説明

微小カプセルの油性物質分散液、内包済微小カプセルの油性物質分散液及びそれらを含有する化粧料

【課題】親水性物質を、油性成分中へ安定的に配合し保持することを可能とする、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液、該微小カプセルの油性物質分散液に、水や親水性物質を内包させて得られる内包済微小カプセルの油性物質分散液、及びこれらの油性物質分散液を含有する化粧料を提供する。
【解決手段】水が透過可能な壁膜を有し、該壁膜内に水を内包する微小カプセルより、内包水を除去して得られる微小カプセルを、油性物質中に分散してなることを特徴とする微小カプセルの油性物質分散液、該微小カプセルの油性物質分散液に、水や親水性物質を内包させて得られる内包済微小カプセルの油性物質分散液、及びこれらの油性物質分散液を含有する化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルを油性物質中に分散させてなる微小カプセルの油性物質分散液、該油性物質分散液中の微小カプセルに水及び/又は親水性物質を内包させてなる内包済微小カプセルの油性物質分散液、並びに、該微小カプセルの油性物質分散液及び/又は該内包済微小カプセルの油性物質分散液、水相成分、及び油相成分を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚用や毛髪用の外用剤、特に化粧料には、親水性の保湿成分、ビタミン類、薬効成分等の機能性成分がよく配合される。これらの親水性の機能性成分は、油性成分への安定な配合が困難であるので、安定に配合させるために界面活性剤を使用し油中水型(W/O型)乳化化粧料等に配合される。
【0003】
しかし、強い乳化能を有する界面活性剤は皮膚に対する刺激があり、安全性面で問題があるものが多く、一方、皮膚刺激の少ない界面活性剤では乳化能が不足し、安定な配合をしにくいという問題がある。
【0004】
又、W/O型乳化化粧料の油相成分としては、使用感触の観点から、シリコーン油、例えば、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性シリコーン等がよく用いられるが、これらのシリコーン油を用いるW/O型乳化組成物を調製する場合、界面活性剤としてポリエーテル変性シリコーンが用いられている。しかし、ポリエーテル変性シリコーンは、経時変化でアルデヒド等の刺激臭を発生するという問題点がある。又、ポリエーテル変性シリコーンはシリコーン油以外のエステル油、炭化水素油等の混合油分系における乳化能に劣り、安定なW/O型乳化組成物を得ることが難しいという問題点があった。
【0005】
水及び/又は親水性の機能性成分を油性成分へ安定に配合する方法として、前記の界面活性剤を使用する方法の他に、水及び/又は親水性物質を微小カプセルに内包し、これを油性物質に分散させて配合する方法が考えられる。油性成分を内包した微小カプセルはこれまでも化粧料に使用されており、例えば薬効成分、油性成分等の水不溶性成分を微小カプセルに封入して配合する方法が、これらの成分を水性化粧品や乳化化粧品に安定的に保持させる目的で行われて来た。本発明者らもオルガノポリシロキサンを壁材とする微小カプセルを提案し、紫外線吸収剤や油性ビタミン類を内包した微小カプセルとして利用されている(特開2001−106612号公報)。
【0006】
このように従来は主に、油性物質を内包した微小カプセルが提案されていたが、水や水溶性保湿成分等の親水性成分を内包する微小カプセルの提案もある。例えば、水溶性薬剤を芯剤とし、これを親油性物質で被覆し、さらにこれを親水性物質で被覆した二重カプセル(特開昭61−225115号公報)や、水溶性保湿成分を内包し、ビニル重合樹脂を被膜とする圧縮崩壊性カプセル(特開平1−1118号公報)等が提案されている。しかし、これらのカプセルは、使用時にカプセルを崩壊させて内包物を放出させることを目的とするものなので、粒径が大きい上に壁材が硬く、化粧料として皮膚に塗布する際に異物感が残る等の問題があった。
【0007】
又、このような微小カプセルの調製においては加熱や強い撹拌を伴う場合が多い。一方、親水性の機能性成分には熱等に不安定なものも多いので、微小カプセルを調製し親水性の機能性成分を内包する際に、加熱等により有効成分が破壊されて活性が低下する、着色や着臭する等の問題があった。さらに、これらの微小カプセルの調製は乳化系で行うが、高塩濃度ではこの乳化系が破壊される。その結果、高塩濃度の水溶液は微小カプセルに内包させることができないとの問題もあった。
【特許文献1】特開昭61−225115号公報
【特許文献2】特開平1−1118号公報
【特許文献3】特開2001−106612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱に不安定な親水性の機能性成分の水溶液や高塩濃度の水溶液等の親水性物質を、油性成分中へ、界面活性剤を用いずに、安定的に配合し保持することを可能とする、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液を提供することを課題とする。本発明は、又、前記の微小カプセルの油性物質分散液に、水及び/又は親水性物質を内包させて得られ、油性成分中に安定的に配合し保持することが可能な内包済微小カプセルの油性物質分散液を提供することを課題とする。本発明は、さらに、これらの微小カプセルの油性物質分散液及び/又は内包済微小カプセルの油性物質分散液と、水相成分及び油相成分を含有する化粧料、例えばW/O型化粧料を提供することを課題とする。
【0009】
なお、ここでは、例えばW/O型化粧料の油相を形成する油性成分を油相成分と言い、微小カプセルを分散させる油性成分を油性物質と言う。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前記の課題は、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルを、油性物質中に分散してなる分散液であって、該微小カプセルが、水及び/又は親水性物質が透過可能な壁膜を有し、該壁膜内に水及び/又は親水性物質を内包する微小カプセルより、内包されている水及び/又は親水性物質の全部又は一部を除去して得られることを特徴とする微小カプセルの油性物質分散液(請求項1)により達成される。
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、水及び/又は親水性物質が透過可能な壁膜を有し、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルを用い、この微小カプセルを油性物質中に分散させた微小カプセルの油性物質分散液を、化粧料中に配合することにより、化粧料の成分として有用な親水性物質を、この微小カプセル内に内包させ、該化粧料中に安定的に保持できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の(水及び/又は親水性物質の内包が可能な)微小カプセルの油性物質分散液は、水及び/又は親水性物質を内包している微小カプセルが油性物質中に分散された微小カプセルの油性物質分散液を製造し、該微小カプセルより、内包されている水及び/又は親水性物質を除去することにより得ることができる。この水及び/又は親水性物質を内包する微小カプセルの油性物質分散液は、特開平11−221459号公報や特開2001−106612号公報に記載の方法で容易に製造することができる。
【0013】
ここで、水及び/又は親水性物質とは、水や親水性の物質の水溶液及び親水性物質のみを含む意味であり、特に限定されない。親水性の物質としては、アルコール類、不揮発性のグリセリン類が例示される。又、熱等により分解しにくいNaCl等の塩類や熱等により分解しにくい他の化合物等も含むことができる。内包している水及び/又は親水性物質には、2種以上の親水性物質が溶解されていてもよく、又他の成分が溶解されていてもよい。水及び/又は親水性物質を内包する微小カプセルの油性物質分散液より水及び/又は親水性物質を除去する方法は、減圧下で水及び/又は親水性物質を留去する等の方法により行うことができる。
【0014】
又、内包する水及び/又は親水性物質の除去は、内包する水及び/又は親水性物質の一部の除去であってもよい。すなわち、微小カプセル内(及び/又は微小カプセル間)に、内包されている水及び/又は親水性物質の一部が残存している微小カプセルを、油性物質中へ分散した分散液も、(水及び/又は親水性物質の内包が可能な)本発明の微小カプセルの油性物質分散液に該当する。
【0015】
前記の水及び/又は親水性物質を内包している微小カプセルは、水及び/又は親水性物質が透過可能な壁膜を有する。従って、本発明の油性物質分散液中に分散される水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルも、同様に、水及び/又は親水性物質が透過可能な壁膜を有する。この壁膜としては、親油性及び親水性であるものが好ましい(請求項2)。ここで、親油性とは油性成分となじみやすい性質を言い、親水性とは親水性成分となじみやすい性質を言う。好ましくは、該微小カプセルの壁膜はこの両方の性質を有する。例えば、アルキル基、アルキルポリシロキサン部等の親油性部、及びカルボキシル基、ペプチド結合等の親水性部を有するポリマーが壁膜を形成する材料として好ましく用いられる。壁膜が、親油性を有するため、油性物質中に安定的に分散され、一方、親水性を有するために内包水の除去や親水性物質の再内包(以下同様に、水及び/又は親水性物質が、再度微小カプセルの壁膜内及び/又は微小カプセル間に内包されることを、再内包と言うことがある。)等が容易になる。
【0016】
微小カプセルの壁膜は、より好ましくは、シリル化ペプチドの一種以上と、加水分解により水酸基が2個以上生じるシラン化合物の一種以上との縮重合物により形成されている(請求項3)。
【0017】
特に、前記壁膜を形成する縮重合物としては、下記の一般式(I):
【0018】
【化1】


〔式中、Rは水酸基又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rは側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、RはRが結合するアミノ酸以外のアミノ酸側鎖を示し、Aは結合手で−CH−、−(CH−、−(CHOCHCH(OH)CH−及び−(CHS−よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、mは0〜50、nは0〜50、m+nは1〜50である(ただし、m及びnはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない。)。〕で表わされるシリル化ペプチドの一種以上と、
下記一般式(II):
pSIX(4−p) (II)
〔式中、Rは炭素原子にケイ素原子が直結する有機基で、pは0から2の整数で、p個のRは同じでも異なっていてもよい。Xは水酸基、水素原子、アルコキシル基、ハロゲン基、カルボキシル基、アミノ基及びシロキシル基よりなる群から選ばれる基で、(4−p)個のXは同じでも異なっていてもよい。〕で表わされ、加水分解によって水酸基が2個以上生じるシラン化合物の一種以上を、1:20〜1:80のモル比で、縮重合させて得られる縮重合物が好ましく例示される(請求項4)。Rとしては、炭素数1〜14のアルキル基が例示される。なお、一般式(I)におけるm及びn、並びに一般式(II)におけるp及び(4−p)は下付け文字である。式(I)中のアミノ基、ペプチド結合、縮合に使用されずに残存した水酸基、カルボキシル基により、壁膜は親水性を有し、一方、式(I)中のRで表されるアルキル基、Aで表される基、式(II)中のRで表されるアルキル基等により壁膜は親油性を有する。
【0019】
好ましくは、前記の一般式(I)で表わされるシリル化ペプチドの一種以上と、一般式(II)で表わされる加水分解によって水酸基が2個以上生じるシラン化合物の一種以上との縮重合は、親水性物質及び水と混和しない油性成分の存在下、撹拌しながら行われる。請求項5は、この好ましい態様に該当する。
【0020】
このようにして得られる、特定のシリル化ペプチドと特定のシラン化合物との縮重合物を壁膜とした微小カプセルの油性物質分散液から内包する水及び/又は親水性物質を除去することにより、本発明の微小カプセルの油性物質分散液が得られ、この本発明の微小カプセルの油性物質分散液は、油性成分を含む化粧料、特にW/O型化粧料に配合された際、界面活性剤を用いなくても、該微小カプセルを安定に配合、保持することができる。又皮膚に対して優れた親和性、伸展性を有して異物感を与えることが少ない。
【0021】
特に、本発明の微小カプセルの油性物質分散液を用いることにより、油相成分がデカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性シリコーンの場合であっても、安定なW/O型組成物が得られるとの効果を奏する。従来は、油相成分が揮発性シリコーンの場合、安定なW/O型組成物を得ることが難しかった。
【0022】
又、本発明者らは、前記微小カプセルの壁膜、すなわち特定のシリル化ペプチドと特定のシラン化合物との縮重合物からなる壁膜は、水や親水性物質の透過が可能であることを見出した。従って、連続相に油性物質を用い、水及び/又は親水性物質の存在下、撹拌しながらシリル化ペプチドと特定のシラン化合物との縮重合を行う方法等により製造された微小カプセルの油性物質分散液、すなわち前記縮重合物を壁膜とし、水及び/又は親水性物質を内包した微小カプセルの油性物質分散液からは、内包する水及び/又は親水性物質を除去することが可能であり、かつ水及び/又は親水性物質の微小カプセルへの再内包が可能である。
【0023】
本発明者は、さらに、前記の内包された水及び/又は親水性物質が除去された微小カプセルの油性物質分散液と、水及び/又は親水性物質を、油性成分中に共存させると、該水及び/又は親水性物質が、混合物中に安定に配合され保持されることを見出した。水及び/又は親水性物質が、微小カプセルの壁膜内に水及び/又は親水性物質が再び取り込まれ、さらに微小カプセル間に水及び/又は親水性物質が安定に保持されるものと考えられる。
【0024】
すなわち、ここで安定に保持されるとは、それぞれの微小カプセルの壁膜内に水及び/又は親水性物質が含有される場合のみを意味しない。例えば、図1に示されるように、微小カプセルが集合体を形成し、この集合体内で、微小カプセル間に水及び/又は親水性物質が安定に保持される場合も含まれる。又、ここで「内包」とは、微小カプセルの壁膜内に水及び/又は親水性物質が取り込まれる場合のみを意味しない。例えば、図1に示されるように、微小カプセルが集合体を形成し、この集合体内の微小カプセル間に水及び/又は親水性物質が安定に保持されることも、ここで言う「内包」に該当する。
【0025】
本発明の微小カプセルの油性物質分散液に再内包される、水及び/又は親水性物質とは、水や水溶性の物質の水溶液を含む意味であり、特に限定されない。水溶性の物質としては、アルコール類、不揮発性のグリセリン類、塩類、糖類、ヒアルロン酸ナトリウム等が例示される。しかし、熱に不安定な物質の水溶液や高塩濃度の水溶液の場合に、本発明の特徴が特に発揮される。
【0026】
すなわち、微小カプセルの製造は、加熱や撹拌を伴い乳化系で行われるので、熱に不安定な親水性物質を微小カプセルの製造段階で添加すると、熱により該親水性物質が分解する可能性があり、又、高塩濃度の水溶液等は乳化系を破壊するので、従来の方法では、これらを添加することは困難であった。しかし、本発明の微小カプセルの油性物質分散液を用いる場合、これらは、微小カプセルの製造後に油性物質に添加され、その後再内包されるので、熱による分解や乳化系の破壊の問題もなく添加することが可能となった。その結果、熱に不安定な親水性の機能性成分や高塩濃度の水溶液等、従来は配合が困難であった親水性物質を内包することができる。従って、熱に不安定な親水性の機能性成分の水溶液や高塩濃度の水溶液等を、油性成分中、特にW/O型組成物中へ安定に配合し保持することが本発明により可能になった。
【0027】
本発明は、その第二の態様として、前記の水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液(第一の態様)中に分散されている微小カプセルに、前記の水及び/又は親水性物質を内包させたことを特徴とする内包済微小カプセルの油性物質分散液を提供する(請求項6)。水及び/又は親水性物質の再内包は、内包される親水性物質内、又は該親水性物質を含有する液に、前記の水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液を添加し、撹拌することにより行うことができる。又は該微小カプセルの油性物質分散液に、内包させる親水性物質を添加し撹拌する方法でも行うことができる。
【0028】
親水性物質の添加は、加熱や撹拌を伴い乳化系で行われる微小カプセルの油性物質分散液の製造工程後(すなわち、分散液を製造し内包水等を除去した後)に行われ、添加の際や添加後に、長時間の高温での加熱や強い撹拌を伴うことは通常ない。その結果、熱に不安定な親水性の機能性成分の水溶液や高塩濃度の水溶液等、従来の微小カプセルでは内包が困難な親水性物質についても内包することができる。請求項7は、この態様に該当するものである。ここで、熱に不安定な物質とは、微小カプセルの製造工程での加熱条件、例えば50℃以上、48時間程度で分解や劣化の生じる物質を意味し、例えば、アスコルビン酸等のビタミン類及びその誘導体、過酸化水素水、臭素酸ナトリウム等の酸化剤、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤、還元糖類等が挙げられる。
【0029】
より具体的には、本発明の油性物質分散液中の微小カプセルに再内包させる親水性物質としては、保湿成分、薬理活性成分、染料、水溶性ビタミン類及びその誘導体、植物抽出物、糖類及びその誘導体、アミノ酸類、タンパク質、タンパク質加水分解物及びその誘導体類、並びに有機塩類の水溶液から選ばれる一種又は二種以上が好ましく例示される(請求項8)。
【0030】
なお、前記の水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液、及び内包済微小カプセルの油性物質分散液において、微小カプセルの分散媒として用いる油性物質としては、炭化水素類、エステル類、油脂類、ロウ類、シリコーン油類、高級アルコール類、高級脂肪酸類(請求項9、請求項10)等が挙げられる。
【0031】
本発明は、その第三の態様として、前記の水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液、及び/又は、内包済微小カプセルの油性物質分散液を含有することを特徴とする化粧料、すなわちこれらの分散液と水相成分と油相成分を含有することを特徴とする化粧料(請求項11、請求項12)を提供する。この化粧料としては、O/W型化粧料、W/O型化粧料、又後述するO/W/O型化粧料やW/O/W型化粧料を例示することができるが、中でも、W/O型化粧料や、油性成分を主構成成分とする化粧料に、前記の微小カプセルの油性物質分散液、及び/又は、内包済微小カプセルの油性物質分散液を含有させることにより、以下に示すような優れた効果が得られる。
【0032】
すなわち、従来は、界面活性剤を用いることなしでは、W/O型化粧料に親水性物質を安定に配合かつ保持しにくかったが、本発明により、安定なW/O型化粧料が得られる。ここで、油相成分としては、使用感触の観点から、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性シリコーンが好ましい(請求項13)。油相成分が揮発性シリコーンの場合、安定なW/O型化粧料を得ることが難しかったが、本発明により、揮発性シリコーンを油相成分として用い、安定なW/O型化粧料を得ることができる。
【0033】
さらに、前記の水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液、及び/又は、内包済微小カプセルの油性物質分散液を含有することを特徴とするO/W/O型化粧料やW/O/W型化粧料も得ることができる。なお、このW/O型化粧料、O/W/O型化粧料は経時的に分離等を起こさず安定であるが、皮膚に塗布した場合、塗布中に微小な水滴を生じみずみずしさを感じさせる性質を有することがある。
【発明の効果】
【0034】
本発明の微小カプセルの油性物質分散液や内包済微小カプセルの油性物質分散液を用いることにより、界面活性剤を用いることなく、油性成分中に、水及び/又は親水性物質を、安定に配合し保持することができる。この微小カプセルの油性物質分散液や内包済微小カプセルの油性物質分散液は、水相成分及び油相成分とともに、化粧料特にW/O型化粧料を構成し、その中に、水及び/又は親水性物質を安定に保持することができる
【0035】
しかも、該親水性物質の再内包や化粧料への配合は、微小カプセルの壁膜の形成後に行われ、再内包や配合以後に、長時間、高温での加熱や強い攪拌を伴うことはないので、熱等に不安定な物質の水溶液であっても、該化粧料に配合することができ、加熱等により有効成分の失活や、着色や着臭等の問題も発生しない。又、乳化系を破壊するような高塩濃度の水溶液も内包や配合することができる。
【0036】
又、本発明の水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液や内包済微小カプセルの油性物質分散液は、皮膚に対して優れた親和性、伸展性を有し、化粧料に配合されても異物感を与えることがない。従って、本発明の化粧料は、熱等に不安定な物質の水溶液や高塩濃度の水溶液であっても、安定に配合でき、又皮膚に対する異物感を与えることもないので、種々の化粧料として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、本発明を実施するための形態をより具体的に説明する。
【0038】
前記一般式(I)におけるRを含む塩基性アミノ酸、すなわち側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸としては、例えば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシン等が挙げられる。又、Rを含むアミノ酸、すなわち前記の塩基性アミノ酸以外のアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリン等が挙げられる。
【0039】
前記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、mは0〜50、好ましくは0より大きく10以下であり、nは0〜50、好ましくは0〜10、m+nは1〜50、好ましくは1〜10である。mが前記範囲より大きくなると、微小カプセルに内包できる親水性物質の量が減少したり、壁膜の網目構造が緻密になりすぎて、親水性物質の壁膜の透過が困難になり、その結果親水性物質の再内包が不可能となる可能性がある。nが前記範囲より大きくなると、シリコーン部位よりペプチド部位が大きくなり、化粧料の調製が困難となる。m+nが前記範囲より大きくなると壁膜の網目構造が粗くなりカプセル化が困難になる。なお、前記のm、nやm+nは、理論的には整数であるが、ペプチド部分が加水分解ペプチドである場合は、該加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。
【0040】
前記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドのペプチド部分としては、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質(蛋白質)を酸、アルカリ、酵素又はそれらの併用で部分加水分解して得られる加水分解ペプチド等が挙げられるが、タンパクの入手の容易さやペプチド部分の分子量のコントロールしやすさから、加水分解ペプチドが好ましい。
【0041】
加水分解ペプチドとしては、例えば、コラーゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、絹フィブロイン(シルク)、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏、あひる等の卵の卵黄タンパク、卵白タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、トウモロコシタンパク、米(米糠)タンパク、ジャガイモタンパク等の動植物由来のタンパク、あるいは、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子菌)より抽出したタンパク、クロレラより分離したタンパク等の微生物由来のタンパクを酸、アルカリ、酵素又はそれらの併用で部分的に加水分解して得られるペプチドが挙げられる。中でも、W/O型化粧料が得やすいことから、タンパク源としては絹フィブロインを使用するのが好ましい。
【0042】
合成ペプチドとしては、例えば、ポリグルタミン酸及びその塩、ポリアスパラギン酸及びその塩、ポリグリシン、ポリリシン等が挙げられる。
【0043】
微小カプセルの壁膜を構成するもう一方の成分である、加水分解によって水酸基が2個以上生じる一般式(II)で表されるシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルオクタデシル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、3−(トリメトキシシリル)プロピルポリオキシエチレン(10)エーテル、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン等が挙げられる。
【0044】
本発明の水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液は、例えば、特開平11−221459号公報や特開2001−106612号公報記載の方法に従って、前記のシリル化ペプチドの一種以上と前記のシラン化合物の一種以上を、反応比1:20〜1:80(モル比)で反応し、内包させる水及び/又は親水性物質のある系で、連続相に油性物質を用いて反転乳化させ、水及び/又は親水性物質を内包する微小カプセルの油性物質分散液を得た後、内包されている水及び/又は親水性物質を除去することにより製造することができる。
【0045】
連続相として用いる油性成分としては、水に溶解しないものなら特に制限はなく、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素類、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸−2−エチルヘキシル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸グリセリル等のエステル類、オリーブ油、マカデミアナッツ油等の油脂類、ホホバ油、オレイン酸オレイル等のロウ類、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン油類、セタノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸等が挙げられる。これらの中でも、50〜95℃での乳化を行う必要から、炭化水素類やエステル類、シリコーン油類、油脂類の使用が好ましい。
【0046】
なお、前記のシリル化ペプチドと前記のシラン化合物を用いる反応において、シリル化ペプチド:シラン化合物(反応比、モル比)が1:20よりシラン化合物が少ない場合は、得られる微小カプセルが疎水性物質を内包する水中油型(O/W型)となり、1:80よりもシラン化合物が多い場合も、得られる微小カプセルがO/W型になるので、前記の範囲内の反応比が採用される。
【0047】
本発明の(水及び/又は親水性物質の内包が可能な)微小カプセルの油性物質分散液の製造に用いられる水及び/又は親水性物質を内包する微小カプセルの分散液において、該微小カプセル中の水及び/又は親水性物質の内包率(水溶液を内包する場合は、水溶液の内包率)は特に限定されない。
【0048】
又、水及び/又は親水性物質を内包する微小カプセルにおいて内包されたものが、不揮発性の親水性物質の水溶液であれば、水等の揮発成分のみを除去し、不揮発性の親水性物質を内包した微小カプセルの油性物質分散液として得ることができる。
【0049】
内包されている水及び/又は親水性物質の中の揮発成分の除去は、該微小カプセルの油性物質分散液を直接エバポレータ等で減圧することにより行うことができる。又、前記の反応により得られた微小カプセルの分散体から、遠心分離や濾過により微小カプセルを分離、捕集した後、減圧下で水及び/又は親水性物質の中の揮発成分を留去してもよい。
【0050】
水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液に再内包させる親水性物質は、水や水溶性の物質の水溶液なら特に制限はなく、例えば、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール等の多価アルコール、グリシン、アラニン、アルギニン、リシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、オルニチン等のアミノ酸、タンパク質、加水分解タンパク質及びその誘導体、ヒアルロン酸、キチン、キトサン等の糖類及びその誘導体、水溶性高分子等の保湿成分、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレン、ペニシリン等の薬理活性成分、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、L−アスコルビン酸2−グルコシド、ビタミンB類、ビタミンP、グルコシルヘスペリジン等の水溶性ビタミン類、甘草抽出物、ソウハクヒ抽出物、桃の葉抽出物等の植物抽出物、水溶性の合成染料や天然染料、酸化剤、還元剤、殺菌剤、酵素類、各種塩類等、並びにこれらの水溶液が例示される。又、ここで例示されたもの以外の、美白剤、抗炎症剤、血行促進剤等の薬効成分、及びこれらの水溶液を再内包させることもできる。
【0051】
これらの中でも、本発明の効果が特に発揮されるものとして、グリシン、アラニン、アルギニン、リシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、オルニチン等のアミノ酸類、タンパク質、加水分解タンパク質及びその誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、L−アスコルビン酸2−グルコシド等のアスコルビン酸及びその誘導体、アルブチン、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、グリチルリチン酸及び/又はその塩、グリチルレチン酸及び/又はその塩、N−グリセリルアミノ酸及び/又はその塩等を挙げることができる。再内包される親水性物質は、これらの例示されたものの2種以上の混合物であってもよい。
【0052】
又、再内包される水及び/又は親水性物質には、親水性を有しない化合物、例えばパーフルオロポリエーテル等のフッ素化合物が、本発明の趣旨を損なわない範囲で含まれていてもよい。
【0053】
前記のようにして得られた水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液、及び内包済微小カプセルの油性物質分散液には、末端のシリル基に水酸基が残っているため、カプセル同士が凝集する恐れがある。そこで、凝集防止のため、さらに、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン等、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じるシラン化合物を反応させるのが好ましい。又、前記以外にも、ヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサンのようなケイ素原子を2個有する化合物も、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じるので、使用することができる。
【0054】
前記のようにして調製された水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液、及び/又は親水性物質を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液を、化粧料製剤に含有させることによって、前記のような優れた特性を有する化粧料を得ることができる。ここで化粧料とは、化粧品、医薬部外品、医薬品等皮膚や毛髪の外用剤と用いられるもの全てを含む意味である。
【0055】
本発明の水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液中の微小カプセルの含有量は、10〜80質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。又、水及び/又は親水性物質を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液中の含有量は、20〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましい。なおここで、内包済微小カプセルの含有量には、微小カプセル間に内包されている水及び/又は親水性物質の質量が含まれる。
【0056】
すなわち、油性物質分散液中の微小カプセルの含有量が前記範囲以下では、配合される親水性物質の量が少なくなり、実用的価値が低くなる。逆に、前記範囲を超えると、油性物質分散液の粘度が高くなり調製が困難になる。
【0057】
本発明の水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセル油性物質分散液、及び内包済微小カプセル油性物質分散液の化粧料への配合量は、親水性物質の種類やその活性力、微小カプセルの油性物質分散液の内包率及び化粧料の種類によって異なるが、概ね化粧料中0.05〜90質量%が好ましく、0.1〜70質量%がより好ましい。すなわち、微小カプセルの油性物質分散液の化粧料中での含有量が前記範囲以下では、親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液については、内包される親水性物質の量が少なく、効果が発揮できない恐れがある。又内包済微小カプセルの油性物質分散液の場合は、内包する親水性物質の効果が充分に発揮されない恐れがある。逆に微小カプセルの油性物質分散液の化粧料中での含有量が前記範囲を超えると、乳化化粧料によっては微小カプセルを均一に分散させることができなくなる恐れがある上に、皮膚に適用した際に微小カプセルによるべたつきを感じるようになる恐れがある。
【0058】
本発明の化粧料に含有させる水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液、及び内包済微小カプセルの油性物質分散液中の微小カプセルの粒子径は、0.01〜10μmが好適である。すなわち、微小カプセルの粒子径が0.01μm未満では、皮膚上でのすべり感、広がり易さといった感触効果がなく、微小カプセルの粒子径が10μmを越えるとざらざらとした違和感を生じる恐れがある。
【0059】
本発明の微小カプセルの油性物質分散液の化粧料への配合は、化粧料製剤を調製する際に他の配合成分と同時に投入して混合攪拌してもよく、又、微小カプセルの油性物質分散液以外の他の成分をすべて配合した化粧料に、後から配合して充分に攪拌し分散させてもよい。例えば、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液の場合は、再内包させる親水性物質及び他の配合成分を添加した油性成分中に、本発明の微小カプセルの油性物質分散液を添加し、充分に攪拌して分散させてもよい。化粧料には、本発明の微小カプセルの油性物質分散液の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
本発明の水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液、及び/又は、内包済微小カプセルの油性物質分散液を含有する化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。そのような成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマー、増粘剤、動植物抽出物、ポリサッカライド又はその誘導体、動植物及び微生物由来のタンパク質の加水分解ペプチドやその誘導体、ポリグルタミン酸及びその塩、ポリアスパラギン酸及びその塩などの合成ペプチド及びその塩、湿潤剤、低級アルコール類、多価アルコール類、高級アルコール類、アミノ酸、油脂類、シリコーン類、防腐剤、香料、顔料、色素、紫外線吸収剤、無機粉体等を挙げることができる。
【0061】
本発明の効果が発現しやすい化粧料としては、リキッドファンデーション、パウダーファンデーション、口紅、リップクリーム、コンシーラー、頬紅、フェイスカラー、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウ、マスカラ、リップグロス、日焼け止めクリーム、クレンジングオイル、クレンジングミルク、美白スティック、美容液、鼻パック、制汗剤等が挙げられる。
【実施例】
【0062】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例、比較例中における各成分の配合量等はいずれも質量部によるものであり、%は質量%を表わす。又、配合量が固形分量でないものについては、成分名のあとに括弧書きで固形分濃度を示す。
【0063】
実施例1 水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液(I)
[水を内包する微小カプセルの油性物質分散液の製造]
上蓋に滴下ロートと還流冷却器を備え、メカニカルスターラーを備えた内径12cmで容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水125.8gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク(加水分解シルクの分子量は数平均分子量で約600)14.7g及び18%塩酸4.4gを入れておき、50℃、250rpmで攪拌しながらメチルトリエトキシシラン27.3g、及びオクチルトリエトキシシラン84.7gの混合物を滴下ロートから30分間かけて滴下し、さらに、50℃、250rpmで16時間攪拌を続けた。攪拌速度を600rpmに上げ、攪拌しながらカプセルの外相となるトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを180.0g加え、20%水酸化ナトリウム水溶液4.6gを滴下してpHを6に調整した後、内相となる水205.8gを加え、さらに50℃、600rpmで1.5時間攪拌を続けた。
【0064】
引き続き、50℃、600rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン5.0gを加え、さらに50℃、600rpmで1時間攪拌を続けた。この反応液に5%水酸化ナトリウム水溶液36.4gを滴下してpH6に調整した後、50℃、600rpmで30分間攪拌を続けた後、攪拌速度を400rpmに下げ、攪拌しながら徐々に反応液の温度を上げて還流させながら92℃で2時間加熱還流させた。この反応液を室温、400rpmで攪拌しながら冷却して、水を内包する微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液633.6gを得た。
【0065】
[水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液の製造]
次に、この水を内包する微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液から、50℃で、減圧下ロータリーエバポレータにより水370.5gを留去し、微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液263.1gを得た。
【0066】
再度、50℃、300rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン5.0gを加え、さらに50℃、300rpmで1時間攪拌を続けた。この反応液に5%水酸化ナトリウム水溶液36.0gを滴下してpH6に調整した後、50℃、400rpmで30分間攪拌を続けた後、攪拌しながら徐々に反応液の温度を上げて、還流させながら80℃で1時間加熱還流させた。この水内包微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液から50℃で、減圧下ロータリーエバポレータにより水を34.2g留去し、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液として269.1gを得た。
【0067】
実施例2 水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液(II)
[水を内包する微小カプセルの油性物質分散液の製造]
上蓋に滴下ロートと還流冷却器を備え、メカニカルスターラーを備えた内径12cmで容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水102.9gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(トリヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク(加水分解シルクの分子量は数平均分子量で約600)11.4g及び18%塩酸3.8gを入れておき、50℃、250rpmで攪拌しながら、テトラエトキシシラン2.5g、メチルトリエトキシシラン21.5g、及びオクチルトリエトキシシラン66.6gの混合物を滴下ロートから30分間かけて滴下し、さらに、50℃、250rpmで16時間攪拌を続けた。攪拌速度を600rpmに上げ、攪拌しながらカプセルの外相となるトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル155.2gを加え、20%水酸化ナトリウム水溶液3.9gを滴下してpHを6に調整した後、内相となる水182.8gを加え、さらに50℃、600rpmで1.5時間攪拌を続けた。
【0068】
次に、前記のように調製した反応液をホモミキサーの容器に移して、50℃、10000rpmで30分間ホモミキサーにかけて微粒子化した。この反応液を元の反応容器に移し、50℃、600rpmで攪拌しながらメチルトリエトキシシラン12.9g及びメチルトリクロロシラン1.8gを加え、さらに50℃、600rpmで1時間攪拌を続けた。この反応液に5%水酸化ナトリウム水溶液35.8gを滴下してpH6に調整した後、50℃、600rpmで30分間攪拌を続けた。
【0069】
引き続き、50℃、600rpmで攪拌しながらトリメチルエトキシシラン5.7g及びトリメチルクロロシラン5.2gを加え、さらに50℃、600rpmで1時間攪拌を続けた。この反応液に5%水酸化ナトリウム水溶液40.2gを滴下してpH6に調整した後、50℃、600rpmで30分間攪拌を続けた後、攪拌速度を400rpmに下げ、攪拌しながら徐々に反応液の温度を上げて還流させながら92℃で2時間加熱還流させた。この反応液を室温で、400rpmで攪拌しながら冷却して、水を内包する微小カプセルをトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液として594.8g得た。
【0070】
[水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液の製造]
次に、この水を内包する微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液から、50℃で、減圧下ロータリーエバポレータにより水361.1gを留去し、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液233.7gを得た。
【0071】
[水を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液の製造]
得られた微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液から容量200ミリリットルのビーカーに48.8gとり、これに精製水51.2gを加えて、ホモディスパーで3000rpmにて30分間攪拌して粘稠な分散液を得た。
【0072】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、この粒子に圧力を加えたとき壁膜が破壊されて保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を、20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、精製水の分離がなく均一であった。従って、水が安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液は水には分散せず、連続相が油性物質であることが確認された。従って、この粘稠な分散液は水を内包(安定に保持)する微小カプセルがトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。(以下、この分散液のように、水(又は親水性物質)を内包(安定に保持)する微小カプセルの分散液を、水(又は親水性物質)内包済微小カプセルの分散液と言う。)
【0073】
実施例3 水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液(III)
[水を内包する微小カプセルの油性物質分散液の製造]
上蓋に滴下ロートと還流冷却器を備え、メカニカルスターラーを備えた内径12cmで容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水112.5gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク12.5g及び18%塩酸5.3gを入れておき、50℃、250rpmで攪拌しながらメチルトリエトキシシラン26.0g、及びオクチルトリエトキシシラン80.5gの混合物を滴下ロートから30分間かけて滴下し、さらに、50℃、250rpmで16時間攪拌を続けた。攪拌速度を600rpmに上げ、攪拌しながらカプセルの外相となるトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを194.5g加え、20%水酸化ナトリウム水溶液4.7gを滴下してpHを6に調整した後、内相となる水201.7gを加え、さらに50℃、600rpmで1.5時間攪拌を続けた。
【0074】
引き続き、50℃、600rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン6.3gを加えた後、50℃、600rpmで1時間攪拌を続けた。さらに、18%塩酸6.1gを入れpHを2に調整し、再度N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク(25%水溶液)水分散液62.5gを添加し、50℃、600rpmで16時間攪拌を続けた。この反応液に5%水酸化ナトリウム水溶液58.1gを滴下してpH6に調整し、50℃、600rpmで30分間攪拌を続けた後、攪拌速度を400rpmに下げ、攪拌しながら徐々に反応液の温度を上げて還流させながら92℃で2時間加熱還流させた。この反応液を室温、400rpmで攪拌しながら冷却して、水を内包する微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液718.5gを得た。
【0075】
[水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液の製造]
次に、この水を内包する微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液から、50℃で、減圧下ロータリーエバポレータにより水428.4gを留去し、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液290.1gを得た。
【0076】
実施例4 水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液(IV)
[水を内包する微小カプセルの油性物質分散液の製造]
上蓋に滴下ロートと還流冷却器を備え、メカニカルスターラーを備えた内径12cmで容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水126.0gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク14.0g及び18%塩酸5.5gを入れておき、50℃、250rpmで攪拌しながらメチルトリエトキシシラン29.1g、及びオクチルトリエトキシシラン90.2gの混合物を滴下ロートから30分間かけて滴下し、さらに、50℃、250rpmで16時間攪拌を続けた。攪拌速度を600rpmに上げ、攪拌しながらカプセルの外相となるトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを190.0g加え、20%水酸化ナトリウム水溶液4.8gを滴下してpHを6に調整した後、内相となる水212.9gを加え、さらに50℃、600rpmで1.5時間攪拌を続けた。
【0077】
この反応液とは別に、容量100ミリリットルのビーカーに、あらかじめ水62.0gと20%水酸化ナトリウム水溶液13.0gを入れておき、50℃、300rpmで攪拌しながら3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン28.2gを1時間かけて滴下し、さらに、50℃、300rpmで6時間攪拌を続けた。この反応液に18%塩酸7.0gを滴下してpH6に調整し、シラン反応液(25%水溶液)110.0gを得た。
【0078】
50℃、600rpmで攪拌しながら、反応液にトリメチルクロロシラン7.1gを加え、50℃、600rpmで1時間攪拌を続けた。さらに、この反応液に18%塩酸5.8gを入れ、あらかじめ反応させておいたシラン反応液18.0gを添加し、50℃、600rpmで16時間攪拌を続けた。この反応液に5%水酸化ナトリウム水溶液58.5gを滴下してpH6に調整し、50℃、600rpmで30分間攪拌を続けた後、あらかじめ攪拌速度を400rpmに下げ、攪拌しながら徐々に反応液の温度を上げて還流させながら92℃で2時間加熱還流させた。この反応液を室温、400rpmで攪拌しながら冷却して、水を内包する微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液703.7gを得た。
【0079】
[水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液の製造]
次に、この水を内包する微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液から、50℃で、減圧下ロータリーエバポレータにより水420.1gを留去し、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液283.6gを得た。
【0080】
実施例5 グリセリンを内包した微小カプセルの油性物質分散液(V)
[水及びグリセリンを内包する微小カプセルの油性物質分散液の製造]
上蓋に滴下ロートと還流冷却器を備え、メカニカルスターラーを備えた内径12cmで容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水126.1gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク(加水分解シルクの分子量は数平均分子量で約600)12.8g及び18%塩酸5.5gを入れておき、50℃、250rpmで攪拌しながらメチルトリエトキシシラン26.6g、及びオクチルトリエトキシシラン82.4gの混合物を滴下ロートから30分間かけて滴下し、さらに、50℃、250rpmで16時間攪拌を続けた。攪拌速度を600rpmに上げ、攪拌しながらカプセルの外相となるトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを164.8g加え、20%水酸化ナトリウム水溶液5.1gを滴下してpHを6に調整した後、内相となるグリセリン178.2gを加え、さらに50℃、600rpmで1.5時間攪拌を続けた。
【0081】
引き続き、50℃、600rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン6.5gを加え、さらに50℃、600rpmで1時間攪拌を続けた。この反応液に5%水酸化ナトリウム水溶液48.0gを滴下してpH6に調整した後、50℃、600rpmで30分間攪拌を続けた後、攪拌速度を400rpmに下げ、攪拌しながら徐々に反応液の温度を上げて還流させながら92℃で2時間加熱還流させた。この反応液を室温、400rpmで攪拌しながら冷却して、水及びグリセリンを内包する微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液603.6gを得た。
【0082】
[グリセリン内包済微小カプセルの油性物質分散液の製造]
次に、この水及びグリセリンを内包する微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液から、50℃で、減圧下ロータリーエバポレータにより水180.3gを留去し、グリセリンを内包し、さらに水の内包が可能な微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液426.6gを得た。
【0083】
実施例6 水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液(VI)
実施例1で得られた内包水を除去した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液50.0gを、遠心分離器で、10000rpmで30分間遠心分離し、上層の油性成分を除去した後、デカメチルシクロペンタシロキサンを添加し攪拌分散させ、再度この分散液を遠心分離機にかける。この操作を数回行い、全量が50.0gとなるようにデカメチルシクロペンタシロキサンを添加し、内包水を除去した微小カプセルのデカメチルシクロペンタシロキサン分散液を得た。
【0084】
実施例7 グリセリン水溶液を内包した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液の製造
実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液15.0gに、油性成分であるデカメチルシクロペンタシロキサンを20.0g添加して分散させ、さらに精製水63.0gとグリセリン2.0gを加えて、ホモディスパーで3000rpmにて30分間攪拌して粘稠な分散液を得た。
【0085】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍の倍率で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、この粒子に圧力を加えたとき壁膜が破壊されて保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液は水には分散せず、連続相が油性物質であることが確認された。従って、この粘稠な分散液はグリセリン水溶液を内包(安定に保持)する微小カプセルがトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルとデカメチルシクロペンタシロキサンの混合油に分散したものであることが明らかであった。
【0086】
この粘稠な分散液を皮膚上に塗布し、指先で塗り広げると肉眼で水滴の放出が確認された。
【0087】
この粘稠な分散液を、20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、上層に油層のみ分離した。下層の微小カプセル、グリセリン、精製水は分離がなく均一であった。従って、親水性物質が安定に配合されていることが明らかであった。
【0088】
実施例8 加水分解ケラチン液を内包した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルとデカメチルシクロペンタシロキサン混合物の分散液の製造
実施例3で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液15.0gに油性成分であるデカメチルシクロペンタシロキサンを20.0g添加して分散させ、さらに加水分解ケラチン液(25%水溶液)〔(株)成和化成製のプロモイスWK(商品名)〕65.0g加えてホモディスパーで3000rpmにて30分間攪拌して粘稠な分散液を得た。
【0089】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍の倍率で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、さらに、この粒子に圧力を加えたとき壁膜が破壊されて保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液は水には分散せず、連続相が油性成分であることが確認された。従ってこの粘稠な分散液は、加水分解ケラチン液を内包(安定に保持)する微小カプセルが、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルとデカメチルシクロペンタシロキサンの混合油に分散したものであることが明らかであった。
【0090】
この粘稠な分散液を、20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、上層に油相(層)のみ分離した。下層の微小カプセル、グリセリン、精製水は分離がなく均一であった。従って、親水性物質が安定に保持されたことが明らかであった。
【0091】
実施例9 L−アスコルビン酸ナトリウム水溶液を内包した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液の製造
実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液15.0gに油性成分であるトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを20.0g添加して分散させ、さらに16.7%のL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液65.0gを添加して、ホモディスパーで3000rpmにて30分間攪拌し、粘稠な分散液を得た。
【0092】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、さらに、この粒子に圧力を加えたとき壁膜が破壊されて保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液は水には分散せず、連続相が油性物質であることが確認された。従って、この粘稠な分散液は、L−アスコルビン酸ナトリウム水溶液を内包(安定に保持)する微小カプセルが油性成分であるトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0093】
実施例10 アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム水溶液を内包した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液の製造
実施例4で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液15.0gに、油性成分であるトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを20.0g添加して分散させ、さらに16.7%のアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム水溶液65.0gを添加して、ホモディスパーで3000rpmにて30分間攪拌し、粘稠な分散液を得た。
【0094】
この粘性液体を光学顕微鏡1000倍の倍率で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、さらに、圧力をかけたとき壁膜が破壊されて保持物が出ることが確認された。又、この粘稠な分散液は水に分散せず、連続相が油性物質であることが確認された。従って、この粘稠な分散液はアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム水溶液を内包(安定に保持)する微小カプセルが、油性成分であるトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0095】
実施例11 サンスクリーンローションの調製
実施例6で製造した微小カプセルのデカメチルシクロペンタシロキサン分散液15.0gに、更にデカメチルシクロペンタシロキサン20.0g、SEPINOV EMT10(商品名、SEPPIC社製、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNaコポリマー、イソステアリン酸ソルビタン及びソルベート60の混合物)1.0gを分散させ、さらに、あらかじめ混合しておいたメトキシケイヒ酸オクチル、水、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン及びポリシリコーン−14の混合物((株)成和化成製のSILASOMA MEA(商品名))20.0g及び精製水44.0gからなる水溶性成分を添加し、ホモディスパーを用いて3000rpmで30分間撹拌を行い、サンスクリーンローションを得た。
【0096】
前記のサンスクリーンローションは水には分散せず、連続相が油相成分であることが確認された。又、この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍の倍率で観察したところ、複層構造をとっており、O/W/O型乳化物であることが確認された。従って、このサンスクリーンローションは主として水を内包(安定に保持)する微小カプセルが、デカメチルシクロペンタシロキサンの混合油に分散したものであることが明らかであった。
【0097】
実施例12及び比較例1
表1に示す組成の2種類の口紅を調製し、外観、水分量及び塗布後の潤い感について評価した。実施例12では実施例2で製造した内包済微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例1では、実施例12と同量の精製水が含まれるように精製水、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを配合した。なお、スティック状の口紅の場合、成形中に気泡が混入すると商品価値が損なわれるので、気泡を少なくする工夫が好ましく採用される。この工夫としては、例えば、加温した口紅組成物の容器中の下部にある気泡を含まない部分又は気泡が少ない部分を使用する、本発明のような水を含む口紅の場合には、加圧できる口紅容器を用い、少し加圧した状態で容器に流し込む等の方法を挙げることができる。
【0098】
【表1】

【0099】
前記実施例12及び比較例1においては、前記の成分を80℃で加熱混合して調製したが、静置すると比較例1では底部に水が沈降した。実施例12ではこのような現象は観察されなかった。比較例1は水を除いた上部のものと実施例12は混合物をそのまま、それぞれ口紅容器に流し込み口紅を得た。この口紅の状態を光学顕微鏡観察での確認を行ったところ、光学顕微鏡400倍の倍率での観察では実施例12の口紅では水を内包した微細な液滴が観察されたが、比較例1の口紅では水滴は観察されなかった。
【0100】
次に、前記実施例12及び比較例1の口紅をカールフィッシャー水分計にて水分量の測定を実施したところ、実施例12の口紅は水分量4.93%、比較例1の口紅は水分量0.05%で、実施例12の口紅が比較例1の口紅と比較して水分を多く含有することが分かった。
【0101】
さらに、前記実施例12及び比較例1の口紅を10人のパネラーに、左右の手の甲に適量塗布させて、潤い感について下記の評価基準で評価させた。その結果を表2に10人のパネラーの合計点数で示す。
【0102】
評価基準
3:非常によく潤う
2:潤う
1:潤わない
【0103】
【表2】

【0104】
表2に示す結果から、水を内包した微小カプセルの分散液を配合した実施例12の口紅は、比較例1の口紅と比較して水分を多く含み、皮膚に潤い感を付与することが明らかであった。
【0105】
実施例13及び比較例2
表3に示す組成の2種類の口紅を調製し、外観について評価した。実施例13では実施例5で製造したグリセリン内包済微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例2では、実施例13と同量のグリセリンが含まれるようにグリセリン、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを配合した。
【0106】
【表3】

【0107】
前記実施例13及び比較例2においては、前記の成分を80℃で加熱混合して調製したが、静置すると比較例2では底部にグリセリンが沈降した。実施例13ではこのような現象は観察されなかった。実施例13は混合物をそのまま、口紅容器に流し込み口紅を得た。
【0108】
口紅調製の結果から、従来グリセリンを配合するのに困難であった口紅処方に対して、容易にグリセリンを配合できることが明らかであった。
【0109】
実施例14及び比較例3
表4に示す組成の2種類のW/O型乳液を調製し、皮膚塗布後のべたつきの有無について評価した。実施例14では実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例3では微小カプセルを用いず、ポリエーテル変性シリコーンを用いた。
【0110】
【表4】

【0111】
実施例14及び比較例3のW/O型乳液は、実施例1の微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液又はポリエーテル変性シリコーンを油相成分に分散させ、別に水相成分を水に溶解しておき、ホモミキサー3000rpmの撹拌下で油相に水性成分を添加し、30分間撹拌を行うことで調製した。
【0112】
前記実施例14及び比較例3のW/O型乳液を10人のパネラーに、左右の手の甲に適量塗布させて、べたつきについて下記の評価基準で評価させた。その結果を表5に10人のパネラーの合計点数で示す。
【0113】
評価基準
3:べたつかない
2:ややべたつく
1:べたつく
0:非常にべたつく
【0114】
【表5】

【0115】
表5に示す結果から明らかなように、微小カプセルを配合した実施例14のW/O型乳液は、比較例3のW/O型乳液と比較してべたつきが少なく、使用感が優れていた。
【0116】
実施例15及び比較例4
表6に示す組成の2種類のW/O型クリームを調製し、乳化物の様子を目視で確認し、さらにしっとり感について評価した。実施例15では実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例4では微小カプセルに替えてW/O型乳化剤であるポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油を用いた。
【0117】
【表6】

【0118】
実施例15及び比較例4のW/O型クリームは、油相成分と水相成分をあらかじめ容器に秤量し、軽く攪拌しておき、実施例1の微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液又はポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油を添加してからアンカーミキサーを用いて300rpmで30分攪拌することで調製した。
【0119】
調製後の実施例15及び比較例4のW/O型クリームを、それぞれ1滴をスライドガラスに取り、カバーガラスをかけて目視による観察を行ったところ、実施例15のW/Oクリームは分離がなく安定であったが、比較例4のW/Oクリームは凝集を生じており、分離していた。この結果より、微小カプセルを用いると簡便に均一なW/O型クリームを調製できることが明らかになった。
【0120】
さらに、前記実施例15及び比較例4のW/O型クリームについて10人のパネラーに、手の甲に適量塗布して、しっとり感について下記の評価基準で評価させた。その結果を表7に10人のパネラーの合計点数で示す。
【0121】
評価基準
3:非常にしっとりする
2:しっとりする
1:ややしっとりする
0:しっとりしない
【0122】
【表7】

【0123】
表7に示す結果から明らかなように、微小カプセルを配合した実施例15のW/O型クリームは、比較例4のW/O型クリームと比較してしっとり感が優れていた。
【0124】
実施例16及び比較例5
表8に示す組成の2種類のリキッドファンデーションを調製し、耐水性について評価した。実施例16では実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例5では微小カプセルを用いず、W/O型乳化剤として有機変性粘土鉱物、シクロメチコン、ポリエーテル変性シリコーンの混合物を用い、さらに、ジグリセリン、加水分解大豆タンパク、及びトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルが実施例16と同量になるように配合した。
【0125】
【表8】

【0126】
実施例16のリキッドファンデーションは、実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を油相成分に分散させ、精製水を加えてホモミキサーにて3000rpmで30分間撹拌を行ってW/O型乳化物を得、このW/O型乳化物に顔料成分を添加し、ホモミキサーにて6000rpmで30分間撹拌することにより調製した。又、比較例5のリキッドファンデーションは、有機変性粘土鉱物とシクロメチコンとポリエーテル変性シリコーンの混合物を油相成分に分散させ、あらかじめ混合しておいた水相成分を添加し、ホモミキサーにて3000rpmで30分間撹拌を行ってW/O型乳化物を得、このW/O型乳化物に顔料成分を添加し、ホモミキサーにて6000rpmで30分間撹拌することで調製した。
【0127】
前記実施例16及び比較例5のリキッドファンデーションの耐水性の評価は下記のように行った。すなわち、あらかじめ重量を測定した5cm×5cmの人工皮革(この重量をAとする)に、それぞれのリキッドファンデーションを50mg秤量し、シリコーンラバー製の指サックをはめた指で均一に塗り延ばし、温度25℃、湿度50%に設定した恒温槽中で24時間乾燥した(この重量をBとする)。それぞれのリキッドファンデーションを塗布した人工皮革の重量を測定し、35℃温水100mL中に10分間浸漬、振とうし、試料を取り出して、温度25℃、湿度50%に設定した恒温槽中で24時間乾燥させた後に重量を測定した(この重量をCとする)。下式から求められた値をリキッドファンデーションの残存率とし、残存率の値が大きいほど耐水性が高いと判断した。その結果を表9に示すが、値は3回の平均値である。
【0128】
【数1】

【0129】
【表9】

【0130】
表9に示す結果から明らかなように、実施例16のリキッドファンデーションは、比較例5のリキッドファンデーションと比較して残存率が高く、耐水性に優れていた。又、前記実施例16及び比較例5のリキッドファンデーションについて10人のパネラーに、手の甲に適量塗布して評価させたところ、大多数のパネラーが微小カプセルを配合した実施例16のリキッドファンデーションは比較例5のリキッドファンデーションより、べたつきが少なく、自然な仕上がりが得られると答えていた。
【0131】
実施例17及び比較例6
表10に示す組成のサンスクリーンローションを調製し、耐水性、製剤の安定性を評価した。実施例17では実施例1で製造した水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルを用い、比較例6では微小カプセルを用いず、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン混合物を用いた。
【0132】
【表10】

【0133】
実施例17及び比較例6のサンスクリーンローションの調製は、実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液、又はオクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン混合物をそれぞれ油相成分に分散させ、あらかじめ混合しておいた水相成分を添加し、ホモディスパーを用いて3000rpmで30分間撹拌を行い、W/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物に無機粉体を添加し、ホモディスパーで、3000rpmで30分間撹拌を行い、サンスクリーンローションを得た。
【0134】
前記実施例17及び比較例6のサンスクリーンローションについて、実施例16と同じ方法で残存率を評価した。その結果を表11に3回の平均値で示す。
【0135】
【表11】

【0136】
表11に示す結果から明らかなように、実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を配合した実施例17のサンスクリーンローションは、比較例6のサンスクリーンローションと比較して耐水性に優れていた。
【0137】
さらに、前記実施例17及び比較例6のサンスクリーンローションを50℃で1週間静置保存し、1週間後に外観を目視にて観察した。その結果を表12に示す。
【0138】
【表12】

【0139】
表12に示す結果から明らかなように、比較例6のサンスクリーンローションは1週間後には油性成分が分離し黄変したり、分離したりする等の異状が生じたが、微小カプセルを配合した実施例17のサンスクリーンローションは1週間保存後も外観に変化はなく、保存安定性に優れていた。
【0140】
前記のサンスクリーンローションを光学顕微鏡1000倍の倍率で観察したところ実施例17は分散した粒子の中にさらに小さな粒子が確認された。又、このサンスクリーンローションは水には分散せず、連続相が油性成分であることが確認された。従って、このサンスクリーンローションは水を内包する微小カプセルが油相成分に分散したものであることが明らかであった。
【0141】
実施例18及び比較例7
表13に示す組成の2種類の乳液を調製し、乳化粒子の状態を顕微鏡観察し、さらに、においについて評価した。実施例18では、実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例7では微小カプセルを用いず、乳化剤としてモノイソステアリン酸ソルビタンを用いた。
【0142】
【表13】

【0143】
実施例18及び比較例7の乳液は、実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液、又はモノイソステアリン酸ソルビタンをそれぞれ油相成分に添加し75℃で加熱し、その中にあらかじめ混合して75℃まで加温しておいた水相成分を添加し、ホモミキサーで、3000rpmで30分間攪拌を続け、室温まで冷却することによって調製した。
【0144】
実施例18及び比較例7の乳液の粒子の状態を光学顕微鏡400倍の倍率にて観察したところ、実施例18の乳液は複層構造をとっており、W/O/W型乳化物であることが確認できたが、比較例7の乳液では複層構造は認められず、O/W型乳化物であった。
【0145】
さらに、前記実施例18及び比較例7の乳液を50℃、1ヶ月放置させたものそれぞれ容量75mlのガラス瓶に10g入れた状態で、10人のパネラーに、においの強弱について下記の評価基準で評価させた。その結果を表14に10人のパネラーの合計点数で示す。
【0146】
評価基準
5:においが強い
4:ややにおいが強い
3:においがある
2:においが少ない
1:においがない
【0147】
【表14】

【0148】
表14に示す結果から明らかなように、微小カプセルを配合した実施例18の乳液は、比較例7の乳液と比較してにおいが少ないという評価であった。
【0149】
実施例19及び比較例8
表15に示す組成の2種類のクリームを調製し、乳化粒子の状態、保存安定性について評価し、さらに、内包物質の安定性を評価した。実施例19では実施例9で製造したL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液内包済微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例8ではL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液内包済微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用いず、L−アスコルビン酸ナトリウム及びトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルが実施例19と同量になるように配合した。
【0150】
【表15】

【0151】
実施例19及び比較例8のクリームは、ポリアクリルアミド、水添ポリイソブテン、ポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテル、水混合物に水相成分を攪拌しながら少量ずつ加え均一にし、油相成分を添加後、75℃に加温下で攪拌して均一にし、室温まで冷却してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物に実施例9で製造したL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液内包微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液、又はL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液とトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを添加し、ホモミキサーで3000rpm、30分間攪拌して調製した。
【0152】
実施例19及び比較例8のクリームを光学顕微鏡400倍の倍率にて粒子の状態を観察したところ、実施例19のクリームは複層構造をとっており、W/O/W型乳化物であることが確認できたが、比較例8の乳液では複層構造は認められず、O/W型乳化物であった。
【0153】
さらに、実施例19及び比較例8のクリームを50℃で1週間静置保存し、1週間後に外観を目視にて観察した。その結果を表16に示す。
【0154】
【表16】

【0155】
表16に示す結果から明らかなように、比較例8のクリームは1週間後には凝集を生じて水層が分離し、さらに赤く着色していたが、微小カプセルを配合した実施例19のクリームは1週間保存後の外観に変化はなく、保存安定性に優れていた。
【0156】
さらに、実施例19及び比較例8のクリームの調製直後及び前記の50℃で1週間静置保存後のL−アスコルビン酸ナトリウムの濃度を測定することにより、50℃で1週間保存後のL−アスコルビン酸ナトリウムの残存率を算出し、内包物質の安定性を評価した。なお、L−アスコルビン酸ナトリウムの濃度の測定方法は下記のとおりである。
【0157】
[L−アスコルビン酸ナトリウムの濃度の測定方法]
製剤(実施例19及び比較例8のクリーム)2.0gを精密に量り、ヘキサン5mL、エタノール5mLを添加し振り混ぜて分散し、メタリン酸溶液50mL(メタリン酸1.0gを水に溶解し50mLとしてもの)とデンプン試液1mLを加え、0.1mol/Lヨウ素で滴定した。試料の採取量(mg)をW、0.1mol/Lヨウ素のファクターをf、滴定に要したヨウ素液のmLをaとして、下式より製剤中のL−アスコルビン酸ナトリウムの濃度を算出した。
【0158】
【数2】

【0159】
実施例19及び比較例8のクリームを、50℃で1週間保存した後のL−アスコルビン酸ナトリウムの残存量は下式により求めた。その結果を表17に3回の測定結果の平均値で示す。
【0160】
【数3】

【0161】
【表17】

【0162】
表17の結果から明らかなように、L−アスコルビン酸ナトリウムを微小カプセルに内包して配合した実施例19のクリームは、比較例8のクリームと比較してL−アスコルビン酸ナトリウムの残存率が高く、L−アスコルビン酸ナトリウムの安定性に優れていた。
【0163】
実施例20及び比較例9
表18に示す組成の2種類の固形ファンデーションを調製し、塗布時ののび及びしっとり感を評価した。実施例20では、実施例2で製造した水内包微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例9では、内包済微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用いず、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、精製水が実施例20と同量になるように配合した。
【0164】
【表18】

【0165】
実施例20及び比較例9の固形ファンデーションの調製は、実施例2で製造した水内包済微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液、又は精製水とトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルをそれぞれ油相成分と混合し、粉体に添加して混練したのち容器に充填し圧力をかけることによって行った。
【0166】
前記実施例20及び比較例9の固形ファンデーションの塗布時ののび、及び塗布後のしっとり感について10名のパネラーに評価させた。評価の方法は、それぞれの固形ファンデーションを左右の頬に塗布し、塗布時ののび、塗布後のしっとり感について実施例20の固形ファンデーションが比較例9の固形ファンデーションに比べて、「優れている」、「差がない」、「劣っている」の3段階で比較評価させた。その結果を表19に、「実施例20が優れていると答えた人数」、「実施例20と比較例9に差がないと答えた人数」、「実施例20が劣っていると答えた人数」で示す。
【0167】
【表19】

【0168】
表19に示す結果から、微小カプセルを配合した実施例20の固形ファンデーションは、比較例9の固形ファンデーションに比べて、塗布時ののびと塗布後のしっとり感が優れていることが明らかであった。
【0169】
実施例20及び比較例9の固形ファンデーションの状態を外観の確認を行ったところ、実施例20の固形ファンデーションは水の分離がなく均一で、比較例9の固形ファンデーションは表面と割った断面に水滴が観察された。
【0170】
次に、前記実施例20及び比較例9の固形ファンデーションをカールフィッシャー水分計にて水分量の測定を実施したところ、実施例20の固形ファンデーションは水分量4.87%、比較例9の固形ファンデーションは水分量0.01%で、実施例20の固形ファンデーションが比較例9の固形ファンデーションと比較して水分を多く含有することが分かった。
【0171】
実施例21及び比較例10
表20に示す組成の2種類の固形ファンデーションを調製し、発汗による化粧崩れの程度を評価した。実施例21では、実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例10では、微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用いず、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルが実施例21と同量になるように配合した。
【0172】
【表20】

【0173】
実施例21及び比較例10の固形ファンデーションの調製は、実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を油相成分と混合し、粉体に添加して混練したのち容器に充填し圧力をかけることによって行った。
【0174】
前記実施例20及び比較例10の固形ファンデーションを10名のパネラーに評価させた。評価の方法は、鼻を中心に左右二等分した顔面へそれぞれ固形ファンデーションを塗布した後、被験者を室温30℃、湿度60%の部屋で2時間読書させた。試験後の発汗による化粧崩れについて、実施例21の固形ファンデーションが比較例10の固形ファンデーションに比べて、「化粧崩れしない」、「差がない」、「化粧崩れする」の3段階で比較評価させた。その結果を表21に、「実施例21が優れていると答えた人数」、「実施例21と比較例10に差がないと答えた人数」、「実施例21が劣っていると答えた人数」で示す。
【0175】
【表21】

【0176】
表21に示す結果から、微小カプセルを配合した実施例21の固形ファンデーションは、比較例10の固形ファンデーションに比べて、発汗による化粧崩れを起こしにくいことが明らかであった。したがって、微小カプセルを固形ファンデーションに配合することで、発汗時等の過酷な条件下でも化粧持ちに優れた固形ファンデーションを調製することができる。
【0177】
実施例22及び比較例11
表22に示す組成の2種類のヘアワックスを調製し、毛髪セット性を評価した。実施例22では実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例11では微小カプセルを用いていない。
【0178】
【表22】

【0179】
実施例22のヘアワックスの調製は、実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液とスクワランを混合し、あらかじめ混合した水相成分を添加してホモディスパーを用いて3000rpmで30分間攪拌して均一にし、残りの成分を添加して80℃に加温してアンカーミキサーで、100rpmで攪拌を行って均一にした後に室温まで冷却することにより行った。又、比較例11のヘアワックスは、実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用いない以外は、実施例22と同様の操作で調製した。
【0180】
調製したヘアワックスは、実施例22では水の分離がなく均一であったが、比較例11は容器の底に水分の分離が観察された。光学顕微鏡400倍の倍率での観察では、実施例22のヘアワックスは微細な液滴が観察されたが、比較例11のヘアワックスでは液滴は全く観察されなかった。
【0181】
実施例22及び比較例11のヘアワックスのセット性について下記の方法でウェーブ効率を測定して評価した。すなわち、長さ18cmに揃えた毛髪をあらかじめ2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水でゆすぎ室温で風乾し、これらの毛髪20本からなる毛束を3本作成し、それらをそれぞれロッドに巻き付けた。ロッドにはあらかじめ10mmごとに印を付けておいた(反対側にも5mmずつずらして印をつける)直径10mmで長さ80mmのガラス管を使用し、ロッド上の印の上を通るように毛束を巻き付け、両端を輪ゴムで固定し、そのロッドに巻き付けた毛束に実施例22及び比較例11の毛髪セット剤をそれぞれ2mLずつ塗布し、60℃の熱風乾燥機中で乾燥した。乾燥後の毛髪をデシケーター内でロッドを水平に宙吊り状態にして12時間放置し、12時間後に毛束をロッドからはずし、ウェーブの波長及び波数を測定した。
【0182】
波長、波数の測定は図2に示すように、両端のウェーブを除き、一方の端部から2番目の波の頂点から他方の端部から2番目の波の頂点までの距離を左右とも測定し、その左右の波の頂点から頂点までの距離をL1、L2とし、L1とL2の間にある波の数をそれぞれn1、n2とし、平均波長(L)を下式によって求めた。
【0183】
【数4】

【0184】
ロッドそのものの波長(直径)は10mmなので、ウェーブ効率は次式により求められるが、実施例22及び比較例11のヘアワックスで処理した毛髪のウェーブ効率を表23に示す。
【0185】
【数5】

【0186】
【表23】

【0187】
表23に示す結果から明らかなように、微小カプセルを配合した実施例22のヘアワックスで処理した毛髪は比較例11のヘアワックスで処理した毛髪に比べてウェーブ効率が高く、微小カプセルを配合したヘアワックスはそれを配合していないヘアワックスよりセット性が優れていた。
【0188】
実施例23及び比較例12
表24に示す組成の2種類のヘアコンディショナーを調製し、処理乾燥後の毛髪のしっとり感及びツルツル感を評価した。実施例23では実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例12では微小カプセルを用いていない。
【0189】
【表24】

【0190】
前記実施例23及び比較例12のヘアコンディショナーの処理乾燥後の、毛髪のしっとり感及びツルツル感について10名のパネラーに評価させた。評価の方法は、それぞれのヘアコンディショナーをハーフヘッド法で処理し、水で洗い流し、乾燥後の毛髪の保湿感及びツルツル感について実施例23のヘアコンディショナーが比較例12のヘアコンディショナーに比べて、「優れている」、「差がない」、「劣っている」の3段階で比較評価させた。その結果を表25に、「実施例23が優れていると答えた人数」、「実施例23と比較例12に差がないと答えた人数」、「実施例23が劣っていると答えた人数」で示す。
【0191】
【表25】

【0192】
表25に示す結果から、微小カプセルを配合した実施例23のヘアコンディショナーは、比較例12のヘアコンディショナーに比べて、処理乾燥後のしっとり感とツルツル感が優れていることが明らかであった。
【0193】
実施例24及び比較例13
表26に示す組成の2種類のシャンプーを調製し、すすぎ時のキシミ感を評価した。実施例24では実施例1で製造した微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液を用い、比較例13では微小カプセルを用いていない。
【0194】
【表26】

【0195】
実施例24及び比較例13のシャンプー処理時の、キシミ感について10名のパネラーに評価させた。評価の方法は、それぞれのシャンプーをハーフヘッドで処理し、水で洗い流している時のキシミ感について実施例24のシャンプーが比較例13のシャンプーに比べて、「優れている」、「差がない」、「劣っている」の3段階で比較評価させた。その結果を表27に、「実施例24が優れていると答えた人数」、「実施例24と比較例13に差がないと答えた人数」、「実施例24が劣っていると答えた人数」で示す。
【0196】
【表27】

【0197】
表27に示す結果から、微小カプセルを配合した実施例24のシャンプーは、比較例13のシャンプーに比べて、処理乾燥後のしっとり感とツルツル感が優れていることが明らかであった。
【0198】
実施例25 水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液(VII)
[水を内包する微小カプセルの油性物質分散液の製造]
上蓋に滴下ロートと還流冷却器を備え、メカニカルスターラーを備えた内径12cmで容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水119.8gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク(加水分解シルクの分子量は数平均分子量で約600)13.3g及び18%塩酸5.4gを入れておき、50℃、250rpmで攪拌しながらメチルトリエトキシシラン25.1g、及びオクチルトリエトキシシラン77.8gの混合物を滴下ロートから30分間かけて滴下し、さらに、50℃、250rpmで16時間攪拌を続けた。攪拌速度を600rpmに上げ、攪拌しながらカプセルの外相となるトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを158.5g加え、20%水酸化ナトリウム水溶液4.7gを滴下してpHを6に調整した後、内相となる水163.3gを加え、さらに50℃、600rpmで3時間攪拌を続けた。
【0199】
引き続き、50℃、600rpmで攪拌しながらトリエチルエトキシシラン16.6g及びトリメチルクロロシラン4.6gを加え、さらに50℃、600rpmで20時間攪拌を続けた。この反応液に5%水酸化ナトリウム水溶液34.6gを滴下してpH6に調整した後、50℃、600rpmで30分間攪拌を続けた後、攪拌速度を400rpmに下げ、攪拌しながら徐々に反応液の温度を上げて還流させながら92℃で2時間加熱還流させた。この反応液を室温、400rpmで攪拌しながら冷却して、水を内包する微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液563.6gを得た。
【0200】
[水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液の製造]
次に、この水を内包する微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液から、50℃で、減圧下ロータリーエバポレータにより水321.1gを留去し、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液242.5gを得た。
【0201】
実施例26 水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液(VIII)
[水を内包する微小カプセルの油性物質分散液の製造]
上蓋に滴下ロートと還流冷却器を備え、メカニカルスターラーを備えた内径12cmで容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水113.8gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク(加水分解シルクの分子量は数平均分子量で約600)12.6g及び18%塩酸5.1gを入れておき、50℃、250rpmで攪拌しながらメチルトリエトキシシラン23.8g、及びオクチルトリエトキシシラン73.9gの混合物を滴下ロートから30分間かけて滴下し、さらに、50℃、250rpmで16時間攪拌を続けた。攪拌速度を600rpmに上げ、攪拌しながらカプセルの外相となるトリ−2−エチルヘキサン酸グリセリルを150.6g加え、20%水酸化ナトリウム水溶液4.5gを滴下してpHを6に調整した後、内相となる水155.1gを加え、さらに50℃、600rpmで3時間攪拌を続けた。
【0202】
引き続き、50℃、600rpmで攪拌しながらトリエチルエトキシシラン15.8g及びトリメチルクロロシラン4.4gを加え、さらに50℃、600rpmで20時間攪拌を続けた。この反応液に5%水酸化ナトリウム水溶液32.9gを滴下してpH6に調整した後、50℃、600rpmで30分間攪拌を続けた後、攪拌速度を400rpmに下げ、攪拌しながら徐々に反応液の温度を上げて還流させながら92℃で2時間加熱還流させた。この反応液を室温、400rpmで攪拌しながら冷却して、水を内包する微小カプセルのトリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル分散液535.4gを得た。
【0203】
[水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液の製造]
次に、この水を内包する微小カプセルのトリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル分散液から、50℃で、減圧下ロータリーエバポレータにより水305.1gを留去し、水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルのトリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル分散液230.4gを得た。
【0204】
実施例27 アルブチン及びグリセリン水溶液を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液(IX)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた内包水を除去した微小カプセルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル分散液30.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、300rpm、減圧下で攪拌しながら、アルブチン13.4g、グリセリン3.0gを水57.0gに溶解させたアルブチン及びグリセリン水溶液73.4gを滴下ロートから30分かけて滴下した。さらに、50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、水3.4gを留去し、粘稠な分散液100.0gを得た。
【0205】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、この粒子に圧力を加えたとき液滴が合一し、保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、親水性物質の分離がなく均一であった。従って、アルブチン及びグリセリン水溶液が安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液はアルブチン及びグリセリン水溶液を内包(安定に保持)する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0206】
実施例28 ハチミツ及び1,3−ブチレングリコールを内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液(X)
容量200mL平底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた内包水を除去した微小カプセルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル分散液30.0gをあらかじめ入れておく。これをホモディスパーにて3000rpmで攪拌しながら、ハチミツ52.5gに1,3−ブチレングリコール17.5gを溶解させたハチミツ及び1,3−ブチレングリコール溶液70.0gをゆっくり添加した。さらに、室温、3000rpmで10分間攪拌し、粘稠な分散液を得た。
【0207】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、この粒子に圧力を加えたとき液滴が合一し、保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、親水性物質の分離がなく均一であった。従って、ハチミツ及び1,3−ブチレングリコールが安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液はハチミツ及び1,3−ブチレングリコールを内包(安定に保持)する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0208】
実施例29 グリセリンを内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液(XI)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液30.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、300rpm、減圧下で攪拌しながら、グリセリン70.0gを滴下ロートから30分かけて滴下した。さらに、50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、粘稠な分散液を得た。
【0209】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、この粒子に圧力を加えたとき、液滴が合一し保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、グリセリンの分離がなく均一であった。従って、グリセリンが安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液はグリセリンを内包(安定に保持)する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0210】
実施例30 アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム水溶液を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液(XII)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液60.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、300rpm、減圧下で攪拌しながら、あらかじめアスコルビン酸リン酸エステルナトリウム10.0gを溶解した10%水溶液100.0gを滴下ロートから30分かけて滴下した。さらに、50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、水59.7gを留去し、粘稠な分散液100.3gを得た。
【0211】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、この粒子に圧力を加えたとき、液滴が合一し保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、親水性物質の分離がなく均一であった。従って、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム水溶液が安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液はリン酸−アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム水溶液を内包する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0212】
実施例31 L−アスコルビン酸2−グルコシド水溶液を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液(XIII)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル分散液60.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、減圧下、300rpmで攪拌しながら、あらかじめL−アスコルビン酸2−グルコシド10.0gを溶解した10%水溶液100.0gを滴下ロートから30分かけて滴下した。さらに、50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、水59.5gを留去し、粘稠な分散液100.5gを得た。
【0213】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、この粒子に圧力を加えたとき、液滴が合一し保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、親水性物質の分離がなく均一であった。従って、L−アスコルビン酸2−グルコシド水溶液が安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液はL−アスコルビン酸2−グルコシド水溶液を内包する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0214】
実施例32 ジヒドロキシプロピルアルギニン塩酸塩水溶液((株)成和化成製のアミトースR(商品名))を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液(XIV)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた内包水を除去した微小カプセルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル分散液30.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、300rpm、減圧下で攪拌しながら、ジヒドロキシプロピルアルギニン塩酸塩水溶液(固形分%)70.0gを滴下ロートから30分かけて滴下した。さらに、50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、粘稠な分散液100.0gを得た。
【0215】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、この粒子に圧力を加えたとき、液滴が合一し保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、ジヒドロキシプロピルアルギニン塩酸塩水溶液の分離がなく均一であった。従って、ジヒドロキシプロピルアルギニン塩酸塩水溶液が安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液はジヒドロキシプロピルアルギニン塩酸塩水溶液を内包(安定に保持)する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0216】
実施例33 α−グルコシルヘスペリジン水溶液を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液(XV)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた内包水を除去した微小カプセルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル分散液30.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、300rpm、減圧下で攪拌しながら、α−グルコシルヘスペリジン水溶液10.0gを溶解した10%水溶液100.0gを滴下ロートから30分かけて滴下した。さらに、50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、水60.1gを留去し、粘稠な分散液99.9gを得た。
【0217】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、この粒子に圧力を加えたとき、液滴が合一し保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、α−グルコシルヘスペリジン水溶液の分離がなく均一であった。従って、α−グルコシルヘスペリジン水溶液が安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液はα−グルコシルヘスペリジン水溶液を内包する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0218】
実施例34 グリセリン及びパーフルオロポリエーテル(ソルベイ ソレクシス(株)製のフォンブリンHC/04(商品名))を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液A(XVI)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた内包水を除去した微小カプセルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル分散液15.0gとトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル10.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、300rpm、減圧下で攪拌しながら、グリセリン10.0gを滴下ロートから5分かけて滴下した。引き続き、パーフルオロポリエーテル(平均分子量1500)65.0gを滴下ロートから添加した。さらに、50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、粘稠な分散液100.0gを得た。
【0219】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、この粒子に圧力を加えたとき液滴が合一し、保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、グリセリン及びパーフルオロポリエーテルの分離がなく均一であった。従って、グリセリン及びパーフルオロポリエーテルが安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液はグリセリン及びパーフルオロポリエーテルを内包(安定に保持)する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0220】
実施例35 グリセリン及びパーフルオロポリエーテル(ソルベイ ソレクシス(株)製のフォンブリンHC/04(商品名))を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液B(XVII)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた内包水を除去した微小カプセルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル分散液15.0gとトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル10.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、300rpm、減圧下で攪拌しながら、パーフルオロポリエーテル(平均分子量1500)7.5gをグリセリン67.5gに分散させた混合液を滴下ロートから添加した。さらに、50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、粘稠な分散液100.0gを得た。
【0221】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が観察され、この粒子に圧力を加えたとき液滴が合一し、保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、グリセリン及びパーフルオロポリエーテルの分離がなく均一であった。従って、グリセリン及びパーフルオロポリエーテルが安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液はグリセリン及びパーフルオロポリエーテルを内包(安定に保持)する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0222】
実施例36 エリスリトール及びグリセリンを内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液(XVIII)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた内包水を除去した微小カプセルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル分散液30.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、300rpm、減圧下で攪拌しながら、エリスリトール20.0gと水20.0gをグリセリン30.0gに溶解させたエリスリトール及びグリセリン水溶液70.0gを水滴下ロートから30分かけて滴下した。さらに50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、粘稠な分散液100.0gを得た。
【0223】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が確認され、この粒子に圧力を加えたとき、液滴が合一し保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、親水性物質の分離がなく均一であった。従って、エリスリトール及びグリセリンが安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液は、エリスリトール及びグリセリンを内包する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0224】
実施例37 グリチルリチン酸ジカリウム水溶液を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液(XIX)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた内包水を除去した微小カプセルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル分散液30.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、300rpm、減圧下で攪拌しながら、あらかじめグリチルリチン酸ジカリウム10.0gを溶解した10%水溶液100.0gを滴下ロートから30分かけて滴下した。さらに50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、水40.0gを留去し、粘稠な分散液100.0gを得た。
【0225】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が確認され、この粒子に圧力を加えたとき液滴が合一し、保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、親水性物質の分離がなく均一であった。従って、グリチルリチン酸ジカリウム水溶液が安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液は、グリチルリチン酸ジカリウム水溶液を内包する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0226】
実施例38 尿素水溶液を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液(XX)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた内包水を除去した微小カプセルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル分散液30.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、300rpm、減圧下で攪拌しながら、あらかじめ尿素40.0gを溶解した50%水溶液80.0gを滴下ロートから10分かけて滴下した。さらに50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、水10.0gを留去し、粘稠な分散液100.0gを得た。
【0227】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が確認され、この粒子に圧力を加えたとき、液滴が合一し保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、親水性物質の分離がなく均一であった。従って、尿素水溶液が安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液は、尿素水溶液を内包する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0228】
実施例39 グリコール酸ナトリウム水溶液を内包した内包済微小カプセルの油性物質分散液(XXI)
上蓋に滴下ロートを備え、メカニカルスターラーを備えた内径7cmで容量500mL丸底円筒形ガラス製反応容器に、実施例25で得られた内包水を除去した微小カプセルのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル分散液30.0gをあらかじめ入れておく。これを50℃、300rpm、減圧下で攪拌しながら、あらかじめpH6.5に中和しておいたグリコール酸ナトリウム5%水溶液70.0gを滴下ロートから20分かけて滴下した。さらに50℃、300rpm、減圧下で1時間攪拌を続け、粘稠な分散液100.0gを得た。
【0229】
この粘稠な分散液を光学顕微鏡1000倍で観察したところ、分散した粒子及び粒子の集合体が確認され、この粒子に圧力を加えたとき液滴が合一し、保持物が流出することが確認された。又、この粘稠な分散液を20℃、15000G、2時間遠心分離を行ったが、親水性物質の分離がなく均一であった。従って、グリコール酸ナトリウム水溶液が安定に配合されていることが明らかであった。さらに、この粘稠な分散液は、グリコール酸ナトリウム水溶液を内包する微小カプセルがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに分散したものであることが明らかであった。
【0230】
実施例40〜41、比較例14〜17
(評価試料)
表28に示す処方の口紅を、以下に示すA工程、B工程及びC工程からなる製造方法にて製造した。
【0231】
A工程:表28に示す成分1〜17を95℃にて加熱溶解後、十分に混合した。
B工程:A工程で得られた混合物を80℃に保ち、脱泡後、金型に流し込み充填し、室温まで冷却して成型した。
C工程:B工程にて成型した固形物を型から取り出し、容器に装着してスティック状口紅を得た。
【0232】
なお比較例に用いたジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30は、ユニケマ社製のARLACEL P−135(商品名)であり、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルは、日清オイリオ社製のサラコス WO−6(商品名)である。
【0233】
【表28】

【0234】
得られたスティック状口紅について、「滑らかな伸び広がり」、「うるおい感」、「化粧もち」及び「におい」についての官能評価を行った。又、上記A工程にて得られた混合物の「溶融時の顔料分散状態」について評価した。さらに、得られたスティック状口紅の5℃、40℃及び50℃の各温度における「経時安定性」の評価を行った。以下に評価方法を示す。
【0235】
(官能評価の方法)
化粧歴10年以上の女性40人を評価パネラーとし、上記実施例及び比較例の口紅を1ヶ月間使用してもらい、「滑らかな伸び広がり」、「うるおい感」、「化粧もち」及び「におい」の各項目別に、「良好と感じた」と答えたパネルの人数を集計し、表29に示す評価基準で判定した。
【0236】
【表29】

【0237】
(「溶融時の分散状態」に関する評価方法)
上記A工程にて得られた混合物の一部を湯せん(90℃)上に30分放置した後の顔料の沈降状況を観察し、表30の判定基準に従って判定した。
【0238】
【表30】

【0239】
(「経時安定性」に関する評価方法)
得られたスティック状口紅を容器から繰り出し、5℃、40℃及び50℃の各温度の恒温槽にて保管し、1ヵ月後までの外観状態の変化を観察し、表31の判断基準に従って評価した。
【0240】
【表31】

【0241】
(評価結果)
官能評価、「溶融時の顔料分散状態」及び「経時安定性」の評価の結果を表32に示す。表32の結果から明らかなように、本発明の内包済微小カプセルの油性物質分散液を配合した実施例のスティック状口紅は、「滑らかな伸び広がり」、「うるおい感」、「化粧もち」、「におい」、「溶融時の分散性」、「経時安定性」の全ての項目において優れたものであった。一方、ハチミツ、1,3−ブチレングリコール混合液等を含有するものの、本発明の内包済微小カプセルの油性物質分散液を含有しない比較例14〜16については、滑らかな伸び広がりやうるおい感に欠けるだけでなく、溶融時に分離が観測され、又経時安定性においても、発汗や折れなどの重大な変化が観測された。
【0242】
【表32】

【0243】
実施例42、比較例18,19
表33に示す処方のパウダーファンデーションを、以下に示すA工程、B工程及びC工程からなる手順により製造した。
【0244】
A工程:表33に示す成分1〜8を室温にて均一に混合分散した。
B工程:A工程で得られた混合分散物に表33に示す成分9〜17を添加し、室温にて均一に混合した。
C工程:B工程で得られた混合物を粉砕し、容器に充填し、パウダーファンデーションを得た。
【0245】
本発明の内包済微小カプセルの油性物質分散液を配合した実施例のパウダーファンデーションは、比較例のパウダーファンデーションに対して保形性と経時安定性に優れ、滑らかな伸び広がりでつけ心地もしっとりとしており、化粧もちが優れるだけでなくおよびL−アスコルビン酸2−グリコシドの分散性も経時の安定性も良好であった。一方、比較例18は使用感が悪いだけでなく、経時でL−アスコルビン酸2−グリコシドの結晶の析出も観測された。
【0246】
【表33】

【0247】
実施例43、比較例20
表34に示す処方のリキッドファンデーションを、以下に示すA工程及びB工程からなる手順により製造した。
【0248】
A工程:表34に示す成分1〜11を室温にて混合した。
B工程:A工程で得られた混合物に表34に示す成分12〜16を添加し、ホモミキサーを用いて室温にて均一分散し、リキッドファンデーションを得た。
【0249】
本発明の内包済微小カプセルの油性物質分散液を配合した実施例のリキッドファンデーションは、経時安定性に優れ、べたつき感が無く、水々しく、滑らかな伸び広がりで、化粧もちも良好であった。又、比較例に比べ、べたつきが少ないにもかかわらず、うるおい感が良好でアスコルビン酸リン酸エステルナトリウムの結晶化もなく安定であった。
【0250】
【表34】

【0251】
実施例44、比較例21
表35に示す処方のスティック状コンシーラーを、以下に示すA工程及びB工程からなる手順により製造した。
【0252】
A工程:表35に示す成分1〜16を100℃で加熱溶解し、混合した。
B工程:A工程で得られた混合物を80℃に保ち、脱泡後、容器に流し込み、室温まで冷却し、スティック状コンシーラーを得た。
【0253】
得られたスティック状コンシーラーは、形状保持性と経時安定性に優れ、べたつき感が無く、隠蔽効果に優れ、化粧もちも良好であった。又、比較例に比べて保湿感に優れ、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウムの析出や発汗なども観測されず、安定性も良好であった。
【0254】
【表35】

【0255】
実施例45、比較例22
表36に示す処方のリップグロスを、以下に示すA工程及びB工程からなる手順により製造した。
【0256】
A工程:表36に示す成分1〜11を85℃で加熱溶解し、混合した。
B工程:A工程で得られた混合物を80℃に保ち、脱泡後、容器に流し込み、室温まで冷却し、リップグロスを得た。
【0257】
得られたリップグリロスは、経時安定性が良く、優れたつやを有し、化粧仕上りも良好であった。又、比較例に比べて保湿感に優れ、α−グルコシルヘスペリジンの析出もなく安定性も良好であった。
【0258】
【表36】

【0259】
実施例46、比較例23
表37に示す処方のアイカラーペンシルを、以下に示すA工程及びB工程からなる手順により製造した。
【0260】
A工程:表37に示す成分1〜15を85℃で加熱溶解し、混合した。
B工程:A工程で得られた混合物を80℃に保ち、脱泡後、樹脂製円筒軸の後端側の軸穴に流し込んで充填し(バック充填)、冷却して固化させてアイカラーペンシルを得た。
【0261】
得られたアイカラーペンシルは、形状保持性と経時安定性に優れ、つやを有し、化粧仕上りも良好であった。又、比較例に比べて、滑らかで描きやすく、かつ、経時でのにじみが少なかった。
【0262】
【表37】

【0263】
実施例47、比較例24
表38に示す処方のアイクリームを、以下に示すA工程、B工程及びC工程からなる手順により製造した。
【0264】
A工程:表38に示す成分1及び3〜9を80℃で加熱溶解し、均一に混合した。
B工程:表38に示す成分2及び10〜15を80℃に加熱し、A工程で得られた混合物に添加して乳化した。
C工程:B工程で得られた混合物を冷却してアイクリームを得た。
【0265】
得られたアイクリームは、経時安定性に優れ、さっぱり感と保湿感の持続に優れたものであった。
【0266】
【表38】

【0267】
実施例48、比較例25
表39に示す処方のクレンジングオイルを、以下に示すA工程及びB工程からなる手順により製造した。
【0268】
A工程:表39に示す成分1〜9を80℃にて加熱溶解し、均一に混合した。
B工程:A工程で得られた混合物を冷却し、クレンジングオイルを得た。
【0269】
得られたクレンジングオイルは、経時安定性に優れ、化粧落とし効果及び流しやすさも良好であった。
【0270】
【表39】

【0271】
実施例49、比較例26
表40に示す処方のW/O型UVクリームを、以下に示すA工程及びB工程からなる手順により製造した。
【0272】
A工程:表40に示す成分1〜4及び6〜11を室温にて混合した。
B工程:A工程にて得られた混合物に表40に示す成分5及び12〜15を添加し、ホモミキサーを用いて室温にて均一分散し、W/O型UVクリームを得た。
【0273】
得られたW/O型UVクリームは、分散性と経時安定性に優れ、べたつき感が無く、水々しく、滑らかな伸び広がりで、紫外線防御力も良好であった。
【0274】
【表40】

【0275】
実施例50、比較例27
表41に示す処方のO/W型美白クリームを、以下に示すA工程、B工程、C工程及びD工程からなる手順により製造した。
【0276】
A工程:表41に示す成分1〜9を80℃で溶解し、混合した。
B工程:表41に示す成分10〜16を80℃にて混合した。
C工程:80℃にて、A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加え、乳化した。
D工程:C工程で得られた混合物を室温まで冷却し、O/W型美白クリームを得た。
【0277】
得られたO/W型美白クリームは、経時安定性に優れ、べたつき感が無く、水々しく、滑らかな伸び広がりで濃厚な使用感であった。又、美白成分の安定性も良好であった。
【0278】
【表41】

【0279】
実施例51、比較例28
表42に示す処方のヘアワックスを、以下に示すA工程及びB工程からなる手順により製造した。
【0280】
A工程:表42に示す成分1〜13を80℃で加熱溶解し、均一に混合した。
B工程:A工程にて得られた混合物を80℃にて容器に流し込み、冷却することによりヘアワックスを得た。
【0281】
得られたヘアワックスは、経時安定性に優れ、べたつき感が無く、セット力も良好であった。
【0282】
【表42】

【0283】
実施例52、比較例29
表43に示す処方のマスカラを、以下に示すA工程及びB工程からなる手順により製造した。
【0284】
A工程:成分1〜13を80℃で加熱溶解し、均一に混合した。
B工程:A工程にて得られた混合物を容器に流し込み、冷却することによりマスカラを得た。
【0285】
得られたマスカラは、経時安定性に優れ、べたつき感が無く、セット力も良好であった。
【0286】
【表43】

【0287】
実施例53、比較例30
表44に示す処方のO/W型美白クリームを、以下に示すA工程、B工程、C工程及びD工程からなる手順により製造した。
【0288】
A工程:表44に示す成分1〜6及び8〜9を80℃で溶解し、混合した。
B工程:表44に示す成分7及び10〜16を80℃にて混合した。
C工程:80℃にて、A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加え、乳化した。
D工程:C工程で得られた混合物を室温まで冷却し、O/W型美白クリームを得た。
【0289】
得られたO/W型美白クリームは、経時安定性に優れ、べたつき感が無く、水々しく、滑らかな伸び広がりで濃厚な使用感であった。又、美白成分の安定性も良好であった。
【0290】
【表44】

【0291】
実施例54〜55、比較例31
表45に示す処方のスティック状口紅を、以下に示すA工程、B工程及びC工程からなる手順により製造した。
A工程:成分1〜18を95℃にて加熱溶解後、十分に混合した。
B工程:A工程で得られた混合物を80℃に保ち、脱泡後、金型に流し込み充填し、室温まで冷却して成型した。
C工程:B工程にて成型した固形物を型から取り出し、容器に装着してスティック状口紅を得た。
【0292】
【表45】

【0293】
(評価方法)
得られたスティック状口紅について、「滑らかな伸び広がり」、「うるおい感」、「化粧もち」及び「皮膜感」についての官能評価を行った。又、上記A工程にて得られた混合物の「溶融時の顔料分散状態」について評価した。さらに、得られたスティック状口紅の5℃、40℃及び50℃の各温度における「経時安定性」の評価を行った。以上の評価は、実施例40、41と同様にして行った。ただし、溶融時の分散状態の評価は、90℃にて30分間静置後の沈降状況の代わりに、90℃にて1分間静置後の沈降状況にて行った。
【0294】
(評価結果)
スティック状口紅の評価結果を表5に示す。これらの結果から明らかなように、本発明の含有した実施例55〜54のスティック状口紅は、「滑らかな伸び広がり」、「うるおい感」、「化粧もち」、「皮膜感」、「溶融時の分散性」、「経時安定性」の全ての項目において優れたものであった。又、比較例31については、滑らかな伸び広がりやうるおい感に欠けるだけでなく、溶融時に分離が観測され、又経時安定性においても、発汗や折れなどの重大な変化が観測された。
【0295】
【表46】

【産業上の利用可能性】
【0296】
本発明の水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルの油性物質分散液、及び内包済微小カプセル油性物質分散液は、化粧料に適用できる。又、本発明により、熱に不安定な親水性の機能性成分を、着色、着臭や有効成分を失活させることなく配合した保存安定性に優れた化粧料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0297】
【図1】微小カプセルの分散状態を示す概念図である。
【図2】ウェーブ効率やウェーブ保持率の測定を行う際の毛髪のウェーブの状態を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び/又は親水性物質の内包が可能な微小カプセルを、油性物質中に分散してなる分散液であって、該微小カプセルが、水及び/又は親水性物質が透過可能な壁膜を有し、該壁膜内に水及び/又は親水性物質を内包する微小カプセルより、内包されている水及び/又は親水性物質の全部又は一部を除去して得られることを特徴とする微小カプセルの油性物質分散液。
【請求項2】
前記壁膜が、親油性及び親水性であることを特徴とする請求項1に記載の微小カプセルの油性物質分散液。
【請求項3】
前記壁膜が、シリル化ペプチドの一種以上と、加水分解により水酸基が2個以上生じるシラン化合物の一種以上との縮重合物により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の微小カプセルの油性物質分散液。
【請求項4】
前記壁膜が、下記の一般式(I):
【化1】


〔式中、Rは水酸基又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rは側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、RはRが結合するアミノ酸以外のアミノ酸側鎖を示し、Aは結合手で−CH−、−(CH−、−(CHOCHCH(OH)CH−及び−(CHS−よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、mは0〜50、nは0〜50、m+nは1〜50である(ただし、m及びnはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない。)。〕で表わされるシリル化ペプチドの一種以上と、
下記一般式(II):
pSiX(4−p) (II)
〔式中、Rは炭素原子にケイ素原子が直結する有機基で、pは0から2の整数で、p個のRは同じでも異なっていてもよい。Xは水酸基、水素原子、アルコキシル基、ハロゲン基、カルボキシル基、アミノ基及びシロキシル基よりなる群から選ばれる基で、(4−p)個のXは同じでも異なっていてもよい。〕で表わされ、加水分解によって水酸基が2個以上生じるシラン化合物の一種以上を、1:20〜1:80のモル比で、縮重合させて得られる縮重合物により形成されていることを特徴とする請求項3に記載の微小カプセルの油性物質分散液。
【請求項5】
一般式(I)で表わされるシリル化ペプチドの一種以上と、一般式(II)で表わされる加水分解によって水酸基が2個以上生じるシラン化合物の一種以上との縮重合が、水及び/又は親水性物質、及び油性物質の存在下、撹拌しながら行われていることを特徴とする請求項4に記載の微小カプセルの油性物質分散液。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の微小カプセルの油性物質分散液中に分散している微小カプセル間、及び/又は該微小カプセルの壁膜内に、水及び/又は親水性物質を内包させて得られることを特徴とする内包済微小カプセルの油性物質分散液。
【請求項7】
水及び/又は親水性物質が、熱に不安定な物質の水溶液又は高塩濃度の水溶液であることを特徴とする請求項6に記載の内包済微小カプセルの油性物質分散液。
【請求項8】
水及び/又は親水性物質が、保湿成分、薬理活性成分、染料、水溶性ビタミン類及びその誘導体、植物抽出物、糖類及びその誘導体、アミノ酸類、タンパク質、タンパク質加水分解物及びその誘導体類、並びに有機塩類の水溶液から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の内包済微小カプセルの油性物質分散液。
【請求項9】
油性物質が、炭化水素類、エステル類、油脂類、ロウ類、シリコーン油類、高級アルコール類、及び高級脂肪酸類からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の微小カプセルの油性物質分散液。
【請求項10】
油性物質が、炭化水素類、エステル類、油脂類、ロウ類、シリコーン油類、高級アルコール類、及び高級脂肪酸類からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の内包済微小カプセルの油性物質分散液。
【請求項11】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の微小カプセルの油性物質分散液と、水相成分と油相成分を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項12】
請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の内包済微小カプセルの油性物質分散液と、水相成分と油相成分を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項13】
油相成分が揮発性シリコーンであることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−19248(P2008−19248A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154289(P2007−154289)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000147213)株式会社成和化成 (45)
【Fターム(参考)】