説明

建設機械用油圧ポンプ制御装置

【課題】ネガティブコントロール絞りを流れる圧油をバイパスさせる切換弁を追加することなく、燃費性能を向上させることができる建設機械用油圧ポンプ制御装置を提供すること。
【解決手段】ネガティブコントロール絞りで発生する制御圧に応じて油圧ポンプの吐出量を制御するレギュレータと各種アクチュエータを循環する圧油の流れを制御する複数の切換弁とを備えたネガティブコントロール式の建設機械用油圧ポンプ制御装置は、複数の切換弁が未操作状態にあることを検知して、レギュレータに入力される制御圧を所定圧以上にして油圧ポンプの吐出量を低減させ、かつ、切換弁の一切換位置に配置された油圧ポンプとタンクとを直接接続する油路を連通させて圧力損失を抑え油圧ポンプの負荷を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械用油圧ポンプ制御装置に関し、より具体的には、センターバイパス油路で発生させた制御圧をレギュレータに入力して油圧ポンプの吐出量を制御するネガティブコントロール式の建設機械用油圧ポンプ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センターバイパス油路のネガティブコントロール絞りで発生させた制御圧をレギュレータに入力して油圧ポンプの吐出量を制御するネガティブコントロール式の建設機械用油圧ポンプ制御装置が知られている。
【0003】
図1は、油圧ポンプ制御装置が搭載される油圧ショベルの構成例を示す図である。図1において、油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2の上に、旋回機構を介して、上部旋回体3をX軸周りに旋回自在に搭載している。
【0004】
また、上部旋回体3は、前方中央部に、ブーム4、アーム5及びバケット6、並びに、これらをそれぞれ駆動するアクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9から構成される掘削アタッチメントを備える。
【0005】
図2は、従来のネガティブコントロール式ポンプ制御装置の油圧回路図であり、ポンプ制御装置100は、エンジンによって駆動される二つのポンプ10L、10Rから、切換弁12L、14、15L及び16Lを連通するセンターバイパス油路30L、又は、切換弁11、12R、13、15R及び16Rを連通するセンターバイパス油路30Rを経てタンク22まで圧油を循環させる。
【0006】
切換弁11は、走行直進弁であり、下部走行体2を駆動する走行モータ42L、42Rと、上部旋回体3の何れかのアクチュエータ(例えば、旋回モータ、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等である。)とが同時に操作された場合に、下部走行体2の直進性を高めるために一方の油圧ポンプ10Lから左右双方の走行モータ42L、42Rに圧油を循環させるためのスプール弁である。なお、切換弁11の働きは、後述することとする。
【0007】
また、切換弁12L、12Rは、それぞれ、ポンプ10L、10Rが吐出する圧油を走行モータ42L、42Rで循環させるためのスプール弁であり、切換弁13は、ポンプ10Rが吐出する圧油をブームシリンダ7に出し入れするためのスプール弁である。
【0008】
また、切換弁14は、切換弁13によって制御されるブームシリンダ7の伸張速度を増大させるためのブーム速度切換弁であり、その働きは、後述することとする。
【0009】
切換弁15L、15R、16L及び16Rは、旋回モータ、アームシリンダ8又はバケットシリンダ9等の建設機械のアクチュエータにポンプ10L、10Rが吐出する圧油を出し入れさせるためのスプール弁である。
【0010】
図3は、切換弁12Lの拡大図であり、切換弁12Lは、上流の油圧ポンプ10L側(図下側)の3ポートと下流のタンク22(図上側)の3ポートとの間の接続を切り換える3つの切換位置(左、中立、右)と、スプールを図右側に移動させるためのパイロットバルブ12La、及び、スプールを図左側に移動させるためのパイロットバルブ12Lbとを有する。
【0011】
切換弁12Lを含む全ての切換弁は、例えば、大量生産のため、或いは、ポンプ制御装置100内の切換弁の配置を単純化させるために、同じ外形を有する。
【0012】
なお、各種切換弁と各種アクチュエータとの間の接続、及び、各種切換弁のパイロットバルブと各種操作レバーとの接続は、図の明瞭化のために省略されているが、従来の油圧制御又は電気制御を適宜採用するものとする。
【0013】
図4は、ポンプ制御装置100の走行直進弁11を作動させた場合の油圧回路図であり、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する圧油の流れを太線で示す。
【0014】
この場合、走行モータ42L、42Rとブームシリンダ7との複合操作を想定するので、走行直進弁11、切換弁12L及び切換弁12Rが左切換位置に、また、切換弁13が右切換位置にそれぞれ設定される。
【0015】
図4に示すように、油圧ポンプ10Lが吐出する圧油は、走行直進弁11を介して右走行モータ42Rに送られ、また、切換弁12Lを介して左の走行モータ42Lに送られ、一方で、油圧ポンプ10Rが吐出する圧油は、切換弁13を介してブームシリンダ7に送られる。
【0016】
このように、一方の油圧ポンプ10Lで左右の走行モータ42L、42Rを駆動させるようにして、左右の走行モータ42L、42Rに均等の油圧を与え、下部走行体2の直進性を高めるようにする。
【0017】
図5は、ポンプ制御装置100のブーム速度切換弁14を作動させた場合の油圧回路図であり、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する圧油の流れを太線で示す。
【0018】
図5に示すように、切換弁13及び切換弁14が共に右切換位置に設定され、油圧ポンプ10Lが吐出する圧油は、走行直進弁11及び切換弁14を介してブームシリンダ7に送られ、また、油圧ポンプ10Rが吐出する圧油も、切換弁13を介してブームシリンダ7に送られる。
【0019】
このように、双方の油圧ポンプ10L、10Rでブームシリンダ7を伸張させるようにして、一方の油圧ポンプ10Rでブームシリンダ7を伸張させるより速くブーム4を持ち上げられるようにする。
【0020】
なお、図2及び図4において、走行直進弁11の右切換位置、及び、ブーム速度切換弁14の左切換位置が黒色で塗りつぶされているが、これは、それらの切換位置が未使用であり、スプールに油路が形成されていない状態を示す。
【0021】
センターバイパス油路30L、30Rは、それぞれ、最も下流にある切換弁16L、16Rとタンク22との間にネガティブコントロール絞り20L、20Rを備え、油圧ポンプ10L、10Rが吐出した圧油の流れを制限することにより、ネガティブコントロール絞り20L、20Rの上流で圧力を発生させる。
【0022】
破線で示される制御圧管路32L、32Rは、ネガティブコントロール絞り20L、20Rの上流で発生させた圧力をレギュレータ40L、40Rの制御圧としてレギュレータ40L、40Rに伝達する。
【0023】
レギュレータ40L、40Rは、それぞれ、ポンプ10L、10Rの吐出量を制御するための装置であり、制御圧が大きいほど吐出量を低減させ、制御圧が小さいほど吐出量を増大させるようにする。
【0024】
建設機械における何れのアクチュエータもが利用されていない場合(以下、「待機時」とする。)、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する圧油は、センターバイパス油路30L、30Rを通ってネガティブコントロール絞り20L、20Rに至り、ネガティブコントロール絞り20L、20Rの上流で発生させる圧力すなわちレギュレータ40L、40Rの制御圧を上昇させる。
【0025】
その結果、レギュレータ40L、40Rは、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を低減させ、油圧ポンプ10L、10Rの負荷低減を図るようにする。
【0026】
一方、建設機械における何れかのアクチュエータが利用された場合、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する圧油は、そのアクチュエータに対応する切換弁を介してそのアクチュエータに流れ込み、ネガティブコントロール絞り20L、20Rに至る量を低減させ、ネガティブコントロール絞り20L、20Rの上流で発生させる圧力すなわちレギュレータ40L、40Rの制御圧を低下させる。
【0027】
その結果、レギュレータ40L、40Rは、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を増大させ、アクチュエータの駆動を確かなものとする。
【0028】
上述のような構成により、ネガティブコントロール式の建設機械用ポンプ制御装置100は、待機時の油圧ポンプ10L、10Rの負荷を低減させるようにする。
【0029】
しかし、ポンプ制御装置100は、待機時における制御圧を所定レベル以上で維持させるために所定量の圧油を油圧ポンプ10L、10Rに継続的に吐出させており、油圧ポンプ10L、10Rの負荷を更に低減させる余地を残していると言える。
【0030】
このような状況から、待機時に油圧ポンプの負荷ひいてはエンジンの負荷を低減して燃費性能を更に向上させる可変容量型油圧ポンプ制御装置が他にも知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0031】
特許文献1に記載の可変容量型ポンプ制御装置は、ネガティブコントロール絞りに対して並列となる切換弁と、エンジンがアイドル回転のときにその切換弁のパイロット圧を別の圧力ポンプによって高圧状態にするコントローラとを新たに備え、エンジンがアイドル回転のときにその切換弁のパイロット圧を高圧状態にしてその切換弁にある油路を連通させ、ネガティブコントロール絞りを流れる圧油をその切換弁にある油路に導くことで、センターバイパス油路で発生させる制御圧を低減させるようにする。
【0032】
同時に、この可変容量型ポンプ制御装置は、センターバイパス油路で発生させる制御圧の低減に応じて油圧ポンプの吐出量が増大してしまうことがないよう、この制御圧の代わりに上述のコントローラが発生させた別の制御圧(高圧状態)をレギュレータに入力するようにする。
【0033】
その結果、この可変容量型ポンプ制御装置は、エンジンがアイドル回転のとき、センターバイパス油路で発生する圧力損失(制御圧)を低減させながらも油圧ポンプの吐出量を低減させることで、エンジンの負荷を更に低減させて燃費性能を向上させるようにする。
【特許文献1】特開平7−167104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
しかしながら、この可変容量型ポンプ制御装置は、ネガティブコントロール絞りを流れる圧油をバイパスさせるためだけに専用の切換弁を新たに設置する必要があり、ポンプ制御装置の構成を複雑化し、ポンプ製造装置の製造コストを増大させてしまうという問題がある。
【0035】
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、ネガティブコントロール絞りを流れる圧油をバイパスさせる切換弁を追加することなく、燃費性能を向上させることができる建設機械用油圧ポンプ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の一観点によれば、ネガティブコントロール絞りで発生する制御圧に応じて油圧ポンプの吐出量を制御するレギュレータと各種アクチュエータを循環する圧油の流れを制御する複数の切換弁とを備えたネガティブコントロール式の建設機械用油圧ポンプ制御装置であって、それら複数の切換弁が未操作状態にあることを検知する未操作状態検知部と、その未操作状態検知部がそれら複数の切換弁が未操作状態であることを検知した場合に、レギュレータに入力される制御圧を所定圧以上にして油圧ポンプの吐出量を低減させる制御圧制御部と、その未操作状態検知部がそれら複数の切換弁が未操作状態であることを検知した場合に、それら切換弁の一切換位置に配置される、油圧ポンプとタンクとを直接接続する油路を連通させる油路連通部と、を備える建設機械用油圧ポンプ制御装置が提供される。
【0037】
また、上記建設機械用油圧ポンプ制御装置は、複数の切換弁が同じ外形を有していてもよい。
【0038】
また、上記建設機械用油圧ポンプ制御装置は、その油路連通部が走行直進弁又はブーム速度切換弁の一切換位置に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、ネガティブコントロール絞りを流れる圧油をバイパスさせる切換弁を追加することなく、燃費性能を向上させることができる建設機械用油圧ポンプ制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0041】
図6は、本発明に係るポンプ制御装置の第一実施例の油圧回路図であり、ポンプ制御装置600は、従来未使用であった走行直進弁611の右切換位置に新たな油路(図中の灰色部分)を備え、かつ、レギュレータ40L、40Rを別の制御圧(以下、「第二制御圧」とする。)を用いて制御する機構を備える点においてポンプ制御装置100と相違するが、他の点においてはポンプ制御装置100と共通する。そこで、共通する構成要素についてはポンプ制御装置100と同じ参照番号を用いながら、相違点を中心に説明を行うこととする。
【0042】
走行直進弁611は、その左切換位置及び中立切換位置における油路をポンプ制御装置100における走行直進弁11に共通するものとしながら、ポンプ制御装置100における走行直進弁11では未使用となっていたその右切換位置に油圧ポンプ10L、10Rとタンク22とを直接連通させるための油路を備える。
【0043】
また、第二制御圧を発生させる機構は、補助ポンプ50、ソレノイドバルブ51、シャトル弁52L、52R、制御圧管路34L、34R、36、アクチュエータ操作レバー60、シャトル弁61、操作センサー62及びソレノイドバルブ制御部63から構成される。
【0044】
補助ポンプ50は、第二制御圧を発生させるためのポンプであり、油圧ポンプ10L、10Rに比べ吐出量が小さく、エンジンに対する負荷も小さい。
【0045】
ソレノイドバルブ51は、補助ポンプ50が吐出する圧油の流れを切り換えるための機構の一例であり、補助ポンプ50が吐出する圧油を制御圧管路34L、34R及び36に送り出す第一切換位置と制御圧管路34L、34R及び36の圧油をタンク22に排出させる第二切換位置とを切換可能に有する。なお、ソレノイドバルブ51は、油圧パイロットバルブを備えたバルブであってもよい。
【0046】
シャトル弁52L、52Rは、それぞれ、制御圧管路32L、32Rの制御圧と制御圧管路34L、34Rの第二制御圧とのうちの高い方の圧をレギュレータ40L、40Rに伝えるための弁である。
【0047】
制御圧管路34L、34Rは、ソレノイドバルブ51とシャトル弁52L、52Rとを接続する制御用の油路であり、第二制御圧をレギュレータ40L、40Rに伝えるための油路である。
【0048】
制御圧管路36は、ソレノイドバルブ51と走行直進弁611のパイロットバルブ611bとを接続する制御用の油路であり、第二制御圧をパイロットバルブ611bに伝え、走行直進弁611を右切換位置に切り換えるようにする。
【0049】
アクチュエータ操作レバー60は、走行モータ42L、42R、ブームシリンダ7等のアクチュエータを操作するためのレバーであり、圧力制御又は電気制御によって対応する切換弁のパイロットバルブに制御圧を伝え、それら対応する切換弁の切換位置を切り換えるようにする。
【0050】
シャトル弁61は、操作レバー60が操作されたか否かを読み取るための機構の一例であり、操作レバー60の操作に応じて変化する制御油の流れをその弁機構の動きに対応させる。
【0051】
操作センサー62は、操作レバー60が操作されたか否かを検出するためのセンサーであり、シャトル弁61の弁の動きを読み取ることで操作レバー60の操作の有無、又は、操作レバー60の操作量に関する電気信号(二点鎖線を参照。)をソレノイドバルブ制御部63に出力する。
【0052】
ソレノイドバルブ制御部63は、ソレノイドバルブ51を制御するための装置であって、操作センサー62が出力する電気信号を受け、全てのアクチュエータに対応する操作レバー60が操作されていないことを検知した場合に、ソレノイドバルブ51に電気信号(二点鎖線参照。)を出力してソレノイドバルブ51の切換位置を切り換えさせ、補助ポンプ50と制御圧管路34L、34R及び36とを連通させる。
【0053】
なお、図6は、建設機械待機時の状態を示し、ネガティブコントロール絞り20L、20Rにより発生させた制御圧が所定圧以上になったことを制御圧管路32L、32Rを介してレギュレータ40L、40R(矢印A及びB参照)に伝え、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を低減させた状態を示している。
【0054】
次に、図7を参照しながら、建設機械待機時において、第二制御圧によりレギュレータ40L、40Rを制御する処理について説明する。なお、図7は、ポンプ制御装置600において第二制御圧を発生させたときの油圧回路図である。
【0055】
バルブ制御部63は、全ての操作レバー60が操作されていないことを検知すると、ソレノイドバルブ51に電気信号を送信して補助ポンプ50と制御圧管路34L、34R及び36とを連通させ、制御圧管路32L、32Rの制御圧よりも高い第二制御圧を制御圧管路34L、34R及び36内に発生させる。
【0056】
その第二制御圧は、シャトル弁52L、52Rを介してレギュレータ40L、40Rに伝わり(矢印C及びD参照。)、かつ、制御圧管路36を介して走行直進弁611のパイロットバルブ611bに伝わる(矢印E参照。)。
【0057】
第二制御圧をそのパイロットバルブ611bで受けた走行直進弁611は、右切換位置に設定され、油圧ポンプ10L、10Rとタンク22とを直接連通させる(太線参照。)。
【0058】
同時に、第二制御圧を受けたレギュレータ40L、40Rは、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を低減させ、油圧ポンプ10L、10Rの負荷、ひいては、エンジン負荷を低減させるようにする。
【0059】
なお、この場合の油圧ポンプ10L、10Rの吐出量は、制御圧管路32L、32Rにおける制御圧を用いた場合における油圧ポンプ10L、10Rの最小吐出量よりも、更に低減させることができる。
【0060】
油圧ポンプ10L、10Rから吐出される圧油は、走行直進弁611を介して直接タンク22に流れ込み、ネガティブコントロール絞り20L、20Rに流れ込む圧油が減少するからであり、ネガティブコントロール絞り20L、20Rにおける圧力損失を考慮する必要がないからである(従来のポンプ制御装置100では、ネガティブコントロール絞り20L、20Rにおける圧力損失を考慮して油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を一定レベル以上に維持する必要がある。)。
【0061】
また、シャトル弁52L、52Rにより、制御圧管路32L、32R内の低減された制御圧は、レギュレータ40L、40Rに伝わることもなく、制御圧の減少により油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を増大させてしまうこともない。
【実施例2】
【0062】
図8は、本発明に係るポンプ制御装置の第二実施例の油圧回路図であり、ポンプ制御装置800は、従来未使用であった走行直進弁811の右切換位置及びブーム速度切換弁814の左切換位置に新たな油路(図中の灰色部分)を備え、また、ブーム速度切換弁814のパイロットバルブ814aに接続される制御圧管路38を備える点においてポンプ制御装置600と相違するが、他の点においてはポンプ制御装置600と共通する。そこで、共通する構成要素についてはポンプ制御装置600と同じ参照番号を用いながら、相違点を中心に説明を行うこととする。
【0063】
走行直進弁811は、その左切換位置及び中立切換位置における油路をポンプ制御装置600における走行直進弁11に共通するものとしながら、その右切換位置に油圧ポンプ10Rとタンク22とを直接連通させるための油路を備える。
【0064】
ブーム速度切換弁814は、その右切換位置及び中立切換位置における油路をポンプ制御装置600におけるブーム速度切換弁14に共通するものとしながら、ポンプ制御装置600におけるブーム速度切換弁14では未使用となっていたその左切換位置に油圧ポンプ10Lとタンク22とを直接連通させるための油路を備える。
【0065】
なお、図8は、建設機械待機時の状態を示し、ネガティブコントロール絞り20L、20Rにより発生させた制御圧が所定圧以上になったことを制御圧管路32L、32Rを介してレギュレータ40L、40R(矢印A及びB参照)に伝え、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を低減させた状態を示している。
【0066】
次に、図9を参照しながら、建設機械待機時において、第二制御圧によりレギュレータ40L、40Rを制御する処理について説明する。なお、図9は、ポンプ制御装置800において第二制御圧を発生させたときの油圧回路図である。
【0067】
バルブ制御部63は、全ての操作レバー60が操作されていないことを検知すると、ソレノイドバルブ51に電気信号を送信して補助ポンプ50と制御圧管路34L、34R、36及び38とを連通させ、制御圧管路32L、32Rの制御圧よりも高い第二制御圧を制御圧管路34L、34R、36及び38内に発生させる。
【0068】
その第二制御圧は、シャトル弁52L、52Rを介してレギュレータ40L、40Rに伝わり(矢印C及びD参照。)、制御圧管路36を介して走行直進弁811のパイロットバルブ811bに伝わり(矢印E参照。)、かつ、制御圧管路38を介してブーム速度切換弁814のパイロットバルブ814aに伝わる(矢印F参照。)。
【0069】
第二制御圧をそのパイロットバルブ811bで受けた走行直進弁811は、右切換位置に設定され、油圧ポンプ10Rとタンク22とを直接連通させる(太線参照。)。
【0070】
また、第二制御圧をそのパイロットバルブ814aで受けたブーム速度切換弁814は、左切換位置に設定され、油圧ポンプ10Lとタンク22とを直接連通させる(太線参照。)。
【0071】
同時に、第二制御圧を受けたレギュレータ40L、40Rは、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を低減させ、油圧ポンプ10L、10Rの負荷、ひいては、エンジン負荷を低減させるようにする。
【0072】
なお、この場合の油圧ポンプ10L、10Rの吐出量は、制御圧管路32L、32Rにおける制御圧を用いた場合における油圧ポンプ10L、10Rの最小吐出量よりも、更に低減させることができる。
【0073】
また、シャトル弁52L、52Rにより、制御圧管路32L、32R内の低減された制御圧は、レギュレータ40L、40Rに伝わることもなく、制御圧の減少により油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を増大させてしまうこともない。
【0074】
以上の構成により、本発明に係るポンプ制御装置は、ネガティブコントロール絞りをバイパスする切換弁を別途取り付ける必要もなく、既存の切換弁の未使用切換位置を利用して、待機時に油圧ポンプとタンクとを直接連通させることで、油圧ポンプの吐出量を低減させることができる。
【0075】
また、本発明に係るポンプ制御装置は、サイズの異なる(切換位置の数が異なる)切換弁を用意する必要もなく、同サイズの切換弁を使用することができるので、複数の切換弁のレイアウトを単純化することができ、また、製造コストを低減させることができる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0077】
例えば、上述の実施例は、三つの切換位置を有する複数の切換弁で構成されるが、四つ以上の切換位置を有する複数の切換弁で構成されてもよい。
【0078】
また、上述の実施例は、三つの切換位置を有する切換弁だけで構成されるが、切換位置の数が異なる切換弁が混在していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】油圧ショベルの構成例を示す図である。
【図2】従来のネガティブコントロール式ポンプ制御装置の油圧回路図である。
【図3】切換弁の構成例を示す図である。
【図4】従来のポンプ制御装置における走行直進弁作動時の油圧回路図である。
【図5】従来のポンプ制御装置におけるブーム速度切換弁作動時の油圧回路図である。
【図6】本発明の第一実施例の油圧回路図(その1)である。
【図7】本発明の第一実施例の油圧回路図(その2)である。
【図8】本発明の第二実施例の油圧回路図(その1)である。
【図9】本発明の第二実施例の油圧回路図(その2)である。
【符号の説明】
【0080】
1 油圧ショベル、2 下部走行体、3 上部旋回体、4 ブーム、5 アーム、6 バケット、7 ブームシリンダ、8 アームシリンダ、9 バケットシリンダ、10L、10R 油圧ポンプ、11、611、811 走行直進弁、12L、12R、13、15L、15R、16L、16R 切換弁、14、814 ブーム速度切換弁、20L、20R ネガティブコントロール絞り、22 タンク、30L、30R センターバイパス油路、32L、32R、34L、34R、36、38 制御圧管路、40L、40R レギュレータ、42L、42R 走行モータ、50 補助ポンプ、51 ソレノイドバルブ、52L、52R、61 シャトル弁、60 操作レバー、62 操作センサー、63 ソレノイドバルブ制御部、100、600、800 ポンプ制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネガティブコントロール絞りで発生する制御圧に応じて油圧ポンプの吐出量を制御するレギュレータと各種アクチュエータを循環する圧油の流れを制御する複数の切換弁とを備えたネガティブコントロール式の建設機械用油圧ポンプ制御装置であって、
前記複数の切換弁が未操作状態にあることを検知する未操作状態検知部と、
前記未操作状態検知部が前記複数の切換弁が未操作状態であることを検知した場合に、前記レギュレータに入力される制御圧を所定圧以上にして前記油圧ポンプの吐出量を低減させる制御圧制御部と、
前記未操作状態検知部が前記複数の切換弁が未操作状態であることを検知した場合に、前記切換弁の一切換位置に配置される、前記油圧ポンプとタンクとを直接接続する油路を連通させる油路連通部と、
を備えることを特徴とする建設機械用油圧ポンプ制御装置。
【請求項2】
前記複数の切換弁は、同じ外形を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の建設機械用油圧ポンプ制御装置。
【請求項3】
前記油路連通部は、走行直進弁又はブーム速度切換弁の一切換位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械用油圧ポンプ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−121586(P2009−121586A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296004(P2007−296004)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】