説明

建設機械のエンジンカバー

【課題】排ガス後処理装置の構成に含まれる構造体がマフラに設けられた建設機械と、その構造体がマフラに設けられていない建設機械との間でエンジンカバーを共通化できる建設機械のエンジンカバーを提供すること。
【解決手段】第1部分カバー22および第2部分カバー23のうち第1部分カバー22をエンジンカバー本体21に取り付けて開口部21aを覆うことで、開口部21aの位置に、マフラ12に内臓された排ガス後処理装置のフィルタ14に対応した構造部としての通風孔22aを有するエンジンカバー20Aを形成する。第1部分カバー22および第2部分カバー23のうち第2部分カバー23をエンジンカバー本体21に取り付けて開口部21aを覆うことで、フィルタ14が内蔵されていないマフラ15に対応した、通風孔22aが形成されていない上面が平坦なエンジンカバー20Bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械のエンジンカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械である油圧ショベルの旋回体において、エンジンおよびその周囲の機器の占有領域の上方には、エンジンカバーが設けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−289656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設機械はディーゼルエンジンの動力により駆動するものが一般的である。ディーゼルエンジンにおいて不完全燃焼が生じると、排ガス中に大気汚染の原因である粒子状物質が混合することになる。このため、ディーゼルエンジンを動力源とする建設機械には、その粒子状物質の大気への排出量を低減するための排ガス後処理装置が設けられている。この排ガス後処理装置は、ディーゼルエンジンの排ガスを建設機械の外部に排出する排気装置に設けられたフィルタを有し、このフィルタで濾過して粒子状物質を捕捉する。そして、捕捉した粒子状物質をフィルタから除去するために、エンジン出力を上昇させ排ガスの温度を強制的に上昇させることによって粒子状物質を燃焼させたり、ヒータを用いて粒子状物質を燃焼させたりする。
【0005】
排ガス後処理装置のフィルタには、排気装置の一部であるマフラ内に、このマフラと一体に設けられているものがある。マフラは建設機械の機械室の上部に位置し、機械室の天井の一部を形成しているエンジンカバーより上方から覆われている。このエンジンカバーは、粒子状物質の燃焼に伴って生じた熱を速やかにフィルタから逃がすことのできる構造、例えば通気孔などの構造を有するものであることが好ましい。
【0006】
また、排ガス後処理装置には、フィルタの目詰まりの程度を検出するための差圧センサを備えているものがある。この差圧センサは、フィルタが内臓されたマフラから上方に突出して配置されることがある。この差圧センサをエンジンカバーで覆うためには、エンジンカバーは、その上面全体の高さが差圧センサよりも高いものであるか、差圧センサが配置される個所のみ突出したものである必要がある。建設機械のキャブからの後方視界が狭くなるのを防止するためには、後者が好ましい。
【0007】
これらのことから分かるように、排ガス後処理装置の構成に含まれる構造体(フィルタや差圧センサなど)がマフラに設けられた建設機械のエンジンカバーと、その構造体がマフラに設けられていない建設機械のエンジンカバーとは形状・寸法が異なる。
【0008】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、排ガス後処理装置の構成に含まれる構造体がマフラに設けられた建設機械と、その構造体がマフラに設けられていない建設機械との間でエンジンカバーを共通化できる建設機械のエンジンカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の建設機械のエンジンカバーは、前述の目的を達成するために次のように構成されている。
【0010】
〔1〕 本発明は、貫通孔からなる開口部が形成されたエンジンカバー本体と、前記開口部を選択的に覆う第1,第2部分カバーとを有し、前記開口部の位置は、マフラに設けられたフィルタを有する排ガス後処理装置を備えた建設機械に対し前記エンジンカバー本体が設けられたときに、前記排ガス後処理装置の構成に含まれる所定の構造体に対応する位置に配置されるよう設定されていて、前記第1部分カバーは前記構造体の特性上必要な構造部を有するものであり、前記第2部分カバーは前記構造部を有さないものであることを特徴とする。
【0011】
この「〔1〕」に記載の本発明によれば、第1部分カバーは排ガス後処理装置の構成に含まれる所定の構造体(フィルタ、差圧センサなど)の特性上必要な構造部を有するもの(通風孔や中空の突出部を有するもの)であり、第2部分カバーがその構造部を有さないもの(例えば単なる平板状等に形成されたもの)であるので、第1,第2部分カバーのいずれをエンジンカバー本体に取り付けるかによって、排ガス後処理装置の所定の構造体に対応した構造部を有するエンジンカバーと、排ガス後処理装置の所定の構造体が設けられていないマフラに対応したエンジンカバーとを、選択的に作製できる。これにより、排ガス後処理装置の構成に含まれる構造体がマフラに設けられた建設機械と、その構造体がマフラに設けられていない建設機械との間でエンジンカバーを共通化できる。
【0012】
〔2〕 本発明は、「〔1〕」に記載の発明において、前記開口部は、前記エンジンの排ガスが通過するマフラのうち前記フィルタが内部に設けられたフィルタ内蔵部の上方に位置し、前記第1部分カバーは前記開口部を開閉可能に前記エンジンカバー本体に取り付けられることを特徴とする。
【0013】
排ガス後処理装置のフィルタは交換等のメンテナンスが必要である。「〔2〕」に記載の本発明は、第1部分カバーにより開口部が開閉可能であることと、開口部はマフラのフィルタ内臓部の上方に位置することとによって、開口部からフィルタのメンテナンスを行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前述のように、排ガス後処理装置の構成に含まれる構造体がマフラに設けられた建設機械と、その構造体がマフラに設けられていない建設機械との間でエンジンカバーを共通化できる。したがって、建設機械の製作コストの削減に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建設機械である油圧ショベルの左側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るエンジンカバーを示し、(a)はエンジンカバー本体に第1,第2部分カバーのいずれも取り付けられてない状態を示す上面図、(b)はエンジンカバー本体に第1部分カバーが取り付けられた状態を示す上面図、(c)はエンジンカバー本体に第2部分カバーが取り付けられた状態を示す上面図である。
【図3】「図2(b)」の矢印III方向から見た状態に対応した旋回体後部の右側面図である。
【図4】「図2(c)」の矢印IV方向から見た状態に対応した旋回体後部の右側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るエンジンカバーを示し、(a)はエンジンカバー本体に第1,第2部分カバーのいずれも取り付けられてない状態を示す上面図、(b)はエンジンカバー本体に第1部分カバーが取り付けられた状態を示す上面図、(c)はエンジンカバー本体に第2部分カバーが取り付けられた状態を示す上面図である。
【図6】「図5(b)」の矢印VI方向から見た状態に対応した旋回体後部の右側面図である。
【図7】「図5(c)」の矢印VII方向から見た状態に対応した旋回体後部の右側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るエンジンカバーを含む油圧ショベルの旋回体後部の上面図である。
【図9】図8で示された旋回体後部の可動側エンジンカバーが開かれた状態を右後斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の建設機械のエンジンカバーの第1〜第3実施形態について説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態について図1〜図4を用いて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る建設機械である油圧ショベルの左側面図である。図2は本発明の第1実施形態に係るエンジンカバーを示し、(a)はエンジンカバー本体に第1,第2部分カバーのいずれも取り付けられてない状態を示す上面図、(b)はエンジンカバー本体に第1部分カバーが取り付けられた状態を示す上面図、(c)はエンジンカバー本体に第2部分カバーが取り付けられた状態を示す上面図である。図3は「図2(b)」の矢印III方向から見た状態に対応した旋回体後部の右側面図である。図4は「図2(c)」の矢印IV方向から見た状態に対応した旋回体後部の右側面図である。
【0018】
図1で示す油圧ショベル1は、履帯2aを駆動して走行する走行体2と、この走行体2の上方に位置した走行体2に旋回可能に結合した旋回体3と、この旋回体3の前部の略中央に装備されたバックホウフロント4とを備えている。
【0019】
旋回体3は、バックホウフロント4のフート部(図示してない)の左側方に位置するキャブ3aと、このキャブ3aおよびフート部の後方に位置する機械室3bと、この機械室3bの後方で旋回体3の後端を形成しているカウンタウェイト3cとを有する。
【0020】
機械室3b内空間の後側の領域には、エンジン10(ディーゼルエンジン)と、このエンジン10に関係する機器、すなわち冷却ファン11およびマフラ12等(以下「エンジン10」等という)が配置されている。エンジン10の排ガスを油圧ショベル1の外部に導く排気装置のうちのマフラ12は、機械室3bの上部に配置されている。これらエンジン10等は、全体として左右方向に延びた姿勢を成している。エンジン10等の占有領域の上方にはエンジンカバー20が設けられている。このエンジンカバー20は、このエンジンカバー20周囲の機械室3bの天井部分よりも上方に突出した形状を成している。
【0021】
エンジン10において不完全燃焼が生じると、排ガス中に大気汚染の原因である粒子状物質が混合することになる。油圧ショベル1には、その粒子状物質の外部への排出量を低減するための排ガス後処理装置が設けられている。この排ガス後処理装置は、排ガスをフィルタで濾過して粒子状物質を捕捉する。そして、捕捉した粒子状物質をフィルタから除去するために、エンジン出力を上昇させ排ガスの温度を強制的に上昇させることによって粒子状物質を燃焼させたり、ヒータを用いて粒子状物質を燃焼させたりする。
【0022】
図2(a)において14は排ガス後処理装置のフィルタである。排ガスの通路を形成しているマフラ12は、そのフィルタ14が内部に設けられたフィルタ内蔵部13を有する。
【0023】
第1実施形態に係るエンジンカバーは、前出のエンジンカバー20として採用されるものである。このエンジンカバー20はエンジンカバー本体21を有する。このエンジンカバー本体21は、旋回体3に不図示のロック機構により開閉可能に固定されている。また、このエンジンカバー本体21には貫通孔からなる開口部21aが形成されている。この開口部21aは前出のフィルタ内蔵部13の上方に位置する。この開口部21aは、上面視においてフィルタ内臓部13を包含する大きさに設定されている。図2(b)に示すように、開口部21aが第1部分カバー22により覆われることによって、エンジンカバー20aが形成される。第1部分カバー22はエンジンカバー本体21にネジ止めによって着脱可能に取り付けられている。第1部分カバー22には通風孔22aが設けられている。この通風孔22aは粒子状物質の燃焼に伴って生じた熱を、通風孔22aがない場合よりも速やかに旋回体3外部に逃がす。
【0024】
なお、油圧ショベルには、フィルタ14がマフラ12に設けられていない排ガス後処理装置を備えるものや、排ガス後処理装置を備えていないものがある。つまり、排ガス後処理装置のフィルタ14が内蔵されていない消音機能のみを有するマフラ15を備えたものもある。この場合、エンジンカバーには通風孔22aが必要ないため、図2(c)で示すように、エンジンカバー本体21の開口部21aは、第1部分カバー22の替わりに、第2部分カバー23によって覆われることになる。第2部分カバー23は通風孔22aが形成されてない平板状のものであり、エンジンカバー本体21に対して第1部分カバー22と同じ個所でネジ止めされる。このようにエンジンカバー本体21に第2部分カバー23が取付けられることにより、排ガス後処理装置のフィルタ14が内蔵されたマフラ12に替えて通常の消音機能のみを有するマフラ15に対応したエンジンカバー20Bが形成される。
【0025】
第1実施形態に係るエンジンカバーは、要するに、第1部分カバー22および第2部分カバー23のうち第1部分カバー22がエンジンカバー本体21に取り付けられて開口部21aを覆うことにより、開口部21aの位置に、マフラ12に内蔵された排ガス後処理装置の構造体であるフィルタ14に対応した構造部としての通風孔22aを有するエンジンカバー20Aを成し、第1部分カバー22および第2部分カバー23のうち第2部分カバー23がエンジンカバー本体21に取り付けられて開口部21aを覆うことにより、排ガス後処理装置のフィルタ14が内蔵されていない消音機能のみを有するマフラ15に対応した、通風孔22aが形成されていない上面が平坦なエンジンカバー20Bを成す。
【0026】
第1実施形態に係るエンジンカバーによれば次の効果を得られる。
【0027】
第1実施形態に係るエンジンカバーによれば、第1部分カバー22および第2部分カバー23のいずれをエンジンカバー本体21に取り付けるかによって、マフラ12に内蔵された排ガス後処理装置のフィルタ14に対応した構造部としての通風孔22aを有するエンジンカバー20Aと、フィルタ14が内蔵されていない消音機能のみを有するマフラ15に対応した、通風孔22aを有さない上面が平坦なエンジンカバー20Bとを選択的に作製できる。これにより、排ガス後処理装置のフィルタがマフラに内臓された油圧ショベルと、排ガス後処理装置のフィルタがマフラに設けられていない油圧ショベルとの間でエンジンカバーを共通化できる。したがって、油圧ショベルの製作コストの削減に貢献できる。
【0028】
第1実施形態に係るエンジンカバーにおいては、第1部分カバー22がネジ止めによりエンジンカバー本体21に取り付けられるので開口部21aが開閉可能であるとともに、開口部21aがフィルタ内臓部13の上方に位置する。これにより、第1部分カバー22をエンジンカバー本体21から取り去って、開口部21aからフィルタ14のメンテナンスを行うことができる。したがって、エンジンカバー本体21を旋回体3から取り去るよりも少ない労力でフィルタのメンテナンスを行うことができる。また、エンジンカバー上での作業も可能となるためメンテナンスの作業効率も向上する。
【0029】
なお、前述の第1実施形態において、第1部分カバー22は、排ガス後処理装置の構成に含まれる構造体であるフィルタ14の特性上必要な構造部として通風孔22aを有するものであったが、本発明における第1部分カバーは通風孔のみを有するものに限定されるものではない。通風孔に加えて、フィルタのメンテナンス時に第1部分カバーをエンジンカバー本体から着脱する際の利便性が考慮された取っ手が設けられたものであってもよい。
【0030】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態について図5〜図7を用いて説明する。図5は本発明の第2実施形態に係るエンジンカバーを示し、(a)はエンジンカバー本体に第1,第2部分カバーのいずれも取り付けられてない状態を示す上面図、(b)はエンジンカバー本体に第1部分カバーが取り付けられた状態を示す上面図、(c)はエンジンカバー本体に第2部分カバーが取り付けられた状態を示す上面図である。図6は「図5(b)」の矢印VI方向から見た状態に対応した旋回体後部の右側面図である。図7は「図5(c)」の矢印VII方向から見た状態に対応した旋回体後部の右側面図である。図5〜図7で示すもののうち、図2〜図4で示したものと同等のものに対しては、図2〜図4に付した符号と同じ符号を使用した。
【0031】
排ガス後処理装置には、排ガスの流れにおけるフィルタ14の上流側と下流側の差圧を検出する差圧センサ30(図5(a)および図6に示す)を備え、この差圧センサ30により検出した差圧に基づいてフィルタ14の目詰まりを検知するものがある。差圧センサ30とマフラ12は、差圧センサ30にフィルタ14の上流側の圧力と下流側の圧力を導く接続配管により連通している。この接続配管の姿勢は鉛直方向に延びた姿勢に設定されている。この姿勢は、接続配管内において結露した排ガス中の水分に重力を作用させることによってその水分の落下を促し、その水分が接続配管の途中で留まって接続配管を閉鎖するという事態を防ぐためである。このような接続配管の姿勢を確保するため、差圧センサ30はマフラ12から上方に突出して位置する。
【0032】
第2実施形態に係るエンジンカバーは、貫通孔からなる開口部41aが形成されたエンジンカバー本体41を有する。開口部41aの右側の縁部には切欠部41a1が形成されていて、この切欠部41a1により、開口部41aの内縁と差圧センサ30とが接触しないようになっている。
【0033】
図5(b)に示すように、開口部41aが第1部分カバー42により覆われることにより、エンジンカバー40Aが形成される。第1部分カバー42は、第1実施形態における第1部分カバー22と同様にエンジンカバー本体41にネジ止めにより着脱可能に取り付けられているものであるが、第1部分カバー22と異なり、中空の突出部42aを有する。突出部42a内部には差圧センサ30が位置する。
【0034】
なお、油圧ショベルにはフィルタ14も差圧センサ30も設けられてない前出のマフラ15を備えたものもある。この場合、エンジンカバーには突出部42aが必要ないため、図5(c)で示すように、エンジンカバー本体41の開口部41aは、第1部分カバー42の替わりに、第2部分カバー43によって覆われることになる。第2部分カバー43は突出部42aが形成されてない平板状のものであり、エンジンカバー本体41に対して第1部分カバー42と同じ個所でネジ止めされる。つまり、エンジンカバー本体41に第2部分カバー43が取付けられることにより、フィルタ14も差圧センサ30も設けられていない消音機能のみを有するマフラ15に対応したエンジンカバー40Bが形成される。
【0035】
第2実施形態に係るエンジンカバーは、要するに、第1部分カバー42および第2部分カバー43のうち第1部分カバー42がエンジンカバー本体41に取り付けられて開口部41aを覆うことにより、開口部41aの位置に、排ガス後処理装置の構成に含まれるである差圧センサ30に対応した構造部としての突出部42aを有するエンジンカバー40Aを成し、第1部分カバー42および第2部分カバー43のうち第2部分カバー43がエンジンカバー本体41に取り付けられて開口部41aを覆うことにより、フィルタ14も差圧センサ30も設けられていない消音機能のみを有するマフラ15に対応した、突出部42aを有さない上面が平坦なエンジンカバー40Bを成す。
【0036】
第2実施形態に係るエンジンカバーによれば次の効果を得られる。
【0037】
第2実施形態に係るエンジンカバーによれば、第1部分カバー42および第2部分カバー43のいずれをエンジンカバー本体41に取り付けるかによって、マフラ12に設けられた排ガス後処理装置の構成に含まれるである差圧センサ30に対応した突出部42aを有するエンジンカバー40Aと、フィルタ14も差圧センサ30も設けられていない消音機能のみを有するマフラ15に対応した、突出部42aが形成されていない上面が平坦なエンジンカバー40Bとを選択的に作製できる。これにより、排ガス後処理装置の差圧センサがマフラに設けられた油圧ショベルと、排ガス後処理装置の差圧センサがマフラに設けられていない油圧ショベルとの間でエンジンカバーを共通化できる。したがって、油圧ショベルの製作コストの削減に貢献できる。
【0038】
第2実施形態に係るエンジンカバーにおいては、第1部分カバー42がネジ止めによりエンジンカバー本体41に取り付けられるので開口部41aが開閉可能であるとともに、開口部41aがフィルタ内臓部13の上方に位置する。これにより、第1部分カバー42をエンジンカバー本体41から取り去って、開口部41aからフィルタ14のメンテナンスを行うことができる。したがって、エンジンカバー本体41を旋回体3から取り去るよりも少ない労力でフィルタのメンテナンスを行うことができる。また、エンジンカバー上での作業も可能となるためメンテナンスの作業効率も向上する。
【0039】
また、排ガス後処理装置の差圧センサ30が設けられたマフラ12に備えた油圧ショベルと、フィルタ14も差圧センサ30も設けられていない消音機能のみを有するマフラ15を備えた油圧ショベルとの間でエンジンカバーを共通化することを考える場合、エンジンカバーの上面を全体的に差圧センサ30の位置よりも高く設定することによって、差圧センサ30が設けられたマフラ12を備えた油圧ショベルと、差圧センサ30が設けられてない消音機能のみを有するマフラ15を備えた油圧ショベルとの間でエンジンカバーを共通化することが考えられる。しかし、エンジンカバーの上面が全体的に高いと、油圧ショベルのキャブ3aからの後方視界が狭くなる。第2実施形態に係るエンジンカバーによれば、第1部分カバー42によってエンジンカバーの差圧センサ30が配置される部分のみ突出しているので、後方視界が狭くなることを防ぐことができる。
【0040】
なお、前述の第2実施形態において、第1部分カバー42は、排ガス後処理装置の構成に含まれるである差圧センサ30の特性上必要な構造部として突出部42aを有するものであったが、本発明における第1部分カバーは突出部のみを有するものに限定されるものではない。突出部とともに通風孔が設けられたものであってもよい。また、突出部に加えて、メンテナンス時におけるエンジンカバー本体からの着脱の利便性が考慮された取っ手が設けたものであってもよい。
【0041】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態について図8,図9を用いて説明する。図8は本発明の第3実施形態に係るエンジンカバーを含む油圧ショベルの旋回体後部の上面図である。図9は図8で示された旋回体後部の可動側エンジンカバーが開かれた状態を右後斜め上方から見た斜視図である。図8,図9で示すもののうち、図2〜図4で示したものと同等のものに対しては、図2〜図4に付した符号と同じ符号を使用した。
【0042】
第3実施形態に係るエンジンカバー50は、その左側の略半分を形成している可動カバー51を有する。この可動カバー51は左側の縁部において旋回体3にヒンジ結合していて、図9で示すように斜め上方に回動するようになっている。可動カバー51が斜め上方に回動された状態において、エンジン10の左側に配置された熱交換器等のエンジン補機が露出するので、エンジン補機のメンテナンスが行いやすい。
【0043】
消音機能のみを有するマフラを備えた油圧ショベルにおいては、エンジン10の右側を露出させてメンテナンスを行う頻度が、エンジンの左側と比較して極端に少ない。このため、エンジンカバーの右側の部分は、可動カバー51と異なり、旋回体3にネジ止めにより固定された固定カバーからなる。この固定カバーは、第1実施形態におけるエンジンカバーの場合と同様に、開口部(図示してない)が形成された固定カバー本体53と、この固定カバー本体53に選択的に取り付けられて、その開口部を覆う第1部分カバー(図示してない)および第2部分カバー54とを有する。
【0044】
つまり、第3実施形態において、固定カバーは、第1部分カバーおよび第2部分カバー54のうち第1部分カバーが固定カバー本体53に取り付けられて開口部を覆うことにより、開口部の位置に排ガス後処理装置のフィルタや差圧センサに対応した構造部としての通風孔や突出部を有する固定カバー(図示してない)を成し、第1部分カバーおよび第2部分カバー54のうち第2部分カバー54が固定カバー本体53に取り付けられて開口部を覆うことにより、排ガス後処理装置のフィルタや差圧センサが設けられていない消音機能のみを有するマフラに対応した、通風孔や突出部を有さない上面が平坦な固定カバー52を成す。
【0045】
第3実施形態に係るエンジンカバーによれば次の効果を得られる。
【0046】
第3実施形態に係るエンジンカバーによれば、第1部分カバーおよび第2部分カバー54のいずれを固定カバー本体53に取り付けるかによって、排ガス後処理装置の構造体であるフィルタや差圧センサに対応した構造部としての通風孔や突出部が設けられた固定エンジンカバーと、それらフィルタや差圧センサが設けられていない消音機能のみを有するマフラを備えた油圧ショベルに対応した、通風孔や突出部が設けられていない上面が平坦な固定カバー52とを選択的に作製できる。これにより、可動カバー51と固定カバーとから構成されたエンジンカバー50を備えた油圧ショベルについて、排ガス後処理装置のフィルタや差圧センサがマフラに設けられた油圧ショベルと、排ガス後処理装置のフィルタも差圧センサもマフラに設けられていない油圧ショベルとの間でエンジンカバーを共通化でき、製作コストの削減に貢献できる。
【0047】
第3実施形態に係るエンジンカバーにおいては、第1部分カバーがネジ止めにより固定カバー本体53に取り付けられるので開口部が開閉可能であるとともに、開口部がフィルタ内臓部の上方に位置する。これにより、固定カバー本体53から第1部分カバーを取り去って、開口部からフィルタのメンテナンスを行うことができる。したがって、固定カバー本体53を旋回体3から取り去るよりも少ない労力でフィルタのメンテナンスを行うことができる。また、エンジンカバー上での作業も可能となるためメンテナンスの作業効率も向上する。
【符号の説明】
【0048】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 走行体
2a 履帯
3 旋回体
3a キャブ
3b 機械室
3c カウンタウェイト
4 バックホウフロント
10 エンジン
11 冷却ファン
12 マフラ
13 フィルタ内臓部
14 フィルタ(構造体)
15 マフラ
20,20A,20B エンジンカバー
21 エンジンカバー本体
21a 開口部
22 第1部分カバー
22a 通風孔(構造部)
23 第2部分カバー

30 差圧センサ(構造体)
40A,40B エンジンカバー
41 エンジンカバー本体
41a 開口部
41a1 切欠部
42 第1部分カバー
42a 突出部(構造部)
43 第2部分カバー
50 エンジンカバー
51 可動カバー
52 固定カバー
53 固定カバー本体
54 第2部分カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔からなる開口部が形成されたエンジンカバー本体と、前記開口部を選択的に覆う第1,第2部分カバーとを有し、
前記開口部の位置は、マフラに設けられたフィルタを有する排ガス後処理装置を備えた建設機械に対し前記エンジンカバー本体が設けられたときに、前記排ガス後処理装置の構成に含まれる所定の構造体に対応する位置に配置されるよう設定されていて、
前記第1部分カバーは前記構造体の特性上必要な構造部を有するものであり、
前記第2部分カバーは前記構造部を有さないものである
ことを特徴とする建設機械のエンジンカバー。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記開口部は、前記エンジンの排ガスが通過するマフラのうち前記フィルタが内部に設けられたフィルタ内蔵部の上方に位置し、
前記第1部分カバーは前記開口部を開閉可能に前記エンジンカバー本体に取り付けられる
ことを特徴とする建設機械のエンジンカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−215122(P2010−215122A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64789(P2009−64789)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】