説明

感光液の塗布方法

【課題】ウエーハ基板全面に亘る感光液の均一塗布方法を提供する。
【解決手段】感光液Lを塗布有効領域Tにおいて噴霧しつつ、回転する基板1の回転中心O上を通る直線移動軌跡X1に沿って移動するノズル7を用いて、基板上の隣接する塗布有効領域Tの外縁Eが互いに接するように感光液Lを噴霧塗布する方法であって、基板1を二分割し、一方の半円を塗布するとき、直線移動軌跡上における基板1の回転中心Oから半径w/2だけ離間した点Qを中心とした領域Tの中心点Pの塗布軌跡Kである円弧上を直線移動軌跡に投影した速度でノズル7を半円R1部分の塗布時間の間だけ直線移動軌跡上を加減速移動させ、且つ、このノズル7の加減速に合わせてノズル7に対する基板1の回転速度が一定となるようにし、他の半円を塗布するとき、基板1の回転速度を等速とすると共にノズル7の中心点Pが半円部分から他の部分に切り替わる時点まで停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程の感光液塗布工程において使用される感光液の塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロエレクトロメカニカルシステムが急速に伸展しており、更なる微細化や複雑化に対応したシリコン基板エッチング加工における感光液が開発され盛んに使用されている。このような用途に使用される感光液は非常に高価であり、微細凹凸が無数にあるウエーハ基板に凹凸に関係なく、出来る限り全体に均一にしかも無駄なくウエーハ基板に塗布することが要求されるようになってきている。
【0003】
その方法として、感光液塗布後、感光液を素早く乾燥させることにより、凹凸の山の部分の感光液が谷側に流れ込む前に固化し、以って微細凹凸のあるウエーハ基板の表面に凹凸に関係なく、出来る限り全体に均一にしかも無駄なく塗布することが出来る感光液の塗布方法が知られている。係る技術のうち、とりわけ特許文献1には、ウエーハ基板に形成する感光液の膜厚をより一層均一にすべく、感光液を塗布するスプレーノズルをウエーハ基板の中心を通る軌跡に沿って移動させる際に、当該スプレーノズルの移動速度をウエーハ基板中心近傍位置でウエーハ基板周縁部よりも高速となるように制御すると共に、スプレーノズルの移動速度に同調するようにウエーハ基板が載置されたステージの回転速度を制御する方法が開示されている。
【0004】
しかしながらこの方法では、ウエーハ基板の表面に真に均一な厚みの感光液膜を形成するためには、スプレーノズルがウエーハ基板の中心を通る際にその移動速度とステージの回転速度とを無限大にしなければならず、理論上、ウエーハ基板の表面に均一な膜厚の感光液を塗布するのが困難であるという問題があった。また、感光液塗布において、ウエーハ基板に塗布する直前に感光液を噴霧させることが高価な感光液の節約につながるが従来の塗布装置にはそのような制御がなされたものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−19560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、使用量が極く僅かで溶媒が蒸発しやすい感光液噴霧塗布において、ウエーハ基板に対して螺旋を描きながら相対移動する超音波スプレーノズルの周回のずれた螺旋軌跡における相隣り合う塗布有効領域の外縁が互いに接するようにウエーハ基板上に霧状の感光液を円形に噴射しつつ塗布するに当たり、超音波スプレーノズルの回転せるウエーハ基板に対する相対的移動速度を一定にする事によりウエーハ基板全面に亘って感光液の均一塗布が可能となるような感光液の塗布方法を提供することをその主たる課題とするものであり、ウエーハ基板に塗布液が噴霧される塗布有効領域が交差する直前に感光液噴霧を開始して感光液の節約を可能にする感光液の塗布方法を提供することを従たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は概説すると、ウエーハ基板1の外縁eからウエーハ基板1の回転中心Oに向かって加減速又は停止しつつ直線移動軌跡X1上を直線的に間欠移動している超音波スプレーノズル7と、これに合わせて回転しているウエーハ基板1との関係(図3、4に示すように、ウエーハ基板1側からスプレーノズル7を見るとウエーハ基板1上に螺旋状の塗布軌跡Kを描く。)において、図8(スプレーノズル7とウエーハ基板1との相対移動関係を示す斜視図)に示すように、ウエーハ基板1上の周回のずれた螺旋状の塗布軌跡K上で隣接する塗布有効領域Tの外縁Eが互いに接するように感光液Lを全面にわたって均一に噴霧状で塗布する方法である。
【0008】
図9、10は後述する半円R1側での図8に示すスプレーノズル7の中心点Pの移動速度変化を立体模式的に表したものである。図及びグラフは、回転中心Oを中心とし、ホームポジションPoを起点(0点)とし、塗布軌跡K上の点と回転中心Oを結ぶ直線rの時計回りで直線移動軌跡X1とのなす角度θと、ウエーハ基板1の回転数rpmやノズル速度mm/秒、ノズル位置mm或いはホームポジションPoからの経過時間(秒)との関係を示したものである。
【0009】
図5、6では横線の目盛である回転角度θをそれぞれのノズル位置との関係でθs(=θo)、θX2a…θQとし、図7ではホームポジションPoからの経過時間をts、tX2a…tQとする。縦軸は図に記載の通りである。また、図8〜10において、塗布軌跡Kを辿る点P(=スプレーノズル7の先端)と後述する直線X2との交点をX2a、X2b…X2n、Qとすると、点Pはウエーハ基板1の回転に伴って相対的にPo→Ps→X2a→X2b…X2(n)→Qと進む事になる。これを直線移動軌跡X1上のスプレーノズル7の中心点Pの動きに換算すると、該中心点Pは直線移動軌跡X1上をPo→Xs→X1a→X1b…X1(n)→Qとそれぞれに対応して進む事になる。このときの速度変化は後述するように図5〜7の通りであり、その概略図解は図9〜10による。
【0010】
塗布有効領域Tは超音波スプレーノズル7から円形に噴霧された感光液Lの塗布量が数字的には約50%前後の塗布範囲Wでその外縁をEとするが、感光液Lの重なり部分L/2(図2参照)が実質上塗りムラとなって現れなければその範囲も当然含まれる事になる。
【0011】
角度θoはホームポジションPoから塗布有効領域Tの外縁Eと前記ウエーハ基板1の外縁eとが最初に交差した時点での直線移動軌跡X1からのなす角度で、この点Sが噴霧塗布開始点又はその直前で噴霧塗布が開始される位置である。角度θoは後述する数式(4)で表される。また、角度(180°−θo)は点Sから後述する点X2aまでの角度で、点Sから後述する第1半円R1の最初の塗布角度を示す。回転中心Oから螺旋状の塗布軌跡K上の点までの距離はrで示され、また、後述する塗布完了点Qを中心とする時計回りで直線移動軌跡X1とのなす角度をαとして塗布完了点Qから螺旋状の塗布軌跡K上の点までの距離をnwとする。
【0012】
前述の直線移動軌跡X1はスプレーノズル7の中心点P(=塗布有効領域Tの中心点P)の移動軌跡で、これをウエーハ基板1上に投影した、ホームポジションPoからウエーハ基板1の回転中心Oを通る直線(線分)と等価であり、図8〜10中、これもX1で示す。
【0013】
前述の直線X2はウエーハ二分割直線X2で、基本的にはホームポジションPoからのスプレーノズル7の移動開始時に直線移動軌跡X1と一致する回転ウエーハ基板1上に描かれた仮想の直線で、ウエーハ基板1と共に一体となって回転してウエーハ基板1の感光液塗布面を仮想二分割する。二分割されたウエーハ基板1の点S側の半円を第1半円R1(図3、4では部分ハッチングで示す。)、残る半円を第2半円R2とする。なお、ノズル7が点Sに至るまでは噴霧塗布がなされていないので、ノズル7の動きとウエーハ基板1の回転はどのようになっていてもかまわないが、実質的に点SからホームポジションPoに遡ったときに前記関係が成り立つような関係にあれば足る。
【0014】
前述の塗布軌跡Kは、直線移動のスプレーノズル7の中心点Pが回転ウエーハ基板1上に描く螺旋状の軌跡で、ホームポジションPoを起点とし、ウエーハ基板1の回転中心Oから直線移動軌跡X1上を塗布有効領域Tの半径W/2だけホームポジションPo側に移動した塗布完了点Qに至る。塗布軌跡Kの描き方は、スプレーノズル7が第1半円R1を塗布する時は、塗布完了点Qを中心として円弧を描き、第2半円R2を塗布する時は、ウエーハ基板1の回転中心Oを中心として円弧を描く。この場合もノズル7が点Sに至るまでは噴霧塗布がなされていないので、どのような軌跡を描いてもかまわないが、実質的に点SからホームポジションPoに遡ったときに前記関係が成り立つような関係にあれば足る。
【0015】
前述のように塗布軌跡K上の点Psは塗布有効領域Tの外縁Eがウエーハ基板1の外縁eに交差した時点のスプレーノズル7の中心点Pの位置で、点Poから点Psまでの時間でスプレーノズル7の中心点Pは点Poから点Xsまで増減速しながら移動する。(前述したように点Poから点Psまでは噴霧塗布をしないので、この範囲は塗布完了点Qを中心とする移動速度変化に限られずどのような速度変化を取ってもよく、実際上は点Psから点X2aまでの範囲が塗布完了点Qを中心とする移動速度変化であれば良い。ただ理解を容易にするためにここでは点Poから点Psまでの範囲についての移動速度変化を塗布完了点Qを中心としたものとする。詳細は後述する。) そして、点Poから塗布軌跡Kとウエーハ二分割直線X2との交差点X2a、X2b…Xnまでの各区間を通過する時間(tX2a)、(tX2c−tX2b)…に等しい時間でスプレーノズル7は点Poから点X2aまで、更には点X2bから点X2cまで…半円R1の各区間を増減速移動し、半円R2に切り替わると停止する。
【0016】
半円R1の最初の塗布(点Ps→点PX2a)では、最初の塗布が終了するとノズル7は半円R2の噴霧塗布が終了するまで点PX2aに対応する移動軌跡X1上の点X1aで停止し(半円R2の噴霧塗布終了時点ではウエーハ基板1の回転に伴いノズル7は点X2bに一致するので、ノズル7の移動軌跡X1上の停止位置は点X2bに対応する点X1bになる。換言すれば、点X1a=点X1bでノズル7は停止)、続いてX1bからX1cまで増減速・停止を繰り返しながら点X1(n)に到達する。この後、半円R2の噴霧塗布終了点Qまでノズル7はその位置で停止する。以上がスプレーノズル7の動きの概略である。
【0017】
一方、ウエーハ基板1側では、ホームポジションPoを出発したスプレーノズル7の中心点Pが第1半円R1を通過し、ウエーハ二分割直線X2との交差点X2aに至るまではノズル7の点Poから点X1aまで加減速進行に追従して回転速度を調整し、両者の相対移動速度が一定となるように制御する。噴霧塗布開始時期は前述のように角度θoによって定まる。
【0018】
続いてノズル7の中心点Pはウエーハ基板1の回転によって第2半円R2に入るが、ノズル7の中心点Pは第2半円R2において塗布軌跡K上をX2aからX2bまで進む。この間前述のようにスプレーノズル7は点X1a→X1bで停止している。塗布はこれを繰り返し、ノズル7の中心点Pが点Qに到達した時点で終了する。従って、螺旋状の相対移動塗布軌跡Kと直線X2の交点X2a、X2b…X2(n)は前述のようにスプレーノズル7の直線移動軌跡X1上の点X1a、X1b…X1(n)にそれぞれ対応する。勿論、ノズル7の加減速(速度調整)と停止回数これに対するウエーハ基板1の回転制御はウエーハ基板1の大きさや塗布有効領域Tの広さに合わせて適宜増減できることは言うまでもない。また、図8はホームポジションPoから塗布終了点Qまでを2周としているが、当然、ウエーハ基板1の直径や塗布有効領域Tの大きさによって適宜の周回数が選定されることになる。
【0019】
図9、10は前述のように上記スプレーノズル7の動きとウエーハ基板1の回転の関係を図解したもので、以下、これついて説明する。図9、10はホームポジションPoから点Qまで図8と同様周回数が2回の場合である。既述のようにスプレーノズル7の中心点Pはウエーハ基板1に対してはホームポジションPoをスタートし、点Qを中心とした円弧を描いて相対移動し、点X2aに至る。その場合、中心点Pの速度変化はホームポジションPoから点X2aに至る直線移動軌跡X1に投影された点の動きとなって現れる。これが速度変化曲線V1でホームポジションPoから増速し、回転中心Oで最大値となり、然る後に減速して、点X2aで0になる(図9)。
【0020】
一方、スプレーノズル7は、実際の動きとして、直線移動軌跡X1上をホームポジションPoからスタートして点X1aに至る。即ち、既に述べたように、点X1aは点X2aに対応する位置であり、この速度変化をホームポジションPoから点X1aまでの速度変化に変換して表現したのが、速度変化曲線v1である。そして、この速度変化曲線V1、v1の太線部分が点Psから点X2a、点Xs(点Psに対応する直線X1上の点)から点X1aまでの速度変化曲線で、図6、7の左端の曲線に相当する(図ではV1は表示せず。)。このような速度変化を以ってスプレーノズル7がホームポジションPoから点X1aまで移動する。そして、この速度変化に合わせてウエーハ基板1が相対速度一定となるように回転制御され、第1半円R1の最初の塗布が行われる。
【0021】
中心点Pが点X2aを超えて第2半円R2に入ると、スプレーノズル7は点X2a(即ち直線X1上では点X1a=X1b)で停止し、停止したスプレーノズル7に対してウエーハ基板1は等速で回転し、スプレ−ノズル7は点X2bに至り、最初の第2半円R2の塗布が行われる。
【0022】
続いて第1半円R1の2番目の塗布が行われることになるが、これを立体的に表現したのが図10である。点X2bから点X2cまでの間は前述と同じく、点Qを中心とした円弧状の塗布軌跡K上を移動する中心点Pの直線移動軌跡X1への投影速度変化を速度変化曲線V2で表し、これを点X1bから点X1cまでの速度変化に変換し、これを速度変化曲線v2として表したものであって、ノズル7は直線X1上を点X1bから点X1cまで当該速度変化で移動する。これを繰り返して最終的に塗布完了点Qに至る。図8〜10は図の煩雑さを避けるため2周としたが、図5〜7は感光液塗布が2周以上の場合を示している。
【0023】
即ち、請求項1は、感光液Lを円形の塗布有効領域Tにおいて噴霧しつつ、回転するウエーハ基板1の回転中心O上を通る直線移動軌跡X1に沿って移動する超音波スプレーノズル7を用いて、ウエーハ基板1上に描かれる超音波スプレーノズル7の周回がずれた塗布軌跡K上の隣接する塗布有効領域Tの外縁Eが互いに接するように感光液Lを噴霧状で塗布する感光液の塗布方法であって、
超音波スプレーノズル7と回転するウエーハ基板1との相対移動関係において、
スプレーノズル7の移動開始時に直線移動軌跡X1と一致する、ウエーハ基板1上の仮想の直線でウエーハ基板1と共に一体となって回転するウエーハ二分割直線X2にてウエーハ基板1を二分割し、
二分割されたウエーハ基板1の一方の半円で、塗布有効領域Tの外縁Eがウエーハ基板1の外縁eと交差する点S側の半円R1部分を塗布するとき、
直線移動軌跡X1上におけるウエーハ基板1の回転中心Oから塗布有効領域Tの半径w/2だけ離間した塗布完了点Qを中心とした塗布有効領域Tの中心点Pの塗布軌跡Kである円弧上の点を直線移動軌跡X1に投影した速度変化で超音波スプレーノズル7を半円R1部分の塗布時間に相当する時間(0→tX2a、tX2b→tX2c…)の間だけ直線移動軌跡X1上を加減速(速度調整)移動させ、且つ、この超音波スプレーノズル7の加減速に合わせてウエーハ基板1の回転速度が超音波スプレーノズル7に対して相対移動速度が一定となるように加減速(速度調整)し、
ウエーハ基板1の他の半円R2部分を塗布するとき、ウエーハ基板1の回転速度を等速とすると共に超音波スプレーノズル7の中心点Pが半円R1部分から半円R2部分に切り替わる時点から半円R1部分に切り替わる時点まで停止させることを特徴とする。
【0024】
請求項2は更に詳しく数式で規定したもので、
回転する円盤状のウエーハ基板1に対し、感光液Lを円形の塗布有効領域Tにて噴霧しつつ、前記ウエーハ基板1表面との高さ方向の距離Hを保って前記ウエーハ基板1の外縁e側からウエーハ基板1の回転中心Oに向かって直線移動軌跡X1を描きつつ直線移動する超音波スプレーノズル7を用いてウエーハ基板1上に描かれる超音波スプレーノズル7の周回がずれた塗布軌跡K上の隣接する塗布有効領域Tの外縁Eが互いに接するように感光液Lを噴霧状で塗布する感光液の塗布方法であって、
スプレーノズル7の移動開始時に直線移動軌跡X1と一致する、ウエーハ基板1上の仮想の直線でウエーハ基板1と共に一体となって回転するウエーハ二分割直線X2にてウエーハ基板1を二分割し、
前記塗布有効領域Tの外縁Eと前記ウエーハ基板1の外縁eとが最初に交差する点S側の半円を第1半円R1とし、残りの半円を第2半円R2としたとき、
(a)前記ウエーハ基板1の回転数は下式(A1)、(A2)の通りであり、
(a-1) ウエーハ基板1の回転時において、塗布有効領域Tの中心点Pが第1半円R1側に位置するときは、


(a-2) 塗布有効領域が第2半円R2側に位置するときは、


[但し、vは感光液Lの塗布速度、wは塗布有効領域Tの直径、nはノズル中心点Pの塗布軌跡K上のある地点における、1/2回転を単位としたウエーハ基板1の残りの回転回数、θは直線移動軌跡X1と、ウエーハ基板1の回転中心Oと塗布有効領域Tの中心点Pとを結ぶ直線OPとの、直線移動軌跡X1を起点とするウエーハ基板1の逆回転方向における成す角度。]
(b)前記超音波スプレーノズル7の移動速度は下式(B1)、(B2)の通りである
(b-1) 塗布有効領域Tの中心点Pが第1半円R1側に位置するときは、


(b-2) 塗布有効領域Tの中心点Pが第2半円R2側に位置するときは、


[但し、vは感光液Lの塗布速度、wは塗布有効領域Tの直径、nはノズル中心点Pの塗布軌跡K上のある地点における、1/2回転を単位としたウエーハ基板1の残りの回転回数、αはウエーハ二分割直線X2と、点Qと塗布有効領域Tの中心点Pを結ぶ直線QPとの、直線移動軌跡X1を起点とするウエーハ基板1の逆回転方向における成す角度。]であることを特徴とする。
【0025】
請求項3は、請求項1又は2において、ホームポジションPoから塗布有効領域Tの外縁Eと前記ウエーハ基板1の外縁eとが最初に交差する時間又は地点をウエーハ基板1の直径と塗布有効領域Tの直径から数式(4)で演算し、該間又は地点に到達する直前又は到達時に感光液噴霧を開始することを特徴とする。
【0026】
請求項4は、請求項1〜3において、スプレーノズル7側をマイナスに、ウエーハ基板1側をプラスに帯電させた状態で噴霧塗布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、ウエーハ基板上に描かれる超音波スプレーノズルの塗布軌跡上の隣接する塗布前後の塗布有効領域の外縁が互いに接するように感光液を噴霧状で塗布しつつ、上記制御方法又は式に基づいて超音波スプレーノズルとウエーハ基板とを相対移動させているので、ウエーハ基板上を相対移動する超音波スプレーノズルの周速(相対移動速度)がウエーハ基板に対して一定となり、ウエーハ基板の全面に対して連続的な一度塗り(これは1度で全表面を均一に塗布出来ることを意味するもので、これをn回繰り返すn度塗りも可能)で感光液の均一塗布が完了する。また、感光液噴霧の開始時間又は位置を制御しているので、感光液の更なる節約も可能となるし、分極状態で噴霧塗布することでマイナスに帯電した感光液がプラスに帯電したウエーハ基板に引き寄せられて周囲に散乱する量が大幅に減少し、感光液の節約や重なり部分の塗布量の均一性向上に寄与する事になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明方法が適用される感光液塗布装置の概略正面図である。
【図2】図1で使用される超音波スプレーノズルの断面図である。
【図3】ウエーハ基板上における塗布有効領域の移動軌跡(感光液塗布開始時)を表した図である。
【図4】ウエーハ基板上における塗布有効領域の移動軌跡(感光液塗布中)を表した図である。
【図5】ウエーハ基板の回転数と超音波スプレーノズルの位置との関係を示すグラフである。
【図6】ウエーハ基板の回転数と超音波スプレーノズルの移動速度との関係(角度単位)を示すグラフである。
【図7】ウエーハ基板の回転数と超音波スプレーノズルの移動速度との関係(時間単位)を示すグラフである。
【図8】ウエーハ基板の回転と超音波スプレーノズルの直線移動との関係を示す斜視図である。
【図9】ウエーハ基板上の最初の移動軌跡における移動速度変化と超音波スプレーノズルの移動速度変化との関係を示す斜視図である。
【図10】ウエーハ基板上の第2塗布以降の移動軌跡における移動速度変化と超音波スプレーノズルの移動速度変化との関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。感光液塗布装置Aに適用される感光液Lはレジストやポリイミドなどが代表的なものであるが、ウエーハ基板1上に均一塗布しなければならないようなものは全て含まれることになる。
【0030】
感光液塗布装置Aのウエーハ搭載部4は回転式のスピンチャック、或いは固定式で超音波スプレーノズル7を装着したアクチュエータ30をX−Y方向に移動させて感光液塗布を行う方法がある。なお、ここではスピンチャックをウエーハ搭載部4の代表例として説明する。スピンチャック4は、載置台8とその下面中心に垂設された回転軸10とで構成されており、回転軸10は装置本体(図示せず)に取り付けられたベアリング11に回転可能に取り付けられている。載置台8は円板状で、回転軸10が設けられ、その上面にヒータ収納凹所が形成された本体部8aと、搭載したウエーハ基板1との接触部位2を構成するヒータ収納凹所を閉塞するウエーハ基板載置蓋8bとで構成されており、ヒータ収納凹所の内部にマイカヒータ3が内蔵され、ウエーハ基板載置蓋8bおよびヒータ収納凹所に接触している。載置台8そのものは熱容量の小さいアルミニウムで形成されている(勿論、これに限られず熱容量の小さい材料であればよい。また、材料は金属に限られず耐薬品性があれば樹脂でもよい。)。
【0031】
また、ウエーハ基板載置蓋8bにはウエーハ基板1を吸着するための吸着孔(図示せず)あるいは吸着孔が形成された吸着溝(図示せず)が形成されており、載置されたウエーハ基板1を吸着固定するようになっている。勿論、吸着以外の方法でウエーハ基板1を固定することも可能である。
【0032】
マイカヒータ3はジグザグの帯状に形成した、例えばステンレス箔製の発熱体を上下からマイカ板にてサンドイッチしたもので、高ワット密度、厚みが1mm程度と非常に薄くしかも熱容量が著しく小さい面状発熱体である。面状発熱体であるため接触する載置台8、特に接触部分であるウエーハ基板載置蓋8bに対する加熱効率が優れている。
【0033】
スピンチャック4の回転軸10は隣接して設けられたスピンモータ20によりタイミングベルト21を介して回転駆動されている。図1中の22、23はタイミングベルト21が取り付けられるプーリである。
【0034】
給電装置6はリモートシステム6a、6bとヒータコントローラ6cとが含まれ、一対で構成されるリモートシステム6a、6bが回転軸10と同軸にて設置されている。リモートシステム6a、6bは回転トランスの一種で、一方(6a)が回転軸10の軸端に一体的に装着されて回転軸10と共に回転する。他方(6b)は非接触で且つ近接して固定されており、給電装置6からの電力を回転軸側のリモートシステム(6a)に非接触で給電するようになっている。
【0035】
また、給電装置6にはヒータコントローラ6cが設置されており、マイカヒータ3の温度調節を行うようになっている。マイカヒータ3の温度検出は載置台8内に内蔵された温度計測部5の一部である温度検出器の白金側抵抗体によって検出され、その検出信号によりヒータコントローラ6cがマイカヒータ3の温度調節を行っている。
【0036】
超音波スプレーノズル7はアクチュエータ30に取り付けられ、下方に設置されているスピンチャック4上を、スピンチャック4の回転中心を通って往復移動し、これを直線移動軌跡X1とする。超音波スプレーノズル7の構造は図2に示す通りで、超音波振動するノズルボディ7a、ノズルボディ7aを収納し、これを支持するハウジング7b、ハウジング7bの下部に接続して設けられた不活性ガス供給部7eとで構成されている。不活性ガス供給部7eには下面に開口する下面開口部74が形成されており、その内周に形成された雌ネジ部にキャリアガス噴出ノズル75が突出・没入方向に進退可能に螺装されている。そしてキャリアガス噴出ノズル75の中心にはキャリアガス噴出孔7dが穿設されており、該キャリアガス噴出孔7dの中心にノズルボディ7aのノズルステム7a1が配設されていてキャリアガス噴出孔7dとノズルステム7a1との間に間隙(この部分をキャリアガス噴出口7d1とする。)が設けられ、これを進退させることによりキャリアガス噴出口7d1の間隙を調整することが出来る。
【0037】
更にキャリアガス噴出ノズル75とは別体にてキャリアガス噴出ノズル75の細く絞り込まれた下部75aを取り囲むようにして下面開口部74にエアカーテンガス噴出ノズル76が突出・没入方向に進退可能に螺装され、キャリアガス噴出ノズル75の外周面との間に間隙(この部分をエアカーテンガス噴出口76aとする。)が設けられ、これを進退させることによりエアカーテンガス噴出口76aの間隙を調整することが出来る。そして、エアカーテンガス噴出ノズル76の下面の内周縁には全体に気流の流れを整える気流ガイド突条部76bが突設されている。
【0038】
不活性ガス供給部7e内の上半部分にはキャリアガス噴出孔7dに連通し、ノズルステム7a1の基部が直接収納されるデフュージョンチャンバ7c1と、これと別個に不活性ガス供給部7e内の下半部分にエアカーテン用チャンバ7c2が設けられ、それぞれに不活性ガス供給インレット7f1、7f2が設けられ、個別に窒素が供給されるようになっている。そして、エアカーテン用チャンバ7c2とエアカーテンガス噴出口73とは連通しており、供給された窒素がエアカーテンガス噴出ノズル76に供給され前記エアカーテンガス噴出口73からキャリアガス噴出ノズル75全周を取り囲むようにエアカーテン形成用窒素が噴出されるようになっている。なお、本実施例ではキャリアガス噴出ノズル75とエアカーテンガス噴出ノズル76とを別体で構成するようにしたが、勿論、一体形成することも可能である。また、使用ガスも窒素としたが、清浄空気或はArのような他の不活性ガスの使用も可能である。
【0039】
前記ノズルボディ7aのセンターには前述のノズルステム7a1の先端に開口する貫通孔7a2が穿設されており、この貫通孔7a2に感光液供給継手7hが接続されている。
【0040】
本実施例ではエアカーテンガス噴出口73が1重で形成されている例を示したが、勿論、これに限られず2重以上としてもよい。また、エアカーテンガス噴出口73の外側にてウエーハ基板1直上で噴出されたエアカーテンガス71の裾の部分を吸引してエアカーテンガス71が周囲に流れないようにしてもよい。なお、噴出される窒素はいずれも層流となるように制御される。
【0041】
また、本実施例ではエアカーテンガス71として供給される窒素やキャリアガス噴出孔7dから噴出する窒素は個別の系統にし、それぞれに流量制御弁を設けるなどしてその流量や噴出度の強さを制御することも出来る。なお、ここでは窒素を使用したが、当然清浄空気或やArなど他の不活性ガスを使用することも出来る。
【0042】
前記感光液供給継手7hには開閉弁35を介して感光液Lが充填された感光液袋37が接続されており、感光液袋37の出口には脈動防止用の液溜め部39が設けられていて、一定の感光液がここから流出するようになっている。液溜め部39の出口にはさらに微小流量圧送ポンプ40が接続され、微小流量圧送ポンプ40と開閉弁35との間に流量制御弁42が設けられている。
【0043】
また、超音波スプレーノズル7のハウジング7bには超音波発生装置9が接続されており、ノズルステム7a1を超音波振動させるようになっている。
【0044】
アクチュエータ30はスピンチャック4の上方にて水平に設置されており、取り付けられた超音波スプレーノズル7を、スピンチャック4上に載置したウエーハ基板1の中心を通って該ウエーハ基板1を横断するように移動させる機能のもので、このような機能を有する装置であればどのようなものでもよく、例えばモータ30aにてボールネジ(図示せず)を回動させ、ボールネジに螺着され、超音波スプレーノズル7が装着されたボールナット(図示せず)を往復させるようにしてもよいし、シリンダ装置のようなものを利用してもよい。
【0045】
また、本装置には分極装置(図示せず)が装着されており、スプレーノズル7側がマイナスに、ウエーハ基板1側がプラスに分極するようになっている。
【0046】
次に、上記感光液塗布装置Aを用いてウエーハ基板1に感光液Lを塗布する本発明の方法について説明する。
【0047】
まず始めに、スピンチャック4上に中心を合わせてウエーハ基板1をセットし、スピンモータ20を回転させる。ウエーハ基板1の回転はノズル7の始動と同時でも良いし、その前後であっても良い。ここではノズル7の始動にはウエーハ基板1は回転しているものとする。これと同時に(或いはこれと前後して)分極装置を作動させ、且つマイカヒータ3に給電してマイカヒータ3を加熱する。マイカヒータ3および載置台8は熱容量が小さいため且つマイカヒータ3の高加熱効率により、載置台8とこれに密着して固定されているウエーハ基板1とが急速に所定温度迄昇温する。これを温度計測部5により検出し、ウエーハ基板1が所定の温度になったことを確認してアクチュエータ30を作動させ、ホームポジションPoからスプレーノズル7をウエーハ基板1の回転中心Oに向かって移動させる。既に述べたように塗布有効領域Tの外縁Eがウエーハ基板が1の外縁eに最初に接触し続いて交差する点Sまでは噴霧塗布と関係がないので、点S以降の移動速度に影響を与えない限り迅速に点Sまで移動する事になる。前述のように点Qを中心とする円弧状の塗布軌跡Kを描くようにしてもよいし、ホームポジションPoから点Sまで直線的に増速するようにしてもよい。点Sの位置は前述のように数式(4)で予め算出できる。
【0048】
前述のように分極装置を作動させると、スプレーノズル7内の感光液Lはマイナスに帯電している。なお、半導体生産に使用される感光液Lは超高純度溶液であるから帯電し易い性質を有する。
【0049】
超音波スプレーノズル7から噴出されている霧状感光液Lの噴霧エリア(正確には後述の塗布有効領域Tの外縁E)が点S(塗布有効領域Tの外縁Eがウエーハ基板1の外縁eに最初に接触し続いて交差している点)でウエーハ基板1の外縁eに交差時或いはその直前で開閉弁35を開くと共に微小流量圧送ポンプ40並びに超音波発生装置9を作動させ、ノズルステム7a1を超音波振動させて感光液Lを霧化し、その周囲で吹き出すキャリアガスに乗せて超音波スプレーノズル7の先端から霧状の感光液Lを脈動なしの状態で噴出させ、霧状の感光液Lのスプレー塗布を行う。
【0050】
この時、霧状の感光液Lを担持したキャリアガスは一定の幅で吹き出され、下った処の周囲ではスカート状にある程度拡散する。従って、中心部分のある一定の範囲内は霧状の感光液Lの密度の高い部分(この部分が有効塗布領域W)となっているが、前記スカート状に拡散した部分は密度の低い部分となる。本発明では、この時、霧状の感光液Lを担持したキャリアガスの周囲はエアカーテンガス71で取り囲まれているために、スカート状に拡散した部分である密度の低い部分は、エアカーテンガス71でその拡散が阻止され、中心部分の密度の高い部分よりは低密度となるものの図2のようにエアカーテンガス71の範囲内にその拡散が抑制される。
【0051】
このような形態におけるスプレー塗布方法は、周囲からエアカーテンガス71が形成されるように窒素をエアカーテンガス噴出口73から噴出させ、この状態で感光液噴出ノズル口72から霧状の感光液Lをスカート状に整形噴出させながら超音波スプレーノズル7をウエーハ基板1に対して相対移動させる。この時、周回のずれた噴霧移動軌跡Kにおける相隣り合う霧状の感光液Lの塗布有効領域Tのスカート状裾部分が、超音波スプレーノズル7の直下部分の高濃度部分の略半分の濃度のところで互いに重なり合うようにして超音波スプレーノズル7をウエーハ基板1に対して相対移動させる。つまり、超音波スプレーノズル7から噴射されるスカート状に拡散した霧状の感光液Lのうち、超音波スプレーノズル7の直下部分の高濃度部分の略半分の濃度のところまでが「塗布有効領域T」であり、この塗布有効領域Tの外縁E同士が互いに重なるようにして超音波スプレーノズル7をウエーハ基板1に対して相対移動させる。(前述のように数値的には略半分と言うことになるが、前記数値に拘らず、重なり部分L/2が実質的には塗布ムラとならない範囲を含むことは当然である。) なお、図1、2において、LS’は高密度部分と重なり合ったスカート状裾部分とが交互に位置しつつ均一に塗布された状態を示し、LSは溶媒が蒸発して固化した状態を示す。(なお、図のLS’は理解を容易にするために誇張されている。)
【0052】
ここで、前述のように分極装置を使用した場合、マイナスに帯電した感光液Lはプラスに帯電したウエーハ基板1側に吸い寄せられてその大半は「塗布有効領域T」内に蝟集し、若干が「塗布有効領域T」外に吹き零れる[図2(b)]。もし、このような帯電なしで噴霧塗布を行えば、エアカーテン71により霧状感光液Lの散乱はある程度防止できるものの、エアカーテン71に乗って周囲に散乱するものもあり、同図(c)に示すように「塗布有効領域T」外に吹き零れるものも少なからず存在する。この意味で帯電方式を採用することにより正確に「塗布有効領域T」内への塗布が容易になる。
【0053】
さらに本実施形態の感光液塗布方法は前記概略した通り、第1半円R1の塗布は、点Qを回転中心として超音波スプレーノズル7が塗布有効領域Tの中心点Pの移動軌跡を辿るように移動し、第2半径R2の塗布は、ウエーハ基板1の回転中心Oを中心として超音波スプレーノズル7が塗布有効領域Tの中心点Pの移動軌跡を辿るように移動し、これに合わせてウエーハ基板1の回転制御がなされるのであるが、該方法の詳細な説明は既になされた通りである。
【0054】
簡単に言えば本発明の塗布方法は、回転しているウエーハ基板1を2分割してそれぞれを第1,2半円R1,R2として塗布方法を切り替えている。そして図3及び図4は、超音波スプレーノズル7を回転するウエーハ基板1に対して相対移動させたときのウエーハ基板1上における塗布有効領域Tの移動軌跡を表したもので、図3は塗布有効領域Tの中心点P(=ノズル先端)が第1及び第2象限(第1半円R1側)に存在する場合であり、図4は第3及び第4象限(第2半円R2側)に存在する場合である。
【0055】
(1)ウエーハ基板1の回転中心Oから塗布有効領域Tの中心点Pまでの距離
ウエーハ径をd、塗布有効領域の幅をwとしたとき、noはウエーハ基板1枚を塗布するためのウエーハ基板1の回転回数(換言すれば、ノズル中心点PがホームポジションPoから塗布完了点Qに至るまでのウエーハ基板1の回転回数)、nはノズル中心点Pの塗布軌跡K上のある地点における、1/2回転を単位としたウエーハ基板1の残りの回転回数で下式(1)の通りとなる。なお、式中のkは1/2回転を単位とし初回を0とした回転回数である。なお、noはホームポジションPoから塗布完了点Qに至るまでのウエーハ基板1の回転回数であるから整数であるが、これを定義するd/2をwで割ると小数点が発生する場合があり、その場合は切り上げて整数としている。換言すれば、ホームポジションPoと塗布完了点Qは直線X1上にあり、ノズル7がホームポジションPoから塗布完了点Qまで移動するにはウエーハ基板1が整数回回転することになる。また、上記kの説明において「初回が0」とは、点Sから点X2aまでノズル7が移動する場合、この区間ではk=0と言うことで、残回転回数はn=noである。そしてこれに続く半円R2の塗布領域に入ってk=1となり、残回転回数は半周分減ることになる。以下、半周分づつ減少していく。
【数1】

【0056】
ここで、図3における第1及び第2象限、すなわちウエーハ基板1の第1半円R1側では、超音波スプレーノズル7の軌道が、感光液噴霧完了時の超音波スプレーノズル7の塗布有効領域Tの中心点P[座標(−w/2、0)]、即ち、点Qを回転中心とする円弧となるので、ウエーハ基板1の中心から塗布有効領域Tの中心点Pまでの距離をrとしたとき、このrは、余弦定理から下式(2)のように求められる。
【数2】

【0057】
一方、図3における第3及び第4象限、即ち第2半円R2側部分では、超音波スプレーノズル7の軌道がウエーハ基板1の回転中心O[座標(0、0)]を中心とする円弧となるので、ウエーハ基板1の中心から塗布有効領域Tの中心点Pまでの距離rは下式(3)の通りとなる。
【数3】

【0058】
なお、図3において、超音波スプレーノズル7の塗布有効領域Tの中心点Pが、第1象限から第4象限へ切り替わるとき(換言すれば、中心点Pがウエーハ二分割直線X2と交差して第2半円R2に突入するとき)、及び第3象限から第2象限へ切り替わるとき(換言すれば、中心点Pがウエーハ二分割直線X2と交差して第1半円R1に突入するとき)に、nは1/2減算する。
【0059】
(2)回転角度の初期値
回転角度の初期値、すなわち、図3において、超音波スプレーノズル7の塗布有効領域Tの外縁Eが点Sにおいてウエーハ基板1の外縁eに最初に接触するとき(r=d/2+w/2)の角度θ0(すなわちk=0のときの開始角度)は下式により求められる。
【数4】

【0060】
ウエーハ基板1を回転駆動させるスピンモータ20の回転角度はk=0のときπ−θ0、それ以外のk=1、2、3、…、2n0−1のときはπとなる。
【0061】
(3)ウエーハ基板の回転数(=スピン回転数)の制御式
本実施形態の感光液Lの塗布方法では、ウエーハ基板1の表面を相対移動する超音波スプレーノズル7の周速(相対移動速度)が一定となるように制御する。このため、ウエーハ基板1上における感光液Lの塗布速度をv(mm/sec.)とすると、
v=rθ
θ=v/r
となる。従って、ウエーハ基板1の1秒当りの回転数はθ/2π=v/2πr(rps)となり、1分当りの回転数は30v/πr(rpm)となる。なお、感光液Lの塗布速度vは、ウエーハ基板1上に塗布する感光液Lの塗布量に応じて適宜設定する値である。
【0062】
そして、ウエーハ基板1の1分当りの回転数を上記式(2)に代入して、塗布有効領域Tの中心点Pが第1及び第2象限にあるときのウエーハ基板1の回転数を求めると下式(5)の通りとなる。
【数5】

【0063】
一方、ウエーハ基板1の1分当りの回転数を上記式(3)に代入して、塗布有効領域Tの中心点Pが第3及び第4象限にあるときのウエーハ基板1の回転数を求めると下式(6)の通りとなる。
【数6】

【0064】
以上より、本実施形態の感光液の塗布方法では、上式(5)及び(6)に基づいてウエーハ基板1の回転数が制御される。
【0065】
(4)超音波スプレーノズルの移動速度の制御式
続いて、アクチュエータ30に取り付けられ、回転数が上記式(5)及び(6)によって制御されるウエーハ基板1の上を直線移動軌跡X1に沿って往復移動する超音波スプレーノズル7の移動速度の制御式は次のようにして求められる。
【0066】
まず始めに、超音波スプレーノズル7の塗布有効領域Tの中心点Pが第1及び第2象限にあるとき、即ち図3に示すように、相対運動における超音波スプレーノズル7の回動中心が点Q『感光液噴霧完了時の超音波スプレーノズル7の塗布有効領域Tの中心点P[座標(−w/2、0)] 』にあるとき、ウエーハ二分割直線X2と直線QP[点Qと感光液噴霧中の超音波スプレーノズル7の塗布有効領域Tの中心点Pを結ぶ直線]との交点において、両者の成す角度をα(ただし、角度方向はウエーハ二分割直線X2を起点としてウエーハ基板1の逆回転方向)とすると、ウエーハ基板1の中心から超音波スプレーノズル7の塗布有効領域Tの中心点Pまでの距離rは、余弦定理から下式(7)の通りとなる。
【数7】

【0067】
また、上記式(2)とこの式(7)とから以下の式(8)が導き出せる。
【数8】

【0068】
続いて、処理時間をt秒とすると、nwα=vtとなるので、上記式(7)より、超音波スプレーノズル7の移動速度の制御式を求めると、まず下式(9)が求められる。
【数9】

【0069】
この式(9)は、ウエーハ基板1の回転中心Oから見た、超音波スプレーノズル7の回転中心Oに向かう速度(換言すれば、塗布有効領域Tの中心点Pの移動区間Po→X2a…X2(n−1)→X2(n)それぞれにおいて、点Qを中心とする塗布有効領域Tの中心点Pが描く第1半円R1上の円弧上の点を直線移動軌跡X1に投影した点の移動速度変化を基に移動距離Po−X1a、…、X1(n−1)→X1(n)それぞれで加減速(速度調整)が完了するように換算した比例速度)であることから、ウエーハ基板1の外縁Eから回転中心Oに向かう方向を正とすると、超音波スプレーノズル7の移動速度の制御式は下式(10)の通りとなる。
【数10】

【0070】
一方、超音波スプレーノズル7の塗布有効領域Tの中心点Pが第3及び第4象限(即ち、第2半円R2側)にあるとき、即ち、図4に示すように、相対運動における超音波スプレーノズル7の回動中心がウエーハ基板1の回転中心O[座標(0、0)]にあるとき、上式(3)から超音波スプレーノズル7の移動速度の制御式は下式(11)の通りとなり、点X1a、Qで停止状態を保つ。
【数11】

【0071】
以上より、本実施形態の感光液の塗布方法では、上式(10)及び(11)に基づいて超音波スプレーノズル7の移動速度が制御される。
(5)1枚のウエーハ基板に対して感光液塗布を行なう総処理時間
図3における座標(−w/2、0)から見た回転角度の初期値をαoとすると、k=0のとき、及びk=1、2、3、…、2n0−1のときの各処理時間(すなわち感光液Lの塗布時間)は下式の通りとなる。
【数12】





【0072】
したがって、1枚のウエーハ基板1に対して感光液塗布を行なう総処理時間は、下式の通りとなる。
【数13】

【0073】
上述のような各制御式を用いて、ウエーハ径が200mm、塗布有効範囲の直径が30mm、塗布速度を50mm/秒とした場合におけるウエーハ基板1の回転数及び超音波スプレーノズル7の移動速度の変化(つまり、これらの制御状態)を示したのが図5乃至図7である。
【0074】
以上のように、本実施形態の感光液塗布装置Aでは、ウエーハ基板1の表面を相対移動する超音波スプレーノズル7の周速(相対移動速度)が一定となるようにウエーハ基板1の回転数と前記超音波スプレーノズル7の移動速度とが制御されているが、この間、温度検出器によりウエーハ基板1或いは載置台8の温度を常時検出してウエーハ基板1周縁から立ち昇る温度がスプレー噴霧の溶媒を蒸発させない程度の温度に保たれ、スプレー噴霧がウエーハ基板1の上面に均一に塗布されるように制御される。温度制御はヒータコントローラ6cにより行われる。マイカヒータ3が収納されている載置台8の熱容量は非常に小さいので、マイカヒータ3のオン・オフによる温度変化に追従していくことができ、温度ドリフトを大幅に抑制することができる。以上において、図に示した実施例では点Sから点Qまで2回転弱で塗布完了となっているが、勿論、これに限られず、ウエーハ基板1の大きさや有効塗布領域Tの広さなどによって塗布回転数は当然変化するものであり、直線方向に移動する超音波スプレーノズル7と回転するウエーハ基板1との間において、塗布領域を2分割し、それぞれで塗布方法を変えることによって両者の相対移動速度を一定にして均一な感光液塗布を1度塗り或いは必要に応じて行われる2度以上のn度塗りで完了させようとするものである。尚、n度塗りの場合は、点Qで塗布を終了し、ホームポジションPoに戻って噴霧塗布を再開することになるが、点Qで逆回転して噴霧塗布を継続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…ウエーハ基板
3…マイカヒータ
4…ウエーハ搭載部(スピンチャック)
5…温度計測部
6…給電装置
7…超音波スプレーノズル
8…載置台
9…超音波発生装置
10…回転軸
20…スピンモータ
30…アクチュエータ
A…感光液塗布装置
L…感光液
E…塗布有効領域の外縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光液を円形の塗布有効領域において噴霧しつつ、回転するウエ−ハ基板の回転中心上を通る直線移動軌跡に沿って移動する超音波スプレーノズルを用いて、ウエーハ基板上に描かれる超音波スプレーノズルの周回がずれた塗布軌跡上の隣接する塗布有効領域の外縁が互いに接するように感光液を噴霧状で塗布する感光液の塗布方法であって、
超音波スプレーノズルと回転するウエーハ基板との相対移動関係において、
スプレーノズルの移動開始時に直線移動軌跡と一致する、ウエーハ基板上の仮想の直線でウエーハ基板と共に一体となって回転するウエーハ二分割直線にてウエーハ基板を二分割し、
二分割されたウエーハ基板の一方の半円で、塗布有効領域の外縁がウエーハ基板の外縁と交差する点側の半円部分を塗布するとき、
直線移動軌跡上におけるウエーハ基板の回転中心から塗布有効領域の半径だけ離間した塗布完了点を中心とした塗布有効領域の中心点の塗布軌跡である円弧上の点を直線移動軌跡に投影した速度変化で超音波スプレーノズルを半円部分の塗布時間に相当する時間の間だけ直線移動軌跡上を加減速移動させ、且つ、この超音波スプレーノズルの加減速に合わせて超音波スプレーノズルに対するウエーハ基板の回転速度の相対移動速度が一定となるように加減速し、
ウエーハ基板の他の半円部分を塗布するとき、ウエーハ基板の回転速度を等速とすると共に超音波スプレーノズルの中心点が半円部分から半円部分に切り替わる時点から半円部分に切り替わる時点まで停止させることを特徴とする感光液の塗布方法。
【請求項2】
回転する円盤状のウエーハ基板に対し、感光液を円形の塗布有効領域にて噴霧しつつ、前記ウエーハ基板表面との高さ方向の距離を保って前記ウエーハ基板の外縁側からウエーハ基板の回転中心に向かって直線移動軌跡を描きつつ直線移動する超音波スプレーノズルを用いてウエーハ基板上に描かれる超音波スプレーノズルの周回がずれた塗布軌跡上の隣接する塗布有効領域の外縁が互いに接するように感光液を噴霧状で塗布する感光液の塗布方法であって、
スプレーノズルの移動開始時に直線移動軌跡と一致する、ウエーハ基板上の仮想の直線でウエーハ基板と共に一体となって回転するウエーハ二分割直線にてウエーハ基板を二分割し、
前記塗布有効領域の外縁と前記ウエーハ基板の外縁とが最初に交差する点側の半円を第1半円とし、残りの半円を第2半円としたとき、
(a)前記ウエーハ基板の回転数は下式(A1)、(A2)の通りであり、
(a-1) ウエーハ基板の回転時において、塗布有効領域の中心点が第1半円側に位置するときは、


(a-2) 塗布有効領域が第2半円側に位置するときは、


[但し、vは感光液の塗布速度、wは塗布有効領域の直径、nはノズル中心点の塗布軌跡上のある地点における、1/2回転を単位としたウエーハ基板の残りの回転回数、θは直線移動軌跡と、ウエーハ基板の回転中心と塗布有効領域の中心点とを結ぶ直線との、直線移動軌跡を起点とするウエーハ基板の逆回転方向における成す角度。]
(b)前記超音波スプレーノズルの移動速度は下式(B1)、(B2)の通りである
(b-1) 塗布有効領域の中心点が第1半円側に位置するときは、


(b-2) 塗布有効領域の中心点が第2半円側に位置するときは、


[但し、vは感光液の塗布速度、wは塗布有効領域の直径、nはノズル中心点の塗布軌跡上のある地点における、1/2回転を単位としたウエーハ基板の残りの回転回数、αはウエーハ二分割直線と、点と塗布有効領域の中心点を結ぶ直線との、直線移動軌跡を起点とするウエーハ基板の逆回転方向における成す角度。]であることを特徴とする感光液の塗布方法。
【請求項3】
ホームポジションから塗布有効領域の外縁と前記ウエーハ基板の外縁とが最初に交差する時間又は地点をウエーハ基板の直径と塗布有効領域の直径から数式(4)で演算し、該間又は地点に到達する直前又は到達時に感光液噴霧を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載の感光液の塗布方法。
【請求項4】
スプレーノズル側をマイナスに、ウエーハ基板側をプラスに帯電させた状態で噴霧塗布することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光液の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−192619(P2010−192619A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34465(P2009−34465)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(591153813)エム・セテック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】