説明

干渉確認装置

【課題】切削液を用いた加工時においても移動体と構造体との間の干渉を防止することができ、しかも、制御装置から独立して構成することができる干渉確認装置を提供する。
【解決手段】干渉確認装置1は、移動体と構造体とを備える工作機械30に設けられており、移動体に配設された発光体と、移動体及び構造体の画像を生成する第1画像生成処理と、移動体の移動領域内の画像を生成する第2画像生成処理とを行う画像生成装置11と、第1画像生成処理で生成された画像を基に、移動体の輪郭形状と発光体の発光点とを含む移動体の輪郭形状データと、構造体の輪郭形状と位置とを含む構造体の輪郭形状データとを設定する輪郭形状データ設定処理部15と、第2画像生成処理で生成された画像と、輪郭形状データ設定処理部15によって設定された輪郭形状データとを基に移動体と構造体とが相互に干渉するか否かを確認する干渉確認処理部19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体と、この移動体の移動領域内に配置された構造体とを備える工作機械において、前記移動体と構造体とが相互に干渉するか否かを確認する干渉確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の分野では、従来から、例えば、刃物台に保持された工具と主軸のチャックに把持されたワークとの干渉、刃物台とワークとの干渉、工具とチャックとの干渉、刃物台とチャックとの干渉などを防止する各種の方法や装置が提案されており、このようなものの一つに、特開2006−102923号公報に開示された衝突防止方法がある。
【0003】
この衝突防止方法は、主軸と、主軸先端に装着され、ワークを把持するチャックと、所定の送り方向に移動自在に配設され、工具を保持する刃物台と、刃物台を前記送り方向に移動させる送り機構部と、送り機構部の作動を制御するNC装置などを備えた旋盤において、チャック,ワーク,刃物台及び工具を撮像カメラにより撮像して2次元画像を取得し、取得した2次元画像を基にチャック,ワーク,刃物台及び工具の形状や位置を認識して、これらチャック,ワーク,刃物台及び工具間の衝突を防止するというものである。
【0004】
具体的には、撮像カメラにより取得した2次元画像からチャック,ワーク,刃物台及び工具の形状や位置関係を検出して、刃物台及び工具が、予め設定した、チャック及びワークの干渉領域内にあるかどうか、又はチャック及びワークが、予め設定した、刃物台及び工具の干渉領域内にあるかどうかを確認し、予め設定した干渉領域内にあった場合には送り機構部の作動を停止させる。
【0005】
尚、このような衝突防止処理は、NC装置とは別体に設けられる衝突防止装置によって行われ、干渉領域内にあることが確認されると、アラーム信号が当該衝突防止装置からNC装置に送信される。或いは、撮像カメラにより取得した2次元画像がNC装置内に組み込まれた衝突防止装置に送信されて、NC装置内の衝突防止装置より行われる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−102923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の衝突防止方法では、以下に説明するような問題点があった。即ち、加工の際には、切りくずの除去や冷却などを目的として切削液を工具とワークの接触部に供給することが多いが、このような場合には、撮像カメラにより取得した2次元画像に切削液が写り込んでチャック,ワーク,刃物台及び工具の形状や位置を正確に検出することができないため、前記衝突防止方法をそのまま適用することはできない。
【0008】
また、NC装置内に組み込まれた衝突防止装置に衝突防止処理を実行させると、この衝突防止処理がNC装置の演算能力に大きく左右され、高精度且つ高速に実施することが困難になるという問題や、撮像カメラにより取得した2次元画像をNC装置側に送信するためなどに当該NC装置に外部機器との間でデータの送受信を行う機能を付加しなければならず、NC装置が高価となり、工作機械のコストが上昇するという問題を生じる。尚、このような問題は、NC装置とは別体の衝突防止装置がNC装置から干渉確認用の情報(例えば位置情報など)を得て衝突防止処理を行う場合も同様に発生し、更に、この場合には、NC装置の製造メーカによってNC装置で扱われるデータの種類やデータ構成などが異なるために製造メーカ毎に衝突防止装置の仕様を変更しなければならず、衝突防止装置の開発期間や開発コストなどの面で負担が増大するという問題も生じる。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、切削液を用いた加工時においても精度良く移動体と構造体との間の干渉を防止することができ、しかも、制御装置から独立して構成することができる干渉確認装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、
予め設定された方向に移動可能となった移動体と、前記移動体の移動領域内に配置された構造体と、前記移動体を移動させる駆動機構部と、前記駆動機構部の作動を制御する制御装置とを備えた工作機械に設けられ、前記移動体と構造体とが相互に干渉するか否かを確認する装置において、
前記移動体の移動領域内を撮像可能に前記工作機械に配置された少なくとも1つの撮像部を備える画像生成手段であって、前記撮像部により前記移動体及び構造体を撮像して2次元画像データを生成する第1画像生成部と、前記撮像部により前記移動体の移動領域内を一定時間間隔で撮像して2次元画像データを生成する第2画像生成部とを有する画像生成手段と、
前記移動体の、前記撮像部により撮像可能な部分に配設された少なくとも1つの発光体と、
前記第1画像生成部によって生成された2次元画像データから、前記移動体の輪郭形状及び前記発光体の発光点並びに前記構造体の輪郭形状を抽出するとともに前記構造体の位置を認識し、前記抽出した移動体の輪郭形状と発光体の発光点とを含む移動体の輪郭形状データと、前記抽出した構造体の輪郭形状と前記認識した構造体の位置とを含む構造体の輪郭形状データとを設定する輪郭形状データ設定手段と、
前記輪郭形状データ設定手段によって設定された前記移動体及び構造体の輪郭形状データを記憶する輪郭形状データ記憶手段と、
前記第2画像生成部によって生成された2次元画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
前記画像データ記憶手段に格納された2次元画像データから前記発光体の発光点を抽出してその位置を認識した後、認識した発光点の位置と、前記輪郭形状データ記憶手段に格納された移動体及び構造体の輪郭形状データとを基に、前記移動体と構造体とが相互に干渉するか否かを確認して、干渉すると判断した場合にアラーム信号を前記制御装置に送信する干渉確認手段とを備えてなることを特徴とする干渉確認装置に係る。
【0011】
この発明によれば、まず、画像生成手段の第1画像生成部によって、撮像部により移動体及び構造体が撮像されて2次元画像データが生成される。ついで、輪郭形状データ設定手段により、第1画像生成部によって生成された2次元画像データから、移動体の輪郭形状及び発光体の発光点並びに構造体の輪郭形状が抽出されるとともに構造体の位置が認識され、抽出された移動体の輪郭形状と発光体の発光点とを含む移動体の輪郭形状データと、抽出された構造体の輪郭形状と認識された構造体の位置とを含む構造体の輪郭形状データとが設定されて輪郭形状データ記憶手段に格納される。
【0012】
尚、移動体や構造体の輪郭形状を抽出する手法は、特に限定されるものではなく、例えば、生成された2次元画像データを所定のしきい値で2値化して移動体や構造体に相当する画像をそれぞれ抽出し、抽出した2値化画像を基に移動体や構造体の輪郭形状(輪郭線)を抽出する手法や、生成された2次元画像データから移動体や構造体のエッジを検出し、検出した各エッジを基に移動体や構造体の輪郭形状(輪郭線)を抽出する手法が挙げられる。また、発光体の発光点の抽出は、例えば、生成された2次元画像データから最も濃淡レベル値の低い部分(点)を抽出することで行うことができる。
【0013】
この後、制御装置により駆動機構部が制御されて移動体が発光体とともに所定方向に移動せしめられると、画像生成手段の第2画像生成部によって、撮像部により移動体の移動領域内が一定時間間隔で撮像されて2次元画像データが生成され、画像データ記憶手段に格納される。
【0014】
この後、干渉確認手段により、画像データ記憶手段に格納された2次元画像データから発光体の発光点が抽出されてその位置が認識された後、認識された発光点の位置と、輪郭形状データ記憶手段に格納された移動体及び構造体の輪郭形状データとを基に、移動体と構造体とが相互に干渉するか否かが確認される。
【0015】
移動体及び構造体が干渉するか否かは、例えば、移動体の輪郭形状と構造体の輪郭形状との間で接触又は重なり合う部分が存在するか否かを基に判断したり、移動体の輪郭形状と構造体の輪郭形状との間の距離が所定の距離よりも接近しているか否かを基に判断する。接触又は重なり合う部分があった場合や、接近している場合には移動体と構造体が干渉すると判断される。尚、このとき、移動体の輪郭形状は、輪郭形状データに含まれる発光点を基準にして前記認識した発光点の位置に配置され、構造体の輪郭形状は、輪郭形状データに含まれる構造体の位置に配置される。
【0016】
そして、干渉すると判断されると、アラーム信号が干渉確認手段から制御装置に送信され、送信されたアラーム信号が制御装置によって受信されると、当該制御装置により駆動機構部の作動が停止せしめられて移動体が停止する。尚、この干渉確認処理は、撮像部の撮像間隔と同じ周期で実行される。
【0017】
このように、本発明に係る干渉確認装置によれば、画像生成手段によって生成された2次元画像データから移動体に設けた発光体の発光点の位置を認識して移動体の位置を特定しているので、切削液を用いて加工を行っている場合であっても移動体の位置を正確に検出し、高精度な干渉確認処理を実施することができる。
【0018】
また、制御装置から干渉確認用の情報を一切得ることなく干渉確認処理を行っているので、当該干渉確認装置を制御装置から分離,独立した構成とすることができ、制御装置の演算能力に左右されることなく、高精度且つ高速に干渉確認処理を実施することができる。また、制御装置を少なくともアラーム信号のみ入力可能に構成すれば良く、制御装置と当該干渉確認装置との間で各種データの送受信を行う必要がないので、制御装置を安価にして工作機械のコストを抑えることができる。また、更に、制御装置の製造メーカに合わせて当該干渉確認装置の仕様を変更するのを不要にし、どの製造メーカが製造した制御装置にも同じ干渉確認装置を適用することができるので、当該干渉確認装置の開発期間や開発コストなどの面で負担を低減することができる。
【0019】
尚、前記移動体が所定の回転中心軸回りに回転するような場合、1つの発光体では移動体の回転角度位置を特定することができないが、複数(例えば、2つや3つ)の発光体を設ければ、各発光体の発光点の位置関係から、回転角度位置を含めた移動体の位置を特定することが可能となる。したがって、姿勢を変えるような移動体であっても効果的に干渉確認を行うことができる。このとき、発光体は、例えば、間隔を変えて一列に設けたり、三角形の頂部となる位置に設けることができる。また、発光体の発光色は必ずしも同じである必要はなく、発光色を変えて少なくとも2つ発光体を設けるようにしても同様の効果を得ることができる。また、発光色が同じで光強度(明暗)が異なるものを少なくとも2つ設けるようにしても良い。また、移動体の輪郭形状は、輪郭形状データに含まれる各発光点と認識した各発光点の位置とがそれぞれ対応するように配置される。
【0020】
また、前記干渉確認手段は、前記画像データ記憶手段に格納された2次元画像データであって最新のもの及びこの一定時間前のものから前記発光体の発光点をそれぞれ抽出してこれらの位置を認識する第1処理部と、前記第1処理部により認識された発光点の現在及び一定時間前の位置と、前記撮像部の撮像間隔とを基にこの発光点の移動方向及び移動速度を算出する第2処理部と、前記第1処理部により認識された発光点の現在位置、並びに前記第2処理部により算出された発光点の移動方向及び移動速度を基に、予め設定された時間経過後における前記発光点の位置を推定する第3処理部と、前記第3処理部により推定された発光点の位置と、前記第1処理部により認識された発光点の現在位置と、前記輪郭形状データ記憶手段に格納された移動体及び構造体の輪郭形状データとを基に、前記発光点が前記現在位置から推定位置に移動するように前記移動体の輪郭形状を移動させて前記移動体及び構造体が干渉するか否かを確認する第4処理部とから構成されていても良い。
【0021】
このようにすれば、まず、第1処理部によって、画像データ記憶手段に格納された2次元画像データであって最新のもの及びこの一定時間前のものから発光体の発光点がそれぞれ抽出されてこれらの位置が認識され、ついで、第2処理部によって、第1処理部により認識された発光点の現在及び一定時間前の位置と、撮像部の撮像間隔とを基に発光点の移動方向及び移動速度が算出され、次に、第3処理部によって、第1処理部により認識された発光点の現在位置、並びに第2処理部により算出された発光点の移動方向及び移動速度を基に、予め設定された時間経過後における発光点の位置が推定される。
【0022】
発光点の位置を推定するに当たっては、例えば、算出した移動方向に算出した移動速度で移動した場合の位置を推定するようにしても、算出した移動速度から加速又は減速しつつ算出した移動方向に移動した場合の位置を推定するようにしても良い。また、予め設定された時間経過後における発光点の位置に代え、制御装置が直ちに移動体の停止処理を行って移動体が停止したときの発光点の位置よりも発光点移動方向において現在位置から離れた位置を移動体の停止までに発光点が到達する位置として推定するようにしても良い。尚、このような到達位置は、例えば、制御装置が直ちに移動体の停止処理を行って移動体が停止したときの発光点の位置に一定値を付加したり、制御装置が直ちに移動体の停止処理を行って移動体が停止したときの発光点の位置と現在位置との差に1より大きい一定値を乗じて得られた値を現在位置に付加することで設定することができる。
【0023】
この後、第4処理部によって、第3処理部により推定された発光点の位置と、第1処理部により認識された発光点の現在位置と、輪郭形状データ記憶手段に格納された移動体及び構造体の輪郭形状データとを基に、発光点が現在位置から推定位置に移動するように移動体の輪郭形状を移動させて移動体及び構造体が干渉するか否かが確認される。
【0024】
移動体と構造体とが干渉するか否かは、例えば、発光点が現在位置にあるときと推定位置にあるときの移動体の輪郭形状を結んで形成される領域と構造体の輪郭形状との間で接触又は重なり合う部分が存在するか否かを基に判断したり、発光点が現在位置から推定位置まで移動するように移動体の輪郭形状を段階的に移動させ、その各段階において、移動体の輪郭形状と構造体の輪郭形状との間で接触又は重なり合う部分が存在するか否かを基に判断する。接触又は重なり合う部分があった場合には移動体と構造体が干渉すると判断される。
【0025】
このように、発光点の移動速度などを基に設定した推定位置と移動体及び構造体の輪郭形状データとを用いて干渉確認処理を行えば、干渉領域が移動体(発光点)の移動速度に関係なく一律に設定され、移動体が高速で移動しているときでも干渉を防止すべく干渉領域を広くする必要のあった従来に比べ、移動体を構造体の近傍領域で移動させても干渉の恐れがあると判定され難くなり、作業性を向上させることができる。
【0026】
また、前記干渉確認手段の第3処理部は、前記到達位置を推定するに当たり、前記発光点を前記現在位置及び移動速度から前記移動方向に前記移動体の最大加速度で加速させつつ移動させたときに前記撮像部の撮像間隔だけ時間が経過した後の移動速度及び移動位置を算出した後、前記発光点を前記算出した移動速度及び移動位置から前記移動方向に前記移動体の最大加速度で減速させつつ移動させたときに前記発光点が停止する位置を算出し、前記到達位置を推定するように構成されていても良い。
【0027】
このようにすれば、移動体(発光点)の現在移動速度及び加速時の最大加速度を考慮して移動体が停止したときの発光点の到達位置を推定しており、移動体が最大加速度で加速中であったとしても確実に構造体との干渉を防止することができる。
【0028】
尚、前記移動体及び構造体としては、例えば、工作機械が旋盤である場合には、ベッド、ベッド上に配設された主軸台、主軸台によって回転自在に支持された主軸、主軸に取り付けられ、ワークを把持するチャック、ワーク、ベッド上に移動可能に配設されたサドル、サドル上に配設され、工具を保持する刃物台、工具、ベッド上に移動可能に配設された心押台、心押台に保持された心押軸などが該当し、工作機械がマシニングセンタである場合には、ベッド、ベッド上に配設されたコラム、コラムに移動可能に支持された主軸頭、主軸頭によって回転自在に支持され、工具を保持する主軸、工具、ベッド上に移動可能に配設され、ワークを保持するテーブル、ワークなどが該当する。また、更に、工作機械には、一般的に、切りくずや切削液などの侵入を防止すべく、カバー体が適宜設けられるため、このようなカバー体を含めるようにしても良い。
【0029】
また、前記発光体としては、例えば、発光ダイオードやレーザ発振器などを挙げることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明に係る干渉確認装置によれば、切削液を用いた加工時においても精度良く移動体と構造体との間の干渉を防止することができ、しかも、制御装置から独立して構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施形態について、添付図面に基づき説明する。尚、図1は、本発明の一実施形態に係る干渉確認装置などの概略構成を示したブロック図であり、図2は、本実施形態に係る干渉確認装置が設けられるNC旋盤を示した正面図であり、図3は、図2における矢示A−A方向の断面図である。
【0032】
図1に示すように、本例の干渉確認装置1は、画像生成装置11,第1画像データ記憶部12,第2画像データ記憶部13,工具データ記憶部14,輪郭形状データ設定処理部15,輪郭形状データ記憶部16,画像合成処理部17,合成画像データ記憶部18,干渉確認処理部19,表示制御部20及び発光体21などから構成され、例えば、図2及び図3に示したNC旋盤30に設けられる。
【0033】
まず、前記NC旋盤30について説明する。このNC旋盤30は、図1乃至図3に示すように、ベッド31と、ベッド31上に配設された主軸台(図示せず)と、水平な軸線中心に(Z軸回りに)回転自在に主軸台(図示せず)によって支持された主軸32と、主軸32に取り付けられたチャック33と、Z軸方向に移動可能にベッド31上に配設されたサドル34と、Z軸と水平面内で直交するX軸方向に移動可能にサドル34上に配設された刃物台35と、サドル34をZ軸方向に移動させる第1送り機構部36と、刃物台35をX軸方向に移動させる第2送り機構部37と、主軸32を軸線中心に回転させる主軸モータ38と、各送り機構部36,37及び主軸モータ38の作動を制御する制御装置39と、制御装置39に接続した操作盤43と、切削液を供給する切削液供給装置47などを備える。尚、NC旋盤30には、カバー体46に囲まれた、加工の行われる加工領域Kが形成されており、主軸32の先端部,チャック33,サドル34及び刃物台35がこの加工領域K内に配置されている。
【0034】
前記チャック33は、チャック本体33aと、ワークWを把持する複数の把持爪33bとからなる。前記刃物台35は、サドル34上に設けられる刃物台本体35aと、刃物台本体35aによって所定の割出角度位置に割出可能に支持され、外周面に工具Tを保持する多角柱状のタレット35bとを備えており、工具Tは、バイトなどの旋削工具であって、工具本体Taと、ワークWを加工するための刃部(チップ)Tbとから構成される。前記操作盤43は、制御装置39に対して各種信号を入力するための入力装置44と、制御装置39による制御状態などを画面表示するための画面表示装置45などからなる。
【0035】
前記制御装置39は、プログラム記憶部40,プログラム解析部41,駆動制御部42などからなり、切削液供給装置47により切削液をワークWと工具Tの接触部に供給しながら加工を行う。前記プログラム記憶部40には、予め作成された加工プログラムが格納される。前記プログラム解析部41は、プログラム記憶部40に格納された加工プログラムを解析して、刃物台35の移動位置や送り速度、主軸モータ38の回転速度などに関する動作指令を抽出する。
【0036】
前記駆動制御部42は、プログラム解析部41によって抽出された動作指令や、オペレータによって入力装置44から入力された操作信号を基に、刃物台35の移動や主軸32の回転、タレット35bの割出角度位置、切削液供給装置47の作動などを制御する。また、駆動制御部42は、干渉確認処理部19から送信されたアラーム信号を受信すると、各送り機構部36,37、主軸モータ38及び切削液供給装置47の作動を停止させる。
【0037】
次に、前記干渉確認装置1について説明する。上述したように、この干渉確認装置1は、画像生成装置11,第1画像データ記憶部12,第2画像データ記憶部13,工具データ記憶部14,輪郭形状データ設定処理部15,輪郭形状データ記憶部16,画像合成処理部17,合成画像データ記憶部18,干渉確認処理部19,表示制御部20及び発光体21などを備える。尚、本例では、主軸32の先端部,チャック33及びワークWからなる構造体(以下、「静止構造体」という)と、刃物台35及び工具Tからなる構造体(以下、「移動構造体」という)とが相互に干渉するか否かを確認するものとして説明する。
【0038】
前記発光体21は、例えば、発光ダイオードやレーザ発振器などから構成され、前記刃物台35のタレット35bの外周面に取り付けられる。尚、このタレット35bの外周面には、特に図示しないが、複数の発光体21が周方向等間隔で設けられており、図2及び図3に示すように、タレット35bの上部に位置する発光体21のみが点灯するようになっている。この発光体21の点灯制御は、タレット35bの割出角度位置に係る信号を当該干渉確認装置1が制御装置39から受信して割出角度位置に対応した発光体21を点灯させても、制御装置39側でタレット35bの割出角度位置に対応した発光体21を点灯させても良い。また、発光体21の発光色は、後述するCCDカメラ11a…11oによって撮像可能であれば、特に限定されるものではない。
【0039】
前記画像生成装置11は、加工領域Kの上方のカバー体46に配設された複数のCCDカメラ(第1CCDカメラ11a,第2CCDカメラ11b…第15CCDカメラ11o)を備え、これらのCCDカメラ11a…11oによって、主軸32の先端部,チャック33及びワークW並びに刃物台35及び工具Tを撮像して2次元画像データを生成し、生成した2次元画像データを前記第1画像データ記憶部12に格納する第1画像生成処理(特許請求の範囲に言う第1画像生成部に対応した処理)と、加工領域K内を一定時間間隔(例えば、1ミリ秒)で撮像して2次元画像データを生成し、生成した2次元画像データを前記第2画像データ記憶部13に格納する第2画像生成処理(特許請求の範囲に言う第2画像生成部に対応した処理)とを行う。尚、第1画像生成処理は加工開始前に行われ、第2画像生成処理は加工中に行われる。
【0040】
前記各CCDカメラ11a…11oは、これらの光軸が互いに平行且つX軸及びZ軸の双方と直交するように下向きに設けられて前記加工領域K内(刃物台35の移動領域内)をそれぞれ異なる視点から撮像する。また、各CCDカメラ11a…11oは、X軸方向及びZ軸方向に列設されて格子状に配置されており、加工領域Kを各CCDカメラ11a…11oと同じ数(本例では15個)の領域に分割して得られる1つの領域を1つのカメラがそれぞれ撮像するように構成されている(図6参照)。
【0041】
また、各CCDカメラ11a…11oは、多行多列の2次元に配置された複数の光電変換素子を備え、受光強度に応じて各光電変換素子から出力される電圧信号をデジタル化した後、これを濃淡レベル値に変換して、前記光電変換素子の配列と同配列の2次元濃淡画像データとして出力する。そして、前記第1画像データ記憶部12又は第2画像データ記憶部13には、このようにして出力された2次元濃淡画像データ(2次元画像データ)がそれぞれ格納される。
【0042】
前記第1画像生成処理では、例えば、第3CCDカメラ11c及び第6CCDカメラ11fにより、チャック33にワークWが把持されている状態で主軸32の先端部,チャック33及びワークWを撮像してこれらの2次元画像データを生成するとともに、第3CCDカメラ11cにより、チャック33にワークWが把持されていない状態で主軸32の先端部及びチャック33を撮像してこれらの2次元画像データを生成する。また、例えば、第10CCDカメラ11j,第11CCDカメラ11k,第12CCDカメラ11l,第13CCDカメラ11m及び第14CCDカメラ11nにより、刃物台35に工具Tが保持されている状態で刃物台35及び工具Tを撮像してこれらの2次元画像データを生成するとともに、第10CCDカメラ11j,第11CCDカメラ11k,第13CCDカメラ11m及び第14CCDカメラ11nにより、刃物台35に工具Tが保持されていない状態で刃物台35を撮像してその2次元画像データを生成する。
【0043】
尚、第3CCDカメラ11cでは、主軸32の先端部,チャック33及びワークWの一部、或いは主軸32の先端部及びチャック33が撮像され、第6CCDカメラ11fでは、ワークWの一部が撮像される(図6参照)。また、第10CCDカメラ11j,第13CCDカメラ11m及び第14CCDカメラ11nでは、刃物台35の一部が撮像され、第11CCDカメラ11kでは、刃物台35の一部及び工具Tの一部、或いは刃物台35の一部が撮像され、第12CCDカメラ11lでは、工具Tの一部が撮像される(図6参照)。
【0044】
一方、前記第2画像生成処理では、すべてのCCDカメラ11a…11oにより加工領域K内を撮像してその2次元画像データを生成する(図6参照)。
【0045】
前記工具データ記憶部14には、前記刃物台35に保持される可能性のある複数の工具Tについて、その工具輪郭形状と、この工具輪郭形状の内、どこが刃部(チップ)Tbに対応している部分であるかを示す刃部データとが関連付けられて格納される。
【0046】
前記輪郭形状データ設定処理部15は、画像生成装置11の第1画像生成処理により第1画像データ記憶部12に格納された2次元画像データを基に、静止構造体及び移動構造体の輪郭形状データをそれぞれ設定する。
【0047】
静止構造体の輪郭形状データについては、まず、第1画像データ記憶部12に格納された、チャック33にワークWが把持されている状態における主軸32の先端部,チャック33及びワークWの2次元画像データを合成して1つの2次元画像データとした後、この合成された2次元画像データから静止構造体の輪郭形状を抽出する(図4(a)参照)とともに、第1画像データ記憶部12に格納された、チャック33にワークWが把持されていない状態における主軸32の先端部及びチャック33の2次元画像データから、主軸32の先端部及びチャック33からなる構造体の輪郭形状を抽出する(図4(b)参照)。また、合わせて静止構造体の位置を認識する。
【0048】
尚、静止構造体の輪郭形状を抽出する手法は、特に限定されるものではなく、例えば、合成された2次元画像データを所定のしきい値で2値化して静止構造体に相当する画像を抽出し、抽出した2値化画像を基に静止構造体の輪郭形状(輪郭線)を抽出する手法や、合成された2次元画像データから静止構造体のエッジを検出し、検出した各エッジを基に静止構造体の輪郭形状(輪郭線)を抽出する手法が挙げられる。また、静止構造体の位置は、例えば、当該静止構造体の輪郭形状の基準点Pの座標値(例えばピクセル値))を認識した後、この静止構造体がどのCCDカメラ11a…11oによって撮像されたかを参照して、認識した基準点Pの座標値をすべてのCCDカメラ11a…11oからの2次元画像データを合成して得られる2次元合成画像データに対応した座標値に変換することで、加工領域K内における静止構造体の位置を認識することができる。
【0049】
この後、抽出した2つの輪郭形状を比較して、例えば、これらの差分を求め、ワークWに相当する輪郭形状を認識した後(図4(c)参照)、認識したワークWの輪郭形状と、抽出した静止構造体の輪郭形状と、認識した静止構造体の位置とを基に、当該静止構造体の輪郭形状及び位置と、この輪郭形状の内、どの部分がワークWの輪郭形状に対応しているかを示すデータとを含む輪郭形状データを設定し(図4(d)参照)、設定した輪郭形状データを前記輪郭形状データ記憶部16に格納する。尚、図4(d)では、ワークWの輪郭形状が太線で示されている。
【0050】
一方、移動構造体の輪郭形状データについては、まず、第1画像データ記憶部12に格納された、刃物台35に工具Tが保持されている状態における刃物台35及び工具Tの2次元画像データを合成して1つの2次元画像データとした後、この合成された2次元画像データから移動構造体の輪郭形状及び発光体21の発光点を抽出する(図5(a)参照)とともに、第1画像データ記憶部12に格納された、刃物台35に工具Tが保持されていない状態における刃物台35の2次元画像データから刃物台35の輪郭形状及び発光体21の発光点を抽出する(図5(b)参照)。尚、移動構造体の輪郭形状を抽出する手法は、静止構造体と同様の手法を採用することができる。
【0051】
この後、抽出した2つの輪郭形状を比較して、例えば、これらの差分を求め、工具Tに相当する輪郭形状を認識する(図5(c)参照)。次に、認識した工具Tの輪郭形状を基に、工具データ記憶部14に格納されたデータを参照してこの工具Tの輪郭形状に対応する刃部データを認識する。ついで、認識した刃部データと、抽出した移動構造体の輪郭形状及び発光体21の発光点とを基に、当該移動構造体の輪郭形状と、この輪郭形状の内、どの部分が刃部Tbの輪郭形状に対応しているかを示すデータと、発光体21の発光点とを含む、発光体21の発光点を当該移動構造体の輪郭形状の基準点Qとした輪郭形状データを設定し(図5(d)参照)、設定した輪郭形状データを前記輪郭形状データ記憶部15に格納する。尚、図5(d)では、刃部Tbの輪郭形状が太線で示されている。
【0052】
前記画像合成処理部17は、図6及び図7に示すように、画像生成装置11の第2画像生成処理により第2画像データ記憶部13に格納された2次元画像データを前記一定時間毎に合成して1つの2次元合成画像データにし、これを前記合成画像データ記憶部18に格納する。尚、図6では、移動構造体が移動する前の2次元画像を、図7では、移動構造体が移動した後の2次元画像をそれぞれ図示している。また、各2次元画像を1つの2次元画像に合成する手法は、特に限定されるものではなく、その一例としては、例えば、各2次元画像の特徴点を抽出し、抽出した特徴点を基に合成する手法が挙げられる。また、上記輪郭形状データ設定処理部15が2次元画像を合成する手法についても、同様のものを採用することができる。
【0053】
前記干渉確認処理部19は、合成画像データ記憶部18に格納された2次元合成画像データであって最新のもの及びこの一定時間前のものと、輪郭形状データ記憶部16に格納された静止構造体及び移動構造体の輪郭形状データと、各CCDカメラ11a…11oの撮像間隔などを基に、図8及び図9に示すような一連の処理を行って静止構造体と移動構造体とが相互に干渉するか否かを確認する。
【0054】
即ち、まず、合成画像データ記憶部18から、2次元合成画像データであって最新のもの(例えば、図7に示すような2次元合成画像)及びこの一定時間前のもの(例えば、図6に示すような2次元合成画像)を読み出し(ステップS1)、輪郭形状データ記憶部16から静止構造体及び移動構造体の輪郭形状データをそれぞれ読み出す(ステップS2)。
【0055】
ついで、読み出した最新の2次元合成画像データ及びこの一定時間前の2次元合成画像データにおける発光体21の発光点をそれぞれ抽出して各発光点の位置(座標値(例えばピクセル値))を認識した後(ステップS3)、認識した発光点の現在及び一定時間前の位置と、各CCDカメラ11a…11oの撮像間隔とを基に、発光点の移動方向及び移動速度を算出する(ステップS4)。
【0056】
この後、発光点の現在位置,移動方向及び移動速度、各CCDカメラ11a…11oの撮像間隔を基に、発光点をこの現在位置及び移動速度からこの移動方向に移動構造体の最大加速度で加速させつつ移動させたときに各CCDカメラ11a…11oの撮像間隔だけ時間が経過した後の発光点の移動速度及び移動位置を算出した後、発光点をこの算出した移動速度及び移動位置から前記移動方向に移動構造体の最大加速度で減速させつつ移動させたときに発光点が停止する位置を算出し、このようにして、当該発光点の停止位置を移動構造体が停止するまでに当該発光点が到達する位置として推定する(ステップS5)。尚、加速時の最大加速度及び減速時の最大加速度は、NC旋盤30に設定されている設定値が図示しない記憶部内に予め格納されるようになっており、干渉確認処理部19は、この記憶部内の最大加速度を参照してステップS5の処理を行う。
【0057】
次に、発光点の推定停止位置及び現在位置と、静止構造体及び移動構造体の輪郭形状データとを基に、発光点が現在位置から推定停止位置に移動するように移動構造体の輪郭形状を移動させる(ステップS6)。このとき、移動構造体の輪郭形状は、輪郭形状データに含まれる発光点(基準点Q)が前記認識した発光点の位置と対応するように配置され、静止構造体の輪郭形状は、輪郭形状データに含まれる静止構造体の位置に配置される。
【0058】
そして、この移動により移動構造体の輪郭形状と静止構造体の輪郭形状との間で接触又は重なり合う部分が存在するかどうかを判断する(ステップS7)。具体的には、例えば、発光点(基準点Q)が現在位置にあるときと推定停止位置にあるときの移動構造体の輪郭形状を結んで形成される領域と静止構造体の輪郭形状との間で接触又は重なり合う部分が存在するか否かを基に判断したり(図10(a),図11(a)及び図12(a)参照)、発光点(基準点Q)が現在位置から推定停止位置まで移動するように移動構造体の輪郭形状を段階的に移動させ、その各段階において、移動構造体の輪郭形状と静止構造体の輪郭形状との間で接触又は重なり合う部分が存在するか否かを基に判断する(図10(b),図11(b)及び図12(b)参照)。
【0059】
ステップS7で接触又は重なり合う部分があると判断した場合(例えば、図11や図12のような場合)には、その接触又は重なり合いが工具Tの刃部TbとワークWとの間に生じたものであるのかを判断する(ステップS8)。これは、静止構造体の輪郭形状データ及び移動構造体の輪郭形状データから判断することができる。一方、ステップS7で接触又は重なり合う部分がないと判断した場合(例えば、図10のような場合)には、ステップS12に進む。
【0060】
ステップS8で接触又は重なり合いが工具Tの刃部TbとワークWとの間に生じたものであると判断した場合(例えば、図12のような場合)には、前記ステップS4で算出した発光体の移動速度が最大切削送り速度以下であるかどうかを判断する(ステップS9)。尚、最大切削送り速度は、NC旋盤30に設定されている設定値が図示しない記憶部内に予め格納されるようになっており、干渉確認処理部19は、この記憶部内の最大切削送り速度を参照してステップS9の処理を行う。
【0061】
ステップS9で発光体の移動速度が最大切削送り速度以下であると判断した場合には、工具TによるワークWの加工とみなしてワークWの輪郭形状を更新し、更新したワークWの輪郭形状を基に静止構造体の輪郭形状データを更新して前記輪郭形状データ記憶部16に格納し(図13参照)(ステップS10)、ステップS12に進む。尚、ワークWの輪郭形状の更新は、例えば、発光体が現在位置にあるときと推定停止位置にあるときの移動構造体の輪郭形状を結んで形成される領域と静止構造体(ワークW)の輪郭形状との重複部分を削除することで行うことができる。また、ワークW(主軸32)は回転しているが、これは、例えば、制御装置39から主軸モータ38に制御信号が出力されているかどうかを監視することで認識することができ、干渉確認処理部19は、ワークWが回転していることを認識した場合には、ワークWの外周部両側に相当する輪郭部分を削除する。
【0062】
一方、ステップS8で接触又は重なり合いが工具Tの刃部TbとワークWとの間に生じたものでないと判断した場合(例えば、図11のような場合)、及びステップS9で発光体の移動速度が最大切削送り速度よりも速いと判断した場合には、移動構造体と静止構造体とが干渉するとみなしてアラーム信号を駆動制御部42及び前記表示制御部20に送信して処理を終了する(ステップS11)。
【0063】
ステップS12では、処理終了かどうかを確認し、終了でない場合には、一定時間(各CCDカメラ11a…11oの撮像間隔と同じ時間)が経過したことを確認して上記ステップS1以降の処理を再び実行する(ステップS13)。一方、ステップS12で処理終了であると判断した場合には、上記一連の処理を終了する。
【0064】
尚、上記各処理の内、ステップS1〜ステップS3が特許請求の範囲に言う第1処理部に対応した処理、ステップS4が特許請求の範囲に言う第2処理部に対応した処理、ステップS5が特許請求の範囲に言う第3処理部に対応した処理、ステップS6〜ステップS11が特許請求の範囲に言う第4処理部に対応した処理である。
【0065】
前記表示制御部20は、干渉確認処理部19から送信されたアラーム信号を受信すると、画面表示装置45にアラーム表示を行う。
【0066】
以上のように構成された本例の干渉確認装置1によれば、予め工具データ記憶部14に、刃物台35に保持される可能性のある複数の工具Tについて、工具輪郭形状と刃部データとが関連付けられて格納される。
【0067】
また、画像生成装置11の第1画像生成処理が行われ、チャック33にワークWが把持されている状態で主軸32の先端部,チャック33及びワークWが撮像されて2次元画像データが生成されるとともに、チャック33にワークWが把持されていない状態で主軸32の先端部及びチャック33が撮像されて2次元画像データが生成される。また、刃物台35に工具Tが保持されている状態で刃物台35及び工具Tが撮像されて2次元画像データが生成されるとともに、刃物台35に工具Tが保持されていない状態で刃物台35が撮像されて2次元画像データが生成される。そして、このようにして生成された各2次元画像データが第1画像データ記憶部12に格納される。
【0068】
そして、輪郭形状データ設定部15により、第1画像データ記憶部12に格納された2次元画像データを基に、静止構造体の輪郭形状及び位置と、この輪郭形状の内、どの部分がワークWの輪郭形状に対応しているかを示すデータとを含む輪郭形状データが設定され、輪郭形状データ記憶部16に格納されるとともに、第1画像データ記憶部12に格納された2次元画像データと、工具データ記憶部14に格納されたデータとを基に、移動構造体の輪郭形状と、この輪郭形状の内、どの部分が刃部Tbの輪郭形状に対応しているかを示すデータと、発光体21の発光点とを含む輪郭形状データが設定され、輪郭形状データ記憶部16に格納される。
【0069】
この後、制御装置39(駆動制御部42)により送り機構部36,37、主軸モータ38、及び切削液供給装置47が制御されてワークWの加工が開始されると、移動構造体がZ軸方向やX軸方向に移動するが、このとき、画像生成装置11の第2画像生成処理が行われ、一定時間間隔で加工領域K内が撮像されて2次元画像データが生成され、第2画像データ記憶部13に格納される。
【0070】
画像生成装置11の第2画像生成処理で生成され第2画像データ記憶部13に格納された2次元画像データは、画像合成処理部17により一定時間毎に合成されて1つの2次元合成画像データとされ、合成画像データ記憶部18に格納される。
【0071】
この後、干渉確認処理部19により、合成画像データ記憶部18に格納された2次元合成画像データであって最新のもの及びこの一定時間前のものと、輪郭形状データ記憶部16に格納された静止構造体及び移動構造体の輪郭形状データと、各CCDカメラ11a…11oの撮像間隔などを基に静止構造体と移動構造体とが相互に干渉するか否かが確認される。このとき、切削液供給装置47によって切削液が供給されているために移動構造体の鮮明な画像が得られなくても発光体21の発光点から移動構造体の位置を正確に特定することができる。尚、この干渉確認処理は、各CCDカメラ11a…11oの撮像間隔と同じ周期で実行される。
【0072】
そして、静止構造体及び移動構造体が干渉すると判断されると、アラーム信号が駆動制御部42及び表示制御部20に送信される。アラーム信号が駆動制御部42によって受信されると、各送り機構部36,37、主軸モータ38、及び切削液供給装置47の作動が停止せしめられ、また、アラーム信号が表示制御部20によって受信されると、アラーム表示が画面表示装置45に表示される。
【0073】
斯くして、本例の干渉確認装置1によれば、画像生成装置11によって生成された2次元画像データから移動構造体(刃物台35)に設けた発光体21の発光点の位置を認識して移動構造体の位置を特定しているので、切削液を用いて加工を行っている場合であっても移動構造体の位置を正確に検出し、高精度な干渉確認処理を実施することができる。
【0074】
また、制御装置39から干渉確認用の情報を一切得ることなく干渉確認処理を行っているので、当該干渉確認装置1を制御装置39から分離,独立した構成とすることができ、制御装置39の演算能力に左右されることなく、高精度且つ高速に干渉確認処理を実施することができる。また、制御装置39(駆動制御部42)を少なくともアラーム信号のみ入力可能に構成すれば良く、制御装置39と当該干渉確認装置1との間で各種データの送受信を行う必要がないので、制御装置39を安価にしてNC旋盤30のコストを抑えることができる。また、更に、制御装置39の製造メーカに合わせて当該干渉確認装置1の仕様を変更するのを不要にし、どの製造メーカが製造した制御装置39にも同じ干渉確認装置1を適用することができるので、当該干渉確認装置1の開発期間や開発コストなどの面で負担を低減することができる。
【0075】
また、発光点の移動速度などを基に設定した推定停止位置と移動構造体及び静止構造体の輪郭形状データとを用いて干渉確認処理を行っているので、干渉領域が移動構造体(発光点)の移動速度に関係なく一律に設定され、移動構造体が高速で移動しているときでも干渉を防止すべく干渉領域を広くする必要のあった従来に比べ、移動構造体を静止構造体の近傍領域で移動させても干渉の恐れがあると判定され難くなり、作業性を向上させることができる。
【0076】
また、移動構造体(発光点)の現在移動速度及び加速時の最大加速度を考慮して停止位置を推定しているので、移動構造体が最大加速度で加速中であったとしても確実に静止構造体との干渉を防止することができる。
【0077】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0078】
上例では、静止構造体(主軸32の先端部,チャック33及びワークWからなる構造体)と、移動構造体(刃物台35及び工具Tからなる構造体)とが相互に干渉するか否かを確認するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、移動構造体とカバー体46との間で干渉が生じるか否かを確認するようにしても良い。
【0079】
また、発光点の推定位置は、必ずしも上述のようにして推定する必要はない。また、更に、この推定位置は、駆動制御部42が直ちに移動構造体の停止処理を行って移動構造体が停止したときの発光点の位置よりも発光点の移動方向において現在位置から離れた位置であれば良く、このような位置であれば、移動構造体が静止構造体と干渉する前に確実に移動構造体を停止させることができる。尚、このような推定位置は、例えば、駆動制御部42が直ちに移動構造体の停止処理を行って移動構造体が停止したときの発光点の位置に一定値を付加したり、駆動制御部42が直ちに移動構造体の停止処理を行って移動構造体が停止したときの発光点の位置と現在位置との差に1より大きい一定値を乗じて得られた値を現在位置に付加することで設定することができる。
【0080】
この他、発光点の停止位置に代えて、所定時間経過後における発光点の位置を推定しても良く、この場合、例えば、ステップS4で算出した移動方向に同じく算出した移動速度で発光点が移動した場合の位置を推定したり、ステップS4で算出した移動速度から加速又は減速しつつ同じく算出した移動方向に発光点が移動した場合の位置を推定する。
【0081】
また、上例では、発光点の停止位置を推定し、推定した停止位置などを用いて移動構造体と静止構造体が干渉するか否かを確認するようにしたが、これに限られるものではなく、認識した発光点の現在位置と静止構造体の位置などを基に移動構造体と静止構造体が干渉するか否かを確認するようにしても良い。この場合、例えば、移動構造体の輪郭形状と静止構造体の輪郭形状との間で接触又は重なり合う部分が存在する場合や、移動構造体の輪郭形状と静止構造体の輪郭形状との間の距離が所定の距離よりも接近している場合に干渉すると判断する。
【0082】
また、前記各CCDカメラ11a…11oの配置位置は、加工領域K内の静止構造体及び移動構造体を撮像可能であれば特に限定されるものではない。例えば、特に図示はしないが、上記配置位置に代えて又は加えて、CCDカメラを静止構造体と対向するようにカバー体46に配置し、この静止構造体を真正面から撮像するようにしても良い。この場合、発光体21は、例えば、タレット35bの、CCDカメラ側の端面に設ける必要がある。
【0083】
また、画像生成装置11に複数のCCDカメラ11a…11oを設けたが、1つのCCDカメラで加工領域Kの全体を撮像可能な場合には、1つのCCDカメラのみを設けるようにしても良い。この場合、画像の合成処理を省くことができる。また、CCDカメラ11a…11oの1つでは、主軸32の先端部,チャック33及びワークWや主軸32の先端部及びチャック33、並びに刃物台35及び工具Tや刃物台35を撮像することができないため、CCDカメラ11a…11oのいくつかを作動させてこれらを撮像し、得られた2次元画像を合成して輪郭形状を抽出するようにしたが、CCDカメラ11a…11oの1つで、主軸32の先端部,チャック33及びワークWや主軸32の先端部及びチャック33、並びに刃物台35及び工具Tや刃物台35を撮像することができる場合には、例えば、これらに最も近い位置(真上)にあるCCDカメラ11a…11oによりこれらをそれぞれ撮像し、得られた2次元画像から輪郭形状などを抽出するようにしても良い。
【0084】
また、例えば、図14に示すように、移動構造体を構成する刃物台50が所定の割出角度位置に割出可能に構成された工具主軸51を備えているようなときには、干渉判定を行うに当たり、工具主軸51の割出角度位置を特定する必要があるが、この場合、前記刃物台35のように発光体21(基準点Q)を1つしか設けなかったのでは、割出角度位置を特定することができない。そこで、図示するように、3つの発光体55,56,57を工具主軸51の外周面に設けるようにすれば、この3つの発光体55,56,57の発光点(基準点)の位置関係から工具主軸51の割出角度位置を特定することができる。したがって、工具主軸51の向きが変わるような刃物台50であっても効果的に干渉確認を行うことができる。尚、図示例では、工具主軸51は、工具本体Ta及び刃部Tbからなる、ドリルやエンドミルなどの回転工具Tを保持している。また、符号52及び53はサドルである。
【0085】
前記各発光体55,56,57は、例えば、図14に示すように、三角形の頂部となる位置に設けたり、図15に示すように、間隔を変えて一列に設けることができるが、これらに限定されるものではない。また、発光体55,56,57は必ずしも3つ設ける必要はなく、発光色の異なるものや発光色が同じで光強度(明暗)が異なるものを2つ設けるようにしても良い。また、更に、工具主軸51が0°〜180°の範囲内でしか回転しないような場合には、発光色が同じものを2つ設けても工具主軸51の割出角度位置を特定することができる。尚、発光体55,56,57の数は、前述した2つや3つに何ら限定されるものではない。
【0086】
また、上例では、工作機械としてNC旋盤30を一例に挙げて説明したが、本例の干渉確認装置1は、マシニングセンタなど各種の工作機械に設けることが可能である。また、CCDカメラ11a…11oのレンズには、ワイパを設けて表面に付いた切削液を拭き取るようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係る干渉確認装置などの概略構成を示したブロック図である。
【図2】本実施形態の干渉確認装置が設けられるNC旋盤を示した正面図である。
【図3】図2における矢示A−A方向の断面図である。
【図4】静止構造体の輪郭形状データの設定を説明するための説明図である。
【図5】移動構造体の輪郭形状データの設定を説明するための説明図である。
【図6】各CCDカメラにより得られる2次元画像と、これらの2次元画像を合成して得られる1つの2次元合成画像との関係を示した説明図である。
【図7】各CCDカメラにより得られる2次元画像と、これらの2次元画像を合成して得られる1つの2次元合成画像との関係を示した説明図である。
【図8】本実施形態の干渉確認処理部における一連の処理を示したフローチャートである。
【図9】本実施形態の干渉確認処理部における一連の処理を示したフローチャートである。
【図10】干渉判定を説明するための説明図である。
【図11】干渉判定を説明するための説明図である。
【図12】干渉判定を説明するための説明図である。
【図13】更新後の静止構造体の輪郭形状データを説明するための説明図である。
【図14】発光体の配置例を説明するための説明図である。
【図15】発光体の配置例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1 干渉確認装置
11 画像生成装置
11a…11o CCDカメラ
12 第1画像データ記憶部
13 第2画像データ記憶部
14 工具データ記憶部
15 輪郭形状データ設定処理部
16 輪郭形状データ記憶部
17 画像合成処理部
18 合成画像データ記憶部
19 干渉確認処理部
20 表示制御部
21 発光体
30 NC旋盤
31 ベッド
32 主軸
33 チャック
34 サドル
35 刃物台
36 第1送り機構部
37 第2送り機構部
38 主軸モータ
39 制御装置
42 駆動制御部
W ワーク
T 工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された方向に移動可能となった移動体と、前記移動体の移動領域内に配置された構造体と、前記移動体を移動させる駆動機構部と、前記駆動機構部の作動を制御する制御装置とを備えた工作機械に設けられ、前記移動体と構造体とが相互に干渉するか否かを確認する装置において、
前記移動体の移動領域内を撮像可能に前記工作機械に配置された少なくとも1つの撮像部を備える画像生成手段であって、前記撮像部により前記移動体及び構造体を撮像して2次元画像データを生成する第1画像生成部と、前記撮像部により前記移動体の移動領域内を一定時間間隔で撮像して2次元画像データを生成する第2画像生成部とを有する画像生成手段と、
前記移動体の、前記撮像部により撮像可能な部分に配設された少なくとも1つの発光体と、
前記第1画像生成部によって生成された2次元画像データから、前記移動体の輪郭形状及び前記発光体の発光点並びに前記構造体の輪郭形状を抽出するとともに前記構造体の位置を認識し、前記抽出した移動体の輪郭形状と発光体の発光点とを含む移動体の輪郭形状データと、前記抽出した構造体の輪郭形状と前記認識した構造体の位置とを含む構造体の輪郭形状データとを設定する輪郭形状データ設定手段と、
前記輪郭形状データ設定手段によって設定された前記移動体及び構造体の輪郭形状データを記憶する輪郭形状データ記憶手段と、
前記第2画像生成部によって生成された2次元画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
前記画像データ記憶手段に格納された2次元画像データから前記発光体の発光点を抽出してその位置を認識した後、認識した発光点の位置と、前記輪郭形状データ記憶手段に格納された移動体及び構造体の輪郭形状データとを基に、前記移動体と構造体とが相互に干渉するか否かを確認して、干渉すると判断した場合にアラーム信号を前記制御装置に送信する干渉確認手段とを備えてなることを特徴とする干渉確認装置。
【請求項2】
前記移動体には、発光色の異なる少なくとも2つの前記発光体が設けられてなることを特徴とする請求項1記載の干渉確認装置。
【請求項3】
前記干渉確認手段は、
前記画像データ記憶手段に格納された2次元画像データであって最新のもの及びこの一定時間前のものから前記発光体の発光点をそれぞれ抽出してこれらの位置を認識する第1処理部と、
前記第1処理部により認識された発光点の現在及び一定時間前の位置と、前記撮像部の撮像間隔とを基にこの発光点の移動方向及び移動速度を算出する第2処理部と、
前記第1処理部により認識された発光点の現在位置、並びに前記第2処理部により算出された発光点の移動方向及び移動速度を基に、予め設定された時間経過後における前記発光点の位置を推定する第3処理部と、
前記第3処理部により推定された発光点の位置と、前記第1処理部により認識された発光点の現在位置と、前記輪郭形状データ記憶手段に格納された移動体及び構造体の輪郭形状データとを基に、前記発光点が前記現在位置から推定位置に移動するように前記移動体の輪郭形状を移動させて前記移動体及び構造体が干渉するか否かを確認する第4処理部とから構成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の干渉確認装置。
【請求項4】
前記干渉確認手段の第3処理部は、前記予め設定された時間経過後における前記発光点の位置に代え、前記制御装置が直ちに前記移動体の停止処理を行って前記移動体が停止したときの前記発光点の位置よりも前記移動方向において前記現在位置から離れた位置を前記移動体の停止までに前記発光点が到達する位置として推定するように構成されてなることを特徴とする請求項3記載の干渉確認装置。
【請求項5】
前記干渉確認手段の第3処理部は、
前記到達位置を推定するに当たり、前記発光点を前記現在位置及び移動速度から前記移動方向に前記移動体の最大加速度で加速させつつ移動させたときに前記撮像部の撮像間隔だけ時間が経過した後の移動速度及び移動位置を算出した後、前記発光点を前記算出した移動速度及び移動位置から前記移動方向に前記移動体の最大加速度で減速させつつ移動させたときに前記発光点が停止する位置を算出し、前記到達位置を推定するように構成されてなることを特徴とする請求項4記載の干渉確認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−148854(P2009−148854A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328857(P2007−328857)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】