説明

平面マイクロ波アンテナ、一次元マイクロ波アンテナ及び二次元マイクロ波アンテナアレイ

【課題】高指向性を有し、高周波数にも対応できるとともに広帯域性に優れた平面マイクロ波アンテナ、一次元マイクロ波アンテナ及び二次元マイクロ波アンテナアレイを提供する。
【解決手段】
平面マイクロ波アンテナAnは、誘電体からなる基板20の両面に、ダイポール21,22と該ダイポール21,22に給電するマイクロストリップライン23,24がプリントされている。基板20の両面のうち、第1の面に該ダイポール21と離間する導波器27及び反射器28がプリントされ、導波器27、反射器28及びダイポール21,22により平面八木宇田アンテナが構成される。基板20の第2の面には第2の面のマイクロストリップライン24に接続されるテーパ形バラン26及びテーパ形バラン26に接続される地導体25がプリントされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面マイクロ波アンテナ、一次元マイクロ波アンテナ及び二次元マイクロ波アンテナアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
二次元マイクロ波アンテナアレイとして、テーパースロットアンテナを用いた二次元ミリ波撮像素子が実用化されている(非特許文献1)。一方、平面八木宇田アンテナも二次元配列可能な素子として注目されている(非特許文献2)。
【0003】
前記テーパースロットアンテナは広帯域であるが、大きいため多数並べて撮像素子にしたとき空間分解能が悪い。実用例では、テーパースロットアンテナは波長の短いミリ波の撮像素子として用いられている。一方、平面八木宇田アンテナは理論的には半波長まで近接できるので空間分解能がよく、撮像素子を小型化できる可能性がある。
【0004】
従来は、平面八木宇田アンテナは、平衡系のアンテナ部分から非平衡系の増幅回路部分を結合するために、図2に示すように、遅延線タイプのバラン13を用いている。これは非平衡系の心線を2つに分け、一方を半波長遅延させて放射器ダイポール12の片側半分に結合することで、位相を反転させるものである。なお、図2において、基板10の表面に導波器11、及びマイクロストリップライン14が設けられ、基板10の裏面には反射器15が設けられている。
【非特許文献1】ケイ・シグフリッド・ユングヴェソン(K. Sigfrid Yngvesson)他(et al.)、「ザ テーパード スロット アンテナ − ア ニュー インテグレーテッド エレメント フォー ミリメータ−ウェーブ アプリケーションズ(The Tapered Slot Antenna - A New Integrated Element for Millimeter-wave Applications)」、the IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, vol.37, pp.365-374 (1989)
【非特許文献2】ダヴリュー・アール・デール(W.R.Deal)、他(et al.)、「ア ニュー クウォジ−ヤギ アンテナ フォー プラナー アクティブ アンテナ アレイ(A new quasi-Yagi antenna for planar active antenna array)」、the IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, vol.48, pp.910-918 (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の平面八木宇田アンテナは、周波数が高くなると、波長が短くなることから、遅延線タイプのバランの線長が線幅より短くなるなど実現不可能となる。また、マッチング周波数から外れると、放射器ダイポール12の位相がπからずれるので、放射方向が正面を向かないという欠点を有する。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の技術の問題点を解消して、高指向性を有し、高周波数にも対応できるとともに広帯域性に優れた平面マイクロ波アンテナ、一次元マイクロ波アンテナ及び二次元マイクロ波アンテナアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、誘電体からなる基板の両面に、ダイポールと該ダイポールに給電する給電線がプリントされ、前記基板の両面のうち、少なくとも一方の面に前記ダイポールと離間する導波器がプリントされ、反射器が前記基板の面あるいは別導体で設置され、前記導波器、反射器及びダイポールにより平面八木宇田アンテナが構成され、前記基板の他方の面には、該他方の面の給電線に接続されるテーパ形バラン及び該テーパ形バランに接続される地導体がプリントされていることを特徴とする平面マイクロ波アンテナを要旨とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記基板には、前記ダイポールで受信した電磁波を選択処理する処理回路が設けられていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2において、前記処理回路が、前記ダイポールで受信したマイクロ波及び局部発振周波数を有する信号を混合することで中間周波を発生するミクサを含むことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2において、前記処理回路が、前記ミクサへのバイアス回路を含むことを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項3において、前記処理回路が、前記ミクサで得られた中間周波の増幅回路を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項3において、前記処理回路が、前記ミクサで得られた中間周波の周波数フィルタ回路を含むことを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項3において、前記処理回路が、前記ミクサで得られた中間周波のうち所定の中間周波を通過する周波数フィルタ回路と、前記周波数フィルタ回路から出力された中間周波を増幅する中間周波増幅回路を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項7のうちいずれか1項の平面マイクロ波アンテナが、共通の基板上に複数個並列に配置されていることを特徴とする一次元マイクロ波アンテナを要旨とするものである。
【0012】
請求項9の発明は、請求項8の一次元マイクロ波アンテナが、複数個互いに重なるように配置されていることを特徴とする二次元マイクロ波アンテナアレイを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、高指向性を有し、高周波数にも対応できるとともに広帯域性に優れた平面マイクロ波アンテナを提供できる。
請求項2の発明によれば、基板にダイポールで受信した電磁波を選択処理する処理回路が設けられていることにより、電磁波を選択処理することができる平面マイクロ波アンテナを提供できる。
【0014】
請求項3の発明によれば、処理回路が、ダイポールで受信したマイクロ波及び局部発振周波数を有する信号をミクサで混合することで中間周波を発生することにより、電磁波を選択処理することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、前記局部発振周波数のパワーが弱い場合でも、処理回路が、前記ミクサでの最適な動作点で前記信号の混合をすることができる。
請求項5の発明によれば、選択処理された中間周波を、処理回路に含まれたIF増幅回路により増幅できる。
【0016】
請求項6の発明によれば、処理回路に含まれる周波数フィルタ回路が、ミクサで得られた中間周波のうち所定の中間周波を通過することにより、電磁波を選択処理することができる。
【0017】
請求項7の発明によれば、処理回路が、同ミクサで混合された信号のうち所定の中間周波を通過する周波数フィルタ回路と、同周波数フィルタ回路から出力された中間周波を増幅する中間周波増幅回路を含むことにより、電磁波を選択処理することができる。
【0018】
請求項8の発明によれば、高指向性を有し、高周波数にも対応できるとともに広帯域性に優れた一次元マイクロ波アンテナを提供できる。
請求項9の発明によれば、高指向性を有し、高周波数にも対応できるとともに広帯域性に優れた二次元マイクロ波アンテナアレイを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の平面マイクロ波アンテナを具体化した一実施形態を図1,3、4を参照して説明する。
図1に示すように、平面マイクロ波アンテナAnは、誘電体からなる基板20の第1面及び第2面に、ダイポール21,22と、ダイポール21,22に給電する平行なマイクロストリップライン23,24がプリントされている。マイクロストリップライン23,24は給電線に相当する。ダイポール21,22の合計長さは、受信したい電磁波の波長λの約1/2に設定されている。ここで、第1面と第2面は、基板20の表裏面に相当する面である。基板20は、例えば、テフロン(登録商標)、アルミナ、エポキシ等にて構成されている。基板20の第2面において、長手方向において中央から基端部寄りの領域全面には地導体25がプリントされている。ダイポール22の給電点は、地導体25に対して、マイクロストリップライン24及び第2面にプリントされて地導体25から延出されたテーパ形バラン26を介して電気的に接続されている。前記テーパ形バラン26は、図1に示すように、直線状に延びるマイクロストリップライン23を基準として線対称状に形成されている。
【0020】
基板20の第1面及び第2面には、ダイポール21と離間して、基板20の先端には導波器27がプリントされている。又、基板20の第1面及び第2面において、ダイポール21よりも基板20の基端側には一対の反射器28が、それぞれプリントされている。なお、説明の便宜上、図1では片方の面、すなわち、第1面側の導波器27と反射器28のみが図示されている。導波器27は、ダイポール21,22の合計長さ(すなわち、λ/2)よりも若干短く設定されている。一方、一対の反射器28は、マイクロストリップライン23とは離間して配置され、その合計長さは、ダイポール21,22の合計長さ(すなわち、λ/2)より長くなるように設定されている。又、導波器27とダイポール21の離間距離、及び反射器28とダイポール21の離間距離は、共に約λ/4に設定されている。上記のように構成された平面マイクロ波アンテナAnの地導体25は、図示しない同軸ケーブルの網線に接続され、マイクロストリップライン23は該同軸ケーブルの芯線に接続される。基板20に設けられたダイポール21、導波器27、及び反射器28とにより、平面八木宇田アンテナが構成されている。
【0021】
なお、反射器を基板20に直接設ける代わりに、基板20外の別の導体(すなわち、別導体)で立体的な反射鏡を構成し、基板に近接して図1に示す反射器28の位置に設置して反射器としても良い。
【0022】
ここで、本発明の平面マイクロ波アンテナと、従来型平面マイクロ波アンテナ(非特許文献2)との放射特性の比較を図3、図4に示す。すなわち、図3、図4は、マイクロウェーブ オフィス(AWR(Applied Wave Research)社製)でシミュレーションした結果であり、チューニングがずれた場合の放射特性を表わしている。シミュレーションの条件は下記の通りである。
【0023】
なお、シミュレーションした平面マイクロ波アンテナAn1は、図に示すように、導波器27が3個設けられた平面マイクロ波アンテナであって、導波器27が3個設けられている以外の構成は、図1の平面マイクロ波アンテナAnと同様に構成されている。
【0024】
図5には、シミュレーションで使用した本発明の平面マイクロ波アンテナAn1の寸法が示されており、同図において、A〜Mは、下記の長さを有している。
A;35.5mm、B;10.0mm、C;7.0mm、D;7.4mm、E;1.0mm、F;6.5mm、G;5.3mm、H;3.7mm、I;0.4mm、J;5.3mm、K;2.9mm、L;2.6mm、M;0.8mm
又、図6には、シミュレーションで使用した従来型平面マイクロ波アンテナにおいて、a〜uは下記の長さを有している。
【0025】
a;2.3mm、b;3.3mm、c;0.8mm、d;0.4mm、e;0.3mm、f;4.2mm、g;0.8mm、h;3.5mm、i;1.1mm、j;0.8mm、k;0.8mm、l;1.0mm、m;0.8mm、n;0.85mm、o;4.5mm、p;1.1mm、q;2.9mm、r;2.1mm、s;0.8mm、t;1.1mm、u;1.6mm
上記のシミュレーションの結果から、遅延線タイプのバランを有する平面八木宇田アンテナは、チューニング(線幅や線長)が正しい値からわずかにずれた場合、放射方向が図4に示すように正面方向から外れるのに対して、本発明の具体的な実施例では広帯域にわたって正面方向を向くという素直な放射特性をもつ(図3参照)。
【0026】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 本実施形態の平面マイクロ波アンテナAnは、誘電体からなる基板20の両面に、ダイポール21,22と該ダイポール21,22に給電するマイクロストリップライン23,24(給電線)がプリントされている。又、基板20の両面のうち、第1の面に前記ダイポール21と離間する導波器27及び反射器28がプリントされて、導波器27、反射器28及びダイポール21,22により平面八木宇田アンテナが構成されている。そして、基板20の第2の面には、第2の面のマイクロストリップライン24(給電線)に接続されるテーパ形バラン26及びテーパ形バラン26に接続される地導体25がプリントされている。この結果、高指向性を有し、高周波数にも対応できるとともに広帯域性に優れた平面マイクロ波アンテナとすることができる。
【0027】
(平面マイクロ波アンテナAnの他の実施形態)
次に、平面マイクロ波アンテナAnの他の実施形態について説明する。
平面マイクロ波アンテナAnを受信機とする場合、図7に示すようにマイクロストリップライン23に対し、電磁波(マイクロ波)を受信して特定の電磁波(マイクロ波)を選択処理するための処理回路30が接続される。処理回路30は、マイクロストリップライン23に接続されたミクサ32と、ミクサ32にバイアスを付与するバイアス回路32aと、ミクサ32に接続された周波数フィルタ回路としてのIF選択回路34と、IF選択回路34に接続されたIF増幅回路36を含む。図7の説明では、説明の便宜上、マイクロストリップライン23上に設けた構成では図示されていないが、この処理回路30は、半導体やフィルタ、コンデンサ、インダクタ、抵抗器などで構成して、マイクロストリップライン23上(すなわち、基板20上)に設けられる。
【0028】
上記のように構成された平面マイクロ波アンテナAnは、図示しない局部発振器が発信した局部発振周波数の信号と電磁波(マイクロ波)を、ともに平面マイクロ波アンテナAnにより受信し、ミクサ32にて混合して周波数変換する。バイアス回路32aは、ミクサ32にバイアスを付与することにより、局部発振周波数のパワーが弱い場合でも、ミクサ32での最適な動作点で前記信号の混合をする。IF選択回路34は、周波数変換された信号のうち、必要な中間周波(すなわち、所定の中間周波)を選択(濾は)する。IF選択回路34は、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、或いはハイパスフィルタのうちいずれかあるいはそれらの組み合わせで構成される。
【0029】
IF増幅回路36は、得られた中間周波を増幅して図示しない同軸ケーブルの芯線を介して出力する。
さて、上記のように構成された実施形態では、下記の効果を奏する。
【0030】
(1) 本実施形態の平面マイクロ波アンテナAnの基板20に、ダイポール21,22で受信した電磁波(マイクロ波)を選択処理する処理回路30が設けられていることにより、電磁波(マイクロ波)を選択処理することができる平面マイクロ波アンテナAnを提供できる。 (2) 本実施形態の平面マイクロ波アンテナAnの処理回路30は、ダイポールで受信したマイクロ波及び局部発振周波数を有する信号をミクサ32で混合することで中間周波を発生することにより、電磁波を選択処理することができる。
【0031】
(3) 本実施形態の平面マイクロ波アンテナAnの処理回路30は、ミクサ32へのバイアスを付与するバイアス回路により局部発振周波数のパワーが弱い場合でも、処理回路が、前記ミクサでの最適な動作点で前記信号の混合をすることができる。
【0032】
(4) 本実施形態の平面マイクロ波アンテナAnの処理回路30では、選択処理された中間周波を、処理回路30に含まれたIF増幅回路36により増幅できる。
(5) 本実施形態の平面マイクロ波アンテナAnの処理回路30に含まれるIF選択回路34が、ミクサ32で得られた中間周波のうち所定の中間周波を通過することにより、電磁波を選択処理することができる。
【0033】
(6) 本実施形態では、処理回路30がダイポール21,22で受信したマイクロ波及び局部発振周波数を有する信号を混合するミクサ32、混合された信号のうち所定の中間周波を通過するIF選択回路34と、前記中間周波を増幅するIF増幅回路36(中間周波増幅回路)を含むことにより、マイクロ波を選択処理することができる。
【0034】
(他の実施形態)
次に複数の平面マイクロ波アンテナAnを使用して一次元マイクロ波アンテナBn及び二次元マイクロ波アンテナアレイCnに構成した実施形態を図8を参照して説明する。なお、前記各実施形態で説明した各構成に相当する構成については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0035】
一次元マイクロ波アンテナBnは、共通の基板20に複数の平面マイクロ波アンテナAnが並列に配置されることにより構成されている。互いに隣接する平面マイクロ波アンテナAnの地導体25同士は接続されている。又、互いに隣接する平面マイクロ波アンテナAnの反射器28(図8において符号29も付されている)の長さは、受信したい電磁波の波長λよりも若干長くされ、基板10の幅方向(図8において、上下方向)の両側部に位置する反射器28は、受信したい電磁波の波長λの1/2よりも長く設定されている。
【0036】
又、図8に示すように上記のように構成された一次元マイクロ波アンテナBnが複数個互いに所定のスペースを空けて重なり合うように、すなわち、平面マイクロ波アンテナAnが並列にして配置された方向(並列方向)とは直交する方向に配置されることにより、二次元マイクロ波アンテナアレイCnが構成されている。
【0037】
二次元マイクロ波アンテナアレイCnの前方には、レンズ40などの結像光学手段が配置することが好ましい。前記レンズ40としては、例えば、テフロン(登録商標)レンズを挙げることができる。
【0038】
このことにより、物体からの電磁波(マイクロ波)RFを結像光学手段により、二次元マイクロ波アンテナアレイCn上に結像される。
又、結像光学手段の前方には、ハーフミラー50が配置されることが好ましい。ハーフミラー50は、電磁波(マイクロ波)RFを透過させて結像光学手段に向かわさせるとともに、局部発振器が発信した局部発振周波数の信号LOを反射させて、光学的に局部発振周波数の信号LOと電磁波(マイクロ波)RFとが混合されて前記結像光学手段に指向させる。このように構成することにより、二次元マイクロ波アンテナアレイCnに結像された電磁波(マイクロ波)RFと局部発振周波数の信号LOは、二次元マイクロ波アンテナアレイCnを構成する各平面マイクロ波アンテナAnに受信されて、処理回路30により処理することができる。
【0039】
あるいは、局部発振周波数の信号LOをマイクロストリップラインを用いて基板上でミクサに供給しても良い。
このように、二次元マイクロ波アンテナアレイCnとすることにより、マイクロ波イメージングが可能となる。マイクロ波イメージングは、非破壊検査、医療診断、定温に感度のある温度イメージングなど幅広い分野があり、この二次元マイクロ波アンテナアレイCnの適用が可能である。
【0040】
(測定結果)
以下には、二次元マイクロ波アンテナアレイによりマイクロ波を測定した結果を説明する。ここでの二次元マイクロ波アンテナアレイは、図8で示す二次元マイクロ波アンテナアレイCnの構成中、各平面マイクロ波アンテナAnの導波器27を3素子にして、アンテナゲインを上げた構成とした。又、受信機としての処理回路30は、20GHzのマイクロ波受信ができる構成とした。この二次元マイクロ波アンテナアレイで、TPE-RXプラズマによって反射されたマイクロ波、すなわち、反射マイクロ波信号波形を測定した。
【0041】
図9は前記二次元マイクロ波アンテナアレイで測定した産業技術総合研究所のRFP装置TPE-RXプラズマからの反射マイクロ波信号波形が示されている。同図によれば、2つの異なったチャンネルでの反射マイクロ波信号は、小刻みな波形(短い波長の波形)と大きな波形(長い波長を有する波形)が測定されており、大きな波形についてほぼ同位相であることが分かる。
【0042】
なお、RFP装置は、コンデンサに充電した電気を瞬時に放電して生成するので、大変に電磁雑音が多いが、図9で示す同位相のきれいな信号はこのような電磁雑音の多い環境であっても、具体化した二次元マイクロ波アンテナアレイが使用可能であることが示されている。
【0043】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
○ 処理回路30は、前記実施形態では、マイクロストリップライン23に接続されたミクサ32と、ミクサ32に接続されたバイアス回路32a及びIF選択回路34と、IF選択回路34に接続されたIF増幅回路36を含むようにした。この構成に、さらに、検波器やビデオアンプを組み込みしてDC出力する処理回路とするようにしてもよい。
【0044】
○ 前記実施形態では、導波器が基板20の両面(すなわち、第1面と第2面)に設けられていたが、導波器を基板20の第1面又は第2面のうち一方の面に導波器が設けられていても良い。
【0045】
○ 前記実施形態では、平面マイクロ波アンテナAnの導波器27の数は限定されるものではなく、適宜複数個設けても良い。このように導波器27を複数個設けると、アンテナゲイン(受信感度)を上げることができる。
【0046】
○ 前記実施形態では、反射器28は基板20の面上に設けられていたが、基板20を並列に配置するための金属スペーサーで代用しても良い。この場合、前記金属スペーサーのダイポール21側の面を整形することで感度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の平面マイクロ波アンテナAnの概略図。
【図2】従来型の平面八木宇田アンテナの概略図。
【図3】本実施形態の具体例の平面八木宇田アンテナにおいて、チューニングがずれた場合の放射特性図。
【図4】従来型の平面八木宇田アンテナにおいて、チューニングがずれた場合の放射特性図。
【図5】シミュレートのための具体例の平面八木宇田アンテナの概略図。
【図6】シミュレートのための従来例の平面八木宇田アンテナの概略図。
【図7】平面マイクロ波アンテナAnの処理回路の電気ブロック図。
【図8】二次元マイクロ波アンテナアレイCnの概略図。
【図9】本発明を具体化した二次元マイクロ波アンテナアレイCnで測定した、TRE-RXプラズマからの反射マイクロ波信号波形図。
【符号の説明】
【0048】
20…基板、21,22…ダイポール、
23,24…マイクロストリップライン(給電線)、25…地導体、
26…テーパ形バラン、27…導波器、28…反射器、30…処理回路、
32…ミクサ、32a…バイアス回路、
34…IF選択回路(周波数フィルタ回路)、
36…IF増幅回路(中間周波増幅回路)、
An,An1…平面マイクロ波アンテナ、
Bn…一次元マイクロ波アンテナ、
Cn…二次元マイクロ波アンテナアレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体からなる基板の両面に、ダイポールと該ダイポールに給電する給電線がプリントされ、
前記基板の両面のうち、少なくとも一方の面に前記ダイポールと離間する導波器がプリントされ、反射器が前記基板の面あるいは別導体で設置されて、前記導波器、反射器及びダイポールにより平面八木宇田アンテナが構成され、
前記基板の他方の面には、該他方の面の給電線に接続されるテーパ形バラン及び該テーパ形バランに接続される地導体がプリントされていることを特徴とする平面マイクロ波アンテナ。
【請求項2】
前記基板には、前記ダイポールで受信した電磁波を選択処理する処理回路が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の平面マイクロ波アンテナ。
【請求項3】
前記処理回路が、前記ダイポールで受信したマイクロ波及び局部発振周波数を有する信号を混合することで中間周波を発生するミクサを含むことを特徴とする請求項2に記載の平面マイクロ波アンテナ。
【請求項4】
前記処理回路が、ミクサのバイアス回路を含むことを特徴とする請求項2に記載の平面マイクロ波アンテナ。
【請求項5】
前記処理回路が、前記ミクサで得られた中間周波の増幅回路を含むことを特徴とする請求項3に記載の平面マイクロ波アンテナ。
【請求項6】
前記処理回路が、前記ミクサで得られた中間周波の周波数フィルタ回路を含むことを特徴とする請求項3に記載の平面マイクロ波アンテナ。
【請求項7】
前記処理回路が、前記ミクサで混合された中間周波のうち所定の中間周波を通過する周波数フィルタ回路と、前記周波数フィルタ回路から出力された中間周波を増幅する中間周波増幅回路を含むことを特徴とする請求項3に記載の平面マイクロ波アンテナ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうちいずれか1項に記載の平面マイクロ波アンテナが、共通の基板上に複数個並列に配置されていることを特徴とする一次元マイクロ波アンテナ。
【請求項9】
請求項8の一次元マイクロ波アンテナが、複数個互いに重なるように配置されていることを特徴とする二次元マイクロ波アンテナアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−200719(P2009−200719A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39009(P2008−39009)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】