改善するものとしては特許文献2に開示される通帳伝票プリンタが知られている。その構成について図14に示す。この通帳伝票プリンタは、挿入された帳票から反射センサ106,磁気ヘッド107,透過センサ108を介してデータを収集し、記憶部112に記憶されたフォーマットと比較することで媒体識別部110が帳票の種別を判定し、帳票が通帳であると判定されると、そのページマークリード結果によって通帳の印字ページの厚さ即ち印字対象となる見開きページと其の下部に重合されている他のページの厚みの総和を推定し、印字ページが厚いと判断した場合に、主制御部111からの指令で印字コントロール部109の電気的ドライブ条件を変え、印字ヘッド105の印字圧力を上げることにより印字品位を改善しようとしたものである。
一般的に通帳の厚いページは、10ページ程度の厚さがあり、ページとページの間が密着した状態でないため、通帳最上面の印字対象ページがフカフカした状態となっている。このため、印字ヘッド105のワイヤがインクリボンのインクをページ上に均一に転写できず、濃いドットと薄いドットが混在することで印字品位が悪くなる。
この不都合を解消すべく、特許文献2記載の通帳伝票プリンタでは、印字ヘッド105の圧力を上げて薄いドットをなくすことで印字品位を改善している。
しかし、近年、プリンタの処理速度の向上を目的として、印字ヘッドの駆動周波数が高くなっているため、通帳の厚いページのみではなく、複写伝票の最下部に位置する紙への転写カスレが問題になっている。通帳の厚いページの印字品質の劣化は、インクリボンからのインク転写が弱いことが原因であるため、印字圧力の変更で改善することができるが、複写伝票の最下部に位置する紙に生じる転写カスレは、インクリボンからのインク転写の問題ではないため、単純に印字圧力を上げることによって改善することは困難である。また、印字圧力を上げると、印字ヘッドのワイヤの負荷応力が増え、ワイヤの先端の磨耗やワイヤ折れによって印字ヘッド寿命が短縮するといった弊害も生じる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−58931号公報
【特許文献2】特開昭63−264382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、印字ヘッドの寿命を短縮することなく、複写伝票の最下部に位置する紙への印字を適切に行うことのできる帳票プリンタおよび帳票プリンタの印字品位改善方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の帳票プリンタは、帳票搬送路の一側に設けられたドットインパクト式の印字ヘッドと、前記印字ヘッドを保持して帳票搬送路内の帳票と平行な平面内で帳票の搬送方向と直交する方向に移動するキャリアと、予め設定された制御パラメータに従って前記印字ヘッドにおけるワイヤの駆動態様を電気的に制御する印字ヘッド制御部と、前記帳票搬送路を挟んで前記キャリアに対向する位置で帳票を支えるプラテンと、前記帳票搬送路内で帳票に送りを掛ける帳票搬送手段とを備えた帳票プリンタであり、前記目的を達成するため、特に、
単票を含む一般帳票への高速印字に適した一般帳票用の制御パラメータと,一般帳票への印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間を冗長する複写伝票用の制御パラメータとを記憶したパラメータ記憶手段と、
前記帳票搬送路に挿入された帳票が一般帳票であるのか複写伝票であるのかを判定する帳票種別判定手段と、
前記帳票種別判定手段により前記帳票が一般帳票であると判定された場合には一般帳票用の制御パラメータを駆動条件として前記印字ヘッド制御部に設定する一方、前記帳票種別判定手段により前記帳票が複写伝票であると判定された場合には複写伝票用の制御パラメータを駆動条件として前記印字ヘッド制御部に設定するパラメータ選択手段とを設けたことを特徴とする構成を有する。
【0007】
また、本発明の印字品位改善方法は、前記と同様の目的を達成するため、ドットインパクト式の印字ヘッドを用いて複写伝票および単票を含む一般帳票への印字を行なう帳票プリンタの印字品位改善方法において、
複写伝票への印字の際に、単票を含む一般帳票への印字の際と同等の叩打力を保持してワイヤの押し込み時間を冗長するようにしたことを特徴とする構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の帳票プリンタおよび帳票プリンタの印字品位改善方法は、複写伝票への印字に際して単票を含む一般帳票への印字の際と同等の叩打力を保持してワイヤの押し込み時間のみを冗長するようにしたので、印字ヘッドの寿命を短縮することなく、複写伝票の最下部に位置する紙への印字を適切に行うことができる。
また、複写伝票への印字に際してワイヤに作用する負荷が増大することもないので、印字ヘッドの耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、図面を参照して本発明の印字品位改善方法を適用した帳票プリンタの実施例について具体的に説明する。
【0010】
図1は本発明の印字品位改善方法を適用した一実施例の帳票プリンタ1の主要部の機械的な構成について帳票の搬送方向に沿った視点で簡略化して示した正面図、また、図2は同帳票プリンタ1に内蔵されたプリンタ制御装置2の構成について簡略化して示したブロック図である。
【0011】
この実施例の帳票プリンタ1は、図1に示されるように、帳票搬送路3の一側に設けられたドットインパクト式の印字ヘッド4と、印字ヘッド4を保持して帳票搬送路3内の帳票5と平行な平面内で帳票5の搬送方向と直交する方向つまり図1中の左右方向に移動するキャリア6、および、帳票搬送路3を挟んでキャリア6に対向する位置で帳票5を支えるプラテン7を備える。
【0012】
帳票搬送路3内で帳票5に対して図1の紙面垂直方向に送りを掛ける帳票搬送ローラ等からなる帳票搬送手段の構成については既に公知であるので記載を省略し、その駆動源を構成する帳票搬送モータM1を図2に記載するにとどめる。同様に、図1の紙面左右方向に向けてキャリア6に送りを掛けるタイミングベルトや歯付プーリ等のキャリア駆動手段に関しても公知であるので記載を省略し、図1にキャリアガイド13,14を示し、キャリア駆動手段の駆動源を構成するキャリア駆動モータM2を図2に示す。
【0013】
この実施例における印字ヘッド制御部、つまり、設定された制御パラメータに従って印字ヘッド4のワイヤの駆動態様を電気的に制御するための手段は、図2に示されるプリンタ制御装置2の主要部を構成するマイクロプロセッサ8と其の制御プログラムを格納したROM9、および、入出力回路10を介してマイクロプロセッサ8から入力される指令を受けて印字ヘッド4を駆動制御する印字ヘッド駆動回路11によって構成されている。
【0014】
また、プリンタ制御装置2の不揮発性メモリ12は、一般帳票である単票への高速印字に適した一般帳票用の制御パラメータと、単票への高速印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間のみを冗長するための複写伝票用の制御パラメータとを記憶するパラメータ記憶手段として機能する。
【0015】
この実施例では、帳票プリンタ1で使用される帳票5として、小冊子状の通帳と、カーボン紙や白紙を重合して構成した複写伝票と、一枚の紙片からなる単票を想定している。
【0016】
一般的な属性として、小冊子状に折り畳まれた通帳の厚みは2mm前後、また、単票の厚みは約50μm〜150μm程度である。通常、複写伝票は、約50μmの厚さの紙やカーボン紙を3枚〜7枚重ねて構成され、その厚みは概ね150μm〜350μmほどとなり、実際には、厚さ50μmの用紙を3枚、あるいは、75μmの用紙を2枚重ねた150μm前後の複写伝票や、50μmの用紙を4枚、あるいは、40μmの用紙を5枚重ねた200μm前後の複写伝票といったものが存在する。
【0017】
従って、帳票5の厚みのみに基いて複写伝票と単票を識別するとした場合、150μm前後の厚みの帳票5が複写伝票であるのか単票であるのかを識別することは困難であるが、複写伝票の最下部に位置する紙への転写カスレが実質的な問題となるのは、重合する紙の枚数が4枚を超えた時点であるので、例えば、150μmの厚みを閾値として複写伝票と単票を識別しても実質的な支障はない。その場合、厚さ50μmの用紙を3枚、あるいは、75μmの用紙を2枚重ねた150μm前後の複写伝票が単票として判定される可能性があるが、150μm前後の複写伝票の場合においては重合する紙の枚数は4枚以下であるので、複写伝票に固有の転写カスレ、より具体的には、比較的転写枚数が多い複写伝票(強いて言えば4枚を超える紙やカーボン紙を重ねた複写伝票)に固有の転写カスレの問題は発生しない。
【0018】
ここでは、専ら、複写伝票に生じる転写カスレを問題としているので、帳票プリンタ1で使用される帳票5の種別を単純に複写伝票と一般帳票の2種に分類しているが、上述の説明から明らかなように、実際には、一般帳票には単票と通帳の2種が含まれる。
【0019】
一般帳票のうち、通帳に関してみると、背景技術の欄でも説明したように、印字ヘッド4のワイヤがインクリボンのインクをページ上に均一に転写できずに濃いドットと薄いドットが混在して印字品質が劣化するといった不都合があるが、この点に関しては、背景技術の欄でも説明した通り、印字ヘッド4の耐久性さえ問わなければ、印字ヘッド4のワイヤの叩打力を冗長して対処するといったことが可能であり、そうした方法を適用した場合には、印字ヘッド4の耐久性の低下というデメリットがあるものの、印字動作の高速化といったメリットを得ることができる。また、印字速度の多少の低下を覚悟するのであれば、単票に対して行われる高速印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間のみを冗長するといった方法、つまり、本質的には複写伝票に生じる転写カスレの発生を防止するための方法を通帳の印字に転用することによっても、ワイヤの叩打力を冗長する場合と同等あるいは其れ以上の成果をもって通帳の印字の高品質化に対処することが可能である。この実施例では、帳票5の種別を複写伝票と一般帳票の2種に分類するにとどまらず、更に、一般帳票に属する帳票を単票と通帳とに識別できるようにしており、帳票5が複写伝票である場合には必ず単票に対する高速印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間のみを冗長して転写カスレの発生を防止するようにしている。また、帳票5が一般帳票の一種である通帳である場合においては、印字速度を多少犠牲にしても印字ヘッド4の耐久性を優先したければ複写伝票の場合と同様の印字方法を適用するが、印字ヘッド4の耐久性を多少犠牲にしても印字速度を優先したければ、従来と同様に印字ヘッド4のワイヤの叩打力を冗長してドットの濃淡のバラツキを抑制するようにしても構わない。
【0020】
いずれにせよ、少なくとも複写伝票に対しての印字に際しては単票に対して行われる高速印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間のみを冗長するとした構成により、通帳と複写伝票の双方に対して印字ヘッド4のワイヤの叩打力を冗長して印字動作を行なう従来の印字制御の場合と比べて複写伝票に対しての印字の品質が向上し、また、少なくとも複写伝票への印字に際してワイヤに作用する負荷が軽減されることから、印字ヘッド4の耐久性も相対的に向上し、当初の目的が達成されることになる。
【0021】
つまり、端的にいえば、帳票5が複写伝票である場合に単票に対する高速印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間のみを冗長して印字動作を行なうことは必須の要件であるが、帳票5が通帳である場合に、印字ヘッド4のワイヤの叩打力を冗長して濃いドットと薄いドットとの混在を防止するか、あるいは、単票に対する高速印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間を冗長して印字動作を行なうことで薄いドットとの混在を防止するかは、選択的な事項である。
【0022】
ここで、不揮発性メモリ12に記憶されている印字ヘッドの制御パラメータについて説明する。
【0023】
一般に、印字品位に問題がある場合は、特開昭63−264382号公報等で既に開示されている通り、印字ヘッド4におけるワイヤの駆動態様を電気的に制御するパラメータを変更することで改善できる。通常、ドットインパクトプリンタでは、図3(a)に示される初期通電時間t1,全通電時間t2,PWM制御のOFF時間c1,PWM制御の1周期c2の4つのパラメータを変更して、適切な印字結果が得られるよう調整している。
【0024】
例えば、一般帳票である単票への高速印字に適した図3(a)の設定で通帳の厚いページでの印字品位が悪い場合などは、薄いドットが生じないように、t1,c1,c2を変更し、図3(b)のようにt1’,c1’,c2’として入力電力を増やし、叩打力が大きくなるよう設定して、印字全体が濃くなるようにする。
【0025】
しかし、図3(b)のようなパラメータを適用した場合、印字ヘッド4におけるワイヤのドット叩打力が増加しているため、ワイヤの負荷応力が増え、ワイヤ先端の磨耗やワイヤ折れによる寿命の低下が問題になる。また、比較的に厚めの複写伝票の最下部に位置する紙の印字品位を改善するためには、叩打力を増やすのではなく、印字ヘッド4のワイヤの叩打力が複写用紙の最下部の紙まで届くように長い時間押さえてやる、言い換えれば、図3(a)や図4(a)で示す帳票5へのワイヤ押し込み時間Tを長くすることが重要である。
【0026】
よって、図4(b)に示すように、印字ヘッド4のワイヤの駆動周波数を下げ、t1,t2,c1,c2の全てのパラメータをt1”,t2”,c1”,c2”のように変更し、叩打力を増やすことなく帳票へのワイヤ押し込み時間Tを長くすることによって、厚めの複写伝票最下部に位置する紙の印字品位を改善することが可能である。
【0027】
具体的には、図4(b)に示されるように、初期通電時間t1”に関しては単票を初めとする一般帳票への高速印字に適用される初期通電時間t1よりも短くし、PWM制御の1周期t2”に関しては単票を初めとする一般帳票への高速印字に適用されるPWM制御の1周波t2よりも長くし(周波数としては1/t2”が1/t2よりも低い)、PWM制御のOFF時間c1”に関しては単票を初めとする一般帳票への高速印字に適用されるPWM制御のOFF時間c1よりも短くし、PWM制御のON時間c2”−c1”に関しては単票を初めとする一般帳票への高速印字に適用されるPWM制御のON時間c2−c1よりも長くすることが望ましい。
【0028】
次に、この実施例の帳票プリンタ1に設けられた帳票種別判定手段の構成について具体的に説明する。
【0029】
この実施例の帳票種別判定手段は、図1に示されるように、キャリア6とプラテン7との間に帳票5が位置した状態でプラテン7をキャリア6に接近する方向に一定の力で押圧するプラテン押圧手段15と、プラテン押圧手段15を作動させた状態でキャリア6とプラテン7との間の離間距離を測定する厚さ測定手段16とを備える。
【0030】
このうち、プラテン押圧手段15は、プラテン7の移動方向を帳票5の面の法線方向つまり図1中の上下方向に規制するプラテンガイド17と、プラテン7と平行に配置されたカムシャフト18に設けられ、プラテン7と実質的に一体の構成部材つまりプラテン7の下部に回転自在に固設されたカムフォロア19に摺接して其の回転量に応じてプラテン7をキャリア6に向けて移動させるプラテン昇降カム20と、プラテン昇降カム20の駆動源を構成するプラテン昇降モータM3と、プラテン昇降モータM3からプラテン昇降カム20に至る動力伝達系路上に位置してプラテン昇降カム20の駆動トルクを機械的に制限するトルクリミッタ21によって構成される。
【0031】
プラテン昇降モータM3からプラテン昇降カム20に至る動力伝達系路は、プラテン昇降モータM3の主軸に固着されたプライマリプーリ22と、トルクリミッタ21の外輪24に固着されたセカンダリプーリ27とプライマリプーリ22に掛け回されたタイミングベルト23と、トルクリミッタ21の外輪24と内輪25との間に介在するコイルスプリング26、および、トルクリミッタ21の内輪25を固着したカムシャフト18によって構成されている。
【0032】
プラテン昇降カム20の駆動トルクを機械的に制限するトルクリミッタの構成は実際にはどのようなものでも構わないが、ここでは、一例として、図5に示されるようなトルクリミッタ21について説明する。
【0033】
トルクリミッタ21は、既に特開2002−230626号公報等で公知のもので、その主要部は、カムシャフト18に固着された内輪25と、セカンダリプーリ27に端部を固着された外輪24、および、内輪25に一定の力で巻き付けられて一端部を外輪24の内周面に固着されたコイルスプリング26と、セカンダリプーリ27をカムシャフト18に対して回転自在に支持するためのラジアルベアリング28によって構成され、カムシャフト18に固着された内輪25とセカンダリプーリ27に固着された外輪24との間に作用する駆動力が規定の範囲内にあれば、外輪24の内周面に一端を固着されたコイルスプリング26の他端が内輪25の外周面を保持してカムシャフト18をセカンダリプーリ27と一体に回転させ、カムシャフト18に固着された内輪25とセカンダリプーリ27に固着された外輪24との間に作用する駆動力が規定の範囲を超えると、外輪24の内周面に一端を固着されたコイルスプリング26の他端と内輪25の外周面との間に一定のトルクを保持した状態で滑りが発生し、カムシャフト18つまり最終的にはプラテン昇降カム20が過剰な力で駆動されないようになっている。
【0034】
プラテン押圧手段15が非作動となってプラテン7が下降限度に退避した状態を図6に示す。この状態でプラテン昇降モータM3を駆動し、プライマリプーリ22,タイミングベルト23,セカンダリプーリ27,トルクリミッタ21(外輪24,コイルスプリング26,内輪25),カムシャフト18を介してプラテン昇降カム20を図6中で反時計方向に回転させると、プラテン7のカムフォロア19とカムシャフト18の回転中心を結ぶ方向においてプラテン昇降カム20の回転中心からプラテン昇降カム20の外周面に至る距離が徐々に増大し、プラテン昇降カム20の外周面に摺接したカムフォロア19が徐々に上昇して、カムフォロア19と一体的に上下動するプラテン7が、キャリア6に接近する方向、つまり、図6中の上方に向けて押し上げられる。そして、プラテン7とキャリア6との間に位置する帳票5にプラテン7の上面が当接して帳票5がキャリア6に圧接されると、キャリア6で上面側を支えられた帳票5がプラテン7の上昇を阻害する方向の反力を発生し、この反力、言い換えればプラテン7が帳票5を押し上げる力が規定の値に達すると、前述した通り、トルクリミッタ21を構成するコイルスプリング26と内輪25との間に滑りが生じ、プラテン7が帳票5を押し上げる力が一定の範囲に制限される。従って、プラテン押圧手段15を作動させることにより、帳票5の厚さには殆ど関わりなく、一定の力でプラテン7とキャリア6との間に帳票5を挾圧することができる。
【0035】
また、厚さ測定手段16の主要部は、図1に示されるように、プラテン昇降カム20の回転量を検知する回転センサ29と、回転センサ29からの出力に基いてキャリア6とプラテン7との間の離間距離を求める回転量・直線距離変換手段によって構成される。
【0036】
回転センサ29は、カムシャフト18およびプラテン昇降カム20と一体的に回転するスリット付きのディスク30と、ディスク30の表裏に一定の間隔を置いて設置されたフォトカプラ等の光学センサ31によって構成される。プラテン押圧手段15が非作動となってプラテン7が下降限度に退避したときのディスク30の回転位置を図7(a)に、また、プラテン7とキャリア6との間に厚めの帳票5が挟み込まれた状態でプラテン7が上昇限度に到達してトルクリミッタ21が作動したときのディスク30の回転位置を図7(b)に、そして、プラテン7とキャリア6との間に薄めの帳票5が挟み込まれた状態でプラテン7が上昇限度に到達してトルクリミッタ21が作動したときのディスク30の回転位置を図7(c)に示す。ディスク30には周方向に一定の間隔を置いて多数のスリット32が穿設されおり、厚めの帳票5が挟み込まれた状態では図7(b)に示されるようにカムシャフト18およびプラテン昇降カム20の回転角度θ’が小さく、薄めの帳票5が挟み込まれた状態では図7(c)に示されるようにカムシャフト18およびプラテン昇降カム20の回転角度θ”が大きくなるので、図7(a)の初期位置からのディスク30の回転によって光学センサ31をよぎるスリット32の数をカウントすることで、プラテン昇降カム20の回転量を検知することができる。回転センサ29の構成や作用原理は市販のパルスコーダ(インクリメンタルエンコーダ)と同様である。図7ではスリット32を一層のみ設けた例について示しているが、市販のパルスコーダ(インクリメンタルエンコーダ)と同様、位相をずらせて複数層のスリット32を設けることで角度検出の分解能を向上させることができる。
【0037】
厚さ測定手段16の他部を構成する回転量・直線距離変換手段は、この実施例においては、プリンタ制御装置2のマイクロプロセッサ8と其の制御プログラムを格納したROM9、および、不揮発性メモリ12に格納された図示しないデータ変換テーブルによって構成される。つまり、不揮発性メモリ12のデータ変換テーブルには、図7(a)に示されるような初期位置からのディスク30の回転に伴って光学センサ31から出力されるスリット32の計数信号の数に対応するキャリア7とプラテン6との間の離間距離の関係、要するに、計数信号の数と帳票5の厚みとの対応関係が記憶されており、マイクロプロセッサ8が入力回路10を介して光学センサ31からの計数信号の数を読み込み、この計数信号の数に基いてデータ変換テーブルを検索することによってキャリア7とプラテン6との間の離間距離つまり帳票5の厚みが求められるようになっている。不揮発性メモリ12にデータ変換テーブルを記憶させる代わりに、プラテン昇降カム20の回転量(光学センサ31からの計数信号の数)に基いてキャリア7とプラテン6との間の離間距離を求める演算式を記憶させ、この演算式に計数信号の数を代入してキャリア7とプラテン6との間の離間距離つまり帳票5の厚みを求めるようにしても構わない。
【0038】
帳票種別判定手段のうち、プラテン押圧手段15と厚さ測定手段16を除いた部分、即ち、種別特定手段16による帳票5の厚みの測定結果に基いて帳票搬送路3内の帳票5が一般帳票であるのか複写伝票であるのかを特定する種別特定手段は、この実施例では、プリンタ制御装置2のマイクロプロセッサ8と其の制御プログラムを格納したROM9、および、不揮発性メモリ12に格納された各種の判定値によって構成されている。
【0039】
図2に示されるように、図示しない帳票搬送手段の駆動源を構成する帳票搬送モータM1と図示しないキャリア駆動手段の駆動源を構成するキャリア駆動モータM2およびプラテン昇降カム20の駆動源を構成するプラテン昇降モータM3は、各々のモータ駆動回路33,34,35と入出力回路10を介してマイクロプロセッサ8によって駆動制御される。
【0040】
図2中の帳票位置検出センサ36は帳票搬送手段によって帳票搬送路3内を送られる帳票5の位置を検知するためのもので、この種の帳票プリンタにおいては既に公知の構成要素である。図2では帳票位置検出センサ36を1つのみ記載しているが、実際には、帳票位置検出センサ36は帳票搬送路内の様々な位置に配備されており、各位置の帳票位置検出センサ36からの信号を入出力回路10を介してマイクロプロセッサ8が読み込むことにより、帳票搬送路3内における帳票5の位置をマイクロプロセッサ8が正確に把握できるようになっている。
【0041】
通帳からなる帳票5に貼付された磁気テープに対してデータの読み書きを行なうための磁気ヘッド37やページマークの読み取り等に利用されるイメージセンサ38も、この種の帳票プリンタにおいては既に公知の構成要素である。
【0042】
インターフェイス39は、上位装置として機能する行内のホストコンピュータと帳票プリンタ1とを情報伝達可能に接続するためのインターフェイスであり、RAM40は、マイクロプロセッサ8が演算処理を実行する過程でデータの一時記憶に使用される。
【0043】
この実施例では、プリンタ制御装置2のマイクロプロセッサ8と其の制御プログラムを格納したROM9およびRAM40が、帳票搬送モータM1を駆動制御して帳票5の搬送方向において挿入された帳票5の前半部分をキャリア7とプラテン6との間に位置決めした状態でプラテン押圧手段15および厚さ測定手段16を作動させて測定結果を一時記憶する第一測定実行手段として機能し、また、帳票搬送モータM1を駆動制御して前記挿入された帳票5の後半部分をキャリア7とプラテン6との間に位置決めした状態でプラテン押圧手段15および厚さ測定手段16を作動させて測定結果を一時記憶する第二測定実行手段としても機能する。
【0044】
また、マイクロプロセッサ8と其の制御プログラムを格納したROM9は、第一測定実行手段による測定結果と第二測定実行手段による測定結果の差分が予め設定された段差判定値の範囲内にあり、かつ、第一測定実行手段もしくは第二測定実行手段による測定結果が帳票5の一種として使用される通帳の折り畳み時の厚みの1/2倍量に匹敵する値と異なり、同時に、第一測定実行手段もしくは第二測定実行手段による測定結果が予め設定された単票判定値を超えている場合に限って帳票5が複写伝票であると特定する種別特定手段として機能するほか、第一測定実行手段による測定結果が予め設定された通帳用自明判定値を超える場合と第一測定実行手段による測定結果が予め設定された単票用自明判定値に満たない場合に帳票が一般帳票であると直ちに判定して第二測定実行手段の作動を非実行とする判定処理高速化手段としても機能する。
【0045】
プリンタ制御装置2のマイクロプロセッサ8と其の制御プログラムを格納したROM9は、更に、帳票種別判定手段における種別特定手段の判定結果に応じて一般帳票用の制御パラメータや複写伝票用の制御パラメータを印字ヘッド制御部にワイヤ駆動条件として設定するパラメータ選択手段としても機能する。
【0046】
図8および図9は、印字ヘッド制御部の一部、帳票種別判定手段を構成する厚さ測定手段の一部である回転量・直線距離変換手段および第一測定実行手段と第二測定実行手段種別特定手段、ならびに、種別特定手段と判定処理高速化手段およびパラメータ選択手段として機能するマイクロプロセッサ8の処理動作を具体的に示したフローチャートである。
【0047】
次に、図8および図9を参照して、前述の各手段として機能するマイクロプロセッサ8の処理動作について具体的に説明する。
【0048】
帳票5が帳票搬送路3に挿入され、帳票位置検出センサ36によって帳票5の挿入が検出されると、マイクロプロセッサ8は、まず、従来と同様に、イメージセンサ38や磁気ヘッド37を利用して、帳票5のページマークの読み取りや帳票5に貼付された磁気テープに対するデータの読み書き等の処理を実行する。この点に関しては既に公知であるのでフローチャートによる説明は省略する。
【0049】
次いで、帳票プリンタ1の上位装置として機能する行内のホストコンピュータからインターフェイス39を介して印字動作の指令が入力されると(ステップa1)、まず、帳票種別判定手段の一部である第一測定実行手段として機能するマイクロプロセッサ8が、入出力回路10およびモータ駆動回路33を介して図示しない帳票搬送手段の駆動源を構成する帳票搬送モータM1を駆動制御し、帳票搬送手段の帳票搬送ローラ等を作動させて帳票5の搬送方向において挿入された帳票5の前半部分をキャリア7とプラテン6との間に位置決めする(ステップa2)。
【0050】
図10は帳票5の搬送方向を示す概念図であり、図10中の位置A、つまり、帳票5のうち搬送方向前方の前方に位置するページが挿入された帳票5の前半部分である。但し、帳票5が通帳であるとは限らず、複写伝票である場合もあれば単票である場合もある。
【0051】
次いで、第一測定実行手段として機能するマイクロプロセッサ8が、図9に示されるような厚さ測定処理のサブルーチンを呼び出し、帳票5の厚みの測定に関わる処理を実行する(ステップa3)。
【0052】
厚さ測定処理のサブルーチンが呼び出されると、まず、マイクロプロセッサ8が入出力回路10およびモータ駆動回路35を介してプラテン昇降カム20の駆動源を構成するプラテン昇降モータM3を駆動制御し、プラテン昇降カム20を図6中で反時計方向に回転させてプラテン押圧手段15を作動させ、プラテン7をキャリア6に接近する方向に移動させて、プラテン7とキャリア6との間に帳票5の前半部分を一定の力で挟み込む(ステップb1)。
【0053】
次いで、厚さ測定手段として機能するマイクロプロセッサ8が入出力回路10を介して回転センサ29の主要部を構成する光学センサ31からプラテン昇降カム20の回転量を表すパルス数の計数値を読み込み(ステップb2)、不揮発性メモリ12に格納されたデータ変換テーブルを参照して、この計数値に対応するキャリア7とプラテン6との間の離間距離すなわち帳票5の厚みを求め(ステップb3)、この厚みをRAM40の厚さ記憶レジスタR0に一時記憶した後(ステップb4)、プラテン昇降モータM3を駆動制御してプラテン昇降カム20を初期の回転位置に復帰させ、プラテン7を退避位置に戻す(ステップb5)。
【0054】
このようにして厚さ測定処理のサブルーチンが終了し、第一測定実行手段の一部である厚さ記憶レジスタR0に帳票5の前半部分の厚さの測定結果が記憶されると、帳票種別判定手段の一部を構成する判定処理高速化手段として機能するマイクロプロセッサ8が、厚さ記憶レジスタR0に記憶された帳票5の前半部分の厚さが通帳用自明判定値Z1(例えば通帳の半分以上の厚さである1mm)を超えているか否かを判定する(ステップa4)。
【0055】
ここで、ステップa4の判定結果が真となり、帳票5の前半部分の厚さが通帳用自明判定値Z1を超えていることが明らかとなった場合には、この帳票5が一般帳票のうちの通帳であることを意味するので、パラメータ選択手段として機能するマイクロプロセッサ8は、一般帳票用の制御パラメータのうち通帳の印字に適した制御パラメータをパラメータ記憶手段である不揮発性メモリ12から読み出し、印字ヘッド4におけるワイヤの駆動態様を電気的に制御する印字ヘッド駆動回路11にワイヤ駆動条件としてセットする(ステップa5)。
具体的には、印字ヘッド4のワイヤの叩打力を冗長して濃いドットと薄いドットとの混在を防止するのに適した図3(b)のようなパラメータを選択するか(印字速度を優先する場合)、もしくは、単票への高速印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間を冗長して印字動作を行なうのに適した図4(b)のようなパラメータを選択する(耐久性を優先する場合)。
【0056】
一方、ステップa4の判定結果が偽となった場合、帳票種別判定手段の一部を構成する判定処理高速化手段として機能するマイクロプロセッサ8は、厚さ記憶レジスタR0に記憶された帳票5の前半部分の厚さが単票用自明判定値Z2(例えば薄い単票の厚みに相当する厚さである50μm)を下回っているか否かを判定する(ステップa6)。
【0057】
ステップa6の判定結果が真となり、帳票5の前半部分の厚さが単票用自明判定値Z2に満たないことが明らかとなった場合には、この帳票5が一般帳票のうちの単票であることを意味するので、パラメータ選択手段として機能するマイクロプロセッサ8は、一般帳票用の制御パラメータのうち単票の印字に適した制御パラメータをパラメータ記憶手段である不揮発性メモリ12から読み出し、印字ヘッド4におけるワイヤの駆動態様を電気的に制御する印字ヘッド駆動回路11にワイヤ駆動条件としてセットする(ステップa7)。具体的には、単票に対して行われる高速印字に適した図3(a),図4(a)のようなパラメータを選択する。
【0058】
このように、ステップa4あるいはステップa6の判定結果が真となって帳票5が通帳もしくは単票であることが自明となった場合には、第二測定実行手段によって改めて厚さ測定を行なう必要はないので、ステップa10の処理は非実行とされる。この場合、プラテン押圧手段15を改めて駆動する必要がないので、全体としての帳票処理の所要時間を大幅に短縮して処理を高速化することができる。
【0059】
これに対し、ステップa4およびステップa6の判定結果が共に偽となった場合には、この時点では未だ帳票5の種別は特定できないので、マイクロプロセッサ8は、第一測定実行手段の一部である厚さ記憶レジスタR0に記憶された帳票5の前半部分の厚さの測定結果を第一測定実行手段の一部として新たに機能する厚さ記憶レジスタR1に移し替え(ステップa8)、帳票種別判定手段の一部である第二測定実行手段として機能するマイクロプロセッサ8が、入出力回路10およびモータ駆動回路33を介して図示しない帳票搬送手段の駆動源を構成する帳票搬送モータM1を駆動制御し、帳票搬送手段の帳票搬送ローラ等を作動させて現時点で挿入されている帳票5の後半部分をキャリア7とプラテン6との間に位置決めする(ステップa9)。
【0060】
図10中の位置B、つまり、帳票5のうち搬送方向前方の後方に位置するページが挿入された帳票5の後半部分である。但し、帳票5が通帳であるとは限らず、複写伝票である場合もあれば単票である場合もある。
【0061】
次いで、第二測定実行手段として機能するマイクロプロセッサ8が、図9に示されるような厚さ測定処理のサブルーチンを呼び出し、帳票5の厚みの測定に関わる処理を実行する(ステップa10)。
【0062】
厚さ測定処理のサブルーチンが呼び出されると、まず、マイクロプロセッサ8が入出力回路10およびモータ駆動回路35を介してプラテン昇降カム20の駆動源を構成するプラテン昇降モータM3を駆動制御し、プラテン昇降カム20を図6中で反時計方向に回転させてプラテン押圧手段15を作動させ、プラテン7をキャリア6に接近する方向に移動させて、プラテン7とキャリア6との間に帳票5の後半部分を一定の力で挟み込む(ステップb1)。
【0063】
次いで、厚さ測定手段として機能するマイクロプロセッサ8が入出力回路10を介して回転センサ29の主要部を構成する光学センサ31からプラテン昇降カム20の回転量を表すパルス数の計数値を読み込み(ステップb2)、不揮発性メモリ12に格納されたデータ変換テーブルを参照して、この計数値に対応するキャリア7とプラテン6との間の離間距離すなわち帳票5の厚みを求め(ステップb3)、この厚みをRAM40の厚さ記憶レジスタR0に一時記憶した後(ステップb4)、プラテン昇降モータM3を駆動制御してプラテン昇降カム20を初期の回転位置に復帰させ、プラテン7を退避位置に戻す(ステップb5)。
【0064】
このようにして厚さ測定処理のサブルーチンが終了し、第二測定実行手段の一部として新たに機能する厚さ記憶レジスタR0に、挿入された帳票5の後半部分の厚さの測定結果が記憶されると、帳票種別判定手段の一部を構成する種別特定手段として機能するマイクロプロセッサ8が、この時点で第一測定実行手段の一部として機能している厚さ記憶レジスタR1に記憶されている帳票5の前半部分の厚さと、この時点で第二測定実行手段の一部として機能している厚さ記憶レジスタR0に記憶されている帳票5の後半部分の厚さの差分|R1−R0|を求め、この差分が予め設定された段差判定値ε1の範囲内(例えば、通帳の1枚分のページに相当する厚さの範囲)にあるか否かを判定する(ステップa11)。
【0065】
ここで、ステップa11の判定結果が真となり、挿入された帳票5の前半部分と後半部分の厚さの差分|R1−R0|が段差判定値ε1を超えていることが明らかとなった場合には、この時点で帳票搬送路3に挿入されている帳票5は、単票もしくは複数のカーボン紙や紙を重ねた平らな複写伝票ではなく、図10に示されるように、印字対象のページを境に前半部分と後半部分のページの枚数が異なる通帳を開いた状態で挿入したものであることが明らかであるから、種別特定手段として機能するマイクロプロセッサ8は、この帳票5が一般帳票のうちの通帳であると見做し、パラメータ選択手段として機能するマイクロプロセッサ8は、一般帳票用の制御パラメータのうち通帳の印字に適した制御パラメータをパラメータ記憶手段である不揮発性メモリ12から読み出し、印字ヘッド4におけるワイヤの駆動態様を電気的に制御する印字ヘッド駆動回路11にワイヤ駆動条件としてセットする(ステップa5)。
具体的には、印字ヘッド4のワイヤの叩打力を冗長して濃いドットと薄いドットとの混在を防止するのに適した図3(b)のようなパラメータを選択するか(印字速度を優先する場合)、もしくは、単票に対する高速印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間を冗長して印字動作を行なうのに適した図4(b)のようなパラメータを選択する(耐久性を優先する場合)。
【0066】
また、ステップa11の判定結果が偽となった場合には帳票5の前半部分と後半部分に実質的な厚みの差がないこと、つまり、この帳票5は、印字対象のページを境とする前半部分と後半部分のページの枚数が等しい通帳であるかもしれないし、あるいは、厚めの複写伝票であるかもしれないといったことを意味する。
【0067】
従って、帳票種別判定手段の一部を構成する種別特定手段として機能するマイクロプロセッサ8は、更に、第一測定実行手段の一部として機能している厚さ記憶レジスタR1に記憶されている帳票5の前半部分の厚さと通帳の折り畳み時の厚みZ3の1/2倍量(例えば1mm)との差分が判定許容値ε2の範囲にあるか否か、つまり、帳票5の前半部分の厚さが通帳の折り畳み時の厚みの1/2倍量に匹敵する値と異なるか否かを判定する(ステップa12)。
【0068】
ステップa12の判定結果が真となって挿入された帳票5の前半部分の厚さが通帳の折り畳み時の厚みの1/2倍量に匹敵する値と略一致すると判定された場合には、この帳票5が、印字対象のページを境とする前半部分と後半部分のページの枚数が等しい通帳であることが明らかであるので、種別特定手段として機能するマイクロプロセッサ8は、この帳票5が一般帳票のうちの通帳であると見做し、パラメータ選択手段として機能するマイクロプロセッサ8は、一般帳票用の制御パラメータのうち通帳の印字に適した制御パラメータをパラメータ記憶手段である不揮発性メモリ12から読み出し、印字ヘッド4におけるワイヤの駆動態様を電気的に制御する印字ヘッド駆動回路11にワイヤ駆動条件としてセットする(ステップa5)。
具体的には、印字ヘッド4のワイヤの叩打力を冗長して濃いドットと薄いドットとの混在を防止するのに適した図3(b)のようなパラメータを選択するか(印字速度を優先する場合)、もしくは、単票に対する高速印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間を冗長して印字動作を行なうのに適した図4(b)のようなパラメータを選択する(耐久性を優先する場合)。
【0069】
なお、この実施例ではステップa12の処理において帳票5の前半部分の厚さR1に基づく判定処理を行っているが、ステップa11の判定結果から明らかなように、R1の値とR0の値は実質的に等しいので、R1の値に代えて帳票5の後半部分の厚さR0の値を用いても構わない。
【0070】
一方、ステップa12の判定結果が偽となって挿入された帳票5の前半部分の厚さが通帳の折り畳み時の厚みの1/2倍量に匹敵する値と異なると判定された場合には、この帳票5が通帳でないことは明らかであり、単票用自明判定値Z2(例えば50μm)よりも厚い単票もしくは複写伝票である可能性が残る。
【0071】
そこで、ステップa12の判定結果が偽となった場合、種別特定手段として機能するマイクロプロセッサ8は、更に、第一測定実行手段の一部として機能している厚さ記憶レジスタR1に記憶されている帳票5の前半部分の厚さが単票判定値Z4(例えば150μm)を超えているか否かを判定する(ステップa13)。
【0072】
ステップa13の判定結果が偽となって挿入された帳票5の前半部分の厚さが単票判定値Z4(例えば150μm)の範囲内にあることが明らかとなった場合には、この帳票5が50μmを超えて150μm以下の単票であるのか、あるいは、150μm以下の複写伝票であるといった可能性が残る。
【0073】
しかし、既に述べた通り、複写伝票の最下部に位置する紙への転写カスレが実質的な問題となるのは、重合する紙の枚数が4枚を超えた時点であるので、150μm程度の厚みの範囲内にある複写伝票、例えば、厚さ50μmの用紙を3枚、あるいは、75μmの用紙を2枚重ねた150μm前後の複写伝票が単票として判定されたとしても、複写伝票に固有の転写カスレの問題には殆ど影響がない。
【0074】
従って、ステップa13の判定結果が偽となって挿入された帳票5の前半部分の厚さが単票判定値Z4の範囲内にあることが明らかとなった場合には、種別特定手段として機能するマイクロプロセッサ8は、この帳票5が一般帳票のうちの単票であるものと見做し、パラメータ選択手段として機能するマイクロプロセッサ8が、一般帳票用の制御パラメータのうち単票の印字に適した制御パラメータをパラメータ記憶手段である不揮発性メモリ12から読み出し、印字ヘッド4におけるワイヤの駆動態様を電気的に制御する印字ヘッド駆動回路11にワイヤ駆動条件としてセットする(ステップa7)。具体的には、単票に対して行われる高速印字に適した図3(a),図4(a)のようなパラメータを選択する。
【0075】
これに対し、ステップa13の判定結果が真となった場合、つまり、挿入された帳票5の前半部分の厚さと後半部分の厚さの差分|R1−R0|が段差判定値ε1の範囲内にあり(ステップa11の判定結果が偽)、かつ、帳票5の前半部分の厚さが通帳の折り畳み時の厚みの1/2倍量に匹敵する値と明らかに異なり(ステップa12の判定結果が偽)、同時に、帳票5の前半部分の厚さが単票判定値Z4(例えば150μm)を超えていることが明らかとなった場合には、種別特定手段として機能するマイクロプロセッサ8は、この帳票5が比較的厚めの複写伝票つまり転写カスレの問題が発生する可能性のある複写伝票であると特定し、パラメータ選択手段として機能するマイクロプロセッサ8が、単票高速印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間のみを冗長するための複写伝票用の制御パラメータをパラメータ記憶手段である不揮発性メモリ12から読み出し、印字ヘッド4におけるワイヤの駆動態様を電気的に制御する印字ヘッド駆動回路11にワイヤ駆動条件としてセットする(ステップa14)。具体的には、ワイヤの押し込み時間Tを冗長するために初期通電時間t1,全通電時間t2,PWM制御のOFF時間c1,PWM制御の1周期c2をt1”,t2”,c1”,c2”に変更した図4(b)のようなパラメータを選択する。
【0076】
この実施例ではステップa13の処理において挿入された帳票5の前半部分の厚さR1に基づく判定処理を行っているが、ステップa11の判定結果から明らかなように、R1の値とR0の値は実質的に等しいので、R1の値に代えて該帳票5の後半部分の厚さR0の値を用いても構わない。
【0077】
このようにしてステップa5,ステップa7あるいはステップa14の処理で印字ヘッド駆動回路11に帳票5の種別に見合ったパラメータをセットした後、マイクロプロセッサ8は、上位装置として機能するホストコンピュータからの指令に応じて印字ヘッド4のワイヤの突出動作を電気的に駆動制御することになるが、パラメータの選択処理を除いた印字処理に関しては従来のものと同様であるので、具体的な説明は省略する。
【0078】
以上に述べた通り、この実施例では、帳票5が複写伝票、特に、比較的転写枚数が多い複写伝票(強いて言えば4枚以上の紙やカーボン紙を重ねた複写伝票)に対して印字を行う場合には、単票の帳票5への印字のために利用される図3(a),図4(a)のようなパラメータ設定をモデファイして得た図4(b)のようなパラメータ設定、つまり、単票印字の際と同等の叩打力を保持してワイヤの駆動周波数を下げてワイヤの押し込み時間Tを冗長するようにしたパラメータを印字ヘッド駆動回路11にワイヤ駆動条件としてセットするようにしているので、厚めの複写伝票最下部に位置する紙の印字品位を改善することができる。
【0079】
また、単票に対して印字を行う場合には、図3(a),図4(a)に示されるような駆動周波数の高いパラメータ設定をそのまま利用しているので、単票や厚めの複写伝票が混在する使用環境下での印字処理速度の低下を最低限度に抑制することができる。
【0080】
既に述べた通り、帳票5が通帳である場合には、従来と同様の図3(b)のようなパラメータ設定を適用してワイヤの叩打力を冗長して濃いドットと薄いドットとの混在を防止すること、あるいは、図4(b)のようなパラメータ設定を適用してワイヤの押し込み時間Tを冗長することでドット濃度の平滑化を図ることも可能である。
【0081】
特に、挿入された帳票5の前半部分の厚みと後半部分の厚みを測定し、両者の差分と段差判定値ε1との比較(ステップa11参照)、該帳票5の前半部分の厚み若しくは後半部分の厚みと通帳の折り畳み時の厚みの1/2倍量との略一致不一致の比較(ステップa12参照)、該帳票5の前半部分の厚み若しくは後半部分の厚みと単票判定値Z4との比較(ステップa13参照)を行なうことで、帳票5が単票であるのか複写伝票であるのか通帳であるのかを厳密に識別するようにしているので、帳票5の種別に応じたパラメータを的確に選択して設定することができる。
【0082】
更に、挿入された帳票5の前半部分の厚みが予め設定された通帳用自明判定値Z1を超える場合つまり帳票5が通帳であることが明らかである場合(ステップa4参照)と、挿入された帳票5の前半部分の厚みが予め設定された単票用自明判定値Z2に満たない場合つまり帳票5が単票であることが明らかである場合(ステップa6参照)においては、不要となる帳票5の後半部分の厚み測定(ステップa10参照)を行なわないようにしているので、全体としての帳票処理の所要時間を大幅に短縮して処理を高速化することができる。
【0083】
しかも、帳票5の厚みの測定に際しては、帳票搬送路3内を移動する帳票5によって頻繁に擦られるプラテン7の上面と帳票5および印字ヘッド4の移動によって帳票5に頻繁に擦り付けられるキャリア6の下面との間に帳票5を一定の力で挟み込んでキャリア6とプラテン7の離間距離に基いて帳票5の厚さを測定するようにしているので、プラテン7の上面やキャリア6の下面にゴミや汚れが堆積する可能性は低く(帳票5でゴミや汚れが擦り取られるため)、ゴミや汚れの影響を排除して帳票5の厚さの測定を正確に行なうことができる。
【0084】
図11は他の一実施例の帳票プリンタ1’の主要部の機械的な構成について帳票の搬送方向に沿った視点で簡略化して示した正面図である。
この帳票プリンタ1’は、図1〜図10に示した帳票プリンタ1のプライマリプーリ22,タイミングベルト23,セカンダリプーリ27に代えて歯車22’,23’,27’をプラテン押圧手段15’の動力伝達経路として利用したもので、他の構成に関しては、図1〜図10を参照して説明した実施例のものと同様である。
全体的な機能に関しては図1〜図10を参照して説明した実施例と同様であるが、タイミングベルトのテンション調整などの手間を省略できるため、装置コストを低減できるという効果がある。
【0085】
図12は更に他の一実施例の帳票プリンタ1”の主要部の機械的な構成について帳票の搬送方向に沿った視点で簡略化して示した正面図である。
この帳票プリンタ1”は、図1〜図10に示した帳票プリンタ1のトルクリミッタ21を省略したもので、セカンダリプーリ27がカムシャフト18と一体に固着され、プラテン昇降カム20は常にセカンダリプーリ27と一体に回転するようになっている。キャリア6に固設された帳票接触検知センサ41は、プラテン押圧手段15”の一部を構成するもので、プラテン7と帳票5とキャリア6との当接、つまり、プラテン7とキャリア6との間に帳票5が挟み込まれたことを検知してプラテン昇降モータM3の駆動を即時停止させることで、プラテン押圧手段15”がプラテン7を帳票5に押し付ける力を実質的に一定とするようになっている。
この実施例では、プラテン昇降モータM3はカムシャフト18の回転をステップ管理する必要がないため、ステッピングモータではなく、DCモータに置き換えることが可能である。
また、トルクリミッタ21が不要になるため、プラテン昇降モータM3の動力は、タイミングベルト23とカムシャフト18に固定されたセカンダリプーリ27でカムシャフト18に伝達される。この場合の厚さ検知動作は、プラテン昇降モータM3を制御してカムシャフト18を回転させ、プラテン7を鉛直上方に押し上げ、プラテン7とキャリア6の間に帳票5を挟み込んだ時点でキャリア6に実装した帳票接触検知センサ41が帳票5の上面を検知するように調整しておき、この時点までのカムシャフト18の回転角度を、カムシャフト18に固着したスリット付きのディスク30と回転センサ29の主要部を構成する光学センサ31によって検出することによって、帳票5の厚さを検出することができる。
この実施例ではプラテン昇降モータM3の制御をステップ管理する必要がなくなるため、制御を簡素化できるという効果がある。
【0086】
以上、機械的な構成を利用してプラテン7が帳票5をキャリア6に一定の力で押し付けるようにした3つの実施例について説明したが、プラテン昇降モータM3として位置ループ,速度ループ,電流ループのフィードバック制御が可能なモータを利用した場合にあっては、電流ループからの出力を増幅する電流増幅回路とプラテン昇降モータM3との間にトルクリミット回路を設置してプラテン昇降モータM3の駆動トルクを制限することによってもプラテン7を帳票5に一定の力で押し付けるようにすることが可能である。
【0087】
以上に述べた全ての実施例では、帳票プリンタ1に設けられたプラテン押圧手段15や厚さ測定手段16およびマイクロプロセッサ8からなる種別特定手段によって構成される帳票種別判定手段によって帳票5の種別が判定されるので、上位装置として機能するホストコンピュータとは完全に独立して、帳票プリンタ1単体の機能で帳票5の種別を判定して適切な制御パラメータを選択して印字ヘッド4を駆動制御することができ、上位装置として機能するホストコンピュータとの互換性に優れる(上位装置からの媒体種別情報を必要としない)といったメリットがある。
【0088】
更には、帳票プリンタ1の定期保守時などに、既知の厚さの紙類や樹脂プレートをセットして厚さを検知させ、検知誤差を補正する。これにより、プラテン7とキャリア6の磨耗による厚さ検知誤差を補正できるので、長期に渡って安定した厚さ検知を行うことができるという効果がある。
【0089】
更に他の実施例として、帳票プリンタの上位装置として機能するホストコンピュータからインターフェイス39を経由して帳票5の種別を表す媒体種別情報、つまり、帳票5が単票であるのか通帳であるのか複写伝票であるのかの情報、更には、複写伝票である場合の伝票全体の厚さや紙の重ね合わせ枚数等の情報をもらい、帳票5が転写枚数の多い複写伝票であるという情報を受けた場合にのみ、印字ヘッド4の駆動周波数を所定量下げると共に、印字ヘッド4の駆動に関わるパラメータを例えば図4(b)に示されるようなもの変えて印字動作を行なうようにしてもよい。この場合、例えば、1枚70μmの3枚構成の総厚210μmの複写伝票に対しては、転写枚数が少ないので、駆動周波数を下げることなく、高速で処理することができる。
これによって装置の処理能力の低下を改善することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明を適用した一実施例の帳票プリンタの主要部の機械的な構成について帳票の搬送方向に沿った視点で簡略化して示した正面図である。
【図2】同実施例の帳票プリンタに内蔵されたプリンタ制御装置の構成について簡略化して示したブロック図である。
【図3】印字ヘッドの制御パラメータについて示した概念図で、図3(a)は単票を初めとする一般帳票への高速印字に適したパラメータの設定例、また、図3(b)は厚い通帳に適したパラメータの設定例である。
【図4】印字ヘッドの制御パラメータについて示した概念図で、図4(a)は単票を初めとする一般帳票への高速印字に適したパラメータの設定例、また、図4(b)は比較的厚めの転写伝票に適したパラメータの設定例である。
【図5】同実施例の帳票プリンタのトルクリミッタの構成を示した断面図である。
【図6】同実施例の帳票プリンタのプラテン押圧手段の作用原理を示した概念図である。
【図7】同実施例の帳票プリンタの回転センサの作用原理を説明する概念図で、図7(a)はプラテンが下降限度に退避したときの状態、図7(b)はプラテンとキャリアとの間に厚めの帳票が挟み込まれた状態、図7(c)はプラテンとキャリアとの間に薄めの帳票が挟み込まれた状態について示している。
【図8】同実施例の帳票プリンタにおける印字ヘッド制御部の一部,帳票種別判定手段における厚さ測定手段の一部である回転量・直線距離変換手段および第一測定実行手段と第二測定実行手段種別特定手段ならびに種別特定手段と判定処理高速化手段およびパラメータ選択手段として機能するプリンタ制御装置のマイクロプロセッサの処理動作を具体的に示したフローチャートである。
【図9】同プリンタ制御装置のマイクロプロセッサの処理動作を具体的に示したフローチャートの続きである。
【図10】帳票の搬送方向と帳票の前半部分および後半部分の関係を示した概念図である。
【図11】本発明を適用した他の一実施例の帳票プリンタの主要部の機械的な構成について帳票の搬送方向に沿った視点で簡略化して示した正面図である。
【図12】本発明を適用した更に他の一実施例の帳票プリンタの主要部の機械的な構成について帳票の搬送方向に沿った視点で簡略化して示した正面図である。
【図13】従来型の帳票処理装置に配備された厚さ検知機構を簡略化して示した作用原理図である。
【図14】厚い通帳に生じる印字品質の劣化を印字圧力の冗長によって改善しようとした従来型の通帳伝票プリンタの構成の概略を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0091】
1 帳票プリンタ
1’ 帳票プリンタ
1” 帳票プリンタ
2 プリンタ制御装置
3 帳票搬送路
4 印字ヘッド
5 帳票
6 キャリア
7 プラテン
8 マイクロプロセッサ(印字ヘッド制御部の一部,回転量・直線距離変換手段の一部,種別特定手段の一部,第一測定実行手段の一部,第二測定実行手段の一部,判定処理高速化手段の一部,パラメータ選択手段の一部)
9 ROM(印字ヘッド制御部の一部,回転量・直線距離変換手段の一部,種別特定手段の一部,第一測定実行手段の一部,第二測定実行手段の一部,判定処理高速化手段の一部,パラメータ選択手段の一部)
10 入出力回路
11 印字ヘッド駆動回路(印字ヘッド制御部の一部)
12 不揮発性メモリ(パラメータ記憶手段,回転量・直線距離変換手段の一部,種別特定手段の一部)
13 ,14 キャリアガイド
15 プラテン押圧手段(帳票種別判定手段の一部)
15’ プラテン押圧手段
15” プラテン押圧手段
16 厚さ測定手段(帳票種別判定手段の一部)
17 プラテンガイド
18 カムシャフト(動力伝達系路の一部)
19 カムフォロア
20 プラテン昇降カム
21 トルクリミッタ
22 プライマリプーリ(動力伝達系路の一部)
22’ 歯車
23 タイミングベルト(動力伝達系路の一部)
23’ 歯車
24 外輪(動力伝達系路の一部)
25 内輪(動力伝達系路の一部)
26 コイルスプリング(動力伝達系路の一部)
27 セカンダリプーリ(動力伝達系路の一部)
27’ 歯車
28 ラジアルベアリング(動力伝達系路の一部)
29 回転センサ
30 ディスク(回転センサの一部)
31 光学センサ(回転センサの一部)
32 スリット
33,34,35 モータ駆動回路
36 帳票位置検出センサ
37 磁気ヘッド
38 イメージセンサ
39 インターフェイス
40 RAM(第一測定実行手段の一部,第二測定実行手段の一部)
41 帳票接触検知センサ
100 検知用ローラ
101 検知信号発生部
102 回動部
103 アーム
104 帳票
105 印字ヘッド
106 反射センサ
107 磁気ヘッド
108 透過センサ
109 印字コントロール部
110 媒体識別部
111 主制御部
1112 記憶部
X 帳票の厚さ
M1 帳票搬送モータ(帳票搬送手段の一部)
M2 キャリア駆動モータ(キャリアの駆動手段の一部)
M3 プラテン昇降モータ
Z1 通帳用自明判定値
Z2 単票用自明判定値
Z3 通帳の折り畳み時の厚み
Z4 単票判定値
R0,R1 厚さ記憶レジスタ
ε1 段差判定値
ε2 判定許容値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帳票搬送路の一側に設けられたドットインパクト式の印字ヘッドと、前記印字ヘッドを保持して帳票搬送路内の帳票と平行な平面内で帳票の搬送方向と直交する方向に移動するキャリアと、予め設定された制御パラメータに従って前記印字ヘッドにおけるワイヤの駆動態様を電気的に制御する印字ヘッド制御部と、前記帳票搬送路を挟んで前記キャリアに対向する位置で帳票を支えるプラテンと、前記帳票搬送路内で帳票に送りを掛ける帳票搬送手段とを備えた帳票プリンタにおいて、
単票を含む一般帳票への高速印字に適した一般帳票用の制御パラメータと,一般帳票への印字の際と同等の叩打力を保持した状態でワイヤの押し込み時間を冗長する複写伝票用の制御パラメータとを記憶したパラメータ記憶手段と、
前記帳票搬送路に挿入された帳票が一般帳票であるのか複写伝票であるのかを判定する帳票種別判定手段と、
前記帳票種別判定手段により前記帳票が一般帳票であると判定された場合には一般帳票用の制御パラメータを駆動条件として前記印字ヘッド制御部に設定する一方、前記帳票種別判定手段により前記帳票が複写伝票であると判定された場合には複写伝票用の制御パラメータを駆動条件として前記印字ヘッド制御部に設定するパラメータ選択手段とを設けたことを特徴とする帳票プリンタ。
【請求項2】
前記帳票種別判定手段は、前記キャリアと前記プラテンとの間に帳票が位置した状態で前記プラテンを前記キャリアに接近する方向に一定の力で押圧するプラテン押圧手段と、前記プラテン押圧手段を作動させた状態で前記キャリアと前記プラテンとの間の離間距離を測定する厚さ測定手段と、前記厚さ測定手段の測定結果に基いて前記帳票が一般帳票であるのか複写伝票であるのかを特定する種別特定手段とによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の帳票プリンタ。
【請求項3】
前記帳票種別判定手段は、更に、前記帳票搬送手段を駆動制御して帳票の搬送方向において挿入された帳票の前半部分を前記キャリアと前記プラテンとの間に位置決めした状態で前記プラテン押圧手段および厚さ測定手段を作動させて測定結果を一時記憶する第一測定実行手段と、前記帳票搬送手段を駆動制御して前記挿入された帳票の後半部分を前記キャリアと前記プラテンとの間に位置決めした状態で前記プラテン押圧手段および厚さ測定手段を作動させて測定結果を一時記憶する第二測定実行手段を備え、
前記種別特定手段は、前記第一測定実行手段による測定結果と前記第二測定実行手段による測定結果の差分が予め設定された段差判定値の範囲内にあり、かつ、前記第一測定実行手段もしくは前記第二測定実行手段による測定結果が帳票の一種として使用される通帳の折り畳み時の厚みの1/2倍量に匹敵する値と異なり、同時に、前記第一測定実行手段もしくは前記第二測定実行手段による測定結果が予め設定された単票判定値を超えている場合に限って前記帳票が複写伝票であると特定するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の帳票プリンタ。
【請求項4】
前記種別特定手段は、前記第一測定実行手段による測定結果が予め設定された通帳用自明判定値を超える場合と前記第一測定実行手段による測定結果が予め設定された単票用自明判定値に満たない場合に前記帳票が一般帳票であると直ちに判定して前記第二測定実行手段の作動を非実行とする判定処理高速化手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の帳票プリンタ。
【請求項5】
前記プラテン押圧手段は、前記プラテンの移動方向を規制するプラテンガイドと、前記プラテンと平行に配置されたカムシャフトに設けられ前記プラテンもしくはプラテンと実質的に一体の構成部材と摺接して其の回転量に応じて前記プラテンを前記キャリアに向けて移動させるプラテン昇降カムと、前記プラテン昇降カムの駆動源を構成するモータと、前記モータから前記プラテン昇降カムに至る動力伝達系路上に位置して前記プラテン昇降カムの駆動トルクを機械的に制限するトルクリミッタによって構成され、
前記厚さ測定手段は、前記プラテン昇降カムの回転量を検知する回転センサと、前記回転センサからの出力に基いて前記キャリアと前記プラテンとの間の離間距離を求める回転量・直線距離変換手段によって構成されていることを特徴とする請求項2,請求項3または請求項4記載の帳票プリンタ。
【請求項6】
前記プラテン押圧手段は、前記プラテンの移動方向を規制するプラテンガイドと、前記プラテンと平行に配置されたカムシャフトに設けられ前記プラテンもしくはプラテンと実質的に一体の構成部材と摺接して其の回転量に応じて前記プラテンを前記キャリアに向けて移動させるプラテン昇降カムと、前記プラテン昇降カムの駆動源を構成するモータと、前記プラテンと前記帳票と前記キャリアとの当接を検知して前記モータの駆動を即時停止させる信号を出力する帳票接触検知センサによって構成され、
前記厚さ測定手段は、前記プラテン昇降カムの回転量を検知する回転センサと、前記回転センサからの出力に基いて前記キャリアと前記プラテンとの間の離間距離を求める回転量・直線距離変換手段によって構成されていることを特徴とする請求項2,請求項3または請求項4記載の帳票プリンタ。
【請求項7】
前記プラテン押圧手段は、前記プラテンの移動方向を規制するプラテンガイドと、前記プラテンと平行に配置されたカムシャフトに設けられ前記プラテンもしくはプラテンと実質的に一体の構成部材と摺接して其の回転量に応じて前記プラテンを前記キャリアに向けて移動させるプラテン昇降カムと、前記プラテン昇降カムの駆動源を構成するモータと、前記モータからカムシャフトに伝達される駆動力を制限するトルクリミッタによって構成され、
前記厚さ測定手段は、前記プラテン昇降カムの回転量を検知する回転センサと、前記回転センサからの出力に基いて前記キャリアと前記プラテンとの間の離間距離を求める回転量・直線距離変換手段によって構成されていることを特徴とする請求項2,請求項3または請求項4記載の帳票プリンタ。
【請求項8】
前記帳票種別判定手段は、帳票プリンタに接続した上位装置から入力される媒体種別情報に基いて前記帳票が一般帳票であるのか複写伝票であるのかを判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の帳票プリンタ。
【請求項9】
ドットインパクト式の印字ヘッドを用いて複写伝票および単票を含む一般帳票への印字を行なう帳票プリンタの印字品位改善方法であって、
複写伝票への印字の際に、単票を含む一般帳票への印字の際と同等の叩打力を保持してワイヤの押し込み時間を冗長するようにしたことを特徴とする帳票プリンタの印字品位改善方法。
【請求項10】
ドットインパクト式の印字ヘッドを用いて複写伝票および単票を含む一般帳票への印字を行なう帳票プリンタの印字品位改善方法であって、
前記印字ヘッドを保持するキャリアと帳票搬送路を挟んで前記キャリアに対向する位置で帳票を支えるプラテンとの間に帳票を挟み、前記プラテンを前記キャリアに接近する方向に一定の力で押圧した状態で前記キャリアと前記プラテンとの間の離間距離を測定し、
測定された離間距離に基いて前記帳票が一般帳票であるのか複写伝票であるのかを判定し、
複写伝票への印字の際に、単票を含む一般帳票への印字の際と同等の叩打力を保持してワイヤの押し込み時間を冗長するようにしたことを特徴とする帳票プリンタの印字品位改善方法。
【請求項11】
ドットインパクト式の印字ヘッドを用いて複写伝票および単票を含む一般帳票への印字を行なう帳票プリンタの印字品位改善方法であって、
前記帳票プリンタに接続した上位装置から入力される媒体種別情報に基いて前記帳票が一般帳票であるのか複写伝票であるのかを判定し、
複写伝票への印字の際に、単票を含む一般帳票への印字の際と同等の叩打力を保持してワイヤの押し込み時間を冗長するようにしたことを特徴とする帳票プリンタの印字品位改善方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−296392(P2008−296392A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141886(P2007−141886)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】