説明

感光性樹脂、それを含有する硬化性樹脂組成物及びそのドライフィルム並びにそれらを用いたプリント配線板

【課題】良好な耐熱性や耐湿性、接着性などの諸物性に加え、乾燥性に優れたインキ組成物が得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、それを含有する硬化性樹脂組成物及びそのドライフィルム並びにそれらを用いたプリント配線板の提供。
【解決手段】カルボキシル基含有感光性樹脂は、分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(a)のフェノール性水酸基の一部又は全部をオキシアルキル基に変換した樹脂に、α,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造のフェノール樹脂にアルキレンオキシド、環状カーボネート等の環状エーテル基を有する化合物を付加反応させ、それに続くα,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸の付加及び多塩基酸無水物の付加によって得られ、その硬化物が耐熱性、強靱性に優れると共に、高い硬度と可撓性を有し、しかも耐水性、耐薬品性に富んだカルボキシル基含有感光性樹脂に関する。
さらに本発明は、このようなカルボキシル基含有感光性樹脂を含有するアルカリ現像可能な硬化性樹脂組成物及びそのドライフィルム、並びにそれらから得られる硬化物を有するプリント配線板に関する。さらに詳しくは、一般のプリント配線板や、フレキシブルプリント配線板、テープキャリアパッケージの製造に用いられる永久マスクや、多層配線板の層間絶縁層等としての使用に適し、紫外線の照射後、希アルカリ水溶液で現像することによって画像形成し、加熱処理、又は活性エネルギー線照射後の加熱処理、もしくは加熱処理後の活性エネルギー線照射により仕上げ硬化することにより、密着性、はんだ耐熱性、耐吸湿性、PCT(プレッシャークッカー)耐性、無電解金めっき耐性、耐屈曲性、耐折性、柔軟性、反り、電気絶縁性に優れる硬化膜を形成できる液状のアルカリ現像可能な光硬化性熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一部の民生用プリント配線板並びにほとんどの産業用プリント配線板用ソルダーレジストには、高精度、高密度の観点から、紫外線照射後、現像することにより画像形成し、熱又は光照射で仕上げ硬化(本硬化)する液状現像型ソルダーレジストが使用されている。また環境問題への配慮から、現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプの液状ソルダーレジストが主流になっている。このような希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプのソルダーレジストとしては、例えば、特開昭61−243869号公報には、ノボラック型エポキシ化合物と不飽和一塩基酸の反応生成物に酸無水物を付加した感光性樹脂、光重合開始剤、希釈剤及びエポキシ化合物からなるソルダーレジスト組成物が、特開平3−253093号公報には、ノボラック型エポキシ化合物と不飽和一塩基酸の反応生成物に酸無水物を付加した感光性樹脂、光重合開始剤、希釈剤、ビニルトリアジン又はビニルトリアジンとジシアンジアミドの混合物及びメラミン樹脂からなるソルダーレジスト組成物が、特開平3−71137号公報、特開平3−250012号公報には、サリチルアルデヒドと一価フェノールとの反応生成物にエピクロロヒドリンを反応させて得られたエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加し、さらに多塩基性カルボン酸又はその無水物を反応させて得られる感光性樹脂、光重合開始剤、有機溶剤等からなるソルダーレジスト組成物が開示されている。
【0003】
上記のように、ソルダーレジストとしては従来幾つかの材料系が提案されており、現在、実際のプリント配線板の製造において大量に使用されている。しかしながら、近年のエレクトロニクス機器の軽薄短小化に伴うプリント配線板の高密度化に対応して、ソルダーレジストにも高性能化が要求されている。さらに最近では、リードフレームと封止樹脂を用いたQFP(クワッド・フラットパック・パッケージ)やSOP(スモール・アウトライン・パッケージ)等と呼ばれるICパッケージに代わって、ソルダーレジストを施したプリント配線板と封止樹脂を用いたICパッケージが登場した。これら新しいパッケージは、ソルダーレジストを施したプリント配線板の片側にボール状のはんだ等の金属をエリア状に配し、もう片側にICチップをワイヤーボンディングもしくはバンプ等で直接接続し、封止樹脂で封止した構造をしており、BGA(ボール・グリッド・アレイ)、CSP(チップ・スケール・パッケージ)等の呼び名で呼ばれている。これらのパッケージは、同一サイズのQFP等のパッケージよりも多ピンでさらに小型化が容易である。また実装においても、ボール状はんだのセルフアライメント効果により低い不良率を実現し、急速にその導入が進められている。
【0004】
しかしながら、従来市販のアルカリ現像型ソルダーレジストを施したプリント配線板では、パッケージの長期信頼性試験であるPCT耐性が劣り、硬化物の剥離が生じている。また、ソルダーレジストの吸湿により、パッケージ実装時のリフロー中にパッケージ内部で吸湿した水分が沸騰し、パッケージ内部のソルダーレジスト皮膜及びその周辺にクラックが生じる、いわゆるポップコーン現象が問題視されている。このような耐吸湿性や長期信頼性の問題は、上記実装技術の場合のみに限られるものではなく、一般のプリント配線板のソルダーレジストや、フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジストや、ビルドアップ基板等の多層配線板の層間絶縁層など、他の用途の製品においても望ましくない。
【0005】
このように、最近の電気産業、半導体産業の発展に伴って、一層の特性向上、例えば、耐熱性、強靱性、可撓性、耐水性、耐薬品性の向上が要求され、これを満足すべく種々の新規な感光性樹脂が開発されている。
【0006】
従来、ノボラック型エポキシ樹脂を出発原料とした感光性樹脂は、その優れた接着性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などのため、ソルダーレジスト、エッチングレジストなど電子材料の多くの分野に広く使用されており、特に耐熱性の優れたカルボキシル基含有感光性樹脂として、前記クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と不飽和基含有モノカルボン酸との反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られる樹脂(特開昭61−243869号)が多用されている。しかし、この樹脂は耐熱性に優れるものの、硬化時の収縮が大きく、伸びが少なく、強靱性に欠けるため、熱ショックによるクラックが発生し易いという難点がある。これを解決する感光性樹脂として、ビスフェノール型エポキシ樹脂の側鎖水酸基を部分エポキシ化した樹脂と(メタ)アクリル酸と多塩基酸無水物との反応生成物である感光性プレポリマー(特開平9−54434号)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂とアクリル酸とp−ヒドロキシフェネチルアルコールの反応生成物にテトラヒドロフタル酸無水物を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(特開平11−288091号)などが提案されている。しかし、これらの樹脂も、耐熱性と強靭性を共に満足させるにはまだまだ不充分である。また、ノボラック樹脂をアルキレンオキサイドで変性した後、(メタ)アクリル酸を付加し、さらに多塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂(特許第3964326号)が提案されており、優れた長期信頼性を有するが、インキ塗布後の乾燥性に改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平3−253093号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平3−71137号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平3−250012号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開平9−54434号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開平11−288091号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特許第3964326号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の問題に鑑みなされたものであり、良好な耐熱性や耐湿性、接着性などの諸物性に加え、乾燥性に優れたインキ組成物が得られるカルボキシル基含有感光性樹脂を提供することを目的とするものである。
さらに本発明は、一般のプリント配線板のソルダーレジストや、フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジストや、ビルドアップ基板等の多層配線板の層間絶縁層などに要求される密着性、はんだ耐熱性、耐吸湿性、PCT耐性、電気絶縁性等などの諸特性、特にICパッケージに要求される耐吸湿性並びにPCT(プレッシャークッカー)耐性等の特性に優れる硬化膜が得られ、プリント配線板の高密度化、面実装化に対応可能でアルカリ現像可能な液状の硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明によれば、下記一般式(1)の構造を含む分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(a)のフェノール性水酸基の一部又は全部をオキシアルキル基に変換した樹脂に、α,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られせるカルボキシル基含有感光性樹脂が提供される。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜11の炭化水素基又はSO基、酸素原子、硫黄原子のいずれかであり、Rは炭素数1〜11の炭化水素基、aは0〜3の整数を表し、nは1〜2の整数を表し、mは1〜10の整数を表す。)
【0010】
さらに本発明によれば、前記一般式(1)の構造を含む分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(a)のフェノール性水酸基の一部又は全部をオキシアルキル基に変換した樹脂に、α,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、(B)光重合開始剤、及び(C)熱硬化性成分を含有することを特徴とするアルカリ現像可能な硬化性樹脂組成物が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、前記硬化性樹脂組成物を、フィルム上に塗布・乾燥させて得られる硬化性フィルムや、前記硬化性樹脂組成物又は該硬化性フィルムを、活性エネルギー線照射及び/又は加熱により硬化させて得られる硬化物、特に銅上にて光硬化させて得られる硬化物や、パターン状に光硬化して得られる硬化物も提供される。
さらに本発明によれば、前記硬化性樹脂組成物又は硬化性フィルムを活性エネルギー線照射及び/又は加熱により硬化させて得られる硬化皮膜を有するプリント配線板も提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂は、前記一般式(1)の構造を含む分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(a)、即ち、特定構造のノボラック型フェノール樹脂を用いることで、硬化前のインキ組成物の乾燥性を向上させ、また、この樹脂のフェノール性水酸基の一部又は全部をアルコール性水酸基を有するオキシアルキル基に変換することによって可撓性が付与され、その結果生じたオキシアルキル基の末端水酸基にα,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)の付加及び多塩基酸無水物(d)の付加を行なうことによって、α,β−エチレン性不飽和基やカルボキシル基が側鎖の末端に付与されたものであるため、反応性が向上し、高いレベルで耐熱性と強靱性のバランスがとれ、硬度、可撓性に優れると共に、耐水性、耐薬品性等にも優れた硬化物が得られる。また、末端カルボキシル基を有するためアルカリ水溶液による現像も可能である。
その結果、このようなカルボキシル基含有感光性樹脂(A)を(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性成分と共に含有するアルカリ現像可能な硬化性樹脂組成物は、プリント配線板のソルダーレジストや、フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジストや、ビルドアップ基板等の多層配線板の層間絶縁層などの形成に好適に用いられ、優れた乾燥性、アルカリ現像性、光硬化性及び熱硬化性を示すと共に、その塗膜の選択的露光、現像及び仕上げ硬化によって、密着性、はんだ耐熱性、耐吸湿性、PCT耐性、電気絶縁性などの諸特性に優れた硬化物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、前記一般式(1)の構造を含む分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(a)、例えばビスフェノール類のポリメチロール体にフェノール類を反応させて得られる特定構造のノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基の一部又は全部にアルキレンオキシド、環状カーボネート化合物等の環状エーテル基を有する化合物(b)を付加反応させ、その結果導入されたオキシアルキル基のアルコール性水酸基にα,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)を反応させ、得られた反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、特にα,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)がアクリル酸又は/及びメタクリル酸であり、多塩基酸無水物(d)が脂環式二塩基酸無水物であるカルボキシル基含有感光性樹脂(A)は、乾燥性、現像性、光硬化性及び熱硬化性に優れると共に、優れた耐熱性と強靱性を併せ持つ硬化物を与え、該カルボキシル基含有感光性樹脂(A)を光重合開始剤(B)及び熱硬化性成分(C)と共に含有し、あるいはこれらに加えてさらに感光性(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、レジストとして必要な前記のような優れた特性を持つことを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0014】
すなわち、本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A)は、前記一般式(1)の構造を含む分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物、即ち、主骨格に低分子量成分が少ない特定構造のノボラック型フェノール樹脂を用いることで、硬化前の樹脂組成物の乾燥性を向上させ、この樹脂のフェノール性水酸基の一部又は全部をアルコール性水酸基を有するオキシアルキル基に変換することによって可撓性を向上させ、かつ、導入された側鎖のオキシアルキル基の末端水酸基にα,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、さらに多塩基酸無水物(d)の付加が行なわれることにより、α,β−エチレン性不飽和基やカルボキシル基が同一側鎖上に存在せず、かつそれぞれ側鎖の末端に位置するため、反応性に優れ、高い耐熱性と強靱性を有し、また、主鎖から離れた末端カルボキシル基の存在により優れたアルカリ現像性を有し、しかも該樹脂は、従来技術で用いられているエポキシアクリレートの酸無水物変成樹脂のように反応性の低い親水性の2級水酸基を有しないため、耐水性、耐薬品性に富む硬化物を与える。
【0015】
従って、該カルボキシル基含有感光性樹脂(A)を光重合開始剤(B)及び熱硬化性成分(C)と共に含有し、あるいはこれらに加えてさらに感光性(メタ)アクリレート化合物を含有する液状の硬化性樹脂組成物は、優れた乾燥性、アルカリ現像性、光硬化性及び熱硬化性を示すと共に、その塗膜の選択的露光、現像及び仕上げ硬化によって、密着性、はんだ耐熱性、耐吸湿性、PCT耐性、電気絶縁性に優れた硬化物が得られるものである。
【0016】
以下、本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂及びそれを含有する硬化性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
まず、本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A)は、前記したように、前記一般式(1)の構造を含む分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(a)、即ち、ビスフェノール類のポリメチロール体にフェノール類を反応させて得られる特定構造のノボラック型フェノール樹脂(a)のフェノール性水酸基の一部又は全部にアルキレンオキシド、環状カーボネート化合物等の環状エーテル基を有する化合物(b)を付加反応させ、この反応で生じた側鎖のオキシアルキル基の水酸基に、α,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)をエステル化反応させ、さらに多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる。各反応は、後述するような触媒を用い、溶媒中又は無溶媒下で容易に行なわれる。
【0017】
このようなカルボキシル基含有感光性樹脂(A)は、30〜150mgKOH/g、好ましくは50〜120mgKOH/gの範囲内にある酸価を有することが望ましい。カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価が30mgKOH/gよりも低いときは、アルカリ水溶液に対する溶解性が悪くなり、形成した塗膜の現像が困難になる。一方、150mgKOH/gよりも高くなると、露光の条件によらず露光部の表面まで現像されてしまい、好ましくない。
【0018】
前記一般式(1)の構造を含む分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(a)は、例えばビスフェノール類のポリメチロール体とフェノール類を酸性触媒存在下で縮合反応させることによって得られる。
ビスフェノール類としては、特に限定されないが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールZなどの市販のビスフェノール類を用いることができ、好ましくはビスフェノールAやビスフェノールFを用いる。フェノール類としてはフェノール、各種クレゾール類、各種キシレノール類などのアルキルフェノール類、ナフトール類を用いることができ、好ましくはo−クレゾール、2,6−キシレノールを用いる。また、これらを混合して用いてもよい。
【0019】
上記フェノール化合物(a)に対するアルキレンオキシド、環状カーボネート等の環状エーテル基を有する化合物(b)の付加割合は、フェノール化合物(a)のフェノール性水酸基1当量当り0.5〜5.0モル、好ましくは0.8〜3.0モルがよい。0.5モル未満の場合、得られるカルボキシ基含有感光性樹脂において、光硬化性が乏しくなる恐れがある。また、5.0モルより多い場合、乾燥性が悪くなる恐れがある。
【0020】
上記フェノール化合物(a)に対する環状エーテル基を有する化合物(b)の付加反応は、例えば、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属化合物、又は、トリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等の第四級塩基性塩化合物、又は、アルカリ金属化合物と第四級塩基性塩化合物の混合物の存在下において、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、及びこれらの混合溶媒を用いて、80〜180℃、常圧〜10kg/cmで行なわれる。特にケトン類及び芳香族炭化水素類を単独で又は2種以上を混合した溶媒が好適に用いられる。
【0021】
前記環状エーテル基を有する化合物(b)としては、アルキレンオキシドや環状カーボネートを好適に用いることができる。
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0022】
前記特定構造のノボラック型フェノール樹脂(a)と環状エーテル基を有する化合物(b)の反応生成物と、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)とのエステル化反応における反応温度は、約50〜150℃が好ましく、減圧下、常圧下、加圧下のいずれでも反応を行なうことができる。反応溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、メチルクロロホルム、ジイソプロピルエーテル、及び、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が好適に用いられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。エステル化触媒としては、硫酸、塩酸、燐酸、フッ化ホウ素、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カチオン交換樹脂等が適宜用いられる。エステル化反応は重合禁止剤の存在下で行なうのが好ましく、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等が好適に用いられる。
【0023】
前記α,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)としては、アクリル酸、アクリル酸の2量体、メタクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、(メタ)アクリル酸カプロラクトン付加物、及び飽和又は不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類とのハーフエステル化合物などが挙げられるが、光反応性と硬化物の物性、特に耐熱性、耐吸湿性及び電気特性に与える影響から、アクリル酸及び/又はメタクリル酸が好ましく、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
前記ノボラック型フェノール樹脂(a)と環状エーテル基を有する化合物(b)の反応生成物にα,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)を反応させて得られる生成物に、多塩基酸無水物(d)を反応させて本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(感光性プレポリマー)が得られるが、この反応において、多塩基酸無水物(d)の使用量は、生成するカルボキシル基含有感光性樹脂(A)の酸価が、好ましくは30〜150mgKOH/g、より好ましくは50〜120mgKOH/gとなるような付加量とする。反応は、後述する有機溶剤の存在下又は非存在下でハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤の存在下、通常、約50〜150℃で行なう。このとき必要に応じて、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物等を触媒として添加してもよい。
【0025】
上記多塩基酸無水物(d)としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸の無水物;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の脂肪族又は芳香族二塩基酸の無水物、あるいはビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は芳香族四塩基酸二無水物が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、脂環式二塩基酸無水物が特に好ましい。
【0026】
また、他のカルボキシル基含有感光性樹脂、例えば、ノボラック型及び/又はビスフェノール型エポキシ化合物と不飽和一塩基酸の反応生成物に酸無水物を付加した感光性樹脂等を、特性向上の目的で本発明の硬化性樹脂組成物に混合することができる。
【0027】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤(B)としては、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を使用することができる。
【0028】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、チバ・ジャパン社製のCGI−325、イルガキュアー OXE01、イルガキュアー OXE02、アデカ社製N−1919、アデカアークルズNCI−831などが挙げられる。また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式(II)で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【0029】
【化2】

(式中、Xは、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、炭素数1〜10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5−ピロール−ジイル、4,4’−スチルベン−ジイル、4,2’−スチレン−ジイルを表し、pは0又は1の整数である。)
特に、上記式中、X、Yが、それぞれ、メチル基又はエチル基であり、Zはメチル又はフェニルであり、pは0であり、Arは、フェニレン、ナフチレン、又はチエニレンであることが好ましい。
【0030】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部とすることが好ましい。0.01質量部未満であると、銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離するとともに、耐薬品性などの塗膜特性が低下する。一方、5質量部を超えると、ソルダーレジスト塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは、0.5〜3質量部である。
【0031】
α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、チバ・ジャパン社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
【0032】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、チバ・ジャパン社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0033】
これらα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.01〜15質量部であることが好ましい。0.01質量部未満であると、同様に銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離するとともに、耐薬品性などの塗膜特性が低下する。一方、15質量部を超えると、アウトガスの低減効果が得られず、さらにソルダーレジスト塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0034】
その他、本発明の硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などを挙げることができる。
【0035】
ベンゾイン化合物としては、具体的には、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0036】
アセトフェノン化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。
【0037】
アントラキノン化合物としては、具体的には、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどが挙げられる。
【0038】
チオキサントン化合物としては、具体的には、例えば2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0039】
ケタール化合物としては、具体的には、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0040】
ベンゾフェノン化合物としては、具体的には、例えばベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0041】
3級アミン化合物としては、具体的には、例えばエタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、市販品では、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)などのジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などが挙げられる。
【0042】
これらのうち、チオキサントン化合物及び3級アミン化合物が好ましい。特に、チオキサントン化合物が含まれることが、深部硬化性の面から好ましい。中でも、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン化合物を含むことが好ましい。
【0043】
このようなチオキサントン化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。配合量が20質量部を超えると、厚膜硬化性が低下するとともに、製品のコストアップに繋がる。より好ましくは10質量部以下である。
【0044】
また、3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜450nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物及びケトクマリン類が特に好ましい。
【0045】
ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが、毒性も低く好ましい。ジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が350〜410nmと紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な感光性組成物はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色ソルダーレジスト膜を提供することが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが、波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
【0046】
このような3級アミン化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。配合量が0.1質量部未満であると、十分な増感効果を得ることができない傾向にある。一方、20質量部を超えると、3級アミン化合物による乾燥ソルダーレジスト塗膜の表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは0.1〜10質量部である。これらの光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
【0047】
このような光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤の総量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して35質量部以下であることが好ましい。35質量部を超えると、これらの光吸収により深部硬化性が低下する傾向にある。
【0048】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として働くことがある。しかしながら、これらは組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストのライン形状及び開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の加工精度を向上させることができる。
【0049】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明に使用しているカルボキシル基含有感光性樹脂の他に、現像性、タック性等の諸特性のバランスを調整するため、公知慣用のカルボキシル基含有樹脂を併用しても良い。中でも、本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂は塩素イオン不純物を含んでいないため、塩素イオンを含んでいない、あるいは非常に少ないカルボキシル基含有樹脂を併用することが好ましい。
【0050】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、耐熱性を付与するために、熱硬化性成分(C)を加えることができる。熱硬化性成分としては、具体的にはブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知の熱硬化性樹脂が使用できる。これらの中でも好ましい熱硬化成分は、1分子中に複数の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略称する)を有する熱硬化性成分である。これら環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、市販されている種類が多く、その構造によって多様な特性を付与することができる。
【0051】
このような分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4又は5員環の環状エーテル基又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子中に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子中に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子中に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0052】
多官能エポキシ化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・ジャパン社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・ジャパン社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、チバ・ジャパン社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製jER807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、チバ・ジャパン社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER604、東都化成社製のエポトートYH−434、チバ・ジャパン社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・ジャパン社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・ジャパン社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、DIC社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjERYL−931、チバ・ジャパン社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・ジャパン社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN−190、ESN−360、DIC社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0054】
エピスルフィド樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のYL7000(ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂)などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0055】
このような分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂のカルボキシル基1当量に対して、0.6〜2.5当量が好ましい。配合量が0.6未満である場合、ソルダーレジスト膜にカルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下する。一方、2.5当量を超える場合、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより、塗膜の強度などが低下する。より好ましくは、0.8〜2.0当量である。
【0056】
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を使用する場合、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。
【0057】
また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT(登録商標)3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を上記の熱硬化触媒と併用する。
【0058】
これら熱硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えばカルボキシル基含有感光性樹脂又は分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物は、着色剤を配合することができる。着色剤としては、赤、青、緑、黄などの公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0060】
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがあり、具体的には以下のようなカラ−インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。
【0061】
モノアゾ系:Pigment Red 1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 9, 12, 14, 15, 16, 17, 21, 22, 23, 31, 32, 112, 114, 146, 147, 151, 170, 184, 187, 188, 193, 210, 245, 253, 258, 266, 267, 268, 269。
ジスアゾ系:Pigment Red 37, 38, 41。
モノアゾレーキ系:Pigment Red 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 49:1, 49:2, 50:1, 52:1, 52:2, 53:1, 53:2, 57:1, 58:4, 63:1, 63:2, 64:1,68。
【0062】
ベンズイミダゾロン系:Pigment Red 171, 175, 176、185、208。
ぺリレン系:Solvent Red 135, 179, Pigment Red 123, 149, 166, 178, 179, 190, 194, 224。
ジケトピロロピロール系:Pigment Red 254, 255, 264, 270, 272。
縮合アゾ系:Pigment Red 220, 144, 166, 214, 220, 221, 242。
アンスラキノン系:Pigment Red 168, 177, 216、Solvent Red 149, 150, 52, 207。
キナクリドン系:Pigment Red 122, 202, 206, 207, 209。
【0063】
青色着色剤:
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなものを挙げることができる:Pigment Blue 15, 15:1, 15:2, 15:3, 15:4, 15:6, 16, 60。染料系としては、Solvent Blue 35, 63, 68, 70, 83, 87, 94, 97, 122, 136, 67, 70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0064】
緑色着色剤:
緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系があり、具体的にはPigment Green 7, 36、Solvent Green 3, 5, 20, 28等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0065】
黄色着色剤:
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等があり、具体的には以下のものが挙げられる。
アントラキノン系:Solvent Yellow 163, Pigment Yellow 24, 108, 193, 147, 199, 202。
イソインドリノン系:Pigment Yellow 110, 109, 139, 179, 185。
縮合アゾ系:Pigment Yellow 93, 94, 95, 128, 155, 166, 180。
【0066】
ベンズイミダゾロン系:Pigment Yellow 120, 151, 154, 156, 175, 181。
モノアゾ系:Pigment Yellow 1, 2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 12, 61, 62, 62:1, 65, 73, 74, 75, 97, 100, 104, 105, 111, 116, 167, 168, 169, 182, 183。
ジスアゾ系:Pigment Yellow 12, 13, 14, 16, 17, 55, 63, 81, 83, 87, 126, 127, 152, 170, 172, 174, 176, 188, 198。
【0067】
その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色、黒などの着色剤を加えてもよい。
具体的に例示すれば、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13, 36、C.I. Pigment Orange 1, 5, 13, 14, 16, 17, 24, 34, 36, 38, 40, 43, 46, 49, 51, 61, 63, 64, 71, 73、Pigment Brown 23, 25, Pigment Black 1, 7等がある。
【0068】
これら着色剤の配合割合は、特に制限はないが、前記カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、特に好ましくは0.1〜5質量部の割合で充分である。
【0069】
本発明の硬化性樹脂組成物には、得られる硬化性樹脂組成物の光硬化性を向上させるために、活性エネルギー線照射により光硬化する、分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物を配合することができる。
このような化合物としては、公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが使用でき、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε−カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;上記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0070】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる
【0071】
このような分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましい、配合量が5質量部未満の場合、光硬化性が低下し、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像により、パターン形成が困難となる。一方、100質量部を超えた場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下して、塗膜が脆くなる。より好ましくは、5〜70質量部である。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物は、その塗膜の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、充填剤を配合することができる。このような充填剤としては、公知の無機又は有機充填剤が使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ及びタルク、ノイブルグシリシャスアースが好ましい。さらに、白色の外観や難燃性を得るために酸化チタンや金属酸化物、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を充填剤としても使用することができる。
【0073】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物は、指触乾燥性の改善、ハンドリング性の改善などを目的にバインダーポリマーを使用することができる。例えばポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステルウレタン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリエステルアミド系ポリマー、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリ乳酸系ポリマー、フェノキシ系ポリマーなどを用いることができる。これらのバインダーポリマーは、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
【0074】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物は、柔軟性の付与、硬化物の脆さを改善することなどを目的にさらに他のエラストマーを使用することができる。例えばポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステルウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステルアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマーを用いることができる。また、種々の骨格を有するエポキシ樹脂の一部又は全部のエポキシ基を両末端カルボン酸変性型ブタジエン−アクリロニトリルゴムで変性した樹脂なども使用できる。
【0075】
さらにはエポキシ含有ポリブタジエン系エラストマー、アクリル含有ポリブタジエン系エラストマー、水酸基含有ポリブタジエン系エラストマーなども使用することができる。これらのエラストマーは、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
【0076】
さらに本発明では、酸化防止剤、連鎖移動剤、密着性付与剤、密着性促進剤、銅害防止剤、重合禁止剤、防錆剤、など様々な特性の向上に必要な諸特性を向上させることが可能なものを使用することができる。
【0077】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、上記カルボキシル基含有感光性樹脂の合成や組成物の調製のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
【0078】
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0079】
以上のような組成を有する本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて希釈して塗布方法に適した粘度に調整し、これを例えば、回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の方法により塗布し、例えば約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。その後、レーザー光等の活性エネルギー線をパターン通りに直接照射するか、又はパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成でき、さらに、加熱硬化のみ、又は活性エネルギー線の照射後加熱硬化もしくは加熱硬化後活性エネルギー線の照射で最終硬化(本硬化)させることにより、密着性、はんだ耐熱性、耐吸湿性、PCT耐性、無電解金めっき耐性、耐屈曲性、耐折性、柔軟性、反り、電気絶縁性に優れた硬化膜(硬化物)が形成される。
【0080】
上記アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【0081】
また、光硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。その他、レーザー光線なども活性エネルギー線として利用できる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の実施例等により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【0083】
カルボキシル基含有感光性樹脂の調製
合成例1
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、ビスフェノールA456部、水228部、37%ホルマリン649部を仕込み、40℃以下の温度を保ち、25%水酸化ナトリウム水溶液228部を添加した、添加終了後50℃で10時間反応した。反応終了後40℃まで冷却し、40℃以下を保ちながら37.5%リン酸水溶液でpH4まで中和した。その後静置し水層を分離した。分離後メチルイソブチルケトン300部を添加し均一に溶解した後、蒸留水500部で3回洗浄し、50℃以下の温度で減圧下、水、溶媒等を除去した。得られたポリメチロール化合物をメタノール550部に溶解し、ポリメチロール化合物のメタノール溶液1230部を得た。
得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液の一部を真空乾燥機中室温で乾燥したところ、固形分が55.2%であった。
【0084】
合成例2
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、合成例1で得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液500部、2,6−キシレノール440部を仕込み、50℃で均一に溶解した。均一に溶解した後50℃以下の温度で減圧下メタノールを除去した。その後シュウ酸8部を加え、100℃で10時間反応した。反応終了後180℃、50mmHgの減圧下で溜出分を除去し、ノボラック樹脂A 550部を得た。
【0085】
合成例3
2,6−キシレノール440部をオルソクレゾール430部に変更した以外は合成例2と同様に行い、ノボラック樹脂B 530部を得た。
【0086】
合成例4
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック樹脂A 130部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6部、トルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、次に加熱昇温し、150℃、8kg/cmでエチレンオキシド45部を徐々に導入し反応させた。反応はゲージ圧0.0kg/cmとなるまで約4時間を続けた後、室温まで冷却した。この反応溶液に3.3部の36%塩酸水溶液を添加混合し、水酸化ナトリウムを中和した。この中和反応生成物をトルエンで希釈し、3回水洗し、エバポレーターにて脱溶剤して、水酸基価が175g/eq.であるノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りエチレンオキシドが平均1モル付加しているものであった。
得られたノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物175部、アクリル酸50部、p−トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トルエン130部を撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら攪拌して、115℃に昇温し、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、さらに4時間反応させたのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液を5%NaCl水溶液を用いて水洗し、減圧留去にてトルエンを除去したのち、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、不揮発分68%のアクリレート樹脂溶液を得た。
次に、撹拌器及び還流冷却器の付いた4つ口フラスコに、得られたアクリレート樹脂溶液312部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トリフェニルホスフィン0.3部を仕込み、この混合物を110℃に加熱し、テトラヒドロ無水フタル酸45部を加え、4時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分72%、固形分酸価65mgKOH/gであった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液をA−1ワニスと称す。
【0087】
合成例5
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック樹脂A 130部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6部、トルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、次に加熱昇温し、150℃、8kg/cmでプロピレンオキシド60部を徐々に導入し反応させた。反応はゲージ圧0.0kg/cmとなるまで約4時間を続けた後、室温まで冷却した。この反応溶液に3.3部の36%塩酸水溶液を添加混合し、水酸化ナトリウムを中和した。この中和反応生成物をトルエンで希釈し、3回水洗し、エバポレーターにて脱溶剤して、水酸基価が189g/eq.であるノボラック樹脂Aのプロピレンオキシド付加物を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキシドが平均1モル付加しているものであった。
得られたノボラック樹脂Aのプロピレンオキシド付加物189部、アクリル酸36部、p−トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トルエン140部を撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら攪拌して、115℃に昇温し、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、さらに4時間反応させたのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液を5%NaCl水溶液を用いて水洗し、減圧留去にてトルエンを除去したのち、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、不揮発分67%のアクリレート樹脂溶液を得た。
次に、撹拌器及び還流冷却器の付いた4つ口フラスコに、得られたアクリレート樹脂溶液322部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トリフェニルホスフィン0.3部を仕込み、この混合物を110℃に加熱し、テトラヒドロ無水フタル酸60部を加え、4時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分72%、固形分酸価81mgKOH/gであった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液をA−2ワニスと称す。
【0088】
合成例6
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック樹脂B 120部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6部、トルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、次に加熱昇温し、150℃、8kg/cmでエチレンオキシド45部を徐々に導入し反応させた。反応はゲージ圧0.0kg/cmとなるまで約4時間を続けた後、室温まで冷却した。この反応溶液に3.3部の36%塩酸水溶液を添加混合し、水酸化ナトリウムを中和した。この中和反応生成物をトルエンで希釈し、3回水洗し、エバポレーターにて脱溶剤して、水酸基価が165g/eq.であるノボラック樹脂Bのエチレンオキシド付加物を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りエチレンオキシドが平均1モル付加しているものであった。
得られたノボラック樹脂Bのエチレンオキシド付加物165部、アクリル酸36部、p−トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トルエン130部を撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら攪拌して、115℃に昇温し、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、さらに4時間反応させたのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液を5%NaCl水溶液を用いて水洗し、減圧留去にてトルエンを除去したのち、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、不揮発分66%のアクリレート樹脂溶液を得た。
次に、撹拌器及び還流冷却器の付いた4つ口フラスコに、得られたアクリレート樹脂溶液289部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トリフェニルホスフィン0.3部を仕込み、この混合物を110℃に加熱し、テトラヒドロ無水フタル酸60部を加え、4時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分72%、固形分酸価89mgKOH/gであった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液をA−3ワニスと称す。
【0089】
比較合成例1
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子製ショウノールBRG−558)106部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6部、トルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、次に加熱昇温し、150℃、8kg/cmでプロピレンオキシド60部を徐々に導入し反応させた。反応はゲージ圧0.0kg/cmとなるまで約4時間を続けた後、室温まで冷却した。この反応溶液に3.3部の36%塩酸水溶液を添加混合し、水酸化ナトリウムを中和した。この中和反応生成物をトルエンで希釈し、3回水洗し、エバポレーターにて脱溶剤して、水酸基価が164g/eq.であるノボラック型フェノール樹脂のプロピレンオキシド付加物を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキシドが平均1モル付加しているものであった。
得られたノボラック型フェノール樹脂のプロピレンオキシド付加物164部、アクリル酸36部、p−トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トルエン130部を撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら攪拌して、115℃に昇温し、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、さらに4時間反応させたのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液を5%NaCl水溶液を用いて水洗し、減圧留去にてトルエンを除去したのち、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、不揮発分64%のアクリレート樹脂溶液を得た。
次に、撹拌器及び還流冷却器の付いた4つ口フラスコに、得られたアクリレート樹脂溶液298部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トリフェニルホスフィン0.3部を仕込み、この混合物を110℃に加熱し、テトラヒドロ無水フタル酸60部を加え、4時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分70%、固形分酸価89mgKOH/gであった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液をR−1ワニスと称す。
【0090】
比較合成例2
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子製ショウノールCRG−951)115部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6部、トルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、次に加熱昇温し、150℃、8kg/cmでエチレンオキシド45部を徐々に導入し反応させた。反応はゲージ圧0.0kg/cmとなるまで約4時間を続けた後、室温まで冷却した。この反応溶液に3.3部の36%塩酸水溶液を添加混合し、水酸化ナトリウムを中和した。この中和反応生成物をトルエンで希釈し、3回水洗し、エバポレーターにて脱溶剤して、水酸基価が160g/eq.であるクレゾールノボラック型フェノール樹脂のエチレンオキシド付加物を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りエチレンオキシドが平均1モル付加しているものであった。
得られたクレゾールノボラック型フェノール樹脂のエチレンオキシド付加物160部、アクリル酸36部、p−トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トルエン130部を撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら攪拌して、115℃に昇温し、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、さらに4時間反応させたのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液を5%NaCl水溶液を用いて水洗し、減圧留去にてトルエンを除去したのち、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、不揮発分64%のアクリレート樹脂溶液を得た。
次に、撹拌器及び還流冷却器の付いた4つ口フラスコに、得られたアクリレート樹脂溶液293部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トリフェニルホスフィン0.3部を仕込み、この混合物を110℃に加熱し、テトラヒドロ無水フタル酸60部を加え、4時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分70%、固形分酸価91mgKOH/gであった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液をR−2ワニスと称す。
【0091】
比較合成例3
ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN680、DIC(株)製、エポキシ当量:210)210部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、エチルカルビトールアセテート50部を仕込み、空気気流下にて撹拌下100℃で溶解させた。その後、アクリル酸70部、トリフェニルホスフィン0.65部を添加し、フラスコ内の温度を120℃まで昇温し、6時間反応させた。次にフラスコ内の温度を80℃まで冷却し、エチルカルビトールアセテート90部、テトラヒドロ無水フタル酸76部を加え、撹拌下100℃まで昇温し、3時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分70%、固形物の酸価87mgKOH/gであった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液をR−3ワニスと称す。
【0092】
実施例1〜9及び比較例1〜3
上記合成例の樹脂溶液を用い、下記表1に示す種々の成分と共に表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、ソルダーレジスト用感光性樹脂組成物を調製した。ここで、得られた感光性樹脂組成物の分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ、15μm以下であった。
【0093】
【表1】

【0094】
表1に示す実施例及び比較例の組成物について、以下に示す評価方法にて性能評価及び特性評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0095】
性能評価:
<最適露光量>
銅厚18μmの回路パターン基板を銅表面粗化処理(メック社製メックエッチボンドCZ−8100)後、水洗し、乾燥した後、表1に示す実施例及び比較例の光硬化性熱硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷法により全面に塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させ、約20μmの乾燥塗膜を得た。その後、高圧水銀灯搭載の露光装置を用いてステップタブレット(Kodak No.2)を介して露光し、現像(30℃、0.2MPa、1%炭酸ナトリウム水溶液)を90秒で行った際残存するステップタブレットのパターンが7段の時を最適露光量とした。
【0096】
<タック性>
それぞれの光硬化性樹脂組成物をパターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で前面塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させ、室温まで放冷した。この基板にPET製ネガフィルムを当て、ORC社製(HMW−GW20)で1分間減圧条件下で圧着させ、その後、ネガフィルムを剥がしたときのフィルムの張り付き状態を評価した。
○:ネガフィルムを剥がすときに、僅かに抵抗があるが、塗膜に跡はほとんど確認できない。
△:ネガフィルムを剥がすときに、抵抗があり、塗膜に僅かに跡がついている。
×:ネガフィルムを剥がすときに、大きな抵抗があり、塗膜にはっきり跡がついている。
【0097】
<最大現像ライフ>
表1に示す実施例及び比較例の組成物を、パターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で乾燥膜厚約20μmになるように全面塗布し、80℃で乾燥し20分から80分まで10分おきに基板を取り出し、室温まで放冷した。この基板に30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で90秒間現像を行い、乾燥塗膜が残らない最大許容乾燥時間を最大現像ライフとして判断した。
【0098】
特性評価:
表1に示す実施例及び比較例の組成物を、パターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で乾燥膜厚約20μmになるように全面塗布し、80℃で30分乾燥し、室温まで放冷した。この基板に高圧水銀灯を搭載した露光装置を用いて最適露光量でソルダーレジストパターンを露光し、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で90秒間現像を行い、レジストパターンを得た。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、150℃で60分加熱して硬化した。得られたプリント基板(評価基板)に対して以下のように特性を評価した。
【0099】
<耐酸性>
評価基板を10容量%HSO水溶液に室温で30分間浸漬し、染み込みや塗膜の溶け出しを目視にて確認し、さらにテープピールによる剥がれを確認した。
○:変化が認められないもの。
△:ほんの僅か変化しているもの。
×:塗膜に膨れあるいは膨潤脱落があるもの。
【0100】
<耐アルカリ性>
評価基板を10容量%NaOH水溶液に室温で30分間浸漬し、染み込みや塗膜の溶け出しを目視にて確認し、さらにテープピールによる剥がれを確認した。
○:変化が認められないもの。
△:ほんの僅か変化しているもの。
×:塗膜に膨れあるいは膨潤脱落があるもの。
【0101】
<はんだ耐熱性>
ロジン系フラックスを塗布した評価基板を、予め260℃に設定したはんだ槽に浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:10秒間浸漬を3回以上繰り返しても剥がれが認められない。
△:10秒間浸漬を3回以上繰り返すと少し剥がれる。
×:10秒間浸漬を3回以内にレジスト層に膨れ、剥がれがある。
【0102】
<耐無電解金めっき性>
評価基板について、市販品の無電解ニッケルめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、ニッケル5μm、金0.05μmの条件で無電解金めっき処理を行った。メッキを行った評価基板を、レジスト層の剥がれの有無やめっきのしみ込みの有無を評価した後、テープピーリングによりレジスト層の剥がれの有無を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:めっき後にしみ込み、白化が見られず、テープピーリング後に剥がれはない。
△:めっき後にしみ込み、白化が確認されるが、テープピーリング後の剥がれはない。
×:めっき後にしみ込み、白化が確認され、テープピーリング後に剥がれがある。
【0103】
<PCT耐性>
耐無電解金めっき性の評価と同様に無電解金めっきを施した評価基板を、PCT装置(エスペック社製HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて、121℃、飽和、0.2MPaの条件で種々の時間処理し、塗膜の状態によりPCT耐性を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:240時間試験を行っても、膨れ、剥がれ、変色、溶出のないもの。
△:168時間試験経過時、膨れ、剥がれ、変色、溶出はないが、240時間経過時、膨れ、剥がれ、変色、溶出のいずれかが見られるもの。
×:168時間試験経過時、膨れ、剥がれ、変色、溶出が見られるもの。
【0104】
<冷熱衝撃耐性>
□抜き、○抜きパターンを形成したソルダーレジスト硬化塗膜を有する評価基板を作製した。得られた評価基板を冷熱衝撃試験器(エタック社製)で−55℃/30分〜150℃/30分を1サイクルとして1000サイクルの耐性試験を行った。試験後、処理後の硬化膜を目視により観察し、クラックの発生状況を下記の基準にて判断した。
○:クラック発生率30%未満
△:クラック発生率30〜50%
×:クラック発生率50%以上
【0105】
<HAST特性>
クシ型電極(ライン/スペース=30ミクロン/30ミクロン)が形成されたBT基板に、ソルダーレジスト硬化塗膜を形成し、評価基板を作成した。この評価基板を、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧5.5Vを荷電し、種々の時間、槽内HAST試験を行った。種々の時間経過時の槽内絶縁抵抗値を下記の判断基準に従い評価した。
○:240時間経過後、10Ω以上
×:240時間経過時、10Ω以下
【0106】
【表2】

【0107】
実施例10〜17及び比較例4〜6
表1に示す配合割合で調製した実施例1〜8及び比較例1〜3の各組成物をメチルエチルケトンにて希釈し、PETフィルム上に塗布して80℃で30分乾燥し、厚さ20μmの感光性樹脂組成物層を形成した。さらにその上にカバーフィルムを貼り合わせてドライフィルムを作製し、それぞれを実施例10〜17及び比較例4〜6とした。
【0108】
<ドライフィルム評価>
上記のようにして得られたドライフィルムからカバーフィルムを剥がし、パターン形成された銅箔基板に、フィルムを熱ラミネートし、次いで、前記実施例の塗膜特性評価に用いた基板と同様の条件で露光した。露光後、キャリアフィルムを剥がし、30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で90秒間現像を行い、レジストパターンを得た。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、150℃で60分加熱して硬化した。得られた硬化皮膜を有する試験基板について、前述した試験方法及び評価方法にて、各特性の評価試験を行った。結果を表3に示す。
【0109】
【表3】

【0110】
表2及び表3に示す結果から明らかな如く、本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂を用いて得られた組成物の硬化物は、タック性に優れ、耐熱性、耐水性、接着性、信頼性にも優れた特性を有している。これに対して、比較例のカルボキシル基含有感光性樹脂を用いて得られた組成物の硬化物は、乾燥性、耐熱性、耐水性、接着性、信頼性のいずれかの特性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂及びそれを含有する硬化性樹脂組成物は、密着性、はんだ耐熱性、耐吸湿性、PCT耐性、無電解金めっき耐性、耐屈曲性、耐折性、柔軟性、反り、電気絶縁性等の諸特性に優れた硬化膜を低コストで生産性良く形成できるため、活性エネルギー線を用いて硬化させる紫外線硬化型印刷インキ用途等に使用可能であるほか、プリント配線板の製造時に使用されるソルダーレジスト、エッチングレジスト、メッキレジスト、層間絶縁材等に有用である。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化後に反りが少ないため、フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージへの部品又はチップの装着が容易となり、また、従来使用されている液状ポリイミドインキと比較すると安価に生産可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)の構造を含む分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(a)のフェノール性水酸基の一部又は全部をアルコール性水酸基を有するオキシアルキル基に変換した樹脂に、α,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜11の炭化水素基又はSO基、酸素原子、硫黄原子のいずれかであり、Rは炭素数1〜11の炭化水素基、aは0〜3の整数を表し、nは1〜2の整数を表し、mは1〜10の整数を表す。)
【請求項2】
前記フェノール化合物(a)が、ビスフェノールA又はビスフェノールFのポリメチロール体とフェノール類の縮合反応で得られたものである、請求項1に記載のカルボキシル基含有感光性樹脂。
【請求項3】
(A)下記一般式(I)の構造を含む分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(a)のフェノール性水酸基の一部又は全部をアルコール性水酸基を有するオキシアルキル基に変換した樹脂に、α,β−エチレン性不飽和基含有モノカルボン酸(c)を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、(B)光重合開始剤、及び(C)熱硬化性成分を含有することを特徴とするアルカリ現像可能な硬化性樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜11の炭化水素基又はSO基、酸素原子、硫黄原子のいずれかであり、Rは炭素数1〜11の炭化水素基、aは0〜3の整数を表し、nは1〜2の整数を表し、mは1〜10の整数を表す。)
【請求項4】
請求項3に記載の硬化性樹脂組成物を、フィルム上に塗布乾燥して得られることを特徴とする光硬化性熱硬化性のフィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の硬化性樹脂組成物、又は前記硬化性樹脂組成物をフィルム上に塗布乾燥させて得られる硬化性フィルムを、活性エネルギー線照射及び/又は加熱により硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項3に記載の硬化性樹脂組成物、又は前記硬化性樹脂組成物をフィルム上に塗布乾燥させて得られる硬化性フィルムを、活性エネルギー線照射及び/又は加熱により硬化させて得られる硬化物を具備することを特徴とするプリント配線板。

【公開番号】特開2012−62358(P2012−62358A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205680(P2010−205680)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】