説明

建物

【課題】建物本体の外壁表面に開口する複数の開口部を有する建物において、建物の外観意匠性を向上させるとともに、開口部から建物内への通風を確保する。
【解決手段】建物本体2の正面外壁2a表面に開口する2階部腰窓W2、バルコニー用窓W3等を有する建物1において、正面外壁2a表面に、多数の通気孔3dを有する帯状の通気部材3を、2階部腰窓W2及びバルコニー用窓W3の前面を通るようにかつ上下に複数隣接して固定する。これにより、通気部材3の存在が強調されて2階部腰窓W2及びバルコニー用窓W3に統一感を持たせることができ、建物の外観意匠性を向上させることができる。また、この通気部材3は、2階部腰窓W2及びバルコニー用窓W3から屋内への通風を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物本体の外壁表面に開口する複数の開口部を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁には、窓やバルコニー等の開口部が設けられる(特許文献1参照)。これらの開口部は、設置位置をまとまりのあるものにすることによって建物外観の意匠性を向上させることができるとともに、屋内への通風を確保して、良好な居住環境を提供することができる。
【特許文献1】特開平5−98814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、建物に開口部を設けると、例えば浴室やトイレ等の水廻りや中間層の配置位置等といった建物の構造上の問題によって、開口部の設置位置にずれが生じ、建物の外観を損ねる恐れがあった。一方、建物に開口部を設けなかったり開口部を閉塞部材等で塞いでしまうと、屋内への通風を確保できないという問題があった。
【0004】
本発明の課題は、建物本体の外壁表面に開口する複数の開口部を有する建物において、建物の外観意匠性を向上させるとともに、開口部から建物内への通風を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば図1,2に示すように、建物本体2の外壁(例えば、正面外壁2a)表面に開口する複数の開口部(例えば、2階部腰窓W2、バルコニー用窓W3等)を有する建物1において、
前記外壁(例えば、正面外壁2a)表面に、多数の通気孔3dを有する帯状の通気部材3が、前記複数の開口部(例えば、2階部腰窓W2、バルコニー用窓W3等)の前面を通るようにかつ上下に複数隣接して固定されていることを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、建物本体2に設けられた複数の開口部(例えば、2階部腰窓W2、バルコニー用窓W3等)の前面を通るように帯状の通気部材3が水平に固定されているため、通気部材3の存在が強調されて複数の開口部(例えば、2階部腰窓W2、バルコニー用窓W3等)に統一感を持たせることができ、建物1の外観意匠性を向上させることができる。また、この通気部材3は、多数の通気孔3dを有するため、開口部(例えば、2階部腰窓W2、バルコニー用窓W3等)から屋内への通風を確保することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1に記載の建物1において、前記通気部材(例えば、緑化通気部材6)が、前記開口部(例えば、2階部腰窓W2、バルコニー用窓W3等)のうち少なくとも1つに設ける手摺を兼ねていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、通気部材(例えば、緑化通気部材6)は開口部(例えば、2階部腰窓W2、バルコニー用窓W3等)の手摺を兼ねているため、開口部(例えば、2階部腰窓W2、バルコニー用窓W3等)に専用の手摺を設ける必要がなくなり、施工が容易になる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1又は2に記載の建物1において、前記通気部材3が、前記開口部(例えば、1階部腰窓W1)のうち少なくとも1つの前面を覆っていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、通気部材3は開口部(例えば、1階部腰窓W1)の前面を覆っているため、開口部(例えば、1階部腰窓W1)から屋内への通風を確保することができるとともに、視線を遮り、強い光を和らげることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、例えば図4,5に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物1において、前記通気部材(例えば、緑化通気部材6)は、植生基盤10を収容可能な収容部6aを有することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、通気部材(例えば、緑化通気部材6)の収容部6aに植生基盤10を収容することによって、この植生基盤10から通気孔(例えば、受材通気孔7d、本体通気孔8d)を介して植生植物を育成させることができるため、建物本体2の外壁(例えば、正面外壁2a)表面を緑化することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、例えば図4,5に示すように、請求項4に記載の建物1において、前記通気部材(例えば、緑化通気部材6)は、長手方向に延在する受材凹部7cを有する通気部材受材7と、
この通気部材受材7に係合して固定され、長手方向に延在する本体凹部8cを有する通気部材本体8と、を備え、
前記通気部材本体8は、本体凹部8cと受材凹部7cとを対向させた状態で、前記通気部材受材7に係合して固定されており、
前記収容部6aは、前記受材凹部7c及び本体凹部8cによって形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、通気部材本体8を、本体凹部8cと受材凹部7cとを対向させた状態で、通気部材受材7に係合して固定することによって、受材凹部7c及び本体凹部8cによって形成された収容部6aを有する通気部材(例えば、緑化通気部材6)を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通気部材の存在が強調されて複数の開口部に統一感を持たせることができ、建物の外観意匠性を向上させることができる。また、開口部から屋内への通風を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る建物1の構成を示すもので、(a)が建物本体2の正面図、(b)が建物本体2に通気部材3を固定した建物1の正面図である。
【0017】
図1に示すように、建物1は、正面外壁2aに複数の開口部を有する建物本体2と、この建物本体2の正面外壁2aに固定された通気部材3と、を備えている。建物本体2の正面外壁2aには、1階に玄関Eと1階部腰窓W1が設けられ、玄関Eの上方にバルコニーBが張り出して設けられ、このバルコニーBに対応する位置にバルコニー用窓W3が設けられている。また、1階部腰窓W1の上方には2階部腰窓W2が設けられている。
【0018】
図1,2,4に示すように、通気部材3は、水平に長尺な帯状の部材であり、複数の通気部材3が上下に隣接して建物本体2の正面外壁2aに固定されている。これらの通気部材3は、1階部腰窓W1の前面を覆うとともに、2階部腰窓W2及び玄関Eの上端部の前面を覆っている。また、通気部材3は、2階部腰窓W2及びバルコニー用窓W3の下部の前面を覆うとともに、2階部腰窓W2及びバルコニーBの手摺を兼ねている。これらの2階部腰窓W2及びバルコニーBの手摺の上端に対応する位置には、後述する緑化通気部材6が連続して設けられている。
【0019】
図2,3に示すように、通気部材3は、長手方向に延在する凹部3cを有する断面コ字型の形鋼であり、さらに詳しくは、断面視において、平板状の中央部3aとこの中央部3aの両端に対向して設けられた一対の取付部3bとを備えている。また、通気部材3の中央部3aには、厚さ方向に貫通するとともに、長手方向と直交する方向に長尺な複数の楕円形の通気孔3dが、所定間隔ごとに形成されている。
なお、通気部材3は、樹脂から成型してもよい。
【0020】
通気部材3は、断面視において平板状の固定部4aとこの固定部4aの略中央に立設された立設部4bとを備える断面T字型のブラケット4を介して、正面外壁2aに固定されている。さらに詳しくは、通気部材3の取付部3bの外側にブラケット4の立設部4bが当接した状態で、ビス5a及びボルトによってブラケット4が通気部材3に取り付けられ、このブラケット4の固定部4aがビス5bによって正面外壁2aに取り付けられている。また、通気部材3同士は上下に隣接している、すなわち、隣り合う通気部材3は、それらの取付部3bでブラケット4の立設部4bを挟んだ状態で、ボルト5c及びナットによって固定されている。
【0021】
図1,4,5に示すように、2階部腰窓W2及びバルコニーBの手摺の上端に対応する位置に設けられた緑化通気部材6は、通気部材3と同様に、水平に長尺な帯状の部材であり、通気部材受材7と、通気部材本体8と、植生基盤10と、を備えている。
【0022】
図4,5に示すように、通気部材本体8は、通気部材3と同様のものであり、本体中央部8aと一対の本体取付部8bとによって形成され、かつ長手方向に延在する本体凹部8cを備えている。また、本体中央部8aには、多数の本体通気孔8dが形成されている。
【0023】
通気部材受材7は、長手方向に延在する受材凹部7cを有する断面コ字型の形鋼であり、さらに詳しくは、断面視において、平板状の受材中央部7aとこの受材中央部7aの両端に対向して設けられた一対の受材取付部7bとを備えている。また、通気部材受材7の受材中央部7aには、厚さ方向に貫通するとともに、長手方向と直交する方向に長尺な複数の楕円形の受材通気孔7dが、所定間隔ごとに形成されている。
なお、通気部材受材7及び通気部材本体8は、樹脂から成型してもよい。
【0024】
通気部材本体8は、本体凹部8cと受材凹部7cとを対向させた状態で、通気部材受材7に係合して固定されている。さらに詳しくは、通気部材受材7の受材凹部7cに、通気部材本体8の一対の本体取付部8bが挿入され、これらの本体取付部8bの外側面と通気部材受材7の受材取付部7bの内側面がそれぞれ当接した状態で、ボルト5d及びナットによって固定されている。
【0025】
図1,4,5に示すように、緑化通気部材6の内部には、受材凹部7c及び本体凹部8cによって形成された収容部6aが形成されており、2階部腰窓W2及びバルコニー用窓W3に対応する位置の収容部6a内に、植生植物Gを育成可能な植生基盤10が充填された袋状部材が収容されている。
ここで、植生基盤10とは、例えば土壌、肥料、及び保水材等を混合したもので、これらをバインダー等で固化したものでもよい。また、袋状部材とは、例えば吸水性を有する不織布等であり、植生植物Gの育成に応じて切込みが設けられている。
【0026】
植生植物Gは、植生基盤10から発芽すると、袋状部材に設けられた切込みと、通気部材受材7に設けられた受材通気孔7d及び通気部材本体8に設けられた本体通気孔8dとを介して緑化通気部材6から露出する。
なお、緑化通気部材6から建物本体2側へ植生植物Gを露出させないために、植生基盤10の位置に対応する受材通気孔7dを板部材等で塞いでもよい。また、緑化通気部材6は、植生植物Gが発芽する前の状態のものを正面外壁2aに取り付けてもよく、育成した段階のものを正面外壁2aに取り付けてもよい。
【0027】
緑化通気部材6は、通気部材受材7の受材中央部7aの外側を正面外壁2aに当接させた状態で、ビス5eによって該正面外壁2aに固定される。また、緑化通気部材6と通気部材3とは、受材取付部7bと取付部3bとで断面L字型のブラケット4cを挟んだ状態で、ボルト5f及びナットによって固定される。
【0028】
以上の実施形態によれば、建物本体2に設けられた玄関E、1階部腰窓W1、2階部腰窓W2、及びバルコニー用窓W3の前面を通るように帯状の通気部材3が水平に固定されているため、通気部材3の存在が強調されて複数の開口部に統一感を持たせることができ、建物1の外観意匠性を向上させることができる。また、この通気部材3は、多数の通気孔3dを有するため、玄関E、1階部腰窓W1、2階部腰窓W2、及びバルコニー用窓W3から屋内への通風を確保することができる。
【0029】
また、通気部材3は1階部腰窓W1の前面を覆っているため、1階部腰窓W1から屋内への通風を確保することができるとともに、視線を遮り、強い光を和らげることができる。
【0030】
さらに、緑化通気部材6は2階開口部W2及びバルコニー用窓W3の手摺を兼ねているため、2階開口部W2及びバルコニー用窓W3に専用の手摺を設ける必要がなくなり、施工が容易になる。
【0031】
また、緑化通気部材6の収容部6aに植生基盤10を収容することによって、この植生基盤10から受材通気孔7d及び本体通気孔8dを介して植生植物Gを育成させることができるため、建物本体2の正面外壁2aを緑化することができる。
【0032】
さらに、通気部材本体8を、本体凹部8cと受材凹部7cとを対向させた状態で、通気部材受材7に係合して固定することによって、受材凹部7c及び本体凹部8cによって形成された収容部6aを有する緑化通気部材6を容易に形成することができる。
【0033】
また、通気部材3は、玄関E及び2階部腰窓W2の上端部の前面を覆っているため、玄関E及び2階部腰窓W2から屋内への強い光を和らげることができる。
【0034】
なお、本実施例においては、通気孔3d、受材通気孔7d、及び本体通気孔8dの形状を鉛直方向に長尺な楕円形としたが、これに限られるものではなく、円形や長方形であってもよい。植生基盤10を充填した袋状部材は、2階部腰窓W2及びバルコニー用窓W3の手摺に対応する位置にのみ設置したが、緑化通気部材6の収容部6a全体に収容してもよい。
【0035】
図6,7に示すように、通気部材13は、建物本体12,22の正面外壁12a,22aのみでなく、側面外壁12b,22bにも設けても良い。
また、図6に示すように、通気部材13を1階と2階との中間部付近のみに設けても良い。この場合、最上部に位置した通気部材13は2階腰窓W4,W5及びバルコニーB1の手摺になるとともに、建物本体12の正面壁面12a及び側面壁面12bに通気部材13による帯が設けられ、建物11の外壁に統一感を持たせることによって建物11の外観意匠性を向上させることができる。
さらに、図7に示すように、三方向を建物本体22によって囲まれた小庭T等を有する建物21の場合は、この小庭Tの前面を通気部材23で覆っても良い。これにより、小庭Tへの通風を確保し、小庭Tへの視線を遮るとともに強い光を和らげることができる。
また、例えば、この建物21に設けられる複数の窓W6〜W10のうち、1階腰窓W6および2階腰窓W7を掃き出し窓とし、これら1階腰窓W6および2階腰窓W7の前面を通気部材23で覆っても良い。
これにより、建物本体22の室内のチリやホコリ等の掃き出しが容易となるだけでなく、1階腰窓W6および2階腰窓W7への通風を確保し、1階腰窓W6および2階腰窓W7への視線を遮るとともに強い光を和らげることができる。また、特に、2階腰窓W7が掃き出し窓であっても、前面が通気部材23によって覆われているので、所定の大きさ以上の物の落下や、居住者の転落等を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る建物の構成を示すもので、(a)は建物本体の正面図、(b)は通気部材を取り付けた状態の建物の正面図である。
【図2】通気部材の構成を示す斜視図である。
【図3】外壁への通気部材の取付構造を示す断面図である。
【図4】緑化通気部材の構成を示す斜視図である。
【図5】外壁への緑化通気部材の取付構造を示す断面図である。
【図6】本発明に係る建物のその他の実施形態における構成を示すもので、(a)は建物本体の概略斜視図、(b)は建物本体の1階と2階との中間部付近のみに通気部材を設けた建物の概略斜視図である。
【図7】本発明に係る建物のその他の実施形態における構成を示すもので、(a)は建物本体の概略斜視図、(b)は小庭の前面に通気部材を設けた建物の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
B バルコニー
E 玄関
G 植生植物
T 小庭
W1 1階部腰窓
W2 2階部腰窓
W3 バルコニー用窓
1,11,21 建物
2,12,22 建物本体
2a,12a,22a 正面外壁
12b,22b 側面外壁
3,13,23 通気部材
3a 中央部
3b 取付部
3c 凹部
3d 通気孔
4 ブラケット
4a 固定部
4b 立設部
4c ブラケット
5a,5c,5d,5f ボルト
5b,5e ビス
6 緑化通気部材
6a 収容部
7 通気部材受材
7a 受材中央部
7b 受材取付部
7c 受材凹部
7d 受材通気孔
8 通気部材本体
8a 本体中央部
8b 本体取付部
8c 本体凹部
8d 本体通気孔
10 植生基盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体の外壁表面に開口する複数の開口部を有する建物において、
前記外壁表面に、多数の通気孔を有する帯状の通気部材が、前記複数の開口部の前面を通るようにかつ上下に複数隣接して固定されていることを特徴とする建物。
【請求項2】
前記通気部材が、前記開口部のうち少なくとも1つに設ける手摺を兼ねていることを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記通気部材が、前記開口部のうち少なくとも1つの前面を覆っていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
前記通気部材は、植生基盤を収容可能な収容部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物。
【請求項5】
前記通気部材は、長手方向に延在する受材凹部を有する通気部材受材と、
この通気部材受材に係合して固定され、長手方向に延在する本体凹部を有する通気部材本体と、を備え、
前記通気部材本体は、本体凹部と受材凹部とを対向させた状態で、前記通気部材受材に係合して固定されており、
前記収容部は、前記受材凹部及び本体凹部によって形成されていることを特徴とする請求項4に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−211518(P2007−211518A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33823(P2006−33823)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000114086)ミサワホーム株式会社 (288)
【Fターム(参考)】