説明

微細構造体製造方法

【課題】 例えば、三次元微細構造体やμmオーダ以下のパターンやバイナリー立体光学素子等の微細構造体を真空蒸着とエッチングのみで容易に形成することができる微細構造体製造方法を提供することにある。
【解決手段】 微細凹凸パターンを備えた構造体を該微細凹凸パターン側を真空蒸着源に指向させた状態で対向・配置させ、その際微細凹凸パターンの凹部の一部が蒸着されないように上記構造体を上記真空蒸着源に対して所定角度だけ傾斜させ、その状態で真空斜め蒸着を施して上記構造体の微細凹凸パターン側にエッチングマスクを堆積・設置させ、次いで、エッチングを行うことにより上記微細凹凸パターンよりもさらに細かな微細凹凸パターンを形成するようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複雑な立体形状をなす三次元微細構造体やμmオーダ以下のパターンやバイナリー立体光学素子等の微細構造体を製造する微細構造体製造方法に係り、特に、高度な手法や高価な半導体装置等を要することなく真空蒸着とエッチングによって所望の微細構造体を容易に形成することができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
複雑な立体形状をなす三次元微細構造体(例えば、凹凸が階段状に形成されたもの、曲面形状のもの、積層構造等)やμmオーダ以下のパターンやバイナリー立体光学素子等の微細構造体は、高価な半導体装置を使用し、且つ、リソグラフィ、製膜、エッチング等の半導体プロセスを調整しながら複数回繰り返すことにより製造されている。以下、図12を参照して具体的に説明する。
【0003】
まず、図12(a)に示すように、基板101上のレジスト103にリソグラフィやエッチングによって微細凹凸パターン105を形成する。この微細凹凸パターン105は複数の溝105aを図12(a)中左右方向に所定のピッチで形成した構成になっている。この微細凹凸パターン105が初期パターンとなる。次に、図12(b)に示すように、微細凹凸パターン105上に金属やレジスト等のエッチングマスク107を製膜する。
尚、エッチングする材料によってエッチングマスク107が一層となる場合或いは多層となる場合があるが、ここに示す例は一層である。
【0004】
次に、図12(c)に示すように、上記初期パターンとしての微細凹凸パターン105との調整を取りながら、リソグラフィやエッチングによってエッチングマスク107をパターニングする。それによって、初期パターンとしての微細凹凸パターン105よりもさらに細かな微細凹凸パターン109が形成されることになる。この微細凹凸パターン109は複数の溝109aを図12(c)中左右方向に所定のピッチで並べた構成になっている。最後に、ドライエッチング等によってエッチングを施してエッチングマスク107を除去する。それによって、図12(d)に示すような階段状(図二示す場合は二段)の微細凹凸パターン111が形成された微細構造体112を得ることになる。
【0005】
又、別の微細構造体製造方法が、例えば、特許文献1に記載されている。この特許文献1には、微粒子(コロイド粒子)の自己配列を利用した微細構造体製造方法が記載されている。すなわち、自己配列された微粒子に斜め蒸着を施し、微粒子の陰になって蒸着されなかった部位をエッチングすることにより微細凹凸パターンを得るものである。
【0006】
【特許文献1】特開平11−66654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の構成によると次のような問題点があった。
まず、図12に示した微細構造体製造方法によると、μmオーダ以下のパターン場合、高度な調整精度とパターン解像度が必要となり、その為高度な設備、すなわち、半導体装置が必要になってしまうという問題があった。
又、微細凹凸パターン105に対してエッチングマスク107を平坦に製膜することが困難であるという問題があった。
又、リソグラフィ、製膜、エッチングを複数回繰り返す作業が煩雑であるという問題があった。
又、特許文献1に記載されている微細構造体製造方法の場合には、エッチングマスクとして微粒子(コロイド粒子)を用いるため、微粒子の配列や微粒子径によって製造可能なパターンが限られてしまうという問題があった。すなわち、微粒子(コロイド粒子)を基板上に規則正しく自己配列させる作業は極めて困難な作業であり、その為上記したように製造可能なパターンが限られてしまうことになる。
又、微粒子(コロイド粒子)の材料や配列の制限により被エッチング材料、すなわち、基板の材質も限られてしまうという問題があった。つまり、基板の材質や表面の状態によっては微粒子(コロイド粒子)を精度良く配列できない場合があるからである。
さらに、微粒子(コロイド粒子)は高価であり、且つ、上記したように、自己配列させる作業も困難であるので、結局、コストの上昇を来してしまうという問題もあった。
【0008】
本願発明はこのような点に基いてなされたものでありその目的とするところは、例えば、三次元微細構造体やμmオーダ以下のパターンやバイナリー立体光学素子等の微細構造体を真空蒸着とエッチングのみで容易に製造することを可能にする微細構造体製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく本願発明の請求項1に記載した微細構造体の製造方法は、微細凹凸パターンを備えた構造体を該微細凹凸パターン側を真空蒸着源に指向させた状態で対向・配置させ、その際微細凹凸パターンの凹部の一部が蒸着されないように上記構造体を上記真空蒸着源に対して所定角度だけ傾斜させ、その状態で真空斜め蒸着を施して上記構造体の微細凹凸パターン側にエッチングマスクを堆積・設置させ、次いで、エッチングを行うことにより上記微細凹凸パターンよりもさらに細かな微細凹凸パターンを形成するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項2による微細構造体の製造方法は、請求項1記載の微細構造体製造方法において、上記一連の工程を上記構造体の上記真空蒸着源に対する傾斜角度を変化させながら繰り返すことによりさらに細かな立体的な微細凹凸パターンを形成するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項3による微細構造体の製造方法は、請求項1又は請求項2記載の微細構造体製造方法において、上記エッチングは上記真空斜め蒸着によって蒸着されなかった部位に対して選択的に行われるドライエッチング又はウエットエッチングであることを特徴とするものである。
又、請求項4による微細構造体の製造方法は、請求項1〜請求項3の何れかに記載の微細構造体製造方法により製造された微細構造体をその微細凹凸パターンを真空蒸着源に指向させた状態で対向・配置させ、その状態で真空垂直蒸着を施して上記微細構造体の微細凹凸パターン側に金属膜を堆積・設置させ、上記金属膜が堆積・設置された微細構造体を転移・転写用モールドとして加熱された樹脂基板又はUV硬化樹脂が塗布された基板に押し付け、上記転移・転写用モールドとしての微細構造体を剥離させることにより上記樹脂基板側に微細凹凸パターンを転写すると共に金属膜を転移するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項5による微細構造体の製造方法は、請求項4記載の微細構造体製造方法において、上記真空垂直蒸着を施す前に、上記微細構造体の微細凹凸パターンに撥水処理を施すようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本願発明の請求項1に記載した微細構造体の製造方法によると、微細凹凸パターンを備えた構造体を該微細凹凸パターン側を真空蒸着源に指向させた状態で対向・配置させ、その際微細凹凸パターンの凹部の一部が蒸着されないように上記構造体を上記真空蒸着源に対して所定角度だけ傾斜させ、その状態で真空斜め蒸着を施して上記構造体の微細凹凸パターン側にエッチングマスクを堆積・設置させ、次いで、エッチングを行うことにより上記微細凹凸パターンよりもさらに細かな微細凹凸パターンを形成するようにした構成になっているので、例えば、三次元微細構造体やμmオーダ以下のパターンやバイナリー立体光学素子等の微細構造体13を、高価な半導体装置を用いてリソグラフィやエッチング等を調整しながら繰り返すという煩雑な作業を要することなく、安価な装置を用いて真空蒸着とエッチングのみで容易に形成することができる。
又、高価な露光装置で行っていたようなパターンの調整が殆ど不要となる。
又、高い解像力のある露光装置でしか形成できなかったμmオーダ以下のパターンを安価な装置によって形成できるような比較的大きな原型パターンから小さくして基板に形成できる。
又、斜め蒸着の材料を選択することによって様々な材料への適用が可能である。
又、請求項2による微細構造体の製造方法によると、請求項1記載の微細構造体製造方法において、上記一連の工程を上記構造体の上記真空蒸着源に対する傾斜角度を変化させながら繰り返すことによりさらに細かな立体的な微細凹凸パターンを形成するようにした構成になっているので、又、斜め蒸着の傾斜角度(θ°)を制御しながら真空蒸着とエッチングを繰り返すことにより微細な凹凸パターンを容易に製造することができるも。
又、請求項3による微細構造体の製造方法によると、請求項1又は請求項2記載の微細構造体製造方法において、上記エッチングは上記真空斜め蒸着によって蒸着されなかった部位に対して選択的に行われるドライエッチング又はウエットエッチングであるので、簡単な方法によって所望の微細構造体を容易に得ることができる。
又、請求項4による微細構造体の製造方法によると、請求項1〜請求項3の何れかに記載の微細構造体製造方法により製造された微細構造体をその微細凹凸パターンを真空蒸着源に指向させた状態で対向・配置させ、その状態で真空垂直蒸着を施して上記微細構造体の微細凹凸パターン側に金属膜を堆積・設置させ、上記金属膜が堆積・設置された微細構造体を転移・転写用モールドとして加熱された樹脂基板又はUV硬化樹脂が塗布された基板に押し付け、上記転移・転写用モールドとしての微細構造体を剥離させることにより上記樹脂基板側に微細凹凸パターンを転写すると共に金属膜を転移するようにした構成になっているので、高効率な偏光素子や回折格子やバイナリー光学素子等を容易に複製することができる。
又、請求項5による微細構造体の製造方法は、請求項4記載の微細構造体製造方法において、上記真空垂直蒸着を施す前に、上記微細構造体の微細凹凸パターンに撥水処理を施すようにした構成になっているので、上記効果をより確実なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1乃至図4を参照して本願発明の第1の実施の形態を説明する。まず、基板1があり、この基板1上にはレジスト3が設置されている。上記レジスト3には初期パターンとしての微細凹凸パターン5がリソグラフィやエッチングにより形成されている。上記微細凹凸パターン5を平面的にみると図2に示すようなものとなっている。すなわち、複数個の溝5aが所定のピッチで形成された構成になっている。
【0012】
次に、図1(b)に示すように、基板1をそのレジスト3側の面を真空蒸着源7側に指向させた状態で、且つ、真空蒸着源7に対して所定角度(θ°)だけ傾斜させた状態で対向・配置させる。そして、その状態で上記基板1のレジスト3側の面に真空斜め蒸着を施す。すなわち、図2中矢印aで示す方向、つまり、微細凹凸パターン5の長手方向に対して直交し、且つ、真空蒸着源7の水平面から垂直上方に向かう方向(矢印bで示す方向)に沿って真空斜め蒸着を施す。上記所定角度(θ°)とは、初期パターンとしての微細凹凸パターン5の溝5aの一部が蒸着されないような角度であるが、最終的に得られる微細凹凸パターン{図3(c)に示す微細凹凸パターン}の形状や、初期パターンとしての微細凹凸パターン5の周期(ピッチ)や形状に応じて適宜決定される。
【0013】
そして、上記真空斜め蒸着によりレジスト3側の初期パターンとしての微細凹凸パターン5にエッチングマスク9が堆積・設置されることになる。その様子を図1(b)、(c)に示す。図1(b)、(c)に示すように、初期パターンとしての微細凹凸パターン5の溝5aの一部に、エッチングマスク9が堆積・設置されない部位10が発生する。
尚、図1(c)は図1(b)のc部を拡大して示す図である。
【0014】
次に、図3(a)に示すように、エッチングマスク9が堆積・設置されたレジスト3に対してエッチングを施す。それによって、図3(b)に示すように、レジスト3に初期パターンとしての微細凹凸パターン5の溝5aよりも幅が小さく深い孔11が形成される。この微細な孔11がレジスト3に形成されることにより、基板1のレジスト3側の表面の一部が露出することになる。その後、エッチングマスク9を除去することにより、図3(c)に示すような階段状の微細凹凸パターン12を備えた微細構造体13を得ることができる。
【0015】
尚、エッチングマスク9としては、例えば、金(Au)やアルミニウム(Al)等の金属や二酸化ケイ素(SiO)や窒化ケイ素(SiN)等の非金属の使用が考えられ、エッチングする材料やエッチング条件によって適切な材料が選択されることになる。又、エッチングは、被エッチング材料、すなわち、基板1やレジスト3の材質や寸法等によって、ドライエッチング或いはウエットエッチング等が適用される。
因みに、本実施の形態の場合には、エッチングマスク9をアルミニウム(Al)とし、酸素(O)ガスでドライエッチングを行うようにしている。
【0016】
図4は、本実施の形態による微細構造体製造方法により製造された微細構造体13のレジスト3側の表面を表わしたものであり、この場合には「10」という数字を表しているものであり、この数字の「10」の部分が溝となっている。そして、図4(a)は真空斜め蒸着によってエッチングマスク9を堆積・設置する前のレジスト3の表面を表わしたものであり、図4(b)は真空斜め蒸着によってエッチングマスク9を堆積・設置し、且つ、エッチングした後のレジスト3の表面を表わしたものである。これによると、真空斜め蒸着前には初期パターンとしての微細凹凸パターン5の溝5aの幅が約5μmで深さは約210nmであるのに対し、真空斜め蒸着後エッチングを行った後では、溝5aの一部(幅が約2μmの部分)は深さが890nmになっている。つまり、初期パターンとしての微細凹凸パターン5の溝5aよりも幅が狭くて深い溝11を得ることができたものである。
【0017】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
すなわち、例えば、三次元微細構造体やμmオーダ以下のパターンやバイナリー立体光学素子等の微細構造体13を、高価な半導体装置を用いてリソグラフィやエッチング等を調整しながら繰り返すという煩雑な作業を要することなく、安価な装置を用いて真空斜め蒸着とエッチングのみで容易に形成することができるものである。
又、本実施の形態による微細構造体製造方法によれば、高価な露光装置で行っていたようなパターンの調整が殆ど不要となるものである。
又、本実施の形態による微細構造体製造方法によれば、高い解像力のある露光装置でしか形成できなかったμmオーダ以下のパターンを安価な装置によって、比較的大きな原型パターンから縮小して基板1に形成することができる。
又、真空斜め蒸着の材料を選択することによって様々な材料への適用が可能である。
又、真空斜め蒸着の所定角度(θ°)を制御しながら真空斜め蒸着とエッチングを繰り返すことにより細かな立体的な微細凹凸パターンを容易に製造することができるものである。
尚、これについては後で第4の実施の形態として説明する。
【0018】
次に、図1乃至図5を参照して本願発明の第2の実施の形態を説明する。すなわち、前記第1の実施の形態によって得られた微細構造体13{(図3(c)に示す}に対して、レジスト3をそのままエッチングマスクとして機能させてさらにエッチングを施す。それによって、図5に示すように、基板1上に溝11よりもさらに深い溝14が形成されることになる。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0019】
以上この第2の実施の形態によると、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができることはもとより、さらに深い溝14を容易に形成することができる。
【0020】
次に、図6を参照して本願発明の第3の実施の形態を説明する。まず、図6(a)に示すように、基板15上にレジスト17が設置されており、レジスト17には初期パターンとしての微細凹凸パターン19が形成されている。上記微細凹凸パターン19は溝19aを所定のピッチで形成した構成になっている。上記微細凹凸パターン19の溝19aはレジスト17を貫通しており、基板15のレジスト17側の面が露出した状態になっている。
因みに、前記第1の実施の形態の場合には、初期パターンとしての微細凹凸パターン5の溝5aにおいて基板1の面が露出してはいないものである。
【0021】
上記該基板15のレジスト17側の面に対して前記第1の実施の形態で説明した真空斜め蒸着と同様の処理を施す。それによって、図6(b)に示すように、レジスト17及び基板15上にエッチングマスク21が堆積・設置される。そして、この第3の実施の形態の場合においても、図6(b)に示すように、初期パターンとしての微細凹凸パターン19の溝19a内にエッチングマスク21が堆積・設置されない部位22が存在することになる。
【0022】
次に、図6(c)に示すように、上記エッチングマスク21が堆積・設置された基板15及びレジスト17に対してエッチングを施す。それによって、図6(c)に示すように、基板15のエッチングマスク21が存在しない部位22のみがエッチングされて溝23が形成されることになる。その後、レジスト17及びエッチングマスク21を除去すると、図6(d)に示すように、初期パターンとしての微細凹凸パターン19の溝19aよりも幅の狭い溝23からなる微細凹凸パターンが形成された基板15を得ることができる。
【0023】
以上本実施の形態の場合にも、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができるものである。
【0024】
次に、図7乃至図10を参照して本願発明の第4の実施の形態について説明する。すなわち、前記第1〜第3の実施の形態の場合には、真空斜め蒸着とエッチングを1回行った場合を例に挙げて説明したが、この第4の実施の形態の場合には真空斜め蒸着とエッチングを複数回繰り返すことにより微細な立体的な階段状の微細凹凸パターンを形成する例を示すものである。
【0025】
まず、図7(a)に示すように、基板25上にレジスト27が設置されている。上記レジスト27上には、初期パターンとしての微細凹凸パターン29がリソグラフィやエッチングにより形成されている。上記初期パターンとしての微細凹凸パターン29は、図7(a)に示すように、複数の溝29aを図7(a)中左右方向に所定のピッチで設けた構成になっている。
【0026】
次に、図7(b)に示すように、基板25をレジスト27側の面が蒸着面31に指向すると共に、蒸着源31に対して所定角度(θ°)だけ傾斜させた状態で設置し、基板25のレジスト27側の面に対して真空斜め蒸着を施す。上記所定角度(θ°)とは、初期パターンとしての微細凹凸パターン29の溝29aの一部が蒸着されないような角度であるが、最終的に得られる微細凹凸パターン{図10(b)に示す}の形状や初期パターンとしての微細凹凸パターン29の周期(ピッチ)や形状に応じて設定される。上記真空斜め蒸着により、図7(b)に示すように、レジスト27側の面にエッチングマスク33が堆積・設置されることになる。そして、この第3の実施の形態の場合においても、図7(b)に示すように、初期パターンとしての微細凹凸パターン29の溝29a内にエッチングマスク33が堆積・設置されない部位34が存在することになる。
【0027】
次に、図8(a)に示すように、エッチングマスク33が堆積・設置されたレジスト27に対してエッチングを施す。それによって、図8(b)に示すように、レジスト27に初期パターンとしての微細凹凸パターン29の溝29aよりも幅が小さく、且つ、深い溝35が形成される。その後、エッチングマスク33を除去すると、図8(c)に示すような階段状の微細凹凸パターン36を備えた微細構造体37を得ることができる。
【0028】
次に、図9(a)に示すように、上記微細構造体37をその微細凹凸パターン36側を蒸着源31に指向させた状態で、且つ、蒸着源31に対して所定角度(θ°)だけ傾斜させた状態で対向・配置させ、微細凹凸パターン36側の面に真空斜め蒸着を施す。上記所定角度(θ°)とは、微細凹凸パターン36の溝35の一部が蒸着されないような傾斜角度となるが、最終的に得られる微細パターン{図10(b)に示す}の形状や、微細凹凸パターン36の周期(ピッチ)や形状に応じて定められる。本実施の形態の場合には、最初の斜め蒸着時の所定角度(θ°)よりも小さく設定されている。上記真空斜め蒸着によって、レジスト27側の面にエッチングマスク39が堆積・設置される。そして、図9(b)に示すように、微細凹凸パターン36の溝35の一部にエッチングマスク39が堆積・設置されていない部位40が発生する。
【0029】
次に、図10(a)に示すように、エッチングマスク39が堆積・設置されたレジスト27に対してエッチングを施す。それによって、レジスト27にさらに幅が小さくて深い溝41が形成される。この溝41がレジスト27に形成されることで、基板25のレジスト側の表面の一部が露出することになる。その後、エッチングマスク39を除去すると、図10(b)に示すような階段状の微細凹凸パターン43を有する微細構造体45が得られる。
【0030】
以上この実施の形態の場合にも前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができることもとより、真空斜め蒸着の傾斜角度(θ°)を制御しながら真空斜め蒸着とエッチングを複数回繰り返すことにより(この実施の形態の場合には2回)、さらに細かな立体的な階段状の微細凹凸パターン43を容易に製造することができるものである。
【0031】
次に、図11を参照して本願発明の第5の実施の形態を説明する。まず、前記第1の実施の形態によって得られたレジスト3及び基板1の二層からなる微細構造体13がある。この微細構造体13は、図3の(c)に示すように、レジスト3に真空斜め蒸着及びエッチングによって微細凹凸パターン12が形成されている。
【0032】
そして、図11(a)に示すように、上記微細構造体13に対して、アルミニウム(Al)や金(Au)等の金属膜47を蒸着する。金属膜47は、レジスト3及び基板1に対して垂直な方向から蒸着される。その為、金属膜47は微細凹凸パターン12の溝11を含んだ全面に堆積・設置される。
【0033】
金属膜47を蒸着したレジスト3及び基板1を転写・転移用モールド49とし、加熱した樹脂基板51を、図11(b)に示すように、転写・転移用モールド49に押し付ける。その後、転写・転移用モールド49を剥離させると、樹脂基板51側にレジスト3側の微細凹凸パターン12が転写されると共に金属膜47が転移され、それによって、樹脂製微細構造体53が形成されることになる。
尚、金属膜47が樹脂基板51側へ転移し易いように、金属膜47の蒸着時に金属の密着性が低くなることが好ましく、必要に応じて微細構造体13の表面を撥水処理しておくのが好ましい。
又、樹脂基板51の材料としては、熱可塑性樹脂であって、且つ、透明であるポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィン樹脂等が好ましい。
【0034】
以上本発明の実施の形態によると、高効率な偏光素子や回折格子やバイナリー光学素子等を容易に複製することができる。
【0035】
尚、本願発明は前記第1〜第5の実施の形態に限定されるものではない。
まず、本願発明に用いる蒸着材料には様々なものが考えられ、様々な材料への微細凹凸パターン形成に適用にできる。
又、微細凹凸パターンの形状も、溝状のものに限らず、ドットパターン等にも適用できるし、又、曲面形状のもの、その他各種の複雑であって立体的な形状に適用可能である。
又、微細凹凸パターンのサイズや周期も、nmオーダのものに限らず、nm〜μmオーダ、或いはそれ以上のサイズでも適用できる。
又、前記第4の実施の形態において、真空斜め蒸着とエッチングを繰り返し行う回数は2回であるが、これに限定されるものではない。真空斜め蒸着の際の蒸着源に対するエッチングマスクが形成される被エッチング材の傾斜角度を適宜制御させながら、真空斜め蒸着とエッチングを更に繰り返すことによってより複雑な階段状の3次元構造体やより微細なパターンを形成することができる。
又、前記第5の実施例において、本願発明による微細構造体をモールドとして転写する場合、転写する樹脂基板の形態は板状に限らず、シート状やフィルム状でもよい。
又、パターン転写する材料は樹脂基板に限らず、ケイ素(Si)やガラス等の基板上に塗布された樹脂膜でもよい。
又、パターン転写する材料は基板上に塗布された紫外線硬化樹脂でもよく、この場合には加熱せず、モールドを押し付けた状態で紫外線を照射して硬化させてから剥離させることになる。
又、前記第5の実施の形態においては、第1の実施の形態による微細構造体をモールドとして使用しているが、本願発明はこれに限定されず、他の実施の形態によって得られた微細構造体等本願発明によって得られる思われる様々な微細構造体をモールドとして用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本願発明は、例えば、三次元微細構造体やμmオーダ以下のパターンやバイナリー立体光学素子等の微細構造体を製造する微細構造体製造方法に係り、特に、高度な手法や高価な機器を要することなく真空蒸着とエッチングによって容易に形成することができるように工夫したものに関し、例えば、回折格子やマイクロレンズ等の各種光学素子、Si基板、流体チップ、MEMS(メムス、MICRO ELECTRO MECHANICAL SYSTEMS)構造体、電極等のマイクロパターン及びその製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図1(a)は初期パターンを有する材料を示す断面図、図1(b)は材料に対して斜め蒸着を行う工程を示す断面図、図1(c)は図1(b)において一点鎖線で示した円c内の拡大図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、該初期パターンを有する材料と初期パターン、及び斜め蒸着の方向を示した平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図3(a)は斜め蒸着を行った該材料の断面図、図3(b)は該斜め蒸着を行った材料にエッチングを施した後の断面図、図3(c)は該エッチングを施した材料からエッチングマスクを取り除いた後の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図4(a)は斜め蒸着を行う前の該材料の平面図と初期パターンの深さを示すグラフ、図4(b)は斜め蒸着とエッチングを行った後の該材料の平面図とエッチング後のパターンの深さを示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図3(c)に示す本願発明の実施によって得られた微細構造体に、レジストをエッチングマスクとしてエッチングを施すことで得られる微細構造体の断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図6(a)は初期パターンを有する材料を示す断面図、図6(b)は斜め蒸着を行った該材料の断面図、図6(c)は該斜め蒸着を行った材料にエッチングを施した後の断面図、図6(d)は該エッチングを施した材料からエッチングマスク及びレジストを取り除いた後の断面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態を示す図で、図7(a)は初期パターンを持つ材料を示す断面図、図7(b)は1回目の斜め蒸着を行う工程を表わす断面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態を示す図で、図8(a)は1回目の斜め蒸着を行った材料の断面図、図8(b)は該1回目の斜め蒸着を行った材料にエッチングを施した後の断面図、図8(c)は該エッチングを施した材料からエッチングマスクを取り除いた後の断面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態を示す図で、図9(a)は該エッチングマスクを取り除いた材料に対して2回目の斜め蒸着を行う工程を表わす断面図、図9(b)は2回目の斜め蒸着を行った後の材料の断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態を示す図で、図10(a)は斜め蒸着を行った材料に対してエッチングを行った後の断面図、図10(b)は該エッチングを行った材料からエッチングマスクを取り除いた後の断面図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態を示す図で、図11(a)は金属膜を蒸着した本発明による微細構造体を示す断面図、図11(b)は図11(a)に示した金属膜を蒸着した微細構造体を転写・転移モールドとして、樹脂基板に押し付けた状態の断面図、図11(c)は図11(b)に示した状態から転写・転移モールドを樹脂基板から剥離し、該樹脂基板に微細構造体の微細凹凸パターンが転写され金属膜が転移した樹脂製微細構造体が形成されたことを示す断面図である。
【図12】従来例を示す図で、図12(a)は初期パターンを有する材料の断面図、図12(b)は材料に2層のエッチングマスクを製膜したものの断面図、図12(c)は初期パターンと調整を取りながら上層のエッチングマスクをパターンニングしたものの断面図、図12(d)はエッチングしてエッチングマスクを除去したものの断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 基板
3 レジスト
5 微細凹凸パターン
5a 溝
7 真空蒸着源
9 エッチングマスク
10 非蒸着部
11 溝
12 微細凹凸パターン
13 微細構造体
14 溝
15 基板
17 レジスト
19 微細凹凸パターン
21 エッチングマスク
23 溝
25 基板
27 レジスト
29 微細凹凸パターン
29a 溝
31 真空蒸着源
33 エッチングマスク
34 非蒸着部
35 溝
36 微細凹凸パターン
37 微細構造体
39 エッチングマスク
40 非蒸着部
41 溝
43 微細凹凸パターン
45 微細構造体
47 金属膜
49 転写・転移用モールド
51 樹脂基板
53 樹脂製微細構造体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細凹凸パターンを備えた構造体を該微細凹凸パターン側を真空蒸着源に指向させた状態で対向・配置させ、
その際微細凹凸パターンの凹部の一部が蒸着されないように上記構造体を上記真空蒸着源に対して所定角度だけ傾斜させ、
その状態で真空斜め蒸着を施して上記構造体の微細凹凸パターン側にエッチングマスクを堆積・設置させ、
次いで、エッチングを行うことにより上記微細凹凸パターンよりもさらに細かな微細凹凸パターンを形成するようにしたことを特徴とする微細構造体製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の微細構造体製造方法において、
上記一連の工程を上記構造体の上記真空蒸着源に対する傾斜角度を変化させながら繰り返すことによりさらに細かな立体的な微細凹凸パターンを形成するようにしたことを特徴とする微細構造体製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の微細構造体製造方法において、
上記エッチングは上記真空斜め蒸着によって蒸着されなかった部位に対して選択的に行われるドライエッチング又はウエットエッチングであることを特徴とする微細構造体製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の微細構造体製造方法により製造された微細構造体をその微細凹凸パターンを真空蒸着源に指向させた状態で対向・配置させ、
その状態で真空垂直蒸着を施して上記微細構造体の微細凹凸パターン側に金属膜を堆積・設置させ、
上記金属膜が堆積・設置された微細構造体を転移・転写用モールドとして加熱された樹脂基板又はUV硬化樹脂が塗布された基板に押し付け、
上記転移・転写用モールドとしての微細構造体を剥離させることにより上記樹脂基板側に微細凹凸パターンを転写すると共に金属膜を転移するようにしたことを特徴とする微細構造体製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の微細構造体製造方法において、
上記真空垂直蒸着を施す前に上記微細構造体の微細凹凸パターンに撥水処理を施すようにしたことを特徴とする微細構造体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−235434(P2009−235434A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79491(P2008−79491)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(391008537)ASTI株式会社 (73)
【Fターム(参考)】