説明

廃石膏ボード分別処理システム

【課題】回収廃石膏ボード塊に多いすでに砕かれた石膏粉による、破解砕分別装置などの効率低下、スクリーン目詰まりが起こす回収紙片への石膏粉の混入や残渣量増大、粉じんが起こす作業環境悪化および選別効率低下、異物混入が起こす設備障害や回収石膏粉の品質障害。
【解決手段】ホッパーと底部ベルトコンベアと裁断機とを有する定量供給装置、トロンメル式の1次ふるい装置、2軸の圧縮解砕ロールおよび突起付き破砕ロールと2段のスクリューコンベアとその間のスクリーンとを有する破解砕分別装置、振動式などの2次ふるい装置を、各順に配した構成により、定量供給装置によって裁断と定量供給を行い、1次ふるい装置によって石膏粉を先に分離し、破解砕分別装置によって破解砕を行うとともに紙片を分離し、2次ふるい装置によって石膏粉と残渣を分離する、という過程により廃石膏ボードを石膏粉、紙片、残渣に分別回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新築や解体などの建築現場から排出される建設廃棄物のうち、廃石膏ボードの分別処理工程において行われる破砕、解砕、ふるい分けなど様々な本処理が効率的に、かつ円滑に行えるよう、しかも分別回収する紙や石膏粉の純度を高め、よりリサイクルに適した品質の確保を目指すものである。
【0002】
ところで建設廃棄物のうち建設リサイクル法(平成12年改正)に定める「特定建設資材」の対象である3品目(コンクリート、アスファルト、および木材)については原則埋め立て処分が禁止となり、完全リサイクルがすでに求められている。しかしながら、廃石膏ボードは年間136万トン(新築系22万トン、解体系114万トン、2008年推計)排出され、しかもなお増え続けているにもかかわらず、特定建設資材の適用対象となっていない。
【0003】
一方で平成18年発令の環境省局長通知改正により、廃石膏ボードの埋め立て処分は、石膏を紙と分離して、かつ石膏を管理基準の厳しい「管理型処分場」でのみ受け入れる、とした。すなわち廃石膏ボードは、環境汚染の危険がある第1級の廃棄物として、事実上扱われることになった。この改正は、廃石膏が基準に満たない条件で埋め立てられると、水分と有機物が存在する環境下で硫酸菌による分解を受け、猛毒の硫化水素を発生すると判明したことによる。
【0004】
大量に発生し、かつ非常に危険な廃棄物である廃石膏ボードが、なぜ、完全リサイクルが求められる特定建設資材の対象となっていないのか。大きな理由は、現段階においてリサイクル技術の開発と、用途の拡大が遅れているからある。すなわちリサイクルを義務付けようにも現状では、リサイクルする手段が技術的、または経済的に制約されており、規制を強めれば結果、不法投棄を増発する危惧がある。
【0005】
このような、建築現場から排出される廃石膏ボードのリサイクルの拡大が進めにくいという、実態を示す報告として非特許文献1を示す。
本文献では、廃石膏ボードのリサイクルを進めるにあたって、各種調査とともに、浮き彫りになった様々な課題を指摘している。
【0006】
まず、廃石膏ボードの処分方法別の推計値(割合)がそれぞれ示されている(28ページ)。これによればリサイクル率は13%、管理型処分場における埋め立て処分が22%、判別不能が34%あるとされた。
このうちリサイクルに関しては、紙と石膏を分別しただけの場合もリサイクル扱いに含まれている可能性があり、リサイクル率の数字の実態はもっと低いとされている(26ページ)。また管理型処分場は受け入れ余力の逼迫が徐々に深刻化している(21・27ページ)とも指摘した。
【0007】
また、判別不能(処理方法が不明)とされたものにおいては、他の廃棄物との混合廃棄や不法埋め立てなどのいわば「不適正処理」が横行している(27ページ)とした。このように不適正処理の横行の背景には、適法である管理型処分場埋め立て余力の逼迫、リサイクル需要の不足やコストの問題があると思われる。
【0008】
さらに、リサイクルの現状と課題も調査報告されている。それによると、排出の大部分を占める解体系廃石膏ボードのリサイクルはすべて、平成14年度調査からの進展があった(34ページ)とされ、最近ようやく取り組みが進み始めたばかりであることがうかがえる。つまり、異物が多く、排出時や流通時に破壊が進みやすい解体系廃石膏ボードのリサイクルには、純度の高い石膏粉の回収技術の開発が遅れていたことを示している。本文献の調査では、新築系か解体系かの由来を限定していないが、リサイクル先の品質要求が報告されている(34ページ)。
【0009】
以上のように、建設廃棄物の中でも排出量が多く環境負荷の大きな廃石膏ボードは、不適正処理を含めた埋め立て処分量を削減するために、リサイクル技術の開発が喫緊の課題になっていることが分かる。
【0010】
一方、廃石膏ボードの排出由来の源流にあり、またリサイクル先でもある石膏ボードメーカーの立場から報告された資料として、非特許文献2を示す。これによると、石膏ボードの生産原料の由来は、輸入の天然石膏が約3割、発電所などから排出される排煙脱硫石膏など国産の副産石膏が約6割とされている(1ページ)。バージン材料の天然石膏は輸入で賄われており、資源確保の面からも課題があることをうかがわせる。すなわち将来、海外調達に逼迫状況が生じた場合に対応するために、他の鉱物資源と同様、国内で原料確保が可能となるよう、リサイクル技術の開発は重要になっていくであろう。
【0011】
本発明は、リサイクル技術の開発が喫緊の課題となっているという背景を踏まえ、リサイクル用途の拡大、および経済性の確保を目指すことを主眼において提案するものである。特に本発明は、機械的に分別可能な紙(有機物)および他の異物と、石膏との分別度を高め、純度の高い石膏粉を回収しようとする技術分野において、新しい提案をするものである。
【背景技術】
【0012】
従来の関連技術として、下記特許文献を1例挙げる。
ここに示す特許文献1の大きな特徴は、一対のロール間に廃石膏ボードを通し、廃石膏ボードの表面から加える圧力を主体とした圧縮解砕によって、紙を破砕せずに石膏の部分だけを解砕分離する方式である。紙は、石膏と分離された後に突条を設けた紙だけを破砕する一対のロールにより、一定程度の大きさの紙片にちぎられていく。この提案では、圧縮解砕直後において紙が破れずにいるため、大きな紙が回収できるだけでなく、紙粉がほとんど発生しないため石膏粉の純度を飛躍的に高めることができる。
【0013】
この提案において、紙をある程度の小片に破砕するのは、紙片を回収するための送給装置(スクリューコンベアなど)の流動性を高めたり、保管用の容器(フレコンバッグやコンテナなど)の収容効率を高めるなどに必要なものであって、粉々になるほど小さくする必要はない。紙の破砕ロールは紙を回収するのに適した条件を満足すればよいだけである。従って例えば、紙と石膏とを同時に破解砕する旧来の装置では、紙片の一辺が大きくてもせいぜい1センチメートル前後までであったが、本提案の装置では、一辺が10センチメートル以上の紙片を回収することが可能となる。
【0014】
またこの提案では、スクリューコンベアに設けた紙と石膏を分離するためのスクリーンに、大きな紙片が触れながらかき回されるため、スクリーン表面に付着しやすい石膏塊をはたき落として目詰まりを防ぐ、クリーニング効果も発揮する。従って、回収する紙には接着付着しているものを除き、石膏粉が混入しにくいという特長もある。
最近、特許文献1の提案による破解砕分別装置が、廃石膏ボード分別処理業界において注目され多く採用されるようになっている。それは以上のような分別性能を有することで、次の2点において高く評価されているからである。
【0015】
第1に、分別回収される石膏粉に紙粉がほとんど混入せず、石膏ボード原料、セメント副原料、土壌改良材などにリサイクルする場合の品質低下を招かない。当然、旧来方式の分別処理に比べ、回収された石膏粉はリサイクル用途を広げ、また使用率を高めることができる。従って、回収した石膏粉を管理型処分場で埋め立てるなど、環境負荷や経費面での負担を抑えることができ、経済的にも有利になる。
【0016】
第2に、分別回収される紙片が大きく、かつ混入する石膏粉が低減されることで、古紙としてリサイクルへの転用率を高めることができる。従って、焼却処分をするなど、環境負荷や経費面での負担を抑えることができ、経済的にも有利になる。
【0017】
このように廃石膏ボードをリサイクルする上で必要な、画期的な提案がなされている。ただリサイクル率をもっと高めるためには、特許文献1の提案の特徴を最大限に生かす、周辺の補完工程が必要である。例えば、次のような補完機能が必要とされてきた。
【0018】
第1に、投入効率の向上がある。
一般に石膏ボードの新品時の大きさは、厚さが9ミリメートル、板の大きさが900×1800ミリメートルである。建築現場から回収された廃石膏ボード塊には、こういった寸法のものを最大に、様々な大きさや形状に切断、または破壊されたものが含まれている。そうして回収された廃石膏ボード塊を、特許文献1の破解砕分別装置で分別処理する際、次のような問題が生じることが多い(他の従来のものも同様である)。
【0019】
第1に、ロールやスクリューによって解砕するには、狭い空間に廃石膏ボード塊を投入しなければならない。例えば廃石膏ボード塊の中に、一辺が大きな石膏ボードが含まれていると、ロールやスクリューのすき間に沿うよう、まっすぐに投入しなければロールやスクリューの手前で引っかかる恐れがある。コンベアなどを利用して機械投入を行う場合、石膏ボードがどのような方向や角度で搬送されていくか定まらず、入り口で引っかかり、結果として廃石膏ボード塊の進入を阻むという滞留障害が起こりやすかった。特に、重機などを使って一挙に投入する場合では、一辺が小さくてもロールやスクリューのすき間に石膏ボードが集中し、ブリッジを生じる滞留障害が起こりやすかった。
【0020】
重機やコンベアを使った投入による滞留を防ぐために従来は、仮置きヤードにおいてクラッシャー機能付きの重機を使用してあらかじめ粗解砕し、かつ投入量を抑え少しずつ投入するといった、面倒で非効率な方法を採らざるを得なかった。
【0021】
ところで一般に、廃石膏ボード塊には石膏ボード以外のものも混入している。ビス、クギ、ステープル針などの小物以外に、金属や木製の間柱材、塗着したモルタル塊、貼着した金属板などもよくある。建築現場で分別を完全に行うのは難しいのが現状である。
【0022】
小物は破解砕の後工程で、ふるい分けにより残渣などに分離することが可能だが、大物の場合、破解砕分別装置そのものを傷めることもある。モルタル塊などは解砕され小さく砕かれるが、石膏粉に砂粒などが混入して品質を落とすことにつながる。従って、このような大物の異物は、できるだけ破解砕分別装置に投入する前に除去するのがよく、そのためには選別工程を別途設けるのが適切とされている。
【0023】
一般に選別工程は、磁選機による機械的な除去と、作業員の目視および手作業による発見除去の、2つの方法が採られている。いずれもベルトコンベアによって廃石膏ボードを搬送しながら、磁選機により磁性の金属異物を吸引して取り除き、作業員の手選別により他のものを取り除く方法を採る。いずれも、ベルトコンベア上を流れる廃石膏ボード塊の山の中から吸引したり、探り出さなければならない。
【0024】
図5に示すように、ベルトコンベア51の上を移動する廃石膏ボード塊Aに混入する大物の異物Fが、大きな寸法の石膏ボードA’の下にあると、直接覆っている石膏ボードだけでなく、上積みの石膏ボード塊を含む山の重量に阻まれて、磁選機53で吸引したり、作業員で探し出すことが難しかった。仮に小さな片の石膏ボードばかりだったとしても、厚みのある大量の山であれば同じ障害をきたす。従って、選別工程に供給する廃石膏ボード塊は、大きな寸法の石膏ボードをなくし、まんべんなくベルトコンベア上を流れていくよう山を均す前処理工程が必要であった。
【0025】
しかも、この前処理工程は、後工程において品質のよい紙や石膏粉を分離回収するのに適した、特許文献1の提案による破解砕分別装置と同様、紙を細かく破砕して紙粉を多く発生するような方法を採るべきではない。
【0026】
そこで提案されているのが特許文献2の提案である。この提案は、廃石膏ボード塊を投入するための投入開口、および廃石膏ボード塊を排出するための略水平方向へ開いた排出開口を有するホッパーと、該ホッパー底部に間欠駆動可能なベルトコンベアを有し、ベルトコンベアの進行方向の端部であって、かつ該排出開口に設けた裁断機とにより構成し、ベルトコンベアが間欠駆動の停止時において裁断機の裁断刃が往復動することによって、廃石膏ボード塊を所定量排出ごとに裁断する、といった特徴を有している。
【0027】
この提案は、廃石膏ボード塊に含まれる大きな寸法の石膏ボードを一定程度の大きさに裁断し、かつ大きな山ができないよう均して供給を行うため、破解砕分別装置の入り口で滞留障害を起こすことがないだけでなく、大物の異物が選別工程で除去しやすくなる。しかも、後工程で回収する紙や石膏粉の品質を損なわないよう、必要以上に石膏ボード片を小さくせず、また紙粉の発生を抑える、といった利点を有している。従ってこの提案は、特許文献1に示す精度の高い分別が行える破解砕分別装置の効能効果を最大限引き出すことができるだけでなく、他の方式の破解砕分別装置を使用する場合にも有効性が高い。
【0028】
ところで、建築現場から回収された廃石膏ボード塊は、前記したごとくの大きな片の石膏ボードが含まれているだけでなく、解体作業や流通過程など回収に至るまでの過程での取り扱いで、細かく砕かれていることが多い。特に、古い建築物の解体によって回収された廃石膏ボードは、石膏自身の劣化により結合度が低下しており、砕かれやすくなる。従って分別処理を行う前の段階において、かなりの量が大小粒度の石膏粉粒に砕かれていることが多い。つまり、回収され分別処理を待つ状態の廃石膏ボード塊は、すでに破解砕が必要のない粉状のものが多く含まれていることになる。
【0029】
このように粉状のものが多いと、分別処理において次に指摘する不利な状況が発生する。
第1に、いずれの方式の破解砕分別装置にあっても、解砕する必要のない石膏粉が大量に進入するため、本来解砕が必要なものの処理量が減退する。
【0030】
第2に、特許文献1の提案にある破解砕分別装置にあっては、石膏粉の割合が多いため紙片によるクリーニング効果が減退し、紙片に石膏粉が混入しやすくなるため、紙のリサイクルにおける品質障害となる。
【0031】
第3に、人手による異物の選別作業時において廃石膏ボード塊をかき回すため、多くの石膏粉じんが環境を悪化させる。また粉じんにより視界が悪くなり、また異物が石膏粉に埋没し、あるいは紛れて見えにくくなることで、選別効率が低下する。その結果、異物の除去が不十分となり、後工程において機械損傷を招いて稼働効率を低下させたり、モルタルなどに含まれる砂粒などが混入することによる石膏粉のリサイクルにおける品質障害となる。
【0032】
以上のように従来の提案によってもなお、解決されない課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開2001−137726号公報
【特許文献2】特願2010−155326号文件
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】「平成20年度 廃石膏ボード再資源化促進方策検討業務調査報告書」環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部発行(平成21年3月)
【非特許文献2】「廃石膏ボードの対応策について」社団法人石膏ボード工業会発行(2010年5月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
解決しようとする課題は、従来からある高性能の破解砕分別装置を含む各種装置を組み合わせた廃石膏ボード分別処理設備において、さらに効率を高めながら、回収する石膏粉や紙片の品質をこれまで以上に高めることができる補完設備の追加や組み合わせなどによる改善の提案が望まれていることにある。
【0036】
具体的には、特許文献1を含む従来からある破解砕分別装置に加え、特許文献2に提案された定量供給装置を導入してもなお残る、回収した廃石膏ボード塊に多く含まれる粉状に砕かれた石膏粉が引き起こす次に挙げる課題である。
【0037】
第1に、解砕の必要がないすでに砕かれた石膏粉が多いことによる、破解砕分別装置の効率低下。
第2に、特許文献1に提案された破解砕分別装置において、石膏粉の割合が多いことで生じる、紙片と石膏粉を分別するためのスクリーンのクリーニング効果の減退や、他の分別装置におけるスクリーンの目詰まりによる、紙片に石膏粉が多く混入する品質障害。
第3に、選別工程における粉じんの発生による作業環境の悪化。
第4に、粉じんによる視界の低下、および異物が石膏粉に埋没するなどのために生じる選別作業の障害が引き起こす、異物が原因の設備障害および稼働効率の低下。
第5に、選別工程における前記選別作業の障害が引き起こす、異物の混入による石膏粉の品質障害。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明は前記課題の解決を可能とするために提案するもので、以下に本発明の構成ごとの特徴とともにその作用を説明する。
【0039】
請求項1によれば、分別処理工程において、
(1)回収廃石膏ボード塊を受け入れるホッパーと、該ホッパー底部にあって前記回収廃石膏ボード塊を送り出すベルトコンベアと、該ベルトコンベアにより所定量ずつ送り出した前記回収廃石膏ボード塊を裁断して排出する裁断機とを有する定量供給装置、
(2)外周にスクリーンを配したドラムを回転させるトロンメル式の1次ふるい装置、
(3)2軸の圧縮解砕ロールと、該圧縮解砕ロールの下流側に配する突起を有する2軸の破砕ロールと、該破砕ロールの下流側に配する2段のスクリューコンベアと、該2段のスクリューコンベアの間に設けたスクリーンによって構成する破解砕分別装置、
(4)スクリーンを振動、揺動、または回転させることによって分級する2次ふるい装置、
とにより構成し、
各装置(前記1〜4)間を直結または別の搬送手段などを用いて連結することにより、
前記分別処理工程の上流より下流へ向けて、該定量供給装置、該1次ふるい装置、該破解砕分別装置、該2次ふるい装置(前記1〜4)の順に配し、
(A)該定量供給装置(前記1)において裁断され供給量を調節された2次廃石膏ボード塊(板状、片状、および紛状の混合物)を該1次ふるい装置(前記2)に送り、
(B)該1次ふるい装置(前記2)において前記2次廃石膏ボード塊から比較小粒径の1次石膏粉を分離回収し、該1次ふるい装置における分離で残った3次廃石膏ボード塊(板状、片状、および大小粒径の粉状の混合物)を該破解砕分別装置(前記3)に送り、
(C)該破解砕分別装置(前記3)において前記3次廃石膏ボード塊から紙片を分離回収し、該破解砕分別装置における分離で残った石膏粒塊(大小粒径の石膏粉および極小紙片の混合物)を該2次ふるい装置(前記4)に送り、
(D)該2次ふるい装置(前記4)において前記石膏粒塊から比較小粒径の2次石膏粉と残渣(比較大粒径の石膏粉および極小紙片の混合物)を分離する、
という過程を経ることで、
前記回収廃石膏ボード塊を各処理(前記A〜D)を通じて最終的に石膏粉、紙片、残渣に分別分離する、
といった特徴をなす。
【0040】
この構成により、次の作用をなす。
第1に、定量供給装置(前記の構成(1))により裁断機による裁断、および供給量を調節を行う(前記の処理(A))ことで、先行技術である特許文献2と同様の作用、すなわち回収廃石膏ボード塊に大きなボード状のものが混入していた場合であっても、所定の大きさに裁断されたものを供給することができ、また、重機などで一度に大量投入した場合であっても、均一かつ安定的に、大きなボードを含まない2次廃石膏ボード塊を排出供給できるため、次の2つの作用をなす。
【0041】
1つ目の作用は、後工程になる1次ふるい装置(前記の構成(2))および破解砕分別装置(前記の構成(3))の入り口でブリッジを生じにくく、安定的で円滑な処理が可能となる。
【0042】
2つ目の作用は、一般的に破解砕分別の前工程に設けられる選別(異物除去)工程において、金属異物を磁選機で回収する際にボードの重みや、山積みになった塊で妨げられることが抑制され、また作業員が目視で異物を発見しようとボードや塊を動かす手間を抑制することができる。
【0043】
第2に、1次ふるい装置(前記の構成(2))により比較小粒径の1次石膏粉の分離回収を行う(前記の処理(B))ことで、回収廃石膏ボード塊および2次廃石膏ボード塊に粉状のものが多く含まれている場合であっても、あらかじめ粉状のものを除去できるため、次の3つの作用をなす。
【0044】
1つ目の作用は、破解砕分別装置(前記の構成(3))で解砕すべきボード状、片状、塊状のものを効率的に処理できるため、結果として処理能力を向上させることができる。
【0045】
2つ目の作用は、破解砕分別装置(前記の構成(3))に内蔵するスクリーンの目詰まりを防ぎ、分離した紙に石膏粉が混入するのを抑制できる。
【0046】
3つ目の作用は、一般的に破解砕分別の前工程に設けられる選別(異物除去)工程において、粉じんの発生が抑えられ、異物が石膏粉に埋没したり紛れるのを防ぐことで、作業員が目視で異物を発見しやすくなる。
【0047】
第3に、破解砕分別装置(前記の構成(3))により紙片の分離回収を行う(前記の処理(C))ことで、先行技術である特許文献1と同様の作用、すなわち3次廃石膏ボード塊を解砕および破砕し、紙片を分離するとともに、石膏粒塊を取り出すことができる。
【0048】
第4に、2次ふるい装置(前記の構成(4))により比較小粒径の2次石膏粉と残渣の分離を行う(前記の処理(D))ことで、破解砕分別装置(前記の構成(3))から排出された石膏粒塊から、石膏粉と残渣を分別し回収できる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の廃石膏ボード分別処理システムは、次の効果を生む。
第1に、廃石膏ボード塊を大量かつ安定的に、しかも効率的に分別処理できる。
第2に、回収する紙に混入する石膏粉を抑制し、また回収する紙や石膏粉に混入する異物の抑制に寄与することで、それぞれの品質を適正に保持できる。
第3に、異物によって各装置を傷める障害の抑制に寄与する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は請求項1を反映した廃石膏ボード分別処理システムを示した模式図である。(実施例1)
【図2】図2は図1の構成によって処理される過程を示す工程図である。(実施例1)
【図3】図3は本発明を応用した廃石膏ボード分別処理システムを示した模式図である。(実施例2)
【図4】図4は図3の構成によって処理される過程を示す工程図である。(実施例2)
【図5】図5は従来技術における搬送中の廃石膏ボード塊に含まれる異物を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0051】
第1の実施例を図1、図2に示す。本実施例は、本発明請求項1を反映したものである。
図1は工程の流れを模式的に示したもので、図2は工程図(フローチャート)にしたものである。
【0052】
まず、建築現場から回収された廃石膏ボードは一般に、板状のものに限らず、建築現場や流通過程での取り扱いで細かくに砕かれた片状および粉状のものが混じった状態である。特に古い建築物の解体現場から排出されるものは、石膏自身の劣化により結合度が低下しており、砕かれやすく粉状のものが多くなりやすい。実証調査によれば全体の3割程度が粉状のものであった例もある。これら粉状のものは、一定程度以下の粒度であれば、解砕する必要がない。また板状のものは、新品の石膏ボードの一般的な寸法である900×1800ミリメートルを最大に、大小様々な状態で回収される。
本実施例においては、以上のような建築現場から回収された廃石膏ボードの分別処理を、次の工程(装置の構成と処理の過程)により実施する。
【0053】
第1の工程は、回収廃石膏ボード塊A1の裁断と定量供給を行う。
構成は、回収廃石膏ボード塊A1を受け入れる投入ホッパー11と、投入ホッパー11の底部にあって回収廃石膏ボード塊A1を送り出すベルトコンベア12と、ベルトコンベア12により所定量ずつ略水平方向に送り出した回収廃石膏ボード塊A1を裁断する裁断機13とを有する裁断機付き定量供給装置1による(特許文献2と同じ)。
【0054】
このときベルトコンベア12は、裁断機13が作動する際に連動停止するよう間欠駆動を行う。裁断機13は、油圧シリンダなどで略鉛直方向に上刃131が作動するもので、固定の下刃132とにより、送り出された回収廃石膏ボード塊A1を所定量ごとに裁断する。
【0055】
以上の構成と処理により、回収廃石膏ボード塊A1は重機などで一度に大量投入されたとしても、定量供給装置1から次の工程へ排出されるのは、大きなボードを含まず、かつ安定的に調節した量の2次廃石膏ボード塊A2となる。すなわち後工程装置(予備ふるい装置2および破解砕分別装置3)への投入時にブリッジが起きにくく、円滑な運転が可能になる。また、裁断は単純な破壊作用しか働かないため、紙粉の発生がほとんどなく、後工程で分離回収される石膏粉への紙粉の混入を抑制できる。
このとき、排出する2次廃石膏ボード塊A2の次工程への供給には、次工程の装置と直結して行ってもよいし、間にベルトコンベアなどの搬送装置を設けて行ってもよい。
【0056】
第2の工程は、2次廃石膏ボード塊A2の予備ふるい(1次ふるい)を行う。
構成は、外周に予備ふるいスクリーン231を配したスクリーン付回転ドラム23と、底部に設けた回収ホッパー24を有するトロンメル式の予備ふるい装置2による。
【0057】
第1の工程から供給される2次廃石膏ボード塊A2は、スクリーン付回転ドラム23の内部に通じる投入口21から進入し、スクリーン付回転ドラム23とともに回転し撹拌されながら、ふるい分けられる。2次廃石膏ボード塊A2に含まれる粉状のもの(1次石膏粉C1)は、予備ふるいスクリーン231を通じてスクリーン付回転ドラム23の外部に排出され、予備ふるい装置2の底部に設けた回収ホッパー24で収集され、回収ホッパー24の底部に設けた排出口22aを通じて回収される。予備ふるいスクリーン231を通過できない残りの3次廃石膏ボード塊A3は、スクリーン付回転ドラム23から通じる排出口22bから排出され、後工程の装置(破解砕分別装置3)へ供給される。
【0058】
以上の構成と処理により、2次廃石膏ボード塊A2は1次石膏粉C1を分離され、板状、片状、および大小粒径の紛状の混合物となる。このとき、小粒径の粉状のもの(石膏粉)はふるいの能力により一部残留することもあるが、大半が分離除去される。すなわち後工程の破解砕分別装置3の内部に設けた紙分別スクリーン35が目詰まりしにくくなり、回収する紙片Dへの石膏粉の混入が抑制され品質が向上する。
【0059】
さらに、3次廃石膏ボード塊A3の量は、2次廃石膏ボード塊A2の量に対して、1次石膏粉C1を分離した分だけ減量されるので、後工程の各装置(破解砕分別装置3および残渣ふるい(2次ふるい)装置4の処理負担が軽減される。すなわち、前工程の装置(定量供給装置1および予備ふるい装置2)能力を高めるだけで、工程全体としての処理能力を高めることが可能となる。
【0060】
第3の工程は、3次廃石膏ボード塊A3の圧縮解砕、紙破砕、および紙分別ふるいを行う。
構成は、2軸の圧縮解砕ロール33と、その下流側に配する突起を有する2軸の紙破砕ロール34と、その下流側に配する2段のスクリューコンベア36、37と、その間に設けた紙分別スクリーン35を有する破解砕分別装置3による(特許文献1と同じ)。
【0061】
第2の工程から供給される3次廃石膏ボード塊A3は、圧縮解砕ロール33の上部にある投入口31から進入し、板状および片状のものなど、圧縮解砕ロール33どうしのすき間を通らない大きさのものが圧力を受け圧縮破壊され下流へ送られる。このとき圧縮解砕ロール33の表面には、基本的に突起などを設けない。従って紙が表面に付着したままの石膏ボードは、石膏部分のみが砕かれて紙と分離され、この時点で、紙はほとんどが原形のまま残る。
【0062】
残った紙は、圧縮解砕ロール33の下流に配する紙破砕ロール34の表面にある突起の回転によって、ある程度の大きさに破砕され紙片Dになる。このとき、紙破砕ロール34にある突起の形状や間隔は、紙片Dがあまり小さくなりすぎないよう調節することができるため、繊維長の大きなリサイクルに適したものを回収することが可能になる。しかも分離した石膏粒塊への紙粉の混入がほとんどない。
【0063】
以上の破解砕処理を経て得られる紙片と石膏粒塊が混在したものを、上段スクリューコンベア36で進行方向361へ撹拌搬送しながら紙分別スクリーン35を通じて石膏粒塊Bを分離し、残った紙片Dを上段スクリューコンベア36の進行端末にある排出口32bから排出して回収する。また紙分別スクリーン35を通った石膏粒塊Bを下段スクリューコンベア37で進行方向371へ搬送し、下段スクリューコンベア37の進行端末にある排出口32aから排出し、後工程の装置(残渣ふるい装置4)へ供給する。
【0064】
前工程も含めた以上の構成と処理により、紙片Dは紙の表面に接着付着している石膏を除き、石膏粉等の混入が少ない良質なものが回収できる。特に前記したように、初めの回収廃石膏ボード塊A1に含まれていた小粒径の石膏粉は、第2工程の装置(予備ふるい装置2)によりあらかじめ一定程度分離除去されているため、第3工程の破解砕により発生する分を加えた、紙分別スクリーン35で分離する粉状のものの量は大幅に削減でき、目詰まりが生じにくくなる。すなわち、紙片Dへの石膏粉等の混入が抑えられる。処理量を増やしつつこの効果を得るためには第2工程の予備ふるい装置2の能力を、十分に高くする必要がある。
【0065】
一方、紙分別スクリーン35を通って紙片Dと分離した石膏粒塊Bは、紙分別スクリーン35の開口より小さな大小粒径の石膏粉等および極小紙片の混合物となる。
【0066】
第4の工程は、石膏塊Eの残渣分別ふるいを行う。
構成は、残渣分別スクリーン43を振動、揺動、または回転させることによって分級する残渣分別ふるい装置4による。図1で示すように残渣分別スクリーン43は、振動または揺動させるのに適した平板状のものを例に挙げたが、他の方式を採用しても構わない。
【0067】
第3工程から供給される石膏塊Bは、投入口41から進入し、残渣分別スクリーン43の表面を流動しつつふるい分けられる。これにより、残渣分別スクリーン43を通過した小粒径の2次石膏粉C2と、通過しない残渣Eに分級分離される。このときの残渣Eは、ふるい切れなかった少量の小粒径石膏粉と、残渣分別スクリーン43の開口より大きな大粒径石膏粉等および極小紙片の混合物になる。
【0068】
このとき前記したように、初めの回収廃石膏ボード塊A1に含まれていた小粒径の石膏粉は、第2工程の装置(予備ふるい装置2)によりあらかじめ一定程度分離除去しているため、その後の、第3工程の装置(破解砕分別装置3)の破解砕により発生する分を加えた、残渣分別スクリーン43で分離する粉状のものは大幅に削減でき、目詰まりが生じにくくなる。すなわち、残渣Eへの小粒径石膏粉の混入が抑えられ、リサイクルに有効な小粒径石膏粉の回収効率を高めることができるとともに、廃棄物として処分費用が必要になる残渣Eの量を減らすことが可能となる。処理量を増やしつつこの効果を得るためには、やはり第2工程の予備ふるい装置2の能力を、十分に高くする必要がある。
【0069】
以上の構成および処理によって回収される石膏粉(1次石膏粉C1および2次石膏粉C2)、紙片Dは、各装置の適正な能力確保により、従来に比べ飛躍的に良質なものを効率よく回収することが可能となる。このとき、1次石膏粉C1を分離する予備ふるいスクリーン231、および2次石膏粉C2を分離する残渣分別スクリーン43の、それぞれ開口条件を同じにすることで同一の粒径条件の石膏粉を回収できるため、図1に示すように、1次石膏粉C1と2次石膏粉C2を最終的に混合回収しても構わないし、別々に回収してもよい。
【0070】
ところで、建築現場から回収された回収廃石膏ボード塊A1に混入する粉状のものは、解体作業や流通過程において砕かれて発生したもので、比較的単純な砕かれ方をしたものが多い。しかも、第1工程の装置(定量供給装置1)による裁断作用も、回転を伴わず裁断刃の上下動による単純な砕き方を行うものであるため、紙の繊維が細かくなった紙粉を飛散させることがない。従って、2次廃石膏ボード塊A2に混入する粉状のものには、紙粉がほとんど含まれない。すなわち、第2工程の装置(予備ふるい装置2)で分離される小粒径の石膏粉(1次石膏粉C1)は紙粉がほとんどない、リサイクルに適した良質なものが回収可能となる。
【0071】
一方、第3工程の装置(破解砕分別装置3)も特許文献1に提案されたものであるため、前記同様に紙粉の発生が抑えられる。従って、3次廃石膏ボード塊A3を破解砕および分離して得られる石膏塊Bには、紙粉がほとんど含まれない。すなわち、第4工程の装置(残渣ふるい装置4)で分離される小粒径の石膏粉(2次石膏粉C2)は紙粉がほとんどない、前記同様のリサイクルに適した良質なものが回収可能となる。
【0072】
従って、1次石膏粉C1と2次石膏粉C2は、不純物混入の少なさという点で品質の差はほとんどなく、前記したように、それぞれを分離するためのスクリーン231、43の開口条件をそろえることで、両者を混合回収しても差し支えないものとなり、効率的な保管や流通が可能となる。
【0073】
しかも第3、第4工程で処理すべき量は、第1工程に投入した回収廃石膏ボード塊A1にくらべ、第2工程で1次石膏粉C1を分離した分だけ少なくなるため、全体として装置負担を軽くすることができ、その分だけ多くの量の廃石膏ボードの分別処理を行うことができる。本実施例をモデルに実証実験を行った一例を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
この結果をみると、第3〜4工程の能力(毎時約5トン)が低くても、全体として約4割の能力向上が図られたことが分かる。特に、回収時や保管中に湿った廃石膏ボードは、いったん粉状になっても再凝集し固まりやすくなるため、石膏粉がスクリーンの網目周辺に固着し、各装置のスクリーンの目詰まりを起こしやすい。一般に自由水(常温における湿度や温度の変化で自由に増減する水分、結晶に束縛されていない水分のこと)の含有率(含水率)が重量比で10%を超えると、この現象が起こりやすくなる。
【0076】
一方、建築の解体現場では粉じん防止のためにある程度の散水を行うため、廃石膏ボードが湿りやすくなる。また、保管中にも、水蒸気圧の高い気候湿度では含水率が上昇することもある。梅雨時など高温多湿環境では、平衡含水率が15%以上になることも珍しくない。こういった悪条件下では、目詰まりの解消のために頻繁に稼働を停止してスクリーンの清掃を行ったり、投入量を減らして負担を軽くするなどの措置が必要になる。条件によっては、表1に示した最大処理量から3〜5割低下することもしばしばある。
【0077】
本実施例では、前もってある程度の石膏粉を回収するので、破解砕以降の分別負担を軽くすることができる。すなわち、湿った廃石膏ボードであっても、稼働効率の低下を抑制することが可能となる。
【実施例2】
【0078】
第2の実施例を図3、図4に示す。本実施例は、実施例1を応用し多くの実用的な補完工程を付加したものである。
図3は工程の流れを模式的に示したもので、図4は工程図(フローチャート)にしたものである。
本実施例の工程は、以下の通りである。
【0079】
第1工程は裁断機付き定量供給装置1による回収廃石膏ボード塊A1の裁断と、2次廃石膏ボード塊A2の定量供給を行う。
第2工程は予備ふるい装置2による2次廃石膏ボード塊A2の予備ふるいを行い、1次石膏粉C1と3次廃石膏ボード塊A3に分離する。本実施例では1次石膏粉C1を分離する予備ふるいスクリーン231を、後工程における石膏粉分離用の各スクリーンと同一の開口条件にすることで、同じ粒径の石膏粉を回収し、後工程で回収するものと混合させる構成をとる。
ここまでは実施例1と全く同じ構成および処理である。
【0080】
第3工程は選別ライン5による異物の選別除去を行う。この工程はベルトコンベア51によって3次廃石膏ボード塊A3を進行方向511へ搬送しながら、含まれる異物を除去する。異物の除去は主に2つの処理方法で行う。
【0081】
一つ目の処理は、手選別作業者52がベルトコンベア51のそばに位置し、手で3次廃石膏ボード塊A3をかき回しながら、触感と目視で異物F1を探し除去する。主に大物の異物が対象となる。例えば、木製や金属製の間柱や天井下地材、ステンレス板、モルタル塊、電線ケーブル、ビニールひもなどである。これらは、後工程装置の損壊を招く可能性があり、除去が必要である。またモルタルなどは解砕できたとしても、含まれる砂粒が石膏粉に混入するなどして、回収品質を低下させる恐れがある。
【0082】
このとき、大きな板状のボードや粉状のものが多く混じる回収廃石膏ボード塊A1を直接選別しようとすると、廃石膏ボード塊の山の中から探り出さなければならない。従って、異物の上に大きな寸法の石膏ボードが覆っていると、上積みの重量に阻まれて押しのけるのが難しいうえ、機械投入を行うなどした場合にできやすい厚みのある大量の廃石膏ボードの山から探し出すことも、山を崩してかき回すのに手間取る、といった障害があった。
【0083】
また、廃石膏ボード塊に粉状のものが多いと、ベルトコンベアに乗り移る際などに粉じんが発生しやすい。粉じんが発生すると選別の作業環境が悪化するだけでなく、色の違う異物が粉まみれになることで発見しにくくなる。
【0084】
本実施例のように、第1工程において、一定程度の大きさに廃石膏ボードを裁断しながら、供給量が安定かつ均一になるよう調節したうえ、第2工程において、粉状のものをあらかじめ除去したり、同時に廃石膏ボード塊の量そのものを減らすことができれば、手選別作業員52の負担が減り、異物F1の除去作業が円滑に効率よく行える。
【0085】
二つ目の処理は、ベルトコンベア51の上方に磁選機53を設置し、磁石の吸引力で磁性金属の異物を吸引して取り除く。手選別と同様、異物の上積みの重量に阻まれたり、大量の山に埋もれていると吸引が難しい。一つ目の処理と同様、本実施例のように行えば、磁選機53による異物F2の除去が効率よく行える。
【0086】
第4工程は破解砕分別装置3による3次廃石膏ボード塊A3の破解砕後、紙片Dと石膏粒塊Bに分離する。この工程は実施例1の第3工程と同じ構成および処理である。
【0087】
本実施例では、第4工程の派生工程として紙分別ふるい装置(2次)6を追加構成する。第4工程の破解砕分別装置3から分離排出される紙片Dを、投入口61を通じて受け入れ、紙分別スクリーン63を通じて紙片Dに残留混入する石膏粉を含む石膏粒塊B’と紙片D’を分離する。
【0088】
この紙分別ふるい装置(2次)6は2段のスクリューコンベアからなり、投入された紙片Dを上段スクリューコンベア64で進行方向641へ撹拌搬送しながら、紙分別スクリーン63を通じて石膏粒塊B’を分離し、残った紙片D’を上段スクリューコンベア64の進行端末にある排出口62bから排出して回収する。また紙分別スクリーン63を通った石膏粒塊B’を下段スクリューコンベア65で進行方向651へ搬送し、下段スクリューコンベア65の進行端末にある排出口62aから排出する。
【0089】
排出された石膏粒塊B’は、破解砕分別装置3から分離排出される石膏粒塊Bとともに、後工程の装置(残渣ふるい装置4’)へ供給される。石膏粒塊Bと石膏粒塊B’は、分離されたそれぞれのスクリーン、すなわち紙分別スクリーン35、63の開口条件をそろえることで、同条件のものが得られる。
【0090】
このように本実施例では紙分別ふるい装置(2次)6を設けることで、破解砕分別装置3から分離排出される紙片Dに残留混入する石膏粉等をさらにふるい、回収される紙の品質を向上させるとともに、回収される石膏粉の歩留まりを向上させることに貢献する。特に、廃石膏ボードが湿っている場合や、量そのものが多い場合はふるいのスクリーンが目詰まりしやすく、1段階の分離では分離率を高めることが難しかった。紙分別ふるい装置(2次)6は、こういった条件下でも回収品質や回収率を高めるという点で、補完的な役割を果たす。
【0091】
第5工程は残渣分別ふるい装置4’による石膏粒塊B、B’の分別ふるいを行い、最終的に石膏粉C2と残渣Eに分離する。
本実施例では実施例1の残渣分別ふるい装置4を応用し、残渣分別スクリーン43による分別ふるいを2段階にする。1段目の分別ふるいは、供給された石膏粒塊B、B’を残渣分別スクリーン43の上を進行方向431へ送り、石膏粉C2と石膏粒塊B1に分離する。石膏粒塊B1は内部投入口41’を通じて2段目の分別ふるいへ送られる。
このとき内部投入口41’の下流側に残渣圧潰ロール44’を設けて、石膏粒塊B1に混入する比較大粒径の石膏粒を再解砕する。実施例1のように1段階のふるいだけでは回収できなかった、解砕時に小さく砕かれなかった未解砕の石膏粒から、有効な小粒径の石膏粉をより多く回収することができる。
【0092】
このように、残渣分別スクリーン43および圧潰ロール44’による分別ふるいと再解砕は、本実施例の構成に限らず、さらに多段階に構成して処理を繰り返すことで、よりいっそう小粒径石膏粉の回収効率を高めることができる。
【0093】
特に、廃石膏ボードが湿っている場合には各スクリーンで目詰まりしやすく、多段階のふるいを行うことで石膏粉の回収率が高められる。また湿っている場合には一度解砕された石膏粉であっても、搬送中などに水分により互いに結合し、雪だるまのように粒子が膨らむ再凝集を生じることがある。再凝集した石膏粒はスクリーンでふるっても、有効な小粒径の石膏粉として回収するのが難しくなる。こういった再凝集した石膏粒や、未解砕の石膏粒を、圧潰ロール44’で再解砕することで、回収すべき石膏粉の歩留まりを向上させることができる。
【0094】
本実施例では第5工程の派生工程として、残渣分別ふるい装置(2次)7を追加構成する。第5工程の残渣分別ふるい装置4’から分離排出される残渣Eを、投入口71を通じて受け入れ、残渣分別スクリーン73の上を進行方向731へ送り、残渣Eに残留混入する小粒径の石膏粉C2’と残渣E’を分離し、それぞれ排出口72から排出する。
【0095】
分離した石膏粉C2’は、残渣分別ふるい装置4’から分離排出される石膏粉C2とともに、後工程の装置(石膏粉分級ふるい装置8)へ供給される。石膏粉C2と石膏粉C2’は、分離されたそれぞれのスクリーン、すなわち残渣分別スクリーン43、73の開口条件をそろえることで、同条件のものが得られる。
【0096】
このように本実施例では残渣分別ふるい装置(2次)7を設けることで、残渣分別ふるい装置4’から分離排出される残渣Eに残留混入する有効な小粒径の石膏粉をさらに分別ふるいし、処分費用のかかる残渣量を減らすとともに、回収される石膏粉の歩留まりを向上させることに貢献する。特に、廃石膏ボードが湿っている場合や、量そのものが多い場合は分別ふるいのスクリーンが目詰まりしやすく、1装置の分離では分離率を高めることが難しかった。残渣分別ふるい装置(2次)7は、こういった条件下でも回収率を高めるという点で、補完的な役割を果たす。
【0097】
本実施例における残渣分別ふるい装置(2次)7は、残渣と石膏粉の2種分離の分別ふるいを行ったが、
多種分離を行う方法もある。例えば本実施例では、紙分別スクリーン35、63を通過する小さな紙片は、最終的に残渣E’に含まれて回収される。紙のような有機物と石膏とが混合したものは水分が加わると硫酸菌による分解で、硫化水素ガスを発生するという問題が指摘されている。できれば、小さな紙片であっても紙と石膏は分離した方がよい。従って、本実施例における残渣E’をさらに分別ふるいし、小さな紙片を分離回収することも有効である。
【0098】
第6工程は石膏粉分級ふるい装置8による、上流工程で分離回収された石膏粉を粒度によって、粗目の分級石膏粉C3と細目の分級石膏粉C4に分離分級する。分離分級の目的は、リサイクル用途違いなどである。細目になるほど回収効率が落ちるので、必要がなければ省略しても構わない。
【0099】
石膏粉分級ふるい装置8は、第5工程の残渣分級ふるい装置4’やその派生工程の残渣分級ふるい装置(2時)7と基本的に同じ構成であり、投入口81から石膏粉C1、C2、C2’を受け入れ、石膏粉分級スクリーン83の上を進行方向831へ送る。送られた石膏粉C1、C2、C2’のうち、細目の分級石膏粉C3は石膏粉分級スクリーン83を通じて分離し、粗目の分級石膏粉C4は残り部分として分離し、それぞれ排出口82a、82bを通じて回収する。
【0100】
本実施例では、石膏粉C1、C2、C2’を同一の開口条件で分離し、いったん混合した後、最終的に2種類の分級石膏粉C3、C4に分けて回収する構成を採った。しかし、各工程および各段階で別々に分離した石膏粉、例えば予備ふるい装置2により分離した1次石膏粉C1、残渣ふるい装置4’により分離した2次石膏粉C2、残渣ふるい装置(2次)7により分離した2次石膏粉C2’を、別々の開口条件のスクリーンで分離し、別々の粒度条件の石膏粉を回収する方法もある。さらに残渣ふるい装置4’内に構成する複数の分別ふるいのそれぞれの段階ごとに、残渣分別スクリーン43の開口条件を変え、2次石膏粉C2を複数の粒度種類に分級して回収する方法もある。このようにすれば、少ない装置数で複数の粒度種類の石膏粉を回収することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は廃石膏ボードの分別処理を担う設備構成および処理方法を提案したものであるが、板状、棒状、その他複雑な形状の固体が混入する塊を、破解砕しながら機械的に分別処理しなければならない場合において、分別の精度、処理能力、回収品の品質確保に有効性が高い。
【符号の説明】
【0102】
A、A1 回収廃石膏ボード塊
A’ 大寸法の廃石膏ボード
A2 2次廃石膏ボード塊
A3、A3’ 3次廃石膏ボード塊
B、B’、B1、B1’ 石膏粒塊
C1 1次石膏粉
C2、C2’ 2次石膏粉
C3 分級石膏粉(粗目)
C4 分級石膏粉(細目)
D、D’ 紙片
E、E’ 残渣
F 異物
F1 手選別回収の異物
F2 磁選機回収の異物
1 裁断機付き定量供給装置
2 予備ふるい装置
3 破解砕分別装置
4、4’ 残渣分別ふるい装置
5 選別ライン
6 紙分別ふるい装置(2次)
7 残渣分別ふるい装置(2次)
8 石膏粉分級ふるい装置
11 投入ホッパー
12 ベルトコンベア
13 裁断機
21 投入口
22a、22b 排出口
23 スクリーン付回転ドラム
24 回収ホッパー
31 投入口
32a、32b 排出口
33 圧縮解砕ロール
34 紙破砕ロール
35 紙分別スクリーン
36 上段スクリューコンベア
37 下段スクリューコンベア
41 投入口
41’ 内部投入口
42a、42b 排出口
43 残渣分別スクリーン
44’ 残渣圧潰ロール
51 ベルトコンベア
52 手選別作業者
53 磁選機
61 投入口
62a、62b 排出口
63 紙分別スクリーン
64 上段スクリューコンベア
65 下段スクリューコンベア
71 投入口
72a、72b 排出口
73 残渣分別スクリーン
81 投入口
82a、82b− 排出口
83 石膏粉分級スクリーン
121 ベルトコンベアの進行方向
131 裁断刃(上刃)
132 裁断刃(下刃)
133 裁断刃の動作方向
231 予備ふるいスクリーン
331 圧縮解砕ロールの回転方向
341 紙破砕ロールの回転方向
361 上段スクリューコンベアの進行方向
371 下段スクリューコンベアの進行方向
431 残渣分別スクリーン上の進行方向
441’ 残渣圧潰ロールの回転方向
511 ベルトコンベアの進行方向
641 上段スクリューコンベアの進行方向
651 下段スクリューコンベアの進行方向
731 残渣分別スクリーン上の進行方向
831 石膏粉分級スクリーン上の進行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新築や解体の建築現場等から排出された回収廃石膏ボード塊(板状、片状、および粉状の混合物)の分別処理工程において、
(1)前記回収廃石膏ボード塊を受け入れるホッパーと、該ホッパー底部にあって前記回収廃石膏ボード塊を送り出すベルトコンベアと、該ベルトコンベアにより所定量ずつ送り出した前記回収廃石膏ボード塊を裁断して排出する裁断機とを有する定量供給装置、
(2)外周にスクリーンを配したドラムを回転させるトロンメル式の1次ふるい装置、
(3)2軸の圧縮解砕ロールと、該圧縮解砕ロールの下流側に配する突起を有する2軸の破砕ロールと、該破砕ロールの下流側に配する2段のスクリューコンベアと、該2段のスクリューコンベアの間に設けたスクリーンによって構成する破解砕分別装置、
(4)スクリーンを振動、揺動、または回転させることによって分級する2次ふるい装置、
とにより構成し、
各装置(前記1〜4)間を直結または別の搬送手段などを用いて連結することにより、
前記分別処理工程の上流より下流へ向けて、該定量供給装置、該1次ふるい装置、該破解砕分別装置、該2次ふるい装置(前記1〜4)の順に配し、
(A)該定量供給装置(前記1)において裁断され供給量を調節された2次廃石膏ボード塊(板状、片状、および紛状の混合物)を該1次ふるい装置(前記2)に送り、
(B)該1次ふるい装置(前記2)において前記2次廃石膏ボード塊から比較小粒径の1次石膏粉を分離回収し、該1次ふるい装置における分離で残った3次廃石膏ボード塊(板状、片状、および大小粒径の粉状の混合物)を該破解砕分別装置(前記3)に送り、
(C)該破解砕分別装置(前記3)において前記3次廃石膏ボード塊から紙片を分離回収し、該破解砕分別装置における分離で残った石膏粒塊(大小粒径の石膏粉および極小紙片の混合物)を該2次ふるい装置(前記4)に送り、
(D)該2次ふるい装置(前記4)において前記石膏粒塊から比較小粒径の2次石膏粉と残渣(比較大粒径の石膏粉および極小紙片の混合物)を分離する、
という過程を経ることで、
前記回収廃石膏ボード塊を各処理(前記A〜D)を通じて最終的に石膏粉、紙片、残渣に分別分離することを特徴とする廃石膏ボード分別処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−24690(P2012−24690A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165568(P2010−165568)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(592002558)
【Fターム(参考)】