説明

弾性表面波デバイス

【課題】寄生容量および寄生インダクタンスを低減でき、安定した特性を有する小型の弾性表面波デバイスを提供すること。
【解決手段】IDT電極7のバスバー75,77からそれぞれ引出し電極9により延長され、回路接続パッド5に接続されているため、IDT電極7を延長して発振回路などと接続するための接続パッドを設ける必要がない。これにより、寄生容量により電流が消費されることを低減し、発振回路などの消費電力を低減することができる。また、接続パッドと回路接続パッド5とを繋げる金属ワイヤが不要となる。これにより、発振周波数および位相のずれを低減することができる。したがって、発振回路における寄生容量および寄生インダクタンスを低減できる。特に、低電圧駆動に対応し、安定した特性を有するSAW発振器10を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板に回路領域と弾性表面波素子領域とを備え、1つのチップに構成した弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電基板の表面に電極指を交互に配置したIDT(Interdigital Transducer)電極と反射器とを備え、IDT電極から励振される弾性表面波を利用する弾性表面波デバイスが、様々な電子機器に用いられている。
【0003】
従来の弾性表面波デバイスにおいて、圧電基板の表面に形成されたIDT電極は複数の電極指がバスバーに連結され、IDT電極のバスバーから延長された引出し電極の終端に接続パッドが形成されている。そして、この接続パッドと、パッケージ側のボンディングパッドとが、金属ワイヤにより接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、近年、弾性表面波デバイスの小型化を図り、半導体基板に回路素子を形成した回路領域と、圧電薄膜上にIDT電極を形成した弾性表面波素子領域を1つのチップに構成した弾性表面波デバイスが提案されている。
たとえば、図6に示すように、弾性表面波デバイス100は、回路領域102の上方に、弾性表面波素子領域103を備えている。回路領域102には、半導体基板101に形成された複数の回路素子121が配線119により接続され、発振回路などを構成している。そして、一部の回路素子121は、配線119により外部接続パッド104に接続され、この外部接続パッド104から弾性表面波デバイス100の外部との接続を可能にしている。また、一部の回路素子121は、配線119により回路接続パッド105に接続され、IDT電極107に接続されている。弾性表面波素子領域103には、圧電薄膜106が形成され、その上にIDT電極107と反射器108とが形成されている。IDT電極107のバスバーから延長された引出し電極の終端に接続パッド175が形成されている。そして、金属ワイヤ109により接続パッド175と回路接続パッド105とが接続されている。このようにして、IDT電極107が、半導体基板101に構成された発振回路などに接続されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−9585号公報(3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の弾性表面波デバイスでは、比較的大きな面積を有する回路接続パッドと接続パッドを備えていることから、発振回路における寄生容量が大きくなる。これにより、寄生容量へ電流のリークが増大して回路の消費電力が増大してしまうという問題がある。また、それぞれのパッドを金属ワイヤで接続することで配線が長くなり、寄生インダクタンスも大きくなる。これにより、発振周波数および位相がシフトしてしまうという問題がある。特に、低電圧駆動に対応し、安定した特性を得るために、これらを低減する必要がある。そして、回路接続パッドおよび外部接続パッドを形成するために、その上に形成された圧電薄膜をエッチングなどにより除去する際、エッチングにより除去される圧電薄膜上面の領域は、回路接続パッドおよび接続パッドを形成する領域よりも大きくなる。つまり、各パッド開口のためのエッチングしろが必要であり、回路接続パッド部および外部接続パッド部の面積を増大させ、これが弾性表面波デバイスの小型化を阻害する要因となっている。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、寄生容量および寄生インダクタンスを低減でき、安定した特性を有する小型の弾性表面波デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の弾性表面波デバイスは、半導体基板に回路素子が形成された回路領域と、該回路領域上方に圧電薄膜およびIDT電極が形成された弾性表面波素子領域とを備えた弾性表面波デバイスであって、前記弾性表面波デバイスの外部および前記回路素子に接続される外部接続パッドと、前記IDT電極および前記回路素子に接続される回路接続パッドとを備え、前記IDT電極の一部が延長され、前記回路接続パッドに接続されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、IDT電極の一部が延長され、回路素子と接続された回路接続パッドに接続されているため、IDT電極を延長して発振回路などと接続するための接続パッドを設ける必要がない。また、接続パッドと回路接続パッドとを繋げる金属ワイヤが不要となる。したがって、発振回路における寄生容量および寄生インダクタンスを低減できる。特に、低電圧駆動に対応し、安定した特性を有する弾性表面波デバイスを提供することができる。
【0010】
本発明の弾性表面波デバイスは、前記回路接続パッドおよび前記外部接続パッドが前記弾性表面波デバイスの一辺に集めて形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、回路接続パッドおよび外部接続パッドが前記弾性表面波デバイスの一辺に集めて形成されることから、従来のように回路接続パッドをバスバー側にそれぞれ配置した場合と比べて、弾性表面波デバイスの大きさを小さくすることができる。また、回路接続パッドおよび外部接続パッドを弾性表面波デバイスの片側に配置することにより、両側に配置する場合と比べて、パッド開口のためのエッチングしろが片側に収まるため、弾性表面波デバイスの大きさを小さくすることができる。
【0012】
本発明の弾性表面波デバイスは、IDT電極を1つ備えた1ポート型であることが好ましい。
この構成によれば、寄生容量および寄生インダクタンスが低減され、小型化された1ポート型弾性表面波デバイスを得ることができる。
【0013】
本発明の弾性表面波デバイスは、IDT電極を2つ備えた2ポート型であっても良い。
この構成によれば、寄生容量および寄生インダクタンスが低減され、小型化された2ポート型弾性表面波デバイスを得ることができる。
【0014】
本発明の弾性表面波デバイスは、半導体基板に回路素子が形成された回路領域と、圧電薄膜およびIDT電極が形成された弾性表面波素子領域とを並列に備えた弾性表面波デバイスであって、前記弾性表面波デバイスの外部および前記回路素子に接続される外部接続パッドと、前記IDT電極および前記回路素子に接続される回路接続パッドとを備え、前記IDT電極の一部が延長され、前記回路接続パッドに接続されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、回路領域と弾性表面波素子領域とを並列に形成する弾性表面波デバイスにおいても、IDT電極の一部が延長され、回路素子と接続された回路接続パッドに接続されているため、IDT電極を延長して発振回路などと接続するための接続パッドを設ける必要がない。また、接続パッドと回路接続パッドとを繋げる金属ワイヤが不要となる。したがって、発振回路における寄生容量および寄生インダクタンスを低減できる。
【0016】
本発明の弾性表面波デバイスは、前記回路接続パッドおよび前記外部接続パッドが前記弾性表面波素子領域と前記回路領域との境界付近に集めて形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、回路接続パッドおよび外部接続パッドが弾性表面波素子領域と前記回路領域との境界付近に集めて形成されることから、従来のように回路接続パッドをバスバー側にそれぞれ配置した場合と比べて、弾性表面波デバイスを小さくすることができる。また、回路接続パッドおよび外部接続パッドを弾性表面波デバイスの片側に配置することにより、両側に配置する場合と比べて、パッド開口のためのエッチングしろが片側に収まるため、弾性表面波デバイスの大きさを小さくすることができる。
【0018】
本発明の弾性表面波デバイスは、IDT電極を1つ備えた1ポート型であることが好ましい。
この構成によれば、寄生容量および寄生インダクタンスが低減され、小型化された1ポート型弾性表面波デバイスを得ることができる。
【0019】
本発明の弾性表面波デバイスは、IDT電極を2つ備えた2ポート型であっても良い。
この構成によれば、寄生容量および寄生インダクタンスが低減され、小型化された2ポート型弾性表面波デバイスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(第一実施形態)
【0021】
以下の実施形態では、弾性表面波デバイスとしてSAW(Surface Acoustic Wave)発振器の例を挙げて説明する。
図1(a)は、本実施形態におけるSAW発振器の概略平面図であり、図1(b)は、同図(a)のA−A断線に沿う概略断面図である。
図1(a)において、SAW発振器10は、IDT電極7を一つ備える1ポート型である。また、図1(b)に示すように、回路領域2の上方に、弾性表面波素子領域3を備えている。
【0022】
回路領域2は、半導体基板1と、半導体基板1に形成された回路素子12と、配線19と、外部接続パッド4と、回路接続パッド5とを備えている。回路素子12は、それぞれ配線19により接続され、発振回路などを構成している。回路素子12は、配線19により外部接続パッド4に接続され、この外部接続パッド4からSAW発振器10の外部との接続を可能に構成されている。回路素子12は、配線19により回路接続パッド5に接続され、IDT電極7に接続されている。
【0023】
弾性表面波素子領域3は、酸化亜鉛(ZnO)などで形成された圧電薄膜6と、圧電薄膜6上にアルミニウム(Al)などの導電性金属材料で形成されたIDT電極7と反射器8とを備えている。
【0024】
IDT電極7は、複数の電極指71,73がそれぞれバスバー75,77に連結された構造となっている。一方の電極指71と他方の電極指73とが交互に配置され、且つ接触しないように形成されている。ここで、IDT電極7はバスバー75,77からそれぞれ引出し電極9により延長され、回路接続パッド5に接続されている。
そして、電極指71,73間に交流電圧を印加することで、IDT電極7を駆動可能な構成としている。
【0025】
反射器8は、IDT電極7で励振される弾性表面波が伝播する方向に、IDT電極7を両側から挟むように配置されている。そして、反射器8は、電極指71,73に対して向い合せに形成された複数の反射指81と反射器バスバー85とが連結された構造となっている。
【0026】
このような構成のSAW発振器10は、回路領域2の回路素子12で構成される発振回路によりIDT電極7が励振され、IDT電極7から発振する弾性表面波を反射器8で反射させ、IDT電極7内に弾性表面波エネルギーを閉じ込めることにより、エネルギー損失の少ない共振特性を得ている。
【0027】
以上、本実施形態のSAW発振器10は、IDT電極7のバスバー75,77からそれぞれ引出し電極9により延長され、回路接続パッド5に接続されているため、IDT電極7を延長して発振回路などと接続するための接続パッドを設ける必要がない。これにより、寄生容量により電流が消費されることを低減し、発振回路などの消費電力を低減することができる。また、接続パッドと回路接続パッド5とを繋げる金属ワイヤが不要となる。これにより、発振周波数および位相のずれを低減することができる。したがって、発振回路における寄生容量および寄生インダクタンスを低減できる。特に、低電圧駆動に対応し、安定した特性を有するSAW発振器10を提供することができる。
(第二実施形態)
【0028】
図2(a)は、本実施形態におけるSAW発振器の概略平面図であり、図2(b)は、同図(a)のB−B断線に沿う概略断面図である。
図2(a)において、SAW発振器20は、第一実施形態と同様に、IDT電極27を一つ備える1ポート型である。また、図2(b)に示すように、回路領域22の上方に、弾性表面波素子領域23を備えている。
【0029】
回路領域22は、半導体基板21と、半導体基板21に形成された回路素子212と、配線29と、外部接続パッド24と、回路接続パッド25とを備えている。回路素子212は、それぞれ配線29により接続され、発振回路などを構成している。回路素子212は、配線29により外部接続パッド24に接続され、この外部接続パッド24からSAW発振器20の外部との接続を可能に構成されている。回路素子212は、配線29により回路接続パッド25に接続され、IDT電極27に接続されている。
図2(a)において、回路接続パッド25は、バスバー275を形成する側の、SAW発振器20の一辺に集めて形成されている。そして、外部接続パッド24も回路接続パッド25を形成するSAW発振器20の一辺に集めて形成されている。
【0030】
弾性表面波素子領域23は、酸化亜鉛(ZnO)などで形成された圧電薄膜26と、圧電薄膜26上にアルミニウム(Al)などの導電性金属材料で形成されたIDT電極27と反射器28とを備えている。
【0031】
IDT電極27は、複数の電極指271,273がそれぞれバスバー275,277に連結された構造となっている。一方の電極指271と他方の電極指273とが交互に配置され、且つ接触しないように形成されている。ここで、電極指271が連結されたIDT電極27は、バスバー275から引出し電極91により延長され、回路接続パッド25に接続されている。また、電極指273が連結されたIDT電極27は、電極指273の一部から引出し電極92により延長され、回路接続パッド25に接続されている。
そして、電極指271,273間に交流電圧を印加することで、IDT電極27を駆動可能な構成としている。
【0032】
反射器28は、第一実施形態と同様に、圧電薄膜26上に形成され、IDT電極27で励振される弾性表面波が伝播する方向に、IDT電極27を両側から挟むように配置されている。そして、反射器28は、電極指271,273に対して向い合せに形成された複数の反射指281と反射器バスバー285とが連結された構造となっている。
【0033】
このような構成のSAW発振器20は、回路領域22の回路素子212で構成される発振回路によりIDT電極27が励振され、IDT電極27から発振する弾性表面波を反射器28で反射させ、IDT電極27内に弾性表面波エネルギーを閉じ込めることにより、エネルギー損失の少ない共振特性を得ている。
【0034】
本実施形態のSAW発振器20は、IDT電極27のバスバー275から引出し電極91により延長され、回路接続パッド25に接続されている。そして、電極指273の一部から引出し電極92により延長され、回路接続パッド25に接続されている。これにより、IDT電極27を延長して発振回路などと接続するための接続パッドを設ける必要がない。これにより、寄生容量により電流が消費されることを低減し、発振回路などの消費電力を低減することができる。また、接続パッドと回路接続パッド25とを繋げる金属ワイヤが不要となる。これにより、発振周波数および位相のずれを低減することができる。したがって、発振回路における寄生容量および寄生インダクタンスを低減できる。特に、低電圧駆動に対応し、安定した特性を有するSAW発振器20を提供することができる。
また、本実施形態のSAW発振器20は、回路接続パッド25および外部接続パッド24がSAW発振器20の一辺に集めて形成されることから、従来のようにして回路接続パッド25をバスバー275,277側にそれぞれ配置した場合と比べてSAW発振器20の大きさを小さくすることができる。また、回路接続パッドおよび外部接続パッドを弾性表面波デバイスの片側に配置することにより、両側に配置する場合と比べて、パッド開口のためのエッチングしろが片側に収まるため、弾性表面波デバイスの大きさを小さくすることができる。
(変形例)
【0035】
次に、前記第二実施形態における弾性表面波素子領域のIDT電極を2ポート型とした変形例について説明する。
図3は、変形例の構成を示す模式平面図である。
図3において、SAW発振器30は、圧電薄膜36上に、2つのIDT電極37,39を備えている。
【0036】
IDT電極37は、その一部から引出し電極93,94により延長され、回路接続パッド31に接続されている。IDT電極39も同様に、IDT電極39の一部から引出し電極93,94により延長され、回路接続パッド35に接続されている。
回路接続パッド31,35および外部接続パッド34は、SAW発振器30の一辺に集めて形成されている。
反射器38は、IDT電極37,39を両側から挟むように配置されている。
また、この2ポート型のSAW発振器30においても、回路接続パッド31,35および外部接続パッド34がSAW発振器30の一辺に集めて形成される。
【0037】
以上のように、2ポート型のSAW発振器30においても、第二実施形態と同様な効果を享受することができる。
(第三実施形態)
【0038】
図4(a)は、本実施形態におけるSAW発振器の概略平面図であり、図4(b)は、同図(a)のC−C断線に沿う概略断面図である。
図4(a)において、SAW発振器40は、第二実施形態と同様に、IDT電極47を一つ備える1ポート型である。ここで、SAW発振器40は、回路領域42と、弾性表面波素子領域43とを半導体基板41上に並列に備えている。
【0039】
回路領域42は、半導体基板41と、半導体基板41に形成された回路素子412と、配線49と、外部接続パッド44と、回路接続パッド45とを備えている。回路素子412はそれぞれ配線49により接続され、発振回路などを構成している。回路素子412は、配線49により外部接続パッド44に接続され、この外部接続パッド44からSAW発振器40の外部との接続を可能に構成されている。回路素子412は、配線49により回路接続パッド45に接続され、IDT電極47に接続されている。
図4(a)において、回路接続パッド45および外部接続パッド44は、回路領域42と弾性表面波素子領域43との境界付近に集めて形成されている。
【0040】
弾性表面波素子領域43は、酸化亜鉛(ZnO)などの圧電薄膜46と、圧電薄膜46上にアルミニウム(Al)などの導電性金属材料で形成されたIDT電極47と反射器48とを備えている。
【0041】
IDT電極47は、複数の電極指471,473がそれぞれバスバー475,477に連結された構造となっている。一方の電極指471と他方の電極指473とが交互に配置され、且つ接触しないように形成されている。ここで、電極指471が連結されたIDT電極47は、バスバー475から引出し電極95により延長され、回路接続パッド45に接続されている。また、電極指473が連結されたIDT電極47は、電極指473の一部から引出し電極96により延長され、回路接続パッド45に接続されている。
そして、電極指471,473間に交流電圧を印加することで、IDT電極47を駆動可能な構成としている。
【0042】
反射器48は、第二実施形態と同様に、IDT電極47で励振される弾性表面波が伝播する方向に、IDT電極47を両側から挟むように配置されている。そして、反射器48は、電極指471,473に対して向い合せに形成された複数の反射指481と反射器バスバー485とが連結された構造となっている。
【0043】
このような構成のSAW発振器40は、回路領域42の回路素子412で構成される発振回路によりIDT電極47が励振され、IDT電極47から発振する弾性表面波を反射器48で反射させ、IDT電極47内に弾性表面波エネルギーを閉じ込めることにより、エネルギー損失の少ない共振特性を得ている。
【0044】
以上、本実施形態のSAW発振器40は、IDT電極47のバスバー475から引出し電極95により延長され、回路接続パッド45に接続されている。そして、電極指473の一部から引出し電極96により延長され、回路接続パッド45に接続されている。これにより、IDT電極47を延長して発振回路などと接続するための接続パッドを設ける必要がない。これにより、寄生容量により電流が消費されることを低減し発振回路などの消費電力を低減することができる。また、接続パッドと回路接続パッド45とを繋げる金属ワイヤが不要となる。これにより、発振周波数および位相のずれを低減することができる。したがって、発振回路における寄生容量および寄生インダクタンスを低減できる。特に、低電圧駆動に対応し、安定した特性を有するSAW発振器40を提供することができる。
そして、回路接続パッド45および外部接続パッド44が、回路領域42と弾性表面波素子領域43との境界付近に集めて形成されることから、従来のようにして回路接続パッド45をバスバー475,477側にそれぞれ配置した場合と比べてSAW発振器40の大きさを小さくすることができる。
また、弾性表面波素子領域43の下方に、回路素子412を形成していないため、圧電薄膜46を形成する面に回路素子412の形成による凹凸などのばらつきをなくすことができる。これにより、IDT電極47で励振される弾性表面波が、ばらつきのない良好なSAW発振器40を提供することができる。
(変形例)
【0045】
次に、前記第三実施形態における弾性表面波素子領域のIDT電極を2ポート型とした変形例について説明する。
図5は、変形例の構成を示す模式平面図である。
図5において、SAW発振器50は、圧電薄膜56上に、2つのIDT電極57,59を備えている。
【0046】
IDT電極57は、その一部から引出し電極97,98により延長され、回路接続パッド51に接続されている。IDT電極59も同様に、IDT電極59の一部から引出し電極97,98により延長され、回路接続パッド55に接続されている。回路接続パッド51,55および外部接続パッド54は、回路領域52と弾性表面波素子領域53との境界付近に集めて形成されている。
反射器58は、IDT電極57,59を両側から挟むように配置されている。
また、この2ポート型のSAW発振器50においても、回路接続パッド51,55および外部接続パッド54が、回路領域52と弾性表面波素子領域53との境界付近に集めて形成される。
【0047】
以上のように、2ポート型のSAW発振器50においても、第三実施形態と同様な効果を享受することができる。
【0048】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、回路接続パッドの上にバスバーを形成し接続してもよく、外部接続パッドの上に反射器バスバーを形成し接続してもよい。
また、圧電薄膜の材料としては、酸化亜鉛(ZnO)だけに限らず、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などを用いることができる。そして、IDT電極、反射器の材料としては、アルミニウム(Al)だけに限らず、金(Au)、タングステン(W)などを用いることができる。
【0049】
本発明の弾性表面波デバイスは、前述のSAW発振器に限らず、SAWフィルタにも用いることができる。
【0050】
また、本発明を実施するための最良の方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、使用する材料、接続方法、その他の詳細な事項において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した材料などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの材料、接続方法などの限定の一部もしくは全部の限定を外した記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)は、第一実施形態に係るSAW発振器の概略平面図であり、同図(b)は、図1(a)のA−A概略断面図。
【図2】(a)は、第二実施形態に係るSAW発振器の概略平面図であり、同図(b)は、図2(a)のB−B概略断面図。
【図3】第二実施形態に係る変形例の構成を示す概略平面図。
【図4】(a)は、第三実施形態に係るSAW発振器の概略平面図であり、同図(b)は、図2(a)のC−C概略断面図。
【図5】第三実施形態に係る変形例の構成を示す概略平面図。
【図6】発明が解決しようとする課題を説明する説明図。
【符号の説明】
【0052】
1…半導体基板、2…回路領域、3…弾性表面波素子領域、4…外部接続パッド、5…回路接続パッド、6…圧電薄膜、7…IDT電極、9…引出し電極、10…弾性表面波デバイスとしてのSAW発振器、12…回路素子、71,73…電極指、75,77…バスバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に回路素子が形成された回路領域と、該回路領域上方に圧電薄膜およびIDT電極が形成された弾性表面波素子領域とを備えた弾性表面波デバイスであって、
前記弾性表面波デバイスの外部および前記回路素子に接続される外部接続パッドと、
前記IDT電極および前記回路素子に接続される回路接続パッドとを備え、
前記IDT電極の一部が延長され、前記回路接続パッドに接続されている
ことを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
前記回路接続パッドおよび前記外部接続パッドが前記弾性表面波デバイスの一辺に集めて形成されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
前記IDT電極を1つ備えた1ポート型であることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
前記IDT電極を2つ備えた2ポート型であることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項5】
半導体基板に回路素子が形成された回路領域と、圧電薄膜およびIDT電極が形成された弾性表面波素子領域とを並列に備えた弾性表面波デバイスであって、
前記弾性表面波デバイスの外部および前記回路素子に接続される外部接続パッドと、
前記IDT電極および前記回路素子に接続される回路接続パッドとを備え、
前記IDT電極の一部が延長され、前記回路接続パッドに接続されている
ことを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
前記回路接続パッドおよび前記外部接続パッドが前記弾性表面波素子領域と前記回路領域との境界付近に集めて形成されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
前記IDT電極を1つ備えた1ポート型であることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
前記IDT電極を2つ備えた2ポート型であることを特徴とする弾性表面波デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−228329(P2007−228329A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47877(P2006−47877)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】