強磁性半導体素子及び強磁性半導体の制御方法
【課題】室温下での動作が可能な強磁性半導体素子及びその制御方法を提供する。
【解決手段】基板11と、基板11上に設けた二酸化チタン層15と、二酸化チタン層15上に設けた遷移元素ドープ二酸化チタン層12と、遷移元素ドープ二酸化チタン層12上に設けた電解液13と、電解液13と接触するよう設けたゲート電極14と、を含む。電解液13は、CsCl4、Sr(ClO4)2、KClO4、NaClO4、LiClO4の一以上の電解質を溶媒に溶かしてなる。ゲート電極14へのゲート電圧印加の有無に応じて、遷移元素ドープ二酸化チタン層12の強磁性の強さが変化する。遷移元素はコバルトが好ましい。
【解決手段】基板11と、基板11上に設けた二酸化チタン層15と、二酸化チタン層15上に設けた遷移元素ドープ二酸化チタン層12と、遷移元素ドープ二酸化チタン層12上に設けた電解液13と、電解液13と接触するよう設けたゲート電極14と、を含む。電解液13は、CsCl4、Sr(ClO4)2、KClO4、NaClO4、LiClO4の一以上の電解質を溶媒に溶かしてなる。ゲート電極14へのゲート電圧印加の有無に応じて、遷移元素ドープ二酸化チタン層12の強磁性の強さが変化する。遷移元素はコバルトが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界により強磁性半導体の性質を変化する強磁性半導体素子及び強磁性半導体の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体素子では、非磁性の半導体に電圧を印加して半導体のキャリア濃度を制御することで電気伝導性を変化させている。半導体素子に対する情報の書換えは、電界効果による電気伝導性を利用している。電圧印加は微小な電極でも行うことができるため、半導体素子の集積化は容易に実現できる。一方、半導体素子からの情報の読み取りの際には電気伝導性を一定に保持する必要がある。そのため、電力が常に必要となり、半導体素子を用いた情報の読み取りの場面では省電力化には向かない。
【0003】
これに対し、従来の強磁性体素子では、強磁性体のミクロな磁区構造と情報とを対応させている。よって、情報の保持、即ち、磁区構造の保持には電力は不要であり、省電力化に適している。一方、情報の書換え、即ち、磁区構造を変化させるには、外部から磁場を印加するか大きな電流を流す必要がある。外部磁場の発生には磁石を必要とするため、集積化が容易ではなく大電流を流すので省電力化にも向かない。
【0004】
そこで、強磁性と半導体との両方の性質を有する強磁性半導体材料が注目を浴びており、例えば(In,Mn)As、(Ga,Mn)Asでは、強磁性の電界制御が実証されている(非特許文献1乃至3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−206890公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H.Ohno et al., Nature 408,944 (2000)
【非特許文献2】D.Chiba et al., Science 301,943 (2003)
【非特許文献3】D.Chiba et al., Nature 455,5155 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、MnドープのInAsやMnドープのGaAsの強磁性半導体では、キュリー温度Tcがそれぞれ60K、170Kであるため、これらの強磁性半導体は室温と比べて十分低温で強磁性が消失するため、これらの強磁性半導体を用いたデバイスを室温下で動作させることは不可能であった。
【0008】
本発明は、室温下での動作が可能な強磁性半導体素子を提供することを第一の目的とする。
本発明は、室温下での動作可能な強磁性半導体の磁性を制御する強磁性半導体の制御方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究した結果、遷移元素ドープ二酸化チタンからなる強磁性半導体が室温よりも十分高いキュリー温度を持つことに注目し、この強磁性半導体に対してゲート電圧を印加することで、強磁性を制御することができることに着目して、本発明を完成するに至った。
【0010】
上記第一の目的を達成するため、本発明における強磁性半導体素子の第一の構成は、基板と、基板上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、二酸化チタン層上に設けられた電解液と、電解液と接触するように設けられたゲート電極と、を含むことを特徴とする。
本発明における強磁性半導体素子の第二の構成は、基板と、基板上に設けられた二酸化チタン層と、二酸化チタン層上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、遷移元素ドープ二酸化チタン層上に設けられた電解液と、電解液と接触するように設けられたゲート電極と、を含むことを特徴とする。
本発明における強磁性半導体素子の第三の構成は、基板と、基板上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、遷移元素ドープ二酸化チタン層上に設けられた酸化物層と、酸化物層上に設けられたゲート電極と、を含むことを特徴とする。
本発明における強磁性半導体素子の第四の構成は、基板と、基板上に設けられた二酸化チタン層と、二酸化チタン層上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、二酸化チタン層上に設けられた酸化物層と、酸化物層に設けられたゲート電極と、を含むことを特徴とする。
【0011】
上記第二の目的を達成するため、本発明における強磁性半導体素子の制御方法の第一の構成は、遷移元素ドープ二酸化チタン層とゲート電極との間に電解液を挟みこんでなる電界効果型トランジスタを用い、ゲート電極にゲート電圧を印加して遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強度を変化させることを特徴とする。
本発明における強磁性半導体素子の制御方法の第二の構成は、遷移元素ドープ二酸化チタン層とゲート電極との間に酸化物を挟みこんでなる電界効果型トランジスタを用い、ゲート電極にゲート電圧を印加して遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強度を変化させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遷移元素ドープ二酸化チタンからなる強磁性半導体を電界により室温下で制御し、強磁性半導体のキャリア濃度を制御することができる。よって、例えば情報の読み取り及び書き込みの処理を室温状態で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る強磁性半導体素子の断面図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係る強磁性半導体素子の断面図である。
【図3】第一及び第二の実施形態における強磁性半導体素子において、ゲート電極にゲート電圧を印加したときの模式図である。
【図4】本発明の第三の実施形態に係る強磁性半導体素子の断面図である。
【図5】本発明の第四の実施形態に係る強磁性半導体素子の断面図である。
【図6】各実施例において二酸化チタン層及び遷移元素ドープ二酸化チタン層を形成する際に用いたレーザアブレーション装置の概念図である。
【図7】実施例1において、アニール処理工程を含まない場合の結果を示す図であり、(A)は二酸化チタン層のRHEEDの強度を、(B)は二酸化チタン層のRHEED像を、(C)はコバルトドープ二酸化チタン層のRHEEDの強度を、(D)のAFMでの観察した像を示している。
【図8】実施例1において、アニール処理工程を含んだ場合の結果を示す図であり、(A)は二酸化チタン層のRHEEDの強度を、(B)は二酸化チタン層のRHEED像を、(C)はコバルトドープ二酸化チタン層のRHEEDの強度を、(D)のAFMでの観察した像を示している。
【図9】実施例2において、コバルトドープ二酸化チタン膜の電気的測定を行うために微細加工によるホールバーの形成工程を模式的に示す図である。
【図10】実施例2に関し、コバルトドープ二酸化チタン層の抵抗率の温度依存性を示すグラフである。
【図11】実施例2に関し、異なる酸素雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層の異常ホール伝導率の磁場依存性を示すグラフである。
【図12】実施例2に関し、異なる酸素雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層の磁化測定の結果を示すグラフである。
【図13】実施例2に関し、異なる酸素雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層のキャリア濃度と異常ホール伝導率の関係を示すグラフである。
【図14】実施例2に関し、異なる雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層の縦伝導率と異常ホール伝導率との関係を示すグラフである。
【図15】実施例3に関し、ゲート電圧を印加しない状態でのホール測定の結果を示すもので、(A)は異常ホール伝導率σAHの磁場依存性を、(B)はホール抵抗Rxyの磁場依存性を示すグラフである。
【図16】実施例3に関し、ゲート電圧を印加した際の抵抗の時間依存性を示すグラフである。
【図17】実施例3に関し、ゲート電圧を印加しない状態と印加した状態でのホール測定の結果を示すもので、(A)は異常ホール伝導率σAHの磁場依存性を、(B)はホール抵抗Rxyの磁場依存性を示すグラフである。
【図18】実施例4に関し、ゲート電圧を印加しない状態と印加した状態でのホール測定の結果について、異常ホール伝導率σAHの磁場依存性を示すグラフである。
【図19】(A)は、Ti0.9Co0.1O2−δ膜の磁気相図とゲート電圧印加によるキャリア濃度と異常ホール伝導率の変化を示すグラフであり、(B)はその一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の幾つかの実施形態について詳細に説明する。なお、同一又は対応するものには同一の符号を付し説明を省略する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る強磁性半導体素子1の断面図である。第一の実施形態に係る強磁性半導体素子1は、基板11と、基板11上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層12と、遷移元素ドープ二酸化チタン層12上に設けられた電解液13と、電解液13上に設けられたゲート電極14と、を含んで構成される。
【0015】
図2は、本発明の第二の実施形態に係る強磁性半導体素子2の断面図である。第二の実施形態に係る強磁性半導体素子2は、第一の実施形態に係る強磁性半導体素子1とは、基板11の上にバッファ層としての二酸化チタン層15を設けている点で異なる。これは、後述する実施例において詳細に説明するが、遷移元素ドープ二酸化チタン層12を高品質に設けるためである。第一の実施形態と第二の実施形態とは、二酸化チタン層15の有無で異なるため、以下の説明では、第二の実施形態を中心に説明する。
【0016】
図1及び図2に示す強磁性半導体素子2において、何れの基板11にも、LaAlO3、SrTiO3、(La,Sr)(Al,Ta)O3、サファイア、TiO2、ガラスなどの素材を用いることができる。LaAlO3、SrTiO3、(La,Sr)(Al,Ta)O3の何れかからなる基板11を用いることで、アナターゼ型の二酸化チタン、アナターゼ型の遷移元素ドープ二酸化チタンをエピタキシャル成長させることができる。サファイア、ルチル型TiO2からなる基板11を用いることで、ルチル型の二酸化チタン、ルチル型の遷移元素ドープ二酸化チタンをエピタキシャル成長させることができる。ガラスからなる基板11を用いた場合には、ルチル型とアナターゼ型との混合物が成長する場合があるが、作製条件の設定によりルチル型もしくはアナターゼ型が選択的に成長する。
遷移元素ドープ二酸化チタン層12における遷移元素には、コバルトや鉄を用いることができる。二酸化チタンに遷移元素をドープすることにより強磁性体となる。コバルトがドープされている場合には、Ti1−xCoxO2−δにおいて、xが、0<x<0.1となる範囲で、酸素欠損量δより少ないことが好ましい。Coのドープ量より少なくなると、導電性が低下し、強磁性が発現しない。
電解液13には、ポリエチレンオキシド溶媒などの高分子溶媒に、CsClO4、Sr(ClO4)2、KClO4、NaClO4、LiClO4などの溶質を溶かしたもの、又はイオン液体を用いることができる。ゲート電極14には、Pt、Au、Ag、Al、Tiなどの金属で構成され、層状のものや、ワイヤ状、螺旋状に巻いた形状のものであってもよい。ゲート電極14は、Auなどからなる電極層の単層構造又は二以上の多層構造であっても、Tiなどからなる密着層とAuなどからなる電極層との二層構造又は三以上の多層構造であってもよい。
【0017】
図3は、第一及び第二の実施形態における強磁性半導体素子1,2において、ゲート電極14にゲート電圧を印加したときの模式図である。図3に示すように、遷移元素ドープ二酸化チタン層12に対してゲート電極14に正(又は負)のゲート電圧を印加すると、電解液13中の陽イオンと陰イオンが電界に引き寄せられて動き、遷移元素ドープ二酸化チタン層12と電解液13との境界面には、電子21とイオン22とからなる極薄の電気二重層23が形成される。これにより、高濃度の電子(又は正孔)のキャリアが増加する。これにより、後述するように、ゲート電極14に正のゲート電圧を印加すると、電子濃度が増加し、その結果、ホール抵抗が減少する。また、ホール伝導率の強磁性の磁化に寄与する成分、即ち、異常ホール伝導率が増加する。この強磁性の磁化は、遷移元素ドープ二酸化チタンが600Kという室温よりも高いキュリー温度を有するので、ゲート電極14へのゲート電圧の印加により、例えば320Kという室温下でも強磁性の強度を制御することができる。
【0018】
図4は、本発明の第三の実施形態に係る強磁性半導体素子3の断面図である。
第三の実施形態に係る強磁性半導体素子3では、第二の実施形態において、電解液13を取り囲むように絶縁層18が遷移元素ドープ二酸化チタン層12上に形成されており、さらに、絶縁層18の外側で遷移元素ドープ二酸化チタン層12上にソース電極16とドレイン電極17とが設けられ、三端子構造の電界効果型トランジスタとなっている。この実施形態では、ゲート電極14にゲート電圧を印加することで、ソース電極16とドレイン電極17との間に形成される、遷移元素ドープ二酸化チタン層12のチャネルにおけるキャリア濃度の変化により、ソース電極16とドレイン電極17との間に流れる電流が変化する。
【0019】
本発明の第一乃至第三の実施形態に係る強磁性半導体素子1〜3では、遷移元素ドープ二酸化チタン層12とゲート電極14との間に電解液13を挟んだ電界効果型トランジスタであるが、電解液13の代わりに酸化物、即ちゲート酸化物であってもよい。以下、第二の実施形態に対応する場合を説明するが、その他の実施形態の場合も同様である。
【0020】
図5は、本発明の第四の実施形態に係る強磁性半導体素子4の断面図である。第四の実施形態に係る強磁性半導体素子4は、基板11と、基板11上に設けられた二酸化チタン層15と、二酸化チタン層15上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層12と、遷移元素ドープ二酸化チタン層12上に設けられた酸化物層19と、酸化物層19上に設けられたゲート電極14と、を含んで構成される。酸化物層19は、AlOx、HfO2、ZrO2、MgOの何れかからなるとよい。
【0021】
第四の実施形態に係る強磁性半導体素子4の場合においても、図3を用いて説明した場合と同様、遷移元素ドープ二酸化チタン層12に対してゲート電極14に正(又は負)のゲート電圧を印加すると、遷移元素ドープ二酸化チタン層12と酸化物層19との境界面には電子とイオンとからなる極薄の電気二重層が形成され、高濃度の電子(又は正孔)のキャリアが増加する。これにより、ゲート電極14に正のゲート電圧を印加すると、電子濃度が増加し、その結果、ホール抵抗が減少する。また、ホール伝導率の強磁性の磁化に寄与する成分、即ち、異常ホール伝導率が増加する。この強磁性の磁化は、遷移元素ドープ二酸化チタンが600Kという室温よりも高いキュリー温度を有するので、ゲート電極14へのゲート電圧の印加により、例えば320Kという室温下でも強磁性の強度を制御することができる。
【実施例1】
【0022】
以下、実施例により本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の強磁性半導体素子を作製する前提として、LaAlO3基板11上にアナターゼ構造の二酸化チタン薄膜を高品質に作製する方法について検討した。図6は各実施例において二酸化チタン層15及び遷移元素ドープ二酸化チタン層12を形成する際に用いたレーザアブレーション装置の概念図である。
【0023】
図6に示すように、レーザアブレーション装置30では、高真空排気可能な真空チャンバー31内に基板ホルダー32が設置されており、基板ホルダー32の裏面に向けてレーザー光が照射されるよう半導体赤外レーザー装置33が配備されており、基板ホルダー32が裏面から半導体赤外レーザーにより加熱可能になっている。基板ホルダー32に対向するようにターゲットホルダー34が配置されている。真空チャンバー外からKrFエキシマレーザー35がターゲット34aに照射可能となっている。真空チャンバー31には酸素ガスを導入するための導入管36が配備されている。レーザアブレーション装置30には、基板11に対し電子線e−を照射し、その回折像を検出するRHEED(反射高速電子回折)スクリーン37が真空チャンバー31内に配備されている。
【0024】
LaAlO3(100)基板11を真空チャンバー31内に導入し、半導体赤外レーザー装置33により650℃に加熱した。その後、真空チヤンバー31内に酸素ガスを導入し、酸素分圧1×10−3Torrの酸化雰囲気下で、純粋な二酸化チタンからなるターゲット34aをレーザーでアブレーションさせ、対向した基板11上に二酸化チタン層15を5nm厚さだけ堆積させた。次いで、導入管36から導入する酸素量を制御することで材料中の酸素欠損量を制御し、コバルトドープ二酸化チタン層12を400℃で堆積させた。
【0025】
図7は、実施例1においてアニール処理工程を含まない場合の結果を示す図で、(A)は二酸化チタン層15のRHEEDの強度を、(B)は二酸化チタン層15のRHEED像を、(C)はコバルトドープ二酸化チタン層12のRHEEDの強度を、(D)はAFM(Atomic force microscope)で観察した像を示している。図7(A)及び(C)の横軸は時間(分)であり、縦軸はRHEED強度(任意目盛)である。上記条件下では、図7(A)に示すようにバッファ層、即ち二酸化チタン層15でのRHEED強度に振動が観察されるのに対し、図7(C)に示すようにコバルトドープ二酸化チタン層12ではRHEED強度の振動が観察されなかった。作製した薄膜について表面をAFMで観察すると、図7(D)に示すように数十nm程度の結晶粒が集まった構造が存在していることから、三次元成長が観察された。
【0026】
そこで、コバルトドープ二酸化チタン層12の最適化のため、二酸化チタン層15を酸素分圧1×10−3Torr、550℃で作製した後、基板11を900℃に加熱して10分間アニール処理を行った。次いで、二酸化チタン層15上に、基板温度を250℃に保ち、コバルトドープ二酸化チタン層12を形成した。
【0027】
図8は、実施例1においてアニール処理工程を含んだ場合の結果を示す図で、(A)は二酸化チタン層15のRHEEDの強度を、(B)は二酸化チタン層15のRHEED像を、(C)はコバルトドープ二酸化チタン層12のRHEEDの強度を、(D)はAFMで観察した像を示している。図8(A)及び(C)の横軸は時間(分)であり、縦軸はRHEED強度(任意目盛)である。このアニール処理により成膜直後ではストリークであったRHEEDスクリーン上の像においてラウエ球上にスポットが観察されるようになり(図8(A)(B)、図7(B)参照)、より平坦なバッファ層、即ち二酸化チタン層15であることが判った。平坦化されたバッファ層上に、基板温度を250℃に保ち、コバルトドープ二酸化チタン層12を形成すると、一原子層成長である二次元成長を示すRHEED回折強度の振動が観察された(図8(C)参照)。コバルトドープ二酸化チタン層12を作製後、AFM像を観察すると、図8(D)に示すように、平坦化が向上しており、品質のよいアナターゼ構造のコバルトドープ二酸化チタン膜が作製できていることが判った。
【0028】
以上のことから、基板11を加熱してバッファ層として二酸化チタン層15を作製し、その後、基板11を加熱してアニーリングを行うことで二酸化チタン層15を平坦化することができ、その上に、アナターゼのコバルトドープ二酸化チタン膜を作製することができることが判明した。
【実施例2】
【0029】
実施例2においては、薄膜作製時の酸素分圧を調整し、ドーパントである酸素欠損量を変化させ、コバルトドープ二酸化チタン層12のキャリア濃度を制御した。酸化物における酸素欠損は、酸素空孔又は格子間金属の生成と、格子への自由電子の放出を伴っている。この電子の放出により、酸化物半導体はn型電気伝導性が生じる。ここで、電子の放出の様子は次の反応式で表される。
ここで、O2−は格子中の正常な位置にある酸素イオン、VO”は2価の正電荷を持つ酸素空孔、M2+は格子中の正常な位置にある金属イオン、Mi2+は格子間位置の金属イオンである。したがって、酸素欠損量δ を変調することにより、キャリア濃度を変化させることができる。よって、Ti1−xCoxO2−δ膜におけるδは成膜時の酸素分圧PO2を変えることで変調した。
【0030】
実施例2では、コバルトドープ二酸化チタン膜の電気的測定を行うために、微細加工によるホールバーを形成した。図9は、実施例2においてコバルトドープ二酸化チタン膜の電気的測定を行うために微細加工によるホールバーの形成工程を模式的に示す図である。
【0031】
先ず、LaAlO3基板11上に二酸化チタン層15とコバルトドープ二酸化チタン層12とを順に実施例1と同様の手順で作成した。コバルトドープ二酸化チタン層12を作成する際、異なる酸素分圧、即ち1×10−6〜8×10−6Torrで作製した。
次に、コバルトドープ二酸化チタン層12上に電極パターンを以下の要領で形成した。先ず、サンプルをアセトン、エタノールの有機溶媒で超音波洗浄を行い、ホットプレートで乾燥させた。次にサンプルにフォトレジスト41(SHIPLEY S9912NX)を塗布し、5000rpmで30秒スピンコーティングした。そのサンプルをホットプレートで温度90℃、15分間プリベークした。別途図示しないガラス板上にクロムで描かれた電極パターン用フォトマスクを用いて露光し、現像液で現像した後、超純水で洗浄した(図9(A)参照)。
続いて、コバルトドープ二酸化チタン層12上に密着層としてTiと電極層としてAuを順に電子ビーム蒸着法を用いて蒸着し、アセトンによりリフトオフし、電極パターンを有する電極部42を図9(B)に示すように作製した。
その後、電極パターンの形成と同様の要領で図9(C)に示すようにフォトレジスト43にメサパターンを形成し、Arイオンを用いてドライエッチングにより図9(D)に示すように二酸化チタン層15及びコバルトドープ二酸化チタン層12にメサパターンを切り出した。
最後に、ワイヤーボンディングにより、Au線を配線した。
【0032】
図9(D)に示すように、ホールバー50は、LaAlO3基板11上に、チャネル部分となる棒状部51と、その棒状部51の両側に第一の電流端子52及び第二の電流端子53の各パッド52a,53aと、第一の電圧端子54、第二の電圧端子55及び第三の電圧端子56の各パッド54a,55a,56aとが配置されている。第一の電流端子52及び第二の電流端子53の各パッド52a,53aはテーパー部52b,53bで延設されて棒状部51の側面、即ち第一及び第二の電流端子52,53を結ぶ仮想線に対して垂直な面に接触している。第一の電圧端子54と第二の電圧端子55の各パッド54a,55aは第一の電流端子52のパッド52aを挟んでパッド52aに近接して配置されている。第一の電圧端子54及び第二の電圧端子55はそれぞれパッド54a,55aから細幅の延設部54b,55bにより、棒状部51に沿って斜めに棒状部51の側面に接触している。第一の電圧端子54の延設部54bと第二の電圧端子55の延設部55bとは棒状部51に対して対称に配置される。第三の電圧端子56はパッド56aと延設部56bとからなり、第三の電圧端子56の延設部56bは、第一の電圧端子54の延設部54bと第二の電圧端子55の延設部55bとは別の位置で、棒状部51の側面に接触している。ここで、棒状部51は二酸化チタン層15とコバルトドープ二酸化チタン層12との積層構造でなる。第一の電流端子52、第二の電流端子53、第一の電圧端子54、第二の電圧端子55及び第三の電圧端子56は、二酸化チタン層15とコバルトドープ二酸化チタン層12と密着層と電極層との積層構造でなる。
【0033】
作成したホールバー50を用いて、四端子測定により抵抗率を求めた。その際、第一の電流端子52と第二の電流端子53と、第一の電圧端子54と第三の電圧端子56とを用いた。測定には、超伝導マグネツト付電気特性測定装置(PPMS:Physical Property Measurement System, Quantum Design社製)を用いた。
【0034】
図10は、コバルトドープ二酸化チタン層12の抵抗率の温度依存性である。図10の横軸は絶対温度T(K)で、縦軸は抵抗率ρxx(Ωcm)である。第一の電流端子52と第二の電流端子53と第一の電圧端子54と第三の電圧端子56とを用い、電流に対して平行な方向に電圧差を測定した。測定にはPPMSを用いた。コバルトドープ二酸化チタン層12のTiとCoの比は9:1で、即ちTi0.9Co0.1O2−δ(x=0.1)である。図10に示すグラフから、アナターゼ構造でのコバルトドープ二酸化チタンは、絶縁性から導電性の性質まで広く電気的特性を変化させることができる。
【0035】
作製したホールバー50を用いてホール測定を行った。その際、第一の電流端子52と第二の電流端子53と、第一の電圧端子54と第二の電圧端子55とを用いた。測定にはPPMSを用いた。測定温度は300Kとした。強磁性半導体では磁化に相当するホール起電力が生じ、ホール測定で実際に測定されるホール起電力は線形成分と磁化に相当する成分が組み合わされたものとなる。図11は、異なる酸素雰囲気(1×10―6〜8×10−6Torr)中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層12の異常ホール伝導率の磁場依存性である。横軸は磁場μ0H(T)であり、縦軸は異常ホール伝導率σAH(mΩ−1cm−1)である。キャリア濃度nが5×1018cm−3、5×1019cm−3ではヒステリシスがなく常磁性であるが、キャリア濃度nが4×1019cm−3、2×1020cm−3ではヒステリシスが生じ強磁性であることが分かる。
【0036】
作成したホールバー50を用いて磁化測定を行った。測定には、磁化特性測定システム(MPMS:Magnetic Property Measurement System, Quantum Design社製)を用いた。測定温度は300Kとした。
図12は、異なる酸素雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層の磁化測定の結果を示す図である。横軸は磁場μ0H(T)であり、縦軸は磁化M(μB/Co)である。いま、コバルトドープ量は10%(x=0.1)であるので、(μB/Co)で表された値に約27.2/10000を掛けると(T)単位での値となる。キャリア濃度が大きくなるにつれて磁気ヒステリシスが観測されるようになり、電気測定の結果と同様に、キャリア濃度が大きい試料では強磁性を示し、小さい試料では常磁性であることが分かった。すなわち、キャリア濃度によって磁気的な特性が変調されることが分かった。
【0037】
図13は、異なる酸素雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層のキャリア濃度と異常ホール伝導率の関係を示す磁気相図である。測定温度は300Kとした。横軸はキャリア濃度n(cm−3)であり、縦軸は異常ホール伝導率σAH(mΩ−1cm−1)である。図13において、黒丸(●)プロットは実施例2の結果であるアナターゼ型の場合であり、白四角(□)プロットは参考までに示すルチル型の場合で、実際の値を5倍したものを示している。●プロットで示すアナターゼ型Ti0.9Co0.1O2−δはキャリア濃度が2×1019cm−3以上で強磁性を示し、磁化の大きさに対応する異常ホール伝導率がキャリア濃度に対して増加していることが分かった。このことは、強磁性はキャリアによって誘起されていることが示唆する。また、コバルトドープ二酸化チタン膜において、□プロットで示すルチル型の場合と比べてアナターゼ型の場合、強磁性が発現するキャリア濃度の大きさが約1/10であることが分かった。
【0038】
図14は、異なる雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層の縦伝導率と異常ホール伝導率との関係を示す図である。横軸は縦伝導率σxx(Ω−1cm−1)であり、縦軸は異常ホール伝導率σAH(mΩ−1cm−1)である。図14から、アナターゼ構造のTi1−xCoxO2−δ膜では、異常ホール伝導率σAHは縦伝導率σxxの1.6乗に比例する。よって、アナターゼ構造のTi1−xCoxO2−δ膜はイントリンシックな異常ホール効果が起源であるということを示唆している。
【実施例3】
【0039】
本発明の実施形態に係る強磁性半導体素子を作製した。先ず、パルスレーザ堆積法によりLaAlO3基板11上に二酸化チタン層15を形成し、その二酸化チタン層15上にコバルトドープ二酸化チタン層12を形成し、次に、実施例2と同様にホールバー50を作成した。ホールバー50を形状加工して棒状部51であるチャンネル部分を電解液13に浸した。電解液はポリエチレンオキシドに0.3モル/リットルとなるよう塩素酸セシウムを溶かしたものを用いた。その後、ゲート電極14として白金ワイヤをコイル状に巻いて表面積を大きくし電解液に浸し、電解液13をゲート電極14に接触させた。その後、350Kで1時間PPMS内に入れて真空排気を行い、電解液13中の水分を除いた。次いで、測定環境の温度を電解液13が液体状態となる320Kとなるように保持し、実施例2と同様、電気特性の測定を行った。
【0040】
図15は、ゲート電圧を印加しない状態でのホール測定の結果を示す図であり、(A)は異常ホール伝導率σAHの磁場依存性であり、(B)はホール抵抗Rxyの磁場依存性である。横軸は磁場μ0H(T)、(A)の縦軸は異常ホール伝導率σAH(×10−3Ω−1cm−1)であり、(B)の縦軸はホール抵抗Rxy(Ω)である。測定環境は320Kとした。
ゲート電圧VGが0Vの場合、ホール測定の結果から、コバルトドープ二酸化チタン層12のキャリア濃度nは3.1×1019cm−3であり、異常ホール伝導率σAHの磁場依存性ではヒステリシスが観測されたが、非常に小さいことが読み取れる。
次に、+2Vのゲート電圧VGを印加した。測定環境は320Kとした。図16は、ゲート電圧VGを印加した際の抵抗の時間依存性を示す図であり、横軸は時間(分)、縦軸は抵抗Rxx(×103Ω)である。ゲート電圧VGを印加すると、抵抗は減少し30分経過すると変化しなくなり、ゲート電圧を印加する前と比べて抵抗が約1/3となった。これは、ゲート電圧VGを電解液13に印加すると、電解液13中の正負のイオンがゲート電極14とチャネル表面に集合して電気二重層が形成され、チャネルにキャリアが誘起される。そのため、抵抗が減少した。抵抗Rxxが一定値になった段階で、イオンの移動がほぼ終了した。
【0041】
その後、ホール測定と四端子抵抗の測定を行い、キャリア濃度、伝導率を求めた。図17は、ゲート電圧VGを印加しない状態と印加した状態でのホール測定の結果を示すグラフであり、(A)は異常ホール伝導率σAHの磁場依存性を、(B)はホール抵抗Rxyの磁場依存性を示す。横軸は磁場μ0Hで、縦軸は(A)については異常ホール伝導率σAHであり、(B)についてはRxyである。測定温度は320Kである。
コバルトドープ二酸化チタン層12中のキャリア濃度は、ゲート電圧VGを印加することにより、3.1×1019cm−3から9.0×1019cm−3へ約3倍増加した。このキャリア濃度は、図17(B)に示す正常ホール項の傾きから導出した。前述したように、ゲート電圧VGの印加で抵抗が1/3倍となったのはキャリア濃度の増加が要因となっている。
異常ホール伝導率σAHは、図17(A)に示すように、ゲート電圧VGの印加により約2倍増加した。異常ホール伝導率σAHは正常ホール項を差し引いて導出した。ゲート電圧VGの印加により、キャリアを膜中に誘起することで、強磁性が増強されることが判った。
【実施例4】
【0042】
実施例3で用いた電解液13中の電解質CsClO4の代わりに、電解質Sr(ClO4)2を用いて、実施例3と同様に、電気特性の測定を行った。
図18は、ゲート電圧を印加しない状態と印加した状態でのホール測定の結果について、異常ホール伝導率σAHの磁場依存性を示す図である。横軸は磁場μ0H(T)であり、縦軸は異常ホール伝導率σAH(mΩ−1cm−1)である。測定温度は320Kである。
コバルトドープ二酸化チタン層12中のキャリア濃度は、ゲート電圧VGを印加することにより、7.0×1018cm−3から4.1×1019cm−3へ約6倍増加した。異常ホール伝導率σAHは、図18に示すように、ゲート電圧VGを印加しない状態ではヒステリシスは非常に小さく、0.1mΩ−1cm−1以下の値である。ゲート電圧VGを2V印加することでヒステリシスが明瞭になり、約0.3mΩ−1cm−1まで増加した。これにより、ゲート電圧VGを印加し、キャリアをコバルトドープ二酸化チタン層12中に誘起することで、強磁性が増強されることが判った。
【0043】
図19(A)は、Ti0.9Co0.1O2−δ膜の磁気相図とゲート電圧印加によるキャリア濃度と異常ホール伝導率の変化を示す図であり、図19(B)は、図19(A)のSr(ClO4)2のデータの拡大図である。横軸はキャリア濃度n(cm−3)で、縦軸は異常ホール伝導率σAH(mΩ−1cm−1)である。点線は酸素分圧を変化させてコバルトドープ二酸化チタン膜を作製した場合であり、図19(A)において、黒四角(■)プロットは同一の化学組成の膜で、電解質にCsClO4を用いてゲート電圧VGを印加した場合であり、黒丸(●)プロットは同一の化学組成の膜で、電解質にSr(ClO4)2を用いてゲート電圧VGを印加した場合である。図19(B)において、●プロットがゲート電圧を上昇していったときのデータであり、白三角(△)プロットがゲート電圧を減らしていったときのデータである。
図19から、同一の化学組成Ti0.9Co0.1O2−δ膜において、ゲート電圧の印加の有無により、化学組成を変化させずに、キャリア濃度、異常ホール伝導率を変化させることができることが分かった。
【0044】
以上説明したように、遷移元素ドープ二酸化チタンにゲート電圧を印加することで、遷移元素ドープ二酸化チタンの磁性を室温で制御することができる。これは、今まで、室温と比べて低温のみ実証されていた様々な強磁性半導体素子について、強磁性半導体として遷移元素ドープ二酸化チタンを用いることにより室温状態でも動作可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、強磁性半導体の室温での強磁性制御をゲート電圧で制御することができることとなった。よって、電界効果型デバイスとして例えば磁気センサやスピン輸送素子などのユビキタスな強磁性半導体素子として利用することができる。特に、強磁性半導体として用いた二酸化チタンは化学的にも安定で透明電極として利用することができ、遷移元素ドープ二酸化チタン膜はガラス基板上にスパッタ法を用いて作製することができるので、自動車のフロントガラスへのデバイス搭載なども行えるようになる。
【符号の説明】
【0046】
1,2,3,4:強磁性半導体素子(電界効果型素子)
11:基板
12:遷移元素ドープ二酸化チタン層(コバルトドープ二酸化チタン層)
13:電解液
14:ゲート電極
15:二酸化チタン層
16:ソース電極
17:ドレイン電極
18:絶縁層
19:酸化物層(ゲート酸化物層)
21:電子
22:イオン
23:電気二重層
30:レーザアブレーション装置
31:真空チャンバー
32:基板ホルダー
33:半導体赤外レーザー装置
34:ターゲットホルダー
34a:ターゲット
35:エキシマレーザー
36:導入管
37:RHEEDスクリーン
41,43:フォトレジスト
42:電極部
50:ホールバー
51:棒状部
52:第一の電流端子
53:第二の電流端子
54:第一の電圧端子
55:第二の電圧端子
56:第三の電圧端子
52a,53a,54a,55a,56a:パッド
52b,53b:テーパー部
54b,55b、56b:延設部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界により強磁性半導体の性質を変化する強磁性半導体素子及び強磁性半導体の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体素子では、非磁性の半導体に電圧を印加して半導体のキャリア濃度を制御することで電気伝導性を変化させている。半導体素子に対する情報の書換えは、電界効果による電気伝導性を利用している。電圧印加は微小な電極でも行うことができるため、半導体素子の集積化は容易に実現できる。一方、半導体素子からの情報の読み取りの際には電気伝導性を一定に保持する必要がある。そのため、電力が常に必要となり、半導体素子を用いた情報の読み取りの場面では省電力化には向かない。
【0003】
これに対し、従来の強磁性体素子では、強磁性体のミクロな磁区構造と情報とを対応させている。よって、情報の保持、即ち、磁区構造の保持には電力は不要であり、省電力化に適している。一方、情報の書換え、即ち、磁区構造を変化させるには、外部から磁場を印加するか大きな電流を流す必要がある。外部磁場の発生には磁石を必要とするため、集積化が容易ではなく大電流を流すので省電力化にも向かない。
【0004】
そこで、強磁性と半導体との両方の性質を有する強磁性半導体材料が注目を浴びており、例えば(In,Mn)As、(Ga,Mn)Asでは、強磁性の電界制御が実証されている(非特許文献1乃至3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−206890公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H.Ohno et al., Nature 408,944 (2000)
【非特許文献2】D.Chiba et al., Science 301,943 (2003)
【非特許文献3】D.Chiba et al., Nature 455,5155 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、MnドープのInAsやMnドープのGaAsの強磁性半導体では、キュリー温度Tcがそれぞれ60K、170Kであるため、これらの強磁性半導体は室温と比べて十分低温で強磁性が消失するため、これらの強磁性半導体を用いたデバイスを室温下で動作させることは不可能であった。
【0008】
本発明は、室温下での動作が可能な強磁性半導体素子を提供することを第一の目的とする。
本発明は、室温下での動作可能な強磁性半導体の磁性を制御する強磁性半導体の制御方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究した結果、遷移元素ドープ二酸化チタンからなる強磁性半導体が室温よりも十分高いキュリー温度を持つことに注目し、この強磁性半導体に対してゲート電圧を印加することで、強磁性を制御することができることに着目して、本発明を完成するに至った。
【0010】
上記第一の目的を達成するため、本発明における強磁性半導体素子の第一の構成は、基板と、基板上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、二酸化チタン層上に設けられた電解液と、電解液と接触するように設けられたゲート電極と、を含むことを特徴とする。
本発明における強磁性半導体素子の第二の構成は、基板と、基板上に設けられた二酸化チタン層と、二酸化チタン層上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、遷移元素ドープ二酸化チタン層上に設けられた電解液と、電解液と接触するように設けられたゲート電極と、を含むことを特徴とする。
本発明における強磁性半導体素子の第三の構成は、基板と、基板上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、遷移元素ドープ二酸化チタン層上に設けられた酸化物層と、酸化物層上に設けられたゲート電極と、を含むことを特徴とする。
本発明における強磁性半導体素子の第四の構成は、基板と、基板上に設けられた二酸化チタン層と、二酸化チタン層上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、二酸化チタン層上に設けられた酸化物層と、酸化物層に設けられたゲート電極と、を含むことを特徴とする。
【0011】
上記第二の目的を達成するため、本発明における強磁性半導体素子の制御方法の第一の構成は、遷移元素ドープ二酸化チタン層とゲート電極との間に電解液を挟みこんでなる電界効果型トランジスタを用い、ゲート電極にゲート電圧を印加して遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強度を変化させることを特徴とする。
本発明における強磁性半導体素子の制御方法の第二の構成は、遷移元素ドープ二酸化チタン層とゲート電極との間に酸化物を挟みこんでなる電界効果型トランジスタを用い、ゲート電極にゲート電圧を印加して遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強度を変化させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遷移元素ドープ二酸化チタンからなる強磁性半導体を電界により室温下で制御し、強磁性半導体のキャリア濃度を制御することができる。よって、例えば情報の読み取り及び書き込みの処理を室温状態で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る強磁性半導体素子の断面図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係る強磁性半導体素子の断面図である。
【図3】第一及び第二の実施形態における強磁性半導体素子において、ゲート電極にゲート電圧を印加したときの模式図である。
【図4】本発明の第三の実施形態に係る強磁性半導体素子の断面図である。
【図5】本発明の第四の実施形態に係る強磁性半導体素子の断面図である。
【図6】各実施例において二酸化チタン層及び遷移元素ドープ二酸化チタン層を形成する際に用いたレーザアブレーション装置の概念図である。
【図7】実施例1において、アニール処理工程を含まない場合の結果を示す図であり、(A)は二酸化チタン層のRHEEDの強度を、(B)は二酸化チタン層のRHEED像を、(C)はコバルトドープ二酸化チタン層のRHEEDの強度を、(D)のAFMでの観察した像を示している。
【図8】実施例1において、アニール処理工程を含んだ場合の結果を示す図であり、(A)は二酸化チタン層のRHEEDの強度を、(B)は二酸化チタン層のRHEED像を、(C)はコバルトドープ二酸化チタン層のRHEEDの強度を、(D)のAFMでの観察した像を示している。
【図9】実施例2において、コバルトドープ二酸化チタン膜の電気的測定を行うために微細加工によるホールバーの形成工程を模式的に示す図である。
【図10】実施例2に関し、コバルトドープ二酸化チタン層の抵抗率の温度依存性を示すグラフである。
【図11】実施例2に関し、異なる酸素雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層の異常ホール伝導率の磁場依存性を示すグラフである。
【図12】実施例2に関し、異なる酸素雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層の磁化測定の結果を示すグラフである。
【図13】実施例2に関し、異なる酸素雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層のキャリア濃度と異常ホール伝導率の関係を示すグラフである。
【図14】実施例2に関し、異なる雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層の縦伝導率と異常ホール伝導率との関係を示すグラフである。
【図15】実施例3に関し、ゲート電圧を印加しない状態でのホール測定の結果を示すもので、(A)は異常ホール伝導率σAHの磁場依存性を、(B)はホール抵抗Rxyの磁場依存性を示すグラフである。
【図16】実施例3に関し、ゲート電圧を印加した際の抵抗の時間依存性を示すグラフである。
【図17】実施例3に関し、ゲート電圧を印加しない状態と印加した状態でのホール測定の結果を示すもので、(A)は異常ホール伝導率σAHの磁場依存性を、(B)はホール抵抗Rxyの磁場依存性を示すグラフである。
【図18】実施例4に関し、ゲート電圧を印加しない状態と印加した状態でのホール測定の結果について、異常ホール伝導率σAHの磁場依存性を示すグラフである。
【図19】(A)は、Ti0.9Co0.1O2−δ膜の磁気相図とゲート電圧印加によるキャリア濃度と異常ホール伝導率の変化を示すグラフであり、(B)はその一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の幾つかの実施形態について詳細に説明する。なお、同一又は対応するものには同一の符号を付し説明を省略する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る強磁性半導体素子1の断面図である。第一の実施形態に係る強磁性半導体素子1は、基板11と、基板11上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層12と、遷移元素ドープ二酸化チタン層12上に設けられた電解液13と、電解液13上に設けられたゲート電極14と、を含んで構成される。
【0015】
図2は、本発明の第二の実施形態に係る強磁性半導体素子2の断面図である。第二の実施形態に係る強磁性半導体素子2は、第一の実施形態に係る強磁性半導体素子1とは、基板11の上にバッファ層としての二酸化チタン層15を設けている点で異なる。これは、後述する実施例において詳細に説明するが、遷移元素ドープ二酸化チタン層12を高品質に設けるためである。第一の実施形態と第二の実施形態とは、二酸化チタン層15の有無で異なるため、以下の説明では、第二の実施形態を中心に説明する。
【0016】
図1及び図2に示す強磁性半導体素子2において、何れの基板11にも、LaAlO3、SrTiO3、(La,Sr)(Al,Ta)O3、サファイア、TiO2、ガラスなどの素材を用いることができる。LaAlO3、SrTiO3、(La,Sr)(Al,Ta)O3の何れかからなる基板11を用いることで、アナターゼ型の二酸化チタン、アナターゼ型の遷移元素ドープ二酸化チタンをエピタキシャル成長させることができる。サファイア、ルチル型TiO2からなる基板11を用いることで、ルチル型の二酸化チタン、ルチル型の遷移元素ドープ二酸化チタンをエピタキシャル成長させることができる。ガラスからなる基板11を用いた場合には、ルチル型とアナターゼ型との混合物が成長する場合があるが、作製条件の設定によりルチル型もしくはアナターゼ型が選択的に成長する。
遷移元素ドープ二酸化チタン層12における遷移元素には、コバルトや鉄を用いることができる。二酸化チタンに遷移元素をドープすることにより強磁性体となる。コバルトがドープされている場合には、Ti1−xCoxO2−δにおいて、xが、0<x<0.1となる範囲で、酸素欠損量δより少ないことが好ましい。Coのドープ量より少なくなると、導電性が低下し、強磁性が発現しない。
電解液13には、ポリエチレンオキシド溶媒などの高分子溶媒に、CsClO4、Sr(ClO4)2、KClO4、NaClO4、LiClO4などの溶質を溶かしたもの、又はイオン液体を用いることができる。ゲート電極14には、Pt、Au、Ag、Al、Tiなどの金属で構成され、層状のものや、ワイヤ状、螺旋状に巻いた形状のものであってもよい。ゲート電極14は、Auなどからなる電極層の単層構造又は二以上の多層構造であっても、Tiなどからなる密着層とAuなどからなる電極層との二層構造又は三以上の多層構造であってもよい。
【0017】
図3は、第一及び第二の実施形態における強磁性半導体素子1,2において、ゲート電極14にゲート電圧を印加したときの模式図である。図3に示すように、遷移元素ドープ二酸化チタン層12に対してゲート電極14に正(又は負)のゲート電圧を印加すると、電解液13中の陽イオンと陰イオンが電界に引き寄せられて動き、遷移元素ドープ二酸化チタン層12と電解液13との境界面には、電子21とイオン22とからなる極薄の電気二重層23が形成される。これにより、高濃度の電子(又は正孔)のキャリアが増加する。これにより、後述するように、ゲート電極14に正のゲート電圧を印加すると、電子濃度が増加し、その結果、ホール抵抗が減少する。また、ホール伝導率の強磁性の磁化に寄与する成分、即ち、異常ホール伝導率が増加する。この強磁性の磁化は、遷移元素ドープ二酸化チタンが600Kという室温よりも高いキュリー温度を有するので、ゲート電極14へのゲート電圧の印加により、例えば320Kという室温下でも強磁性の強度を制御することができる。
【0018】
図4は、本発明の第三の実施形態に係る強磁性半導体素子3の断面図である。
第三の実施形態に係る強磁性半導体素子3では、第二の実施形態において、電解液13を取り囲むように絶縁層18が遷移元素ドープ二酸化チタン層12上に形成されており、さらに、絶縁層18の外側で遷移元素ドープ二酸化チタン層12上にソース電極16とドレイン電極17とが設けられ、三端子構造の電界効果型トランジスタとなっている。この実施形態では、ゲート電極14にゲート電圧を印加することで、ソース電極16とドレイン電極17との間に形成される、遷移元素ドープ二酸化チタン層12のチャネルにおけるキャリア濃度の変化により、ソース電極16とドレイン電極17との間に流れる電流が変化する。
【0019】
本発明の第一乃至第三の実施形態に係る強磁性半導体素子1〜3では、遷移元素ドープ二酸化チタン層12とゲート電極14との間に電解液13を挟んだ電界効果型トランジスタであるが、電解液13の代わりに酸化物、即ちゲート酸化物であってもよい。以下、第二の実施形態に対応する場合を説明するが、その他の実施形態の場合も同様である。
【0020】
図5は、本発明の第四の実施形態に係る強磁性半導体素子4の断面図である。第四の実施形態に係る強磁性半導体素子4は、基板11と、基板11上に設けられた二酸化チタン層15と、二酸化チタン層15上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層12と、遷移元素ドープ二酸化チタン層12上に設けられた酸化物層19と、酸化物層19上に設けられたゲート電極14と、を含んで構成される。酸化物層19は、AlOx、HfO2、ZrO2、MgOの何れかからなるとよい。
【0021】
第四の実施形態に係る強磁性半導体素子4の場合においても、図3を用いて説明した場合と同様、遷移元素ドープ二酸化チタン層12に対してゲート電極14に正(又は負)のゲート電圧を印加すると、遷移元素ドープ二酸化チタン層12と酸化物層19との境界面には電子とイオンとからなる極薄の電気二重層が形成され、高濃度の電子(又は正孔)のキャリアが増加する。これにより、ゲート電極14に正のゲート電圧を印加すると、電子濃度が増加し、その結果、ホール抵抗が減少する。また、ホール伝導率の強磁性の磁化に寄与する成分、即ち、異常ホール伝導率が増加する。この強磁性の磁化は、遷移元素ドープ二酸化チタンが600Kという室温よりも高いキュリー温度を有するので、ゲート電極14へのゲート電圧の印加により、例えば320Kという室温下でも強磁性の強度を制御することができる。
【実施例1】
【0022】
以下、実施例により本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の強磁性半導体素子を作製する前提として、LaAlO3基板11上にアナターゼ構造の二酸化チタン薄膜を高品質に作製する方法について検討した。図6は各実施例において二酸化チタン層15及び遷移元素ドープ二酸化チタン層12を形成する際に用いたレーザアブレーション装置の概念図である。
【0023】
図6に示すように、レーザアブレーション装置30では、高真空排気可能な真空チャンバー31内に基板ホルダー32が設置されており、基板ホルダー32の裏面に向けてレーザー光が照射されるよう半導体赤外レーザー装置33が配備されており、基板ホルダー32が裏面から半導体赤外レーザーにより加熱可能になっている。基板ホルダー32に対向するようにターゲットホルダー34が配置されている。真空チャンバー外からKrFエキシマレーザー35がターゲット34aに照射可能となっている。真空チャンバー31には酸素ガスを導入するための導入管36が配備されている。レーザアブレーション装置30には、基板11に対し電子線e−を照射し、その回折像を検出するRHEED(反射高速電子回折)スクリーン37が真空チャンバー31内に配備されている。
【0024】
LaAlO3(100)基板11を真空チャンバー31内に導入し、半導体赤外レーザー装置33により650℃に加熱した。その後、真空チヤンバー31内に酸素ガスを導入し、酸素分圧1×10−3Torrの酸化雰囲気下で、純粋な二酸化チタンからなるターゲット34aをレーザーでアブレーションさせ、対向した基板11上に二酸化チタン層15を5nm厚さだけ堆積させた。次いで、導入管36から導入する酸素量を制御することで材料中の酸素欠損量を制御し、コバルトドープ二酸化チタン層12を400℃で堆積させた。
【0025】
図7は、実施例1においてアニール処理工程を含まない場合の結果を示す図で、(A)は二酸化チタン層15のRHEEDの強度を、(B)は二酸化チタン層15のRHEED像を、(C)はコバルトドープ二酸化チタン層12のRHEEDの強度を、(D)はAFM(Atomic force microscope)で観察した像を示している。図7(A)及び(C)の横軸は時間(分)であり、縦軸はRHEED強度(任意目盛)である。上記条件下では、図7(A)に示すようにバッファ層、即ち二酸化チタン層15でのRHEED強度に振動が観察されるのに対し、図7(C)に示すようにコバルトドープ二酸化チタン層12ではRHEED強度の振動が観察されなかった。作製した薄膜について表面をAFMで観察すると、図7(D)に示すように数十nm程度の結晶粒が集まった構造が存在していることから、三次元成長が観察された。
【0026】
そこで、コバルトドープ二酸化チタン層12の最適化のため、二酸化チタン層15を酸素分圧1×10−3Torr、550℃で作製した後、基板11を900℃に加熱して10分間アニール処理を行った。次いで、二酸化チタン層15上に、基板温度を250℃に保ち、コバルトドープ二酸化チタン層12を形成した。
【0027】
図8は、実施例1においてアニール処理工程を含んだ場合の結果を示す図で、(A)は二酸化チタン層15のRHEEDの強度を、(B)は二酸化チタン層15のRHEED像を、(C)はコバルトドープ二酸化チタン層12のRHEEDの強度を、(D)はAFMで観察した像を示している。図8(A)及び(C)の横軸は時間(分)であり、縦軸はRHEED強度(任意目盛)である。このアニール処理により成膜直後ではストリークであったRHEEDスクリーン上の像においてラウエ球上にスポットが観察されるようになり(図8(A)(B)、図7(B)参照)、より平坦なバッファ層、即ち二酸化チタン層15であることが判った。平坦化されたバッファ層上に、基板温度を250℃に保ち、コバルトドープ二酸化チタン層12を形成すると、一原子層成長である二次元成長を示すRHEED回折強度の振動が観察された(図8(C)参照)。コバルトドープ二酸化チタン層12を作製後、AFM像を観察すると、図8(D)に示すように、平坦化が向上しており、品質のよいアナターゼ構造のコバルトドープ二酸化チタン膜が作製できていることが判った。
【0028】
以上のことから、基板11を加熱してバッファ層として二酸化チタン層15を作製し、その後、基板11を加熱してアニーリングを行うことで二酸化チタン層15を平坦化することができ、その上に、アナターゼのコバルトドープ二酸化チタン膜を作製することができることが判明した。
【実施例2】
【0029】
実施例2においては、薄膜作製時の酸素分圧を調整し、ドーパントである酸素欠損量を変化させ、コバルトドープ二酸化チタン層12のキャリア濃度を制御した。酸化物における酸素欠損は、酸素空孔又は格子間金属の生成と、格子への自由電子の放出を伴っている。この電子の放出により、酸化物半導体はn型電気伝導性が生じる。ここで、電子の放出の様子は次の反応式で表される。
ここで、O2−は格子中の正常な位置にある酸素イオン、VO”は2価の正電荷を持つ酸素空孔、M2+は格子中の正常な位置にある金属イオン、Mi2+は格子間位置の金属イオンである。したがって、酸素欠損量δ を変調することにより、キャリア濃度を変化させることができる。よって、Ti1−xCoxO2−δ膜におけるδは成膜時の酸素分圧PO2を変えることで変調した。
【0030】
実施例2では、コバルトドープ二酸化チタン膜の電気的測定を行うために、微細加工によるホールバーを形成した。図9は、実施例2においてコバルトドープ二酸化チタン膜の電気的測定を行うために微細加工によるホールバーの形成工程を模式的に示す図である。
【0031】
先ず、LaAlO3基板11上に二酸化チタン層15とコバルトドープ二酸化チタン層12とを順に実施例1と同様の手順で作成した。コバルトドープ二酸化チタン層12を作成する際、異なる酸素分圧、即ち1×10−6〜8×10−6Torrで作製した。
次に、コバルトドープ二酸化チタン層12上に電極パターンを以下の要領で形成した。先ず、サンプルをアセトン、エタノールの有機溶媒で超音波洗浄を行い、ホットプレートで乾燥させた。次にサンプルにフォトレジスト41(SHIPLEY S9912NX)を塗布し、5000rpmで30秒スピンコーティングした。そのサンプルをホットプレートで温度90℃、15分間プリベークした。別途図示しないガラス板上にクロムで描かれた電極パターン用フォトマスクを用いて露光し、現像液で現像した後、超純水で洗浄した(図9(A)参照)。
続いて、コバルトドープ二酸化チタン層12上に密着層としてTiと電極層としてAuを順に電子ビーム蒸着法を用いて蒸着し、アセトンによりリフトオフし、電極パターンを有する電極部42を図9(B)に示すように作製した。
その後、電極パターンの形成と同様の要領で図9(C)に示すようにフォトレジスト43にメサパターンを形成し、Arイオンを用いてドライエッチングにより図9(D)に示すように二酸化チタン層15及びコバルトドープ二酸化チタン層12にメサパターンを切り出した。
最後に、ワイヤーボンディングにより、Au線を配線した。
【0032】
図9(D)に示すように、ホールバー50は、LaAlO3基板11上に、チャネル部分となる棒状部51と、その棒状部51の両側に第一の電流端子52及び第二の電流端子53の各パッド52a,53aと、第一の電圧端子54、第二の電圧端子55及び第三の電圧端子56の各パッド54a,55a,56aとが配置されている。第一の電流端子52及び第二の電流端子53の各パッド52a,53aはテーパー部52b,53bで延設されて棒状部51の側面、即ち第一及び第二の電流端子52,53を結ぶ仮想線に対して垂直な面に接触している。第一の電圧端子54と第二の電圧端子55の各パッド54a,55aは第一の電流端子52のパッド52aを挟んでパッド52aに近接して配置されている。第一の電圧端子54及び第二の電圧端子55はそれぞれパッド54a,55aから細幅の延設部54b,55bにより、棒状部51に沿って斜めに棒状部51の側面に接触している。第一の電圧端子54の延設部54bと第二の電圧端子55の延設部55bとは棒状部51に対して対称に配置される。第三の電圧端子56はパッド56aと延設部56bとからなり、第三の電圧端子56の延設部56bは、第一の電圧端子54の延設部54bと第二の電圧端子55の延設部55bとは別の位置で、棒状部51の側面に接触している。ここで、棒状部51は二酸化チタン層15とコバルトドープ二酸化チタン層12との積層構造でなる。第一の電流端子52、第二の電流端子53、第一の電圧端子54、第二の電圧端子55及び第三の電圧端子56は、二酸化チタン層15とコバルトドープ二酸化チタン層12と密着層と電極層との積層構造でなる。
【0033】
作成したホールバー50を用いて、四端子測定により抵抗率を求めた。その際、第一の電流端子52と第二の電流端子53と、第一の電圧端子54と第三の電圧端子56とを用いた。測定には、超伝導マグネツト付電気特性測定装置(PPMS:Physical Property Measurement System, Quantum Design社製)を用いた。
【0034】
図10は、コバルトドープ二酸化チタン層12の抵抗率の温度依存性である。図10の横軸は絶対温度T(K)で、縦軸は抵抗率ρxx(Ωcm)である。第一の電流端子52と第二の電流端子53と第一の電圧端子54と第三の電圧端子56とを用い、電流に対して平行な方向に電圧差を測定した。測定にはPPMSを用いた。コバルトドープ二酸化チタン層12のTiとCoの比は9:1で、即ちTi0.9Co0.1O2−δ(x=0.1)である。図10に示すグラフから、アナターゼ構造でのコバルトドープ二酸化チタンは、絶縁性から導電性の性質まで広く電気的特性を変化させることができる。
【0035】
作製したホールバー50を用いてホール測定を行った。その際、第一の電流端子52と第二の電流端子53と、第一の電圧端子54と第二の電圧端子55とを用いた。測定にはPPMSを用いた。測定温度は300Kとした。強磁性半導体では磁化に相当するホール起電力が生じ、ホール測定で実際に測定されるホール起電力は線形成分と磁化に相当する成分が組み合わされたものとなる。図11は、異なる酸素雰囲気(1×10―6〜8×10−6Torr)中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層12の異常ホール伝導率の磁場依存性である。横軸は磁場μ0H(T)であり、縦軸は異常ホール伝導率σAH(mΩ−1cm−1)である。キャリア濃度nが5×1018cm−3、5×1019cm−3ではヒステリシスがなく常磁性であるが、キャリア濃度nが4×1019cm−3、2×1020cm−3ではヒステリシスが生じ強磁性であることが分かる。
【0036】
作成したホールバー50を用いて磁化測定を行った。測定には、磁化特性測定システム(MPMS:Magnetic Property Measurement System, Quantum Design社製)を用いた。測定温度は300Kとした。
図12は、異なる酸素雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層の磁化測定の結果を示す図である。横軸は磁場μ0H(T)であり、縦軸は磁化M(μB/Co)である。いま、コバルトドープ量は10%(x=0.1)であるので、(μB/Co)で表された値に約27.2/10000を掛けると(T)単位での値となる。キャリア濃度が大きくなるにつれて磁気ヒステリシスが観測されるようになり、電気測定の結果と同様に、キャリア濃度が大きい試料では強磁性を示し、小さい試料では常磁性であることが分かった。すなわち、キャリア濃度によって磁気的な特性が変調されることが分かった。
【0037】
図13は、異なる酸素雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層のキャリア濃度と異常ホール伝導率の関係を示す磁気相図である。測定温度は300Kとした。横軸はキャリア濃度n(cm−3)であり、縦軸は異常ホール伝導率σAH(mΩ−1cm−1)である。図13において、黒丸(●)プロットは実施例2の結果であるアナターゼ型の場合であり、白四角(□)プロットは参考までに示すルチル型の場合で、実際の値を5倍したものを示している。●プロットで示すアナターゼ型Ti0.9Co0.1O2−δはキャリア濃度が2×1019cm−3以上で強磁性を示し、磁化の大きさに対応する異常ホール伝導率がキャリア濃度に対して増加していることが分かった。このことは、強磁性はキャリアによって誘起されていることが示唆する。また、コバルトドープ二酸化チタン膜において、□プロットで示すルチル型の場合と比べてアナターゼ型の場合、強磁性が発現するキャリア濃度の大きさが約1/10であることが分かった。
【0038】
図14は、異なる雰囲気中で作成したコバルトドープ二酸化チタン層の縦伝導率と異常ホール伝導率との関係を示す図である。横軸は縦伝導率σxx(Ω−1cm−1)であり、縦軸は異常ホール伝導率σAH(mΩ−1cm−1)である。図14から、アナターゼ構造のTi1−xCoxO2−δ膜では、異常ホール伝導率σAHは縦伝導率σxxの1.6乗に比例する。よって、アナターゼ構造のTi1−xCoxO2−δ膜はイントリンシックな異常ホール効果が起源であるということを示唆している。
【実施例3】
【0039】
本発明の実施形態に係る強磁性半導体素子を作製した。先ず、パルスレーザ堆積法によりLaAlO3基板11上に二酸化チタン層15を形成し、その二酸化チタン層15上にコバルトドープ二酸化チタン層12を形成し、次に、実施例2と同様にホールバー50を作成した。ホールバー50を形状加工して棒状部51であるチャンネル部分を電解液13に浸した。電解液はポリエチレンオキシドに0.3モル/リットルとなるよう塩素酸セシウムを溶かしたものを用いた。その後、ゲート電極14として白金ワイヤをコイル状に巻いて表面積を大きくし電解液に浸し、電解液13をゲート電極14に接触させた。その後、350Kで1時間PPMS内に入れて真空排気を行い、電解液13中の水分を除いた。次いで、測定環境の温度を電解液13が液体状態となる320Kとなるように保持し、実施例2と同様、電気特性の測定を行った。
【0040】
図15は、ゲート電圧を印加しない状態でのホール測定の結果を示す図であり、(A)は異常ホール伝導率σAHの磁場依存性であり、(B)はホール抵抗Rxyの磁場依存性である。横軸は磁場μ0H(T)、(A)の縦軸は異常ホール伝導率σAH(×10−3Ω−1cm−1)であり、(B)の縦軸はホール抵抗Rxy(Ω)である。測定環境は320Kとした。
ゲート電圧VGが0Vの場合、ホール測定の結果から、コバルトドープ二酸化チタン層12のキャリア濃度nは3.1×1019cm−3であり、異常ホール伝導率σAHの磁場依存性ではヒステリシスが観測されたが、非常に小さいことが読み取れる。
次に、+2Vのゲート電圧VGを印加した。測定環境は320Kとした。図16は、ゲート電圧VGを印加した際の抵抗の時間依存性を示す図であり、横軸は時間(分)、縦軸は抵抗Rxx(×103Ω)である。ゲート電圧VGを印加すると、抵抗は減少し30分経過すると変化しなくなり、ゲート電圧を印加する前と比べて抵抗が約1/3となった。これは、ゲート電圧VGを電解液13に印加すると、電解液13中の正負のイオンがゲート電極14とチャネル表面に集合して電気二重層が形成され、チャネルにキャリアが誘起される。そのため、抵抗が減少した。抵抗Rxxが一定値になった段階で、イオンの移動がほぼ終了した。
【0041】
その後、ホール測定と四端子抵抗の測定を行い、キャリア濃度、伝導率を求めた。図17は、ゲート電圧VGを印加しない状態と印加した状態でのホール測定の結果を示すグラフであり、(A)は異常ホール伝導率σAHの磁場依存性を、(B)はホール抵抗Rxyの磁場依存性を示す。横軸は磁場μ0Hで、縦軸は(A)については異常ホール伝導率σAHであり、(B)についてはRxyである。測定温度は320Kである。
コバルトドープ二酸化チタン層12中のキャリア濃度は、ゲート電圧VGを印加することにより、3.1×1019cm−3から9.0×1019cm−3へ約3倍増加した。このキャリア濃度は、図17(B)に示す正常ホール項の傾きから導出した。前述したように、ゲート電圧VGの印加で抵抗が1/3倍となったのはキャリア濃度の増加が要因となっている。
異常ホール伝導率σAHは、図17(A)に示すように、ゲート電圧VGの印加により約2倍増加した。異常ホール伝導率σAHは正常ホール項を差し引いて導出した。ゲート電圧VGの印加により、キャリアを膜中に誘起することで、強磁性が増強されることが判った。
【実施例4】
【0042】
実施例3で用いた電解液13中の電解質CsClO4の代わりに、電解質Sr(ClO4)2を用いて、実施例3と同様に、電気特性の測定を行った。
図18は、ゲート電圧を印加しない状態と印加した状態でのホール測定の結果について、異常ホール伝導率σAHの磁場依存性を示す図である。横軸は磁場μ0H(T)であり、縦軸は異常ホール伝導率σAH(mΩ−1cm−1)である。測定温度は320Kである。
コバルトドープ二酸化チタン層12中のキャリア濃度は、ゲート電圧VGを印加することにより、7.0×1018cm−3から4.1×1019cm−3へ約6倍増加した。異常ホール伝導率σAHは、図18に示すように、ゲート電圧VGを印加しない状態ではヒステリシスは非常に小さく、0.1mΩ−1cm−1以下の値である。ゲート電圧VGを2V印加することでヒステリシスが明瞭になり、約0.3mΩ−1cm−1まで増加した。これにより、ゲート電圧VGを印加し、キャリアをコバルトドープ二酸化チタン層12中に誘起することで、強磁性が増強されることが判った。
【0043】
図19(A)は、Ti0.9Co0.1O2−δ膜の磁気相図とゲート電圧印加によるキャリア濃度と異常ホール伝導率の変化を示す図であり、図19(B)は、図19(A)のSr(ClO4)2のデータの拡大図である。横軸はキャリア濃度n(cm−3)で、縦軸は異常ホール伝導率σAH(mΩ−1cm−1)である。点線は酸素分圧を変化させてコバルトドープ二酸化チタン膜を作製した場合であり、図19(A)において、黒四角(■)プロットは同一の化学組成の膜で、電解質にCsClO4を用いてゲート電圧VGを印加した場合であり、黒丸(●)プロットは同一の化学組成の膜で、電解質にSr(ClO4)2を用いてゲート電圧VGを印加した場合である。図19(B)において、●プロットがゲート電圧を上昇していったときのデータであり、白三角(△)プロットがゲート電圧を減らしていったときのデータである。
図19から、同一の化学組成Ti0.9Co0.1O2−δ膜において、ゲート電圧の印加の有無により、化学組成を変化させずに、キャリア濃度、異常ホール伝導率を変化させることができることが分かった。
【0044】
以上説明したように、遷移元素ドープ二酸化チタンにゲート電圧を印加することで、遷移元素ドープ二酸化チタンの磁性を室温で制御することができる。これは、今まで、室温と比べて低温のみ実証されていた様々な強磁性半導体素子について、強磁性半導体として遷移元素ドープ二酸化チタンを用いることにより室温状態でも動作可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、強磁性半導体の室温での強磁性制御をゲート電圧で制御することができることとなった。よって、電界効果型デバイスとして例えば磁気センサやスピン輸送素子などのユビキタスな強磁性半導体素子として利用することができる。特に、強磁性半導体として用いた二酸化チタンは化学的にも安定で透明電極として利用することができ、遷移元素ドープ二酸化チタン膜はガラス基板上にスパッタ法を用いて作製することができるので、自動車のフロントガラスへのデバイス搭載なども行えるようになる。
【符号の説明】
【0046】
1,2,3,4:強磁性半導体素子(電界効果型素子)
11:基板
12:遷移元素ドープ二酸化チタン層(コバルトドープ二酸化チタン層)
13:電解液
14:ゲート電極
15:二酸化チタン層
16:ソース電極
17:ドレイン電極
18:絶縁層
19:酸化物層(ゲート酸化物層)
21:電子
22:イオン
23:電気二重層
30:レーザアブレーション装置
31:真空チャンバー
32:基板ホルダー
33:半導体赤外レーザー装置
34:ターゲットホルダー
34a:ターゲット
35:エキシマレーザー
36:導入管
37:RHEEDスクリーン
41,43:フォトレジスト
42:電極部
50:ホールバー
51:棒状部
52:第一の電流端子
53:第二の電流端子
54:第一の電圧端子
55:第二の電圧端子
56:第三の電圧端子
52a,53a,54a,55a,56a:パッド
52b,53b:テーパー部
54b,55b、56b:延設部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、
上記二酸化チタン層上に設けられた電解液と、
上記電解液と接触するように設けられたゲート電極と、
を含む、強磁性半導体素子。
【請求項2】
基板と、
上記基板上に設けられた二酸化チタン層と、
上記二酸化チタン層上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、
上記遷移元素ドープ二酸化チタン層上に設けられた電解液と、
上記電解液と接触するように設けられたゲート電極と、
を含む、強磁性半導体素子。
【請求項3】
前記電解液は、CsCl4、Sr(ClO4)2、KClO4、NaClO4、LiClO4の一以上の電解質を溶媒に溶かしてなる、請求項1又は2に記載の強磁性半導体素子。
【請求項4】
基板と、
上記基板上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、
上記遷移元素ドープ二酸化チタン層上に設けられた酸化物層と、
上記酸化物層に設けられたゲート電極と、
を含む、強磁性半導体素子。
【請求項5】
基板と、
上記基板上に設けられた二酸化チタン層と、
上記二酸化チタン層上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、
上記遷移元素ドープ二酸化チタン層上に設けられた酸化物層と、
上記酸化物層に設けられたゲート電極と、
を含む、強磁性半導体素子。
【請求項6】
前記酸化物層は、AlOx、HfO2、ZrO2、MgOの何れかからなる、請求項4又は5に記載の強磁性半導体素子。
【請求項7】
前記ゲート電極への電圧印加の有無に応じて、前記遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強さが変化する、請求項1、2、4又は5に記載の強磁性半導体素子。
【請求項8】
前記遷移元素ドープ二酸化チタン層上には前記ゲート電極を挟んで隔離してソース電極とドレイン電極とが設けられている、請求項1、2、4又は5に記載の強磁性半導体素子。
【請求項9】
前記遷移元素はコバルトであることを特徴とする、請求項1、2、4又は5に記載の強磁性半導体素子。
【請求項10】
遷移元素ドープ二酸化チタン層とゲート電極との間に電解液を挟みこんでなる電界効果型トランジスタを用い、
上記ゲート電極にゲート電圧を印加して上記遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強度を変化させる、強磁性半導体の制御方法。
【請求項11】
遷移元素ドープ二酸化チタン層とゲート電極との間に酸化物を挟みこんでなる電界効果型トランジスタを用い、
上記ゲート電極にゲート電圧を印加して上記遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強度を変化させる、強磁性半導体の制御方法。
【請求項12】
前記遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強度が室温下で変化することを特徴とする、請求項10又は11に記載の強磁性半導体の制御方法。
【請求項13】
前記遷移元素はコバルトである、請求項10又は11に記載の強磁性半導体の制御方法。
【請求項1】
基板と、
上記基板上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、
上記二酸化チタン層上に設けられた電解液と、
上記電解液と接触するように設けられたゲート電極と、
を含む、強磁性半導体素子。
【請求項2】
基板と、
上記基板上に設けられた二酸化チタン層と、
上記二酸化チタン層上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、
上記遷移元素ドープ二酸化チタン層上に設けられた電解液と、
上記電解液と接触するように設けられたゲート電極と、
を含む、強磁性半導体素子。
【請求項3】
前記電解液は、CsCl4、Sr(ClO4)2、KClO4、NaClO4、LiClO4の一以上の電解質を溶媒に溶かしてなる、請求項1又は2に記載の強磁性半導体素子。
【請求項4】
基板と、
上記基板上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、
上記遷移元素ドープ二酸化チタン層上に設けられた酸化物層と、
上記酸化物層に設けられたゲート電極と、
を含む、強磁性半導体素子。
【請求項5】
基板と、
上記基板上に設けられた二酸化チタン層と、
上記二酸化チタン層上に設けられた遷移元素ドープ二酸化チタン層と、
上記遷移元素ドープ二酸化チタン層上に設けられた酸化物層と、
上記酸化物層に設けられたゲート電極と、
を含む、強磁性半導体素子。
【請求項6】
前記酸化物層は、AlOx、HfO2、ZrO2、MgOの何れかからなる、請求項4又は5に記載の強磁性半導体素子。
【請求項7】
前記ゲート電極への電圧印加の有無に応じて、前記遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強さが変化する、請求項1、2、4又は5に記載の強磁性半導体素子。
【請求項8】
前記遷移元素ドープ二酸化チタン層上には前記ゲート電極を挟んで隔離してソース電極とドレイン電極とが設けられている、請求項1、2、4又は5に記載の強磁性半導体素子。
【請求項9】
前記遷移元素はコバルトであることを特徴とする、請求項1、2、4又は5に記載の強磁性半導体素子。
【請求項10】
遷移元素ドープ二酸化チタン層とゲート電極との間に電解液を挟みこんでなる電界効果型トランジスタを用い、
上記ゲート電極にゲート電圧を印加して上記遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強度を変化させる、強磁性半導体の制御方法。
【請求項11】
遷移元素ドープ二酸化チタン層とゲート電極との間に酸化物を挟みこんでなる電界効果型トランジスタを用い、
上記ゲート電極にゲート電圧を印加して上記遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強度を変化させる、強磁性半導体の制御方法。
【請求項12】
前記遷移元素ドープ二酸化チタン層の強磁性の強度が室温下で変化することを特徴とする、請求項10又は11に記載の強磁性半導体の制御方法。
【請求項13】
前記遷移元素はコバルトである、請求項10又は11に記載の強磁性半導体の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−232562(P2010−232562A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80616(P2009−80616)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
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