説明

廃プラスチックの高密度成形方法

【課題】構成成分が異なる廃プラスチックを使用しても、見かけ密度を安定させ、成形物同士の融着による成形不良を抑制できる廃プラスチックの高密度成形方法を提供する。
【解決手段】ポリエチレンとポリプロピレンを含む熱可塑性樹脂を有する廃プラスチックの複数の梱包物からなるロットを、成形用プラスチックとして成形装置10へ供給し成形物を製造する方法において、ロットは複数種類あってロット毎に廃プラスチック中の熱可塑性樹脂の含有量が異なっており、ロット毎に廃プラスチック中の熱可塑性樹脂の含有量を予め測定し、熱可塑性樹脂の含有量が40質量%以上となるように、ロットの中から2種以上のロットを選択し成形用プラスチックとして成形装置10の搬送容器21内へ供給し、搬送容器21内のガスを外部へ排気しながら、加熱手段によって金型23通過時の成形用プラスチックの温度を180℃以上220℃以下にして、成形物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コークスの製造、または高炉の原料に使用可能な廃プラスチックの高密度成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用または工業用として多種類のプラスチックが使用されているが、最終的にこれらは、一般廃棄物または産業廃棄物(以下、単に廃プラスチックという)として廃棄されていた。これらの廃プラスチックには、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂が含まれている。このため、廃プラスチックを焼却処理すると、含まれている塩素等が公害の原因となるため、適切に処理してこれらを資源として再利用することが試みられている。
例えば、特許文献1には、ポリエチレンとポリプロピレンの含有比率を規定した廃プラスチックを、100〜140℃の温度範囲で圧縮し成形する技術が開示されている。
また、特許文献2には、見かけ密度が0.7〜1.2kg/リットルの高密度な廃プラスチックの成形物を製造する方法が開示されている。なお、高密度の成形物を得るため、圧縮成形の際の廃プラスチックの加熱温度を160℃超250℃以下(好ましくは220℃以下)とし、加熱の際に廃プラスチックから発生するガスを排気除去している。
【0003】
【特許文献1】特開2001−232634号公報
【特許文献2】特開2005−126486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、廃プラスチックを成形する温度が100〜140℃と低いため、成形物の見かけ密度が0.66kg/リットル程度と低くなる。このため、例えば、得られた成形物をコークス炉で使用する場合、成形物と石炭との接触面積が大きくなって強度が低く品質の悪いコークスができ易くなったり、またコークス炉の容積は決まっているため成形物の占める割合が増えるに伴って製造されるコークス量が減り生産性が悪くなるという問題があった。
また、特許文献1では、成形物の成形性向上のため、ポリエチレンとポリプロピレンの含有比率を規定している。しかし、廃プラスチックは、例えば、自治体あるいは自治体連合体(以下、単に自治体ともいう)毎に回収されたものであるため、廃プラスチックに含まれるポリエチレンとポリプロピレンの量が、全自治体で一定でなく変動し、得られた成形物の成形性を良好にすることが困難な場合があった。
更に、成形装置の長寿命化(成形機の磨耗)の観点では、混入する無機物量を規定しているが、その効果はあるものの成形装置の長寿命化には改善の余地があった。
一方、特許文献2の方法では、高密度な廃プラスチックの成形物を製造することは可能である。しかし、廃プラスチックは、例えば、各自治体で回収されたものであるため、廃プラスチックの成分構成が、全自治体で一定でなく変動し、例えば、見かけ密度の変動または廃プラスチックの成形性の悪化が発生する(変動が著しい場合は、廃プラスチックが成形されずに粉化したり、また溶融が著しく押出し成形後に行う成形物の切断が不可能となったり、更には所定長さに切断された成形物同士が融着する等の不具合が発生する)。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、構成成分が異なる廃プラスチックを使用しても、例えば、見かけ密度を安定させ、成形物同士の融着による成形不良を抑制できる廃プラスチックの高密度成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る廃プラスチックの高密度成形方法は、ポリエチレンおよびポリプロピレンのいずれか1または2を含む熱可塑性樹脂を有する廃プラスチックが梱包された複数の梱包物からなるロットを、成形用プラスチックとして、該成形用プラスチックを入れる搬送容器と、該搬送容器内の該成形用プラスチックを加熱する加熱手段と、該加熱手段で加熱された該成形用プラスチックを該搬送容器から外部へ押し出すスクリューと、該搬送容器の下流側端部に設けられ該搬送容器内から押し出される前記成形用プラスチックを成形する開口部を備えた金型とを有する成形装置へ供給し、該金型の前記開口部から押し出して成形物を製造する廃プラスチックの成形方法において、
前記ロットは複数種類あって、しかも該ロット毎に前記廃プラスチック中の前記熱可塑性樹脂の含有量が異なっており、該ロット毎に該廃プラスチック中の前記熱可塑性樹脂の含有量を予め測定し、前記ロットの中から2種以上のロットを選択して、該熱可塑性樹脂の含有量を40質量%以上とした前記成形用プラスチックを前記成形装置の前記搬送容器内へ供給し、該搬送容器内のガスを外部へ排気しながら、前記加熱手段によって前記金型通過時の前記成形用プラスチックの温度を180℃以上220℃以下にして、前記成形物を製造する。
【0007】
本発明に係る廃プラスチックの高密度成形方法において、前記各ロットは、前記廃プラスチックを回収する団体毎に回収したものであり、前記梱包物は、廃棄される前記廃プラスチックを圧縮し梱包したものであることが好ましい。
本発明に係る廃プラスチックの高密度成形方法において、前記スクリューの下流側で前記金型の上流側における前記成形用プラスチックの押出し圧力の変動を0.7MPa以上1.3MPa以下の範囲内とすることが好ましい。
【0008】
本発明に係る廃プラスチックの高密度成形方法において、前記成形用プラスチックの前記成形装置への供給は、選択した前記ロットの前記梱包物を予め混合装置で混合した後に行うことが好ましい。
本発明に係る廃プラスチックの高密度成形方法において、前記成形用プラスチックの前記成形装置への供給は、選択した前記ロットの前記梱包物を前記成形装置へ供給する搬送手段に混ぜて(例えば、交互に)載置して行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜5記載の廃プラスチックの高密度成形方法は、熱可塑性樹脂の含有量が異なる複数のロットから2種以上のロットを選択し、熱可塑性樹脂の含有量を40質量%以上とした成形用プラスチックにより成形物を製造するので、高密度の成形物を製造するために、従来使用できなかった種類のロットも使用することが可能となり、高密度成形が可能なロットの種類を従来よりも広げることができる。
また、熱可塑性樹脂の含有量が40質量%以上となる成形用プラスチックを成形装置へ供給し、この熱可塑性樹脂が溶け易くなる180℃以上220℃以下に加熱するので、廃プラスチックの高密度成形が可能となり、成形物の成形性も良好にできる。
これにより、例えば、高密度の成形物を安定してコークス工場に供給できる。また、高密度の成形物を安定して使用できるため、コークス強度に与える影響も少なくてすみ、品質が良好なコークスを生産性よく製造でき、高炉操業の支援にも役立つ。
【0010】
特に、請求項2記載の廃プラスチックの高密度成形方法は、高密度成形するために必要な熱可塑性樹脂を有する廃プラスチックを排出する団体(例えば、自治体)の数を、従来よりも拡大できるので、リサイクル事業における社会的貢献度を、従来よりも更に向上できる。
請求項3記載の廃プラスチックの高密度成形方法は、成形用プラスチックの押出し圧力を設定するので、例えば、成形物同士の過度の融着と成形物の発泡を抑制し、高密度の成形物を歩留まり良く製造できる。
【0011】
請求項4記載の廃プラスチックの高密度成形方法は、選択したロットの梱包物中の廃プラスチックを、成形装置へ供給する前に予め混合するので、安定した品質の成形物を製造できる。
請求項5記載の廃プラスチックの高密度成形方法は、選択したロットの梱包物を、搬送手段に混ぜて載置して成形装置へ供給するので、例えば、混合専用の装置を使う必要がなく、梱包物をそのまま成形装置へ供給でき、作業性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る廃プラスチックの高密度成形方法を適用する廃プラスチックの構成成分ごとの軟化温度の説明図、図2は同廃プラスチック中に含まれる塩化ビニル乾留時のガス発生量を示す説明図、図3は廃プラスチック中に含まれるポリエチレンおよびポリプロピレンの量と成形用プラスチックの見かけ密度との関係を示す説明図、図4、図5は本発明の一実施の形態に係る廃プラスチックの高密度成形方法で使用する廃プラスチックリサイクル設備の説明図である。
【0013】
図1〜図5に示すように、本発明の一実施の形態に係る廃プラスチックの高密度成形方法は、ポリエチレンおよびポリプロピレンのいずれか1または2を含む熱可塑性樹脂を有する廃プラスチックが梱包された複数の梱包物からなるロットを、成形用プラスチックとして成形装置10へ供給し成形物を製造する方法である。なお、前記した熱可塑性樹脂は、軟化温度が180℃以下のものであれば、その全てをポリエチレンおよびポリプロピレンのいずれか1または2で構成しなくてもよく(この場合、熱可塑性樹脂を100質量%として、これに含まれるポリエチレンおよびポリプロピレンのいずれか1または2が70質量%以上)、またポリエチレンおよびポリプロピレンのいずれか1または2で全部を構成(100質量%)してもよい。以下、詳しく説明する。
【0014】
例えば、家庭から排出される廃プラスチックは、トラック等によって廃プラスチックリサイクル設備へ搬送されてくる。
家庭から排出される廃プラスチックは、一般に団体の一例である自治体あるいは自治体連合体(以下、単に自治体ともいう)毎に回収され、中継地(例えば、保管所)を経て、廃プラスチックリサイクル設備に運搬される。この際、廃プラスチックの運搬と保管を容易にするため、回収された廃プラスチックを、例えば、1辺が1m程度の立方体の形状に圧縮し梱包している。これが梱包物である。
【0015】
このように、廃プラスチックリサイクル設備には、複数の自治体および複数の自治体連合体から、梱包物が搬入されてくる。この梱包物中に含まれる廃プラスチックは、自治体毎に、例えば、プラスチックの使用状況と廃プラスチックの回収形態が異なっているため、熱可塑性樹脂の含有量が大きく異なる。しかし、同一の自治体の中では、梱包物の熱可塑性樹脂の含有量に変動がありながらも、概ね一定であることを本願発明者らは新たに知見した。
そこで、熱可塑性樹脂の含有量が異なるまとまりを区別するため、熱可塑性樹脂の含有量が近い複数の梱包物をまとめてロットとしている。従って、特定の自治体毎あるいは自治体連合体毎に回収した複数の梱包物を一つのロットとすることが好ましい。
【0016】
また、本願発明者らは、回収した廃プラスチックから見かけ密度が0.7kg/リットル以上の高密度の成形物を成形するにあたり、成形が安定しないメカニズムの解明に取り組んだ。この安定しない成形とは、例えば、廃プラスチック同士が融着しないこと、また廃プラスチックから発生するガスによる成形装置の腐食により、成形装置の部品交換のために操業休止を余儀なくされること等を意味する。
このメカニズムの解明に際し、本願発明者らは、腐食の原因として腐食性ガスの生成原因に着目した。即ち、塩素含有プラスチックの分解による腐食性ガスの発生影響が出ない(設備が腐食して損耗しない程度の)領域で、かつ成形性が確保できる成形用プラスチックの成形時温度を、180℃以上220℃以下に設定し、その温度で溶けるポリエチレンおよびポリプロピレンのいずれか1または2の熱可塑性樹脂量を、全廃プラスチック量の40質量%以上とすることで、良好な品質の成形物が得られることを発見した。なお、成形時の温度を例えば250℃とすると、成形装置に使用する例えば搬送容器とスクリューは、3ヶ月程度で取替えが必要な程度に顕著に腐食し損耗するが、本実施の形態のように、成形時の温度を前記した温度範囲内に調整することで、長期(例えば、6〜18ヶ月、更にはそれ以上の期間)に渡って取替えが不要となる。
【0017】
前記した温度設定の検討結果を図1、図2に示す。なお、図1中のPEはポリエチレン、PPはポリプロピレン、PSはポリスチレン、PETはポリエチレンテレフタレートであり、図1、図2中のPVCはポリ塩化ビニルである。
図1、図2から明らかなように、成形時温度の上限値を220℃としたのは、塩化ビニルの分解が著しく進まない温度であることに起因する。この分解が進むと、腐食性ガスが発生して好ましくない。
一方、成形時温度の下限値を180℃としたのは、成形性確保の面から、成形用プラスチック中のポリエチレンとポリプロピレンが完全に溶け、他の不溶成分を包み込むのに必要な温度であることに起因する。また、成形時温度が180℃未満の場合、ポリプロピレンの溶融が悪く、成形用プラスチックの見かけ密度を、更に高密度である0.85kg/リットル以上に向上できない。
以上のことから、成形用プラスチックの加熱温度を180℃以上220℃以下としたが、望ましくは、下限を190℃、上限を200℃とした。
【0018】
また、図3から明らかなように、全廃プラスチック中のポリエチレンとポリプロピレン(熱可塑性樹脂)の合計量を、40質量%以上にすることで、成形用プラスチックの見かけ密度を0.85kg/リットル以上に向上させることができる。この図3において、全廃プラスチック中の熱可塑性樹脂の合計量が40質量%の場合、ポリエチレンの含有量は約24質量%であり、ポリプロピレンの含有量は約16質量%である。
なお、全廃プラスチック中の熱可塑性樹脂の含有量の上限値については規定していないが、各自治体から排出される実際の廃プラスチックの構成成分を考慮すれば、例えば、60質量%、更には70質量%程度である。
また、各自治体から排出される実際の廃プラスチックの構成成分を考慮すれば、廃プラスチック中に含まれるポリエチレン量は、例えば、15質量%以上35質量%以下程度であり、ポリプロピレン量は、例えば、10質量%以上25質量%以下程度である。
【0019】
しかしながら、廃プラスチック中のポリエチレンとポリプロピレンの合計量が40質量%を超える自治体数は、一部の自治体(3割程度)であり、残りは40質量%未満であることが、調査の結果判明した。
そこで、ポリエチレンとポリプロピレンの含有量が多い自治体と少ない自治体の廃プラスチックを混合することに着目し、結果として7割の自治体が排出する廃プラスチックを高密度成形できることに想到した。即ち、各自治体で収集した廃プラスチックの各構成成分の比率を事前に調査し、高密度成形に適した構成成分の比率(ポリエチレンおよびポリプロピレンのいずれか1または2が40質量%以上)に事前にブレンドして調整することで、高密度成形可能な自治体の範囲を広げ、あわせて高密度成形機、即ち成形装置10の高位安定稼動を維持することができる。
【0020】
そこで、熱可塑性樹脂量の含有量が40質量%以上となるように、自治体毎に回収したロットの中から、2種以上のロットを選択する。この選択は、ロット毎に廃プラスチック中の熱可塑性樹脂の含有量を、溶媒による抽出法で予め測定して行う。
なお、本実施の形態では、例えば、特開平9−24293号公報に記載の方法に準拠して測定した。より具体的には、以下の手順で行っている。
まず、梱包物を30mm四方の篩目を通過するように破砕し、この破砕物から測定用サンプルを数kg採取して、約100gまで縮分する。次に、この縮分したものを、粒径3mm以下に破砕し、105℃で4時間乾燥した後、更に約20gまで縮分する。そして、この縮分したものを凍結させ500μmに粉砕した後、70℃で5時間真空乾燥し、更に1gまで縮分する。このように縮分したものを、特開平9−24293号公報の段落0007〜段落0015に記載する方法で測定した。
【0021】
ここで、自治体毎に集めたロット中に含まれる廃プラスチックの構成成分を測定した結果を表1に示す。この表1において、PSはポリスチレン、PVCはポリ塩化ビニル、PVDCはポリ塩化ビニリデン、PEはポリエチレン、PPはポリプロピレン、PETはポリエチレンテレフタレートである。また、表1中の低分子化合物とは、樹脂の添加剤(酸化防止剤、可塑剤等)などの低分子有機化合物と推定される。そして、不溶分とは、溶剤分画で使用した有機溶剤に不溶な紙、木、樹脂(熱硬化性樹脂)、無機フィラー等と推定される。なお、表1に記載した各構成成分の合計値は、100質量%に対して±0.1質量%の誤差が生じるが、これは、各構成成分の数値を四捨五入した際の誤差であり問題ない。
【0022】
【表1】

【0023】
表1から、自治体毎に回収されているロットは種類が異なり、しかもロット毎に廃プラスチック中の熱可塑性樹脂の含有量が異なっており、自治体毎にポリエチレンとポリプロピレンの含有量に特徴があることが分かる。これは、例えば、自治体内でのプラスチックの使用状況、自治体毎の廃プラスチックの回収ルール、自治体内での回収した廃プラスチックの処理方法の違いに起因する。
このため、各自治体のポリエチレンおよびポリプロピレン含有量は、各自治体毎に概ね安定していることが知見された。
【0024】
以上の結果から、熱可塑性樹脂の含有量が40質量%以上になるように選択した2種以上のロットを、成形用プラスチックとして、図4に示す各種装置で事前処理を行った後、図5に示す成形装置10へ供給する。
ここで、熱可塑性樹脂の含有量の調整に際しては、表1に示すように、各自治体のロットの廃プラスチックの構成成分の比率を測定し、調整の際に使用する情報としてデータベース化しておくとよい。なお、熱可塑性樹脂の含有量の測定は、各ロットが入荷する毎に測定してもよいが、その含有量が安定している場合は、入荷する毎に測定する必要はない。
そして、高密度成形に適した原料条件になるよう、現在の在庫状況での組み合わせを考えながら操業する。その条件は、ポリエチレンおよびポリプロピレンのいずれか1または2を含む熱可塑性樹脂の含有量を40質量%以上とし、更に不溶分を15質量%以下とすることが好ましい。
【0025】
このように、ロットの組み合わせが決定されたら、図4に示すように、選択されたロットの梱包物を、例えば、フォークリフト11によって図示しない供給コンベア(搬送手段の一例)に順次載置し、この供給コンベアの下流側へ配置された開梱破袋機12へ投入する。これにより、廃プラスチックを包んだビニールが剥ぎ取られ、梱包物内部の廃プラスチックが出てくる。
このように開梱された廃プラスチックは、ベルトコンベア13によって下流側へ搬送されるが、このとき、例えば、目視により明らかに確認できるごみ(例えば、木、紙、または金属)は、人手を介して除去される(手選別)。
【0026】
ごみが除去された廃プラスチックは、粗破砕機14によって破砕(例えば、150mm以下程度)された後、複数の機械選別機15、16(例えば、風力選別または磁力選別)を介し、更に風力選別を用いたPVC除去装置17にて、不要物が除去される。そして、不要物が除去された廃プラスチックを、二次破砕機18によって更に破砕(例えば、30mm以下程度)した後、図5に示す成形装置10へ供給する。
なお、各ロットの梱包物を供給コンベアに載置するに際しては、熱可塑性樹脂の量が40質量%以上を満足するように、異なる種類のロットの梱包物を混ぜて載置することが好ましい。これにより、成形装置10に供給される成形用プラスチックは、粗破砕機14および二次破砕機18による破砕処理と、機械選別機15、16による選別処理が行われるため、混合専用の装置を用いる必要がなくなる。
【0027】
ここで、梱包物を混ぜて供給コンベアに載置する場合の具体例について説明する。
例えば、ポリエチレンとポリプロピレン(以下、熱可塑性樹脂という)の含有量が50質量%のロットAと、30質量%のロットBの場合は、ロットAとロットBを1対1の割合で混合することにより、熱可塑性樹脂の量が40質量%となるので、各ロットを構成する梱包物a、bを、a、b、a、b、a、b、a、b、a、bの順序で、供給コンベアに交互に載置する。
また、熱可塑性樹脂の含有量が少ないロットCと、熱可塑性樹脂の含有量が多いロットDを、熱可塑性樹脂の量が40質量%になるように3対7の割合で混合する場合は、c、d、d、c、d、d、c、d、d、dのように、投入過程(各部分)におけるロットCとロットDの混合割合が予め設定した割合(ここでは、3対7)に近づくように、各ロットを構成する梱包物c、dを、供給コンベアに混ぜて載置する。
【0028】
このように、各ロットの梱包物を供給コンベアに載置するに際しては、混ぜてに載置することが作業性上好ましいが、梱包物を供給コンベアに混ぜて載置することなく、ロット毎に前記した各種装置で事前処理することもできる。
この場合、二次破砕機18で破砕処理されたロット毎の廃プラスチックを、図5に示す混合装置19へ、熱可塑性樹脂の量が40質量%以上を満足するようにそれぞれ供給し、予め混合した後、コンベア20を介して成形装置10へ供給することもできる。
【0029】
成形物を製造する成形装置10は、成形用プラスチックを入れる搬送方向に長い断面矩形状の中空となった搬送容器21と、この搬送容器21内部に配置され、搬送容器21内の成形用プラスチックを搬送容器21から外部へ押し出すスクリュー(図示しない)とを有している。なお、このスクリューは、例えば、回転軸の周囲に螺旋状に羽根が設けられたものを使用でき、2本のスクリューを隙間をあけて平行に配置しているが、1本であってもよい。
搬送容器21の上流側上部には、成形用プラスチックを圧縮しながら搬送容器21内へ送り出すコンパクター22が設けられている。
また、搬送容器21には、搬送容器21内の成形用プラスチックを加熱する加熱手段の一例であるヒータ(図示しない)が設けられており、スクリューによって搬送容器21の上流側から下流側へ送り出される搬送容器21内の成形用プラスチックを加熱できる。
【0030】
そして、搬送容器21の下流側端部には、断面円形(矩形でも良い)の開口部を備えた金型23が設けられ、ヒータで加熱された成形用プラスチックを、金型23の開口部を介して搬送容器21内から外部へ押し出し棒状に成形している。
なお、搬送容器21の長手方向途中位置には、搬送容器21内のガス(例えば、水蒸気)を外部へ排気する複数(1個でもよい)のベント24、25が設けられている。
これにより、成形用プラスチックを成形装置10のコンパクター22を介して搬送容器21内へ供給し、搬送容器21内のガスをベント24、25を介して外部へ排気しながら、ヒータによって金型23通過時の成形用プラスチックの温度を180℃以上220℃以下にして、成形物を製造する。
【0031】
以上の方法により、廃プラスチック同士の融着を促進し、高密度の成形物の製造が可能となるが、例えば、成形物同士の融着が過剰になったり、成形物が発泡するという課題が新たに発生する。
この成形物同士の融着は、溶融物が過度に存在する場合に生じる現象で、成形用プラスチックの押出し圧力が低くなる。なお、本願発明者らの知見では、押出し圧力が設定圧力の−30%(本実施の形態において使用した成形装置10の設定圧力は1MPaであるため、0.7MPa)より低い数値である場合、成形物の製造は可能であるが、融着が顕著となり成形物の歩留まりが低下することが判明した。
【0032】
一方、成形物の発泡は、押出し圧力のかかる高圧の搬送容器21内から、圧力が低下する大気へ押出し成形される際に、溶融した廃プラスチック中のガスが、圧力差により顕著な発泡を起こすことにより発生する。なお、この現象は、搬送容器21内の発生ガスをベント24、25を介して排出することで、一定の抑制効果はあるものの、押出し前後の圧力差が大きいと生じる場合がある。
このように、発泡が生じると、成形物内部での空洞の発生が顕著になり、必要とする密度よりも低い密度を備えた成形物の割合が増加する。
なお、本願発明者らの知見では、押出し圧力が設定圧力の+30%以下、即ち1.3MPa以下であれば、発泡は抑制できることが分かっている。
【0033】
以上に示したように、圧力制御は有効である。この圧力制御は、例えば、以下に示す(1)〜(4)のいずれか1または2以上を行うことで可能である。
(1)搬送容器へ装入する成形用プラスチックの単位時間あたりの装入量(トン)の調整
(2)スクリューの回転数(成形用プラスチックの搬送速度)の調整
(3)ヒータ温度の調整
(4)廃プラスチック中に含まれる難溶融性のプラスチックの含有率が高い自治体の梱包物割合の調整
ここで、圧力を高める場合には、(1)装入量の上昇、(2)回転数の低下、(3)温度の低下、(4)難溶融性の自治体の梱包物割合の増加、の操業アクションをとればよい。
一方、圧力を低める場合には、(1)装入量の低下、(2)回転数の増加、(3)温度の上昇、(4)難溶融性の自治体の梱包物割合の低下、の操業アクションをとればよい。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
図6に、平成17年度に入荷した各自治体毎の梱包物の評価を示す。なお、図6は、梱包物中に含まれる熱可塑性樹脂量が40質量%以上で、そのままの状態で高密度化処理できる自治体をA、そのままの状態では熱可塑性樹脂量が40質量%未満で高密度化できないが、Aと混合することで処理できる自治体をBとし、Aと混合しても処理できない自治体をCとしている(全廃プラスチック量:4万2千トン)。
【0035】
図6から明らかなように、平成17年度の実績では、入荷した全自治体のうち、31%の自治体(A)の梱包物は単独で高密度化可能であった。また、全自治体のうち、43%の自治体(B)の梱包物はそのままでは高密度化できなかったが、31%の自治体(A)と混合することで高密度化処理が可能となった。
このように、従来は入荷した全自治体のうち3割程度の自治体の梱包物しか高密度化処理できなかったが、本願発明を適用することで、全自治体のうち7割程度の自治体の梱包物を高密度化処理できることを確認できた。
【0036】
次に、成形用プラスチックの加熱温度の影響について検討した結果を、表2に示す。なお、成形用プラスチックとして、廃プラスチック中のポリエチレン量が24質量%と、ポリプロピレン量が16質量%の熱可塑性樹脂を有するものを使用した。この成形用プラスチックの圧力は、スクリューの下流側で金型の上流側近傍に配置された圧力センサーが、1MPaとなるように調整した。また、表2において、成形用プラスチックの金型前の温度とは、金型の上流側近傍に配置された温度センサーによって測定された温度であり、この温度は成形用プラスチックが金型を通過するときの温度と略同一である。
【0037】
【表2】

【0038】
表2から明らかなように、成形用プラスチックの温度が180℃以上240℃以下の範囲で、成形物の見かけ密度は良好(0.7kg/リットル)となっているが、温度を230℃以上とすることで成形装置(特に、搬送容器)の腐食が顕著になった。
以上のことから、成形用プラスチックの温度が180℃以上220℃以下(特に、190℃以上200℃以下)の温度範囲で、成形装置の腐食を抑制しながら、高密度の成形物が得られることを確認できた。
【0039】
また、成形用プラスチックの押出し圧力の影響について検討した結果を、表3に示す。なお、成形用プラスチックとして、廃プラスチック中のポリエチレン量が24質量%と、ポリプロピレン量が16質量%の熱可塑性樹脂を有するものを使用した。また、成形用プラスチックの温度は、温度センサーの通過時点で195℃に設定した。
【0040】
【表3】

【0041】
表3から明らかなように、成形用プラスチックの押出し圧力が0.7MPa以上1.3MPa以下の範囲で、成形物の見かけ密度は良好(0.7kg/リットル)であったが、押出し圧力が0.9MPa以上1.1MPa以下の範囲で、成形物の見かけ密度が更に良好であった。
以上のことから、成形用プラスチックの押出し圧力が0.7MPa以上1.3MPa以下(特に、0.9MPa以上1.1MPa以下)の範囲で、高密度の成形物を得られることを確認できた。
【0042】
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部または全部を組合せて本発明の廃プラスチックの高密度成形方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態に係る廃プラスチックの高密度成形方法を適用する廃プラスチックの構成成分ごとの軟化温度の説明図である。
【図2】同廃プラスチック中に含まれる塩化ビニル乾留時のガス発生量を示す説明図である。
【図3】廃プラスチック中に含まれるポリエチレンおよびポリプロピレンの量と成形用プラスチックの見かけ密度との関係を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る廃プラスチックの高密度成形方法で使用する廃プラスチックリサイクル設備の説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る廃プラスチックの高密度成形方法で使用する廃プラスチックリサイクル設備の説明図である。
【図6】実施例に係る廃プラスチックの高密度成形方法を適用可能な廃プラスチックの量を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
10:成形装置、11:フォークリフト、12:開梱破袋機、13:ベルトコンベア、14:粗破砕機、15、16:機械選別機、17:PVC除去装置、18:二次破砕機、19:混合装置、20:コンベア、21:搬送容器、22:コンパクター、23:金型、24、25:ベント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンおよびポリプロピレンのいずれか1または2を含む熱可塑性樹脂を有する廃プラスチックが梱包された複数の梱包物からなるロットを、成形用プラスチックとして、該成形用プラスチックを入れる搬送容器と、該搬送容器内の該成形用プラスチックを加熱する加熱手段と、該加熱手段で加熱された該成形用プラスチックを該搬送容器から外部へ押し出すスクリューと、該搬送容器の下流側端部に設けられ該搬送容器内から押し出される前記成形用プラスチックを成形する開口部を備えた金型とを有する成形装置へ供給し、該金型の前記開口部から押し出して成形物を製造する廃プラスチックの成形方法において、
前記ロットは複数種類あって、しかも該ロット毎に前記廃プラスチック中の前記熱可塑性樹脂の含有量が異なっており、該ロット毎に該廃プラスチック中の前記熱可塑性樹脂の含有量を予め測定し、前記ロットの中から2種以上のロットを選択して、該熱可塑性樹脂の含有量を40質量%以上とした前記成形用プラスチックを前記成形装置の前記搬送容器内へ供給し、該搬送容器内のガスを外部へ排気しながら、前記加熱手段によって前記金型通過時の前記成形用プラスチックの温度を180℃以上220℃以下にして、前記成形物を製造することを特徴とする廃プラスチックの高密度成形方法。
【請求項2】
請求項1記載の廃プラスチックの高密度成形方法において、前記各ロットは、前記廃プラスチックを回収する団体毎に回収したものであり、前記梱包物は、廃棄される前記廃プラスチックを圧縮し梱包したものであることを特徴とする廃プラスチックの高密度成形方法。
【請求項3】
請求項1および2のいずれか1項に記載の廃プラスチックの高密度成形方法において、前記スクリューの下流側で前記金型の上流側における前記成形用プラスチックの押出し圧力の変動を0.7MPa以上1.3MPa以下の範囲内とすることを特徴とする廃プラスチックの高密度成形方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の廃プラスチックの高密度成形方法において、前記成形用プラスチックの前記成形装置への供給は、選択した前記ロットの前記梱包物を予め混合装置で混合した後に行うことを特徴とする廃プラスチックの高密度成形方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の廃プラスチックの高密度成形方法において、前記成形用プラスチックの前記成形装置への供給は、選択した前記ロットの前記梱包物を前記成形装置へ供給する搬送手段に混ぜて載置して行うことを特徴とする廃プラスチックの高密度成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−80634(P2008−80634A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262950(P2006−262950)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】