微小物体の光学的計測装置
【課題】ノイズによる計測誤差などを吸収し、実用上正確な計測を可能とした微小物体の光学的な計測装置を提供する。
【解決手段】複数波長レーザ光発生手段と、光学系の光光路長を変えながら観測光と対象光との複数の干渉画像を撮像する撮像手段とを備え、上記複数の波長のレーザ光の各波長毎の干渉画像の各点の明るさが変化する部分の位相を計測し、位相値の組み合わせによって測定物の大きさを計測するようにしてなる微小物体の光学的計測装置であって、上記計測された位相値を測定対象物の所定の測定区間毎に分割し、区間の組み合わせを区間番号で表した変換テーブルによって解析することにより、使用するレーザ光の波長を超えた大きさの計測を行えるようにし、予じめ上記変換テーブルの区間番号の組み合わせを粗にしておき、その空いた区間番号の組み合わせを近傍の組み合わせ番号で補間することにより、計測された位相値の誤差を吸収補正した。
【解決手段】複数波長レーザ光発生手段と、光学系の光光路長を変えながら観測光と対象光との複数の干渉画像を撮像する撮像手段とを備え、上記複数の波長のレーザ光の各波長毎の干渉画像の各点の明るさが変化する部分の位相を計測し、位相値の組み合わせによって測定物の大きさを計測するようにしてなる微小物体の光学的計測装置であって、上記計測された位相値を測定対象物の所定の測定区間毎に分割し、区間の組み合わせを区間番号で表した変換テーブルによって解析することにより、使用するレーザ光の波長を超えた大きさの計測を行えるようにし、予じめ上記変換テーブルの区間番号の組み合わせを粗にしておき、その空いた区間番号の組み合わせを近傍の組み合わせ番号で補間することにより、計測された位相値の誤差を吸収補正した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、微小物体の大きさを光学的に計測する微小物体の光学的計測装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、微小物体の所定の位置間の段差や3次元形状、例えば半導体や液晶ディスプレーの製造ライン、マイクロマシンなどの製造ラインにおけるナノメータレベルでのパターン間の段差や微小な機構部分の高さを光学的に計測する微小物体の計測装置として、例えば光源に白色光源を用い、当該白色光源からの白色光の干渉を利用して計測するものが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
白色光源は、合成光の光源であるから多数の波長の光を発生させる。したがって、同白色光源からの多数の波長の光を上記のような測定対象物上で干渉させた場合、干渉により光が強め合う位置は、当該物体上の非常に短い区間となる。
【0004】
そこで、例えばCCDカメラなどの固体撮像手段により測定対象物を撮像しながら光学系を上下に動かして光路長を変え、撮像された測定対象物の画像内の各点で、その光量が最大になった時の光学系上の位置を求めるようにすれば、計測対象である微小物体表面の、例えば凹凸形状等の3次元形状を計測することができる。
【0005】
今例えば図12に、そのような構成を採用した従来の微小物体の計測装置の具体的な構成を示す。
【0006】
図12中、符号1は上記ナノレベルの微小な測定対象物、2は同測定対象物1を臨むCCDカメラ6からの光学系路上の位置に設けられていて、上記測定対象物1からの反射光を集光する対物レンズ、3は上記対物レンズ2を上記光学系路上においてフォーカス方向(光軸方向)に微小駆動することによって光路長を変える例えばピエゾアクチュエータよりなる光路長可変手段、4はハーフミラー4aを備え、白色光源5からの光を上記対物レンズ2を通して測定対象物に照射するビームスプリッター、6は上記測定対象物1からの反射光を対物レンズ2を介して収束させながら上記ビームスプリッター4を介して受光素子部分に入力し、上記測定対象物1の画像を得るCCDカメラである。
【0007】
しかし、上記従来の計測装置は、原理的にナノメートル単位の計測精度での光学系路上の位置決めを必要とするため、例えば数10マイクロメートルの測定対象物の高さを測定しようとした場合、数100回の位置決め工程を必要とし、相当に長い計測時間が必要となる。
【0008】
したがって、上記従来の計測装置では、必要な計測精度が高くなるほど、また必要な計測レンジが広くなるほど、多大な計測時間を要することになり、極めて計測効率が悪く、半導体製造ライン等の製造効率向上の妨げとなっている。
【0009】
そこで、これを解消するために、例えば図1に示されるように複数の異なる波長のレーザ光を発生する第1,第2,第3の複数のレーザ光発生手段L1,L2,L3とこれら第1,第2,第3の複数のレーザ光発生手段L1,L2,L3に対応した第1,第2,第3の複数の撮像手段C1,C2,C3とを設け、第1,第2,第3の複数のレーザ光発生手段L1,L2,L3から照射されたレーザ光が第1,第2のビームスプリッターB1,B2部分で合流したあと、第3のビームスプリッターで測定対象物体への照射光とミラーへの参照光との2つのレーザ光に分けられて照射されるようにする。
【0010】
そして、測定対象物に当たった反射光は、再び第3のビームスプリッターB3でミラーMからの反射光と合流して、干渉像を作りながら、第4,第5のビームスプリッターB4,B5を通って、第1,第2,第3の撮像手段C1,C2,C3により撮像されるようにする。
【0011】
これら第1〜第3の各撮像手段C1,C2,C3の前には、それぞれ各レーザ光の波長にあった特性の光学フィルタF1〜F3が装着されており、各レーザ光の波長毎の干渉像を撮像する。
【0012】
一方、測定対象物は所定のステージST上に載置されており、同測定対象物を載せたステージSTは、ピエゾ素子などで駆動され、光路長を所望に変化させるようになっている。光路長を数10nm単位で変化させると、資料からの反射光と参照光との干渉状態が変化するために、像の明るさが変わる。この変化は、光路長の変化量に応じて図2のようにサイン波状に変化し、光路長の変化の1波長が周期となる。
【0013】
同光路長は、測定対象物表面の凹凸に応じて場所毎に異なるため、明暗の変化の仕方も場所によって違い、場所毎のサイン波状の明るさ変化の位相差となって表れる。したがって、図3のように、この位相差を測定すると、高さの差を計算することができることになる。
【0014】
しかし、上記明るさが変化するサイン波は波長の一周期で元に戻るので、結局1波長のレーザ光源では、1波長分の長さまでしか差が計測できない。
【0015】
ところが、上記のように、複数の波長のレーザ光源L1,L2,L3を使用し、個別に位相を測定するようにすると、光路長の変化は波長に依存するため、例えば図4に示すように、光路長の変化の位相との関係が2つのレーザ光源間で相互にずれてくる。したがって相互に波長が異なる複数の光源で計測された位相を組み合わせれば、1つの光源の波長以上の計測が可能になる。
【0016】
このような複数の波長のレーザ光を用いた位相シフト法による微小物体の計測では、例えば図5に示すように、光路長をΔL毎に移動させることにより明るさ変化のサイン波の位相θをΔL毎にコード化し、同コードの組み合わせで1波長以上の長さを計測するものである。
【0017】
例えば光の波長から、光源1では0−4の5段階で評価され、光源2では0-3の4段階で評価された場合、その組み合わせコードは20種類あるため、光源1の波長の4倍まで計測できることになる。したがって、例えば図6に示すような位相コード変換テーブルを作製しておくことにより、レーザ光の波長を超えた計測が可能になる。
【0018】
また、光源毎の明るさ変化の位相の計測は、計測する長さによらず、光源の波長内を数10分割した程度の計測で済むため、従来の白色光の干渉を使用する計測装置に比べて、大幅に計測時間を短縮することができることになる。
【0019】
【特許文献1】『ビジョン技術の実利用ワークショップ』VIEW 2006年 講演論文集第1頁−7頁「超精密3次元形状計測の最新動向−白色干渉における革新的アルゴリズムの開発とその応用−」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、上記位相コード変換テーブルの作製に当たっては、光の波長が光路長の移動量の整数倍でなかった場合の位相コードの変動や、位相計測時の計測精度、ノイズなどによる計測誤差への対応がなされておらず、これらの点を解決しない限り計測装置としての実用化は困難である。
【0021】
本願発明は、このような技術的課題に対応してなされたもので、上述した位相コード変換テーブル上の使用領域を制限することにより、上記計測誤差を吸収できるようにした微小物体の光学的な計測装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願発明は、同目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0023】
(1) 請求項1の発明
この発明は、観測光と対象光を含む複数の波長のレーザ光を発生するレーザ光発生手段と、該レーザ光発生手段からの観測光と対象光を測定物を介して干渉可能な状態で撮像装置に導く光学系と、該光学系の光路長を可変する光路長可変手段と、該光路長可変手段によって上記光学系の光路長を変えながら観測光と対象光との複数の干渉画像を撮像する撮像手段とを備え、上記複数の波長のレーザ光の各波長毎の干渉画像の画像内各点の明るさが変化する部分の位相を計測し、同計測された位相値の組み合わせによって測定物の大きさを計測するようにしてなる微小物体の光学的計測装置であって、上記計測された位相値を測定対象物の所定の測定区間毎に分割し、その区間の組み合わせを区間番号で表した位相変換テーブルによって解析することにより、使用するレーザ光の波長を超えた大きさの計測を行えるようにするとともに、予じめ上記位相変換テーブルの区間番号の組み合わせを粗にしておき、その空いた区間番号の組み合わせについては、同区間の近傍の組み合わせ番号で補間することにより、計測された位相値の誤差を吸収補正するようにしたことを特徴とするものである。
【0024】
測定対象物の大きさの変化に従って位相変換テーブル上での区間番号の変化は、同位相変換テーブル上を斜めに直線状に移動していく。そして、同位相変換テーブルの端に達すると、そこから組み合わせた複数のレーザ光の波長差分だけずれた場所に平行に次の区間番号の組み合わせが直線状に表れる。
【0025】
したがって、これら2つの直線の間を別の区間番号の組み合わせで埋めてしまわず、2つの直線の近い方に属する領域とすると、この区間番号間の波長差が位相変換テーブル上でn番分の距離があるとした場合、n/2番分の計測誤差の変化を吸収できることになる。
【0026】
このように、使用する位相変換テーブル上の所定の使用領域部分を制限することによって、組み合わせられる2つの直線の間に空き領域を設け、そこに近傍の直線上の組み合わせ番号を入れてデータ補間するようにすれば、上述した計測誤差などによる計測値の変動を吸収することができる。
【0027】
(2) 請求項2の発明
この発明は、上記請求項1の発明における位相変換テーブルは、使用するレーザ光源の数に応じたn次元構造となっていることを特徴としている。
【0028】
請求項1の発明の構成の位相変換テーブルは、2つの波長の2組のレーザ光源を用いる場合には2次テーブル、また3つの波長の3組のレーザ光源を用いた場合には、3次元テーブルとなるが、基本的な計測補間処理は同じであり、同様に処理することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上の結果、本願発明によると、光の波長が光路長の移動量の整数倍でなかった場合の位相コードの変動や、位相計測時の計測精度、ノイズの影響などによる計測誤差を吸収した高精度の計測が可能となり、十分に実用化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1〜図11は、上記のような特徴を備えた本願発明の最良の実施の形態に係る微小物体の光学的計測装置の構成を示している。
【0031】
同装置は、例えば図1に示されるように、複数の異なる波長のレーザ光を発生する第1,第2,第3のレーザ光発生手段(半導体レーザ)L1,L2,L3と、これら第1,第2,第3のレーザ光発生手段L1,L2,L3に対応した第1,第2,第3の撮像手段(CCDカメラ)C1,C2,C3と、第1,第2,第3,第4,第5のビームスプリッターB1,B2,B3,B4,B5と、参照光を形成する参照ミラーRMと、参照ミラーRMを回転させる回転駆動手段Dと、測定対象物(微小物体)Wと、該測定対象物Wを載置したナノステージSTと、該ナノステージSTを光軸方向に所定微小距離駆動し、光路長を変える光路長可変手段(圧電駆動型のピエゾアクチュエータ)Aとを設け、第1,第2,第3の複数のレーザ光発生手段L1,L2,L3から照射された複数の波長のレーザ光が第1,第2のビームスプリッターB1,B2部分で合流したあと、第3のビームスプリッターB3部分で測定対象物Wへの照射光と参照ミラーRMへの参照光との2つのレーザ光に分けられて照射されるようになっている。
【0032】
そして、測定対象物Wに当たった反射光は、再び第3のビームスプリッターB3で参照ミラーRMからの反射光と合流して、干渉像を作りながら、第4,第5のビームスプリッターB4,B5を通って、第1,第2,第3の撮像手段C1,C2,C3により撮像される。これら各撮像手段C1,C2,C3の前には、それぞれ各レーザ光源L1,L2,L3のレーザ光の波長にあった特性の第1,第2,第3の光学フィルタF1,F2,F3が装着されており、各レーザ光の波長毎の干渉像を撮像するようになっている。
【0033】
一方、測定対象物Wは上述のようにナノステージST上に載置されており、同測定対象物Wを載せたナノステージSTは、光路長可変手段Aによってナノレベルで駆動され、光路長を所望の距離ΔL毎に変化させるようになっている。例えば上記光路長を数10nm単位で変化させると、測定対象物Wからの反射光と参照光の干渉状態が変化するため、像の明るさが変わる。
【0034】
この像の明るさの変化は、例えば図2に示すように、光路長の変化量に応じてサイン波状に変化し、光路長の変化の1波長が周期となる。同光路長は、測定対象物Wの表面の凹凸に応じて場所毎に異なるため、図3から明らかなように、明暗の変化の仕方も場所によって違い、場所毎のサイン波状の明るさ変化の位相差となって表れる。したがって、この位相差を測定すると、測定対象物Wの高さhの差を計算することができる。
【0035】
明るさが変化するサイン波は波長の1周期で元に戻るので、結局1波長のレーザ光源では、1波長分の長さまでしか差が計測できない。ところが、上記のように、複数の波長のレーザ光源を使用し、個別に位相を測定するようにすると、光路長の変化は波長に依存するため、光路長の変化の位相との関係が波長λ1/2、λ2/2の2つのレーザ光源1(L1)、2(L2)間で、例えば図4に示すようにずれてくる。したがって、複数のレーザ光源1,2で計測された位相を組み合わせれば、1つの光源の波長以上の計測が可能になる。なお、図4中の横軸Xは位相の進み量を示している。
【0036】
この複数の波長の光源を用いた位相シフト法による微小物体の計測では、例えば図5に示すように、光路長をΔL毎に移動させることにより明るさ変化のサイン波の位相θをΔL毎にコード化し、同コード値の組み合わせで1波長以上の長さを計測する。
【0037】
レーザ光の波長から、光源1では0−4の5段階で評価され、光源2では0-3の4段階で評価された場合、その組み合わせコードは20種類あるため、光源1の波長の4倍まで計測することができる。そして、例えば先に述べた図6に示すような位相コード変換テーブルを用いることにより、レーザ光の波長を超えた計測が可能になる。また、光源毎の明るさ変化の位相の計測は、計測する長さによらず、光源の波長内を数10分割した程度の計測で済むため、従来の白色光の干渉を使用する計測装置に比べて、大幅に計測時間を短縮することができる。
【0038】
しかし、先にも述べたように、上記位相コード変換テーブルの作製にあたっては、光の波長Rが上記光路長の移動量ΔLの整数倍でなかった場合の位相コードの変動や、各位相計測時の計測精度やノイズなどによる計測誤差への対応が必要であり、そうでなければ実用に供し得ない。
【0039】
そこで、この実施の形態における位相変換コードテーブルでは、以下のような構成および作成方法が採用されている。
【0040】
すなわち、同位相コード変換テーブルでは、先ず1回のナノステージSTの作動する光路長の変化をΔLとするとき、それぞれの光源波長L毎に、ΔLで区分した位相コード(区間番号)を付ける。すなわち、レーザ光の波長をLとするとき、その位相コードは、0−L/ΔLのコードが付く。
【0041】
図6の2波長2組のレーザ光の組み合わせ例では、波長1のレーザ光では0−37の、波長2のレーザ光では0−43の値が付けられている。そして、(0,0)−(37,37)までの第1の直線状の組み合わせでテーブルの端に達すると、次の直線状の並びは(0,38)から始まり、(5,43)まで、そして次は・・・、と順次テーブル上を移り変わっていく。
【0042】
ところで、このように移り変わっていくとき、0から順次高さコードを付けていくならば、該高さコードは、最大図6のテーブル全体を一杯にするまで続き、この場合、38×44=1672までコード化することができる。したがって、1672×ΔLまでの高さを計測することができることになる。
【0043】
そして、具体的にこの位相コード変換テーブルを作製する方法としては、上記光路長可変手段によりナノステージSTを1672×ΔLの各々について全て移動させて、その時の個々のコードを求め、それら2つのレーザ光での組み合わせ位置に、そのときの光路長可変手段Aによる移動回数nを入れていけば良い。
【0044】
しかし、この方法では、光の波長Rが光路長の移動量ΔLの整数倍でなかった場合の位相コードの変動や位相自体の測定誤差が有った場合に、計測エラーとなる問題がある。
【0045】
そこで、この実施の形態では、例えば図7に示すように、予じめ上記図6の位相コード変換テーブルの区間番号の組み合わせを粗にしておき(計測範囲に幅を持たせるようにしておき)、その空いた区間番号の組み合わせについては、同区間の近傍の組み合わせ番号で補間することにより、位相コードの変動や測定誤差を吸収補正するようにしている。
【0046】
図8のフロチャート(ステップS1〜S9)は、このような観点から構成された本実施の形態における位相コード変換テーブルの具体的な構成方法を示している。
【0047】
すなわち、まず最初のステップS1で、上述したナノステージST上に平坦なミラーなどの測定対象物Wを載せて同ステージSTを所定の計測間隔(光路長可変間隔)ΔL毎に移動させるとともに、希望する測定レンジを動かし、移動量ΔL毎にその計測レンジ分の画像を撮像、記録する。
【0048】
次にステップS2に進み、その画面内の安定な位置で明るさを得て、その位置での位相コードCiを決める。すなわち、上記のようにして撮像された画像毎に、その前後の画像を使って位相を計測し、位相コードCiを得る。ここで位相コードCiは、例えば標準パターンとの正規化相関などの方法で求めたレーザ光の位相位置θiを、計測精度Δθで割った値とする。
【0049】
このようにして、レーザ光源毎に各高さでの位相コードCiが求められると、上記図10の位相コード変換テーブルの位相コードの組み合わせ位置に高さコードを入れる(図10の粗な位相コード変換テーブルの空き領域に書き込める限り書き込む)。
【0050】
位相コード変換テーブルは、使用するレーザ光源の数nによりn次元で構成される。光源が2つの2次元テーブルの例では上記図10のように、光源が3つの3次元テーブルの例では図11のようになっており、テーブルの枠の数は、レーザ光源毎に1周期を計測精度から決まる一定の値Δθで割った値となっている。
【0051】
次にステップS4では、このような位相コード変換テーブル中に上記ステップS2で求めた位相コードCiを組み合わせた点を求め、その間をつなぐと、例えば図7のように、各点は位相コードCiの組み合わせを座標値として見るとき原理的に直線(図7中のA,B,Cの2点鎖線部分を参照)になる。つまり、組み合わせコードは直線上に並ぶので、同位相コード変換テーブル上の位置を座標と見なして、近似直線の式を計算し、直線1本毎に誤差を補正する(補正を繰り返す)。
【0052】
この場合、上記変換テーブル上の位相コードCiの組み合わせ点は、直線状ではあるがとびとびに並ぶ。したがって、計測精度的にも多少の誤差が有るため、例えば続くステップS5では、最小自乗法などで近似直線を計算して、その直線上の全ての枠の組み合わせ位置全てに対して直線補間した高さコードを入れ、高さコードも線形補間して、中間の高さを入れる。
【0053】
しかし、この補間操作中において直線上の高さコードを入れる時、高さ値を入れる位置から誤差範囲として規定するn次元空間の±nの範囲のコードを入れる位置(±n区間の位置)にすでにその直線以外の所定の値が入っていた場合には、ステップS6に示すように、そこで補間操作を終了し、その直線のデータを削除する。
【0054】
以上のステップS3〜S6の処理は、ステップS7で各列毎に割り当てることができなくなったことが確認されるまで繰り返される。
【0055】
次に上述のようにして割り当てが完了すると、ステップS8に示すように直線状に高さコードを入れた後、空いた枠を、その枠に最も近接する高さコードで埋める。これには、例えば画像処理での太め処理が適用できる。このため同処理では、まず変換テーブルの前空間の空いている位置の前後±1の空間を調べ、そこにすでに高さコードがあればそれを移し、なければ空けたままとする。すなわち図7の位相コード変換テーブル上で空いている枠を探す。そして、空いてる枠があれば、同枠に対して当該図7の2次元テーブルの場合だと、例えば図9に示すような3×3の2次元ウィンドウを当てる。
【0056】
今、例えば図9の2次元ウインドウ(3×3)の真ん中のA0の枠が空いている枠であるとするとき、その真ん中と直前に値を入れた枠以外のウィンドウ位置を調べ、そこに、すでに高さコードが入っていれば、そのコードを移し、他方入っていなければ空けたままにしておく、という処理を空いた枠がなくなるまで何度も繰り返す(ステップS9)。そして、同位相コード変換コードテーブル中に空いた枠が無くなれば終了とする。
【0057】
これらの処理の結果、図7の2次元テーブルの場合、最終的に図10の様な位相コード変換テーブルが出来上る。
【0058】
また3つの波長の3組のレーザ光源を用いた場合、図11のような3次元的な変換テーブルが出来るが、この場合にも基本的な処理は同じであり、直線は同図11中に空間的に引かれるようになり、空いている枠へ埋める方法も、3×3×3の3次元ウィンドウ(図9のウインドウ3組の組合せ)を構成することになる(図11中の直線は省略)。
【0059】
以上の構成によれば、相互に波長を異にする複数のレーザ光源による干渉像の位相の組み合わせによる微小高さ計測装置において、位相計測値に多少の誤差が含まれていたり、位相計測値がコード化幅の整数倍でないなどのために多少のコード化誤差が出るような場合にも、それらの誤差を吸収した実用に供し得る正確かつ安定した計測を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本願発明の最良の実施の形態に係る微小物体の光学的計測装置の基本的な構成を示す図である。
【図2】同装置における光路長の変化に対応した測定対象物からの反射光と参照光との干渉状態の変化による測定画像の明るさ変化(サイン波状の変化)を示す説明図である。
【図3】同装置における測定画像の明るさ変化(サイン波状の変化)に対応した位相差Δθから測定対象物の高さの差を測定できることを示す説明図である。
【図4】同装置における複数のレーザ光の光路長変化による明るさ変化が、レーザ光の波長によって決まるため、複数のレーザ光を組み合わせることにより、波長以上の計測ができることを示す説明図である。
【図5】同装置において光路長をΔL毎に移動させて明るさ変化のサイン波の位相θをΔL毎にコード化し、同コードの組み合わせで1波長以上の長さを計測する場合のコード化方法を示す説明図である。
【図6】同装置における位相コードを高さに変換する位相コード変換テーブルの構成を示す図である。
【図7】同装置における多少の測定誤差などに対応できるようにするためのレーザ光源の数n(n=2)に対応したn次元テーブル(2次テーブル)の基本構成を示す図である。
【図8】同装置における最終的な位相コード変換テーブルの形成方法を示すフロチャートである。
【図9】同装置における位相コード変換テーブルの形成過程において使用される2次元ウインド(3×3)を示す図である。
【図10】同装置における位相コード変換テーブルの形成過程において、同テーブル上に空いた枠が無くなった2光源2波長時の2次元テーブルの例を示す図である。
【図11】同装置における位相コード変換テーブルの形成過程において、同テーブル上に空いた枠が無くなった3光源3波長時の3次元テーブルの例を示す図である。
【図12】従来の白色光源による微小物体の光学的計測装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
L1〜L3は第1〜第3のレーザ光源、B1〜B5は第1〜第5のビームスプリッター、C1〜C3は第1〜第3のCCDカメラ、F1〜F3は第1〜第3の光学フィルタ、RMは参照光ミラー、Dは回転駆動手段、STは測定対象物Wを載置したナノメータステージ、Aは光路長可変手段である。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、微小物体の大きさを光学的に計測する微小物体の光学的計測装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、微小物体の所定の位置間の段差や3次元形状、例えば半導体や液晶ディスプレーの製造ライン、マイクロマシンなどの製造ラインにおけるナノメータレベルでのパターン間の段差や微小な機構部分の高さを光学的に計測する微小物体の計測装置として、例えば光源に白色光源を用い、当該白色光源からの白色光の干渉を利用して計測するものが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
白色光源は、合成光の光源であるから多数の波長の光を発生させる。したがって、同白色光源からの多数の波長の光を上記のような測定対象物上で干渉させた場合、干渉により光が強め合う位置は、当該物体上の非常に短い区間となる。
【0004】
そこで、例えばCCDカメラなどの固体撮像手段により測定対象物を撮像しながら光学系を上下に動かして光路長を変え、撮像された測定対象物の画像内の各点で、その光量が最大になった時の光学系上の位置を求めるようにすれば、計測対象である微小物体表面の、例えば凹凸形状等の3次元形状を計測することができる。
【0005】
今例えば図12に、そのような構成を採用した従来の微小物体の計測装置の具体的な構成を示す。
【0006】
図12中、符号1は上記ナノレベルの微小な測定対象物、2は同測定対象物1を臨むCCDカメラ6からの光学系路上の位置に設けられていて、上記測定対象物1からの反射光を集光する対物レンズ、3は上記対物レンズ2を上記光学系路上においてフォーカス方向(光軸方向)に微小駆動することによって光路長を変える例えばピエゾアクチュエータよりなる光路長可変手段、4はハーフミラー4aを備え、白色光源5からの光を上記対物レンズ2を通して測定対象物に照射するビームスプリッター、6は上記測定対象物1からの反射光を対物レンズ2を介して収束させながら上記ビームスプリッター4を介して受光素子部分に入力し、上記測定対象物1の画像を得るCCDカメラである。
【0007】
しかし、上記従来の計測装置は、原理的にナノメートル単位の計測精度での光学系路上の位置決めを必要とするため、例えば数10マイクロメートルの測定対象物の高さを測定しようとした場合、数100回の位置決め工程を必要とし、相当に長い計測時間が必要となる。
【0008】
したがって、上記従来の計測装置では、必要な計測精度が高くなるほど、また必要な計測レンジが広くなるほど、多大な計測時間を要することになり、極めて計測効率が悪く、半導体製造ライン等の製造効率向上の妨げとなっている。
【0009】
そこで、これを解消するために、例えば図1に示されるように複数の異なる波長のレーザ光を発生する第1,第2,第3の複数のレーザ光発生手段L1,L2,L3とこれら第1,第2,第3の複数のレーザ光発生手段L1,L2,L3に対応した第1,第2,第3の複数の撮像手段C1,C2,C3とを設け、第1,第2,第3の複数のレーザ光発生手段L1,L2,L3から照射されたレーザ光が第1,第2のビームスプリッターB1,B2部分で合流したあと、第3のビームスプリッターで測定対象物体への照射光とミラーへの参照光との2つのレーザ光に分けられて照射されるようにする。
【0010】
そして、測定対象物に当たった反射光は、再び第3のビームスプリッターB3でミラーMからの反射光と合流して、干渉像を作りながら、第4,第5のビームスプリッターB4,B5を通って、第1,第2,第3の撮像手段C1,C2,C3により撮像されるようにする。
【0011】
これら第1〜第3の各撮像手段C1,C2,C3の前には、それぞれ各レーザ光の波長にあった特性の光学フィルタF1〜F3が装着されており、各レーザ光の波長毎の干渉像を撮像する。
【0012】
一方、測定対象物は所定のステージST上に載置されており、同測定対象物を載せたステージSTは、ピエゾ素子などで駆動され、光路長を所望に変化させるようになっている。光路長を数10nm単位で変化させると、資料からの反射光と参照光との干渉状態が変化するために、像の明るさが変わる。この変化は、光路長の変化量に応じて図2のようにサイン波状に変化し、光路長の変化の1波長が周期となる。
【0013】
同光路長は、測定対象物表面の凹凸に応じて場所毎に異なるため、明暗の変化の仕方も場所によって違い、場所毎のサイン波状の明るさ変化の位相差となって表れる。したがって、図3のように、この位相差を測定すると、高さの差を計算することができることになる。
【0014】
しかし、上記明るさが変化するサイン波は波長の一周期で元に戻るので、結局1波長のレーザ光源では、1波長分の長さまでしか差が計測できない。
【0015】
ところが、上記のように、複数の波長のレーザ光源L1,L2,L3を使用し、個別に位相を測定するようにすると、光路長の変化は波長に依存するため、例えば図4に示すように、光路長の変化の位相との関係が2つのレーザ光源間で相互にずれてくる。したがって相互に波長が異なる複数の光源で計測された位相を組み合わせれば、1つの光源の波長以上の計測が可能になる。
【0016】
このような複数の波長のレーザ光を用いた位相シフト法による微小物体の計測では、例えば図5に示すように、光路長をΔL毎に移動させることにより明るさ変化のサイン波の位相θをΔL毎にコード化し、同コードの組み合わせで1波長以上の長さを計測するものである。
【0017】
例えば光の波長から、光源1では0−4の5段階で評価され、光源2では0-3の4段階で評価された場合、その組み合わせコードは20種類あるため、光源1の波長の4倍まで計測できることになる。したがって、例えば図6に示すような位相コード変換テーブルを作製しておくことにより、レーザ光の波長を超えた計測が可能になる。
【0018】
また、光源毎の明るさ変化の位相の計測は、計測する長さによらず、光源の波長内を数10分割した程度の計測で済むため、従来の白色光の干渉を使用する計測装置に比べて、大幅に計測時間を短縮することができることになる。
【0019】
【特許文献1】『ビジョン技術の実利用ワークショップ』VIEW 2006年 講演論文集第1頁−7頁「超精密3次元形状計測の最新動向−白色干渉における革新的アルゴリズムの開発とその応用−」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、上記位相コード変換テーブルの作製に当たっては、光の波長が光路長の移動量の整数倍でなかった場合の位相コードの変動や、位相計測時の計測精度、ノイズなどによる計測誤差への対応がなされておらず、これらの点を解決しない限り計測装置としての実用化は困難である。
【0021】
本願発明は、このような技術的課題に対応してなされたもので、上述した位相コード変換テーブル上の使用領域を制限することにより、上記計測誤差を吸収できるようにした微小物体の光学的な計測装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願発明は、同目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0023】
(1) 請求項1の発明
この発明は、観測光と対象光を含む複数の波長のレーザ光を発生するレーザ光発生手段と、該レーザ光発生手段からの観測光と対象光を測定物を介して干渉可能な状態で撮像装置に導く光学系と、該光学系の光路長を可変する光路長可変手段と、該光路長可変手段によって上記光学系の光路長を変えながら観測光と対象光との複数の干渉画像を撮像する撮像手段とを備え、上記複数の波長のレーザ光の各波長毎の干渉画像の画像内各点の明るさが変化する部分の位相を計測し、同計測された位相値の組み合わせによって測定物の大きさを計測するようにしてなる微小物体の光学的計測装置であって、上記計測された位相値を測定対象物の所定の測定区間毎に分割し、その区間の組み合わせを区間番号で表した位相変換テーブルによって解析することにより、使用するレーザ光の波長を超えた大きさの計測を行えるようにするとともに、予じめ上記位相変換テーブルの区間番号の組み合わせを粗にしておき、その空いた区間番号の組み合わせについては、同区間の近傍の組み合わせ番号で補間することにより、計測された位相値の誤差を吸収補正するようにしたことを特徴とするものである。
【0024】
測定対象物の大きさの変化に従って位相変換テーブル上での区間番号の変化は、同位相変換テーブル上を斜めに直線状に移動していく。そして、同位相変換テーブルの端に達すると、そこから組み合わせた複数のレーザ光の波長差分だけずれた場所に平行に次の区間番号の組み合わせが直線状に表れる。
【0025】
したがって、これら2つの直線の間を別の区間番号の組み合わせで埋めてしまわず、2つの直線の近い方に属する領域とすると、この区間番号間の波長差が位相変換テーブル上でn番分の距離があるとした場合、n/2番分の計測誤差の変化を吸収できることになる。
【0026】
このように、使用する位相変換テーブル上の所定の使用領域部分を制限することによって、組み合わせられる2つの直線の間に空き領域を設け、そこに近傍の直線上の組み合わせ番号を入れてデータ補間するようにすれば、上述した計測誤差などによる計測値の変動を吸収することができる。
【0027】
(2) 請求項2の発明
この発明は、上記請求項1の発明における位相変換テーブルは、使用するレーザ光源の数に応じたn次元構造となっていることを特徴としている。
【0028】
請求項1の発明の構成の位相変換テーブルは、2つの波長の2組のレーザ光源を用いる場合には2次テーブル、また3つの波長の3組のレーザ光源を用いた場合には、3次元テーブルとなるが、基本的な計測補間処理は同じであり、同様に処理することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上の結果、本願発明によると、光の波長が光路長の移動量の整数倍でなかった場合の位相コードの変動や、位相計測時の計測精度、ノイズの影響などによる計測誤差を吸収した高精度の計測が可能となり、十分に実用化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1〜図11は、上記のような特徴を備えた本願発明の最良の実施の形態に係る微小物体の光学的計測装置の構成を示している。
【0031】
同装置は、例えば図1に示されるように、複数の異なる波長のレーザ光を発生する第1,第2,第3のレーザ光発生手段(半導体レーザ)L1,L2,L3と、これら第1,第2,第3のレーザ光発生手段L1,L2,L3に対応した第1,第2,第3の撮像手段(CCDカメラ)C1,C2,C3と、第1,第2,第3,第4,第5のビームスプリッターB1,B2,B3,B4,B5と、参照光を形成する参照ミラーRMと、参照ミラーRMを回転させる回転駆動手段Dと、測定対象物(微小物体)Wと、該測定対象物Wを載置したナノステージSTと、該ナノステージSTを光軸方向に所定微小距離駆動し、光路長を変える光路長可変手段(圧電駆動型のピエゾアクチュエータ)Aとを設け、第1,第2,第3の複数のレーザ光発生手段L1,L2,L3から照射された複数の波長のレーザ光が第1,第2のビームスプリッターB1,B2部分で合流したあと、第3のビームスプリッターB3部分で測定対象物Wへの照射光と参照ミラーRMへの参照光との2つのレーザ光に分けられて照射されるようになっている。
【0032】
そして、測定対象物Wに当たった反射光は、再び第3のビームスプリッターB3で参照ミラーRMからの反射光と合流して、干渉像を作りながら、第4,第5のビームスプリッターB4,B5を通って、第1,第2,第3の撮像手段C1,C2,C3により撮像される。これら各撮像手段C1,C2,C3の前には、それぞれ各レーザ光源L1,L2,L3のレーザ光の波長にあった特性の第1,第2,第3の光学フィルタF1,F2,F3が装着されており、各レーザ光の波長毎の干渉像を撮像するようになっている。
【0033】
一方、測定対象物Wは上述のようにナノステージST上に載置されており、同測定対象物Wを載せたナノステージSTは、光路長可変手段Aによってナノレベルで駆動され、光路長を所望の距離ΔL毎に変化させるようになっている。例えば上記光路長を数10nm単位で変化させると、測定対象物Wからの反射光と参照光の干渉状態が変化するため、像の明るさが変わる。
【0034】
この像の明るさの変化は、例えば図2に示すように、光路長の変化量に応じてサイン波状に変化し、光路長の変化の1波長が周期となる。同光路長は、測定対象物Wの表面の凹凸に応じて場所毎に異なるため、図3から明らかなように、明暗の変化の仕方も場所によって違い、場所毎のサイン波状の明るさ変化の位相差となって表れる。したがって、この位相差を測定すると、測定対象物Wの高さhの差を計算することができる。
【0035】
明るさが変化するサイン波は波長の1周期で元に戻るので、結局1波長のレーザ光源では、1波長分の長さまでしか差が計測できない。ところが、上記のように、複数の波長のレーザ光源を使用し、個別に位相を測定するようにすると、光路長の変化は波長に依存するため、光路長の変化の位相との関係が波長λ1/2、λ2/2の2つのレーザ光源1(L1)、2(L2)間で、例えば図4に示すようにずれてくる。したがって、複数のレーザ光源1,2で計測された位相を組み合わせれば、1つの光源の波長以上の計測が可能になる。なお、図4中の横軸Xは位相の進み量を示している。
【0036】
この複数の波長の光源を用いた位相シフト法による微小物体の計測では、例えば図5に示すように、光路長をΔL毎に移動させることにより明るさ変化のサイン波の位相θをΔL毎にコード化し、同コード値の組み合わせで1波長以上の長さを計測する。
【0037】
レーザ光の波長から、光源1では0−4の5段階で評価され、光源2では0-3の4段階で評価された場合、その組み合わせコードは20種類あるため、光源1の波長の4倍まで計測することができる。そして、例えば先に述べた図6に示すような位相コード変換テーブルを用いることにより、レーザ光の波長を超えた計測が可能になる。また、光源毎の明るさ変化の位相の計測は、計測する長さによらず、光源の波長内を数10分割した程度の計測で済むため、従来の白色光の干渉を使用する計測装置に比べて、大幅に計測時間を短縮することができる。
【0038】
しかし、先にも述べたように、上記位相コード変換テーブルの作製にあたっては、光の波長Rが上記光路長の移動量ΔLの整数倍でなかった場合の位相コードの変動や、各位相計測時の計測精度やノイズなどによる計測誤差への対応が必要であり、そうでなければ実用に供し得ない。
【0039】
そこで、この実施の形態における位相変換コードテーブルでは、以下のような構成および作成方法が採用されている。
【0040】
すなわち、同位相コード変換テーブルでは、先ず1回のナノステージSTの作動する光路長の変化をΔLとするとき、それぞれの光源波長L毎に、ΔLで区分した位相コード(区間番号)を付ける。すなわち、レーザ光の波長をLとするとき、その位相コードは、0−L/ΔLのコードが付く。
【0041】
図6の2波長2組のレーザ光の組み合わせ例では、波長1のレーザ光では0−37の、波長2のレーザ光では0−43の値が付けられている。そして、(0,0)−(37,37)までの第1の直線状の組み合わせでテーブルの端に達すると、次の直線状の並びは(0,38)から始まり、(5,43)まで、そして次は・・・、と順次テーブル上を移り変わっていく。
【0042】
ところで、このように移り変わっていくとき、0から順次高さコードを付けていくならば、該高さコードは、最大図6のテーブル全体を一杯にするまで続き、この場合、38×44=1672までコード化することができる。したがって、1672×ΔLまでの高さを計測することができることになる。
【0043】
そして、具体的にこの位相コード変換テーブルを作製する方法としては、上記光路長可変手段によりナノステージSTを1672×ΔLの各々について全て移動させて、その時の個々のコードを求め、それら2つのレーザ光での組み合わせ位置に、そのときの光路長可変手段Aによる移動回数nを入れていけば良い。
【0044】
しかし、この方法では、光の波長Rが光路長の移動量ΔLの整数倍でなかった場合の位相コードの変動や位相自体の測定誤差が有った場合に、計測エラーとなる問題がある。
【0045】
そこで、この実施の形態では、例えば図7に示すように、予じめ上記図6の位相コード変換テーブルの区間番号の組み合わせを粗にしておき(計測範囲に幅を持たせるようにしておき)、その空いた区間番号の組み合わせについては、同区間の近傍の組み合わせ番号で補間することにより、位相コードの変動や測定誤差を吸収補正するようにしている。
【0046】
図8のフロチャート(ステップS1〜S9)は、このような観点から構成された本実施の形態における位相コード変換テーブルの具体的な構成方法を示している。
【0047】
すなわち、まず最初のステップS1で、上述したナノステージST上に平坦なミラーなどの測定対象物Wを載せて同ステージSTを所定の計測間隔(光路長可変間隔)ΔL毎に移動させるとともに、希望する測定レンジを動かし、移動量ΔL毎にその計測レンジ分の画像を撮像、記録する。
【0048】
次にステップS2に進み、その画面内の安定な位置で明るさを得て、その位置での位相コードCiを決める。すなわち、上記のようにして撮像された画像毎に、その前後の画像を使って位相を計測し、位相コードCiを得る。ここで位相コードCiは、例えば標準パターンとの正規化相関などの方法で求めたレーザ光の位相位置θiを、計測精度Δθで割った値とする。
【0049】
このようにして、レーザ光源毎に各高さでの位相コードCiが求められると、上記図10の位相コード変換テーブルの位相コードの組み合わせ位置に高さコードを入れる(図10の粗な位相コード変換テーブルの空き領域に書き込める限り書き込む)。
【0050】
位相コード変換テーブルは、使用するレーザ光源の数nによりn次元で構成される。光源が2つの2次元テーブルの例では上記図10のように、光源が3つの3次元テーブルの例では図11のようになっており、テーブルの枠の数は、レーザ光源毎に1周期を計測精度から決まる一定の値Δθで割った値となっている。
【0051】
次にステップS4では、このような位相コード変換テーブル中に上記ステップS2で求めた位相コードCiを組み合わせた点を求め、その間をつなぐと、例えば図7のように、各点は位相コードCiの組み合わせを座標値として見るとき原理的に直線(図7中のA,B,Cの2点鎖線部分を参照)になる。つまり、組み合わせコードは直線上に並ぶので、同位相コード変換テーブル上の位置を座標と見なして、近似直線の式を計算し、直線1本毎に誤差を補正する(補正を繰り返す)。
【0052】
この場合、上記変換テーブル上の位相コードCiの組み合わせ点は、直線状ではあるがとびとびに並ぶ。したがって、計測精度的にも多少の誤差が有るため、例えば続くステップS5では、最小自乗法などで近似直線を計算して、その直線上の全ての枠の組み合わせ位置全てに対して直線補間した高さコードを入れ、高さコードも線形補間して、中間の高さを入れる。
【0053】
しかし、この補間操作中において直線上の高さコードを入れる時、高さ値を入れる位置から誤差範囲として規定するn次元空間の±nの範囲のコードを入れる位置(±n区間の位置)にすでにその直線以外の所定の値が入っていた場合には、ステップS6に示すように、そこで補間操作を終了し、その直線のデータを削除する。
【0054】
以上のステップS3〜S6の処理は、ステップS7で各列毎に割り当てることができなくなったことが確認されるまで繰り返される。
【0055】
次に上述のようにして割り当てが完了すると、ステップS8に示すように直線状に高さコードを入れた後、空いた枠を、その枠に最も近接する高さコードで埋める。これには、例えば画像処理での太め処理が適用できる。このため同処理では、まず変換テーブルの前空間の空いている位置の前後±1の空間を調べ、そこにすでに高さコードがあればそれを移し、なければ空けたままとする。すなわち図7の位相コード変換テーブル上で空いている枠を探す。そして、空いてる枠があれば、同枠に対して当該図7の2次元テーブルの場合だと、例えば図9に示すような3×3の2次元ウィンドウを当てる。
【0056】
今、例えば図9の2次元ウインドウ(3×3)の真ん中のA0の枠が空いている枠であるとするとき、その真ん中と直前に値を入れた枠以外のウィンドウ位置を調べ、そこに、すでに高さコードが入っていれば、そのコードを移し、他方入っていなければ空けたままにしておく、という処理を空いた枠がなくなるまで何度も繰り返す(ステップS9)。そして、同位相コード変換コードテーブル中に空いた枠が無くなれば終了とする。
【0057】
これらの処理の結果、図7の2次元テーブルの場合、最終的に図10の様な位相コード変換テーブルが出来上る。
【0058】
また3つの波長の3組のレーザ光源を用いた場合、図11のような3次元的な変換テーブルが出来るが、この場合にも基本的な処理は同じであり、直線は同図11中に空間的に引かれるようになり、空いている枠へ埋める方法も、3×3×3の3次元ウィンドウ(図9のウインドウ3組の組合せ)を構成することになる(図11中の直線は省略)。
【0059】
以上の構成によれば、相互に波長を異にする複数のレーザ光源による干渉像の位相の組み合わせによる微小高さ計測装置において、位相計測値に多少の誤差が含まれていたり、位相計測値がコード化幅の整数倍でないなどのために多少のコード化誤差が出るような場合にも、それらの誤差を吸収した実用に供し得る正確かつ安定した計測を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本願発明の最良の実施の形態に係る微小物体の光学的計測装置の基本的な構成を示す図である。
【図2】同装置における光路長の変化に対応した測定対象物からの反射光と参照光との干渉状態の変化による測定画像の明るさ変化(サイン波状の変化)を示す説明図である。
【図3】同装置における測定画像の明るさ変化(サイン波状の変化)に対応した位相差Δθから測定対象物の高さの差を測定できることを示す説明図である。
【図4】同装置における複数のレーザ光の光路長変化による明るさ変化が、レーザ光の波長によって決まるため、複数のレーザ光を組み合わせることにより、波長以上の計測ができることを示す説明図である。
【図5】同装置において光路長をΔL毎に移動させて明るさ変化のサイン波の位相θをΔL毎にコード化し、同コードの組み合わせで1波長以上の長さを計測する場合のコード化方法を示す説明図である。
【図6】同装置における位相コードを高さに変換する位相コード変換テーブルの構成を示す図である。
【図7】同装置における多少の測定誤差などに対応できるようにするためのレーザ光源の数n(n=2)に対応したn次元テーブル(2次テーブル)の基本構成を示す図である。
【図8】同装置における最終的な位相コード変換テーブルの形成方法を示すフロチャートである。
【図9】同装置における位相コード変換テーブルの形成過程において使用される2次元ウインド(3×3)を示す図である。
【図10】同装置における位相コード変換テーブルの形成過程において、同テーブル上に空いた枠が無くなった2光源2波長時の2次元テーブルの例を示す図である。
【図11】同装置における位相コード変換テーブルの形成過程において、同テーブル上に空いた枠が無くなった3光源3波長時の3次元テーブルの例を示す図である。
【図12】従来の白色光源による微小物体の光学的計測装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
L1〜L3は第1〜第3のレーザ光源、B1〜B5は第1〜第5のビームスプリッター、C1〜C3は第1〜第3のCCDカメラ、F1〜F3は第1〜第3の光学フィルタ、RMは参照光ミラー、Dは回転駆動手段、STは測定対象物Wを載置したナノメータステージ、Aは光路長可変手段である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測光と対象光を含む複数の波長のレーザ光を発生するレーザ光発生手段と、該レーザ光発生手段からの観測光と対象光を測定物を介して干渉可能な状態で撮像装置に導く光学系と、該光学系の光路長を可変する光路長可変手段と、該光路長可変手段によって上記光学系の光路長を変えながら観測光と対象光との複数の干渉画像を撮像する撮像手段とを備え、上記複数の波長のレーザ光の各波長毎の干渉画像の画像内各点の明るさが変化する部分の位相を計測し、同計測された位相値の組み合わせによって測定物の大きさを計測するようにしてなる微小物体の光学的計測装置であって、上記計測された位相値を測定対象物の所定の測定区間毎に分割し、その区間の組み合わせを区間番号で表した位相変換テーブルによって解析することにより、使用するレーザ光の波長を超えた大きさの計測を行えるようにするとともに、予じめ上記位相変換テーブルの区間番号の組み合わせを粗にしておき、その空いた区間番号の組み合わせについては、同区間の近傍の組み合わせ番号で補間することにより、計測された位相値の誤差を吸収補正するようにしたことを特徴とする微小物体の光学的計測装置。
【請求項2】
位相変換テーブルは、使用するレーザ光源の数に応じたn次元構造となっていることを特徴とする請求項1記載の微小物体の光学的計測装置。
【請求項1】
観測光と対象光を含む複数の波長のレーザ光を発生するレーザ光発生手段と、該レーザ光発生手段からの観測光と対象光を測定物を介して干渉可能な状態で撮像装置に導く光学系と、該光学系の光路長を可変する光路長可変手段と、該光路長可変手段によって上記光学系の光路長を変えながら観測光と対象光との複数の干渉画像を撮像する撮像手段とを備え、上記複数の波長のレーザ光の各波長毎の干渉画像の画像内各点の明るさが変化する部分の位相を計測し、同計測された位相値の組み合わせによって測定物の大きさを計測するようにしてなる微小物体の光学的計測装置であって、上記計測された位相値を測定対象物の所定の測定区間毎に分割し、その区間の組み合わせを区間番号で表した位相変換テーブルによって解析することにより、使用するレーザ光の波長を超えた大きさの計測を行えるようにするとともに、予じめ上記位相変換テーブルの区間番号の組み合わせを粗にしておき、その空いた区間番号の組み合わせについては、同区間の近傍の組み合わせ番号で補間することにより、計測された位相値の誤差を吸収補正するようにしたことを特徴とする微小物体の光学的計測装置。
【請求項2】
位相変換テーブルは、使用するレーザ光源の数に応じたn次元構造となっていることを特徴とする請求項1記載の微小物体の光学的計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−52989(P2009−52989A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219054(P2007−219054)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省四国経済産業局委託研究「地域新生コンソーシアム研究開発事業(多波長レーザ干渉の位相コード化による広レンジナノ計測器の開発)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(390000594)隆祥産業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省四国経済産業局委託研究「地域新生コンソーシアム研究開発事業(多波長レーザ干渉の位相コード化による広レンジナノ計測器の開発)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(390000594)隆祥産業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】
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