説明

感放射線性樹脂組成物

【課題】有機溶媒を含む現像液を用いた場合においてミッシングコンタクトホールの発生が抑制され、リソグラフィー特性に優れる感放射線性樹脂組成物の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、有機溶媒が80質量%以上の現像液を用いるネガ型レジストパターン形成方法用の感放射線性樹脂組成物であって、[A]酸解離性基を有するベース重合体、[B][A]重合体よりフッ素原子含有率が高い重合体、[C]感放射線性酸発生体、[D]溶媒、及び[E][D]溶媒の比誘電率よりも15以上大きい比誘電率を有する化合物を含有し、上記[A]重合体が、下記式(1)で表される構造単位を有し、上記[E]化合物が、[A]重合体100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されている。現在、例えばArFエキシマレーザーを用いて線幅90nm程度の微細なレジストパターンを形成することができるが、今後はさらに微細なレジストパターン形成が要求される。
【0003】
一方、液浸露光によれば同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の光源を用いた場合と同様の高解像性を達成できるとされている。そのため液浸露光は、多額な設備投資を必要とする半導体素子の製造において、コストの増大を低減しつつ高解像度を達成する技術として注目されている。
【0004】
しかし、液浸露光においてはレジストに含まれる物質の液浸媒体中への溶出等によりレジスト膜が変質してその性能が低下したり、溶出した物質によって液浸媒体の屈折率が局所的に変化したり、溶出した物質がレンズ表面を汚染する等により、リソグラフィー特性に悪影響を与える不都合が考えられる(国際公開第2004/068242号パンフレット参照)。かかる不都合に対して、レジスト膜の疎水性を高めることが考えられ、そのためにはレジスト組成を変更する必要があり、このような変更は通常リソグラフィー特性を悪化させる傾向がある。
【0005】
また、化学増幅型レジスト材料の特徴を利用し解像力を高める技術として、現像液にアルカリ水溶液よりも極性の低い有機溶媒を用いる技術が開示されている(特開2000−199953号公報参照)。しかし、このような有機溶媒を含む現像液を用いたパターン形成において従来の樹脂組成物をレジスト膜に用いると、未解像なホールパターン、いわゆるミッシングコンタクトホールが発生するという不都合がある。
【0006】
上述のような有機溶媒を現像液に用いるパターン形成において、ミッシングコンタクトホールの発生が抑制されるレジストパターン形成方法及び最適な感放射線性樹脂組成物の組み合わせは今日まで見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/068242号パンフレット
【特許文献2】特開2000−199953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は有機溶媒を含む現像液を用いた場合においてミッシングコンタクトホールの発生が抑制され、リソグラフィー特性に優れる感放射線性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
有機溶媒が80質量%以上の現像液を用いるネガ型レジストパターン形成方法用の感放射線性樹脂組成物であって、
[A]酸解離性基を有するベース重合体、
[B][A]重合体よりフッ素原子含有率が高い重合体、
[C]感放射線性酸発生体、
[D]溶媒、及び
[E][D]溶媒の比誘電率よりも15以上大きい比誘電率を有する化合物
を含有し、
上記[A]重合体が、下記式(1)で表される構造単位を有し、
上記[E]化合物の含有量が、[A]重合体100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることを特徴とする。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは酸解離性基である。)
【0010】
当該感放射線性樹脂組成物によれば、有機溶媒が80質量%以上を含有する現像液を用いるネガ型レジストパターン形成方法において使用することにより、ミッシングコンタクトホールの発生を効果的に抑制することができる。
【0011】
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体、[B]重合体、[C]酸発生体及び[D]溶媒に加えて、さらに[D]溶媒と所定値以上の誘電率差を有する[E]化合物を上記特定量含有させることで、ミッシングコンタクトホールの発生を抑制させることができる。この理由については明らかではないが、例えば[E]化合物が[D]溶媒よりも比誘電率差が所定値以上とすることで、[A]重合体よりもフッ素原子含有率の高い[B]重合体のレジスト被膜表層への偏在化を促進できること等が考えられる。その結果、レジスト膜表面において、酸解離性基を有する[A]重合体の存在割合を低減させることができるので、ミッシングコンタクトホールの発生を効果的に防止することができると考えられる。従って有機溶媒を80質量%以上含有する現像液を用いて行うネガ型レジストパターン形成方法において、上記特定化合物を有する組成物を組み合わせることにより、ミッシングコンタクトホールの抑制効果及びリソグラフィー特性に優れたレジストパターン形成を可能としている。
【0012】
[E]化合物の比誘電率は、20以上75以下であることが好ましい。当該感放射線性樹脂組成物によれば、[E]化合物の比誘電率を上記特定範囲とすることで、[B]重合体のレジスト膜表層への偏在化をより促進することができ、ミッシングコンタクトホールの発生をより抑制させることができると共に、リソグラフィー特性をより向上させることができる。
【0013】
[E]化合物の1気圧における沸点は、180℃以上300℃以下であることが好ましい。[E]化合物の沸点を上記特定範囲とすることで、プレベーク(PB)等により[D]溶媒が蒸発した後にレジスト被膜中における[E]化合物の存在割合を上げることができる。その結果、[B]重合体のレジスト膜表層への偏在化をより促進することができ、ミッシングコンタクトホールの発生をさらに抑制することができると共に、リソグラフィー特性をさらに向上させることができる。
【0014】
[E]化合物はラクトン化合物及び環状カーボネート化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。[E]化合物として上記特定化合物を用いることで、[B]重合体のレジスト膜表層への偏在化を促進することができ、ミッシングコンタクトホールの発生をさらに効果的に抑制することができると共に、リソグラフィー特性をさらに向上させることができる。
【0015】
[A]重合体の酸解離性基は、単環又は多環の脂環式炭化水素基を有することが好ましい。[A]重合体が脂環式炭化水素基を有することで、酸解離容易性を向上させることができるので、形成パターンの解像性を高めると共に、リソグラフィー特性をさらに向上させることができる。
【0016】
本明細書において、比誘電率の値は、JIS C2138の方法により、25℃において測定し求めた値である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、液浸露光法において好適であり、ミッシングコンタクトホールの発生を抑制することができると共に、リソグラフィー特性に優れる感放射線性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<レジストパターン形成方法>
本発明は、(1)感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布するレジスト膜形成工程、(2)露光工程、及び(3)有機溶媒を80質量%以上含有する現像液を用いる現像工程を含むレジストパターン形成方法であって、上記感放射線性樹脂組成物が、[A]酸解離性基を有するベース重合体、[B][A]重合体よりフッ素原子含有率が高い重合体、[C]感放射線性酸発生体、[D]溶媒、及び[E][D]溶媒の比誘電率よりも15以上大きい比誘電率を有する化合物を含有し、上記[E]化合物の含有量が、[A]重合体100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることを特徴とする。以下、各工程を詳述する。
【0019】
[工程(1)]
本工程では、本発明に用いられる組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する。基板としては、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知の基板を使用できる。また、例えば特公平6−12452号公報や特開昭59−93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。
【0020】
レジスト膜材料の塗布方法としては、例えば回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等が挙げられる。なお、形成されるレジスト膜の膜厚としては、通常0.01μm〜1μmであり、0.01μm〜0.5μmが好ましい。
【0021】
当該感放射線性樹脂組成物を塗布した後、必要に応じてプレベーク(PB)によって塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。PB温度としては、当該組成物の配合組成によって適宜選択されるが、通常30℃〜200℃程度であり、50℃〜150℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒〜600秒であり、30秒〜150秒が好ましい。
【0022】
環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するために、例えば特開平5−188598号公報等に開示されている保護膜をレジスト層上に設けることもできる。さらに、レジスト層からの酸発生剤等の流出を防止するために、例えば特開2005−352384号公報等に開示されている液浸用保護膜をレジスト層上に設けることもできる。なお、これらの技術は併用できる。
【0023】
[工程(2)]
本工程では、工程(1)で形成したレジスト膜の所望の領域に特定パターンのマスク、及び必要に応じて液浸液を介して縮小投影することにより露光を行う。例えば、所望の領域にアイソラインパターンマスクを介して縮小投影露光を行うことにより、アイソトレンチパターンを形成できる。また、露光は所望のパターンとマスクパターンによって2回以上行ってもよい。2回以上露光を行う場合、露光は連続して行うことが好ましい。複数回露光する場合、例えば所望の領域にラインアンドスペースパターンマスクを介して第1の縮小投影露光を行い、続けて第1の露光を行った露光部に対してラインが交差するように第2の縮小投影露光を行う。第1の露光部と第2の露光部とは直交することが好ましい。直交することにより、露光部で囲まれた未露光部において円形状のコンタクトホールパターンが形成しやすくなる。なお、露光の際に用いられる液浸液としては水やフッ素系不活性液体等が挙げられる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤を僅かな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト層を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
【0024】
露光に使用される放射線としては、[C]酸発生体の種類に応じて適宜選択されるが、例えば紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。これらのうち、ArFエキシマレーザーやKrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザーがより好ましい。露光量等の露光条件は、当該組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選択される。本発明のレジストパターン形成方法においては、露光工程を複数回有してもよく複数回の露光は同じ光源を用いても、異なる光源を用いても良いが、1回目の露光にはArFエキシマレーザー光を用いることが好ましい。
【0025】
また、露光後にポストエクスポージャーベーク(PEB)を行なうことが好ましい。PEBを行なうことにより、当該組成物中の酸解離性基の解離反応を円滑に進行できる。PEB温度としては、通常30℃〜200℃であり、50℃〜170℃が好ましい。PEB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0026】
[工程(3)]
本工程では、工程(2)の露光後に有機溶媒を80%質量以上含有するネガ型現像液を用いて現像を行い、パターンを形成する。ネガ型現像液とは低露光部及び未露光部を選択的に溶解・除去させる現像液のことである。ネガ型現像液が含有する有機溶媒は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒及び炭化水素系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0027】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0028】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メトキシベンゼン等が挙げられる。
【0029】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、2−ブタノン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0030】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0031】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0032】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0033】
これらのうち、酢酸n−ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、2−ブタノン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトンが好ましい。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
現像液中の有機溶媒の含有量としては、80質量%以上であり、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。現像液に含まれる有機溶媒を上記範囲とすることで、未露光部分を効果的に溶解・除去させることができ、ミッシングコンタクトホールの発生抑制効果、現像特性及びリソグラフィー特性に優れたパターンを形成することができる。なお、有機溶媒以外の成分としては、例えば水、シリコンオイル等が挙げられる。
【0035】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0036】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0037】
当該パターン形成では、工程(3)の現像後にレジスト膜をリンス液により洗浄することが好ましい。また、リンス工程におけるリンス液としても有機溶媒を使用することができ、発生したスカムを効率よく洗浄することができる。リンス液としては、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒等が好ましい。これらのうちアルコール系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、炭素数6〜8の1価のアルコール系溶媒がより好ましい。炭素数6〜8の1価のアルコールとしては直鎖状、分岐状又は環状の1価のアルコールが挙げられ、例えば1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらのうち、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、4−メチル−2−ペンタノールが好ましい。なお、リンス液は上記感放射線性樹脂組成物と現像液との組み合わせにより適宜選択することが好ましい。
【0038】
上記リンス液の各成分は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。含水率を上記数値以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。なお、リンス液には後述する界面活性剤を添加できる。
【0039】
洗浄処理の方法としては、例えば一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0040】
<感放射線性樹脂組成物>
当該レジストパターン形成方法に用いられる感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体、[B]重合体、[C]酸発生体、[D]溶媒及び[E]化合物を含有する。[A]重合体は、カルボキシル基等の極性基に結合した酸解離性基を有し、この酸解離性基は[C]酸発生体から発生した酸の作用により解離する。[B]重合体は、[A]重合体よりもフッ素含有率が高く、レジスト膜表層に偏在化し、レジスト膜表面の疎水性を向上させる。さらに[D]溶媒に対して所定値以上の誘電率差を有する[E]化合物を加えることで、[B]重合体のレジスト表面への偏在化が選択的に促進される。その結果、レジスト膜表面での[A]重合体の濃度が低下することなるため、ミッシングコンタクトホールの発生を効果的に抑制することができる。また、当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、任意成分をさらに含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0041】
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸解離性基を有するベース重合体である。なお、「ベース重合体」とは、感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンを構成する重合体の主成分となる重合体をいい、好ましくは、レジストパターンを構成する全重合体に対して50質量%以上を占める重合体をいう。また、「酸解離性基」とは、カルボキシル基等の極性官能基中の水素原子を置換する基であって、露光により[C]酸発生体から発生した酸の作用により解離する基を意味する。
【0042】
[A]重合体は、上記酸解離性基を含む構造単位として、構造単位(I)を有することが好ましい。また、[A]重合体は、構造単位(I)以外にも、ラクトン含有基又は環状カーボネート含有基を含む構造単位(II)を有することが好ましく、親水性官能基を有する構造単位(III)を有していてもよい。[A]重合体は、各構造単位を1種又は2種以上有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0043】
[構造単位(I)]
[A]重合体は、下記式(1)で表される構造単位(I)を有することが好ましい。
【0044】
【化2】

【0045】
上記式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは酸解離性基である。
【0046】
で表される酸解離性基としては下記式(i)で表される基が好ましい。
【0047】
【化3】

【0048】
上記式(i)中、Rp1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。Rp2及びRp3はそれぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基である。なお、Rp2及びRp3は相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。
【0049】
p1、Rp2及びRp3で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0050】
p1、Rp2及びRp3で表される炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば
アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格を有する多環の脂環式基;
シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する単環の脂環式基が挙げられる。また、これらの基は、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換されていてもよい。
【0051】
これらのうち、Rp1が炭素数1〜4のアルキル基であり、Rp2及びRp3が相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子とともにアダマンタン骨格又はシクロアルカン骨格を有する2価の基を形成することが好ましい。
【0052】
構造単位(I)としては、例えば下記式(1−1)〜(1−4)で表される構造単位が挙げられる。
【0053】
【化4】

【0054】
上記式(1−1)〜(1−4)中、Rは上記式(1)と同義である。Rp1、Rp2及びRp3は上記式(i)と同義である。nは1〜4の整数である。
【0055】
上記式(1)又は(1−1)〜(1−4)で表される構造単位としては、例えば下記式で表される構造単位が挙げられる。
【0056】
【化5】

【0057】
【化6】

【0058】
上記式中、Rは上記式(1)と同義である。
【0059】
[A]重合体において、構造単位(I)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%〜60モル%であることが好ましい。構造単位(I)の含有率が上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のリソグラフィー特性がさらに向上する。
【0060】
[構造単位(II)]
[A]重合体は、ラクトン含有基又は環状カーボネート含有基を含む構造単位(II)(以下、「構造単位(II)」ともいう)を有することが好ましい。構造単位(II)を有することで、レジスト膜の基板への密着性を向上できる。ここで、ラクトン含有基とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する環式基を表す。また、環状カーボネート含有基とは、−O−C(O)−O−で表される結合を含むひとつの環(環状カーボネート環)を含有する環式基を表す。ラクトン環又は環状カーボネート環を1つめの環として数え、ラクトン環又は環状カーボネート環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
【0061】
構造単位(II)としては、例えば下記式で表される構造単位が挙げられる。
【0062】
【化7】

【0063】
【化8】

【0064】
上記式中、RL1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0065】
構造単位(II)を与える単量体は、例えば、下記式(L−1)で表される。
【0066】
【化9】

【0067】
上記式(L−1)中、RL1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RL2は単結合又は2価の連結基である。RL3はラクトン構造又は環状カーボネート構造を有する1価の有機基である。
【0068】
L2で表される2価の連結基としては、例えば炭素数1〜20の2価の直鎖状又は分岐状の炭化水素基等が挙げられる。
【0069】
L3が表すラクトン構造を有する1価の有機基としては、例えば下記式(L3−1)〜(L3−6)で表される基、環状カーボネート構造を有する1価の有機基としては、例えば(L3−7)及び(L3−8)で表される基が挙げられる。
【0070】
【化10】

【0071】
上記式(L3−1)及び(L3−4)中、RLc1は酸素原子又はメチレン基である。
上記式(L3−3)中、RLc2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。
上記式(L3−1)及び(L3−2)中、nLc1は0又は1である。
上記式(L3−3)中、nLc2は0〜3の整数である。
上記式(L3−7)中、nC1は0〜2の整数である。
上記式(L3−8)中、nC2〜nC5は、それぞれ独立して、0〜2の整数である。「*」は上記式(L−1)のRL2に結合する結合手を表す。なお、式(L3−1)〜(L3−8)で表される基は置換基を有していてもよい。
【0072】
上記構造単位(II)を与える好ましい単量体としては、例えば国際公開2007/116664号パンフレット段落[0043]に記載の単量体が挙げられる。
【0073】
[A]重合体において、構造単位(II)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%〜60モル%であることが好ましい。構造単位(II)の含有率を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンの密着性がさらに向上する。
【0074】
[構造単位(III)]
[A]重合体は、親水性官能基を有する構造単位(以下、「構造単位(III)」ともいう)を有してもよい。構造単位(III)としては、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0075】
【化11】

【0076】
上記式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0077】
[A]重合体において、上記構造単位(III)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して0〜30モル%が好ましく、0〜20モル%がより好ましい。
【0078】
[A]重合体は、上述した構造単位以外の構造単位を1種又は2種以上さらに有していてもよい。
【0079】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。
【0080】
上記ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等が挙げられる。この中で、AIBNが好ましい。これらのラジカル開始剤は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0081】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃であり、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、1時間〜24時間が好ましい。
【0083】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)としては、1,000〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がより好ましく、1,000〜30,000がさらに好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状を向上させることができる。
【0084】
[A]重合体のMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、通常1〜3であり、好ましくは1〜2である。
【0085】
<[B]重合体>
[B]重合体は、[A]重合体よりフッ素原子含有率が高い重合体である。当該レジストパターン形成方法で用いられる感放射線性樹脂組成物は[B]重合体を含有することによって、レジスト膜を形成した際に、膜中の[B]重合体の撥油性的特徴により、その分布がレジスト膜表層に偏在化する傾向がある。そのため、液浸露光時に酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制でき好ましい。また、この[B]重合体の撥水性的特徴により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。
【0086】
本発明においては、当該感放射線性樹脂組成物が[E]化合物を含有しているので、この[B]重合体のレジスト膜表層への偏在化が効果的に促進される。その結果、レジストパターンを形成するベース重合体である[A]重合体のレジスト被膜表層における存在割合が低下する。そのため、[C]酸発生体から発生した酸によって[A]重合体の酸解離性基が過剰に解離すること等に起因すると考えられるミッシングコンタクトホールの発生を効果的に抑制することができる。
【0087】
[B]重合体としては、上記性質を有する限り特に限定されないが、フッ素化アルキル基を有することが好ましい。[B]重合体が構造中にフッ素化アルキル基を有すると、上記特性がさらに向上する。
【0088】
[B]重合体は、フッ素原子を構造中に含む単量体を少なくとも1種類以上重合することにより形成される。フッ素原子を構造中に含む単量体としては主鎖にフッ素原子を含むもの、側鎖にフッ素原子を含むもの、主鎖と側鎖にフッ素原子を含むものが挙げられる。
【0089】
主鎖にフッ素原子を含む単量体としては、例えば、α−フルオロアクリレート化合物、α−トリフルオロメチルアクリレート化合物、β−フルオロアクリレート化合物、β−トリフルオロメチルアクリレート化合物、α,β−フルオロアクリレート化合物、α,β−トリフルオロメチルアクリレート化合物、1種類以上のビニル部位の水素原子がフッ素原子あるいはトリフルオロメチル基等で置換された化合物等が挙げられる。
【0090】
また、側鎖にフッ素原子を含む単量体としては、例えば、ノルボルネンのような脂環式オレフィン化合物の側鎖がフッ素あるいはフルオロアルキル基やその誘導基であるもの、アクリル酸あるいはメタクリル酸のフルオロアルキル基やその誘導基のエステル化合物、1種類以上のオレフィンの側鎖(二重結合を含まない部位)がフッ素原子あるいはフルオロアルキル基やその誘導基であるもの等が挙げられる。
【0091】
さらに、主鎖と側鎖にフッ素原子を含む単量体としては、例えば、α−フルオロアクリル酸、β−フルオロアクリル酸、α,β−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、β−トリフルオロメチルアクリル酸、α,β−トリフルオロメチルアクリル酸等のフルオロアルキル基やその誘導基のエステル化合物、1種類以上のビニル部位の水素原子がフッ素原子あるいはトリフルオロメチル基等で置換された化合物の側鎖をフッ素原子あるいはフルオロアルキル基やその誘導基で置換したもの、1種類以上の脂環式オレフィン化合物の二重結合に結合している水素原子をフッ素原子あるいはトリフルオロメチル基等で置換し、かつ側鎖がフルオロアルキル基やその誘導基であるもの等が挙げられる。なお、この脂環式オレフィン化合物とは環の一部が二重結合である化合物を示す。
【0092】
[B]重合体にフッ素原子を付与する構造単位は、以上に示したように特に限定されるものではないが、下記式(F1)で表される構造単位(以下、「構造単位(F−I)」ともいう)をフッ素付与構造単位として用いることが好ましい。
【0093】
【化12】

【0094】
上記式(F1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Aは、単結合又は2価の連結基である。Rは少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導基である。
【0095】
上記式(F1)におけるAで表される2価の連結基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、アミド基、スルホニルアミド基、ウレタン基等を挙げることができる。
【0096】
上記構造単位(F−I)を与える好ましい単量体としては、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0097】
上記[B]重合体は、この構造単位(F−I)を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。この構造単位(F−I)の含有率は、[B]重合体における全構造単位に対して、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上である。この構造単位(F−I)の含有率が5モル%未満であると、70度以上の後退接触角を達成できなかったり、レジスト被膜からの酸発生剤等の溶出を抑制できないおそれがある。
【0098】
[B]重合体には、上述のフッ素原子を構造中に有する構造単位以外にも、例えば、現像液に対する溶解速度をコントールするために酸解離性基を有する構造単位や、ラクトン骨格、環状カーボネート骨格、水酸基、カルボキシル基等を有する構造単位、又は脂環式基を有する構造単位や、基板からの反射による光の散乱を抑えるために、芳香族化合物に由来する構造単位等の「他の構造単位」を1種類以上含有させることができる。
【0099】
上記酸解離性基を有する他の構造単位としては、[A]重合体の構造単位(I)と同様のもの(以下、「構造単位(F−II)」ともいう)を使用することができる。
【0100】
酸解離性基を有する他の構造単位を与える単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸2−メチルアダマンチル−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルアダマンチル−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸1−(アダマンタン−1−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸1−メチル−1−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸1−エチル−1−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸1−メチル−1−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸1−エチル−1−シクロヘキシルエステル等が好ましい。
【0101】
上記ラクトン骨格又は環状カーボネート骨格を含有する他の構造単位としては[A]重合体の構造単位(II)と同様のものを使用することができる。(以下、「構造単位(F−III)」ともいう)
【0102】
上記脂環式基を含有する他の構造単位(以下、「構造単位(F−IV)」ともいう)としては、例えば、下記式(F2)で表される構造単位等を挙げることができる。
【0103】
【化13】

【0104】
上記式(F2)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Xは炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。
【0105】
上記式(F2)のXで表される炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン等のシクロアルカン類に由来する脂環族環からなる炭化水素基が挙げられる。
これらのシクロアルカン由来の脂環族環は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上あるいは1個以上で置換してもよい。これらは、これらのアルキル基によって置換されたものに限定されるものではなく、ヒドロキシル基、シアノ基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基又は酸素で置換されたものであってもよい。
【0106】
上記構造単位(F−IV)を与える好ましい単量体としては、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−7−イルエステル、(メタ)アクリル酸−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−2−イルエステル等が挙げられる。
【0107】
また、上記芳香族化合物に由来する他の構造単位(以下、「構造単位(F−V)」ともいう)を与える好ましい単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、4−(2−t−ブトキシカルボニルエチルオキシ)スチレン2−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、3−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、2−メチル−3−ヒドロキシスチレン、4−メチル−3−ヒドロキシスチレン、5−メチル−3−ヒドロキシスチレン、2−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレン、2,4,6−トリヒドロキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−t−ブトキシ−α−メチルスチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)スチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)−α−メチルスチレン、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン、4−(1−エトキシエトキシ)−α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、アセナフチレン、5−ヒドロキシアセナフチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−ビニルナフタレン、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、1−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、1−アントリル(メタ)アクリレート、2−アントリル(メタ)アクリレート、9−アントリル(メタ)アクリレート、9−アントリルメチル(メタ)アクリレート、1−ビニルピレン等が挙げられる。
【0108】
[B]重合体において、構造単位(F−II)、構造単位(F−III)、構造単位(F−IV)、構造単位(F−V)に代表される「他の構造単位」は、1種のみ含有されていてもよいし、2種以上が含有されていてもよい。このような他の構造単位の含有率は、[B]重合体を構成する全構造単位に対して、通常80モル%以下、好ましくは75モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。
【0109】
また、[B]重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、構造単位(F−I)〜(F−V)以外の構造単位を含んでいてもよい。
【0110】
また、[A]重合体及び[B]重合体のフッ素含有率(質量%)は、13C−NMR、H−NMR、IRスペクトルを測定することにより求めることができる。
【0111】
感放射線性樹脂組成物の固形分に含まれる[B]重合体の含有量としては1質量%以上10質量%以下が好ましく、1.5質量%以上8質量%以下がより好ましく、2質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。[B]重合体の含有量を上記範囲とすることにより、液浸露光におけるパターン形成性をより向上することができる。
【0112】
<[B]重合体の合成方法>
[B]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。
【0113】
上記ラジカル重合開始剤及び重合に使用される溶媒としては、例えば[A]重合体の合成方法で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0114】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃が好ましく、50℃〜120℃がより好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間が好ましく、1時間〜24時間がより好ましい。
【0115】
[B]重合体のMwとしては、1,000〜50,000が好ましく、1,000〜30,000がより好ましく、1,000〜10,000が特に好ましい。[B]重合体のMwが1,000未満の場合、十分な前進接触角を得ることができない。一方、Mwが50,000を超える場合、レジストとした際の現像性が低下する傾向にある。
【0116】
<[C]酸発生体>
[C]酸発生体は、露光により酸を発生し、その酸により[A]重合体中に存在する酸解離性基を解離させカルボキシル基等を発生させる。その結果、[A]重合体が現像液に難溶性となる。
当該組成物における[C]酸発生体の含有形態としては、後述するような化合物の形態(以下、適宜「[C]酸発生剤」と称する)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0117】
[C]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらの[C]酸発生剤のうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0118】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0119】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート及びトリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネートが好ましい。
【0120】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのテトラヒドロチオフェニウム塩のうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート及び1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0121】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのヨードニウム塩のうち、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0122】
スルホンイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等を挙げることができる。これらのスルホンイミド化合物のうち、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドが好ましい。
【0123】
これらの[C]酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[C]酸発生体が酸発生剤である場合の使用量としては、レジストとしての感度および現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、通常、0.1質量部以上20質量部以下であり、0.5質量部以上15質量部以下が好ましい。この場合、[C]酸発生剤の使用量が上記質量部未満であると、感度および現像性が低下する傾向があり、一方15質量部を超えることで、放射線に対する透明性が低下して、所望のレジストパターンを得られ難くなる傾向がある。
【0124】
<[D]溶媒>
[D]溶媒は、少なくとも上記の[A]重合体、[B]重合体、[C]酸発生体、[E]化合物及び必要に応じて加えられる任意成分を溶解できるものであれば特に限定されない。溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。
【0125】
[D]溶媒の具体例としては、上述のパターン形成工程(3)で列挙した有機溶媒と同様のもの等が挙げられる。これらのうち酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンが好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0126】
<[E]化合物>
[E]化合物は、[D]溶媒の比誘電率よりも15以上大きい比誘電率を有する化合物である。[E]化合物が[D]溶媒より所定値以上大きい比誘電率を有することで、[A]重合体よりもフッ素原子含有率の高い[B]重合体のレジスト表面への偏在化が選択的に促進される。その結果、レジスト膜表面での[A]重合体の濃度が低下することになるため、ミッシングコンタクトホールの発生を効果的に防止することができる。また、[B]重合体の撥水性的特徴を高めることにより、高速スキャンによる液浸露光をより高速で行うことができる。さらに、[E]化合物を感放射線性樹脂組成物に含有させることで、[B]重合体がレジスト膜表層に効率良く偏在化するため、[B]重合体の添加量を従来よりも少なくすることができる。
【0127】
[E]化合物としては、[D]溶媒の比誘電率よりも15以上大きい比誘電率を有するものであれば特に限定されない。[E]化合物としては、比誘電率が20以上75以下の低分子化合物が好ましく、25以上70以下の低分子化合物がより好ましい。比誘電率が20以上75以下の低分子化合物としては、例えばアセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0128】
[E]化合物としては、1気圧における沸点が180℃以上300℃以下の低分子化合物が好ましく、190℃以上280℃以下の低分子化合物がより好ましい。[E]化合物が上記範囲の沸点を有することで、レジスト被膜を形成する際のプレべーク(PB)等の後においても、[E]化合物がレジスト被膜中に残存できるので、[B]重合体のレジスト被膜表層への偏在化がさらに効果的に促進される。
【0129】
1気圧における沸点が180℃以上300℃以下の低分子化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、4−メチルアミノラクタム、γ−ブチロラクトン、1.2−ジクロルベンゼン、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3.5.5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0130】
[E]化合物としては、ラクトン化合物又は環状カーボネート化合物が好ましい。
【0131】
ラクトン化合物としては、例えばγ−ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、ノルボルナンラクトン等を挙げることができる。これらのうちγ−ブチロラクトンが好ましい。
【0132】
環状カーボネート化合物としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等を挙げることができる。これらのうち、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0133】
[E]化合物の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であり、25質量部以上150質量部以下が好ましく、50質量部以上150質量部以下がより好ましい。[E]化合物の含有量が上記下限未満であると、レジスト膜表層への[B]重合体の偏在化を促進させる効果が低下し、ミッシングコンタクトホールの発生抑制効果が低下する傾向にある。逆に[E]化合物の含有量が上記上限を超えると、リソグラフィー特性が低下するおそれがある。[E]化合物は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0134】
高い比誘電率を有する[E]化合物を添加することによりフォトレジスト膜の撥水性を向上させられる要因は定かではないが、高い比誘電率を有する[E]化合物を添加することにより膜全体の極性を高めることとなり、その結果、フッ素原子を含む[B]重合体のような表面エネルギーが小さいものを、より膜の上層へと偏在させることができると考えられる。
【0135】
<任意成分>
当該組成物は、[A]重合体、[B]重合体、[C]酸発生体、[D]溶媒及び[E]化合物に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分として酸拡散制御体、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等を含有できる。
【0136】
[酸拡散制御体]
酸拡散制御体は、露光により[C]酸発生体から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏し、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上するとともに、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。酸拡散制御体の当該組成物における含有形態としては、低分子化合物の形態(以下、適宜「酸拡散制御剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0137】
酸拡散制御剤としては、例えばアミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0138】
アミン化合物としては、例えばモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0139】
アミド基含有化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0140】
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0141】
含窒素複素環化合物としては、例えばイミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0142】
また、酸拡散制御剤として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基の一例として、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物がある。オニウム塩化合物としては、例えば下記式(K1)で表されるスルホニウム塩化合物、下記式(K2)で表されるヨードニウム塩化合物が挙げられる。
【0143】
【化14】

【0144】
上記式(K1)及び(K2)中、R〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子である。Zは、OH、R15−COO、R−SO−N−R15、R15−SO又は下記式(K3)で表されるアニオンである。R15は、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基である。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルカリール基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもいてもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基である。上記アルキル基及びシクロアルキル基の水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。但し、ZがR15−SOの場合、SOが結合する炭素原子にフッ素原子が結合する場合はない。
【0145】
【化15】

【0146】
上記式(K3)中、R11は水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。uは0〜2の整数である。
【0147】
上記光崩壊性塩基としては、例えば、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0148】
【化16】

【0149】
これらの酸拡散抑制体は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。酸拡散制御体の含有量としては、酸拡散制御剤の場合、[A]重合体100質量部に対して、5質量部未満が好ましい。酸拡散制御剤の含有量が5質量部を超えると、レジストとしての感度が低下する傾向にある。
【0150】
[界面活性剤]
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下、市販品として、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードBG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子工業製)等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0151】
[脂環式骨格含有化合物]
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0152】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば
1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等が挙げられる。これらの脂環式骨格含有化合物は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0153】
[増感剤]
増感剤は、[C]酸発生体の生成量を増加する作用を表すものであり、当該組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0154】
増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0155】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば[A]重合体、[B]重合体、[C]酸発生体、[D]溶媒、[E]化合物、及び、必要に応じてその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。当該感放射線性樹脂組成物の固形分濃度としては、通常、0.1質量%〜50質量%であり、0.5質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜15質量%がより好ましい。
【実施例】
【0156】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0157】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー製、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、以下の条件により測定した。
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業製)
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0158】
13C−NMR分析]
重合体の構造単位含有率(モル%)及びフッ素原子含有率(質量%)を求めるための13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子製、JNM−EX270)を使用して測定した。
【0159】
<重合体の合成>
[A]重合体及び[B]重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。
【0160】
【化17】

【0161】
なお、上記化合物(M−1)、(M−3)、(M−4)及び(M−6)は構造単位(I)を、化合物(M−2)は構造単位(II)を、化合物(M−5)はその他の構造単位をそれぞれ与える。
【0162】
<[A]重合体の合成>
[合成例1]
上記化合物(M−1)12.9g(50モル%)及び化合物(M−2)17.1g(50モル%)を2−ブタノン60gに溶解させ、さらにAIBN0.5gを溶解させた単量体溶液を調製した。次に、30gの2−ブタノンを投入した200mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を、滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合反応液を水冷して30℃以下に冷却し、600gのメタノールへ投入して、析出した白色粉末を濾別した。濾別した白色粉末を150gのメタノールにてスラリー状にして2度洗浄した後、再度濾別し、50℃にて17時間乾燥して白色粉末の重合体(A−1)を得た(収率:80%)。重合体(A−1)のMwは、13,000であり、Mw/Mnは1.4であった。13C−NMR分析の結果、重合体(A−1)における化合物(M−1)に由来する構造単位:化合物(M−2)に由来する各構造単位の含有率は、50:50(モル%)であった。
【0163】
[合成例2〜4]
下記表1に記載の種類及び使用量の単量体を用いた以外は、合成例1と同様に操作して重合体(A−2)〜(A−4)を得た。得られた各重合体の各構造単位の含有率、Mw、Mw/Mn比、収率(%)を合わせて表1に示す。
【0164】
【表1】

【0165】
<[B]重合体の合成>
[合成例5]
上記化合物(M−7)8.5g(30モル%)及び化合物(M−6)21.5g(70モル%)を2−ブタノン60gに溶解させ、さらにAIBN1.38gを溶解させた単量体溶液を調製した。次に30gの2−ブタノンを投入した200mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合反応液を水冷し30℃以下に冷却し、600gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末を濾別した。濾別した白色粉末を150gのメタノールにてスラリー状にして2度洗浄した後、再度濾別し、50℃にて12時間乾燥して白色粉末の重合体(B−1)を得た(収率:89%)。重合体(B−1)のMwは7,500であり、Mw/Mnは1.4であった。13C−NMR分析の結果、重合体(B−1)における化合物(M−3)に由来する構造単位:化合物(M−4)に由来する各構造単位の含有率は、30:70(モル%)であった。
【0166】
[合成例6]
単量体として、上記化合物(M−8)7.96g(20モル%)及び化合物(M−9)30.1g(80モル%)を用いた以外は合成例5と同様に操作して、重合体(B−2)を得た(収率:68%)。重合体(B−2)のMwは7,200であり、Mw/Mnは1.51であった。13C−NMR分析の結果、重合体(B−2)における化合物(M−8)に由来する構造単位:化合物(M−9)に由来する各構造単位の含有率は、20.5:79.5(モル%)であった。
【0167】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
上記合成例にて合成した[A]重合体及び[B]重合体以外の感放射線性樹脂組成物を構成する各成分([C]酸発生体、[D]溶媒、[E]化合物及び[F]酸拡散制御剤)について以下に示す。
【0168】
([C]酸発生体)
C−1:トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート(下記式(C−1)で表される化合物)
C−2:1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート(下記式(C−2)で表される化合物)
C−3:トリフェニルスルホニウム6−アダマンチルカルボニルオキシ−1,1,2,2−テトラフルオロヘキサン−1−スルホネート(下記式(C−3)で表される化合物)
【0169】
【化18】

【0170】
([D]溶媒)
D−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
溶媒(D−1)は、25℃における比誘電率が8で、1気圧における沸点が146℃である。
D−2:シクロヘキサノン
溶媒(D−2)は、25℃における比誘電率が18で、1気圧における沸点が156℃である。
【0171】
([E]化合物)
E−1:γ―ブチロラクトン(下記式(E−1)で表される化合物)
化合物(E−1)の25℃における比誘電率は42であり、1気圧における沸点は204℃である。
E−2:プロピレンカーボネート(下記式(E−2)で表される化合物)
化合物(E−2)の25℃における比誘電率は65であり、1気圧における沸点は240℃である。
【0172】
【化19】

【0173】
([F]酸拡散制御剤)
F−1:N−t−ブトキシカルボニルピロリジン(下記式(F−1)で表される化合物)
F−2:トリフェニルスルホニウムサリチレート(下記式(F−2)で表される化合物)
【0174】
【化20】

【0175】
[実施例1]
重合体(A−1)100質量部、重合体(B−1)3質量部、酸発生剤(C−1)9.5質量部、溶媒(D−1)2,010質量部及び溶媒(D−2)860質量部、化合物(E−1)100質量部、並びに酸拡散制御剤(F−1)0.94質量部を混合して均一溶液とした。その後、孔径200nmのメンブランフィルターを用いてろ過することにより、実施例1の感放射線性樹脂組成物(J−1)を調製した。感放射線性樹脂組成物(J−1)の固形分濃度(溶媒以外の成分の総濃度)は、5質量%であった。
【0176】
[実施例2〜20及び比較例1〜3]
実施例1において、配合する各成分の種類及び量を下記表2に記載の通りにした以外は、実施例1と同様にして、各実施例及び比較例の感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0177】
【表2】

【0178】
[実施例21]
<レジストパターンの形成>
12インチシリコンウェハ上に、下層反射防止膜形成用組成物(ARC66、ブルワーサイエンス製)をスピンコーター(CLEAN TRACK Lithius Pro i、東京エレクトロン製)を使用してスピンコートした後、205℃で60秒間PBを行うことにより膜厚105nmの塗膜を形成した。次に、上記スピンコーターを使用して、実施例1で得られた感放射線性樹脂組成物(J−1)をスピンコートし、90℃で60秒間PBした後、23℃で30秒間冷却することにより膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
【0179】
次いで、ArF液浸露光装置(NSR−S610C、ニコン精機カンパニー製)を使用し、NA=1.3、クアドロポールの光学条件にて、ベストフォーカスの条件で露光した。露光は1/4倍投影の上記ArF液浸露光装置を使用し、レチクル上のサイズは192nmクロム/384nmピッチで、マスクバイアスは0nmであった。その後、上記スピンコーターのホットプレート上で105℃で60秒間PEBを行い、23℃で30秒間冷却した後、メチル−n−ペンチルケトンを現像液として30秒間パドル現像を行い、4−メチル−2−ペンタノールで7秒間リンスを行った。2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、48nmホール/96nmピッチのレジストパターンを形成した。
【0180】
[実施例22〜40及び比較例4〜6]
実施例21において、用いる感放射線性樹脂組成物を、下記表2に記載の通りとした以外は、実施例21と同様にして、各実施例及び比較例に係るレジストパターンの形成を行った。
【0181】
<評価>
上記実施例22〜40及び比較例4〜6にて形成した各レジストパターンについて、ミッシングコンタクトホール発生抑制性、感度及び静的接触角を、下記方法に従って評価した。評価結果を表3に示す。
【0182】
[ミッシングコンタクトホール発生抑制性]
上記実施例及び比較例で形成したレジストパターンについて、走査型電子顕微鏡(「CG−4000」、日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観測し測長を行った。観測倍率を50Kとし一視野中に観測されたミッシングコンタクトホールの数を数えることでミッシングコンタクトホール発生抑制性を評価した。ミッシングコンタクトホール数が少なければ少ない程、ミッシングコンタクトホール抑制性が良好な結果と言える。
【0183】
[感度(mJ/cm)]
縮小投影露光後のホールパターンの直径が0.055μmとなるように、ドットパターンを有するマスクを、液浸水を介して露光し、形成されるホールパターンが直径0.055μmのホールサイズとなるような露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm)とした。なお、測長には上記走査型電子顕微鏡を用いた。
【0184】
[静的接触角]
まず、8インチシリコンウェハ上に、感放射線性樹脂組成物をスピンコートし、ホットプレート上で90℃の温度で、60秒間PBを行い、膜厚100nmの塗膜(フォトレジスト膜)を形成した。その後、接触角測定装置(「DSA−10」、KRUS製)を使用して、速やかに、室温:23℃、湿度:45%、常圧の環境下で、次の手順により静的接触角を測定した。
【0185】
接触角測定装置におけるウェハステージ位置を調整し、この調整したステージ上に上記ウェハをセットした。次に、針に水を注入し、上記セットしたウェハ上に水滴を形成可能な初期位置に上記針の位置を微調整した。その後、この針から9.8μL/分の速度で水を排出させて上記ウェハ上に6.5μLの水滴を形成し、この水滴から針を引き抜いた。
次いで、水滴を形成してから2秒後より4秒間掛けて同じポイントで10回静的接触角を連続測定した。この操作を異なる水滴形成場所で3回行い、計30点の測定値を平均して静的接触角の値とした。
【0186】
【表3】

【0187】
表3の結果から、本発明のレジストパターン形成方法及び感放射線性樹脂組成物によれば、ミッシングコンタクトホールの発生を抑制することができることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明は、液浸露光法において好適であり、有機溶媒を含む現像液を用いた場合におけるミッシングコンタクトホールの発生が抑制され、リソグラフィー特性に優れるレジストパターン形成方法及び感放射線性樹脂組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒が80質量%以上の現像液を用いるネガ型レジストパターン形成方法用の感放射線性樹脂組成物であって、
[A]酸解離性基を有するベース重合体、
[B][A]重合体よりフッ素原子含有率が高い重合体、
[C]感放射線性酸発生体、
[D]溶媒、及び
[E][D]溶媒の比誘電率よりも15以上大きい比誘電率を有する化合物
を含有し、
上記[A]重合体が、下記式(1)で表される構造単位を有し、
上記[E]化合物の含有量が、[A]重合体100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることを特徴とする感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは酸解離性基である。)
【請求項2】
[E]化合物の比誘電率が、20以上75以下である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
[E]化合物の1気圧における沸点が、180℃以上300℃以下である請求項1又は請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
[E]化合物がラクトン化合物及び環状カーボネート化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
[A]重合体の酸解離性基が、単環又は多環の脂環式炭化水素基を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。


【公開番号】特開2013−101371(P2013−101371A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281812(P2012−281812)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2012−518672(P2012−518672)の分割
【原出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】