説明

弾道複合体のマイクロ波加工

本発明は弾道抵抗性製品の製造に関する。成形前に、慣用の予熱方法の代替手段としてマイクロ波エネルギーを用いて弾道抵抗性布帛を加熱すると、加熱時間が短縮し製造効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形可能な弾道抵抗性製品の製造に関する。本成形方法の一部として、弾道抵抗性慣用の予熱による加熱法の代替法としてマイクロ波エネルギーを用いて弾道抵抗性布帛を加熱し、加熱時間を短縮し且つ製造効率を向上させる。
【背景技術】
【0002】
高速の発射体に対して優れた特性をもつ高強度繊維を含む弾道抵抗性製品は公知である。防弾チョッキ、ヘルメット、車体パネル及び軍用装備の構造部材などの製品は通常、高強度繊維を含む布帛から製造されている。慣用の高強度繊維としては、ポリエチレン繊維、パラ-アラミド繊維[例えばポリ(フェニレンジアミンテレフタルアミド)]、グラファイト繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維などが挙げられる。チョッキまたはチョッキの部品などの多くの用途に関しては、繊維は織り布帛または編み布帛の状態で使用することができる。他の用途の多くに関しては、繊維はマトリックス材料中に封入したり、埋め込んだりして、硬質または軟質布帛を形成する。
【0003】
ヘルメット、パネル及びチョッキなどの製品の製造に有用な種々の弾道抵抗性構築物が公知である。例えば本明細書中、その全体が参照として含まれる米国特許第4,403,012号、同第4,457,985号、同第4,613,535号、同第4,623,574号、同第4,650,710号、同第4,737,402号、同第4,748,064号、同第5,552,208号、同第5,587,230号、同第6,642,159号、同第6,841,492号、同第6,846,758号は、伸びきり鎖超高分子量ポリエチレンなどの材料から製造した高強度繊維を含む弾道抵抗性複合体について記載する。これらの複合体は、銃弾、破裂弾、榴散弾などの発射体からの高速の衝撃による貫通に対して様々な程度の抵抗性を示す。
【0004】
例えば米国特許第4,623,574号及び同第4,748,064号は、エラストマーマトリックス中に埋め込まれた高強度繊維を含む単純な複合体構造を開示する。米国特許第4,650,710号は、高強度伸びきり鎖ポリオレフィン(ECP)繊維から構成される複数の柔軟な繊維から製造した柔軟な製品を開示する。網状構造の繊維は、低弾性率エラストマー材料でコーティングされている。米国特許第5,552,208号及び同第5,587,230号は、ビニルエステルとジアリルフタレートを含むマトリックス組成物と高強度繊維の少なくとも一つの網状構造とを含む製品及び該製品を製造する方法について開示する。米国特許第6,642,159号は、マトリックス中に配置されたフィラメントの網状構造を含み、エラストマー層がその間に配置されている複数の繊維層を有する耐衝撃性硬質複合体を開示する。該複合体は硬質プレートに接着されて、装甲を貫通する発射体に対する保護を高める。
【0005】
通常、弾道抵抗性製品は、繊維、任意のマトリックス組成物と任意の追加的なポリマー層とが所望の配置で一体化されものに、特定の成形サイクル時間、熱と圧力とをかけることによって該一体化物を成形する。該成形方法では、成形温度は、弾道抵抗性布帛の構成成分である繊維に対し損傷を与えないような低温であることが非常に重要である。特に、成形温度は、繊維の損傷が発生する温度または繊維が形成されるポリマーの融点よりも低いことが非常に重要である。例えばハネウェル・インターナショナル社製SPECTRA(登録商標)繊維などの伸びきり鎖ポリエチレン繊維に関しては、約68°F(20℃)〜約293°F(145℃)の成形温度が通常許容可能である。しかしながら、長時間265°F(129℃)を超えるまで熱を加えた後では、繊維は影響を受け、SPECTRA繊維は300°F(149℃)で溶融する。265°F(129.4℃)を超える温度では繊維層のフィラメントが変形することがあり、その弾道抵抗特性が低下する。他のタイプの繊維は、より高温の成形温度に耐えることができる。例えばアラミド繊維に関しては、温度範囲の上限は、伸びきり鎖ポリエチレン繊維よりも通常20℃〜約30℃高い。
【0006】
さらに効率的な方法では、成形時間を最も短かくするために成形温度を最も高温にすることも望ましい。一般的な対流加熱を用いると、標準的な成形時間は、約176°F(80℃)〜約293°F(145℃)の温度範囲及び約10psi(69kPa)〜約10,000psi(69,000kPa)の圧力の下で、約20〜約60分間を変動する。さらに一般的な対流加熱では、成形前に少なくとも10分間、成形機を予熱しなければならない。従って、当業界には、比較的低い温度、比較的短い成形時間で弾道抵抗性製品を効率的に成形し得る、より効率的な布帛成形プロセスに対する需要が存在する。
【0007】
本発明は、当業界における上記要求に対する解決策をもたらす。本発明は、前記製品を成形するための、製造時の加熱時間が短い、弾道抵抗性製品の製造方法を提供する。ハネウェル・インターナショナル社製のSpectra Shield(登録商標)布帛は通常、熱に対して不良導体である。従って、そのような繊維を成形して弾道抵抗性製品に加工できるくらいの高温にするには長い予熱時間が必要である。この予熱時間を短縮することによって、製造効率を顕著に改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,403,012号
【特許文献2】米国特許第4,457,985号
【特許文献3】米国特許第4,613,535号
【特許文献4】米国特許第4,623,574号
【特許文献5】米国特許第4,650,710号
【特許文献6】米国特許第4,737,402号
【特許文献7】米国特許第4,748,064号
【特許文献8】米国特許第5,552,208号
【特許文献9】米国特許第5,587,230号
【特許文献10】米国特許第6,642,159号
【特許文献11】米国特許第6,841,492号
【特許文献12】米国特許第6,846,758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、マイクロ波エネルギーで弾道抵抗性布帛を加熱し、続いて加熱済みの布帛を成形することを含む、弾道抵抗性製品の成形法を開示する。マイクロ波エネルギーで加熱することによって、全加熱及び成形時間が顕著に短縮される。本発明の方法は、慣用の加熱方法よりもはるかに効率的であり、且つかなり高い生産性をもたらす。さらに、慣用の熱源を使用するとき、繊維の間に良好な結合を確保するためには長時間高温に暴露することが必要であり、繊維が劣化してしまうこともある。マイクロ波プロセスでは、加熱時間を短縮することができ、且つマイクロ波エネルギーの均一分散性及び加熱均一性のために、サンプル内で顕著な温度勾配が発生しないようにすることによって、この問題を回避する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、製品の製造法であって、
a)配列状に配置された複数の繊維を含む布帛を準備すること、ここで前記布帛は約7g/デニール以上の靱性と、約150g/デニール以上の引張弾性率とを有し;前記布帛はその上に任意成分としてのマイクロ波反応性組成物を有する;及び
b)少なくともおよそ前記繊維の軟化温度又は前記任意成分のマイクロ波反応性組成物の軟化温度にまで前記繊維または前記任意成分のマイクロ波反応性組成物を加熱するのに十分なマイクロ波エネルギーを前記布帛にかけることによって、電子レンジ中で前記布帛を加熱すること;
c)マイクロ波エネルギーの適用により前記布帛の温度が少なくともおよそ前記繊維の軟化温度又は前記任意成分のマイクロ波反応性組成物の軟化温度である間に、前記加熱した布帛を製品に成形すること;及び
d)成形した布帛を放冷すること、
を含む前記方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、圧密化繊維網状構造を形成する方法であって、繊維の前記圧密化網状構造は複数の繊維層を含み、各繊維層は約7g/デニール以上の靱性及び約150g/デニール以上の引張弾性率を有する複数の繊維を含み;前記繊維はその上にポリマーマトリックス組成物を有し;該圧密化繊維網状構造は熱及び圧力下で圧密化され、ここで、ポリマーマトリックス組成物の少なくともおよそ軟化温度にまで前記ポリマーマトリックス組成物を加熱するのに十分なマイクロ波エネルギーを加えることによって圧密化熱が生じることを特徴とする前記方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、弾道抵抗性布帛を含む弾道抵抗性製品であって、前記弾道抵抗性布帛は、配列状に配置された複数の繊維を含み、前記繊維は約7g/デニール以上の靱性及び約150g/デニール以上の引張弾性率を有し;前記繊維は、その上にコーティングされた乾燥マイクロ波反応性組成物を有し、該マイクロ波反応性組成物は、マイクロ波エネルギーを加えることによって、その軟化温度より高温に加熱されたことを特徴とする、前記弾道抵抗性製品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
電子レンジは、弾道抵抗性布帛などの多くの不導体材料を均一に加熱する効率的な方法を提供する。弾道抵抗性布帛の電子レンジ処理により、エネルギーと時間の節約、高いプロセス歩留まり及び処理量による経済的利益などの望ましい恩恵がもたらされる。本明細書中で製造した材料は、マイクロ波によって均一なエネルギー分散と均一な加熱により、見かけ上他の方法によっては達成されない特徴的な均一なミクロ構造をもたらす。
【0014】
本発明のために、優れた耐弾道貫通性(ballistic penetration resistance)を有する布帛は、高速の発射体に対して優れた特性を示すものを表現する。本明細書中に使用される「繊維」とは、その長手方向の寸法が幅及び厚さの横方向の寸法よりもはるかに大きい細長い物体である。本発明で使用する繊維の断面は広範囲を変動し得る。これらは断面が円形、扁平(flat)、または楕円形であってもよい。従って、この「繊維」という用語は、規則的または非規則的な断面をもつフィラメント、リボン、ストリップなどを包含する。該繊維は、繊維の線状方向又は長手方向の軸から突出する一つ以上の規則的な又は非規則的なローブを有する非規則的又は規則的なマルチ・ローブ形の断面を有し得る。もっとも一般的には、繊維はシングル・ローブであり、実質的に円形の断面をもつ。
【0015】
本明細書中に使用される「ヤーン」とは、絡まり合った繊維のストランドである。「並行(又は平行)配列」とは、繊維またはヤーンの規則的に並行な配列を意味する。繊維「層」とは、織り繊維又は不織繊維又は織りヤーン又は不織ヤーンの平坦な配置を意味する。繊維「網状構造」とは、複数の絡まり合った繊維又はヤーンの層を指す。繊維網状構造は種々の構造をとることができる。例えば、繊維又はヤーンは、フェルト又はそれとは別の織り構造、不織構造若しくは編み構造のものであってよく、あるいは任意の他の慣用法により網状構造に形成されたものでもよい。通常、「布帛(fabric)」は、織り材料、不織材料、又はその組み合わせのいずれかに関する。本明細書中に使用される「布帛」なる用語は、複合体に形成するために成形する前又は成形した後の複数の繊維層を含む構造体を意味する。
【0016】
本明細書中に使用される「高強度高引張弾性率繊維」なる用語は、いずれもASTM D2256で測定して、少なくとも約7g/デニール以上の好ましい靱性と、少なくとも約150g/デニール以上の好ましい引張弾性率と、好ましくは約8J/g以上の破断エネルギーを有する繊維である。本明細書中に使用される「デニール」とは、繊維又はヤーン9000メートル当たりのグラム単位での質量と等価の線形密度の単位を指す。本明細書中に使用される「靱性」なる用語は、応力の加えられていない試験片の単位線形密度(デニール)当たりのグラム重量として表される引張応力を指す。繊維の「初期弾性率」とは、変形抵抗性に代表される材料の特性である。「引張弾性率」なる用語は、応力変化(もとの繊維長の割合(in/in)として表す)に対する靱性変化(デニール当たりのグラム重量(d/g)で表わす)の比を指す。
【0017】
特に好適な高強度高引張弾性率繊維材料としては、伸びきり鎖ポリオレフィン繊維、例えば高配向高分子量ポリエチレン繊維、特に超高分子量ポリエチレン繊維、及び超高分子量ポリプロピレン繊維が挙げられる。伸びきり鎖ポリビニルアルコール繊維、伸びきり鎖ポリアクリロニトリル繊維、パラ-アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維、例えばポリベンゾオキサゾール繊維(PBO)及びポリベンゾチアゾール(PBT)繊維及び液晶コポリエステル繊維が挙げられる。これらの繊維タイプはそれぞれ当業界で公知である。
【0018】
ポリエチレンの場合、好ましい繊維は、少なくとも500,000、好ましくは少なくとも100万、より好ましくは200万〜500万の分子量を有する伸びきり鎖ポリエチレンである。そのような伸びきり鎖ポリエチレン(ECPE)繊維は、米国特許第4,137,394号若しくは同第4,356,138号(参照により本明細書中に援用される)に記載の溶液紡糸プロセスで成長させることができるか、又は米国特許第4,551,296号及び同第5,006,390号(参照により本明細書中に援用される)に記載のとおり、ゲル構造を形成するために溶液から紡糸することができる。
【0019】
本発明に使用するのに最も好ましいポリエチレン繊維は、ハネウェル・インターナショナル社製の商品名Spectra(登録商標)の下で販売されているポリエチレン繊維である。Spectra繊維は当業界で公知であり、Harpellらの共同出願の米国特許第4,623,547号及び同第4,748,064号に記載されている。Spectra高性能繊維は、水に浮くほど十分に軽いのに、重量比で言えばスチールより10倍も強い。この繊維は、衝撃、水分、化学的摩耗及び穿刺に対する耐性など、他の重要な特性も併有する。
【0020】
好適なポリプロピレン繊維としては、米国特許第4,413,110号(参照により本明細書中に援用される)に記載の高配向伸びきり鎖ポリプロピレン(ECPP)繊維が挙げられる。好適なポリビニルアルコール(PVOH)繊維は、米国特許第4,440,711号及び同第4,599,267号(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。好適なポリアクリロニトリル(PAN)繊維は、米国特許第4,535,027号(参照により本明細書中に援用される)に開示されている。これらの繊維のタイプはどれも従来から知られており、広く商業的に入手可能である。
【0021】
好適なポリアミド(芳香族ポリアミド)またはパラ-アラミド繊維は商業的に入手可能であり、又、例えば米国特許第3,671,542号に記載されている。例えば有用なポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)フィラメントは、KEVLAR(登録商標)の商標の下デュポン社により商業生産されている。本発明の実施のために、NOMEX(登録商標)の下デュポン社により商業生産されているポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)繊維が有用である。本発明の実施に好適なポリベンザゾール繊維は商業的に入手可能であり、米国特許第5,286,833号、同第5,296,185号、同第5,356,584号、同第5,534,205号及び同第6,040,050号(参照により本明細書中に援用される)に開示されている。好ましいポリベンザゾール繊維は、東洋紡績社.製のZYLON(登録商標)ブランド繊維である。本発明の実施に好適な液晶コポリエステル繊維は商業的に入手可能であり、米国特許第3,975,487号、同第4,118,372号及び同第4,161,470号(それぞれは、参照により本明細書中に援用される)に開示されている。
【0022】
本発明で使用するための他の好適な繊維のタイプとしては、ガラス繊維、炭素から形成した繊維、玄武岩又は他の鉱物から形成した繊維、M5(登録商標)繊維並びに上記材料の組み合わせが挙げられ、これらは全て商業的に入手可能である。M5(登録商標)繊維はマゼラン・システムズ・インターナショナル社(バージニア州リッチモンド)により製造されており、米国特許第5,674,969号、同第5,939,553号、同第5,945,537号、及び同第6,040,478号(それぞれは、参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
【0023】
上記のように、高強度高靱性繊維は、ASTM D2256でそれぞれ測定して、約7g/デニール以上の好ましい靱性、約150g/デニール以上の好ましい引張弾性率及び約8J/g以上の好ましい破断エネルギー(energy-to-break)を有するものである。より強力な弾道抵抗特性に関しては、繊維の靱性は約15g/デニール以上、好ましくは約20g/デニール以上、より好ましくは約25g/デニール以上であり、最も好ましくは約30g/デニール以上である。本発明の繊維は、また300g/デニール以上、より好ましくは約400g/デニール以上、より好ましくは500g/デニール以上、より好ましくは約1,000g/デニール以上、最も好ましくは約1,500g/デニール以上の引張弾性率をもつ。さらに高い弾道保護特性をもつ繊維は、約15J/g以上、より好ましくは約25J/g以上、より好ましくは約30J/g以上、最も好ましくは約40J/g以上の破断エネルギーをもつ。上記の高強度特性の組み合わせは、公知の溶液成長又はゲル繊維プロセスを使用することにより得ることができる。米国特許第4,413,110号、同第4,440,711号、同第4,535,027号、同第4,457,985号、同第4,623,547号、同第4,650,710号及び同第4,748,064号は、概して、本発明で使用する好ましい高強度伸びきり鎖ポリエチレン繊維を論じており、これらの特許の開示内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0024】
弾道抵抗性布帛は、一つ以上の織り繊維層若しくは不織繊維層、又はその組み合わせを含むことができる。織り繊維層及び不織繊維層は、当業界で公知の方法を使用して形成することができる。好適な不織繊維層としては、フェルトのようにランダム配向した繊維、並びに実質的に並行配列に配置された複数の繊維若しくはヤーンが挙げられる。一般的な構造において、本発明の不織繊維層は、当業界でマトリックス組成物と呼ばれる、エラストマー性または硬質ポリマー組成物中に、単層圧密化網状構造の繊維を含む。通常、「ポリマーマトリックス組成物」は、圧密化又はラミネート工程後に繊維を一緒に結合するバインダー材料である。「圧密化網状構造」とは、複数の繊維層及びマトリックス組成物の圧密化された一体化物を意味する。本明細書中に使用される「単層」構造とは、一つの単一構造中に圧密化された一以上の個別の繊維層から構成された構造を指し、ここで圧密化は、乾燥、冷却、加熱、圧力又はその組み合わせによって実施することができる。圧密化網状構造は、そのようなマトリックス組成物でコーティングされ、複数の層に形成され、単一布帛層に圧密化された複数のヤーンも含むことができる。
【0025】
ランダム又は並行な不織並行配向(non-woven parallel orientation)では、布帛層を形成している個々の繊維は、当業界で公知の方法を使用して、マトリックス組成物でコーティングして、マトリックス組成物で含浸し、マトリックス組成物中に埋め込み、又はマトリックス組成物を適用してよく、あるいは、しなくてよい。マトリックス組成物は、層を形成する前又は後のいずれかの時点で高強度繊維に塗布し、続いてマトリックス材料−繊維一体化物と一緒に圧密化して、多層複合体を形成することができる。特に本発明の不織繊維層は、以下のものを含む。
i)複数の層、該層はそれぞれ複数の一方向に整列した並行繊維を含み、ここで前記層は、それぞれ隣接する繊維層の長手繊維方向に対して一定の角度でクロスプライされており;ここで前記繊維は、必要に応じて、該繊維上にポリマーマトリックス組成物を有する;又は
ii)複数のランダムに配列した繊維を含む一つ以上の層、ここで前記繊維は、必要に応じて、該繊維上にポリマーマトリックス組成物を有する。
【0026】
当業界で従来から知られているように、一つの層の繊維配列方向が別の層の繊維配列方向に対して一定の角度で回転され、これらが並行でないように個々の構成成分である繊維層がクロスプライされているときに、不織布は優れた弾道抵抗性をもたらす。例えば、好ましい構造は、一つの層の繊維の長手方向が、他の層の繊維の長手方向に対して垂直となるように配置された本発明の二つの繊維層を有する。別の例では、五層構造は、第二、第三、第四及び第五の層が、第一の層に対して、必ずしもこの順である必要はないが、+45°、−45°、90°及び0°で回転されているように形成される。本発明のために、隣接層は、別の層の繊維の長手方向に対して約0°〜約90°の間の実質的に任意の角度で配置することができるが、約0°〜約90°の繊維配向が好ましい。上記の例は二つまたは五つの個別の繊維層を含む布帛について例示しているが、これに限定されるものではない。不織繊維層は、米国特許第6,642,159号に記載されている方法など、様々な公知の方法によって構築することができる。本発明の単層圧密化網状構造は一般に種々の用途にとって望ましいように、約20〜約40層以上などの任意の数のクロスプライされた層を含むことができる。
【0027】
織り繊維層は、平織、千鳥綾織、バスケット織、繻子織、綾織などの任意の布帛織りを使用して当業界で公知の方法を使用して形成することができる。平織が最も一般的である。織る前に、それぞれの織り繊維材料の個々の繊維を、不織繊維層と同一のマトリックス組成物を使用して、不織繊維層と同様の方法でポリマーマトリックス組成物でコーティングしてよく、又は、コーティングしなくてよい。
【0028】
あるいは、布帛は、不織/織り/不織構造又は織り/不織/織り構造などの織り繊維層又は不織繊維層が交互に並んだ、又は、交互にならんでいないハイブリッド一体化物を含むことができる。弾道抵抗性布帛としては、任意の数で組み合わせた織り層及び/または不織層を含むことができ、それぞれの不織層は、複数の構成成分層を含む単層圧密化網状構造を含んでよい。隣接層は、必要に応じて、中間の接着剤層によって結合させることができる。特に、各織り層は、接着剤層によって隣接層に結合されることが好ましい。
【0029】
好適な接着剤の非排他的な例としては、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレンコポリマー、ポリプロピレン、プロピレンコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、ポリスルフィドポリマー、ポリウレタンエラストマー、ポリクロロプレン、当業界で公知の一種以上の可塑剤(例えばジオクチルフタレート)を使用する可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、ポリ(イソブチレン-コ-イソプレン)、ポリアクリレート、ポリエステル、不飽和ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、エチレンのコポリマー、熱可塑性エラストマー、フェノール樹脂、ポリブチラール、エポキシポリマー、スチレンブロックコポリマー、例えばスチレン-イソプレン-スチレン又はスチレン-ブタジエン-スチレンのタイプ、並びに当業界で公知の他の好適な接着剤組成物が挙げられる。特に好ましい接着剤組成物としては、メタクリレート接着剤、シアノアクリレート接着剤、UV硬化接着剤、ウレタン接着剤、エポキシ接着剤、エチレン酢酸ビニル接着剤、及び上記材料のブレンドが挙げられる。最も好ましくは、接着剤組成物は、熱可塑性ポリマー、特にエチレン酢酸ビニル接着剤を含む。そのような接着剤は、ホットメルト、フィルム、ペースト若しくはスプレーの形態で、または二成分液体接着剤の形態で塗布することができる。
【0030】
本発明の織り繊維層又は不織繊維層は、低弾性率エラストマー性マトリックス材料と、高弾性率硬質マトリックス材料の両方を含む、種々のマトリックス材料を使用して製造することができる。好適なマトリックス材料の非排他的な例としては、それぞれASTM D638により37℃で測定して、約6,000psi(41.3MPa)未満の初期引張弾性率を有する低弾性率エラストマー性材料、及び、少なくとも約300,000psi(2068MPa)の初期引張弾性率を有する高弾性率硬質材料とが挙げられる。本明細書中に使用される「引張弾性率」なる用語は、繊維に関してはASTM D2256により測定され、マトリックス材料に関してはASTM D638により測定された弾性係数を意味する。
【0031】
エラストマー性マトリックス組成物は、種々のポリマー性材料及び非ポリマー性材料を含むことができる。好ましいエラストマー性マトリックス組成物は、低弾性率エラストマー性材料を含む。本発明のために、低弾性率エラストマー性材料は、ASTM D638試験方法に従って測定して、約6,000psi(41.4MPa)以下の引張弾性率をもつ。好ましくは、エラストマーの引張弾性率は約4,000psi(27.6MPa)以下、より好ましくは約2400psi(16.5MPa)以下、より好ましくは1200psi(8.23MPa)以下、最も好ましくは約500psi(3.45MPa)以下である。エラストマーのガラス転移温度は、好ましくは約0℃未満、より好ましくは約−40℃未満、最も好ましくは約−50℃未満である。エラストマーは、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%、最も好ましくは少なくとも約300%の破断点伸びを有する。
【0032】
低弾性率を有する広範な種類のマトリックス材料及び配合物をマトリックスとして使用することができる。代表例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、ポリスルフィドポリマー、ポリウレタンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、ポリ(イソブチレン-コ-イソプレン)、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、エチレンのコポリマー、及びその組み合わせ、並びにポリオレフィン繊維の融点未満で硬化可能な他の低弾性率ポリマー及びコポリマーが挙げられる。また、異なるエラストマー材料のブレンド、又は、エラストマー材料と一種以上の熱可塑性樹脂とのブレンドも好ましい。
【0033】
特に有用なのは、共役ジエンとビニル芳香族モノマーとのブロックコポリマーである。ブタジエンとイソプレンは、好ましい共役ジエンエラストマーである。スチレン、ビニルトルエン及びt-ブチルスチレンは、好ましい共役芳香族モノマーである。ポリイソプレンを含むブロックコポリマーを水素化して、飽和炭化水素エラストマーセグメントを有する熱可塑性エラストマーを製造することができる。このポリマーはA-B-A型の単純な三ブロックコポリマー、(AB)n型(n=2〜10)のマルチブロックコポリマー、又はR-(BA)x型(x=3〜150)のラジカル配置コポリマー(radical configuration copolymer)であってよく、ここでAはポリビニル芳香族モノマー由来のブロックであり、Bは共役ジエンエラストマー由来のブロックである。これらのポリマーの多くは、クレイトン・ポリマーズ社(テキサス州ヒューストン)により商業生産されており、広報“Kraton(登録商標)Thermoplastic Rubber”、SC-68-81に記載されている。最も好ましいマトリックスポリマーは、クレイトン・ポリマーズ社により商業生産されている、商標Kraton(登録商標)の下で市販されているスチレンブロックコポリマーを含む。
【0034】
本明細書において有用な、好ましい、高弾性率硬質マトリックス材料としては、ビニルエステルポリマー又はスチレン−ブタジエンブロックコポリマーなどの材料、さらに又、ビニルエステルとジアリルフタレート、又は、フェノールホルムアルデヒドとポリビニルブチラールなどのポリマー混合物も挙げられる。本発明での使用に特に好ましい硬質マトリックス材料は、好ましくはメチルエチルケトンなどの炭素−炭素飽和溶媒に可溶性で、硬化したときにASTM D638により測定して、少なくとも約1×106psi(6895Mpa)の高い引張弾性率を有する熱硬化性ポリマーである。特に好ましい硬質マトリックス材料は、米国特許第6,642,159号(参照により本明細書中に援用される)に開示されているマトリックス材料である。
【0035】
本発明の布帛複合体から形成した物品の硬度、衝撃及び弾道特性は、マトリックスポリマーの引張弾性率によって影響を受ける。例えば米国特許第4,623,574号は、約6000psi(41,300kPa)未満の引張弾性率を有するエラストマーマトリックスで構築した繊維強化複合体は、高弾性ポリマーで構築した複合体と、マトリックスを使用しない同一繊維構造体の両方とを比較して、優れた弾道抵抗性能を有することを開示する。しかしながら、低引張弾性率のマトリックスポリマーでも低硬度の複合体を与える。さらに特定の用途、特に複合体が弾道抵抗性モード及び構造モードの両方で機能しなければならない特定の用途では、弾道抵抗性と硬度の優れた組み合わせが必要である。従って、使用すべきマトリックスポリマーの最も好適なタイプは、本発明の布帛から形成すべき物品の種類に応じて変動し得る。両方の特性を併存させるために、好適なマトリックス組成物は低弾性率材料と高弾性率材料の両方を組み合わせて、単一のマトリックス組成物を形成することができる。
【0036】
弾道抵抗性布帛は種々の用途に使用することができる。例えば本発明の一つ以上の布帛を一緒に配列して、当業界で公知のようにチョッキ、パンツ、帽子又はその他の衣類などの衣料品等、柔軟な物品を形成することができる。本発明の布帛は、ヘルメットなどの他の個人用防護具に成形することができ、又は所望の保護遮蔽体、カバー若しくはブランケットに成形することができる。他の一般的な構造としては、平坦な平面パネル又は特注の成形パネルが挙げられる。成形した布帛を使用して、例えばNIJレベルI、IIA、II、IIIA及びIII保護用の武装化した一般車両を強化するために;警察車輌及び他の車輌用の装甲扉及び天井として;NIJレベルI、IIA、II、IIIA及びIII保護用の防弾チョッキの外傷パッド又は胸部プレートインサートとして;NIJレベルI、IIA、II、IIIA及びIII保護での携帯型暴徒鎮圧用シールド用、または爆発処理デバイス用に使用することができる。多重布帛を結合または非結合配列で積み重ねたり配置することができる。結合形成は、当業界で公知の任意の手段、例えば接着材料、他の熱可塑性材料、又は非熱可塑性繊維若しくは材料と一緒にステッチがけ、若しくは結合することにより実施することができる。
【0037】
弾道抵抗性布帛からそのような所望の物品を製造するために、布帛は、当業界で「成形」と呼ばれるプロセスにかける。典型的な成形プロセスでは、任意の数の織り層及び/または不織層(パイルとも呼ばれる)を含む布帛を所望の成形温度に加熱又は予熱し、これによって成形品又はパネルに成形できる。加熱された布帛は、通常、加圧下で、好適な成形装置中で成形又は圧縮される。典型的な成形圧力は、約50psi〜約5000psi、通常は約200psi〜約1500psiを変動する。該成形段階には、約4秒〜約45分を要する。
【0038】
本発明によれば、任意の他の従来の加熱方法の代わりに、布帛は電子レンジ中で加熱する。電子レンジ加熱は、その効率的な体積熱生成(volumetric heat production)により、慣用の加熱に比べて効率的な代替法である。体積加熱とは、表面から内側への熱移動とは対照的に、バルクの加熱として定義される。マイクロ波によって分子を励起させ、回転させる波を発生することによって材料内で加熱させる。「極性」であり、且つ正と負の端部をもつ全ての分子は前後に回転して、オーブン中でマイクロ波の変化する電場と一致する。この回転により熱の形でエネルギーが発生する。慣用の加熱と異なり、この作用はマイクロ波が当たっている材料全体で同時に起きる。マイクロ波は300MHz(3×108サイクル/秒)〜300GHz(3×1011サイクル/秒)の周波帯の電磁波である。これらの二つの周波数は、それぞれ1mと1mmの波長に対応する。全ての家庭用電子レンジ及び研究室用マイクロ波処理装置は、約12.2cmの波長に相当する2.45GHzで操作する。工業用電子レンジは2.45GHz周波数で操作し、900MHzまたはそれ以上の周波数、例えば10GHzのより大きな周波数でも操作することができ、通常、1000ワット〜300ワットの電力で利用可能である。本発明は、特定のマイクロ波周波数に限定されない。
【0039】
通常、電子レンジ処理システムは、マイクロ波供給源、電力をサンプルに送達するアプリケーター、及び加熱を制御するシステムからなる。マイクロ波発生器は通常、真空管又は半導体素子である。電子レンジでは、該管の定格値は通常1.5kWである。該管は操作するためには電場が必要であり、電場は永久磁石または電磁石のいずれかによって供給される。マグネトロンは、材料処理用途で最も一般的なマイクロ波供給源である。通常、マイクロ波エネルギーは、マルチモード又はシングルモードマイクロ波照射装置によって材料に適用され、温度制御は通常、入力を変動させるか又はパルス源(pulsed source)を変動させることによって達成される。本発明は、家庭での利用に十分な電子レンジ、工業用電子レンジと、他の特徴的な電子レンジ(特定の用途の対応した特定の波長を使用し得る又は使用し得ない)等、特化された電子レンジの使用を包含する。
【0040】
材料の処理に関してマイクロ波の潜在的な利用を制限する重要因子の1つは、材料のマイクロ波照射(本質的に高周波ラジオ波)を吸収する能力である。慣用の加熱とは対照的に、マイクロ波は透過性放射線によって材料を貫通する。熱が発生したかどうかは、材料の誘電定数及び誘電正接などの材料自体の特異的な誘電特性によって測定される。
【0041】
ほとんどの材料においては、マイクロ波の吸収は材料の水分量に比例する。しかしながら材料の処理においては、食品のマイクロ波処理とは異なり、水以外の原子または原子団へのマイクロ波エネルギーのカップリングがおきる。通常知られているように、多くのポリマー材料はマイクロ波放射を吸収できない。特に優れた弾道抵抗性をもつ布帛を形成するのに好適な高強度繊維のある種類は、マイクロ波放射を吸収することができるかもしれないが、他のものはできないかもしれない。しかしながら、マイクロ波吸収添加剤とポリマーマトリックス組成物とをブレンドする、又はマイクロ波反応性組成物を材料上に塗布すると、マイクロ波放射を吸収できない布帛がマイクロ波放射によって好適に処理し得ることが見出された。本明細書中に使用される「マイクロ波反応性組成物」とは、繊維又はポリマーマトリックス組成物をそれぞれ軟化温度以上になるまで加熱するのに十分なマイクロ波放射を吸収する組成物である。
【0042】
上記のように、多くのポリマー性材料はマイクロ波放射を吸収できない。例えば、アラミド繊維は、繊維の軟化温度以上(特に約60℃以上)に布帛を加熱するのに十分なマイクロ波放射に対する吸収性を有するが、ポリエチレン繊維にはそのような吸収性はない。特にSpectraポリエチレン繊維は、マイクロ波放射に対して実質的に透過性であることが見出された。ナイロン、ポリエステル及びポリエチレンナフタレート繊維も殆ど部分的にしかマイクロ波を吸収しない。
【0043】
マイクロ波放射に対して透過性の繊維から布帛を製造する場合、繊維は、繊維またはポリマーマトリックス組成物の軟化温度に到達するのに十分なマイクロ波吸収性を有する材料で少なくとも部分的にコーティングまたは接触させなければならない。例えば、マイクロ波吸収性ポリマーマトリックス組成物などのマイクロ波吸収性材料を布帛の表面上にコーティングすることができる。ポリマーマトリックス組成物はそれ自体、またはマイクロ波反応性添加剤とブレンドすることによってマイクロ波吸収性であってもよい。マイクロ波反応性添加剤はマイクロ波エネルギーを吸収し、該エネルギーを繊維に移動させる。特に、極性ポリマー繊維、極性ポリマーマトリックス組成物及び極性添加物などの極性材料は、マイクロ波反応性である。導電性繊維(例えば炭素繊維)及び導電性ポリマーマトリックス組成物(ポリアニリン、ポリピロールなど)の導電性材料はマイクロ波反応性である。非マイクロ波吸収性繊維タイプと、一種以上の極性ポリマー、導電性ポリマーまたはマイクロ波反応性添加剤とを組み合わせると、マイクロ波エネルギーに対して良好なカップリングを提供する。
【0044】
好適なマイクロ波反応性添加剤の非限定的な例としては、金属粒子(例えば磁気粒子、及び金属粉末、誘電性粒子及び誘電性粉末、不溶性マイクロ波吸収性ポリマー粒子及び非分散性マイクロ波吸収性ポリマー粒子等。ただしこれらに限定されない。)が挙げられる。金属固体はマイクロ波放射を反射することが公知であるが、粉末金属はマイクロ波放射を吸収するし、加熱され得る。有用な誘電性及びポリマー粉末としては、ポリマーマトリックス材料を慣用の電子レンジ中でその軟化点以上になるまで加熱できるようなものが挙げられる。好適な材料の非限定的な例は、Microwave Processing of Materials III、Ronald L.Beatty、Willard H.Sutton及びMagdy F.Iskander編、Materials Research Society、第269巻(1992年10月) (参照により本明細書中に援用される)に記載されている。米国特許第5,349,168号及び同第6,066,375号(参照により本明細書中に援用される)に記載の材料も好適である。マイクロ波場エネルギー(microwave field energy)の電気的または磁気的部分を吸収し、且つこのエネルギーを熱に転換し得る有用なマイクロ波反応性材料の例としては、金属粉末、例えば粉末化ニッケル、アンチモン、銅、モリブデン、ブロンズ、鉄、スチール、クロム、スズ、亜鉛、銀、金、コバルト、タングステン、チタン、アルミニウム、例えば箔アルミニウム粉末及びその合金が挙げられる。他の有用な添加剤としては、導電性材料、例えば通常0.1〜100μmの範囲のサイズのカーボンブラック、炭素繊維、金属繊維及び金属フレーク、球又は針がある。これらのマイクロ波反応性材料は、ポリマーマトリックス組成物とブレンドすると特に有用である。
【0045】
グラファイトなどの他の導電性材料、及び、窒化ケイ素などの半導体性材料、並びに金属酸化物(粒子状で利用可能な場合)などの磁性材料も使用することができる。これらの材料は非限定的であり、通常、2.45GHzの慣用の電子レンジ中で少なくともマトリックス又は繊維の軟化温度にまでポリマーマトリックス材料またはポリマー繊維を加熱することができる任意の他の添加材料を使用することができる。使用される該材料は粒子状であり、フレーク又は粉末であってよい。該粒子のサイズは、選択した粒状材料、発生すべき熱量、適用すべきコーティング組成物の状態などの多くの因子によって変動し得る。
【0046】
他の有用なマイクロ波反応性添加剤としては、油、例えば時計油、並びにグリセロール、窒化ケイ素、窒化カルシウム、及びアルミン酸カルシウムが挙げられる。他の好適な添加剤としては、回転、振動または並進運動の自由度が高い有機塩及び無機塩などの添加剤、並びに二酸化チタン、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ニッケル及び二酸化マンガンなどの金属酸化物及び金属の二酸化物などの非導電性添加剤が挙げられる。好適な有機塩としては、グルタミン酸一ナトリウムグルタメート(MSG)、クエン酸カリウム、炭酸カルシウム、酒石酸カリウム、蟻酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸マンガン及びその組み合わせ、並びに他の多くのものが挙げられる。好適な無機塩としては、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸三ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、メタ亜硫酸ナトリウム及びその組み合わせ、並びに他の多くのものが挙げられる。米国特許第4,219,361号(参照により本明細書中に援用される)に開示された材料も好適である。これらのマイクロ波反応性添加剤は2.45GHz周波数のマイクロ波で励起されて、分子摩擦によりマイクロ波エネルギーを熱エネルギーに転換する。布帛上に適用し得るか又はマトリックス組成物内でブレンドし得る他の好適な材料としては、ポリアクリレートの溶液、ポリアミド溶液、ポリビニルメチルエーテル溶液、ポリアミドホットメルト接着剤及びポリビニルメチル系ホットメルト接着剤が挙げられる。入射マイクロ波エネルギーの少なくとも一部を熱に転換し、且つ熱を布帛に移動させ得る、水、イソプロパノールまたはエタノールなどの処理液中に布帛を浸漬するのも好適である。これらの材料は、当業界で公知の任意の手段により適用することができる。
【0047】
添加材料の量は、ポリマーマトリックスの種類及び添加剤の種類に依存して変動し得る。通常、マイクロ波反応性添加剤は、ポリマーマトリックス組成物の約0.01〜約10.0重量%、より典型的には0.01〜約3.0重量%、最も典型的にはポリマーマトリックス組成物の0.01〜約1.0重量%を構成すべきである。当業者により必要と判断された場合には、より多い量を使用することができる。しかしながら、多量に使用すると、添加剤はマトリックス樹脂混合物中に残留せず、添加剤をマトリックス樹脂とブレンドするときに混合タンク内で沈殿してしまうだろう。圧密化又は反応を達成するのに必要な温度及び複合体の原材料の温度感受性に依存して、最高温度及びその温度に複合体が到達する速度はどちらも調整しなければならない。その具体的な組み合わせには、添加剤のそれ自体の好ましい濃度があり、その濃度は非常に広範囲を変動し得る。通常、金属は、マイクロ波放射と反応し、これを吸収する点においてポリマー、塩及び他の材料よりはるかに効率的である。従って、少量の金属ベースの添加剤が通常必要である。
【0048】
同一量のマイクロ波エネルギーが加えられた種々の物質は種々の速度で高温になる。例えば、非対称の極性分子はマイクロ波エネルギーにより容易に回転し、急速に高温になる。マイクロ波放射のポリマーへのカップリングの主なメカニズムは、電場による双極子再配列(dipolar reorientation)である。特に、高濃度の強い双極子をもつ材料は、マイクロ波エネルギーの活性吸収剤であると考えられており、特に効果的である。双極子は、その正電荷と負電荷が互いに一定の距離で保たれている化学的配置(chemical arrangement)である。材料とマイクロ波放射との反応が進行するにつれて、双極子モーメントの種類と濃度が変化し、相変化が起きて、双極子の移動度が変化する。双極子モーメントは、異なる電子吸引性/供与性をもつ隣接基によって形成され、一つの原子または基で正味電荷または部分電荷の局在化が起きるので、小さな弱い棒磁石として考えることができる。これらの双極子を形成する典型的な基としては、ヒドロキシル、アミノ、シアネートなどが挙げられる。このカップリング効率は、双極子強度、双極子の移動度及び双極子の質量などの多くの因子に依存する。小さく強い双極子はマイクロ波放射と最も効率的に結合し、液体は最も強く結合し、ゴム、ガラス質ポリマー及び結晶性材料が続く。
【0049】
双極子を含む水性樹脂、並びに溶媒系材料及び100%固体の材料は、ある程度マイクロ波放射を吸収するだろう。該双極子の濃度及び振動電場により双極子自体が配列しようとする(このとき摩擦と熱を発生させる)ことを可能にするポリマーの移動自由度が、該双極子の強度とともに、どれだけ多くのエネルギーが熱に転換されるかを決定する。例えばウレタン結合(-NH-COO-)は、強い双極子であり、ポリウレタン樹脂では該基は高濃度である。従って、ポリウレタンを含有するマトリックスポリマーは非常に効果的である。カルボン酸基、また双極子を含むポリマーも好ましい。他の好ましいポリマーとしては、高分子電解質、アイオノマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、シリコーン及びポリアミドが挙げられる。
【0050】
より弱い双極子または低濃度の双極子を有する他の有用なポリマーの非限定的な例としては、アクリル系脂、エチレンビニルアセテート及びエチレンアクリル酸が挙げられる。これらの材料はある程度、双極子の強度及び濃度に対して温度上昇が顕著な場合に活性である。非活性樹脂中に分散された活性樹脂の二相マトリックスなどのマトリックスポリマーのブレンドも好適であり、これにより非活性樹脂はマイクロ波エネルギーで加工することができる。
【0051】
最も効果的なマイクロ波反応性添加剤の選択は、通常、吸収すべきマイクロ波エネルギーの周波数、出力、及び持続時間に依存する。加熱は、イオン効果及び複合体材料の比熱により加速されることは公知である。例えば、油は、その低い比熱のために有用な材料である。また多くの因子が、必要最少量のマイクロ波反応性添加剤に寄与する。高活性材料は、通常、より少ない重量又は容積パーセントを必要とする。相乗作用をもたらす組成物(あるものは自由水を吸収し、複合体の他の成分中の双極子を誘導する)は、活性成分の必要なレベルを減少させだろう。低い目標プロセス温度は、低レベルの高活性成分、または高レベルの低吸収性材料を必要とするだろう。通常、必要なマイクロ波活性添加剤の最少量は布帛の約10重量%未満であり、より好ましくはポリマーマトリックス組成物の10重量%未満である。より好ましくは、マイクロ波活性添加剤の量は、ポリマーマトリックス組成物の重量、またはマトリックスが存在しない場合には布帛の重量の約1〜約6重量%、より好ましくは約3〜約6重量%である。マイクロ波反応性添加剤が溶媒中の混合物として分散されている場合、該混合物は通常、溶媒約70〜約80重量%を含む。
【0052】
本発明の方法において、布帛は電子レンジ内で、繊維又は任意成分としてのマイクロ波反応性組成物を少なくともおよそ該繊維又は該マイクロ波反応性組成物の軟化温度にまで加熱するのに十分なマイクロ波エネルギーを布帛にかけることによって加熱する。電子レンジ加熱の前に、弾道抵抗性布帛及び任意成分のマイクロ波反応性組成物が完全に乾燥し、且つ、揮発性物質を含まないのが好ましい。材料は、該材料が分解又は燃焼する温度よりも低い温度に加熱すべきである。加熱直後又は加熱の間、前記布帛の温度が、少なくともおよそ繊維の軟化温度又は(存在する場合には)任意成分のマイクロ波反応性組成物の軟化温度である間に、布帛は物品に成形又は圧密化される。本明細書中に使用される「直後(に)」なる用語は、マイクロ波により発生した熱によって、いまだに軟化温度にあるか、又はそれより高温である間に、布帛を成形または圧密化することを意味する。その後、前記布帛の温度が、少なくともおよそ繊維の軟化温度又は(存在する場合には)任意成分のマイクロ波反応性組成物の軟化温度である間に、加熱された布帛を物品に成形する。あるいは、布帛は加熱許容性能と成形許容性能の両方を備える単一の多機能装置の中で連続的に加熱及び成形することができる。加熱された布帛をマイクロ波装置から別の成形装置に移動させる任意的な工程は、布帛がある程度熱を失う原因となるかもしれないと考えられる。他方、本プロセスは、布帛が、繊維を所望の形状やフォームに成形できるような十分なマイクロ波生成熱を保持したままの状態で成形を開始して、必要に応じて該布帛がその形状を維持できるようにして、実施される。最後に、成形した布帛を放冷する。
【0053】
本明細書中に記載される、本発明の布帛は、成形に適した温度に到達するまで加熱しなければならない。布帛の最低成形温度は通常、ポリマーマトリックス組成物の軟化温度、又は、全くマトリックス組成物が存在しない場合には繊維の軟化温度のいずれかによって決定される。当業界で通常知られているように、プラスチックの軟化点は、ASTM D1525ビカット軟化温度試験法により測定することができ、この試験法は、試験片に対して特定の制御試験条件を採用したときに、特定の針の侵入が起きる温度の測定に及ぶ。特に該試験法では、特定の質量の荷重のかかった平坦な端部をもつ針を試験片に直に接触させて設置する。試験片と針を許容可能な速度で加熱し、針が1±0.01mmの深度まで侵入した温度をビカット軟化温度として記録する。
【0054】
好適な最低成形温度は通常、約60℃〜約80℃を変動するが、個々の繊維の種類に依存して変動し、この範囲より下であってもよい。例えばSpectraポリエチレン繊維は、265°F(129.4℃)を超えるまで長時間暴露した後に影響を受け、300°F(148.9℃)で融解する。従って、Spectraポリエチレン繊維は、約200°F(93.3℃)を上回り約257°F(125℃)未満となるように加熱するのが好ましい。対流による加熱の場合、該加熱工程は一般に布帛処理時間にさらに10〜30分を加え、対流オーブンの予熱が必要である。この加熱時間は布帛をマイクロ波処理することにより実質的に短縮される。マイクロ波エネルギーへの暴露時間は、所望の温度に布帛を加熱するには十分であり、一方で繊維の分解を防ぐのに十分に短くなければならない。布帛は電子レンジ中で、3分以内で200°F(93.3℃)以上にまで加熱できることが最も好ましい。
【0055】
本発明の完全な成形布帛は、布帛、任意成分のマトリックス組成物、任意成分の中間接着剤層及び任意成分のマイクロ波感受性材料の組み合わせを含む。通常、十分な弾道抵抗性を有する布帛を製造するためには、繊維の割合は好ましくは、布帛の約45〜約95重量%、より好ましくは約60〜約90重量%、最も好ましくは複合体の約65〜約85重量%を構成する。当業界で公知のように、マトリックス組成物及び/または任意成分の接着剤は、当業界で公知のように、充填剤、例えばカーボンブラック若しくはシリカなどの他の添加剤も含むことができ、油展することができるか、又は硫黄、過酸化物、金属酸化物若しくは放射線硬化系によって加硫することができる。
【0056】
本発明の布帛から製造した物品の所望の構造抵抗性及び弾道抵抗性に応じて、布帛層の数及び種類並びにマトリックスのタイプ等、種々のパラメーターを制御することができる。例えば、防弾チョッキで変形を少なくするために低コストの衝撃パッドを形成するには、二つの布帛層、即ち二つの織り布帛層、又は、0°/90°でクロスプライされた二つの繊維層パイル(各層は一体化された布帛の外面にゴム層を有する)から形成されている、不織一方向不織繊維の二単層圧密化網状構造を含むのが好ましい。さらに、NIJレベルIIまたはIIAの弾道防御レベルを有する弾道抵抗性パネルの場合には、14層の布帛層と10層の布帛層を含む布帛がそれぞれ好ましい。
【0057】
布帛の構成成分である繊維がマイクロ波放射を吸収できるか否かにかかわらず、又、マイクロ波反応性組成物が必要であるか否かにかかわらず、本発明の布帛は、電子レンジ中でマイクロ波放射により約60℃以上の温度にまで加熱し得る。電子レンジは任意の周波数及び任意のマイクロ波出力の設定で操作することができる。最も好ましくは、本発明の布帛は、3分以内で200°F(93.3℃)以上に電子レンジで加熱することができる。
【0058】
以下の非限定的な実施例は、本発明を説明するためのものである。
【実施例】
【0059】
実施例1〜6(比較例)
電子レンジ加熱実験を、Spectra(登録商標)繊維(1300デニール、タイプ1000)と、KRATON(登録商標)スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ポリマーマトリックス樹脂(KRATOND-1161:40重量%固体、布帛上に固体含有量16重量%に希釈)又はSANCURE(登録商標)12929ポリウレタンマトリックス樹脂ルブリゾル社の子会社Noveon,Inc製、オハイオ州クリーブランド)で製造したSpectra Shield(SS)材料、不織布サンプルで実施した。それぞれの場合において、サンプルは20±2重量%の樹脂含有量で製造し、不織クロスプライSpectra Shield材料(0°、90°構造)を有していた。
【0060】
各試験片が0°/90°にクロスプライされて圧密化されている二枚の層を含む、10枚の試験片(2”×2”)(5.08cm×5.08cm)が、それぞれのサンプルから切り出され、積み重ねられ、標準2.45GHz、1500ワットの家庭用電子レンジで、種々の時間、種々のレベルのマイクロ波エネルギーが加えられた。加熱時の布帛の温度を測定した。結果を表1Aにまとめる。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1〜6のそれぞれにおいて、KRATON(登録商標)ポリマーマトリックス材料は、特定の条件の下でマイクロ波放射に暴露したときに、約113°F(45℃)の温度に到達できず、KRATONポリマーの軟化点よりもはるかに低かった。従って、KRATONポリマーは単独、Spectra Shield材料の成形に必要な最少量の熱を発生させるのに不十分なマイクロ波吸収剤である。
【0063】
実施例7〜10
電子レンジ加熱試験は、Spectra繊維(1300デニール、タイプ1000)とSANCURE12929ポリウレタンマトリックス樹脂(ルブリゾル社の子会社Noveon,Inc.製、オハイオ州クリーブランド)で製造したSpectra Shield(SS)材料、不織布サンプルで実施した。それぞれの場合において、サンプルは20±2重量%の樹脂含有量で製造し、不織クロスプライSpectra Shield(登録商標)材料(0°、90°構造)を有していた。
【0064】
各試験片が0°/90°にクロスプライされて圧密化された2つの層を含む10枚の試験クーポン(2”×2”)(5.08cm×5.08cm)がそれぞれのサンプルから切り出され、積み重ねられ、標準2.45GHz、1500ワットの家庭用電子レンジで、種々の時間で種々のレベルのマイクロ波エネルギーが加えられた。加熱時の布帛の温度を測定した。結果を表1Bにまとめる。
【0065】
【表2】

【0066】
上記実施例は、Sancure12929ポリマーマトリックス樹脂が、予熱用Spectra Shieldにマイクロ波加熱許容性能をもたらすことを示している。
実施例11〜16(比較例)
実施例1〜10と同様に、Spectra繊維(1300デニール、タイプ1000)と、Good-Rite(登録商標)SB-1168スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ゴムポリマーマトリックス樹脂(Noveon,Inc.製、オハイオ州クリーブランド)で製造したSpectra Shield不織布サンプルで実施した。それぞれの場合において、サンプルは20±2重量%の樹脂含有量で製造し、不織クロスプライSpectra Shield材料(0°、90°構造)を有していた。
【0067】
各試験片が0°/90°にクロスプライされて圧密化された2つの層を含む10枚の試験片(2”×2”)(5.08cm×5.08cm)がそれぞれのサンプルから切り出され、積み重ねられ、標準2.45GHz、1500ワットの家庭用電子レンジで、種々の時間で種々のレベルのマイクロ波エネルギーが加えた。加熱時の布帛の温度を測定した。結果を表2にまとめる。
【0068】
【表3】

【0069】
上記実施例は、Good-RiteSB-1168 SBSゴムポリマーマトリックス樹脂は、予熱用Spectra Shieldにマイクロ波加熱許容性能をもたらさないことを示している。
実施例17〜32
実施例1〜16と同様に、Spectra繊維(1300デニール、タイプ1000)及び種々のポリマーマトリックスポリマーで製造したSpectra Shield(SS)不織布サンプルで電子レンジ加熱試験を実施した。それぞれの場合において、サンプルは20±2重量%の樹脂含有量で製造し、不織クロスプライSpectra Shield材料(0°、90°構造)を有していた。
【0070】
試験したポリマーマトリックスポリマーは以下の通りであった:
実施例17:Airflex(登録商標)4500、Air Products and Chemicals,Inc.製アミド変性エチレン-塩化ビニルコポリマー。
【0071】
実施例18:Permax(商標)230、Noveon,Inc.製ポリウレタン樹脂。
実施例19:Hycar(登録商標)26523、Noveon,Inc.製アクリル系樹脂。
実施例20:Hycar(登録商標)26-1475、Noveon,Inc.製アクリル系樹脂。
【0072】
実施例21:Hycar(登録商標)26-1199、Noveon,Inc.製アクリル系樹脂。
実施例22:Sancure(登録商標)20023、Noveon,Inc.製ポリウレタン樹脂。
実施例23:Good-Rite(登録商標)SB-1168、Noveon,Inc.製カルボキシ変性スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー。
【0073】
実施例24:Daran(登録商標)SL112、W.R.Grace&Co.製PVdCポリマー。
実施例25:Permax(商標)803、Noveon,Inc.製アクリル(酸)-PVdCコポリマー。
実施例26:Sancure(登録商標)777、Noveon,Inc.製ポリウレタン樹脂。
【0074】
実施例27:Sancure(登録商標)843、Noveon,Inc.製ポリウレタン樹脂。
実施例28:Dispercoll(登録商標)U53、Bayer AG製ポリウレタン樹脂。
実施例29:Vycar(登録商標)460X251、Noveon,Inc.製PVCコポリマー。
【0075】
実施例30:Sancure(登録商標)20025、Noveon,Inc.製ポリウレタン樹脂。
実施例31:Butvar(登録商標)RS-261、Solutia,Inc.製ポリビニルブチラール。
実施例32:Sancure(登録商標)2026、Noveon,Inc.製ポリウレタン樹脂。
【0076】
各試験片が0°/90°にクロスプライされて圧密化された層を含む10枚の試験片(2”×2”)(5.08cm×5.08cm)が、それぞれのサンプルから切り出され、積み重ねられ、標準2.45GHz、1500ワットの家庭用電子レンジを使用で、50%の出力で60秒間、マイクロ波エネルギーが加えられた。1分間マイクロ波処理した後の最高布帛温度を測定し、対流オーブン中で強制風乾した後に電子レンジ中で1分後に到達した温度を測定し、2.45GHzの電子レンジ中、50%の出力で175°F(79.4℃)に到達するまでの測定を各サンプルについて評価した。結果を表3にまとめる。第4欄で、ダッシュ(―)のついた列は、電子レンジ中で1分後の最高布帛温度が測定されなかったことを示す。
【0077】
それぞれのサンプルに関して、マイクロ波放射にサンプルを暴露する前に、サンプルをオーブン中で加熱して樹脂分散液中の全ての水分及び他の揮発成分を除去した。サンプルは最初、150°F(65.56℃)でオーブン中、5日間乾燥した。一旦マイクロ波試験を開始すると、サンプルの中には弾けるものがあり、残存水又は他の揮発性成分の存在を示していた。これらのサンプルはオーブンに戻し、200°F(93.33℃)でさらに5日間乾燥して、全ての水分及び/または揮発成分を完全に除去した。
【0078】
それぞれのサンプルに関して、マイクロ波放射に対する応答は、以下の手順に従って評価した。
1.STYROFOAM(商標)の円形の1”(2.54cm)厚さ部分を1500ワットの居住用電子レンジの回転ラックに載せた。該STYROFOAMを使用して、セラミック製回転ラック板によって発生した熱と、評価対象のサンプルによって発生した熱を分離した。
【0079】
2.評価対象の材料の四つのサンプルをSTYROFOAM部分に載せた。これらのサンプルは、12:00、3:00、6:00及び9:00の位置でSTYROFOAMの端付近に載せた。四つのサンプルはそれぞれ3”(7.62cm)の間隔をあけた。
【0080】
3.次にIllinois Tool Works Inc.(イリノイ州)製Tempilstik(登録商標)温度インジケーターを使用して温度閾値を評価した。
4.所望の温度範囲は、目標の温度を下回る温度では二つのTempilstikクレヨン、目標温度を上回る活性化範囲では二つのクレヨンを使用して試験した。
【0081】
5.消えないペンを使用して、圧密化布帛の四つのサンプルのそれぞれに四つの温度のうちの一つを記入した。クレヨンの1つから削り屑を削りとり、表面に適切な温度が書かれている布帛サンプル上に付着させた。これは、他の三つのクレヨンと他の三つのサンプルでも実施した。
【0082】
6.電子レンジを閉め、所望の出力レベルに設定し、時間を設定し、マイクロ波加熱を開始した。
7.その後、布帛サンプル表面でどのワックスが溶けたかを測定した。
【0083】
【表4】

【0084】
実施例7〜38で試験したポリマーマトリックスは全て水性樹脂分散液であった。マイクロ波放射をうまく吸収したものもあったが、うまくいかなかったものもあった。実施例1〜6で試験したKratonD-1161樹脂は、溶媒系樹脂であり、マイクロ波放射をうまく吸収できなかった。しかしながら、他の溶媒系樹脂はうまくいくようであり、水性ポリマーマトリックス組成物が必要とは考えられない。
【0085】
本発明を、好ましい態様を参照しつつ説明してきたが、当業者には本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく種々の変更及び変形が可能であることは容易に理解されよう。本請求の範囲は開示された態様、上記代替物及びその全ての均等物をカバーするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の製造法であって、
a)配列状に配置された複数の繊維を含む布帛を準備すること、ここで、前記布帛は約7g/デニール以上の靱性、及び、約150g/デニール以上の引張弾性率を有し;前記布帛はその上に任意成分としてのマイクロ波反応性組成物を有する;及び
b)前記繊維又は前記任意成分としてのマイクロ波反応性組成物を少なくともおよそ該繊維の軟化温度又は該マイクロ波反応性組成物の軟化温度にまで加熱するのに十分なマイクロ波エネルギーを前記布帛に加えることによって、電子レンジ中で前記布帛を加熱すること;
c)マイクロ波エネルギーの適用により前記布帛が、少なくともおよそ前記繊維の軟化温度又は前記任意任意成分のマイクロ波反応性組成物の軟化温度を有している間に、加熱した前記布帛を製品に成形すること;及び
d)成形した布帛を放冷すること、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記マイクロ波反応性組成物が存在し、且つ
前記マイクロ波反応性組成物を少なくともおよそ該マイクロ波反応性組成物の軟化温度にまで加熱するのに十分なマイクロ波エネルギーを前記布帛に加えることによって該布帛を加熱すること、及び、前記布帛が少なくともおよそ前記マイクロ波反応性組成物の軟化温度を有している間に、加熱された該布帛を製品に成形する
ことを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロ波反応性組成物が、前記繊維上にコーティングされるポリマーマトリックス組成物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記布帛を少なくとも約60℃の温度に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記布帛が複数の繊維を含み、ここで前記繊維の一つ以上は前記繊維を少なくとも約60℃の温度に加熱するのに十分なマイクロ波照射を吸収することができ;ここで、少なくともおよそ前記繊維の軟化温度に加熱するのに十分なマイクロ波エネルギーを前記布帛に加えることによって前記布帛を加熱すること;及び、その直後に前記布帛が少なくともおよそ前記繊維の軟化温度を有している間に、加熱された前記布帛を製品に成形することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロ波反応性組成物が双極子含有ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロ波反応性組成物が、ポリウレタン、高分子電解質、アイオノマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、シリコーン、ポリアミド、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸、又はその組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロ波反応性組成物がマイクロ波反応性添加剤を含有するポリマーを含み、該マイクロ波反応性添加剤は、前記繊維を少なくとも約60℃の温度に加熱するのに十分なマイクロ波照射を吸収し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロ波反応性添加物が極性組成物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロ波反応性添加剤が、有機塩、無機塩、金属粉末、誘電性粉末、不溶性マイクロ波吸収性ポリマー粉末、非分散性マイクロ波吸収性ポリマー粉末、又はその組み合わせを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の繊維が、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、液晶コポリエステル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、硬質ロッド繊維、またはその組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記布帛は複数のポリエチレン繊維を含み、ここで前記ポリエチレン繊維の一つ以上はその上にマイクロ波反応性組成物を有し、ここで前記マイクロ波反応性組成物は少なくとも約60℃の温度に前記繊維を加熱するのに十分なマイクロ波放射を吸収し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱工程が、少なくとも約2.45GHzの周波数で前記布帛にマイクロ波エネルギーをかけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱工程が、少なくとも約10GHzの周波数で前記布帛にマイクロ波エネルギーをかけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記成形工程c)を前記加熱工程b)の後に実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記成形工程c)を前記加熱工程b)に連続して実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
圧密化繊維網状構造を形成する方法であって、前記圧密化繊維網状構造は複数の繊維層を含み、各繊維層は約7g/デニール以上の靱性及び約150g/デニール以上の引張弾性率を有する複数の繊維を含み;前記繊維はその上にポリマーマトリックス組成物を有し;該圧密化繊維網状構造は加熱及び加圧下で圧密化され、ここで圧密化熱は、少なくともおよそポリマーマトリックス組成物の軟化温度に前記ポリマーマトリックス組成物を加熱するのに十分なマイクロ波エネルギーを加えることによって生じる、前記方法。
【請求項18】
ポリマーマトリックス組成物の前記軟化温度は、ASTM D1525により測定して少なくとも約60℃である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記圧密化繊維網状構造はクロスプライされた複数の不織繊維層を含み、それぞれの繊維層は実質的に平行配列に配置された複数の繊維を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
弾道抵抗性布帛を含む弾道抵抗性製品であって、前記弾道抵抗性布帛は配列状に配置された複数の繊維を含み、前記繊維は約7g/デニール以上の靱性及び約150g/デニール以上の引張弾性率を有し;前記繊維はその上にコーティングされた乾燥マイクロ波反応性組成物を有し、該マイクロ波反応性組成物は、マイクロ波エネルギーを加えることによってその軟化温度より高温に加熱されたことを特徴とする、前記弾道抵抗性製品。
【請求項21】
マイクロ波エネルギーを加えることにより前記繊維の軟化温度より高温に加熱され、且つマイクロ波エネルギーの適用により少なくともおよそ前記繊維の軟化温度又は前記任意成分としてのマイクロ波反応性組成物の軟化温度である間に製品に成形された、請求項20に記載の弾道抵抗性製品。
【請求項22】
請求項1の方法により製造した製品。

【公表番号】特表2010−525960(P2010−525960A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537315(P2009−537315)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/084531
【国際公開番号】WO2008/140567
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】