説明

弾性ローラ、弾性ローラの製造方法および電子写真装置

【課題】 本発明は、金属製もしくは樹脂製の軸心体と、該軸心体の外周上に少なくとも1層以上の弾性層を設けることよりなる弾性ローラにおいて、高いローラ精度と高生産性を併せ持つ弾性ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】 金属製もしくは樹脂製の軸心体と、該軸心体の外周上に少なくとも1層以上の弾性層を有する弾性ローラにおいて、軸方向のゴム弾性層の長さをL(mm)、ゴム弾性層の軸方向の両端それぞれ5%を除いて9分割し、切り口の各面において1°毎に測定した外径の平均をRα(mm)(αは1〜10の整数)とし、分割した2部分間の平均外径差を△Rxy=Rx−Ryとした場合に、以下に示す式(I)および(II)、を満たすことを特徴とする弾性ローラを提供する。
式(I) |△Rxy|≦ 5.0×10-5 × L (x=1〜9、y=x+1)
式(II) |R1−R10|≦ 2.0×10-4 × L

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に複写機、プリンタ、ファクシミリ等の受信装置等の電子写真方式を採用した装置(電子写真装置とも記載する)にて使用される弾性ローラ、および弾性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真装置には、その目的にあった弾性ローラが一般に用いられている。例えば、一成分現像方式の電子写真装置では、互いに圧接されている現像ローラから感光体へ現像剤を移動させて静電潜像を顕像化し現像がなされる。
【0003】
電子写真装置に用いられる弾性ローラは、ゴム材料として液状ゴム、固形ゴム、発泡ゴム等を用い、円筒型内での型成形、各形状の型に入れて熱加硫した後の研磨加工、押出し成形、研磨加工等を経て円筒状に成形されているものが多く用いられている。また、電子写真プロセスでは、画像の高画質化やフルカラー化に伴い、画像を形成する現像剤(トナー)は粒径が微細化し、その他にも、画質に影響を与える感光体周辺のゴムローラの外径精度は、非常にバラツキの小さいものが要求されている。
【0004】
しかしながら、外径精度の良いゴムローラを安定して成形することは難しい。外径精度の良いローラを安定的に成形する方法の1つとして、芯金上にゴム成形後、研磨加工する方法がある。しかし、トナーの低融点化・重合化に伴い、非常に脆いトナーに対してゴム硬度が非常に低い(軟らかい)ゴムローラが必要とされており、研磨加工では、ゴム硬度が低いとゴム表面の研磨面に研磨跡が残り、そのゴムローラを電子写真プロセスで使用すると画像にスジ模様が発生してしまう。
【0005】
また、液状ゴム、固形ゴム、発泡ゴム等を用いて円筒型内で熱加硫成形する方法がある。その1つに、保温した熱板に型を装着し、そこに材料を注型する方法がある。しかし、熱板成形では、筒型と熱板の接触安定性に問題があり、型全体に毎回安定した熱を供給することが容易ではない。そのため、型に安定した熱の供給ができないとその熱で加硫するゴムローラの外径寸法は安定しない。
【0006】
また、押出し機で押出したゴムを芯金に挿入したり、芯金上にクロスヘッドで押出し機等で押出したゴムを型内で発泡成形する場合も、型の周方向・長手方向の温度バラツキ、繰り返し時の型の微小な温度変化が原因で発泡ムラが起こり、その結果、ゴムローラの外径精度が悪くなる傾向にある。
【0007】
これらのゴムローラを、電子写真プロセスを使用した複写機・レーザービームプリンタの帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ、加圧ローラ等に使用した場合、粒径が小さくて硬さも軟らかくなったトナーでは、高画質な画像に対応できない。
【0008】
特に現像ローラでは、画像の高画質化のため、感光ドラム上のトナーコート量の均一化が必要とされ、従来より現像ローラによる感光ドラムヘの当接圧力が低くなっている。その結果、現像ローラの低硬度化・導電化に加え、従来の外径精度・外径振れ精度では感光ドラム上に十分摩擦帯電したトナーを薄層で且つ均一に形成することが難しくなっている。つまり、その状態で複写機やレーザービームプリンタでプリントアウトすると、感光ドラム上で不均一な厚みや不均一な帯電量のトナーが原因で、耐久枚数を増やすと共に画像に濃度ムラや白スジを出す問題となる。この現象は、特にマグネタイトを含有しないネガ系カラートナーにおいては、初期から帯電電荷付与性・均一塗布性が悪くなる問題があった。
【0009】
この対策として、従来通りの導電性・微小な圧縮歪性に加え、外径精度・振れ精度の高精度化した現像ローラが提案されている。しかしながら、現像ローラの製造方法として、高精度の金型を用いても加熱温度のバラツキ(つまり、型内の材料の硬化温度のバラツキ)の要因があり、長手方向と周方向にゴム物性が均一であり、且つ、外径精度・振れ精度の高精度化した現像ローラを安定して生産することが非常に難しい。
【0010】
例えば、金型を低温から加熱していく温度上昇時の型温を数段階に分割し、その温度測定結果に基づいてフィードバック制御を行い、電力調節して加熱することによって常に一定の連続的な温度上昇履歴を保ちながら成形することで、外径精度の高いゴムローラの製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、本提案の方法では装置が複雑となると共に、より高精度なローラとするためには温度上昇を制御するためにゆっくり昇温する必要があり、従来の方法に対し生産性が低下する点が課題となる。
【0011】
また、生産性向上としてはゴム材料の硬化特性に関するものが多いが、一般的に生産性向上と成型の寸法精度(外径寸法)は両立し難い関係にある。例えば、液状シリコーンゴムの成型方法として、加硫曲線における誘導時間を規定することにより短時間で成型することができ、量産性が高い成型方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。しかし、本提案においてもローラの寸法精度に関しては十分に考慮されていない。
【特許文献1】特開2003−39450号公報
【特許文献2】特開平06−226753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明においては、以上の様な状況を鑑み、濃度ムラが少なく高質な画像が継続して得られるローラの長手方向に外径精度の高い弾性ローラ、また、高いローラ精度と高生産性を併せ持つ弾性ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明によれば、弾性ローラの軸方向の外径精度を急激な変化がなく全体的に一定レベルに制御することにより、具体的には、ローラ長手方向のある10点における平均外径につきその隣り合う2点間の平均外径の差が式(I)を満たし、かつ前記10点のうち両端に相当する位置間の平均外径の差(R1−R10)が式(II)を満たすようにすることにより、高精度の弾性ローラとすることが出来る。例えば、この弾性ローラを現像ローラに用いた場合には、濃度ムラが少なく、かつその高質な画像が継続して得ることが出来る。
【0014】
式(I) |△Rxy|≦ 5.0×10-5 × L (x=1〜9、y=x+1)
式(II) |R1−R10|≦ 2.0×10-4 × L
(ここで、軸方向のゴム弾性層の長さをL(mm)、ゴム弾性層の軸方向の両端それぞれ5%を除いて9分割した各位置において1°毎に測定した外径の平均をRα(mm)(αは1〜10の整数)とし、2部分間の平均外径差を△Rxy=Rx−Ryとした)。
【0015】
また、上記のような外径精度の高い弾性ローラを得るためには、金型にゴム材料を注入し、加熱し、硬化するまでのゴム材料の温度履歴を、より均一にすることが重要である。また、金型を用いて成型する場合には、生産性の観点からゴム材料の注入前に金型を予熱することが行われる。金型を予熱することにより、ゴム材料の温度を短時間で上げることを可能とする。しかしながら、常温であるゴム材料を高温の金型に注入される過程で、金型からゴム材料への熱移動が生じるため、結果としてゴム材料の温度分布が不均一となってしまう。その状態から加熱した場合、その温度分布等が影響し、外径精度の高い弾性ローラは得られ難い。
【0016】
逆に、ゴム材料と金型とを共に常温(例えば25℃)の状態で注入を行い均一な加熱方法を用いた場合には、比較的精度の高い弾性ローラを得ることが出来る。しかし、このような方法は、前述の通り、生産性との両立が難しいのが実際のところである。
【0017】
よって、生産性を向上するためには、硬化時間を短くすることが必要であり、ゴム材料の硬化速度、成型装置の加熱能力等による諸策を講じるのが有効である。特に、注入されるゴム材料、金型、硬化させる温度がお互いに近い温度に設定することにより、注入によるゴム材料の温度ムラ発生を抑えることが可能であり、かつ、粘度上昇等の問題が生じない範囲で温度を高くすることにより生産性の両立を図ることが可能である。
【0018】
すなわち、予熱したゴム材料を、予熱された型に注入して硬化させることを特徴とする弾性ローラの製造方法により、高いローラ精度と高生産性を併せ持つ弾性ローラとなる。例えば現像ローラに用いると濃度ムラが少なく高質な画像を継続して得ることが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、金属製もしくは樹脂製の軸心体と、該軸心体の外周上に少なくとも1層以上の弾性層を有する弾性ローラにおいて、軸方向のゴム弾性層の長さをL(mm)、ゴム弾性層の軸方向の両端それぞれ5%を除いて9分割し、切り口の各面において1°毎に測定した外径の平均をRα(mm)(αは1〜10の整数)とし、分割した2部分間の平均外径差を△Rxy=Rx−Ryとした場合に、上記式(I)および(II)、を満たすことにより、濃度ムラが少なく高質な画像が継続して得られるローラの長手方向に外径精度の高い弾性ローラを提供する。
【0020】
また、金属製もしくは樹脂製の軸心体と、該軸心体の外周上に少なくとも1層以上の弾性層を有する弾性ローラの製造方法であって、予熱したゴム材料を、予熱された型に注入し、該型内で該ゴム材料を硬化せしめて該弾性層を形成する工程を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者らは、上述した従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、金属製もしくは樹脂製の軸心体と、該軸心体の外周上に少なくとも1層以上の弾性層を有する弾性ローラにおいて、軸方向のゴム弾性層の長さをL(mm)、ゴム弾性層の軸方向の両端それぞれ5%を除いて9分割し、切り口の各面において1°毎に測定した外径の平均をそれぞれRα(mm)(αは1〜10の整数)とし、分割した2部分間の平均外径差を△Rxy=Rx−Ryとした場合に、上記式(I)、(II)、を満たすことを特徴とする弾性ローラ、および、金属製もしくは樹脂製の軸心体と、該軸心体の外周上に少なくとも1層以上の弾性層を有する弾性ローラの製造方法であって、予熱したゴム材料を、予熱された型に注入し、該型内で該ゴム材料を硬化せしめて該弾性層を形成する工程を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法を見出した。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の弾性ローラ1は、例えば、図1および2に示すように、円柱状または中空円筒状の導電性基体11外周面に弾性体層(基層)12が固定された弾性ローラから構成される。他に、図3および4に示すように、弾性体層12の外周面に樹脂層(表層)13が積層された弾性ローラから構成される。
【0023】
前記導電性基体11は、弾性ローラの電極および支持部材として機能するもので、例えばアルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金、クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄、合成樹脂などの導電性の材質で構成される。導電性基体の外径は通常4〜10mmの範囲にある。
【0024】
弾性体層12は、ゴム材の成型体により形成される。上記原料ゴムとしては、従来より弾性ローラに用いられている種々のゴムを用いることができる。具体的には、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム等のゴムを単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等が挙げられる。これらのシリコーンゴムの重合度は、3000〜15000の範囲にあることが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法では、ゴムローラの成型方法として、型に注入される前のゴム材料を予熱して、かつ予熱された型に注入して硬化させることが必要である。よって、硬化時間をコントロールし易い付加型シリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0027】
付加型シリコーンゴムとは、一般的に、室温硬化型シリコーンゴム(RTVシリコーンゴム)や、低温硬化型シリコーンゴム(LTVシリコーンゴム)と呼ばれものなどを指し、主剤と硬化剤の2液を混合して用いられるタイプがある。RTVシリコーンゴムは、硬化前は液状あるいはペースト状をしており、主剤に硬化剤を加えることにより、室温で硬化反応が進行してゴム弾性体となるシリコーンゴムである。また、LTVシリコーンゴムは、作業工程で使用し易いように、硬化剤を加えた後、常温でのポットライフが長く、使用時に80〜150℃に加熱することにより急速に硬化が進むタイプのシリコーンゴムである。なお、本発明においては、LTVシリコーンゴムを好ましく用いることが出来る。
【0028】
また、そのゴム材料の予熱方法としては特に制限がなく、混合前のゴム材料をそれぞれ加熱しておく方法、材料ゴムを混合後引き込んだ部分で一定時間予熱する方法、および注入ノズルに加熱させる機構をつけ注入時のゴム材料を加熱する方法等、適宜選択および組合せることが出来る。言い換えれば、金型内へ均一に注入することが可能であれば、いつ、どのように加熱してもよい。その加熱方法については、装置の特徴、およびゴム材料の特性から適した方法を用いればよく、特に制限はない。
【0029】
ここでは、以下のようないくつかの手法を例示することが出来る。
【0030】
2液タイプの液状ゴム(それぞれをA液、B液とする)を混合し、計量した後に、ノズルから型へ注入する装置3の簡単な模式図を図5に示す。
【0031】
ゴム材料A液(容器14)、ゴム材料B液(容器15)は指定の比率で計量され、例えばスタティックミキサーなどの混合装置16を用いて両液を十分に混合した後、三方弁17を経て計量部分18にゴムを引き込み、また三方弁17を切替えた後、必要な充填量を計量部分18より押し出し、注入ノズル19より金型および駒20へゴム材料が注入され、一定時間硬化されて弾性ローラが得られる。
【0032】
具体的な加熱方法の例としては、以下のようなものがあげられる。
(1)注入ノズル19に加熱させる機構をつけることにより、注入される前のゴム材料を予熱する
(2)計量部分18(ゴム材料を一時溜める部分)を持ち、そこでゴム材料を一定時間予熱する
(3)混合前のゴム材料14、15をそれぞれ加熱した後で、混合して注入する
その予熱する温度は、ゴム材料特性から考えて型温度より低い温度が好ましい
予熱された型温度T0(℃)、注入される直前の材料温度T1(℃)の関係が式(III)を満たすことが好ましい:
式(III) 10≦T0−T1≦60
ここで、T0(℃)は、型内面に熱電対を貼り付け直接測定した。同じく、T0(℃)は、注入ノズルから出るゴム材料を熱電対を用いて直接測定した。T0−T1(℃)が10℃未満の場合、予熱や加熱を必要以上に均一に行う必要が出てくる。特にゴム材料を均一な履歴で速やかに一定温度に加熱しておくことが難しく、逆に安定した温度履歴が得られ難くなる。また、ゆっくり一定温度まで加熱した場合には、型内注入後の硬化時間が長くなり生産性との両立が困難となる。T0とT1を同じ温度に設定した場合、予熱されたゴム材料の温度履歴が均一でない場合、硬化の進行具合にバラツキが生じており、この時、予熱状態で進む硬化スピードと、型内で進む硬化スピードに差がないため、いかに型内注入後に均一に加熱し硬化させようとも、注入前の温度履歴が影響し、全体としても不安定な温度履歴となり、外形寸法の精度も悪くなる。逆に、T0−T1(℃)が60℃を超える場合には、注入後の材料の加熱に時間がかかるため、生産性との両立が難しくなる。
【0033】
さらに、予熱する時間が長い場合、また予熱後に注入するまで時間がかかる機構となる場合には、ゴム材料の硬化が相対的に遅いものしか用いることができなくなるケースがある。よって、本発明に好ましいゴム材料としては、前述の通り、混合後(または昇温後)注入が完了するまでは硬化が始まらず、金型内で硬化が始まったら短時間で必要な硬化が完了するものとなる。時間をコントロールし易い付加型シリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0034】
具体的には、注入される直前のゴム材料温度T1(℃)に関し、キュラストメーターV
型で測定した加硫曲線より求める特性値との関係が式(IV)、(V)を満たすことが好まし
い:
式(IV) 30≦t0.1(T0)≦800
式(V) 80≦t0.1(T0−10)≦2000
ここで、上記キュラストメーターV型で測定した加硫曲線より求める特性値とは、t0.1を用いている。t0.1とは、キュラストメーターを用いてある設定温度Tで得られた架橋曲線において、架橋が完了してトルク値が最大となったところのトルク値をNmaxとし、架橋開始からN0.1=Nmax×0.1のトルク値に達するまでの時間である。また、設定温度Tで測定されたt0.1の値を、t0.1(T)と表す。例えば、120℃で得られたt0.1の値を、t0.1(120℃)と表す。
【0035】
また、キュラストメーターは、オリエンテック社製のキュラストメーターV型で測定した値を用いたが、JIS準拠のキュラストメーターであれば問題ない。
【0036】
t0.1(T0)が30秒未満の場合には、ゴム材料の注入時に粘度上昇してしまう等の不具合が生じ、逆に800秒を超える場合には、金型内へ注入後も硬化がなかなか始まらず生産性の向上が得られない。また、作業性と生産性との両立の点から、t0.1(T0)は60秒以上であり450秒以下であることが好ましい。
【0037】
t0.1(T0-10)は、温度履歴およびゴム材料中の温度バラツキを考慮し、好ましい範囲として設定される。t0.1(T0)が80秒未満の場合には、金型温度に対しゴム材料の温度を10℃低くしても硬化が始まるまでの時間(ポットライフ)が短いままで、装置内に残る材料が硬化してしまうなどの問題が生じ易い。逆に2000秒を超える場合には、熱伝導による温度差の影響を受け易く、金型内へ注入後も硬化がなかなか始まらず生産性の向上が得られないと共に、十分な精度を得ることが難しくなる。また、得られるローラ精度と生産性のバランスの点から、t0.1(T0−10)は100秒以上であり1800秒以下であることが好ましい。
【0038】
以上のようにして、成型された弾性ローラは寸法精度が高く、各用途に好ましく用いられる。特に、その外径寸法を測定すると、軸方向のゴム弾性層の長さをL(mm)、ゴム弾性層の両端それぞれ5%を除いて9分割した各位置において1°毎に測定した平均外径をRα(mm)とし、2部分間の平均外径差を△Rxy=Rx−Ryとした場合に、式(V)、(II)、を満たすことを特徴とする弾性ローラとなる。例えば、ゴム弾性層の長さL
が240mmである場合には、一方のゴム弾性層端部を0mmとすると、R1、R2、…、R10は、それぞれ12mm、36mm、…、228mmの位置における平均外径となる。
【0039】
本発明においては、1°毎に1周分、すなわち360点の測定値を相加平均して求める。
【0040】
式(I)を満たさないことが一つでもある場合、例えば現像ローラに用いた場合にはその付近において局所的な濃度ムラが目立つこととなる。帯電ローラに用いた場合には感光体表面との接触において密で均一な状態を維持出来ず、必要な適切なニップ幅、表面状態が安定して得られず帯電効率の低下、帯電ムラによる濃度ムラが見られる。
【0041】
また、式(II)を満たさない場合、例えば現像ローラに用いた場合には画像全体において濃度ムラが見られるようになる。同様に、帯電ローラに用いた場合には感光体表面との接触において左右差(長手方向での違い)が見られ、帯電効率の違いや帯電ムラにより左右で濃度の異なる画像が見られる。
【0042】
更に、本発明の弾性体層には、導電剤、非導電性充填剤、架橋剤、触媒、分散促進剤等の各種添加剤が適宜配合されてもよい。
【0043】
導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼などの各種導電性金属または合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫−酸化インジウム固溶体などの各種導電性金属酸化物、これらの導電性材料で被覆された絶縁性物質などの微粉末を用いることができる。これらのうちカーボンブラックが比較的容易に入手でき良好な帯電性が得られる。分散手段としては、ロールニーダー、バンバリーミキサー、ボールミル、サンドグラインダー、ペイントシェーカーなどを適宜利用すればよい。
【0044】
その他、弾性体層に導電性を付与する手段として、導電性高分子化合物を添加する場合もある。例えば、ホストポリマーとして、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェニン、ポリ(p−フェニレンオキシド)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリ(p−フェレンビニレン)、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)、ポリビニルカルバゾール、ポリジアセチレン、ポリ(N−メチル−4−ビニルピリジン)、ポリアニリン、ポリキノリン、ポリ(フェニレンエーテルスルフォン)などを使用し、これらにドーパントしてAsF5、I2、Br2、SO3、Na、K、ClO4、FeCl3、F、Cl、Br、I、Kr等の各イオン、Li、TCNQ等をドープしたものが用いられる。
【0045】
非導電性充填剤としては、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0046】
架橋剤としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイドなどを挙げることができる。液状シリコーンゴムを用いる場合は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを架橋成分として、白金系触媒が用いられる。
【0047】
また、弾性体層の厚さは、均一なニップを確保するために、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましい。一方、ゴムの成型コストを低く抑えるために、6.0mm以下が好ましく、5.0mm以下がより好ましい。
【0048】
前述の通り、弾性体層12の外周面に樹脂層(表層)13が積層されてもよい。樹脂層13を形成する成分としては、特に限定されるものではないが、自己膜補強性、トナー帯電性等の観点から特にポリアミド樹脂やウレタン樹脂、またはウレア樹脂等が好ましく用いられる。
【0049】
ウレタン樹脂としては、例えばポリウレタンプレポリマーを架橋反応させる方法で得たもの、ポリオールに導電性材料を配合し、このポリオールをワン・ショット法にてポリイソシアネートと反応させる方法で得たものなどがあげられる。
【0050】
この場合、ポリウレタンを得る際に用いられるポリヒドロキシル化合物としては、一般の軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマー製造に用いられるポリオール、例えば、末端にポリヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及び両者の共重合物であるポリエーテルポリエステルポリオールが挙げられるほか、ポリブタジエンポリオールやポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール、ポリオール中でエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる所謂ポリマーポリオール等の一般的なポリオールを使用することができる。また、イソシアネート化合物としては、同様に一般的な軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマー製造に使用されるポリイソシアネート、即ち、トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの混合物や変性物、例えば部分的にポリオール類と反応させて得られるプレポリマー等が用いられる。
【0051】
更に、本発明の樹脂層には、導電剤、非導電性充填剤、架橋剤、触媒、分散促進剤等の各種添加剤が適宜配合される。それらは、弾性体層について示したものを用いることが出来る。
【0052】
なお、樹脂層の厚さは、十分な耐摩耗性を確保するために、3μm以上が好ましい。一方、均一な導電性を実現するために、100μm以下が好ましい。特に本発明においては、外形寸法が揃った弾性層12を形成している特徴を活かすためには、30μm以下にすることがより好ましい。3μm未満では均一な塗布が難しく、100μmより大きい場合では変形性に対する影響が大きくなり好ましくない。
【0053】
樹脂原料の塗布方法は、特に限定されないが、エアースプレー、ロールコート、カーテンコート、ディッピング等の方法により樹脂原料を、弾性体層の表面に塗布する。その後、必要に応じ、加熱処理を行う場合がある。
【0054】
図6は、本発明の弾性ローラを現像ローラとして用いた画像形成装置4の概略構成を示す断面図である。潜像担持体としての感光ドラム21が矢印A方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電装置22によって一様に帯電され、感光ドラム21に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、画像形成装置本体に対し着脱可能なプロセスカートリッジ(図示せず)に保持される現像装置24によって現像剤たるトナーを付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
【0055】
現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム21上のトナー像は、転写ローラ29によって記録媒体である紙33に転写される。トナー像を転写された紙33は、定着装置32により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0056】
一方、転写されずに感光ドラム上21上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード30により掻き取られ廃トナー容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21は上述作用を繰り返し行う。
【0057】
現像装置24は、一成分現像剤として非磁性トナー28を収容した現像装置34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持体としての現像ローラ25とを備え、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0058】
尚、現像ローラ25は感光ドラム21と当接幅をもって接触している。現像装置24においては、弾性ローラ26が、現像容器34内で、弾性ブレード27の現像ローラ25表面との当接部に対し現像ローラ25回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。
【0059】
弾性ローラ26の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や芯金上にレーヨン、ナイロン等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ25へのトナー28供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。本実施形態においては、芯金上にポリウレタンフォームを設けた直径16mmの弾性ローラ26を用いた。
【0060】
この弾性ローラ26の現像ローラ25に対する当接幅としては、1〜8mmが有効であり、また、現像ローラ25に対してその当接部において相対速度をもたせることが好ましく、本実施形態においては、当接幅を3mmに設定し、弾性ローラ26の周速として現像動作時に50mm/s(現像ローラ25との相対速度は130mm/s)となるように駆動手段(図示せず)により所定タイミングで回転駆動させている。
【0061】
以上に説明した様に、本発明の弾性ローラの製造方法においては、注入される前のゴム材料を予熱して、かつ予熱された型に注入して硬化させることを特徴とする弾性ローラの製造方法を用いることにより、高いローラ精度と高生産性を併せ持つ弾性ローラとなる。よって、電子写真装置等における、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ、加圧ローラ等の弾性ローラとして好適に使用できる。特に、現像ローラに用いると、濃度ムラが少なく高質な画像を継続して得ることが出来る。
【実施例】
【0062】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。電子写真装置等で使用される弾性ローラ、例えば、帯電ローラ、転写ローラ、加圧ローラ等の帯電部材、現像ローラ等の現像部材などとして好適に使用できる。なお、以下特に明記しない限り、試薬等は市販の高純度品を用いた。
【0063】
[実施例1]弾性ローラ1
軸芯体としてSUS製の芯金にニッケルを施し、さらに接着剤を塗布、焼き付けしたものを用いた。この軸芯体を金型に配置し、液状シリコーンゴム1を、装置内で混合後、液溜め部分にて120℃まで加熱した後、120℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入した。注入される直前の材料温度は、115℃であった。続いて、金型を120℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化し、冷却した後に脱型することで、弾性体層を軸芯体の外周に設けた。
【0064】
液状シリコーンゴム1は、2液タイプのものを使用した。A液は、25℃における粘度が12000Pa・sの末端ビニル基封鎖の直鎖状ポリジメチルシロキサン40重量%と、25℃における粘度が35Pa・sであり1つのビニル基を有する分岐ポリシロキサンセグメントと、二官能性のジメチルシロキサンを約200個連続して有する直鎖状オイルセグメントとからなるブロックポリマー60重量%とからなるポリシロキサン混合物に、白金系触媒を加え、さらに無機微粉体である耐熱性付与剤としてシリカ粉体を1.5重量%、導電性付与剤としてカーボンブラックを25重量%、を混合した付加型シリコーンゴム組成物である。また、B液は、25℃における粘度が12000Pa・sの末端ビニル基封鎖の直鎖状ポリジメチルシロキサン40重量%と、25℃における粘度が35Pa・sであり1つのビニル基を有する分岐ポリシロキサンセグメントと、二官能性ジメチルシロキサンを約200個連続して有する直鎖状オイルセグメントとからなるブロックポリマー60重量%とからなるポリシロキサン混合物に、架橋剤として1分子中にケイ素結合水素原子を2個以上有したオルガノシロキサンと硬化遅延剤を加え、無機微粉体である耐熱性付与剤としてシリカ粉体を1.5重量%、導電性付与剤としてカーボンブラックを25重量%、を混合した付加型シリコーンゴム組成物である。このA液とB液とをほぼ1:1に混合して用いた。
【0065】
続いて、樹脂成分として、ポリウレタン樹脂(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:ニッポラン5033)を、固形分12%の有機溶剤混合溶液となるよう調整したものに、硬化剤としてイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートL)を、樹脂成分100質量部に対し18質量部添加し、十分に撹拌したものを樹脂原料液とした。この樹脂原料液中に、上記の弾性体層が設けられた軸芯体を浸漬してコーティングした後、引上げて乾燥させ、145℃にて60分間加熱処理することで、樹脂層を弾性体層の外周に設けた。以上の様にして、軸方向のゴム弾性層の長さが、L=240(mm)である弾性ローラ1を作製した。
【0066】
また、実施例2〜15および比較例1〜5の、弾性ローラ2〜20は、表1の条件にてそれぞれ作製した。
【0067】
[実施例2]弾性ローラ2
液溜め部分にて110℃まで加熱し、注入される直前の材料温度は105℃であった以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ2を作製した。
【0068】
[実施例3]弾性ローラ3
液状シリコーンゴム2(液状シリコーンゴム1とは、架橋材、白金触媒、硬化遅延剤の量を変え、硬化速度を変えたもの)を用いて、液溜め部分にて94℃まで加熱し、注入される直前の材料温度は90℃であった以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ3を作製した。
【0069】
[実施例4]弾性ローラ4
液状シリコーンゴム3(液状シリコーンゴム1、2とは、架橋材、白金触媒、硬化遅延剤の量を変え、硬化速度を変えたもの)を用いて、液溜め部分にて70℃まで加熱し、注入される直前の材料温度は65℃であった以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ4を作製した。
【0070】
[実施例5]弾性ローラ5
液溜め部分にて115℃まで加熱した後、100℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入し、金型を100℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ5を作製した。この時、注入される直前の材料温度は110℃であった。
【0071】
[実施例6]弾性ローラ6
液状シリコーンゴム2を用いて、液溜め部分にて72℃まで加熱した後、140℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入し、続いて、金型を140℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ6を作製した。この時、注入される直前の材料温度は70℃であった。
【0072】
[実施例7]弾性ローラ7
液状シリコーンゴム2を、A/B別液の状態で100℃まで加熱し、120℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入し、続いて、金型を120℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ7を作製した。この時、注入される直前の材料温度は90℃であった。
【0073】
[実施例8]弾性ローラ8
液状シリコーンゴム2を装置内で混合後、金型へ注入するノズル部分で90℃まで加熱し、120℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入し、続いて、金型を120℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ8を作製した。この時、注入される直前の材料温度は90℃であった。
【0074】
[実施例9]弾性ローラ9
液状シリコーンゴム3を装置内で混合後、金型へ注入するノズル部分で60℃まで加熱し、100℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入し、続いて、金型を100℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ9を作製した。この時、注入される直前の材料温度は60℃であった。
【0075】
[実施例10]弾性ローラ10
液状シリコーンゴム4(液状シリコーンゴム1、2、3とは、架橋材、白金触媒、硬化遅延剤の量を変え、硬化速度を変えたもの)を用いて、液溜め部分にて110℃まで加熱し、注入される直前の材料温度は105℃であった以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ10を作製した。
【0076】
[実施例11]弾性ローラ11
液状シリコーンゴム5(液状シリコーンゴム1、2、3、4とは、架橋材、白金触媒、硬化遅延剤の量を変え、硬化速度を変えたもの)を用いて、液溜め部分にて132℃まで加熱した後、160℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入し、金型を160℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ11を作製した。この時、注入される直前の材料温度は125℃であった。
【0077】
[実施例12]弾性ローラ12
液状シリコーンゴム6(液状シリコーンゴム1、2、3、4、5とは、架橋材、白金触媒、硬化遅延剤の量を変え、硬化速度を変えたもの)を用いて、液溜め部分にて94℃まで加熱した後、100℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入し、金型を100℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ12を作製した。この時、注入される直前の材料温度は90℃であった。
【0078】
[実施例13]弾性ローラ13
ウレタンゴム1(日本ポリウレタン製)を、A/B別液の状態で125℃まで加熱し、140℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入し、続いて、金型を140℃で加熱してウレタンゴムを加硫硬化した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ13を作製した。この時、注入される直前の材料温度は120℃であった。
【0079】
[実施例14]弾性ローラ14
液溜め部分にて104℃まで加熱し、注入される直前の材料温度は100℃であった以外は、実施例13と同様にして弾性ローラ14を作製した。
【0080】
[実施例15]弾性ローラ15
実施例2と同様にして、軸方向のゴム弾性層の長さが、L=330(mm)である弾性ローラ15を作製した。
【0081】
[比較例1]弾性ローラ16
液状シリコーンゴム1を型内に注入されるまで加熱せず、注入される直前の材料温度は25℃であった以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ16を作製した。
【0082】
[比較例2]弾性ローラ17
実施例16と同様にして、軸方向のゴム弾性層の長さが、L=330(mm)である弾性ローラ17を作製した。
【0083】
[比較例3]弾性ローラ18
液状シリコーンゴム1を型内に注入されるまで加熱せず、100℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入し、金型を100℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ18を作製した。この時、注入される直前の材料温度は25℃であった。
【0084】
[比較例4]弾性ローラ19
液状シリコーンゴム7(液状シリコーンゴム1〜6とは、架橋材、白金触媒、硬化遅延剤の量を変え、硬化速度を変えたもの)を型内に注入されるまで加熱せず、120℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入し、金型を120℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ19を作製した。この時、注入される直前の材料温度は25℃であった。
【0085】
[比較例5]弾性ローラ20
ウレタンゴム1を型内に注入されるまで加熱せず、140℃に予熱された金型内に形成されたキャビティに注入し、金型を140℃で加熱してシリコーンゴムを加硫硬化した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ20を作製した。この時、注入される直前の材料温度は25℃であった。
【0086】
予熱された型温度T0(℃)、注入される直前の材料温度T1(℃)は、下記のように測定した値を用いた。T0(℃)は、型内面に熱電対を、長手方向に両端および中央の3点でそれぞれ周方向に120℃ずつ各3点、つまり計9点に貼り付け直接測定した値を、相加平均して求めた値を示した。同じく、T1(℃)は、注入ノズルから出るゴム材料に対し熱電対を用いて3回繰り返して直接測定した値を、相加平均して求めた値を示した。
【0087】
[特性の評価]
以上の様にして得られた弾性ローラの外径寸法の均一性につき以下の通り評価し、その結果を表1に合わせて示した。
【0088】
弾性ローラの外径寸法の均一性は、上記条件にて10本のローラを成型し、約20μmの樹脂層を形成した状態で、外径をレーザー測定機で周方向に1°ずつ回転させて測定し、計360の測定値を相加平均し、その点での平均外径値とした。各実施例、比較例において、10本ずつそれぞれの△Rxy、R1−R10を計算し、その単純相加平均を表1に示した。
【0089】
繰り返し測定した結果、同箇所の繰り返し測定精度は、10回測定ですべて3μm以内に収まっている。また、成型したローラ間における繰り返し精度も、本発明の効果を検証するには十分な安定度であった。
【0090】
ローラ精度の評価は、式(I)および式(II)を満たすものを良好とした。式(I)およ
び式(II)に対して左辺/右辺の値を計算し、いずれも0.6以下の場合には非常に高精度であり◎とし、いずれも1.0以下の場合には○とした。式(I)および式(II)のどちら
か一方でも満たさない場合は精度不十分で×とした。
【0091】
式(I)の左辺/右辺 = |△Rxy|/(5.0×10-5 ×L)
式(II)の左辺/右辺 = |R1−R10|/(2.0×10-4 ×L)
画像の評価は、作製した弾性ローラを、図6に示す画像形成装置の現像ローラとして使用して画像上の問題有無にて判断した。濃度ムラが目立たず良好なものを◎、濃度ムラは見られるが軽微で画像上問題がないものを○、やや濃度ムラが目立ち画像に影響するものを△、ひどい濃度ムラや、色抜け、明らかな不良箇所のあるものを×とし、それぞれ初期画像について評価を行った。
【0092】
生産性については、主に次の2点に注目し評価した。1点は成型後の硬化時間を従来の方法と比べたときの評価、もう1点は一定本数の成型・硬化を繰り返し、装置のライン上における一部硬化や詰まり等の不具合の有無の評価を行った。硬化時間が従来方法に比べ短く、かつ、装置上の不具合がなく良好なものを◎、硬化時間が従来方法に比べ短く、装置上の不具合が軽微なものを○、硬化時間は従来条件と比べ同等または短く、装置上の不具合が軽微なものを△とした。なお、比較例にはあげていないが装置上の不具合が大きな条件で成型した場合には、評価に安定したローラ成型が十分に出来なかった。
【0093】
以上より、総合評価として、ローラ精度、画像評価、生産性のいずれもが良好(すなわち◎)のものを総合評価◎とし、ローラ精度、画像評価がいずれも一定レベル以上(すなわち○以上)のものを総合評価○とし、その他それぞれの評価において一定レベルを満たさなかったものを×とした。
【0094】
本発明は、上述した説明例に限定されるものでなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で変形実施できるものを含む。因みに、上述では、ディッピング法による塗布の例で示したが、スプレー法やロールコーター法、または他の方法で塗布するものでも良い。
【0095】
【表1】

【0096】
実施例1〜15が示すとおり、本発明の弾性層を形成するときに、弾性層を形成するゴム材料と型とをそれぞれ予熱する工程を有することにより、ローラ精度と画像とが優れた弾性ローラを得ることができた。とりわけ、式(III)〜(V)の条件を満たす弾性ローラは、生産性にも優れ、総合評価ですばらしい結果を得ることができた。一方、ゴム材料を予熱していない比較例1〜5は、2部分間の平均外径差ΔRxyが式(I)を満たさず、つまりローラ精度が低く、画像において濃度ムラが生じた。生産性も好ましくなく、総合評価では良好な結果を得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明における弾性ローラの例を説明するための模式図ある。
【図2】図1の模式的断面図である。
【図3】本発明における弾性ローラの例を説明するための模式図である。
【図4】図3の模式的断面図である。
【図5】本発明における液状ゴム材料を用いて、混合、注入、加熱する機構を説明するための図である。
【図6】本発明の現像装置を用いた画像形成装置の説明図である。
【符号の説明】
【0098】
1 弾性ローラ(樹脂層なし)
2 弾性ローラ(樹脂層あり)
3 成型装置の簡易図
4 弾性ローラを現像ローラとして用いた画像形成装置
11 導電性基体(軸芯金)
12 弾性体層
13 樹脂層
14 ゴム材料A液(容器)
15 ゴム材料B液(容器)
16 混合装置
17 三方弁
18 計量部分
19 注入ノズル
20 金型および駒
21 感光ドラム
22 帯電装置
23 レーザー光
24 現像装置
25 現像ローラ
26 弾性ローラ
27 弾性ブレード
28 トナー
29 転写ローラ
30 クリーニングブレード
31 廃トナー容器
32 定着装置
33 紙
34 現像容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製もしくは樹脂製の軸心体と、該軸心体の外周上に少なくとも1層以上の弾性層を有する弾性ローラにおいて、軸方向のゴム弾性層の長さをL(mm)、ゴム弾性層の軸方向の両端それぞれ5%を除いて9分割し、切り口の各面において1°毎に測定した外径の平均をRα(mm)(αは1〜10の整数)とし、分割した2部分間の平均外径差を△Rxy=Rx−Ryとした場合に、以下に示す式(I)および(II)、を満たすことを特徴とする弾性ローラ。
式(I) |△Rxy|≦ 5.0×10-5 × L (x=1〜9、y=x+1)
式(II) |R1−R10|≦ 2.0×10-4 × L
【請求項2】
前記弾性ローラが、該弾性ローラの表面層に現像剤薄層を形成し、画像形成体に接触もしくは近接して該画像形成体表面に前記現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成する現像ローラである請求項1記載の弾性ローラ。
【請求項3】
金属製もしくは樹脂製の軸心体と、該軸心体の外周上に少なくとも1層以上の弾性層を有する弾性ローラの製造方法であって、
予熱したゴム材料を、予熱された型に注入し、該型内で該ゴム材料を硬化せしめて該弾性層を形成する工程を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記ゴム材料が、付加型シリコーンゴムである請求項3記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項5】
前記予熱された型の温度T0(℃)、該型に注入される直前の予熱されたゴム材料の温度T1(℃)の関係が以下の式(III)を満たす請求項3または4に記載の弾性ローラの製造方法。
式(III) 10≦T0−T1≦60
【請求項6】
前記T0(℃)において、キュラストメーターV型で測定した加硫曲線より求める特性値
との関係が以下の式(IV)、(V)を満たす請求項3〜5の何れかに記載の弾性ローラの製造
方法。
式(IV) 30≦t0.1(T0)≦800
式(V) 80≦t0.1(T0−10)≦2000
(ただし、温度T(℃)で測定したt0.1(秒)の値を、t0.1(T)とする。)
【請求項7】
型にゴム材料を注入する注入ノズルに加熱手段を設置することにより、注入される前のゴム材料を予熱する請求項3〜6の何れかに記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項8】
ゴム材料を混合し、該混合物を一時溜める部分を有し、そこでゴム材料を一定時間予熱する請求項3〜6の何れかに記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項9】
混合前のゴム材料をそれぞれ加熱し、次いで該加熱されたゴム材料を混合して型に注入する請求項3〜6の何れかに記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の弾性ローラを具備していることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−126706(P2006−126706A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317792(P2004−317792)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】