説明

廃水処理装置、及び廃水処理方法

【課題】 曝気動力の削減と、膜の目詰まりの防止を実現することができる廃水処理槽と及び廃水処理方法を提供する。
【解決手段】
廃水処理装置10は、原水が供給される脱窒槽12aと、脱窒槽12aと連通する硝化槽12bと、硝化槽12bの処理水を生物学的に処理する微生物を包括固定化した粒子径0.3mm〜2.0mmの包括固定化担体42と、硝化槽12b内に浸漬された、膜ろ過による固液分離を行なう膜ユニット14と、膜ユニット14の下方に配置され、散気管16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃水処理装置、及び廃水処理方法に関し、膜分離を利用した廃水処理装置、及び廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活性汚泥処理法を用いた廃水処理施設においては、活性汚泥処理と膜分離を組み合わせた膜分離活性汚泥法(MBR:メンブレンバイオリアクター)の適用が進められている。この方法は、固液分離の手法として膜ろ過を採用しているため、処理水の濁質分の流出を防ぐことができ、且つ、大腸菌も完全に除去できることから、衛生的で、透明度の高い処理水を安定して得ることができるという特徴を持っている。また、活性汚泥の高濃度保持が可能であるため、処理時間の短縮、及び処理施設のコンパクト化が図れる。
【0003】
しかしながら、膜分離活性汚泥法を用いた従来の膜分離装置は、膜の目詰まりが起こるという大きな問題を抱えている。特に、汚泥の性状が悪い場合(即ち、汚泥のフロックが細かい、生物の代謝物が非常に多い等)には、膜の目詰まりを起こしやすく、頻繁に膜の薬液洗浄を必要とし、汚泥性状の更なる悪化や、膜寿命の低下を招き、安定運転の妨げになっていた。
【0004】
この問題を解決する手段として、特許文献1には、酸化剤を添加した逆洗水で膜を逆洗する第1の逆洗ラインと、酸化剤の添加と紫外線の照射の両方を行った逆洗水で膜を逆洗する第2の逆洗ラインとを膜の汚れ程度に応じて切り換えることにより、膜の寿命を長くすることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、系外排出ポンプの運転を制御し、膜エレメントが設置されていない槽中の汚泥を系外に排出することによって、膜の目詰まりを防止することが記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、硝化槽と脱窒槽とを循環する処理水にオゾンを供給することによって、ろ過ユニットのろ過膜にゲル状物質が付着することを抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4144394号公報
【特許文献2】特許第3849686号公報
【特許文献3】特許第3832232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された膜洗浄装置では、高濃度に保持された活性汚泥により膜面が汚染されて目詰まりが起きやすい問題があり、膜表面を強く曝気する必要がある。同様に、特許文献2に記載された処理装置では、膜面の汚染防止のため膜表面を強く曝気する必要がある。
【0009】
また、特許文献3に記載された膜分離装置では、活性汚泥を高濃度に保持するため処理水の粘性が高い。そのため、目詰まり防止のために膜表面を曝気するときの曝気効率が悪いという問題がある。
【0010】
特許文献1〜3のいずれの場合においても、膜表面への強い曝気が必要となる。特に、MBRの消費電力のうち曝気に必要な動力が2/3を占めるため、地球温暖化防止に向けた省エネタイプのMBRの開発が要望されている。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、曝気動力の削減と、膜の目詰まりの防止を実現できる廃水処理装置、及び廃水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の廃水処理装置は、原水が供給される反応槽と、前記反応槽内に供給される前記原水中の処理成分を生物学的に処理する微生物を包括固定化した粒子径0.3mm〜2.0mmの包括固定化担体と、前記反応槽内に浸漬された膜ろ過による固液分離を行なう膜ユニットと、前記反応槽内で、前記膜ユニットの下方に配置された散気装置と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の廃水処理方法は、原水を反応槽に供給する工程と、前記反応槽内に供給された前記原水中の処理成分を、微生物を包括固定化した粒子径0.3mm〜2.0mmの包括固定化担体によって生物学的に処理する工程と、前記反応槽内に浸漬された膜ユニットによって、膜ろ過による固液分離を行なう工程と、前記膜ユニットの下方に配置された散気装置により前記反応槽内を散気する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
上述の包括固定化担体を適用することで、反応槽内のMLSS濃度を低下させることができる。これにより、内生呼吸量に必要な供給空気量を削減でき、散気装置の曝気動力を低減することができる。また、MLSS濃度を低下させることで、反応槽内の処理水の粘性を低下でき、散気装置の曝気効率を改善することができる。
【0015】
粒子径0.3mm〜2.0mmの包括固定化担体を適用することで、包括固定化担体の中心部まで基質や酸素が透過し微生物が増殖し易くなり、その結果、包括固定化担体当たりの反応速度を速くすることができる。
【0016】
包括固定化担体の粒子径は、0.5mm〜1.0mmであることがさらに好ましい。
【0017】
MLSS濃度とは、反応槽内の活性汚泥浮遊物(Mixed Liquor Suspended Solids)を意味する。
【0018】
粒子径0.3mm〜2.0mmの包括固定化担体を適用して曝気することで、膜ユニットの膜面を効率よく洗浄でき、膜の目詰まりを防止することができる。その結果、膜ユニットの洗浄間隔を延ばすことができ、安定した運転が可能となる。また、包括固定化担体により洗浄されるので、散気装置の曝気動力を低減することができる。
【0019】
ここで、粒子径は、包括固定化担体が球形の場合はその直径を、包括固定化担体がほぼ立方体の場合はその一辺の長さを意味する。
【0020】
本発明の廃水処理装置は、前記発明において、前記反応槽に供給される前記包括固体化担体の添加量が5%〜30%であることが好ましい。本発明の廃水処理方法は、前記発明において、前記包括固体化担体の添加量が5%〜30%であることが好ましい。
【0021】
ここで、包括固定化担体の添加量について検討する。添加量を決定するには、(1)処理負荷、(2)酸素供給、(3)担体流動、を考慮する必要がある。
【0022】
処理速度は、一般的に包括固定化担体1mあたり1日に10kg−BODを処理することができる。次に、酸素供給から考えると,空気曝気の場合1mの反応槽で4kg−BODが限界となる。それ以上では,純酸素が必要となる。従ってこの場合,包括固定化担体の添加量は40%が実用的な限界となる。
【0023】
一方、包括固定化担体の流動性からは30%が実用的な限界となるので、上限として30%以下で運転することが好ましい。
【0024】
最終的に、(1)〜(3)までを総合すると,実用可能な担体添加量は5〜30%であり,このましくは10〜15%となる。
【0025】
ここで担体添加量は,担体Volume(分子)を担体の入っている反応槽容積Volume(分母)で割ることで算出される。
【0026】
本発明の廃水処理装置は、前記発明において、前記反応槽のMLSS濃度が4000mg/L以下であることが好ましい。本発明の廃水処理方法は、前記発明において、前記反応槽のMLSS濃度が4000mg/L以下であることが好ましい。
【0027】
反応槽のMLSS濃度を4000mg/L以下とすることで、反応槽内の混合液の粘性が高くなるのを防止することができる。混合液の高粘性化に伴う、散気装置の曝気効率が低下するのを防止することができる。
【0028】
本発明の廃水処理装置は、前記発明において、前記反応槽の余剰汚泥を引き抜くための排出管を備えることが好ましい。本発明の廃水処理方法は、前記発明において、前記反応槽の余剰汚泥を引き抜く工程を有することが好ましい。
【0029】
余剰汚泥を反応槽から排出することで、反応槽内の混合液の微生物濃度が高濃度化し、結果として混合液の粘度が高くなることを防止できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の廃水処理装置、及び廃水処理方法によれば、曝気動力の削減と、膜の目詰まりの防止を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の廃水処理装置の概要図。
【図2】本発明の他の廃水処理装置を示すフローシート。
【図3】本発明の他の廃水処理装置を示すフローシート。
【図4】包括固定化担体の粒子径及び添加量と、膜ユニットの洗浄間隔の関係を示すグラフ。
【図5】従来方式の膜ユニットの洗浄間隔を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0033】
図1は、本発明を適用した廃水処理装置10の全体構成を示す概略図である。廃水処理装置10は硝化・脱窒装置であり、反応槽12と、反応槽12内に浸漬された膜ユニット14と、膜ユニット14の下方に設けられた散気管16と、散気管16に接続されたブロア18とを少なくとも有する。反応槽12は、仕切壁20によって脱窒槽12aと硝化槽12bとに仕切られている。膜ユニット14及び散気管16は、硝化槽12b内に配置される。脱窒槽12aの底部には攪拌装置30が設置される。
【0034】
反応槽12の上流には原水槽22が設置され、原水槽22と脱窒槽12aの間には供給ライン24が設けられる。原水槽22から原水が供給ライン24を介して脱窒槽12aに供給される。原水が脱窒槽12aに貯留される。
【0035】
原水槽22には原水ライン28が接続され、原水ライン28から原水が原水槽22に貯留される。原水は、原水槽22内に設置された微細目スクリーン26を通して、供給ライン24に排出される。例えば、微細目スクリーン26は、孔径0.3〜0.5mmのメッシュを備え、微細目スクリーン26により固形物が除去される。
【0036】
反応槽12には、処理水を硝化槽12bから脱窒槽12aに循環するための循環ライン32が設けられる。循環ライン32には、ポンプ34が配設されており、このポンプ34を駆動することによって、硝化槽12bの処理水の一部が循環ライン32を介して脱窒槽12aに戻される。これにより、処理水は硝化槽12bと脱窒槽12aとの間を循環する。
【0037】
硝化槽12bには余剰汚泥を引き抜くための排出ライン36が配設される。排出ライン36にはポンプ38が設けられ、このポンプ38を駆動することによって、余剰汚泥が硝化槽12bから排出される。余剰汚泥を排出する場合、例えば、MLSS濃度を保持するため,MLSS濃度計(不図示)と流入負荷により汚泥引抜き量を演算することにより,ポンプ38の作動量が制御される。
【0038】
膜ユニット14には排出ライン44が接続され、排出ライン44にはポンプ46が設けられる。このポンプ46を駆動することによって、膜ユニット14を介して硝化槽12bから処理水が取り出される。処理水が膜ユニット14を通過するときに、固液分離が行なわれる。膜ユニット14として、平膜型、中空糸型、チューブラ型等の公知の膜ユニットを使用することができる。
【0039】
脱窒槽12aと硝化槽12bには微生物を包括固定した包括固定化担体40,42が投入される。特に、硝化槽12bに投入される包括固定化担体42は、0.3mm〜2.0mmの範囲の粒子径を有する。
【0040】
本発明の包括固定化担体に包括固定される微生物は、各反応槽の種類に応じて、窒素除去を目的とした硝化細菌又は硝化細菌群、脱窒細菌群、嫌気性アンモニア酸化細菌群等の複合微生物や、ダイオキシン類などの特定の有害化学物質を分解する能力をもった微生物(例えば、アオコ分解菌、PCB分解菌、ダイオキシン分解菌、環境ホルモン分解菌等の純粋微生物等)が好適な例として挙げられる。また微生物としては、培養等により濃縮分離された微生物の他に、下水処理場の活性汚泥、湖沼、河川や海の汚泥、土壌などの各種の微生物を含む微生物含有物も含まれる。
【0041】
固定化材料としては、モノマー、プレポリマー、オリゴマー等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、等を用いることができる。その他、固定化材料のプレポリマーとして、以下のものを用いることができる。
【0042】
(モノメタクリレート類)
ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3クロロ2ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2ヒドロキシメタクリレート、エチルメタクリレート等。
【0043】
(モノアクリレート類)
2ヒドロキシエチルアクリレート、2ヒドロキシプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、tブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、シリコン変性アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、アクリロイルアキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート等。
【0044】
(ジメタクリレート類)
1,3ブチレングリコールジメタクリレート、1,4ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプレングリコールジメタクリレート、2ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、2,2ビス4メタクリロキシエトキシフェニルプロパン、3,2ビス4メタクリロキシジエトキシフェニルプロパン、2,2ビス4メタクリロキシポリエトキシフェニルプロパン等。
【0045】
(ジアクリレート類)
エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2ビス4アクリロキシヒエトキシフェニルプロパン、2ヒドロキシ1アクリロキシ3メタクリロキシプロパン等。
【0046】
(トリメタクリレート類)
トリメチロールプロパントリメタクリレート等。
【0047】
(トリアクリレート類)
トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等。
【0048】
(テトラアクリレート類)
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等。
【0049】
(ウレタンアクリレート類)
ウレタンアクリレート、ウレタンジメチルアクリレート、ウレタントリメチルアクリレート等。
【0050】
(その他)
アクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド等。
なお、上記固定化材料のうち1種類又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
包括固定化担体の重合は、過硫酸カリウムを用いたラジカル重合が最適であるが、紫外線や電子線を用いた重合やレドックス重合でもよい。過硫酸カリウムを用いた重合では、過硫酸カリウムの添加量を0.001〜0.25質量%とし、アミン系の重合促進剤の添加量を0.01〜0.5質量%とすることが好ましい。アミン系の重合促進剤としては、βジメチルアミノプロピオニトリル、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン等を好ましく使用することができる。
【0052】
粒子径0.3mm〜2.0mmの包括固定化担体は、例えば、以下の方法により製造することができる。最初に、使用サイズより大きなサイズの担体ブロックを製造する。次いで、担体ブロックを、格子状の切断刃を備える切断装置にセットする。担体ブロックを所定の搬送速度で搬送しながら、切断刃を通過させて格子状に切断する。最後に、格子状に切断された担体ブロックを、回転する切断刃で切断することで、粒子径0.3mm〜2.0mmの包括固定化担体を製造することができる。
【0053】
次に、廃水処理装置10の動作について説明する。処理すべき原水が原水ライン28から原水槽22に供給される。原水槽22の原水は、微細目スクリーン26を通過して、供給ライン24に送り出される。
【0054】
供給ライン24から原水が処理水として、無酸素条件化に維持された脱窒槽12aに供給される。脱窒槽12a内で、脱窒菌が固定された包括固定化担体40と処理水が接触する。これにより、無酸素条件化で混合液に対し生物学的な処理がなされる。脱窒槽12aの底部には攪拌装置30が設けられているので、包括固定化担体40と処理水の接触が促進され、生物学的処理が効率よく行なわれる。
【0055】
脱窒槽12a内で処理された処理水は、仕切壁20により構成された連通路48を経由して硝化槽12bに流入する。硝化槽12b内で、硝化菌が固定された粒子径0.3mm〜2.0mmの包括固定化担体42と処理水が接触する。硝化槽12bの底部に散気管16が配設されている。散気管16はブロア18に接続されており、ブロア18からエアが供給され、エアが混合液中に気泡として散気する。したがって、硝化槽12b内が好気性条件に維持され、好気性条件化で混合液に対し生物学的な処理がなされる。
【0056】
また、ブロア18からエアが供給されると、包括固定化担体42と混合液が攪拌され、生物学的処理が効率よく行なわれる。包括固定化担体42が攪拌されるので、包括固定化担体42が膜ユニット14中のろ過膜(不図示)と接触する。これにより、ろ過膜に付着した付着物を剥離させることができ、ろ過膜の目詰まりを防止することができる。特に、包括固定化担体42の粒子径が0.3mm〜2.0mmであるので、効率よく攪拌される。その結果、包括固定化担体42とろ過膜との接触回数を多くでき、付着物をより効果的に剥離することができる。
【0057】
ブロア18からエアを供給することによって、エアによりろ過膜に付着した付着物を剥離させることもできる。このとき、ろ過膜は包括固定化担体42により洗浄されるので、ブロア18の曝気動力を低減することができる。包括固定化担体42を投入することによって、硝化槽12bのMLSS濃度を低下させることができ、処理水の粘性を低下できる。これにより、包括固定化担体42とエアによる、ろ過膜の洗浄の効率を改善することができる。
【0058】
硝化槽12bで処理された水は、ポンプ46を駆動することによって、膜ユニット14の内部に吸引される。その際、処理水は、膜ユニット14のろ過膜を透過することによって、固液分離処理され、排出ライン44を介して取り出される。硝化槽12b内の混合液の一部が循環ライン32を介して脱窒槽12aに戻される。
【0059】
なお、硝化槽12bに散気管16に加えて、補助散気管50が設けられる。補助散気管50からエアを散気させることによって、微生物反応に必要な酸素を供給することができる。
【0060】
また、MLSS濃度が上昇した場合には、ポンプ38を駆動することによって、排出ライン36を介して余剰汚泥が硝化槽12bから排出される。MLSS濃度計を硝化槽12bに設置することで、MLSS濃度をモニタリングすることができる。
【0061】
図2は本発明を適用した別の廃水処理装置のフローシートである。廃水処理装置100は、硝化槽102と、脱窒槽104と、再曝気槽106を備える。再曝気槽106には膜ユニット116が設けられる。廃水処理装置100は、例えば、BOD/窒素が概ね1以下の場合に好適に使用される。
【0062】
原水が原水ライン108を介して原水として硝化槽102に供給される。硝化槽102内には硝化菌が包括固定された包括固定化担体202が投入され、包括固定化担体202と処理水とが接触する。硝化槽102の底部には散気管110が配設され、ブロア112と接続される。ブロア112からエアが供給され、エアが散気管110を介して、処理水中に気泡として散気する。これにより、硝化槽102が好気性条件化され、硝化槽102内で原水に対し生物学的な処理がなされる。
【0063】
硝化槽102で処理された水が、無酸素条件下の脱窒槽104に導入される。脱窒槽104には脱窒菌を包括固定した包括固定化担体204が投入される。処理水と包括固定化担体204が接触し、脱窒槽104内で処理水に対し生物学的な処理がなされる。脱窒槽104にはメタノールが投入され、脱窒槽104は無酸素条件化におかれる。硝化処理水を包括固定化担体204により生物学的に処理する際に、メタノールが消費される。
【0064】
脱窒槽104で処理された処理水が、再曝気槽106に導入される。再曝気槽106の底部には散気管114が配設され、ブロア112と接続される。ブロア112からエアが供給され、エアが散気管114を介して、処理水中に気泡として散気する。これにより、再曝気槽106が好気性条件となる。再曝気槽106には、粒子径0.3mm〜2.0mmで、BOD分解菌が包括固定された包括固定化担体206が投入される。包括固定化担体206が、散気管114からのエアにより攪拌され、膜ユニット116のろ過膜と接触する。これにより、ろ過膜に付着した付着物を剥離させることができ、ろ過膜の目詰まりを防止することができる。図2の廃水処理装置においても、図1で説明した廃水処理装置と同様の効果を得ることとができる。膜ユニット116により固液分離された処理水が、排出ライン118を介して再曝気槽106から取り出される。
【0065】
基本的に包括固定化担体は硝化槽−脱窒槽−再曝気槽を循環する。したがって、包括固定化担体内の微生物は、硝化菌、脱窒菌、及びBOD菌が混在して育成している。
【0066】
図3は本発明を適用した別の廃水処理装置のフローシートである。廃水処理装置300は、曝気槽302と、曝気槽302に浸漬された膜ユニット304と、膜ユニット304の下方に配設された散気管306を備える。廃水処理装置300は、例えば、BODとSSの除去を目的に,好気槽(曝気槽)に包括固定化担体を投入した装置にも好適に使用することができる。
【0067】
原水が原水ライン308を介して原水として曝気槽302に供給される。曝気槽302内にはBOD分解菌が包括固定された粒子径0.3mm〜2.0mmの包括固定化担体310が投入され、包括固定化担体310と原水とが接触する。曝気槽302の底部には散気管306が配設され、ブロア312と接続される。ブロア312からエアが供給され、エアが散気管306を介して、混合液中に気泡として散気する。これにより、曝気槽302を好気性条件化にする。曝気槽302内で混合液に対し生物学的な処理がなされる。包括固定化担体310が、散気管306からのエアにより攪拌され、膜ユニット304のろ過膜(不図示)と接触する。これにより、ろ過膜に付着した付着物を剥離させることができ、ろ過膜の目詰まりを防止することができる。図3の廃水処理装置においても図1で説明した廃水処理装置と同様の効果を得ることとができる。膜ユニット304により固液分離された処理水が、排出ライン314を介して曝気槽302から取り出される。
【0068】
以上、本発明の廃水処理装置、及び廃水処理方について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明を、より詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
<実験条件>
図1に示す廃水処理装置を使用し、廃水の処理を行なった。粒子径に関して、0.1mm〜2.1mmの範囲内で、同一の粒子径の包括固定化担体を、添加量5%、10%、15%と変化させて反応槽に投入した。包括固定化担体として、以下に示す担体組成を有する包括固定化担体を使用した。以下の運転条件で、廃水処理装置を運転し、処理を行なった。
【0071】
(包括固定化担体の組成)
・汚泥 :活性汚泥(脱水ケーキ)
・汚泥濃度 :2質量%/担体
・固定化材料:ポリエチレングリコールジアクリレート 15質量%
・重合促進剤:NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン 0.0500質量%
・重合開始剤:過硫酸カリウム 0.0025質
(運転条件)
・MLSS:1000mg/L〜3000mg/L
・透過流速:0.8m/m・日
・薬品洗浄のタイミング:ろ過圧力が20kPaに達した時
・膜材質:PVDF (ポリフッ化ビニリデン)
上述の運転条件で、包括固定化担体の粒子径、及び添加量ごとに、薬品洗浄の間隔を測定した。図4は粒子径及び添加量と、洗浄間隔との関係を示すグラフである。
【0072】
図1に示す廃水処理装置を使用し、包括固定化担体に代えて活性汚泥を使用し、下記の運転条件で廃水の処理を行なった。
【0073】
(運転条件)
・MLSS:8,000mg/L〜15,000mg/L
・透過流速:0.8m/m・日
・薬品洗浄のタイミング:ろ過圧力が20kPaに達した時
・膜材質:PVDF(ポリフッ化ビニリデン)
上述の運転条件で、薬品の洗浄間隔を測定した。図5は、日付を横軸、縦軸をろ過圧力とし、薬品の洗浄間隔をプロットしたグラフである。図5のグラフから、従来方式では約2ヶ月に一回の間隔で洗浄していたことが理解できる。
【0074】
次に、図4と図5を比較する。上述したように、従来方式では図5に示すように洗浄間隔は約2ヶ月であった。図4において、包括固体化担体の粒子径が0.3mm〜2.0mmの範囲では、洗浄間隔は2ヶ月以上であった。つまり、包括固定化担体の粒子径を0.3mm〜2.0mmの範囲とすることで、ろ過膜に対する洗浄効果が向上したことが理解できる。また、図4のグラフから、特に、粒子径の範囲が0.5mm〜1.0mmであるときに、洗浄の間隔を3ヶ月以上と長く、洗浄効果が高いことが理解できる。さらに、図4から、同一の粒子径である場合、担体添加量が多いほうが洗浄間隔を長くでき,洗浄効果が高いことが理解できる。
【符号の説明】
【0075】
10…廃水処理装置、12…反応槽、12a…脱窒槽、12b…硝化槽、14…膜ユニット、16…散気管、18…ブロア、28…原水ライン、30…攪拌装置、32…循環ライン、34,38,46…ポンプ、36,44…排出ライン、40,42…包括固定化担体、100…廃水処理装置、102…硝化槽、104…脱窒槽、106…再曝気槽、110,114…散気管、112…ブロア、116…膜ユニット、202,204,206包括固定化担体、300…廃水処理装置、302…曝気槽、304…膜ユニット、306…散気管、310…包括固定化担体、312…ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が供給される反応槽と、
前記反応槽内に供給される前記原水中の処理成分を生物学的に処理する微生物を包括固定化した粒子径0.3mm〜2.0mmの包括固定化担体と、
前記反応槽内に浸漬された膜ろ過による固液分離を行なう膜ユニットと、
前記反応槽内で、前記膜ユニットの下方に配置された散気装置と、
を備えた廃水処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の廃水処理装置において、前記包括固体化担体の添加量が5%〜30%である廃水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の廃水処理装置において、前記反応槽のMLSS濃度が4000mg/L以下である廃水処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の廃水処理装置において、前記反応槽の余剰汚泥を引き抜くための排出管を備える廃水処理装置。
【請求項5】
原水を反応槽に供給する工程と、
前記反応槽内に供給された前記原水中の処理成分を、微生物を包括固定化した粒子径0.3mm〜2.0mmの包括固定化担体によって生物学的に処理する工程と、
前記反応槽内に浸漬された膜ユニットによって、膜ろ過による固液分離を行なう工程と、
前記膜ユニットの下方に配置された散気装置により前記反応槽内を散気する工程と、
を備えた廃水処理方法。
【請求項6】
請求項5記載の廃水処理方法において、前記包括固体化担体の添加量が5%〜30%である廃水処理方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の廃水処理方法において、前記反応槽のMLSS濃度が4000mg/L以下である廃水処理方法。
【請求項8】
請求項5〜7の何れかに記載の廃水処理方法において、前記反応槽の余剰汚泥を引き抜く工程を有する廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−207657(P2010−207657A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53533(P2009−53533)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】