説明

感放射線性樹脂組成物、重合体及び化合物

【課題】液浸露光時における疎水性を確保しつつ、アルカリ現像液に対する反応性に優れ、現像欠陥を抑制することができ、さらに被覆率依存性が良好な感放射線性樹脂組成物、これに用いることができる重合体及びこの重合体のモノマーとなる化合物を提供することである。
【解決手段】下記式(1)で表される構造単位を有する重合体を含有する感放射線性樹脂組成物。R2は、下記式(2)で表される酸解離性基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感放射線性樹脂組成物、重合体及び化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されている。現在、例えばArFエキシマレーザーを用い、線幅90nm程度の微細なレジストパターンを形成することができるが、今後はさらに微細なパターン形成が要求される。
【0003】
このようなパターン形成には、従来から化学増幅型レジスト組成物が広く用いられている。この化学増幅型レジスト組成物は、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、この酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分とを含有し(特許文献1参照)、露光部と未露光部との溶解速度の差を利用してパターンを形成することができる組成物である。
【0004】
一方、液浸露光によれば同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の光源を用いた場合と同様の高解像性を達成できるとされている。そのため液浸露光は、多額な設備投資を必要とする半導体素子の製造において、コストの増大を低減しつつ高解像度を達成する技術として注目されている。上記液浸露光に適した樹脂組成物としては、レジスト被膜から液浸露光液への酸発生剤等の溶出を抑制できること、レジスト被膜の水切れを良くすること等を目的として、疎水性が高いフッ素含有重合体を含む樹脂組成物が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかし、上記疎水性が高いフッ素含有重合体を含む樹脂組成物を用いた場合、現像液やリンス液の表面濡れ性が低下するため、現像時にレジスト表面の、特に未露光部に沈着した現像残渣の除去が不十分となり、現像欠陥が起こる場合がある。そこで、上記現像欠陥等を抑制することを目的として、液浸露光時には疎水性であるが、アルカリ現像時には疎水性が低下するような樹脂組成物が提案されている。例えば、酸解離性を有する2価の連結基とアルカリ解離性基を有する含フッ素重合体を含む樹脂組成物が知られている(特許文献3参照)。しかしながら、この樹脂組成物ではアルカリ反応性が低く、現像液親和性が不十分であるという不都合がある。また、アルカリ解離性基及びフルオロカルボン酸構造を有する重合体を撥水性樹脂として用いた樹脂組成物が知られている(特許文献4参照)。しかし、この樹脂組成物を用いても、現像欠陥の発生は十分に低減されない。
【0006】
さらに、一般的に、疎水性が高いフッ素含有重合体を含む樹脂組成物では、被覆率依存性がより顕著に悪化することが知られている。ここで「被覆率依存性」とは、レジスト膜に対するマスクの被覆率に依存して、それが低い(露光エリアが明るい)場合に放射線感度が高くなり、高い(露光エリアが暗い)場合に放射線感度が低くなることをいう。例えば、従来の疎水性が高いフッ素含有重合体を含む樹脂組成物では、パターンの断面形状は、マスクの被覆率が低い場合はトップラウンディングになりやすく、被覆率が高い場合はT−top形状になりやすいという不都合がある。
【0007】
また、レジスト膜の水切れの評価は、水との接触角を指標として確認することができるが、特に実際の液浸露光においては、現像プロセスの時間短縮のため、現像液処理の際の動的接触角の変化がより短時間に起こることも望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−45439号公報
【特許文献2】国際公開2007/116664A号
【特許文献3】特開2010−020284号公報
【特許文献4】特開2010−210953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、液浸露光時における疎水性を確保しつつ、アルカリ現像液に対する反応性に優れ、現像欠陥を抑制することができ、さらに被覆率依存性が良好な感放射線性樹脂組成物、これに用いることができる重合体及びこの重合体のモノマーとなる化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]下記式(1)で表される構造単位(I)を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)を含有する感放射線性樹脂組成物である。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、上記式(2)で表される酸解離性基である。
式(2)中、Xは、2価の有機基である。nは1〜4の整数である。Q及びQは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基である。但し、Q及びQの少なくとも一方は、電子求引性基である。また、nが2以上の場合、複数のQ及びQは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yは、アルカリ解離性基である。)
【0011】
本発明の感放射線性樹脂組成物が含有する[A]重合体は、酸解離性基及びアルカリ解離性基を含む上記特定構造の構造単位(I)を有する。特にカルボン酸のα位に電子求引性基を有する上記構造のため、アルカリにより解離し易くなる。例えば液浸露光の際には疎水性を確保しつつ、アルカリ現像時には現像液親和性を向上させることができ、その結果、現像欠陥を抑制することができる。さらに、当該感放射線性樹脂組成物は、被覆率依存性にも優れるため、良好な微細パターンを形成することができる。
【0012】
上記Xとしては、下記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される2価の基が好ましい。
【化2】

(式(3−1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合してR及びRが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。R10は、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。R11は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜R11のいずれか2つが互いに結合してR10及びR11が結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
なお、式(3−1)〜(3−3)中、*は、式(1)中のエステル基との結合部位を示す。また、R〜R11が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。)
【0013】
上記Xが、上記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される2価の基であると、露光部において、上記構造単位(I)の酸解離性基が酸の作用により解離し易いため、現像欠陥をより低減することができる。
【0014】
上記Q及びQとしては、フッ素原子が好ましい。電子求引性の高いフッ素原子がアルカリ解離性基に結合するエステル基の近傍に存在することで、アルカリ解離性が向上する。それにより、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜の現像液親和性が高まるため、現像欠陥をより低減することができる。さらに、被覆率依存性もより改善され、良好な形状のパターン形成が可能となる。また[A]重合体がフッ素原子を有することで、撥水性樹脂としての機能が向上し、液浸露光により適する。
【0015】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、[B]酸解離性基を有し、アルカリ解離性基を有さない重合体(以下、「[B]重合体」ともいう)をさらに含有することが好ましい。
【0016】
当該感放射線性樹脂組成物は、酸解離性基を有するベース樹脂である[B]重合体を含有することで、露光において酸発生剤から発生する酸の作用により酸解離性基が解離し、アルカリ現像液に対して溶解性となる。[B]重合体はアルカリ解離性基を有していないため、未露光部のベース樹脂は現像液に対して難溶性であり、露光部と未露光部のコントラストが向上し、結果として本発明の効果をさらに増大させることができる。
【0017】
本発明は、下記式(1)で表される構造単位(I)を有する重合体も含む。
【化3】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、上記式(2)で表される酸解離性基である。
式(2)中、Xは、2価の有機基である。nは1〜4の整数である。Q及びQは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基である。但し、Q及びQの少なくとも一方は、電子求引性基である。また、nが2以上の場合、複数のQ及びQは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yは、アルカリ解離性基である。)
【0018】
本発明の重合体は、酸解離性基及びアルカリ解離性基を含む上記特定構造の構造単位(I)を有する。特にカルボン酸のα位に電子求引性基を有する上記構造のため、アルカリにより解離し易くなる。当該重合体を含有する感放射線性樹脂組成物は、例えば液浸露光の際には疎水性を確保しつつ、アルカリ現像時には現像液親和性を向上させることができるため、現像欠陥をより低減することができる。また、被覆率依存性もより改善され、良好な形状のパターンを形成することができる。当該重合体は、例えば、当該感放射線性樹脂組成物に好適に用いることができる。
【0019】
本発明の重合体における上記Xとしては、下記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される2価の基が好ましい。
【化4】

(式(3−1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合してR及びRが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。R10は、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。R11は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜R11のいずれか2つが互いに結合してR10及びR11が結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
なお、式(3−1)〜(3−3)中、*は、式(1)中のエステル基との結合部位を示す。また、R〜R11が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。)
【0020】
上記Xが、上記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される2価の基であると、当該重合体を含有する感放射線性樹脂組成物は、露光部において、上記構造単位(I)の酸解離性基が酸の作用により適度に解離するため、現像欠陥の抑制等の本発明の効果をさらに増大させることができる。
【0021】
本発明は、下記式(4)で表される化合物も含む。
【化5】

(式(4)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、上記式(2)で表される酸解離性基である。
式(2)中、Xは、2価の有機基である。nは1〜4の整数である。Q及びQは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基である。但し、Q及びQの少なくとも一方は、電子求引性基である。また、nが2以上の場合、複数のQ及びQは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yは、アルカリ解離性基である。)
【0022】
本発明の化合物は、当該重合体を合成する単量体化合物として好適に用いられる。
【0023】
本発明の化合物における上記Xとしては、下記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される2価の基が好ましい。
【化6】

(式(3−1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合してR及びRが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。R10は、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。R11は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜R11のいずれか2つが互いに結合してR10及びR11が結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
なお、式(3−1)〜(3−3)中、*は、式(1)中のエステル基との結合部位を示す。また、R〜R11が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。)
【0024】
上記Xが、上記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される2価の基であると、本発明の化合物から合成される重合体を含有する感放射線性樹脂組成物は、現像欠陥がより低減され、被覆率依存性も改善されるため、良好な形状のパターンを形成することができる。
【0025】
ここで、「感放射線性樹脂組成物」の「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を含む概念である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の感放射線性樹脂組成物によれば、液浸露光時における疎水性を確保しつつ、現像液に対する親和性が高いレジスト膜を形成することができる。さらに、当該感放射線性樹脂組成物は、被覆率依存性を改善することができ、良好な形状の微細パターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<感放射線性樹脂組成物>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体を含有する。さらに[B]重合体を含有することが好ましく、また、本発明の効果を損なわない限り任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0028】
<[A]重合体>
[A]重合体は、上記式(1)で表される構造単位(I)を有する。[A]重合体が上記特定構造を有することで、当該感放射線性樹脂組成物は、露光部においては酸解離性基が解離し極性基を生じて現像液溶解性が向上するため、良好な形状のパターンを形成することができる。一方、未露光部においては、露光工程では疎水性を確保しつつ、現像工程ではアルカリ現像液によりアルカリ解離性基が解離して極性基を生じる。また、カルボン酸のα位に電子求引性基を有する上記構造のため、アルカリ解離性が高い。従って、当該感放射線性樹脂組成物によれば、レジスト膜全体における現像液親和性が向上する。これらの結果として、当該感放射線性樹脂組成物は、現像欠陥が抑制され、被覆率依存性が改善し、良好な形状のレジストパターンを形成することができる。
【0029】
式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、上記式(2)で表される酸解離性基である。
式(2)中、Xは、2価の有機基である。nは1〜4の整数である。Q及びQは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基である。但し、Q及びQの少なくとも一方は、電子求引性基である。また、nが2以上の場合、複数のQ及びQは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yは、アルカリ解離性基である。
【0030】
上記式(2)中、Xで表される2価の有機基としては、酸の作用により上記式(1)中のエステル基と解離する構造を有する基であれば特に限定されないが、上記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される2価の基であることが好ましい。
【0031】
式(3−1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合してR及びRが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。R10は、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。R11は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜R11のいずれか2つが互いに結合してR10及びR11が結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
なお、式(3−1)〜(3−3)中、*は、式(1)中のエステル基との結合部位を示す。また、R〜R11が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
【0032】
上記R、R、R、R、R及びR11が表す炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0033】
上記R、R、R、R、R及びR11が表す1価の炭素数4〜20の脂環式基としては、例えば、
シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環の脂肪族飽和炭化水素基;
シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロデセニル基、シクロドデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロデカジエニル基等の単環の脂肪族不飽和炭化水素基;
ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル基、ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、アダマンタニル基等の多環の脂肪族飽和炭化水素基;
ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル基、ビシクロ[2.2.2]オクテニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセニル基、トリシクロ[3.3.1.1.3,7]デセニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセニル基等の多環の脂肪族不飽和炭化水素基等が挙げられる。
【0034】
上記R、R、R、R、R及びR11が表す炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンジル基、ナフタレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トルエニル基、キシレニル基、エチルベンジル基、メシチレニル基、クメニル基等が挙げられる。
【0035】
上記R、R及びR10が表す炭素数1〜4のアルカンジイル基としては、例えば、上記R、R、R、R、R及びR11が表す炭素数1〜4のアルキル基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0036】
上記R、R及びR10が表す炭素数4〜20の2価の脂環式基としては、例えば、上記R、R、R、R、R及びR11が表す炭素数4〜20の1価の脂環式基として挙げた基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0037】
上記R、R及びR10が表す炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、上記R、R、R、R、R及びR11が表す炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基として挙げた基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0038】
上記R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に形成してもよい環としては、例えば、炭素数4〜20のシクロアルキル基等が挙げられる。具体的には、アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格を有する多環の脂環式基;シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する単環の脂環式基等が挙げられる。また、これらの基は、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換されていてもよい。
【0039】
上記R〜Rのいずれか2つが互いに結合してR及びRが結合している炭素原子と共に形成してもよい環、及び上記R〜R11のいずれか2つが互いに結合して、R10及びR11が結合している炭素原子と共に形成してもよい環としては、例えば、上記R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に形成してもよい環として挙げたものと同様の環を挙げることができる。それに加えて、例えば、炭素数4〜20の複素環が挙げられる。具体的には、酸素原子を含むアダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格を有する多環の複素環式基;酸素原子を含むシクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する単環の複素環式基が挙げられる。また、これらの基は、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換されていてもよい。
【0040】
なお、上記R〜R11が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよいが、R、R及びR11がそれぞれ水素原子の場合は除くものとする。
【0041】
上記式(2)中、nとしては、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0042】
上記式(2)中、Q及びQで表される1価の有機基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基、炭素数2〜20のアシル基等が挙げられる。
【0043】
上記炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、ベンジル基、ナフタレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トルエニル基、キシレニル基、エチルベンジル基、メシチレニル基等が挙げられる。
上記炭素数1〜20のフッ素化アルキル基としては、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基等が挙げられる。
上記炭素数2〜20のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の炭素数2〜20の脂肪族または芳香族アシル基等が挙げられる。
【0044】
これらのうち、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基及び炭素数2〜20のアシル基が好ましい。
【0045】
上記Q及びQとしては、フッ素原子及び炭素数2〜20のアシル基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。なお、Q及びQの少なくとも一方は電子求引性基であり、双方が電子求引性基であることがより好ましい。
【0046】
上記式(2)中、Yで表されるアルカリ解離性基としては、pH6の水溶液中では解離率1%以下であり、pH10の水溶液中では50%以上が解離する基であれば特に限定されない。例えば、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のフッ素化アルキル基、及び炭素数6〜10のアリール基が好ましい。なかでも、メチル基、エチル基、及びトリフルオロエチル基がより好ましい。
【0047】
上記式(1)で表される構造単位(I)としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−19)で表される構造単位等が挙げられる。
【0048】
【化7】

【0049】
上記式中、Rは上記式(1)と同義である。
【0050】
これらのうち、(1−9)〜(1−16)で表される構造単位が好ましい。
【0051】
[A]重合体において、上記構造単位(I)の含有率としては[A]重合体を構成する全構造単位に対して、40モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。なお[A]重合体は、構造単位(I)を1種又は2種以上有してもよい。
【0052】
[A]重合体は、酸解離性基を含む(a1)構造単位、極性基を含む(a2)構造単位、ラクトン構造、スルトン構造又は環状カーボネート構造を有する(a3)構造単位、フッ素原子を有する構造単位としての(a4)構造単位又は(a5)構造単位等の他の構造単位をさらに含むことができる。上記構造単位は1種または2種以上含むことができる。以下、各構造単位を詳述する。
【0053】
[(a1)構造単位]
(a1)構造単位としては下記式(5)で示される構造単位が挙げられる。
【0054】
【化8】

【0055】
上記式(5)中、Ra1は水素原子又はメチル基である。Ra2〜Ra4は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基である。但し、Ra3とRa4とは互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に、炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成していてもよい。
【0056】
上記炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0057】
上記炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、又はRa3とRa4が互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に形成する炭素数4〜20の脂環式炭化水素基としては、アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格を有する多環の脂環式基;シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する単環の脂環式基が挙げられる。また、これらの基は、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換されていてもよい。
【0058】
(a1)構造単位としては、下記式で示される構造単位が好ましい。
【0059】
【化9】

【0060】
上記式中、Ra1は上記式(5)と同義である。Ra5は炭素数1〜4のアルキル基である。mは1〜6の整数である。
【0061】
これらのうち、下記式(5−1)〜(5−20)で示される構造単位がより好ましく、(5−4)及び(5−12)が特に好ましい。
【0062】
【化10】

【0063】
上記式中、Ra1は上記式(5)と同義である。
【0064】
[A]重合体において、(a1)構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜80モル%が好ましく、10モル%〜80モル%がより好ましく、20モル%〜70モル%が特に好ましい。構造単位(a1)の含有割合が80モル%を超えると、レジスト膜の密着性が低下し、パターン倒れやパターン剥れを起こすおそれがある。なお、[A]重合体は(a1)構造単位を1種、又は2種以上を有してもよい。
【0065】
(a1)構造単位を与える単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−7−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−2−イルエステル等が挙げられる。
【0066】
[(a2)構造単位]
[A]重合体は、下記式で示される(a2)極性基を含む構造単位をさらに有することが好ましい。ここでいう「極性基」としては、水酸基、カルボキシル基、ケト基、スルホンアミド基、アミノ基、アミド基、シアノ基が挙げられる。
【0067】
(a2)構造単位としては、例えば下記式で示される構造単位が挙げられる。
【0068】
【化11】

【0069】
上記式中、Ra9は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0070】
これらのうち、上記式(a2−15)で表される構造単位が好ましい。
【0071】
[A]重合体において、(a2)構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜80モル%が好ましく、8モル%〜40モル%がより好ましい。なお、[A]重合体は(a2)構造単位を1種又は2種以上を有してもよい。
【0072】
[(a3)構造単位]
[A]重合体は、(a3)ラクトン構造、スルトン構造又は環状カーボネート構造を有する構造単位をさらに含むことができる。(a3)構造単位を有することで、レジスト膜の基板への密着性を向上できる。
【0073】
(a3)構造単位としては、例えば下記式で示される構造単位が挙げられる。
【0074】
【化12】

【0075】
上記式中、Ra6は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Ra7は水素原子又はメチル基である。Ra8は水素原子又はメトキシ基である。Za1は単結合又はメチレン基である。Za2はメチレン基又は酸素原子である。a及びbは0又は1である。
【0076】
(a3)構造単位としては、下記式で示される構造単位が好ましい。
【0077】
【化13】

【0078】
上記式中、Ra6は水素原子又はメチル基である。
【0079】
[A]重合体において、(a3)構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜70モル%が好ましく、10モル%〜40モル%がより好ましい。このような含有率とすることによって、レジストと基板との密着性を向上させることができる。一方、70モル%を超えると、良好なパターンが得られないおそれがある。
【0080】
(a3)構造単位を与える好ましい単量体としては、例えば国際公開2007/116664号パンフレットに記載の単量体が挙げられる。
【0081】
[(a4)構造単位]
(a4)構造単位は下記式(6)で示される構造単位である。
【0082】
【化14】

【0083】
上記式(6)中、Ra9は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Ra10はフッ素原子を有する炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を有する炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基は水素原子の一部又は全部が置換されていてもよい。
【0084】
上記炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0085】
炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクチルメチル基等が挙げられる。
【0086】
上記式(6)で表される(a4)構造単位のうち、例えば下記式(6−1)及び(6−2)で示される構造単位が好ましい。
【0087】
【化15】

【0088】
式(6−1)及び(6−2)中、Ra9は上記式(6)と同義である。
【0089】
(a4)構造単位を与える単量体としては、例えばトリフルオロメチル(メタ)アクレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ)プロピル(メタ)アクリレート、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ)ペンチル(メタ)アクリレート、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ)ヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ)プロピル(メタ)アクリレート、1−(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ)ペンタ(メタ)アクリレート、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ)デシル(メタ)アクリレート、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロ)ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0090】
[A]重合体において、(a4)構造単位の含有率としては[A]重合体を構成する全構造単位に対して、2モル%〜70モル%が好ましく、5モル%〜30モル%がより好ましい。なお[A]重合体は、(a4)構造単位を1種又は2種以上を有してもよい。
【0091】
[(a5)構造単位]
(a5)構造単位は、下記式(7)で示される構造単位である。
【0092】
【化16】

【0093】
式(7)中、Ra11は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Ra12は(k+1)価の連結基である。Xはフッ素原子を有する2価の連結基である。Ra13は水素原子又は1価の有機基である。kは1〜3の整数である。但し、kが2又は3の場合、複数のX及びRa13はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0094】
上記式(7)中、Ra12が示す(k+1)価の連結基としては、例えば炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状の炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又はこれらの基と酸素原子、硫黄原子、エーテル基、エステル基、カルボニル基、イミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる1種以上の基とを組み合わせた基が挙げられる。また、上記(k+1)価の連結基は置換基を有していてもよい。
【0095】
炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状の炭化水素基としては、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、イコサン、トリアコンタン等の炭化水素基から(k+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0096】
炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の単環式飽和炭化水素;
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、シクロデカジエン等の単環式不飽和炭化水素;
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン、アダマンタン等の多環式飽和炭化水素;
ビシクロ[2.2.1]ヘプテン、ビシクロ[2.2.2]オクテン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デセン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン等の多環式炭化水素基から(m+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0097】
炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、例えばベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ピレン、ピセン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、クメン等の芳香族炭化水素基から(m+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0098】
上記式(7)中、Xが示すフッ素原子を有する2価の連結基としては、フッ素原子を有する炭素数1〜20の2価の直鎖状炭化水素基が挙げられる。Xとしては、例えば下記式(X−1)〜(X−6)で示される構造等が挙げられる。
【0099】
【化17】

【0100】
としては、上記式(X−1)及び(X−2)で示される構造が好ましい。
【0101】
上記式(7)中、Ra13が示す有機基としては、例えば炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状の炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又はこれらの基と酸素原子、硫黄原子、エーテル基、エステル基、カルボニル基、イミノ基及びアミド基からなる群より選ばれる1種以上の基とを組み合わせた基が挙げられる。
【0102】
上記(a5)構造単位としては、例えば下記式(7−1)及び(7−2)で示される構造単位が挙げられる。
【0103】
【化18】

【0104】
上記式(7−1)中、Ra12は炭素数1〜20の2価の直鎖状、分岐状又は環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基である。Ra11、X及びRa13は上記式(7)と同義である。
上記式(7−2)中、Ra11、X、Ra13及びkは上記式(7)と同義である。但し、kが2又は3の場合、複数のX及びRa13はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0105】
上記式(7−1)及び式(7−2)で示される構造単位としては、例えば下記式(7−1−1)、式(7−1−2)及び式(7−2−1)で示される構造単位が挙げられる。
【0106】
【化19】

【0107】
上記式(7−1−1)、(7−1−2)及び(7−2−1)中、Ra11は上記式(7)と同義である。
【0108】
(a5)構造単位を与える単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−3−プロピル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ブチル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−5−ペンチル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル、(メタ)アクリル酸2−{[5−(1’,1’,1’−トリフルオロ−2’−トリフルオロメチル−2’−ヒドロキシ)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル}エステル等が挙げられる。
【0109】
[A]重合体において、(a5)構造単位の含有率としては[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜60モル%が好ましく、20モル%〜40モル%がより好ましい。なお、[A]重合体は、(a5)構造単位を1種、又は2種以上を有してもよい。
【0110】
[A]重合体において、上記他の構造単位の含有率としては[A]重合体を構成する全構造単位に対して、通常50モル%以下であり、40モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましい。
【0111】
[A]重合体の配合量としては、後述する[B]重合体100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、1質量部〜15質量部がより好ましく、2質量部〜10質量部が特に好ましい。0.1質量部未満であると、[A]重合体を含有させる効果が十分ではない場合がある。一方、20質量部を超えると、レジスト表面の撥水性が高くなり過ぎ現像不良が起こる場合がある。
【0112】
[A]重合体はフッ素原子を含有することが好ましい。また、[A]重合体におけるフッ素原子の含有割合としては、[B]重合体よりも大きいことが好ましい。[A]重合体におけるフッ素原子の含有割合としては、[A]重合体全量を100質量%として、通常5質量%以上であり、好ましくは5質量%〜50質量%であり、より好ましくは5質量%〜45質量%である。なお、このフッ素原子含有割合は13C−NMRにより測定することができる。[A]重合体におけるフッ素原子含有割合が[B]重合体よりも大きいものであると、[A]重合体及び[B]重合体を含有する感放射線性樹脂組成物によって形成されたフォトレジスト膜表面の撥水性を高めることができ、液浸露光時に上層膜を別途形成する必要がなくなる。また、[A]重合体は、酸解離性基及びアルカリ解離性基を有する構造単位(I)を含むため、感放射線性樹脂組成物において撥水性樹脂として用いた場合には、疎水性を確保しつつ、現像欠陥を抑制することができ、良好なパターンを形成することができる。なお、上記効果を十分に発揮するためには、[B]重合体におけるフッ素原子の含有割合と、[A]重合体におけるフッ素原子の含有割合との差が1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。
【0113】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、ラジカル重合等の常法に従って合成できる。例えば、
単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;
単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;
各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。なお、単量体溶液に対して、単量体溶液を滴下して反応させる場合、滴下される単量体溶液中の単量体量は、重合に用いられる単量体総量に対して30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上が特に好ましい。
【0114】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよい。通常30℃〜180℃であり、40℃〜160℃が好ましく、50℃〜140℃がさらに好ましい。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜6時間が好ましく、1時間〜5時間がより好ましい。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜7時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。
【0115】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0116】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類;
アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0117】
重合反応により得られた樹脂は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の樹脂を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、樹脂を回収することもできる。
【0118】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000以上500,000以下が好ましく、2,000以上400,000以下がより好ましく、3,000以上300,000以下が特に好ましい。なお、[A]重合体のMwが1,000未満であると、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向がある。一方、[A]重合体のMwが500,000を超えると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向がある。
【0119】
また、[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がより好ましい。Mw/Mnをこのような範囲とすることで、フォトレジスト膜が解像性能に優れたものとなる。
【0120】
本明細書のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー社、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した値をいう。
【0121】
<[B]重合体>
[B]重合体は、酸解離性基を有し、アルカリ解離性基を有さない。即ち、[B]重合体は酸解離性基を有するアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の樹脂であって、酸解離性基が解離した時にアルカリ可溶性となる樹脂である。また、アルカリ解離性基を有さないため、未露光部においてはアルカリ現像液には不溶性である。なお、本発明において「アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性である」とは、当該感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、レジスト被膜の代わりに[B]重合体のみを用いた被膜を現像した場合に、当該被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質を有することを言う。
【0122】
[B]重合体は、構造単位として、酸解離性基を含む(b1)構造単位、ラクトン構造又は環状カーボネート構造を有する(b2)構造単位、極性基を含む(b3)構造単位を有することができる。
【0123】
(b1)構造単位としては、[A]重合体における(a1)構造単位として挙げたものと同様の構造単位を挙げることができる。(b2)構造単位としては、[A]重合体における(a3)構造単位として挙げたものと同様の構造単位を挙げることができる。また、(b3)構造単位としては、[A]重合体における(a2)構造単位として挙げたものと同様の構造単位を挙げることができる。
【0124】
[B]重合体において、(b1)構造単位の含有割合としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜90モル%が好ましく、10モル%〜80モル%がより好ましく、20モル%〜70モル%が特に好ましい。構造単位(b1)の含有割合が90モル%を超えると、レジスト膜の密着性が低下し、パターン倒れやパターン剥れを起こすおそれがある。なお、[B]重合体は(b1)構造単位を1種、又は2種以上を有してもよい。
【0125】
[B]重合体において、(b2)構造単位の含有割合としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜70モル%が好ましく、10モル%〜60モル%がより好ましい。このような含有率とすることによって、基板との密着性を向上させることができる。一方、70モル%を超えると、レジストとしての解像性やLWRが低下するおそれがある。
【0126】
[B]重合体において、(b3)構造単位の含有割合としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜30モル%が好ましく、5モル%〜20モル%がより好ましい。
【0127】
<[B]重合体の合成方法>
[B]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。
【0128】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば[A]重合体の合成方法で挙げたものと同様の溶媒が挙げられる。
【0129】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間、1時間〜24時間が好ましい。
【0130】
[B]重合体のGPC法によるMwとしては、1,000〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がより好ましく、1,000〜30,000が特に好ましい。[B]重合体のMwを上記範囲とすることで、これを含有する当該感放射線性樹脂組成物はリソグラフィー性能に優れる。
【0131】
[B]重合体のMwとMnとの比(Mw/Mn)としては、通常1〜3であり、好ましくは1〜2である。
【0132】
<[C]酸発生体>
[C]酸発生体は、露光により酸を発生し、その酸により[A]重合体及び[B]重合体中に存在する酸解離性基を解離させる。その結果、[A]重合体及び[B]重合体が現像液に溶解性となる。当該感放射線性樹脂組成物における[C]酸発生体の含有形態としては、後述するような化合物の形態(以下「[C]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これら両方の形態でもよい。
【0133】
[C]酸発生体としては、スルホニウム塩やヨードニウム塩等のオニウム塩化合物、有機ハロゲン化合物、ジスルホン類やジアゾメタンスルホン類等のスルホン化合物を挙げることができる。これらのうち、[C]酸発生体の好適な具体例としては、例えば、特開2009−134088号公報の段落[0080]〜[0113]に記載されている化合物などを挙げることができる。
【0134】
[C]酸発生体としては、具体的には、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、シクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシル・メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジシクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0135】
4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、
【0136】
トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、パーフルオロ−n−オクタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシイミドトリフルオロメタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネートが好ましい。
【0137】
これらの[C]酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[C]酸発生体の使用量としては、レジストとしての感度および現像性を確保する観点から、[B]重合体100質量部に対して、通常、0.1質量部以上20質量部以下、好ましくは0.5質量部以上15質量部以下である。この場合、[C]酸発生剤の使用量が0.1質量部未満では、感度および現像性が低下する傾向があり、一方15質量部を超えると、放射線に対する透明性が低下し、所望のレジストパターンを得られ難くなるおそれがある。
【0138】
<[D]含窒素化合物>
[D]含窒素化合物は、露光により[C]酸発生体から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏し、レジストとしての解像度がより向上するとともに、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上する。[D]含窒素化合物の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0139】
[D]含窒素化合物としては、例えば下記式で表される。
【0140】
【化20】

【0141】
上記式中、Rd1〜Rd5はそれぞれ独立して、水素原子、又は直鎖状、分岐状、環状の炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、若しくはアラルキル基である。但し、これらの基は置換基を有していてもよい。また、Rd1とRd2とがそれぞれが結合する窒素原子と共に、及び/又はRd3とRd4とがそれぞれが結合する炭素原子と共に、互いに結合して、炭素数4〜20の2価の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又はその誘導体を形成してもよい。
【0142】
上記式で表される[D]含窒素化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(S)−(−)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−アミロキシカルボニルピロリジン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−アミロキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−アミロキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−アミロキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−アミロキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−アミロキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−アルキルアルコキシカルボニル基含有アミノ化合物等が挙げられる。
【0143】
また、窒素含有化合物としては、上記式で表される窒素含有化合物以外にも、例えば、3級アミン化合物、4級アンモニウムヒドロキシド化合物、光崩壊性塩基化合物、その他含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0144】
3級アミン化合物としては、例えば
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;
アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類;
トリエタノールアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン等のアルカノールアミン類;
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンテトラメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。
【0145】
4級アンモニウムヒドロキシド化合物としては、例えばテトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0146】
[D]含窒素化合物の含有割合としては、[B]重合体100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。使用量が10質量部を超えると、レジストとしての感度が低下する傾向にある。
【0147】
<[E]溶媒>
当該感放射線性樹脂組成物は、通常、[E]溶媒を含有する。[E]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。
【0148】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0149】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0150】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0151】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0152】
その他の溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒等が挙げられる。
【0153】
これらの溶媒のうち、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0154】
<その他の任意成分>
当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、[F]偏在化促進剤、脂環式骨格化合物、界面活性剤、増感剤等を含有できる。以下、これらのその他の任意成分について詳述する。これらのその他の任意成分は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、その他の任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0155】
[[F]偏在化促進剤]
当該感放射線性樹脂組成物は、液浸露光法を使用しレジストパターンを形成する場合等に、[F]偏在化促進剤を配合することができる。[F]偏在化促進剤を配合することで、[A]重合体をさらに表層近傍に偏在化させることができる。[F]偏在化促進剤としては、例えばγ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0156】
[脂環式骨格化合物]
脂環式骨格化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等をさらに改善する作用を示す成分である。脂環式骨格化合物としては、例えば1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル]テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等が挙げられる。
【0157】
[界面活性剤]
界面活性剤は塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名として、KP341(信越化学工業社)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学社)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ社)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業社)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム社)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子社)等が挙げられる。
【0158】
[増感剤]
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを[A]化合物に伝達しそれにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を有する。増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。
【0159】
<感放射線性組成物の調製>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば上記[E]溶媒中で、上記[A]重合体、好適成分である[B]重合体、必要に応じて加えられる[C]酸発生体、[D]含窒素化合物及びその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。当該感放射線性樹脂組成物は、通常、その使用に際して、全固形分濃度が1質量%〜50質量%、好ましくは2質量%〜25質量%となるように[E]溶媒に溶解した後、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することによって調製される。
【0160】
<パターン形成方法>
本発明の感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法としては、例えば、
当該感放射線性樹脂組成物を基板に塗布し、レジスト膜を形成する工程(以下、「(i)工程」と称することがある)、
上記レジスト膜を露光する工程(以下、「(ii)工程」と称することがある)、及び
上記露光したレジスト膜をアルカリ現像する工程(以下、「(iii)工程」と称することがある)
を含む方法等が挙げられる。以下、各工程を詳述する。
【0161】
[(i)工程]
本工程では、感放射線性樹脂組成物又はこれを溶剤に溶解させて得られた組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって、シリコンウエハー、二酸化シリコン、下層反射防止膜で被覆されたウエハー等の基板上に所定の膜厚となるように塗布し、次いでプレベークすることにより塗膜中の溶媒を揮発させることにより、レジスト膜を形成する。なお、上記下層反射防止膜は、例えば下層反射防止膜形成剤を用いて、上記基板表面に形成することができる。
【0162】
[(ii)工程]
本工程では、工程(i)で形成されたレジスト膜に(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し露光させる。なお、この際所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等から適宜選択して照射する。ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザーがより好ましい。次いで、露光されたフォトレジスト膜をポストエクスポージャーベーク(PEB)することで、レジスト膜の露光された部分において[A]化合物から発生した酸が重合体が脱保護される。PEBは、通常50℃〜180℃の範囲で適宜選択して実施される。
【0163】
[(iii)工程]
本工程は、露光されたレジスト膜を、現像液で現像することにより、所定のフォトレジストパターンを形成する。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【0164】
また、液浸露光を行う場合は、(ii)工程の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、(iii)工程の前に溶剤により剥離する溶剤剥離型保護膜(例えば、特開2006−227632号公報参照)、(ii)工程の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005−069076号公報、WO2006−035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。但し、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0165】
このようにして得られるレジストパターンは、パターン形状に優れリソグラフィー技術を応用した微細加工に好適である。
【0166】
<重合体>
本発明の重合体は、上記式(1)で表される構造単位(I)を有する。当該重合体については、感放射線性樹脂組成物が含有する[A]重合体として、すでに詳細に説明しているため、ここでの説明は省略する。
【0167】
<化合物>
本発明の化合物は、上記式(4)で表され、当該重合体を合成するための単量体化合物、すなわち構造単位(I)を与える単量体化合物として好適に用いられる。
【0168】
式(4)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、上記式(2)で表される酸解離性基である。
式(2)中、Xは、2価の有機基である。nは1〜4の整数である。Q及びQは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基である。但し、Q及びQの少なくとも一方は、電子求引性基である。また、nが2以上の場合、複数のQ及びQは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yは、アルカリ解離性基である。
【0169】
また、上記Xとしては、上記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される2価の基が好ましい。
【0170】
上記式(4)及び(2)については、[A]重合体が有する構造単位(I)を表す上記式(1)及び(2)についてと同じ説明をすることができるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0171】
上記式(4)で表される化合物としては、例えば、下記式(4−1)〜(4−19)で表される化合物が挙げられる。
【0172】
【化21】

【0173】
これらのうち、上記式(4−9)〜(4−16)で表される化合物が好ましい。
【0174】
<化合物の合成方法>
当該化合物は下記方法にて合成することができるが、これらの方法に限定されるものではない。当該化合物として、
(a)上記式(2)におけるXがアルカンジイル基である化合物(上記式(3−1)等)、及び
(b)上記式(2)におけるXがアセタール構造を含む化合物(上記式(3−3)等)の合成方法を以下に詳細に説明する。
【0175】
[(a)上記式(2)におけるXがアルカンジイル基である化合物の合成方法]
(工程1)
本発明の化合物は、上記式(4)で表される重合性単量体化合物である。この重合性単量体化合物の前駆体であるカルボン酸エステル基を有するアルコール(下記式(c))を、下記式(a)で表される化合物及び下記式(b)で表される化合物を用いて、公知文献(例えばJ.Org.Chem.1999,64,4775−4782参照)に記載の方法、すなわち、下記反応式に示す工程にて製造する。なお、この方法に限定されるものではない。
【0176】
【化22】

【0177】
上記式(a)中、R3’及びR5’は独立して炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜22の芳香族炭化水素基である。
41’は、単結合、又は2価の連結基、
42’〜R44’は、水素原子又は炭素数1〜12の置換基を有しても良い炭化水素基である。
但し,R3’、R5’及びR41’〜R44’は、それぞれが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
は水素原子、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基、アリル基、ベンジル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等、有機合成で一般的に用いられる水酸基の保護基である。
上記式(b)中、Z1’は塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。
1’は水素原子、もしくはアルカリ解離性基である。
n’は、1〜4の整数である。
1’、Q2’は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基であり、少なくとも一方は、電子求引性基である。
【0178】
上記工程にて化合物(c)を得た後、Rが上記保護基である場合は、一般的な脱保護工程を行ってから次工程を行う。
【0179】
(工程2)
重合性部位及び必要に応じて導入するスペーサー部位の導入は、下記反応式で表される本工程にて行うことができる。なお、重合性部位及びスペーサー部位の導入方法は、この方法に限定されるものではない。
【0180】
【化23】

【0181】
上記反応式中、R3’、R5’、R41’〜R44’、 n’、Q1’、Q2’、Y1’は工程1における上記反応式と同義である。
1’は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
2’は水酸基、ハロゲン原子、−O−CO−C(R)=CHである。
【0182】
(工程3)
アルカリ解離性基である上記Y1’を、他のアルカリ解離性基Yにかえる場合には、本工程3及び後述する工程4により行うことができる。上記式(e)の化合物を、本工程にて加水分解して下記反応式中のカルボン酸(f)とする。
【0183】
【化24】

【0184】
上記式で用いられる加水分解試薬としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化セシウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等のアルカリ性水溶液が挙げられる。
【0185】
(工程4)
上記式(f)で表される化合物を、本工程にてハロゲン化試薬を用いてカルボン酸ハライド(g)とする。
【0186】
【化25】

【0187】
上記式(g)中、Halは、ハロゲン原子である。
上記反応で用いられるハロゲン化試薬としては、例えば、チオニルクロリド、オキサリクロリド等が挙げられる。
【0188】
(工程5)
上記式(g)で表される化合物を、本工程にてアルコール類又はフェノール類と反応させることで、カルボン酸エステル(h)を合成することができる。
【0189】
【化26】

【0190】
上記反応式中、Y’は、置換基を有してもよい炭素数2〜10の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。但し、上記脂肪族炭化水素基が有しても良い置換基が有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されている。
【0191】
上記反応式中(g)から(h)への変換反応は、対応するエステル化剤を用いても行うことができる。エステル化剤としては、例えば、N,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。
【0192】
[(b)上記式(2)におけるXがアセタール構造を含む化合物の合成方法]
(工程1)
本発明の化合物の前駆体であるカルボン酸エステル基を有するアルコール(下記式(i))は、公知文献(例えばJ.Chem.Soc.,Chemical Communications,1992,7,p.540−541、J.Chem.Soc.,Perkin Transactions 1:Organic and Bio−orが似c」Chemistry(1992−1999),1993,10p.1177−1182参照)に記載の方法、すなわち、下記反応式で表される工程にて合成することができるが、この方法に限定されるものではない。
【0193】
【化27】

【0194】
【化28】

【0195】
重合性部位の導入は、上記(工程2)を参考に同様の工程にて重合性部位を有するユニットを直接連結することで導入できるが、この方法に限定されるものではない。
また、Y’’をY’に変換した化合物は、上記(工程3)〜(工程5)を参考に同様の工程にて製造することができるが、この方法に限定されるものではない。
なお、本発明の化合物は、上記合成方法及びにこれに準じた方法により適宜合成することができる。
【実施例】
【0196】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0197】
重合体のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー社、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、以下の条件により測定した。
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業社)
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0198】
H−NMR分析及び13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社、JNM−ECX400P)を使用し測定した。
【0199】
<化合物の合成>
[実施例1]2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサン酸エチルエステル(M−1)の合成
【0200】
2,2−ジフルオロ−5−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサン酸エチルエステルの合成
1000mLの3つ口フラスコに、クロロジフルオロ酢酸エチルを31.8g(0.2モル)、2−メチル−3−ブテン−2−オールを25.8g(0.3モル)、ハイドロサルファイトナトリウムを52.2g(0.3モル)、炭酸水素ナトリウムを25.2g(0.3モル)、ジメチルスルホキシドを1000mL入れ、攪拌して懸濁させた後、オイルバスにて75度まで加熱し、6時間攪拌した。ガスクロマトグラフィにより反応終了を確認後、反応液を常温まで冷却し、反応液を0度の超純水1000mLへ攪拌しながら温度が上昇しないように投入した。その後、その混合液にテトラヒドロフランを500mL加え、分液操作にて有機層を回収した。さらに水層にテトラヒドロフランを500mL加えて分液操作を行い、有機層を回収する操作を計5回繰り返し、回収した有機層をすべて合わせてエバポレーターにて減圧濃縮した。濃縮液に酢酸エチルを1000mL加え、さらに洗浄液として超純水を1000mL加えて分液し、水層を捨てた。有機層に超純水を1000mL加えて分液し、水層を捨てる操作を計3回行った。超純水にて洗浄した有機層をエバポレーターにて減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=4/1)にて精製することにより、下記式(m−1)で表される2,2−ジフルオロ−5−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサン酸エチルエステルを12.6g得た(収率30%、純度99%)。
2,2−ジフルオロ−5−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサン酸エチルエステルのH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=4.34(q,2H,O−CHCHのCH),2.19(m,2H,−CFCH−のCH),1.63(m,2H,C−CHのCH),1.37(t,3H,O−CHCHのCH),1.25(t,6H,C(CH)のCH)。
【0201】
【化29】

【0202】
100mLの3つ口フラスコにジクロロメタンを40g、上記2,2−ジフルオロ−5−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサン酸エチルエステル(m−1)を4.20g(0.02モル)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を2.69g(0.024モル)加え、反応器内を窒素置換した後、0度に冷却した。そこへ、ジクロロメタン20gに溶解させたメタクリル酸クロリド2.67g(0.021モル)を反応液温度が上昇しないようにゆっくり滴下した。滴下終了後0度を維持したまま30分攪拌し、さらにその後、常温まで昇温して1時間半攪拌した。ガスクロマトグラフィにて反応終了を確認した後、反応液を0度まで冷却し、0度に冷却したn−ヘキサンを100mL及びシリカゲルを20g加え反応を終了させた。その反応液を、n−ヘキサンにてショートカラム(シリカゲル50g、展開溶媒:n−ヘキサン)を通すことにより、下記式(M−1)で表される2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサン酸エチルエステルを5.15g得た(収率93%、純度99%)。
2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサン酸エチルエステルのH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=6.00(s,1H,=CH),5.50(s,1H,=CH),4.35(q,2H,O−CHCHのCH),2.18(m,2H,−CFCH−のCH),1.92(m,2H,C−CHのCH),1.90(s,3H,CH−C),1.51(t,6H,C(CH)のCH),1.36(t,3H,O−CHCHのCH)。
【0203】
【化30】

【0204】
[実施例2]2,2,2−トリフルオロエチル 2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサノエート(M−2)の合成
【0205】
中間体化合物2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサン酸(m−2)の合成
500mLの3つ口フラスコに2.38wt%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液300mLを入れた。実施例1で得られた2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサン酸エチルエステル5gを常温にて加え、2時間攪拌した。全溶していることを確認し、ガスクロマトグラフィにて原料が消失していることを確認した後、希塩酸を加えて水層のpHを5とした。酢酸エチル100mLを加え、分液操作にて有機層を回収し、さらに水層に対して酢酸エチル100mLにて3回抽出操作を行った。得られた有機層をすべて合わせ、4−メトキシフェノールを0.01g加えて減圧濃縮した。得られた濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1、バッファとして酢酸を2w%添加)にて精製し、下記式(m−2)で表される2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサン酸を2.1g得た(収率47%、純度90%)。
2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサン酸のH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=6.01(s,1H,=CH),5.50(s,1H,=CH),2.17(m,2H,−CFCH−のCH),1.92(m,2H,C−CHのCH),1.90(s,3H,CH−C),1.51(t,6H,C(CH)のCH)。
【0206】
【化31】

【0207】
300mLの3つ口フラスコにジクロロメタンを200mL、オキサリルクロリドを2.79g(0.022モル)、N,N−ジメチルホルムアミドを1滴加え、氷冷にて反応液の温度を0度とした。上記化合物(m−2)5.00g(0.02モル)をジクロロメタン100mLに溶解させ、それを上記反応液に温度が上昇しないようにゆっくり滴下した。滴下終了後、0度で30分攪拌し、さらに常温にて4時間攪拌した。ガスクロマトグラフィにて原料の消失を確認後、反応液を0度に冷却し、トリエチルアミン2.22g(0.022モル)を反応液の温度が上昇しないようにゆっくり滴下した。滴下終了後、10分間攪拌し、2,2,2−トリフルオロエタノールを2.40g(0.024モル)加えた。常温で2時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィにて反応の進行を確認し、反応液をエバポレーターにて減圧濃縮した。濃縮液にn−ヘキサン50gを加え、その混合液をn−ヘキサンにてショートカラム(シリカゲル50g、展開溶媒:n−ヘキサン)に通すことにより下記式(M−2)で表される2,2,2−トリフルオロエチル 2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサノエートを5.98g得た(収率90%、純度98%)。
2,2,2−トリフルオロエチル 2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサノエートのH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=6.02(s,1H,=CH),5.52(s,1H,=CH),4.61(q,2H,O−CHCFのCH),2.19(m,2H,−CFCH−のCH),1.92(m,2H,C−CHのCH),1.90(s,3H,CH−C),1.51(t,6H,C(CH)のCH),1.36(t,3H,O−CHCHのCH)。
【0208】
【化32】

【0209】
[実施例3]3−トリフルオロメチルフェニル 2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサノエート(M−3)の合成
2,2,2−トリフルオロエタノールの替わりに3−ヒドロキシベンゾトリフルオリドを用いた以外は実施例2と同様の方法で下記式(M−3)で表される3−トリフルオロメチルフェニル2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサノエートを得た(収率88%、純度99%)。
3−トリフルオロメチルフェニル 2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサノエートのH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=7.56(m,2H,O−C−CFの4、6位),7.40(s,1H,O−C−CFの2位),7.34(m,1H,O−C−CFの5位),6.00(s,1H,=CH),5.50(s,1H,=CH),2.20(m,2H,−CFCH−のCH),1.93(m,2H,C−CHのCH),1.89(s,3H,CH−C),1.51(t,6H,C(CH)のCH)。
【0210】
【化33】

【0211】
[実施例4]1−エトキシ−2,2−ジフルオロ−3−エトキシ−3−オキソプロピルメタクリレート(M−4)の合成
2,2−ジフルオロ−5−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサン酸エチルエステルの替わりに3−エトキシ−2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシプロピオン酸エチルを用いた以外は実施例1と同様の方法で下記式(M−4)で表される1−エトキシ−2,2−ジフルオロ−3−エトキシ−3−オキソプロピルメタクリレートを得た(収率95%、純度99%)。
1−エトキシ−2,2−ジフルオロ−3−エトキシ−3−オキソプロピルメタクリレートのH−NMRのデータを以に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=6.27(s,1H,=CH),6.21(dd,1H,O−CH−OのCH),5.72(s,1H,=CH),4.36(q,2H,O−CHCHのCH),3.94−3.73(m,2H,CH−O−CHCHのCH),1.97(s, 3H,CH−C),1.36(t,3H,O−CHCHのCH),1.24(t,3H,CH−O−CHCHのCH)。
【0212】
【化34】

【0213】
[実施例5]2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル(M−5)の合成
500mLの3つ口フラスコに実施例1で合成した2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサン酸エチルエステルを10g、メタノールを300mL、ジメチルアミノピリジン(DMAP)を0.1g、4−メトキシフェノールを0.1g入れ、窒素雰囲気下、65度で14時間加熱還流を行った。ガスクロマトグラフィで転化率95%以上になったことを確認し、反応液をエバポレーターにて減圧濃縮した。濃縮液をn−ヘキサン30gに溶解し、その溶液をショートカラム(シリカゲル30g、展開溶媒=n−へキサン)に通すことにより、下記式(M−5)で表される2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステルを8.1g得た(収率85%、純度97%)。
2,2−ジフルオロ−5−(メタクリロイルオキシ)−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステルのH−NMRを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=6.00(s,1H,=CH),5.50(s,1H,=CH),3.86(s,3H,O−CH),2.18(m,2H,−CFCH−のCH),1.92(m,2H,C−CHのCH),1.90(s,3H,CH−C),1.51(t,6H,C(CH)のCH)。
【0214】
【化35】

【0215】
[実施例6]2,2−ジフルオロ−4−(1−メタクリロイルオキシシクロヘキシル)−ブタン酸エチルエステル(M−6)の合成
1000mLの3つ口フラスコに、クロロジフルオロ酢酸エチルを31.8g(0.2モル)、1−ビニルシクロヘキサノールを37.9g(0.3モル)、ハイドロサルファイトナトリウムを52.2g(0.3モル)、炭酸水素ナトリウムを25.2g(0.3モル)、ジメチルスルホキシドを1000mL入れ、攪拌して懸濁させた後、オイルバスにて75度まで加熱し、7時間攪拌した。ガスクロマトグラフィにより反応終了を確認後、反応液を常温まで冷却し、反応液を0度の超純水1000mLへ攪拌しながら温度が上昇しないように投入した。その後、その混合液にテトラヒドロフランを500mL加え、分液操作にて有機層を回収した。さらに水層にテトラヒドロフランを500mL加えて分液操作を行い、有機層を回収する操作を計5回繰り返し、回収した有機層をすべて合わせてエバポレーターにて減圧濃縮した。濃縮液に酢酸エチルを1000mL加え、さらに洗浄液として超純水を1000mL加えて分液し、水層を捨てた。有機層に超純水を1000mL加えて分液し、水層を捨てる洗浄操作を計3回行った。超純水にて洗浄した有機層をエバポレーターにて減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=4/1)にて精製することにより、下記式(m−6)で表される2,2−ジフルオロ−4−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−ブタン酸エチルエステルを15.9g得た(収率22.4%、純度99%)。
上記2,2−ジフルオロ−4−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−ブタン酸エチルエステルの物性のH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=4.34(q,2H,O−CHCHのCH),2.19(m,2H,−CFCH−のCH),2.0−1.5(m,12H),1.36(t,3H,O−CHCHのCH)。
【0216】
【化36】

【0217】
2,2−ジフルオロ−5−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサン酸エチルエステルの替わりに2,2−ジフルオロ−4−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−ブタン酸エチルエステルを用いた以外は実施例1と同様の方法で下記式(M−6)で表される2,2−ジフルオロ−4−(1−メタクリロイルオキシシクロヘキシル)−ブタン酸エチルエステルを得た(収率90%、純度99%)。
2,2−ジフルオロ−4−(1−メタクリロイルオキシシクロヘキシル)−ブタン酸エチルエステルのH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=6.02(s,1H,=CH),5.53(s,1H,=CH),4.33(q,2H,O−CHCHのCH),2.20(m,2H,−CFCH−のCH),2.0−1.5(m,12H),1.35(t,3H,O−CHCHのCH)。
【0218】
【化37】

【0219】
[実施例7]2,2,2−トリフルオロエチル 2,2−ジフルオロ−4−(1−メタクリロイルオキシシクロヘキシル)−ブタノエート(M−7)の合成
500mLの3つ口フラスコに2.38wt%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液300mLを入れた。実施例6で得られた2,2−ジフルオロ−4−(1−メタクリロイルオキシシクロヘキシル)−ブタン酸エチルエステル5gを常温にて加え、2時間攪拌した。全溶していることを確認し、ガスクロマトグラフィにて原料が消失していることを確認した後、希塩酸を加えて水層のpHを5とした。酢酸エチル100mLを加え、分液操作にて有機層を回収し、さらに水層に対して酢酸エチル100mLにて3回抽出操作を行った。得られた有機層をすべて合わせ、4−メトキシフェノールを0.01g加えて減圧濃縮した。得られた濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1、バッファとして酢酸を2w%添加)にて精製し、下記式(m−7)で表される2,2−ジフルオロ−4−(1−メタクリロイルオキシシクロヘキシル)−ブタン酸を1.9g得た(収率42%、純度83%)。
2,2−ジフルオロ−4−(1−メタクリロイルオキシシクロヘキシル)−ブタン酸のH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=6.01(s,1H,=CH),5.50(s,1H,=CH),2.20(m,2H,−CFCH−のCH),2.0−1.5(m,12H),1.35(t,3H,O−CHCHのCH)。
【0220】
【化38】

【0221】
300mLの3つ口フラスコにジクロロメタンを200mL、オキサリルクロリドを2.79g(0.022モル)、N,N−ジメチルホルムアミドを1滴加え、氷冷にて反応液の温度を0度とした。上記化合物(m−7)5.81g(0.02モル)をジクロロメタン100mLに溶解させ、それを上記反応液に温度が上昇しないようにゆっくり滴下した。滴下終了後、0度で30分攪拌し、さらに常温にて4時間攪拌した。ガスクロマトグラフィにて原料の消失を確認後、反応液を0度に冷却し、トリエチルアミン2.22g(0.022モル)を反応液の温度が上昇しないようにゆっくり滴下した。滴下終了後、10分間攪拌し、2,2,2−トリフルオロエタノールを2.40g(0.024モル)加えた。常温で2時間攪拌した後、ガスクロマトグラフィにて反応の進行を確認し、反応液をエバポレーターにて減圧濃縮した。濃縮液にn−ヘキサン50gを加え、その混合液をn−ヘキサンにてショートカラム(シリカゲル50g、展開溶媒:n−ヘキサン)に通すことにより下記式(M−7)で表される2,2,2−トリフルオロエチル 2,2−ジフルオロ−4−(1−メタクリロイルオキシシクロヘキシル)−ブタノエートを6.70g得た(収率90%、純度94%)。
2,2,2−トリフルオロエチル 2,2−ジフルオロ−4−(1−メタクリロイルオキシシクロヘキシル)−ブタノエートのH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=6.02(s,1H,=CH),5.53(s,1H,=CH),4.69(q,2H,O−CHCFのCH),2.20(m,2H,−CFCH−のCH),2.0−1.5(m,12H),1.35(t,3H,O−CHCHのCH)。
【0222】
【化39】

【0223】
[実施例8]2,2,3,3−テトラフルオロ−6−(メタクリロイルオキシ)−6−メチル−ヘプタン酸メチルエステル(M−8)の合成
1000mLの3つ口フラスコに、3−クロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸メチルを14.6g(0.075モル)、2−メチル−3−ブテン−2−オールを9.69g(0.113モル)、ハイドロサルファイトナトリウムを19.59g(0.113モル)、炭酸水素ナトリウムを9.45g(0.113モル)、ジメチルスルホキシドを300mL入れ、攪拌して懸濁させた後、オイルバスにて75度まで加熱し、6時間攪拌した。ガスクロマトグラフィにより反応終了を確認後、反応液を常温まで冷却し、反応液を0度の超純水300mLへ攪拌しながら温度が上昇しないように投入した。その後、その混合液に酢酸エチルを200mL加え、分液操作にて有機層を回収した。さらに水層に酢酸エチルを200mL加えて分液操作を行い、有機層を回収する操作を計3回繰り返し、回収した有機層をすべて合わせてエバポレーターにて減圧濃縮した。濃縮液に酢酸エチルを200mL加え、さらに洗浄液として超純水を300mL加えて分液し、水層を捨てた。有機層に超純水を300mL加えて分液し、水層を捨てる操作を計3回行った。超純水にて洗浄した有機層をエバポレーターにて減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=4/1)にて精製することにより、下記式(m−8)で表される2,2,3,3−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−6−メチル−ヘプタン酸メチルエステルを6.97g得た(収率40%、純度98%)。
2,2,3,3−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−6−メチル−ヘプタン酸メチルエステルのH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=3.95(s,3H,O−CHのCH),2.19(m,2H,−CFCH−のCH),1.73(m,2H,C−CHのCH),1.27(s,6H,C(CH)のCH)。
【0224】
【化40】

【0225】
100mLの3つ口フラスコにジクロロメタンを40g、上記2,2,3,3−テトラフルオロ−6−ヒドロキシ−6−メチル−ヘプタン酸メチルエステル(m−8)を4.64g(0.02モル)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を2.69g(0.024モル)加え、反応器内を窒素置換した後、0度に冷却した。そこへ、ジクロロメタン20gに溶解させたメタクリル酸クロリド2.67g(0.021モル)を反応液温度が上昇しないようにゆっくり滴下した。滴下終了後0度を維持したまま30分攪拌し、さらにその後、常温まで昇温して1時間半攪拌した。ガスクロマトグラフィにて反応終了を確認した後、反応液を0度まで冷却し、0度に冷却したn−ヘキサンを100mL及びシリカゲルを20g加え反応を終了させた。その反応液を、n−ヘキサンにてショートカラム(シリカゲル50g、展開溶媒:n−ヘキサン)を通すことにより、下記式(M−8)で表される2,2,3,3−テトラフルオロ−6−(メタクリロイルオキシ)−6−メチル−ヘプタン酸メチルエステルを5.53g得た(収率88%、純度99%)。
2,2,3,3−テトラフルオロ−6−(メタクリロイルオキシ)−6−メチル−ヘプタン酸メチルエステルのH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(測定溶媒:CDCl、基準物質:テトラメチルシラン):σ=6.00(s,1H,=CH),5.51(s,1H,=CH),3.95(s,3H,O−CHのCH),2.20(m,2H,−CFCH−のCH),2.00(m,2H,C−CHのCH),1.90(s,3H,CH−C),1.54(s,6H,C(CH)のCH)。
【0226】
【化41】

【0227】
<[A]重合体の合成>
[A]重合体及び後述する[B]重合体の合成に使用した単量体は上記式(M−1)〜(M−8)及び下記式(M−9)〜(M−23)で示される。
[実施例9]
化合物(M−1)5.00gを、2−ブタノン10gに溶解し、更に2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)0.09gを100mLの三口フラスコに投入した。30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、過熱開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却し、エバポレーターにて重合溶液の重量が12.5gになるまで減圧濃縮した。重合液を0度に冷却したn−ヘキサン75gへゆっくり投入し、固形分を析出させた。混合液を濾過し、固形分をn−ヘキサンで洗浄し、得られた粉たいを40度15時間真空乾燥した。白色の粉たいを3.75g(収率75%)で得た。この重合体のMwは9,400であり、Mw/Mnは1.50であった。
【0228】
[実施例10〜22、比較例1〜6]
表1に記載の単量体を所定量配合した以外は、実施例9と同様に操作して重合体(A−2)〜(A−14)及び(a−1)〜(a−6)を得た。また、得られた各重合体のMw、Mw/Mn、収率(%)、各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有率、及び分散度を合わせて表1に示す。
【0229】
【化42】

【0230】
【表1】

【0231】
<[B]重合体の合成>
[合成例1]
化合物(M−21)119.2g(15モル%)、化合物(M−16)41.07g(35モル%)、化合物(M−22)15.75g(15モル%)、化合物(M−23)11.16g(10モル%)、化合物(M−20)20.10g(25モル%)を100gの2−ブタノンに溶解し、AIBN3.43gを添加して単量体溶液を調製した。100gの2−ブタノンを入れた1000mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、撹拌しながら80℃に加熱し、調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。その重合溶液をエバポレーターにて重合溶液の重量が150gになるまで減圧濃縮した。その後、760gのメタノール及び40gの水の混合液中に濃縮液を投入し、スライム状の白色固体を析出させた。デカンテーションにて液体部を取り除き、回収した固体を60℃15時間で真空乾燥することにより、白色の粉体である重合体(B−1)を61.3g得た(収率88%)。Mwは9,300であり、Mw/Mnは1.6であった。また、13C−NMR分析の結果、化合物(M−21)由来の構造単位:化合物(M−16)由来の構造単位:(M−22)由来の構造単位:(M−23)由来の構造単位:(M−20)由来の構造単位の含有比率が16:26:19:11:28(モル%)であった。
【0232】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
当該感放射線性樹脂組成物の調製で使用した[C]酸発生体、酸拡散制御剤及び溶媒は、下記のとおりである。
【0233】
<[C]酸発生体>
下記式(C−1)で表される化合物
【0234】
【化43】

【0235】
<酸拡散制御剤>
下記式(D−1)で表される化合物。
【0236】
【化44】

【0237】
<溶媒>
以下、実施例及び比較例で用いた溶媒を示す。
(E−1)酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
(E−2)シクロヘキサノン
(E−3)γ−ブチロラクトン
【0238】
[実施例23]
実施例9で得られた重合体(A−1)100質量部、酸発生体(C−1)8質量部、酸拡散制御剤(D−1)1.2質量部、及び溶媒(E−1)3900質量部を混合し、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0239】
[実施例24〜36、比較例7、8]
表2に示す配合処方にしたこと以外は、実施例23と同様の操作を行い各感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0240】
<評価>
下記評価結果は表2に合わせて示す。
【0241】
[酸解離性度評価]
8インチのシリコンウェハ上に、下層膜用組成物(商品名「ARC29」、日産化学社製)を、商品名「CLEAN TRACK ACT8」をスピンコートした後、205℃で60秒の条件でベークを行うことにより膜厚78nmの塗膜を形成した。次に、商品名「CLEAN TRACK ACT8」を使用して上記実施例21〜33で調製した感放射線性樹脂組成物をスピンコートし、所定のベーク温度で50秒間ソフトベーク(SB)を行った後、23℃で30秒間冷却することにより膜厚120nmのフォトレジスト塗膜を形成した。
次いで、ArF露光装置(商品名「S306C」、NIKON社製)を使用し、NA:0.75、Outerσ=0.6、Conventionalの光学条件、マスクなしにて、0.5cm四方のバルクパターンを基板に投影した。商品名「CLEAN TRACK ACT8」のホットプレート上で95度で50秒間露光後ベーク(PEB)を行った後、現像ユニットのLDノズルにて、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液としてパドル現像(30秒間)し、超純水でリンスした。2000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、レジストパターンが形成された基板を得た。
0.5cm四方のバルクパターンが投影された部分のフォトレジストの膜厚を測定し、膜厚が0nmとなったところの露光量を「Eth」とし、酸解離性度を評価した。Ethが低い値である程、酸解離性度が高いと判断される。
【0242】
【表2】

【0243】
表2に示す通り、実施例23〜36の感放射線性樹脂組成物は、比較例7及び8と比較して、酸解離性度が高いことがわかった。
【0244】
[実施例37]
実施例9で得られた重合体(A−1)5質量部、合成例1で得られた重合体(B−1)100質量部、酸発生体(C−1)8質量部、酸拡散制御剤(D−1)1.2質量部、及び溶媒(E−1)2,590質量部、(E−2)1,110質量部、(E−3)200質量部を混合し、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0245】
[実施例38〜50、比較例9〜14]
[A]成分、[B]重合体、[C]酸発生体、[D]酸拡散制御剤について表3に示す配合処方にしたこと以外は、実施例37と同様の操作を行い各感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0246】
【表3】

【0247】
<評価>
下記評価結果は表3に合わせて示す。
【0248】
[後退接触角の測定]
上記実施例37〜50及び比較例9〜14で調製した感放射線性樹脂組成物をそれぞれ用いて基板上に膜厚100nmのフォトレジスト被膜を形成した。その後、形成した被膜について、室温23℃、湿度45%、常圧の環境下で、KRUS社のDSA−10を用いて以下の手順で後退接触角を測定した。
DSA−10の針を測定前にアセトンとイソプロピルアルコールで洗浄し、次いで針に水を注入し、ウェハステージ上にウェハをセットする。ウェハ表面と針の先端の距離が1mm以下になるようステージの高さを調整し、次に、針から水を排出してウェハ上に25μLの水滴を形成した後、針によって水滴を10μL/分の速度で180秒間吸引するとともに、接触角を毎秒測定した。接触角が安定した時点から計20点の接触角について平均値を算出して後退接触角(度)とした。
8インチシリコンウェハ上に、上記感放射線性樹脂組成物によって、膜厚100nmの被膜を形成し、120度で50秒間ソフトベーク(SB)を行った基盤の後退接触角を「SB後の後退接触角(度)」とした。
8インチシリコンウェハ上に、上記感放射線性樹脂組成物によって、膜厚110nmの被膜を形成し、120度で50秒間SBを行った。その後、東京エレクトロン株式会社製、クリーントラック「ACT8」の現像装置のGPノズルによって2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により10秒間現像し、15秒間純水によりリンスし、2,000rpmで液振り切り乾燥した基盤の後退接触角を「10秒現像後後退接触角(度)」とした。
8インチシリコンウェハ上に、上記感放射線性樹脂組成物によって、膜厚110nmの被膜を形成し、120度で50秒間SBを行った。その後、東京エレクトロン株式会社製、クリーントラック「ACT8」の現像装置のGPノズルによって2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により30秒間現像し、30秒間純水によりリンスし、2,000rpmで液振り切り乾燥した基盤の後退接触角を「30秒現像後後退接触角(度)」とした
【0249】
[被覆率依存性]
12インチのシリコンウェハ上に、下層膜用組成物(商品名「ARC66」、日産化学社製)を、商品名「Lithius Pro−i」をスピンコートした後、205℃で60秒の条件でベークを行うことにより膜厚105nmの塗膜を形成した。次に、商品名「CLEAN TRACK ACT12」を使用して上記実施例37〜50及び比較例9〜14で調製した感放射線性樹脂組成物をそれぞれスピンコートし、所定のベーク温度で50秒間SBを行った後、23℃で30秒間冷却することにより膜厚90nmの塗布膜を形成した。
次いで、ArF液浸露光装置(商品名「S610C」、NIKON社製)を使用し、NA:1.30、Outerσ/innerσ=0.977/0.782、、Dipole、v偏光照明の光学条件にて、40nmライン/80nmピッチのBrightField(BF)パターンを投影するためのマスクを介して露光した(以下、マスクによって投影されるパターンの寸法をそのマスクの「投影パターン寸法」と呼ぶ。例えば、投影パターン寸法が40nmライン/80nmピッチのマスクとは40nmライン/80nmピッチのパターンを投影するためのマスクのことを指す。BrightFieldとは、パターン周辺部位がマスクで覆われておらず、投影光が透過するタイプのマスクでパターンを形成されたものを指す)。商品名「Lithius Pro−i」のホットプレート上で所定のベーク温度で50秒間露光後ベーク(PEB)を行った後、現像ユニットのGPノズルにて、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液としてパドル現像(10秒間)し、超純水でリンスした。2000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、レジストパターンが形成された基板を得た。このとき、40nmライン/80nmピッチのレジストパターンが形成される露光量をBF最適露光量とした。なお、表3中、(*1)は、ブリッジが発生し、BF最適露光量が算出できなかったことを示す。
【0250】
上記評価の40nmライン/80nmピッチのBFパターン形成用マスクを用いる代わりに、40nmライン/80nmピッチのDarkField(DF)パターン形成用マスクにて評価を行った(DarkFieldとは、パターン周辺部位がマスクで覆われており、投影光が透過しないタイプのマスクでパターンを形成されたものを指す)。そのとき40nmライン/80nmピッチのレジストパターンが形成される露光量をDF最適露光量とし、DF最適露光量とBF最適露光量の差を100分率で算出した。計算式を下記に示す。
【0251】
(DF最適露光量/BF最適露光量×100)−100=最適露光量の差(%)
上記、最適露光量の差(%)が−3%〜3%以下のものを「良好」とし、それ以外の範囲のものを「不良」と評価した。なお、表3中、(*2)は、DF部観察でブリッジが発生し、評価できなかったことを示す。
【0252】
[現像欠陥]
下層反射防止膜(日産化学社、ARC66)を形成した12インチシリコンウェハ上に、感放射線性樹脂組成物によって膜厚110nmの被膜を形成し、120度で50秒間SBを行った。次に、この被膜についてArFエキシマレーザー液浸露光装置(NIKON社、NSR S610C)を用い、NA=1.3、ratio=0.800、Dipoleの条件により、ターゲットサイズが幅45nmのラインアンドスペース(1L/1S)のマスクパターンを介して露光した。露光後、95℃で50秒間PEBを行った。その後、東京エレクトロン株式会社製、クリーントラック「ACT12」の現像装置のGPノズルによって2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により10秒間現像し、15秒間純水によりリンスし、2,000rpmで液振り切り乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、幅45nmの1L/1Sを形成する露光量を最適露光量とした。この最適露光量にてウェハ全面に線幅45nmの1L/1Sを形成し、欠陥検査用ウェハとした。なお、測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社、CC−4000)を用いた。その後、欠陥検査用ウェハ上の欠陥数を、KLA−Tencor社、KLA2810を用いて測定した。更に、同社KLA2810にて測定された欠陥を、レジスト由来と判断されるものと外部由来の異物とに分類した。分類後、レジスト被膜由来と判断される欠陥数の合計が100個/wafer未満であった場合「良好」とし、100個から500個/waferであった場合は「やや良好」、500個/waferを超える場合は「不良」とした。
【0253】
表3に示す通り、本発明の感放射線性樹脂組成物は、液浸露光時には疎水性に優れ、現像時には親水性となり現像液親和性が高いレジスト膜を形成できることがわかった。本発明の感放射線性樹脂組成物を用いると、被覆率依存性が改善し、良好な微細パターンを形成することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスのリソグラフィー工程におけるレジストパターンの形成において好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]下記式(1)で表される構造単位(I)を有する重合体を含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、上記式(2)で表される酸解離性基である。
式(2)中、Xは、2価の有機基である。nは1〜4の整数である。Q及びQは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基である。但し、Q及びQの少なくとも一方は、電子求引性基である。また、nが2以上の場合、複数のQ及びQは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yは、アルカリ解離性基である。)
【請求項2】
上記Xが、下記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される2価の基である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化2】

(式(3−1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合してR及びRが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。R10は、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。R11は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜R11のいずれか2つが互いに結合してR10及びR11が結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
なお、式(3−1)〜(3−3)中、*は、式(1)中のエステル基との結合部位を示す。また、R〜R11が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。)
【請求項3】
上記Q及びQがフッ素原子である請求項1又は請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
[B]酸解離性基を有し、アルカリ解離性基を有さない重合体をさらに含有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
下記式(1)で表される構造単位(I)を有する重合体。
【化3】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、上記式(2)で表される酸解離性基である。
式(2)中、Xは、2価の有機基である。nは1〜4の整数である。Q及びQは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基である。但し、Q及びQの少なくとも一方は、電子求引性基である。また、nが2以上の場合、複数のQ及びQは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yは、アルカリ解離性基である。)
【請求項6】
上記Xが、下記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される2価の基である請求項5に記載の重合体。
【化4】

(式(3−1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合してR及びRが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。R10は、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。R11は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜R11のいずれか2つが互いに結合してR10及びR11が結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
なお、式(3−1)〜(3−3)中、*は、式(1)中のエステル基との結合部位を示す。また、R〜R11が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。)
【請求項7】
下記式(4)で表される化合物。
【化5】

(式(4)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、上記式(2)で表される酸解離性基である。
式(2)中、Xは、2価の有機基である。nは1〜4の整数である。Q及びQは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基である。但し、Q及びQの少なくとも一方は、電子求引性基である。また、nが2以上の場合、複数のQ及びQは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Yは、アルカリ解離性基である。)
【請求項8】
上記Xが、下記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される2価の基である請求項7に記載の化合物。
【化6】

(式(3−1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。Rは、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合してR及びRが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
式(3−3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。R10は、単結合、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数4〜20の2価の脂環式基、又は炭素数6〜22の2価の芳香族炭化水素基である。R11は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式基、又は炭素数6〜22の1価の芳香族炭化水素基である。但し、R〜R11のいずれか2つが互いに結合してR10及びR11が結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
なお、式(3−1)〜(3−3)中、*は、式(1)中のエステル基との結合部位を示す。また、R〜R11が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。)

【公開番号】特開2012−145838(P2012−145838A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5274(P2011−5274)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】