微粒子配列構造体及びその製造方法
【課題】溝構造の内壁の選択された所定の壁部にのみ微粒子の配列集合体を形成させる技術を提供する。
【解決手段】表面に所定の幅及び深さを有する溝13が形成された基板10の溝に、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液2を充填し、充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させ、溝の壁部に、微粒子が単層又は複数層で配列してなる微粒子の配列集合体32を形成させる微粒子配列構造体の製造方法において、微粒子が懸濁した溶媒の、溝の壁部に対するメニスカス先端部が、溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子の配列集合体を形成させる。
【解決手段】表面に所定の幅及び深さを有する溝13が形成された基板10の溝に、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液2を充填し、充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させ、溝の壁部に、微粒子が単層又は複数層で配列してなる微粒子の配列集合体32を形成させる微粒子配列構造体の製造方法において、微粒子が懸濁した溶媒の、溝の壁部に対するメニスカス先端部が、溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子の配列集合体を形成させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子配列構造体及びその製造方法に関し、より詳細には、基板に形成された溝の内壁に、微粒子が集合して規則的に配列した微粒子配列構造体を形成させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
数nm〜数μm程度の粒径の微粒子を集合して規則的に配列させてその配列構造を形成させる方法としては、微粒子を個々にマニピュレートする手法も考えられるが、工業的な応用のためには、微粒子の自己組織化現象を利用するのが現実的である。微粒子の自己組織化現象とは、すなわち、微粒子を溶媒に懸濁した微粒子懸濁液を基板に載置して、その溶媒を蒸発させていくと、溶媒の膜厚が微粒子の基板からの高さをぎりぎり満たす程度にまで小さくなった部分(メニスカス先端部)の蒸発に伴う溶媒の流れと溶媒の表面張力とによって、微粒子が個々に順次集合していく現象である。例えば下記特許文献1には、そのような微粒子の自己組織化現象を利用した微粒子薄膜の製造方法が記載されている。
【0003】
しかし、従来、フラットな基板に微粒子の配列集合体を形成させて2次元的な構造体とする技術の蓄積はあったが、これらの微粒子の配列集合体を3次元的な構造体とする技術の蓄積は乏しく、数百nm〜数百μm程度、深さ数μm〜1mm程度のいわゆるマイクロチャネルと呼ばれる微細溝構造の溝の内壁に、微粒子の配列集合体を形成させることは、技術的に難しかった。
【0004】
このような問題に対して、下記特許文献2において、微粒子懸濁液の微粒子の数量を調整してマイクロチャネルの内壁に微粒子の配列集合体を形成させる微粒子アセンブル法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−116502号公報
【特許文献2】特開2006−291303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載された技術は、溝構造の内壁の選択された所定の壁部にのみ微粒子の配列集合体を形成させることに適した技術ではなかった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、溝構造の内壁の選択された所定の壁部にのみ微粒子の配列集合体を形成させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するにあたり、本発明は、以下の構成を有する微粒子配列構造体及びその製造方法を提供する。
[1] 基板に形成された溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子が単層又は複数層で配列して形成されていることを特徴とする微粒子配列構造体。
[2] 前記基板は、シリコン、ガラス、アルミナ、ITO、プラスチック、又はポリカーボネートから選ばれたものである[1]記載の微粒子配列構造体。
[3] 前記溝は、幅0.1〜100μm、深さ5〜600μmである[1]又は[2]記載の微粒子配列構造体。
[4] 前記微粒子は、粒径が1nm〜5μmである[1]〜[3]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体。
[5] 前記微粒子の材料は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミ(Al)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の金属、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、FeO3、CdO、SrTiO3、CoO、Fe3O4、Cu2O、MgO、MnO、Ag2O、In2O3、WO3等の金属酸化物、又はポリスチレン、アクリル樹脂等の有機ポリマーである[1]〜[4]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体。
[6] 表面に所定の幅及び深さを有する溝が形成された基板の該溝に、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を充填し、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させることにより、前記溝の壁部に、前記微粒子が単層又は複数層で配列してなる該微粒子の配列集合体を形成させる微粒子配列構造体の製造方法であって、前記微粒子が懸濁した溶媒の前記溝の壁部に対するメニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させることを特徴とする微粒子配列構造体の製造方法。
[7] 前記微粒子懸濁液として前記微粒子の前記溶媒に対する体積率が所定の値の該微粒子懸濁液を用いることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる[6]記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[8] 前記溝に前記微粒子懸濁液を充填した後、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を所定の温度、湿度、及び/又は気圧下で乾燥させることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる[6]記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[9] 前記溝の選択された所定の壁部以外の該壁部の、前記微粒子縣濁液の溶媒に対する濡れ性を、前記選択された壁部よりも小さくすることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる[6]記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[10] 前記基板を前記溝の少なくとも一部が該微粒子懸濁液に接触するように浸漬させることにより、毛細管現象によって前記微粒子縣濁液を前記溝に充填し、次いで前記基板を引き上げて前記基板を乾燥させる[6]〜[9]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[11] 前記基板は、シリコン、ガラス、アルミナ、ITO、プラスチック、又はポリカーボネートから選ばれたものである[6]〜[10]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[12] 前記溝は、幅0.1〜100μm、深さ5〜600μmである[6]〜[11]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[13] 前記微粒子は、粒径が1nm〜5μmである[6]〜[12]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[14] 前記微粒子の材料は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミ(Al)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の金属、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、FeO3、CdO、SrTiO3、CoO、Fe3O4、Cu2O、MgO、MnO、Ag2O、In2O3、WO3等の金属酸化物、又はポリスチレン、アクリル樹脂等の有機ポリマーである[6]〜[13]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[15] 前記溝の選択された所定の壁部に対する前記微粒子の充填率(ε)が所望の値となるように、下記数式(1)に基づいて設定した条件で、前記溝に充填した前記微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させる、[6]〜[14]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【0009】
【数1】
(上記式中、Vはメニスカス後退速度[m/s]、hは粒子整列部厚み[m]、Jeは乾燥速度[g/m・s]、lはメニスカスの長さ[m]、φは微粒子の溶液に対する体積率[%]、βは比例定数、εは充填率[%]である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の微粒子配列構造体によれば、基板に形成された溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子が単層又は複数層で配列して形成されているので、例えば、溝の側壁面のみに導電性を有する金属酸化物の微粒子を配列させ、その微粒子の配列集合体を形成させることで、その金属酸化物の電極を形成し、一方で溝によって形成されている空間に気体が入り込むように構成して、溝の両側壁の電極間に流れる電流に係る抵抗値を測定することによって気体中のガスを感知する、ガスセンサなどに利用できる。
【0011】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法によれば、表面に所定の幅及び深さを有する溝が形成された基板の該溝に、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を充填し、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させることにより、前記溝の壁部に、前記微粒子が単層又は複数層で配列してなる該微粒子の配列集合体を形成させる微粒子配列構造体の製造方法において、前記微粒子が懸濁した溶媒の前記溝の壁部に対するメニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させるので、基板に形成された溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子が単層又は複数層で配列して形成されている微粒子配列構造体を、容易に製造することができる。
【0012】
また、本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、前記微粒子の前記溶媒に対する体積率や、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させる際の温度、湿度、気圧や、前記微粒子縣濁液の溶媒に対する濡れ性などを、それぞれ所定の値に調整することにより、上記メニスカス先端部が移動する領域を、容易に制御することができる。
【0013】
また、本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、前記微粒子の前記溶媒に対する体積率や、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させる際の温度、湿度、気圧や、前記微粒子縣濁液の溶媒に対する濡れ性などを、それぞれ所定の値に調整することにより、前記溝の選択された所定の壁部に対する前記微粒子の充填率(ε)を、容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】微粒子懸濁液の溶媒のメニスカス先端部の概念図である。
【図2】深堀り反応性イオンエッチング(DRIE:Deep Reactive Ion Etching)により基板に溝を形成する工程の模式図である。
【図3】深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)により得られた溝の顕微鏡写真(a)及びその模式図(b)である。
【図4】基板の溝に微粒子懸濁液を充填する方法の一態様を示す模式図である。
【図5】製造例1で得られた微粒子配列構造体の顕微鏡写真(a)、その部分拡大写真(b)、及びその構造の模式図(c)である。
【図6】製造例2で得られた微粒子配列構造体の顕微鏡写真(a)及びその構造の模式図(b)である。
【図7】基板の溝に充填した純水の乾燥過程を観察した結果(乾燥開始直後(a)、乾燥開始12秒後(b)、乾燥開始26秒後(c)、乾燥開始120秒後(d))を示す顕微鏡写真である。
【図8】試験例1における微粒子の溝の側壁への配列のメカニズムを示す模式図である。
【図9】基板/溶媒/外気の3者境界界面における溶媒の後退(移動)と接触角との関係を示す模式図である。
【図10】微粒子懸濁液中の微粒子の溶媒に対する体積率と側壁粒子堆積数との関係を示す図表である。
【図11】外気雰囲気の湿度が50%のときの微粒子配列構造体を観察した結果を示す顕微鏡写真(a:側壁、b:底面)、及びそれらの構造の模式図(c:側壁、d:底面)である。
【図12】外気雰囲気の湿度が67%のときの微粒子配列構造体を観察した結果を示す顕微鏡写真(a:側壁、b:底面)、及びそれらの構造の模式図(c:側壁、d:底面)である。
【図13】外気雰囲気の湿度が90%のときの微粒子配列構造体を観察した結果を示す顕微鏡写真(a:側壁、b:底面)、及びそれらの構造の模式図(c:側壁、d:底面)である。
【図14】フルオロカーボン膜処理したシリコン基板に水を滴下したときの状態を示す写真(a)、及び硫酸/過酸化水素水混合溶液(SPM:Sulfuric acid /hydrogen Peroxide Mixture)で処理したシリコン基板に水を滴下したときの状態を示す写真(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の微粒子配列構造体は、基板に形成された溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子が単層又は複数層で配列して形成されていることを特徴とする。本発明の微粒子配列構造体は、後述する微粒子配列構造体の製造方法によって得ることができる。
【0016】
本発明の微粒子配列構造体における基板の材質としては、微細溝構造を形成できる基板であれば特に制限を受けないが、シリコン、ガラス、アルミナ、ITO、プラスチック、ポリカーボネートなどを好ましく例示できる。
【0017】
本発明の微粒子配列構造体における溝の構造としては、幅0.1〜100μm、深さ5〜600μm程度の微細溝構造であることが好ましい。このような微細溝構造の内壁部に微粒子の配列構造体を形成することで、コンパクトで集積化された3次元的構造を有する反応プラットフォームなどに利用できる。
【0018】
本発明の微粒子配列構造体における微粒子としては、粒径が1nm〜5μm程度、より好ましくは粒径が1nm〜100nm程度のものが用いられる。これにより、後述する自己組織化現象を利用した微粒子の配列構造体の形成が容易となる。また、配列構造体の体積あたりの表面積をより大きくすることができ、コンパクトで集積化された3次元的構造を有する反応プラットフォームなどにより適している。
【0019】
本発明の微粒子配列構造体における微粒子の材料としては、上記微粒子を構成できるものであれば特に制限を受けないが、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミ(Al)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の金属、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、FeO3、CdO、SrTiO3、CoO、Fe3O4、Cu2O、MgO、MnO、Ag2O、In2O3、WO3等の金属酸化物、又はポリスチレン、アクリル樹脂等の有機ポリマーなどを好ましく例示できる。
【0020】
一方、本発明の微粒子配列構造体の製造方法は、表面に所定の幅及び深さを有する溝が形成された基板の該溝に、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を充填し、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させることにより、前記溝の壁部に、前記微粒子が単層又は複数層で配列してなる該微粒子の配列集合体を形成させる微粒子配列構造体の製造方法であって、前記微粒子が懸濁した溶媒の前記溝の壁部に対するメニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させることを特徴とする。
【0021】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法において、「メニスカス先端部」とは、溶媒に懸濁させた微粒子が、溶媒と溝の壁部と外気雰囲気の境界あたりで、微粒子の自己組織化現象を起こし得る状態となった微粒子懸濁液の溶媒の所定部分を意味している。ここでは、図1を参照して説明する。この図1には、基板の溝の壁部1に対する微粒子懸濁液2のメニスカス先端部の様子が表されている。微粒子懸濁液2の溶媒の膜厚が、微粒子2aによる粒子整列部厚み4をぎりぎり満たす程度にまで小さくなった部分(図中、「A」で示される。)から、溶媒と溝の壁部と外気雰囲気の境界の最先端までの部分(図中、「B」で示される。)では、乾燥7にともなう溶媒の流れ3と溶媒の表面張力とによって微粒子2aが個々に順次集合していく。この部分(図中、メニスカス先端部の長さ5で示される。)が「メニスカス先端部」である。そして乾燥7にともなって、この「メニスカス先端部」は、図中の下方に向かって後退6していき、基板の溝の壁部1の表面を移動していく。
【0022】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、上記メニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させることができる。
【0023】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、まず、表面に所定の幅及び深さを有する溝が形成された基板を準備する。溝が形成された基板の該溝の形成方法については、基板の材質や、得ようとする溝の構造等に適するものを適宜選択すればよく、特に制限はないが、例えば基板の材質がシリコンである場合には、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE:Deep Reactive Ion Etching)で行うことができる。
【0024】
この深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)について、図2を参照して説明すると、表面に所定の開口12部を設けて保護マスク11で覆った基板10に対し、六フッ化硫黄(SF6)などのプラズマイオンで垂直方向にエッチングを行う。そのエッチングによって形成した溝13の内壁面をテフロン系のガス(C4F8)などの保護膜14で保護する。このエッチングと保護膜形成の工程を繰り返すことで、前記保護マスクの開口部に溝13が形成される。エッチング工程の後の保護膜形成によって、溝13の底面にも保護膜14が形成されるが、次段階のエッチング工程において、六フッ化硫黄(SF6)のプラズマイオンが底面の保護膜14にアタックして除去しつつ垂直方向へのエッチングをすすめ、一方、横方向に対しては上記プラズマイオンの照射が弱いので、保護膜14は除去されずに側壁面がエッチングから保護される。
【0025】
図3aには、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)で得られた溝の顕微鏡写真の一例を示す。また、図3bにはその模式図を示す。溝の側壁面の形状が、一段毎に図正面から見て左右方向に窪んでいるスキャロップ形状と呼ばれる形状15になっているのは、プラズマに電界をかけて異方性を出してはいるが、化学反応に由来する横方向のエッチングが生じるためである。なお、図3に示す溝の側壁面のスキャロップ形状は、溝の深さ方向の長さ当たりの数がおよそ1個/μmであり、一段毎のくぼみの最大深さがおよそ500nmであるが、上記プラズマイオンの照射時間を調整することで、前者を0.1〜10個/μmの範囲で、後者を100〜1000nmの範囲で制御することが可能である。
【0026】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、また、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を準備する。用いる溶媒としては、粘度、微粒子の分散性や、基板に対する濡れ性などによって、適宜に選択すればよいが、一般的には例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、キシレン、トルエンなどが例示できる。
【0027】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、上記溝が形成された基板の該溝に、上記微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を充填する。微粒子懸濁液を充填する方法に特に制限はなく、その溝の上に噴霧、滴下するなどして載置し、毛細管現象により溝に上記微粒子懸濁液が充填させるなどして行うことができる。
【0028】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、上記溝に充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させる。乾燥の方法は、自然乾燥でもよく、溶媒の蒸発を促進させるために、減圧下に行ってもよい。
【0029】
ここで、図4を参照して、上記充填、乾燥の工程の好ましい態様の一例を説明する。ここでは、ビーカーを載せることができる支持台と、シリコン基板を保持して垂直方向に上下移動できるアームとを備えた基板の保持移動装置(図示せず)を用いる。微粒子懸濁液を入れた容器20を前記基板の保持移動装置の支持台(図示せず)に置く。他方で溝の形成されたシリコン基板10は、前記基板の保持移動装置のアーム(図示せず)に保持されている。シリコン基板を保持したままアームを下方に移動させて、基板の溝の少なくとも一部が微粒子懸濁液に接触するように浸漬させ、所定位置でアームを停止する。この状態で一定時間おくと微粒子縣濁液2は毛細管現象によって前記基板10の溝に充填する。次いで前記アームを上方に移動させて前記基板10を微粒子懸濁液2から引き上げて室内、又は温度、湿度、気圧等の制御された外気雰囲気下で乾燥させる。前記基板の保持移動装置を恒温室内に設置して上記操作を行うことで、温度、湿度、気圧等の制御された外気雰囲気下で乾燥させることが容易となる。
【0030】
このとき、微粒子懸濁液の溝への均一な充填のためには、溝の長さ方向がシリコン基板を上下させる方向と同じ方向であることが好ましいが、それ以外の方向に形成されていてもよい。また、浸漬時間(アームを所定位置に停止させてから上方に移動させ始めるまでの時間)は例えば1〜30秒程度で行うことができ、引き上げ速度は例えば1μm〜20mm/秒程度で行うことができる。
【0031】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、微粒子懸濁液の溶媒が乾燥するにつれて、上記メニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにさせる。その態様としては例えば下記のようなものが挙げられる。
【0032】
(1)微粒子懸濁液における微粒子の溶媒に対する体積率を調整する。
すなわち後述の実施例で示されるように、ポリスチレンビーズを水に懸濁した微粒子懸濁液を、シリコン基板上に形成した幅50μm×深さ100μmの微細溝に充填して、室温で自然乾燥させると、まず、側壁面に上記メニスカス先端部が生じ、それが側壁面の一定の領域を移動する。したがって、上記メニスカス先端部が移動した領域で微粒子の配列集合体が形成され、微粒子懸濁液に含有せしめる微粒子を所定数量に制限しておけば、集合体を形成し得る微粒子が枯渇するので、枯渇した段階でそれ以外の側壁面や底面には微粒子の配列集合体は形成されない。
【0033】
(2)外気雰囲気における温度、湿度、及び/又は気圧を調整する。
すなわち後述の実施例で示されるように、外気雰囲気の湿度を下げて、上記メニスカス先端部の溶媒の乾燥速度を高めると、微粒子の自己組織化が促進される。したがって、外気雰囲気における温度、湿度、及び/又は気圧を調整して、乾燥速度を高めれば、その領域あたりの充填率が上がり、その充填率が上がるにつれ単層から複数層に微粒子が配列するようになる。一方で、上記(1)と同様に、微粒子懸濁液に含有せしめる微粒子を所定数量に制限しておけば、集合体を形成し得る微粒子が枯渇するので、枯渇した段階でそれ以外の側壁面や底面には微粒子の配列集合体は形成されない。したがって、その分、微粒子の配列集合体が形成される領域はより制限される。
【0034】
(3)溝の壁部における溶媒に対する濡れ性を調整する。
微粒子の配列集合体を形成させる領域以外の壁部に対して、微粒子懸濁液の溶媒に対する濡れ性を調整して、その所定領域の壁部にメニスカス先端部が生じないようにすれば、所望の領域の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させることができる。
【0035】
すなわち後述の実施例で示されるように、例えば撥水被膜処理を施した壁部の水に対する濡れ性は非常に小さく、水は壁部に対する大きな接触角を保ったまま乾燥する。したがって、メニスカス先端部は生じずに微粒子の配列集合体が形成されることがない。
【0036】
そこで、例えば、上記に説明した深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)において、溝側壁面の保護膜として、撥水被膜(フルオロカーボン膜)を施す。これにより、側壁での微粒子集合体の形成を妨げることができ、それ以外の領域(底面)での微粒子の配列集合体の形成を促すことができる。
【0037】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、下記数式(1)に基づいて設定した条件で、上記溝に充填した上記微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させることで、上記溝の選択された所定の壁部に対する上記微粒子の充填率(ε)が所望の値となるように制御することができる。
【0038】
【数2】
(上記式中、Vはメニスカス後退速度[m/s]、hは粒子整列部厚み[m]、Jeは乾燥速度[g/m・s]、lはメニスカスの長さ[m]、φは微粒子の溶液に対する体積率[%]、βは比例定数、εは充填率[%]である。)
【0039】
ここで、充填率[%]とは、単位体積あたりを占有する微粒子の体積のことである。メニスカス後退速度[m/s]とは、液体の体積減少に伴ったメニスカス先端部の後退速度(移動速度)のことである。粒子整列部厚み[m]とは堆積した粒子膜の厚みのことである。乾燥速度[g/m・s]とは溶媒の乾燥速度のことである。メニスカスの長さ[m]とはメニスカス先端部の長さのことである。微粒子の溶液に対する体積率[%]とは、用いる微粒子懸濁液中の微粒子の溶液に対する体積率のことである。これらのパラメータは電子顕微鏡などでの観察により実測することも可能である。なお、比例定数βは上記パラメータを相関付ける比例定数である。
【実施例】
【0040】
以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0041】
<製造例1> (微粒子配列構造体の製造 その1)
表面に幅50μm×深さ100μm×長さ10mmのトレンチ状の溝が形成されたシリコン基板を、上記に説明した深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)で得た。
【0042】
一方、ビーカーを載せることができる支持台と、シリコン基板を保持して垂直方向に上下移動できるアームとを備えた基板の保持移動装置を、恒温室に設置した。この基板の保持移動装置の脇にはCCD顕微鏡を配置し、上記トレンチ状の溝内部の様子を観察、記録できるようにした。
【0043】
上記基板の保持移動装置の支持台に、ポリスチレンビーズ(Thermo Fisher Scientific 社製、粒径 1μm)の6体積%水懸濁液を入れた容器を置き、他方で上記トレンチ状の溝を有するシリコン基板を、基板の保持移動装置のアームに取り付けて、これを保持したままを下方に移動させて、基板の溝の少なくとも一部が微粒子懸濁液に接触するように浸漬させ、所定位置でアームを停止させた。この状態で5秒置き、5mm/秒でアームを上方に移動させて、上記基板を引き上げた。その基板をアームに取り付けたままの状態で、温度22℃湿度55%に保たれた恒温室内で10分間静置し、上記微粒子懸濁液の溶媒である水を乾燥させた。
【0044】
図5aには、得られた微粒子配列構造体の顕微鏡写真を示す。また、図5bには図5aに示す顕微鏡写真の部分拡大写真を示す。なお、図5cは得られた微粒子配列構造体を模式的に表した図である。これらの顕微鏡写真にみられるように、溝の内部の側壁に、スチレンビーズが規則正しく単層に配列した微粒子の配列集合体が形成していることがわかる。その一方で、溝の内部の底面には、スチレンビーズの配列集合体が形成していないことがわかる。
【0045】
<製造例2> (微粒子配列構造体の製造 その2)
異なる粒径(0.5μm)のポリスチレンビーズ(Thermo Fisher Scientific 社製、粒径 0.5μm)を用い、温度25℃湿度40%に保たれた恒温室内で微粒子懸濁液の溶媒である水を乾燥させた以外は、製造例1と同様にして、微粒子配列構造体を得た。
【0046】
図6aには、得られた微粒子配列構造体の顕微鏡写真を示す。なお、図6bは得られた微粒子配列構造体を模式的に表した図である。これらの顕微鏡写真にみられるように、溝の内部の側壁に、スチレンビーズが規則正しく複層に配列した微粒子の配列集合体が形成していることがわかる。
【0047】
<試験例1> (微粒子の選択的な領域への配列のメカニズムの考察 その1)
製造例1及び製造例2においては、いずれも微粒子の配列集合体が溝の内部の側壁に形成され、その底面には形成されなかった。そこで、この選択的な領域への配列のメカニズムについて検討した。
【0048】
そのために、上記製造例1及び製造例2と同じく、表面に幅50μm×深さ100μm×長さ10mmのトレンチ状の溝が形成されたシリコン基板を準備した。この基板の溝に純水を滴下して充填し、その純水の乾燥過程をCCD顕微鏡で観察した。
【0049】
図7には、乾燥開始直後(a)、乾燥開始12秒後(b)、乾燥開始26秒後(c)、乾燥開始120秒後(d)の断面の顕微鏡写真を示す。また、この結果から考察される、微粒子の配列のメカニズムの模式的概略図を、図8a〜dに示す。
【0050】
図8a〜dに示すように、製造例1及び製造例2において溝の内部の側壁に選択的に微粒子の配列が起こるのは、その壁部には微粒子が懸濁した溶媒の溝の壁部に対するメニスカス先端部が生じるのに対して、底面には生じないからであると考えられた。
【0051】
このことを、図9を参照して更に説明すると、溝の内部の側壁においては、乾燥にともない、溶媒と溝の壁部と外気雰囲気の境界が後退(移動)し始める角度が充分に小さいために、微粒子が自己組織化するメニスカス先端部が生じ得ると考えられた(図9a)。これに対して、溝の内部の底面においては、乾燥にともない、溶媒と溝の壁部と外気雰囲気の境界が後退(移動)し始める角度が充分に小さくならないために、微粒子が自己組織化するメニスカス先端部が生じないと考えられた(図9b)。
【0052】
<試験例2> (微粒子の選択的な領域への配列のメカニズムの考察 その2)
上記メニスカス先端部に関わる状態パラメータと、単位体積あたりの微粒子の充填率(ε)については、下記数式(1)によって表すことができることが知られている(現代界面コロイド化学の基礎 平成14年5月15日 日本化学会 丸善株式会社)。
【0053】
【数3】
(上記式中、Vはメニスカス後退速度[m/s]、hは粒子整列部厚み[m]、Jeは乾燥速度[g/m・s]、lはメニスカスの長さ[m]、φは微粒子の溶液に対する体積率[%]、βは比例定数、εは充填率[%]である。)
【0054】
そこで、上記充填率を制御するために利用できる制御因子について検討した。その結果、粒子整列部厚みh[m]は、壁部の粗さ、溶媒の粘度、基板と溶媒の濡れ性、溶媒の表面張力、などで制御できると考えられた。また、メニスカス後退速度V[m/s]と乾燥速度Je[g/m・s]は、外気雰囲気の温度、湿度、気圧、などで制御できると考えられた。また、微粒子の溶液に対する体積率は、微粒子懸濁液の調整段階でこれを制御できると考えられた。
【0055】
<試験例3> (微粒子の溶媒に対する体積率の影響)
微粒子懸濁液中の微粒子の溶媒に対する体積率が、上記微粒子の単位体積あたり充填率にどのような影響があるかを調べた。試験は、製造例1と同様にして、ポリスチレンビーズの配列集合体を形成させる際に、そのポリスチレンビーズの水に対する体積%を、0.03体積%、0.06体積%、0.12体積%、0.25体積%、0.5体積%、1体積%とかえて、微粒子配列構造体を製造し、その側壁に堆積した粒子を電子顕微鏡で観察し、その数を計測した。その結果を図10に示す。
【0056】
図10に明らかなように、微粒子懸濁液中の微粒子の溶媒に対する体積%を0〜1体積%の範囲でかえると、その範囲において、上記数式1から予測されたとおり、微粒子の充填率との間に正の相関が認められた。したがって、微粒子懸濁液中の微粒子の溶媒に対する体積率を調整することで、溝の内部の側壁における上記微粒子の単位体積あたり充填率を制御できることが明らかとなった。
【0057】
<試験例4> (外気雰囲気の湿度の影響)
外気雰囲気の湿度が、上記微粒子の単位体積あたり充填率にどのような影響があるかを調べた。試験は、製造例1と同様にして、ポリスチレンビーズの配列集合体を形成させる際に、その恒温室の室内の湿度を50、67、90%とかえて、微粒子配列構造体を製造し、その側壁に堆積した粒子をCCD顕微鏡で観察した。その結果を図11―図13に示す。
【0058】
図11a,bに示すように、湿度50%で乾燥させると、側壁に単層の微粒子の配列集合体が形成されたのに対して、底面には微粒子がまばらに存在しているのみであって、微粒子の配列集合体は形成されなかった。なお、図11c,dは得られた顕微鏡写真を模式的に表した図である。
【0059】
図12a,bに示すように、湿度67%で乾燥させると、側壁に単層の微粒子の配列集合体が形成された。また、底面には微粒子がまばらに存在している部分と、それらが集合している部分が混在していた。なお、図12c,dは得られた顕微鏡写真を模式的に表した図である。
【0060】
図13a,bに示すように、湿度90%で乾燥させると、側壁に単層の微粒子の配列集合体が形成された。また、底面にも微粒子の配列集合体が形成された。なお、図13c,dは得られた顕微鏡写真を模式的に表した図である。
【0061】
以上から、外気雰囲気の湿度を調整することで、溝の内部の底面における上記微粒子の単位体積あたり充填率を制御できることが明らかとなった。
【0062】
<試験例5> (溝の壁部における溶媒に対する濡れ性の影響についての考察)
図14aには、フルオロカーボン膜処理したシリコン基板に水を滴下したときの状態を示す写真を示す。図14bには、硫酸/過酸化水素水混合溶液(SPM:Sulfuric acid /hydrogen Peroxide Mixture)で処理したシリコン基板に水を滴下したときの状態を示す写真を示す。図14aに示されるように、処理したシリコン基板に水を滴下した場合(図14b)に比べて、フルオロカーボン膜処理したシリコン基板表面における水の濡れ性は低く、水と基板との接触角は110度程度となった。したがって、溝の壁部の選択された所定の領域に、このような濡れ性を低下させる処理を施せば、上記メニスカス先端部が生じないため、部粒子の配列集合体の形成が起こらないものとないものと考えられた。
【符号の説明】
【0063】
1 基板の溝の壁部
2 微粒子懸濁液
2a 微粒子
3 溶媒の流れ
4 粒子整列部厚み
5 メニスカス先端部の長さ
6 メニスカス先端部の後退(移動)
7 液体の乾燥
10 シリコン基板
11 保護マスク
12 レジスト開口部
13 溝
14 保護膜
15 スキャロップ形状
20 容器
21 恒温室
22 引き上げ
30 ポリスチレンビーズの単層配列集合体
31 ポリスチレンビーズの複層配列集合体
32 微粒子の配列集合体
50 接触角
51 溶媒
66 基板/溶媒/外気の3者境界界面における溶媒の後退(移動)
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子配列構造体及びその製造方法に関し、より詳細には、基板に形成された溝の内壁に、微粒子が集合して規則的に配列した微粒子配列構造体を形成させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
数nm〜数μm程度の粒径の微粒子を集合して規則的に配列させてその配列構造を形成させる方法としては、微粒子を個々にマニピュレートする手法も考えられるが、工業的な応用のためには、微粒子の自己組織化現象を利用するのが現実的である。微粒子の自己組織化現象とは、すなわち、微粒子を溶媒に懸濁した微粒子懸濁液を基板に載置して、その溶媒を蒸発させていくと、溶媒の膜厚が微粒子の基板からの高さをぎりぎり満たす程度にまで小さくなった部分(メニスカス先端部)の蒸発に伴う溶媒の流れと溶媒の表面張力とによって、微粒子が個々に順次集合していく現象である。例えば下記特許文献1には、そのような微粒子の自己組織化現象を利用した微粒子薄膜の製造方法が記載されている。
【0003】
しかし、従来、フラットな基板に微粒子の配列集合体を形成させて2次元的な構造体とする技術の蓄積はあったが、これらの微粒子の配列集合体を3次元的な構造体とする技術の蓄積は乏しく、数百nm〜数百μm程度、深さ数μm〜1mm程度のいわゆるマイクロチャネルと呼ばれる微細溝構造の溝の内壁に、微粒子の配列集合体を形成させることは、技術的に難しかった。
【0004】
このような問題に対して、下記特許文献2において、微粒子懸濁液の微粒子の数量を調整してマイクロチャネルの内壁に微粒子の配列集合体を形成させる微粒子アセンブル法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−116502号公報
【特許文献2】特開2006−291303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載された技術は、溝構造の内壁の選択された所定の壁部にのみ微粒子の配列集合体を形成させることに適した技術ではなかった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、溝構造の内壁の選択された所定の壁部にのみ微粒子の配列集合体を形成させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するにあたり、本発明は、以下の構成を有する微粒子配列構造体及びその製造方法を提供する。
[1] 基板に形成された溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子が単層又は複数層で配列して形成されていることを特徴とする微粒子配列構造体。
[2] 前記基板は、シリコン、ガラス、アルミナ、ITO、プラスチック、又はポリカーボネートから選ばれたものである[1]記載の微粒子配列構造体。
[3] 前記溝は、幅0.1〜100μm、深さ5〜600μmである[1]又は[2]記載の微粒子配列構造体。
[4] 前記微粒子は、粒径が1nm〜5μmである[1]〜[3]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体。
[5] 前記微粒子の材料は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミ(Al)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の金属、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、FeO3、CdO、SrTiO3、CoO、Fe3O4、Cu2O、MgO、MnO、Ag2O、In2O3、WO3等の金属酸化物、又はポリスチレン、アクリル樹脂等の有機ポリマーである[1]〜[4]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体。
[6] 表面に所定の幅及び深さを有する溝が形成された基板の該溝に、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を充填し、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させることにより、前記溝の壁部に、前記微粒子が単層又は複数層で配列してなる該微粒子の配列集合体を形成させる微粒子配列構造体の製造方法であって、前記微粒子が懸濁した溶媒の前記溝の壁部に対するメニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させることを特徴とする微粒子配列構造体の製造方法。
[7] 前記微粒子懸濁液として前記微粒子の前記溶媒に対する体積率が所定の値の該微粒子懸濁液を用いることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる[6]記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[8] 前記溝に前記微粒子懸濁液を充填した後、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を所定の温度、湿度、及び/又は気圧下で乾燥させることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる[6]記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[9] 前記溝の選択された所定の壁部以外の該壁部の、前記微粒子縣濁液の溶媒に対する濡れ性を、前記選択された壁部よりも小さくすることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる[6]記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[10] 前記基板を前記溝の少なくとも一部が該微粒子懸濁液に接触するように浸漬させることにより、毛細管現象によって前記微粒子縣濁液を前記溝に充填し、次いで前記基板を引き上げて前記基板を乾燥させる[6]〜[9]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[11] 前記基板は、シリコン、ガラス、アルミナ、ITO、プラスチック、又はポリカーボネートから選ばれたものである[6]〜[10]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[12] 前記溝は、幅0.1〜100μm、深さ5〜600μmである[6]〜[11]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[13] 前記微粒子は、粒径が1nm〜5μmである[6]〜[12]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[14] 前記微粒子の材料は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミ(Al)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の金属、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、FeO3、CdO、SrTiO3、CoO、Fe3O4、Cu2O、MgO、MnO、Ag2O、In2O3、WO3等の金属酸化物、又はポリスチレン、アクリル樹脂等の有機ポリマーである[6]〜[13]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
[15] 前記溝の選択された所定の壁部に対する前記微粒子の充填率(ε)が所望の値となるように、下記数式(1)に基づいて設定した条件で、前記溝に充填した前記微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させる、[6]〜[14]のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【0009】
【数1】
(上記式中、Vはメニスカス後退速度[m/s]、hは粒子整列部厚み[m]、Jeは乾燥速度[g/m・s]、lはメニスカスの長さ[m]、φは微粒子の溶液に対する体積率[%]、βは比例定数、εは充填率[%]である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の微粒子配列構造体によれば、基板に形成された溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子が単層又は複数層で配列して形成されているので、例えば、溝の側壁面のみに導電性を有する金属酸化物の微粒子を配列させ、その微粒子の配列集合体を形成させることで、その金属酸化物の電極を形成し、一方で溝によって形成されている空間に気体が入り込むように構成して、溝の両側壁の電極間に流れる電流に係る抵抗値を測定することによって気体中のガスを感知する、ガスセンサなどに利用できる。
【0011】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法によれば、表面に所定の幅及び深さを有する溝が形成された基板の該溝に、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を充填し、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させることにより、前記溝の壁部に、前記微粒子が単層又は複数層で配列してなる該微粒子の配列集合体を形成させる微粒子配列構造体の製造方法において、前記微粒子が懸濁した溶媒の前記溝の壁部に対するメニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させるので、基板に形成された溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子が単層又は複数層で配列して形成されている微粒子配列構造体を、容易に製造することができる。
【0012】
また、本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、前記微粒子の前記溶媒に対する体積率や、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させる際の温度、湿度、気圧や、前記微粒子縣濁液の溶媒に対する濡れ性などを、それぞれ所定の値に調整することにより、上記メニスカス先端部が移動する領域を、容易に制御することができる。
【0013】
また、本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、前記微粒子の前記溶媒に対する体積率や、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させる際の温度、湿度、気圧や、前記微粒子縣濁液の溶媒に対する濡れ性などを、それぞれ所定の値に調整することにより、前記溝の選択された所定の壁部に対する前記微粒子の充填率(ε)を、容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】微粒子懸濁液の溶媒のメニスカス先端部の概念図である。
【図2】深堀り反応性イオンエッチング(DRIE:Deep Reactive Ion Etching)により基板に溝を形成する工程の模式図である。
【図3】深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)により得られた溝の顕微鏡写真(a)及びその模式図(b)である。
【図4】基板の溝に微粒子懸濁液を充填する方法の一態様を示す模式図である。
【図5】製造例1で得られた微粒子配列構造体の顕微鏡写真(a)、その部分拡大写真(b)、及びその構造の模式図(c)である。
【図6】製造例2で得られた微粒子配列構造体の顕微鏡写真(a)及びその構造の模式図(b)である。
【図7】基板の溝に充填した純水の乾燥過程を観察した結果(乾燥開始直後(a)、乾燥開始12秒後(b)、乾燥開始26秒後(c)、乾燥開始120秒後(d))を示す顕微鏡写真である。
【図8】試験例1における微粒子の溝の側壁への配列のメカニズムを示す模式図である。
【図9】基板/溶媒/外気の3者境界界面における溶媒の後退(移動)と接触角との関係を示す模式図である。
【図10】微粒子懸濁液中の微粒子の溶媒に対する体積率と側壁粒子堆積数との関係を示す図表である。
【図11】外気雰囲気の湿度が50%のときの微粒子配列構造体を観察した結果を示す顕微鏡写真(a:側壁、b:底面)、及びそれらの構造の模式図(c:側壁、d:底面)である。
【図12】外気雰囲気の湿度が67%のときの微粒子配列構造体を観察した結果を示す顕微鏡写真(a:側壁、b:底面)、及びそれらの構造の模式図(c:側壁、d:底面)である。
【図13】外気雰囲気の湿度が90%のときの微粒子配列構造体を観察した結果を示す顕微鏡写真(a:側壁、b:底面)、及びそれらの構造の模式図(c:側壁、d:底面)である。
【図14】フルオロカーボン膜処理したシリコン基板に水を滴下したときの状態を示す写真(a)、及び硫酸/過酸化水素水混合溶液(SPM:Sulfuric acid /hydrogen Peroxide Mixture)で処理したシリコン基板に水を滴下したときの状態を示す写真(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の微粒子配列構造体は、基板に形成された溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子が単層又は複数層で配列して形成されていることを特徴とする。本発明の微粒子配列構造体は、後述する微粒子配列構造体の製造方法によって得ることができる。
【0016】
本発明の微粒子配列構造体における基板の材質としては、微細溝構造を形成できる基板であれば特に制限を受けないが、シリコン、ガラス、アルミナ、ITO、プラスチック、ポリカーボネートなどを好ましく例示できる。
【0017】
本発明の微粒子配列構造体における溝の構造としては、幅0.1〜100μm、深さ5〜600μm程度の微細溝構造であることが好ましい。このような微細溝構造の内壁部に微粒子の配列構造体を形成することで、コンパクトで集積化された3次元的構造を有する反応プラットフォームなどに利用できる。
【0018】
本発明の微粒子配列構造体における微粒子としては、粒径が1nm〜5μm程度、より好ましくは粒径が1nm〜100nm程度のものが用いられる。これにより、後述する自己組織化現象を利用した微粒子の配列構造体の形成が容易となる。また、配列構造体の体積あたりの表面積をより大きくすることができ、コンパクトで集積化された3次元的構造を有する反応プラットフォームなどにより適している。
【0019】
本発明の微粒子配列構造体における微粒子の材料としては、上記微粒子を構成できるものであれば特に制限を受けないが、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミ(Al)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の金属、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、FeO3、CdO、SrTiO3、CoO、Fe3O4、Cu2O、MgO、MnO、Ag2O、In2O3、WO3等の金属酸化物、又はポリスチレン、アクリル樹脂等の有機ポリマーなどを好ましく例示できる。
【0020】
一方、本発明の微粒子配列構造体の製造方法は、表面に所定の幅及び深さを有する溝が形成された基板の該溝に、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を充填し、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させることにより、前記溝の壁部に、前記微粒子が単層又は複数層で配列してなる該微粒子の配列集合体を形成させる微粒子配列構造体の製造方法であって、前記微粒子が懸濁した溶媒の前記溝の壁部に対するメニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させることを特徴とする。
【0021】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法において、「メニスカス先端部」とは、溶媒に懸濁させた微粒子が、溶媒と溝の壁部と外気雰囲気の境界あたりで、微粒子の自己組織化現象を起こし得る状態となった微粒子懸濁液の溶媒の所定部分を意味している。ここでは、図1を参照して説明する。この図1には、基板の溝の壁部1に対する微粒子懸濁液2のメニスカス先端部の様子が表されている。微粒子懸濁液2の溶媒の膜厚が、微粒子2aによる粒子整列部厚み4をぎりぎり満たす程度にまで小さくなった部分(図中、「A」で示される。)から、溶媒と溝の壁部と外気雰囲気の境界の最先端までの部分(図中、「B」で示される。)では、乾燥7にともなう溶媒の流れ3と溶媒の表面張力とによって微粒子2aが個々に順次集合していく。この部分(図中、メニスカス先端部の長さ5で示される。)が「メニスカス先端部」である。そして乾燥7にともなって、この「メニスカス先端部」は、図中の下方に向かって後退6していき、基板の溝の壁部1の表面を移動していく。
【0022】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、上記メニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させることができる。
【0023】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、まず、表面に所定の幅及び深さを有する溝が形成された基板を準備する。溝が形成された基板の該溝の形成方法については、基板の材質や、得ようとする溝の構造等に適するものを適宜選択すればよく、特に制限はないが、例えば基板の材質がシリコンである場合には、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE:Deep Reactive Ion Etching)で行うことができる。
【0024】
この深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)について、図2を参照して説明すると、表面に所定の開口12部を設けて保護マスク11で覆った基板10に対し、六フッ化硫黄(SF6)などのプラズマイオンで垂直方向にエッチングを行う。そのエッチングによって形成した溝13の内壁面をテフロン系のガス(C4F8)などの保護膜14で保護する。このエッチングと保護膜形成の工程を繰り返すことで、前記保護マスクの開口部に溝13が形成される。エッチング工程の後の保護膜形成によって、溝13の底面にも保護膜14が形成されるが、次段階のエッチング工程において、六フッ化硫黄(SF6)のプラズマイオンが底面の保護膜14にアタックして除去しつつ垂直方向へのエッチングをすすめ、一方、横方向に対しては上記プラズマイオンの照射が弱いので、保護膜14は除去されずに側壁面がエッチングから保護される。
【0025】
図3aには、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)で得られた溝の顕微鏡写真の一例を示す。また、図3bにはその模式図を示す。溝の側壁面の形状が、一段毎に図正面から見て左右方向に窪んでいるスキャロップ形状と呼ばれる形状15になっているのは、プラズマに電界をかけて異方性を出してはいるが、化学反応に由来する横方向のエッチングが生じるためである。なお、図3に示す溝の側壁面のスキャロップ形状は、溝の深さ方向の長さ当たりの数がおよそ1個/μmであり、一段毎のくぼみの最大深さがおよそ500nmであるが、上記プラズマイオンの照射時間を調整することで、前者を0.1〜10個/μmの範囲で、後者を100〜1000nmの範囲で制御することが可能である。
【0026】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、また、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を準備する。用いる溶媒としては、粘度、微粒子の分散性や、基板に対する濡れ性などによって、適宜に選択すればよいが、一般的には例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、キシレン、トルエンなどが例示できる。
【0027】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、上記溝が形成された基板の該溝に、上記微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を充填する。微粒子懸濁液を充填する方法に特に制限はなく、その溝の上に噴霧、滴下するなどして載置し、毛細管現象により溝に上記微粒子懸濁液が充填させるなどして行うことができる。
【0028】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、上記溝に充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させる。乾燥の方法は、自然乾燥でもよく、溶媒の蒸発を促進させるために、減圧下に行ってもよい。
【0029】
ここで、図4を参照して、上記充填、乾燥の工程の好ましい態様の一例を説明する。ここでは、ビーカーを載せることができる支持台と、シリコン基板を保持して垂直方向に上下移動できるアームとを備えた基板の保持移動装置(図示せず)を用いる。微粒子懸濁液を入れた容器20を前記基板の保持移動装置の支持台(図示せず)に置く。他方で溝の形成されたシリコン基板10は、前記基板の保持移動装置のアーム(図示せず)に保持されている。シリコン基板を保持したままアームを下方に移動させて、基板の溝の少なくとも一部が微粒子懸濁液に接触するように浸漬させ、所定位置でアームを停止する。この状態で一定時間おくと微粒子縣濁液2は毛細管現象によって前記基板10の溝に充填する。次いで前記アームを上方に移動させて前記基板10を微粒子懸濁液2から引き上げて室内、又は温度、湿度、気圧等の制御された外気雰囲気下で乾燥させる。前記基板の保持移動装置を恒温室内に設置して上記操作を行うことで、温度、湿度、気圧等の制御された外気雰囲気下で乾燥させることが容易となる。
【0030】
このとき、微粒子懸濁液の溝への均一な充填のためには、溝の長さ方向がシリコン基板を上下させる方向と同じ方向であることが好ましいが、それ以外の方向に形成されていてもよい。また、浸漬時間(アームを所定位置に停止させてから上方に移動させ始めるまでの時間)は例えば1〜30秒程度で行うことができ、引き上げ速度は例えば1μm〜20mm/秒程度で行うことができる。
【0031】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、微粒子懸濁液の溶媒が乾燥するにつれて、上記メニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにさせる。その態様としては例えば下記のようなものが挙げられる。
【0032】
(1)微粒子懸濁液における微粒子の溶媒に対する体積率を調整する。
すなわち後述の実施例で示されるように、ポリスチレンビーズを水に懸濁した微粒子懸濁液を、シリコン基板上に形成した幅50μm×深さ100μmの微細溝に充填して、室温で自然乾燥させると、まず、側壁面に上記メニスカス先端部が生じ、それが側壁面の一定の領域を移動する。したがって、上記メニスカス先端部が移動した領域で微粒子の配列集合体が形成され、微粒子懸濁液に含有せしめる微粒子を所定数量に制限しておけば、集合体を形成し得る微粒子が枯渇するので、枯渇した段階でそれ以外の側壁面や底面には微粒子の配列集合体は形成されない。
【0033】
(2)外気雰囲気における温度、湿度、及び/又は気圧を調整する。
すなわち後述の実施例で示されるように、外気雰囲気の湿度を下げて、上記メニスカス先端部の溶媒の乾燥速度を高めると、微粒子の自己組織化が促進される。したがって、外気雰囲気における温度、湿度、及び/又は気圧を調整して、乾燥速度を高めれば、その領域あたりの充填率が上がり、その充填率が上がるにつれ単層から複数層に微粒子が配列するようになる。一方で、上記(1)と同様に、微粒子懸濁液に含有せしめる微粒子を所定数量に制限しておけば、集合体を形成し得る微粒子が枯渇するので、枯渇した段階でそれ以外の側壁面や底面には微粒子の配列集合体は形成されない。したがって、その分、微粒子の配列集合体が形成される領域はより制限される。
【0034】
(3)溝の壁部における溶媒に対する濡れ性を調整する。
微粒子の配列集合体を形成させる領域以外の壁部に対して、微粒子懸濁液の溶媒に対する濡れ性を調整して、その所定領域の壁部にメニスカス先端部が生じないようにすれば、所望の領域の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させることができる。
【0035】
すなわち後述の実施例で示されるように、例えば撥水被膜処理を施した壁部の水に対する濡れ性は非常に小さく、水は壁部に対する大きな接触角を保ったまま乾燥する。したがって、メニスカス先端部は生じずに微粒子の配列集合体が形成されることがない。
【0036】
そこで、例えば、上記に説明した深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)において、溝側壁面の保護膜として、撥水被膜(フルオロカーボン膜)を施す。これにより、側壁での微粒子集合体の形成を妨げることができ、それ以外の領域(底面)での微粒子の配列集合体の形成を促すことができる。
【0037】
本発明の微粒子配列構造体の製造方法においては、下記数式(1)に基づいて設定した条件で、上記溝に充填した上記微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させることで、上記溝の選択された所定の壁部に対する上記微粒子の充填率(ε)が所望の値となるように制御することができる。
【0038】
【数2】
(上記式中、Vはメニスカス後退速度[m/s]、hは粒子整列部厚み[m]、Jeは乾燥速度[g/m・s]、lはメニスカスの長さ[m]、φは微粒子の溶液に対する体積率[%]、βは比例定数、εは充填率[%]である。)
【0039】
ここで、充填率[%]とは、単位体積あたりを占有する微粒子の体積のことである。メニスカス後退速度[m/s]とは、液体の体積減少に伴ったメニスカス先端部の後退速度(移動速度)のことである。粒子整列部厚み[m]とは堆積した粒子膜の厚みのことである。乾燥速度[g/m・s]とは溶媒の乾燥速度のことである。メニスカスの長さ[m]とはメニスカス先端部の長さのことである。微粒子の溶液に対する体積率[%]とは、用いる微粒子懸濁液中の微粒子の溶液に対する体積率のことである。これらのパラメータは電子顕微鏡などでの観察により実測することも可能である。なお、比例定数βは上記パラメータを相関付ける比例定数である。
【実施例】
【0040】
以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0041】
<製造例1> (微粒子配列構造体の製造 その1)
表面に幅50μm×深さ100μm×長さ10mmのトレンチ状の溝が形成されたシリコン基板を、上記に説明した深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)で得た。
【0042】
一方、ビーカーを載せることができる支持台と、シリコン基板を保持して垂直方向に上下移動できるアームとを備えた基板の保持移動装置を、恒温室に設置した。この基板の保持移動装置の脇にはCCD顕微鏡を配置し、上記トレンチ状の溝内部の様子を観察、記録できるようにした。
【0043】
上記基板の保持移動装置の支持台に、ポリスチレンビーズ(Thermo Fisher Scientific 社製、粒径 1μm)の6体積%水懸濁液を入れた容器を置き、他方で上記トレンチ状の溝を有するシリコン基板を、基板の保持移動装置のアームに取り付けて、これを保持したままを下方に移動させて、基板の溝の少なくとも一部が微粒子懸濁液に接触するように浸漬させ、所定位置でアームを停止させた。この状態で5秒置き、5mm/秒でアームを上方に移動させて、上記基板を引き上げた。その基板をアームに取り付けたままの状態で、温度22℃湿度55%に保たれた恒温室内で10分間静置し、上記微粒子懸濁液の溶媒である水を乾燥させた。
【0044】
図5aには、得られた微粒子配列構造体の顕微鏡写真を示す。また、図5bには図5aに示す顕微鏡写真の部分拡大写真を示す。なお、図5cは得られた微粒子配列構造体を模式的に表した図である。これらの顕微鏡写真にみられるように、溝の内部の側壁に、スチレンビーズが規則正しく単層に配列した微粒子の配列集合体が形成していることがわかる。その一方で、溝の内部の底面には、スチレンビーズの配列集合体が形成していないことがわかる。
【0045】
<製造例2> (微粒子配列構造体の製造 その2)
異なる粒径(0.5μm)のポリスチレンビーズ(Thermo Fisher Scientific 社製、粒径 0.5μm)を用い、温度25℃湿度40%に保たれた恒温室内で微粒子懸濁液の溶媒である水を乾燥させた以外は、製造例1と同様にして、微粒子配列構造体を得た。
【0046】
図6aには、得られた微粒子配列構造体の顕微鏡写真を示す。なお、図6bは得られた微粒子配列構造体を模式的に表した図である。これらの顕微鏡写真にみられるように、溝の内部の側壁に、スチレンビーズが規則正しく複層に配列した微粒子の配列集合体が形成していることがわかる。
【0047】
<試験例1> (微粒子の選択的な領域への配列のメカニズムの考察 その1)
製造例1及び製造例2においては、いずれも微粒子の配列集合体が溝の内部の側壁に形成され、その底面には形成されなかった。そこで、この選択的な領域への配列のメカニズムについて検討した。
【0048】
そのために、上記製造例1及び製造例2と同じく、表面に幅50μm×深さ100μm×長さ10mmのトレンチ状の溝が形成されたシリコン基板を準備した。この基板の溝に純水を滴下して充填し、その純水の乾燥過程をCCD顕微鏡で観察した。
【0049】
図7には、乾燥開始直後(a)、乾燥開始12秒後(b)、乾燥開始26秒後(c)、乾燥開始120秒後(d)の断面の顕微鏡写真を示す。また、この結果から考察される、微粒子の配列のメカニズムの模式的概略図を、図8a〜dに示す。
【0050】
図8a〜dに示すように、製造例1及び製造例2において溝の内部の側壁に選択的に微粒子の配列が起こるのは、その壁部には微粒子が懸濁した溶媒の溝の壁部に対するメニスカス先端部が生じるのに対して、底面には生じないからであると考えられた。
【0051】
このことを、図9を参照して更に説明すると、溝の内部の側壁においては、乾燥にともない、溶媒と溝の壁部と外気雰囲気の境界が後退(移動)し始める角度が充分に小さいために、微粒子が自己組織化するメニスカス先端部が生じ得ると考えられた(図9a)。これに対して、溝の内部の底面においては、乾燥にともない、溶媒と溝の壁部と外気雰囲気の境界が後退(移動)し始める角度が充分に小さくならないために、微粒子が自己組織化するメニスカス先端部が生じないと考えられた(図9b)。
【0052】
<試験例2> (微粒子の選択的な領域への配列のメカニズムの考察 その2)
上記メニスカス先端部に関わる状態パラメータと、単位体積あたりの微粒子の充填率(ε)については、下記数式(1)によって表すことができることが知られている(現代界面コロイド化学の基礎 平成14年5月15日 日本化学会 丸善株式会社)。
【0053】
【数3】
(上記式中、Vはメニスカス後退速度[m/s]、hは粒子整列部厚み[m]、Jeは乾燥速度[g/m・s]、lはメニスカスの長さ[m]、φは微粒子の溶液に対する体積率[%]、βは比例定数、εは充填率[%]である。)
【0054】
そこで、上記充填率を制御するために利用できる制御因子について検討した。その結果、粒子整列部厚みh[m]は、壁部の粗さ、溶媒の粘度、基板と溶媒の濡れ性、溶媒の表面張力、などで制御できると考えられた。また、メニスカス後退速度V[m/s]と乾燥速度Je[g/m・s]は、外気雰囲気の温度、湿度、気圧、などで制御できると考えられた。また、微粒子の溶液に対する体積率は、微粒子懸濁液の調整段階でこれを制御できると考えられた。
【0055】
<試験例3> (微粒子の溶媒に対する体積率の影響)
微粒子懸濁液中の微粒子の溶媒に対する体積率が、上記微粒子の単位体積あたり充填率にどのような影響があるかを調べた。試験は、製造例1と同様にして、ポリスチレンビーズの配列集合体を形成させる際に、そのポリスチレンビーズの水に対する体積%を、0.03体積%、0.06体積%、0.12体積%、0.25体積%、0.5体積%、1体積%とかえて、微粒子配列構造体を製造し、その側壁に堆積した粒子を電子顕微鏡で観察し、その数を計測した。その結果を図10に示す。
【0056】
図10に明らかなように、微粒子懸濁液中の微粒子の溶媒に対する体積%を0〜1体積%の範囲でかえると、その範囲において、上記数式1から予測されたとおり、微粒子の充填率との間に正の相関が認められた。したがって、微粒子懸濁液中の微粒子の溶媒に対する体積率を調整することで、溝の内部の側壁における上記微粒子の単位体積あたり充填率を制御できることが明らかとなった。
【0057】
<試験例4> (外気雰囲気の湿度の影響)
外気雰囲気の湿度が、上記微粒子の単位体積あたり充填率にどのような影響があるかを調べた。試験は、製造例1と同様にして、ポリスチレンビーズの配列集合体を形成させる際に、その恒温室の室内の湿度を50、67、90%とかえて、微粒子配列構造体を製造し、その側壁に堆積した粒子をCCD顕微鏡で観察した。その結果を図11―図13に示す。
【0058】
図11a,bに示すように、湿度50%で乾燥させると、側壁に単層の微粒子の配列集合体が形成されたのに対して、底面には微粒子がまばらに存在しているのみであって、微粒子の配列集合体は形成されなかった。なお、図11c,dは得られた顕微鏡写真を模式的に表した図である。
【0059】
図12a,bに示すように、湿度67%で乾燥させると、側壁に単層の微粒子の配列集合体が形成された。また、底面には微粒子がまばらに存在している部分と、それらが集合している部分が混在していた。なお、図12c,dは得られた顕微鏡写真を模式的に表した図である。
【0060】
図13a,bに示すように、湿度90%で乾燥させると、側壁に単層の微粒子の配列集合体が形成された。また、底面にも微粒子の配列集合体が形成された。なお、図13c,dは得られた顕微鏡写真を模式的に表した図である。
【0061】
以上から、外気雰囲気の湿度を調整することで、溝の内部の底面における上記微粒子の単位体積あたり充填率を制御できることが明らかとなった。
【0062】
<試験例5> (溝の壁部における溶媒に対する濡れ性の影響についての考察)
図14aには、フルオロカーボン膜処理したシリコン基板に水を滴下したときの状態を示す写真を示す。図14bには、硫酸/過酸化水素水混合溶液(SPM:Sulfuric acid /hydrogen Peroxide Mixture)で処理したシリコン基板に水を滴下したときの状態を示す写真を示す。図14aに示されるように、処理したシリコン基板に水を滴下した場合(図14b)に比べて、フルオロカーボン膜処理したシリコン基板表面における水の濡れ性は低く、水と基板との接触角は110度程度となった。したがって、溝の壁部の選択された所定の領域に、このような濡れ性を低下させる処理を施せば、上記メニスカス先端部が生じないため、部粒子の配列集合体の形成が起こらないものとないものと考えられた。
【符号の説明】
【0063】
1 基板の溝の壁部
2 微粒子懸濁液
2a 微粒子
3 溶媒の流れ
4 粒子整列部厚み
5 メニスカス先端部の長さ
6 メニスカス先端部の後退(移動)
7 液体の乾燥
10 シリコン基板
11 保護マスク
12 レジスト開口部
13 溝
14 保護膜
15 スキャロップ形状
20 容器
21 恒温室
22 引き上げ
30 ポリスチレンビーズの単層配列集合体
31 ポリスチレンビーズの複層配列集合体
32 微粒子の配列集合体
50 接触角
51 溶媒
66 基板/溶媒/外気の3者境界界面における溶媒の後退(移動)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子が単層又は複数層で配列して形成されていることを特徴とする微粒子配列構造体。
【請求項2】
前記基板は、シリコン、ガラス、アルミナ、ITO、プラスチック、又はポリカーボネートから選ばれたものである請求項1記載の微粒子配列構造体。
【請求項3】
前記溝は、幅0.1〜100μm、深さ5〜600μmである請求項1又は2記載の微粒子配列構造体。
【請求項4】
前記微粒子は、粒径が1nm〜5μmである請求項1〜3のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体。
【請求項5】
前記微粒子の材料は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミ(Al)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の金属、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、FeO3、CdO、SrTiO3、CoO、Fe3O4、Cu2O、MgO、MnO、Ag2O、In2O3、WO3等の金属酸化物、又はポリスチレン、アクリル樹脂等の有機ポリマーである請求項1〜4のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体。
【請求項6】
表面に所定の幅及び深さを有する溝が形成された基板の該溝に、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を充填し、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させることにより、前記溝の壁部に、前記微粒子が単層又は複数層で配列してなる該微粒子の配列集合体を形成させる微粒子配列構造体の製造方法であって、前記微粒子が懸濁した溶媒の前記溝の壁部に対するメニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させることを特徴とする微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項7】
前記微粒子懸濁液として、前記微粒子の前記溶媒に対する体積率が所定の値の該微粒子懸濁液を用いることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる請求項6記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項8】
前記溝に前記微粒子懸濁液を充填した後、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を所定の温度、湿度、及び/又は気圧下で乾燥させることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる請求項6記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項9】
前記溝の選択された所定の壁部以外の該壁部の、前記微粒子縣濁液の溶媒に対する濡れ性を、前記選択された壁部よりも小さくすることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる請求項6記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項10】
前記基板を前記溝の少なくとも一部が該微粒子懸濁液に接触するように浸漬させることにより、毛細管現象によって前記微粒子縣濁液を前記溝に充填し、次いで前記基板を引き上げて前記基板を乾燥させる請求項6〜9のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項11】
前記基板は、シリコン、ガラス、アルミナ、ITO、プラスチック、又はポリカーボネートから選ばれたものである請求項6〜10のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項12】
前記溝は、幅0.1〜100μm、深さ5〜600μmである請求項6〜10のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項13】
前記微粒子は、粒径が1nm〜5μmである請求項6〜11のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項14】
前記微粒子の材料は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミ(Al)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の金属、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、FeO3、CdO、SrTiO3、CoO、Fe3O4、Cu2O、MgO、MnO、Ag2O、In2O3、WO3等の金属酸化物、又はポリスチレン、アクリル樹脂等の有機ポリマーである請求項6〜12のいずれか1つに微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項15】
前記溝の選択された所定の壁部に対する前記微粒子の充填率(ε)が所望の値となるように、下記数式(1)に基づいて設定した条件で、前記溝に充填した前記微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させる、請求項6〜14のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【数1】
(上記式中、Vはメニスカス後退速度[m/s]、hは粒子整列部厚み[m]、Jeは乾燥速度[g/m・s]、lはメニスカスの長さ[m]、φは微粒子の溶液に対する体積率[%]、βは比例定数、εは充填率[%]である。)
【請求項1】
基板に形成された溝の選択された所定の壁部にのみ、微粒子が単層又は複数層で配列して形成されていることを特徴とする微粒子配列構造体。
【請求項2】
前記基板は、シリコン、ガラス、アルミナ、ITO、プラスチック、又はポリカーボネートから選ばれたものである請求項1記載の微粒子配列構造体。
【請求項3】
前記溝は、幅0.1〜100μm、深さ5〜600μmである請求項1又は2記載の微粒子配列構造体。
【請求項4】
前記微粒子は、粒径が1nm〜5μmである請求項1〜3のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体。
【請求項5】
前記微粒子の材料は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミ(Al)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の金属、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、FeO3、CdO、SrTiO3、CoO、Fe3O4、Cu2O、MgO、MnO、Ag2O、In2O3、WO3等の金属酸化物、又はポリスチレン、アクリル樹脂等の有機ポリマーである請求項1〜4のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体。
【請求項6】
表面に所定の幅及び深さを有する溝が形成された基板の該溝に、微粒子を溶媒に懸濁してなる微粒子懸濁液を充填し、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させることにより、前記溝の壁部に、前記微粒子が単層又は複数層で配列してなる該微粒子の配列集合体を形成させる微粒子配列構造体の製造方法であって、前記微粒子が懸濁した溶媒の前記溝の壁部に対するメニスカス先端部が、前記溝の壁部の選択された所定の領域のみを移動するようにして、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させることを特徴とする微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項7】
前記微粒子懸濁液として、前記微粒子の前記溶媒に対する体積率が所定の値の該微粒子懸濁液を用いることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる請求項6記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項8】
前記溝に前記微粒子懸濁液を充填した後、前記充填した微粒子縣濁液の溶媒を所定の温度、湿度、及び/又は気圧下で乾燥させることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる請求項6記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項9】
前記溝の選択された所定の壁部以外の該壁部の、前記微粒子縣濁液の溶媒に対する濡れ性を、前記選択された壁部よりも小さくすることにより、前記溝の選択された所定の壁部にのみ、前記微粒子の配列集合体を形成させる請求項6記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項10】
前記基板を前記溝の少なくとも一部が該微粒子懸濁液に接触するように浸漬させることにより、毛細管現象によって前記微粒子縣濁液を前記溝に充填し、次いで前記基板を引き上げて前記基板を乾燥させる請求項6〜9のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項11】
前記基板は、シリコン、ガラス、アルミナ、ITO、プラスチック、又はポリカーボネートから選ばれたものである請求項6〜10のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項12】
前記溝は、幅0.1〜100μm、深さ5〜600μmである請求項6〜10のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項13】
前記微粒子は、粒径が1nm〜5μmである請求項6〜11のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項14】
前記微粒子の材料は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミ(Al)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の金属、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、FeO3、CdO、SrTiO3、CoO、Fe3O4、Cu2O、MgO、MnO、Ag2O、In2O3、WO3等の金属酸化物、又はポリスチレン、アクリル樹脂等の有機ポリマーである請求項6〜12のいずれか1つに微粒子配列構造体の製造方法。
【請求項15】
前記溝の選択された所定の壁部に対する前記微粒子の充填率(ε)が所望の値となるように、下記数式(1)に基づいて設定した条件で、前記溝に充填した前記微粒子縣濁液の溶媒を乾燥させる、請求項6〜14のいずれか1つに記載の微粒子配列構造体の製造方法。
【数1】
(上記式中、Vはメニスカス後退速度[m/s]、hは粒子整列部厚み[m]、Jeは乾燥速度[g/m・s]、lはメニスカスの長さ[m]、φは微粒子の溶液に対する体積率[%]、βは比例定数、εは充填率[%]である。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−56626(P2011−56626A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209244(P2009−209244)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(ロボット・新技術イノベーションプログラム)「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(ロボット・新技術イノベーションプログラム)「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]