説明

微細構造の製造方法、及び半導体デバイスの製造方法

【課題】 露光装置を使用しては製造が不可能であった微細構造を製造する方法を提供する。
【解決手段】 ウエハ1上にレジスト2を塗布する。このレジスト2としては、γ特性のなだらかなレジストを使用する。そしてマスク3を使用して露光を行う(a)。このとき、L/Sの像のピッチがg線ステッパの解像限界に近いため、レジスト2を現像するとレジスト2の形状がほぼ正弦波となる(b)。このレジスト2の表面に、保護膜4を塗布し、さらにその上に、γ特性がシャープなレジスト5を塗布する(c)。続いてマスク6を使用して露光を行う(d)。レジスト5を現像すると(e)に示すような形状が形成される。次にこれらの全体を減厚し、(f)に示すような形状を得る。続いて残ったレジストをマスクとしてウエハ1をエッチングし(g)、その後レジスト溶解除去すると、ウエハ表面に細かなL/Sパターンを形成することができる(h)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板上に微細構造を製造する方法、及びこの方法を使用した半導体デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリの大容量化や、CPUプロセッサの高速化、大容量化の進展と共に、半導体デバイスの集積度を高める必要性がさらに大きくなってきており、微細なL/S(ライン・アンド・スペース)からなるパターンを形成するための開発がなされている。従来は、このようなパターンの形成は、専らフォトリソグラフィを使用して行われてきている。
【0003】
フォトリソグラフィにおいては、形成できるパターンの線幅は、露光装置の解像度によって決定され、露光装置の解像度は、露光装置のNAと使用波長、及び露光方法により決定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上説明したように、現在でのL/Sパターンの線幅は、露光装置の解像度によって決定され、細かくすることに限界がある。本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、従来と同じ解像度の露光装置を使用しながら、その露光装置を使用しては製造が不可能であった微細構造を製造する方法、及びこの方法を使用した半導体デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための第1の手段は、以下の工程を有することを特徴とする微細構造の製造方法である。
(1)基板上に、周期的でかつ一周期内で徐々に厚さが変化する第1レジスト層を形成する工程
(2)前記第1レジスト層の表面に、次の(3)工程で形成する第2のレジスト層を溶解する現像液に溶解しない保護膜を成膜する工程
(3)前記保護膜上に、所定露光量以上の露光を受けた領域は完全に溶解し、所定露光量以下の露光しか受けていない領域は溶解しないようなγ特性を有する第2のレジスト層を均一な厚さで成膜する工程
(4)前記第2のレジスト層を現像した後に、前記第1レジスト層の所定以上の厚さを有する領域上に形成された前記第2レジスト層が完全に除去され、前記第1レジスト層の所定以下の厚さを有する領域上に形成された前記第2レジスト層が残るような露光量で、前記第2レジスト層を露光する工程
(5)前記第2レジスト層を現像し、前記第1レジスト層の所定以下の厚さを有する領域の上に形成された前記第2レジスト層を完全に除去する工程
(6)残った前記第2レジスト層と前記第1レジスト層とを一定の除去速度で除去する工程
(7)残った前記第1レジスト層をマスクとして、前記基板をエッチングする工程
(8)残った前記第1レジスト層を除去する工程
【0006】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記(1)の工程が、レジストの溶解量が露光量に応じて徐々に増減するようなγ特性を有する第1レジスト層上に、露光装置の解像限界と同等又はこれより狭い幅と線間隔を有するL/Sパターンの露光を行い、現像する工程であることを特徴とするものである。
【0007】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段である微細構造の製造方法により製造された型を用いて、ナノプリント技術により他の部材に微細構造を転写する工程を有することを特徴とする微細構造の製造方法である。
【0008】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段を使用して、前記基板としてのウエハ上に微細なL/Sパターンを形成する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来と同じ解像度の露光装置を使用しながら、その露光装置を使用しては製造が不可能であった微細構造を製造する方法、及びこの方法を使用した半導体デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、従来の露光装置を用いて、ウエハ上に、従来の露光装置で製造可能であった線幅の約半分の線幅を有するL/Sパターンを製造する例を示す図である。なお、この例においては、レジストはポジ型レジストを使用している。
【0011】
露光装置としてg線(露光光波長435.8nm)ステッパを用いている。ウエハ1上にレジスト2を塗布する。このレジスト2としては、グレースケールマスクを用いたマイクロレンズの製造等に使用される、γ特性のなだらかなレジストを使用する。そして、g線ステッパの波長と開口数で決定される解像限界に近いピッチ(周期600nm、線幅300nm)のL/S像がレジスト2上に形成されるようなマスク3を使用して露光を行う(a)。
【0012】
このとき、L/Sの像のピッチがg線ステッパの解像限界に近いため、マスク3でのL/Sパターンは2値パターン(光の完全透過か完全遮蔽)となっているが、ウエハ1上に実際に形成される像がボケ、周期が600nmの正弦波パターンの強度を有するようになっている。従って、レジスト2を現像すると、レジスト2のγ特性がなだらかなので、レジスト2の形状もほぼ正弦波となる(b)。この正弦波の山と谷の高さの差は、約20nm程度としている。
【0013】
このレジスト2の表面に、保護膜4を塗布し、さらにその上に、γ特性がシャープなレジスト5を塗布する(c)。保護膜4は、後にレジスト5を現像するときのストッパとなるものであり、レジスト5の現像液に溶解しないものであれば、金属薄膜、自己組織化膜、LB膜、クロミック膜、有機色素、樹脂などが使用できる。後の工程で行われるエッチングに対しては耐性の高くないものであることが必要である。又、レジスト5は、20nm程度に薄く塗布することにより、忠実に下地であるレジスト2と保護膜4の形状にならった、ほぼ均一な厚さを有する形状となる。
【0014】
続いて、同じステッパを用い、解像限界に近いピッチ(周期600nm、線幅300nm)のL/S像がレジスト2上に形成されるようなマスク6を使用して露光を行う(d)。このとき、マスク6として、(a)に示されるマスク3のパターンを反転させたものを使用する。すなわち、レジスト5の山の近傍部分が露光され、谷の近傍部分が露光されないようにする。
【0015】
マスク6を用いた場合でも、レジスト5上に実際に形成されるパターンがステッパの解像限界のために正弦波状となることは、マスク3を用いた場合と同じである。しかし、レジスト5を現像した場合には、レジスト5のγ特性がシャープであるため、所定露光量以上の露光を受けたところは完全に溶解し、この所定露光量未満の露光しかうけなかったところは溶解する量がわずかであるためほぼ原型をとどめるので、(e)に示すような形状が形成される。このとき、レジスト5が完全に溶解した部分では、保護膜4がむき出しとなるが、保護膜4は、レジスト5の現像液に溶解しないので、レジスト2の形状は変化せずに保たれる。
【0016】
次にレジスト5、保護膜4、レジスト2を同時に、エッチングスピードが等しい条件でドライエッチングを行うと、上から一定のスピードで均等にエッチングされ(一様な厚さの除去)、(f)に示すような形状が得られる。保護膜4として、エッチングレートがレジスト2,レジスト5のエッチングレートに比べて極めて大きいものを使用すれば、保護膜4の厚さは事実上無視できる。
【0017】
続いて残ったレジスト2をマスクとしてウエハ1をエッチングし(g)、その後レジスト2を溶解除去すると、ウエハ表面に周期が約300nm(線幅150nm)のL/Sパターンを形成することができる(h)。これは、使用したg線ステッパで製造可能なL/Sパターンの約半分の寸法を有するL/Sパターンである。
【0018】
このようにして、細かな線幅のL/Sが形成されたウエハに、他の論理回路等を従来と同じ方法で作り込むことにより、半導体デバイスを製造することができる。又、得られたウエハを型として使用し、ナノプリント技術により樹脂成形を行うことにより、表面に微細構造を有する樹脂を製造することができ、回折格子等の光学素子として使用することができる。
【0019】
以上の説明においては、レジストはポジ型であるものとしたが、ネガ型レジストでも、マスクのパターンを反転させることにより、同様に使用できる。又、ステッパを使用した露光において、使用波長をλとし、ステッパの開口角をNAとすると、一般には解像限界はλ/NAで決定されるが、斜め露光やシフト露光を行うことによりλ/(2NA)となることが知られている。本明細書及び特許請求の範囲で「解像限界」とうのは、露光装置特有の解像限界でなく、このように露光方法まで含めて考えた場合の解像限界を言う。
【0020】
以上の説明においては、レジスト2の形状を正弦波状にするのに、ステッパの解像限界程度のピッチのパターンを露光し、ボケを積極的に使用する方法を採用したが、ウエハ形状を矩形とし、その両端から加振することによりウエハ上に振動の定在波が存在するようにし、その状態でレジストをウエハに蒸着するようにすれば、振動の定在波の腹の部分でのレジスト厚さが薄く、節の部分でレジスト厚さが厚くなって、正弦波の形状を有するレジスト2を形成することができるので、このような方法を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の露光装置を用いて、ウエハ上に、従来の露光装置で製造可能であった線幅の約半分の線幅を有するL/Sパターンを製造する例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1…ウエハ、2…レジスト、3…マスク、4…保護膜、5…レジスト、6…マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を有することを特徴とする微細構造の製造方法。
(1)基板上に、周期的でかつ一周期内で徐々に厚さが変化する第1レジスト層を形成する工程
(2)前記第1レジスト層の表面に、次の(3)工程で形成する第2のレジスト層を溶解する現像液に溶解しない保護膜を成膜する工程
(3)前記保護膜上に、所定露光量以上の露光を受けた領域は完全に溶解し、所定露光量以下の露光しか受けていない領域は溶解しないようなγ特定を有する第2のレジスト層を均一な厚さで成膜する工程
(4)前記第2のレジスト層を現像した後に、前記第1レジスト層の所定以上の厚さを有する領域上に形成された前記第2レジスト層が完全に除去され、前記第1レジスト層の所定以下の厚さを有する領域上に形成された前記第2レジスト層が残るような露光量で、前記第2レジスト層を露光する工程
(5)前記第2レジスト層を現像し、前記第1レジスト層の所定以下の厚さを有する領域の上に形成された前記第2レジスト層を完全に除去する工程
(6)残った前記第2レジスト層と前記第1レジスト層とを一定の除去速度で除去する工程
(7)残った前記第1レジスト層をマスクとして、前記基板をエッチングする工程
(8)残った前記第1レジスト層を除去する工程
【請求項2】
請求項1に記載の微細構造の製造方法であって、前記(1)の工程が、レジストの溶解量が露光量に応じて徐々に増減するようなγ特性を有する第1レジスト層上に、露光装置の解像限界と同等又はこれより狭い幅と線間隔を有するL/Sパターンの露光を行い、現像する工程であることを特徴とする微細構造の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の微細構造の製造方法により製造された型を用いて、ナノプリント技術により他の部材に微細構造を転写する工程を有することを特徴とする微細構造の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の微細構造の製造方法を使用して、前記基板としてのウエハ上に微細なL/Sパターンを形成する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−318969(P2006−318969A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137301(P2005−137301)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】