説明

感光性樹脂組成物

【課題】無電解メッキ面への密着が良好で、かつアルカリ性条件下での光硬化したメッキレジストの除去が容易で、再付着しない微細配線可能なメッキレジストを提供する。
【解決手段】下記一般式で表される有機基(a)を1分子中に2個以上含有するラジカル重合性化合物(A)、多官能チオール化合物(B)、親水性ポリマー(C)、光ラジカル重合開始剤(D)及び酸発生剤(E)を必須成分として含有し、光照射とアルカリ現像によりパターン形成可能で、該光照射した部分を100℃以上の加熱処理を行うことでアルカリ溶解性にすることを特徴とした感光性樹脂組成物(Q)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物、およびそれを用いたプリント配線板の微細配線形成に好適なメッキレジストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、通信機器等に用いられるプリント配線板には、高密度配線化、演算処理速度の高速化の要求が強まっている。それに伴い多層プリント配線板の製造方法として、回路基板の導体層上に層間絶縁層を交互に積み上げていくビルドアップ方式の製造技術が注目されている。
【0003】
一般的にビルドアップ方式の配線形成方法としては、例えば、層間樹脂表面に無電解メッキ後に、感光性樹脂のメッキレジストを形成し、光照射、アルカリ現像することでパターンを形成し、電解メッキを行い、導体層を形成する。ついで強アルカリ水溶液によりメッキレジストを膨潤剥離させた後に、非配線パターン部の無電解メッキをエッチングすることで配線パターンを形成するセミアディティブ法が知られている。
【0004】
セミアディティブ法で使用されるメッキレジストは、多官能アクリルモノマーとカルボキシル基含有の親水性ポリマーと光ラジカル重合開始剤からなるネガ型の感光性樹脂が用いられる。そして、光照射部はアクリル基が光ラジカル重合により架橋し硬化することで不溶化し、未照射部は親水性ポリマーによりアルカリに溶解することでパターン形成する。またパターン形成後の光硬化部の樹脂の剥離には強アルカリ水溶液を用いて樹脂部分を膨潤させ、さらにスプレー処理することで剥離する。
【0005】
しかし配線パターンが微細になるに従い、配線間の光硬化したメッキレジトの剥離不良や、剥離したメッキレジストの再付着などによる配線パターン不良が発生する問題がある。
また、光硬化したメッキレジストの剥離には強アルカリ処理が必要であるため、イオンの浸透により層間絶縁樹脂の絶縁性が低下する問題がある。
【0006】
さらに演算処理速度の高速化に伴う高周波化により、配線表面の凸凹による伝送損失が発生するため、層間樹脂表面に形成される無電解メッキは平滑になる。無電解メッキ面が平滑になるに従い、メッキレジストの高密着性が必要になる。しかしメッキレジストの密着性と剥離性は相反し、両立が困難である。
このため微細配線パターンを形成するために、メッキレジストの無電解メッキ面への密着が良好で、かつ弱アルカリ性条件下での光硬化したメッキレジストの除去が容易で、再付着しないメッキレジストが必要になる。
【0007】
光硬化したメッキレジストを容易に除去する方法としては、例えば、親水性樹脂のカルボキシル基の比率を上げ親水性を上げる方法(特許文献1)等が提案されている。
しかし、親水性を上げる方法では、光照射後のアルカリ現像によっても膨潤するため解像度が低下する問題がある。
また、メッキレジストの再付着を防止する方法としては、例えば、超音波を行う方法(特許文献2)等が提案されている。しかし、超音波による方法では微細配線パターンが剥離する問題がある。
メッキレジストの密着性と剥離性を両立する方法として、例えば、加熱処理することで熱分解してアルカリを浸透させやすくする方法(特許文献3)等が提案されている。
しかし、熱分解で架橋を完全分解することはできず膨潤剥離となるため、10μm以下の配線や逆台形形状の配線間では剥離困難でパターン残りが発生する問題がある。
【0008】
従って、メッキレジストの無電解メッキ面への密着が良好で、かつ弱アルカリ性条件下での光硬化したメッキレジストの除去が容易で、再付着しない微細配線可能なメッキレジストが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−325487号公報
【特許文献2】特開平5−29210号公報
【特許文献3】再公表特許WO2005/022260
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、メッキレジストの無電解メッキ面への密着が良好で、かつ弱アルカリ性条件下での光硬化したメッキレジストの除去が容易で、再付着しない微細配線可能なメッキレジストの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される有機基(a)を1分子中に2個以上含有するラジカル重合性化合物(A)、多官能チオール化合物(B)、親水性ポリマー(C)、光ラジカル重合開始剤(D)及び酸発生剤(E)を必須成分として含有し、光照射とアルカリ現像によりパターン形成可能で、該光照射した部分を100℃以上の加熱処理を行うことでアルカリ溶解性にすることを特徴とした感光性樹脂組成物(Q);およびこの感光性樹脂組成物(Q)を用いたメッキレジスト(R)である。
【0012】
【化1】

【0013】
[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基;Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0〜5の整数である。]
【発明の効果】
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)は、紫外線照射することによるエン−チオール反応で光硬化可能で、かつチオール基を含有するため、平滑な無電解メッキ面との密着性も良好である。
さらに親水性ポリマー(C)を含有するために、アルカリ現像によるパターン形成が可能である。
また光硬化部は、本発明では100℃以上の加熱を行うことで、酸発生剤より発生した酸により、上記の化学式(2)で表される有機基(a)中に含まれる下記一般式(2)で表される特性基(a1)が分解しカルボン酸を発生させる。また二重結合の連鎖重合でなくエン−チオール反応による付加反応であるために分解反応が不完全でも架橋構造が切断することができアルカリ溶解可能になる。このためメッキレジストとして使用した際に、平滑な無電解メッキ面との密着性がよく、かつ微細配線部分の光硬化した樹脂の除去が容易で、再付着しないことから、微細配線かつ平滑配線を形成可能なメッキレジストが提供される。
【0015】
【化2】

【0016】
[式(2)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。]
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、特定の化学構造を有するラジカル重合性化合物(A)、チオール基を1分子中に2個以上含有する多官能チオール化合物(B)、親水性ポリマー(C)、光ラジカル重合開始剤(D)及び酸発生剤(E)を必須成分として含有することを特徴とした感光性樹脂組成物(Q)である。
そして、本発明のラジカル重合性化合物(A)は、下記一般式(1)で表される有機基(a)を1分子中に2個以上含有している必要がある。
有機基(a)中には、さらにラジカル重合性の二重結合と、下記一般式(2)で表される熱分解性の特性基(a1)とを含有する。なお、特性基(a1)は熱と酸発生剤により、カルボン酸基、水酸基、及びアルデヒド基を有する化合物に分解されると推測される。
【0018】
【化3】

【0019】
[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基;Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0〜5の整数である。]
【0020】
【化4】

【0021】
[式(2)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。]
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)は光照射後にアルカリ現像することにより、光未照射部がアルカリに溶解することでパターン形成し、さらに光照射により架橋した光硬化部は、100℃以上の加熱処理を行うことで架橋が分解し、アルカリ溶解性になることを特徴とする。
【0023】
本発明のラジカル重合性化合物(A)は、上記一般式(1)で表される有機基(a)を通常1分子中に2〜10個含有し、好ましくは8個以下、さらに好ましくは6個以下含有する。有機基(a)が1分子中に2個以上であれば、光照射により十分な架橋が形成されパターンの強度が得られ、10個以下であれば熱処理により十分に分解しアルカリ溶解する。
【0024】
またラジカル重合性化合物(A)は、上記一般式(1)で表される有機基(a)以外のラジカル重合性の二重結合を含んでも差しつかえないが、加熱処理による熱分解の観点で含まないことが好ましい。
【0025】
有機基(a)以外のラジカル重合性の二重結合を含まない場合は、すべてのラジカル反応部分の架橋点に熱分解性の上記一般式(2)で表される特性基(a1)が含まれるため、加熱処理による熱分解で架橋構造を容易に分解することができる。
【0026】
ラジカル重合性の二重結合としては、例えば、ビニル基(CH2=CH−)、ビニリデン基(CH2=CH<)、及びビニレン基(−CH=CH−)等が挙げられる。
【0027】
本発明のラジカル重合性化合物(A)の有機基(a)のRは、水素原子またはメチル基であり、光重合反応性の観点から水素原子が好ましい。
有機基(a)のRは、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であり、特性基(a1)の加熱分解性と合成の容易さの観点から、メチル基またはエチル基が好ましい。
有機基(a)の一般式(1)中のn数は、0〜5であり、光重合反応性の観点から0または1が好ましい。
【0028】
本発明のラジカル重合性化合物(A)の合成方法としては特に限定されないが、例えば、下記一般式(3)で表されるカルボン酸(I)と、1分子中に2つ以上のビニルエーテル基を含有するモノマー(II)、1分子中に2つ以上の1−プロペニルエーテル基を含有するモノマー(III)、1分子中に2つ以上の1−ブチレニルエーテル基を含有するモノマーまたは1分子中に2つ以上の1−ペンテニルエーテル基を含有するモノマーのいずれかとの付加反応により合成できる。
カルボン酸(I)と付加反応させる相手のモノマーは、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
【化5】

【0030】
[式(3)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、nは0〜5の整数である。]
【0031】
これらのうち製造のし易さ、及び入手のし易さの観点から、上記の組合せのうちのカルボン酸(I)と、モノマー(II)またはモノマー(III)との付加反応による合成が好ましい。
【0032】
通常0℃〜150℃の条件で、カルボン酸(I)中のカルボキシル基と、ビニルエーテル基、1−プロペニルエーテル基、1−ブチレニルエーテル基、1−ペンテニルエーテル基などのC=C二重結合を等モルで付加反応させることにより合成する。
【0033】
カルボン酸(I)としては、アクリル酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−セプテン酸、メタクリル酸、3−メチル−3−ブテン酸、4−メチル−4−ペンテン酸、5−メチル−5−ヘキセン酸、及び6−メチル−6−セプテン酸が使用できる。
これらのうち、光重合反応性と製造のし易さの観点から、アクリル酸、メタクリル酸、3−ブテン酸、及び3−メチル−3−ブテン酸が好ましく、さらに好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、3−ブテン酸である。
【0034】
ビニルエーテル基を含有する化合物(II)としては公知のモノが使用でき、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、ビスフェノールAとクロロメチルビニルエーテルの反応物、ビスフェノールAとクロロエチルビニルエーテルの反応物、ビスフェノールAとアセチレンの反応物、ハイドロキノンとクロロメチルビニルエーテルの反応物、ハイドロキノンとクロロエチルビニルエーテルの反応物、ハイドロキノンとアセチレンの反応物、カテコールとクロロメチルビニルエーテルの反応物、カテコールとクロロエチルビニルエーテルとの反応物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
1−プロペニルエーテル基を含有する化合物(III)として公知のモノが使用でき、例えばエチレングリコールジプロペニルエーテル、トリエチレングリコールジプロペニルエーテル、1,3−ブタンジオールジプロペニルエーテル、テトラメチレングリコールジプロペニルエーテル、ネオペンチルグリコールジプロペニルエーテル、トリメチロールプロパントリプロペニルエーテル、トリメチロールエタントリプロペニルエーテル、ヘキサンジオールジプロペニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジプロペニルエーテル、テトラエチレングリコールジプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールジプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールトリプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラプロペニルエーテル、ソルビトールテトラプロペニルエーテル、ソルビールペンタプロペニルエーテル、エチレングリコールジエチレンプロペニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンプロペニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンプロペニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンプロペニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンプロペニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンプロペニルエーテル、ビスフェノールAとアリルクロライドを付加・転位させた反応物、ビスフェノールAとアリルクロライドを付加・転位させた反応物、ハイドロキノンとクロロメチルプロペニルエーテルの反応物、ハイドロキノンとクロロエチルプロペニルエーテルの反応物、カテコールとクロロメチルプロペニルエーテルの反応物、カテコールとクロロエチルプロペニルエーテルとの反応物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明のラジカル重合性化合物(A)の分子量は、現像性の観点から、通常230〜10,000以下、好ましくは250〜8,000、さらに好ましくは300〜6,000である。分子量が230を超えると樹脂硬度が充分に発揮でき、また分子量が10,000以下であれば現像性が良好に発揮できる。
【0037】
感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づくラジカル重合性化合物(A)の含有量は、10〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは15〜85重量%、特に好ましくは20〜80重量%である。10重量%以上であれば光硬化反応性がさらに良好に発揮でき、90重量%以下であれば解像度がさらに良好に発揮できる。
【0038】
感光性樹脂組成物(Q)には、平滑な無電解銅メッキとの密着性を向上させ、かつ加熱処理時に架橋を容易に分解しアルカリ溶解性にするために、チオール基を1分子中に2個以上含有する多官能チオール化合物(B)を必須成分として含有する。
多官能チオール化合物(B)を含むことにより、有機基(a)中のラジカル重合性の二重結合の連鎖重合ではなくチオール基との付加反応になるため、加熱処理による特性基(a1)の熱分解反応率が十分でなくても容易に架橋構造を分解することができる。
【0039】
多官能チオール化合物(B)としては、例えば2官能チオール(B1)、3官能チオール(B2)、4官能以上のチオール(B3)等が挙げられる。多官能チオール化合物(B)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
2官能チオール(B1)としては、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジチオエリスリトール、2,3−ジメルカプトサクシン酸、1,2−ベンゼンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、3,4−ジメルカプトトルエン、4−クロロ−1,3−ベンゼンジチオール、2,4,6−トリメチル−1,3−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオジフェノール、2−ヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタンチオール、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−メルカプトプロポキシフェニルプロパン)等の2個のチオール基を有する化合物が挙げられる。
【0041】
3官能チオール(B2)としては、例えば、1,2,6−ヘキサントリオールトリチオグリコレート、1,3,5−トリチオシアヌル酸、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート等の3個のチオール基を有する化合物が挙げられる。
【0042】
4官能以上のチオール(B3)としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等の4個以上のチオール基を有する化合物が挙げられる。
【0043】
これらのうち、光硬化性、及び熱分解性の観点から、3官能チオール(B2)及び4官能以上のチオール(B3)が好ましい。
【0044】
本発明の多官能チオール化合物(B)は、チオール基を通常1分子中に2〜10個含有する。好ましくは9個以下、さらに好ましくは8個以下、特に好ましくは6個以下含有する。2個以上であると、光照射により有機基(a)の二重結合とのエン−チオール反応により十分な架橋構造を形成しパターンの強度が得られ、10個以下であると加熱処理による架橋構造の分解が容易になりアルカリ溶解性が得られる。
【0045】
感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づく多官能チオール化合物(B)の含有量は、通常0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは2〜40重量%である。多官能チオール化合物(B)が0.1重量%以上であれば無電解銅メッキとの密着性に優れ、60重量%以下であれば硬化物のパターン強度が優れる。
【0046】
本発明のラジカル重合性化合物(A)中の有機基(a)のモル数(Am)と多官能チオール化合物(B)中のチオール基のモル数(Bm)のモル比率(Am/Bm)は、通常0.5〜1.5で、好ましくは0.6〜1.4、さらに好ましくは0.7〜1.3である。0.5〜1.5の範囲であれば、十分な架橋構造を形成しパターンの強度が得られ、かつ加熱処理による架橋構造の分解が容易になりアルカリ溶解性が得られる。
【0047】
本発明における親水性ポリマー(C)における親水性の指標はHLBにより規定され、一般にこの数値が大きいほど親水性が高いことを示す。
親水性ポリマー(C)のHLB値は、親水性ポリマー(C)の樹脂骨格(例えば、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂など)によって好ましい範囲が異なるが、好ましくは4〜19、さらに好ましくは5〜18、特に好ましくは6〜17である。4以上であればフォトスペーサの現像を行う際に、現像性がさらに良好であり、19以下であれば硬化物の耐水性がさらに良好である。
【0048】
なお、本発明におけるHLBは、小田法によるHLB値であり、親水性−疎水性バランス値のことであり、有機化合物の有機性の値と無機性の値との比率から計算することができる。
HLB≒10×無機性/有機性
【0049】
ここで、無機性の値と有機性の値は、文献「界面活性剤の合成とその応用」(槇書店発行、小田、寺村著)の501頁;および文献「新・界面活性剤入門」(藤本武彦著、三洋化成工業株式会社発行)の198頁に詳しく記載されている。
【0050】
親水性ポリマー(C)は、現像性の観点からカルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基の含有量は酸価で示される。
親水性ポリマー(C)の酸価は、好ましくは10〜500mgKOH/gである。10mgKOH/g以上であると、現像性がさらに良好に発揮されやすく、500mgKOH/g以下であれば硬化物の耐水性がさらに良好に発揮できる。
【0051】
本発明における親水性ポリマー(C)の酸価は、アルカリ性滴定溶液を用いた指示薬滴定法により測定できる。
具体的な方法は以下の通りである。
(i)試料約1gを精秤して三角フラスコに入れ、続いて中性メタノール・アセトン溶液[アセトンとメタノールを1:1(容量比)で混合したもの]を加え溶解する。
(ii)フェノールフタレイン指示薬数滴を加え、0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液で滴定する。指示薬の微紅色が30秒続いたときを中和の終点とする。
(iii)次式を用いて決定する。
酸価(KOHmg/g)=(A×f×5.61)/S
ただし、A:0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液のmL数
f:0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液の力価
S:試料採取量(g)
【0052】
親水性ポリマー(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)の測定法による数平均分子量(以下、Mnと記載)は、硬化物となったときの硬度と現像性の観点から、通常2,000を超え100,000以下、好ましくは2,500〜80,000、さらに好ましくは3,000〜50,000である。Mnが2,000を超えると樹脂硬度が充分に発揮でき、また、Mnが100,000以下であれば現像性が良好に発揮できる。
【0053】
親水性ポリマー(C)としては、ビニル系ポリマー(C1)、エポキシ系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートおよびポリウレタンなどが挙げられる。親水性ポリマー(C)は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、得られる硬化物の硬度の観点と、製造のし易さの観点から、好ましいのはビニル系ポリマー(C1)である。
【0054】
ビニル系ポリマー(C1)の好ましい製造方法は、親水基を有するビニルモノマー(Ca)(以下、単に(Ca)と表記する場合がある)と、必要により疎水基含有ビニルモノマー(Cb)(以下、単に(Cb)と表記する場合がある)とをビニル重合する方法である。
【0055】
親水基を有するビニルモノマー(Ca)としては、以下の(Ca1)〜(Ca3)のビニルモノマーが挙げられる。
(Ca1)カルボキシル基含有ビニルモノマー:
不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸および桂皮酸など]、不飽和多価(2〜4価)カルボン酸[(無水)マレイン酸、イタコン酸、フマル酸およびシトラコン酸など]、不飽和多価カルボン酸アルキル(炭素数1〜10のアルキル基)エステル[マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステルおよびシトラコン酸モノアルキルエステルなど]、並びにこれらの塩[アルカリ金属塩(ナトリウム塩およびカリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩およびマグネシウム塩等)、アミン塩およびアンモニウム塩等]が挙げられる。
(Ca1)のうち好ましいのは親水性の観点から不飽和モノカルボン酸、さらに好ましいのは(メタ)アクリル酸である。
【0056】
(Ca2)水酸基含有ビニルモノマー:
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]、アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミドなど]、ヒドロキシスチレンおよび2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテルなどが挙げられる。
(Ca2)のうち好ましいのはアルカリ現像性の観点からヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0057】
(Ca3)スルホン酸基含有ビニルモノマー:
例えば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびこれらの塩が挙げられる。塩としてはアルカリ金属(ナトリウムおよびカリウム等)塩、アルカリ土類金属(カルシウムおよびマグネシウム等)塩、第1〜3級アミン塩、アンモニウム塩および第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0058】
これらの(Ca)のうち好ましいのは、充分な現像性を付与するという観点から(Ca1)および(Ca2)であり、特に(Ca1)である。
【0059】
疎水基含有ビニルモノマー(Cb)としては、以下の非イオン性のモノマー(Cb1)〜(Cb3)が挙げられる。
【0060】
(Cb1)(メタ)アクリル酸エステル;
アルキル基の炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート[例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど];脂環基含有(メタ)アクリレート[ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シジクロペンテニル(メタ)アクリレートおよびイソボルニル(メタ)アクリレートなど];
【0061】
(Cb2)芳香族炭化水素モノマー;
スチレン骨格を有する炭化水素モノマー[例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレンおよびベンジルスチレン]およびビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0062】
(Cb3)カルボン酸ビニルエステル;
炭素数4〜50のもの、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニルなどが挙げられる。
【0063】
これらの疎水基含有ビニルモノマー(Cb)のうち好ましいのは、重合性の観点から(Cb1)である。
【0064】
親水性ポリマー(C1)における、(Ca)/(Cb)の仕込みモノマーモル比は、通常10〜100/0〜90、光硬化反応性と現像性の観点から、好ましくは10〜80/20〜90、さらに好ましくは25〜85/15〜75である。
【0065】
親水性ポリマー(C)は、さらに光硬化反応性を向上させる目的で有機基(a)を側鎖に含有させてもよい。親水性ポリマー(C)中の有機基(a)は、好ましくは1分子中に1〜10個含有し、さらに好ましくは2〜5個含有する。
有機基(a)が1分子中に1個以上であれば、光照射により十分な架橋が形成されパターンの強度が得られ、10個以下であれば熱処理により十分に分解しアルカリ溶解する。
【0066】
感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づく親水性ポリマー(C)の含有量は、10〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは15〜85重量%、特に好ましくは20〜80重量%である。10重量%以上であればアルカリ現像性がさらに良好に発揮でき、90重量%以下であれば解像度がさらに良好に発揮できる。
【0067】
感光性樹脂組成物(Q)は、有機基(a)中の二重結合と、多官能チオール化合物(B)中のチオール基をエン−チオール反応させるため、光ラジカル重合開始剤(D)を必須成分として含有する。
【0068】
光ラジカル重合開始剤(D)としては例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、イソプロピルチオキサントン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシ−ベンゾフェノン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、tert−ブチルアントラキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−クロロチオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、ミヒラーズケトン、ベンジル−2,4,6−(トリハロメチル)トリアジン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9ーアクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス(9−アクリジニル)プロパン、ジメチルベンジルケタール、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、トリブロモメチルフェニルスルホン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤(D)は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
光ラジカル重合開始剤(D)は、市販のものが容易に入手することができ、例えば2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノンとしては、イルガキュア907、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンとしては、イルガキュア369(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0070】
感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づく光ラジカル重合開始剤(D)の含有量は、0.001〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜7重量%、特に好ましくは0.05〜5重量%である。0.001重量%以上であれば光硬化反応性がさらに良好に発揮でき、10重量%以下であれば解像度がさらに良好に発揮できる。
【0071】
感光性樹脂組成物(Q)は、特性基(a1)を加熱処理により分解するため、酸発生剤(E)を必須成分として含有する。
【0072】
酸発生剤(E)としては、非水溶性光酸発生剤(E1)、水溶性光酸発生剤(E2)および熱酸発生剤(E3)が挙げられる。
非水溶性光酸発生剤(E1)としては、下記のスルホン化合物(E11)、スルホン酸エステル化合物(E12)、スルホンイミド化合物(E13)、ジスルホニルジアゾメタン(E14)などが挙げられる。
【0073】
スルホン化合物(E11)の例としては、フェナシルフェニルスルホン、4−トリスフェナシルスルホン−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンおよびこれらのα−ジアゾ化合物等が挙げられる。
スルホン酸エステル化合物(E12)の例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、ピロガロールメタンスルホン酸トリエステル、α−メチロールベンゾイントシレートおよびα−メチロールベンゾインドデシルスルホネート等が挙げられる。
【0074】
スルホンイミド化合物(E13)の例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロオクタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミドおよびN−(ベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド等が挙げられる。
【0075】
ジスルホニルジアゾメタン化合物(E14)の例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルエチルスルホニル)ジアゾメタンおよびビス(1、4−ジオキサスピロ[4,5]デカン−7−スルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0076】
水溶性光酸発生剤(E2)の例としては、スルホニウム塩〔ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、アリルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート塩等〕、ヨードニウム塩(ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等)、ホスホニウム塩(エチルトリフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート等)、ジアゾニウム塩(フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等)、アンモニウム塩(1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート等)、およびフェロセン〔(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート等〕等が挙げられる。
【0077】
熱酸発生剤(E3)の例としては、ジアゾニウム塩(S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に明記)、アンモニウム塩(米国特許第4 069055号、同4069056号、同再発行27992号の各明細書および特開平4 −365049号公報に明記)、ホスホニウム塩(D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad,Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4069055号、同4069056号の各明細書に明記)、ヨードニウム塩(J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.& Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許104143号、米国特許第339049号、同410201号の各明細書、特開平2−150848号、同2−296514号の各公報に明記)、スルホニウム塩(J.V.Crivello et al, Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al, J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al, PolymerBull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al, Macromorecules,14(5),1141 (1981)、J.V.Crivel.lo et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許370693号、同3902114号、同233567号、同297443号、同297442号、米国特許第4933377号、同161811号、同410201号、同339049号、同4760013号、同4734444号、同2833827号、独国特許第2904626号、同3604580号、同3604581号の各明細書に明記、セレノニウム塩(J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に明記)、スルホニウム塩(ベンジルメチルP−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート)、およびアルソニウム塩(C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に明記)が挙げられる。
オニウム塩の対アニオンの例としては、BF、CFSO、CSO、C17SOおよびCHSOなどが挙げられる。
【0078】
これらの酸発生剤(E)のうち、感光性樹脂組成物(Q)との相溶性の観点から、好ましいのは非水溶性光酸発生剤(E1)、及び熱酸発生剤(E3)であり、さらに好ましくは熱酸発生剤(E3)である。
【0079】
感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づく酸発生剤(E)の含有量は、0.001〜15重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは0.05〜7重量%である。
0.001重量%以上であれば有機基(a)の加熱時の分解反応性がさらに良好に発揮でき、15重量%以下であれば硬化物の物性がさらに良好に発揮できる。
【0080】
感光性樹脂組成物(Q)は、必要によりさらにその他の成分(F)を含有していてもよい。
その他成分(F)としては、無機微粒子(F1)、増感剤(F2)、重合禁止剤(F3)、並びにその他の添加剤(例えば、無機顔料、シランカップリング剤、染料、蛍光増白剤、黄変防止剤、酸化防止剤、消泡剤など)が挙げられる。
【0081】
無機微粒子(F1)としては、金属酸化物および金属塩が使用できる。
金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素および酸化アルミニウム等が挙げられる。
金属塩としては、例えば、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウム等が挙げられる。
これらのうちで、耐熱性および耐薬品性の観点から、金属酸化物が好ましく、さらに好ましくは、酸化ケイ素および酸化チタン、特に酸化ケイ素が好ましい。
無機微粒子は、体積平均一次粒子径が1〜200nm、透明性の観点から、好ましくは1〜150nm、さらに好ましくは1〜120nm、特に好ましくは5〜20nmのものである。
【0082】
感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づく(F1)の含有量は、通常0〜50重量%、好ましくは1〜45重量%、特に好ましくは2〜40重量%である。50重量%以下であれば現像性がさらに良好に発揮でき、2〜40重量%であれば、特に耐熱特性が優れる。
【0083】
増感剤(F2)としては、ニトロ化合物(例えば、アントラキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン,ベンズアントロン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物、ニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン及び2−ニトロフルオレン等)、芳香族炭化水素(例えば、アントラセン及びクリセン等)、硫黄化合物(例えば、ジフェニルジスルフィド等)及び窒素化合物(例えば、ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−ニトロ−2−アミノトルエン及びテトラシアノエチレン等)等が用いられる。
【0084】
光ラジカル重合開始剤(D)の重量に基づく増感剤(F2)の含有量は、通常0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜80重量%、特に好ましくは1〜70重量%である。
【0085】
重合禁止剤(F3)としては、特に限定はなく、通常の反応に使用するものが用いられる。具体的には、ジフェニルヒドラジル、トリ−p−ニトルフェニルメチル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、p−ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、ニトロベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド及び塩化銅(II)等が挙げられる。
【0086】
感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づく重合禁止剤(F3)の含有量は、0〜1.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%、特に好ましくは0.02〜0.1重量%である。
【0087】
本発明のメッキレジスト(R)の形成方法としては、感光性樹脂組成物(Q)を所定の有機溶剤に溶解、または溶解と分散(無機微粒子(F1)を含んだ場合に限る)した感光性樹脂ワニス(QW)をカーテンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷等公知の方法を用いて基板に塗布後、加熱または熱風吹き付けにより溶剤を乾燥させてメッキレジスト(R)を形成する方法、及び樹脂ワニス(QW)を前記と同様の方法を用いて支持ベースフィルムに塗布、乾燥させて得られる、感光性樹脂層を支持ベースフィルムの上に設けてなるメッキレジストフィルム(RF)を、基板に加熱条件下、加圧ラミネートする工程を行うことによりメッキレジスト(R)を形成する方法などが挙げられる。
好ましいものは、メッキレジストフィルム(RF)を加熱条件下で加圧ラミネートする方法である。このようにするとプリント配線板の生産性が大幅に向上し好適である。
【0088】
感光性樹脂組成物(Q)を溶解させる有機溶剤としては、樹脂組成物を溶解させることができ、樹脂溶液をフィルム製造装置に適用できる物性(粘度等)に調整できるものであれば特に限定されない。
例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、エタノール、シクロヘキサノン、メタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン及びキシレン等の公知の溶媒が使用できる。これらの溶媒のうち、フィルムの乾燥温度等の観点から、沸点が200℃以下のもの(トルエン、エタノール、シクロヘキサノン、メタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン及びキシレン)が好ましく、単独又は2種類以上組み合わせで使用することもできる。
【0089】
有機溶剤を使用する場合、溶剤の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づいて、通常30〜1,000重量%が好ましく、さらに好ましくは40〜900重量%、特に好ましくは50〜800重量%である。
【0090】
感光性樹脂組成物(Q)の樹脂ワニス(QW)は、例えば、プラネタリーミキサーなどの公知の混合装置により、各成分を混合等することにより得ることができる。また樹脂ワニス(QW)は、通常、室温で液状であり、その粘度は、25℃で0.1〜10,000mPa・s、好ましくは1〜8,000mPa・sである。
【0091】
樹脂ワニス(QW)の乾燥条件は使用する溶剤により異なるが好ましくは50〜200℃で2〜30分の範囲で実施され、乾燥後の感光性樹脂組成物(Q)の複素粘度や残留溶剤量(重量%)等で適宜決定する。
【0092】
基板としては、銅張積層板上に層間絶縁樹脂層が形成され、さらに層間絶縁樹脂表面に無電解メッキまたは電解メッキ層が形成された基板、及び層間絶縁樹脂表面に無電解メッキ触媒が付与された基板が好ましい。
銅張積層板としては、ガラスエポキシや金属板、ポリエステル板、ポリイミド板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル板等に銅箔を接着したものが挙げられる。
【0093】
支持ベースフィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。ベースフィルムの厚みは10〜150μmが好ましい。ベースフィルムの横幅は、装置に入るものであれば、特に指定はないが30〜300cmが好ましい。
【0094】
なお、ベースフィルムにはマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。この樹脂組成物はラミネート時に樹脂のしみ出しが生じるので、ロールの両端あるいは片側に樹脂のない支持ベース部分を5mm以上もうけてあれば、ラミネート部の樹脂付着防止、支持ベースフィルムの剥離が容易になる等の利点がある。
【0095】
メッキレジストフィルム(RF)を基板に加熱条件下で加圧ラミネートする際には、支持ベースフィルム側から加圧、加熱しながらラミネートする。ラミネートは減圧した、バッチ式であってもロール式での連続式であってもよく、両面同時にラミネートするのが好ましい。
【0096】
ラミネート条件は、ラミネート温度は通常50〜180℃であって、好ましくは60〜170℃、さらに好ましくは70〜150℃である。50℃未満では内層基板に転写しにくく、180℃より高いとプリント配線板の生産性が低下する問題がある。
ラミネートの圧力は通常0.01〜20MPaであって、好ましくは0.1MPa〜15MPaである。0.01MPa未満では内層基板に転写しにくく、20MPaより高いとメッキレジスト(R)の厚さが調整できない。減圧条件としては、好ましくは2.5kPa以下である。
【0097】
基板にメッキレジスト(R)を形成した後、配線パターン形状の光照射とアルカリ現像する工程(I)を行うことにより配線パターン形状の溝を形成する。ついで無電解メッキまたは電解メッキを行い、溝の部分に配線を形成する。
その後、有機基(a)中の特性基(a1)部分を分解するための100℃以上の加熱工程とアルカリ溶解工程(II)を行うことにより光硬化したメッキレジスト(R)を溶解除去し、必要に応じ無電解メッキまたは電解メッキ層をエッチングすることで配線を形成することができる。
【0098】
工程(I)の光照射する方法としては、配線パターンを有するフォトマスクを介して活性光線により、メッキレジスト(R)の露光を行う方法が挙げられる。光照射に用いる活性光線としては、本発明の感光性樹脂組成物(Q)を硬化させることができれば特に制限はない。
活性光線としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハロゲンランプ、電子線照射装置、X線照射装置、レーザー(アルゴンレーザー、色素レーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミウムレーザー等)等がある。これらのうち、好ましくは高圧水銀灯及び超高圧水銀灯である。
【0099】
工程(I)のアルカリ現像する方法としては、アルカリ現像液を用いて配線パターン形状に溶解除去する方法が挙げられる。アルカリ現像液としては、感光性樹脂組成物(Q)の紫外線照射部が溶解せず、非紫外線照射部が溶解させることができれば特に制限はない。
【0100】
アルカリ現像液としては水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム及びテトラメチルアンモニウム塩水溶液等がある。これらアルカリ現像液は水溶性の有機溶剤を加えても良い。水溶性の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン及びN−メチルピロリドン等がある。
【0101】
現像方法としては、アルカリ現像液を用いたディップ方式、シャワー方式、及びスプレー方式があるが、スプレー方式の方が好ましい。現像液の温度は、好ましくは25〜40℃で使用される。現像時間は、メッキレジスト(R)の厚さに応じて適宜決定される。
【0102】
工程(II)の有機基(a)中の特性基(a1)部分を分解する加熱工程の温度としては、通常100〜200℃であって、好ましくは110〜190℃、さらに好ましくは120〜180℃である。100℃未満では特性基(a1)が十分に分解できずアルカリ溶解性が不足し、200℃より高いとプリント配線板の生産性が低下する問題がある。
加熱時間としては、通常2〜120分であって、好ましくは3〜90分、さらに好ましくは3〜90分である。2分未満では時間と温度の制御が困難で、120分より大きいとプリント配線板の生産性が低下する問題がある。
【0103】
工程(II)のアルカリ溶解する方法としては、アルカリ水溶液を用いて溶解除去する方法が挙げられる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム及びテトラメチルアンモニウム塩水溶液等がある。これらアルカリ水溶液は水溶性の有機溶剤を加えても良い。
水溶性の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン及びN−メチルピロリドン等がある。
溶解方法としては、アルカリ水溶液を用いたディップ方式、シャワー方式、及びスプレー方式があるが、スプレー方式の方が好ましい。水溶液の温度は、好ましくは25〜40℃で使用される。溶解時間は、メッキレジスト(R)の厚さに応じて適宜決定される。
【実施例】
【0104】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0105】
<合成例1>
<ラジカル重合性化合物(A−1)の合成>
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えた三口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(日本カーバイド工業社(株)製、「CHDVE」)196部を仕込み、ついでアクリル酸144部を徐々に加えながら、50℃で12時間反応させ、分子内に本発明で必須の有機基(a)を2個有するラジカル重合性化合物(A−1)を得た。
【0106】
<合成例2>
<ラジカル重合性化合物(A−2)の合成>
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えた三口フラスコに、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル(日本カーバイド工業社(株)製、「PEVE」)240部、及びメチルエチルケトン120部を仕込み、室温で均一溶解した。ついで3−ブテン酸(ビニル酢酸)344部を徐々に加えながら、75℃で18時間反応させた後に、溶剤を減圧除去することで、分子内に有機基(a)を4個有するラジカル重合性化合物(A−2)を得た。
【0107】
<合成例3>
<親水性ポリマー(C−1)の合成>
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えた三口フラスコに、イソボルニルメタクリレート60部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20部、メタクリル酸20部、およびメチルエチルケトン150部を仕込み、80℃まで加熱した。
系内の気相部分を窒素で置換したのち、あらかじめ作成しておいたAIBNの5部をメチルエチルケトン50部に溶解した溶液55部を、80℃のコルベン中に10分間で滴下し、さらに同温度で3時間反応させた。
その後、メチルエチルケトンを減圧除去することで、水酸基とカルボキシル基を有する親水性ポリマー(C−1:Mn:21,000、SP値:12.24、HLB値:12.38、水酸基価:86mgKOH/g、酸価:138mgKOH/g)の親水性ポリマー(C−1)を得た。
【0108】
<比較合成例1>
<ラジカル重合性化合物(A’−1)の合成>
1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル196部の代わりにシクロヘキシルビニルエーテル(日本カーバイド工業社製、「CHVE」)126部を使用した以外は合成例1と同様にして、分子内に有機基(a)を1個だけ有するラジカル重合性化合物(A’−1)を得た。
【0109】
<実施例1>
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えた三口フラスコに、合成例3で合成の親水性ポリマー(C−1)40部、及びメチルエチルケトン100部を均一溶解した。ついで合成例1で合成のラジカル重合性化合物(A−1)30部、多官能チオール化合物(B−1)としてペンタエリスリトールテトラキス−(3−メルカプトプロピオネート)(堺化学工業(株)社製、「PEMP」)20部、光重合開始剤(D−1)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、イルガキュア907)5部、熱酸発生剤(E−1)としてスルホニウム塩(ベンジルメチルP−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート)(三新化学工業(株)社製、「サンエイドSI−100L」)5部を加え、25℃で攪拌溶解を行い、感光性樹脂ワニスを得た。
【0110】
この感光性樹脂ワニスを、表面粗度0.15μmにマイクロエッチング処理を行った銅張積層板(三菱ガス化学(株)社製、「CCL−HL830」)に塗工速度0.3m/分で乾燥後の感光性樹脂層の厚みが20μmとなるようにナイフコーターにて全面塗布した後、70℃で3分間乾燥することによりメッキレジストを形成した。
【0111】
形成したメッキレジストに、投影型露光装置(株式会社オーク製作所社製、HMW−661F−01)で配線パターンを露光し、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を90秒間スプレーで吹き付けて現像し、水洗、エアーブロー後、循風乾燥機内で、60℃で20分間乾燥させた。
【0112】
ついで、電解銅メッキを行い13μmの導体層を形成した後に、循風乾燥機内で、140℃で30分間加熱を行った後に、1%水酸化ナトリウム水溶液中に30℃で3分間浸漬した。ついで水洗、エアーブロー後、循風乾燥機内で、100℃で20分間乾燥させることでプリント配線板(Z−1)を得た。
【0113】
<実施例2>
ラジカル重合性化合物(A−1)の代わりに合成例2で合成のラジカル重合性化合物(A−2)25部、および多官能チオール化合物(B−1)の代わりにトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(堺化学工業(株)社製、「TMMP」)(B−2)25部を使用した以外は、実施例1と同様にしてプリント配線板(Z−2)を得た。
【0114】
<比較例1>
多官能チオール(B−1)を使用せず、ラジカル重合性化合物(A−1)30部を50部に変更した以外は、実施例1と同様にしてプリント配線板(Z’−1)を得た。
【0115】
<比較例2>
多官能チオール(B−2)を使用せず、ラジカル重合性化合物(A−2)25部を50部に変更した以外は、実施例2と同様にしてプリント配線板(Z’−2)を得た。
【0116】
<比較例3>
熱酸発生剤(E−1)を使用せず、親水性ポリマー(C−1)40部を45部に変更した以外は、実施例2と同様にしてプリント配線板(Z’−3)を得た。
【0117】
<比較例4>
親水性ポリマーを使用せず、ラジカル重合性化合物(A−1)30部を45部に、多官能チオール化合物(B−1)20部を40部に、酸発生剤(E−1)5部を10部に変更した以外は、実施例1と同様にしてプリント配線板(Z’−4)を得た。
【0118】
<比較例5>
ラジカル重合性化合物(A−1)の代わりに、比較合成例1で合成したラジカル重合性化合物(A’−1)を使用した以外は、実施例1と同様にしてプリント配線板(Z’−5)を得た。
【0119】
<比較例6>
ラジカル重合性化合物(A−2)の代わりに有機基(a)を含まないラジカル重合性化合物(A’−2)(三洋化成工業(株)製「ネオマーDA−600」;ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)を25部使用した以外は、実施例1と同様にしてプリント配線板(Z’−6)を得た。
【0120】
<性能評価>
メッキレジストの配線パターン形成性として、得られたプリント配線板(Z−1)、(Z−2)、および(Z’―1)〜(Z’―6)から、レジストパターン形成性、加熱処理後のアルカリ下でのレジストの挙動、および配線パターン形成性について以下の方法で評価した。
【0121】
<レジストパターン形成性>
形成したメッキレジストの、露光、1%炭酸ナトリウム水溶液現像、乾燥後に、形状測定顕微鏡(超深度形状測定顕微鏡VK−8550、株式会社キーエンス製)を用いて、25μmおよび15μm幅のレジストパターンの剥れを顕微鏡の倍率200倍の条件より観察し、以下の基準により評価した。
○:配線の剥れが全くない
×:一部、配線の剥がれがある
【0122】
<加熱処理後のアルカリ下でのレジストの挙動>
光照射後のレジストを加熱処理した後に、1%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した時の挙動を目視で観察し、以下の基準により評価した。
○:レジストが溶解
△:レジストが膨潤する
×:レジストが変化しない
【0123】
<配線パターン形成性>
配線形成後のプリント配線板を、形状測定顕微鏡を用いて25μm及び15μm幅の配線間を顕微鏡の倍率200倍の条件より観察し、以下の基準により評価した。
○:パターン欠陥(配線の断線、配線間のショート)がない
×:一部、パターン欠陥(配線の断線、配線間のショート)がある
【0124】
実施例及び比較例で得た感光性樹脂、及びプリント配線板について、特徴及び評価結果を表1に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
表1から明らかなように、本発明の実施例1と2の感光性樹脂組成物をメッキレジストに用いると、低粗度の銅面においても15μm以下のレジストパターン形成性が良好で、かつメッキ後にレジストを溶解除去できるため、15μm以下の配線においても欠陥のない配線形成が可能であることが分かる。
一方、多官能チオール(B)を含まない比較例1と比較例2は、低粗度の銅面への密着性が低いためレジストパターン形成性が悪く、また膨潤剥離するため15μm以下の配線間のレジストの除去性が悪く、配線パターン形成性に問題があることが分かる。
また、酸発生剤(E)を含まない比較例3は、加熱処理による架橋の分解が不十分で膨潤剥離するため、配線間のレジストの除去性が悪いため配線パターン形成性に問題があることが分かる。
親水性ポリマー(C)を含まない比較例4は、光未照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が悪いためレジストパターン形成性に問題があることが分かる。
また、有機基(a)が一つしかないラジカル重合性化合物(A’−1)を用いた比較例5は、レジストの光硬化性が悪くレジストパターン形成性に問題があり、有機基(a)がないラジカル重合性化合物(A’−2)を用いた比較例6は、加熱処理により架橋が分解しないため配線パターン形成性に問題があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の感光性樹脂組成物をメッキレジストとして用いると、銅面に対し密着性が優れ、かつ光硬化部も加熱処理することで溶解除去できるため微細配線間のメッキレジストの除去性に優れ、また再付着もないことから、導体回路の高密度化と高速化に適したプリント配線板形成用メッキレジストとして好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される有機基(a)を1分子中に2個以上含有するラジカル重合性化合物(A)、多官能チオール化合物(B)、親水性ポリマー(C)、光ラジカル重合開始剤(D)及び酸発生剤(E)を必須成分として含有し、光照射とアルカリ現像によりパターン形成可能なことを特徴とした感光性樹脂組成物(Q)。
【化1】

[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基;Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0〜5の整数である。]
【請求項2】
光照射した部分を100℃以上の加熱処理を行いアルカリ溶解性にする請求項1記載の感光性樹脂組成物(Q)。
【請求項3】
該ラジカル重合性化合物(A)の有機基(a)のモル数(Am)と多官能チオール化合物(B)のチオール基のモル数(Bm)の比Am/Bmが、0.5〜1.5である請求項1または2記載の感光性樹脂組成物(Q)。
【請求項4】
該多官能チオール化合物(B)が、1分子中にチオール基を2〜6個含有する請求項1〜3いずれか記載の感光性樹脂組成物(Q)。
【請求項5】
式(1)中のnが0または1である請求項1〜4いずれか記載の感光性樹脂組成物(Q)。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の感光性樹脂組成物(Q)を用いたメッキレジスト(R)。

【公開番号】特開2010−266768(P2010−266768A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119371(P2009−119371)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】