説明

弾性表面波フィルタ

圧電体基板(11)と、この圧電体基板(11)上の第1の弾性表面波伝播路上に設けた複数個のIDT電極(12、13)と、これらのIDT電極(12、13)を含む第1の電極パターンの両端部に配設された反射器電極(14、15)と、上記圧電体基板(11)上で、かつ第1の弾性表面波伝播路上とは異なる第2の弾性表面波伝播路上に設けた1個以上のIDT電極(16)と、このIDT電極(16)を含む第2の電極パターンの両端部に配設された反射器電極(17、18)とを有し、第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極(12、13)間を接続配線部(19)で電気的に直列に接続するとともに、この接続配線部(19)とグランド(20)との間に第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極(16)を接続した構成からなり、SAWフィルタ(10)を小型化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、携帯電話等に主として用いられる弾性表面波フィルタに関する。
【背景技術】
携帯電話等には必要な周波数帯域のみを選択するために弾性表面波フィルタ(以下、SAWフィルタとよぶ)が用いられている。このSAWフィルタに対しては、通過帯域幅を広くし、抑圧度を高くし、かつ挿入損失を小さくすることが要望されている。このような要望に対して、日本特開平5−183380号公報では、ラダー型のSAWフィルタに関し、通常帯域幅については幅を広くするとともに、挿入損失を小さくし、かつ通常帯域外の抑圧度を高くする構成が示されている。これによると、所定の共振周波数を有する第1の一端子対弾性表面波共振子を並列腕に配し、この第1の共振器の反共振周波数と略一致する共振周波数を持つ第2の一端子対弾性表面波共振子を直列腕に配して構成している。さらに、第1の弾性表面波共振子に直列にインダクタンスを付加する構成も示している。
上記の構成のみでなく、より良好なフィルタ特性を実現するために種々の構成が提案され、実用化されている。
図14に示す構成からなるSAWフィルタ200も一般に多く用いられている。図14に示すSAWフィルタ200は、圧電体基板202の上に、3個の直列腕の弾性表面波共振子204、212、220と2個の並列腕の弾性表面波共振子228、236を形成し、これらを接続することにより所定のフィルタ特性を得ている。すなわち、直列腕の弾性表面波共振子204、212、220は、インターディジタルトランスデューサ電極(以下、IDT電極とよぶ)206、214、222と、その両側に配置された反射器電極208、210、216、218、224,226とによりそれぞれ構成されている。また、並列腕の弾性表面波共振子228、236も、同様にIDT電極230、238と、その両側に配置された反射器電極232、234、240、242とによりそれぞれ構成されている。3個の直列腕の弾性表面波共振子204、212、220は、第1接続配線部242、244を介して直列に接続されている。また、並列腕の弾性表面波共振子228、236は、第1接続配線部242、244にそれぞれ接続する第2接続配線部246、248と接続し、他方はグランド250に接続されている。さらに、3個の直列腕の弾性表面波共振子204、212、220のうち、それぞれ外側に配置された弾性表面波共振子204、220は、入力端子252および出力端子254にそれぞれ接続されている。
この構成により所定の特性を有するSAWフィルタ200が実現できる。しかしながら、この構成において帯域外減衰量を大きくしようとすると、弾性表面波共振子の数を増やす必要が生じる。そのために、チップサイズを大きくしなければならなくなる。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、高減衰特性を有しながら、小型化可能なSAWフィルタを提供することを目的とする。
【発明の開示】
上記目的を達成するために、本発明以下の構成を有する。
本発明のSAWフィルタは、圧電体基板と、この圧電体基板の表面で、かつ第1の弾性表面波伝播路上に配設された複数個のIDT電極と、複数の上記IDT電極を含み構成される第1の電極パターンの少なくとも両端部に配設された反射器電極と、上記圧電体基板の表面で、かつ第1の弾性表面波伝播路上とは異なる第2の弾性表面波伝播路上に配設された1個以上のIDT電極と、このIDT電極を含み構成される第2の電極パターンの少なくとも両端部に配設された反射器電極とを有し、第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極間を接続配線部により電気的に直列に接続するとともに、第1の電極パターンと第2の電極パターンとの間に配設された上記接続配線部とグランドとの間に第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極を接続した構成からなる。
これにより、直列に配設する複数個の共振子をまとめた構成とすることができるので、SAWフィルタとしての良好な特性を確保しながらチップサイズを小さくすることができる。
また、本発明のSAWフィルタは、上記第2の弾性表面波伝播路上に配設されたIDT電極と、このIDT電極を含み構成される第2の電極パターンの少なくとも両端部に配設された反射器電極とにより少なくとも1つの弾性表面波共振子を構成してもよい。
また、本発明のSAWフィルタは、上記第2の弾性表面波伝播路上に配設された複数のIDT電極の一方の端子はグランドに接続し、他方の端子がそれぞれ異なる接続配線部と接続された構成としてもよい。
また、本発明のSAWフィルタは、上記構成において、第1の弾性表面波伝搬路上に配設され、電気的に直列に接続された複数のIDT電極は、隣接するIDT電極間が互いに逆相になるように配置してもよい。
また、本発明のSAWフィルタは、上記構成において、さらに複数のIDT電極が配設されて構成される第1の電極パターンのIDT電極間に反射器電極を設けてもよい。
また、本発明のSAWフィルタは、第1の電極パターンのIDT電極間に設けた上記反射器電極をグランドに接続してもよい。
また、本発明のSAWフィルタは、第1の電極パターンのIDT電極間を、上記の反射器電極を介して電気的に直列に接続してもよい。
また、本発明のSAWフィルタは、第1の電極パターンにおいて、隣接するIDT電極間が互いに同相になるように配置してもよい。
また、本発明のSAWフィルタは、圧電体基板と、この圧電体基板の表面で、かつ第1の弾性表面波伝播路上に配設された複数個のIDT電極と、複数の上記IDT電極を含み構成される第1の電極パターンの少なくとも両端部に配設された反射器電極と、上記圧電体基板の表面で、かつ第1の弾性表面波伝播路上とは異なる第2の弾性表面波伝播路上に配設された1つ以上のIDT電極と、このIDT電極を含み構成される第2の電極パターンの少なくとも両端部に配設された反射器電極とから弾性表面波共振子を構成し、第1の電極パターンのIDT電極は一方の端子をそれぞれグランドに接続し、他方の端子を弾性表面波共振子の別々の端子に接続した構成からなる。
これにより、複数個の並列に配設した弾性表面波共振子(以下、共振子とよぶ)をまとめた構成とすることができるので、SAWフィルタとしての特性を従来と同程度あるいはさらに向上できるとともにチップサイズを小さくできる
以上説明したように、本発明のSAWフィルタは複数の共振子をまとめた構成としているので、数多くの共振子を必要とする高減衰特性のフィルタの場合であってもチップサイズを小さくでき、低コストのSAWフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるSAWフィルタの圧電体基板上での電極構成を示す平面図
図2は、本発明の第2の実施の形態にかかるSAWフィルタの電極構成を示す平面図
図3は、本発明の第3の実施の形態にかかるSAWフィルタの電極構成を示す平面図
図4は、本発明の第4の実施の形態にかかるSAWフィルタの電極構成を示す平面図
図5は、本発明の第5の実施の形態にかかるSAWフィルタの電極構成を示す平面図
図6Aは、本発明のSAWフィルタの特性を測定するために作製したフィルタ構成を示すブロック図
図6Bは、本発明のSAWフィルタの特性を測定するために作製した別のフィルタ構成を示すブロック図
図7は、図6Aに示すフィルタ構成についての特性を測定した結果を示す図
図8は、図6Bに示すフィルタ構成についての特性を測定した結果を示す図
図9は、従来構成のSAWフィルタの特性を測定した結果を示す図
図10は、本発明のSAWフィルタの特性を測定するために作製したさらに別のフィルタ構成を示すブロック図
図11は、図10に示したフィルタ構成で、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極を同相としたときの特性を測定した結果を示す図
図12は、図10に示したフィルタ構成で、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極を逆相としたときの特性を測定した結果を示す図
図13は、図10に示したフィルタ構成で、第2の弾性表面波伝播路上に設けたIDT電極と反射器電極とにより2個のラダー構成の共振器としたときの特性を測定した結果を示す図
図14は、従来のラダー構成からなるSAWフィルタを示す図
図面の参照符号の一覧表
10,30,40,50,70,75,80,100,200 SAWフィルタ
11,202 圧電体基板
19,42,44,64,65,66,88,89,90、92,93,94,95 接続配線部
20,250 グランド
21,252 入力端子
22,254 出力端子
24,204,212,220,228,236 弾性表面波共振子(共振子)
12,13,16,51,52,53,54,60,61,62,63,68,81,82,85,206,214,222,230,238 IDT電極
14,15,17,18,32,56,57,58,59,62,63,67,68,86,87,208,210,216,218,224,226,232,234,240,242 反射器電極
242,244 第1接続配線部
246,248 第2接続配線部
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同じ構成要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるSAWフィルタ10の圧電体基板11上での電極構成を示す平面図である。本実施の形態のSAWフィルタ10は、以下の構成からなる。圧電体基板11の表面で、かつ第1の弾性表面波伝播路上に2つのIDT電極12、13が接するように配設されて第1の電極パターンを構成している。これらのIDT電極12、13からなる第1の電極パターンの両端部に反射器電極14、15が配置されている。
また、同じ圧電体基板11の表面で、かつ第1の弾性表面波伝播路上とは異なる第2の弾性表面波伝播路上にIDT電極16が配設され、この両端部に反射器電極17、18が配設されている。本実施の形態では、この第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極16と反射器電極17、18とにより1つの共振子24を構成している。
さらに、図示するように、第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極12、13は一方の端子同士が接続配線部19で電気的に直列に接続されている。また、他方の端子は、それぞれ入力端子21と出力端子22に接続されている。これにより、第1の弾性表面波伝播路上では、2つのIDT電極12、13と2つの反射器電極14、15とにより実質的に2個の共振子が構成されている。一方、接続配線部19とグランド20との間には、第2の弾性表面波伝播路上に配設されたIDT電極16が接続されている。すなわち、本実施の形態では、接続配線部19とグランド20との間に共振子24が接続された構成からなる。
このような構成とすることにより、従来のラダー型で構成すると3個の共振子を形成する必要があったのに対して、従来構成のほぼ2個の面積分で形成できる。したがって、チップサイズの小型化が図れる。
本実施の形態のSAWフィルタ10の具体的な構成の一例について、以下に説明する。圧電体基板11としては、リチウムナイオベート(LiNbO)単結晶基板、リチウムタンタレート(LiTaO)単結晶基板等の特定のカット角の圧電体基板を用いる。以下の具体例では、圧電体基板11として36°YカットX伝播リチウムタンタレート(LiTaO)単結晶基板を用いた。その圧電体基板11上にアルミニウム中に銅をドーピングした電極膜を400nmの膜厚で形成した後、IDT電極や反射器電極等の所定の形状をフォトリソプロセスとエッチングプロセスにより作製した。第1の電極パターンは、この圧電体基板11の表面で、第1の弾性表面波伝播路上に配設されているが、この第1の電極パターンを構成するIDT電極12、13は、櫛形電極の電極指ピッチが2.34μmで、それぞれ70対とする。また、2つのIDT電極12、13の間に設ける隙間は1.17μm、反射器電極14、15は、電極指ピッチが2.40μmで、電極指本数が50本である。また、反射器電極14とIDT電極12との間に設ける隙間、および反射器電極15とIDT電極13との間に設ける隙間は、それぞれ1.17μmとした。
また、接続配線部19とグランド20との間に接続する弾性表面波共振子24は、IDT電極16を構成する櫛形電極の電極指ピッチが2.44μmで、対数80対とし、その両端部に電極指ピッチが2.50μmで、電極指本数が50本からなる反射器電極17、18をそれぞれ配設してある。
接続配線部19は、IDT電極12、13、16および反射器電極14、15、17、18を形成するときに、同時にフォトリソプロセスおよびエッチングプロセスにより作製してもよい。さらに、接続配線部19の抵抗を低減するために、この電極薄膜上に補強電極膜を形成してもよい。
また、第1の電極パターンの2つのIDT電極12、13は、位相がお互いに逆相になるようにすると、リップルを小さくすることができる。一方、位相がお互いに同相になるようにすると、お互いが干渉しやすくなり、リップルがやや大きくなるが、ロスを小さくできる。したがって、それぞれ目標とする特性を実現するために、設計に応じて使い分けることが望ましい。
なお、本実施の形態では、第1の弾性表面波伝播路上に配設したIDT電極は2つで、第2の弾性表面波伝播路上に配設したIDT電極は1つとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極を3つ以上、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極を2つ以上設けてもよい。この場合に、IDT電極間に反射器電極を設けてもよい。
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態にかかるSAWフィルタ30について、図2を用いて説明する。図2から分かるように、本実施の形態のSAWフィルタ30は、以下の点が第1の実施の形態のSAWフィルタ10と異なる。すなわち、本実施の形態では、第1の弾性表面波伝播路上の第1の電極パターンを構成する2つのIDT電極12、13の間に反射器電極32を設けていることである。
図2における具体的な構成の一例を説明する。第1の実施の形態で説明した具体的な構成の一例において、第1の電極パターンを構成する2つのIDT電極12、13の間に電極指ピッチが2.40μmで、電極指本数が10本からなる反射器電極32を配設した。また、反射器電極32とIDT電極12、13のそれぞれの隙間は、例えば1.17μmとした。
このように2つのIDT電極12、13間に反射器電極32を設けることで、2つのIDT電極12、13間の浮遊容量を低減して高域側での減衰量の劣化を防ぐことができる。また、2つのIDT電極12、13を同相にしても、反射器電極32を設けてあるのでリップルも小さくできる。
なお、IDT電極12、13の間の反射器電極32の電極の本数は、浮遊容量の影響を小さくするためには多い方が良い。しかし、多すぎるとチップサイズが大きくなるので、両端部に配設する反射器電極14、15の電極本数よりは少なくすることが望ましい。
また、この反射器電極32は、単に配設してあるだけでも浮遊容量を低減して高域側の減衰量の劣化を防止できるが、グランドに接続すればより減衰量の劣化を防ぐ効果が大きくなり、さらに特性の改善を行うことができる。
なお、本実施の形態では、第1の弾性表面波伝播路上に配設したIDT電極は2つで、第2の弾性表面波伝播路上に配設したIDT電極は1つとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極を3つ以上、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極を2つ以上設け、これらのIDT電極間に反射器電極を設けてもよい。さらに、これらの反射器電極をグランドに接続してもよい。
(第3の実施の形態)
図3は、本発明の第3の実施の形態にかかるSAWフィルタの電極構成を示す平面図である。本実施の形態のSAWフィルタ40は、IDT電極12、13、16および反射器電極14、15、17、18、32の構成については、第2の実施の形態のSAWフィルタ30と同じである。ただし、本実施の形態では、第1の弾性表面波伝播路上の第1の電極パターンを構成する2つのIDT電極12、13が、反射器電極32を介して接続配線部42、44により直列に接続されている。また、第1の電極パターンと第2の電極パターンとの間に配設されている接続配線部42とグランド20との間に共振子24が接続されている。
以上のように本実施の形態のSAWフィルタ40は、反射器電極32と接続配線部42、44とを介して2つのIDT電極12、13間を直列に接続している。このように反射器電極32を介して直列に接続しても同様な特性を得ることができる。したがって、出力端子22との接続位置等を含めてIDT電極12、13間を直列に接続するための設計自由度を大きくできる。
なお、本実施の形態では、第1の弾性表面波伝播路上に配設したIDT電極は2つで、第2の弾性表面波伝播路上に配設したIDT電極は1つとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極を3つ以上、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極を2つ以上設け、これらのIDT電極間に反射器電極を設けて、反射器電極と接続配線部とにより第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極を電気的に直列に接続してもよい。
(第4の実施の形態)
図4は、本発明の第4の実施の形態にかかるSAWフィルタ50の電極構成を示す平面図である。本実施の形態のSAWフィルタ50は、第1の弾性表面波伝播路上には、第1の電極パターンと、この第1の電極パターンの両端部に配設された反射器電極56、57とが設けられている。そして、第1の電極パターンは、4つのIDT電極51、52、53、54と、2つの反射器電極58、59とから構成されている。なお、これらの反射器電極58、59は、図示するように、2つのIDT電極51、52間および別の2つのIDT電極53、54間にそれぞれ配設されている。
また、第1の弾性表面波伝播路とは異なる第2の弾性表面波伝播路上には、2つのIDT電極60、61により第2の電極パターンが構成され、この第2の電極パターンの両端部に反射器電極62、63が配設されている。
さらに、第1の弾性表面波伝播路上の4つのIDT電極51、52、53、54は、接続配線部64、65、66により電気的に直列に接続されている。そして、第1の電極パターンと第2の電極パターンとの間に配設された接続配線部64、65とグランド20との間に第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極60、61が接続されている。本実施の形態では、図4からわかるように、IDT電極60は接続配線部64とグランド20に接続され、もうひとつのIDT電極61は接続配線部65とグランド20に接続されている。
また、IDT電極51、54のそれぞれ一方の端子が入力端子21と出力端子22とに接続されている。
本実施の形態のSAWフィルタの具体的な構成の一例について、以下説明する。第1の電極パターンにおいて、IDT電極51、54の櫛型電極の対数を70対、IDT電極52、53の櫛型電極の対数を60対とし、櫛型電極の電極指ピッチは第1の実施の形態と同様に2.34μmとした。さらに、第2の電極パターンのIDT電極60、61は、櫛型電極の電極指ピッチが2.44μmで、それぞれ80対とし、IDT電極60、61の間の隙間は1.22μmとした。また、その両端部に配設された反射器電極62、63は、電極指ピッチが2.50μmで、電極指本数が50本、反射器電極62、63とIDT電極60、61との間の隙間は、それぞれ1.20μmとした。
また、第1の電極パターンに配設された反射器電極58、59は、その電極指ピッチが2.5μmで、電極指本数はそれぞれ10本である。なお、本実施の形態では、第1の電極パターンの中央部に配設されている2つのIDT電極52、53間には反射器電極を設けていない。これは、第1の電極パターンにおいて、2つのIDT電極51、52間および同様に2つのIDT53、54間の浮遊容量は高域側の減衰量に影響するが、中央部の2つのIDT電極52、53間の浮遊容量はほとんど影響を与えないことが見出されたことによる。ただし、この間に反射器電極を設けてもよい。反射器電極を設ければ、より設計の自由度を大きくできる。
また、従来のラダー型では、直列腕の共振子の櫛型電極の対数が100対程度以下になるとリップルが大きくなる傾向があった。しかし、本実施の形態の場合には、2つのIDT電極52、53が隣接して配設されているため、各々の櫛型電極の対数は60対であるが、実質上120対の状態が実現されており、この結果リップルが抑圧される。また、IDT電極51、54についても、それぞれ配設されている反射器電極58、59の電極本数を10本程度にすれば、リップルへの影響が低減され、櫛型電極の対数が70対程度でもほとんどリップルの発生がみられなかった。
以上説明したように、従来のラダー型で構成すると6個の共振子を形成する必要があったのに対して、本実施の形態では2個の共振子群で形成できる。この結果、SAWフィルタ特性を劣化させることなく、チップサイズの小型化が図れる。
なお、第1の電極パターンの反射器電極58、59は、本実施の形態ではグランドに接続していないが、第2の実施の形態で説明したようにグランドに接続してもよい。
(第5の実施の形態)
図5は、本発明の第5の実施の形態にかかるSAWフィルタ80の電極構成を示す平面図である。本実施の形態のSAWフィルタ80が図1に示すSAWフィルタ10と異なる点は、以下のようである。すなわち、第1の実施の形態のSAWフィルタ10では、入力端子21と出力端子22とに接続される直列の共振子のIDT電極12、13を第1の弾性表面波伝播路上に設けている。一方、本実施の形態のSAWフィルタ80では、入力端子21と出力端子22とに一方の端子を接続し、他方の端子をグランドに接続するIDT電極81、82を第1の弾性表面波伝播路上に設けている。さらに、第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極81と第2の弾性表面波伝播路上の反射器電極86とを接続配線部88により接続し、反射器電極86とIDT電極85とを接続配線部90により接続し、さらに第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極85と第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極82とを接続配線部89により接続している。これにより、第1の弾性表面波伝播路上の2つのIDT電極81、82は、接続配線部88、89、90と反射器電極86とにより電気的に直列に接続される。また、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極85と反射器電極86、87とにより共振子を構成しており、第1の電極パターンの2つのIDT電極81、82は上記共振子の別々の端子に接続されている。
このように構成することにより、従来のラダー型で構成するSAWフィルタの場合には、3個の共振子を形成する必要があったが、本実施の形態のSAWフィルタ80の場合にはほぼ2個分の面積で形成できる。この結果、チップサイズの小型化が可能となる。
以下、本実施の形態にかかるSAWフィルタの具体的な構成例について説明する。圧電体基板11の上に、IDT電極81、82を第1の弾性表面波伝播路上に配設して第1の電極パターンを形成する。この第1の電極パターンの両端部に反射器電極83、84を配設する。2つのIDT電極81、82は、櫛型電極の電極指ピッチが2.44μmで、それぞれ80対とした。また、2つのIDT電極81、82間の隙間は、1.22μmとした。さらに、反射器電極83、84は、電極指ピッチが2.50μmで、電極指本数を50本とした。また、反射器電極83とIDT電極81との隙間および反射器電極84とIDT電極82との隙間は、それぞれ1.20μmとした。
さらに、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極85は、櫛形電極の電極指ピッチが2.34μmで、70対で構成されている。このIDT電極85の両端部に配設された反射器電極86、87は、電極指ピッチが2.40μmで、電極指本数は50本とした。このIDT電極85と反射器電極86、87とにより共振子を構成している。なお、入力端子21は接続配線部88に接続されており、出力端子22は接続配線部89に接続されている。
このようなSAWフィルタ構成とすることで、従来のラダー型で構成するSAWフィルタの共振子のほぼ2個分の面積で形成できる。この結果、チップサイズを小型化でき、低コストのSAWフィルタを実現することが可能となる。
なお、本実施の形態では、第1の弾性表面波伝播路上に配設したIDT電極は2つで、第2の弾性表面波伝播路上に配設したIDT電極は1つとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極を3つ以上、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極を2つ以上設けてもよい。
さらに、本発明は第1の実施の形態から第5の実施の形態で説明した構成に限定されず、種々のIDT電極と反射器電極構成とすることができる。また、隣接するIDT電極間を逆相にしてもよいし、同相にしてもよい。
以下、第4の形態にかかるSAWフィルタ50を基本に、これを一部変形した構成からなるSAWフィルタの具体例について、フィルタ特性を測定した結果を説明する。
図6Aは、本発明のSAWフィルタの特性を測定するために作製したフィルタ構成を示すブロック図である。なお、図6Aでは、説明を容易にするためにIDT電極と反射器電極とをブロック構成で示している。図6Aに示すSAWフィルタ70は、第1の弾性表面波伝播路上に4つのIDT電極51、52、53、54と、それらの両側にそれぞれ反射器電極56、57、58、59、67とを配設している。第2の弾性表面波伝播路上には、IDT電極60、61と、両端部および中央部に反射器電極62、63、68とが配設されている。第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極51、52、53、54は、接続配線部64、65、66により電気的に直列に接続されている。また、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極60は接続配線部64とグランド20とに接続されており、もう一つのIDT電極61は接続配線部65とグランド20とに接続されている。
ここで、IDT電極51、52は158対、IDT電極53、54は216対で、その交差幅は両方ともに25μmとした。また、反射器電極56、57の電極指本数は30本で、第1の電極パターンに配設した反射器電極58、59、67の電極指本数は10本とした。さらに、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極60、61は、それぞれ147対、263対とした。なお、反射器電極62、63、68の電極指本数は30本である。さらに、ηは0.52に設定した。また、電極膜厚は約160nmである。このSAWフィルタ70の場合には、第1の電極パターン中のIDT電極51、52、53、54は、すべて同相になるようにした。
図6Bは、本発明のSAWフィルタの特性を測定するために作製した別のフィルタ構成を示すブロック図である。なお、図6Bについても、説明を容易にするためにIDT電極と反射器電極をブロック構成で示している。図6Bに示すSAWフィルタ75は、第1の電極パターン中の反射器電極を中央部の反射器電極67のみとし、さらに2つのそれぞれ隣接するIDT電極51、52間およびIDT電極53、54間は逆相、反射器電極67を介して隣接するIDT電極52、53間については同相になるようにした点が、図6Aに示すSAWフィルタ70と異なる。
さらに、図14に示す従来構成のSAWフィルタも作製した。対数や交差幅等については、図6A、図6Bに示す構成と同じとした。
図7、図8および図9に、これらのフィルタ特性の測定結果を示す。図7は、SAWフィルタ70の特性を示す図である。また、図8はSAWフィルタ75の特性を示す図である。さらに、図9は、従来構成のSAWフィルタの特性を示す結果である。図からわかるように、従来構成のSAWフィルタでは、通過帯域の所定の周波数のA点での挿入損失が1.41dBおよびB点での挿入損失が1.54dBであった。これに対して、SAWフィルタ70では、A点での挿入損失が1.37dBおよびB点での挿入損失が1.33dBであった。一方、SAWフィルタ75では、A点での挿入損失が1.37dBおよびB点での挿入損失が1.37dBであった。すなわち、本発明のSAWフィルタは、従来構成のSAWフィルタに比べて挿入損失を小さくできることが見出された。とくに、IDT電極間に反射器を設け、同相とすることで、より良好な特性が得られることが見出された。なお、本実施の形態で試作したSAWフィルタはPCS用途であり、A点の周波数は1930MHzで、B点の周波数は1990MHzである。
以上のように、本発明のSAWフィルタにおいては、チップサイズを小さくできるとともに、挿入損失も低減できることが見出された。このように挿入損失を低減できる理由については、以下のように推測している。
図6Bに示すSAWフィルタ75でIDT電極51の共振を考慮すると、IDT電極52が反射器電極56とは電極指ピッチが異なり、かつその本数も多い反射器電極として作用することから、実効的な共振長が長くなる。したがって、反射器のQ値が大きくなり、フィルタを構成した場合に挿入損失が小さくなるものと考えられる。一方、図6Aに示すSAWフィルタ70では、IDT電極51と隣接するIDT電極52とを同相にすることにより、これらの間に配置されている反射器電極58を通過した表面弾性波の一部が信号として伝播することになるため、さらに挿入損失を低減できるものと推測される。
つぎに、図10に示す構成のSAWフィルタについての特性を測定した結果について説明する。なお、図10においても、説明を容易にするためにIDT電極と反射器電極とをブロック構成で示している。
図10に示すSAWフィルタ100は、第1の弾性表面波伝播路上に4つのIDT電極51、52、53、54と、それらの両端部に設けた反射器電極56、57と、中央部のIDT電極52、53間に反射器電極67とを配設している。また、第2の弾性表面波伝播路上には、IDT電極60、61と、両端部および中央部に反射器電極62、63、68とが配設されている。第1の弾性表面波伝播路上のIDT電極51、52、53、54は、接続配線部92、93、94、95により電気的に直列に接続されている。また、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極60は接続配線部92とグランド20とに接続されており、もう一つのIDT電極61は接続配線部93とグランド20とに接続されている。
なお、このSAWフィルタ100の場合には、入力端子21は接続配線部92に接続され、出力端子22はIDT電極54の一方の端子に接続されていることが特徴である。
ここで、IDT電極51、52、53、54はすべて同じ84対で、その交差幅もすべて同じ25μmとした。また、反射器電極56、57の電極指本数は35本で、第1の電極パターンに配設した反射器電極67の電極指本数は10本とした。さらに、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極60、61は、それぞれ73対、68対とした。なお、反射器電極62、63の電極指本数は35本で、中央部の反射器電極68の電極指本数は7本とした。さらに、ηは0.5に設定した。なお、電極膜厚は約400nmである。
さらに、第2の弾性表面波伝播路上に2個の共振子を設けたラダー構成も作製した。このとき、IDT電極や反射器電極の対数および電極指本数等については、図10に示したSAWフィルタ100と同じに設定した。
図11は、SAWフィルタ100で、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極60、61を同相とした場合である。また、図12は、同じSAWフィルタ100の構成で、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極60、61を逆相とした場合である。さらに、図13は、第2の弾性表面波伝播路上に2個のラダー構成の共振子を設けた場合である。なお、これらにおいて、第1の弾性表面波伝播路上の2つのIDT電極51、52間および2つのIDT電極53、54間は逆相とし、2つのIDT電極52、53間については同相とした。
図13に示すように、第2の弾性表面波伝播路上のIDT電極と反射器電極とによりラダー構成としたSAWフィルタでは、通過帯域の所定の周波数のC点での挿入損失が1.06dB、D点での挿入損失が1.27dBであった。一方、図11に示すように、同相とした場合には、C点での挿入損失は0.98dBで、D点での挿入損失が1.18dBであった。さらに、図12から分かるように、逆相とした場合には、C点での挿入損失が1.01dBで、D点での挿入損失が1.23dBであった。なお、本実施の形態で試作したSAWフィルタはAMPS用途であり、C点の周波数は825MHzで、D点の周波数は849MHzである。
以上のように、SAWフィルタとしての特性は良好な結果が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
本発明にかかるSAWフィルタは、多くの共振子を必要とする高減衰特性のフィルタであっても、チップサイズを小さくでき、携帯電話等の通信分野、あるいはテレビ等の映像分野等のフィルタに有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体基板と、前記圧電体基板の表面で、かつ第1の弾性表面波伝播路上に配設された複数個のインターディジタルトランスデューサ電極と、複数の前記インターディジタルトランスデューサ電極を含み構成される第1の電極パターンの少なくとも両端部に配設された反射器電極と、前記圧電体基板の表面で、かつ前記第1の弾性表面波伝播路上とは異なる第2の弾性表面波伝播路上に配設された1個以上のインターディジタルトランスデューサ電極と、前記インターディジタルトランスデューサ電極を含み構成される第2の電極パターンの少なくとも両端部に配設された反射器電極とを有し、前記第1の弾性表面波伝播路上の前記インターディジタルトランスデューサ電極間を接続配線部により電気的に直列に接続するとともに、前記第1の電極パターンと前記第2の電極パターンとの間に配設された前記接続配線部とグランドとの間に前記第2の弾性表面波伝播路上の前記インターディジタルトランスデューサ電極を接続したことを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項2】
前記第2の弾性表面波伝播路上に配設された前記インターディジタルトランスデューサ電極と、前記インターディジタルトランスデューサ電極を含み構成される前記第2の電極パターンの少なくとも両端部に配設された前記反射器電極とにより少なくとも1つの弾性表面波共振子を構成したことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項3】
前記第2の弾性表面波伝播路上に配設された複数の前記インターディジタルトランスデューサ電極の一方の端子はグランドに接続し、他方の端子がそれぞれ異なる前記接続配線部と接続されたことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項4】
前記第1の弾性表面波伝搬路上に配設され、電気的に直列に接続された複数の前記インターディジタルトランスデューサ電極は、隣接する前記インターディジタルトランスデューサ電極間が互いに逆相になるように配置されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項5】
複数の前記インターディジタルトランスデューサ電極を含み構成される前記第1の電極パターンの前記インターディジタルトランスデューサ電極間に反射器電極を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項6】
前記第1の電極パターンの前記インターディジタルトランスデューサ電極間に設けた前記反射器電極をグランドに接続したことを特徴とする請求項5に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項7】
前記第1の電極パターンの前記インターディジタルトランスデューサ電極間を、前記反射器電極を介して電気的に直列に接続したことを特徴とする請求項5に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項8】
前記第1の電極パターンにおいて、隣接する前記インターディジタルトランスデューサ電極間が互いに同相になるように配置されたことを特徴とする請求項5に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項9】
圧電体基板と、前記圧電体基板の表面で、かつ第1の弾性表面波伝播路上に配設された複数個のインターディジタルトランスデューサ電極と、複数の前記インターディジタルトランスデューサ電極を含み構成される第1の電極パターンの少なくとも両端部に配設された反射器電極と、前記圧電体基板の表面で、かつ前記第1の弾性表面波伝播路上とは異なる第2の弾性表面波伝播路上に配設された1つ以上のインターディジタルトランスデューサ電極と、前記インターディジタルトランスデューサ電極を含み構成される第2の電極パターンの少なくとも両端部に配設された反射器電極とから弾性表面波共振子を構成し、前記第1の弾性表面波伝播路上の前記インターディジタルトランスデューサ電極は一方の端子をそれぞれグランドに接続し、他方の端子を前記弾性表面波共振子の別々の端子に接続したことを特徴とする弾性表面波フィルタ。

【国際公開番号】WO2005/013481
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512557(P2005−512557)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011116
【国際出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】