情報処理装置、放射線撮影システム、Cアーム撮影装置、情報処理方法、入出力特性の取得方法、及びプログラム
【課題】 補正に用いる白画像の撮影の際に、検出器に照射する複数の線量を検出器の入出力特性に合わせて決定する。
【解決手段】 X線検出器12および放射線発生部13により放射線撮影が実行される。入出力特性取得部106は、所定の部分領域の単位、例えば画素毎や画像の部分領域毎に入出力特性の情報を得ることができる。補正線量決定部107は、検出器の入出力特性に応じて、X線発生部13からX線検出器12に照射するX線の複数の線量値を決定する。補正情報取得部108は決定された複数の線量の放射線を順次照射してX線検出器12から得られる複数の補正画像に基づきゲイン補正情報を取得する画像補正部109は、補正情報取得部108で取得されたゲイン補正情報に基づいてX線検出器12により得られたX線画像を補正する。
【解決手段】 X線検出器12および放射線発生部13により放射線撮影が実行される。入出力特性取得部106は、所定の部分領域の単位、例えば画素毎や画像の部分領域毎に入出力特性の情報を得ることができる。補正線量決定部107は、検出器の入出力特性に応じて、X線発生部13からX線検出器12に照射するX線の複数の線量値を決定する。補正情報取得部108は決定された複数の線量の放射線を順次照射してX線検出器12から得られる複数の補正画像に基づきゲイン補正情報を取得する画像補正部109は、補正情報取得部108で取得されたゲイン補正情報に基づいてX線検出器12により得られたX線画像を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影に用いる検出器の補正情報を取得する情報処理装置、放射線撮影システム、Cアーム撮影装置、情報処理方法、入出力特性の取得方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野や非破壊検査などの放射線画像診断の領域において、固体撮像素子を二次元格子状に配置した検出器を用い、放射線情報を電荷に変換し放射線画像を得るデジタル撮影装置が用いられている。
【0003】
一般に検出器では固体撮像素子の画素間で、X線に対する電気信号の強度(感度)が異なる。固体撮像素子の画素間の感度ばらつきを補正することをゲイン補正と呼ぶ。ゲイン補正を実施するには、被写体を撮影する前に、被写体の無い状態で固体撮像素子にX線を照射して画像(補正用画像)を撮影し、線量に対する検出器の出力の特性を示す情報(ゲイン補正情報)を取得する必要がある。特に固体撮像素子の線量に対する出力が非線形となる出力値域がある場合、特許文献1のように線量の異なる複数枚の画像を撮影することで非線形な出力に対応したゲイン補正情報が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−125203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら補正用画像を得る際に照射する放射線の線量幅を均等にした場合、線量―出力値の特性において特に線形に近似できない出力値域では、入出力特性の情報の精度がよくないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明の実施形態に係る情報処理装置は、 検出器の入出力特性に応じて該検出器に照射する放射線の複数の線量値を決定する決定手段と、前記決定された複数の線量の放射線を順次照射して前記検出器から得られる複数の補正画像に基づき前記検出器のゲイン補正情報を取得する取得手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の補正画像を得るための複数の線量値を予め得ておいた検出器の入出力特性に応じて決定するため、適切なゲイン補正情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る放射線撮影システム10の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るキャリブレーションデータ生成処理の流れを示すフローチャートである。(a)は処理の概要を示すフローチャートである。(b)は線量を決定する処理の流れを示すフローチャートである。(c)は補正データの生成処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】(a)は画素値の平均値を計算するROIを示す図である。(b)はROI毎のX線検出部の入出力特性を示す図である。(c)は選択されたROIにおける線量と画素値及びその微分値の関係を示す図である。
【図4】(a)は第1の実施形態での補正用ゲイン画像データ取得時のX線照射量決定式を示す図である。(b)は係数Kと最大照射線量の関係を示す図である。
【図5】(a)は決定された線量により得られたデータを示すグラフである。(b)は所定の1画素の入出力特性の逆関数を示す図である。
【図6】撮影処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態に係る入出力特性を近似したグラフを示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る線量を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第3の実施形態に係る放射線撮影システム90の構成を示す図である。
【図10】放射線撮影システム90の一例であるCアーム撮影システムの構成を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る放射線撮影システム90の処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】第3の実施形態に係るゲイン補正情報を取得する処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】(a)は第3の実施形態での補正用ゲイン画像データ取得時のX線照射量決定式を示す図である。(b)は画素値と線量ステップとの関係を示す図である。
【図14】(a)は第3の実施形態に係る画像処理の流れを示すフローチャートである。(b)はノイズ低減処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】ノイズ低減処理の式を示す図である。
【図16】その他の実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
[第一の実施形態]
図1に基づいて第1の実施形態に係る放射線撮影システム10の構成を説明する。図1は特に医療用として利用される第1の実施形態に係る放射線撮影システム10の全体構成を示す図である。放射線撮影システム10は情報処理装置11と、X線検出器12と、X線発生部13と、表示部110と、操作部111とを有する。
【0011】
図1において、X線発生部13は被写体PにX線を照射する。X線検出器12は被写体Pを透過したX線を検出し、X線画像データを生成する。X線発生部13は、X線を発生するX線管101と、X線発生部において発生したX線のビーム広がり角を規定するコリメータと、不図示の線量計によって構成される。線量計は、被写体が無い状態での、X線検出器12に入射するX線量の計測ができるものとする。X線検出器12は、固体撮像素子が2次元に格子状に配置されたイメージセンサ102を有する。
【0012】
イメージセンサ102は固体撮像素子の基板を複数枚貼り合わせて構成されている。固体撮像素子の基板には光電変換素子を有する画素が二次元的に配置されている。この画素は略均一な線量―出力値の応答を示す入出力特性を示すが、それぞれ微妙に異なっている。つまり感度ムラを有する。画素毎の特性を補正するゲイン補正により、この感度ムラを補正することができる。画素の入出力特性は一般に線形性を示すが、高線量域では線型性が崩れ、線量に対する出力値の応答が低線量域よりも小さくなる。また、所定の閾値以上に高い線量の放射線が照射されると、画素は飽和し、それ以上線量を増加させても出力値は変化しなくなる。
【0013】
情報処理装置11の線量制御部103と撮影制御部105の制御により、X線検出器12および放射線発生部13が制御され放射線撮影が実行される。線量制御部103は、X線発生部13から照射されるX線の線量を制御する。撮影条件設定部104は、被写体に照射されるX線の線量、フレームレート、ビニング等の撮影条件を操作者の操作に応じて設定する。撮影制御部105は、補正線量決定部107、撮影条件設定部104からの信号を基にX線検出器12、線量制御部103を制御する。
【0014】
入出力特性取得部106は、ROI平均値取得部1061と多項式近似部1062を有する。ROI平均値取得部1061でX線検出器12から得られた画像データの所定の部分領域またはROI毎に代表画素値例えば平均値を算出する。多項式近似部1062では得られた代表画素値を多項式近似し入出力特性を得る。ここでいう入出力特性とは、X線検出器12に対してX線発生部13から照射された線量に対するX線検出器12の出力値の関係を示す情報である。出力値の例としてX線検出器12から得られる画像データの画素値を用いる。画像の画素値の値を示す入出力特性取得部106は、所定の部分領域の単位、例えば画素毎や画像の部分領域毎に入出力特性の情報を得ることができる。
【0015】
補正線量決定部107は、ROI選択部1071と微分算出部1072と係数決定部1073を有し、検出器の入出力特性に応じて、X線発生部13からX線検出器12に照射するX線の複数の線量値を決定する。ROI選択部1071では最も特性のよくない部分領域を選択する。微分算出部1072でこの選択された領域における入出力特性の微分値を算出する。係数決定部1073では線量間隔を決めるための係数を決定する。決定された線量により補正用X線画像データが得られる。
【0016】
補正情報取得部108は逆関数算出部1081を有し、決定された複数の線量の放射線を順次照射してX線検出器12から得られる複数の補正画像に基づきゲイン補正情報を取得する。逆関数算出部1081はX線検出器12で撮影された入射線量の異なる複数枚のX線画像データに基づき得られる入出力特性の逆関数を求め、補正情報取得部108はこの情報を用いてゲイン補正に用いるデータを生成する。画像補正部109は、補正情報取得部108で取得されたゲイン補正情報に基づいてX線検出器12により得られたX線画像を補正する。
【0017】
表示部110は情報処理装置11の不図示の表示制御部の制御に応じて画像補正部109でゲイン補正されたX線画像データを出力する。
【0018】
図2のフローチャートに従い、上述の放射線撮影システム10により実行されるゲイン補正情報を取得する処理を説明する。図2(a)のフローチャートはゲイン補正情報を取得する処理の概要を示している。
【0019】
ステップS21で補正線量決定部107は任意の方法で得られたX線検出器12の入出力特性に応じて補正用画像を撮影するためにX線検出器12に複数回照射する放射線のそれぞれの線量値を最適化し、決定する。ステップS22で補正情報取得部108は決定された複数の線量のX線を順次照射してX線検出器12から得られる複数の補正画像に基づきX線検出器12のゲイン補正情報を取得する。
【0020】
これら処理では例えば、最適なゲイン補正データを生成するために、補正用X線画像データを2回取得する。1回目は均等な線量間隔で照射し、これにより得られた入出力特性(第一の入出力特性)に応じた線量で2回目の照射を行い、精度が向上された入出力特性(第二の入出力特性)を得る。
【0021】
図2(b)のフローチャートは補正用画像を撮影するための線量を最適化するステップS21の処理の流れを示している。なお、被写体透過後にX線検出器12に入射する1フレームあたりの線量がXmax以下であることを想定している。またゲイン補正用X線画像データは10枚取得することを想定している。
【0022】
ステップS211では線量制御部103の制御に応じてX線発生部13はX線検出器12に向けてX線を照射し、撮影制御部105の制御に応じて駆動するX線検出器12は1回目の補正用X線画像データ10枚を取得する。線量制御部103及び撮影制御部105の制御によって、線量の照射及び検出器による電荷蓄積および読み出しの制御を同期させることで実行される。1回目の補正用X線画像データは、Xmin〜Xmaxまで等間隔で10枚取得する。ここでXminはX線検出器12の入出力特性曲線の線形領域内で、十分小さな値であればどのような値でもよい。
【0023】
ステップS212で情報処理装置11はX線検出器12で得られた10枚の画像データを取得する。取得した補正用X線画像データは、入出力特性取得部106、補正線量決定部107、補正情報取得部108に送信される。
【0024】
ステップS213で入出力特性取得部106のROI平均値取得部1061はROI(部分領域)毎に画素値の平均値を計算する。
【0025】
図3(a)、(b)を用いて、ステップS213の平均値計算処理について説明する。
【0026】
図3(a)に示すように、X線検出器12が400pixels×800pixelsの固体撮像素子8枚を貼り合わせて構成されていることを想定している。
【0027】
まず入出力特性取得部106は図3(a)に示すように100pixels×100pixelsの大きさの256個のROI(部分領域)を画像データ全体に取る。なおこのROIの大きさは一例であり、ROIの大きさはX線検出器12の入出力特性の最も悪い空間的局所領域を適切に抽出できるものであればいかなる大きさであってもよい。次いでROI平均値取得部1061はステップS211で取得した10枚の画像データ全てについてROIの画素値の平均値を計算する。計算結果のうち、図3(a)に示したB、Cの固体撮像素子それぞれの、a、b、cのROIの結果を図3(b)に示す。ここでは、固体撮像素子において周縁部に配置された画素の特性がばらつきやすいことを考慮して、隅の部分領域のみについて比較を行っている。図3(b)に示すように、固体撮像素子は、各素子とも素子内に入出力特性のばらつきがあり、この例ではaに示す位置で入出力特性が悪い。
【0028】
ステップS213では、固体撮像素子内で入出力特性の分布があることを仮定して、画素値を計算するROIを、固体撮像素子間を跨がないように設定している。このようにROI平均値取得部1061はX線検出器12が半導体基板上に実装された固体撮像素子を複数貼り合わせて構成された検出器である場合に、複数の固体撮像素子を含まないように設定された部分領域のそれぞれから出力値の代表値を取得している。この点でROI平均値取得部1061は代表値取得部として機能している。これにより、固体撮像素子間の特性の違いの影響を受けず、精度良くゲイン補正情報を得ることができる。特に、略同一の工程で製造された同形の固体撮像素子を貼り合わせてイメージセンサ102を構成している場合、各固体撮像素子における同一の位置では特性が略同一となるか、類似すると考えられる。そこで、各固体撮像素子について同様にROIを設定することで、線量の入出力特性情報の量を貼り合わせ数に応じた分だけ減らすことができる。これにより、キャリブレーション処理の効率化を図ることができる。
【0029】
図3(b)のグラフに示すように、固体撮像素子B、CのそれぞれについてROIa同士、b同士、c同士で特性が類似していることが分かる。
【0030】
なおステップS213で算出するのは平均値に限らず、部分領域内の画素値を代表する値であれば中央値等平均値以外の値であってもよい。
【0031】
ステップS214で多項式近似部1062は、ステップS213で求めた各ROIの入射線量と出力値を多項式近似する。ここで、多項式近似により3次関数に近似することとする。これにより入出力特性取得部106は、X線検出器12に対して複数段階に線量を変えて放射線を照射し得られた複数の補正用画像に基づいて、照射した線量に対する画素値の関係を示す入出力特性(第一の入出力特性)を部分領域毎に取得する。
【0032】
なおステップS214までの処理は工場出荷時や設置時に1度だけ実行しておけば良く、この場合には入出力特性取得部106はメモリに記憶された第一の入出力特性を取得する処理を実行すればよい。システム設置後、定期的に行われるキャリブレーション処理では、2回目以降の撮影のみを行う。
【0033】
ステップS215で補正線量決定部107のROI選択部1071は、ステップS214で多項式近似した後の各ROIのXmaxでの平均値を比較し、平均値が最小のROIを選択する。つまり、複数のROI(部分領域)のうち入力に対する出力値が最も小さい出力値域を有するROI(部分領域)を入出力特性の最も悪いROIと判定する。そのROIの入出力特性を基準にして2回目の補正用X線画像データ取得時の、X線検出器12への照射線量を決定する。このように判定しているのは、イメージセンサの画素では一般的に飽和に近づくにつれて線量に対する出力値の増分が小さくなるからである。この性質を利用し、出力値の増加率に応じて照射する線量幅を狭めることで入出力特性に適切に対応した補正画像を得る。
【0034】
ステップS216で微分算出部1072は選択されたROIの微分係数を算出する。これを図3(c)を用いて、説明する。図3(c)にはステップS214の入出力特性の多項式近似と、ステップS216の微分の結果を示されている。ここでROIは図3(a)のB_aである。また図3(c)では入出力特性を3次関数に近似している。
【0035】
ステップS217で係数決定部1073は得られた入出力特性(第一の入出力特性)の微分係数に基づいて2回目の補正用X線画像データを取得するためにX線検出器12に照射する放射線の複数の線量値を決定する。
【0036】
図4(a)、(b)を用いて、ステップS217の補正用X線画像データ取得時の入射線量決定処理について説明する。入射線量の決定式を図4(a)に示す。ここでXは入射線量、Yは固体撮像素子の出力値であり、YはステップS214で多項式近似した後の値である。またXnは2回目の補正用X画像データ取得時のn枚目の画像データ取得時の入射線量である。ここでX1はX線検出器12の入出力特性曲線の線形領域内で、十分小さな値であればどのような値でもよく、本実施例では1回目の補正用X線画像データ取得時同様Xminとしている。
【0037】
図4(a)の式を用いて、係数決定部1073は、複数のROI(部分領域)のうち入力に対する出力値が最も小さい出力値域を有する部分領域に基づいて前記複数の線量値間における値の差を決定する。図4(a)に示すように、補正用X線画像の入射線量は入出力特性の微分関数に比例したステップで段階的に増やす。Kはその比例係数であり、X10が被写体透過後の想定最大線量Xmaxとなるように、次の手順で決定する。まずX1をXminとし、Kを初期値0から段階的に十分小さな刻みで増加させ、各Kの値で図4(a)の式に従ってX10を求める。X10がXmaxを超えるまでKを増加させ、超えたときの値をKの値として決定する。図4(b)にKを段階的に増加させた場合の、X10の値を示す。図4(b)から、Kの値はK1と定まる。次いでX1=Xmin、K=K1としてX2〜X9を計算する。以上により、補正用X線画像の入射線量X1〜X10が定まる。このように線量決定部107は、第一の入出力特性に基づき線量に対する画素値の増分が小さいほど線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定する。
【0038】
以上の処理によりステップS21の線量の決定処理が終了する。
【0039】
図2(c)のフローチャートに従い、上述の処理で決定された線量情報を用いたゲイン補正データの生成処理について説明する。
【0040】
ステップS221で線量制御部103の制御に応じてX線発生部13はX線検出器12に向けてX線を照射するとともに、撮影制御部105の制御に応じて駆動するX線検出器12は1回目の補正用X線画像データ10枚を撮影する。ここではX線の線量はステップS21で決定された複数の線量X1〜X10が順次照射される。
【0041】
ステップS222で情報処理装置11は撮影された2回目の補正用画像データを取得する。取得された補正用画像は、入出力特性取得部106および画像補正部109に送信される。
【0042】
ステップS223で入出力特性取得部106は得られた2回目の補正用画像データの画素値を参照し、画素毎に入出力特性を得る。ROI平均値取得部1061は処理を行わず、多項式近似部1062は画素毎の入出力特性値を3次関数に近似する。
【0043】
図5(a)には、図3(a)のB_aのROI上の1画素の入出力特性を示す。ここで図3(c)と比較することにより、2回目に取得した補正用X線画像データは、1回目の場合と比較して高線量側で個数が多く、入出力特性の微分値が小さい線量域で多くの補正用X線画像データを取得できていることがわかる。
【0044】
ステップS224で補正情報取得部108は、第二の入出力特性の逆関数を得ることによりゲイン補正情報を取得する。
【0045】
図5(b)を用いて、ステップS224の入出力特性曲線の逆関数計算について説明する。図5(b)は図5(a)と同じ画素の、入出力特性曲線の逆関数の計算結果である。逆関数は補正情報取得部108において、X線検出器12の出力値と入射線量の関係を多項式近似して計算する。但し、出力値と入射線量を一意に対応させるため、近似曲線は出力値0で入射線量が0となるように切片を0としている。そして計算された多項式近似の各項の係数情報を画像補正部109に送信する。出力値と入射線量を3次関数に近似する場合の例では、X=aY^3+bY^2+cYとなり、a、b、cの情報が1画素のゲイン補正情報である。このように画素毎にa、b、cの情報を生成し、得られたデータをゲイン補正情報として不図示のメモリに格納すると共に、画像補正部109に送信する。
【0046】
以上によって、ステップS22のゲイン補正データの生成処理は終了する。
【0047】
図6のフローチャートに従い、被写体の撮影から画像表示までの処理を説明する。ステップS601では操作者が操作部111を操作し照射線量、X線発生部13の管電圧といった被写体撮影時の撮影条件を入力する。入力された撮影条件は、撮影条件設定部104で設定され、撮影制御部105に送信される。ステップS602では、ステップS601で設定された撮影条件を基に、撮影制御部105が線量制御部103に線量制御信号を送信し、線量制御部103がその信号を基にX線発生部13にX線照射信号を出力する。X線発生部13はその信号を受けて、被写体にX線を照射する。同時に撮影制御部105は、X線検出器12にX線画像データ取得信号を送信し、X線検出器12はその信号を基に被写体透過後のX線画像データを取得する。取得されたX線画像データは、画像補正部109に送信される。
【0048】
ステップS603で画像補正部109はゲイン補正情報に基づいて画像を補正する。
【0049】
図4(d)を用いて、ステップS603の画素値−線量変換方法について説明する。ステップS603では画像補正部109で、ステップS602で取得されたX線画像データを、X線検出器12に入射した線量のデータに変換する。画素値−線量の変換は、ステップS223で計算された各画素の出力値−入射線量変換係数を用いて多項式により変換される。前記3次関数の例では、画像補正部109に送信されたa、b、cを用い、前記X=aY^3+bY^2+cYの変換式によって変換される。図4(d)に示す1画素の出力がYaであった場合は、図4(d)に示すように線量情報Xaに変換される。
【0050】
ステップS604では画像補正部109で、ステップS603で線量情報に変換されたX線画像データに定数を掛けて、線量に比例した画素値に変換する。
【0051】
ステップS605では、ステップS604で変換されたX線画像データを表示部110に画像として出力する。
【0052】
ステップS506では、操作者が表示部110に表示された画像データを確認した後、画像撮影を継続するか否かの入力に応じて情報処理装置の撮影制御部105が撮影を継続させるかを判定する。継続か終了かの情報の入力は、操作者が操作部111に設置されている撮影継続、終了情報入力手段によって入力する。撮影継続が入力された場合、ステップS602〜S605が繰り返される。また撮影終了が入力された場合は、X線画像撮影が終了する。
【0053】
以上説明した処理により、補正用X線画像データ取得時のX線検出器12への入射線量を、X線検出器12の入出力特性の最も悪い領域の入出力特性で最適化されたものにすることができる。これによって、X線検出器12のゲイン補正を適切に実施することができ、ゲイン補正によって生じるアーチファクトを抑制することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
第1の実施形態ではX線検出器12の入出力特性を3次関数で近似したが、入出力特性のモデル化はこれに限らない。例えば、低線量域では線形近似できることを利用して、高線領域でのみ2次関数等の非線形関数に近似することができる。装置の構成については第1の実施形態と同様であるため説明は省略する。
【0055】
図7に基づき入出力特性の近似方法について説明する。図7は補正線量決定部107で決定された線量の画像から得られた1画素の入出力特性を示している。図7に示すように低線量域では線形関数で近似し、所定の閾値以上では非線形関数で近似し、飽和している出力値域では定数で近似している。非線形関数は2次関数としている。そこで、非線形に近似された領域では、線形に近似された領域に比べて線量間隔を小さくし、より多くの補正画像データを取得することとしている。これにより、非線形な出力値域での入出力特性を精度良く近似することができ、ゲイン補正の誤差を抑制することができる。
【0056】
図8のフローチャートに従い補正データの線量決定処理について説明する。なお、第一の実施形態のステップS211〜S216と同様の処理については説明を省略する。
【0057】
ステップS811ではステップS211と同様に、X線検出器12に対して複数段階に線量を変えて放射線を照射する。
【0058】
ステップS814では、この得られた複数の画像に基づいて、照射した線量に対する画像の画素値の関係を示す第一の入出力特性を取得する。ここで多項式近似部1062はステップS813で得られたROI毎の代表画素値に応じて線形領域と非線形領域に分けて近似する。近似は周知の関数フィッティングの技術を用いればよい。このように、ROI毎に近似処理を行うことで入出力特性取得部106は第一の入出力特性を取得する。
【0059】
ステップS815でROI選択部1071はROI毎の第一の入出力特性を参照して、非線形な領域が最も大きいROIを選択する。なお選択処理はこれに限らず、非線形領域における微分係数の平均値が最も小さいROIを選択することとしてもよい。
【0060】
ステップS816で補正線量決定部107は、非線形に近似される出力値域では線形に近似される出力値域に比べて照射する線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定する。これにより、非線形領域において多くの補正用画像データが得られることとなる。
【0061】
その後、第一の実施形態におけるステップS22の処理と同様に、X線発生部13は決定された複数の線量値でX線を照射し、X線検出器12は複数の画像を撮像する。入出力特性取得部106はこの画像に基づいて前記検出器の第二の入出力特性を取得する。
【0062】
このように、非線形領域に対応する線量の間隔を小さくすることで、ゲイン補正に用いる補正用画像を非線形領域で多くすることができるため、精度のよいゲイン補正を行うことができる。
【0063】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、CT撮影と通常のX線撮影の両方が可能な放射線撮影システムに本発明を適用した例である。また、第一の実施形態とは補正線量決定部107の機能が異なっている。
【0064】
即ち、第1の実施形態では、まずゲイン補正データ取得時のX線検出器12への入射線量を最適化し、次いで最適化された入射線量でX線画像データを取得し、ゲイン補正データを生成した。またCT(Computed Tomograhy)、一般透視撮影といった撮影方法によらず、常に入射線量の最適化を行ってからX線画像データを取得し、ゲイン補正データを生成した。これに対し、第3の実施形態では、1回の撮影で最適な入射線量でのゲイン補正用X線画像データを取得できる。線量制御部103及び撮影制御部105は、線量を順次上昇させながら補正画像の撮影を実行させる。補正線量決定部107は、既に得られた補正用画像から入出力特性を算出し、入出力特性に基づいて前記線量の上昇幅を決定する。
【0065】
これによりゲイン補正データ生成時間を短縮できる。さらに、第3の実施形態では、CTのような高いダイナミックレンジが必要な撮影と、一般透視撮影のような高いダイナミックレンジが必要とされない撮影でゲイン補正データ生成方法を切り替えることができる。これにより高いダイナミックレンジが必要とされない撮影でのゲイン補正データ生成時間を短縮できる。
【0066】
これらを実現するため、放射線撮影システム90は、情報処理装置91と、Cアーム撮影装置901とを有している。Cアーム撮影装置901はX線検出器92とX線発生部93と、X線検出器92およびX線発生部93を被検者Pに対して相対的に回転させる可動部902とを有している。可動部902は駆動制御部903により撮影処理と同期して制御される。
【0067】
また操作部111にユーザが撮影方法を選択するボタンが実装されており、かかるボタンの押下に応じて撮影条件設定部104には撮影方法を選択する。判定部904は撮影方法によって、X線検出器92の特性を非線形近似したゲイン補正情報と、X線検出器92の特性を線形近似したゲイン補正情報のいずれを取得するかを判定する。
【0068】
また補正線量決定部107には1回の補正用X線画像データ1セットの取得で、最適な線量での補正用X線画像データが得られる機能が実装されている。また補正情報取得部108には、高いダイナミックレンジが必要とされない場合でのゲイン補正データ生成手段が実装されている。また画像補正部109には高いダイナミックレンジが必要とされない場合でのゲイン補正手段が実装されている。
【0069】
画像処理部905は補正された画像に階調処理やノイズ低減処理を施し、診断に供するための画像を生成する。
【0070】
図10に従い上述の放射線撮影システムの1例であるモバイルCアーム撮影システムについて説明する。Cアーム撮影装置90は撮影を行うCアーム装置901と、表示部110を備えるモニタカート91を有する。Cアーム装置901及びモニタカート91は移動可能である。撮影台1002上の被検者Pの撮影に適した位置まで移動させた後利用される。モニタカート91の外部電源プラグ1001から供給された電力により起動する。可動部902が被検者Pに対して相対的に回転することでCT撮影が実行される。
【0071】
次に図11のフローチャートに従い、第3の実施形態の補正用X線画像取得から本撮影終了までのフローを説明する。ステップS1101では、操作者が操作部111に設置された撮影方法を選択するためのボタンを押下することに応じて、撮影条件設定部104が係る撮影条件の入力を受け取り、撮影方法を選択する。
【0072】
ステップS1102で判定部904はステップS1101で入力された撮影方法を基にゲイン補正方法が高ダイナミックレンジ用か、低ダイナミックレンジ用かを判定する。
【0073】
選択された撮影方法がCT撮影やDSA(デジタルサブトラクションアンギオグラフィ)等である場合には、高線量が必要となるため、第1及び第2の実施形態と同様に非線形な出力値域まで考慮したゲイン補正情報を取得する。また、一般撮影や透視撮影など、線量が比較的少なく済む場合には第1及び第2の実施形態とは異なり入出力特性が線形であるとしてゲイン補正情報を取得する。
【0074】
このように、決定された複数の線量の放射線を順次照射してX線検出器12の入出力特性を非線形近似するゲイン補正情報と、X線検出器12の入出力特性を線形近似するゲイン補正情報とのいずれを補正に用いるかを、撮影条件に応じて判定している。低線量である場合には入出力特性が非線形となる出力値が出力されることは少ないと考えられるため、非線形性を考慮せずに簡易にゲイン補正を行い、補正の精度を維持しつつ処理時間の短縮を図っている。
【0075】
例えばステップS1101でCTが選択された場合は、ステップS1103に進み、ステップS1101で一般撮影または透視撮影が選択された場合は、ステップS1105に進む。
【0076】
ステップS1103で入出力特性取得部106、補正線量決定部107および補正情報取得部は高ダイナミックレンジ用のゲイン補正データの生成を行う。本実施形態の処理では、一回の補正用X線画像データ撮影で、最適な線量での補正用X線画像データを取得しゲイン補正用データを生成する。この処理については図12(a)フローチャートに従い後述する。ここでn、Xn、Yn、Kの定義は第1の実施形態と同様である。
【0077】
ステップS1104で高ダイナミックレンジ用の本撮影を行う。この処理については第1の実施形態における図6のフローチャートに記載の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
ステップS1105では入出力特性取得部106、補正線量決定部107および補正情報取得部は低ダイナミックレンジ用のゲイン補正データの生成を行う。この処理については図12(a)フローチャートに従い後述する。
【0079】
ステップS1106で低ダイナミックレンジ用の本撮影を行う。この処理については第1の実施形態における図6のフローチャートに記載の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
ステップS1107で画像処理部905はゲイン補正がされた放射線画像にノイズ低減処理等の画像処理を施す。この処理については図14のフローチャートに従い後述する。
【0081】
図12(a)のフローチャートに従い、高ダイナミックレンジ用のゲイン補正データを取得する処理を説明する。まずステップS1201とステップS1202で、線量制御部103及び撮影制御部105はCアーム装置901を制御し既定の線量で補正用X線画像データを2枚撮影する制御を行う。ここで2枚の補正用X線画像データの入射線量は、X線検出器12の入出力特性曲線で線形性のある線量域で、十分線量が低く、互いに異なる線量であればいかなる線量でもよい。次いでステップS1203で撮影制御部105は不図示のメモリに記憶された補正用X線画像撮影枚数nに初期値3を代入する。
【0082】
ステップS1204で入出力特性取得部106のROI平均値取得部1061は直前に撮影された2枚の補正用X線画像データの平均値を計算する。平均値を計算するROIは、X線検出器12の画素のうち、入出力特性の最も悪い100pixels×100pixelsのROIである。ここで入出力特性の最も悪いROIは、固体撮像素子の特性などから既知であることとする。ROI選択部1071は不図示のメモリに記憶されたROIの情報を読み出しROIを選択する。
【0083】
ステップS1205で補正線量決定部107は図13(a)に示す式で次の補正用X画像データ取得時の入射線量を決定する。図13(a)では、次フレームの補正用X画像データ取得時の入射線量Xn+1を、前フレームの補正用X線画像データ取得時の入射線量Xnに、入出力特性の微分値(Yn−Yn−1)/(Xn−Xn−1)に比例した値を足すことにより決定する。これにより第3の実施形態では、次フレームの補正用X線画像データの入射線量を、前フレームと前々フレームの入出力特性のみから決定できる。よって、第1の実施形態のように、補正用X線画像データ取得を2回行う必要がなく、1回で最適な線量での補正用X線画像データの取得を行うことができる。図13(b)に各フレームでの補正用X線画像データの入射線量Xnと、線量ステップK(Yn−Yn−1)/(Xn−Xn−1)を示す。
【0084】
ステップS1206では補正情報取得部108はステップS1205で決定した補正用X線画像データの入射線量に基づいて、補正用X線画像データを取得する。次いでステップS1207で補正線量決定部107は、ステップS1206で決定した補正用X線画像データの入射線量が、既定の補正用X線画像データ撮影時の最大線量を超えているかを判定する。入射線量が既定値に達していない場合はステップS1208に進んで画像撮影枚数nを更新し、ステップS1204からステップS1207までを繰り返す。既定値に達している場合は補正用X線画像データの取得を終了し、ステップS1209に進む。
【0085】
ステップS1210で逆関数算出部1081は入出力特性曲線の逆関数を計算する。その方法はステップS224と同様である。以上によって、高ダイナミックレンジ用のゲイン補正データを生成できる。
【0086】
以上の通りX線を照射しながら次に照射するX線の線量値を決定する処理を行うことにより、第1または第2の実施形態に比べてX線の照射回数を減らし、X線照射に伴う時間を低減することができる。
【0087】
次に図12(b)のフローチャートに従い、低ダイナミックレンジ用のゲイン補正データ生成方法について説明する。まずステップS1211で線量制御部103及び撮影制御部105はCアーム装置901を制御し既定の線量で補正用X線画像データが1フレーム取得される。入射線量は、X線検出器12の入出力特性曲線で線形領域内の線量であることとする。次いでステップS1212で入出力特性取得部106は、ステップS1211で撮影された補正用X線画像データと、その時計測されたX線検出器12への入射線量から、ゲイン補正データを生成する。ステップS1212で補正情報取得部108はX線検出器12の各画素について、出力値Yと入射線量Xの関係から、入出力特性を一次関数Y=dXとし、e=1/d=X/Yを計算する。この出力値―入射線量変換係数eを画像補正部109に送信する。以上によって、低ダイナミックレンジ用のゲイン補正データを生成できる。
【0088】
次にステップS1104とステップS1106の処理では、図6に示したフローと同様であるが、ステップS1106ではステップS603の線量―画素値変換式が、第一の実施形態とは異なりX=eYとなる。以上により、高ダイナミックレンジ撮影と低ダイナミック撮影のそれぞれで、操作者がゲイン補正後の被写体画像を確認することができる。
【0089】
以上説明した処理により、補正の精度を維持しつつ第1または第2の実施形態より少ない時間でゲイン補正データを生成することができるため、キャリブレーションの手間を軽減することができる。
【0090】
図14(a)のフローチャートに従いステップS1107の画像処理を説明する。ステップS1401で画像処理部905は被写体透過後の線量情報(線量に比例した画素値)にS字カーブを掛けて、画像中の関心領域のコントラストを立てるように階調処理を行う。
【0091】
ステップS1402で画像処理部905は原画像から生成された多数の平滑化処理後の差分画像を加算し、これを原画像から減算する。減算後の画像でDR圧縮用の濃度変換処理を実施し、原画像に加算する。この処理により低濃度側、高濃度側でもコントラストを低下させずに、被写体画像のDレンジを圧縮することができる。
【0092】
ステップS1403で画像処理部905はノイズ低減処理を行う。
【0093】
図14(b)のフローチャートに従いステップS1403のノイズ低減処理の詳細を説明する。ノイズ低減処理には、図15に記載の式を用いる。ステップS1431で画像処理部905はDレンジ圧縮後の画像(処理前画像)を平滑化処理する。ステップS1432で画像処理部905は平滑化処理された画像を処理前画像から減算することで差分を取る。ステップS1433で画像処理部905は差分画像からノイズ成分を抽出する処理を行う。ステップ1434で画像処理部905は抽出されたノイズ成分について周波数毎に周波数依存の係数を乗算する。ステップS1435で画像処理部905は係数が乗算されたノイズ周波数画像同士を加算する。ステップ1436で画像処理部905はゲイン情報を取得する際の部分領域(ROI)情報を参照して、部分領域毎に異なる係数を乗算する。
【0094】
高線量でリニアリティが悪いROIでは、リニアリティが悪化している高線量側では、ゲイン補正後にノイズが他のROIより低くなる。低線量側では他のROIとノイズ量は変わらない。そこで、ノイズ画像を減算する際に、ROI別にノイズ画像に係数γを掛けてから減算する。この際リニアリティの悪いROIではγを小さくして、減算後にROI間で、同じ線量が入力された際のノイズが一定となるようにする。但し、リニアリティが悪いROIと他のROI間の、ノイズ低減処理前のノイズ量の関係には線量依存性があるため、γは線量レベルk(ROIごとに、前処理後の画素値から判断、例えば10段階)に応じて変化させる。
【0095】
このように、部分領域(ROI)毎に得られたゲイン補正情報に応じて前記検出器により得られる放射線画像にノイズ低減処理を施すことで、画像におけるノイズを良好に提言させることができる。特に、入出力特性を示すゲイン補正情報が精度良く算出されているため、この情報を用いてノイズの低減処理を精度良く行うことができる。
【0096】
[その他の実施形態]
上述の実施形態における情報処理装置の処理をハードウェアとプログラムコードにより実現することもできる。この場合の情報処理装置16のハードウェア構成を図16に示す。情報処理装置16は、少なくとも1つのCPU1601と、RAM1602と、ROM1603と、外部記憶装置1607と、記憶媒体ドライブ1608と、I/F(インターフェース)1609とを有しそれらはバス1610により相互に接続されている。また、情報処理装置16には表示部であるモニタ1606、操作部であるキーボード1604及びマウス1605が接続されている。ROMには上述の図2、6、8、11、12、14のフローチャートに示す処理を実行するためのコンピュータ読み取り可能なプログラムコードが格納されている。これをRAM1602に展開しCPU1601がプログラムコードに示す指示を実行することで、上述の実施形態の処理を実現することができる。
【0097】
この場合、当該プログラム自体及びプログラムを記憶した記録媒体は発明を構成する。なおここでいう記録媒体には、キャッシュメモリあるいは揮発メモリも含む一時的でないハードウェアメモリも含む。
【0098】
その他、図1又は図9に示す各ブロックで実行する処理を複数の回路ブロックに分けて実装しても良いし、複数のブロックを1つの回路として実装しても良い。また、情報処理装置の機能を複数の装置に分散させて実行することとしてもよい。更には、放射線撮影システムの機能を1つの装置により実現することとしてもよい。
【0099】
その他、上述の実施例では補正線量決定部107が線量値を決定し、自動的にキャリブレーション撮影を行うこととしていたが、これに限らず、不図示の表示制御部が表示部110に複数の線量値を表示させることとしてもよい。これにより、ユーザは表示部110に表示された線量値を確認し、手動で照射指示を行うことができる。
【0100】
上述の本発明の各実施形態の説明では、本発明に係る放射線撮影装置として、放射線の一種であるX線を用いて被写体のX線画像データの撮影を行うX線撮影装置を適用した場合について説明を行う。また、本発明においては、このX線撮影装置に限らず、例えば、他の放射線(例えば、α線、β線、γ線等)を用いて被写体の放射線画像の撮影を行う放射線撮影装置に適用することも可能である。
【0101】
更には、可視光や狭帯域光を受光し撮影する眼底カメラ等の撮影装置のキャリブレーション処理について本発明を適用することとしても良い。その場合、上述の説明の線量値は光量あるいは光強度に置き換えられる。
【0102】
上述した実施形態は一例であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0103】
10 放射線撮影システム
11 情報処理装置
12X 線検出器
13X 線発生部
103 線量制御部
105 撮影制御部
106 入出力特性取得部
107 補正線量決定部
108 補正情報取得部
109 画像補正部
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影に用いる検出器の補正情報を取得する情報処理装置、放射線撮影システム、Cアーム撮影装置、情報処理方法、入出力特性の取得方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野や非破壊検査などの放射線画像診断の領域において、固体撮像素子を二次元格子状に配置した検出器を用い、放射線情報を電荷に変換し放射線画像を得るデジタル撮影装置が用いられている。
【0003】
一般に検出器では固体撮像素子の画素間で、X線に対する電気信号の強度(感度)が異なる。固体撮像素子の画素間の感度ばらつきを補正することをゲイン補正と呼ぶ。ゲイン補正を実施するには、被写体を撮影する前に、被写体の無い状態で固体撮像素子にX線を照射して画像(補正用画像)を撮影し、線量に対する検出器の出力の特性を示す情報(ゲイン補正情報)を取得する必要がある。特に固体撮像素子の線量に対する出力が非線形となる出力値域がある場合、特許文献1のように線量の異なる複数枚の画像を撮影することで非線形な出力に対応したゲイン補正情報が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−125203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら補正用画像を得る際に照射する放射線の線量幅を均等にした場合、線量―出力値の特性において特に線形に近似できない出力値域では、入出力特性の情報の精度がよくないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明の実施形態に係る情報処理装置は、 検出器の入出力特性に応じて該検出器に照射する放射線の複数の線量値を決定する決定手段と、前記決定された複数の線量の放射線を順次照射して前記検出器から得られる複数の補正画像に基づき前記検出器のゲイン補正情報を取得する取得手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の補正画像を得るための複数の線量値を予め得ておいた検出器の入出力特性に応じて決定するため、適切なゲイン補正情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る放射線撮影システム10の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るキャリブレーションデータ生成処理の流れを示すフローチャートである。(a)は処理の概要を示すフローチャートである。(b)は線量を決定する処理の流れを示すフローチャートである。(c)は補正データの生成処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】(a)は画素値の平均値を計算するROIを示す図である。(b)はROI毎のX線検出部の入出力特性を示す図である。(c)は選択されたROIにおける線量と画素値及びその微分値の関係を示す図である。
【図4】(a)は第1の実施形態での補正用ゲイン画像データ取得時のX線照射量決定式を示す図である。(b)は係数Kと最大照射線量の関係を示す図である。
【図5】(a)は決定された線量により得られたデータを示すグラフである。(b)は所定の1画素の入出力特性の逆関数を示す図である。
【図6】撮影処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態に係る入出力特性を近似したグラフを示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る線量を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第3の実施形態に係る放射線撮影システム90の構成を示す図である。
【図10】放射線撮影システム90の一例であるCアーム撮影システムの構成を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る放射線撮影システム90の処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】第3の実施形態に係るゲイン補正情報を取得する処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】(a)は第3の実施形態での補正用ゲイン画像データ取得時のX線照射量決定式を示す図である。(b)は画素値と線量ステップとの関係を示す図である。
【図14】(a)は第3の実施形態に係る画像処理の流れを示すフローチャートである。(b)はノイズ低減処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】ノイズ低減処理の式を示す図である。
【図16】その他の実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
[第一の実施形態]
図1に基づいて第1の実施形態に係る放射線撮影システム10の構成を説明する。図1は特に医療用として利用される第1の実施形態に係る放射線撮影システム10の全体構成を示す図である。放射線撮影システム10は情報処理装置11と、X線検出器12と、X線発生部13と、表示部110と、操作部111とを有する。
【0011】
図1において、X線発生部13は被写体PにX線を照射する。X線検出器12は被写体Pを透過したX線を検出し、X線画像データを生成する。X線発生部13は、X線を発生するX線管101と、X線発生部において発生したX線のビーム広がり角を規定するコリメータと、不図示の線量計によって構成される。線量計は、被写体が無い状態での、X線検出器12に入射するX線量の計測ができるものとする。X線検出器12は、固体撮像素子が2次元に格子状に配置されたイメージセンサ102を有する。
【0012】
イメージセンサ102は固体撮像素子の基板を複数枚貼り合わせて構成されている。固体撮像素子の基板には光電変換素子を有する画素が二次元的に配置されている。この画素は略均一な線量―出力値の応答を示す入出力特性を示すが、それぞれ微妙に異なっている。つまり感度ムラを有する。画素毎の特性を補正するゲイン補正により、この感度ムラを補正することができる。画素の入出力特性は一般に線形性を示すが、高線量域では線型性が崩れ、線量に対する出力値の応答が低線量域よりも小さくなる。また、所定の閾値以上に高い線量の放射線が照射されると、画素は飽和し、それ以上線量を増加させても出力値は変化しなくなる。
【0013】
情報処理装置11の線量制御部103と撮影制御部105の制御により、X線検出器12および放射線発生部13が制御され放射線撮影が実行される。線量制御部103は、X線発生部13から照射されるX線の線量を制御する。撮影条件設定部104は、被写体に照射されるX線の線量、フレームレート、ビニング等の撮影条件を操作者の操作に応じて設定する。撮影制御部105は、補正線量決定部107、撮影条件設定部104からの信号を基にX線検出器12、線量制御部103を制御する。
【0014】
入出力特性取得部106は、ROI平均値取得部1061と多項式近似部1062を有する。ROI平均値取得部1061でX線検出器12から得られた画像データの所定の部分領域またはROI毎に代表画素値例えば平均値を算出する。多項式近似部1062では得られた代表画素値を多項式近似し入出力特性を得る。ここでいう入出力特性とは、X線検出器12に対してX線発生部13から照射された線量に対するX線検出器12の出力値の関係を示す情報である。出力値の例としてX線検出器12から得られる画像データの画素値を用いる。画像の画素値の値を示す入出力特性取得部106は、所定の部分領域の単位、例えば画素毎や画像の部分領域毎に入出力特性の情報を得ることができる。
【0015】
補正線量決定部107は、ROI選択部1071と微分算出部1072と係数決定部1073を有し、検出器の入出力特性に応じて、X線発生部13からX線検出器12に照射するX線の複数の線量値を決定する。ROI選択部1071では最も特性のよくない部分領域を選択する。微分算出部1072でこの選択された領域における入出力特性の微分値を算出する。係数決定部1073では線量間隔を決めるための係数を決定する。決定された線量により補正用X線画像データが得られる。
【0016】
補正情報取得部108は逆関数算出部1081を有し、決定された複数の線量の放射線を順次照射してX線検出器12から得られる複数の補正画像に基づきゲイン補正情報を取得する。逆関数算出部1081はX線検出器12で撮影された入射線量の異なる複数枚のX線画像データに基づき得られる入出力特性の逆関数を求め、補正情報取得部108はこの情報を用いてゲイン補正に用いるデータを生成する。画像補正部109は、補正情報取得部108で取得されたゲイン補正情報に基づいてX線検出器12により得られたX線画像を補正する。
【0017】
表示部110は情報処理装置11の不図示の表示制御部の制御に応じて画像補正部109でゲイン補正されたX線画像データを出力する。
【0018】
図2のフローチャートに従い、上述の放射線撮影システム10により実行されるゲイン補正情報を取得する処理を説明する。図2(a)のフローチャートはゲイン補正情報を取得する処理の概要を示している。
【0019】
ステップS21で補正線量決定部107は任意の方法で得られたX線検出器12の入出力特性に応じて補正用画像を撮影するためにX線検出器12に複数回照射する放射線のそれぞれの線量値を最適化し、決定する。ステップS22で補正情報取得部108は決定された複数の線量のX線を順次照射してX線検出器12から得られる複数の補正画像に基づきX線検出器12のゲイン補正情報を取得する。
【0020】
これら処理では例えば、最適なゲイン補正データを生成するために、補正用X線画像データを2回取得する。1回目は均等な線量間隔で照射し、これにより得られた入出力特性(第一の入出力特性)に応じた線量で2回目の照射を行い、精度が向上された入出力特性(第二の入出力特性)を得る。
【0021】
図2(b)のフローチャートは補正用画像を撮影するための線量を最適化するステップS21の処理の流れを示している。なお、被写体透過後にX線検出器12に入射する1フレームあたりの線量がXmax以下であることを想定している。またゲイン補正用X線画像データは10枚取得することを想定している。
【0022】
ステップS211では線量制御部103の制御に応じてX線発生部13はX線検出器12に向けてX線を照射し、撮影制御部105の制御に応じて駆動するX線検出器12は1回目の補正用X線画像データ10枚を取得する。線量制御部103及び撮影制御部105の制御によって、線量の照射及び検出器による電荷蓄積および読み出しの制御を同期させることで実行される。1回目の補正用X線画像データは、Xmin〜Xmaxまで等間隔で10枚取得する。ここでXminはX線検出器12の入出力特性曲線の線形領域内で、十分小さな値であればどのような値でもよい。
【0023】
ステップS212で情報処理装置11はX線検出器12で得られた10枚の画像データを取得する。取得した補正用X線画像データは、入出力特性取得部106、補正線量決定部107、補正情報取得部108に送信される。
【0024】
ステップS213で入出力特性取得部106のROI平均値取得部1061はROI(部分領域)毎に画素値の平均値を計算する。
【0025】
図3(a)、(b)を用いて、ステップS213の平均値計算処理について説明する。
【0026】
図3(a)に示すように、X線検出器12が400pixels×800pixelsの固体撮像素子8枚を貼り合わせて構成されていることを想定している。
【0027】
まず入出力特性取得部106は図3(a)に示すように100pixels×100pixelsの大きさの256個のROI(部分領域)を画像データ全体に取る。なおこのROIの大きさは一例であり、ROIの大きさはX線検出器12の入出力特性の最も悪い空間的局所領域を適切に抽出できるものであればいかなる大きさであってもよい。次いでROI平均値取得部1061はステップS211で取得した10枚の画像データ全てについてROIの画素値の平均値を計算する。計算結果のうち、図3(a)に示したB、Cの固体撮像素子それぞれの、a、b、cのROIの結果を図3(b)に示す。ここでは、固体撮像素子において周縁部に配置された画素の特性がばらつきやすいことを考慮して、隅の部分領域のみについて比較を行っている。図3(b)に示すように、固体撮像素子は、各素子とも素子内に入出力特性のばらつきがあり、この例ではaに示す位置で入出力特性が悪い。
【0028】
ステップS213では、固体撮像素子内で入出力特性の分布があることを仮定して、画素値を計算するROIを、固体撮像素子間を跨がないように設定している。このようにROI平均値取得部1061はX線検出器12が半導体基板上に実装された固体撮像素子を複数貼り合わせて構成された検出器である場合に、複数の固体撮像素子を含まないように設定された部分領域のそれぞれから出力値の代表値を取得している。この点でROI平均値取得部1061は代表値取得部として機能している。これにより、固体撮像素子間の特性の違いの影響を受けず、精度良くゲイン補正情報を得ることができる。特に、略同一の工程で製造された同形の固体撮像素子を貼り合わせてイメージセンサ102を構成している場合、各固体撮像素子における同一の位置では特性が略同一となるか、類似すると考えられる。そこで、各固体撮像素子について同様にROIを設定することで、線量の入出力特性情報の量を貼り合わせ数に応じた分だけ減らすことができる。これにより、キャリブレーション処理の効率化を図ることができる。
【0029】
図3(b)のグラフに示すように、固体撮像素子B、CのそれぞれについてROIa同士、b同士、c同士で特性が類似していることが分かる。
【0030】
なおステップS213で算出するのは平均値に限らず、部分領域内の画素値を代表する値であれば中央値等平均値以外の値であってもよい。
【0031】
ステップS214で多項式近似部1062は、ステップS213で求めた各ROIの入射線量と出力値を多項式近似する。ここで、多項式近似により3次関数に近似することとする。これにより入出力特性取得部106は、X線検出器12に対して複数段階に線量を変えて放射線を照射し得られた複数の補正用画像に基づいて、照射した線量に対する画素値の関係を示す入出力特性(第一の入出力特性)を部分領域毎に取得する。
【0032】
なおステップS214までの処理は工場出荷時や設置時に1度だけ実行しておけば良く、この場合には入出力特性取得部106はメモリに記憶された第一の入出力特性を取得する処理を実行すればよい。システム設置後、定期的に行われるキャリブレーション処理では、2回目以降の撮影のみを行う。
【0033】
ステップS215で補正線量決定部107のROI選択部1071は、ステップS214で多項式近似した後の各ROIのXmaxでの平均値を比較し、平均値が最小のROIを選択する。つまり、複数のROI(部分領域)のうち入力に対する出力値が最も小さい出力値域を有するROI(部分領域)を入出力特性の最も悪いROIと判定する。そのROIの入出力特性を基準にして2回目の補正用X線画像データ取得時の、X線検出器12への照射線量を決定する。このように判定しているのは、イメージセンサの画素では一般的に飽和に近づくにつれて線量に対する出力値の増分が小さくなるからである。この性質を利用し、出力値の増加率に応じて照射する線量幅を狭めることで入出力特性に適切に対応した補正画像を得る。
【0034】
ステップS216で微分算出部1072は選択されたROIの微分係数を算出する。これを図3(c)を用いて、説明する。図3(c)にはステップS214の入出力特性の多項式近似と、ステップS216の微分の結果を示されている。ここでROIは図3(a)のB_aである。また図3(c)では入出力特性を3次関数に近似している。
【0035】
ステップS217で係数決定部1073は得られた入出力特性(第一の入出力特性)の微分係数に基づいて2回目の補正用X線画像データを取得するためにX線検出器12に照射する放射線の複数の線量値を決定する。
【0036】
図4(a)、(b)を用いて、ステップS217の補正用X線画像データ取得時の入射線量決定処理について説明する。入射線量の決定式を図4(a)に示す。ここでXは入射線量、Yは固体撮像素子の出力値であり、YはステップS214で多項式近似した後の値である。またXnは2回目の補正用X画像データ取得時のn枚目の画像データ取得時の入射線量である。ここでX1はX線検出器12の入出力特性曲線の線形領域内で、十分小さな値であればどのような値でもよく、本実施例では1回目の補正用X線画像データ取得時同様Xminとしている。
【0037】
図4(a)の式を用いて、係数決定部1073は、複数のROI(部分領域)のうち入力に対する出力値が最も小さい出力値域を有する部分領域に基づいて前記複数の線量値間における値の差を決定する。図4(a)に示すように、補正用X線画像の入射線量は入出力特性の微分関数に比例したステップで段階的に増やす。Kはその比例係数であり、X10が被写体透過後の想定最大線量Xmaxとなるように、次の手順で決定する。まずX1をXminとし、Kを初期値0から段階的に十分小さな刻みで増加させ、各Kの値で図4(a)の式に従ってX10を求める。X10がXmaxを超えるまでKを増加させ、超えたときの値をKの値として決定する。図4(b)にKを段階的に増加させた場合の、X10の値を示す。図4(b)から、Kの値はK1と定まる。次いでX1=Xmin、K=K1としてX2〜X9を計算する。以上により、補正用X線画像の入射線量X1〜X10が定まる。このように線量決定部107は、第一の入出力特性に基づき線量に対する画素値の増分が小さいほど線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定する。
【0038】
以上の処理によりステップS21の線量の決定処理が終了する。
【0039】
図2(c)のフローチャートに従い、上述の処理で決定された線量情報を用いたゲイン補正データの生成処理について説明する。
【0040】
ステップS221で線量制御部103の制御に応じてX線発生部13はX線検出器12に向けてX線を照射するとともに、撮影制御部105の制御に応じて駆動するX線検出器12は1回目の補正用X線画像データ10枚を撮影する。ここではX線の線量はステップS21で決定された複数の線量X1〜X10が順次照射される。
【0041】
ステップS222で情報処理装置11は撮影された2回目の補正用画像データを取得する。取得された補正用画像は、入出力特性取得部106および画像補正部109に送信される。
【0042】
ステップS223で入出力特性取得部106は得られた2回目の補正用画像データの画素値を参照し、画素毎に入出力特性を得る。ROI平均値取得部1061は処理を行わず、多項式近似部1062は画素毎の入出力特性値を3次関数に近似する。
【0043】
図5(a)には、図3(a)のB_aのROI上の1画素の入出力特性を示す。ここで図3(c)と比較することにより、2回目に取得した補正用X線画像データは、1回目の場合と比較して高線量側で個数が多く、入出力特性の微分値が小さい線量域で多くの補正用X線画像データを取得できていることがわかる。
【0044】
ステップS224で補正情報取得部108は、第二の入出力特性の逆関数を得ることによりゲイン補正情報を取得する。
【0045】
図5(b)を用いて、ステップS224の入出力特性曲線の逆関数計算について説明する。図5(b)は図5(a)と同じ画素の、入出力特性曲線の逆関数の計算結果である。逆関数は補正情報取得部108において、X線検出器12の出力値と入射線量の関係を多項式近似して計算する。但し、出力値と入射線量を一意に対応させるため、近似曲線は出力値0で入射線量が0となるように切片を0としている。そして計算された多項式近似の各項の係数情報を画像補正部109に送信する。出力値と入射線量を3次関数に近似する場合の例では、X=aY^3+bY^2+cYとなり、a、b、cの情報が1画素のゲイン補正情報である。このように画素毎にa、b、cの情報を生成し、得られたデータをゲイン補正情報として不図示のメモリに格納すると共に、画像補正部109に送信する。
【0046】
以上によって、ステップS22のゲイン補正データの生成処理は終了する。
【0047】
図6のフローチャートに従い、被写体の撮影から画像表示までの処理を説明する。ステップS601では操作者が操作部111を操作し照射線量、X線発生部13の管電圧といった被写体撮影時の撮影条件を入力する。入力された撮影条件は、撮影条件設定部104で設定され、撮影制御部105に送信される。ステップS602では、ステップS601で設定された撮影条件を基に、撮影制御部105が線量制御部103に線量制御信号を送信し、線量制御部103がその信号を基にX線発生部13にX線照射信号を出力する。X線発生部13はその信号を受けて、被写体にX線を照射する。同時に撮影制御部105は、X線検出器12にX線画像データ取得信号を送信し、X線検出器12はその信号を基に被写体透過後のX線画像データを取得する。取得されたX線画像データは、画像補正部109に送信される。
【0048】
ステップS603で画像補正部109はゲイン補正情報に基づいて画像を補正する。
【0049】
図4(d)を用いて、ステップS603の画素値−線量変換方法について説明する。ステップS603では画像補正部109で、ステップS602で取得されたX線画像データを、X線検出器12に入射した線量のデータに変換する。画素値−線量の変換は、ステップS223で計算された各画素の出力値−入射線量変換係数を用いて多項式により変換される。前記3次関数の例では、画像補正部109に送信されたa、b、cを用い、前記X=aY^3+bY^2+cYの変換式によって変換される。図4(d)に示す1画素の出力がYaであった場合は、図4(d)に示すように線量情報Xaに変換される。
【0050】
ステップS604では画像補正部109で、ステップS603で線量情報に変換されたX線画像データに定数を掛けて、線量に比例した画素値に変換する。
【0051】
ステップS605では、ステップS604で変換されたX線画像データを表示部110に画像として出力する。
【0052】
ステップS506では、操作者が表示部110に表示された画像データを確認した後、画像撮影を継続するか否かの入力に応じて情報処理装置の撮影制御部105が撮影を継続させるかを判定する。継続か終了かの情報の入力は、操作者が操作部111に設置されている撮影継続、終了情報入力手段によって入力する。撮影継続が入力された場合、ステップS602〜S605が繰り返される。また撮影終了が入力された場合は、X線画像撮影が終了する。
【0053】
以上説明した処理により、補正用X線画像データ取得時のX線検出器12への入射線量を、X線検出器12の入出力特性の最も悪い領域の入出力特性で最適化されたものにすることができる。これによって、X線検出器12のゲイン補正を適切に実施することができ、ゲイン補正によって生じるアーチファクトを抑制することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
第1の実施形態ではX線検出器12の入出力特性を3次関数で近似したが、入出力特性のモデル化はこれに限らない。例えば、低線量域では線形近似できることを利用して、高線領域でのみ2次関数等の非線形関数に近似することができる。装置の構成については第1の実施形態と同様であるため説明は省略する。
【0055】
図7に基づき入出力特性の近似方法について説明する。図7は補正線量決定部107で決定された線量の画像から得られた1画素の入出力特性を示している。図7に示すように低線量域では線形関数で近似し、所定の閾値以上では非線形関数で近似し、飽和している出力値域では定数で近似している。非線形関数は2次関数としている。そこで、非線形に近似された領域では、線形に近似された領域に比べて線量間隔を小さくし、より多くの補正画像データを取得することとしている。これにより、非線形な出力値域での入出力特性を精度良く近似することができ、ゲイン補正の誤差を抑制することができる。
【0056】
図8のフローチャートに従い補正データの線量決定処理について説明する。なお、第一の実施形態のステップS211〜S216と同様の処理については説明を省略する。
【0057】
ステップS811ではステップS211と同様に、X線検出器12に対して複数段階に線量を変えて放射線を照射する。
【0058】
ステップS814では、この得られた複数の画像に基づいて、照射した線量に対する画像の画素値の関係を示す第一の入出力特性を取得する。ここで多項式近似部1062はステップS813で得られたROI毎の代表画素値に応じて線形領域と非線形領域に分けて近似する。近似は周知の関数フィッティングの技術を用いればよい。このように、ROI毎に近似処理を行うことで入出力特性取得部106は第一の入出力特性を取得する。
【0059】
ステップS815でROI選択部1071はROI毎の第一の入出力特性を参照して、非線形な領域が最も大きいROIを選択する。なお選択処理はこれに限らず、非線形領域における微分係数の平均値が最も小さいROIを選択することとしてもよい。
【0060】
ステップS816で補正線量決定部107は、非線形に近似される出力値域では線形に近似される出力値域に比べて照射する線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定する。これにより、非線形領域において多くの補正用画像データが得られることとなる。
【0061】
その後、第一の実施形態におけるステップS22の処理と同様に、X線発生部13は決定された複数の線量値でX線を照射し、X線検出器12は複数の画像を撮像する。入出力特性取得部106はこの画像に基づいて前記検出器の第二の入出力特性を取得する。
【0062】
このように、非線形領域に対応する線量の間隔を小さくすることで、ゲイン補正に用いる補正用画像を非線形領域で多くすることができるため、精度のよいゲイン補正を行うことができる。
【0063】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、CT撮影と通常のX線撮影の両方が可能な放射線撮影システムに本発明を適用した例である。また、第一の実施形態とは補正線量決定部107の機能が異なっている。
【0064】
即ち、第1の実施形態では、まずゲイン補正データ取得時のX線検出器12への入射線量を最適化し、次いで最適化された入射線量でX線画像データを取得し、ゲイン補正データを生成した。またCT(Computed Tomograhy)、一般透視撮影といった撮影方法によらず、常に入射線量の最適化を行ってからX線画像データを取得し、ゲイン補正データを生成した。これに対し、第3の実施形態では、1回の撮影で最適な入射線量でのゲイン補正用X線画像データを取得できる。線量制御部103及び撮影制御部105は、線量を順次上昇させながら補正画像の撮影を実行させる。補正線量決定部107は、既に得られた補正用画像から入出力特性を算出し、入出力特性に基づいて前記線量の上昇幅を決定する。
【0065】
これによりゲイン補正データ生成時間を短縮できる。さらに、第3の実施形態では、CTのような高いダイナミックレンジが必要な撮影と、一般透視撮影のような高いダイナミックレンジが必要とされない撮影でゲイン補正データ生成方法を切り替えることができる。これにより高いダイナミックレンジが必要とされない撮影でのゲイン補正データ生成時間を短縮できる。
【0066】
これらを実現するため、放射線撮影システム90は、情報処理装置91と、Cアーム撮影装置901とを有している。Cアーム撮影装置901はX線検出器92とX線発生部93と、X線検出器92およびX線発生部93を被検者Pに対して相対的に回転させる可動部902とを有している。可動部902は駆動制御部903により撮影処理と同期して制御される。
【0067】
また操作部111にユーザが撮影方法を選択するボタンが実装されており、かかるボタンの押下に応じて撮影条件設定部104には撮影方法を選択する。判定部904は撮影方法によって、X線検出器92の特性を非線形近似したゲイン補正情報と、X線検出器92の特性を線形近似したゲイン補正情報のいずれを取得するかを判定する。
【0068】
また補正線量決定部107には1回の補正用X線画像データ1セットの取得で、最適な線量での補正用X線画像データが得られる機能が実装されている。また補正情報取得部108には、高いダイナミックレンジが必要とされない場合でのゲイン補正データ生成手段が実装されている。また画像補正部109には高いダイナミックレンジが必要とされない場合でのゲイン補正手段が実装されている。
【0069】
画像処理部905は補正された画像に階調処理やノイズ低減処理を施し、診断に供するための画像を生成する。
【0070】
図10に従い上述の放射線撮影システムの1例であるモバイルCアーム撮影システムについて説明する。Cアーム撮影装置90は撮影を行うCアーム装置901と、表示部110を備えるモニタカート91を有する。Cアーム装置901及びモニタカート91は移動可能である。撮影台1002上の被検者Pの撮影に適した位置まで移動させた後利用される。モニタカート91の外部電源プラグ1001から供給された電力により起動する。可動部902が被検者Pに対して相対的に回転することでCT撮影が実行される。
【0071】
次に図11のフローチャートに従い、第3の実施形態の補正用X線画像取得から本撮影終了までのフローを説明する。ステップS1101では、操作者が操作部111に設置された撮影方法を選択するためのボタンを押下することに応じて、撮影条件設定部104が係る撮影条件の入力を受け取り、撮影方法を選択する。
【0072】
ステップS1102で判定部904はステップS1101で入力された撮影方法を基にゲイン補正方法が高ダイナミックレンジ用か、低ダイナミックレンジ用かを判定する。
【0073】
選択された撮影方法がCT撮影やDSA(デジタルサブトラクションアンギオグラフィ)等である場合には、高線量が必要となるため、第1及び第2の実施形態と同様に非線形な出力値域まで考慮したゲイン補正情報を取得する。また、一般撮影や透視撮影など、線量が比較的少なく済む場合には第1及び第2の実施形態とは異なり入出力特性が線形であるとしてゲイン補正情報を取得する。
【0074】
このように、決定された複数の線量の放射線を順次照射してX線検出器12の入出力特性を非線形近似するゲイン補正情報と、X線検出器12の入出力特性を線形近似するゲイン補正情報とのいずれを補正に用いるかを、撮影条件に応じて判定している。低線量である場合には入出力特性が非線形となる出力値が出力されることは少ないと考えられるため、非線形性を考慮せずに簡易にゲイン補正を行い、補正の精度を維持しつつ処理時間の短縮を図っている。
【0075】
例えばステップS1101でCTが選択された場合は、ステップS1103に進み、ステップS1101で一般撮影または透視撮影が選択された場合は、ステップS1105に進む。
【0076】
ステップS1103で入出力特性取得部106、補正線量決定部107および補正情報取得部は高ダイナミックレンジ用のゲイン補正データの生成を行う。本実施形態の処理では、一回の補正用X線画像データ撮影で、最適な線量での補正用X線画像データを取得しゲイン補正用データを生成する。この処理については図12(a)フローチャートに従い後述する。ここでn、Xn、Yn、Kの定義は第1の実施形態と同様である。
【0077】
ステップS1104で高ダイナミックレンジ用の本撮影を行う。この処理については第1の実施形態における図6のフローチャートに記載の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
ステップS1105では入出力特性取得部106、補正線量決定部107および補正情報取得部は低ダイナミックレンジ用のゲイン補正データの生成を行う。この処理については図12(a)フローチャートに従い後述する。
【0079】
ステップS1106で低ダイナミックレンジ用の本撮影を行う。この処理については第1の実施形態における図6のフローチャートに記載の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
ステップS1107で画像処理部905はゲイン補正がされた放射線画像にノイズ低減処理等の画像処理を施す。この処理については図14のフローチャートに従い後述する。
【0081】
図12(a)のフローチャートに従い、高ダイナミックレンジ用のゲイン補正データを取得する処理を説明する。まずステップS1201とステップS1202で、線量制御部103及び撮影制御部105はCアーム装置901を制御し既定の線量で補正用X線画像データを2枚撮影する制御を行う。ここで2枚の補正用X線画像データの入射線量は、X線検出器12の入出力特性曲線で線形性のある線量域で、十分線量が低く、互いに異なる線量であればいかなる線量でもよい。次いでステップS1203で撮影制御部105は不図示のメモリに記憶された補正用X線画像撮影枚数nに初期値3を代入する。
【0082】
ステップS1204で入出力特性取得部106のROI平均値取得部1061は直前に撮影された2枚の補正用X線画像データの平均値を計算する。平均値を計算するROIは、X線検出器12の画素のうち、入出力特性の最も悪い100pixels×100pixelsのROIである。ここで入出力特性の最も悪いROIは、固体撮像素子の特性などから既知であることとする。ROI選択部1071は不図示のメモリに記憶されたROIの情報を読み出しROIを選択する。
【0083】
ステップS1205で補正線量決定部107は図13(a)に示す式で次の補正用X画像データ取得時の入射線量を決定する。図13(a)では、次フレームの補正用X画像データ取得時の入射線量Xn+1を、前フレームの補正用X線画像データ取得時の入射線量Xnに、入出力特性の微分値(Yn−Yn−1)/(Xn−Xn−1)に比例した値を足すことにより決定する。これにより第3の実施形態では、次フレームの補正用X線画像データの入射線量を、前フレームと前々フレームの入出力特性のみから決定できる。よって、第1の実施形態のように、補正用X線画像データ取得を2回行う必要がなく、1回で最適な線量での補正用X線画像データの取得を行うことができる。図13(b)に各フレームでの補正用X線画像データの入射線量Xnと、線量ステップK(Yn−Yn−1)/(Xn−Xn−1)を示す。
【0084】
ステップS1206では補正情報取得部108はステップS1205で決定した補正用X線画像データの入射線量に基づいて、補正用X線画像データを取得する。次いでステップS1207で補正線量決定部107は、ステップS1206で決定した補正用X線画像データの入射線量が、既定の補正用X線画像データ撮影時の最大線量を超えているかを判定する。入射線量が既定値に達していない場合はステップS1208に進んで画像撮影枚数nを更新し、ステップS1204からステップS1207までを繰り返す。既定値に達している場合は補正用X線画像データの取得を終了し、ステップS1209に進む。
【0085】
ステップS1210で逆関数算出部1081は入出力特性曲線の逆関数を計算する。その方法はステップS224と同様である。以上によって、高ダイナミックレンジ用のゲイン補正データを生成できる。
【0086】
以上の通りX線を照射しながら次に照射するX線の線量値を決定する処理を行うことにより、第1または第2の実施形態に比べてX線の照射回数を減らし、X線照射に伴う時間を低減することができる。
【0087】
次に図12(b)のフローチャートに従い、低ダイナミックレンジ用のゲイン補正データ生成方法について説明する。まずステップS1211で線量制御部103及び撮影制御部105はCアーム装置901を制御し既定の線量で補正用X線画像データが1フレーム取得される。入射線量は、X線検出器12の入出力特性曲線で線形領域内の線量であることとする。次いでステップS1212で入出力特性取得部106は、ステップS1211で撮影された補正用X線画像データと、その時計測されたX線検出器12への入射線量から、ゲイン補正データを生成する。ステップS1212で補正情報取得部108はX線検出器12の各画素について、出力値Yと入射線量Xの関係から、入出力特性を一次関数Y=dXとし、e=1/d=X/Yを計算する。この出力値―入射線量変換係数eを画像補正部109に送信する。以上によって、低ダイナミックレンジ用のゲイン補正データを生成できる。
【0088】
次にステップS1104とステップS1106の処理では、図6に示したフローと同様であるが、ステップS1106ではステップS603の線量―画素値変換式が、第一の実施形態とは異なりX=eYとなる。以上により、高ダイナミックレンジ撮影と低ダイナミック撮影のそれぞれで、操作者がゲイン補正後の被写体画像を確認することができる。
【0089】
以上説明した処理により、補正の精度を維持しつつ第1または第2の実施形態より少ない時間でゲイン補正データを生成することができるため、キャリブレーションの手間を軽減することができる。
【0090】
図14(a)のフローチャートに従いステップS1107の画像処理を説明する。ステップS1401で画像処理部905は被写体透過後の線量情報(線量に比例した画素値)にS字カーブを掛けて、画像中の関心領域のコントラストを立てるように階調処理を行う。
【0091】
ステップS1402で画像処理部905は原画像から生成された多数の平滑化処理後の差分画像を加算し、これを原画像から減算する。減算後の画像でDR圧縮用の濃度変換処理を実施し、原画像に加算する。この処理により低濃度側、高濃度側でもコントラストを低下させずに、被写体画像のDレンジを圧縮することができる。
【0092】
ステップS1403で画像処理部905はノイズ低減処理を行う。
【0093】
図14(b)のフローチャートに従いステップS1403のノイズ低減処理の詳細を説明する。ノイズ低減処理には、図15に記載の式を用いる。ステップS1431で画像処理部905はDレンジ圧縮後の画像(処理前画像)を平滑化処理する。ステップS1432で画像処理部905は平滑化処理された画像を処理前画像から減算することで差分を取る。ステップS1433で画像処理部905は差分画像からノイズ成分を抽出する処理を行う。ステップ1434で画像処理部905は抽出されたノイズ成分について周波数毎に周波数依存の係数を乗算する。ステップS1435で画像処理部905は係数が乗算されたノイズ周波数画像同士を加算する。ステップ1436で画像処理部905はゲイン情報を取得する際の部分領域(ROI)情報を参照して、部分領域毎に異なる係数を乗算する。
【0094】
高線量でリニアリティが悪いROIでは、リニアリティが悪化している高線量側では、ゲイン補正後にノイズが他のROIより低くなる。低線量側では他のROIとノイズ量は変わらない。そこで、ノイズ画像を減算する際に、ROI別にノイズ画像に係数γを掛けてから減算する。この際リニアリティの悪いROIではγを小さくして、減算後にROI間で、同じ線量が入力された際のノイズが一定となるようにする。但し、リニアリティが悪いROIと他のROI間の、ノイズ低減処理前のノイズ量の関係には線量依存性があるため、γは線量レベルk(ROIごとに、前処理後の画素値から判断、例えば10段階)に応じて変化させる。
【0095】
このように、部分領域(ROI)毎に得られたゲイン補正情報に応じて前記検出器により得られる放射線画像にノイズ低減処理を施すことで、画像におけるノイズを良好に提言させることができる。特に、入出力特性を示すゲイン補正情報が精度良く算出されているため、この情報を用いてノイズの低減処理を精度良く行うことができる。
【0096】
[その他の実施形態]
上述の実施形態における情報処理装置の処理をハードウェアとプログラムコードにより実現することもできる。この場合の情報処理装置16のハードウェア構成を図16に示す。情報処理装置16は、少なくとも1つのCPU1601と、RAM1602と、ROM1603と、外部記憶装置1607と、記憶媒体ドライブ1608と、I/F(インターフェース)1609とを有しそれらはバス1610により相互に接続されている。また、情報処理装置16には表示部であるモニタ1606、操作部であるキーボード1604及びマウス1605が接続されている。ROMには上述の図2、6、8、11、12、14のフローチャートに示す処理を実行するためのコンピュータ読み取り可能なプログラムコードが格納されている。これをRAM1602に展開しCPU1601がプログラムコードに示す指示を実行することで、上述の実施形態の処理を実現することができる。
【0097】
この場合、当該プログラム自体及びプログラムを記憶した記録媒体は発明を構成する。なおここでいう記録媒体には、キャッシュメモリあるいは揮発メモリも含む一時的でないハードウェアメモリも含む。
【0098】
その他、図1又は図9に示す各ブロックで実行する処理を複数の回路ブロックに分けて実装しても良いし、複数のブロックを1つの回路として実装しても良い。また、情報処理装置の機能を複数の装置に分散させて実行することとしてもよい。更には、放射線撮影システムの機能を1つの装置により実現することとしてもよい。
【0099】
その他、上述の実施例では補正線量決定部107が線量値を決定し、自動的にキャリブレーション撮影を行うこととしていたが、これに限らず、不図示の表示制御部が表示部110に複数の線量値を表示させることとしてもよい。これにより、ユーザは表示部110に表示された線量値を確認し、手動で照射指示を行うことができる。
【0100】
上述の本発明の各実施形態の説明では、本発明に係る放射線撮影装置として、放射線の一種であるX線を用いて被写体のX線画像データの撮影を行うX線撮影装置を適用した場合について説明を行う。また、本発明においては、このX線撮影装置に限らず、例えば、他の放射線(例えば、α線、β線、γ線等)を用いて被写体の放射線画像の撮影を行う放射線撮影装置に適用することも可能である。
【0101】
更には、可視光や狭帯域光を受光し撮影する眼底カメラ等の撮影装置のキャリブレーション処理について本発明を適用することとしても良い。その場合、上述の説明の線量値は光量あるいは光強度に置き換えられる。
【0102】
上述した実施形態は一例であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0103】
10 放射線撮影システム
11 情報処理装置
12X 線検出器
13X 線発生部
103 線量制御部
105 撮影制御部
106 入出力特性取得部
107 補正線量決定部
108 補正情報取得部
109 画像補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器の入出力特性に応じて該検出器に照射する放射線の複数の線量値を決定する決定手段と、
前記決定された複数の線量の放射線を順次照射して前記検出器から得られる複数の補正画像に基づき前記検出器のゲイン補正情報を取得する取得手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記入出力特性に基づき前記線量に対する画素値の増分が小さいほど線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記入出力特性が非線形に近似される線量域で、前記入出力特性が線形に近似される領域よりも線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記検出器の特性を非線形近似した前記ゲイン補正情報と、前記検出器の特性を線形近似したゲイン補正情報のいずれかを撮影条件に応じて取得する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記決定された複数の線量の放射線を順次照射して得られる前記複数の補正画像に基づき前記検出器の入出力特性を非線形近似するゲイン補正情報と、所定の線量の放射線を照射して得られる補正画像に基づいて検出器の入出力特性を線形近似するゲイン補正情報とのいずれを補正に用いるかを、前記撮影条件に応じて判定する判定手段と、
を更に有することを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記取得手段は、前記検出器に対して複数段階に線量を変えて放射線を照射し得られた複数の画像に基づいて、照射した線量に対する前記画像の画素値の関係を示す前記検出器の第一の入出力特性を取得し、
前記決定手段は、該第一の入出力特性に基づいて該検出器に照射する放射線の複数の線量値を決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記取得手段は、前記画像について複数の部分領域毎に前記検出器の第一の入出力特性を取得し、
前記決定手段は、前記複数の部分領域のうち入力に対する出力値が最も小さい出力値域を有する部分領域または非線形な出力値域が最も大きい部分領域の特性に基づいて前記複数の線量値間における値の差を決定し、
前記取得手段はさらに、前記決定された複数の線量の放射線により得られる複数の画像に基づく第二の入出力特性の情報から前記ゲイン補正情報を取得する
ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記検出器が半導体基板上に実装された撮像素子を複数貼り合わせて構成された検出器である場合に、複数の撮像素子を含まないように設定された部分領域のそれぞれから出力値の代表値を取得する代表値取得手段を更に有する
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記部分領域毎に得られた前記ゲイン補正情報に応じて前記検出器により得られる放射線画像にノイズ低減処理を施す画像処理手段を更に有する
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記ゲイン補正情報に基づいて前記検出器により得られた放射線画像を補正する補正手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記検出器と、
放射線発生手段と、
前記検出器および前記放射線発生手段を制御し放射線撮影を実行する制御手段と、
を有することを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項12】
前記制御手段は、線量を順次上昇させながら補正画像の撮影を実行させ、
前記決定手段は、既に得られた前記補正画像から入出力特性を算出し、前記入出力特性に基づいて前記線量の上昇幅を決定する
ことを特徴とする請求項11に記載の放射線撮影システム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記検出器と、
放射線発生手段と、
前記検出器および前記放射線発生手段を制御し放射線撮影を実行する制御手段と、
前記放射線撮影により得られた画像を表示する表示手段と、
を有することを特徴とするモバイルCアーム撮影装置。
【請求項14】
検出器の入出力特性に応じて該検出器に照射する放射線の複数の線量値を決定するステップと、
前記決定された複数の線量の放射線を順次照射して前記検出器から得られる複数の補正画像に基づき前記検出器のゲイン補正情報を取得するステップと、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項15】
検出器に対して複数段階に線量を変えて放射線を照射し得られた複数の画像に基づいて、照射した線量に対する前記画像の画素値の関係を示す前記検出器の第一の入出力特性を取得するステップと、
前記第一の入出力特性に基づき前記線量に対する画素値の増分が小さいほど線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定するステップと、
前記決定された複数の線量値が照射された前記検出器から複数の画像を得るステップと、
前記複数の画像に基づいて、前記検出器の第二の入出力特性を取得するステップと、
を有することを特徴とする入出力特性の取得方法。
【請求項16】
検出器に対して複数段階に線量を変えて放射線を照射し得られた複数の画像に基づいて、照射した線量に対する前記画像の画素値の関係を示す前記検出器の第一の入出力特性を取得するステップと、
前記第一の入出力特性が非線形に近似される線量域で、前記第一の入出力特性が線形に近似される領域よりも線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定するステップと、
前記決定された複数の線量値が照射された前記検出器から複数の画像を得るステップと、
前記複数の画像に基づいて、前記検出器の第二の入出力特性を取得するステップと、
を有することを特徴とする入出力特性の取得方法。
【請求項17】
検出器の入出力特性に応じて該検出器に照射する放射線の複数の線量値を決定する処理と、
前記決定された複数の線量の放射線を順次照射して前記検出器から得られる複数の補正画像に基づき前記検出器のゲイン補正情報を取得する処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
検出器の入出力特性に応じて該検出器に照射する放射線の複数の線量値を決定する決定手段と、
前記決定された複数の線量の放射線を順次照射して前記検出器から得られる複数の補正画像に基づき前記検出器のゲイン補正情報を取得する取得手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記入出力特性に基づき前記線量に対する画素値の増分が小さいほど線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記入出力特性が非線形に近似される線量域で、前記入出力特性が線形に近似される領域よりも線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記検出器の特性を非線形近似した前記ゲイン補正情報と、前記検出器の特性を線形近似したゲイン補正情報のいずれかを撮影条件に応じて取得する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記決定された複数の線量の放射線を順次照射して得られる前記複数の補正画像に基づき前記検出器の入出力特性を非線形近似するゲイン補正情報と、所定の線量の放射線を照射して得られる補正画像に基づいて検出器の入出力特性を線形近似するゲイン補正情報とのいずれを補正に用いるかを、前記撮影条件に応じて判定する判定手段と、
を更に有することを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記取得手段は、前記検出器に対して複数段階に線量を変えて放射線を照射し得られた複数の画像に基づいて、照射した線量に対する前記画像の画素値の関係を示す前記検出器の第一の入出力特性を取得し、
前記決定手段は、該第一の入出力特性に基づいて該検出器に照射する放射線の複数の線量値を決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記取得手段は、前記画像について複数の部分領域毎に前記検出器の第一の入出力特性を取得し、
前記決定手段は、前記複数の部分領域のうち入力に対する出力値が最も小さい出力値域を有する部分領域または非線形な出力値域が最も大きい部分領域の特性に基づいて前記複数の線量値間における値の差を決定し、
前記取得手段はさらに、前記決定された複数の線量の放射線により得られる複数の画像に基づく第二の入出力特性の情報から前記ゲイン補正情報を取得する
ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記検出器が半導体基板上に実装された撮像素子を複数貼り合わせて構成された検出器である場合に、複数の撮像素子を含まないように設定された部分領域のそれぞれから出力値の代表値を取得する代表値取得手段を更に有する
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記部分領域毎に得られた前記ゲイン補正情報に応じて前記検出器により得られる放射線画像にノイズ低減処理を施す画像処理手段を更に有する
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記ゲイン補正情報に基づいて前記検出器により得られた放射線画像を補正する補正手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記検出器と、
放射線発生手段と、
前記検出器および前記放射線発生手段を制御し放射線撮影を実行する制御手段と、
を有することを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項12】
前記制御手段は、線量を順次上昇させながら補正画像の撮影を実行させ、
前記決定手段は、既に得られた前記補正画像から入出力特性を算出し、前記入出力特性に基づいて前記線量の上昇幅を決定する
ことを特徴とする請求項11に記載の放射線撮影システム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記検出器と、
放射線発生手段と、
前記検出器および前記放射線発生手段を制御し放射線撮影を実行する制御手段と、
前記放射線撮影により得られた画像を表示する表示手段と、
を有することを特徴とするモバイルCアーム撮影装置。
【請求項14】
検出器の入出力特性に応じて該検出器に照射する放射線の複数の線量値を決定するステップと、
前記決定された複数の線量の放射線を順次照射して前記検出器から得られる複数の補正画像に基づき前記検出器のゲイン補正情報を取得するステップと、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項15】
検出器に対して複数段階に線量を変えて放射線を照射し得られた複数の画像に基づいて、照射した線量に対する前記画像の画素値の関係を示す前記検出器の第一の入出力特性を取得するステップと、
前記第一の入出力特性に基づき前記線量に対する画素値の増分が小さいほど線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定するステップと、
前記決定された複数の線量値が照射された前記検出器から複数の画像を得るステップと、
前記複数の画像に基づいて、前記検出器の第二の入出力特性を取得するステップと、
を有することを特徴とする入出力特性の取得方法。
【請求項16】
検出器に対して複数段階に線量を変えて放射線を照射し得られた複数の画像に基づいて、照射した線量に対する前記画像の画素値の関係を示す前記検出器の第一の入出力特性を取得するステップと、
前記第一の入出力特性が非線形に近似される線量域で、前記第一の入出力特性が線形に近似される領域よりも線量の間隔が小さくなるように複数の線量値を決定するステップと、
前記決定された複数の線量値が照射された前記検出器から複数の画像を得るステップと、
前記複数の画像に基づいて、前記検出器の第二の入出力特性を取得するステップと、
を有することを特徴とする入出力特性の取得方法。
【請求項17】
検出器の入出力特性に応じて該検出器に照射する放射線の複数の線量値を決定する処理と、
前記決定された複数の線量の放射線を順次照射して前記検出器から得られる複数の補正画像に基づき前記検出器のゲイン補正情報を取得する処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−24784(P2013−24784A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161430(P2011−161430)
【出願日】平成23年7月23日(2011.7.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月23日(2011.7.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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