説明

弁体駆動装置

【課題】簡素な構成で、出力部材を所定の条件で駆動することができる弁体駆動装置を提供すること。
【解決手段】電動式自動トイレ洗浄装置の弁体駆動装置1において、出力部材20の開方向の位置を規定することを目的に部材同士の当接を利用したストッパ80を設け、かかるストッパ80によって、出力部材20の開方向の位置を規定する。モータ駆動回路6は、第1駆動モードにおいて、第1駆動電圧を直流モータ5に供給して弁体を閉状態から開状態に移行させた後、第2駆動モードでは、第1駆動電圧より低い第2駆動電圧を直流モータ5に供給して弁体をさらに開状態に移動させ、ストッパ80が作動した以降も、第2駆動電圧を直流モータ5に印加し続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗トイレなどに設置された貯水槽の排水孔を開閉するための弁体を駆動する弁体駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水洗トイレにおいては電動式自動トイレ洗浄装置が普及しつつあり、かかる電動式自動トイレ洗浄装置では、スイッチ操作によって、貯水槽の排水孔を開閉するための弁体を駆動する。このような開閉動作を行なう際、出力部材の駆動を開始した以降、駆動源から出力部材への駆動力伝達機構において、歯車の噛み合いを外すことにより、所定時間後、排水孔を閉状態にする。また、出力部材の駆動を開始した以降、歯車の回転を利用して機械的なタイマースイッチを構成し、かかるタイマースイッチにより、駆動源への電源供給を停止するなどの構成が採用されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、歯車の回転を利用した機械的なタイマースイッチを構成すれば、出力部材の動作に正確に連動させて、駆動源を制御でき、出力部材に対するトルクを切り換えることもできる(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2002−39318号公報
【特許文献2】特開2002−256611号公報
【特許文献3】特開平11−200453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、出力部材の駆動を開始した以降、駆動源から出力部材への駆動力伝達機構において、歯車の噛み合いを外すことにより、所定時間後、排水孔を閉状態にする構成を採用すると、再結合の際に衝突音が発生するという問題や、歯先同士が適正に噛み合わず、ロック状態となるなどの問題点がある。
【0005】
また、駆動力伝達機構にタイマースイッチを内蔵させると、部材の組み込みやリード線の引き回しが複雑になるため、コストが増大するという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、簡素な構成で、出力部材を所定の条件で駆動することができる弁体駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、貯水槽の排水孔を開閉するための弁体に連結された出力部材と、該出力部材を開方向に駆動する駆動機構と、を有する弁体駆動装置において、前記駆動機構は、出力部材を駆動するための駆動源としての直流モータと、該直流モータの出力を前記出力部材に伝達する駆動力伝達機構と、前記直流モータに駆動電圧を供給するモータ駆動回路と、部材同士の当接により前記出力部材の開方向の位置を規定するストッパと、を備え、前記モータ駆動回路は、前記弁体が閉状態から開状態に移行する際、第1駆動電圧を前記直流モータに供給する第1駆動モードと、前記弁体が開状態に移行した後、前記第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧を供給するとともに、前記ストッパが作動した以降も前記第2駆動電圧を前記直流モータに印加する第2駆動モードと、所定時間経過後、前記直流モータに対する電圧供給を停止する駆動停止動作と、を実行することを特徴とする。
【0008】
本発明では、出力部材の開方向の位置を規定することを目的に部材同士の当接を利用したストッパを設け、かかるストッパによって、出力部材の開方向の位置を規定する。また、モータ駆動回路は、第1駆動モードにおいて、第1駆動電圧を直流モータに供給して弁体を閉状態から開状態に移行させた後、第2駆動モードでは、弁体が開状態に移行し、さらに、ストッパが作動した以降、第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧を直流モータに印加する。ここで、直流モータは、駆動電圧によってトルクが制御される。このため、ストッパが作動するときは、出力部材が低トルクで駆動されているので、ストッパが作動する際、大きな衝突音が発生せず、部材が損傷することもない。また、第1駆動モードや第2駆動モードは、モータ駆動回路によって実現されるので、駆動力伝達機構にタイマースイッチを設ける必要がない。さらに、第2駆動モードでは、第1駆動電圧より低い第2駆動電圧を直流モータに供給するため、直流モータの発熱を低く抑えることができる。ここで、第2駆動モードでも駆動電圧を印加するので、弁体の位置と第1駆動モードから第2駆動モードに切り換わるタイミングとの間にずれが発生した場合でも弁体の動作に支障がない。それ故、モータ駆動回路側からの制御のみで第1駆動モードから第2駆動モードへの切り換え制御でよく、駆動機構の側にタイマースイッチを設ける必要がない。それ故、部材の組み込みやリード線の引き回しなどを簡素化することができる。さらに、直流モータの場合、交流モータに比較して感電のおそれが少ないという利点もある。
【0009】
本発明において、前記弁体は、前記貯水槽内で流体圧を受けた状態で前記排水孔を閉状態にしている。かかる構成の場合、弁体を閉状態から開状態に移行するのに大きなトルクを必要とするが、本発明では、かかるタイミングのときは、高い第1駆動電圧を印加する第1駆動モードであるため、弁体を閉状態から開状態にスムーズに移行させることができる。また、。弁体が開状態に移行した後は、比較的小さなトルクで十分であるが、本発明では、かかるタイミングのときは、低い第2駆動電圧を印加する第2駆動モードである。従って、低消費電力化を図ることができる。
【0010】
本発明において、前記駆動力伝達機構では、前記直流モータから前記出力部材まで歯車輪列のみで駆動力が伝達されることが好ましい。すなわち、本発明では、駆動力伝達機構に滑り部分を含ませる必要がないので、滑り部分での磨耗に起因する不具合が発生しない。
【0011】
本発明において、前記駆動力伝達機構は、変速比が常時一定であることが好ましい。すなわち、本発明では、変速比を途中で切り換えるための高価な変形歯車などを用いないので、コストの低減を図ることができる。
【0012】
本発明において、前記モータ駆動回路は、一定の電圧から前記第1駆動電圧と前記第2駆動電圧とを生成するための分圧抵抗を備えていることが好ましい。このように構成すると、2つの電圧(第1駆動電圧および第2駆動電圧)を生成する場合でも、電源としては一つで済む。それ故、回路構成を簡素化することができるので、コストの低減を図ることができる。
【0013】
本発明において、前記直流モータの温度に感応する温度センサを備え、前記モータ駆動回路は、当該温度センサでの検出結果に基づいて前記駆動電圧を変化させることが好ましい。本発明では、弁体が開状態に移行した後、ストッパが作動している期間中も電圧(第2駆動電圧)を印加する以上、直流モータが発熱するおそれがあるが、直流モータの温度をセンサによって監視し、直流モータが発熱した場合には駆動電圧を低下、あるいは駆動電圧の供給停止を行なう。それ故、直流モータの破損を防止することができる。
【0014】
本発明において、前記駆動機構は、前記モータ駆動回路から前記直流モータへの駆動電圧の供給が停止したとき前記出力部材を閉方向に変位させる復帰バネを備えていることが好ましい。このように構成すると、通常動作時および停電時のいずれにおいても、出力部材を閉方向に移動的に変位させることができる。また、かかる復帰バネは出力部材を閉方向に付勢するので、復帰バネは、ストッパが作動する際に大きな衝突音が発生するのを防止する効果も奏する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、出力部材の開方向の位置を規定することを目的に部材同士の当接を利用したストッパを設け、かかるストッパによって、出力部材の開方向の位置を規定する。また、モータ駆動回路は、第1駆動モードにおいて、第1駆動電圧を直流モータに供給して弁体を閉状態から開状態に移行させた後、第2駆動モードでは、弁体が開状態に移行し、さらに、ストッパが作動した以降、第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧を直流モータに印加する。このため、ストッパが作動するときは、出力部材が低トルクで駆動されているので、ストッパが作動する際、大きな衝突音が発生せず、部材が損傷することもない。また、第1駆動モードや第2駆動モードは、モータ駆動回路によって実現されるので、駆動力伝達機構にタイマースイッチを設ける必要がない。さらに、第2駆動モードでは、第1駆動電圧より低い第2駆動電圧を直流モータに供給するため、直流モータの発熱を低く抑えることができる。ここで、第2駆動モードでも駆動電圧を印加するので、弁体の位置と第1駆動モードから第2駆動モードに切り換わるタイミングとの間にずれが発生した場合でも弁体の動作に支障がない。それ故、モータ駆動回路側からの制御のみで第1駆動モードから第2駆動モードへの切り換え制御でよく、駆動機構の側にタイマースイッチを設ける必要がない。それ故、部材の組み込みやリード線の引き回しなどを簡素化することができる。さらに、直流モータの場合、交流モータに比較して感電のおそれが少ないという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明を適用した弁体駆動装置の縦断面図である。図2(a)、(b)は各々、図1に示す弁体駆動装置に構成した駆動機構の平面的なレイアウトを示す説明図、およびこの駆動機構に用いたモータ駆動回路の説明図である。
【0018】
図1に示す弁体駆動装置1は、水洗トイレに使用される電動式自動トイレ洗浄装置において、貯水槽の排水孔を開閉するための弁体(図示せず)を駆動するための装置であって、弁体を排水孔の閉位置から開位置へ移動させる第1段階、弁体を開位置に保持して排水する第2段階、および弁体の開位置から移動させて排水を停止する第3段階を順に実施する。
【0019】
かかる動作を行なうために、弁体駆動装置1は、ケース7内に軸状の出力部材20を有しており、出力部材20の一方端は、開閉部材(図示せず)を介して弁体に連結されている。出力部材20の他方端には、手動レバー軸28が連結されており、かかる手動レバー軸28には、開閉部材を手動で操作するためのレバー280が連結されている。従って、手動レバー軸28を手動で時計周りCWに回転させると、出力部材20が時計周りCWに回転し、大便用の多量の洗浄水を流すことができる一方、手動レバー軸28を手動で反時計周りCCWに回転させると、出力部材20が反時計周りCCWに回転し、小便用の少量の洗浄水を流すことができる。
【0020】
ケース7は、出力部材20の一方端側に位置するケース本体71と、出力部材20の他方側に位置するケース蓋体72とからなり、ケース本体71およびケース蓋体72に形成された円筒状筒部761、771を利用して、出力部材20を回動自在に支持する軸受76、77が構成されている。ケース7は、電動式自動トイレ洗浄装置の水槽に対して所定の位置に配置され、その結果、出力部材20は弁体に対して所定の位置に配置される。なお、ケース蓋体72と出力部材20との間には圧縮バネ25が配置されており、出力部材20は他方端側に向けて付勢されている。
【0021】
このように構成した出力部材20に対しては、以下に説明する駆動機構2が構成されている。本形態において、駆動機構2は、出力部材20を駆動するための駆動源としての直流モータ5と、直流モータ5の出力を出力部材20に伝達する駆動力伝達機構3とを備えており、直流モータ5に対しては、図3および図4を参照して後述するモータ駆動回路6が構成されている。ここで、直流モータ5は、双方向の回転が可能であり、モータ駆動回路6に用いた抵抗器627などとともに回路基板62上に搭載されている。なお、回路基板62には、ハーネス69が接続されており、かかるハーネス69を介して、駆動電圧の供給が行なわれる。
【0022】
駆動力伝達機構3は、直流モータ5の出力部材20に固着されたピニオン50、第1歯車体51、第2歯車体52、第3歯車体53、および第4歯車体54からなる減速輪列を備えており、第4歯車体54は出力部材20と一体に回転する。これらの歯車のうち、第4歯車は出力部材20に固定されており、出力部材20と一体に回転する。第1歯車体51、第2歯車体52および第3歯車体53は各々、ケース7に固定された支軸に回転可能に支持されており、第1歯車体51の大径歯車部はピニオン50に噛合し、第2歯車体52の大径歯車部は第1歯車体51の小径歯車部に噛合し、第3歯車体53の大径歯車部は第2歯車体52の小径歯車部に噛合し、第4歯車体54は第3歯車体53の小径歯車部に噛合している。
【0023】
ここで、手動レバー軸28を軸線方向外側に引っ張ったとき、出力部材20と第4歯車体54との機構的な接続、あるいは第4歯車体54と第3歯車体53との機構的な接続が解除され、手動レバー軸28を離したときに、出力部材20と第4歯車体54との機構的な接続、あるいは第4歯車体54と第3歯車体53との機構的な接続が復活するように構成すれば、手動レバー軸28を手動で操作する際に必要な力が小さくて済む。
【0024】
出力部材20の一方端側の周りには、捩じりコイルバネからなる復帰バネ30が変形可能な状態に装着されており、かかる復帰バネ30は、双方向に回転可能な出力部材20を中立位置に向けて両側から付勢するバネ部材として機能する。ここで、復帰バネ30は、両端部が半径方向外側に折り曲げられて被支持部30a、30bになっている一方、被支持部30a、30bで挟まれた部分には、ケース本体71から起立した固定側突起711と、第4歯車体54に形成された可動側突起541が位置する。また、ケース本体71において、第4歯車体54を挟んで固定側突起711が位置する側とは反対側には、可動側突起541とストッパ80を構成する度当たり部715が形成されている。本形態では、出力部材20が時計周りCCWに回転すると、大便用に多量の水を流すように設定され、出力部材20が反時計周りCCWに回転すると、小便用に少量の水を流すように設定されている。このため、度当たり部は、第4歯車体54を挟んで固定側突起711が位置する側とは反対側のうち、時計周りCWにわずかにずれた位置に形成されている。
【0025】
本形態では、第4歯車体54が時計周りCWに回転すると、被支持部30bは、固定側突起711で位置固定されたまま、可動側突起541によって被支持部30aが時計周りCWに移動する。そして、可動側突起541がケース本体71に形成された度当たり部に当接すると、回転が停止し、その後、第4歯車体54に加わっていた力がなくなると、復帰バネ30の戻り力によって第4歯車体54が反時計周りCCWに回転し、元の位置に戻る。
【0026】
また、第4歯車体54が反時計周りCCWに回転すると、被支持部30aは、固定側突起711で位置固定されたまま、可動側突起541によって被支持部30bが反時計周りCCWに移動する。そして、可動側突起541がケース本体71に形成された度当たり部に当接すると、回転が停止し、その後、第4歯車体54に加わっていた力がなくなると、復帰バネ30の戻り力によって第4歯車体54が時計周りCWに回転し、元の位置に戻る。
【0027】
(モータ駆動回路の構成)
図3および図4は各々、図1に示す弁体駆動装置1に構成したモータ駆動回路6の回路図、およびこのモータ駆動回路6から出力される駆動電圧の波形図である。なお、本形態では、直流モータ5に対する駆動電圧として、第1駆動電圧と、第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧が用いられる。かかる電圧についは限定されるものではないが、以下の説明では、第1駆動電圧を12Vとし、第2駆動電圧を5Vに設定した場合を例示する。
【0028】
図3において、本形態の弁体駆動装置1において直流モータ5に対するモータ駆動回路6は、12Vの直流電圧を生成する電源611を備えた電源部61と、電源部61と直流モータ5とを接続するグランド配線GNDと、電源部61と直流モータ5とを接続する第1配線66とを有している。また、第1配線66には第1スイッチSW1が介挿されている。また、第1配線66には、第1スイッチSW1に対して並列に第2配線67が電気的に接続されており、かかる第2配線67には、第2スイッチSW2および抵抗器627が直列に介挿されている。かかる抵抗器627としては定格が1W以上のものが用いられる。
【0029】
ここで、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2はいずれも、タイマーを内蔵の制御部64の制御の下、開閉動作を行なう。かかる制御部64は、電動式自動トイレ洗浄装置本体側の制御盤に形成されたボタンスイッチ(図示せず)での操作に基づいて、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2の制御を行なう。かかるモータ駆動回路6において、第1配線66、第2配線67および抵抗器627は、ケース2内の回路基板62上に配置され、電源部61および制御部64は、電動式自動トイレ洗浄装置本体側の制御盤内に配置されている。
【0030】
このように構成したモータ駆動回路6では、電動式自動トイレ洗浄装置本体側の制御盤のボタンスイッチに対して操作が行なわれるまでの間、制御部64は、図4に示すように、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をオフ状態としておき、時刻T0において、制御盤のボタンスイッチに対して洗浄水を流すようにとの操作が行なわれると、制御部64は、時刻T0〜T1までの期間、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をオン状態とする。その結果、図4に示すように、図3に示す各位置での電圧A、B、Cは、各々、5V、12V、12Vとなる。従って、直流モータ5には、時刻T0〜T1までの期間、12V(第1駆動電圧)が印加される(第1駆動モード)。
【0031】
次に、制御部64は、時刻T1において、第2スイッチSW2をオン状態のまま、第1スイッチSW1をオフ状態とし、かかる状態は、時刻T1〜T2までの期間、継続される。その結果、図3に示す各位置での電圧A、B、Cは各々、5V、5V、5Vとなる。従って、直流モータ5には、時刻T1〜T2までの期間、5V(第2駆動電圧)が印加される(第2駆動モード)。
【0032】
しかる後に、制御部64は、時刻T2において、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をオフ状態とする。その結果、図4に示すように、図3に示す各位置での電圧A、B、Cは各々、0V、0V、0Vとなる。従って、直流モータ5には、駆動電圧が印加されない(駆動停止モード)。
【0033】
なお、電動式自動トイレ洗浄装置本体側の制御盤には、大便用および小便用の2つのボタンスイッチが形成されており、大便用のボタンスイッチが押された場合には、出力部材20が時計周りCWの方向に回転して多量の洗浄水を流し、小便用のボタンスイッチが押された場合には、出力部材20が反時計周りCCWの方向に回転して少量の洗浄水を流す。かかる動作は、電源部61から出力される電圧の極性などを変えれば、出力部材20の回転方向を換えることができる。また、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をオンオフさせるタイミングを大便用と小便用とで相違させることもある。
【0034】
(基本的な動作)
本形態の弁体駆動装置1では、時刻T0において、制御盤のボタンスイッチに対して大便用の洗浄水を流すようにとの操作が行なわれると、制御部64は、時刻T0〜T1までの期間、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をオン状態とするので、直流モータ5には、時刻T0〜T1までの期間、12V(第1駆動電圧)が印加される。従って、直流モータ5は比較的、大きなトルクを発生させ、復帰バネ30のバネ力に抗して、出力部材20を時計周りCWに回転させる。その結果、出力部材20は、弁体を排水孔を塞ぐ位置から開放する位置に移動させる。その間、復帰バネ30は、拡径する方向に変形する(第1段階/第1駆動モード)。
【0035】
次に、制御部64は、時刻T1〜T2までの期間、第2スイッチSW2をオン状態のまま、第1スイッチSW1をオフ状態とするので、直流モータ5には、時刻T1〜T2までの期間、5V(第2駆動電圧)が印加される。従って、直流モータ5は、時刻T0〜T1までの期間よりも小さなトルクを発生させるだけであるが、復帰バネ30のバネ力に抗して、出力部材20をさらに時計周りCWに回転させる。その結果、出力部材20は、弁体を排水孔をさらに開放する位置に移動させる。その間、復帰バネ30は、拡径する方向に変形する(第2段階/第2駆動モード)。
【0036】
そして、時刻T1〜T2の期間の途中において、第4歯車体54の可動側突起541がケース本体71に形成された度当たり部715に当接すると、出力部材20は回転が停止し、それ以降、時刻T2までは、弁体は、開方向の所定位置で停止する。その間、モータ駆動回路6は、直流モータ5に5V(第2駆動電圧)の駆動電圧を印加し続ける。
【0037】
しかる後に、制御部64は、時刻T2において、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をオフ状態とする。その結果、直流モータ5には、駆動電圧が印加されないので、出力部材20および第2歯車体52は、復帰バネ30の戻り力によって第4歯車体54が反時計周りCCWに回転し、駆動力伝達機構3に用いた歯車を反転させながら、元の位置に戻る。それ故、弁体は排水孔を塞ぐ状態に戻り、貯水槽での水の貯留が開始される(第3段階/駆動停止モード)。
【0038】
なお、時刻T0において、制御盤のボタンスイッチに対して小便用の洗浄水を流すようにとの操作が行なわれた場合も、基本的な動作は同一であるため、説明を省略する。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、出力部材20の開方向の位置を規定することを目的に部材同士の当接を利用したストッパ80を設け、かかるストッパ80によって、出力部材20の開方向の位置を規定する。また、モータ駆動回路6は、第1駆動モードにおいて、第1駆動電圧を直流モータ5に供給して弁体を閉状態から開状態に移行させた後、第2駆動モードでは、第1駆動電圧より低い第2駆動電圧を直流モータ5に供給して弁体をさらに開状態に移動させ、ストッパ80が作動した以降も、第2駆動電圧を直流モータ5に印加し続ける。ここで、直流モータ5は、駆動電圧によってトルクが制御される。このため、ストッパ80が作動するときは、出力部材20が低トルクで駆動されているので、ストッパ80が作動する際、大きな衝突音が発生せず、部材が損傷することもない。さらに、第2駆動モードでは、第1駆動電圧より低い第2駆動電圧を直流モータ5に供給するため、直流モータ5の発熱を低く抑えることができる。
【0040】
また、第1駆動モードや第2駆動モードは、モータ駆動回路6によって実現されるので、駆動力伝達機構3に機械式のタイマースイッチを設ける必要がない。また、第2駆動モードでも駆動電圧を印加するので、弁体の位置と第1駆動モードから第2駆動モードに切り換わるタイミングとの間にずれが発生した場合でも弁体の動作に支障がない。それ故、モータ駆動回路6側からの制御のみで第1駆動モードから第2駆動モードへの切り換え制御でよく、駆動機構2の側にタイマースイッチを設ける必要がない。それ故、部材の組み込みやリード線の引き回しなどを簡素化することができる。さらに、直流モータ5の場合、交流モータに比較して感電のおそれが少ないという利点もある。
【0041】
また、弁体は、貯水槽内で流体圧を受けた状態で排水孔を閉状態にしているため、弁体を閉状態から開状態に移行するのに大きなトルクを必要とするが、本形態では、かかるタイミングのときは、高い第1駆動電圧を印加する第1駆動モードであるため、弁体を閉状態から開状態にスムーズに移行させることができる。また、弁体が開状態に移行した後は、比較的小さなトルクで十分であるが、本形態では、かかるタイミングのときは、低い第2駆動電圧を印加する第2駆動モードである。従って、低消費電力化を図ることができる。
【0042】
さらに、本形態において、モータ駆動回路6は、一定の電圧から第1駆動電圧と第2駆動電圧とを生成するのに抵抗器627(分圧抵抗)を用いているので、2つの電圧(第1駆動電圧および第2駆動電圧)を生成する場合でも、電源611は一つで済む。それ故、回路構成を簡素化することができるので、コストの低減を図ることができる。
【0043】
さらにまた、本形態では、駆動力伝達機構3では、直流モータ5から出力部材20まで歯車輪列のみで駆動力が伝達され、駆動力伝達機構3に滑り部分を含んでいない。それ故、本形態によれば、滑り部分での磨耗に起因する不具合が発生しない。しかも、駆動力伝達機構3は、変速比が常時一定であり、変速比を途中で切り換えるための高価な変形歯車などを用いないので、コストの低減を図ることができる。
【0044】
また、駆動機構2は、モータ駆動回路6から直流モータ5への駆動電圧の供給が停止したとき出力部材20を閉方向に変位させる復帰バネ30を備えているため、通常動作時および停電時のいずれにおいても、出力部材20を閉方向に移動的に変位させることができる。また、かかるバネは出力部材20を閉方向に付勢するので、バネは、ストッパ80が作動する際に大きな衝撃音が発生しない。
【0045】
(他の実施の形態)
上記実施の形態においては、図2(a)、(b)に示すように、直流モータ5の温度に感応するセンサ68を備え、モータ駆動回路6は、センサ68での検出結果に基づいて駆動電圧を変化させることが好ましい。かかるセンサ68としてはサーミスタを用いることができる。かかるサーミスタのうち、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタを用いる場合には、温度が上昇すると抵抗値が増大するので、例えば、図3に矢印P1で示す位置のように、直流モータ5に直列に接続すればよく、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタを用いる場合には、温度が上昇すると、抵抗値が減少するので、例えば、直流モータ5に並列に接続すればよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、分圧抵抗(抵抗器627)によって、2つの電圧を生成したが、定電流ダイオードや、パルス制御、変圧器などで2つの電圧を生成してもよい。
【0047】
また、上記実施の形態では、すべり部分を利用しない駆動力伝達機構3として全てを歯車で構成した例を掲げたが、すべり部分を利用しない駆動力伝達機構3としては、タイミングベルトやチェーンなどを利用したものを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明を適用した弁体駆動装置の縦断面図である。
【図2】(a)、(b)は各々、図1に示す弁体駆動装置に構成した駆動機構の平面的なレイアウトを示す説明図、およびこの駆動機構に用いたモータ駆動回路の説明図である。
【図3】図1に示す弁体駆動装置に構成したモータ駆動回路の回路図である。
【図4】図1に示す弁体駆動装置に構成したモータ駆動回路から出力される駆動電圧の波形図である。
【符号の説明】
【0049】
1 弁体駆動装置
2 駆動機構
3 駆動力伝達機構
6 モータ駆動回路
5 直流モータ
20 出力部材
30 復帰バネ
80 ストッパ
627 抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水槽の排水孔を開閉するための弁体に連結された出力部材と、該出力部材を開方向に駆動する駆動機構と、を有する弁体駆動装置において、
前記駆動機構は、出力部材を駆動するための駆動源としての直流モータと、該直流モータの出力を前記出力部材に伝達する駆動力伝達機構と、前記直流モータに駆動電圧を供給するモータ駆動回路と、部材同士の当接により前記出力部材の開方向の位置を規定するストッパと、を備え、
前記モータ駆動回路は、前記弁体が閉状態から開状態に移行する際、第1駆動電圧を前記直流モータに供給する第1駆動モードと、前記弁体が開状態に移行した後、前記第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧を供給するとともに、前記ストッパが作動した以降も前記第2駆動電圧を前記直流モータに印加する第2駆動モードと、所定時間経過後、前記直流モータに対する電圧供給を停止する駆動停止動作と、を実行することを特徴とする弁体駆動装置。
【請求項2】
前記弁体は、前記貯水槽内で流体圧を受けた状態で前記排水孔を閉状態にしていることを特徴とする請求項1に記載の弁体駆動装置。
【請求項3】
前記駆動力伝達機構では、前記直流モータから前記出力部材まで歯車輪列のみで駆動力が伝達されることを特徴とする請求項1または2に記載の弁体駆動装置。
【請求項4】
前記駆動力伝達機構は、変速比が常時一定であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の弁体駆動装置。
【請求項5】
前記モータ駆動回路は、一定の電圧から前記第1駆動電圧と前記第2駆動電圧とを生成するための分圧抵抗を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の弁体駆動装置。
【請求項6】
前記直流モータの温度に感応するセンサを備え、
前記モータ駆動回路は、当該センサでの検出結果に基づいて前記駆動電圧を変化させることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の弁体駆動装置。
【請求項7】
前記駆動機構は、前記モータ駆動回路から前記直流モータへの駆動電圧の供給が停止したとき前記出力部材を閉方向に変位させる復帰バネを備えていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の弁体駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−7746(P2010−7746A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166833(P2008−166833)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】