説明

形質転換成長因子の活性を有するペプチド及びその用途

本発明は、特定のアミノ酸配列を含むTGF−β(Transforming growth factor−beta)模倣ペプチド及びこれを含むTGF−β−有効性(TGF−β−effective)の疾患又は状態(conditions)の予防又は治療用組成物に関する。本発明のペプチドは、ヒトTGF−β由来のもので、天然のヒトTGF−βと類似した機能又は作用を有する。本発明のペプチドは、天然TGF−βより安定性に優れており、天然TGF−βの大きい分子量による問題点を改善することができる。本発明のペプチドは、TGF−βが適用される多様な疾患又は状態の治療又は改善に利用でき、特に、皮膚美白及びシワの改善に著しい効能を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形質転換成長因子−β(Transforming growth factor−beta:TGF−β)の活性を有するペプチド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
形質転換成長因子−β(Transforming growth factor−beta:TGF−β)は、細胞分化及び増殖を調節するポリペプチド集団である。この集団における他の構成員としては、Mulleria抑制物質(Cate et al., 1986, Cell, 45:685−698)、インヒビン類(inhibins;Mason et al., 1985, Nature, 318:659−663)及びDrosophillaのDecapentaplegic遺伝子複合体の転写物から予見される蛋白質(Padgett et al., 1987, Nature, 325:81−84)などが挙げられる。形質転換成長因子−β(TGF−β)は、各分子量が13,000である2つの類似したジスルフィド連結サブユニットからなっている(Assoian et al., 1983, J.Biol.Chem. 258:7155−7160; Frolik et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:3676−3680; Frolik et al., 1984, J Biol. Chem. 260:10995−11000)。これは、幾つかの組織、例えば、胎盤(Frolik et al., 1983, Nature 325:81−84)、血小板(Childs et al., 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:5312−5316, Assioan et al., 1983, J. Biol. Chem. 258:7155−7160)、腎臓(Roberts et al., 1983, Biochemistry 22:5692−5698)、無機分の減少された骨(Seyedin et al., 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 : 119−123)などから精製されてきた。10%血清及び表皮成長因子の存在下で、TGF−βは、正常的なラットの腎臓線維芽細胞の足場非依存性(anchorage independent)生育を増進させて(Roberts et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:5339−5343; Roberts et al., 1982, Nature 295:417−419; Twardzik et al., 1985, J. Cell Biochem. 28:289−297)、10%血清のみが存在する時は、AKR−2B線維芽細胞の集落形成を誘導することができる(Tucker et al., 1983, Cancer Res. 43:1518−1586)。またTGF−βは、胎児ラットの筋肉間葉細胞の分化及び軟骨特異巨大分子の生成を引き起こすことが報告されている(Seyedin et al., 1986, J. Biol. Chem. 261:5693−5695)。
【0003】
細胞増殖に及ぼすその効果とは対照的に、アフリカミドリザル細胞(BSC−1)から分離された機能的連関蛋白質だけではなく、ヒト血小板から精製されたTGF−βは、培養中、ある細胞の生育を阻害することが判明している(Tucker et al., 1984, Science 226:705−707)。また、TGF−βは、幾つかのヒト細胞株の成長も阻害することが明らかにされた(Roberts et., 1985, Proc. Natl. Acad. Sci.USA 82:119−123)。TGF−βのこのような抑制又は刺激効果は、例えば、細胞形態及び細胞の生理状態のような幾つかの因子に依存することが報告されている(Spon et al., 1986, Science 232:534参考)。
【0004】
ヒトTGF−β(Derynck et al., 1985, Nature 316:701−705)、マウスTGF−β(Derynck et al., 1986, J. Biol. Chem. 261:4377−4379)、及びシミアンTGF−β(Sharples et. al., 1987, DNA 6:239−244)の遺伝子をコードするcDNAクローンが分離された。これらのようなクローンのDNA配列分析結果、TGF−βモノマーを生成させる大きい前駆体ポリペプチドとして合成されることがわかった。上述のあらゆるTGF−β源からのTGF−β前駆体蛋白質間では、非常に高い配列相同性が発見された。
【0005】
最近、無機分が減少された牛の骨から分離したある蛋白質が、TGF−βに関連することが同定された(Seyedin et al., 1987, J. Biol. Chem, 262: 1946−1949)。またこの蛋白質は、豚の血小板(Cheifetz et al., 1987, Cell 48:409−415)、ヒト前立腺腺癌種細胞株PC−3(Ikeda et al.,1987, Biochemistry 26:2406−2410)、及びヒト膠芽細胞株(Wrann et al., 1987, EMBO 6:1633−1636)からも分離された。この蛋白質の一部のアミノ酸配列が、TGF−βと相同性があることが明らかにされたため、TGF−β2と命名された。上述のヒトTGF−β(Derynck et al., 1985, Nature 316:701−705)、マウスTGF−β(Derynck et al., 1986, J. Biol. Chem. 261:4377−4379)、及びシミアンTGF−β(Sharples et al.,1987, DNA 6:239−244)は、TGF−β1と命名された。
【0006】
本明細書全体にかけて多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
TGF−βは、非常に活性の高い蛋白質であるが、発現が非常に難しく、値段が高く、半減期が短く、円滑な使用に制約がある。本発明者らは、天然のヒト形質転換成長因子(TGF−β)と類似した機能又は作用を可能としながらも、天然TGF−βより安定性に優れ、天然TGF−βの大きい分子量による問題点を改善することができるペプチドを製造するために、多様な種類のヒトTGF−β由来ペプチドを製造及びスクリーニングした。その結果、多くのペプチド候補物質の中から、生理活性に優れるだけでなく、安定性及び皮膚透過率にも優れるペプチドを選別することにより、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、TGF−β(Transforming growth factor−beta)模倣ペプチドを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、TGF−β−有効性(TGF−β−effective)の疾患又は状態(conditions)の予防又は治療用組成物を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の目的は、TGF−β−有効性(TGF−β−effective)の疾患又は状態(conditions)の予防又は治療方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、更に明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一様態によると、本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むTGF−β(Transforming growth factor−beta)模倣ペプチドを提供する。
【0013】
TGF−βは、非常に活性の高い蛋白質であるが、発現が非常に難しく、値段が高く、半減期が短く、円滑な使用に制約がある。本発明者らは、天然のヒト形質転換成長因子(TGF−β)と類似した機能又は作用を可能としながらも、天然TGF−βより安定性に優れ、天然TGF−βの大きい分子量による問題点を改善することができるペプチドを製造するために、多様な種類のヒトTGF−β由来ペプチドを製造及びスクリーニングした。その結果、多くのペプチド候補物質の中から、生理活性に優れているだけではなく、安定性及び皮膚透過率に優れているペプチドを選別した。
【0014】
本発明のペプチドは、天然ヒトTGF−βアミノ酸配列由来のアミノ酸配列を基本的に含む。
【0015】
本発明の好ましい具現例によると、本発明のTGF−β模倣ペプチドのN−末端又はC−末端には、更に細胞付着アミノ酸配列が結合されており、より好ましくは、N−末端に結合されている。前記細胞付着アミノ酸配列は、本発明のペプチドのTGF−β活性を向上させる作用をする。
【0016】
本発明で利用できる細胞付着アミノ酸配列は、当業界に公知されたあらゆる細胞付着アミノ酸を含む。好ましくは、細胞付着アミノ酸配列は、RGD(Arg−Gly−Asp)、RGDS(Arg−Gly−Asp−Ser)、RGDC(Arg−Gly−Asp−Cys)、RGDV(Arg−Gly−Asp−Val)、RGES(Arg−Gly−Glu−Ser)、RGDSPASSKP(Arg−Gly−Asp−Ser−Pro−Ala−Ser−Ser−Lys−Pro)、GRGDS(Gly−Arg−Gly−Asp−Ser)、GRADSP(Gly−Arg−Ala−Asp−Ser−Pro)、KGDS(Lys−Gly−Asp−Ser)、GRGDSP(Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro)、GRGDTP(Gly−Arg−Gly−Asp−Thr−Pro)、GRGES(Gly−Arg−Gly−Glu−Ser)、GRGDSPC(Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro−Cys)、GRGESP(Gly−Arg−Gly−Glu−Ser−Pro)、SDGR(Ser−Asp−Gly−Arg)、YRGDS(Tyr−Arg−Gly−Asp−Ser)、GQQHHLGGAKQAGDV(Gly−Gln−Gln−His−His−Leu−Gly−Gly−Ala−Lys−Gln−Ala−Gly−Asp−Val)、GPR(Gly−Pro−Arg)、GHK(Gly−His−Lys)、YIGSR(Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg)、PDSGR(Pro−Asp−Ser−Gly−Arg)、CDPGYIGSR(Cys−Asp−Pro−Gly−Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg)、LCFR(Leu−Cys−Phe−Arg)、EIL(Glu−Ile−Leu)、EILDV(Glu−Ile−Leu−Asp−Val)、EILDVPST(Glu−Ile−Leu−Asp−Val−Pro−Ser−Thr)、EILEVPST(Glu−Ile−Leu−Glu−Val−Pro−Ser−Thr)、LDV(Leu−Asp−Val)又はLDVPS(Leu−Asp−Val−Pro−Ser)であり、最も好ましくは、RGD(Arg−Gly−Asp)である。RGD配列は、細胞間質蛋白質であるフィブロネクチン(fibronectin)から選択されたものである。
【0017】
本発明のペプチドは、それ自体が天然TGF−βより非常に優れた安定性を示すが、追加的なアミノ酸の変形によって安定性が向上され得る。本発明の好ましい具現例によると、本発明のペプチドのN−末端及び/又はC−末端には、更にアセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基、ポリエチレングリコール(PEG)及びアミノ酸から構成された群から選択される保護基が結合されている。このような保護基は、本発明のペプチドの安定性を増加させる役割をする。
【0018】
より好ましくは、前記保護基はアミノ酸であり、より好ましくは、Gly又はAlaであって、最も好ましくは、Glyである。保護基としてアミノ酸が利用される場合、アミノ酸残基の数は、1〜3が好ましく、より好ましくは1〜2であって、最も好ましくは、1である。
【0019】
本明細書において用語‘安定性’は、インビボ安定性だけではなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)も意味する。
【0020】
本発明の好ましい一具現例によると、本発明のペプチドは、配列番号、1、2又は3で表されるアミノ酸配列のN−末端又はC−末端、好ましくは、N−末端に細胞付着アミノ酸配列が結合されており、更に前記保護基が、N−末端又はC−末端、好ましくは、N−末端に結合されている。
【0021】
本発明のペプチドの具体的な例は、配列番号2に記載されている。
【0022】
本明細書において、用語‘ペプチド’は、ペプチド結合によりアミノ酸残基が互いに結合されて形成された線形の分子を意味する。
【0023】
本発明のペプチドは、当業界に公知の化学的合成方法、特に、固相合成技術(solid−phase synthesis techniques)によって製造できる(Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. 85:2149−54(1963); Stewart, et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd. ed., Pierce Chem. Co.: Rockford, 111(1984))。
【0024】
本発明のペプチドは、優れた生理学的活性を発揮するだけではなく、熱安定性及び酸とアルカリ等の物理化学的因子に対する安定性に優れている。したがって、優れた長期保存性を有する本発明のペプチドは、医薬品、医薬外品、化粧品及び口腔用品のような長期間貯蔵が要求される製品に有利に適用できる。
【0025】
本発明の他の様態によると、本発明は、TGF−β活性を示す上述の本発明のペプチドを有効成分として含むTGF−β−有効性(TGF−β−effective)の疾患又は状態(conditions)の予防又は治療用組成物を提供する。
【0026】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、TGF−β活性を示す上述の本発明のペプチドを有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含むTGF−β−有効性(TGF−β−effective)の疾患又は状態(conditions)の予防又は治療方法を提供する。
【0027】
本発明の組成物は、上述の本発明のペプチドを有効成分として含むため、その重複する内容は、本明細書の過度なる複雑性を避けるために、その記載を省く。
【0028】
本発明で有効成分として利用されるペプチドは、TGF−β活性を保有し、生体に適用時、天然TGF−βが発揮する作用又は機能を発揮する。本明細書において、用語‘TGF−β活性’は、天然TGF−βに対して従来究明された全ての活性、例えば、細胞増殖及び分裂促進などの活性を意味する。本発明のペプチドは、天然TGF−βの作用を模倣する(mimicking)ように製作されたものであるため、天然TGF−βの多様な生体内活性を全て発揮することができる。
【0029】
本発明で利用されるペプチドは、天然TGF−βと同一な機能又は作用を有するだけではなく、生理活性度も類似しているため、TGF−β有効性の疾患又は状態の予防又は治療に有利に利用できる。本明細書で使用される用語‘TGF−β有効性の疾患又は状態’は、天然のTGF−βにより治療又は予防できる疾患又は状態を意味する。TGF−β有効性の疾患又は状態は、米国特許第5780436号及び米国特許出願公開第20020010134号に開示されており、前記特許文献の教示事項は、本明細書に参照として取り込まれる。
【0030】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物により発揮される活性は、細胞増殖の促進、分裂促進、上皮細胞の生理活性促進、血管形成の促進、神経再生の促進、組織修復(tissue repair)、傷の治癒、血栓症の治療、骨欠陥の治療、リウマチ様関節炎の治療、ぶどう膜炎の治療、癌の治療、動脈硬化症の治療、コラーゲン、エラスチン、ラミニン又はヒアルロン酸の合成促進、歯周疾患の治療又は皮膚状態の改善で表現できる。
【0031】
本発明の組成物が歯周疾患に適用される場合、本発明の組成物は、歯磨き(toothpaste)、口腔清浄用組成物又は口腔保護用組成物として製造できる。本明細書において用語‘歯周疾患治療用組成物’は、‘口腔保護用組成物(composition for tooth and mouth care)’又は‘口腔清浄用組成物(composition for tooth and mouth cleaning)’に代替できる。本発明のペプチドは、歯茎組織の上皮細胞の生理活性を促進して、迅速な歯茎傷の治癒を通じて、損傷された歯茎組織を再生させることにより、歯周疾患を治療又は予防することができる。
【0032】
より好ましい具現例によると、本発明の組成物は、皮膚状態の改善の効能又は活性を有する。特に、本発明の組成物において有効成分として利用されるペプチドは、天然TGF−βより分子量が著しく小さいため、皮膚浸透率に非常に優れている。したがって、本発明の組成物を局所的に皮膚に塗布する場合、皮膚状態の改善を大きく達成することができる。より好ましくは、本発明の組成物による皮膚状態の改善は、皮膚美白、シワの改善、皮膚弾力の改善、皮膚老化の防止、皮膚保湿の改善、シミの除去、ニキビの治療、傷の除去及び皮膚再生効果であり、最も好ましくは、皮膚美白とシワの改善である。
【0033】
例えば、本発明で有効成分として利用されるペプチドは、皮膚においてメラニンの形成を効果的に遮断(例えば、チロシナーゼの活性抑制)し、美白効能を示して、且つ、シワを除去する(プロコラーゲンの増加又はフィブロネクチンの増加)効能を示す。本発明の美白組成物は、皮膚の色相を明るくし、皮膚トーンを一定にするか、皮膚色素の除去及びシミの除去などの効果を示す。
【0034】
更に、本発明のペプチドは、多様なヒト由来の細胞に全く毒性を示さないため、極めて安全に処置が可能な治療用薬物としての活用度が非常に高いと判断される。
【0035】
本発明の組成物は、薬剤学的組成物と化粧品組成物として製造できる。
【0036】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、(a)上述の本発明のペプチドの薬剤学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物である。
【0037】
本明細書において用語‘薬剤学的有効量’は、上述のペプチドの効能又は活性を達成するに十分な量を意味する。
【0038】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常利用されるものであって、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを更に含むことができる。適合した薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0039】
本発明の薬剤学的組成物は、経口又は非経口、好ましくは、非経口で投与でき、非経口投与の場合は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、局所投与、経皮投与などにより投与できる。
【0040】
本発明の薬剤学的組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、反応感応性などの要因によって様々である。一方、本発明の薬剤学的組成物の好ましい投与量は、1日当たり、0.0001μg〜100μgである。
【0041】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、又は多用量容器内に入れて製造できる。この際、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤を更に含むことができる。
【0042】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、(a)上述の本発明のペプチドの化粧品学的有効量(cosmetically effective amount)、及び(b)化粧品学的に許容される担体を含む化粧品組成物である。
【0043】
本明細書において用語‘化粧品学的有効量’は、上述の本発明の組成物の皮膚改善効能を達成するに十分な量を意味する。
【0044】
本発明の化粧品組成物は、当業界で通常製造されるいかなる剤形にも製造でき、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化することができるが、これに限定されるものではない。より詳しくは、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー又はパウダーの剤形に製造することができる。
【0045】
本発明の剤形が、ペースト、クリーム又はゲルである場合は、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛などが利用できる。
【0046】
本発明の剤形がパウダー又はスプレーである場合は、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、又はポリアミドパウダーが利用でき、特にスプレーの場合は、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルのような推進体を更に含むことができる。
【0047】
本発明の剤形が溶液又は乳濁液である場合は、担体成分として、溶媒、溶解化剤又は乳濁化剤が利用され、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、又はソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0048】
本発明の剤形が懸濁液である場合は、担体成分として、水、エタノール又はプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガー又はトラガカントなどが利用できる。
【0049】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合は、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イソチオネート、イミダゾリウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、又はエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが利用できる。
【0050】
本発明の化粧品組成物に含まれる成分は、有効成分としてのペプチドと担体成分の他に、化粧品組成物に通常利用される成分を含み、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の補助剤を含むことができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明の特徴及び利点(advantages)を要約すると、以下のようである。
(i)本発明のペプチドは、ヒトTGF−β由来で、天然のヒトTGF−βと類似した機能又は作用を有する。
(ii)本発明のペプチドは、天然TGF−βより安定性に優れており、天然TGF−βの大きい分子量による問題点を改善することができる。
(iii)本発明のペプチドは、TGF−βが適用される多様な疾患又は状態の治療又は改善に利用でき、特に、皮膚美白及びシワの改善に著しい効能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、ヒト形質転換成長因子−β類(Transforming growth factor−beta: TGF−β)のアミノ酸配列と本発明のペプチドの配列情報である。
【図2】図2は、本発明の実施例により製造されたペプチドに対する高性能液状クロマトグラフィー分析結果を示したグラフである。
【図3】図3は、本発明の実施例により製造されたペプチドの安定性を測定した結果を示したグラフである。
【図4】図4は、α−MSHで処理したB16黒色腫細胞において、本発明の実施例により製造されたペプチドを処理した後のメラニン生成減少効果を比較した実験結果である。
【図5】図5は、α−MSHで処理したB16黒色腫細胞において、本発明の実施例により製造されたペプチドを処理した後のメラニン生成減少を吸光度で分析した結果である。
【図6】図6は、α−MSHで処理したB16黒色腫細胞において、本発明の実施例により製造されたペプチドを処理した後のチロシナーゼの活性を測定した図である。
【図7】図7は、α−MSHで処理したB16黒色腫細胞において、本発明の実施例により製造されたペプチドを処理した後のメラノソーム細胞の変化を観察した写真である。
【図8】図8は、α−MSHで処理したB16黒色腫細胞において、本発明の実施例により製造されたペプチドを処理した後のメラニン生成標識因子の減少効果を証明する逆転写重合酵素連鎖反応の図である。
【図9】図9は、培養したNIH3T3線維芽細胞において、本発明の実施例により製造されたペプチドを処理した後のプロコラーゲンの生成増加を示す図である。
【図10】図10は、培養したNIH3T3線維芽細胞において、本発明の実施例により製造されたペプチドを処理した後のフィブロネクチンの生成増加を示す図である。
【図11A】図11Aは、本発明の実施例により製造されたペプチドを利用した、ケラチノサイト、線維芽細胞及びB16黒色腫細胞に対する細胞毒性実験の結果である。
【図11B】図11Bは、本発明の実施例により製造されたペプチドを利用した、ケラチノサイト、線維芽細胞及びB16黒色腫細胞に対する細胞毒性実験の結果である。
【図11C】図11Cは、本発明の実施例により製造されたペプチドを利用した、ケラチノサイト、線維芽細胞及びB16黒色腫細胞に対する細胞毒性実験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、実施例を通じて本発明を更に詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【実施例】
【0054】
実施例1:配列番号2のペプチドの合成
クロロトリチルクロライドレジン(Chloro trityl chloride resin: CTL resin, Novabiochem Cat No. 01−64−0021)500mgを反応容器に入れ、メチレンクロライド(MC)10mlを加え3分間攪拌した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml入れ3分間攪拌した後、再び溶媒を除去した。反応器に10mlのメチレンクロライド溶液を入れ、Fmoc−Gln(trt)−OH(Novabiochem)200μmole及びDIEA(diisopropylethylamine)400μmoleを入れた後、攪拌してよく溶かし、1時間攪拌しながら反応させた。反応後、洗浄し、メタノールとDIEA(2:1)をMCに溶解してレジンと10分間反応した後、過量のMC/DMF(1:1)で洗浄した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml入れて3分間攪拌した後、再び溶媒を除去した。脱保護溶液(20%のピペリジン/DMF)10mlを反応容器に入れ、10分間常温で攪拌した後、溶液を除去した。同量の脱保護溶液を入れて、再び10分間反応を維持した後、溶液を除去し、DMFで2回、MCで1回、再びDMFで3分間1回洗浄し、Gln(trt)−CTLレジンを製造した。新しい反応器に10mlのDMF溶液を入れ、Fmoc−Thr(otbu)−OH(Novabiochem, 米国)200μmole、HoBt(N−Hydroxybenzotriazole)200μmole及びBop 200μmoleを入れた後、攪拌してよく溶解させた。反応器に400μmoleのDIEAを分画で2回にかけて入れて、全ての固体が溶けるまで少なくとも5分間攪拌した。溶解されたアミノ酸混合溶液を、脱保護されたレジンが入っている反応容器に入れて、1時間常温で攪拌しながら反応させた。反応液を除去し、DMF溶液で5分間ずつ3回攪拌した後、未反応溶媒を除去した。反応レジンを少量取って、カイザーテスト(Ninhydrine test)を利用して反応程度を調べた。脱保護溶液で上記と同様に2回脱保護反応し、Thr(otbu)−Gln(trt)−CTLレジンを製造した。DMFとMCで十分洗浄し、再びカイザーテストを行った後、上記と同様に下記のアミノ酸付着実験を行った。即ち、図1のように選定されたアミノ酸配列に基づき、Fmoc−Asp(otbu)、Fmoc−Leu、Fmoc−Ser(tBu)、Fmoc−Trp(boc)、Fmoc−Ile、Fmoc−Thr(tBu)、Fmoc−Asp(otbu)、Fmoc−Gly、Fmoc−Arg(pbf)、Fmoc−Glyの順に連鎖反応を行った。製造されたペプチジルレジンは、同様の方法により脱保護してFmocを除去した後、DMF、MC及びメタノールでそれぞれ3回洗浄し、窒素空気を徐々に流して乾燥した後、P下で真空に減圧して完全に乾燥し、ペプチジルレジンを準備した。製造されたレジンに脱漏溶液[トリフルオロ化酢酸(TFA)81.5%、蒸留水5%、チオアニソール(Thioanisole)5%、フェノール5%、EDT 2.5%及びTIS 1%]30mlを入れて、常温で時々振りながら2時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留し、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、更に2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のNH−Gly−Arg−Gly−Asp−Tyr−Ile−Trp−Ser−Leu−Asp−Thr−Gln−OH(配列番号2)のペプチド0.144gを収得し、分子量測定器(Perseptive Pioneer DE−STR ABI, 米国)を利用して、分子量1411.0(理論値1410.5)が得られた。
【0055】
図2は、合成して精製しなかった前記ペプチドに対する高性能液状クロマトグラフィーである。
【0056】
実施例2:ペプチドの安定性評価
精製された配列番号2のペプチドの安定性を確認するために、10μg/mlとなるようにペプチドを50mM Tris−HCl(pH 8.0)緩衝溶液に溶解した。対照群として、1μg/mlの濃度で大腸菌から生産された組換えTGF−β1(Sigma)を緩衝溶液に用意した。用意した溶液をガラスバイアルに入れ、40℃で静置した。40℃に静置された溶液を、0日目、1日目、10日目、25日目、50日目、75日目、及び100日目にサンプリングし、NIH−3T3細胞(Korean Cell Line Bank)に対するMTTアッセイ(Scudiero, D. A., et al. Cancer Res. 48:4827−4833(1988))を行って、残っているペプチドの残存量を測定した(図3)。
【0057】
図3からわかるように、組換えTGF−β1の場合、時間が経過するにつれて、活性度が急激に減少するが、本発明のペプチドは、活性度が長く持続されることを確認することができた。
【0058】
実施例3:ナノ化ペプチドの製造
前記実施例から得られたペプチド50mgを正確に秤量した後、蒸留水500mlで十分に攪拌して溶解した。ペプチド溶液を、レシチン5g、オレイン酸ナトリウム(sodium oleate)0.3ml、エタノール50ml及び少量の油相と共に混合した後、総量が1Lとなるように蒸留水で調節した後、マイクロ流動化装置(microfluidizer)を利用して高圧で乳化し、大きさ100nm程度のナノソームを製造した。製造されたナノソームは、最終濃度が約50ppmであって、化粧品製造用に使用した。
【0059】
剤形例1:柔軟化粧水
前記実施例1で製造されたペプチドナノソームを含み、下記組成からなる柔軟化粧水を、一般的な化粧水製造方法により製造した。
【表1】

【0060】
剤形例2:栄養クリーム
前記実施例1で製造されたペプチドナノソームを含み、下記組成からなる栄養クリームを、一般的な栄養クリームの製造方法により製造した。
【表2】

【0061】
剤形例3:栄養化粧水
前記実施例1で製造されたペプチドナノソームを含み、下記組成からなる栄養化粧水を、一般的な化粧水製造方法により製造した。
【表3】

【0062】
剤形例4:エッセンス
前記実施例1で製造されたペプチドナノソームを含み、下記組成からなるエッセンスを、一般的なエッセンス製造方法により製造した。
【表4】

【0063】
実施例4:ペプチドによるメラニン色素の減少
実施例1で合成した配列番号2のペプチドのメラニン色素の減少効果を測定するために、C57BL/6マウスの色素細胞(melanocyte)を培養した後、α−MSH(melanocyte stimulating hormone /Sigma、米国)でメラニン生成を誘発させた後、ペプチドを濃度別に処理して、メラニン生成抑制効果を測定した。マウスの色素細胞は、DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s media,Sigma)に10%牛胎児血清(fetal bovine serum,Sigma)を添加した培地で37℃、5%CO条件で培養した。24−ウェルプレートに1×10細胞/ウェル(cells/well)の濃度で細胞を培養し、細胞の付着を確認した後、対照群には何も処理せず溶媒のみを入れ、陽性対照群は、α−MSHを200μg/ml、そして他のディッシュには配列番号2ペプチドを1μg/mlと10μg/mlの濃度になるように処理をした。それぞれのディッシュは、試験物質を加えて3日間培養した。ここで試験物質は、それぞれの成分を培地溶媒に溶解した後、プロピレングリコール:エタノール:精製水の比率が5:3:2である混合溶媒に溶解させて試験濃度に希釈し、同一な比率で混合したものである。遠心分離を通じて培養液を除去した後、細胞のメラニン生成量を肉眼で確認することができ、そのうち、10μg/ml濃度の処理群に対する結果が図4に示されている。図4から確認できるように、α−MSHを入れた群ではメラニン生成が急激に高くなったが、ペプチドを処理した群では、α−MSHを処理しなかった時と類似したメラニン生成を示した。これは、皮膚にメラニンの生成を誘発させる要因が適用された時、ペプチドがその活性を抑制し、皮膚のトーンを明るくすることができることがわかる。
【0064】
より精密に実験するために、細胞をPBS(phosphate buffer saline)で洗浄した後、1N水酸化ナトリウムで細胞を溶かし、400nmで吸光度を測定した後、メラニン生成抑制率を計算し、その結果を図5に示した(Dooley方法)。図5の結果は図4の結果と一致する。
【0065】
実施例5:ペプチドによるチロシナーゼ活性の減少
実施例1で合成した配列番号2のペプチドと形質転換成長因子の美白活性を検証するために、メラニン生成因子であるα−MSHを処理した後のメラニン生成抑制能を調べた。B16F10細胞(韓国細胞株バンク)を1×10個程度接種して、3日間培養した。細胞が定着された後、2%血清が含有された培地に入れ替え、陰性対照群には何の処理もせず、陽性対照群には、α−MSHを200ng/mlの濃度で処理した。他のディッシュには、α−MSH 200μg/mlと共に、実施例で製造した配列番号2のペプチドをそれぞれ1μg/mlと10μg/mlの濃度で処理した。4日間培養後、細胞の様子を観察した後、細胞を収集し、リーシス緩衝液で処理して蛋白質を抽出した。抽出した蛋白質をBCA(bicinchonic acid)方法で定量した後、各群別に90μlの蛋白質溶液に10μlのL−DOPA(L−3,4−dihydroxyphenylalanine, Sigma)を入れ、37℃で30分間反応した後、405nm分光光度計で吸光度を測定して、チロシナーゼの活性を測定した。
【0066】
図6からわかるように、α−MSHのみを入れた群では、チロシナーゼの活性が強化されたが、追加に入れたペプチドにより30%以上の活性が減少され、これは、ペプチドの量に対して相助される数値で示した。これは、皮膚などにチロシナーゼの活性を高める要因が適用された時、本発明のペプチドがその活性を抑制して皮膚のトーンを明るくすることができるということであって、本発明のペプチドは、形質転換成長因子と同様な活性メカニズムを示すと判断される。
【0067】
実施例6:配列番号2のペプチドによるメラニン生成標識因子の抑制実験
α−MSHを処理してメラニン生成が誘発されたマウス黒色腫細胞において、TGF模倣ペプチドの美白活性をより確実に検証するために、TRP1(tyrosinase−related protein−1)、TRP2及びMITF(microphthalmia−associated transcription factor)のRNA生成を、逆転写重合酵素連鎖反応で観察した。
【0068】
まず、6−ウェルの細胞培養ディッシュにB16F10細胞を1×10個程度摂取し、3日間培養した。細胞が定着された後、2%血清で培地を交換しながら、対照群には溶媒のみを、陽性対照群は、α−MSHを200μg/m入れて、他のディッシュには、α−MSH 200μgと配列番号2のペプチドを10μg/ml濃度で処理した。4日間培養して、顕微鏡で細胞の形態を観察した。図7からわかるように、α−MSHにより誘導されたメラノソームが配列番号2のペプチドにより消えることを確認することができた。
【0069】
次いで、培養細胞からmRNAを抽出し、TRP1、TRP2及びMITFのプライマーを利用して逆転写重合酵素連鎖反応を行った。重合反応に利用されたプライマーの配列は、以下のとおりである:TRP1;F−プライマー,5’−GACAGACCGCTGTGGCTCAT−3’;R−プライマー,5’−CTCCAGACGCAGGAGGTGGTA−3’;TRP2;F−プライマー,5’−GCATGACGGTGGACAGCCTAGT−3’;R−プライマー,5’−GTGTGGTGATCACGTAGTCGG−3’;MITF;F−プライマー,5’−CCAGCCTGGCGATCATGTCATGC−3’;R−プライマー;5’−GGTTGGCTGGACAGGAGTTGCTG−3’。
【0070】
実験結果、本発明のペプチドは、メラニン生成に係わる遺伝子であるTRP1、TRP2、及びMITFの発現を抑制することがわかった(図8)。
【0071】
実施例7:配列番号2ペプチドのプロコラーゲン及びフィブロネクチン生成促進効果
48時間培養したNIH3T3細胞に、合成した配列番号2のペプチドを1μg/ml又は10μg/mlの濃度で処理し、72時間経過後、皮膚シワ改善の標識であるプロコラーゲン及びフィブロネクチンの濃度を測定した。濃度測定は、プロコラーゲンELISAキット(Takara,日本)及びフィブロネクチンELISAキット(Chemicon,米国)を利用して行った。図9から確認できるように、本発明のペプチドは、線維芽細胞のプロコラーゲン生成を増加させた。特に、配列番号2のペプチドが優れたプロコラーゲン生成促進能を示した。また、図10から確認できるように、本発明のペプチドは、線維芽細胞のフィブロネクチン生成を増加させた。特に、配列番号2のペプチドが優れたフィブロネクチン生成促進能を示した。このことから、配列番号2のペプチドは、皮膚に処理時、非常に優れたシワ改善効能を奏するということがわかる。
【0072】
実施例8:配列番号2ペプチドの細胞毒性実験
本発明のペプチドに対する皮膚細胞の細胞内毒性があるかどうかを確認するために、Rizzinoらの方法(Rizzino, et al. Cancer Res., 48:4266(1988))を参照して、HaCat細胞(韓国細胞株バンク)、NIH3T3細胞(韓国細胞株バンク)及びB16F10細胞株(韓国細胞株バンク)を利用したSRB(Sulforhodamine B,Sigma)の比色法を利用して測定した。それぞれの細胞株を、10%FBS(fetal bovine serum)が含有されたEMEM(Eagle’s minimal essential media, Gibco)を添加した250ml容量の組織培養用フラスコを利用して培養した。培養された細胞株を、0.25%トリプシン溶液で培養容器の底から離した後、遠心分離して、細胞沈殿物のみを集めた。これを、FBSが含有されていないEMEM培養液に再び懸濁した後、96−ウェル組織培養用平板に、各ウェル当たり1×10細胞になるように入れて、24時間37℃、7%COの条件下で培養した。24時間後、血清を完全に除去した同一の培養液に培地を入れ替えた後、標準を取るための空試料とペプチドを水と10%DMSO(Dimethyl sulfoxide)に滅菌状態で溶解した後、10ng/ml、100ng/ml、1μg/ml、10μg/ml、及び100μg/mlの濃度で、上記と同一条件で72時間培養した。培養が完了した後、培養上澄み液を除去し、PBSで1回洗浄した。洗浄溶液を除去した後、比色SRB溶液で処理し、PBSで十分洗浄した後、顕微鏡で各細胞を観察し、生存細胞の状態を観察して、紫外線590nmで吸光度を測定し、各細胞の生存状態を図11A〜11Cに示した。
【0073】
図11A〜11Cからわかるように、ケラチノサイトの一種であるHaCat細胞、線維芽細胞の一種であるNIH3T3細胞及びメラノサイトの一種であるB16F10細胞株に対して、低濃度から高濃度まで投与したペプチドによる細胞数の減少は全く観察されず、細胞の顕微鏡的な観察においても、特別な変化が観察されなかった。このことから、本発明のペプチドは、皮膚関連細胞の毒性が全くないことがわかり、本ペプチドを皮膚に処理しても、皮膚細胞に大きい影響を及ぼさないことがわかった。
【0074】
以上、本発明の特定な部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とするTGF−β(Transforming growth factor−beta)模倣ペプチド。
【請求項2】
N−末端又はC−末端に、更に細胞付着アミノ酸配列が結合されている請求項1に記載のTGF−β模倣ペプチド。
【請求項3】
細胞付着アミノ酸配列が、TGF−β模倣ペプチドのN−末端に結合されている請求項2に記載のTGF−β模倣ペプチド。
【請求項4】
細胞付着アミノ酸配列が、RGD(Arg−Gly−Asp)、RGDS(Arg−Gly−Asp−Ser)、RGDC(Arg−Gly−Asp−Cys)、RGDV(Arg−Gly−Asp−Val)、RGES(Arg−Gly−Glu−Ser)、RGDSPASSKP(Arg−Gly−Asp−Ser−Pro−Ala−Ser−Ser−Lys−Pro)、GRGDS(Gly−Arg−Gly−Asp−Ser)、GRADSP(Gly−Arg−Ala−Asp−Ser−Pro)、KGDS(Lys−Gly−Asp−Ser)、GRGDSP(Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro)、GRGDTP(Gly−Arg−Gly−Asp−Thr−Pro)、GRGES(Gly−Arg−Gly−Glu−Ser)、GRGDSPC(Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro−Cys)、GRGESP(Gly−Arg−Gly−Glu−Ser−Pro)、SDGR(Ser−Asp−Gly−Arg)、YRGDS(Tyr−Arg−Gly−Asp−Ser)、GQQHHLGGAKQAGDV(Gly−Gln−Gln−His−His−Leu−Gly−Gly−Ala−Lys−Gln−Ala−Gly−Asp−Val)、GPR(Gly−Pro−Arg)、GHK(Gly−His−Lys)、YIGSR(Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg)、PDSGR(Pro−Asp−Ser−Gly−Arg)、CDPGYIGSR(Cys−Asp−Pro−Gly−Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg)、LCFR(Leu−Cys−Phe−Arg)、EIL(Glu−Ile−Leu)、EILDV(Glu−Ile−Leu−Asp−Val)、EILDVPST(Glu−Ile−Leu−Asp−Val−Pro−Ser−Thr)、EILEVPST(Glu−Ile−Leu−Glu−Val−Pro−Ser−Thr)、LDV(Leu−Asp−Val)又はLDVPS(Leu−Asp−Val−Pro−Ser)である請求項2に記載のTGF−β模倣ペプチド。
【請求項5】
細胞付着アミノ酸配列が、RGD(Arg−Gly−Asp)である請求項4に記載のTGF−β模倣ペプチド。
【請求項6】
N−末端又はC−末端に、更にアセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基、ポリエチレングリコール(PEG)及びアミノ酸からなる群から選択される保護基が結合されている請求項1に記載のTGF−β模倣ペプチド。
【請求項7】
N−末端又はC−末端に、更にアセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基、ポリエチレングリコール(PEG)及びアミノ酸からなる群から選択される保護基が結合されている請求項2に記載のTGF−β模倣ペプチド。
【請求項8】
保護基が、N−末端に結合されている請求項7に記載のTGF−β模倣ペプチド。
【請求項9】
TGF−β(Transforming growth factor−beta)活性を示す請求項1から8のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含むことを特徴とするTGF−β−有効性(TGF−β−effective)の疾患又は状態(conditions)の予防又は治療用組成物。
【請求項10】
TGF−β−有効性疾患又は状態が、組織損傷、動脈硬化、傷(wound)、骨欠陥、リウマチ様関節炎、ぶどう膜炎、癌、シワの改善又は皮膚美白である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
TGF−β(Transforming growth factor−beta)活性を示す請求項1から8のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含むことを特徴とするTGF−β−有効性(TGF−β−effective)の疾患又は状態(conditions)の予防又は治療方法。
【請求項12】
TGF−β−有効性の疾患又は状態が、組織損傷、動脈硬化、傷(wound)、骨欠陥、リウマチ様関節炎、ぶどう膜炎、癌、シワの改善又は皮膚美白である請求項11に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate


【公表番号】特表2012−523453(P2012−523453A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505791(P2012−505791)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/KR2009/001918
【国際公開番号】WO2010/119997
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(510271129)ケアジェン カンパニー,リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】690−3 Geumjeong−dong,Gunpo−si,Gyeonggi−do 435−050,Republic of Korea
【Fターム(参考)】