説明

延伸成形用樹脂組成物、延伸成形容器および延伸成形容器の製造方法

【課題】延伸成形加工性に優れ、十分な耐熱性及びガスバリア性を有する延伸成形容器を作製し得る脂肪族ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物であって、示差走査熱量計(DSC)により測定される、結晶化温度+20℃における等温結晶化の発熱量が最大値を示すまでの時間が1.5分〜100分であることを特徴とする延伸成形用樹脂組成物。また、この樹脂組成物を、この樹脂組成物の結晶化温度±20℃の範囲内の温度で延伸成形し、延伸成形と同時にあるいは延伸成形の後に、同温度範囲内で熱処理して結晶化を促進することを特徴とする延伸成形容器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及びガスバリア性に優れた延伸成形容器に適した樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年環境保護の観点から、自然環境中で微生物等の作用によって無害な分解物へと変換される生分解性樹脂が注目されている。
【0003】
しかし、生分解性樹脂、特に脂肪族ポリエステルは、化粧品容器や食品保存容器等の流動体保存容器として使用するにはガスバリア性が不足し、また耐熱性が不十分であるので高い温度において使用すると変形する。さらに、高温時の剛性が低いために高温でブロー容器を成形したときの成形加工性が低いなど、実用上の問題点があり、用途に制限があった。
【0004】
一般的に結晶性高分子では、結晶化を進めることによってガスバリア性、耐熱性を高めることが可能である。しかしポリ乳酸のような脂肪族ポリエステルの場合、結晶化速度が低く、結晶化に最適な金型温度90〜120℃に設定しても、半溶融状態のままである。金型温度を室温近傍に設定することにより、ようやく冷却・固化されるものの、結晶化度は極めて低いものしか得られなかった(例えば、非特許文献1)。
【0005】
また、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器においては、結晶性樹脂を添加することでPETの結晶化速度を制御して成形加工性を向上させる方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかし、180℃における半結晶化時間が30〜100秒(0.5分〜1.7分)と短いため、脂肪族ポリエステル、特にポリ乳酸に適用する場合には結晶化速度が高すぎて十分な成形加工性が得られない問題点があった。
【0006】
一方、脂肪族ポリエステルを用いて耐熱性及び成形加工性に優れたブロー容器を製造する目的で、示差走査熱量計(DSC)で測定した温度75〜160℃の結晶化温度域に実質上二山のピークを持つ樹脂を用いる方法(特許文献3)や、脂肪族ポリエステル樹脂とポリアセタール樹脂を混合する方法(特許文献4)などが提案されている。
【0007】
これらの方法においては、耐熱性の有無を判断する基準が、特許文献3の方法では「容器を55℃の高温槽に5日間保存し、容器側壁部の寸法変形が4%以下」、特許文献4の方法では「容器から切り出した試験片を加熱し、試験片が垂れ下がる温度が65℃以上」と低いものであり、この基準を満たしただけでは実用に十分な耐熱性があるとは言えなかった。また、特許文献4のようなアロイによる改質では、脂肪族ポリエステルの生分解性が低下してしまうという問題もあった。
【0008】
また、脂肪族ポリエステル樹脂の結晶化を進める方法として、有機化合物の添加により結晶化度を向上させる技術(特許文献5)、結晶核剤や結晶化促進剤を樹脂に含有させることで樹脂組成物の結晶化速度を制御し、結晶化度を向上させる技術(特許文献6)、延伸により結晶配向性と結晶化度を向上させる技術(特許文献7)、結晶化速度の高いポリマーとのアロイを用いる技術(特許文献4)、層状珪酸塩を分散させることで結晶化度を向上させる技術(特許文献8)などが知られている。
【0009】
しかしいずれの方法においても、もともと射出成形を想定した樹脂の結晶化を進める方法であるため、必ずしもそのまま延伸成形に応用できるものではなかった。そのため樹脂の結晶化速度が高すぎて成形加工の最中に急速な結晶化が起こりうまく成形できない、逆に結晶化速度が低すぎて十分な耐熱性が得られない、あるいは成形サイクルに長時間要するなど、成形加工性及び耐熱性の両方に優れた容器を製造することは困難であった。
【0010】
【非特許文献1】プラスチックス、Vol.53、No.10、2002年、37〜39頁
【特許文献1】特開2004−010727号公報
【特許文献2】特開2004−010742号公報
【特許文献3】特開2002−201293号公報
【特許文献4】特開2004−091684号公報
【特許文献5】特開2003−128901号公報
【特許文献6】特開2003−253009号公報
【特許文献7】特開平9−025345号公報
【特許文献8】特開2004−204143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決し、耐熱性及びガスバリア性に優れた延伸成形容器の成形加工に適した樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、脂肪族ポリエステル樹脂の結晶化速度を制御することにより、延伸成形法により耐熱性及びガスバリア性を兼ね備えた容器を作製し得る樹脂組成物を提供し得ることを見出し、かかる知見に基づき本発明に到達した。
【0013】
すなわち本発明の要旨は、次のとおりである。
(1) 脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物であって、樹脂組成物の結晶化温度+20℃において示差走査熱量計(DSC)により測定される等温結晶化の発熱量が最大値を示すまでの時間が1.5分〜100分であることを特徴とする延伸成形用樹脂組成物。
(2) 脂肪族ポリエステル樹脂が生分解性であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
(3) 脂肪族ポリエステル樹脂がポリ乳酸であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物からなる延伸成形容器。
(5) (1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物を、この樹脂組成物の結晶化温度±20℃の範囲内の温度で延伸成形し、延伸成形と同時にあるいは延伸成形の後に、同温度範囲内で熱処理して結晶化を促進することを特徴とする延伸成形容器の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、延伸成形加工性に優れた脂肪族ポリエステル樹脂組成物が提供され、この樹脂組成物を延伸成形することにより、耐熱性及びガスバリア性に優れた延伸成形容器を容易に製造することができる。この容器は、化粧品容器や食品保存容器等の流動体保存容器として良好に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の樹脂組成物においては、溶融状態の樹脂を冷却するときに起こる結晶化(すなわちメルト結晶化)の際の結晶化速度が判断の指標となる。
【0017】
まず、示差走査熱量計(DSC)を用いて樹脂組成物の結晶化温度(T)を測定しておく。次いでDSCを用いて、樹脂組成物の融点(T)以上に昇温した後に(T+20℃)に降温し、その温度を保持して樹脂を等温結晶化させる。(T+20℃)に到達してから、結晶化による発熱量が最大値を示すまでの時間(tmax)をもって、結晶化速度を表す指標とすることができる。tmaxの値が小さいほど結晶化速度の高い樹脂組成物であると判断できる。
【0018】
等温結晶化させる温度がTに近すぎると、樹脂組成物によっては結晶化が速すぎて最大値が明瞭に検出されない問題が起こる可能性があるため、tmaxは、(T+20℃)で測定することが必要である。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、tmaxが1.5分〜100分であることが必要である。好ましくは1.7分〜100分、より好ましくは5分〜50分、もっとも好ましくは10分〜50分である。tmaxが1.5分未満の場合には、延伸成形時に急速な結晶化が起こり、成形品に肉厚ムラや変形が生じやすい。また、tmaxが100分を超えると成形時に高温金型内で固化が進まず、耐熱性やガスバリア性が不十分なものとなりやすい。
【0020】
本発明における脂肪族ポリエステルとしては、(1)グリコール酸、乳酸、ヒドロキシブチルカルボン酸、(2)グリコリド、ラクチド、ブチロラクトン、カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン、(3)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどの脂肪族ジオール、(4)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレン/プロピレングリコール、ジヒドロキシエチルブタンなどのようなポリアルキレンエーテルのオリゴマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレンエーテルなどのポリアルキレングリコール、(5)ポリプロピレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、ポリヘキサンカーボネート、ポリオクタンカーボネート、ポリデカンカーボネートなどのポリアルキレンカーボネートグリコール及びそれらのオリゴマー、(6)コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸などから選ばれる少なくとも1つ以上の原料を主成分(70質量%以上)とした重合体であって、脂肪族ポリエステルのブロック及び/またはランダム共重合体に他の成分、たとえば芳香族ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルガノシロキサンなどを30質量%以下の範囲でブロック共重合またはランダム共重合したもの、及び/またはそれらの混合したものも含まれる。
【0021】
脂肪族ポリエステル樹脂として植物由来原料からなる樹脂を50質量%以上含有する樹脂を用いると、植物由来度が高いことから石油資源の削減効果が高くなり、好ましい。より好ましくは、植物由来原料からなる樹脂を60質量%以上使用することであり、さらに好ましくは80質量%以上とすることである。植物由来原料からなる樹脂としてポリ乳酸を用いると、成形加工性、透明性、耐熱性が向上するため特に好ましい。また、ポリ乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸の含有比率は特に限定されないが、市販されているものとしては(L−乳酸/D−乳酸)=80/20〜99.5/0.5の範囲のものが一般的である。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、主成分である脂肪族ポリエステルに、たとえば添加剤やその他の樹脂成分を添加することによって作製できる。
【0023】
本発明の樹脂組成物を作製するために添加剤を用いる場合、たとえば熱安定剤や酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、末端封鎖剤、充填材、分散剤等が使用できる。熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばホスファイト系有機化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物を使用することができる。これらの添加剤は一般に溶融混練時あるいは重合時に加えられる。末端封鎖剤としては、カルボジイミド、オキサゾリンなどが挙げられる。無機充填材としては、タルク、層状珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ、ケナフ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品が挙げられる。
【0024】
また、これらの添加物は、本発明の効果を損なわない範囲において、本発明の目的とは別の理由で添加してもよい。
【0025】
樹脂中に分散したアスペクト比の高いフィラーは樹脂組成物のガスバリア性を向上させる効果を持つため、添加剤として層状珪酸塩を使用するとガスバリア性が高くなり好ましい。ポリ乳酸に対しては、層状珪酸塩の層間イオンを有機アンモニウムイオンに置換した層状珪酸塩を用いるとフィラーの分散性が向上し、ガスバリア性が高くなり、さらに好ましい。
【0026】
添加剤の濃度や種類によって樹脂組成物の結晶化速度は変化し、その結果tmaxの値が変化する。たとえばタルクを添加剤として用いた場合、tmaxを本発明の範囲にするためには、0.01〜10重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0027】
本発明の樹脂組成物を作製するために、種類の異なる脂肪族ポリエステル樹脂同士、あるいは脂肪族ポリエステル以外の樹脂と脂肪族ポリエステル樹脂とを混合する方法も使用できる。主成分である脂肪族ポリエステル樹脂よりも結晶化速度の高い樹脂を用いれば、添加剤と同様にその混合比を調整することで本発明の樹脂組成物を作製できる。
【0028】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限り、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、及びそれらの共重合体等の非脂肪族ポリエステル樹脂を添加してもよい。添加量は特に限定されないが、脂肪族ポリエステル樹脂の生分解性を損なわないために、樹脂組成物全体100質量%に対して非脂肪族ポリエステル樹脂の割合を20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、一部が架橋されていてもかまわない。また、エポキシ化合物などで修飾されていてもかまわない。
【0030】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂の分子量は特に限定されないが、その指標となる190℃、2.16kgにおけるメルトフローインデックス(MFI)が0.1〜50g/10分の範囲であれば好ましく使用することができ、さらに好ましくは、0.2〜40g/10分の範囲である。
【0031】
本発明の樹脂組成物を用いた容器の成形方法は特に限定されず、公知のブロー成形方法により、延伸成形容器を製造することができる。
【0032】
ブロー成形法としては、例えば原料チップの溶融後に溶融パリソンを成形し直ちにブロー成形を行うダイレクトブロー法や、まず射出成形で予備成形体(有底パリソン)を成形して次いでブロー形を行う射出ブロー成形法を採用することができる。また予備成形体成形後に連続してブロー成形を行うホットパリソン法、いったん予備成形体を冷却し取り出してから再度加熱してブロー成形を行うコールドパリソン法のいずれの方法も採用できる。
【0033】
本発明では、樹脂の結晶化度を向上させて容器の耐熱性及びガスバリア性を向上させるために、容器を構成する成形体を、T±20℃の範囲内の温度で延伸成形後さらに同温度範囲内で熱処理して結晶化を促進することが好適である。熱処理工程は、成形加工と同時でもあるいは成形加工後でも構わない。上述のブロー成形において、成形金型の温度を上記範囲内に設定した場合は、成形加工と同時に熱処理が行われることになるので工程が簡略化されてより好ましい。本発明の樹脂組成物を用いることで、成形加工と同時の熱処理工程で起こる急速な結晶化による成形の不具合の問題を回避でき、目的の成形体を得ることができる。成形金型の温度を上記範囲より低く設定した場合は、結晶化が困難になり得られる容器の耐熱性及びガスバリア性が不十分となる場合がある。したがって成形加工後に上記範囲で熱処理することで、樹脂の結晶化度を向上させて容器の耐熱性及びガスバリア性を向上させることができる。逆に成形金型の温度を上記範囲より高く設定した場合は、偏肉が生じる、粘度低下によりドローダウンする等の成形加工性の問題が発生する可能性がある。
【0034】
本発明の延伸成形容器としては、流動体用容器等が挙げられる。その形態は、特に限定されないが、流動体を収容するためには深さ20mm以上に成形されていることが好ましい。容器の厚さは、特に限定しないが、必要強度から考えて0.2mm以上、好ましくは0.5〜5mmである。流動体用容器の具体例としては、乳製品や清涼飲料水や酒類等の飲料用コップ及び飲料用ボトル、醤油、ソース、マヨネーズ、ケチャップ、食用油等の調味料の一時保存容器、シャンプー・リンス等の容器、化粧品用容器、農薬用容器等が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0036】
実施例及び比較例において、評価に用いた測定法は次の通りである。
【0037】
(1)樹脂組成物の融点Tと結晶化温度T
DSC(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、25℃から200℃に20℃/分で昇温し、その温度を10分間維持した。その後−55℃まで20℃/分で降温し、再び200℃まで20℃/分で昇温した。降温時に得られた発熱ピークのトップを樹脂の結晶化温度Tとし、2回目の昇温時に得られた吸熱ピークのトップをその樹脂組成物の融点Tとした。
【0038】
(2)tmax
延伸成形前の樹脂組成物について、DSCを用いて融点以上に昇温し、その温度を10分間維持した。その後、(T+20℃)に降温し、その温度を保持して樹脂を等温結晶化させた。この等温結晶化の温度(T+20℃)に到達してから、結晶化による発熱量が最大値となるまでの時間をtmaxとした。tmaxが小さいほど結晶化の速い樹脂であると判断できる。比較例1では、結晶化速度が低くTの値が測定できないため、等温結晶化の温度を130℃とした。
【0039】
(3)酸素透過量:
成形したボトルについて、窒素ガスチャンバーを用いて窒素ガス置換後、ゴム栓で密栓し、20℃、相対湿度60%の条件下にて30日間保存した。ガスタイトシリンジを用いてボトル内のガスを採取し、ガスクロマトグラフ(熱伝導度検出器)にてボトル内の酸素濃度変化を測定した。得られた測定値から、一日あたりの酸素透過量(ml・day−1・bottle−1で表す)を求め、この値が0.1ml・day−1・bottle−1以下であるものを良好(○)とし、これを超えるものを不良(×)とした。
【0040】
(4)水蒸気透過率:
この値が小さいほど、バリア性が良好であることを示す。すなわち、成形したボトルに純水を充填して密封し、50℃の乾燥機中にて30日間保存した後、内容物減少率が3重量%以下であるものを良好(○)とし、3重量%を超えるものを不良(×)とした。
【0041】
(5)成形性:
成形したボトルに対し、成形時に目視で評価を行った。成形後のボトルの外観が良好で連続成形可能なものを成形性良(○)とし、肉厚ムラ・変形などが生じたものを成形性不良(×)とした。
【0042】
(6)耐熱性:
成形後のボトルを120℃(実施例1〜16及び比較例1〜7)または90℃で(実施例17及び比較例8)で30分間熱処理した後の外観が良好なものを耐熱性良(○)とし、肉厚ムラ・変形などが生じたものを耐熱性不良(×)とした。
【0043】
実施例、比較例において用いた各種原料を示す。
【0044】
(1)脂肪族ポリエステル樹脂
・ポリ乳酸(NatureWorks社製4031D、重量平均分子量190,000、T167℃、T110℃)
・ポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS Pla P−10、重量平均分子量170,000、T108℃、T73℃)
【0045】
(2)無機添加物
・微粉タルク(林化成社製MW HS−T、平均粒径2.5μm)
【0046】
(3)有機添加物
・ステアリン酸マグネシウム(和光化成社製)
・エチレングリコールジメタクリレート(日本油脂社製)
・ジエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂社製)
・グリシジルメタクリレート(日本油脂社製)
・ヘキサメチレンジイソシアネート(和光化成社製)
・ジブチルパーオキサイド(日本油脂社製)
・エルカ酸アミド(和光化成社製)
・エチレンビスステアリルアミド(和光化成社製)
【0047】
(4)層状珪酸塩
・ソマシフMEE(コープケミカル社製、層間イオンがジヒドロキシエチルメチルドデシルアンモニウムイオンで置換された膨潤性合成フッ素雲母)
・ソマシフMTE(コープケミカル社製、層間イオンがメチルトリオクチルアンモニウムイオンで置換された膨潤性合成フッ素雲母)
・エスベンE(ホージュン社製、層間イオンがトリメチルオクタデシルアンモニウムイオンで置換されたモンモリロナイト)
【0048】
(樹脂組成物の製造)
実施例1〜16、比較例1〜7
ポリ乳酸に、表1に示す添加剤をそれぞれの割合でドライブレンドにて添加し、池貝社製PCM−30型2軸押出機(スクリュー径30mmφ、平均溝深さ2.5mm)を用いて、190℃、スクリュー回転数200rpm(=3.3rps)、滞留時間1.6分で溶融混練を行い、各樹脂組成物を得た。なお、樹脂組成物の組成は、得られる樹脂組成物全体が100質量%となるように設定した。また全ての樹脂組成物において、溶融混練に際して滑剤としてステアリン酸マグネシウムを、樹脂組成物全体100質量%に対して0.02質量%となるようにドライブレンドにて添加した。比較例1は、滑剤のみ添加して溶融混練をおこなった。さらに、実施例5〜8及び比較例4の樹脂組成物については、表1に示す添加剤の他に、ジブチルパーオキサイドを0.1質量%それぞれに添加した。
【0049】
実施例17、比較例8
ポリブチレンサクシネートに、表1に示す添加剤をそれぞれの割合でドライブレンドにて添加し、130℃、スクリュー回転数200rpm(=3.3rps)、滞留時間1.6分で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。いずれの樹脂組成物においても、溶融混練に際して、滑剤としてステアリン酸マグネシウムを、樹脂組成物全体100質量%に対して0.02質量%となるようにドライブレンドにて添加した。
【0050】
(熱特性の測定)
次いで、得られた各樹脂組成物を乾燥して水分率300ppm以下とし、DSC(パーキンエルマー社製DSC7)を用いて融点Tと結晶化温度T、tmaxをそれぞれ測定した。各樹脂組成物のT、T、tmaxを表1に示した。
【0051】
(樹脂組成物の延伸成形)
得られた樹脂組成物について、射出ブロー成形機(日精ASB機械社製ASB−50TH)を用い、融点以上の温度であるシリンダ設定温度200℃で溶融して10℃の金型に充填し、10秒間冷却して5mm厚の予備成形体(有底パリソン)を得た。これを120℃の温風で加熱した後、所定の温度に設定された低温金型または高温金型に入れ、圧力空気3.5MPaの条件下でブロー成形し、内容積130ml、厚み1.1mmのボトル容器を作製した。低温金型はその温度を25℃(実施例2)に設定し、高温金型はその温度を120℃(実施例1、実施例3〜16及び比較例1〜7)または90℃(実施例17及び比較例8)に設定した。この高温金型の温度は、各樹脂組成物に関し、上述のT±20℃の範囲内という条件を満たすものであった。
【0052】
実施例14では、成形した容器をさらに熱風乾燥機中において120℃で30分間の熱処理を行った。
【0053】
得られた容器の評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1〜17においては、いずれも樹脂組成物のtmaxが1.5〜100分の間にあるため、ブロー成形での成形加工性が良好で、かつガスバリア性を表す酸素透過量と水蒸気透過率も良好であり、また、成形と同時に熱処理を施したため成形体の耐熱性も良好であった。
【0056】
実施例13〜16の樹脂組成物は、tmaxが10〜50分の間にあり、なおかつ添加剤として層状珪酸塩を含んでいるため、ガスバリア性が特に良好であった。
【0057】
実施例14の樹脂組成物は、成形後にさらに熱処理を行ったことによりさらにガスバリア性が向上していた。
【0058】
比較例1〜2の樹脂組成物は、tmaxが100分よりも大きいために、高温金型での成形時に固化が進まずドローダウンを起こすといった成形加工上の問題があり、また成形と同時の結晶化が不十分であったため、ガスバリア性や耐熱性に問題があった。
【0059】
比較例3〜8の樹脂組成物は、tmaxが1.5分よりも小さいために、成形時に急速な結晶化が起こって肉厚ムラ・変形などが生じるといった成形加工上の問題があり、容器にピンホールができるなどしたためガスバリア性の評価が不可能であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物であって、示差走査熱量計(DSC)により測定される、結晶化温度+20℃における等温結晶化の発熱量が最大値を示すまでの時間が1.5分〜100分であることを特徴とする延伸成形用樹脂組成物。
【請求項2】
脂肪族ポリエステル樹脂が生分解性であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
脂肪族ポリエステル樹脂がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物からなる延伸成形容器。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を、この樹脂組成物の結晶化温度±20℃の範囲内の温度で延伸成形し、延伸成形と同時にあるいは延伸成形の後に、同温度範囲内で熱処理して結晶化を促進することを特徴とする延伸成形容器の製造方法。

【公開番号】特開2007−320203(P2007−320203A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153932(P2006−153932)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】