説明

感熱性像形成要素

【化1】


感熱性像形成要素は式(I)[式中、R基の少なくとも1つはIR−照射または熱への露出により誘発される化学反応により該Rより強い電子−供与体である基に転換される基であるか、或いはR基の少なくとも1つはIR−照射または熱への露出により誘発される化学反応により該Rより強い電子−供与体である基に転換される基である]に従う構造を有するIR染料を含んでなる。像形成要素はIR−照射または加熱による像通りの露出後に高コントラストの可視性のプリント−アウト像を直接形成可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は式IのIR染料を含んでなる感熱性像形成要素に関する。より特に、本発明は該IR染料を含んでなる感熱性平版印刷版前駆体に関する。本発明はそれによりIR−照射線または熱への露出時に高コントラストのプリント−アウト像が形成される平版印刷版の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
平版印刷は典型的には、回転印刷機のシリンダー上に設置されるいわゆる印刷マスター、例えば印刷版、の使用を含む。マスターは平版像をその表面上に担持しそしてインキを該像に適用しそして次にインキをマスターから典型的には紙である受容体材料上に移すことにより印刷が得られる。従来の平版印刷では、インキ並びに水性湿し溶液(湿し液とも称する)が親油性(または疎水性、すなわちインキ−受容性、水−反撥性)領域並びに親水性(または疎油性、すなわち水−受容性、インキ−反撥性)領域よりなる平版像に適用される。いわゆるドリオグラフィー印刷では、平版像はインキ−受容性およびインキ−不粘着性(インキ−反撥性)領域よりなりそしてドリオグラフィー印刷中にインキだけがマスターに供給される。
【0003】
印刷マスターは版前駆体と称する像形成材料の像通りの露出および処理により一般的に得られる。典型的なポジ−作用性の版前駆体は親水性支持体および露出されない状態で水性アルカリ性現像剤中に易溶性でなくそして照射線に対する露出後に現像液中に可溶性になる親油性コーティングを含んでなる。フィルムマスクを通すUV接触露出に適する既知の感光性像形成材料(いわゆる前感光版)の他に、感熱性印刷版前駆体も非常に一般的になってきた。そのような熱的な材料は日光安定性の利点を与えそして版前駆体が直接的にすなわちフィルムマスクを使用せずに露出されるいわゆるコンピューター−ツー−プレート(computer−to−plate)方法で特に使用される。材料が熱または赤外線に露出されそして発生した熱が(物理−)化学的工程、例えば融除、重合、重合体の架橋結合によるまたは熱可塑性重合体ラテックスの粒子凝集による不溶性化、および分子内相互作用の停止によるまたは現像遮断層の浸透性の増加による可溶性化、を引き起こす。
【0004】
必要なら現像前にでも、露出された版前駆体が可視像、すなわちプリント−アウト像、を示すことが印刷版製造作業において重要である。これにより、最終使用者は前駆体がすでに露光されているかどうかを直ちに判断し、印刷版上の像を検査しそしてインキの色を適用すべき版を区別することができる。そのような作業工程では、露出された印刷版はその後に別個の現像段階でまたは印刷機上処理段階で現像されるか或いは現像段階なしで印刷工程でさらに使用される。
【0005】
印刷機上処理は特許文献1に開示されており、そこでは版が印刷機上に設置されそしてコーティング層が印刷操作中にシリンダーに適用される湿し水およびインキとの相互作用により現像される。印刷機の第一回操作中に、(ネガ−作用性前駆体用の)露出されなかった領域が支持体から除去されそしてそれにより版の非−印刷領域を規定する。印刷工程の開始前に版の現像が行われないため、プリント−アウト像の形成のない限り版の予めの検査および識別は可能でない。
【0006】
例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13お
よび特許文献14に開示されているようなプリント−アウト像を形成するための数種の方法が光重合体系に関して既知である。これらの材料では、光開始系は露出時にプリント−アウト像の形成を誘発する反応成分でありそしてその結果として平版識別工程の性能が減じられる。
【0007】
プリント−アウト像の形成は感熱性平版印刷版に関しても既知である。版は普通はIR−レーザーにより像通りに露出されそして必然的にIR−照射に関して敏感性である。これらの印刷版前駆体は、光−熱転換化合物としてのIR染料の他に、可視光線波長範囲内で吸収しそして加熱時に変色を受ける染料も含んでなる。この変色は例えば特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献13、特許文献18に開示されているような加熱時に漂白される熱−分解可能染料を用いて得られうる。
【0008】
変色は特許文献19および特許文献20に開示されているような加熱による可視染料の吸収極大の移行の結果でもありうる。
【0009】
特許文献21は、印刷版前駆体がIR−染料および染料−前駆体を含んでなり、染料−前駆体が可視光線波長範囲内で実質的な吸収のない平版印刷方法を開示している。IR−線を用いる像通りの露出で、染料が染料−前駆体から形成され、染料は可視光線波長範囲内の吸収を有する。特許文献22は、染料−前駆体(着色)を用いるまたはIR−線露出中に生成した酸もしくはラジカルによる変色を受ける染料を用いるIR−線露出時のプリント−アウト形成を記載している。
【0010】
特許文献17および特許文献22の感熱性平版印刷版前駆体は、IR−照射線から熱への転換用に作用し且つIR−照射により変色するIR染料を使用する。これらの先行技術材料では、IR染料は、IR波長範囲内の強い吸収の他に、可視波長範囲内の副次的吸収も示す。IR−露出により、IR染料は分解しそして可視波長範囲内のこの副次的吸収の減少によりプリント−アウト像が作製される。
【0011】
【特許文献1】欧州特許第770494号明細書
【特許文献2】米国特許第3,359,109号明細書
【特許文献3】米国特許第3,042,515号明細書
【特許文献4】米国特許第4,258,123号明細書
【特許文献5】米国特許第4,139,390号明細書
【特許文献6】米国特許第5,141,839号明細書
【特許文献7】米国特許第5,141,842号明細書
【特許文献8】米国特許第4,232,106号明細書
【特許文献9】米国特許第4,425,424号明細書
【特許文献10】米国特許第5,030,548号明細書
【特許文献11】米国特許第4,598,036号明細書
【特許文献12】欧州特許第0434968号明細書
【特許文献13】国際公開第96/35143号パンフレット
【特許文献14】米国特許出願公開第2003/68575号明細書
【特許文献15】独国特許第213530号明細書
【特許文献16】欧州特許第897134号明細書
【特許文献17】欧州特許第0925916号明細書
【特許文献18】欧州特許第1300241号明細書
【特許文献19】欧州特許第1502736号明細書
【特許文献20】欧州特許第0419095号明細書
【特許文献21】欧州特許第1508440号明細書
【特許文献22】欧州特許第1428676号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これらの先行技術材料の問題点はプリント−アウト像の低いコントラストである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要旨
本発明の目的は、IR−照射または加熱による像通りの露出後に高コントラストを有する可視像を直接形成可能な感熱性像形成要素を提供することである。この目的は、IR染料が請求項1で定義された構造を有する特徴を有する本発明の感熱性要素により実現される。
【0014】
本発明の好ましい態様では、請求項1で定義された構造を有するIR染料を含んでなる感熱性平版印刷版前駆体が開示される。
【0015】
本発明の別の好ましい態様では、プリント−アウト像を有する像通りに露出された感熱性平版印刷版前駆体を現像溶液で現像するかまたは湿潤現像せずにその後に使用する方法が開示される。
【0016】
本発明の別の好ましい態様では、プリント−アウト像を有する像通りに露出された感熱性平版印刷版前駆体を印刷機上処理段階で現像する方法が開示される。
【0017】
本発明の他の具体的な態様は従属請求項で定義されている。
【0018】
図面の簡単な記述
図1は種々の露出エネルギーにおける比較印刷版前駆体の吸収スペクトル:それぞれ0、125、200、275および350mJ/cmに関する曲線1〜5、アルミニウム支持体用の基準線に関する曲線6を示し;Aは各波長(nm)における吸収を表わす。
図2は種々の露出エネルギーにおける本発明に従う印刷版前駆体の吸収スペクトル:それぞれ0、125、200、275および350mJ/cmに関する曲線1〜5、アルミニウム支持体用の基準線に関する曲線6を示し;Aは各波長(nm)における吸収を表わす。
【0019】
発明の詳細な記述
本発明によると、式I
【0020】
【化1】

【0021】
[式中、
=は以下の構造:
【0022】
【化2】

【0023】
の1つにより表示され、
−は以下の構造:
【0024】
【化3】

【0025】
の1つにより表示され、
nは0、1、2または3であり、
pおよびqの各々は0、1または2であり、
およびRは独立して場合により置換されていてもよい炭化水素基であり、或いは該R、R、RまたはR基の2つは一緒になって環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、
基の少なくとも1つはIR−照射または熱への露出により誘発される化学反応により該Rより強い電子−供与体である基に転換される基であるか、或いは
基の少なくとも1つはIR−照射または熱への露出により誘発される化学反応により該Rより強い電子−供与体である基に転換される基であり、
他のRおよびR基は独立して水素原子、ハロゲン原子、−R、−OR、−SRおよび−NRよりなるリストから選択される基により表示され、ここでR、R、R、RおよびRは独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、そして
該転換が400〜700nmの間の該染料の統合した光吸収の増加を与える
ことにより特徴づけられる]
に従う構造を有するIR染料を含んでなる感熱性像形成要素が提供される。染料は電気的に中性の分子を得るために1つもしくはそれ以上の対イオンを含んでなりうる。
【0026】
本発明の像形成要素はIR−照射または熱への露出でプリント−アウト像を形成可能である。プリント−アウト像は式IのIR染料により形成され、ここでR基はRより強い電子−供与体である基への化学反応により転換され、或いはここでR基はRより強い電子−供与体である基への化学反応により転換される。この転換はスペクトルの可視波長範囲内で、すなわち400〜700nmの間で統合された光吸収の増加をもたらす。これは図2に明白に示されており、そこではIR−照射により本発明のIR−染料を含んでなる印刷版前駆体は可視範囲内で吸収の増加を示すがIR−波長範囲内の吸収は減少する。このプリント−アウト像の形成は、IR−染料分解が可視スペクトル、すなわち約600〜700nmの間で吸収のわずかな減少だけを生ずる図1で比較IR−染料に関して示されている漂白方法とは明らかに異なる。400nm〜約600nmの間の波長範囲内の吸収の実質的な増加がないため、スペクトルの可視部分における光学濃度の増加は観察されない。本発明のIR染料は可視波長範囲内で光学濃度の増加を示すことができ、そしてその結果としてプリント−アウト像のコントラストは漂白だけが起きるIR−染料と比べて改良されうる。
【0027】
本発明の好ましい態様によると、
化学反応により転換される該R基は
【0028】
【化4】

【0029】
よりなるリストから選択され、
ここで
a、b、cおよびdは独立して0または1であり、
−L−は結合基であり、
17は水素原子、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはR17およびR、R17およびR、またはR17およびR11は一緒になって環式構造、好ましくは5−もしくは6−員環、を形成するのに必要な原子を含んでなり、
は−OR10、−NR1314または−CFであり、
ここで
10は場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基またはアルファ−分枝鎖状の脂肪族炭化水素基、好ましくはアルファ−分枝鎖状の脂肪族炭化水素基、より好ましくは第二級もしくは第三級脂肪族炭化水素基、最も好ましくは第三級ブチル基、であり、R13およびR14は独立して水素原子、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはR13およびR14は一緒になって環式構造、好ましくは5−もしくは6−員環、を形成するのに必要な原子を含んでなり、
は水素原子、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはRはR10、R13およびR14の少なくとも1つと一緒になって環式構造、好ましくは5−もしくは6−員環、を形成するのに必要な原子を含んでなり、
は場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基もしくは場合により置換されて
いてもよい(ヘテロ)アリール基、−OR10、−NR1314または−CFであり、ここでR10、R13およびR14はRにおけるものと同じ意味を有し、
は水素原子、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはRはR10、R13およびR14の少なくとも1つと一緒になって環式構造、好ましくは5−もしくは6−員環、を形成するのに必要な原子を含んでなり、
11、R15およびR16は独立して水素原子、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはR15およびR16は一緒になって環式構造、好ましくは5−もしくは6−員環、を形成するのに必要な原子を含んでなり、
12は場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、
およびRは独立して水素原子または場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、
は−COOまたは−COOR8’であり、ここでR8’が水素原子、アルカリ金属カチオン、アンモニウムイオンまたはモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ−アルキルアンモニウムイオンであり、
18は場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基またはアルファ−分枝鎖状の脂肪族炭化水素基、好ましくはアルファ−分枝鎖状の脂肪族炭化水素基、より好ましくは第二級もしくは第三級脂肪族炭化水素基、最も好ましくは第三級ブチル基である。
【0030】
本発明の別の好ましい態様によると、IR−染料は以下の式II、IIIまたはIV
【0031】
【化5】

【0032】
[式中、
Ar、ArおよびArは独立して場合により置換されていてもよい芳香族炭化水素基または場合により置換されていてもよい縮合ベンゼン環を有する芳香族炭化水素基であり、
およびWは独立して硫黄原子または−CM1011基であり、ここでM10およびM11は独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはM10およびM11は一緒になって環式構造、好ましくは5−もしくは6−員環、を形成するのに必要な原子を含んでなり、
およびMは独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、或いはMおよびMは一緒になって場合により置換されていてもよい環式構造、好ましくは5−もしくは6−員環、より好ましくは5−員環、最も好ましくは炭素数5の環式構造を有する5−員環、を形成するのに必要な原子を含んでなり、
およびMは独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、
、M、M、M、M16およびM17は独立して水素原子、ハロゲン原子または場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、
は硫黄原子または−CA=CA−基であり、
12およびM13は独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いは該M12、M13、AまたはAの2つは一緒になって少なくとも1つの環式構造、好ましくは5−もしくは6−員環、を形成するのに必要な原子を含んでなり、
は硫黄原子または−CA=CA−基であり、
〜Aは独立して水素原子、ハロゲン原子、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはAおよびA、AおよびA、AおよびA、または、AおよびAの各々は一緒になって環式構造、好ましくは5−もしくは6−員環、を形成するのに必要な原子を含んでなり、
14およびM15は独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いは該M14、M15、AまたはAの2つは一緒になって少なくとも1つの環式構造、好ましくは5−もしくは6−員環、を形成するのに必要な原子を含んでなり、そして
は化学反応により転換されるR基である]
の1つの構造を有する。
【0033】
染料は置換基のタイプおよび各置換基の数により中性、アニオン性またはカチオン性染料でありうる。好ましい態様では、式II、IIIまたはIVの染料は−COH、−CONHSO、−SONHCOR、−SONHSO、−PO、−OPO、−OSOH、もしくは−SOH基よりなるリストから選択される少なくとも1つのアニオン性基もしくは酸基またはそれらの対応する塩を有し、ここでR、RおよびRは独立してアリールまたはアルキル基、好ましくはメチル基であり、そしてここで塩は好ましくはアルカリ金属塩またはモノ−もしくはジ−もしくはトリ−もしくはテトラ−アルキルアンモニウム塩を包含するアンモニウム塩である。これらのアニオン性または酸基はAr、ArまたはArの芳香族炭化水素基もしくは縮合ベンゼン環の上に、またはM、MもしくはM12〜M15の脂肪族炭化水素基の上に、またはM12〜M15の(ヘテロ)アリール基の上に存在しうる。他の置換基はハロゲン原子、シアノ基、スルホン基、カルボニル基またはカルボン酸エステル基から選択されうる。
【0034】
別の好ましい態様では、M、MまたはM12〜M15の脂肪族炭化水素基の各々はこれらの基の少なくとも1つで、より好ましくは−COH、−CONHSO−Me、−SONHCO−Me、−SONHSO−Me、−POもしくは−SO
基またはそれらの対応する塩で末端置換されており、ここでMeはメチル基を表わす。
【0035】
本発明の別の好ましい態様によると、IR−染料は以下の式II−10、II−11、II−20、II−21、III−10、III−11、III−20、III−21、IV−10、IV−11、IV−20またはIV−21:
【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
[式中、
QはO、S、−CRまたは−COORであり、ここでR、RおよびRは独立して水素原子またはアルキル基でありそして
他の基は式II、IIIおよびIVで定義されたものと同じ意味を有する]
の1つの構造を有する。
【0040】
本発明に従うIR−染料の適当な例は以下のものである:
【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
【化18】

【0051】
【化19】

【0052】
【化20】

【0053】
【化21】

【0054】
【化22】

【0055】
【化23】

【0056】
【化24】

【0057】
【化25】

【0058】
【化26】

【0059】
本発明の別の態様によると、(i)親水性表面を有するかまたは親水性層が付与されている支持体、および、(ii)該支持体上の、式I、II、IIIまたはIVのIR染料を含んでなるコーティング、を含んでなる感熱性平版印刷版前駆体が提供される。コーテ
ィングは以下で「感熱性コーティング」とも称する。
【0060】
本発明の感熱性コーティングは少なくとも1つもしくはそれ以上の層、例えば像記録層、頂部層、支持体と像−記録層との間の中間層および/または頂部層と像−記録層との間の中間層を含んでなりうる。
【0061】
本発明のIR染料は感熱性コーティングの少なくとも1つの層の中に、例えば像記録層中に、頂部層中に、支持体と像−記録層との間の中間層中にまたは頂部層と像−記録層との間の中間層中に、好ましくは像−形成層の中におよび/または頂部層中に存在しうる。
【0062】
感熱性コーティングの中のIR−染料の濃度は感熱性コーティングのタイプに依存する。光重合可能な組成物、熱可塑性重合体粒子、マイクロカプセル、変換可能な重合体、またはアルカリ可溶性重合体を溶解度抑制化合物と一緒に含んでなる感熱性コーティングは、普通は本発明のIR染料を、コーティング全体に関して、0.25〜50重量%の間の、好ましくは0.5〜30重量%の間の、より好ましくは0.7〜20重量%の間の範囲にわたる濃度で含有する。IR−照射または加熱の影響下で融除する感熱性コーティングはそれより高い濃度の、コーティング全体に関して、好ましくは50〜100重量%の間の、より好ましくは75〜100重量%の間のIR−染料を含有しうる。
【0063】
感熱性コーティングは、他の赤外吸収化合物、例えばIR−シアニン染料、IR−メロシアニン染料、IR−メチン染料、IR−ナフトキノン染料もしくはIR−スクアリリウム染料、2つのインドレニン基を有するIR−シアニン染料、または2つのスルホン酸もしくはカルボン酸基を有するアニオン性IR−シアニン染料、をさらに含んでなりうる。
【0064】
感熱性コーティングは、他の成分、例えば追加の結合剤、現像抑制剤または促進剤、をさらに含有しうる。
【0065】
本発明で使用される印刷版前駆体は赤外線で、例えば赤外レーザーにより、露出させる。好ましくは、約700〜約1500nmの範囲内の波長を有する近赤外光線を発光するレーザー、例えば半導体レーザーダイオード、Nd:YAGまたはNd:YLFレーザー、が使用される。必要なレーザー出力は、像記録層の感度、点直径(最大強度の1/eにおける最新プレート−セッターの典型値:10〜25μm)により測定されるレーザービームの画素滞在時間、露出装置の走査速度および解像度(すなわちしばしば1インチ当たりのドットまたはdpiで表わされる単位線状距離当たりのアドレス可能な画素数)に依存する。2つのタイプのレーザー−露出装置である内部(ITD)および外部ドラム(XTD)プレート−セッターが普遍的に使用される。熱版用のITDプレート−セッターは典型的には500m/秒までの非常に高い走査速度により特徴づけられそして数ワットのレーザー出力を必要としうる。約200mW〜約1Wの典型的なレーザー出力を有する熱版用のXTDプレート−セッターはそれより低い走査速度、例えば0.1〜10m/秒において操作される。
【0066】
場合により存在しうる現像段階において、露出された領域を本質的に除去せずに、すなわち露出された領域に露出された領域のインキ−受容性を許容不能にさせる程度まで影響を与えずに、像−記録層の露出されなかった領域を除去する。像−記録層の露出されなかった領域は現像溶液の供給により除去できる。現像溶液は水、水溶液、ゴム溶液または水性アルカリ性溶液でありうる。現像を、例えば回転ブラシによる、機械的なこすりと組み合わせることができる。現像溶液は版に、例えば浸漬されたパッドを用いてこすり込むことにより、浸漬、(回転−)コーティング、噴霧、注ぎにより、手によりもしくは自動的処理装置内のいずれかで、適用することができる。
【0067】
本発明の別の態様では、像通りに露出された印刷版前駆体を印刷機の印刷シリンダーの上に設置しそして印刷シリンダーを回転しながら水性湿し液および/またはインキを版の表面に供給することによってもそれを現像することができる。この現像段階は「印刷機上現像」または「印刷機上処理」とも称する。
【0068】
本発明の別の態様によると、
(i)感熱性平版印刷版前駆体を準備し、そして
(ii)前駆体をIR−照射または熱に像通りに露出してIR染料の該転換およびプリント−アウト像の形成を誘発する
段階を含んでなる湿潤処理なしの平版印刷版の製造方法が開示される。この方法の好ましい態様では、像通りの露出段階におけるエネルギー密度は多くとも300mJ/cm、好ましくは多くとも250mJ/cm、より好ましくは多くとも200mJ/cm、最も好ましくは多くとも175mJ/cmである。
【0069】
本発明の別の態様によると、
(i)感熱性平版印刷版前駆体を準備し、
(ii)前駆体をIR−照射または熱に像通りに露出してIR染料の該転換およびプリント−アウト像の形成を誘発し、そして
(iii)像通りに露出された前駆体を現像する
段階を含んでなる平版印刷版の製造方法が開示される。この現像段階で使用される現像溶液は水、水溶液、ゴム溶液または水性アルカリ性溶液でありうる。この方法の好ましい態様では、像通りの露出段階におけるエネルギー密度は多くとも300mJ/cm、好ましくは多くとも250mJ/cm、より好ましくは多くとも200mJ/cm、最も好ましくは多くとも175mJ/cmである。
【0070】
本発明の別の態様では、像通りに露出された前駆体を印刷機上に設置しそして前駆体を印刷機上現像段階において現像することにより現像段階は好ましく行われる。この印刷機上現像段階において、版を印刷機上で回転しながら湿し溶液およびインキが前駆体に供給されて前駆体の非−印刷領域上のコーティングの溶解をもたらす。この方法の好ましい態様では、像通りの露出段階におけるエネルギー密度は多くとも300mJ/cm、好ましくは多くとも250mJ/cm、より好ましくは多くとも200mJ/cm、最も好ましくは多くとも175mJ/cmである。
【0071】
本発明のより好ましい態様によると、本発明のIR染料は以上で定義されたアニオン性または酸基で置換される。これは、像通りに露出された前駆体を水、水溶液またはゴム溶液で現像する時並びに像通りに露出された前駆体を印刷機上現像段階で湿し溶液を用いて現像して染料汚染の危険性を最少にする時に、特に有利である。
【0072】
像通りの露出後に印刷版前駆体を現像溶液で処理するこれらのシステムでは、感熱性コーティングは一般的に追加のコントラスト染料を含んでなる。処理後に、このコントラスト染料を含んでなるコーティングは印刷領域にのみ版上に実質的に残りそして非−像形成領域上では版から除去されて、処理後に可視コントラストを生ずる。本発明によると、本発明のIR染料は処理後に、そのようなコントラスト染料の添加なしにまたはコントラスト染料の量を減少させることにより、良好なまたはより良好なコントラストを形成するという追加の利点を有することができる。そのようなコントラスト染料の省略または減少は印刷版の非−印刷領域におけるクリーン−アウトの改良におけるさらに別の利点を有することができる。湿潤処理中に、支持体の親水性表面上のコントラスト染料の望ましくない吸着が起きて、非−印刷領域内の支持体の減少した親水性をもたらしそして増加した調色傾向をもたらす。これらの2つの利点は実施例に示されている。
【0073】
印刷版前駆体の支持体はシート類似材料、例えば板、であることができ、或いはそれは円筒状部品、例えば印刷機の印刷シリンダーの周りを滑ることができるスリーブ、でありうる。好ましくは、支持体は金属支持体、例えばアルミニウムまたはステンレス鋼、である。
【0074】
特に好ましい平版支持体は、電気化学的に研磨されそして陽極酸化されたアルミニウム支持体である。アルミニウム支持体の研磨および陽極酸化は既知である。本発明の材料中で使用される研磨されたアルミニウム支持体は好ましくは電気化学的に研磨された支持体である。研磨に使用される酸は例えば硝酸または硫酸でありうる。研磨に使用される酸は例えば硝酸または硫酸を含んでなる。研磨に使用される酸は好ましくは塩化水素を含んでなる。例えば塩化水素および酢酸の混合物を使用することもできる。電気化学的研磨と陽極酸化パラメーター、一方では例えば電極電圧、酸電解質の性質および濃度、または電力消費量、そして他方ではRaに換算された得られた平版性質および陽極重量(g/アルミニウム表面上に形成されたAl)、との間の関係は既知である。種々の製造パラメーターとRaまたは陽極重量との間の関係に関するさらなる詳細は例えば論文“Management of Change in the Aluminium Printing Industry”by F.R.Mayers,published in the ATB Metallurgie Journal,volume 42 nr.1−2(2002)pag.69に見ることができる。
【0075】
陽極酸化されたアルミニウム支持体をいわゆる後−陽極処理にかけてその表面の親水性質を改良することができる。例えば、アルミニウム支持体をその表面を珪酸ナトリウム溶液で高められた温度、例えば95℃、において処理することにより珪酸処理することができる。或いは、酸化アルミニウム表面を無機弗化物をさらに含有しうる燐酸塩溶液で処理することを包含する燐酸塩処理を適用することができる。さらに、酸化アルミニウム表面をクエン酸またはクエン酸塩溶液ですすぐこともできる。この処理は室温において行うことができ、または約30〜50℃のわずかに高められた温度において行うこともできる。別の興味ある処理は炭酸水素塩溶液による酸化アルミニウム表面のすすぎを包含する。さらに別に、酸化アルミニウム表面をポリビニルホスホン酸、ポリビニルメチルホスホン酸、ポリビニルアルコールの燐酸エステル類、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルベンゼンスルホン酸、ポリビニルアルコールの硫酸エステル類、およびスルホン化された脂肪族アルデヒドとの反応により生成したポリビニルアルコール類のアセタール類で処理することができる。
【0076】
別の有用な後−陽極処理は、ポリアクリル酸または少なくとも30モル%のアクリル酸単量体単位、例えばアライド・コロイズ(ALLIED COLLOIDS)から市販されているポリアクリル酸であるグラスコル(GLASCOL)E15、を含んでなる重合体の溶液を用いて行われる。
【0077】
支持体は柔軟性支持体であることもでき、それには以下で「ベース層」と称する親水性層を付与することができる。柔軟性支持体は例えば紙、プラスチックフィルムまたはアルミニウムである。プラスチックフィルムの好ましい例はポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどである。プラスチックフィルム支持体は不透明または半透明でありうる。
【0078】
ベース層は好ましくは、硬化剤、例えばホルムアルデヒド、グリオキサル、ポリイソシアネートまたは加水分解されたオルト珪酸テトラ−アルキルエステル、と架橋結合された親水性結合剤から得られる架橋結合された親水性層である。後者が特に好ましい。親水性ベース層の厚さは0.2〜25μmの範囲内で変動することができそして好ましくは1〜
10μmである。ベース層の好ましい態様のさらなる詳細は例えば欧州特許出願公開第1025992号明細書に見ることができる。
【0079】
好ましい態様では、感熱性コーティングは親水性結合剤の中に分散された疎水性の熱可塑性重合体粒子を含んでなりうる。
【0080】
このタイプの像−記録層では、露出段階中に発生する熱のため、疎水性の熱可塑性重合体粒子は融合または凝集して印刷版の印刷領域に相当する疎水性相を形成する。凝集は熱可塑性重合体粒子の熱で誘発される合着、軟化または溶融から生じうる。熱可塑性の疎水性重合体粒子の凝集温度に関する特定の上限はないが、その温度は重合体粒子の分解温度より充分に低くなくてはならない。好ましくは、凝集温度は重合体粒子の分解が起きる温度より少なくとも10℃低い。凝集温度は好ましくは50℃より高く、より好ましくは100℃より高い。
【0081】
現像段階において、露出されなかった領域を本質的に除去せずに、すなわち露出された領域に露出された領域のインキ−受容性を受容できないほどにする程度まで影響を与えずに、現像溶液を供給することにより像−記録層の露出されなかった領域を除去することができる。現像溶液は水、水溶液または水性アルカリ性溶液でありうる。現像溶液を供給することによる現像を、例えば回転ブラシによる、機械的なこすりと組み合わせることができる。現像溶液は版に、例えば浸漬されたパッドを用いてこすり込むことにより、浸漬、(回転−)コーティング、噴霧、注ぎにより、手によりもしくは自動的処理装置内のいずれかで、適用することができる。像通りに露出された印刷版前駆体を印刷機上処理においてそれを印刷機の印刷シリンダー上に設置しそして印刷シリンダーを回転させながら水性湿し液および/またはインキを版の表面に供給することにより現像することもできる。
【0082】
適する疎水性の熱可塑性重合体の具体例は例えばポリエチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ((メタ)アクリル酸メチル)、ポリ((メタ)アクリル酸エチル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリスチレンまたはそれらの共重合体である。ポリスチレンおよびポリ(メタ)アクリロニトリルまたはそれらの誘導体が非常に好ましい態様である。そのような好ましい態様によると、熱可塑性重合体は少なくとも50重量%のポリスチレン、そしてより好ましくは少なくとも60重量%のポリスチレン、を含んでなる。有機化学物質、例えば版クリーナー中で使用される炭化水素類、に対する充分な耐性を得るために、熱可塑性重合体は好ましくは少なくとも5重量%の、より好ましくは少なくとも30重量%の、窒素含有単量体単位または20より大きい溶解度パラメーターにより特徴づけられる単量体に相当する単位、例えば(メタ)アクリロニトリルを含んでなる。そのような窒素含有単量体単位の適する例は欧州特許出願公開第1219416号明細書に開示されている。
【0083】
非常に好ましい態様によると、熱可塑性重合体は1:1〜5:1(スチレン:アクリロニトリル)の間の重量比、例えば2:1比のスチレンおよびアクリロニトリル単位よりなる共重合体である。
【0084】
熱可塑性重合体粒子の重量平均分子量は5,000〜1,000,000g/モルの範囲にありうる。疎水性粒子は好ましくは200nmより小さい、より好ましくは10〜100nmの間の、最も好ましくは45〜63nmの間の数平均粒子直径を有する。像−記録層の中に含有される疎水性の熱可塑性重合体粒子の量は好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも70重量%そして最も好ましくは70重量%〜85重量%の間である。
【0085】
疎水性の熱可塑性重合体粒子は像−記録層の水性コーティング液中分散液として存在す
ることができそして米国特許第3,476,937号明細書に開示されている方法により製造することができる。熱可塑性重合体粒子の水性分散液の製造に特に適する別の方法は、
−疎水性の熱可塑性重合体を有機性水不混和性溶媒中に溶解させ、
−このようにして得られた溶液を水中または水性媒体中に分散させそして
−有機溶媒を蒸発により除去する
ことを含んでなる。
【0086】
像記録層は好ましくは親水性結合剤、例えばビニルアルコール、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルのホモ重合体および共重合体、または無水マレイン酸/ビニルメチルエーテル共重合体、をさらに含んでなる。使用される(共)重合体または(共)重合体混合物の親水性度は好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは80重量%、の程度まで加水分解されたポリ酢酸ビニルの親水性度と同じであるかまたはそれより高い。
【0087】
別の好ましい態様では、感熱性コーティングは光重合体または光重合可能な組成物も含んでなりうる。
【0088】
このタイプの像−記録層では、露出段階中に発生する熱により、光重合体または光重合可能な組成物は硬化して、印刷版の印刷領域に相当する疎水性相を形成する。ここで、「硬化した」はコーティングが現像剤に関して不溶性または非−分散性になることを意味し、そして感光性コーティングの重合および/または架橋結合、場合によりその後の重合および/または架橋結合反応を促進または加速するための加熱段階により達成されうる。この場合により行われる以下で「予備−加熱」とも称する加熱段階において、版前駆体は好ましくは約80℃〜150℃の温度にそして好ましくは約5秒間〜1分間の滞在時間にわたり加熱される。
【0089】
支持体上に付与された光重合可能なコーティングは重合可能な単量体またはオリゴマーおよび該重合可能な単量体またはオリゴマーを硬化させうる開始剤および場合により像通りの露出段階で使用される光線を吸収可能な増感剤を含んでなる。
【0090】
光重合可能なコーティングのコーティング厚さは好ましくは0.1〜4.0g/mの間、より好ましくは0.4〜2.0g/mの間である。
【0091】
ある態様では、重合可能な単量体またはオリゴマーは少なくとも1つのエポキシまたはビニルエーテル官能基を含んでなる単量体またはオリゴマーであることができ、そして該開始剤は、場合により増感剤の存在下で、露出時に遊離酸を発生可能なブロンステッド酸発生剤であることができ、以下で該開始剤は「カチオン性光開始剤」または「カチオン性開始剤」とも称する。適する多官能性エポキシ単量体は、例えば、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)、二官能性ビスフェノールAエピクロロヒドリンエポキシ樹脂および多官能性エピクロロヒドリンテトラフェニロールエタンエポキシ樹脂(multifunctional epichlorohydrinitetraphenylol ethane epoxy resin)を包含する。適するカチオン性光開始剤は、例えば、ヘキサフルオロアンチモン酸トリアリールスルホニウム、ヘキサフルオロ燐酸トリアリールスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ジアリールヨードニウム、およびハロアルキル置換されたs−トリアジンを包含する。ほとんどのカチオン性開始剤は、ブロンステッド酸を発生する他に、光または熱分解中にフリーラジカルも発生するため、それらはフリーラジカル開始剤でもあることが注目される。
【0092】
別の態様では、重合可能な単量体またはオリゴマーは以下で「フリーラジカル重合可能単量体」とも称する少なくとも1つの末端エチレン基を有するエチレン系不飽和化合物であることができ、そして該開始剤は、場合により増感剤の存在下で、露出時に遊離酸を発生可能な化合物であることができ、以下で該開始剤は「フリーラジカル開始剤」とも称する。適するフリーラジカル重合可能単量体は、例えば、多官能性(メタ)アクリル酸エステル単量体(例えばエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エトキシル化されたエチレングリコールおよびエトキシル化されたトリメチロールプロパンの(メタ)アクリル酸エステル類、多官能性ウレタン化(メタ)アクリル酸エステル、およびエポキシル化(メタ)アクリル酸エステル)、並びにオリゴマー状アミンジアクリル酸エステル類を包含する。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸エステル基の他に、他の二重結合またはエポキシド基を有することもできる。(メタ)アクリル酸エステル単量体は酸性(例えばカルボン酸)または塩基性(例えばアミン)官能基も含有しうる。露出時に増感剤の存在下でフリーラジカルを発生可能ないずれのフリーラジカル開始剤でも本発明のフリーラジカル開始剤として使用することができる。適するフリー−ラジカル開始剤は、例えば、アセトフェノンの誘導体(例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、および2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル−2−モルホリノプロパン−1−オン];ベンゾフェノン;ベンジル;ケトクマリン(例えば3−ベンゾイル−7−メトキシクマリンおよび7−メトキシクマリン);キサントン;チオキサントン;ベンゾインまたはアルキル−置換されたアントラキノン;オニウム塩(例えばヘキサフルオロアンチモン酸ジアリールヨードニウム、ジアリールヨードニウムトリフラート、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−(2−ヒドロキシテトラデシル−オキシ)−フェニル)フェニルヨードニウム、ヘキサフルオロ燐酸トリアリールスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリアリールスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸(3−フェニルプロパン−2−オニル)トリアリールホスホニウム、およびヘキサフルオロ燐酸N−エトキシ(2−メチル)ピリジニウム、並びに米国特許第5,955,238号明細書、第6,037,098号明細書、および第5,629,354号明細書に記載されているオニウム塩);ホウ酸塩(例えばトリフェニル(n−ブチル)ホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフェニル(n−ブチル)ホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸ジフェニルヨードニウム、およびトリフェニル(n−ブチル)ホウ酸トリフェニルスルホニウム、並びに米国特許第6,232,038号明細書および第6,218,076号明細書に記載されているホウ酸塩);ハロアルキル置換されたs−トリアジン類(例えば2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ−スチリル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−s−トリアジン、および2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[(4−エトキシ−エチレンオキシ)−フェン−1−イル]−s−トリアジン、並びに米国特許第5,955,238号明細書、第6,037,098号明細書、第6,010,824号明細書および第5,629,354号明細書に記載されているs−トリアジン類);並びにチタノセン(ビス(etha.9−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタン)を包含する。オニウム塩、ホウ酸塩、およびs−トリアジン類が好ましいフリーラジカル開始剤である。ジアリールヨードニウム塩およびトリアリールスルホニウム塩が好ましいオニウム塩である。トリアリールアルキルホウ酸塩が好ましいホウ酸塩である。トリクロロメチル置換されたs−トリアジン類が好ましいs−トリアジン類である。
【0093】
さらに別の態様では、重合可能な単量体またはオリゴマーは少なくとも1つのエポキシまたはビニルエーテル官能基を含んでなる単量体またはオリゴマーおよび少なくとも1つの末端エチレン基を有する重合可能なエチレン系不飽和化合物の組み合わせであることができ、そして該開始剤はカチオン性開始剤およびフリー−ラジカル開始剤の組み合わせで
ありうる。少なくとも1つのエポキシまたはビニルエーテル官能基を含んでなる単量体またはオリゴマーおよび少なくとも1つの末端エチレン基を有する重合可能なエチレン系不飽和化合物は、化合物がエチレン基およびエポキシまたはビニルエーテル基の両方を含有する同一化合物でありうる。そのような化合物の例はエポキシ官能性アクリル系単量体、例えばアクリル酸グリシジルを包含する。フリーラジカル開始剤およびカチオン性開始剤は、化合物がフリーラジカルおよび遊離酸の両方を発生可能であるなら同一化合物でありうる。そのような化合物の例は、増感剤の存在下でフリーラジカルおよび遊離酸の両方を発生可能である種々のオニウム塩、例えばヘキサフルオロアンチモン酸ジアリールヨードニウムおよびs−トリアジン類、例えば2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[(4−エトキシエチレンオキシ)−フェン−1−イル]−s−トリアジンを包含する。
【0094】
光重合可能なコーティングは多官能性単量体も含んでなりうる。この単量体はエチレン系不飽和基および/またはエポキシもしくはビニルエーテル基から選択される少なくとも2つの官能基を含有する。光重合体コーティング中での使用のための特定の多官能性単量体は米国特許第6,410,205号明細書、米国特許第5,049,479号明細書、欧州特許第1079276号明細書、欧州特許第1369232号明細書、欧州特許第1369231号明細書、欧州特許第1341040号明細書、米国特許出願公開第2003/0124460号明細書、欧州特許第1241002号明細書、欧州特許第1288720号明細書に、並びに引用文献であるChemistry & Technology UV & EB formulation for coatings,inks & paints−Volume 2−Prepolymers and Reactive Diluents for UV and EB Curable Formulations by N.S.Allen,M.A.Johnson,P.K.T.Oldring,M.S.Salim−Edited by P.K.T.Oldring−1991−ISBN 0 947798102を包含する参照文献に開示されている。
【0095】
光重合可能なコーティングは共−開始剤も含んでなりうる。典型的には、共−開始剤はフリーラジカル開始剤および/またはカチオン性開始剤と組み合わせて使用される。光重合体コーティング中での使用のための特定の共−開始剤は米国特許第6,410,205号明細書、米国特許第5,049,479号明細書、欧州特許第1079276号明細書、第1369232号明細書、欧州特許第1369231号明細書、欧州特許第1341040号明細書、米国特許出願公開第2003/0124460号明細書、欧州特許第1241002号明細書、欧州特許第1288720号明細書に、並びに引用文献であるChemistry & Technology UV & EB formulation for coatings,inks & paints−Volume 3−Photoinitiators for Free Radical and Cationic Polymerisation by K.K.Dietliker−Edited by P.K.T.Oldring−1991−ISBN 0 947798161を包含する参照文献に開示されている。
【0096】
光重合可能なコーティングは抑制剤も含んでなりうる。光重合体コーティング中での使用のための特定の抑制剤は米国特許第6,410,205号明細書および欧州特許第1288720号明細書に開示されている。
【0097】
光重合可能なコーティングは結合剤も含んでなりうる。結合剤は広い種類の有機重合体から選択できる。種々の結合剤の組成物も使用できる。有用な結合剤は例えば塩素化されたポリアルキレン(特に塩素化されたポリエチレンおよび塩素化されたポリプロピレン)、ポリメタクリル酸アルキルエステル類またはアルケニルエステル類(特にポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヘキシル、ポリ(メタ)アク
リル酸(2−エチルヘキシル)並びにメタクリル酸アルキルエステル類またはアルケニルエステル類と他の共重合体重合可能な単量体(特に(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレンおよび/またはブタジエン塩)とのポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/(メタ)アクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、塩化ビニリデン/(メタ)アクリロニトリル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリルアミド/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、(メタ)アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)三元共重合体、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリアミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース、ヒドロキシ−(C−C−アルキル)セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルホルマールおよびポリビニルブチラールを包含する。他の有用な結合剤は、カルボキシル基を含有する結合剤、特にα,β−不飽和カルボン酸の単量体単位またはα,β−不飽和ジカルボン酸(好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸もしくはイタコン酸)の単量体単位を含有する共重合体である。用語「共重合体」は本発明の概念では少なくとも2種の単量体の単位を含有する重合体として理解すべきであり、そのため三元共重合体およびそれより高級の混合重合体も含む。有用な共重合体の特定の例は、(メタ)アクリル酸の単位および(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸アリルエステル類および/または(メタ)アクリロニトリルの単位を含有するもの、並びにクロトン酸の単位および(メタ)アクリル酸アルキルエステル類および/または(メタ)アクリロニトリルの単位を含有する共重合体、並びに酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体である。無水マレイン酸またはマレイン酸モノアルキルエステル類の単位を含有する共重合体も適する。これらの中には、例えば、無水マレイン酸およびスチレン、不飽和エーテル類もしくはエステル類または不飽和脂肪族炭化水素類の単位を含有する共重合体、並びにそのような共重合体から得られる生成物がある。別の適する結合剤は、分子内無水ジカルボン酸を用いるヒドロキシル−含有重合体の転化から得られうる生成物である。別の有用な結合剤は、酸水素原子を有する基が存在し、それらの一部または全部が活性化されたイソシアネート類に転化される重合体である。これらの重合体の例は、脂肪族もしくは芳香族のスルホニルイソシアネート類またはホスフィン酸イソシアネート類を用いるヒドロキシル−含有重合体の転化により得られる生成物である。脂肪族もしくは芳香族のヒドロキシル基を有する重合体、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、アリルアルコール、ヒドロキシスチレンまたはビニルアルコールの単位を有する共重合体、並びにエポキシ樹脂も、それらが充分な数の遊離OH基を有する限り、適する。特定の有用な結合剤および特定の有用な反応性結合剤は欧州特許第1369232号明細書、欧州特許第1369231号明細書、欧州特許第1341040号明細書、米国特許出願公開第2003/0124460号明細書、欧州特許第1241002号明細書、欧州特許第1288720号明細書、米国特許第6,027,857号明細書、米国特許第6,171,735号明細書および米国特許第6,420,089号明細書に開示されている。
【0098】
結合剤として使用される有機重合体は、600〜200000の間の、好ましくは1000〜10000の間の典型的な平均分子量Mを有する。10〜250、好ましくは20〜200の間の酸価、または50〜750の間の、好ましくは100〜500の間のヒドロキシル数を有する重合体がさらに好ましい。1種もしくは複数の結合剤の量は、組成物の非−揮発性成分の合計重量に関して、一般的に10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%の範囲である。
【0099】
種々の界面活性剤を光重合可能なコーティングの中に加えて前駆体の現像性を可能にするかまたは増強させることができる。重合体状および小分子界面活性剤の両方を使用することができる。非イオン性界面活性剤が好ましい。好ましい非イオン性界面活性剤は1つ
もしくはそれ以上のポリエーテル(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、並びにエチレングリコールおよびプロピレングリコールの共重合体)断片を含有する重合体およびオリゴマーである。好ましい非イオン性界面活性剤の例は、プロピレングリコールおよびエチレングリコールのブロック共重合体(プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドのブロック共重合体とも称する);エトキシル化されたまたはプロポキシル化されたアクリレートオリゴマー類;並びにポリエトキシル化されたアルキルフェノール類およびポリエトキシル化された脂肪アルコール類である。非イオン性界面活性剤は光重合可能なコーティングの好ましくは0.1〜30重量%の間の、より好ましくは0.5〜20%の間の、そして最も好ましくは1〜15%の間の範囲にわたる量で加えられる。
【0100】
別の好ましい態様では、感熱性コーティングはIR−照射または加熱時に感熱性コーティングの表面の親水性/疎水性−均衡を親水性から疎水性にまたは疎水性から親水性に交換させうる変換可能な重合体を含んでなることもできる。
【0101】
熱的に変換可能な重合体は最初は親水性(または疎水性)である感熱性コーティングの表面を露出段階中に発生する熱のためにさらに疎水性(または親水性)にさせる。さらに親水性とは、普通は水溶液である湿し溶液によるコーティングの湿潤性における増加を意味する。さらに疎水性とは、親油性インキによるコーティングの湿潤性における増加を意味する。普通は、そのような印刷版は印刷機上で直接使用することができるが、例えば印刷機上現像段階または印刷機外現像段階の如き追加の湿潤現像段階を使用することもできる。
【0102】
そのようなシステムの典型例は、国際公開第92/9934号パンフレットおよび欧州特許第652483号明細書に記載されているような重合体骨格から懸垂される酸−不安定性基の熱で誘発される酸触媒作用を受ける分解、加熱時に支持体から融除するかまたは脱重合する重合体系、米国特許第4,081,572号明細書に記載されているようなヒドラジド基を用いる重合体状酸の熱環化脱水、欧州特許第200488号明細書に記載されているような重合体上の電荷の熱で誘発される分解または生成、米国特許第5,569,573号明細書、欧州特許第646476号明細書、国際公開第94/2395号パンフレット、国際公開第98/29258号パンフレットに記載されているようなマイクロカプセルの熱で誘発される破壊およびその後のカプセル化された材料とコーティングの他の化合物との反応、日本特許第10069089号明細書に記載されているような水溶性の底部層とフェノール系頂部層との像通りの架橋結合、米国特許第6,162,578号明細書に記載されているような感熱性の活性末端基を含有する感熱性の超分枝鎖状重合体、並びに欧州特許第1129861号明細書に記載されているような極性交感可能な像−形成材料である。
【0103】
別の態様では、感熱性コーティングはアルカリ性溶液中に可溶性である重合体または結合剤およびアルカリ性溶液中で層の溶解度を低下させる溶解度抑制化合物を含んでなることもでき、そしてここで、IR−照射または加熱で、該感熱性コーティングはアルカリ性溶液中で増加した溶解度を有する。
【0104】
アルカリ−可溶性重合体の量は、各場合ともコーティングの非−揮発性成分の合計重量を基準として、有利には40〜99.8重量%、好ましくは70〜99.4重量%、特に好ましくは80〜99重量%である。アルカリ−可溶性結合剤は好ましくは、コーティングが水性アルカリ性現像剤中に可溶性であるかまたは少なくとも膨潤性であることを確保するために13より低いpKaを有する酸性基を有する有機重合体である。有利には、結合剤は重合体または重縮合体、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンまたはポリウレア、である。例えば、フェノール、レソルシノール、クレゾール、キシレノールまたはトリメチルフェノールをアルデヒド類、特にホルムアルデヒド、またはケトン類と反
応させることにより得られるような遊離フェノール系ヒドロキシル基を有する重縮合体および重合体も特に適する。スルファモイル−もしくはカルバモイル−置換された芳香族類とアルデヒド類またはケトン類との縮合体も適する。ビスメチロール−置換されたウレア類、ビニルエーテル類、ビニルアルコール類、ビニルアセタール類またはビニルアミド類の重合体並びにフェニルアクリレート類の重合体およびヒドロキシルフェニルメレイミド類の共重合体も同様に適する。さらに、ビニル芳香族類、N−アリール(メタ)アクリルアミド類またはアリール(メタ)アクリレート類の単位を有する重合体を挙げることもでき、これらの単位の各々が1つもしくはそれ以上のカルボキシル基、フェノール系ヒドロキシル基、スルファモイル基またはカルバモイル基を有することも可能である。具体例は、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシフェニル、N−(4−ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、N−(4−スルファモイルフェニル)−(メタ)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジル)−(メタ)アクリルアミド、または4−ヒドロキシスチレンもしくはヒドロキシフェニルマレイミドの単位を有する重合体を包含する。重合体は酸性単位を有していない他の単量体の単位をさらに含有しうる。そのような単位はビニル芳香族類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メタクリルアミドまたはアクリロニトリルを包含する。
【0105】
好ましい態様では、重縮合体はフェノール系樹脂、例えばノボラック、レソールまたはポリビニルフェノール、である。ノボラックは好ましくはクレゾール/ホルムアルデヒドまたはクレゾール/キシレノール/ホルムアルデヒドノボラックであり、ノボラックの量は、各場合とも全ての結合剤の合計重量を基準として、有利には少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%である。
【0106】
好ましい態様では、アルカリ−可溶性結合剤はフェノール系単量体単位のフェニル基またはヒドロキシ基が有機置換基で化学的に改質されたフェノール系樹脂である。有機置換基で化学的に改質されたフェノール系樹脂は印刷化学物質、例えば湿し溶液、または印刷機化学物質、例えば版クリーナー、に対する増加した化学的耐性を示しうる。好ましい化学的に改質されたフェノール系樹脂の例は、欧州特許出願公開第0934822号明細書、欧州特許出願公開第1072432号明細書、米国特許第5,641,608号明細書、欧州特許出願公開第0982123号明細書、国際公開第99/01795号パンフレット、15/10/2002に出願された欧州特許出願公開第02102446号明細書、15/10/2002に出願された欧州特許出願公開第02102444号明細書、15/10/2002に出願された欧州特許出願公開第号02102445号明細書、15/10/2002に出願された欧州特許出願公開第02102443号明細書、13/08/2003に出願された欧州特許出願公開第03102522号明細書に記載されている。
【0107】
化学的に改質されたフェノール系樹脂の具体例は、フェニル基が構造−N=N−Qを有する基で置換されており、ここで−N=N−基がフェニル基の炭素原子に共有結合されておりそしてここでQが芳香族基である単量体単位を含んでなる。Qが下記式:
【0108】
【化27】

【0109】
[式中、nは0、1、2または3であり、
各Rは水素、場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、アラルキルもしくはヘテロアラルキル基、−SO−NH−R、−NH−SO−R、−CO−NR−R、−NR−CO−R、−O−CO−R、−CO−O−R、−CO−R、−SO−R、−SO−R、−SO−R、−P(=O)(−O−R)(−O−R)、−NR−R、−O−R、−S−R、−CN、−NO、ハロゲン、−N−フタルイミジル、−M−N−フタルイミジル、または−M−Rから選択され、ここでMは炭素数1〜8の2価結合基であり、
、R、RおよびRは独立して水素または場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、アラルキルまたはヘテロアラルキル基から選択され、
は場合により置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、アラルキルまたはヘテロアラルキル基から選択され、
或いはそれぞれのR〜Rから選択される少なくとも2つの基は一緒になって環式構造を形成するために必要な原子を表わし、
或いはRおよびRは一緒になって環式構造を形成するために必要な原子を表わす]
を有する重合体が最も好ましい。
【0110】
現像剤中のコーティングの溶解性能は場合により存在する溶解度調整成分により微細調整することができる。より特に、現像促進剤および現像抑制剤を使用することができる。
【0111】
現像促進剤は、それらがコーティングの溶解速度を増加させうるために溶解促進剤として作用する化合物である。例えば、無水環式酸類、フェノール類または有機酸類を使用して水性現像性を改良することができる。無水環式酸の例は、米国特許第4,115,128号明細書に記載されているように、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水3,6−エンドキシ−4−テトラヒドロ−フタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水マレイン酸、無水クロロマレイン酸、無水アルファ−フェニルマレイン酸、無水琥珀酸、および無水ピロメリト酸を包含する。フェノール類の例は、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリヒドロキシ−トリフェニルメタン、および4,4’,3’’,4’’−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニル−メタンなどを包含する。有機酸類の例は、例えば、日本特許出願公開第60−88,942号明細書および第2−96,755号明細書に記載されているように、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、ホスフェート類、およびカルボン酸類を包含する。これらの有機酸類の具体例は、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフェート、ジフェニルホスフェート、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、3,4,5−トリメトキシ安息香酸、3,4,5−トリメトキシ桂皮酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、およびアスコルビン酸を包含する。コーティング中に含有される無水環式酸、フェノール、または有機酸の量は好ましくは0.05〜20重量%の範囲内である。
【0112】
好ましい態様では、コーティングは1種もしくはそれ以上の溶解抑制剤、すなわちコーティングの露出されなかった領域において水性アルカリ性現像剤中の疎水性重合体の溶解速度を低下させる1種もしくはそれ以上の物質、も含有する。抑制剤の溶解抑制能力は支持体上に2種の試料である疎水性重合体だけを含有する対照試料および重合体と抑制剤の
両者を(対照と等しい量で)包含する別のものをコーティングすることにより容易に試験することができる。一連の露出されなかった試料を水性アルカリ性現像剤の中に各試料とも異なる時間の期間にわたり浸漬する。浸漬期間後に、試料を現像剤から除去し、直ちに水ですすぎ、乾燥しそして次に現像剤中のコーティングの溶解を現像前後の試料重量を比較することにより測定する。コーティングが完全に溶解するや否や、それより長い浸漬時間の期間でも重量損失はもはや測定されず、すなわち浸漬時間の関数としての重量損失を表示する曲線は層の完全溶解時から平坦域に達する。抑制剤を有する試料が現像剤によってコーティングのインキ−受容能力が影響されるような程度まで攻撃される前に抑制剤なし試料のコーティングが現像剤の中に完全に溶解している時に材料は良好な抑制能力を有する。
【0113】
1種もしくは複数の溶解抑制剤を、以上で論じられたアルカリ−可溶性の疎水性重合体を含んでなるコーティングの層に加えることができる。この態様では、例えば疎水性重合体と抑制剤tpの間の水素結合による、これらの化合物間の相互作用により、現像剤中の露出されなかったコーティングの溶解速度は低下する。抑制剤の溶解抑制能力は好ましくは露出中に発生した熱により低下するかまたは皆無になるためコーティングは露出された領域において現像剤の中に容易に溶解する。そのような抑制剤は好ましくは、少なくとも1つの芳香族基および水素結合部位、例えばカルボニル基、スルホニル基、または第四級化されていてもよくそして複素環式環の一部であってもよいかもしくは該有機化合物のアミノ置換基の一部であってもよい窒素原子を含んでなる有機化合物である。このタイプの適する溶解抑制剤は例えば欧州特許出願公開第825927号明細書、国際公開第97/39894号明細書および欧州特許出願公開第823327号明細書に開示されていた。下記の化合物のあるもの、例えば赤外染料、例えばシアニン類、およびコントラスト染料、例えば第四級化されたトリアリールメタン染料は溶解抑制剤として作用することもできる。
【0114】
水−反撥性重合体が第二のタイプの適当な溶解抑制剤である。そのような重合体はコーティングから水性現像剤を反撥することによりコーティングの現像剤耐性を増加すると思われる。水−反撥性重合体は疎水性重合体を含んでなる層に加えることができ、および/または疎水性重合体を有する層の頂部に付与される別個の層の中に存在することができる。後者の態様では、例えば欧州特許出願公開第864420号明細書、欧州特許出願公開第950517号明細書および国際公開第99/21725号パンフレットに記載されているように、水−反撥性重合体はコーティングを現像剤から遮断する遮蔽層を形成し、そして現像剤中の遮蔽層の溶解性もしくは現像剤による遮蔽層の透過性を低下させうる。水−反撥性重合体の好ましい例は、シロキサンおよび/またはペルフルオロアルキル単位を含んでなる重合体である。1つの態様では、コーティングはそのような水−反撥性重合体を0.5〜25mg/mの間の、好ましくは0.5〜15mg/mの間の、そして最も好ましくは0.5〜10mg/mの間の量で含有する。例えばポリシロキサン類の場合のように、水−反撥性重合体がインキ−反撥性でもある時には、25mg/mより多い量は露出されなかった領域の劣悪なインキ−受容性を生じうる。他方で、0.5mg/mより少ない量は不満足な現像耐性をもたらしうる。ポリシロキサン類は線状、環式もしくは複合架橋結合された重合体または共重合体でありうる。用語ポリシロキサン化合物は、1つより多いシロキサン基−Si(R,R’)−O−を含有する化合物を包含し、ここでRおよびR’は場合により置換されていてもよいアルキルまたはアリール基である。好ましいシロキサン類はフェニルアルキルシロキサン類およびジアルキルシロキサン類である。(共)重合体中のシロキサン基の数は少なくとも2、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20である。それは100より少なくてもよく、好ましくは60より少なくてもよい。別の態様では、水−反撥性重合体はポリ(アルキレンオキシド)ブロック並びにシロキサンおよび/またはペルフルオロアルキル単位を含んでなる重合体のブロックのブロック−共重合体またはグラフト−共重合体である。適する共重合体は約
15〜25個のシロキサン単位および50〜70個のアルキレンオキシド基を含んでなる。好ましい例は、フェニルメチルシロキサンおよび/またはジメチルシロキサン並びにエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを含んでなる共重合体、例えば全てが独国、エッセンのテゴ・ヘミー(Tego Chemie)から市販されているテゴ・グライド(Tego Glide)410、テゴ・ウェット(Tego Wet)265、
テゴ・プロテクト(Tego Protect)5001またはシリコフェン(Silikophen)P50/X、を包含する。そのような共重合体はコーティング時にその二官能性構造のためにコーティングと空気との間の界面に自動的に位置しそしてそれによりコーティング全体が単一コーティング溶液から適用される場合でさえ別個の頂部層を形成する界面活性剤として作用する。同時に、そのような界面活性剤はコーティング性質を改良する延展剤としても作用する。或いは、疎水性重合体を含んでなる層の頂部にコーティングされる第二溶液の中に水−反撥性重合体を適用することもできる。この態様では、第一層の中に存在する成分を溶解可能でない第二コーティング溶液の中で溶媒を使用してコーティングの頂部で高度に濃縮された水−反撥性相を得ることが有利でありうる。
【0115】
感熱性コーティングはドリオグラフィー印刷版のために典型的に使用される、普通はポリシロキサンの共重合体をベースとした組成物も含んでなりうる。
【実施例】
【0116】
IRD−001の合成(スキーム1):
【化28】

【0117】
SM−001は米国特許第5,576,443号明細書に記載されている通りにして製造され;SM−001(8.14g)をメタノール(30ml)中に溶解させ、SM−002(2.12g)およびトリエチルアミン(1.66ml)を加える。1時間にわたり室温において撹拌した後に、反応混合物を酢酸エチル(150ml)で希釈しそしてメタンスルホン酸(0.77ml)を加えて、IRD−001の結晶化を誘発する。濾過、酢酸エチルによる洗浄および真空下の乾燥で、IRD−001が赤褐色の結晶性粉末(5.
2g)として得られる。吸収極大(メタノール):818nm。
【0118】
IRD−002の合成(スキーム2):
【化29】

【0119】
SM−001は米国特許第5,576,443号明細書に記載されている通りにして製造され;SM−001(4.90g)をメタノール(20ml)中に溶解させ、SM−003(2.00g)およびトリエチルアミン(1.86ml)を加える。1時間にわたり室温において撹拌した後に、NaOAc.3HO(1.64g)(NaOAcは酢酸ナトリウムを意味する)およびアセトン(400ml)を加えて、IRD−002の結晶化を誘発する。濾過、アセトンによる洗浄および真空下の乾燥で、IRD−002が緑色の結晶性粉末(4.81g)として得られる。吸収極大(メタノール):812nm。
【0120】
IRD−003の合成(スキーム3):
【化30】

【0121】
SM−001は米国特許第5,576,443号明細書に記載されている通りにして製造される。
【0122】
SM−001(203.8g)のメタノール(800ml)中溶液に室温においてNHOHの水中1.5モル溶液(1.0l)を加える。4時間にわたり50℃において撹拌した後に、イソプロパノール(200ml)を加えそして反応混合物を一晩にわたり冷却する。
【0123】
沈殿を濾過し、冷たいイソプロパノールで洗浄しそして空気乾燥してINT−001(160.0g)を金色に着色された粉末として得る。
【0124】
INT−001(160.0g)をメタノール(1.5l)中に溶解させ、そして強い撹拌下で、KOH(31.5g)の水(62ml)中溶液を30分間で加える。90分間にわたり室温において撹拌した後に、沈澱を濾過し、フィルター上でエタノール(2×100ml)で洗浄しそして空気乾燥してINT−002(160.2g)を得る。
【0125】
INT−002(0.732g)のDMSO中溶液に室温においてSM−004(0.65g)および第三級ブタノールのカリウム塩(以下では、KOt.Bu)(0.25g)を加える。室温において1時間にわたり撹拌した後に、追加のSM−004(0.22
g)およびKOt.Bu(0.13g)を加えそして反応混合物を40℃において2時間にわたり撹拌する。冷却および酢酸を用いる中和後に、反応混合物をメチルt.ブチルエーテル(MTBE)(150ml)の中に注ぐ。沈殿後に、溶液を傾斜させる。沈殿をMTBE(100ml)で処理し、濾過してIRD−003(0.82g)を得る。吸収極大(メタノール):788nm。
【0126】
IRD−004の合成(スキーム4):
【化31】

【0127】
SM−001は米国特許第5,576,443号明細書に記載されている通りにして製造される。
【0128】
SM−001(203.6g)のメタノール(600ml)中溶液に室温においてメチルアミンの水中40%w/w溶液(200ml)を加える。1時間にわたり40℃において撹拌した後に、イソプロパノール(250ml)を加えそして反応混合物を5℃に冷却する。沈殿を濾過し、イソプロパノールおよび水の氷冷9/1混合物(2×100ml)で洗浄しそして空気乾燥して、INT−003(181.5g)を得る。
【0129】
INT−003(181.1g)をメタノール(1.8l)中に溶解させ、そして強い撹拌下で、KOH(41.6g)の水(120ml)中溶液を30分間で加える。1時間にわたり室温において撹拌した後に、反応混合物を15℃に冷却しそして沈澱を濾過し、
フィルター上で冷たいエタノール(2×100ml)で洗浄しそして空気乾燥してINT−004(160.9g)を得る。
【0130】
INT−004(7.46g)のDMSO(30ml)中懸濁にSM−004(8.73g)およびKOt.Bu(1.35g)を加える。3日間にわたる室温における撹拌、5℃への冷却、メタンスルホン酸(0.78ml)の添加後に、酢酸エチル/水の混合物(100/1)(200ml)を用いてIRD−004を沈殿させる。アセトン中への懸濁、濾過および乾燥後に、IRD−004(8.61g)が得られる。吸収極大(メタノール):812nm。
【0131】
IRD−005の合成(スキーム5):
【化32】

【0132】
SM−001は米国特許第5,576,443号明細書に記載されている通りにして製造される。
【0133】
SM−001(8.14g)およびSM−005(3.03g)のスルホラン(60ml)中懸濁液に室温においてKOt.Bu(3.36g)を加える。30分間にわたり90℃において撹拌した後に、反応混合物を室温に冷却し、そしてメタンスルホン酸(1.3ml)、水(3ml)およびアセトン(120ml)の添加で、粗製IRD−005が沈殿する。濾過、水(20ml)中への溶解およびアセトン(500ml)の添加後に、IRD−005(9.24g、不純物としてCHSOKを含有)が得られる。
吸収極大(メタノール+HOAc):806nm。
吸収極大(メタノール+EtN):654nm。
【0134】
IRD−006の合成(スキーム6):
【化33】

【0135】
SM−001は米国特許第5,576,443号明細書に記載されている通りにして製造される。
【0136】
SM−001(81.5g)のメタノール(250ml)中の撹拌された溶液に室温においてKOAc(11.8g)のメタノール(200ml)中溶液を加える。メタノール(200ml)および酢酸エチル(300ml)の添加で、粗製INT−005が濾過により得られる。酢酸エチル(200ml)による洗浄および真空下での乾燥後に、次の段階における使用の準備がなされたINT−005(55g)が得られる。
【0137】
INT−005(5.00g)およびSM−006(3.4g)のスルホラン(30ml)中懸濁液を60℃に暖めた後に、KOt.Bu(3.36g)を加える。30分間にわたり90℃において撹拌した後に、反応混合物を室温に冷却し、そして水(10ml)、メタンスルホン酸(0.65ml)およびアセトン(500ml)の添加で、IRD−006が沈殿する。
【0138】
濾過後に、IRD−006(6.74g、不純物としてCHSOKを含有)が得られる。
吸収極大(メタノール):820nm。
【0139】
IRD−007、IRD−008およびIRD−009の合成:
【化34】

【0140】
IRD−007、IRD−008およびIRD−009の合成はIRD−006の合成と同様にして、SM−006をそれぞれSM−007、SM−008およびSM−009で置換して行われる(スキーム7)。
IRD−007の吸収極大(メタノール):830nm。
IRD−008の吸収極大(メタノール):826nm。
IRD−009の吸収極大(メタノール):829nm。
【0141】
平版基質S−01の製造
0.19mm厚さのアルミニウム箔を40g/lの水酸化ナトリウムを含有する水溶液の中に60℃において8秒間にわたり浸漬することにより箔を脱脂しそして脱塩水で2秒間にわたりすすいだ。箔を次に15秒間にわたり交流を用いて12g/lの塩酸および38g/lの硫酸アルミニウム(18−水和物)を含有する水溶液の中で33℃の温度および130A/dmの電流密度において電気化学的に研磨した。脱塩水で2秒間にわたりすすいだ後に、アルミニウム箔を次に155g/lの硫酸を含有する水溶液で70℃において4秒間にわたりエッチングすることにより汚染除去しそして脱塩水で25℃において2秒間にわたりすすいだ。箔を引き続き13秒間にわたり155g/lの硫酸を含有する水溶液の中で45℃の温度および22A/dmの電流密度において陽極酸化にかけ、次に脱塩水で2秒間にわたり洗浄しそして10秒間にわたり4g/lのポリビニルホスホン酸を含有する溶液で40℃において後処理し、脱塩水で20℃において2秒間にわたりすすぎそして乾燥した。
【0142】
このようにして得られた支持体は0.21μmの表面粗さRaおよび4g/mのAlの陽極重量を有する。
【0143】
比較例1〜3および本発明の実施例1〜18
印刷版前駆体PPP−01〜PPP−21の製造
コーティング溶液を上記の平版基質S−01の上に適用することにより印刷版前駆体PPP−01〜PPP−21を製造した。コーティングの組成は表1に示される。コーティング溶液のpHをコーティング前に3.6に調節した。コーティングは水溶液から適用された。コーティングを50℃において1分間にわたり乾燥した。成分のコーティング重量
は表1に示される。
【0144】
比較IR−染料:
【化35】

【0145】
【表1】

(1)PSANはスチレン/アクリロニトリル共重合体(モル比50/50;アニオン性湿潤剤で安定化されている;平均粒子寸法 61nm;固体含有量 20.58重量%)のラテックス分散液であり;
(2)IR−染料は水性溶液または分散液としてコーティングに加えられ;
(3)PAAはアライド・コロイズ・マニュファクチュアリング・カンパニー・リミテッド(Allied Colloids Manufacturing Co.Ltd.)からのグラスコル(Glascol)E15;水中15重量%のポリアクリル酸であり;(4)PVAはアセテックス・グループ(ACETEX Group)の一部であるエルコル(ERKOL)からのポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル共重合体であるエルコル(ERKOL)WX48/20の水溶液(7.5重量%)であり;
(5)ゾニル(Zonyl)はデュポン(Dupont)からの界面活性剤であるゾニル(Zonyl)FSO100である。
【0146】
像形成
印刷版前駆体PPP−01〜PPP−11をクレオ・トレンドセッター(Creo Trendsetter)(40W)を用いて数種の露出エネルギー密度、すなわち0、125、200、275および350mJ/cm、で露出した。拡散反射スペクトル(DRS−スペクトル)をシマズ(SHIMADZU)UV−3101PC/ISR−310
0分光光度計を用いて各版前駆体に関してこれらのエネルギーで露出された領域において測定した。これらのDRS−スペクトルから、400〜700nmの波長範囲にわたる積算により光学濃度を計算した。露出された領域上の積算された光学濃度と露出されなかった領域上の積算された光学濃度との間の差は比較例1〜3および本発明の実施例1〜8に関して表2に示されたコントラスト−値に相当する。
【0147】
印刷版前駆体PPP−12〜PPP−21に関して、コントラスト−値を同じ方法で200および275mJ/cmの露出エネルギーに関して計算した。これらの値は本発明の実施例9〜18に関して表3に示される。
【0148】
【表2】

【0149】
【表3】

【0150】
負の値は、露出された領域上の光学濃度が露出でコーティングの漂泊をもたらすIR−染料の分解のために露出前より低いことを示す。正の値は露出されなかった領域と比べた露出された領域上の可視光学濃度の増加を示す。この値が高ければ高いほど、露出で増加するプリント−アウト像のコントラストが高まる。
【0151】
比較例1〜3では、比較IR−染料であるCIR−01およびCIR−02に関して負の値が観察される。露出後の可視光学濃度の減少は、露出で実質的な光学濃度が増加しないこれらの比較例1〜3における漂白工程を示す。
【0152】
一例として、種々のエネルギー(0、125、200、275および350mJ/cm)で露出された、CIR−01(比較染料)およびPPP−04を含んでなる、IRD−006(本発明の染料)を含んでなる、PPP−01の吸収スペクトルは図1および図2に示され、約600nmより上の吸収は露出エネルギーの増加につれて減少するが、本発明の実施例に関してのみ可視波長範囲内の吸収が露出後に増加し、着色されたプリント−アウト像の増強を示す。
【0153】
比較例4および本発明の実施例19
印刷版前駆体PPP−22およびPPP−23の製造
印刷版前駆体PPP−22およびPPP−23は以上でPPP−01に関して記載されたものと同じ方法で製造された。成分のコーティング重量は表4に示される。
【0154】
【表4】

【0155】
像形成
印刷版前駆体PPP−22およびPPP−23をクレオ(Creo)S059プレートセッター(露出エネルギー100−300mJ/cm)で露出した。本発明の実施例19(PPP−23に関する)では非常に良好で且つ顕著なプリント−アウト像が観察されたが、比較例4(PPP−22に関する)では露出されたおよび露出されなかった領域の間で差を観察することが困難であった。
【0156】
印刷結果
露出後に、版をGTO46印刷機(ハイデルベルゲル・ドルックマシネン・AG(Heidelberger Druckmaschinen AG)から入手可能である)の上に設置し、そしてK+Eノバビット800スキネックス(K+E Novavit 800 Skinnex)インキ(バスフ・ドルックシステメ・GmbH(BASF Drucksysteme GmbH)の商標)および湿し液としての10%イソプロパノール中3%FS101(アグファ(AGFA)の商標)を用いて印刷作業を開始した。
【0157】
本発明の実施例19(PPP−23に関する)では版の露出されなかった領域で比較例4(PPP−22に関する)より良好なクリーン−アウトが観察された。これはアルミニウム支持体の親水性表面上の本発明のIR−染料のより少ない吸収を示す。版の他の平版印刷版に関して良好な結果が得られる。
【0158】
比較例5並びに本発明の実施例20および21
印刷版前駆体PPP−24〜PPP−26の製造:
印刷版前駆体PPP−24〜PPP−26は以上でPPP−01に関して記載されたものと同じ方法で製造された。成分のコーティング重量は表5に示される。
【0159】
【表5】

【0160】
像形成
印刷版前駆体PPP−24〜PPP−26をクレオTH5850プレートセッター(40W)を用いて150〜300mJ/cmの間で変動する露出エネルギーで露出した。これらのプリント−アウト像のコントラスト−値は本発明の実施例1に記載された通りにしてDRS−スペクトルから計算されそして表6に示される。
【0161】
【表6】

【0162】
本発明の実施例20(PPP−25に関する)および本発明の実施例21(PPP−26に関する)に関する正のコントラスト−値は非常に良好で且つ顕著なプリント−アウト像を示す。比較例5(PPP−24に関する)に関する負のコントラスト−値は露出されたおよび露出されなかった領域の間の弱い差を示す。
【0163】
印刷結果
露出後に、版をGTO46印刷機(ハイデルベルゲル・ヅルックマシネン・AGから入手可能である)の上に設置し、そしてK+Eノバビット800スキネックスインキ(バスフ・ドルックシステメ・GmbH)および湿し液としてんお10%イソプロパノール中3%FS101(アグファの商標)を用いて印刷作業を開始した。
【0164】
本発明の実施例20(PPP−25に関する)および本発明の実施例21(PPP−26に関する)では版の露出されなかった領域で比較例5(PPP−24に関する)より良好なクリーン−アウトが観察された。これはアルミニウム支持体の親水性表面上の本発明
のIR−染料のより少ない吸収を示す。版の他の平版印刷版に関して良好な結果が得られる。
【0165】
比較例6並びに本発明の実施例22および24
印刷版前駆体PPP−27〜PPP−30の製造:
印刷版前駆体PPP−27〜PPP−30は以上でPPP−01に関して記載されたものと同じ方法で製造された。PPP−28は、比較IR−染料の他に、処理後に可視コントラストを形成可能なコントラスト染料としてCu−フタロシアニン(CD−01)を含有する。成分のコーティング重量は表7に示される。
【0166】
【表7】

【0167】
CD−01はカボット・コーポレーション(Cabot Corporation)からのCu−フタロシアニンコントラスト染料、15重量%の水性分散液、である。
【0168】
像形成
印刷版前駆体PPP−27〜PPP−30をクレオTH5850プレートセッター(40W)を用いて150〜300mJ/cmの間で変動する露出エネルギーで露出した。これらのプリント−アウト像のコントラスト−値は本発明の実施例1に記載された通りにしてDRS−スペクトルから計算されそして表8に示される。
【0169】
【表8】

【0170】
本発明の実施例22(PPP−29に関する)および本発明の実施例23(PPP−30に関する)に関する正のコントラスト−値は非常に良好で且つ顕著なプリント−アウト像を示す。比較例6(PPP−27に関する)に関する負のコントラスト−値は露出されたおよび露出されなかった領域の間の弱い差を示す。コントラスト染料CD−01(Cu−フタロシアニン)の存在も比較例7(PPP−28に関する)に示されるように露出時のコントラスト−値の増加を生じない。
【0171】
処理
露出後に、印刷版前駆体をのり引き装置内で、のり引き溶液としてアグファRC5230(アグファからの商標)を用いて現像した。RC520溶液は39.3g/lの濃度のダウ・ケミカル(DOW CHEMICAL)から市販されている界面活性剤ダウファックス(DOWFAX)3B2、9.8g/lの濃度のクエン酸.1aq、および32.6g/lの濃度のクエン酸三ナトリウム.2aqの水溶液であり、そしてRC520溶液は約5のpH−値を有する。
【0172】
現像段階において、露出されなかった領域が支持体から除去されてアルミニウム支持体の親水性表面を表わすが、露出された領域は版の上に残る。この湿潤処理後の露出されたおよび露出されなかった領域のDRS−スペクトルを測定しそしてこれらのスペクトルから400〜700nmの間の波長範囲にわたる吸収を積算した。処理後のコントラスト−値は露出された領域および露出されなかった領域の積算値の間の差として定義される。プリント−アウト像のコントラスト−値とは異なるこれらのコントラスト−値は表9に示される。
【0173】
【表9】

【0174】
処理後に、コーティング層を露出されなかった領域上で除去してアルミニウム支持体の親水性表面を表わすが、露出された領域上ではコーティングが版上に残る。比較例6(PPP−27)に関すると、これらの値は30〜36の間で変動し、それらは処理後の弱いコントラストとみなしうる。このコントラストを増加させるために、典型的にはコントラスト染料(例えばCD−01)をコーティング組成物(PPP−28)に加えて、比較例7に示されるように60〜66の範囲にある良好なコントラスト−値を生じた。
【0175】
本発明のIR−染料を含んでなる本発明の実施例22および23では表9に示されるように約80または約100〜110のコントラスト−値範囲が得られた。これは明らかに、表8に示されるプリント−アウト像の改良されたコントラストに加えての、本発明のIR−染料の追加の利点である。
【0176】
印刷結果
版をGTO46印刷機(ハイデルベルゲル・ヅルックマシネン・AGから入手可能である)の上に設置し、そしてK+Eノバビット800スキネックスインキ(バスフ・ドルックシステメ・GmbH)および湿し液としての10%イソプロパノール中3%FS101(アグファの商標)を用いて印刷作業を開始した。これらの版を用いると良好な印刷結果が得られる。
【0177】
比較例8および本発明の実施例24
平版基質S−02の製造
0.28mm厚さのアルミニウム箔を34g/lの水酸化ナトリウムを含有する水溶液の中に70℃において5.9秒間にわたり噴霧しそしてそれを室温において3.6秒間にわたり12.4g/lの塩酸および9g/lの硫酸を含有する溶液ですすぐことにより箔を脱脂した。
【0178】
アルミニウム支持体を次に交流を用いて12.4g/lの塩酸および9g/lの硫酸を含有する水溶液の中で37℃の温度および54500クーロン/m2の陽極電荷密度において電気化学的に研磨した。
【0179】
引き続き、支持体を145g/lの硫酸を含有する水溶液で80℃において4.8秒間にわたりエッチングしそして水で室温において3.6秒間にわたりすすいだ。
【0180】
エッチング段階後に、支持体を4.6秒間にわたり145g/lの硫酸および10g/lの硫酸アルミニウムを含有する水溶液の中で57℃の温度および2500A/dmの電流密度において陽極酸化にかけた。引き続き、陽極酸化された支持体を水で室温において3.6秒間にわたり洗浄しそして55℃において5.3秒間にわたり乾燥した。
【0181】
引き続き、支持体を2.2g/lのポリビニルホスホン酸で4.2秒間にわたり70℃において後−陽極酸化処理しそして水で1.2秒間にわたり室温においてすすいだ。
【0182】
得られた支持体をTD6000現像剤(アグファの商標)の中で25℃において22秒間にわたり処理して後−陽極酸化処理物質を除去しそして引き続き水ですすいだ。この後に、基質をRC795(アグファの商標)でのり引きした。
【0183】
研磨されそして陽極酸化された支持体を水で洗浄しそして40℃において15分間にわたり乾燥した。
【0184】
印刷版前駆体PPP−31およびPPP−32の製造
0.67gのIR−染料の100mlのエタノール中溶液をドクターブレードを用いて30μmの湿潤厚さで上記の平版基質S−02の上にコーティングすることにより印刷版前駆体PPP−31およびPPP−32を製造した。乾燥後の成分のコーティング重量は表10に示される。
【0185】
【化36】

【0186】
【表10】

【0187】
像形成
印刷版前駆体PPP−31およびPPP−32をIR−レーザーダイオードを用いて830nmにおいて露出した。エネルギー密度は表11に示されるように357〜1000mJ/cmの間で変動した(レーザー出力およびドラム速度に関して異なる設定)。
【0188】
【表11】

【0189】
本発明の実施例24(PPP−32に関する)では非常に良好で且つ顕著なプリント−アウト像が観察され、すなわち露出されなかった領域の淡緑色背景色とは対照的に露出された領域は濃青色であった。比較例8(PPP−31)では露出された領域内のIR−染料は漂白されて、弱い可視像を生じた。
【0190】
印刷結果
露出後に、版をアブディック(ABDick)360印刷機の上に設置しそしてバン・ソン(Van Son)167インキ(バン・ソン(Van Son)の商標)および湿し液としてのロタマティック(Rotamatic)(ユニグラフィカ・GmbH(UNIGRAFICA GmbH)から入手可能である)を用いて印刷作業を開始した。圧縮可能なゴムブランケットを用いそして印刷を80gの紙の上で行った。両方の版に関して
、正の印刷された像が観察された。
【0191】
本発明の実施例25
印刷版前駆体PPP−33の製造
表12に記されている成分を混合することにより組成物を製造した(pw=重量部;wt.%=重量百分率)。溶液を、ポリビニルホスホン酸の水溶液(酸化物重量3g/m)を用いる処理により表面が親水性にされた電気化学的に粗くされそして陽極酸化されたアルミニウムシートの上にコーティングし、そして1分間にわたり120℃において乾燥した(循環オーブン)。
【0192】
【表12】

(1)KL7177は32.4重量%のメタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体(4:1重量比;酸価:110mgのKOH/g)を2−ブタノン中に含有する溶液(25℃における粘度 105mm/s)である
(2)トリアジンBU1549はクラリアント(Clariant)からの2−[1,1’−ビフェニル]−4−イル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンである
(3)FST426Rは1モルのジイソシアン酸2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンおよび2モルのメタクリル酸ヒドロキシエチルからの反応生成物88.2重量%を含有する2−ブタノン中溶液(25℃における粘度 3.30mm/s)である
(4)エダプランLA411はムンジング・ヘミー(Munzing Chemie)から得られる界面活性剤(ダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company)のドワノール(Dowanol)PM(R)商標中1%溶液)である
(5)ドワノールPMはダウ・ケミカル(Dow Chemical)から得られるプロピレングリコールモノメチルエーテルである
【0193】
感光層の頂部に表13に示された組成を有する水溶液をコーティングしそして110℃において2分間にわたり乾燥した。このようにして製造された保護オーバーコートは2.0g/mの乾燥厚さを有していた。
【0194】
【表13】

(1)アクチサイドLA1206はトル(Thor)から市販されている殺生物剤である(2)メトラトFC355はムンジング・ヘミーから市販されているエトキシル化されたエチレンジアミンである
(3)ルテンソルA8(90%)はバスフ(BASF)から市販されている界面活性剤である
【0195】
像形成
オーバーコート層の乾燥後に、版をクレオ・トレンドセッターIRレーザー(830nm)を用いて275mJ/cmで像形成した。本発明の実施例25(PPP−33に関する)では非常に良好で且つ顕著なプリント−アウト像が観察され、すなわち露出されなかった領域の薄緑色背景色とは対照的に露出された領域は濃青色であった。これは、露出されたおよび露出されなかった領域上で、シアン設定(OD−シアン)および黒色設定(OD−黒色)を用いて、そして対照として版の未コーティング支持体を用いて、グレタグ−マクベス・AG(Gretag−Macbeth AG)から市販されているグレタグマクベス(GretagMacbeth)D19C濃度計で測定された光学濃度により表14にも示される。
【0196】
【表14】

【0197】
本発明の実施例26および27
印刷版前駆体PPP−34および35の製造:
表15で記されている成分を混合することにより組成物を製造した(pw=重量部;wt.%=重量百分率)。溶液を、ポリビニルホスホン酸の水溶液(酸化物重量3g/m)を用いる処理により表面が親水性にされた電気化学的に粗くされそして陽極酸化されたアルミニウムシートの上にコーティングし、そして1分間にわたり120℃において乾燥した(循環オーブン)。
【0198】
【表15】

【0199】
感光層の頂部に表16に示された組成を有する水溶液をコーティングしそして110℃において2分間にわたり乾燥した。このようにして製造された保護オーバーコートは2.0g/mの乾燥厚さを有していた。
【0200】
【表16】

【0201】
像形成
オーバーコート層の乾燥後に、版をクレオ・トレンドセッターIRレーザー(830nm)を用いて275mJ/cmで像形成した。本発明の実施例26(PPP−34に関する)および本発明の実施例27(PPP−35に関する)では非常に良好で且つ顕著なプリント−アウト像が観察され、すなわち露出されなかった領域の緑色背景色とは対照的に露出された領域は濃青色であった。これは、露出されたおよび露出されなかった領域上で、シアン設定(OD−シアン)および黒色設定(OD−黒色)を用いて、そして対照として版の未コーティング支持体を用いて、グレタグ−マクベス・AGから市販されているグレタグマクベスD19C濃度計で測定された光学濃度により表17にも示される。
【0202】
【表17】

【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】図1は種々の露出エネルギーにおける比較印刷版前駆体の吸収スペクトルを示す。
【図2】図2は種々の露出エネルギーにおける本発明に従う印刷版前駆体の吸収スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
=は以下の構造:
【化2】

の1つにより表示され、
−は以下の構造:
【化3】

の1つにより表示され、
nは0、1、2または3であり、
pおよびqの各々は0、1または2であり、
およびRは独立して場合により置換されていてもよい炭化水素基であり、或いは該R、R、RまたはR基の2つは一緒になって環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、
基の少なくとも1つはIR−照射または熱への露出により誘発される化学反応により該Rより強い電子−供与体である基に転換される基であるか、或いは
基の少なくとも1つはIR−照射または熱への露出により誘発される化学反応により該Rより強い電子−供与体である基に転換される基であり、
他のRおよびR基は独立して水素原子、ハロゲン原子、−R、−OR、−SR
および−NRよりなるリストから選択される基により表示され、ここでR、R、R、RおよびRは独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、そして
該転換が400〜700nmの間の染料の統合した光吸収の増加を与える
ことにより特徴づけられる]
に従う構造を有するIR染料を含んでなる感熱性像形成要素。
【請求項2】
化学反応により転換される該R基が
【化4】

よりなるリストから選択され、
ここで
a、b、cおよびdが独立して0または1であり、
−L−が結合基であり、
17が水素原子、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはR17およびR、R17およびR、またはR17およびR11が一緒になって環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、
が−OR10、−NR1314または−CFであり、
ここで
10が場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基またはアルファ−分枝鎖状の脂肪族炭化水素基であり、
13およびR14が独立して水素原子、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはR13およびR14が一緒になって環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、
が水素原子、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはRがR10、R13およびR14の少なくとも1つと一緒になって環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、Rが場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基もしくは場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基、−OR10、−NR1314または−CFであり、ここでR10、R13およびR14がRにおけるものと同じ意味を有し、
が水素原子、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはRがR10、R13およびR14の少なくとも1つと一緒になって環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、R11、R15およびR16が独立して水素原子、場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはR15およびR16が一緒になって環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、R12が場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、
およびRが独立して水素原子または場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、
が−COOまたは−COOR8’であり、ここでR8’が水素原子、アルカリ金属カチオン、アンモニウムイオンまたはモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ−アルキルアンモニウムイオンであり、
18が場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基またはアルファ−分枝鎖
状の脂肪族炭化水素基である請求項1に記載の感熱性像形成要素。
【請求項3】
該IR染料が式II、IIIまたはIV
【化5】

[式中、
Ar、ArおよびArは独立して場合により置換されていてもよい芳香族炭化水素基または場合により置換されていてもよい縮合ベンゼン環を有する芳香族炭化水素基であり、
およびWは独立して硫黄原子または−CM1011基であり、ここでM10およびM11は独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはM10およびM11は一緒になって環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、
およびMは独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、或いはMおよびMは一緒になって場合により置換されていてもよい環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、
およびMは独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、
、M、M、M、M16およびM17は独立して水素原子、ハロゲン原子または場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であり、
は硫黄原子または−C(A)=C(A)−基であり、
12およびM13は独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いは該M12、M13、AまたはAの2つは一緒になって少なくとも1つの環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、
は硫黄原子または−C(A)=C(A)−基であり、
〜Aは独立して水素原子、ハロゲン原子、場合により置換されていてもよい脂肪族
炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いはAおよびA、AおよびA、AおよびA、または、AおよびAの各々は一緒になって環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、
14およびM15は独立して場合により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基または場合により置換されていてもよい(ヘテロ)アリール基であり、或いは該M14、M15、AまたはAの2つは一緒になって少なくとも1つの環式構造を形成するのに必要な原子を含んでなり、そして
は化学反応により転換されるR基である]
の構造を有する前記請求項のいずれかに記載の感熱性像形成要素。
【請求項4】
およびMが一緒になって場合により置換されていてもよい5−員環を形成するのに必要な原子を含んでなる請求項3に記載の感熱性像形成要素。
【請求項5】
式II、IIIまたはIVの該IR染料が、−COH、−CONHSO、−SONHCOR、−SONHSO、−PO、−OPO、−OSOHもしくは−SOH基よりなるリストから選択される少なくとも1つのアニオン性基もしくは酸基またはそれらの対応する塩を有し、ここでR、RおよびRは独立してアリールまたはアルキル基である請求項3または4に記載の感熱性像形成要素。
【請求項6】
該IR染料のM、MまたはM12〜M15の脂肪族炭化水素基の各々が該アニオン性基または酸基の少なくとも1つで末端置換されている請求項5に記載の感熱性像形成要素。
【請求項7】
−親水性表面を有するかまたは親水性層が付与された支持体、および
−該支持体上に、前記請求項のいずれかで定義されたIR染料を含んでなるコーティングを含んでなる感熱性平版印刷版前駆体。
【請求項8】
該コーティングが光−重合可能な組成物を含んでなる請求項7に記載の感熱性前駆体。
【請求項9】
該コーティングが親水性結合剤中に分散された熱可塑性重合体粒子を含んでなる請求項7に記載の感熱性前駆体。
【請求項10】
該コーティングがIR−照射または加熱時にコーティングの表面の極性を親水性から疎水性にまたは疎水性から親水性に変化させうる変換可能な重合体を含んでなる請求項7に記載の感熱性前駆体。
【請求項11】
該コーティングがアルカリ性溶液中に可溶性である重合体およびアルカリ性溶液中のコーティングの溶解度を低下させる溶解度抑制化合物を含んでなり、そしてIR−照射または加熱時に、該コーティングがアルカリ性溶液中で増加した溶解度を有する請求項7に記載の感熱性前駆体。
【請求項12】
−(i)請求項7〜11のいずれかに記載の感熱性平版印刷版前駆体を準備し、
−(ii)前駆体のコーティングをIR−照射または熱に像通りに露出し、それによりIR染料の該転換を誘発しそしてプリント−アウト像を形成せしめ、
(iii)場合により、該像通りに露出した前駆体を現像する
段階を含んでなる平版印刷版の作製方法。
【請求項13】
像通りに露出した前駆体を印刷機上に設置しそして前駆体を印刷機上現像段階で現像することにより現像段階を行う請求項12に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれかに記載の像形成要素をIR−照射もしくは熱に露出することにより、または請求項7〜11のいずれかに記載の感熱性印刷版前駆体をIR−照射もしくは熱に露出することによりプリント−アウト像を得る方法。
【請求項15】
像通りの露出段階における露出エネルギーが多くとも300mJ/cmである請求項12〜14のいずれかに記載の平版印刷版の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−544322(P2008−544322A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517474(P2008−517474)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063303
【国際公開番号】WO2006/136537
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507253473)アグフア・グラフイクス・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (21)
【Fターム(参考)】