説明

後処理装置

【課題】後処理装置のスタッカ部に用紙を積載する際に、整合状態を容易に検知して整合不良時に効果的に整合動作を行って生産性をできるだけ高く維持して後処理品質を良好に保つことを可能にする。
【解決手段】画像形成がなされた用紙を後処理に備えて積載するスタッカ部と、該スタッカ部に搬送される新たな用紙の先端が該スタッカ部の所定位置に達した後、積載位置に向けて移動する際の移動量を検知する移動量検知手段と、該移動量検知手段の検知結果に基づいて前記用紙の先端位置を求める制御手段とを備え、実際に搬送、整合される用紙の先端位置をフィードバックするクローズドループの制御を可能にし、品質維持のための工数を削減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成がされた用紙にステープル、パンチなどの後処理を行う後処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において画像形成がされた用紙は、所望により後処理装置においてステープル、パンチなどの後処理がなされる。後処理装置は、画像形成装置に内蔵されたり、また画像形成装置の外部に接続されたりして設置される。後処理装置では、新たな用紙が順次搬送されて積載されるスタック部を備えており、該スタック部に積載された用紙は整合された状態になるように整合手段によって横方向や縦方向での整合動作がなされる(例えば特許文献1参照)。該整合手段では、積載される用紙の量に応じて整合動作のタイミングを変える等して整合動作が良好になされるような工夫もなされている。
【特許文献1】特開平8−26579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような後処理装置では、スタッカ部の用紙揃い性向上させる技術としては予見的制御をするもので、あくまでもオープンループによる制御である。したがって、実際に整合が十分になされない場合があると、これを解消することはできないばかりか、装置動作中に整合不良を検知することもできない。そのため品質を維持したまま印刷物を出荷する場合には、できあがった印刷物を実際に観て確認する必要があり、余計な工数が発生するという問題がある。
【0004】
なお、スタッカ部での用紙の不揃いは特に縦方向で生じやすい。これは用紙を新たに搬送する場合、用紙にカールなどが生じていると、正常な積層位置にまで用紙の先端が達しないままになって、その上にさらに新たな用紙が搬送されてしまう。このような状態になると通常の整合動作では、用紙の不揃いを解消することは難しくなる。上記状態の発生を避けるためには、整合動作を十分に行って用紙の不揃いが発生しないようにすることも考えられる。しかし、上記状態は希に生じることであるため、これを避けるために整合動作を毎回十分に行うものとすると、殆どの場合に正常な用紙の積載状態において過度な整合動作を行うことになり、生産性が低下するなどの問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、実際に搬送、整合される用紙の先端位置をフィードバックするクローズドループの制御を可能にすることで、整合動作を効率的に行って用紙の不揃いの解消を効果的に行うことを可能にする後処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の後処理装置のうち、第1の本発明は、画像形成がなされた用紙を後処理に備えて積載するスタッカ部と、該スタッカ部に搬送される新たな用紙の先端が該スタッカ部の所定位置に達した後、積載位置に向けて移動する際の移動量を検知する移動量検知手段と、該移動量検知手段の検知結果に基づいて前記用紙の先端位置を求める制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
第1の本発明によれば、前記移動量検知手段によって検知される用紙の移動量に基づいて、用紙の先端位置が制御手段によって求められる。用紙の積載完了時に用紙の先端位置を知ることで、用紙一枚ごとに用紙の積載が正常になされたか否かを容易に知ることができる。
なお、上記移動量検出手段としては、光を測定波として物体に照射し、その反射光を光検出器アレイで受光して物体表面の構造的特徴を観察することで、単位時間当たりの物体の変位量を検出するものが例示される。これにより積載された紙束の最も上にある紙の移動量を検出することが可能となる。
【0008】
第2の本発明の後処理装置は、前記第1の本発明において、前記所定位置に先端が達する新たな用紙を検知する用紙検知手段を備えることを特徴とする。
【0009】
第2の本発明によれば、用紙検知手段によって用紙の先端が所定の位置に達したことが検知され、このタイミングを開始時として用紙の移動量を移動量検知手段によって検知することができる。
【0010】
第3の本発明の後処理装置は、前記第1または第2の本発明において、前記移動量検知手段によって前記所定位置で移動量情報の検知が新たにされた場合に、前記所定位置に新たに用紙が搬送されて先端が達したものと判定することを特徴とする。
【0011】
第3の本発明によれば、移動量検知手段の検知位置を前記所定位置に設定し、移動量情報が新たに得られたたときに、前記所定位置での用紙先端の検知とみなすことができる。すなわち、この発明の形態では、上記移動量検知手段で用紙検知手段を兼用することができる。
【0012】
第4の本発明の後処理装置は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記で検知される移動量は、前記所定位置に新たな用紙の先端が達した後、所定の時間内における用紙の移動量であることを特徴とする。
【0013】
所定の位置に先端に達した後、用紙が正常な積載位置にまで移動する時間は、予測することが可能であるので、第4の本発明では、少なくとも上記移動時間を移動量検出のための時間として確保し用紙の移動量を検知することで、用紙の先端が積載位置に達するまでの移動量を得ることができる。したがって、上記の移動時間を最小限にして上記所定の時間を設定することができる。なお、用紙の移動速度には個々にばらつきが生じることもあるので、上記移動時間にばらつきを予測した時間を付加して上記の所定時間とすることが望ましい。
【0014】
第5の本発明の後処理装置は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記移動量検知手段は、一定時間内での用紙の移動量の検知が可能であり、前記制御手段は、順次得られる一定時間内での用紙の移動量を積算して用紙の移動量を算出することを特徴とする。
【0015】
第5の本発明によれば、一定時間毎の用紙移動量を検知する移動量検知手段の場合、この移動量を積算することで、用紙の積算移動量を知ることができる。
【0016】
第6の本発明の後処理装置は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記所定位置に先端が達した後、正常な積載位置にまで搬送された用紙の正常移動量と、前記移動量検知手段によって検知された新たに搬送される用紙の移動量との比較に基づいて、正常な積載位置での用紙の先端位置に対する、新たに搬送された前記用紙の積載位置での先端位置のずれ量を求めることを特徴とする。
【0017】
第6の本発明によれば、予め求めておいた正常時の用紙移動量と、実際に検知された用紙移動量とを比較することで、実際に積載された用紙が正常位置からどの程度のずれ量を有しているかを知ることができる。
【0018】
第7の本発明の後処理装置は、前記第6の本発明において、前記正常移動量を予め記憶しておく記憶部を備えることを特徴とする。
【0019】
第8の本発明の後処理装置は、前記第6の本発明において、前記制御手段は、前記用紙の先端位置のずれ量が所定の閾値を超える場合、スタック不良またはJAM発生と判断することを特徴とする。
【0020】
第8の本発明によれば、前記用紙のずれ量に基づいて、スタック不良またはJAM発生の判定を行うことができる。該判定では、段階的な閾値を設定しておき、小さな値の閾値との比較でスタック不良か否かを判定し、この閾値を超える場合に、さらに大きな値の閾値との比較によってJAM発生か否かの判定を行うようにしてもよい。
【0021】
第9の本発明の後処理装置は、前記第8の本発明において、前記閾値を予め記憶しておく記憶部を備えることを特徴とする。
【0022】
第10の本発明の後処理装置は、前記第8の本発明において、前記制御手段は、用紙の紙種情報によってはスタック不良またはJAM発生の判断を制限することを特徴とする。
【0023】
上記用紙移動量検知手段は、用紙の紙種によっては適正な移動量が検出されない場合があり、その場合には、スタック不良やJAM発生の判断を行わないようにする。検出が難しい用紙としてはOHPフィルムや光沢紙などが挙げられる。用紙の紙種情報は、画像形成装置側で画像形成に際し取得しているので、この情報を画像形成装置から受けることで取得することができる。
【0024】
第11の本発明の後処理装置は、前記第8の本発明において、前記制御手段は、スタック不良と判断される場合、スタック不良時の整合動作を実行する制御を行うことを特徴とする。
【0025】
第11の本発明によれば、用紙のずれ量に基づいてスタック不良と判断される場合に、スタック不良時用の整合動作を行うことで、用紙の不揃いを解消することが可能になる。なお、この整合動作時に上記用紙移動量検出手段によって用紙の移動量を検出して用紙のずれが解消されたか否か、または正常値以内に収まったか否かを検知することもできる。
【0026】
第12の本発明の後処理装置は、前記第11の本発明において、前記制御手段は、前記用紙の先端位置のずれ量に応じてスタック不良時の整合動作条件を変更することを特徴とする。
【0027】
第12の本発明によれば、用紙のずれ量に応じて整合動作条件(整合用モータの回転数や駆動時間)を変更することで、用紙のずれ量に見合う整合をおこなうことができる。すなわち、ずれ量が大きい場合には、整合強度を十分に高めて(回転数や駆動時間を多くする)整合を行うようにし整合性を高め、ずれ量が小さい場合には、整合強度を小さくして余分な動作を減らして生産性を高め、省エネルギ化を図ることができる。
【0028】
第13の本発明の後処理装置は、前記第12の本発明において、変更がなされる前記整合動作条件は、整合動作の動作時間、動作速度、動作量のいずれか一つ以上であることを特徴とする。
【0029】
第14の本発明の後処理装置は、前記第1〜第13の本発明において、前記スタック部に積載された用紙の紙束に対し前記移動量検出手段を遠近移動可能な検出手段移動手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段移動手段を制御して前記移動量検出手段と前記用紙の紙束表面との距離を略一定にすることを特徴とする。
【0030】
第14の本発明によれば、スタッカ部に積載された用紙の枚数に応じて前記移動量検知手段が用紙に対し遠近移動をして、移動量検出手段と用紙束の表面との距離を略一定に保つことで移動量検出精度を良好に保つことができる。なお、上記距離を保つための上記制御は、新たな用紙が搬送される毎に行ってもよく、また、複数枚搬送される毎に行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明の後処理装置によれば、画像形成がなされた用紙を後処理に備えて積載するスタッカ部と、該スタッカ部に搬送される新たな用紙の先端が該スタッカ部の所定位置に達した後、該用紙が積載位置に向けて移動する際の移動量を検知する移動量検知手段と、該移動量検知手段の検知結果に基づいて前記用紙の先端位置を求める制御手段とを備えるので、実際に搬送、整合される用紙の先端位置をフィードバックするクローズドループの制御を可能にし、整合動作を効率的かつ効果的に行って整合性能の向上を図ることができ、高い生産性をできるだけ維持して用紙の不揃いの解消を効果的に行うことができる。このため品質維持のための工数を削減できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明の一実施形態を添付図に基づいて説明する。
図1、2は、後処理装置1の機械的構成を示す図であり、以下にその説明をする。
後処理装置には、画像形成装置100から搬送される画像形成済みの用紙が導入される入口部1aを有しており、該入口部1aに連続する搬送路がサブトレイ通紙経路2とメイントレイ通紙経路3とに分岐している。該分岐部分には、図示しない切り換えゲートが設けられて用紙の搬送方向が切り換えられる。
【0033】
サブトレイ通紙経路2の下流端にはサブトレイ16が設けられている。メイントレイ通紙経路3の下流側には用紙を積載するスタッカ部5が約70度の角度に縦方向に沿って設置されている。スタッカ部5では、搬送ローラ6によって、メイントレイ通紙経路3を搬送される用紙がスタッカ部5の積層面上に搬送される。上記するサブトレイ通紙経路2、メイントレイ通紙経路3、搬送ロータ6やその他のローラ、切り換えゲートなどによって用紙搬送手段が構成されている。なお、メイントレイ通紙経路3からスタッカ部5に至る経路には、図2に示すようにスタッカ入り口センサPS1が設置されており、スタッカ部5に搬送される用紙の先端や後端の検知が可能になっている。
【0034】
上記のようにしてスタッカ部5に搬送される用紙は、スタッカ部5の積層面に沿って自重で落下する。スタッカ部5の下端側には、図4に示すように移動可能な後端ストッパ5aが設けられており、積載時には、自重で落下する上記用紙が後端ストッパ5aに突き合って積載位置に用紙を位置させる。また、スタッカ部5には、スタッカ入り口モータ7によって首振り動作をする首振りベルト8が設けられており、該首振りベルト8が縦整合ローラ9に掛けられており、縦整合ローラ9は、該首振りベルト8による首振り動作とともに、スタッカ入り口モータ7によって回転駆動される。スタッカ部5に搬送される用紙は、上記のように積層面を自重で落下するとともに、首振り動作をしつつ回転する縦整合ローラ9で縦方向に整合されつつ正常位置に積層される。
【0035】
また、スタッカ部5には、図示しない整合板が両側に設けられており、該整合板を横方向に揺動させることで横方向での用紙の整合を行うことができる。上記したスタッカ入り口モータ7、首振りベルト8、縦整合ローラ9および図示しない整合板等によって整合手段が構成されている。
なお、スタッカ部5には、スタッカ0枚センサPS2が設けられており、スタッカ部5に用紙が積層されているか否かを検知可能になっている。
【0036】
スタッカ部5の下端側近傍には、用紙移動量検知センサ10が用紙移動量検知手段として設置されている。該用紙移動量検知センサ10は、光を測定波として積層面最上層の用紙に照射し、その反射光を図示しない光検出器アレイで受光して用紙表面の構造的特徴を観察することで、単位時間当たりの用紙の移動量を検出するものである。該センサの一例は、特開2005−206307号公報に記載されている。
【0037】
スタッカ部5の下方側には、後処理部であるステイプル部11が設けられている。該ステイプル部11は、スタッカ部5に積載された用紙にステイプルを行うものであり、既知の構成とすることができ、この実施形態では詳細な説明を省略する。
また、ステイプル部11からはスタッカ部5の積層面を通して、ステイプル済みの用紙束を移動させるメイントレイ通紙経路12が設けられており、該メイントレイ通紙経路12は、下流端でメイントレイ15に接続されている。
【0038】
次に、図3は上記後処理装置の機能ブロックを示すものであり、以下にその説明する。
制御手段20は、後処理装置全体を制御するものであり、主としてCPUとこれを動作させるプログラムとによって構成される。その他に、前記プログラムを格納するROMや、データを一時保存するRAMなどを備えることができる。該制御手段20は、前記画像形成装置100とシリアル通信などによって通信可能に接続されており、画像形成装置100からのJOB情報などが受信される、JOB情報には、後処理の有無、内容や用紙情報などが含まれている。また、制御手段20からは、画像形成装置100に対し、装置情報などが送信される。
【0039】
制御手段20には、データを不揮発に記憶可能な記憶部21が接続されている。記憶部21は、フラッシュメモリやHDDなどにより構成することができ、後処理装置の制御プロセスや、各種の設定データや整合不良などの判定データなどが格納可能になっている。
【0040】
また、制御手段20には、前記した用紙移動量検知センサ10が接続されており、該センサの検知結果が制御手段20に逐次送信される。制御手段20においては、用紙移動量の積算値が算出されたりして、スタッカ部5に新たに搬送される用紙の先端位置が算出可能になっている。
【0041】
また、制御手段20では、前記したサブトレイ通紙経路2やメイントレイ通紙経路3、メイントレイ通紙経路12や、図示しない切り換えゲートなどからなる用紙搬送手段22が制御可能に接続されている。
【0042】
制御手段20には、前記した整合手段23が制御可能に接続されており、制御手段20は、所定のタイミングで整合動作を行うように整合手段22を制御する。また、制御手段20では、必要に応じて整合動作の条件を変更することができる。
【0043】
さらに、制御手段20には、ステイプル部11が制御可能に接続されている。制御手段20では、画像形成装置100から送信されるJOB情報に基づいて、ステイプル指示がある場合に、スタッカ部5に積層された用紙をステイプル部11に移動させて必要なステイプル処理を行う。
【0044】
以下に、この実施形態の後処理装置の動作について説明する。
画像形成装置100から搬送される画像形成済みの用紙は、入口部1aから後処理装置1に導入される。この際に、画像形成装置100から制御手段20に送信されるJOB情報に基づいて、制御手段20は搬送手段22を制御し、後処理が不要な場合には、切り換えゲートの動作によって用紙をサブトレイ通紙経路2に送り、サブトレイ16に排紙する。一方、ステイプル処理が必要とされる場合は、切り換えゲートの動作によって用紙をメイントレイ通紙経路3に送る。メイントレイ通紙経路3を搬送される用紙は、後端がスタッカ入り口センサPS1で検知されつつ搬送ローラ6でスタッカ部5へと搬送される。スタッカ部5に搬送された用紙は、自重でスタッカ部5の積層面を落下しつつ、前記スタッカ入り口センサPS1での検知タイミングより所定時間経過後に整合手段23を動作させて横方向および縦方向の整合動作を行う。縦方向の整合は、前記したようにスタッカ入り口モータ7によって首振りベルト8を首振り動作させつつ縦整合ローラ9を図示反時計回りに回転させて行う。新たに搬送された用紙は、上記のように自重落下と整合を受けつつ下方へと移動する。この際には、用紙移動量検知センサ10によって移動量が検知される。該検知手順は後述する。
【0045】
スタッカ部5に積層される用紙は後端ストッパ5aで突き合わされる。
図4は、新たな用紙がスタッカ部5に積載される状態を示す図であり、正常時には(a)図に示すように新たな用紙は、後端ストッパ5aに突き合わされて正常位置に積載される。一方、用紙にカールなどが生じている場合、(b)図に示すように用紙の移動が十分になされず、用紙の先端が後端ストッパ5aに達することなく移動を停止してしまい、用紙が不揃いになる。
【0046】
スタッカ部5に順次積層される用紙は、前記用紙の軽度の不揃いが生じている場合、該不揃いを解消する整合不良時の整合動作(詳細は後述する)が行われる。不揃いが無い場合は、整合不良時の整合動作は行われない。スタッカ部5にJOB情報で指定された所定枚数の用紙が積層されると、後端ストッパ5aを移動させて用紙をステイプル部11に導入し、必要なステイプル処理を行う。ステイプル処理がなされた用紙束は、制御手段20による制御によってメイントレイ通紙経路12を経てメイントレイ15へと排紙される。
【0047】
次に、上記した用紙移動量の検出およびこれに伴う制御内容について以下に説明する。
先ず、新たに搬送される用紙の先端が所定位置に達したことを検知する手順について図5のフローチャートに基づいて説明する。
制御手段20では、紙検知フラグがOFFであるか否かを判定する(ステップA1)。紙検知フラグがONである場合には、先の用紙の移動量が検知されているので、この検知を終了するまで待機する。紙検知フラグがOFFであると、新たな用紙の紙検知が可能であるので、先ず積算移動量を0にリセットする(ステップA2)。次いで、移動量検知センサ10の検出結果から積算移動量を求める処理を行う(ステップA3)。移動量検知センサ10による検知量が発生していなければ、積算移動量は0のままとなる。次のステップでは、積算移動量が0を超えたか否かの判定を行う(ステップA4)。積算移動量が0のままの場合、用紙が所定位置である検知位置に達していないので移動量検知センサ10による新たな検知もなされておらず、ステップA3に戻って上記手順を繰り返す。
【0048】
用紙の先端が検知位置に達すると、移動量検知センサ10によって新たに検知がなされ、その結果、積算移動量が0を超える(ステップA4、YES)。積算移動量が0を超えると、紙検知フラグをONにして、移動量の検出ルーチンに進む。上記用紙検知手順は、所定位置に新たに搬送された用紙の先端が達したか否かを検知するものであり、本発明の用紙検知手段の機能を示すものであるが、この実施形態では、用紙検知手段は、用紙移動量検知手段によって兼用がなされている。
【0049】
所定位置での用紙の検知に伴って、用紙の先端位置を検知する手順が実行される。該手順を図6のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、紙検知フラグがONになるまで待機する(ステップB1)。この判定では、上記紙検知で紙検知フラグがONに設定されていることにより次ステップに移行することができる。次ステップでは、用紙が上記所定位置に先端が達した後、正常な積載位置にまで達する正常時所要時間に、ばらつきを考量した付加時間を加えて所定の時間を設定をしてタイマーのカウントを開始する(ステップB2)。なお、所定の時間は予め設定して記憶部21に記憶しておき、必要に応じて制御部20によって読み出すことができる。
【0050】
移動量検知センサ10では、一定時間毎の用紙の移動量が検出されており、該検出結果が制御手段20で送信されて積算移動量が算出されている(ステップB3)。なお、この形態では、移動量検知センサ10に、用紙搬送において1パルス当たり、0.23mmの移動量検出が可能なものが採用されている。該検出はタイマーが上記所定時間に達するまで継続され(ステップB4)、所定時間に達すると、紙検知フラグを0にし(ステップB5)、上記で算出された積算移動量を用紙の移動量とする。制御手段20では、記憶部21に記憶されている正常時の用紙移動量(所定位置から積載位置まで)のデータを読み出し、上記で検出された移動量とを比較し、用紙先端のずれ量を算出する(ステップB6)。これにより、後処理装置の動作中に用紙が正常に積載されたか否かを知ることができる。
【0051】
上記の用紙移動量を検出する際のタイミングチャートを図7に示す。所定時間紙検知フラグはONになり、タイマーでのカウントが継続される。この際に、用紙の移動量が移動量検出センサでパルス状に検出され、検出結果が制御手段20で積算される。図7では、所定時間内において、用紙の移動が検知されなくなり、ある時間は、積算移動量が増加することなく時間が経過する。これは、上記のように正常時の所要時間にばらつきを考慮した付加時間を加えているためである。用紙が正常積載時に比べて先端のずれが生じている場合、通常は、図に示す正常積載時よりも左側の位置で用紙の移動が検知されなくなり、積算移動量が正常時よりも小さくなる。
【0052】
次に、上記で検知された用紙のずれ量に基づく判定手順について図8のフローチャートに基づいて説明する。なお、前記記憶部21には、ずれ量における判定の閾値として閾値1と閾値2とが記憶されており、閾値2は閾値1よりも大きな値が設定されている。
先ず前記手順等により検出された用紙先端のずれ量があるか否かの判定がなされ(ステップC1)、ずれ量が0の場合には、正常積載であると判定をし(ステップC3)、処理を終了する。すれ量がある場合(0でない)、該ずれ量が閾値1を超えるか否かの判定を行う(ステップC2)。すれ量が閾値1以下で、小さい場合、許容範囲であるとして図9に示すように正常積載の判定をし(ステップC3)、処理を終了する。一方、ずれ量が閾値1を超える場合、ずれ量が閾値2を超えるか否かの判定を行う(ステップC4)。ずれ量が閾値2以下の場合は、軽度な整合不良であるとして、図9に示すように、整合不良時の整合動作を追加で行い(ステップC5)、処理を終了する。なお、ステップC5の際に、用紙移動量検知センサ10によって用紙の移動量を検出して、用紙の移動に伴ってずれ量が閾値1以下になったか否かの判定を行ってもよく、閾値1以下にならない場合には、回数を制限するなどして整合不良時の整合動作と用紙の移動量検出、閾値1との比較判定を繰り返し行ってもよい。
また、ずれ量が閾値2を超える場合、重度の整合不良が生じているため、制御手段20では、JAM判定を行う(ステップC6)。該JAM判定では、制御手段20は、次の用紙の搬送を停止して画像形成装置に画像形成動作の中断を指示するとともに、画像形成装置の表示部などに警告を行うように指示することも可能である。
【0053】
上記のように用紙の先端のずれがある場合、整合不良時の整合動作を行うことで効率的に用紙の不揃いを解消できるが、用紙のずれ量に応じて整合動作の強度を変更することも可能である。図10は、用紙のずれ量に応じて整合強度を変更するグラフを示すものであり、ずれ量が大きいほど整合強度を高めている。整合強度の因子としては例えば整合手段に備えるパドルの回転量やパドル駆動時間が挙げられる。なお、このグラフでは、ずれ量に応じて連続的に整合強度を変化させるものとして示しているが、ずれ量に応じて段階的にずれ量を変化させるようにしてもよい。
【0054】
また、上記各手順では、用紙の種別に拘わらず、整合不良・JAM判定を行ったが、用紙によっては当該判定を制限するようにしてもよい。以下に、その手順を図11に基づいて説明する。
先ず、用紙の紙種情報を取得する(ステップD1)。紙種情報は、例えば、画像形成装置100から取得することができる。次ステップでは、取得した紙種情報に基づいて、当該JOBでの紙種がOHPフィルムであるか否かの判定を行う(ステップD2)。紙種がOHPフィルムである場合、整合不良・JAM判定の機能をOFFにして前記判定手順を行わないものとする(ステップD3)。これはOHPフィルムでは、表面の性状変化に基づいて移動量を検出するのが難しく、正確な移動量判定が困難であるためである。また、紙種がOHPフィルムでない場合は、通常通り、整合不良・JAM判定の機能をONにして前記判定手順を行うことができる。これにより精度の高い判定のみを行うようにすることができる。
【0055】
また、用紙の移動量を精度よく検出するために、用紙移動量検知センサ10と、用紙の紙束最表面との距離を略一定に維持するようにすることができる。
当該構成を図12に基づいて説明する。
用紙移動量検知センサ10は、検知手段移動手段としてのセンサ移動パルスモータ10bによって紙束に対し遠近移動するように前進・後退が可能になっている。なお、センサ移動パルスモータ10bの1パルス毎の駆動動作によって用紙移動量検知センサ10が略用紙一枚分移動するように図示しない駆動伝達部の減速比を設定しておくのが望ましい。
また、移動量検知センサ10は、紙束側に突出して該センサ10とともに移動する用紙接触検知センサ10aが設けられており、紙束最表面との接触検知が可能になっている。
【0056】
上記構成の動作手順について図13に基づいて説明する。
先ず、用紙接触センサ10aが紙束最表面に対し、後退した位置になるように、用紙移動量検知センサ10をセンサ移動パルスモータ10bの1パルス毎の駆動により後退させ(ステップE1)、用紙接触検知センサ10aの検知結果がOFFになるまで1パルス毎の後退を繰り返す(ステップE2)。用紙接触検知センサ10aの検知結果がOFFになると、用紙移動量検知センサ10をセンサ移動パルスモータ10bの1パルス毎の駆動により前進させ(ステップE3)、用紙接触検知センサ10aがONになるまで1パルス毎の前進を繰り返す(ステップE4)。用紙接触検知センサ10aがONになると、上記処理手順を終了する。なお、用紙接触検知センサ10aと新たに搬送される用紙の干渉を避けるために、上記手順後、所要ステップ分、用紙移動量検知センサ10を後退させるように制御してもよい。
上記手順により、用紙移動量検知センサ10と用紙束の最表面とが略一定の距離を有するようにでき、用紙移動量検知センサ10による検知結果の精度を高めることができる。
【0057】
以上、本発明について上記各実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は、上記実施形態の内容に限定をされるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは当然に適宜の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態の後処理装置を示す全体図である。
【図2】同じく、一部を拡大した拡大図である。
【図3】同じく、機能上のブロック図である。
【図4】同じく、新たな用紙搬送時の積載状態を示す図である。
【図5】同じく、用紙検知の手順を示すフローチャートである。
【図6】同じく、用紙先端位置の検出手順を示すフローチャートである。
【図7】同じく、用紙移動量の検出時のタイミングチャートである。
【図8】同じく、検出された用紙ずれ量に対応する判定手順を示す図である。
【図9】同じく、用紙のずれが生じている状態を示す図である。
【図10】同じく、用紙のずれ量と整合強度の関係を示す図である。
【図11】同じく、紙種情報に基づく機能ON−OFFの判定手順を示す図である。
【図12】同じく、用紙移動量検知センサと用紙束表面との距離を一定に保つ構成を示す図である。
【図13】同じく、用紙移動量検知センサと用紙束表面との距離を一定に保つ手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 後処理装置
5 スタッカ部
7 スタッカ入り口モータ
8 首振りベルト
9 縦整合ローラ
10 用紙移動量検知センサ
11 ステイプル部
20 制御手段
21 記憶部
23 整合手段
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成がされた用紙を後処理に備えて積載するスタッカ部と、該スタッカ部に搬送される新たな用紙の先端が該スタッカ部の所定位置に達した後、積載位置に向けて移動する際の移動量を検知する移動量検知手段と、該移動量検知手段の検知結果に基づいて前記用紙の先端位置を求める制御手段とを備えることを特徴とする後処理装置。
【請求項2】
前記所定位置に先端が達する新たな用紙を検知する用紙検知手段を備えることを特徴とする請求項1記載の後処理装置。
【請求項3】
前記移動量検知手段によって前記所定位置で移動量情報の検知が新たにされた場合に、前記所定位置に新たに用紙が搬送されて先端が達したものと判定することを特徴とする請求項1または2に記載の後処理装置。
【請求項4】
前記で検知される移動量は、前記所定位置に新たな用紙の先端が達した後、所定の時間内における用紙の移動量であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の後処理装置。
【請求項5】
前記移動量検知手段は、一定時間内での用紙の移動量の検知が可能であり、前記制御手段は、順次得られる一定時間内での用紙の移動量を積算して用紙の移動量を算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の後処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記所定位置に先端が達した後、正常な積載位置にまで搬送された用紙の正常移動量と、前記移動量検知手段によって検知された新たに搬送される用紙の移動量との比較に基づいて、正常な積載位置での用紙の先端位置に対する、新たに搬送された前記用紙の積載位置での先端位置のずれ量を求めることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の後処理装置。
【請求項7】
前記正常移動量を予め記憶しておく記憶部を備えることを特徴とする請求項6記載の後処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記用紙の先端位置のずれ量が所定の閾値を超える場合、スタック不良またはJAM発生と判断することを特徴とする請求項6記載の後処理装置。
【請求項9】
前記閾値を予め記憶しておく記憶部を備えることを特徴とする請求項8記載の後処理装置。
【請求項10】
前記制御手段は、用紙の紙種情報によってはスタック不良またはJAM発生の判断を制限することを特徴とする請求項8記載の後処理装置。
【請求項11】
前記制御手段は、スタック不良と判断される場合、スタック不良時の整合動作を実行する制御を行うことを特徴とする請求項8記載の後処理装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記用紙の先端位置のずれ量に応じてスタック不良時の整合動作条件を変更することを特徴とする請求項11記載の後処理装置。
【請求項13】
変更がなされる前記整合動作条件は、整合動作の動作時間、動作速度、動作量のいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項12記載の後処理装置。
【請求項14】
前記スタック部に積載された用紙の紙束に対し前記移動量検出手段を遠近移動可能な検出手段移動手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段移動手段を制御して前記移動量検出手段と前記用紙の紙束表面との距離を略一定にすることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の後処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−12897(P2009−12897A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174725(P2007−174725)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】