説明

情報を提示する装置と方法及びその提示情報を作成する装置と方法

【課題】健聴者及び聴覚障害者の双方が情報内容を簡単かつ迅速にしかも正確に把握できるようにする。
【解決手段】入力制御部102により文章データを受信した場合に、当該文章データをキーワード抽出部103により形態素解析してキーワードを抽出し、この抽出したキーワードをもとに箇条書きテキスト記憶部110から対応する箇条書きテキストデータを取得すると共に、断片手話データ記憶部120から対応する断片手話映像データを取得する。そして、上記取得した箇条書きテキストデータ及び断片手話映像データを、提示テンプレート記憶部130から取得した提示テンプレートのレイアウトに従い合成して提示情報コンテンツを作成し、この提示情報コンテンツを出力制御部105により表示装置106に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば緊急情報を視覚的に提示するための装置と方法、及びその提示情報を作成するための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、大規模地震等の災害発生時や交通機関の障害発生時において、災害又は障害の状況及び避難方法等の緊急情報を、公共空間でユーザに迅速かつ正確に知らせることは、被害を最小限に抑える上で重要な社会的課題となっている。公共空間での緊急情報の報知手段としては音声アナウンスを用いたものが一般的である。しかし、音声アナウンスを用いた報知手段では、難聴者や聾者等の聴覚障害者に対して情報を知らせることができず、また周辺雑音が大きい環境下においては健聴者であっても情報を聞き取りにくく有効性が低い。
【0003】
そこで、従来では視覚表示装置を用いた情報報知手段が多く用いられている。この視覚による情報提示手段としては、例えば電光掲示板にテロップを流すものや、グラフィックディスプレイ上にテキスト文書を表示するものが一般的である。また、聴覚障害者向けの情報提示手段として、音声処理と自然言語処理を利用することで入力音声に対する字幕を制作して表示する技術(例えば、非特許文献1を参照)や、3次元コンピュータグラフィックス技術を利用することによりリアルタイムに手話アニメーションを合成して表示する技術(例えば、非特許文献2を参照)が知られている。
【0004】
【非特許文献1】「聴覚障害者向け字幕付きテレビ番組の自動制作システム」 電子情報通信学会論文誌 D−II Vol.J84-D-II No.6 pp.888-897 2001年6月
【0005】
【非特許文献2】「リアルタイム手話アニメーションの合成方法」 電子情報通信学会論文誌 D−II Vol.J79-D-II No.2 pp.182-190 1996年2月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記従来の情報提示手段では、入力音声に応じて字幕が長文になり易く、情報内容を把握するには表示された文章を最初から最後まで読み取らなければならないため、情報内容の把握に時間がかかる。特に、9歳前に聴覚を失って手話を母語とする聴覚障害者にとっては、例えばテロップ表示される長文の文章を迅速に読み下して内容を理解することが容易ではなかった。
【0007】
一方、手話により直接表現することが可能な語句の数は一般に少ない。このため、リアルタイムに手話アニメーションを合成して表示する手段では、緊急情報の内容を正確に伝えることが難しい。また、手話を未習得の健聴者では理解することができないと云う課題があった。
【0008】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、健聴者及び聴覚障害者の双方が情報内容を簡単かつ迅速にしかも正確に把握できるようにした情報提示装置と方法と、及びその提示情報を作成する装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためにこの発明に係わる情報提示装置と方法は、次のような手段又は過程を備えたものである。すなわち、先ず入力インタフェースにより文章データを受け取って、当該文章データを解析処理することにより当該文書データに含まれるキーワードを抽出する。次に、予め設定したキーワードに対応付けて当該キーワードに対応する箇条書きテキストデータを記憶した第1の記憶装置に対しアクセスすることにより、上記抽出されたキーワードに対応する箇条書きテキストデータを検索すると共に、上記キーワードに対応付けて当該キーワードの内容を断片的な手話映像により表現する断片手話データを記憶した第2の記憶装置に対しアクセスすることにより、上記抽出されたキーワードに対応する断片手話データを検索する。そして、この検索された箇条書きテキストデータと断片手話データを相互に対応付けて合成処理して情報提示コンテンツを生成し、この生成された情報提示コンテンツを視覚的に提示するべく出力するようにしたものである。
【0010】
すなわち、入力された文章データから抽出されたキーワードに対応する箇条書きテキストデータと、当該キーワードの内容を断片的な手話映像により表現する断片手話データとが記憶装置からそれぞれ読み出される。そして、これらが相互に対応付けられた状態で合成され、この合成処理により作成された情報提示コンテンツがユーザに対し視覚的に提示される。
したがって、聴覚障害者は断片手話映像とそれに対応付けられて提示される箇条書きテキストとにより、提示情報の内容を簡単かつ迅速にしかも要点を正確に把握することが可能となる。また、断片手話映像と共に箇条書きテキストが提示されるため、健聴者も提示情報の内容を簡単かつ迅速に把握することができる。
【0011】
一方、この発明に係わる提示情報作成装置及び方法は、次のような手段又は過程を備えたものである。すなわち、先ず入力インタフェースにより文章データを受け取って、当該文章データを解析処理することにより当該文書データに含まれるキーワードを抽出する。次に、予め設定したキーワードに対応付けて当該キーワードに対応する箇条書きテキストデータを記憶した第1の記憶装置に対しアクセスすることにより、上記抽出されたキーワードに対応する箇条書きテキストデータを検索すると共に、上記キーワードに対応付けて当該キーワードの内容を断片的な手話映像により表現する断片手話データを記憶した第2の記憶装置に対しアクセスすることにより、上記抽出されたキーワードに対応する断片手話データを検索する。そして、この検索された箇条書きテキストデータと断片手話データを相互に対応付けて合成処理して情報提示コンテンツを生成する。
したがって、特に聴覚障害者が簡単かつ迅速に情報内容を把握することが可能で、しかも健聴者にとっても情報内容を把握することが可能な提示情報コンテンツを生成することができる。
【発明の効果】
【0012】
要するにこの発明によれば、健聴者及び聴覚障害者の双方が情報内容を簡単かつ迅速にしかも正確に把握できるようにした情報提示装置と方法と、及びその提示情報を作成する装置と方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1は、この発明に係わる情報提示装置の一実施形態を示すブロック図である。情報提示装置100は、入力制御部102と、キーワード抽出部103と、主制御部104と、出力制御部105とを備えている。このうち、入力制御部102と、キーワード抽出部103と、主制御部104は提示情報作成装置を構成する。
【0014】
入力制御部102は、情報入力装置101から出力された文章データを取り込んでキーワード抽出部103に与える。情報入力装置101は、例えば話者によりアナウンスされた音声信号を音声認識してテキストからなる文章データに変換する装置からなる。なお、情報入力装置101としては手書きの文章をスキャナにより光学的に読み取ってテキストからなる文章データに変換するものや、文章作成機能を有するパーソナル・コンピュータでもよい。
【0015】
キーワード抽出部103は例えばDSP(Digital Signal Processor)とバッファメモリにより構成され、上記入力制御部102から送られた文章データをバッファメモリに一時記憶したのち、DSPにより形態素解析等の文章解析手法を用いて上記文書データを解析処理し、これにより上記文章データに含まれるキーワードを抽出する。このキーワード抽出部103により抽出されたキーワードのデータは主制御部104内のバッファメモリに一時記憶される。
【0016】
主制御部104は例えばコンピュータにより構成され、情報箇条書きテキスト記憶部110と、箇条書きテキスト取得部111と、断片手話データ記憶部120と、断片手話データ取得部121と、提示テンプレート記憶部130と、提示テンプレート取得部131と、リスト手話合成部140とを備えている。このうち、情報箇条書きテキスト記憶部110、断片手話データ記憶部120及び提示テンプレート記憶部130は、記憶媒体としてハードディスク又はフラッシュメモリ等を用いた記憶装置により構成される。
【0017】
一方、上記箇条書きテキスト取得部111、断片手話データ取得部121、提示テンプレート取得部131及びリスト手話合成部140はいずれも、図示しないプログラムメモリに格納されたアプリケーション・プログラムを中央処理ユニット(CPU;Central Processing Unit)に実行させることにより実現される。
【0018】
情報箇条書きテキスト記憶部110には、予め設定された項目区分に対応付けて箇条書きテキストのデータが格納されている。例えば、列車の運行状況に関する情報を提示する場合には、図2に示すように「事象」、「原因」、「路線」、「区間」、「復旧時刻」及び「代替輸送機関」に区分された各項目201にそれぞれ対応付けて、箇条書きテキストデータ202が記憶される。この箇条書きテキストデータは、短文により要点のみを簡潔にまとめたテキストデータである。
【0019】
断片手話データ記憶部120は、断片手話インデックス記憶部と、断片手話映像記憶部とから構成される。断片手話インデックス記憶部は、予め設定された項目区分に対応付けて箇条書きテキストと、当該箇条書きテキストと断片手話映像データとを対応付けるためのインデックスデータが記憶される。例えば、先に述べたように列車の運行状況に関する情報を提示する場合には、図3に示すように「事象」、「原因」、「路線」、「区間」、「復旧時刻」及び「代替輸送機関」に区分された各項目301に対応付けて、箇条書きテキストのデータ202と、インデックスデータ303が記憶される。
【0020】
断片手話映像記憶部には、例えば図4に示すように、上記インデックスデータ303に対応付けて、断片手話映像データ304と、断片手話表現データ305が記憶される。断片手話映像データ304は、対応する箇条書きテキストで表される内容を手話通訳者が実演により手話で表現したときの姿を撮像したものである。断片手話表現データ305は、上記箇条書きテキストに対応する3次元コンピュータグラフィックスの断片手話アニメーション画像を作成するために必要なコードデータからなる。
【0021】
提示テンプレート記憶部130には、後述するリスト手話合成部140がリスト手話データを合成する際に用いる提示テンプレートの画像データが、提示情報の種類に対応して複数種類記憶されている。提示テンプレート取得部131は、リスト手話合成部140の指示に従い、上記提示テンプレート記憶部130から提示情報の種類に対応する提示テンプレートの画像データを読み出してリスト手話合成部140に与える。
【0022】
箇条書きテキスト取得部111は、上記キーワード抽出部103から抽出されたキーワードを受け取り、このキーワードをもとに上記箇条書きテキスト記憶部110を検索して、当該キーワードに対応する項目区分と箇条書きテキストデータを選択的に読み出す。そして、この読み出した項目区分と、箇条書きテキストデータとからなる情報セットをリスト手話合成部140に送る。
【0023】
断片手話データ取得部121は、上記キーワード抽出部103から抽出されたキーワードを受け取り、先ずこのキーワードをもとに上記断片手話データ記憶部120の断片手話インデックス記憶部を検索して、当該キーワードに対応する項目区分と箇条書きテキストデータとインデックスデータを選択的に読み出す。次に、この読み出したインデックスデータをもとに上記断片手話データ記憶部120の断片手話映像記憶部を検索して、当該インデックスデータに対応する断片手話映像データを読み出す。また、対応する断片手話映像データが記憶されていなかった場合には、代わりに対応する断片手話表現データを読み出す。そして、上記読み出した項目区分と、箇条書きテキストデータと、断片手話映像データ又は断片手話表現データからなる情報セットをリスト手話合成部140に送る。
【0024】
リスト手話合成部140は、上記箇条書きテキスト取得部111及び断片手話データ取得部121から送られた情報セットを、上記展示テンプレート取得部131から送られた提示テンプレートにより指定されるレイアウトに従い合成して提示コンテンツデータを作成する。なお、断片手話データ取得部121から送られた情報セットに断片手話表現データが含まれていた場合には、この断片手話表現データに基づいて3次元コンピュータグラフィックスによる断片手話アニメーション画像を生成し、断片手話映像データに代えてこの3次元コンピュータグラフィックスの断片手話アニメーション画像を合成する。
【0025】
出力制御部105は、例えばLED(Light Emitting Diode)マトリクスを使用した表示装置106を駆動する表示ドライバからなり、上記リスト手話合成部140により作成された情報提示コンテンツデータを上記表示装置106に供給して表示させる。なお、表示装置106としては液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ又はCRT(Cathode Lay Tube)を使用したテレビジョンモニタを使用することも可能であり、この場合出力制御部10にはテレビジョンモニタ用のドライバが用いられる。
【0026】
次に、以上のように構成された情報提示装置100の動作を説明する。図5及び図6はその制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
情報提示装置100は、待機状態においてステップS51において文章データの入力を監視している。この状態で、いま情報入力装置101において、例えば
「○○線は13時10頃に発生した信号機故障の影響により、東京−横浜間で列車運行を休止しています。」
と云った音声アナウンスが入力されたとする。そうすると、このアナウンスの音声信号は情報入力装置101により音声認識されてテキストからなる文章データに変換され、入力制御部102に入力される。入力制御部102は、上記入力された音声アナウンスに対応する文章データを受信すると、この受信された文章データをキーワード抽出部103に転送する。
【0027】
キーワード抽出部103は、ステップS52において、上記転送された文章データに対し例えば形態素解析を行い、その解析結果に基づいてステップS53により上記入力された文章データに含まれるキーワードを抽出する。図7はその処理の一例を示すもので、先ず入力された文章データに対し(1)で形態素解析を行って文章データを(2)に示すように複数の形態素に分離する。次に、(3)において上記形態素の中からキーワードの抽出を行う。このキーワードの抽出処理では、固有名詞等のようにそれのみで意味を持つ語句が抽出される。例えば、図7(4)に示すように「○○線」、「13時10分頃」、「信号機故障」、「東京」、「横浜」、「列車運行」、「停止」がそれぞれ抽出される。
【0028】
次に情報提示装置100はステップS54に移行し、箇条書きテキスト取得部111により箇条書きテキスト記憶部110を検索して、上記抽出されたキーワードに対応する項目区分と箇条書きテキストデータの情報セットを読み出す(図7に示す(5))。例えば、図7の(4)に示すキーワードに対しては、その項目区分と図2の破線で囲った箇条書きテキストデータが読み出される。そして、この読み出された項目区分と箇条書きテキストデータとからなる情報セットはリスト手話合成部140に転送される。
【0029】
続いて情報提示装置100はステップS55に移行し、断片手話データ取得部121により断片手話データ記憶部120の検索処理を次のように実行する。すなわち、先ずステップS551によりキーワードをもとに上記断片手話データ記憶部120の断片手話インデックス記憶部を検索して、当該キーワードに対応する項目区分と箇条書きテキストデータとインデックスデータを選択的に読み出す。この結果、例えば図3に示すように、キーワードが「運休」であればインデックスデータとして「A002」が、また「信号機故障」であれば「B001」がそれぞれ読み出される。
【0030】
次に情報提示装置100の断片手話データ取得部121は、ステップS552において、上記読み出したインデックスデータをもとに断片手話データ記憶部120の断片手話映像記憶部を検索して、当該インデックスデータに対応する断片手話映像データを読み出す。この結果、例えば図4に示すように、インデックスデータ「A002」であれば断片手話映像データ「Pa002」が、またインデックスデータ「B001」であれば断片手話映像データ「Pb001」がそれぞれ読み出される。
【0031】
またこのとき、対応する断片手話映像データが断片手話映像記憶部に記憶されていたか否かをステップS553で判定する。そして、記憶されていなかった場合には、ステップS554により上記断片手話映像記憶部を再度検索して、上記インデックスデータに対応する断片手話表現データを読み出す。例えば、図4に示す例ではインデックスデータ「B002」に対応する断片手話映像データは記憶されていないので、この場合にはインデックスデータ「B002」に対応する断片手話表現データ「Gb002」が読み出される。インデックスデータ「D001」の場合も同様に、断片手話映像データに代わって断片手話表現データ「Gd001」が読み出される。
以上の断片手話データ記憶部120から読み出された、項目区分と箇条書きテキストデータと断片手話映像データ又は断片手話表現データとからなる情報セットは、リスト手話合成部140に送られる。
【0032】
情報提示装置100は、上記抽出されたすべてのキーワードに対応する箇条書きテキストデータと、断片手話映像データ又は断片手話表現データの検索処理を繰り返し実行する。そして、上記すべてのキーワードに対応する検索処理が終了したことをステップS56により検出すると、情報提示装置100はステップS57に移行し、提示テンプレート取得部131により提示テンプレート記憶部130を検索して、前記抽出されたキーワードに対応する提示テンプレートを取得する。例えば、図7に示したように抽出されたキーワードが交通機関の運転状況に関するものであれば、交通機関用の提示テンプレートを提示テンプレート記憶部130から読み出す。
【0033】
次に情報提示装置100は、リスト手話合成部140において、上記箇条書きテキスト取得部111及び断片手話データ取得部121から送られた情報セットを、上記展示テンプレート取得部131により取得された提示テンプレートにより指定されるレイアウトに従い合成して、提示コンテンツデータを作成する処理を、以下のように実行する。
【0034】
すなわち、先ずステップS61により、上記断片手話データ取得部121から送られた情報セットに含まれるデータが断片手話映像データであるか断片手話表現データであるかを判定する。この判定の結果、断片手話表現データであれば、ステップS62により当該断片手話表現データをもとに3次元コンピュータグラフィックスによる断片手話アニメーション画像を生成する。次にステップS63において、上記提示テンプレートにより指定されるレイアウトに従い、各項目区分の箇条書きテキストデータと、上記断片手話映像データ又は上記断片手話アニメーション画像データとを合成する。
【0035】
例えば、提示テンプレートが図8に示されるものであれば、テンプレートの左半分側の箇条書きテキスト提示領域401に、「運転再開予定」、「代替輸送」、「原因」、「路線」、「区間」の項目に対応付けてそれぞれ箇条書きテキストデータが配置される。また、テンプレートの右半分側の断片手話提示領域402に、上記断片手話映像データ又は上記3次元コンピュータグラフィックスの断片手話アニメーション画像が配置される。図9は、以上のような合成処理により作成された、リスト手話による情報提示コンテンツ画像の一例を示すものである。なお、同図では断片手話提示領域402に3次元コンピュータグラフィックスの断片手話アニメーション画像データを合成した場合を例示している。
【0036】
最後に情報提示装置100はステップS64に移行し、出力制御部105により、上記リスト手話合成部140により作成された情報提示コンテンツ画像を表示装置106へ送信し、この表示装置106に表示させる。この表示処理は1回だけでもよいが、一定の時間間隔で複数回繰り返し行ってもよい。
【0037】
以上述べたようにこの実施形態に係わる情報提示装置100では、入力制御部102で文章データを受信すると、当該文章データをキーワード抽出部103により形態素解析してキーワードを抽出し、この抽出したキーワードをもとに箇条書きテキスト取得部111により箇条書きテキスト記憶部110を検索して対応する箇条書きテキストデータを取得すると共に、断片手話データ取得部121により断片手話データ記憶部120を検索して対応する断片手話映像データを取得する。そして、上記取得した箇条書きテキストデータ及び断片手話映像データを、提示テンプレート取得部131により提示テンプレート記憶部130から取得した提示テンプレートのレイアウトに従い合成して提示情報コンテンツを作成し、この提示情報コンテンツを出力制御部105により表示装置106に表示させるようにしている。
【0038】
したがって、聴覚障害者は断片手話映像とそれに対応付けられて提示される箇条書きテキストとにより、提示情報の内容を簡単かつ迅速にしかも要点を正確に把握することが可能となる。また、断片手話映像と共に箇条書きテキストが提示されるため、健聴者も提示情報の内容を簡単かつ迅速に把握することができる。
【0039】
また、断片手話データ記憶部120から断片手話映像データを取得する際に、断片手話映像データが断片手話映像記憶部に記憶されているか否かを判定し、記憶されていなかった場合に上記断片手話映像記憶部を再度検索して対応する断片手話表現データを読み出す。そして、情報提示コンテンツを作成する際に、上記断片手話表現データをもとに3次元コンピュータグラフィックスの断片手話アニメーション画像を生成し、上記断片手話映像データの代わりにこの断片手話アニメーション画像データを合成するようにしている。したがって、例えば断片手話映像データが記憶されていない場合でも、手話画像を表示させることができる。
【0040】
図10は、本発明による箇条書きテキストデータと断片手話映像データとを並べて表示するリスト手話方式に対する聴覚障害者及び手話通訳者の評価結果を、従来の長文の文章をそのままテロップ表示する情報提示方式と比較して示したものである。同図から明らかなように、本発明によるリスト手話方式では、有効性、理解容易性、迅速性、正確性のいずれの指標についても、従来方式より優れているとの評価(1%の有意水準/N=17))が得られた。
【0041】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では情報提示装置100の断片手話データ記憶部120を断片手話インデックス記憶部と断片手話映像記憶部により構成した場合を例にとって説明した。しかし、それに限定されるものではなく、例えば図11に示すように、区分された各項目301に対応付けて、箇条書きテキストデータ302と、断片手話映像データ304と、断片手話表現データ305をそれぞれ記憶したものとしてもよい。
【0042】
また必ずしも断片手話映像データ304と断片手話表現データ305の両方を記憶させる必要はなく、3次元コンピュータグラフィックスによる断片手話アニメーション画像を表示しない場合には手話翻訳者を撮像した断片手話映像のデータ304のみを記憶させ、一方手話翻訳者を撮像した断片手話映像データ304を用意できない場合には断片手話表現データ305のみを記憶させるようにすればよい。
【0043】
さらに、前記実施形態では箇条書きテキスト記憶部110及び断片手話データ記憶部120を情報提示装置内に設けた場合を例にとって説明した。しかし、それに限定されるものではなく、箇条書きテキスト記憶部110及び断片手話データ記憶部120をそれぞれ情報提示装置とは別に設けられた蓄積サーバ等に設け、情報提示装置と上記箇条書きテキスト記憶部110及び断片手話データ記憶部120との間をLAN(Local Area Network)やIP(Internet Protocol)網等のネットワークを介して接続して情報セットを取得するようにしてもよい。
【0044】
さらに、項目区分は図2及び図3に示すものに限定されるものではなく、それら以外にも適用対象に応じて柔軟に設定することが可能である。また、提示テンプレートのレイアウトは図8に示すように箇条書きテキスト提示領域401を画面の左側に、断片手話提示領域402を画面の右側に設定するものに限定されるものではなく、用途や利用者に合わせて適宜変更してもよい。さらに情報提示テンプレートは、常に予め決められた一つのテンプレートを用いるようにしてもよいし、例えば提示情報の種類や項目区分の数に応じて異なるテンプレートを選択して用いるようにしてもよい。
【0045】
さらに、提示テンプレートの断片手話提示領域402に表示する断片手話映像又は断片手話アニメーション画像は、動画像や準動画像、静止画像のいずれでもよく、また複数の断片手話映像データを合成する際には、例えば時間的に先に表示する断片手話映像の最後の手の位置と次に表示する断片手話映像の最初の手の位置とが異なっている場合に、これらの手の位置が連続的に自然に変化するように見えるように、必要に応じて映像の追加や加工を行ってもよい。
【0046】
さらに、提示情報の種類としては交通機関の運行状況に関する情報以外に、地震や台風、大雨、洪水等の天災に関する情報、政治、経済、芸能、スポーツなどに関する情報であってもよく、その他情報提示装置の構成や提示情報の作成制御手順と制御内容、提示情報のレイアウト等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0047】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の一実施形態に係わる情報提示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した情報提示装置の箇条書きテキスト記憶部に記憶される箇条書きテキストの一例を示す図である。
【図3】図1に示した情報提示装置の断片手話データ記憶部を構成する断片手話インデックス記憶部と断片手話映像記憶部のうち、断片手話インデックス記憶部に記憶されるインデックスデータの一例を示す図である。
【図4】図1に示した情報提示装置の断片手話データ記憶部を構成する断片手話インデックス記憶部と断片手話映像記憶部のうち、断片手話映像記憶部に記憶される断片手話映像データ及び断片手話表現データの一例を示す図である。
【図5】図1に示した情報提示装置による提示情報作成及び表示制御の手順と内容の前半部分を示すフローチャートである。
【図6】図1に示した情報提示装置による提示情報作成及び表示制御の手順と内容の後半部分を示すフローチャートである。
【図7】図1に示した情報提示装置のキーワード抽出部によるキーワード抽出処理の手順と内容を示す図である。
【図8】図1に示した情報提示装置の提示テンプレート取得部において生成される提示テンプレートの一例を示す図である。
【図9】図1に示した情報提示装置のリスト手話合成部で作成される提示情報の一例を示す図である。
【図10】この発明の効果を説明するためのグラフである。
【図11】この発明の他の実施形態における断片手話データ記憶部に記憶されるデータの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
100…情報提示装置、101…情報入力装置、102…入力制御部、103…キーワード抽出部、104…主制御部、105…出力制御部、106…表示装置、110…箇条書きテキスト記憶部、111…箇条書きテキスト取得部、120…断片手話データ記憶部、121…断片手話データ取得部、130…提示テンプレート記憶部、131…提示テンプレート取得部、140…リスト手話合成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定したキーワードに対応付けて当該キーワードに対応する箇条書きテキストデータを記憶した第1の記憶装置と、前記キーワードに対応付けて当該キーワードの内容を断片的な手話映像により表す断片手話データを記憶した第2の記憶装置に対し、それぞれ接続可能な情報提示装置であって、
文章データの入力を受け付ける入力インタフェース手段と、
前記入力された文章データを解析処理して、当該文書データに含まれるキーワードを抽出するキーワード抽出手段と、
前記抽出されたキーワードに対応する箇条書きテキストデータを前記第1の記憶装置から検索する第1の検索手段と、
前記抽出されたキーワードに対応する断片手話データを前記第2の記憶装置から検索する第2の検索手段と、
前記検索された箇条書きテキストデータと前記検索された断片手話データとを相互に対応付けて合成処理して、情報提示コンテンツを生成するコンテンツ生成手段と、
前記生成された情報提示コンテンツを視覚的に提示するべく出力する出力インタフェース手段と
を具備することを特徴とする情報提示装置。
【請求項2】
文章データの入力を受け付ける過程と、
前記入力された文章データを解析処理して、当該文書データに含まれるキーワードを抽出する過程と、
予め設定したキーワードに対応付けて当該キーワードに対応する箇条書きテキストデータを記憶した第1の記憶装置に対しアクセスし、前記抽出されたキーワードに対応する箇条書きテキストデータを検索する過程と、
前記キーワードに対応付けて当該キーワードの内容を断片的な手話映像により表す断片手話データを記憶した第2の記憶装置に対しアクセスし、前記抽出されたキーワードに対応する断片手話データを検索する過程と、
前記検索された箇条書きテキストデータと前記検索された断片手話データとを相互に対応付けて合成処理して情報提示コンテンツを生成する過程と、
前記生成された情報提示コンテンツを視覚的に提示するべく出力する過程と
を具備することを特徴とする情報提示方法。
【請求項3】
予め設定したキーワードに対応付けて当該キーワードに対応する箇条書きテキストデータを記憶した第1の記憶装置と、前記キーワードに対応付けて当該キーワードの内容を断片的な手話映像により表わす断片手話データを記憶した第2の記憶装置に対し、それぞれ接続可能な提示情報作成装置であって、
文章データの入力を受け付ける入力インタフェース手段と、
前記入力された文章データを解析処理して、当該文書データに含まれるキーワードを抽出するキーワード抽出手段と、
前記抽出されたキーワードに対応する箇条書きテキストデータを前記第1の記憶装置から検索する第1の検索手段と、
前記抽出されたキーワードに対応する断片手話データを前記第2の記憶装置から検索する第2の検索手段と、
前記検索された箇条書きテキストデータと前記検索された断片手話データとを相互に対応付けて合成処理して情報提示コンテンツを生成するコンテンツ生成手段と
を具備することを特徴とする提示情報作成装置。
【請求項4】
文章データの入力を受け付ける過程と、
前記入力された文章データを解析処理して、当該文書データに含まれるキーワードを抽出する過程と、
予め設定したキーワードに対応付けて当該キーワードに対応する箇条書きテキストデータを記憶した第1の記憶装置に対しアクセスし、前記抽出されたキーワードに対応する箇条書きテキストデータを検索する過程と、
予め設定したキーワードに対応付けて当該キーワードの内容を断片的な手話映像により表現する断片手話データを記憶した第2の記憶装置に対しアクセスし、前記抽出されたキーワードに対応する断片手話データを検索する過程と、
前記検索された箇条書きテキストデータと前記検索された断片手話データとを相互に対応付けて合成処理して情報提示コンテンツを生成する過程と
を具備することを特徴とする提示情報作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−216397(P2008−216397A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50768(P2007−50768)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】