説明

情報端末及び基地局

【課題】聴覚障害者と聴覚健常者との間でリアルタイムの会話を実現する。
【解決手段】音声を認識する音声認識部22と、音声信号と手話画像との対応表を参照して、認識した音声を手話画像に変換する手話画像変換部23と、変換した手話画像を表示する画像表示部24と、画像を撮影する画像撮影部25と、撮影した画像から手話情報を認識する手話認識部26と、手話情報と音声信号との対応表を参照して、認識した手話情報を音声に変換する手話音声変換部27と、変換した音声を通信可能に出力する通信制御部21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体通信端末等の情報端末および基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
聴覚障害者の場合には通常の会話を行うことが困難であるため、聴覚が不要な手話を用いて会話を行う場合が多い。しかし、手話をマスターしている聴覚障害者は多いが、聴覚健常者の中で手話をマスターしている人は少ないため、手話をマスターした特別な聴覚健常者でない限り、聴覚障害者との間で手話を用いて会話するのは困難である。そこで、例えば特許文献1に開示された技術では、テレビカメラなどを用いて手話の手の動きを検出し、手話の内容を認識し、手話の内容を文字としてコンピュータの画面に表示することを提案している。
【特許文献1】特許第3289304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、例えば携帯電話のような通信手段を利用して聴覚障害者が会話を行おうとする場合には、望ましい通信手段が存在しないのが実情である。例えば、テレビ電話の通信が可能な携帯電話などの端末同士の間で通信する場合には、手話の画像を転送することができるが、この場合にも聴覚障害者の通信相手となる聴覚健常者が手話をマスターしていない限り会話はできない。また、特許文献1の技術を利用すれば手話を文字情報として表示できるが、一方向の情報伝達だけしかできないので、聴覚健常者から聴覚障害者側に適当な情報を伝えることができない。例えば、聴覚健常者から聴覚障害者側に文字として情報を伝えることができる場合であっても、一方の通信は手話でもう一方の通信は筆談のような形式になるため不自然であり、自然に近い会話は不可能である。
【0004】
本発明の目的は、聴覚障害者と聴覚健常者との間でリアルタイムの会話を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の情報端末は、音声を認識する手段と、音声信号と手話画像との対応表を参照して、認識した音声を手話画像に変換する手段と、変換した手話画像を表示する手段とを備える。また、画像を撮影する手段と、撮影した画像から手話情報を認識する手段と、手話情報と音声信号との対応表を参照して、認識した手話情報を音声に変換する手段と、変換した音声を出力する手段とを備える。この構成によれば、音声信号と手話画像との対応表を参照して、音声と手話画像との変換が可能になるため、聴覚障害者と聴覚健常者との間でリアルタイムの会話を実現することができる。
【0006】
本発明の基地局は、通信端末を移動体通信網にアクセスさせるための基地局であって、通信端末から送信される音声を認識する手段と、音声信号と手話画像との対応表を参照して、認識した音声を手話画像に変換する手段と、変換した手話画像を通信可能に出力する手段と、通信端末から送信される画像から手話画像を認識する手段と、手話情報と音声信号との対応表を参照して、認識した手話情報を音声に変換する手段と、変換した音声を通信可能に出力する手段とを備える。この構成によれば、基地局が音声と手話画像との変換機能を備えるため、通信端末を用いて聴覚障害者と聴覚健常者との間でリアルタイムの会話を実現することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、音声と手話画像との変換が可能になるため、聴覚障害者と聴覚健常者との間でリアルタイムの会話を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の情報端末が使用されるシステムの構成を示すブロック図であり、図2に示すような通信システムを用いて聴覚健常者40と聴覚障害者50との間で通信を行う場合を想定している。すなわち、聴覚健常者40は携帯通信端末10を使用し、聴覚障害者50は携帯通信端末20を使用し、移動体通信網30を経由して携帯通信端末10と携帯通信端末20との間で通信を行う。図2に示す例では、携帯通信端末10はその近くに存在する無線基地局31との間に無線回線を形成し、携帯通信端末20はその近くに存在する無線基地局32との間に無線回線を形成する。無線基地局31及び無線基地局32は所定の通信網33を介して互いに接続されている。また、この例では聴覚障害者50は手話を用いて会話することを想定しており、一方、聴覚健常者40としては手話をマスターしていない普通の人を想定している。
【0009】
図1に示すように、聴覚健常者40が用いる携帯通信端末10としては一般的な携帯電話と同様に、音声入力部11,音声出力部12,画像表示部13及び通信制御部14を備えている。なお、図1においては携帯通信端末10,20の構成として最小限の主要な要素だけを示してあるが、実際には一般的な携帯電話と同様に図示しない様々な構成要素が搭載される。
【0010】
音声入力部11としてはマイクなどが用いられる。音声入力部11は聴覚健常者40の話す音声を検出して音声の電気信号として出力する。音声入力部11が出力する音声の電気信号は通信制御部14を介して送信され、移動体通信網30を経由して携帯通信端末20に送られる。携帯通信端末20から送信される音声の電気信号は、移動体通信網30を経由して携帯通信端末10の通信制御部14で受信され、音声出力部12から音声として出力される。音声出力部12としてはスピーカなどが用いられる。また、端末同士の間で画像や文字情報を伝送することもできる。携帯通信端末10は受信した画像や文字情報を画像表示部13に表示する。画像表示部13としては画像や文字の表示が可能な液晶表示器などが用いられる。従って、一般的な構成の携帯電話を携帯通信端末10として使用することも可能である。
【0011】
一方、聴覚障害者50が使用する携帯通信端末20には、通信制御部21,音声認識部22,手話画像変換部23,画像表示部24,画像撮影部25,手話認識部26,手話音声変換部27及び手話通信用辞書28が備わっている。聴覚健常者40の使用する携帯通信端末10から送信される音声の信号は、移動体通信網30を経由して通信制御部21で受信され、音声認識部22に入力される。音声認識部22は、公知の音声認識技術を採用しており、入力された音声の内容を認識し、認識結果を文字列情報として出力する。なお、音声認識の際には手話通信用辞書28に保持されている認識用の辞書を参照する。音声認識部22が出力する認識結果は手話画像変換部23に入力される。
【0012】
手話画像変換部23は、受信した音声を表す文字列情報に対応する手話画像を生成する。すなわち、人間が言葉を手話で表現する場合とよく似た像を表す画像の情報を生成する。具体的には、人間の体や顔の像を背景として両腕,両手及び全ての指に相当する像あるいは図形を重ねると共に、各部の位置関係,向き,曲がり具合などが標準的な手話の表現に近づくような動画を順次に生成し、入力された音声に従って画像の内容を変更する。手話画像変換部23が手話画像を生成する際には、予め定められた規則などの辞書情報を手話通信用辞書28から取得して、音声認識部22から入力された文字列情報の内容と照合しながら順次に画像に変換する。
【0013】
画像表示部24は、手話画像変換部23が生成した画像の情報を動画として画面上に表示する。この動画の内容は、携帯通信端末10から送信された聴覚健常者40の話す音声に相当するので、携帯通信端末20を使用する聴覚障害者50は、画像表示部24の画面を参照することにより、聴覚健常者40の話す言葉を手話として画像から認識することができる。
画像撮影部25は、携帯通信端末20に内蔵されたテレビカメラであり、通話をする際には連続的に撮影を行う。手話通信を行う場合には、画像撮影部25の撮影方向を使用者である聴覚障害者50自身に向けて、聴覚障害者50の両腕,両手,全ての指を含む上半身のほぼ全域が写るように視野を調節しておく。
【0014】
手話認識部26は、画像撮影部25から連続的に出力される画像、すなわち手話を撮影した動画の情報を順次に画像処理することにより、手話で表現された言葉の内容を認識する。手話認識部26が手話を認識する際には、手話通信用辞書28に保持されている辞書情報を参照して処理を行う。なお、手話認識部26における処理に関しては、例えば引用文献1に開示されている技術を採用すればよい。手話認識部26の認識結果である手話の内容は、その言葉を表す文字列情報として手話音声変換部27に入力される。手話音声変換部27は、公知の音声合成技術を用いて、入力された文字列情報に対応する音声信号を生成する。手話音声変換部27が生成した音声信号は、通信制御部21を介して送信され、移動体通信網30を経由して携帯通信端末10に届く。
【0015】
従って、携帯通信端末20の利用者である聴覚障害者50が画像撮影部25に向かって手話で言葉を表現すると、その手話の内容に相当する音声が自動的に生成され、音声信号として携帯通信端末10に送信される。つまり、携帯通信端末10の使用者である聴覚健常者40は、聴覚障害者50の表現した手話の内容を直接音声として音声出力部12から聞くことができるので、聴覚健常者40同士が会話する場合と同様に聴覚障害者50との間で会話することができる。
【0016】
図1に示す装置を用いる場合には、聴覚障害者50は送信及び受信の双方向の通信について手話で通信相手と会話することができる。しかし、送信及び受信の何れか一方の通信だけを手話で実現しても十分な効果が期待できる。例えば、携帯通信端末20から画像撮影部25,手話認識部26及び手話音声変換部27の機能を省略した場合であっても、聴覚障害者50は通信相手の聴覚健常者40が話す言葉の内容を手話画像から認識できるので、それに応答し会話に参加することができる。この場合の聴覚障害者50からの応答については、例えば電子メールなどを利用して文字情報として送信することが考えられる。また、逆に手話画像を音声に変換して送信する機能だけを残して、携帯通信端末20から音声認識部22,手話画像変換部23及び画像表示部24の機能を省略した場合には、聴覚障害者50が表現した手話の内容が音声に変換されて送信されるので、聴覚健常者40は聴覚障害者50の送信した手話の内容を理解することができる。この場合には、携帯通信端末10から携帯通信端末20に向けて文字情報を電子メールなどの機能を用いて送信することにより、聴覚障害者50は聴覚健常者40からの送信内容を理解することができるので、双方向の通信が実現する。
【0017】
(第2の実施の形態)
図3は本発明の基地局が使用されるシステムの構成を示すブロック図である。図3において第1の実施の形態と対応する要素には同一の符号を付けて示してある。変更された部分について以下に説明する。この形態では、音声から手話画像を生成する機能と、手話画像から音声を生成する機能とを携帯通信端末20Bの通信を中継する無線基地局60に設けてある。従って、それらの機能を携帯通信端末20Bに設ける必要はなく、携帯通信端末20Bには通信制御部21,画像表示部24及び画像撮影部25のみが設けてある。
【0018】
無線基地局60に設けられた音声認識部22,手話画像変換部23,手話認識部26,手話音声変換部27及び手話通信用辞書28については、それぞれ第1の実施の形態の場合と同様の機能を果たす。通信制御部61は無線基地局60と通信網33との間の通信を制御し、通信制御部62は無線基地局60と携帯通信端末20Bとの間の通信を制御する。従って、無線基地局60は携帯通信端末10から送信された音声の信号を音声認識部22及び手話画像変換部23で手話画像に変換し、画像情報として携帯通信端末20Bに送信する。そのため、聴覚障害者50が使用する携帯通信端末20Bの画像表示部24には聴覚健常者40からの音声に相当する手話画像が表示される。
【0019】
また、携帯通信端末20Bは画像撮影部25で聴覚障害者50自身を撮影して得られた手話画像を画像情報として無線基地局60に送信するので、無線基地局60は携帯通信端末20Bから送信された手話画像を手話認識部26及び手話音声変換部27で音声に変換し、音声信号として携帯通信端末10に送信するので、聴覚健常者40は聴覚障害者50の表現した手話の内容を音声として音声出力部12から聞くことができる。
【0020】
この形態では、画像処理や音声認識のように負荷の大きい処理を無線基地局60上に配置してあるため、携帯通信端末20Bの構成を単純化することができ、携帯通信端末20Bの小型化や電力消費の抑制が可能になる。また、従来より存在する携帯電話のような端末の構成や動作をほとんど変更することなく携帯通信端末20Bとして利用することも可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の情報端末及び基地局は、音声と手話画像との変換が可能になるため、聴覚障害者と聴覚健常者との間でリアルタイムの会話を実現することができるという効果を有し、移動体通信端末等の情報端末および基地局等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態の構成を示すブロック図
【図2】通信システムの構成例を示すブロック図
【図3】第2の実施の形態の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0023】
10,20 携帯通信端末
11 音声入力部
12 音声出力部
13 画像表示部
14,21 通信制御部
22 音声認識部
23 手話画像変換部
24 画像表示部
25 画像撮影部
26 手話認識部
27 手話音声変換部
28 手話通信用辞書
30 移動体通信網
31,32,60 無線基地局
33 通信網
40 聴覚健常者
50 聴覚障害者
61,62 通信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を認識する手段と、
音声信号と手話画像との対応表を参照して、認識した音声を手話画像に変換する手段と、
変換した手話画像を表示する手段と、
を備える情報端末。
【請求項2】
画像を撮影する手段と、
撮影した画像から手話情報を認識する手段と、
手話情報と音声信号との対応表を参照して、認識した手話情報を音声に変換する手段と、
変換した音声を出力する手段と、
を備える情報端末。
【請求項3】
請求項1記載の情報端末および請求項2記載の情報端末を搭載する情報端末。
【請求項4】
通信端末を移動体通信網にアクセスさせるための基地局であって、
通信端末から送信される音声を認識する手段と、
音声信号と手話画像との対応表を参照して、認識した音声を手話画像に変換する手段と、
変換した手話画像を通信可能に出力する手段と、
通信端末から送信される画像から手話画像を認識する手段と、
手話情報と音声信号との対応表を参照して、認識した手話情報を音声に変換する手段と、
変換した音声を通信可能に出力する手段と、
を備える基地局。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−139138(P2006−139138A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329570(P2004−329570)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】