説明

微生物を用いたピペリジン誘導体の製造方法

【課題】微生物触媒によりピペリジン誘導体である4−(4−(4−ヒドロキシジフェニル)−1−ピペリジニル)−1−ヒドロキシブチル)−α,α−ジメチルフェニル酢酸,4−[4−[4−(ジフェニルメトキシ)−1−ピペリジニル]−オキソブチル]−α,α−ジメチルフェニル酢酸を製造する。
【解決手段】目的物質の前駆体を酸化する能力のある以下の微生物。Streptomyces rimosus,Stemphylium consortiale,Gliocladium deliquescens,他。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2000年11月8日に出願された米国特許出願第09/708,959号の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
本出願は微生物を用いたピペリジン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
テルフェナジン(terfenadine)、1-(p-tert-ブチルフェニル)-4-[4'-(α-ヒドロキシジフェニルメチル)-1'-ピペリジニル]-ブタノールは鎮静性のない抗ヒスタミンである。この物質はインビトロおよびインビボの両方において抗コリン作用、抗セロトニン作用、および抗アドレナリン作用効果のいずれも全くない特異的なH1-受容体アンタゴニストであることが報告されている。D.マクタビッシュ(D. McTavish)、K. L.ゴア(K. L. Goa)、M.フェリール(M. Ferrill)、Drugs、1990、39、552(非特許文献1);C. R.キングソービング(C. R. Kingsolving)、N. L.モンロー(N. L. Monroe)、A. A.カー(A. A. Carr)、Pharmacologist、1973、15、221(非特許文献2);J. K.ウッドワード(J. K. Woodward)、N. L.モンロー(N. L. Munro)、Arzniem-Forsch、1982、32、1154(非特許文献3);K. V.マン(K. V. Mann)、K. J.ティーツェ(K. J. Tietz)、Clin. Pharm. 1989、6、331(非特許文献4)を参照のこと。テルフェナジン類似体の構造と活性の関係の調査には多大な努力が払われており、これはこの化合物および関連する構造を開示する以下の多くの米国特許において反映されている:
ジブコビック(Zivkovic)に付与された米国特許第3,687,956号(特許文献1)、
カー(Carr)らに付与された米国特許第3,806,526号(特許文献2)、
カー(Carr)らに付与された米国特許第3,829,433号(特許文献3)、
カー(Carr)らに付与された米国特許第3,862,173号(特許文献4)、
カー(Carr)らに付与された米国特許第3,878,217号(特許文献5)、
ダンカン(Duncan)らに付与された米国特許第3,922,276号(特許文献6)、
カー(Carr)らに付与された米国特許第3,931,197号(特許文献7)、
カー(Carr)らに付与された米国特許第3,941,795号(特許文献8)、
カー(Carr)らに付与された米国特許第3,946,022号(特許文献9)、
ダンカン(Duncan)らに付与された米国特許第3,956,296号(特許文献10)、
カー(Carr)らに付与された米国特許第3,965,257号(特許文献11)、
フォーセット(Fawcett)らに付与された米国特許第4,742,175号(特許文献12)。
【0004】
動物およびヒトの代謝研究では、テルフェナジンは広範な肝臓初回通過代謝を受け、通常の投与量では、非常に高感度な分析を使用しない限り血漿中では検出てきないことが示されている。特異的な肝臓シトクロムP450酵素はテルフェナジンを主な代謝産物4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α-α-ジメチルフェニル酢酸(テルフェナジンカルボン酸代謝産物としても周知)に転化する。この代謝産物は血漿中で容易に検出することができ、経口投与されたテルフェナジンの活性形態であると考えられる。
【0005】
テルフェナジンに関して報告されている副作用は心不整脈(心室性不整頻脈、トルサード・ド・ポワント、心室細動)、鎮静、GI窮迫、口渇、便秘および/または下痢である。これらの中で最も重篤で命にかかわることもあるのは心不整脈である。この心不整脈はテルフェナジンが心臓QT間隔を長くする能力に関連し、肝臓疾患に罹患する患者にテルフェナジンを投与した場合、患者が抗真菌性薬ケトコナゾールまたは抗生物質エリスロマイシンも摂取した場合においてのみ報告されている。
【0006】
肝機能障害のある患者および肝酵素の機能を抑制することが知られている抗生物質も摂取した患者においてテルフェナジンの心臓の副作用が報告されているため、心臓の副作用はテルフェナジンの蓄積によるものであり、テルフェナジンカルボン酸代謝産物の蓄積によるものではないと考えられていた。単離されたネコの心室筋細胞におけるパッチクランプ試験では、心臓の副作用の原因はテルフェナジンでありカルボン酸代謝産物ではないという主張が支持される。1μMの濃度では、テルフェナジンは遅延整流カリウム電流の90%を超える阻害を引き起こした。5μMまでの濃度では、テルフェナジンカルボン酸代謝産物はこの分析においてカリウム電流に有意の影響を与えなかった(R. L.ウースレィ(R. L. Woosley)、Y.チェン(Y. Chen)、J. P.フリーマン(J. P. Frieman)およびR. A.ギリス(R. A. Gillis)、JAMA 1993、269、1532(非特許文献5)を参照のこと)。イオン輸送の阻害は不整脈などの心臓の異常につながるので、これらの結果から、テルフェナジンカルボン酸は、テルフェナジン自体によりそのような副作用が引き起こされる明確な危険のある投与レベルでは心臓不整脈を引き起こさない可能性が高いことが示される。
【0007】
カレバスチン(carebastine)、4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-オキソブチル]-α,α-ジメチルフェニル酢酸は、エバスチン(ebastine)、1-(p-tert-ブチルフェニル)-4-[4'-(α-ジフェニルメトキシ)-1'-ピペリジニル]-ブタノールのカルボン酸代謝産物である。どちらの化合物も強い選択性ヒスタミンH1-受容体ブロック特性およびカルシウムアンタゴニスト特性を有し、様々な呼吸器系の疾患、アレルギー疾患、および心血管疾患の症状の治療に有効であることが証明されると思われる。
【0008】
これらの化合物はインビトロおよびインビボで気管支および血管の平滑筋を緩和し、ノルアドレナリン、カリウムイオンおよび様々な他の作用薬による収縮筋への影響を阻害する。これらの化合物はまた、ヒスタミン、アセチルコリンおよび塩化バリウムに対する腸および気管標本の応答を阻害し、モルモットでは経口投与された1kgの動物体重あたり1mg未満の投与量のヒスタミンエアロゾルにより誘起される気管支収縮を遮断する。これらの化合物はまた、ラットでは抗アナフィラシー特性を有し、様々なアナフィラキシー媒介物(ヒスタミン、5-ヒドロキシトリプトアミン、ブラジキニン、LCD4など)に対する皮膚病変を阻害し、感受性を有するモルモットではシュルツ・デール応答を弱める。
【0009】
テルフェナジンカルボン酸代謝産物に関連するピペリジン誘導体は以下の米国特許に開示されている:
カー(Carr)らに付与された米国特許第4,254,129号(特許文献13)、
カー(Carr)らに付与された米国特許第4,254,130号(特許文献14)、
カー(Carr)らに付与された米国特許第4,285,957号(特許文献15)、
カー(Carr)らに付与された米国特許第4,285,958号(特許文献16)。
これらの特許では、4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸および関連化合物は、以下の化学式:
【化17】

の置換ピペリジン誘導体を、以下の化学式:
【化18】

のα-ハロアルキル置換フェニルケトンとアルキル化することにより調製されている。式中、置換ハロ(halo)、R1、R2、n、Z、R6は米国特許第4,254,130号(特許文献14)の6段において説明されている。
【0010】
同様に、ソート(Soto)らに付与された米国特許第4,550,116号(特許文献17)では、α-ハロアルキル置換フェニルケトンを以下の化学式:
【化19】

の置換ヒドロキシピペリジン誘導体と反応させることによりカレバスチンに関連するピペリジン誘導体を調製することが説明されている。
【0011】
米国特許第4,254,130号(特許文献14)では、Zが水素であるα-ハロアルキル置換フェニルケトンは、フリーデル-クラフツ(Friedel-Crafts)アシル化の一般的な条件下で、α,α-ジメチルフェニル酢酸の適当な直鎖または分枝低アルキルC1-6エステルを以下の化学式:
【化20】

(式中、ハロ(halo)およびmは米国特許第5,254,129号(特許文献18)の11段で説明されている)の化合物と反応させることにより調製されることが示されている。反応は好ましい溶媒として二硫化炭素中で行われる。
【0012】
テルフェナジンカルボン酸代謝産物を合成により製造するための他の手順は米国特許第5,578,610号(特許文献19)、第5,581,011号(特許文献20)、第5,589,487号(特許文献21)、第5,663,412号(特許文献22)、第5,750,703号(特許文献23)および第5,994,549号(特許文献24)、ならびに国際公開公報第95/00492号(特許文献25)、国際公開公報第94/03170号(特許文献26)および国際公開公報第95/00480号(特許文献27)において開示されている。
【0013】
テルフェナジンカルボン酸代謝産物様化合物を製造するための他の方法は、真菌を用いたテルフェナジン様化合物の転化を含む。この手順はSchwartzらに付与された米国特許第5,204,249号(特許文献28)およびMeiwesらに付与された米国特許第5,990,127号(特許文献29)において開示されている。Schwartzの特許では、カニングハメラ(Cunninghamella)属の真菌を使用してエバスチンをカレバスチンに転化している。Meiwesの特許では、カニングハメラ属およびアブシジア(Absidia)属の真菌種を使用してテルフェナジンをその酸代謝産物に変換している。これらの手順はテルフェナジンカルボン酸代謝産物様化合物を製造するのに有効であることがわかっているが、そのような方法でのこれらの生成物の初期収率はかなり低く、以前に同定されたこれらの属の糸状真菌に制限すると、商業的に実現可能な方法に対し望ましくない制約が生じる。
【0014】
本発明は微生物触媒を用いてテルフェナジンカルボン酸代謝産物およびカレバスチン誘導体を調製するための改良方法に関する。
【特許文献1】米国特許第3,687,956号
【特許文献2】米国特許第3,806,526号
【特許文献3】米国特許第3,829,433号
【特許文献4】米国特許第3,862,173号
【特許文献5】米国特許第3,878,217号
【特許文献6】米国特許第3,922,276号
【特許文献7】米国特許第3,931,197号
【特許文献8】米国特許第3,941,795号
【特許文献9】米国特許第3,946,022号
【特許文献10】米国特許第3,956,296号
【特許文献11】米国特許第3,965,257号
【特許文献12】米国特許第4,742,175号
【特許文献13】米国特許第4,254,129号
【特許文献14】米国特許第4,254,130号
【特許文献15】米国特許第4,285,957号
【特許文献16】米国特許第4,285,958号
【特許文献17】米国特許第4,550,116号
【特許文献18】米国特許第5,254,129号
【特許文献19】米国特許第5,578,610号
【特許文献20】米国特許第5,581,011号
【特許文献21】米国特許第5,589,487号
【特許文献22】米国特許第5,663,412号
【特許文献23】米国特許第5,750,703号
【特許文献24】米国特許第5,994,549号
【特許文献25】国際公開公報第95/00492号
【特許文献26】国際公開公報第94/03170号
【特許文献27】国際公開公報第95/00480号
【特許文献28】米国特許第5,204,249号
【特許文献29】米国特許第5,990,127号
【非特許文献1】D.マクタビッシュ(D. McTavish)、K. L.ゴア(K. L. Goa)、M.フェリール(M. Ferrill)、Drugs、1990、39、552
【非特許文献2】C. R.キングソービング(C. R. Kingsolving)、N. L.モンロー(N. L. Monroe)、A. A.カー(A. A. Carr)、Pharmacologist、1973、15、221
【非特許文献3】J. K.ウッドワード(J. K. Woodward)、N. L.モンロー(N. L. Munro)、Arzniem-Forsch、1982、32、1154
【非特許文献4】K. V.マン(K. V. Mann)、K. J.ティーツェ(K. J. Tietz)、Clin. Pharm. 1989、6、331
【非特許文献5】R. L.ウースレィ(R. L. Woosley)、Y.チェン(Y. Chen)、J. P.フリーマン(J. P. Frieman)およびR. A.ギリス(R. A. Gillis)、JAMA 1993、269、1532
【発明の開示】
【0015】
本発明は以下の化学式IAおよび/またはIB:
【化21】

【化22】

(式中、
nは0もしくは1であり;
R1は水素もしくはヒドロキシであり;
R2は水素であり;
または、nが0である場合、R1およびR2は一緒になって、R1およびR2を有する炭素原子間で第2の結合が形成され、n=1であれば、R1およびR2はそれぞれ水素であり;
R3は-COOHもしくは-COOR4であり;
R4はアルキルもしくはアリール部分であり;
A、BおよびDはその環の置換基であり、それぞれ異なっていても同じであってもよく、水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群より選択される)
を有する生成物化合物の製造に関する。
【0016】
この方法は、生成物化合物を製造するのに有効な条件下で微生物の存在下、以下の化学式IIAおよび/またはIIB:
【化23】

【化24】

(式中、R3*は-CH3であり、R1、R2、A、BおよびDは上記の通りである)
を有する開始化合物をインキュベートする工程を含む。微生物は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、ステムフィリウム(Stemphylium)属、グリオクラジウム(Gliocladium)属、バシラス(Bacillus)属、ボトリティス(Botrytis)属、シアサス(Cyathus)属、リゾプス(Rhizopus)属、ピクニオドスフォラ(Pycniodosphora)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ヘリコスチラム(Helicostylum)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ケカビ(Mucor)属、ゲラシノスポラ(Gelasinospora)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、カンジダ(Candida)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、またはペニシリウム(Penicillium)属に由来してもよい。
【0017】
本発明はまた、生成物化合物を製造するのに有効な条件下、カニングハメラ・バイニエリ(Cunninghamella bainieri)の存在下、化学式IIAおよび/またはIIBに記載の構造を有する開始化合物をインキュベートすることにより、化学式IAおよび/またはIBに記載の構造を有する生成物化合物を製造することに関する。
【0018】
本発明はテルフェナジンからカルボキシテルフェナジンを調製するための別のおよび/または改良された方法を提供する。本発明にかかる株および方法を用いて得られるカルボキシテルフェナジンの選択性および収率は周知の株を用いて得られるものよりも高くすることができる。さらに、標的転化のための多くの株、特に細菌株(グラム陽性およびグラム陰性の両方)の同定により、従来使用された糸状菌株よりも、株の著しい改良、処理、および製造利点が可能となる。
【0019】
重要なことに、および驚いたことに、ストレプトマイセス、バシラス、およびシュードモナスはグラム陽性およびグラム陰性真正細菌株の代表例であり、標的変換を実施するために以前同定された糸状菌とは全く異なる界である。株の改良、ならびに特にストレプトマイセス、バシラス、およびシュードモナス種を含む細菌株の遺伝子操作のための技術は、カニングハメラ株などの真菌と比較してより簡便に、より良好に確立されている。さらに、非糸状真菌、酵母、および真正細菌を含む非糸状微生物の商業規模の処理により、糸状真菌のみで可能なものよりも多くの付加的およびより経済的な発酵槽および精製方法が得られる。
【0020】
さらに、様々な微生物生物触媒により広範囲にわたる構造変形物への変換が可能となる。さらに、そのような変換に有効な遺伝子および酵素を有する多数の株の同定は、ピペリジン誘導体を製造するための工業触媒として微生物をさらに最適化するために現代の分子生物技術を使用するための重要な必要要件である。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は以下の化学式IAおよび/またはIB:
【化25】

【化26】

(式中、
nは0もしくは1であり;
R1は水素もしくはヒドロキシであり;
R2は水素であり;
または、nが0である場合、R1およびR2は一緒になって、R1およびR2を有する炭素原子間で第2の結合が形成され、n=1であれば、R1およびR2はそれぞれ水素であり;
R3は-COOHもしくは-COOR4であり;
R4はアルキルもしくはアリール部分であり;
A、BおよびDはその環の置換基であり、それぞれ異なっていても同じであってもよく、水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群より選択される)
に記載の構造を有する生成物化合物の製造に関する。
【0022】
この方法は、生成物化合物を製造するのに有効な条件下で微生物の存在下、以下の化学式IIAおよび/またはIIB:
【化27】

【化28】

(式中、R3*は-CH3であり、R1、R2、A、BおよびDは上記の通りである)
に記載の構造を有する開始化合物をインキュベートする工程を含む。微生物は、ストレプトマイセス属、ステムフィリウム属、グリオクラジウム属、バシラス属、ボトリティス属、シアサス属、リゾプス属、ピクニオドスフォラ属、シュードモナス属、ヘリコスチラム属、アスペルギルス属、ケカビ属、ゲラシノスポラ属、ロドトルラ属、カンジダ属、マイコバクテリウム属、またはペニシリウム属に由来してもよい。
【0023】
本発明はまた、生成物化合物の製造に有効な条件下、カニングハメラ・バイニエリの存在下、化学式IIAおよび/またはIIBに記載の構造を有する開始化合物をインキュベートすることにより化学式IAおよび/またはIBに記載の構造を有する生成物化合物を製造することにも関する。
【0024】
本発明の方法は液体増殖培地中で実施される。適した増殖培地を構成するものは、当業者には周知のように特定の微生物および目的に依存する。一般に、増殖培地はブドウ糖、ショ糖、クエン酸塩、および/またはデンプンなどの炭素源、ならびに大豆粉、酵母抽出物、トリプトン、麦芽抽出物および/または酢酸アンモニウムなどの窒素源を含む。さらに、増殖培地はリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、および/または硫酸マグネシウムなどの無機塩、ならびに鉄、亜鉛、銅、モリブデン、マンガンまたは他の金属塩などの微量元素を含む。
【0025】
本発明で使用する微生物は以下の属から選択することができる:ストレプトマイセス、ステムフィリウム、グリオクラジウム、バシラス、ボトリティス、シアサス、リゾプス、ピクニオドスフォラ、シュードモナス、ヘリコスチラム、アスペルギルス、ケカビ、ゲラシノスポラ、ロドトルラ、カンジダ、マイコバクテリウム、またはペニシリウム。ストレプトマイセス属では、適した種としては、スレプトミセス・カテヌラ(Streptomyces catenulae)、ストレプトマイセス・カボレンシス(Streptomyces cavourensis)、ストレプトマイセス・リモサス(Streptomyces rimosus)およびストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)が挙げられる。ステムフィリウム属では、ステムフィリウム・コンソルチアーレ(Stemphylium consortiale)が適した種である。有用なアスペルギルス種としては、アスペルギルス・アリアセウス(Aspergillus aliaceus)、アスペルギルス・カーボナリウム(Aspergillus carbonarium)(バイニャー(Bainier)ソム(Thom)、アスペルギルス・フラヴィペス(Aspergillus flavipes)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・オクラセウス(Aspergillus ochraceous)およびアスペルギルス・テリコーラ(Aspergillus terricola)が挙げられる。グリオクラジウム属については、グリオクラジウム・デリケセンス(Gliocladium deliquescens)種が特に有効である。バシラス属に関しては、バシラス・セレウス(Bacillus cereus)種、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)種、およびバシラス・フシフォルミス(Bacillus fusiformis)種を使用して本発明の方法を実施することができる。ボトリティス属の適した種はボトリティス・アリィ(Botrytis allii)である。シアサス属に関しては、シアサス・ストリアツス(Cyathus striatus)種を使用することができる。リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)は本発明を実施するために使用することができるリゾプス属の代表的なメンバーである。有用なシュードモナス種としてはシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)種が挙げられる。ピクニオドスフォラ属に関しては、ピクニオドスフォラ・ディスパーサ(Pycniodosphora dispersa)種を使用することができる。ヘリコスチラム属では、ヘリコスチラム・ピリフォルメ(Helicostylum piriforme)種を使用して本発明の方法を実施することができる。ケカビ属に関しては、ムコール・サーシネロイデス f.グリセオ-シアヌス(Mucor circinelloides f. griseo-cyanus)種、ムコール・レクルバツス(Mucor recurvatus)種、およびムコール・ムセド(Mucor mucedo)種を使用して本発明を実施することができる。ゲラシノスポラ・オートステリア(Gelasinospora autosteria)種は本発明の方法を実施するのに適したゲラシノスポラ属のメンバーである。ロドトルラ属に関しては、ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)種を使用することができる。ペニシリウム属では、ペニシリウム・ノタツム(Penicillium notatum)種およびペニシリウム・クイルソゲヌム(Penicillium chyrsogenum)種を使用して本発明の方法を実施することができる。カンジダ属に関しては、カンジダ・グイリエルモンジ(Candida guilliermondii)種、カンジダ・リポリチカ(Candida lipolytica)種およびカンジダ・パラシロシス変種クエルクス(Candida parasilosis var. quercus)種を使用することができる。適したマイコバクテリウム種としてはマイコバクテリウム・ビスリムクム(Mycobacterium bisrymcum)が挙げられる。
【0026】
各株において、本発明は、化学式IAおよび/またはIBの生成物への化学式IIAおよび/またはIIBの化学および位置選択的酸化のための微生物全体、およびその構成要素の使用に関する。その構成要素としては、細胞抽出物、ミクロソーム、単離酵素、および遺伝子が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0027】
さらに、列挙した属の微生物の突然変異体およびセレクタント(selectant)ならびに特に本明細書で説明した特定の株の突然変異体およびセレクタントもまた本発明の方法において使用するのに適している。突然変異体は化学薬品もしくは電磁波に媒介される、ランダム突然変異誘発法などの、株改良のための古典的な突然変異誘発方法により、または誤りがちなPCR(error-prone PCR)、コドン突然変異誘発法、もしくは遺伝子シャッフリングなどの遺伝子操作のための現代的な方法により作製することができる。
【0028】
本発明の他の局面は、本発明の方法を実施するのにカニングハメラ・バイニエリ種を使用することに関する。
【0029】
本発明はまた、カニングハメラおよびアブシジア属の真菌に比べ、テルフェナジン(化学式IIA/IIB)からカルボキシテルフェナジン(化学式IA/IB)への選択的酸化に対する優れた作用物質として機能するストレプトマイセス属、グリオクラジウム属、およびステムフィリウム属の微生物の発見および使用に関する。
【0030】
さらに、ボトリティス属、リゾプス属、シアサス属、バシラス属、ピクニオドスフォラ属、シュードモナス属、ヘリコスチラム属、アスペルギルス属、ゲラシノスポラ属、ロドトルラ属、ペニシリウム属、およびカンジダ属の微生物株もまたテルフェナジンをカルボキシテルフェナジンに酸化するものとして同定されており、その収率は最適化をしなくても3%を超える。先行する実験において、Meiwesらが最初のスクリーニング中3%またはそれ以上の収率を得る株として同定したのは2つのみであった。
【0031】
さらに、アスコイディア(Ascoidia)属、エンテロコッカス(Entercoccus)属、フシジウム(Fusidium)属、マツオウジ(Lentinus)属、ロフォトリクス(Lophotrichus)属、マイコバクテリウム属、ポリポラス(Polyporus)属、スピカリア(Spicaria)属、およびトリコフィトン(Trichophyton)属に由来する微生物が、テルフェナジンをカルボキシテルフェナジンに酸化することが可能な生物触媒であることが見出されている。
【0032】
これらの微生物は全て公共の培養物コレクション(culture collection)から自由に入手可能である。微生物培養物の特定のアイデンティティおよび起源は以下の実施例において説明する。
【0033】
本発明のために使用する微生物培養物は、固体培地上など当業者にとって周知の手順に従い維持することができ、鉱油中に保存し、凍結乾燥または凍結させることができる。
【0034】
微生物培養物は、30g/lのサブローブドウ糖培地および20g/lの寒天などの適当な固体培地上で維持することができる。好ましくは、幾つかの株では、低温凍結保存および解凍技術(すなわち「クリオレディ(Cryoready)」技術)を含む接種物の調製が、適した接種物を作製するのに必要とされる時間を減少させピペリジン生成物の生産量を上げることにより、開始物質を本発明のピペリジン生成物に変換するための方法を改善するのに適する。適当な液体培地中で培養物を増殖させた後、微生物懸濁液を遠心分離し、使用した液体培地を取り除き、濃縮細胞ペレットを同体積の無菌20%グリセロールストックと新鮮培地に再懸濁し、10%グリセロールの細胞懸濁液を作製する。
【0035】
固体培地から、微生物は最初、特定の株の増殖を支持するのに適した中性液体培地中で1つまたは複数の段階(すなわち「多段階」手順)を介して増殖される。最初の増殖のための典型的な培地は、20g/lのグルコース、5g/lの酵母抽出物、5g/lの大豆粉、5g/lのNaCl、および5g/lのK2HPO4を含む。最初の段階の微生物培養物は29℃、250rpmで48時間、または72時間インキュベートした。その後の段階で、多量の接種物(前の段階の液体培養物からの1〜20%v/v、特に10%v/vの微生物懸濁液)を新鮮な液体培地に接種した。
【0036】
反応段階では、微生物懸濁液の、または解凍した凍結保存細胞の多量の接種物(1〜20%v/v、特に10%v/v)を新鮮培地に接種する。変換のために使用される特定の微生物にしたがい、約20℃から80℃の温度、好ましくは25℃から37℃の温度、およびpH 4から9、特にpH 5から8で微生物を培養する。微生物のインキュベーションは2時間〜240時間、好ましくは75時間から170時間の時間間隔で実施した。反応は好気的に、最初は平行マルチウエル反応チャンバ内で、連続して空気または濃縮酸素を供給しながら、撹拌して行った。その後のより大規模な発酵は、振とうフラスコ内の方法と同様に行うことができ、撹拌および給気しながら発酵槽内で実施することができる。
【0037】
調製した接種物の反応培地への接種後0から72時間の間に、好ましくは約8時間から48時間後に、特に24時間後に開始物質を微生物培養物に添加する。開始物質の添加は適当な有機溶媒の溶液から行うのが最も好都合であるが、固体粉末として、または懸濁液としても添加することができる。溶液を添加する場合、開始物質は、ジメチルホルムアミド(DMF)中で添加することが最も好ましいが、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、およびホルムアミド(すなわち、ジブチル-、ジイソプロピル-、またはジエチル-)、ピロリドン(すなわち、1-メチル-、1-エチル-、1-シクロヘキシル-)、4-ホルミル-モルホリン、1-ホルミルピペリジン、1-ホルミルピロリジン、テトラメチル-テトラエチル-、テトラブチル尿素、ホスフィンオキシド(すなわち、トリピペリジノ-またはトリピロリジノ-)、スルホラン、N-メチル-カプロラクタム、またはこれらの混合物中で添加することもできる。シクロデキストリンまたは界面活性剤(例えば、ツウィーン(Tween)80またはプルロニック(Pluronic)F38)などの生体適合性のある有機溶解補助剤もまた、微生物を含む反応培地に添加することができる。
【0038】
化学式IAおよび/またはIBの化合物は微生物培地から、または細胞の分離後の清澄化液から、例えば、遠心分離または濾過により直接単離することができる。これらの生成物は有機溶媒を用いた抽出により、または疎水性樹脂もしくはイオン交換体上での吸着により単離することができる。
【0039】
本発明の他の変形では、一般に入手可能なマニュアルに開示されているように、体系化された微生物ならびに微生物をインキュベートし反応を実施するための標準技術および従来の手順を使用してもよい。例えば、デマイン(Demain), A. L. およびJ. E.デイビス(Davies)、「工業微生物学およびバイオテクノロジーマニュアル(Manual of Industrial Microbiology and Biotechnology)」第2版(1999年)およびクルーガー(Crueger), W. およびA.クルーガー(Crueger)、「バイオテクノロジー:工業微生物学テキストブック(Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology)」(1984年)において説明されている方法は培養物を調製し、本発明の方法を実施するために適用可能である。
【0040】
以下の化学式IIIAおよび/またはIIIB:
【化29】

【化30】

(式中、R1、R2、R3、A、BおよびDは上記の通りである)の化合物は特に重要である。これらの化合物のなかで、4-(4-(4-ヒドロキシジフェニル)-1-ピペリジニル)-1-ヒドロキシブチル)-α,α-ジメチルフェニル酢酸が特に好ましい。
【0041】
他の好ましいクラスの化合物は以下の化学式IVAおよび/またはIVB:
【化31】

【化32】

(式中、R1、R2、R3、A、BおよびDは上記の通りである)の化合物である。これらの化合物のなかで、4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-オキソブチル]-α,α-ジメチルフェニル酢酸が特に好ましい。
【0042】
本発明はさらに、本発明にかかる微生物を使用して、化学式IIAおよび/またはIIBに記載の構造から開始する化学式IAおよび/またはIBの別の類似体を調製するための方法に関する。
【0043】
本発明の方法により調製される化合物の他の例示的な例は以下の通りである:
4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸;
4-[4-[4-(ジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸;
4-[4-[4-(ジフェニルメチレン)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸;
4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-3-ヒドロキシベンゼン酢酸;
4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-2-ヒドロキシベンゼン酢酸;
4-[4-[4-(ジフェニルメチレン)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-3-ヒドロキシベンゼン酢酸;
4-[4-[4-(ジフェニルメチレン)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸;
エチル4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼンアセタート;
n-ペンチル 4-[4-[4-(ジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼンアセタート;
エチル4-[4-[4-(ジフェニルメチレン)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼンアセタート;
メチル4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼンアセタート;
エチル4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-(3-ヒドロキシベンゼン)アセタート;
n-プロピル4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-(2-ヒドロキシベンゼン)アセタート;
n-ヘキシル4-[4-[4-(ジフェニルメチレン)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-(3-ヒドロキシベンゼン)アセタート;
エチル4-[4-[4-(ジフェニルメチレン)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼンアセタート;
4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸;
4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-3-ヒドロキシベンゼン酢酸;
4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-2-ヒドロキシベンゼン酢酸;
4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-3-ヒドロキシベンゼン酢酸;
4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸;
n-ペンチル4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼンアセタート;
エチル4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼンアセタート;
エチル4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-(3-ヒドロキシベンゼン)アセタート;
n-プロピル4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-(2-ヒドロキシベンゼン)アセタート;
n-ヘキシル4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチル-(3-ヒドロキシベンゼン)アセタート;および
エチル4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼンアセタート。
【0044】
本発明はさらに、本明細書において具体化した方法(または本質的に等価な方法)に従い使用した微生物により、以下の化学式IIAおよび/またはIIBに記載の構造から開始する化学式IAおよび/またはIBの別の類似体を調製するための方法に関する。
【0045】
化学式:
【化33】

【化34】

【化35】

および
【化36】

の化合物が特に好ましい。
【0046】
選択的に、ピペリジン化合物のジフェニル基は両方とも、
【化37】

【化38】

【化39】

および
【化40】

のように、メチレン基に対しパラ位でアルキル(例えば、メチル)置換してもよい。
【0047】
本発明の方法により調製した化合物は、上記化合物の無機または有機の酸または塩基添加塩の形態で、薬学的に許容される塩とすることができる。適した無機酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸である。適した有機酸としては、カルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シクラミン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ジヒドロキシマレイン酸、安息香酸、フェニル酢酸、4-アミノ安息香酸、アントラニル酸、ケイ皮酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸およびマンデル酸が挙げられる。メタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびβ-ヒドロキシエタンスルホン酸などのスルホン酸も適した酸である。以上で同定した化学式の化合物の無機塩基および有機塩基と共に形成される無毒塩は、例えば、ナトリウム、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属、例えば、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属、例えば、アルミニウムなどの軽金属、例えば、第一、第二または第三アミンなどの有機アミン、例えばシクロヘキシルアミン、エチルアミン、ピリジン、メチルアミノエタノールおよびピペラジンを含む。これらの塩は従来の手段、例えば以下の化学式IAおよび/またはIB:
【化41】

【化42】

(式中、A、B、D、n、R1、R2およびR3は上記の通りである)
のピペリジン誘導体化合物を適当な酸または塩基を用いて処理することにより調製される。
【0048】
本発明の方法により調製したピペリジン誘導体化合物は、薬学的組成物中で生物学的に活性な成分として使用することができる。これらの化合物は、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、および気管支拡張薬として有効である。これらの化合物は単独でまたは適した薬学的担体と共に投与することができ、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液またはエマルジョンなどの固体または液体形態とすることができる。
【0049】
本発明の方法により調製された化合物は、経口投与、経皮投与、例えば皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹膜内投与、鼻腔内注入による投与、または鼻、喉、気管支の粘膜などの粘膜への塗布による投与が可能である。粘膜へのそのような塗布は、噴霧または乾燥粉末形態の本発明の化合物の微小粒子を含むエアロゾル噴霧を用いて達成することができる。
【0050】
投与される化合物の量は患者および投与様式によって異なると考えられ、任意の有効量とすることができる。投与される化合物の量は広範囲にわたり変動させることができ、所望の効果を達成するために一日あたり患者の体重の約0.01mg/kgから20mg/kgの有効量を単位投薬量として提供してもよい。例えば、一日に1度から4度、1mgから50mgの本発明の化合物を含む錠剤を摂取するなど、単位投薬量形態の消費により、望ましい抗ヒスタミン、抗アレルギーおよび気管支拡張効果を得ることができる。
【0051】
固体単位投薬量形態は従来の型とすることができる。この固体形態はカプセル、例えば、本発明の化合物と担体、例えば潤滑剤および乳糖、ショ糖またはトウモロコシデンプンなどの不活性賦形剤とを含む普通のゼラチン型とすることができる。他の実施の形態では、これらの化合物は乳糖、ショ糖またはトウモロコシデンプンなどの従来の錠剤基剤と共に、アラビアゴム、トウモロコシデンプンまたはゼラチンのような結合剤と、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはアルギニン酸などの崩壊剤と、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤とを併用して、錠剤化される。
【0052】
本発明により調製した化合物はまた、薬学的担体を有する生理学的に許容される希釈液中における本発明の化合物の溶液または懸濁液として、注射可能な投薬量で投与してもよい。そのような担体としては、界面活性剤および他の薬学的に許容されるアジュバンドが添加された、または添加されていない水および油などの無菌液が挙げられる。例示的な油は、石油、動物、植物、または合成物起源のものであり、例えば、ピーナッツ油、大豆油、または鉱油である。一般的には、水、食塩水、ブドウ糖水溶液および関連する糖溶液、ならびにプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが、注射可能な溶液用には特に、好ましい液体担体である。
【0053】
エアロゾルとして使用するためには、溶液または懸濁液中の化合物を、従来のアジュバントに加え、適した噴射剤、例えばプロパン、ブタンまたはイソブタンのような炭化水素噴射剤と共に、加圧エアロゾル容器内にパッケージングしてもよい。これらの化合物は加圧なしの形態で、例えばネブライザー、またはアトマイザーで投与してもよい。
【0054】
本発明により作製された化合物は、温血動物、鳥類、および哺乳類を治療するのに使用することができる。そのような生物の例としては、ヒト、ネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、子ヒツジ、ラット、マウス、およびモルモットが挙げられる。
【0055】
以下の実施例は本明細書において具体化した本発明の例示であり、本質的に、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0056】
実施例1. 変換に有効な微生物株のスクリーニング
反応のための微生物培養物を上記手順を用いて接種し、以下の表2に示した。各接種物2.5mlを125mlのデロング(Delong)フラスコ内の22.5mlの培地に添加し、29℃で24時間、軌道シェーカー上で1分あたり225回転(rpm)でインキュベートすることにより反応接種物を表2に列記された各微生物に対して調製した。この時間の後、各培養物のpHを記録し、0.5mlの培養物を標準フォーマット48ウエルポリプロピレンプレート(規格体積5ml/ウエル)の個々のウエルに移し、ガラスウール、チーズクロス、テフロン(登録商標)コート織物、または他の適したガス透過性バリヤで覆い、テルフェナジン酸代謝産物の25g/L DMFストック溶液を5μl添加することにより反応を開始した(最終反応濃度は250mg/L)。反応プレートを、制御空気インキュベーションボックス内部で、29℃、225rpmでインキュベートし、噴霧加湿チャンバ内で水により飽和した95%の酸素および5%のCO2ガスを含む1cc/分のガスを供給した。
【0057】
試料アリコートを2時間から168時間の反応時間ですべての培養物から回収した。清浄なマルチウエルプレートの対応するウエルに移した100μlの反応試料に、100μlのアセトニトリルを添加し、プレートを1分間ボルテックスした。各ウエルに250μlの酢酸エチルを添加し、プレートをボルテックスした後4分間超音波処理した。プレートを3500rpmで5分間遠心分離し、得られた有機相200μlを96ウエルプレートの対応するプレートに移した。反応試料に対し酢酸エチルによる抽出を2度繰り返し、有機相を合わせ、熱を加えずに真空下で乾燥させた。得られた残渣を150μlのDMF中に再溶解させた。
【0058】
フェノメネックス(Phenomenex)により製造された、5μm Luna C8(2)カラム(長さ50mm×直径2.0mm)に大気圧化学イオン化質量分析(ACPI-MS)を備えた高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により試料の分析を行った。
【0059】
【表1】

溶媒:A=水+0.4%酢酸
B=アセトニトリル+0.4%酢酸
勾配:0=段階勾配;1=直線勾配
検出器:APCI-MS-MSと連続するUV@230nm(三重四重極質量分析計、パーキンエルマーシエックス(Perkin-Elmer SciexによるモデルAPI2000))
【0060】
陽イオン化APCI-MSにより、規定した分子イオンに対応する各クロマトグラフピークに対する面積カウントを積分することで収率を計算した。テルフェナジン(化合物1)およびテルフェナジン酸代謝産物(化合物2)に対する分子イオンを表2に列挙する。テルフェナジン酸代謝産物に対する応答因子はテルフェナジン自体に対するものと同一であると仮定した。
【0061】
表2では、評価した株のいくつかでは、テルフェナジンからテルフェナジン酸代謝産物への転化は最大54%までであることが示されている。
【0062】
[表2]テルフェナジンからテルフェナジン酸代謝産物(TAM)への酸化のための触媒


AATCC=アメリカン・タイプ・カルチャーコレクション、10801 大学通り、マナッサス、バージニア州 20110-2209(American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110-2209)
BDSM=微生物および細胞培養物のドイツコレクション(Duetsch Samlung von Mikoorganismen und Zellkulturen GmbH(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures))、Grisebachstrasse 8,D-34 Goettingen、Braunschweig、Germany.
CUI、SC、MR、DGおよびQM=アイオワ大学培養物コレクション、アイオワシティ、アイオワ州、52240(University of Iowa Culture Collection Iowa City IA、52240)
DNRRL=USDA農業研究サービス、1815N. 大学通り ピオリア イリノイ州、60604(USDA Agricultural Research Sevice、1815N. University Ave. Peoria IL、60604)
E「多段階」および「クリオレディ(cryoready)」の名称は反応用の微生物接種物を調製するために各実施例で使用する特定の方法を表す。各方法に対する完全な詳細は発明の詳細な説明部分に記述されている。
【0063】
実施例2
125mlのデロングフラスコ内の25mlの大豆粉培地に、実施例1で説明したように固体斜面培養から得たストレプトマイセス・リモサス(NRRL-2234)を接種した。29℃、225rpmで24時間インキュベートした後、500μlの培養溶液(pH5.0)を48ディープウエルプレートの1つのウエルに移し、5μlのDMF中に溶解したテルフェナジン125μgを培養物に添加した。29℃で7日間インキュベーションチャンバ内でさらに培養した後、得られた微生物培地をアセトニトリルおよび酢酸エチルで抽出した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。残渣をDMF中に再溶解させ、HPLC-MSにより分析した。積分により、回収した物質の76%はTAMであることが示された。
【0064】
実施例3
上記したように、グリオクラジウム・デリケセンスの凍結培養物2.5mlを25mlのpH7の培地で24時間培養した。液体培養物の500μlを48ディープウエルプレートの1つのウエルに移し、5μlのDMF中に溶解したテルフェナジン125μgを培養物に添加し、29℃で1週間、インキュベーションチャンバ内でインキュベートした。生成物の回収および分析より、この手順では39%のTAMが得られることが証明された。
【0065】
実施例4
実施例2で説明したように、50mlのDMF中に溶解したテルフェナジン125μgを、マルチウエルプレート反応器内のステムフィリウム・コンソルチアーレ(4136-UI)の500μl培養溶液に添加した。生成物の回収および分析より、この手順では50%のTAMが得られることが証明された。
【0066】
実施例5
2週間経過したストレプトマイセス・リモサス(ATCC14673)の固体寒天培養物を125mlデロングフラスコ内の25mlの大豆培地に29℃、225rpmで72時間接種した。2.5mlのこの液体培養物を22.5ml、pH5の大豆粉培地に移し、29℃、225rpmで24時間培養した。250μlのDMFに溶解した12.5mgのテルフェナジンを培養物に添加し、1週間インキュベートした。生成物の回収および分析より、実施例2に従って実施したこの手順では27%のTAMが得られることが証明された。
【0067】
本発明について説明目的で詳細に記述してきたが、そのような詳細はその目的のためにすぎず、当業者であれば、特許請求の範囲により規定される本発明の精神および範囲から逸脱せずに様々な変更が可能であることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式IAおよび/またはIB:
【化1】

【化2】

(式中、
nは0もしくは1であり;
R1は水素もしくはヒドロキシであり;
R2は水素であり;
または、nが0である場合、R1およびR2は一緒になって、R1およびR2を有する炭素原子間で第2の結合が形成され、n=1であれば、R1およびR2はそれぞれ水素であり;
R3は-COOHもしくは-COOR4であり;
R4はアルキルもしくはアリール部分であり;
A、BおよびDはその環の置換基であり、それぞれ異なっていても同じであってもよく、水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群より選択される)
に記載の構造を有する生成物化合物の製造方法であって、
該生成物化合物を製造するのに有効な条件下で微生物の存在下、以下の化学式IIAおよび/またはIIB:
【化3】

【化4】

(R3*は-CH3であり、R1、R2、A、BおよびDは上記の通りである)
に記載の構造を有する開始化合物をインキュベートする工程を含み、
該微生物が、ストレプトマイセス、ステムフィリウム、グリオクラジウム、バシラス、ボトリティス、シアサス、リゾプス、ピクニオドスフォラ、シュードモナス、ヘリコスチラム、アスペルギルス、ケカビ、ゲラシノスポラ、ロドトルラ、カンジダ、マイコバクテリウム、およびペニシリウムからなる群より選択される1つの属に由来する方法。
【請求項2】
微生物がストレプトマイセス属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
微生物がストレプトマイセス・リモサス、スレプトミセス・カテヌラ、ストレプトマイセス・カボレンシス、およびストレプトマイセス・グリセウスからなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
微生物がステムフィリウム属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
微生物がステムフィリウム・コンソルチアーレである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
微生物がグリオクラジウム属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
微生物がグリオクラジウム・デリケセンスである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
微生物がバシラス属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
微生物がボトリティス属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
微生物がシアサス属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
微生物がリゾプス属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
微生物がピクニオドスフォラ属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
微生物がシュードモナス属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
微生物がヘリコスチラム属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
微生物がアスペルギルス属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
微生物がケカビ属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
微生物がゲラシノスポラ属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項18】
微生物がロドトルラ属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
微生物がマイコバクテリウム属に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
生成物化合物が以下の化学式IIIAおよび/またはIIIBに記載の構造を有する、請求項1記載の方法:
【化5】

【化6】

式中、R1、R2、R3、A、BおよびDは上記の通りである。
【請求項21】
生成物化合物が4-(4-(4-ヒドロキシジフェニル)-1-ピペリジニル)-1-ヒドロキシブチル)-α,α-ジメチルフェニル酢酸である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
生成物化合物が以下の化学式IVAおよび/またはIVBに記載の構造を有する、請求項1記載の方法:
【化7】

【化8】

式中、R1、R2、R3、A、BおよびDは上記の通りである。
【請求項23】
生成物化合物が4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-オキソブチル]-α,α-ジメチルフェニル酢酸である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
インキュベートする工程が20℃から80℃までの温度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項25】
インキュベートする工程がpH 4から9までで実施される、請求項1記載の方法。
【請求項26】
インキュベートする工程が2時間から240時間までの期間実施される、請求項1記載の方法。
【請求項27】
以下の化学式IAおよび/またはIB:
【化9】

【化10】

(式中、nは0もしくは1であり;
R1は水素もしくはヒドロキシであり;
R2は水素であり;
または、nが0である場合、R1およびR2は一緒になって、R1およびR2を有する炭素原子間で第2の結合が形成され、n=1であれば、R1およびR2はそれぞれ水素であり;
R3は-COOHもしくは-COOR4であり;
R4はアルキルもしくはアリール部分であり;
A、BおよびDはその環の置換基であり、それぞれ異なっていても同じであってもよく、水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群より選択される)
に記載の構造を有する生成物化合物の製造方法であって、
該生成物化合物を製造するのに有効な条件下でカニングハメラ・バイニエリの存在下、以下の化学式IIAおよび/またはIIB:
【化11】

【化12】

(R3は-CH3であり、R1、R2、A、BおよびDは上記の通りである)
に記載の構造を有する開始化合物をインキュベートする工程を含む方法。
【請求項28】
生成物化合物が以下の化学式IIIAおよび/またはIIIBに記載の構造を有する、請求項27記載の方法:
【化13】

【化14】

式中、R1、R2、R3、A、B、およびDは上記の通りである。
【請求項29】
開始化合物が4-(4-(4-ヒドロキシジフェニル)-1-ピペリジニル)-1-ヒドロキシブチル)-α,α-ジメチルペニル酢酸である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
生成物化合物が以下の化学式IVAおよび/またはIVBに記載の構造を有する、請求項27記載の方法:
【化15】

【化16】

式中、R1、R2、R3、A、BおよびDは上記の通りである。
【請求項31】
生成物化合物が4-[4-[4-(ジフェニルメトキシ)-1-ピペリジニル]-オキソブチル]-α,α-ジメチルフェニル酢酸である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
インキュベートする工程が20℃から80℃までの温度で実施される、請求項27記載の方法。
【請求項33】
インキュベートする工程がpH 4から9までで実施される、請求項27記載の方法。
【請求項34】
インキュベートする工程が2時間から240時間までの期間実施される、請求項27記載の方法。
【請求項35】
インキュベート工程前に、微生物が凍結保存または多段階液体培養誘導を受ける、請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2007−306927(P2007−306927A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164640(P2007−164640)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【分割の表示】特願2002−580867(P2002−580867)の分割
【原出願日】平成13年11月6日(2001.11.6)
【出願人】(504409912)エーエムアール テクノロジー インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】