説明

座や背凭れ、パーティション等として機能する構造物の製造方法およびその方法により製造された構造物

本発明は、膜部材とその周縁の全部または一部を保持する膜支持部材とから成る構造物において、加熱処理により膜部材に張力を付与する際に、膜支持部材や膜部材の機能や外観を損ねてしまうことを防止する方法に関し、膜部材(2)として熱収縮性を有する弾性素材を用い、膜部材(2)を無張力下あるいは構造物として必要な張力より弱い張力で膜支持部材(3)に固定し、その後に膜支持部材(3)における温度を当該膜支持部材(3)の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら膜部材(2)を加熱し、膜部材(2)を熱収縮させて該膜部材(2)に構造物として必要な弾力性を発揮させる張力を与えるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、構造物およびその製造方法に関する。更に詳述すると、本発明は、膜部材と該膜部材が面を形成するようにその周縁の全部または一部を保持する膜支持部材とを備え、座や背凭れ、パーティション等として機能する面を有する構造物およびその製造方法に関する。
技術用語
本明細書において”膜部材”とは、実施構造物(製品)に求められる構造物としての強度、弾力性を発揮させる張力を生じる柔軟性あるいは全ての素材を含むものであり、例えばメッシュあるいはフィルム若しくは布地、不織布等が含まれる。また、本明細書において、”熱収縮性”とは、加熱されることで収縮する性質を意味し、少なくとも目的の面が形成されると共に構造物に要求される弾力性を発揮させる程度の張力を生じさせる収縮を伴うものを含む。
【背景技術】
特開2001−78852には、メッシュシートより成る膜部材とこの膜部材の周縁を保持する枠状の膜支持部材103とを備え、椅子のフレームに組み付けられて椅子の座として機能する構造物101の製造方法が開示されている。この製造方法では、Fig.36に示すように、熱収縮性を有する膜部材102を無張力下あるいは構造物として必要な張力より弱い張力で膜支持部材103に固定してから、膜部材102に対して両面から加熱したアルミ板112を押し当ててプレスを行い、これにより膜部材102の加熱を行って、膜部材102を収縮させて構造物101として必要な弾力性を発揮させる張力を与え、平坦な座面を形成するようにしている。
しかしながら、この製法では、加熱したアルミ板112を膜部材102に直接押し当てることによって膜部材102を加熱しているので、膜部材102が溶けてしまったり、あるいは膜部材102のメッシュ模様に斑(むら)を生じさせてしまう等の椅子の構造物としての性能や外観が損なわれてしまう問題がある。
また、アルミ板112の接近あるいは接触によって、膜支持部材103も同時に加熱されてしまうことも起こる。このため膜支持部材103が溶け又は変形して、椅子構造物としての強度や性能、外観が損なわれてしまう問題がある。特に膜支持部材103の素材として利用されることの多いポリプロピレン等の樹脂は、比較的低温域の熱で軟化することから変形し易い。
また、人間工学上あるいはや美観上の問題等から座面や背凭れ面などを曲面とすることが求められる場合があるが、従来の膜部材102は熱収縮によって四方八方にほぼ均等に張られるため、例えば枠状の膜支持部材103を湾曲した形状とするだけでは、膜部材102を意図した曲面に張ることは難しい。
【発明の開示】
本発明は、膜部材に必要な張力を付与する加熱処理時に、膜支持部材や膜部材の機能や外観を損ねてしまうことのない構造物の製造方法並びに構造物を提供することを目的とする。また、本発明は、膜部材を意図した曲面形状にできる構造物の製造方法並びに構造物を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために請求の範囲第1項記載の発明は、膜部材と該膜部材が面を形成するようにその周縁の全部または一部を保持する膜支持部材とを備える構造物の製造方法において、膜部材として熱収縮性を有する弾性素材を用い、膜部材を無張力下あるいは構造物として必要な張力より弱い張力で膜支持部材に固定し、その後に膜支持部材における温度を当該膜支持部材の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら膜部材を加熱し、膜部材を熱収縮させて該膜部材に構造物として必要な弾力性を発揮させる張力を与えるようにしている。したがって、膜支持部材を溶融させることなく膜部材を熱収縮させるように加熱するので、膜部材への加熱時に膜支持部材が溶けてしまったり変形してしまうことを防止でき、構造物としての性能例えば強度や外観が損なわれてしまうことを防止できる。
ここで、膜部材の加熱は膜部材から離れた位置に配置された加熱用熱源によって行うことが好ましい。この場合、膜部材が加熱用熱源に接触することがなく、膜部材が溶けてしまうことを防止できる。特に膜部材がメッシュである場合にはメッシュ模様に斑(むら)が生じてしまうことを防止できる。従って、構造物としての性能例えば強度や外観が損なわれてしまうことを防止できる。
また、膜部材の加熱は膜部材の少なくとも一方の面に膜部材から離して配置され、かつ熱収縮後の前記膜部材と平行な加熱面を有する加熱板により行なうことが好ましい。この場合には、膜部材から離れた位置から加熱板により加熱が行なわれ、膜部材が加熱板に接触することがなく、膜部材が溶けてしまうことを防止でき、膜部材がメッシュである場合にはメッシュ模様に斑(むら)が生じてしまうことを防止でき、構造物としての性能例えば強度や外観が損なわれてしまうことを防止できる。
また、膜部材の加熱は膜支持部材から離して配置された加熱板により行うことがより好ましい。この場合には、加熱板と膜支持部材との間に生じる空隙によって膜支持部材に加熱板の熱が伝わり難くなり、主として膜部材のみを加熱でき、膜支持部材における温度は溶融温度未満としながら膜部材が熱収縮するように加熱できる。
また、膜部材の加熱は膜部材の収縮変形の進行に従って加熱板を膜部材に向かって移動させて行なうことが好ましい。この場合、加熱板と膜部材との接触をさけながらもこれらの間の距離をなるべく近づけて、短時間で膜部材に必要な張力を付与できる。
また、膜部材の加熱を行う加熱板は、周縁部に膜部材に向かって突出する遮熱部によって囲われていることが好ましい。この場合には、遮熱部によって自然対流熱伝達並びに放射伝熱を防ぎ、加熱板の熱が膜支持部材に伝わってしまうことを防いで主として膜部材を加熱でき、膜支持部材における温度が溶融温度未満としながら膜部材が熱収縮するように加熱できる。さらに、加熱板の周縁部から膜支持部材側に熱が逃げてしまうことを抑えられるので、即ち加熱板の熱損失を低減できるので、効率的に膜部材の加熱が行える。さらに、加熱板の温度を均一にでき、膜部材を均一に加熱できる。さらに、遮熱部は、加熱板が膜部材に触れてしまうことを防止するスペーサとしての役割も果たす。
また、膜部材と膜支持部材とは、膜部材が膜支持部材を射出成形する型内に無張力下あるいは構造物として必要な張力より弱い張力で配置されると共に膜部材の縁が膜支持部材を成形するキャビティ内に配置された状態でキャビティ内に熱可塑性樹脂を射出するインサート成形により、膜部材を膜支持部材に固定するようにしている。したがって、インサート成形の間に膜部材を張った状態に維持したり、膜部材を型に取り付けるときに膜部材に予張力を与える必要がないので、張力付与装置を設ける必要が無く製造装置を簡素化することができる。また、膜部材の縁は膜支持部材と一体化され、はみ出ることがないので、膜支持部材から膜部材を切り取るトリミング作業が不要になり、作業工程数を削減できるし、構造物を製造するのに必要な膜部材の量を減らすことができる。さらに、膜部材の縁が膜支持部材に一体化されるので、構造物としての外観を向上することができる。ここで、膜支持部材を形成する熱可塑性樹脂が収縮することで膜部材は弛み易いが、この弛みを膜部材を加熱することで除去して、膜部材に張力を持たせることができる。
また、この発明は、インサート成形により一体化された膜部材と膜支持部材から成る構造物即ちインサート成形物を、離型後に加熱炉内へ導入し、膜部材を加熱して熱収縮させるようにしている。したがって、膜部材を加熱炉で加熱することにより、膜部材を均一な温度で加熱でき、膜部材を均一に収縮させ、均一に張力を付与することが可能となる。さらに、膜部材に対して間接的に熱を加えるため、換言すれば加熱した部材を直接膜部材に押し付けることをしないため、膜部材が溶けてしまう或いはメッシュ模様に斑(むら)が生じてしまう、といったことが防止される。さらに、大型の加熱炉を用いることで複数の構造物を一度に加熱することも可能となり、構造物の大量生産も可能となる。
また、膜支持部材の融点は加熱処理される膜部材の融点に比べてかなり低くても良く、膜部材の加熱処理温度よりも低い場合もある。しかし、膜支持部材として膜部材の熱収縮温度よりも高い融点の熱可塑性樹脂、例えば膜支持部材としてポリエステル、膜部材としてエラストマ性ポリエステルを用いることもある。この場合には、膜支持部材を溶融温度よりも低温の状態に維持するための手段を必要としないため、膜部材と膜支持部材とが一体化された構造物を加熱炉に連続的に装入して膜部材の加熱処理をしても、膜支持部材における温度は溶融温度未満であり、膜支持部材が溶けてしまう又は変形してしまうことを防止できるので、加熱処理作業が効率的に行な得る。
また、本発明は、膜部材と該膜部材が面を形成するようにその周縁の全部または一部を保持する膜支持部材とを備える構造物の製造方法において、膜部材として同一加熱温度下での熱収縮量が異なる少なくとも2種の弾性素材を組み合わせたものを用い、膜部材を無張力下あるいは構造物として必要な張力より弱い張力で膜支持部材に固定し、その後に膜部材を加熱し、膜部材を熱収縮させて該膜部材に構造物として必要な弾力性を発揮させる張力を与えると共に膜部材の熱収縮量の差によって張力の分布を不均一にして面を非平坦例えば曲面の三次元的な面を形成するようにしている。したがって、膜部材の熱収縮量の差を利用して膜部材を意図した曲面形状とできる。これにより、座面や背凭れ面などを人間工学や美観上の問題等から優れた形状とすることができ、またデザインの自由度を高めることができ、構造物としての外観や性能を向上することができる。
ここで、膜部材は曲線を描くべき方向の熱収縮量よりも直線を描くべき方向の熱収縮量が大きくなるようにしても良い。この場合には、熱収縮量の大きい弾性素材は直線を描き、当該直線を描く弾性素材に規制されるようにして、熱収縮量の小さい弾性素材は曲線を描き、この結果、膜部材が曲面を形成するようになる。
また、以上の製造方法により製造された構造物は、膜部材に必要な張力を付与する加熱処理時に、膜支持部材や膜部材の機能や外観を損ねてしまうことのない構造物を提供することができる。また、膜部材が人間工学や美観上の点から優れた曲面に張られた構造物を提供することができる。この構造物は、例えば一般用椅子、事務用椅子、作業用椅子、看護用椅子等の椅子全般、さらには自転車、二輪自動車、四輪自動車、バス等の車輌の座、背凭れ、肘パネル、ヘッドレスト等、さらにはパーティションやパネルとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
Fig.1A〜Fig.1Cは本発明の構造物の製造手順の一例を説明する縦断面図であり、Fig.1Aは型に膜部材を設置した状態、Fig.1Bは膜部材に加熱処理を施す状態、Fig.1Cは加熱処理が完了した状態をそれぞれ示す。Fig.2は本発明の構造物を椅子の座として実施した例を示す一部断面斜視図である。Fig.3は膜部材を加熱する加熱手段の一例を示すもので、加熱板上の熱源の配置例を示す概略平面図である。Fig.4は断熱性治具を用いて膜部材を主として加熱する例を示す概略中央断面側面図である。Fig.5は断熱性治具を用いて膜部材を主として加熱するための他の例を示す概略中央断面側面図である。Fig.6は膜部材を主として加熱するための更に他の構成例を示す概略中央断面側面図である。Fig.7A〜7Cは本発明の第2の実施形態に係る構造物の製造手順の一例を示す縦断面側面図であり、Fig.7Aは型に膜部材を設置した状態、Fig.7Bは膜部材に加熱処理を施す状態、Fig.7Cは構造物が完成した状態をそれぞれ示す。Fig.8は本発明の第3の実施形態に係る構造物の一例を示す斜視図である。Fig.9A〜9Bは同一加熱温度下での熱収縮量が異なる2種の弾性素材を組み合わせて構成される膜部材の一例を示し、Fig.9Aは縦方向にポリエステル糸、横方向にエラストマー糸を用いた例を示し、Fig.9Bは縦方向にエラストマー糸、横方向にポリエステル糸を用いた例を示す。Fig.10A〜10Bは同一加熱温度下での熱収縮量が異なる2種の弾性素材を組み合わせて構成される膜部材の他の例を示し、Fig.10Aは縦方向にエラストマー糸、横方向にエラストマー糸とポリエステル糸とを交互に配置した例を示し、Fig.10Bは縦方向にポリエステル糸、横方向にエラストマー糸とポリエステル糸とを交互に配置した例を示す。Fig.11は縦糸と横糸の配置密度の関係を示す図で、Fig.11Aは縦糸と横糸の密度を同じとした場合の例を示し、Fig.11Bは横糸の密度を縦糸の密度よりも大とした場合の例を示す。Fig.12は膜部材及び膜支持部材固定手法の他の形態を示す平面図で、膜部材の一部の図示を省略している。Fig.13はFig.12の概略中央断面側面図である。Fig.14は構造物を椅子の座に適用した場合の椅子のフレームへ取り付ける状態を示す説明図である。Fig.15A〜15Cはカバー部材の製造手順を示す縦断面側面図であり、Fig.15Aは型に構造物を取り付ける状態、Fig.15Bは樹脂を射出した状態、Fig.15Cはカバー部材を一体化した構造物が完成した状態をそれぞれ示す。Fig.16A〜16Bは構造物のゲート位置の一例を示す平面図であり、Fig.16Aは膜支持部材のゲート位置を、Fig.16Bはカバー部材のゲート位置をそれぞれ示す。Fig.17は他の断面形状の構造物の例を示す横断面図である。Fig.18A〜18Cは構造物の製造手順の他の例を示す縦断面図であり、Fig.18Aは型に膜部材をセットした状態、Fig.18Bは樹脂を射出して膜支持部材を成形した状態、Fig.18Cは上型を取り外した状態をそれぞれ示す。Fig.19A〜19CはFig.18A〜18Cの工程で成形された構造物にカバー部材を連続して射出成形する工程を示す図で、Fig.19Aはカバー部材用の上型を取り付ける状態、Fig.19Bは樹脂を射出してカバー部材を成形した状態、Fig.19Cは型から取り出したカバー部材を一体化した構造物の縦断面図である。Fig.20A〜20Bは構造物の製造手順の他の例を示す縦断面図であり、Fig.20Aは膜支持部材をインサート成形した状態、Fig.20Bは二色射出成形によってカバー部材を成形する状態をそれぞれ示す。Fig.21は膜支持部材にカバー部材を接着する様子を示す説明図である。Fig.22は断面楕円形状の膜支持部材を成形する型の縦断面図である。Fig.23はL形膜支持部材からなる構造物と椅子の脚フレームとの取付け関係を示す縦断面図である。Fig.24はキャビティ内における膜部材と射出樹脂との関係の一例を示す説明図である。Fig.25はキャビティ内における膜部材と射出樹脂との関係の他の例を示す説明図である。Fig.26は逃げ部を有する膜部材を示す斜視図である。Fig.27はFig.26の膜部材と射出樹脂との関係の一例を示す説明図である。Fig.28はキャビティ内におけるFig.26の膜部材と射出樹脂との関係の他の例を示す説明図である。Fig.29は逃げ部および流通孔を有する膜部材を示す斜視図である。Fig.30は更に他の形状の型に膜部材を取り付けた状態を示す説明図である。Fig.31は他の形状の構造物の一例を示す縦断面側面図である。Fig.32は膜部材と膜支持部材との別の固定構造を示す縦断面図である。Fig.33は別の形状の構造物を示す縦断面側面図である。Fig.34は更に他の形状の構造物を示す縦断面側面図である。Fig.35A〜35Bは更に別の形状の構造物を示す縦断面側面図であり、Fig.35Aは組み合わせ前、Fig.35Bは組み合わせ後を示す。Fig.36は従来の構造物の製造方法を示す縦断面側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
Fig.1に本発明方法を椅子の座の製造に適用した第1の実施形態を示す。この椅子の座を構成する構造物1は、例えばFig.2に示すように膜部材2と、この膜部材2が面を形成するように膜部材2の周縁の一部又は全部を保持する膜支持部材3とから成り、椅子のフレーム例えば脚フレーム等に組み付けられて椅子の構成部品例えば座として機能するものである。この構造物1は、膜部材2を無張力下あるいは構造物1として必要な張力より弱い張力で膜支持部材3に固定した後に膜部材2のみを加熱することによって、膜支持部材3における温度を当該膜支持部材3の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら膜部材2を熱収縮する程度に加熱し、膜部材2を熱収縮させて該膜部材2に構造物1として必要な弾力性を発揮させる張力を与えるようにしている。
この本実施形態では、膜支持部材3はそれ自体で膜部材2の張力を支持できる剛性を有しているものとしている。即ち、膜支持部材3は他の構造物例えば椅子の脚フレーム等に取り付けなくても、膜部材2が構造物1として必要な張力を得られるように形を保つ剛性を有している。このため、構造物1をフレーム4に取り付けるときに膜部材2に必要な張力を与える必要がないので、取付作業を容易にすることができる。因みに、本実施形態の場合の膜部材2とその全周縁を保持する膜支持部材3の形状は、略矩形のシート状と略矩形の枠状としているが、構造物1としての形状は特に限定されるものではない。
尚、本実施形態において、膜部材2は、例えばポリエステル糸とエラストマ性ポリエステル糸との織物によって構成されるメッシュシート、例えば商品名ダイヤフローラ(東洋紡株式会社製)で知られているメッシュシートを用いている。但し、膜部材2は、熱収縮性を有する弾性素材であれば良く、この例に限定されるものではない。膜部材2をメッシュとすることで、高い通気性を得て座り心地の良い快適な構造物1が得ることができる。また、膜支持部材3は、熱可塑性の合成樹脂製としている。膜支持部材3を形成する熱可塑性樹脂は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)等のオレフィン系樹脂を採用することが好ましい。本実施形態のように膜支持部材3をオレフィン系樹脂製とすると共に膜部材2をポリエステル製とすることで、これらの接合にビス等を使っていなければ構造物1を分離せずにそのままリサイクルすることができる。座として使用される部材を全てプラスチックやエラストマにより形成して金属部品を使用しないようにすることで、廃棄時に分別の必要が無く、廃棄やリサイクルを容易に行うことができる。但し、このことは膜部材2と膜支持部材3の材料が本実施形態の例に限定されることを意味していない。
これら膜部材2と膜支持部材3とは、本実施形態では、膜支持部材3を射出成形によって成形する際に、予め形成されている膜部材2をインサートとして組み込むことによって一体化するようにしている。但し、膜部材2と膜支持部材3の固定方法はこれに限定されるものではない。
インサート成形は、例えばFig.1Aに示すように、膜支持部材3および膜部材2をインサート成形するための上金型7および下金型8より成る型5に対して熱収縮性を有する膜部材2を無張力下にあるいは構造物1として必要な張力より弱い張力をかけた状態のままで取り付けてから型を閉じ、キャビティ6に熱可塑性樹脂を射出して固化させることにより膜支持部材3の成形を行う。その後、型から取り出されたインサート成形品即ち構造物1を必要に応じて支持台60に取付てからFig.1Bに示すように加熱処理を行って膜部材2を熱収縮させて構造物1として必要な弾力性を発揮する張力を与える。
ここで、本実施形態の下金型8のキャビティ6には、構造物1の膜支持部材3に上下方向の貫通孔9を形成するための中子ピン10が設けられている。膜部材2を型5に取り付けるときは各中子ピン10に膜部材2の縁を突き刺して仮固定し位置決めするようにしている。このため、膜部材2を型5の外部から支持しなくても、周縁がキャビティ6内に収まるように正確に位置決めすることができる。また、型5の外部に膜部材2を支持する装置を設ける必要が無いので、製造装置を簡素化することができる。また、膜部材2の縁はキャビティ6内からはみ出すことなく膜支持部材3と一体化されるので、膜支持部材3から膜部材2を切り取るトリミング作業が不要になり、作業工程数を削減できるし、構造物1を製造するのに必要な膜部材2の量を減らすことができる。さらに、膜部材2の周縁11が膜支持部材3に一体化されるので、構造物1としての外観を向上することができる。
ここで、膜部材2はメッシュシートであるので、これを膜支持部材3の射出成形により一体化する際にはメッシュの織地の糸と糸の隙間を樹脂が通過して膜部材2を覆うように樹脂が回り込むようになる。これによって、予め形成されている膜部材2が、射出成形により形成される膜支持部材3に一体化され固着される。
そして、キャビティ6に射出した熱可塑性樹脂が固化してから、図示していない突出し装置の作動によって構造物1となる成形品を型5から取り出してから、Fig.1Bに示すように加熱処理装置の支持台60の上に載置する。加熱処理は、膜支持部材3における温度を当該膜支持部材3の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら膜部材2を熱収縮する程度に加熱することによって行われる。このとき、膜支持部材3の射出成形時には、膜部材2の上金型7および下金型8に挟まれている部分は、収縮する程には加熱されていないので、ある程度緩んでいる。そして、膜支持部材3は固化すると収縮するので、膜部材2の弛みは一層大きくなる。この弛みを加熱による収縮で除去すると共に所定の張力を付与することができる。
加熱処理において用いる膜部材2を加熱する手段53には、本実施形態では例えば電熱ヒータにより加熱される金属製の加熱板を用いる。但し、加熱手段53はこの電熱ヒータの例に限定されるものではない。例えば、熱風、蒸気、光等を加熱源とする加熱手段をして用いても良いし、加熱板を介さずに電熱ヒータの熱を直接に膜部材2にかけるようにしても良い。
加熱板53は、膜支持部材3に対して熱を与えないように膜支持部材3の内側壁面で形成される内輪郭形状よりも小さな相似形状、例えば本実施形態の場合には四隅が丸まった矩形状に形成され、熱収縮によって張り詰める膜部材2とほぼ平行となる加熱面を有している。この場合、膜部材2の全体を均一に加熱できる。但し、加熱板53の形状はこれに限定されない。また、加熱板53を加熱するためのヒーター54は、加熱板53における温度分布が均一となるように設けることが好ましい。例えばFig.3に示すように、複数のヒーター54を等間隔に加熱板53に配置するようにする。これにより、加熱板53における温度分布が均一となるようにして、膜部材2の全体を均一に加熱できるようにする。また、本実施形態では、Fig.1Bに示すように膜部材2の表面側と裏面側との両面に加熱板53を配置するようにしている。この場合、膜部材2の表裏両面から同時に加熱でき、表面と裏面とを同時に収縮させるので歪みや反りを生ずることはなく、かつ短時間で膜部材2を収縮させて必要な張力を付与でき、処理の迅速化が図れるので好ましい。また、膜部材2の表面側と裏面側との熱収縮量を均等にでき、膜部材2に均一に張力を付与することができる。但し、加熱板53の配置は必ずしも本実施形態の例に限定されない。例えば膜部材2の表裏いずれか一方のみに加熱板53を配置しても良い。また、膜部材2の表裏いずれか一方側のみに加熱板53を配置し、他方側には熱反射板として例えば鏡面仕上げされた金属板等を配置し、当該一方側からは加熱板53により、当該他方側からは熱反射板で反射された熱により、膜部材2を加熱するようにしても良い。
ここで、膜支持部材3における温度を当該膜支持部材3の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら膜部材2を加熱する手法としては、例えば以下が挙げられる。第一の手法としては、Fig.1Bに示すように、膜支持部材3の内輪郭形状よりも小さな相似形状の加熱板53を採用し、かつ加熱板53と膜支持部材3との間に空隙L1を設けるようにする。この場合、空隙L1によって膜支持部材3に加熱板53の熱が伝わり難くなり、主として膜部材2を加熱でき、膜支持部材3が溶けてしまうことを防止できる。第二の手法としては、Fig.1Bに示すように、加熱板53の周縁部から膜部材2に向かって突出する遮熱部としての遮熱板55を設けるものである。この場合、加熱板53の熱が自然対流伝熱によって膜支持部材3に伝わってしまうことを遮熱板55によって防ぎ、主として膜部材2を加熱でき、膜支持部材3が溶けてしまうことを防止できる。さらに、加熱板53の縁部から膜支持部材3側に熱が逃げてしまうことを抑えられるので、効率的に膜部材2の加熱が行えると共に熱損失を低減できる。さらに、周囲からの冷気の進入を遮熱板55が防ぐので、遮熱板55の囲いの内側の加熱板53の温度を均一にでき、膜部材2を均一に加熱できる。さらに、遮熱板55は、加熱板53が膜部材2に触れてしまうことを防止するスペーサとしての役割も果たす。尚、遮熱板55には、例えばセラミックスなどの熱伝導率の小さい断熱性材料を利用することが好ましいがこの材質に限られるものではない。更に本実施形態では、膜支持部材3に加熱板53の熱が伝わってしまうことをより確実に防止するべく、遮熱板55を備えかつ遮熱板55と膜支持部材3との間に空隙L1を設定するようにしているが、場合によってはいずれか一方のみを実施するものであっても構わない。
尚、膜支持部材3における温度を当該膜支持部材3の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら膜部材2を加熱する方法としては、上記例に限定されない。例えば、セラミックスなどの断熱性材料で構成される膜支持部材3を覆う治具を用いて、その状態で膜部材2の加熱を行なうようにしても良い。例えばFig.4に示す断熱性治具56は、膜支持部材3に対応した枠状に形成され、且つ上側部材56aと下側部材56bとに分割可能に構成されている。上側部材56aと下側部材56bとで膜支持部材3を挟み込むことで、膜支持部材3が覆われて、枠状の膜支持部材3の内側の膜部材2のみが露出するようになる。この場合、膜部材2の加熱温度が膜支持部材3の溶融温度よりも高くとも断熱性治具56により膜支持部材3の加熱が防がれるので、加熱手段53に特別な配慮を施さなくても膜部材2のみを加熱でき、膜支持部材3が溶けてしまうことを防止できる。さらに、膜支持部材3の温度を低下させる冷却手段を設けるようにしても良い。例えばFig.5に示すように、膜部材2と対向する位置にはヒータ54を備えると共に、膜支持部材3の周囲には冷却手段57を備える加熱装置58を用いて、膜部材2の加熱を行なっても良い。冷却手段57は例えば冷却水が流れる冷却水路である。この場合、冷却手段57により膜支持部材3の周囲の温度を低下させて、膜支持部材3における温度を当該膜支持部材3の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら膜部材2の加熱を行なえる。
また、加熱手段53として熱風、蒸気、光等を発生させる装置を用いる場合には、例えばFig.6に示すように、膜支持部材3に当たらないように膜部材2のみを狙って、熱風や蒸気を吹き付けたり、光を照射するようにしても良い。この場合、Fig.6の破線に示すように、膜支持部材3に熱風、蒸気、光等が当たらない範囲で、加熱手段53を移動させるようにしても良い。勿論、Fig.4に示す断熱性治具56を用いる場合には、このような配慮も必要なくなる。また、膜部材2の加熱時に、膜支持部材3に対して冷風を吹き付けるようにしても良い。
ここで、膜部材2の加熱は膜部材2から離れた位置より行なうことが好ましい。この場合、膜部材2が加熱板53に接触して溶けてしまう、或いは膜部材2のメッシュ模様に斑(むら)が生じてしまう、といったことが防止され、構造物としての機能や外観が損なわれてしまうことを防止できる。例えば本実施形態では、膜部材2と非接触となる位置に加熱板53を配置するようにしている。但し、椅子の構造物としての強度上の性能低下の虞がなく、かつ膜部材2が外部から見えない場合には、例えば膜部材2を覆う表皮部材を取り付ける場合や、膜部材2の裏面側などには、加熱板53を膜部材2に接触させても良い。例えば膜部材2の裏面側に配置される下側加熱板53bを、膜部材2とほぼ接触する位置、換言すれば膜部材2を押圧することなく膜部材2に触れている位置、に配置しても良い。
また、加熱手段53は、膜部材2の収縮変形に追従するように移動可能であることが好ましい。この場合、加熱手段53と膜部材2との距離をなるべく近づけて、短時間で膜部材2に必要な張力を付与できる。例えば本実施形態では、膜部材2に対して接近するように伸長すると共に膜部材2から離れるように収縮する伸縮自在なシリンダ装置59を用いて、膜部材2の弛みが突出している側、本実施形態の場合には膜部材2の表面側に配置される上側加熱板53aを昇降可能に支持している。勿論、膜部材2の裏面(内)側に弛むような場合には、下側加熱板53aをシリンダ59で昇降させるようにしても良い。このシリンダ装置59は、Fig.1Bに示すように、膜部材2が弛んでいる加熱初期の段階では、膜部材2と触れないように膜部材2から離れた位置で加熱板53を支持し、加熱が進み膜部材2の弛みが除去されるに従って、Fig.1Cに示すように、加熱板53を膜部材2に近づけるように伸長する。尚、加熱板53の移動の制御、即ちシリンダ装置59の伸縮の制御は、自動または手動のいずれであっても良い。自動制御の場合は、例えば加熱時間と膜部材2の変形との相関関係を予め求めておき、加熱時間に応じて加熱板53を移動させるようにしても良く、或いは、膜部材2と加熱板53との距離を検出するセンサーを設けておき、当該センサーからの出力信号に応じて膜部材2と加熱板53とが一定距離を保つように加熱板53を移動させようにしても良い。また、加熱板53の移動は段階的すなわち断続的または連続的のいずれであっても良い。例えば本実施形態では、熱収縮後に膜部材2が形成する面と上側加熱板53aの加熱面との距離が、40mm→30mm→15mmと段階的に変化するように、上側加熱板53aを移動させるようにしている。尚、Fig.1Bの例では、上側加熱板53aを移動させているが、下側加熱板53bを移動させても良く、或いは上側加熱板53aと下側加熱板53bとの双方を移動させても良い。尚、加熱手段53を移動可能に設けることは好適な例ではあるが、この構成に限定されるものではない。
ここで、膜部材2としてがポリエステル糸とエラストマ性ポリエステル糸との織物によって構成されるメッシュシートを採用した本実施形態の場合、膜部材2を加熱する際の温度および加熱時間は、例えば以下の範囲とすることが好ましい。膜部材2にほぼ接触するように配置する場合の加熱板53、例えば下側加熱板53bの温度は、例えば120〜250℃程度の範囲とすることが好ましく、180〜190℃程度の範囲とすることがより好ましい。膜部材2と非接触となるように配置する場合の加熱板53、例えば上側加熱板53aの温度は、例えば180〜300℃程度の範囲とすることが好ましく、190〜240℃程度の範囲とすることがより好ましい。加熱時間は例えば40〜120秒程度とすることが好ましい。また、膜部材2の加熱中における膜支持部材3の温度は常温または常温に近い温度であることが望ましく、また、当該加熱中における膜部材2と膜支持部材3との温度差は5〜200℃程度あることが好ましく、150℃以上あることがより好ましい。但し、最適な加熱条件は選択される膜部材2の素材等によって変わり得るものであり、必ずしも上記の条件には限定されない。
以上のように膜部材2の加熱を行うことで、Fig.1Cに示すように膜部材2を収縮させ、構造物1として必要な弾力性を持たせることができる。ここで、加熱直後の膜部材2に大きな負荷をかけてしまうと、膜部材2の変形が起こり易いので、そのような負荷をかけることのないように膜部材2の除熱ないし冷却を行なうことが好ましい。例えば本実施形態では、加熱により膜支持部材3に必要な張力を付与し、その後、構造物1を他の構造物例えばフレーム4に取り付けてしばらく放置して、自然冷却するようにしている。この場合、熱収縮時の膜支持部材3の変形を防ぐことができる。尚、構造物1のフレーム4への取付は、ねじ止めには限られず、例えば膜支持部材3に係止爪を一体形成して、これをフレーム4若しくは受け金具側の受け部、例えば孔や凹部にワンタッチで係止するようにしても良い。
次に、Fig.7a〜7Cの本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する他の実施形態において上述の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
この構造物の製造方法は、まず、膜支持部材3を射出成形する型5内に無張力下あるいは構造物1として必要な張力より弱い張力で膜部材2が予め配置され、膜部材2の縁が膜支持部材3を成形するキャビティ6内に配置された状態でキャビティ6内に熱可塑性樹脂を射出するインサート成形により、膜部材2を無張力下あるいは構造物1として必要な張力より弱い張力で膜支持部材3に固定するように成形される。次いで、型5から取り出したインサート成形品たる未完の構造物を加熱炉61内へ導入して、炉内雰囲気によって膜支持部材3における温度を膜支持部材3の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら膜部材2を加熱し、膜部材2を熱収縮させて該膜部材2に構造物1として必要な弾力性を発揮させる張力を与えるようにしている。
ここで、膜支持部材3における温度を膜支持部材2の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら加熱する手法としては、膜支持部材3の溶融温度が膜部材2の加熱処理(熱収縮)に必要な温度よりも低い場合には、Fig.4の断熱性治具56を用いることによって、また膜部材2を収縮させる温度よりも溶融温度が高温の樹脂例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)などのポリエステル系樹脂を膜支持部材3に用いる場合には膜支持部材3の溶融温度よりも低く膜部材2を収縮させる温度よりも高い温度の炉内雰囲気を設定することによって達成される。この場合、膜部材2と膜支持部材3とが一体化された構造物1を加熱炉61に入れて加熱しても、膜支持部材3が溶けてしまう又は変形してしまうことを防止できる。尚、膜部材2は、例えば上述の実施形態と同じ物を用いて良い。但し、膜部材2と膜支持部材3はこれらの材料に必ずしも限定されるものではなく、膜部材2が収縮する温度よりも膜支持部材3の融点が高温となる他の材料の組合せを用いても良い。しかし、例えばFig.4に示すような、セラミックス等の断熱性材料で構成される治具56を用いて膜支持部材3を覆う場合には、膜部材2を収縮させる温度よりも融点が高温である材料を膜支持部材3に用いる必要性はない。膜部材2を加熱する際の加熱炉61内の温度は、例えば120〜250℃程度の範囲とすることが好ましく、180〜190℃程度の範囲とすることがより好ましい。また、加熱時間は例えば40〜120秒程度とすることが好ましい。尚、膜支持部材3を射出成形する際に膜部材2と膜支持部材3を一体化する方法は、例えば上述した第1の実施形態と同様として良いので、詳細な説明は省略する。
ここで、加熱炉61は、遠赤外線炉の使用が好ましい。この場合、遠赤外線が膜部材2を構成する樹脂材の内部まで加熱し、膜部材2を均一に収縮させ、均一に張力を付与できる利点がある。但し、加熱炉61は、膜部材2に必要な張力を付与し得る温度に加熱できるものであれば良く、その種類がこの例に限定されるものではない。
膜部材2と膜支持部材3の一体成形品である構造物1は、加熱炉61に入れられて加熱される。尚、符号62は膜部材2の加熱時に膜支持部材3を支持する支持台である。加熱炉61を使用することにより、膜部材2を均一な温度で加熱できる。従って、膜部材2を均一に収縮させ、均一に張力を付与することが可能となる。また、膜部材2に対して間接的に熱を加えるため、換言すれば加熱した部材を直接膜部材2に押し付けることをしないため、膜部材2が溶けてしまったり、あるいはメッシュ模様に斑(むら)が生じてしまう、といったことが防止される。また、大型の加熱炉61を用いることで複数の構造物1を一度に加熱することも可能となり、構造物1の大量生産も可能となる。例えば複数の構造物1を耐熱性ベルトコンベヤに載置して、加熱炉61の中を順次移動させる連続処理炉としても良い。
次に本発明の第3の実施形態について主にFig.8を用いて説明する。この構造物の製造方法は、膜部材2として同一加熱温度下での熱収縮量が異なる少なくとも2種の弾性素材を組み合わせたものを用い、加熱処理により膜部材2を熱収縮させて該膜部材2に構造物1として必要な弾力性を発揮させる張力を与える際に、膜部材2の熱収縮量の差によって三次元的な面を形成するようにしたものである。
本実施形態における膜支持部材3は、任意の三次元形状例えばFig.8に示すような、座の前部が下に向き湾曲した略矩形状の枠形とされている。そして膜部材2は、座面の前後方向(縦方向とも呼ぶ)に張られる縦糸63と、この縦糸63と直交する左右方向(横方向とも呼ぶ)に張られる横糸64とが編まれて成るメッシュシートであって、且つ横糸64の方が縦糸63よりも熱収縮量が大きく強い張力が得られるものとして採用されている。例えば本実施形態では、縦糸63に太さ300デニールのポリエステル糸を用い、横糸64に太さ1850デニールのエラストマ性ポリエステル糸を用いた。従って、膜支持部材3の湾曲部65においては、横糸64は当該湾曲部65,65間を直線的に結ぶと共に、縦糸63は横糸64に規制されるようにして横糸64の間を通って、膜支持部材3の湾曲部65に応じた曲線を描く。この結果、膜支持部材3の湾曲部65に対応して膜部材2が曲面を成すようになる。
このように、同一加熱条件下での熱収縮量が異なる少なくとも2種の弾性素材の組合せ法などを様々に変更することにより、膜部材2で構成される構造物の面を任意の三次元形状とすることができ、椅子の構造物等に応用した場合にそのデザインの自由度を高めると共に、外観や性能を向上することができる。尚、この場合の縦糸63の収縮率((元の長さ−収縮後の長さ)/元の長さ×100)は例えば3.3〜6.6%程度、横糸64の収縮率は例えば8.5〜9.0%程度とすることが好ましい。但し、素材に要求される収縮率は、椅子の形状や膜部材2が形成する面に要求される弾性力などによって変わり得るものであり、必ずしも上記例には限定されない。また、膜部材2を膜支持部材3に取り付ける方法や手段、膜部材2を加熱する方法や手段などは、第1または第2の実施形態と同様とすることが好ましいが、必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
但し、所望の曲面を形成するための膜部材2の構成は、必ずしも上記例に限定されない。
例えば縦糸と横糸の素材を異なるものとすることも好ましい実施の一形態である。例えばFig.9A及びFig.9Bに示すように、縦糸方向と横糸向の一方をエラストマー糸66とし、他方をポリエステル糸67とするもののほか、Fig.10A及びFig.10Bに示すように、縦糸と横糸の一方をエラストマー糸66とポリエステル糸67とが交互に配置されたものとし、他方をエラストマー糸66またはポリエステル糸67としても良い。或いは、縦方向と横方向とで柔らかさ即ち弾性係数の異なるエラストマー糸を用いる。尚、エラストマー糸としては、エラストマ性ポリエステル糸、例えばペルプレン(東洋紡株式会社の登録商標)やハイトレル(東レ・デュポン社の登録商標)などを利用できる。
また、同じ素材から成る糸であっても製法によって収縮量を異ならせることも可能である。例えば、エラストマー糸の収縮量には上限があるので、膜部材2の製造段階における織り工程での仕上げ時にエラストマー糸を融着させる時の温度を高くすると、この時のエラストマー糸の収縮量が大きくなるので、膜部材2を膜支持部材3に取り付けた後に行なう膜部材2への張力付与工程でのエラストマー糸の収縮量が少なくなる。例えば170℃で仕上げた膜部材2より、190℃で仕上げた膜部材2の方が、張力付与工程時におけるエラストマー糸の収縮量が小さくなる。上記性質を利用すれば、膜部材2の製造時における温度を調整することで、膜部材2への張力付与工程時におけるエラストマー糸の収縮量を所望のものに調整することができる。さらに例えばポリエステル糸は、染色時に糸を加熱する温度や加熱を行なう回数などの染色方法によっても収縮量が異なるので、当該染色方法を選択することによって、膜部材2への張力付与工程時におけるポリエステル糸の収縮量を所望のものに調整することができる。さらに、膜部材2を構成する糸の断面形状や糸の太さ等を適宜選択することによっても、膜部材2への張力付与工程時における当該糸の収縮量を所望のものに調整できる。
さらに、例えばFig.11A〜11Bに示すように、膜部材2を構成する縦糸63と横糸64の密度すなわち打ち込み本数を異ならせることによっても、縦方向と横方向とで膜部材2の収縮量・張力を異ならせることができる。さらに、上述した方法を組み合わせて用いても良い。さらに、膜部材2として縦方向と横方向とで熱収縮量が異なるフィルムなどを用いても良い。また、膜部材2における一部分とその他の部分との熱収縮量を異ならせるようにしても良い。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば膜部材2と膜支持部材3の形状は、本実施形態の例に限定されるものではない。例えば、Fig.13に示すように膜部材2を筒状ないし袋状として膜支持部材3を内包するようにしても良い。また、膜支持部材3は、膜部材2が目的とする形状の面を形成し得るものであれば良く、必ずしも完全な環状を形成するものには限られず、半環状やU字型状、L字型状のものであっても良く、更には図示していないフレームから突き出た2本の棒材であっても良い。更に膜支持部材3は膜部材2の周縁全部又は一部を保持するものであって、好ましくは膜部材2の周縁の少なくとも対向する2辺を保持するものである。ここで、上記の対向する2辺は平行関係にある必要はなく、三角形などの多角形の交わる2辺あるいは非平行な2辺若しくは円形ないし楕円形の向かい合う位置関係にある一部など、膜部材2に張力を生じさせ得るあらゆる形状及び位置関係を含むものである。例えばFig.12,13に示すように、膜支持部材3は、膜部材2の対向する1対の側縁部を保持する保持部材51の間を連結部材52で連結した略H型状のものであっても良い。このような形状の膜支持部材3と膜部材2との組み合わせの場合には、膜支持部材3に保持されていない側から、加熱板や他の加熱手段を配置するようにしても良い。尚、Fig.12に示すように袋状の膜部材2の場合、ねじ止め用の孔を膜部材2に予め設けておいても良く、或いは保持部材51または連結部材52と対向する膜部材2にねじ止め用のボルトを貫通させるようにしても良い。また、膜支持部材3の断面形状は、Fig.1及びFig.2等に示す例では矩形状にしているが、これには限られず例えば円形状やチューブ形状にしたり、あるいは多角形状やL型形状などの必要に応じた形状とできる。これらの形状は、椅子のフレームへの取付やデザインなどに応じて設定することができる。
また、膜部材2としては、熱収縮性を有し尚且つ構造物1として必要な弾力性及び強度を備えた膜状物であれば良く、例えばナイロン製のメッシュシートであっても良い。また、メッシュシートには限られず、フィルムやビニルや布地、不織布等の他の材質のものでも良い。フィルムとしては、例えばポリ塩化ビニリデン製のフィルムを使用することができる。
また、第1の実施形態では膜支持部材3を熱可塑性樹脂により成形したが、これには限られず膜部材2よりも低い温度で硬化する熱硬化性樹脂を使用しても良い。この場合は、膜支持部材3が硬化する程度に加熱して膜部材2と膜支持部材3とを一体化し、その後に膜部材2を加熱して収縮させることができる。また、膜支持部材3を形成する熱可塑性樹脂はオレフィン系樹脂に限られず、例えばポリエステルのように膜支持部材3として一般に使用される既知若しくは新規の材質を利用することができる。また、膜支持部材3と膜部材2とのいずれもポリエステルで構成しても良い。この場合も構造物1をそのままリサイクルすることができる。
さらに、メッシュ製パネルとして、自動車のシートバック等に使用することも可能である。さらに、本発明に係る構造物1は、パーティションであっても良い。構造物1がパーティションである場合等には、膜支持部材3は、膜部材2の周縁よりも短い線状または点状の保持部が膜部材2の周縁に分散して配置される構成とし、これら複数の保持部により膜部材2を支持するようにしても良い。
また、本発明の用途としては、一般用椅子、事務用椅子、作業用椅子、看護用椅子等の椅子全般は勿論のこと、自転車、二輪自動車、四輪自動車、バス等の車輌の座、背凭れ、肘パネル、ヘッドレスト等への適用が有効である。
ところで、構造物1は、そのままで椅子の座や背凭れ等として使用することができるが、場合によっては膜部材2と膜支持部材3の上面及び外側面との全体を覆うように表皮部材を取り付けても良い。これにより、膜支持部材3の上面に露出される膜部材2の周縁部分を隠すことができると共に、外観を任意の色や模様にすることができる。さらにこの場合、表皮部材と膜支持部材3との間に、例えばポリウレタン等の発泡樹脂や繊維状のクッション材などを介在させても良い。これにより、硬質の膜支持部材3が着座者の体に直接当たることを防ぎ、着座者が痛みや不快感を与えることを防止し、使い心地を良好にできる。
さらに、この構造物1を椅子に取り付けるときは、例えばFig.14,Fig.17及びFig.21に示すように、構造物1の膜支持部材3と膜部材2との一体化部分を覆い隠すカバー部材13を設けても良い。この場合、カバー部材13により一体化部分を覆い隠すことができるので、見栄えを良くすることができると共に膜部材2と膜支持部材3との接合を補強できる。カバー部材13はオレフィン系樹脂製あるいはポリエステル製とすることが、構造物1の全体をそのままリサイクル可能とする上で好ましい。また、カバー部材13を例えばエラストマ性の樹脂製にすることにより、硬質の部材が着座者の体に直接当たることを防ぎ、着座者が痛みや不快感を与えることを防止し、使い心地を良好にできる。一方、カバー部材13を例えば硬度の高い樹脂製にすれば、構造物1としての強度を高めることができる。
ここで、膜支持部材3へのカバー部材13の装着は、例えばFig.15A〜15Cに示す手順のインサート成形によって行われる。このとき、Fig.14に示すように、カバー部材13には、構造物1の貫通孔9に嵌入するボス14を一体形成し、このボス14に椅子のフレーム4あるいはこれに固定された受け金具を貫通するボルト15によってねじ止めすることが好ましい。この場合には外観にボルトなどが露出しない座を提供できる。
即ち、Fig.15Aに示すように、加熱処理により膜部材2を収縮させる前の膜支持部材3および膜部材2の一体成形品を、カバー部材13を射出成形する金型16のキャビティに位置決め用の中子ピン17を用いて装着する。そして、Fig.15Bに示すように、PETやPPといった熱可塑性樹脂を射出する。熱可塑性樹脂の固化後に取り出すと、カバー部材13が膜支持部材3に一体化された構造物1を得ることができる。その後、膜部材2に加熱処理を施して膜部材2を収縮させ、構造物1として必要な張力を与えるようにする。このように、膜部材2が膜支持部材3に固着した部分にカバー部材13が一体化されるので、膜部材2の保持力を強くすることができる。尚、この例では膜部材2に加熱処理を行う前にカバー部材13を取り付けているが、これには限られず膜部材2の加熱処理を行った後にカバー部材13を被せて一体化しても良い。
尚、カバー部材13をインサート成形する場合には、Fig.16A〜16Cに示すように、膜支持部材3を射出成形する時のゲート18の位置と、カバー部材13を射出成形する時のゲート19の位置とは異ならせることが好ましい。例えばゲート18を180度置きに2カ所設けると共に、それらと90°ずれるようにゲート19を180度置きに2カ所設ければ、各射出成形時に生ずるウェルドマークの位置20,21を重ならないようにできるので、構造物1の強度を強くすることができる。具体的には、ウェルドマーク20,21同士が例えば10mm以上離れていれば構造物1としての剛性は殆ど損なわれず実質上問題ない。
また、カバー部材13は、少なくとも膜部材2と膜支持部材3の固着部分を覆っていれば良いが、場合によっては例えばFig.17に示すように膜支持部材3の上面から外側面まで全体を覆うように一体化しても良い。この場合、膜支持部材3とカバー部材13との両方で横断面矩形状の枠状物を形成できるので、膜支持部材3と膜部材2との固着面を隠して外観を良好にできる上に、構造物1があたかも一部材であるかのような外観を呈するので見栄えを良くすることができる。
また、例えば膜支持部材3の下面や内側面に膜部材2との固着面が露出しているときには、当該固着面部分を内側から覆い隠すカバー部材13を設けることも可能である。この場合も、カバー部材13により膜支持部材3と膜部材2の一体化部分を覆い隠すことができるので、外観を良くすることができる。
さらに、膜支持部材3を射出成形する金型5とカバー部材13を射出成形する金型16とは、金型の一部を共用するようにしても良い。例えばFig.18A〜Fig.19Cに示すように下金型8を共用する場合、まずFig.18Aに示すように、下金型8の中子ピン10を利用して膜部材2を緩い張力で取り付けてから上金型7を閉め、キャビティ内にゲート18から熱可塑性樹脂を射出して膜支持部材3を形成する。そして、膜支持部材3の固化後に、上金型7を外して膜支持部材3および膜部材2の一体成形品をそのまま下型8に残したまま(Fig.18C)、カバー部材13を形成するための金上型16を合わせて閉める(Fig.19A参照)。そしてFig.19Bに示すように、カバー部材形成用のゲート19から熱可塑性樹脂を射出してカバー部材13を形成する。カバー部材13の固化後、Fig.19Cに示すように、構造物1を取り出して膜部材2に加熱処理を施し、必要な張力を得るようにする。
また、Fig.20A〜Fig.20Bに示すように、カバー部材13を成形するキャビティを射出成形品との間に形成可能なスライドブロック41を備える型7を利用しても良い。この場合、膜支持部材3を射出成形するときは、Fig.20Aに示すように、スライドブロック41を内側の閉位置に固定した型内へ樹脂を射出して、膜支持部材3を成形する。その後、スライドブロック41を摺動させて外側の開位置に固定し、膜支持部材3とブロック41との間の空間へ樹脂を射出してFig.20Bに示すようにカバー部材13を成形する。また、カバー部材13の材料として熱硬化性樹脂を採用し、圧縮成形やトランスファー成形によりカバー部材13を成形するようにしても良い。この型7によれば、スライドブロック41を摺動させるだけで、構造物1として膜支持部材3および膜部材2とカバー部材13との一体成形品を成形できるので、型のコストおよび成形作業の労力を低減することができる。
更に、Fig.21に示すように予め射出成形等により作製したカバー部材13を、溶着あるいは接着により膜支持部材3の膜部材2との固着面を覆うように固着しても良い。この場合、カバー部材13を膜支持部材3および膜部材2の一体成形品に射出成形により一体化する場合に比べて安価に一体化することができる。尚、カバー部材13の接着に使用する接着剤は、オレフィン系樹脂製あるいはポリエステル製であることが、構造物1の全体をそのままリサイクルできるため好ましい。
さらに、膜部材2を膜支持部材3の中に完全に埋設させるように一体化することによって、カバー部材13を不要としても良い。膜支持部材3と膜部材2の一体化部分を隠すことができるので、外観を向上することができる。膜部材2を膜支持部材3の中に完全に埋設させる場合は、Fig.22に示すように、例えば膜部材2を表裏両側から押さえてキャビティ6の表裏両型面から離して支持する支持部材である中子ピン23,24を各金型7,8に設けるようにする。この場合、膜部材2が支持部材である中子ピン23,24によりキャビティ6の型面から離れて支持されるので、膜支持部材3の表裏両面に露出することは無い。ここで、各中子ピン23,24の先端には、互いに嵌合する凸部23aと凹部24aとを形成することが好ましい。これによれば、各中子ピン23,24に膜部材2を挟んで突き合わせたときに凸部23aが膜部材2に貫通してこれを固定することができるので、熱可塑性樹脂が射出されたときの膜部材2のずれを抑制することができる。
また、膜部材2は、膜支持部材3の下面側に露出させて一体化するようにしても良い。この場合は、例えばFig.23に示すように、膜支持部材3を椅子のフレーム4に載せて膜部材2と膜支持部材3との一体化部分を押さえ付けることにより、膜部材2の固着を補強することができる。
更に、Fig.24あるいはFig.25に示すように、ゲート18と対向するキャビティ面に膜部材2を面接触させるように取り付けるようにしても良い。この場合も、ゲート18から射出された熱可塑性樹脂27が膜部材2を押圧してゲート18と反対側の面に押し付けることができるので、インサート成形時の膜部材2のずれを防止することができる。尚、ここでは、膜部材2と型5とが面接触しているが、これには限られず線接触あるいは点接触であっても膜部材2が型5に押し付けられることで、膜部材2のインサート成形時のずれを抑制できる。
また、Fig.26〜Fig.28に示すように、膜部材2をキャビティ6内のゲート18が設けられた型面に面接触して取り付けられると共に、膜部材2のゲート18に向き合った部位に樹脂が通過可能な逃げ部26を形成するようにしても良い。ここで、逃げ部26の形状としては、Fig.26に示すように膜部材2の縁から切り込まれた形状としたり、あるいはFig.29に二点鎖線で示すように孔形状としても良い。この場合、ゲート18から射出された熱可塑性樹脂27が膜部材2の逃げ部26を通過して膜部材2の裏側に容易に回り込むことができるので、膜部材2をゲート18側の面に裏側から押し付けることができる。しかも、熱可塑性樹脂27が膜部材2に邪魔されることなくキャビティ6内を均等に行き渡ることができる。なお、Fig.27は上金型7にゲート18が配置されると共に膜部材2はキャビティ6の上面に面接触して取り付けられる場合を示し、Fig.28は下金型7にゲート18が配置されると共に膜部材2はキャビティ6の下型面に面接触して取り付けられる場合を示している。
また、例えばFig.22に示すように膜部材2を膜支持部材3の中に完全に埋設させる構造物1についても、型のゲートに向き合った部位に逃げ部26が形成された膜部材2を使用しても良い。この場合、ゲートから射出された熱可塑性樹脂が膜部材2の逃げ部26を通過して膜部材2の裏側に容易に回り込むことができるので、熱可塑性樹脂がキャビティ6内を均等に行き渡ることができる。この場合、Fig.29に示すように、逃げ部26の近傍に流通孔40を設けることが好ましい。これによれば、熱可塑性樹脂が逃げ部26および流通孔40を通過して膜部材2の表裏に容易に行き渡ることができる。
また、金型内における膜部材2の支持は、中子ピン10を設けずに型5の型面すなわちキャビティ面に係止突起を形成して、これに膜部材2を引っ掛けて型5に取り付けるようにしても良い。この場合に、構造物1に貫通孔9が必要で有れば、射出成形後に孔空け加工を施せば良い。あるいは、キャビティ6面に係止突起を設けずに、膜部材2を下金型8に載置するだけにしても良い。これらの場合も、膜部材2の周縁をキャビティ6に収容できるので、型5の外部で膜部材2を支持する装置を省略して製造装置を簡素化することができ、またトリミング作業を不要にして作業性及び外観を向上でき、さらに1つの構造物1を製造するのに必要な膜部材2の量を減らすことができる。
または、Fig.30に示すように、金型8に押さえ部材28を設けて膜部材2をキャビティ面に押し付けて固定するようにしても良い。ここでは、押さえ部材28は中子ピンを兼用している。この押さえ部材28は膜部材2に突き刺さらずにキャビティ6の型面に膜部材2を単に押圧している。この場合、膜支持部材3の射出成形時に膜部材2が熱可塑性樹脂27の射出により動いてしまうことを防ぐことができる。
さらに、射出成形によって膜支持部材3を形成する際に予め形成されている膜部材2を一体化することに限られず、圧縮成形法や注型法等の他の方法によって膜支持部材3を形成する際に膜部材2を一体化するようにしても良い。さらに、膜部材2と膜支持部材3とは、インサート成形などにより一体的に固着される場合に限られず、膜部材2と膜支持部材3とを予め別個に形成してから、膜部材2を無張力下あるいは構造物1として必要な張力より弱い張力で膜支持部材3に接着、ビス止め等により固着するようにしても良い。
ここで、予め別々に形成された膜部材2と膜支持部材3とを一体化する手法としては、様々な手法を適用することができる。例えば、表面に突起を有する膜支持部材3を形成して、この突起に膜部材2の周縁を引っ掛けて一体化するようにしても良い。または、膜支持部材3の表面に膜部材2の周縁を接着したり、あるいはボルト等によるねじ止めやホチキス止めで一体化するようにしても良い。
さらには、例えばFig.31に示すように膜部材2を膜支持部材3の表面に直接縫製または溶着あるいは接着するようにしても良い。ここでは、膜支持部材3を断面フック状にしているが、これには限られずFig.2に示すような膜支持部材3に膜部材2を直接縫製または溶着あるいは接着するようにしても良い。これらの場合、膜支持部材3は、膜部材2を縫製または溶着あるいは接着するのに適した取付部3eと、構造物1としての必要な強度を備えた枠部3fとの2種類の材質を2色成形等により備えるようにすることが好ましい。取付部3eとしては、例えば縫製用にはミシン掛けし易い軟らかい材質にしたり、溶着用には溶け易い材質にしたり、接着用には接着しやすい材質にする。これによれば、膜部材2との接合を強くできると共に、構造物1としての必要な強度を有することもできる。
これらのように膜部材2を膜支持部材3に直接縫製または溶着あるいは接着する場合も、膜部材2を膜支持部材3に取り付けるときに膜部材2に完成品として要求される張力を与える必要がないので、製造作業を容易に行うことができる。尚、縫製の糸材や接着剤は、オレフィン系樹脂製あるいはポリエステル製であることが、構造物1の全体をそのままリサイクルできるため、好ましい。
更に、Fig.32に示すように膜支持部材3を膜部材2の周縁部によりくるんでから、膜部材2同士を固着部29で縫製または溶着あるいは接着により固定することも可能である。ここで、膜支持部材3として、例えば4本の棒状部材を組み合わせて使用することも可能である。この場合、各膜支持部材3に膜部材2を取り付けた状態で矩形状に配置してフレーム4に固定する。その後、膜部材2を加熱して張力を得るようにする。この取付によれば、膜部材2が膜支持部材3に一巻きされるので、膜部材2に荷重が掛かったときに膜部材2が膜支持部材3に引っ掛かり、取付強度を強くすることができる。また、カバー部材13を接着ないし溶着、ビス止め等で一体化することによって、座または背凭れ等としての剛性が得られる。膜部材2への加熱処理前にカバー部材13を一体化する場合、膜部材2の張力に耐えられる剛性の枠状物を完成させてから、膜部材2に必要な張力を与えることができるようになる。膜部材2に作用する荷重を固着部29だけでなくカバー部材13あるいはフレーム4との一体化部分によっても受けることができるので、固着部29の強度は小さくても良い。この場合、膜支持部材3と膜部材2との一体化を射出成形よりも安価に行うことができる。
さらに、Fig.33及びFig.34に示すように、膜支持部材3を長手方向に沿って半割りした半割部材31,32で構成し、それらの間に膜部材2の周縁を挟み込んで接着やねじ止め、嵌合あるいは縫製等により一体化するようにしても良い。半割部材31,32としては成形品や押し出し材を使用することができ、Fig.33に示すように同じ形状の2枚の平板形状であったり、あるいはFig.34に示すように一方が断面L字形状の半割部材31で、他方がその内側に取り付けられる平坦形状の半割部材32であるようにしても良い。また、各半割部材31,32同士の接触面は平坦面に限られず細かい凹凸を有する面にしても良い。この場合、接着や溶着あるいは縫製の力を強くすることができる。
また、Fig.35A〜35Bに示すように、互いに向き合った面に凸部31aと凹部32aとを形成した半割部材31,3で構成する膜支持部材3を用いることも可能である。凸部31aと凹部32aとの間に膜部材2を挟み込むように嵌合させることによって、膜部材2の保持力を更に強くすることができる。更に、凸部31aの先端に突起31bを形成することが好ましい。これによれば、突起31bの部分を溶かすことにより、凹部32aとの溶着を強固に行うことができる。あるいは、突起31bが膜部材2に突き刺さるようにしても良く、この場合も抜け止めを図ることができる。
さらに、膜支持部材3にフレーム4への組付用の溝あるいは爪を形成しておき、この溝あるいは爪に膜部材2を挟み込んだ状態で膜支持部材3をフレーム4に組み付けるようにしても良い。このときは、例えば膜部材2の周縁を予めフレーム4に巻き付けておき、その上から膜支持部材3を填め付けるようにしたり、または膜部材2の周縁を予め膜支持部材3の溝に入れておいた状態で膜支持部材3をフレーム4に填め付けるようにしても良い。この場合は、膜部材2をフレーム4に組み付けてから加熱する。また、この場合に、膜支持部材3とフレーム4とは嵌合の締付力で固定されるようにしたり、あるいは膜支持部材3とフレーム4とをねじ止め等によって固定するようにしても良い。膜支持部材3とフレーム4とをねじ止め等によって固定するときは、ねじ止め用のボルトを膜部材2に貫通させることにより膜部材2の保持力を更に強くすることができる。さらに、膜支持部材3の溝とフレーム4との間に互いに嵌合する凸部と凹部とを形成することにより、これら凸部と凹部との間に膜部材2を挟むようにできるので、膜部材2の保持力を更に強くすることができる。

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【図8】




【図12】

【図13】

【図14】



【図17】




【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】


【図36】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜部材と該膜部材が面を形成するようにその周縁の全部または一部を保持する膜支持部材とを備える構造物の製造方法において、前記膜部材として熱収縮性を有する弾性素材を用い、前記膜部材を無張力下あるいは構造物として必要な張力より弱い張力で前記膜支持部材に固定し、その後に前記膜支持部材における温度を当該膜支持部材の溶融温度よりも低温の状態に維持しながら前記膜部材を加熱し、前記膜部材を熱収縮させて該膜部材に構造物として必要な弾力性を発揮させる張力を与えることを特徴とする構造物の製造方法。
【請求項2】
前記加熱は前記膜部材から離れた位置に配置された加熱用熱源によって行うものである請求の範囲第1項記載の構造物の製造方法。
【請求項3】
前記加熱は前記膜部材の少なくとも一方の面に前記膜部材から離して配置され、かつ熱収縮後の前記膜部材と平行な加熱面を有する加熱板により行なうものである請求の範囲第1項記載の構造物の製造方法。
【請求項4】
前記加熱は前記膜支持部材から離して配置された加熱板により行うものである請求の範囲第3項記載の構造物の製造方法。
【請求項5】
前記加熱は前記膜部材の収縮変形の進行に従って前記加熱板を前記膜部材に向かって移動させるものである請求の範囲第3項記載の構造物の製造方法。
【請求項6】
前記加熱板は周縁部に前記膜部材に向かって突出する遮熱部を有するものである請求の範囲第3項記載の構造物の製造方法。
【請求項7】
前記膜部材が前記膜支持部材を射出成形する型内に無張力下あるいは構造物として必要な張力より弱い張力で配置されると共に膜部材の縁が前記膜支持部材を成形するキャビティ内に配置された状態で前記キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出するインサート成形により、前記膜部材を前記膜支持部材に固定する請求の範囲第1項記載の構造物の製造方法。
【請求項8】
前記インサート成形の成形物を離型後に加熱炉内へ導入し、前記膜部材を加熱して熱収縮させる請求の範囲第7項記載の構造物の製造方法。
【請求項9】
前記膜支持部材として前記膜部材の熱収縮温度よりも高い融点の熱可塑性樹脂を用いる請求の範囲第8項記載の構造物の製造方法。
【請求項10】
前記膜支持部材はポリエステル、前記膜部材はエラストマ性ポリエステルである請求の範囲第9項記載の構造物の製造方法。
【請求項11】
膜部材と該膜部材が面を形成するようにその周縁の全部または一部を保持する膜支持部材とを備える構造物の製造方法において、前記膜部材として同一加熱温度下での熱収縮量が異なる少なくとも2種の弾性素材を組み合わせたものを用い、前記膜部材を無張力下あるいは構造物として必要な張力より弱い張力で前記膜支持部材に固定し、その後に前記膜部材を加熱し、前記膜部材を熱収縮させて該膜部材に構造物として必要な弾力性を発揮させる張力を与えると共に前記膜部材の熱収縮量の差によって三次元的な面を形成することを特徴とする構造物の製造方法。
【請求項12】
前記膜部材は曲線を描くべき方向の熱収縮量よりも直線を描くべき方向の熱収縮量が大きくなるものである請求の範囲第11記載の構造物の製造方法。
【請求項13】
請求の範囲第1項から第12項のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする構造物。

【国際公開番号】WO2005/025379
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【発行日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508899(P2005−508899)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011517
【国際出願日】平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】