説明

建設機械

【課題】 キャノピの上面部から前方に突出するガードを設けることにより、オペレータを落下物から保護し、作業環境を向上させる。
【解決手段】 油圧ショベル1の上部旋回体3には、オペレータが着座する運転席9と、この運転席9を上方から覆うキャノピ12を設ける。そして、キャノピ12の上面部12Hには前方に向けて突出するガード14を設け、このガード14を、天窓保護部15、枠体16、保護板17等によって構成する。これにより、キャノピ仕様の油圧ショベル1において、例えば作業装置4をキャノピ12よりも高い位置に延ばして作業を行う場合でも、運転席9に着座したオペレータをガード14によって落下物から保護することができ、オペレータの作業環境を良好に保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、運転席を上方から覆うキャノピを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械としては、運転席がキャノピによって上方から覆われたキャノピ仕様の建設機械と、運転席がキャブ内に配置されたキャブ仕様の建設機械とが知られている。
【0003】
ここで、キャノピ仕様の建設機械は、比較的小型の車両に適用されることが多く、例えばミニショベルと呼ばれる小型油圧ショベルに適用されている。この種の従来技術による小型油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部に俯仰動可能に設けられた作業装置とによって構成されている。
【0004】
一方、キャブ仕様の建設機械は、小型から大型までの車両に広く適用されており、例えば中型、大型の油圧ショベルを使用するときには、作業装置のバケット等をキャブよりも高い位置に延ばした状態で、崖等の切崩し作業を行うことがある。
【0005】
このため、従来技術では、キャブの上部前側に庇状のガード部材を設け、このガード部材によって土砂、石等の落下物がキャブの前面部(フロントガラス等)に衝突するのを防止する構成としている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−142785号公報
【特許文献2】特開2001−58553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術では、例えばキャノピ仕様の油圧ショベルを使用している場合でも、状況によっては作業装置をキャノピの上面部よりも高い位置に延ばして各種の作業を行いたい場合がある。
【0008】
しかし、キャノピ仕様が適用されるような小型の油圧ショベルでは、作業装置も比較的小型に形成されているため、これを高い位置に延ばして作業することを想定していない場合が多い。このため、従来技術では、キャノピ仕様の油圧ショベルにガード部材が設けられておらず、油圧ショベルを用いた作業内容が制限されるという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、キャノピ仕様の車両でも、運転席に着座したオペレータを落下物から保護することができ、オペレータの作業環境を良好に保持できると共に、作業装置によって高い位置での作業を円滑に行うことができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために本発明は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体として形成された旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席と、前記旋回フレーム上に設けられ該運転席を上方から覆う上面部を有するキャノピとを備えてなる建設機械に適用される。
【0011】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記キャノピには、前記上面部から前方に向けて突出し前記運転席に着座したオペレータを落下物から保護するガードを設ける構成としたことにある。
【0012】
また、請求項2の発明によると、前記ガードは、前記キャノピの上面部に取付けられ前方に向けて突出する枠体と、該枠体に設けられて水平方向に延びオペレータの視界を確保する透視可能な材料からなる保護板とによって構成している。
【0013】
また、請求項3の発明によると、前記枠体と保護板との間には防振部材を設ける構成としている。
【0014】
また、請求項4の発明によると、前記枠体には横断面が四角形状に形成された補強用のステイを設け、前記ステイは、当該ステイの横断面形状を形成する四辺のうち1つの辺が前記運転席側を向くように斜めに傾けて配設する構成としている。
【0015】
さらに、請求項5の発明によると、前記キャノピの上面部には前記運転席に着座したオペレータの上方視界を確保する天井窓を設け、前記ガードには前記キャノピの天井窓を覆う部位を設ける構成としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、キャノピの上面部から前方に突出するガードを設けることができる。これにより、建設機械を用いた作業時には、例えば土砂、石等の落下物がキャノピの上方から落ちてきたとしても、この落下物が運転席に着座したオペレータの近傍に達したり、周辺の機器等に衝突するのをガードによって防止することができる。
【0017】
従って、例えば作業装置をキャノピよりも高い位置に延ばして各種の作業を行う場合でも、オペレータやその周辺機器を落下物から確実に保護することができ、オペレータの作業環境を良好に保持することができる。このため、キャノピ仕様の建設機械でも、高い位置での作業を円滑に行うことができ、各種の作業に対して適応性を高めることができる。
【0018】
また、請求項2の発明によれば、ガードを枠体と保護板とによって形成することができる。これにより、枠体には、例えば高い強度、剛性をもつ材料を用いることができ、保護板には他の軽量な材料等を用いることができるから、ガード全体の重量を抑えつつ、これに十分な強度を与えることができる。
【0019】
一方、保護板を、例えば透明な樹脂、ガラス等の材料、または格子状、網目状の透ける材料等によって形成することができる。これにより、運転席に着座したオペレータは、その上方に張出した保護板を透視して周囲の状況を確認することができる。従って、ガードが邪魔になってオペレータの視界が狭くなるのを避けることができ、ガードの位置でもオペレータの視界を良好に確保することができる。
【0020】
また、請求項3の発明によれば、枠体は、例えばゴム等の防振部材を介して保護板を支持することができ、保護板の取付状態を安定させることができる。これにより、車体側から伝わる振動等によって保護板にがたつき等が生じるのを防止でき、耐振性を高めることができる。
【0021】
また、請求項4の発明によれば、ステイによって枠体の強度を高めることができ、ガードの耐久性を向上させることができる。この場合、ステイの横断面形状を形成する1つの辺が運転席側を向くように、ステイの四辺を傾けて配置することができる。これにより、例えばステイの辺を垂直(または水平)に配置した場合と比較して、運転席に着座したオペレータからみてステイの輪郭(投影面積)を小さくすることができる。このため、ステイがオペレータの視界の邪魔になるのを可能な限り避けることができ、ステイによってガードの強度を確保しつつ、オペレータの視界も良好に保持することができる。
【0022】
さらに、請求項5の発明によれば、ガードの一部によってキャノピの天井窓を覆うことができ、この部位によって天井窓を落下物から保護することができる。これにより、天井窓を保護する部品と、キャノピの前方に突出する庇状の部品とを1つのガードとして形成することができる。この結果、ガードに関連した部品点数を削減することができるから、車両の組立作業を効率化して生産性を高めることができる。
【0023】
また、天井窓を覆う部位は、キャノピの前方に突出する庇状の部位を補強することができ、この庇状の部位を支持することができるから、ガード全体の強度を高め、キャノピへの取付状態を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態による建設機械について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
ここで、図1ないし図8は第1の実施の形態を示し、本実施の形態では、建設機械として、3柱型キャノピを備えたオフセット式の油圧ショベルを例に挙げて述べる。
【0026】
図中、1はキャノピ仕様のオフセット式油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側で左,右の中間位置に俯仰動可能に設けられたオフセット式の作業装置4とによって大略構成されている。
【0027】
ここで、上部旋回体3は、図2に示す如く、下部走行体2の車幅内でほぼ旋回できるように、上方からみて略円形状に形成され、後述の旋回フレーム5、外装カバー7、カウンタウェイト8、運転席9、キャノピ12、ガード14等によって構成されている。
【0028】
また、作業装置4は、図1に示す如く、旋回フレーム5に俯仰動可能に支持されたロアブーム4Aと、該ロアブーム4Aの先端に左,右方向に揺動可能に連結されたアッパブーム4Bと、該アッパブーム4Bの先端に左,右方向に揺動可能に連結されたアーム支持部材4Cと、該アーム支持部材4Cの先端に上,下方向に回動可能に連結されたアーム4Dと、該アーム4Dの先端に回動可能に取付けられたバケット4Eと、ブームシリンダ4F、アームシリンダ4G、バケットシリンダ4Hとにより大略構成されている。
【0029】
また、ロアブーム4A先端部とアーム支持部材4Cとの間には、ロアブーム4Aに対してアーム4Dを常時平行に保持するリンク4Jが設けられている。そして、作業装置4は、アーム4Dをロアブーム4Aに対して左,右方向に平行移動(オフセット)させ、この状態でロアブーム4Aを俯仰動させつつアーム4D、バケット4Eを回動させることにより、側溝等の掘削作業を行うことができる。
【0030】
5は上部旋回体3の下部側を構成する旋回フレームを示し、該旋回フレーム5は、例えば複数の鋼材、鋼板等により支持構造体として形成されている。そして、旋回フレーム5の前部左側にはフロア部材6が設けられ、このフロア部材6上には、後述の運転席9、キャノピ12等が設けられている。
【0031】
また、旋回フレーム5の後部側には、エンジン、油圧ポンプ等の機器(図示せず)と、これらの機器を覆う外装カバー7とが設けられている。また、旋回フレーム5の後端側には、作業装置4との重量バランスをとるカウンタウェイト8が取付けられている。
【0032】
9は旋回フレーム5の前部左側に設けられた運転席を示し、該運転席9はオペレータが着座するものである。そして、運転席9の前側には、図3に示す如く、オペレータが操作することによって車両を走行させる走行レバー・ペダル10が設けられ、運転席9の左,右両側には、オペレータが作業装置4の操作等を行う作業レバー11(一方のみ図示)が設けられている。
【0033】
12は旋回フレーム5の前部左側に設けられた3柱型のキャノピを示し、このキャノピ12は、図2に示す如く、作業装置4のロアブーム4Aよりも左側に配置され、運転席9に着座したオペレータを上方及び右側方から覆うものである。
【0034】
ここで、キャノピ12は、図3、図8に示す如く、運転席9の右前側に立設された右前ピラー12Aと、運転席9の右後側に立設された右後ピラー12Bと、運転席9の左後側に立設された左後ピラー12Cと、右天井ピラー12D、左天井ピラー12E、前天井ピラー12F、後天井ピラー12G、上面部12Hとによって大略構成されている。
【0035】
そして、右天井ピラー12Dは、右前ピラー12Aと右後ピラー12Bとを上端側で連結しており、これらの部位は金属パイプ等を屈曲することによって形成されている。また、左天井ピラー12Eは、左後ピラー12Cの上端側から前方に屈曲して延び、これらの部位も金属パイプによって形成されている。
【0036】
また、前天井ピラー12Fは、右天井ピラー12Dと左天井ピラー12Eとを前部側で連結し、左,右方向に延びている。さらに、後天井ピラー12Gは、右後ピラー12Bと左後ピラー12Cとを上端側で連結している。
【0037】
一方、上面部12Hは、例えば後部側が湾曲した金属板等によって形成され、運転席9に着座したオペレータを上方から覆う位置に配設されると共に、上面部12Hの周縁部位は、右天井ピラー12D、左天井ピラー12E、前天井ピラー12F及び後天井ピラー12Gにそれぞれ接合されている。
【0038】
13はキャノピ12の上面部12Hに設けられた天井窓で、この天井窓13は、例えばガラス板、樹脂板等の透明な板材によって覆われている。ここで、天井窓13は、運転席9に着座したオペレータの上方視界を確保するもので、例えば作業装置4のロアブーム4Aが垂直に近い位置まで大きく仰動されたときに、運転席9の位置からバケット4E等の状態を確認し易いように構成されている。
【0039】
次に、14はキャノピ12の上面部12Hに設けられたガードを示している。このガード14は、例えば作業装置4をキャノピ12よりも高い位置に仰動して作業を行うときに、運転席9に着座したオペレータやその周辺機器を落下物から保護するものである。また、ガード14は、キャノピ12の天井窓13も落下物から保護する構成となっている。
【0040】
ここで、ガード14は、図3ないし図5に示す如く、後述の天窓保護部15、枠体16、保護板17によって大略構成され、天井窓13を保護する部品と、キャノピ12の前方に突出する庇状の部品とを一体化した構造となっている。
【0041】
そして、ガード14は、例えばねじ止め等の手段によってキャノピ12の上面部12H側に取付けられ、天井窓13を覆う位置から上面部12Hの前方に突出している。この状態で、ガード14の突出端側は、運転席9に着座したオペレータの前側位置(走行レバー・ペダル10及びその近傍位置)を上方から覆っている。
【0042】
15は枠体16と共にガード14の骨格部分を構成する天窓保護部で、該天窓保護部15は、図7に示す如く、例えば複数本の細長い鋼材等を接合することにより、扁平な格子状の枠体として形成され、キャノピ12の上面部12Hに沿って水平方向に延びている。
【0043】
そして、天窓保護部15は、天井窓13を覆う位置でキャノピ12の上面部12H側に取付けられ、天井窓13に落下物が衝突するのを防止するガード部材としての機能を有している。また、天窓保護部15は、枠体16、保護板17等を支持する支持部材としての機能も有している。
【0044】
また、天窓保護部15は、左,右方向に間隔をもって前,後方向に延びる複数本の縦梁部15Aと、該各縦梁部15Aの間に左,右方向に延びて形成され、各縦梁部15Aの長さ方向中間部を互いに連結する横梁部15Bと、各縦梁部15Aの後部側に固着されて左,右方向に延び、ねじ止め等の手段によってキャノピ12の上面部12H側に取付けられる取付梁部15Cとによって構成されている。
【0045】
16は天窓保護部15の前部側に固着して設けられた枠体で、該枠体16は保護板17の取付部位となるものであり、キャノピ12の上面部12Hの前端(前天井ピラー12F)よりも前方に突出すると共に、この位置で前,後方向及び左,右方向にわたって水平に延びている。
【0046】
そして、枠体16は、図5に示す如く、その前部側に位置して左,右方向に延びる前枠16Aと、該前枠16Aの後側に位置して左,右方向に延びる後枠16Bと、前枠16Aと後枠16Bとを左端側で連結して前,後方向に延びる左枠16Cと、前枠16Aと後枠16Bとを右端側で連結して前,後方向に延びる右枠16Dと、左枠16C上に固着されて前,後方に延びた左保護板保持部16Eと、右枠16D上に固着されて前,後方に延びた右保護板保持部16Fと、左枠16Cと右枠16Dとの間に左,右方向に間隔をもって配置され、前,後方向に延びて前枠16Aと後枠16Bとを連結する複数本の連結梁16Gとによって大略構成されている。
【0047】
ここで、左枠16Cには、図2に示す如く、キャノピ12の左天井ピラー12Eに取付けられる取付部16Hが設けられている。また、右枠16Dの前部側には、図3に示す如く、下向きに延びる脚部16Jが設けられ、この脚部16Jはキャノピ12の右前ピラー12Aに取付けられ、枠体16の前部側を支持している。さらに、左,右の保護板保持部16E,16Fは、図6に示す如く横断面が略U字状に形成され、その内側に嵌合された保護板17の周縁を保持する構成となっている。
【0048】
17は枠体16に設けられた平板状の保護板を示し、該保護板17は、運転席9に着座したオペレータの前側位置(走行レバー・ペダル10及びその近傍位置)を上方から覆うもので、オペレータや走行レバー・ペダル10等を落下物から保護すると共に、これらを雨水等から遮蔽する雨よけとしての機能も有している。
【0049】
ここで、保護板17は、図3に示す如く、運転席9に着座したオペレータが保護板17を見上げたときに、保護板17の上方を透視することが可能な材料によって形成され、オペレータの視界を確保する構成となっている。この場合、保護板17を形成する透視可能な材料としては、例えばポリカーボネイト等の透明な樹脂材料、強化ガラス等が用いられている。また、この透視可能な材料は、必ずしも透明な材料である必要はなく、例えば格子状、網目状の透ける材料等を用いてもよいものである。
【0050】
また、保護板17は、図4、図6に示す如く、その周縁部の複数箇所に配置された取付ボルト18、袋ナット19、ワッシャ20と、後述の防振ゴム21とを用いて枠体16の前枠16A、後枠16Bに取付けられ、水平方向に延びている。また、保護板17の左,右の周縁部は、枠体16の保護板保持部16E,16Fにそれぞれ嵌合されている。
【0051】
21は各取付ボルト18の位置で枠体16と保護板17との間にそれぞれ設けられた防振部材としての防振ゴムを示している。これらの防振ゴム21は、例えばゴムワッシャ等によって構成され、ワッシャ20と保護板17との間に挟持された状態で保護板17を弾性的に支持している。これにより、防振ゴム21は、車体側の振動等によって保護板17のがたつきが生じるのを防止し、耐振性を高めるものである。
【0052】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0053】
まず、オペレータは運転席9に着座し、この状態で走行レバー・ペダル10を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、作業レバー11を操作することにより、上部旋回体3を旋回させたり、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行なうことができる。
【0054】
このとき、油圧ショベル1は、作業装置4を折畳んで垂直に近い位置まで大きく仰動させることにより、作業装置4が旋回半径内に収まるような姿勢(小旋回姿勢)をとることがある。この状態で、オペレータは、キャノピ12の上方に位置するバケット4E等の状態を天井窓13から容易に確認することができる。
【0055】
また、例えばバケット4E内に収容された土砂、石等が下方の天井窓13に向けてこぼれ落ちた場合でも、これらの落下物が天井窓13に衝突するのをガード14の天窓保護部15によって防止することができる。
【0056】
一方、油圧ショベル1を用いた掘削作業時には、例えば特開平8−142785号公報等に記載されているように、作業装置4をキャノピ12の上面部12Hよりも高い位置に延ばした状態で、崖等の切崩し作業を行うことがある。このような作業中には、キャノピ12の上方から前側に土砂、石等の落下物が落ちてくることがある。
【0057】
しかし、キャノピ12の上面部12Hの前側には、ガード14の保護板17が張出しているので、運転席9に着座したオペレータや走行レバー・ペダル10等の機器に落下物が衝突するのを防止することができる。しかも、オペレータは、この状態で保護板17を透視して掘削部位の状況等を確認しつつ、作業を円滑に進めることができる。
【0058】
かくして、本実施の形態によれば、キャノピ12の上面部12H側には、前方に突出するガード14を設ける構成としたので、油圧ショベル1を用いた作業時には、例えば土砂、石等の落下物がキャノピ12の上方から落ちてきたとしても、この落下物が運転席9に着座したオペレータの近傍に達したり、例えば走行レバー・ペダル10等の機器に衝突するのをガード14によって防止することができる。
【0059】
従って、例えば作業装置4をキャノピ12よりも高い位置に延ばして各種の作業を行う場合でも、オペレータやその周辺機器を落下物から確実に保護することができ、オペレータの作業環境を良好に保持することができる。このため、キャノピ仕様の油圧ショベル1でも、高い位置での作業を円滑に行うことができ、各種の作業に対して適応性を高めることができる。
【0060】
この場合、ガード14を、天窓保護部15、枠体16と、保護板17とによって形成したので、天窓保護部15と枠体16には、例えば高い強度、剛性をもつ鋼材等を用いることができ、保護板17には樹脂材料等の軽量な材料を用いることができる。従って、広い面積をもつガード14を形成したとしても、ガード14全体の重量を抑えつつ、これに十分な強度を与えることができる。
【0061】
また、保護板17を、例えば透明な樹脂板、ガラス等の材料によって形成したので、運転席9に着座したオペレータは、その上方に張出したガード14を透視して周囲の状況を確認することができる。従って、ガード14が邪魔になってオペレータの視界が狭くなるのを避けることができ、ガード14の位置でもオペレータの視界を良好に確保することができる。また、保護板17を板材によって形成することにより、ガード14に雨よけとしての機能ももたせることができ、雨天時の作業等において作業性を高めることができる。
【0062】
一方、枠体16と保護板17との間に防振ゴム21を設けたので、枠体16は、防振ゴム21を介して保護板17を支持することができ、保護板17の取付状態を安定させることができる。これにより、車体側から伝わる振動等によって保護板17にがたつき等が生じるのを防止でき、耐振性を高めることができる。
【0063】
また、ガード14の天窓保護部15によってキャノピ12の天井窓13を覆うようにしたので、この天窓保護部15によって天井窓13を落下物から保護することができる。これにより、天井窓13を保護する部品と、キャノピ12の前方に突出する庇状の部品とを1つのガード14として形成することができ、ガード14に関連した部品点数を削減することができるから、車両の組立作業を効率化して生産性を高めることができる。
【0064】
また、天窓保護部15は、キャノピ12の前方に突出する枠体16を補強することができ、この枠体16を支持することができるから、ガード14全体の強度を高め、キャノピ12への取付状態を安定させることができる。
【0065】
次に、図9ないし図12は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ガードに傾斜したステイを設け、オペレータの視界を確保しつつ強度を高める構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0066】
31はキャノピの上面部に設けられるガードを示し、このガード31は、図9ないし図11に示す如く、第1の実施の形態とほぼ同様に、天窓保護部15、枠体32、保護板17によって大略構成されている。そして、枠体32は、前枠32A、後枠32B、左枠32C、右枠32D、保護板保持部32E,32F、連結梁32G、取付部32H、脚部32Jを有しているものの、各連結梁32Gの間には後述のステイ33が設けられている。
【0067】
33は枠体32の一部を構成する補強用のステイを示し、このステイ33は、図10、図12に示す如く、例えば細長い角柱状の鋼材等によって構成され、その横断面形状は、短辺33A,33Aと長辺33B,33Bとからなる四辺を有する長方形(四角形)状に形成されている。
【0068】
そして、ステイ33は、前枠32Aと後枠32Bとの間で左,右方向に延び、各連結梁32Gを互いに連結すると共に、長さ方向の両端側が左枠32Cと右枠32Dとに固着されている。これにより、ステイ33は、各連結梁32Gと共に保護板17を支持する格子状の支持構造体を形成し、ガード31の前部側を補強しているものである。
【0069】
また、ステイ33は、図11、図12に示す如く、例えば1つの短辺33Aが運転席9側に向くように、四辺33A,33Bを斜めに傾けた状態で配置されている。具体的には、運転席9に着座したオペレータが保護板17を斜めに見上げるときに、その視線の方向Aが垂直方向に対して角度θだけ傾斜しているとすれば、ステイ33の短辺33Aは、水平方向に対して角度θだけ運転席9側に向けて傾斜している。
【0070】
この状態では、ステイ33の短辺33Aが視線の方向Aに対して垂直に配置されるから、オペレータからみてステイ33の輪郭(図12中の投影面積S)を最も小さくすることができ、ステイ33が視界の邪魔になるのを可能な限り避けることができる。
【0071】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、ガード31の枠体32にステイ33を設ける構成としたので、このステイ33によって枠体32の強度を高めることができ、ガード31の耐久性を向上させることができる。
【0072】
この場合、ステイ33は、1つの短辺33Aが運転席9側を向くように、短辺33Aと長辺33Bとを斜めに傾けて配置している。これにより、例えばステイ33の四辺を垂直(または水平)に配置した場合と比較して、運転席9に着座したオペレータからみてステイの輪郭(投影面積S)を小さくすることができる。従って、ステイ33によってガード31の強度を確保しつつ、オペレータの視界も良好に保持することができる。
【0073】
次に、図13ないし図15は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、4柱型のキャノピにガードを適用する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0074】
41はキャノピ仕様のスイング式油圧ショベルで、該油圧ショベル41は、第1の実施の形態とほぼ同様に、下部走行体42、上部旋回体43、スイング式の作業装置44とによって大略構成されている。そして、上部旋回体43は、旋回フレーム45、フロア部材46、外装カバー47、カウンタウェイト48、運転席49と、後述する4柱型のキャノピ50とによって構成されている。
【0075】
ここで、作業装置44は、旋回フレーム45の前部側に左,右方向に揺動可能に支持されたスイングポスト44Aと、該スイングポスト44Aに俯仰動可能に支持されたブーム44Bと、該ブーム44Bの先端に上,下方向に回動可能に連結されたアーム44Cと、該アーム44Cの先端に回動可能に取付けられたバケット44Dと、ブームシリンダ44E、アームシリンダ44F、バケットシリンダ44Gとによって大略構成されている。
【0076】
そして、作業装置44は、スイングポスト44Aを旋回フレーム45に対して左,右方向に揺動(スイング)させ、この状態でブーム44Bを俯仰動させつつアーム44C、バケット44Dを回動させることにより、側溝等の掘削作業を行うことができる。
【0077】
50は旋回フレーム45の前部左側に設けられた4柱型のキャノピを示し、このキャノピ50は、図14、図15に示す如く、運転席49に着座したオペレータを上方及び右側方から覆うものである。ここで、キャノピ50は、運転席9の右前側に立設された右前ピラー50Aと、運転席9の右後側に立設された右後ピラー50Bと、運転席9の左前側に立設された左前ピラー50Cと、運転席9の左後側に立設された左後ピラー50Dと、右天井ピラー50E、左天井ピラー50F、前天井ピラー50G、後天井ピラー50H、上面部50Jとによって大略構成されている。
【0078】
そして、右天井ピラー50Eは、右前ピラー50Aと右後ピラー50Bとを上端側で連結しており、これらの部位は、例えば1本の金属パイプ等を屈曲することによって形成されている。また、左天井ピラー50Fは、左前ピラー50Cと左後ピラー50Dとを上端側で連結しており、これらの部位も1本の金属パイプによって形成されている。
【0079】
また、前天井ピラー50Gは、右天井ピラー50Eと左天井ピラー50Fとを前部側で連結し、左,右方向に延びている。さらに、後天井ピラー50Hは、右後ピラー50Bと左後ピラー50Dとを上端側で連結している。
【0080】
一方、上面部50Jは、例えば後部側が湾曲した金属板等によって形成され、運転席9に着座したオペレータを上方から覆う位置に配設されると共に、上面部50Jの周縁部位は、右天井ピラー50E、左天井ピラー50F、前天井ピラー50G及び後天井ピラー50Hにそれぞれ接合されている。そして、キャノピ50の上面部50J側には、第1の実施の形態とほぼ同様に、ガード14が取付けられている。
【0081】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、4柱型のキャノピ50にガード14を設ける構成としたので、ガード14の適用範囲を広げることができる。
【0082】
なお、前記各実施の形態では、ガード14の保護板17を形成する材料として、例えば透明な樹脂材料、強化ガラス等を用いる構成とした。しかし、本発明の保護板17を形成する材料はこれに限るものではなく、透視することが可能な材料であれば、例えば格子状、網目状の透ける材料等を用いてもよい。
【0083】
また、実施の形態では、建設機械としてオフセット式またはスイング式の作業装置4,44を備えた油圧ショベル1,41を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばオフセット動作やスイング動作を行わないタイプの標準的な作業装置(モノブーム式の作業装置)を備えたモノブーム式油圧ショベルにも適用することができる。
【0084】
さらに、実施の形態では、建設機械としてクローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルや、油圧クレーン等の他の建設機械にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるオフセット式の油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】図1の油圧ショベルを上側からみた平面図である。
【図3】図1中の3柱型キャノピ、ガード等を拡大して示す拡大正面図である。
【図4】3柱型キャノピ、ガード等を示す斜視図である。
【図5】図4中のガードを単体で示す平面図である。
【図6】ガードの一部を図5中の矢示VI−VI方向からみた断面図である。
【図7】ガードの枠体と保護板とを組付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【図8】3柱型キャノピを単体で示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態による油圧ショベルのガードを示す平面図である。
【図10】ガードの枠体等を保護板を取外した状態で示す斜視図である。
【図11】ガードのステイと運転席との位置関係を示す図3と同様の拡大正面図である。
【図12】図11中のa部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態によるスイング式の油圧ショベルを示す正面図である。
【図14】4柱型キャノピ、ガード等を示す斜視図である。
【図15】4柱型キャノピを単体で示す斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
1,41 油圧ショベル(建設機械)
2,42 下部走行体
3,43 上部旋回体
4,44 作業装置
5,45 旋回フレーム
9,49 運転席
12,50 キャノピ
12A,50A 右前ピラー
12B,50B 右後ピラー
12C,50D 左後ピラー
12H,50J 上面部
13 天井窓
14,31 ガード
15 天窓保護部
16,32 枠体
17 保護板
18 取付ボルト
21 防振ゴム(防振部材)
33 ステイ
33A 短辺
33B 長辺
50C 左前ピラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、支持構造体として形成された旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席と、前記旋回フレーム上に設けられ該運転席を上方から覆う上面部を有するキャノピとを備えてなる建設機械において、
前記キャノピには、前記上面部から前方に向けて突出し前記運転席に着座したオペレータを落下物から保護するガードを設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記ガードは、前記キャノピの上面部に取付けられ前方に向けて突出する枠体と、該枠体に設けられて水平方向に延びオペレータの視界を確保する透視可能な材料からなる保護板とによって構成してなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記枠体と保護板との間には防振部材を設けてなる請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記枠体には横断面が四角形状に形成された補強用のステイを設け、前記ステイは、当該ステイの横断面形状を形成する四辺のうち1つの辺が前記運転席側を向くように斜めに傾けて配設してなる請求項2または3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記キャノピの上面部には前記運転席に着座したオペレータの上方視界を確保する天井窓を設け、前記ガードには前記キャノピの天井窓を覆う部位を設けてなる請求項1,2,3または4に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−62505(P2007−62505A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249636(P2005−249636)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】