説明

建築用又は土木用の壁構造体、これに用いる柱状材及びこの柱状材の製造方法並びにこの壁構造体に用いる小壁構造体

【課題】 柱状材の隣接で形成される平面に垂直な軸周りで屈曲させることの可能な建築用又は土木用の壁構造体、これに用いる柱状材及びこの柱状材の製造方法並びにこの壁構造体に用いる小壁構造体を提供すること。
【解決手段】長手方向に沿って係合溝を有する第一の柱状材9と、この係合溝に係合する第二の柱状材10,11とを備える。これら第一、第二の柱状材を隣接させ複数組み合わせると共に複数組み合わせた第一、第二の柱状材に長尺部材14を貫通させて連結することにより構成する。第一又は第二の柱状材のいずれかは、長手方向に対し断面略同一形状の柱状材を長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断する。180度反転させた姿勢で接合させることにより柱状材9,10,11の隣接で形成される平面103に垂直な軸104周りで屈曲させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用又は土木用の壁構造体、これに用いる柱状材及びこの柱状材の製造方法並びにこの壁構造体に用いる小壁構造体に関する。さらに詳しくは、長手方向に沿って係合溝を有する第一の柱状材と、この係合溝に係合する第二の柱状材とを備え、これら第一、第二の柱状材を隣接させ複数組み合わせると共に複数組み合わせた第一、第二の柱状材に長尺部材を貫通させて連結することにより構成した建築用又は土木用の壁構造体、これに用いる柱状材及びこの柱状材の製造方法並びにこの壁構造体に用いる小壁構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
上記建築用壁構造体としては、次の特許文献1に記載の如きものが知られている。同文献によれば、係合溝と突条とをそれぞれ有する柱状材の係合溝と突条とを交互に組み合わせ、建築用壁構造体を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−364098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献記載1の壁構造体では、柱状材の隣接で形成される平面を屈曲させるように壁構造体を屈曲させることは可能であり、ある程度の地形の変化には追随できる。しかし、例えば円錐面状の壁構造体を構成する場合や、壁構造体の高さを変化させる場合には、壁構造体を、柱状材の隣接で形成される平面に垂直な軸周りで屈曲させる必要がある。そして、このような屈曲は上記特許文献1の壁構造体では不可能であった。
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、柱状材の隣接で形成される平面に垂直な軸周りで屈曲させることの可能な建築用又は土木用の壁構造体、これに用いる柱状材及びこの柱状材の製造方法並びにこの壁構造体に用いる小壁構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建築用又は土木用の壁構造体の特徴は、長手方向に沿って係合溝を有する第一の柱状材と、この係合溝に係合する第二の柱状材とを備え、これら第一、第二の柱状材を隣接させ複数組み合わせると共に複数組み合わせた第一、第二の柱状材に長尺部材を貫通させて連結することにより構成した構成において、
前記第一又は第二の柱状材のいずれかは、長手方向に対し断面略同一形状の柱状材を長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合させることにより柱状材の隣接で形成される平面に垂直な軸周りで屈曲させたことにある。
【0007】
同特徴構成は、図14,15,16,17,18、23,24にかかる実施形態に相当する。なお、特徴構成が相当する実施形態を以下カッコ書きで示す。例えば、図18では、固定用柱状材9が第一の柱状材、角度調整用柱状材10又は11が第二の柱状材に相当する。
【0008】
上記構成において、前記第一の柱状材は、前記係合溝の他側にも長手方向に沿って係合溝を備えるものであってもよい(図14,18)。また、前記第二の柱状材は、係合方向の両側に対し長手方向に沿って断面円弧状の円弧面を有するものであってもよい(図15、18)。
【0009】
上記建築用又は土木用の壁構造体に用いる柱状材の特徴は、前記第一及び第二の柱状材のいずれかは長手方向に沿って係合溝及び突条を軸対称位置に有することにある(図17,23)。また、同柱状材は、両側に長手方向に沿って係合溝、係合溝若しくは突条、断面円弧状の円弧面又は突条を有し、長手方向に対して略同一形状のものを、前記両側の中間において長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合させてもよい(図14,15,16,17,23,24)。
【0010】
上記建築用又は土木用の壁構造体に用いる柱状材の製造方法の特徴は、両側に長手方向に沿って係合溝、係合溝若しくは突条、断面円弧状の円弧面又は突条を有し、長手方向に対して略同一形状のものを、前記両側の中間において長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合することにある(図14,15,16,17,23,24)。
【0011】
また、建築用又は土木用の壁構造体の他の特徴は、長手方向に沿って係合溝を有する第一の柱状材と、この係合溝に係合する第二の柱状材とを備え、これら第一、第二の柱状材を隣接させ複数組み合わせると共に複数組み合わせた第一、第二の柱状材に長尺部材を貫通させて連結した構成において、
長手方向に対し断面略同一形状の前記柱状材の一群を隣接させ係合させて小壁構造体を構成し、小壁構造体を前記長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合させることにある(図22)。
【0012】
この「他の壁構造体」に用いる小壁構造体の特徴は、長手方向に沿って係合溝を有する第一の柱状材と、この係合溝に係合する第二の柱状材とを備え、長手方向に対し断面略同一形状の前記柱状材の一群を隣接させ係合させて小壁構造体を構成し、小壁構造体を前記長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合させてある建築用又は土木用の壁構造体に用いることにある(図22)。
【0013】
一方、上記小壁構造体の製造方法の特徴は、長手方向に沿って係合溝を有する第一の柱状材と、この係合溝に係合する第二の柱状材とを備え、長手方向に対し断面略同一形状の前記柱状材の一群を隣接させ係合させて小壁構造体を構成し、小壁構造体を前記長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合することにある(図22)。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明に係る特徴によれば、簡易な製法で柱状材の隣接で形成される平面に垂直な軸周りで屈曲させることの可能な建築用又は土木用の壁構造体、これに用いる柱状材及びこの柱状材の製造方法並びにこの壁構造体に用いる小壁構造体を提供することが可能となった。これにより、建築用又は土木用の壁構造体の構成の自由度が更に向上し、様々な形状や地形に対応できるようになった。
【0015】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は設置面が平坦な場所へ壁体の設置を垂直に行なう場合の実施形態を示す壁体の正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図2】(a)は固定用柱状材と調製用柱状材の係わり、更に貫通孔と連結用長尺部材の係わりを示す断面図であり、(b)は(a)のC−Cの断面図であり、(c)はD−Dの断面図である。
【図3】(a)は固定用柱状材の製作図を示す材の断面図であり、(b)は(a)の斜視図である。
【図4】(a)は固定用柱状材より調製柱状材の外周径が大きい場合の接点を示す断面図であり、(b)は(a)の拡大図である。
【図5】(a)は固定用柱状材より調製用柱状材の外周径が小さい場合の接点を示す断面図であり、(b)は(a)の拡大図である。
【図6】(a)は調製用柱状材の正面図であり、(b)は(a)のE−Eの縦断面図である。
【図7】(a)は固定用柱状材と調製用柱状材及び貫通孔と連結用長尺部材及び他の固定用部材の関係を示す断面図であり、(b)(c)は(a)の拡大図である。
【図8】(a)は固定用柱状材の断面図であり、(b)は(a)の側面図である。
【図9】(a)は調製用柱状材の製作図を示す断面図であり、(b)は(a)の斜視図である。
【図10】(a)は調製用柱状材の切断位置を示す正面図であり、(b)は(a)の側面図であり、(c)は(a)の切断後の側面図であり、(d)は(a)の切断後の正面図である。
【図11】(a)は角度調製用柱状材の正面図であり、(b)は(a)のG−G断面図である。
【図12】(a)は角度調製用柱状材の切断位置を示す正面図であり、(b)は(a)の側面図であり、(c)は(a)の切断後の正面図であり、(d)は(c)の側面図である。
【図13】(a)は建築用柱状材の加工図を示す端面図であり、(b)は(a)の斜視図である。
【図14】(a)は固定用柱状材の切断位置を示す正面図であり、(b)は(a)の側面図であり、(c)は(b)の切断後の側面図であり、(d)は(a)の切断後反転接着状態を示す側面図であり、(e)は(d)の正面図である。
【図15】(a)は調製用柱状材の切断位置を示す正面図であり、(b)は(a)の切断位置を示す側面図であり、(c)は(b)の切断状態を示す側面図であり、(d)は切断後接着状態を示す側面図であり、(e)は(d)の正面図である。
【図16】(a)は調製用柱状材の切断位置を示す正面図であり、(b)は(a)の側面図であり、(c)は切断した柱状材の状態を図示した側面図であり、(d)は切断した材の一方を反転接着した側面図であり、(e)は(d)は正面図である。
【図17】(a)は建築用柱状材の切断位置を示す正面図であり、(b)は(a)の切断位置を示す側面図であり、(c)は(b)を切断した状態を示す側面図であり、(d)は切断した材の一方を反転し接着した材の側面図であり、(e)は(d)の正面図である。
【図18】(a)は新しい加工方法で製作した角度調整用柱状材の連結状態を示す正面図であり、(b)は(a)のR−R断面図である。
【図19】(a)は第二の実施形態の柱状材の連結配置図であり、(b)は(a)のK−K断面図であり、(c)は(a)のL−Lの断面図であり、(d)は(a)のM−Mの断面図である。
【図20】(a)は固定用柱状材と角度調整用柱状材の連結状態を示す正面図であり、(b)は(a)のN−N断面図であり、(c)は(a)のO−O断面図である。
【図21】(a)は第三の実施形態の側面図であり、(b)は(a)のP−P断面図であり、(c)は(a)のQ−Q断面図である。
【図22】(a)小壁構造体を示す正面図であり、(b)は(a)の切断位置を示す側面図であり、(c)は(b)を切断した状態を示す側面図であり、(d)連結状態の角度調整用小壁構造体を切断後、反転接着した状態を示す側面図であり、(e)は(d)の正面図である。
【図23】(a)は建築用柱状材と角度調製用柱状材を用いて屈曲させた状態を示す正面図であり、(b)は(a)の断面図である。
【図24】(a)は固定用柱状材,調製用柱状材及び角度調製用柱状材を用いて屈曲させた状態を示す正面図であり、(b)は(a)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
今、環境問題の一つとして、森林の保全がある。元森林整備(間伐)が急速に進められ始め、其の中で大量の間伐材が発生しているが、これらの殆どは切り捨て間伐として森林へ放置される運命にある。環境に優しい材料として木材の評価が上がる中で、一つの用途として野外での道路の護壁、河川の護岸壁、土止め柵等の壁体構造物が考えられる。壁体の野外での設置環境は多彩で有り、これらの設置環境に対応した強度の有る効率的な工法や資材を本発明では提供することができる。
【0018】
本発明の請求項に関連する特徴的な部材及び実施形態は、主として図14以降に記載されている。図1〜13は、本発明に用いられる基礎的な部材及び長手方向軸心100周りでの屈曲を可能ならしめるための発明に関する実施形態である。
【0019】
柱状材の使用方法と実施:(図1) 第一の実施形態
壁体の設置場所の条件、設置場所が水平で有り、壁体を垂直に設置する場合の工法である。固定用柱状材1の係合溝1aに隣接する調製用柱状材3の曲面3aを係合させ、予め設けた貫通孔13へ連結用長尺部材14を貫通させ、固定用柱状材1と調製用柱状材3の組み合わせで繰り返し組み込み、曲線配置部分は曲げて配列し適宜連結用長尺部材14を介して座金、ナット等の固定金物で締め付け固定を行なう。又壁体の側面の一方へ盛土29や硬化材30が有る場合は,固定用柱状材1を固定用柱状材2へ置換える事で固定は強化される。
【0020】
連結部の詳細:(図2)
予め各々の柱状材へ連結用長尺部材14を貫通し柱状材を連結固定する為の貫通孔13を設け、貫通孔13へ連結用長尺部材14を貫通し固定用柱状材1へ調製用柱状材3を組み入れる。これを繰り返し適宜連結用長尺部材14で引き寄せ固定する。この場合柱状材1の係合溝の面17又は角19の2箇所(左右4箇所)での固定となる。調製用柱状材3は固定面が円である事から固定は効果的である。
【0021】
本実施形態では、「係合」は図2のような状態、「嵌合」は図22のような状態とする。「係合」は「嵌合」を含むものとする。
【0022】
固定用柱状材1:(図3)
この固定用柱状材1,2は本発明の壁体構造全体で用いる極めて重要な柱状材で有る。この固定用柱状材の製作方法は、原木丸太を正角材に製材加工をした物を基材として使用する。正角材の対向する角A−Bを結ぶ線を中心として其の両端に係合溝15を設ける。更に残るC,Dの角側へA−Bを結ぶ中心線に並行して面取り16を設ける。続いて中心線に合わせ貫通孔13を他の柱状材に合わせて設ける。係合溝15は隣接する調製用柱状材3の外径円の大きさで接点が変わる。係合溝の角19よりも大きな径の場合(図4)この二つの角19が隣接する調製用柱状材3の外径2点とで接頭する。隣接する調製用柱状材3の外径が小さい場合は(図5)外径円2点と係合溝15の二つの面17との接頭となり、連結用長尺部材13で締め付け固定をする事で強固で安定した連結を得ることができる。更にC,Dの角が連結を行なった場合に側面へ突起として露出する事から、安全性、美観性を考慮し面取り16を施した。
【0023】
調製用柱状材3:(図6)
調製用柱状材3は固定用柱状材1又は2の間へ組み込み、連結方向へ平行になるよう組み込み使用する為の調整用柱状材である。本材の加工は原木丸太を材の両端が同じ円寸法(円の径)になるよう切削加工を施した円柱材である、この調製用柱状材3へ連結用長尺部材14を貫通させる為の貫通孔13を設ける。貫通孔13の径は他の併用する柱状材との関係を勘案し数量、位置、クリアランスを設定する。
【0024】
貫通孔13、連結用長尺部材14、その他の固定金物31,32,33:(図7)
本発明で使用する柱状材の貫通孔13は調製用柱状材3等、単独で接続する場合柱状材自身に固定機能が無く、連結用長尺部材に依存しており、クリアランスは極めて小さく設定する必要があった。しかし、本願では固定用柱状材1との組み合わせで固定は確保されるため、クリアランスを大きくする場合の障害は解消し心線精度の狂い、又は連結用長尺部材13との接触等の障害は緩和されることから、連結用長尺部材の連結用長ナット32の取り付けも容易となる。更に貫通孔13内での連結用長尺部材14の曲げも可能で、曲線配列が大幅に改善された。
【0025】
固定用柱状材2:(図8)
この固定用柱状材2は固定用柱状材1と同じ加工と働きをするが、其の違いは固定用柱状材1の場合は角CとD側へ面16を施したが、固定用柱状材2の場合は其の一方の面16の加工を行なわず角を残して使用する。河川や池等の護岸壁、道路の壁体として設置する場合、一方の側面へ盛土29又はコンクリート等の硬化材30等で埋め込まれる場合、角を残す事でより固定を強化する事ができる。
【0026】
調製用柱状材4:(図9)
この調製用柱状材4は固定用柱状材1と同じ加工を行なう中で、2つの係合溝の加工を行なわず、対向する角A,Bに突条4a,4aを残し小さな面取り36を施した物であり、調製用柱状材5と同じ連結用調製材4として使用する事ができる。この突条4a,4aは、例えば連結用調製材4と固定用柱状材1とが係合する際に、係合溝1aと嵌合する部分である。
【0027】
調製用柱状材5:(図10)
調製用柱状材3の径が大きく固定用柱状材1より側面へはみ出す場合、柱状材5へ置換えることもできる。調製用柱状材3のはみ出し部分を切削加工を行なった太鼓落しと呼ばれる加工方法であり、本来円柱材を積み上げて使用する場合に切削部を重ね合わせて安定を図るための材で有り、本願の場合とは利用目的が異なるといえる。
【0028】
角度調製用柱状材6:(図11)
原木丸太に切削加工を施し、一定の長さにおいて其の両端の径寸法が異なる円錐状(テーパー状)の柱状材であり連結角度を調製する為の角度調製用柱状材6であり、この材を上下に使い分けて使用する。
【0029】
角度調製用柱状材7:(図12)
角度調製用柱状材6と同じ働きと加工を行うが、其の違いは調整用柱状材6の貫通孔13へ平行な面を施した事で美観性を高める効果がある。
【0030】
建築用柱状材8:(図13)
この建築用柱状材8は他の柱状材を使用せず、単独で連続して組み込み壁体として使用する事ができるが、他の角度調製用柱状材の様な加工を施す事が困難な為使用範囲が限定される。
【0031】
新たな角度調製用柱状材の加工方法
前述の角度調製用柱状材は原木丸太を円錐状に切削加工を施し、使用するのが一般的な加工方法である。角度の大きな材を必要とする場合は、大径の原木と専用の大型加工設備が必要となる。本発明の加工方法を用いることで、角度の大きな角度調製用柱状材(テーパー状材)を簡単な加工で製作する事が可能となる。以下その加工方法を図で述べる。
【0032】
図18に示すように、固定用柱状材9及び角度調製用柱状材10,11を連結用長尺部材14を用いて連結する。固定用柱状材9及び角度調製用柱状材10,11それぞれの詳細な製作方法は下述する。このとき、固定用柱状材9と角度調製用柱状材11とは、その隣接に形成される隣接形成面103と垂直な軸回りである面垂直軸104に対し、屈曲した状態で係合することができる。角度調製用柱状材10と固定用柱状材9についても同様である。よって、使用用途や使用場所に応じて、屈曲方向105に屈曲することが可能となる。なお、角度調製用柱状材11の円弧面11aに垂直な係合方向線102は、面垂直軸104に対して垂直ではなく、傾斜している。
【0033】
角度調製用柱状材の製作方法:(図14,15,16,17参照)
角度固定用柱状材9(図14)、角度調製用柱状材11(図15)、角度調製用柱状材10(図16)、建築用柱状材12(図17)各々の柱状材(各図中(a))の面の両端へ(図b)では矩形の部分の両角から内側へ切断の始点と終点Hを決める。このH点の設定で角度が決まる。この設定した切断位置に合わせて切断を行なう(図(c))のは切断分離した物を示す。続いて切断された二つの材の一方を反転して接着又はネジ釘止めを行なう事で角度固定柱状材9及び角度調製柱状材10,11及び建築用角度調製材12を製作できる(図(d)(e))。
【0034】
固定用柱状材9:(図14)
固定用柱状材9は、固定用柱状材1の傾斜切断体1x,1yをそれぞれ接着部Gで接着させることで形成される。この傾斜切断体1x,1yは、長手方向軸心100に対し傾斜した切断位置Hにおける切断線26において切断されて形成される。そして、傾斜切断体1yを180度反転させた姿勢で傾斜切断体1x,1yをそれぞれ接着部Gで接着させることで固定用柱状材9を形成する。固定用柱状材9は、長手方向に沿って対向する部分に係合溝15,15が設けられている。
【0035】
角度調製用柱状材11:(図15)
角度調製用柱状材11は、上述した固定用柱状材9と同様に、固定用柱状材5の傾斜切断体5x,5yをそれぞれ接着部Gで接着させることで形成される。角度調製用柱状材11には、対向する部分に円弧面11a,11aが設けられている。この角度調製用柱状材11は、図11記載のテーパー状の角度調製用柱状材6よりも製作しやすい。また、円柱材の調整用柱状材3の対向する部分を切り抜いて形成しても構わない。
【0036】
角度調製用柱状材10:(図16)
角度調製用柱状材10は、上述した固定用柱状材9と同様に、固定用柱状材4の傾斜切断体4x,4yをそれぞれ接着部Gで接着させることで形成される。角度調製用柱状材10には、対向する部分に凸状の面10a,10aが設けられている。
【0037】
角度調製用柱状材12:(図17)
角度調製用柱状材12は、上述した固定用柱状材9と同様に、固定用柱状材8の傾斜切断体8x,8yをそれぞれ接着部Gで接着させることで形成される。角度調製用柱状材12には、対向する部分に突条8a及び係合溝15が設けられている。
【0038】
この工法の利点は、貫通孔へ平行して設けた面16の矩形の平面の範囲で角度を自由に設定する事ができる点が上げられる。特に固定用柱状材1をこの方法で行なう事で角度調製を更にし易くできる点も大きなものと言える。更に建築用柱状材8は角度調製材としての加工を施す事ができなかったがこの方法を行なう事で簡単に製作できる点は大きな成果といえる。
【0039】
続いて上記の方法で製作した柱状材の連結状態を(図18)に示した。この場合隣接する柱状材の間で貫通孔13の角度が変わるが、クリアランスを大きくする事と予め連結用長尺部材14を少し曲げて置くことで連結用長尺部材14の貫通孔への貫通連結は可能となる。また、円弧面11aは、係合方向線102に沿った断面で円弧となるため、係合溝との係合及び係合部での円弧面に沿った角度変更が可能となる。
【0040】
第二の実施形態:(図19)(図20)
野外へ護壁(壁体)を設置する場合、斜面に合わせて傾けて設置する場合が多く有り、其の場合出入り(出隅、入り隅)部の対応は角度調製用柱状材6を上下と使い分け固定用柱状材2との組み合わせで対処し、直線部では調製用柱状材3への置換えで対処する。こうして係合溝15と曲面6aの係合において、固定用柱状材2を介して角度調製柱状材6を使い分ける事で曲がり角(出隅、入り隅)の配列が容易となり壁体を傾けて蛇行する施工現場へ対応する事が可能となった。
【0041】
また、角度調製用柱状材6の代わりに角度調製用柱状材10,11を用いても構わない。テーパー形状の角度調製用柱状材6の代わりに、図19(a)の図中A1,A2,A3で示す固定用柱状材9を用いてもよい。図19(a)の図中A4で示す固定用柱状材2と調整用柱状材3との係合部分を、調整用柱状材4,5に変えたり、全体を建築用柱状材8にしてもよい。
【0042】
続いて出隅、入隅部分の固定用柱状材2と角度調製用柱状材6の関係を(図20)で示す。固定用柱状材2の二つの材の間へ角度調製用柱状材6を組み込むことで扇状、又は逆扇状の配列が可能となる。又貫通孔13も角度を生ずるがクリアランスを大きくして有る事から問題とはならない。更に角度を大きくしたい場合は新しい角度調製材の製作で示した製作方法(図14〜図17)へ置き換える事で効果は大きくできる。
【0043】
第三の実施形態:(図21)
隆起の多い場所(坂道等)の傾斜地への壁体の設置を行なう場合水平な地形部では固定用柱状材1と調製用柱状材3の組み合わせで対処し、其処から下方向へ角度を変える場合は角度調製用柱状材6の大きな部分を上向けとして、固定用柱状材1へ隣接して組み込む。対応角度が定まった処で調製用柱状材3へ入れ替えて平行配列とする。続いて配列角度を上方向へ変える場合は角度調製用柱状材6の大きな部分を下へ設置する事で方向を変えて対処する事ができる。
【0044】
角度調製用柱状材6は、角度調製用柱状材10,11を用いても構わない。また、角度調製用柱状材6に固定用柱状材9を係合させてもよい。
【0045】
建築用柱状材8と角度調製用柱状材12とを用いた壁構造体は、図23に示されている。角度調整用柱状材12の使用箇所で屈曲方向105に屈曲可能である。
【0046】
調整用柱状材4、固定用柱状材1、角度調整用柱状材11及び固定用柱状材9等を用いた壁構造体は、図24に示されている。角度調整用柱状材11及び固定用柱状材9の使用箇所で屈曲方向105に屈曲可能である。
【0047】
小壁構造体:(図22)
建築用柱状材8の一群を隣接係合させ、連続させたものを小壁構造体50という。建築用柱状材8を連続して結合するには、隣り合う係合部に接着剤を用いて接着する他、貫通孔13に仮結合の部材を挿入してもよい。この小壁構造体50は、面垂直軸104に対し傾斜した状態で切断位置Hで切断され、傾斜切断体50x,50yが形成される。そして、図22(d)に示すように傾斜切断体50yを180度反転させた姿勢で傾斜切断体50x,50yをそれぞれ接着部Gで接着させることで角度調整用小壁構造体50が形成される。角度調整用小壁構造体50は、角度調整用柱状材12と同様に用いることができる。また、固定用柱状材1,2、調整用柱状材3,4,5、建築用柱状材8等を複数組み合わせて角度調整用小壁構造体50を作成し、さらに角度調整用小壁構造体55を作成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、建築、土木の分野に用いられる建築用又は土木用の壁構造体、これに用いる柱状材及びこの柱状材の製造方法並びにこの壁構造体に用いる小壁構造体として利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
A,B,C,D:正角材の4箇所の角、E:拡大枠、F:面取り(R面)、G:接着部、H:切断位置、1:固定用柱状材、1a:係合溝、1x,1y:傾斜切断体、2:固定用柱状材、3:調製用柱状材、3a:円弧面(曲面)、4:調製用柱状材、4a:突条、4x,4y:傾斜切断体、5:調製用柱状材、5x,5y:傾斜切断体、6:角度調製用柱状材、6a:円弧面(曲面)、7:角度調製用柱状材、8:建築用柱状材、8a:突条、8x,8y:傾斜切断体、9:固定用柱状材、10:角度調製用柱状材、10a:面(平)、11:角度調製用柱状材、11a:円弧面(曲面)、12:角度調製用柱状材、13:貫通孔、14:連結用長尺部材、15:係合溝、16:面(平)、17:平面(係合溝)、18:突部、19:角(係合溝)、20:線(水平)、21:貫通孔中心線、22:柱状材中線、23:引き出し線、24:柱状材外径線、25:切削部、26:切断線、27:地盤、28:傾斜角度、29:盛土、30:硬化剤、31:座掘孔、32:連結用長ナット、33:座金ナット、34:正角材外径線、35:円柱外径線、36:小さな面、50:小壁構造体、50x,50y:傾斜切断体、55:角度調整用小壁構造体、100:長手方向軸心、102:係合方向線、103:隣接形成面,104:面垂直軸、105:屈曲方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って係合溝を有する第一の柱状材と、この係合溝に係合する第二の柱状材とを備え、これら第一、第二の柱状材を隣接させ複数組み合わせると共に複数組み合わせた第一、第二の柱状材に長尺部材を貫通させて連結することにより構成した建築用又は土木用の壁構造体であって、
前記第一又は第二の柱状材のいずれかは、長手方向に対し断面略同一形状の柱状材を長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合させることにより柱状材の隣接で形成される平面に垂直な軸周りで屈曲させてある建築用又は土木用の壁構造体。
【請求項2】
前記第一の柱状材は、前記係合溝の他側にも長手方向に沿って係合溝を備えるものである請求項1記載の建築用又は土木用の壁構造体。
【請求項3】
前記第二の柱状材は、係合方向の両側に対し長手方向に沿って断面円弧状の円弧面を有するものである請求項1記載の建築用又は土木用の壁構造体。
【請求項4】
前記第一及び第二の柱状材のいずれかは長手方向に沿って係合溝及び突条を軸対称位置に有するものである請求項1記載の建築用又は土木用の壁構造体に用いる柱状材。
【請求項5】
請求項1記載の建築用又は土木用の壁構造体に用いる柱状材であって、両側に長手方向に沿って係合溝、係合溝若しくは突条、断面円弧状の円弧面又は突条を有し、長手方向に対して略同一形状のものを、前記両側の中間において長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合させてある建築用又は土木用の壁構造体に用いる柱状材。
【請求項6】
請求項1記載の建築用又は土木用の壁構造体に用いる柱状材の製造方法であって、両側に長手方向に沿って係合溝、係合溝若しくは突条、断面円弧状の円弧面又は突条を有し、長手方向に対して略同一形状のものを、前記両側の中間において長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合する建築用又は土木用の壁構造体に用いる柱状材の製造方法。
【請求項7】
長手方向に沿って係合溝を有する第一の柱状材と、この係合溝に係合する第二の柱状材とを備え、これら第一、第二の柱状材を隣接させ複数組み合わせると共に複数組み合わせた第一、第二の柱状材に長尺部材を貫通させて連結することにより構成した建築用又は土木用の壁構造体であって、
長手方向に対し断面略同一形状の前記柱状材の一群を隣接させ係合させて小壁構造体を構成し、小壁構造体を前記長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合させてある建築用又は土木用の壁構造体。
【請求項8】
請求項7記載の建築用又は土木用の壁構造体に用いる小壁構造体であって、
長手方向に沿って係合溝を有する第一の柱状材と、この係合溝に係合する第二の柱状材とを備え、長手方向に対し断面略同一形状の前記柱状材の一群を隣接させ係合させて小壁構造体を構成し、小壁構造体を前記長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合させてある建築用又は土木用の壁構造体に用いる小壁構造体。
【請求項9】
請求項7記載の建築用又は土木用の壁構造体に用いる小壁構造体の製造方法であって、
長手方向に沿って係合溝を有する第一の柱状材と、この係合溝に係合する第二の柱状材とを備え、長手方向に対し断面略同一形状の前記柱状材の一群を隣接させ係合させて小壁構造体を構成し、小壁構造体を前記長手方向軸心に対し傾斜した状態で切断し、180度反転させた姿勢で接合する建築用又は土木用の壁構造体に用いる小壁構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−112162(P2010−112162A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233771(P2009−233771)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(500418060)
【Fターム(参考)】