慣性センサ及びその検出装置
【課題】慣性力によって変位する可動体を複数有し、各可動体によって形成される可変容量素子の容量値を検出して、慣性力を検出する慣性センサにおいて、可変容量素子の容量値の検出を可変容量素子の数よりも少ない検出系で行うこと。
【解決手段】可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し、可変ブロックが所定方向に往復振動する構造体について、各可変容量素子及び固定容量素子の一端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を印加する検出用パルス信号印加部と、位相差を有する検出用パルス信号が印加された可変容量素子間、又は固定容量素子と可変容量素子との間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを有する。
【解決手段】可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し、可変ブロックが所定方向に往復振動する構造体について、各可変容量素子及び固定容量素子の一端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を印加する検出用パルス信号印加部と、位相差を有する検出用パルス信号が印加された可変容量素子間、又は固定容量素子と可変容量素子との間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度及び加速度を検出する慣性センサ及びその検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体に取り付けて、その物体が加速度運動及び角速度運動をした際に生じる加速度及び角速度を検出可能な慣性センサが知られている。
【0003】
この慣性センサでは、3次元空間に定義したX軸、Y軸、Z軸における各軸方向毎に、それぞれ個別の加速度を検出すると共に、各軸毎に、各軸を回転軸とする角速度をそれぞれ個別に検出することによって、3次元空間において運動する物体の加速度及び角速度を検出していた。
【0004】
近年、物体の加速度と角速度を同時に検出可能な慣性センサとして、物体の加速度運動及び角速度運動に伴って変位する可動体(振動子)を有する構造体を用いたセンサが提案されている。
【0005】
この慣性センサでは、3次元空間において互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を定義した場合に、Z軸方向に所定の周期で可動体を振動させている状態において、物体がX軸又はY軸を回転軸とした角速度運動をした際、その物体の運動方向と直行する向きに作用するコリオリ力を検出することによって、Y軸あるいはX軸を中心軸とする角速度及びX軸方向あるいはY軸方向の角速度を求めている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
この種の慣性センサでは、たとえば、この慣性センサの振動子をZ軸方向に所定の周期で振動させている状態において、この加速度・角速度センサを取り付けた物体がX軸を回転軸とした角速度運動を行った場合に、可動体にY軸方向へ向かうコリオリ力が作用するという物理現象を利用し、このコリオリ力の大きさに応じた可動体の変位量を検出することによって、物体に作用するX軸を回転軸とした角速度の大きさを検出するようにしている。
【0007】
しかし、これらの慣性センサは、1つの可動体から得られる加速度及び角速度の変位を、信号処理により分離しているため、他軸感度や、外乱ノイズに対して、十分なS/N比(Signal to Noise Ratio)を得ることができず、使用可能なアプリケーションが限定されてしまう。
【0008】
そこで、本出願人は、他軸感度や外乱ノイズに対して、十分なS/N比を得ることができ、3軸加速度と3軸角速度が検出可能な小型の慣性センサを提案している(特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3549590号公報
【特許文献2】特許第3585959号公報
【特許文献3】特願2006−167760号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した特許文献3の慣性センサは、複数の可動体(振動子)を有していることから、この複数の可動体の変位を検出する検出回路を用いる必要がある。
【0010】
複数の可動体によって形成される可変容量素子の容量値の検出を少ない検出系で行う技術として、特開平10−239196号公報(以下、「特許文献4」とする。)に記載されているように、各可動体によって形成される2つの可変容量素子の容量値の差分を検出して、各可動体の変位を検出する技術がある。
【0011】
しかし、この特許文献4の構造体は加速度のみを検出するために用いられる構造体であり、各可動体を振動させる必要もなく、加速度のみならず角速度を検出するために用いられる上記特許文献3の構造体とは、その構造が異なり、特許文献3に記載の構造体に特許文献4の技術を適用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、かかる課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し前記可変ブロックが所定方向に往復振動する構造体の前記容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出装置において、前記可変ブロックを変位させる駆動パルス信号を出力する駆動回路と、その一端が共通に接続された各前記可変容量素子及び前記固定容量素子の他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を前記駆動パルス信号に同期したタイミングで印加する検出用パルス信号印加部と、位相差を有する前記検出用パルス信号が印加された前記可変容量素子間、又は前記固定容量素子と前記可変容量素子との間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、前記固定容量素子と2以上の前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、2以上の前記可変容量素子と他の2以上の前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、前記慣性検出部は、前記検出用パルス信号によって前記複数の可変容量素子の容量値の加算及び減算を行って、前記印加される慣性力のうち各検出軸の角速度及び各検出軸の加速度に応じた信号をそれぞれ出力することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、前記固定容量素子と各前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、前記慣性検出部は、前記検出用パルス信号によって各前記可変容量素子の容量値の変化分を検出することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、前記検出用パルス信号の電圧振幅を、当該検出用パルス信号を印加する容量素子に応じて切り替えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位速度が最大となる時のその前後所定期間内に角速度を検出するための検出用パルス信号を前記容量素子へ印加し、前記可変ブロックの変位速度が最小となる時のその前後所定期間内に加速度を検出するための検出用パルス信号を前記容量素子へ印加することを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位速度が最大となる時のその前後所定期間内に検出用パルス信号を前記容量素子へ印加することを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記可変ブロックとこの可変ブロックに対向して設けられた電極とにより形成される変位検出用可変容量素子と、前記変位検出用可変容量素子に変位検出用パルス信号を印加する変位検出用パルス信号印加部と、前記変位検出用パルス信号印加部により印加される変位検出用パルス信号によって検出される前記変位検出用可変容量素子の容量値から前記可変ブロックの変位状態を検出する変位検出部を有し、前記変位検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位量が最大となる時の前後所定期間に前記変位検出用パルス信号を前記変位検出用可変容量素子へ印加することを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時には、検出用パルス信号の前記容量素子への印加を行わないことを特徴とする。
【0020】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時に、検出用パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジとならないように、前記検出用パルス信号又は駆動パルス信号の位相をシフトするシフト回路を設けたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項10に記載の発明は、印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し前記可変ブロックが所定方向に往復振動する構造体と、当該構造体の前記容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出装置とを有する慣性センサにおいて、前記検出装置は、前記可変ブロックを変位させる駆動パルス信号を出力する駆動回路と、その一端が共通に接続された各前記可変容量素子及び前記固定容量素子の他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を前記駆動パルス信号に同期したタイミングで印加する検出用パルス信号印加部と、位相差を有する前記検出用パルス信号が印加された前記可変容量素子間、又は前記固定容量素子と前記可変容量素子との間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し、前記可変ブロックが所定方向に往復振動可能に構成された構造体について、これらの容量素子の容量値の検出を容量素子の数よりも少ない数の検出系の数で構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本実施形態における慣性センサは、印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し、可変ブロックが所定方向に往復振動可能に構成された構造体と、各可変ブロックを往復振動させ、可変容量素子や固定容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出回路(検出装置の一例に相当)とを備えており、3軸の角速度及び3軸の加速度を検出することを可能としている。
【0024】
前記構造体は、所定箇所を中心として左右対称な位置及び前後対称な位置にそれぞれ一組ずつ配置された複数の可変ブロックを有している。左右対称な位置の2つの可変ブロックは、左右方向に互いに反位相で往復振動し、前後対称な位置の2つの可変ブロックは、前後方向に互いに反位相で往復振動する。なお、ここでは、左右方向はX軸方向であり、前後方向はY軸であり、上下方向はZ軸であるものとする。
【0025】
各可変ブロックは、電極が形成され、少なくとも振動方向と直交する方向に変位可能な可動体を有している。そして、可動体の電極と当該電極に対向して所定の間隙をもって設けられた複数の検出電極を有しており、これにより可動体の変位に応じて容量値が変化する可変容量素子がそれぞれ形成される。
【0026】
また、構造体には、電極が形成された固定ブロックを有しており、この電極と対向して所定の間隙をもって設けられた検出電極を設けられており、これらの電極間で容量値が一定の固定容量素子(以下、「固定容量素子Cd」とする。)が形成される。
【0027】
ここで、本実施形態における構造体では、XZ平面上又はYZ平面上の可動体の傾き及びZ軸方向への平行移動を検出するために可変容量素子が各可変ブロックに2つずつ形成される。
【0028】
そして、左右(X軸)方向における左側の可変ブロックの後側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca1」する。)の容量値をX1、その前側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca2」する。)の容量値をX2とし、左右(X軸)方向における右側の可変ブロックの後側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca3」する。)の容量値をX3、その前側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca4」する。)の容量値をX4とし、前後(Y軸)方向における前方の可変ブロックの左側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca5」する。)の容量値をY1、その右側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca6」する。)の容量値をY2とし、前後(Y軸)方向における後方の可変ブロックの左側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca7」する。)の容量値をY3、その右側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca8」する。)の容量値をY4とし、各可変容量素子の容量値X1〜X4,Y1〜Y4の変化分をΔX1〜ΔX4,ΔY1〜ΔY4とすると、各軸の角速度及び加速度は以下の演算式から物理量を導き出すことができる。なお、具体的な原理については、別途後述する。また、可変容量素子Ca1〜Ca8のうち、1以上の任意の可変容量素子を示すときには可変容量素子Caと呼ぶことがある。
X軸角速度:(ΔY1+ΔY2)-(ΔY3+ΔY4)
Y軸角速度:(ΔX1+ΔX2)-(ΔX3+ΔX4)
Z軸角速度:(ΔX1-ΔX2)-(ΔX3-ΔX4) + (ΔY1-ΔY2)-(ΔY3-ΔY4)
X軸加速度:(ΔY1-ΔY2)+(ΔY3-ΔY4)
Y軸加速度:(ΔX1-ΔX2)+(ΔX3-ΔX4)
Z軸加速度:(ΔX1+ΔX2+ΔX3+ΔX4+ΔY1+ΔY2+ΔY3+ΔY4)
【0029】
検出回路は、一端が共通に接続された各可変容量素子Ca1〜Ca8及び固定容量素子Cdの他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号(以下、「検出用パルス信号」とする。)を印加する検出用パルス信号印加部と、位相差を有する検出用パルス信号が印加された可変容量素子Ca間、又は固定容量素子Cdと可変容量素子Caとの間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを備えている。
【0030】
この慣性検出部で検出する容量値の差分は、固定容量素子Cdの容量値(ここでは、容量値をWとする。)と各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値X1〜X4,Y1〜Y4のそれぞれの差分とすることにより、各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の変化分であるΔX1〜ΔX4,ΔY1〜ΔY4を検出する。すなわち、検出用パルス信号印加部は、固定容量素子Cdと各可変容量素子Caとにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を各可変容量素子Caに対応して順次印加し、慣性検出部は、共通に接続された容量素子Ca,Cdの一端の電圧から各可変容量素子Caの容量値の変化分を検出する。例えば、固定容量素子Cdと各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値X1〜X4,Y1〜Y4とが初期状態(可変ブロックが振動していない状態)で同一の容量値であり、かつ検出用パルス信号が同一の電圧振幅値であるとき、W-(X1+ΔX1)=ΔX1,W-(X2+ΔX2)=ΔX2,・・・となり、各可変容量素子Caの容量値の変化分ΔX1,ΔX2,・・・が検出される。このように各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の変化分を検出することによって、上述した構造体に印加される3軸の角速度や3軸加速度を検出することができる。
【0031】
また、可変容量素子Ca1〜Ca8のうち加算する可変容量素子Caの容量値と、減算する可変容量素子Caの容量値との差分を検出するようにしてもよい。例えば、X軸方向の角速度を検出するときには、最初に可変容量素子Ca5,Ca6に検出用パルス信号を印加し、次に、可変容量素子Ca7,Ca8に極性を反転した検出用パルス信号を印加することによって、(ΔY1+ΔY2)-(ΔY3+ΔY4)を検出する。また、Y軸方向の角速度を検出するときには、最初に可変容量素子Ca1,Ca2に検出用パルス信号を印加し、次に可変容量素子Ca3,Ca4に極性を反転した検出用パルス信号を印加することによって、(ΔX1+ΔX2)-(ΔX3+ΔX4)を算出する。
【0032】
ここで、Z軸方向の加速度を検出する場合、(ΔX1+ΔX2+ΔX3+ΔX4+ΔY1+ΔY2+ΔY3+ΔY4)を検出する必要があることから、全ての可変容量素子Ca1〜Ca8の静電容量を加算することになる。そこで、最初に固定容量素子Cdに検出用パルス信号を印加し、次に全ての可変容量素子Ca1〜Ca8に極性を反転した検出用パルス信号を印加するようにする。
【0033】
このように、検出用パルス信号印加部は、可変容量素子Ca1〜Ca8のうち加算するものと減算するものの両方があるときには、可変容量素子のみに異なるタイミングで互いに極性の反転した検出用パルス信号を順次印加し、可変容量素子Ca1〜Ca8のうち加算するもの或いは減算するものしかないときには、固定容量素子Cdと可変容量素子Caとに異なるタイミングで互いに極性の反転した検出用パルス信号を順次印加するようにしており、これにより、慣性検出部は、可変容量素子の容量値の加算及び減算を行って、後段の演算処理を省き、簡単な構成で各検出軸(XYZの3軸)の加速度及び各検出軸(XYZの3軸)の角速度の物理量に応じた信号を容易に検出することができる。
【0034】
ところで、構造体における容量素子Ca1〜Ca8,Cdの個体差によるその容量値のばらつきによって慣性検出部のDCオフセットが生じる。そこで、本実施形態における検出回路の検出用パルス信号印加部では、各容量素子へ印加する検出用パルス信号のそれぞれの振幅を調整することによってこのDCオフセットを調整する。その結果、慣性検出部のダイナミックレンジを大きくすることなく、角速度及び加速度を高精度に検出することができる。
【0035】
また、検出回路には、可変ブロックを変位させ往復振動させるため駆動パルス信号を出力する駆動回路を有しており、検出用パルス信号印加部はこの駆動パルス信号に同期したタイミングで可変容量素子Caや固定容量素子Cdへ検出用パルス信号を出力して、角速度及び加速度を検出するようにしている。
【0036】
検出用パルス信号印加部からの検出用パルス信号の出力は、可変ブロックの変位速度が最大となる時のその前後所定期間内に行うようにすることとする。これにより、慣性検出部の出力から可変ブロックの変位速度が最大のときに容量素子の容量値の差分を取り出すための回路(例えば、同期検波回路)を省略することができる。また、消費電力の低減も図ることができる。しかも、可変ブロックの変位速度が最大となるときにコリオリ力が最大となることから、角速度を精度よく検出することができる。
【0037】
また、加速度を検出するための検出用パルス信号の出力については、上記期間に行わずに、可変ブロックの変位速度が最小(コリオリ力が最小となる付近)となる時の前後所定期間内に行うようにすることにより、S/N比を改善し、加速度の検出を高精度に行うことができる。なお、S/Nが問題にならない場合には、加速度の検出するための検出用パルス信号の出力を可変ブロックの変位速度が最大のときに行うようにしてもよい。
【0038】
また、検出回路には、可変ブロックの変位位置及び最大変位量を検出する可変ブロック変位検出回路(変位検出部の一例に相当)を備えている。上記4つの可変ブロックのうち少なくとも振動方向が互いに直交する2つの可変ブロックには電極が形成されており、この電極と対向する位置に所定の間隙をもって設けられた変位検出電極との間で可変容量素子(以下、「可変容量素子Cf1,Cf2」とする。変位検出用可変容量素子の一例に相当)が形成される。可変ブロック変位検出回路は、この可変容量素子Cf1,Cf2の一端を共通に接続し、その他端のそれぞれへ互いに極性が異なる変位検出用パルス信号を変位検出用パルス信号印加部から交互に印加することによって、共通に接続された可変容量素子Cf1,Cf2の一端の電圧からこれらの可変容量素子Cf1、Cf2の容量値の差分を検出して、可変ブロックの変位を検出するようにしている。
【0039】
そして、上記駆動回路は、この可変ブロック変位検出回路によって検出された可変ブロックの変位位置及び最大変位量に基づいて駆動パルス信号を生成して、可変ブロックへ印加する。これにより、可変ブロックを自励振動させるようにしている。
【0040】
また、可変ブロック変位検出回路は、可変ブロックの変位量が最大付近(最大となる時の前後所定期間)で変位検出用パルス信号を印加するようにしており、これにより、省電力化を図ると共に、精度よく可変ブロックの変位を検出することができる。特に、変位検出用パルス信号を常時印加し、これにより得られる可変ブロックの変位の情報から可変ブロックの変位量が最大となる付近のポイントの情報を検出する回路に比べて、振幅を取り出すために必要だったバンドパスフィルタ等が不要となり、回路を簡素化できる。
【0041】
ところで、検出用パルス信号印加部が駆動パルス信号に同期したタイミングで検出用パルス信号を出力して、駆動パルス信号のエッジと検出用パルス信号のエッジとが同じタイミングになると、駆動パルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのエッジ部分の高周波成分が、寄生容量を介して慣性検出部などにノイズとして影響を及ぼす恐れがある。
【0042】
そこで、本実施形態における検出用パルス信号印加部において、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ付近では、検出用パルス信号を所定周期分(例えば、1周期分或いは2周期分)だけ出力せずにマスクするようにする。これにより、駆動パルス信号のエッジ部分による慣性検出部などへのノイズの影響を抑制することが可能となる。
【0043】
また、検出用パルス信号印加部は駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時に検出用パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジとならないように、駆動パルス信号又は検出用パルス信号の位相をシフトする位相シフト回路を設けるといった簡単な構成で、上記と同様の効果を得ることができる。
【0044】
以下、さらに本実施形態における慣性センサの具体的な一例を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態における慣性センサの全体構成図、図2は本実施形態における慣性センサの構成を説明するための図である。
【0045】
本実施形態における慣性センサ1は、3軸の角速度及び3軸の加速度を検出する機能を有している。この慣性センサ1は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれるデバイスで構成され、図1に示すように、印加される慣性力に応じて内部の状態が変化する構造体2と、当該構造体2の内部の状態を検出して慣性センサ1に加わる慣性力を検出する検出回路3(本発明の検出装置の一例に相当)と、この検出回路3を載置した構造体2を載置する基部4とを備えている。なお、構造体2と検出回路3との間の配線、及び検出回路3と基部4との間の配線は、ワイヤボンディングなどによって行われている。また、慣性センサ1は、BGA(Ball Grid Array)パッケージにより構成され、基部4の下部(構造体2の載置側とは反対側)にはバンプが格子状に配置されるが、LGA(Land Grid Array)パッケージを採用してもよい。
【0046】
構造体2は、図1及び図2に示すように、SOI(Silicon on Insulator)基板で形成され、慣性力に応じて内部の状態が変化する可動体(振動子)が形成されたセンサ基板5と、Si(Silicon)基板で形成され、センサ基板5の一側面に対向する電極(後述する検出電極、駆動モニタ電極など)が配置された検出基板6と、同様にSi(Silicon)基板で形成され、センサ基板5の他側面に対向するキャップ基板7を有している。また、センサ基板5は、検出基板6とキャップ基板7とにより挟まれ、その内部が減圧状態で封止される。
【0047】
以上のように構成される慣性センサ1について、構造体2、検出回路3の順に具体的に図面を参照して説明する。
【0048】
(構造体2の構成について)
この構造体2について、図3を参照してさらに具体的に説明する。図3は慣性センサ1の構造体2を説明するための図であり、センサ基板5の平面レイアウトを示している。
【0049】
図3に示すように、構造体2のセンサ基板5は、変位可能な可変ブロック12(12a〜12d)、各可変ブロック12を所定方向に往復振動させる駆動電極13(13a〜13d)、固定ブロック14等を備えている。
【0050】
可変ブロック12は、センサ基板5のX軸上とY軸上のそれぞれに、1組ずつ原点Oに関し互いに対称な位置に配置される。すなわち、可変ブロック12aと12cとは、センサ基板5のY軸上に原点Oに関し互いに対称な位置に配置され、可変ブロック12bと12dとは、センサ基板5のX軸上に原点Oに関し互いに対称な位置に配置される。
【0051】
そして、可変ブロック12aと12cとは、駆動電極13aと13cによりそれぞれY軸方向に往復振動し、可変ブロック12bと12dとは、駆動電極13bと13dによりそれぞれX方向に往復振動する。
【0052】
このように、本実施形態における慣性センサ1の構造体2は、センサ基板5のX軸上とY軸上のそれぞれに、原点Oに関し互いに対称な位置に、1組ずつの可変ブロック12(12bと12d,12aと12c)を配置し、X軸上とY軸上で、可変ブロック12b,12dと可変ブロック12a,12cとが、直交する向きに往復振動するような基準振動を与えるものである。この基準振動は、角速度を検出するために行われるものであり、このようなX軸、Y軸の反位相振動のほか、原点Oを中心に回転方向に振動させる回転振動がある。
【0053】
ここで、各可変ブロック12a〜12dについて、図4を参照して説明する。図4(a)は、可変ブロック12の平面レイアウト図を示し、図4(b)は図4(a)中のA−A’線断面図を示す図である。なお、この図4においては可変ブロック12a〜12dのうち可変ブロック12aを例に挙げて説明する。
【0054】
図4(a),(b)に示すように、可変ブロック12aは、支持部21aに一端側が支持された弾性支持梁22a(22a1〜22a6)と、各弾性支持梁22aの他端側に支持された可動体23aとを備えており、この可動体23aは原点Oを中心としたY軸に対して対称な形状に形成される。
【0055】
支持部21a、弾性支持梁22a及び可動体23aは、例えばSOI基板を使用して形成されている。このSOI基板は、下層より、ベースシリコン層31、絶縁層(一例としてBOX層)32、シリコン活性層33を積層したものである。
【0056】
支持部21a及び可動体23aは、ベースシリコン層31、絶縁層32、シリコン活性層33の3層で形成され、弾性支持梁22aはシリコン活性層33で形成されている。従って、可動体23は、シリコン活性層33の弾性支持梁22a(22a1〜22a6)によって、吊り下げられるように支持されることになり、Z軸に平行な方向及びY軸を中心とした回転方向に自由度を有するものとなっている。なお、可動体23aは可変ブロック12aの振動方向(Y軸方向)には剛性が高く、振動方向に垂直な方向(X軸方向)には剛性が低くなるような状態で支持部21aに固定される。
【0057】
可変ブロック12aでは、X軸方向に力が加わると可動体23aが傾き、その傾きを検出することによって、慣性センサ1へ加わる慣性力を検出することができる。またZ軸方向に慣性力が加わった場合は、可動体23がZ軸方向に変位し、その変位量を検出することで慣性力を検出することができる。
【0058】
また、可変ブロック12b〜12dも可変ブロック12aと同様の構成をしており、各可動体23b〜23d(図示せず)の変位量を検出することで、X軸、Y軸、Z軸方向に加わった慣性力を検出することができる。
【0059】
本実施形態における慣性センサ1では、可動体23a〜23dにおける、X軸方向、Y軸方向の傾きやZ軸方向の変位を検出する方法として、半導体プロセスでイオン注入法等により比較的容易に形成できる静電検出を採用している。
【0060】
ここで、慣性センサ1における可動体23a〜23dの変位の検出方法について図面を参照して具体的に説明する。図5及び図6は可動体23a〜23dと検出基板6との関係を示す図である。なお、図5は可変ブロック12a,12cの可動体23a,23cと検出基板6との関係を示す図であり、図6は可変ブロック12b,12dの可動体23b,23dと検出基板6との関係を示す図である。
【0061】
図5(a),(b)に示すように、可動体23a(23c)の上部(シリコン活性層33側)に配置される検出基板6には、可動体23a(23c)と対向する面に、例えば2枚の検出電極42a,43a(42c,43c)が可動体23a(23c)と所定の間隙をもって形成されている。これにより、検出電極42a(42c)と可動体23a(23c)との間、及び検出電極43a(43c)と可動体23a(23c)との間でそれぞれ可変容量素子が形成される。なお、この検出電極42a,43aは、原点Oを中心としたY軸に対して対称な位置に形成される。また、シリコン活性層33は電極として機能する。
【0062】
そして、図5(c)に示すように、検出電極42a(42c)と可動体23a(23c)により形成される可変容量素子と検出電極43a(43c)と可動体23a(23c)により形成される可変容量素子との容量差を検出することでX軸方向の傾きを検出することができる。
【0063】
また、図5(d)に示すように、検出電極42a(42c)と可動体23a(23c)により形成される可変容量素子と検出電極43a(43c)と可動体23a(23c)により形成される可変容量素子との容量和を検出することでZ軸方向の変位を検出することができる。
【0064】
また、可動体23b(23d)も可動体23a(23c)と同様に構成される。すなわち、図6(a),(b)に示すように、可動体23bの上部(シリコン活性層33側)に配置される検出基板6には、可動体23b(23d)と対向する面に、例えば2枚の検出電極42b,43b(42d,43d)が可動体23b(23d)と所定の間隙をもって形成されている。これにより、検出電極42b(42d)と可動体23b(23d)との間、及び検出電極43b(43d)と可動体23b(23d)との間でそれぞれ可変容量素子が形成される。
【0065】
そして、図6(c)に示すように、検出電極42b(42d)と可動体23b(23d)により形成される可変容量素子と検出電極43b(43d)と可動体23b(23d)により形成される可変容量素子との容量差を検出することでY軸方向の傾きを検出することができる。また、図6(d)に示すように、検出電極42b(42d)と可動体23b(23d)により形成される可変容量素子と検出電極43b(43d)と可動体23b(23d)により形成される可変容量素子との容量和を検出することでZ軸方向の変位を検出することができる。
【0066】
以上のように、可動体23a,23cと検出電極42a,43a,42c,43cとによりX軸方向及びZ軸方向に加わる印加力を検出することができ、また、可動体23b,23dと検出電極42b,43b,42d,43dとによりY軸方向及びZ軸方向に加わる印加力を検出することができる。従って、可動体23a,23cを用いることにより、X軸方向及びZ軸方向に加わる加速度を検出することが可能となり、また、可動体23b,23dを用いることにより、Y軸方向及びZ軸方向に加わる加速度を検出することが可能となる。このようにセンサ基板5上に配置された各可変ブロック12a〜12dは、複数軸の検出軸をもち、そのうち1つの検出軸は基準振動と垂直方向であるような構造を持つものである。
【0067】
ここで、可変ブロック12a〜12dの基準振動(X軸、Y軸の反位相振動)について、図面を参照して説明する。図7は、本実施形態におけるセンサ基板5の平面レイアウト図(可変ブロック12a〜12dのみ抽出)である。
【0068】
図7(a)に示すように、慣性センサ1は、センサ基板5のX軸上とY軸上のそれぞれに、原点Oに関し互いに対称な位置に、1組ずつの可変ブロック12(12aと12c,12bと12d)を配置し、X軸上とY軸上で、可変ブロック12(12a,12c)と可変ブロック12(12b,12d)とが、直交する向きに往復振動するような基準振動を与えるものである。
【0069】
そして、図7(b)に示すように、Y軸上の可変ブロック12a,12cが原点Oから遠ざかる方向に振動するとき、X軸の可変ブロック12b,12dは、原点Oに近づく方向に振動する。また、図7(c)に示すように、Y軸上の可変ブロック12a,12cが原点Oに近づく方向に振動するとき、X軸の可変ブロック12b,12dは、原点Oから遠ざかる方向に振動する。このような振動は、センサ基板5の共振モードを最適化することで実現できる。
【0070】
駆動力の印加は、静電力、圧電素子、電磁力等の手段があるが、半導体製造プロセスで形成することが比較的容易なものとしては、静電力を使ったものがある。本実施形態における慣性センサ1では、静電力を用いて可変ブロック12a〜12dに駆動する例を挙げて説明する。なお、上述した図7においては、可動体23aと検出電極42a,43aとの間で形成される可変容量素子Ca7,Ca8(後述の図9参照)の容量値をそれぞれY3,Y4とし、可動体23bと検出電極42b,43bとの間で形成される可変容量素子Ca3,Ca4(後述の図9参照)の容量値をそれぞれX3,X4とし、可動体23cと検出電極42c,43cとの間で形成される可変容量素子Ca5,Ca6(後述の図9参照)の容量値をそれぞれY1,Y2とし、可動体23dと検出電極42d,43dとの間で形成される可変容量素子Ca1,Ca2(後述の図9参照)の容量値をそれぞれX1,X2としている。
【0071】
上述したように本実施形態における慣性センサ1では、可変ブロック12(12a〜12d)に対向させた位置にそれぞれ駆動電極13(13a〜13d)を配置している。可変ブロック12(12a〜12d)と駆動電極13(13a〜13d)との間隔は、数μmから数十μmの間隔をおいており、その駆動電極13と可変ブロック12との間に共振を励起する周波数の電圧を印加することで可変ブロック12(12a〜12d)を往復振動させることができる。十分な駆動力を確保するために、駆動電極13のような平行板電極(図3参照)の代わりに櫛歯電極を用いることも可能である。
【0072】
このように、可変ブロック12a,12cと12b,12dとをそれぞれ反位相で振動させるのは、3軸方向の角速度の検出に必要な2軸方向の基準振動を行わせるためである。
【0073】
また、本実施形態における慣性センサ1では、図8(a),(b)に示すように、可変ブロック12a,12bの位置を検出するための駆動モニタ電極52a,52bが検出基板6に配置される。図8は可変ブロックと駆動モニタ電極との関係を説明するための図である。そして、可変ブロック12a,12bと駆動モニタ電極52a,52bとの間でそれぞれ可変容量素子Cf1,Cf2(後述する図9参照。変位検出用可変容量素子の一例に相当)が形成され、この可変容量素子Cf1,Cf2の容量値を検出することによって、可変ブロック12a,12bが変位した位置の検出が可能となっている。
【0074】
(角速度と加速度の検出原理)
本実施形態における慣性センサ1における角速度と加速度の検出原理を、以下に説明する。
【0075】
まず、角速度の検出原理について説明する。ある質量を持った物体が、Z軸方向に往復運動をするような振動をしているときに、Z軸に鉛直な方向、例えばX軸に角速度ωの回転運動を行うと、Y軸方向にコリオリ力Fが発生し、Y軸に角速度ωの回転運動を行うと、X軸方向にコリオリ力Fが発生する。
【0076】
この現象は、フーコーの振り子として古くから知られている力学現象であり、発生するコリオリ力Fは、F=2m・v・ωで表される。ここで、mは物体の質量、vは物体の運動についての瞬時の速度、ωは物体の瞬時の角速度である。
【0077】
このコリオリ力は、振動に対して垂直な向きに発生するので、その原理上、振動方向にはコリオリ力は発生しない。従って、従来の振動型角速度検出装置では、1軸振動で最大で2軸までの角速度しか検出できないか、2次元に楕円運動(2軸同時に振動と同等)させることで3軸方向に検出可能にするかであった。
【0078】
本実施形態における慣性センサ1では、上述したように基準振動を与えた複数の可変ブロック12a〜12dによって、3軸の角速度と3軸の加速度を検出することが可能となっている。
【0079】
前記図7(b)に示すように、X軸上の可変ブロック12b,12dが原点O方向へ移動する時、Y軸上の可変ブロック12a,12cは、原点Oから遠ざかるように移動する。この時、X軸まわりに角速度Ωが印加されるとY軸上の2個の可変ブロック12a,12cにはZ軸方向にコリオリ力F=2mAωΩが印加される。Aは基準振動の最大振幅、ωは基準振動の周波数、mは可変ブロック12の可動体23の質量である。Y軸上の2つの可変ブロック12a,12cは、X軸周りの角速度に対し、逆方向(反位相)に振動しているので、コリオリ力の向きは、Z軸方向で逆向きである。この2つ可変ブロック12a,12cで検出される容量値の差分をとればX軸まわりの角速度が検出できる。
【0080】
ここで、上述のように各検出電極42,43(42a〜42d,43a〜43d)と可動体23(23a〜23d)により形成される可変容量素子の初期状態の容量値(可動体23に慣性力が加わらないときの容量値)をX1〜X4,Y1〜Y4とし、可動体23に慣性力が加わったときの可変容量素子の容量値を(X1+ΔX1)〜(X4+ΔX4),(Y1+ΔY1)〜(Y4+ΔY4)とすると、X軸まわりの角速度Ωxは以下の式(1)で表すことができる。なお、Axは係数である。また、可変容量素子Ca5〜Ca8の初期状態の容量値Y1〜Y4は同一であるものとする。
Ωx=Ax{(ΔY1+ΔY2)−(ΔY3+ΔY4)} ・・・(1)
【0081】
Y軸まわりの角速度についてもX軸上の2つの可変ブロック12b,12dのZ軸方向の変位を検出することにより、同様に検出できる。すなわち、Y軸まわりの角速度Ωyは以下の式(2)で表すことができる。なお、Ayは係数である。また、可変容量素子Ca1〜Ca4の初期状態の容量値X1〜X4は同一であるものとする。
Ωy=Ay{(ΔX1+ΔX2)−(ΔX3+ΔX4)} ・・・(2)
【0082】
また、Z軸まわりの角速度は次のように検出することができる。すなわち、Z軸まわりの角速度が印加されると、各可変ブロック12a〜12dの各可動体23a〜23d(前記図3参照)は、それぞれZ軸と直行する方向にコリオリ力を受け、各可変ブロック12a〜12dはZ軸と直交する方向に傾く。この傾きによる変位は、X軸,Y軸の各軸上、2つの可変ブロック12aと12cが逆向きであり、可変ブロック12bと12dが逆向きなので、その差分を検出すれば、Z軸周りの角速度が検出できる。4個の可変ブロック12a〜12dのうち、反位相となる2つ以上可変ブロックの差分をとればよいが、ここでは精度を向上させるため、4個の可変ブロック12a〜12dを使ってZ軸周りの角速度を検出することとしている。
【0083】
従って、Z軸まわりの角速度Ωzは、以下の式(3)で表すことができる。なお、Azは係数である。また、各可変容量素子Ca1〜Ca8の初期状態の容量値X1〜X4,Y1〜Y4は同一であるものとする。
Ωz=Az[{(ΔX1−ΔX2)−(ΔX3−ΔX4)}
+{(ΔY1−ΔY2)−(ΔY3−ΔY4)}] ・・・(3)
【0084】
次に加速度の検出について説明する。X軸方向に加速度が印加された場合、Y軸上の2つの可変ブロック12a,12cの可動体23a,23cがX軸方向に傾く。従って、可変ブロック12aにおける可変容量素子Ca5,Ca6の容量値の差分と可変ブロック12dにおける可変容量素子Ca7,Ca8の容量値の差分との和をとれば、加速度となる。すなわち、X軸方向に加速度axは、以下の式(4)で表すことができる。なお、Bxは係数である。また、可変容量素子Ca5〜Ca8の初期状態の容量値Y1〜Y4は同一であるものとする。
ax=Bx{(ΔY1−ΔY2)+(ΔY3−ΔY4)} ・・・(4)
【0085】
また、Y軸方向に加速度が印加された場合、X軸上の2つの可変ブロック12b,12dの可動体23b,23dがY軸方向に傾く。従って、X軸同様に、可変ブロック12bにおける可変容量素子Ca3,Ca4の容量値の差分と可変ブロック12dにおける可変容量素子Ca1,Ca2の容量値の差分との総和をとることで、Y軸方向成分の加速度を検出できる。すなわち、Y軸方向に加速度ayは、以下の式(5)で表すことができる。なお、Byは係数である。また、可変容量素子Ca1〜Ca4の初期状態の容量値X1〜X4は同一であるものとする。
ay=By{(ΔX1−ΔX2)+(ΔX3−ΔX4)} ・・・(5)
【0086】
また、Z軸方向に加速度が印加された場合は、4つの可変ブロック12a〜12dの全ての可動体23a〜23dが、同一方向に平行移動するので、その総容量変化、もしくは、最低1つの可変ブロック、例えば可変ブロック12dにおける可変容量素子Ca1,Ca2の容量変化(ΔX1+ΔX2等)を検出することでZ軸方向の加速度を検出できる。総容量変化で検出する場合、Z軸方向に加速度azは、以下の式(6)で表すことができる。なお、Bzは係数である。また、可変容量素子Ca1〜Ca8の初期状態の容量値X1〜X4,Y1〜Y4は同一であるものとする。
az=Bz(ΔX1+ΔX2+ΔX3+ΔX4+ΔY1+ΔY2+ΔY3+ΔY4)
・・・(6)
【0087】
(検出回路について)
次に、検出回路3について図面を参照して説明する。図9は本実施形態における慣性センサ1の電気ブロック図を示す。
【0088】
検出回路3は、図9に示すように、構造体2の状態を検出して、慣性センサ1に加わる角速度及び加速度を検出する検出制御部60と、駆動電極13a〜13dへ交流信号を印加して可変ブロック12a〜12dを往復振動させ、また、可変ブロック12a,12bの動作に基づいて駆動電極13a〜13dへ印加する前記駆動パルス信号を生成し、さらに、可変ブロック12a,12bの動作に基づいてクロック信号CLKを生成し、検出制御部60へ当該クロック信号CLKを供給する駆動制御部61とを備えている。
【0089】
(検出部について)
まず、検出制御部60について説明する。この検出制御部60は、駆動制御部61から出力されるクロック信号CLKから互いに位相が反転した2つのパルス信号CLKa,CLKbを生成する位相器100と、一端が共通に接続された容量素子Ca1〜Ca8,Cd,Cf1,Cf2の各他端の電極(検出電極44,42a〜42d,43a〜43d及び駆動モニタ電極52a,52b)に印加する検出用パルス信号をパルス信号CLKa,CLKbに基づいて生成するカウンタ回路101と、カウンタ回路101から出力される信号をそれぞれ増幅するバッファ回路102と、容量素子Ca1〜Ca8,Cd,Cf1,Cf2の一端の電極に接続され、所定の容量値の容量素子C10で負帰還回路を構成するチャージポンプ(C/P)回路103と、このチャージポンプ回路103の出力信号を検出用パルス信号に同期したタイミングでサンプルホールドを行うサンプルホールド(S/H)回路104と、このサンプルホールド回路104の出力信号を増幅する増幅回路105と、この増幅回路105の出力信号をデジタル変換するアナログ/デジタル変換器106と、アナログ/デジタル変換器106の出力をデジタル処理するデジタル処理部109とを有している。なお、可変容量素子Ca1〜Ca8は上述のように検出電極42,43と可動体23とにより形成される可変容量素子であり、固定容量素子Cdは検出電極44と固定ブロック14とにより形成される容量値が一定の容量素子であり、可変容量素子Cf1,Cf2は可変ブロック12a,12bと駆動モニタ電極52a,52bとにより形成される可変容量素子である。また、位相器100、カウンタ回路101、バッファ回路102及び後述する検波ウィンド生成器107、デジタル/アナログ変換器110、記憶部111により、一端が共通に接続された各可変容量素子Ca1〜Ca8及び固定容量素子Cdの他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を印加する検出用パルス信号印加部が構成される。また、チャージポンプ(C/P)回路103、サンプルホールド(S/H)回路104、増幅回路105、アナログ/デジタル変換器106、デジタル処理部109により慣性検出部が構成される。
【0090】
また、検出制御部60は、構造体2への検出用パルス信号の印加を制御する検波ウィンド生成器107を有している。この検波ウィンド生成器107は、スイッチ群108を制御することによって、特定の期間だけ構造体2の容量素子Ca,Cdへ検出用パルス信号を印加(間欠印加)するようにしている。スイッチ群108は、カウンタ回路101からそれぞれ出力される検出用パルス信号と基準電圧Vrefのうちいずれかを選択してバッファ回路102へ印加するように構成されている。この検波ウィンド生成器107は、クロック信号CLKを入力して動作し、さらに後述するPLL120から入力される振幅検波パルス及びタイミング検波パルスに基づいて、スイッチ群108を制御する。すなわち、PLL120から振幅検波パルス及びタイミング検波パルスが入力されている期間に、スイッチ群108を制御して、検出用パルス信号を構造体2へ印加するようにしている。
【0091】
ここで、検出制御部60においては、バッファ回路102から各検出電極に印加する検出用パルス信号のタイミングについて説明する。本実施形態における検出制御部60では、第1動作モード及び第2動作モードの2種類の動作モードを選択することができ、以下それぞれについて具体的に説明する。
【0092】
(第1動作モード)
まず、第1動作モードについて図面を参照して説明する。図10及び図11は第1動作モード時における構造体2の各検出電極(44,42a〜42d,43a〜43d)に印加される検出用パルス信号のタイミングを示す図である。
【0093】
この第1動作モードでは、固定容量である固定容量素子Cdの検出電極44へは連続的な検出用パルス信号を印加し、その他の可変容量素子Ca1〜Ca8の検出電極42d,43d,42b,43b,42a,43a,42c,43cには、それぞれ位相をずらして時分割に検出用パルス信号を印加する。
【0094】
すなわち、図10に示すように、信号CLKaにより生成される検出用パルス信号(以下、「正相の検出用パルス信号」と呼ぶことがある。)が固定容量素子Cdの検出電極44へ印加され、信号CLKbにより生成される検出用パルス信号(以下、「逆相の検出用パルス信号」と呼ぶことがある。)が順次可変容量素子Ca1〜Ca8の検出電極42a〜42d,43a〜43dへ印加される。なお、固定容量素子Cdへ印加される検出用パルス信号と可変容量素子Ca1〜Ca8へ印加される検出用パルス信号の極性は互いに反転してカウンタ回路101から出力される。
【0095】
ここで、チャージポンプ回路103は、オペアンプAMP10と、このオペアンプAMP10の反転入力端子と出力端子との間に接続された容量素子C10及びスイッチSW10とを備えており、オペアンプAMP10の非反転入力端子は基準電圧Vrefに接続される。
【0096】
そして、可変容量素子Ca1〜Ca8のいずれかに検出用パルス信号が印加される毎に、検出用パルス信号が印加された可変容量素子Caの容量値と固定容量素子Cdの容量値との差分に応じた電圧がオペアンプAMP10から出力されることになる。
【0097】
従って、チャージポンプ回路103からは順次可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の初期値からの差分に応じた電圧の信号が出力されることになる。そして、チャージポンプ回路103の出力は、サンプルホールド回路104で順次一時的に保持され、当該保持された電圧が増幅回路105により増幅されてアナログ/デジタル変換器106へ出力される。アナログ/デジタル変換器106では、順次可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の初期値からの差分に応じた電圧をデジタル化して出力する。
【0098】
このようにアナログ/デジタル変換器106から出力された信号は、デジタル処理部109に入力される。当該デジタル処理部109は、上述した式(1)〜(6)をそれぞれ演算する演算器を備えており、3軸(X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向)の加速度、及び3軸(X軸まわり、Y軸まわり及びZ軸まわり)の角速度を検出する。
【0099】
ところで、検出する容量素子Ca1〜Ca8,Cdの容量値は構造体2の個体差によってばらつきがある。従って、そのように個体差のある2つの可変容量素子をチャージポンプ回路103で検出すると出力のオフセット値が異なってくることから、角速度及び加速度を高精度に検出することができない虞がある。
【0100】
そこで、本実施形態における検出制御部60では、バッファ回路102で出力する正相及び逆相の検出用パルス信号の電圧値のバランスを調整するようにしている。すなわち、図11に示すように、検出電極44,42a〜42d,43a〜43dごとに、印加する検出用パルス信号の電圧値を調整する。
【0101】
検出制御部60には、デジタル/アナログ変換器110と記憶部111とを有しており、カウンタ回路101からの信号に基づいて、記憶部111から各検出用パルス信号の振幅情報が読み出されてデジタル/アナログ変換器110へ入力され、アナログ変換されてバッファ回路102の各バッファから出力される検出用パルス信号の振幅が制御される。
【0102】
この各検出用パルス信号の振幅情報は、慣性センサ1製造時に構造体2の固体差に応じて記憶部111に記憶されるものであるが、各可変ブロック12a〜12dを往復振動させていないときに、構造体2に形成された各容量素子Ca1〜Ca8,Cdに検出用パルス信号を入力し、これらの容量素子の容量値を計測して、その結果に基づいて調整すべき振幅量を前記振幅情報として記憶部111に記憶してもよい。なお、PLL回路129は、その内部の発振周波数に下限値が設定されており、各可変ブロック12a〜12dを往復振動させていないときでも、クロック信号CLKを出力することができるようにしている。そのため、本実施形態における検出回路3では、各可変ブロック12a〜12dを往復振動させていないときでも、各容量素子Ca1〜Ca8,Cdの容量値を検出することが可能となっている。
【0103】
ここで、チャージポンプ回路103及びサンプルホールド回路104の動作について図面を参照して具体的に説明する。図12はチャージポンプ回路及びサンプルホールド回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0104】
図12に示すように、検出電極44(図12(c)参照)に検出用パルス信号が印加される前にチャージポンプ回路103はリセット状態(スイッチSW10が短絡状態)となる。その後、検出電極44への検出用パルス信号の印加が行われ、この印加が終了する前に、チャージポンプ回路103のリセット状態が解除(スイッチSW10が開放状態)となり、チャージポンプ回路103が動作状態となる。
【0105】
次に、検出電極44への検出用パルス信号の印加が終了し、検出電極42d(43d,42b)に検出用パルス信号が印加された後、サンプルホールド回路104が所定期間だけサンプルホールド動作を開始(スイッチSW11を短絡状態)して、チャージポンプ回路103からの出力電圧を保持する。
【0106】
このようにチャージポンプ回路103は、容量素子C10をディスチャージするリセットを行った後、検出電極44(固定容量素子Cd)を接続し、その後、各検出電極42d,43d,42b,・・・(可変容量素子Ca1,Ca2,Ca3,・・・)に接続することによって、これらの容量素子の容量差を検出する。
【0107】
例えば、固定容量素子Cdと可変容量素子Ca1との容量値の差分を検出するとき、チャージポンプ回路103の出力電圧Voutは、以下の式(7)で表すことができる。なお、Vdは固定容量素子Cdに印加される検出用パルス信号の電圧値、Vaは可変容量素子Ca1に印加される検出用パルス信号の電圧値とする。
【0108】
【数1】
【0109】
上記式(7)において、Cd=Cd+ΔCd,Ca1=Ca1+ΔCa1とすると、以下の式(8)で表すことができる。なお、可変容量素子Ca1は慣性力によって変化するが、固定容量素子Cdは固定容量でありことから、ΔCd=0である。
【0110】
【数2】
【0111】
ここで、固定容量素子Cd及び可変容量素子Ca1へ印加される検出用パルス信号は、カウンタ回路101によって生成されるものであり、各検出用パルス信号の電圧は基本的に絶対値が同一の電圧値とし、慣性センサ1へ慣性力が加えられていないときの可変容量素子Ca1の容量値と固定容量素子Cdの容量値を同一とすると、上記式(8)の前段の式{(VdCd−VaCa1)/Cf}を0とすることができる。このとき、チャージポンプ回路103の出力電圧Voutは、以下の式(9)で表すことができる。
【0112】
【数3】
【0113】
上記式(9)から分かるように、チャージポンプ回路103の出力電圧Voutは、可変容量素子Ca1の容量値の変化分ΔCa1に応じた電圧となり、検出のダイナミックレンジを大きくとることができることから、高精度に角速度及び加速度を検出することができる。
【0114】
ここで、角速度及び加速度の検出タイミングを説明する。図13は角速度及び加速度の検出タイミングを説明するための図である。
【0115】
本実施形態における慣性センサ1は、図13に示すように、コリオリ力(図13(c))が最大付近となる期間(コリオリ力が最大となる時点の前後所定期間内。換言すれば可変ブロック12(図13(b))の変位速度が最大付近となる期間。)で角速度の検出(図13(d))を行い、可変ブロック12の変位位置が初期状態の位置から最大(最大変位量となる位置)付近となる期間(可変ブロック12の変位速度が最小となる時点の前後所定期間内。換言すればコリオリ力が最小となる時点の前後所定期間内。)で加速度の検出(図13(e))を行うようにしており、検波ウィンド生成器107によってスイッチ群108を制御することによって、これらの期間(図13(d)、(e))に構造体2へ検出用パルス信号が印加されるようにしている。すなわち、スイッチ群108の各スイッチを、カウンタ回路101とバッファ回路102との間を短絡するように検波ウィンド生成器107からスイッチ群108へ振幅検波パルス(図13(g))及びタイミング検波パルス(図13(h))を出力することによって行う(振幅検波パルス及びタイミング検波パルスがHighレベルのときに、カウンタ回路101とバッファ回路102との間が短絡する)。
【0116】
コリオリ力が最大付近となる期間に角速度の検出を行うのは、角速度による変位が最大となるためであり、これにより、精度よく角速度の検出を行うことができ、S/N比を改善することができる。また、可変ブロック12の変位位置が最大付近となる期間で加速度の検出を行うのは、この期間はコリオリ力が最小付近となる期間であり、これにより、精度よく加速度の検出を行うことができ、S/N比を改善することができる。
【0117】
このように、構成することによって、検出用パルス信号を構造体2へ常時印加しておく必要がなくなり、また、チャージポンプ回路103から出力される信号のなかから、コリオリ力が最大となる期間ものや可変ブロック12の変位位置が最大となる期間のものを抽出するといった処理も必要なくなることから、処理及び構成を複雑にせずに済む。
【0118】
なお、上述においては、コリオリ力が最大付近となる期間に、角速度の検出を行い、コリオリ力が最小付近となる期間に、加速度の検出を行うようにしたが、一般に加速度印加による変位量に比べ角速度印加による変位量は、40〜80dB程度小さくなる。従って、このような場合には、コリオリ力が最大付近となる期間に、角速度の検出と加速度の検出とを行うようにしてもよい。
【0119】
(第2動作モード)
次に、第2動作モードについて図面を参照して説明する。図14は第2動作モード時における構造体2の各検出電極(44,42a〜42d,43a〜43d)に印加される検出用パルス信号のタイミングを示す図である。
【0120】
この第2動作モードでは、第1動作モードにおいてデジタル処理部109で行っていた各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の変化分を用いた加算及び減算(上記式(1)〜(6))を、以下のように検出用パルス信号をカウンタ回路101から出力することにより、デジタル処理部109での加算処理及び減算処理を不要とする動作モードである。
【0121】
すなわち、可変容量素子Ca1〜Ca8のうち容量値を加算する可変容量素子Caの検出電極と、容量値を減算する可変容量素子Caの検出電極とに位相をずらして極性の異なる正相及び逆相の検出用パルス信号を印加することによって、角速度や加速度に応じた出力をチャージポンプ回路103から出力するものである。
【0122】
例えば、X軸の加速度を検出する場合、図14(A)に示すように、コリオリ力が最小付近となる期間で、可変容量素子Ca5,Ca7に正相の検出用パルス信号を印加した後、可変容量素子Ca6,Ca8に逆相で極性の異なる検出用パルス信号を印加することで、X軸の加速度axに応じた電圧{(Y1−Y2)+(Y3−Y4)}(上記式(4)参照)の信号をチャージポンプ回路103から出力することができる。従って、第1動作モードのようにデジタル処理部109において{(Y1−Y2)+(Y3−Y4)}を演算する必要がなく、処理負荷を軽減することができ、デジタル処理部109の回路構成も簡易化することができる。図14(A)に示すように、Y軸の加速度を検出する場合も同様に処理することができる。
【0123】
また、Z軸の加速度を検出する場合、図14(A)に示すように、固定容量素子Cdに正相の検出用パルス信号を印加した後、可変容量素子Ca1〜Ca8に逆相で極性の異なる検出用パルス信号を印加することで、X軸の加速度axに応じた電圧{X1+X2+X3+X4+Y1+Y2+Y3+Y4}(上記式(6)参照)の信号をチャージポンプ回路103から出力することができる。このように、式(6)のように可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の加算しかない場合(換言すれば、減算がない場合)、固定容量素子Cdに検出用パルス信号を印加することによって、実現している。なお、このとき、各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値とこれらに印加する検出用パルス信号の電圧振幅値との積算値の総和と、固定容量素子Cdの容量値とこの固定容量素子Cdに印加する検出用パルス信号の電圧振幅値との積算値とが同等になるように設定することが望ましい。例えば、各可変容量素子Ca1〜Ca8と固定容量素子Cdの容量値を同等とし、各可変容量素子Ca1〜Ca8へ印加する検出用パルス信号の電圧振幅値を同等とすると、固定容量素子Cdに印加する検出用パルス信号の電圧振幅値は、可変容量素子Ca1〜Ca8に印加する検出用パルス信号の電圧振幅値の8倍とすることが望ましい。検出用パルス信号の電圧振幅値は、後述するようにバッファ回路102により調整されるものであり、このバッファ回路102は後述するデジタル/アナログ(D/A)変換器110から出力される信号に基づいて、検出用パルス信号の電圧振幅値を変更する。
【0124】
また、X軸の角速度を検出する場合、コリオリ力が最大付近となる期間で、図14(B)に示すように、可変容量素子Ca5,Ca6に正相の検出用パルス信号を印加した後、可変容量素子Ca7,Ca8に逆相で極性の異なる検出用パルス信号を印加することで、X軸の加速度axに応じた電圧{(Y1+Y2)−(Y3+Y4)}(上記式(1)参照)の信号をチャージポンプ回路103から出力することができる。従って、第1動作モードのようにデジタル処理部109において{(Y1+Y2)−(Y3+Y4)}を演算する必要がなく、処理負荷を軽減することができ、デジタル処理部109の回路構成も簡易化することができる。図14(B)に示すように、Y軸やZ軸の加速度を検出する場合も同様に処理することができる。
【0125】
チャージポンプ回路103の出力は、サンプルホールド回路104で順次一時的に保持され、当該保持された電圧が増幅回路105により増幅されてアナログ/デジタル変換器106へ出力される。アナログ/デジタル変換器106では、増幅回路105からの出力に基づいて、3軸の加速度及び3軸の角速度を検出する。
【0126】
このように第2動作モードでは、各軸の上記演算式(1)〜(6)に基づき、容量値を加算する可変容量素子Caの電極には同相の検出用パルス信号を、その加算値から容量値を減算する可変容量素子Caの電極には位相の異なる逆相かつ極性の異なる検出用パルス信号を印加し、また、減算する可変容量素子Caの電極がない場合には、固定電極に同相検出用パルス信号を、加算する可変容量素子Caの電極には位相の異なる逆相かつ極性の異なる検出用パルス信号を印加して、チャージポンプ回路103により検出を行うものである。
【0127】
これにより、上記演算式(1)〜(6)に基づいた演算をデジタル処理部109において演算する必要がなく、処理負荷を軽減することができ、デジタル処理部109の回路構成も簡易化することができる。
【0128】
なお、第1動作モードと同様に、バッファ回路102で出力する検出用パルス信号の正相、逆相の電圧値のバランスを調整するようにしている。すなわち、検出電極44,42a〜42d,43a〜43dごとに、印加する検出用パルス信号の電圧値を調整するようにしている。これにより、構造体2における容量素子Ca1〜Ca8,Cdの個体差によるその容量値ばらつきによって生じるチャージポンプ回路103のオフセット値を調整して、角速度及び加速度を高精度に検出することができる。なお、正相の検出用パルス信号を印加する可変容量素子Caの各容量値と印加する検出用パルス信号の電圧振幅値との積算値の総和と、逆相の検出用パルス信号を印加する可変容量素子Caの各容量値と印加する逆相の検出用パルス信号の電圧振幅値との積算値の総和とが同等になるように設定することが望ましい。
【0129】
また、上述のように角速度の検出をコリオリ力が最大付近となる期間に行い、加速度の検出をコリオリ力が最小付近となる期間に行うようにするのではなく、図15に示すように、コリオリ力が最大付近となる期間に、角速度の検出と加速度の検出を行うようにしてもよい。図15は第2動作モード時における構造体2の各検出電極(44,42a〜42d,43a〜43d)に印加される検出用パルス信号の別のタイミングを示す図である。
【0130】
(駆動制御部61の構成について)
次に、駆動制御部61の構成について図9を参照して具体的に説明する。駆動制御部61は、図9に示すように、チャージポンプ(C/P)回路120、サンプルホールド(S/H)回路121、ピーク検波器122、タイミング検波器123、オートゲインコントロール(AGC)回路124、ドライバ回路125を有しており、これらの回路が駆動回路として機能し、以下のように可変ブロック12a,12bの往復振動の変位幅が一定となるように制御される。なお、チャージポンプ(C/P)回路120、サンプルホールド(S/H)回路121、ピーク検波器122、タイミング検波器123などにより変位検出部が構成される。
【0131】
すなわち、チャージポンプ回路120において、可変ブロック12a,12bの変位位置に基づいて容量値が変化する可変容量素子Cf1とCf2の容量値の差分が検出される(このチャージポンプ回路120はチャージポンプ回路103と同様の動作を行う回路であり、2つの容量素子の容量値の差分を検出する)。このチャージポンプ回路120の出力はサンプルホールド回路121によって検出用パルス信号に同期したタイミングで順次サンプルホールドされてピーク検波器122及びタイミング検波器123へ出力される。
【0132】
ピーク検波器122では、サンプルホールド回路121から出力される信号の最大値を検出して出力し、タイミング検波器123では、サンプルホールド回路121から出力される信号のゼロクロス点(可変ブロック12a,12bの変位が初期状態となり、コリオリ力が最大となる点)を検出して当該検出タイミングの前後所定期間において立ち上がり又は立ち下がりの変化点を有するタイミング検出信号を出力する。なお、タイミング検波器123は基準電圧Vrefを閾値とするコンパレータなどによって構成される。
【0133】
オートゲインコントロール(AGC)回路124はピーク検波器122からの出力に基づいて、可変ブロック12a,12bの往復振動の変位幅を一定に保つように調整する信号をドライバ回路125へ供給する。ドライバ回路125はタイミング検波器123から出力されるタイミング検波パルスに基づいて、可変ブロック12a〜12dの変位量が最大となる時の前後所定期間において、オートゲインコントロール回路124からの信号を電力増幅した駆動パルス信号を駆動電極13a〜13dへ供給する。なお、ドライバ回路125は互いに位相が反転した駆動パルス信号を駆動電極13a,13cと駆動電極13b,13dとにそれぞれ出力することによって、駆動電極13a,13cと駆動電極13b,13dとを反位相で振動させる。なお、この振動の周波数は、例えば、2k〜10kHzの範囲とする。
【0134】
以上のように、可変ブロック12a,12bの変位状態に応じた信号を駆動電極13a〜13dへ印加して各可変ブロック12a〜12dを自励振動させている。
【0135】
また、駆動制御部61は、図9に示すように、PLL回路129、モニタ検波ウィンド生成器126、スイッチ群127及びバッファ回路128をさらに備えている。
【0136】
PLL回路129は、タイミング検波器123から出力されるタイミング検波信号に基づいて、各可変ブロック12a〜12dの振動に同期したタイミング検波信号を逓倍したクロック信号CLKを生成して、当該クロック信号CLKを出力すると共に、タイミング検波信号を出力する。そして、モニタ検波ウィンド生成器126は、PLL回路129から入力されるクロック信号CLKとタイミング検波信号に基づき、コリオリ力が最大付近となる期間(図16(d)参照)に、アクティブ(ここでは、Highレベル)となる変位検出用パルス信号(図16(e)参照)を出力する。ここで、図16は、構造体2の駆動モニタ電極52a,52bに印加される変位検出用パルス信号のタイミングを説明するための図である。
【0137】
スイッチ群127は、カウンタ回路101から出力される検出用パルス信号及び基準電圧Vrefのうちいずれかを選択して駆動モニタ電極52a,52bに出力するものであり、モニタ検波ウィンド生成器126から出力された変位検出用パルス信号によって制御され、この変位検出用パルス信号がアクティブ(ここでは、Highレベル)の期間(図16(e)参照)でのみ、変位検出用パルス信号をカウンタ回路101から出力する。このように出力された変位検出用パルス信号は、バッファ回路128でそれぞれ増幅されて駆動モニタ電極52a,52bへ印加される。
【0138】
このように各可変ブロック12a〜12dの変位検出は、各可変ブロック12a〜12dの変位量が最大となる位置近傍で52a,52bに変位検出用パルス信号を印加することにより行うようにしており、これにより精度よく可変ブロック12a〜12dの変位を検出することができる。なお、モニタ検波ウィンド生成器126、スイッチ群127及びバッファ回路128により変位検出用パルス信号印加部が構成される。
【0139】
以上のように本実施形態における慣性センサ1では、ウィンド制限を行って容量素子Ca1〜Ca8,Cdに検出用パルス信号を印加することとしたが、このようなウィンド制御を行わずに、従来用いられていた駆動信号に同期した同期検波回路等を併用して、検出用パルス信号を継続して印加するようにしてもよい。
【0140】
すなわち、上述においては、検波ウィンド生成器107により、所定期間(コリオリ力が最大付近となる期間やコリオリ力が最小付近となる期間)だけ構造体2へ検出用パルス信号を印加するようにしたが、このようなウィンド制御を行わずに、例えば、図17に示すようなタイミングで容量素子Ca1〜Ca8,Cdに検出用パルス信号を継続して印加するようにしてもよい。図17は構造体2の各検出電極(44,42a〜42d,43a〜43d)に印加される検出用パルス信号の他のタイミングを示す図である。なお、検出用パルス信号の周波数は、例えば、ドライバ回路125から出力する駆動パルス信号の周波数の16倍〜128倍程度の周波数で動作させる。また、Z軸の加速度の検出は、{ΔX1+ΔX4+ΔY2+ΔY3}とする演算を用いているが、上述したように{ΔX1+ΔX2+ΔX3+ΔX4+ΔY1+ΔY2+ΔY3+ΔY4}としてもよい。
【0141】
次に、ドライバ回路125から出力される駆動パルス信号と構造体2へ印加される検出用パルス信号の位相関係を説明する。図18は本実施形態における駆動パルス信号と検出用パルス信号の位相関係を説明するための図である。
【0142】
上述したように、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時のタイミングで立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジとなる検出用パルス信号が出力されると、駆動パルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのエッジ部分の高周波成分が、寄生容量を介して検出制御部60内の回路などにノイズとして影響を及ぼす恐れがある。
【0143】
そこで、本実施形態における検出制御部60において、図18(a)に示すように、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ付近では、カウンタ回路101は、検出用パルス信号を所定周期分(例えば、1周期分或いは2周期分)だけ出力せずにマスクするようにする。これにより、駆動パルス信号のエッジ部分による検出制御部60内の回路などへのノイズの影響を抑制することが可能となる。
【0144】
また、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時に検出用パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジとならないように、検出制御部60に、駆動パルス信号又は検出用パルス信号の位相をシフトするための位相シフト回路を設けることにより、図18(b)に示すように、駆動パルス信号と検出用パルス信号の立ち上がり又は立ち下がりエッジが同時に発生しないようにすることができ、上記の場合(図18(a))と同様の効果を得ることができる。しかも、検出用パルス信号をマスクすることがないため容量素子の容量値の検出回数が減ることがない。例えば、検出制御部60において、位相器100の前段にクロック信号CLKする位相シフト回路を設け、この位相シフト回路によって位相をシフトしたクロック信号CLKを位相器100に入力して、駆動パルス信号と検出用パルス信号の立ち上がり又は立ち下がりエッジが同時に発生しないようにする。なお、駆動パルス信号と検出用パルス信号は同期しているので、駆動パルス信号と検出用パルス信号の位相関係は一定となる。
【0145】
以上のように本実施形態における慣性センサ1では、印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し、可変ブロックが所定方向に往復振動可能な構造体と、この構造体内に形成される容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出回路とを備えており、3軸の角速度及び3軸の加速度を検出することを可能としている。
【0146】
また、可変ブロック12を反位相で駆動することで、加速度外乱をキャンセルし、高精度に角速度を検出できる。さらに、反位相モードの場合、検出変位に遠心力等の不要な外乱変位が入らず、検出のダイナミックレンジが大きくとれ、高精度な角速度と加速度とを検出できる慣性センサが実現できる。なお、この慣性センサ1は、ロボットの機構制御、入力インターフェース、ビデオカメラやスチルカメラの手ブレ補正、落下防止手段等に適用することができる。
【0147】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0148】
例えば、上記本実施形態では、第1動作モード及び第2動作モードの2種類の動作モードを選択するようにしたが、いずれか一つの動作のみしかできないように構成してもよい。
【0149】
また、上述の実施形態においては、容量素子Ca1〜Ca8,Cdを一つのチャージポンプ回路に接続したが、複数のチャージポンプ回路に分けて接続するようにしてもよい。この場合、サンプルホールド回路や増幅回路もチャージポンプ回路に応じた数を設ける。
【0150】
また、検波ウィンド生成器やスイッチ群を設けてウィンド制御することとしたが、図17に示すように検出用パルス信号を継続して出力するときには、可変ブロックが初期状態に対する変位位置の方向に応じて、増幅回路でサンプルホールド回路の出力を反転増幅するのか非反転増幅するのかを切り替え(増幅回路とサンプルホールド回路との間にスイッチを設けて切り替え)、デジタル処理部によってコリオリ力が最大付近となると期間の信号に基づいて角速度の検出を行い、コリオリ力が最小付近となる期間の信号に基づいて加速度の検出を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本実施形態における慣性センサの全体構成図である。
【図2】本実施形態における慣性センサの構成を説明するための図である。
【図3】本実施形態における慣性センサの構造体を説明するための図である。
【図4】(a)は、可変ブロックの平面レイアウト図、(b)は(a)中のA−A’線断面図を示す図である。
【図5】可変ブロックの可動体と検出基板との関係を示す図である。
【図6】可変ブロックの可動体と検出基板との関係を示す図である。
【図7】本実施形態におけるセンサ基板の平面レイアウト図である。
【図8】可変ブロックと駆動モニタ電極との関係を説明するための図である。
【図9】本実施形態における慣性センサの電気ブロック図である。
【図10】第1動作モード時における構造体の各検出電極に印加される検出用パルス信号のタイミングを示す図である。
【図11】第1動作モード時における構造体の各検出電極に印加される検出用パルス信号のタイミングを示す図である。
【図12】チャージポンプ回路及びサンプルホールド回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図13】角速度及び加速度の検出タイミングを説明するための図である。
【図14】第2動作モード時における構造体の各検出電極に印加される検出用パルス信号のタイミングを示す図である。
【図15】第2動作モード時における構造体の各検出電極に印加される検出用パルス信号の別のタイミングを示す図である。
【図16】構造体の駆動モニタ電極に印加される変位検出用パルス信号のタイミングを説明するための図である。
【図17】構造体の各検出電極に印加される検出用パルス信号の他のタイミングを示す図である。
【図18】駆動パルス信号と検出用パルス信号との位相関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0152】
1 慣性センサ
2 構造体
3 検出回路(検出装置の一例)
4 基部
5 センサ基板
6 検出基板
7 キャップ基板
12(12a〜12d)可動ブロック
13(13a〜13d) 駆動電極
14 固定ブロック
42a〜42d、43a〜43d 検出電極
52a、52b 駆動モニタ電極
60 慣性検出部
61 動作制御部
103,120 チャージポンプ回路
104,121 サンプルホールド回路
105 増幅回路
106 アナログ/デジタル変換器
107 検波ウィンド生成器
108、126 スイッチ群
109 デジタル処理部
110 デジタル/アナログ変換器
111 記憶部
123 タイミング検波器
124 オートゲインコントロール回路
125 ドライバ回路
126 モニタ検波ウィンド生成器
129 PLL回路
Ca1〜Ca8 可変容量素子
Cd 固定容量素子
Cf1、Cf2 可変容量素子(変位検出用可変容量素子の一例)
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度及び加速度を検出する慣性センサ及びその検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体に取り付けて、その物体が加速度運動及び角速度運動をした際に生じる加速度及び角速度を検出可能な慣性センサが知られている。
【0003】
この慣性センサでは、3次元空間に定義したX軸、Y軸、Z軸における各軸方向毎に、それぞれ個別の加速度を検出すると共に、各軸毎に、各軸を回転軸とする角速度をそれぞれ個別に検出することによって、3次元空間において運動する物体の加速度及び角速度を検出していた。
【0004】
近年、物体の加速度と角速度を同時に検出可能な慣性センサとして、物体の加速度運動及び角速度運動に伴って変位する可動体(振動子)を有する構造体を用いたセンサが提案されている。
【0005】
この慣性センサでは、3次元空間において互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を定義した場合に、Z軸方向に所定の周期で可動体を振動させている状態において、物体がX軸又はY軸を回転軸とした角速度運動をした際、その物体の運動方向と直行する向きに作用するコリオリ力を検出することによって、Y軸あるいはX軸を中心軸とする角速度及びX軸方向あるいはY軸方向の角速度を求めている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
この種の慣性センサでは、たとえば、この慣性センサの振動子をZ軸方向に所定の周期で振動させている状態において、この加速度・角速度センサを取り付けた物体がX軸を回転軸とした角速度運動を行った場合に、可動体にY軸方向へ向かうコリオリ力が作用するという物理現象を利用し、このコリオリ力の大きさに応じた可動体の変位量を検出することによって、物体に作用するX軸を回転軸とした角速度の大きさを検出するようにしている。
【0007】
しかし、これらの慣性センサは、1つの可動体から得られる加速度及び角速度の変位を、信号処理により分離しているため、他軸感度や、外乱ノイズに対して、十分なS/N比(Signal to Noise Ratio)を得ることができず、使用可能なアプリケーションが限定されてしまう。
【0008】
そこで、本出願人は、他軸感度や外乱ノイズに対して、十分なS/N比を得ることができ、3軸加速度と3軸角速度が検出可能な小型の慣性センサを提案している(特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3549590号公報
【特許文献2】特許第3585959号公報
【特許文献3】特願2006−167760号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した特許文献3の慣性センサは、複数の可動体(振動子)を有していることから、この複数の可動体の変位を検出する検出回路を用いる必要がある。
【0010】
複数の可動体によって形成される可変容量素子の容量値の検出を少ない検出系で行う技術として、特開平10−239196号公報(以下、「特許文献4」とする。)に記載されているように、各可動体によって形成される2つの可変容量素子の容量値の差分を検出して、各可動体の変位を検出する技術がある。
【0011】
しかし、この特許文献4の構造体は加速度のみを検出するために用いられる構造体であり、各可動体を振動させる必要もなく、加速度のみならず角速度を検出するために用いられる上記特許文献3の構造体とは、その構造が異なり、特許文献3に記載の構造体に特許文献4の技術を適用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、かかる課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し前記可変ブロックが所定方向に往復振動する構造体の前記容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出装置において、前記可変ブロックを変位させる駆動パルス信号を出力する駆動回路と、その一端が共通に接続された各前記可変容量素子及び前記固定容量素子の他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を前記駆動パルス信号に同期したタイミングで印加する検出用パルス信号印加部と、位相差を有する前記検出用パルス信号が印加された前記可変容量素子間、又は前記固定容量素子と前記可変容量素子との間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、前記固定容量素子と2以上の前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、2以上の前記可変容量素子と他の2以上の前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、前記慣性検出部は、前記検出用パルス信号によって前記複数の可変容量素子の容量値の加算及び減算を行って、前記印加される慣性力のうち各検出軸の角速度及び各検出軸の加速度に応じた信号をそれぞれ出力することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、前記固定容量素子と各前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、前記慣性検出部は、前記検出用パルス信号によって各前記可変容量素子の容量値の変化分を検出することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、前記検出用パルス信号の電圧振幅を、当該検出用パルス信号を印加する容量素子に応じて切り替えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位速度が最大となる時のその前後所定期間内に角速度を検出するための検出用パルス信号を前記容量素子へ印加し、前記可変ブロックの変位速度が最小となる時のその前後所定期間内に加速度を検出するための検出用パルス信号を前記容量素子へ印加することを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位速度が最大となる時のその前後所定期間内に検出用パルス信号を前記容量素子へ印加することを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記可変ブロックとこの可変ブロックに対向して設けられた電極とにより形成される変位検出用可変容量素子と、前記変位検出用可変容量素子に変位検出用パルス信号を印加する変位検出用パルス信号印加部と、前記変位検出用パルス信号印加部により印加される変位検出用パルス信号によって検出される前記変位検出用可変容量素子の容量値から前記可変ブロックの変位状態を検出する変位検出部を有し、前記変位検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位量が最大となる時の前後所定期間に前記変位検出用パルス信号を前記変位検出用可変容量素子へ印加することを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時には、検出用パルス信号の前記容量素子への印加を行わないことを特徴とする。
【0020】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記検出用パルス信号印加部は、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時に、検出用パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジとならないように、前記検出用パルス信号又は駆動パルス信号の位相をシフトするシフト回路を設けたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項10に記載の発明は、印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し前記可変ブロックが所定方向に往復振動する構造体と、当該構造体の前記容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出装置とを有する慣性センサにおいて、前記検出装置は、前記可変ブロックを変位させる駆動パルス信号を出力する駆動回路と、その一端が共通に接続された各前記可変容量素子及び前記固定容量素子の他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を前記駆動パルス信号に同期したタイミングで印加する検出用パルス信号印加部と、位相差を有する前記検出用パルス信号が印加された前記可変容量素子間、又は前記固定容量素子と前記可変容量素子との間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し、前記可変ブロックが所定方向に往復振動可能に構成された構造体について、これらの容量素子の容量値の検出を容量素子の数よりも少ない数の検出系の数で構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本実施形態における慣性センサは、印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し、可変ブロックが所定方向に往復振動可能に構成された構造体と、各可変ブロックを往復振動させ、可変容量素子や固定容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出回路(検出装置の一例に相当)とを備えており、3軸の角速度及び3軸の加速度を検出することを可能としている。
【0024】
前記構造体は、所定箇所を中心として左右対称な位置及び前後対称な位置にそれぞれ一組ずつ配置された複数の可変ブロックを有している。左右対称な位置の2つの可変ブロックは、左右方向に互いに反位相で往復振動し、前後対称な位置の2つの可変ブロックは、前後方向に互いに反位相で往復振動する。なお、ここでは、左右方向はX軸方向であり、前後方向はY軸であり、上下方向はZ軸であるものとする。
【0025】
各可変ブロックは、電極が形成され、少なくとも振動方向と直交する方向に変位可能な可動体を有している。そして、可動体の電極と当該電極に対向して所定の間隙をもって設けられた複数の検出電極を有しており、これにより可動体の変位に応じて容量値が変化する可変容量素子がそれぞれ形成される。
【0026】
また、構造体には、電極が形成された固定ブロックを有しており、この電極と対向して所定の間隙をもって設けられた検出電極を設けられており、これらの電極間で容量値が一定の固定容量素子(以下、「固定容量素子Cd」とする。)が形成される。
【0027】
ここで、本実施形態における構造体では、XZ平面上又はYZ平面上の可動体の傾き及びZ軸方向への平行移動を検出するために可変容量素子が各可変ブロックに2つずつ形成される。
【0028】
そして、左右(X軸)方向における左側の可変ブロックの後側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca1」する。)の容量値をX1、その前側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca2」する。)の容量値をX2とし、左右(X軸)方向における右側の可変ブロックの後側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca3」する。)の容量値をX3、その前側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca4」する。)の容量値をX4とし、前後(Y軸)方向における前方の可変ブロックの左側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca5」する。)の容量値をY1、その右側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca6」する。)の容量値をY2とし、前後(Y軸)方向における後方の可変ブロックの左側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca7」する。)の容量値をY3、その右側の可変容量素子(以下、「可変容量素子Ca8」する。)の容量値をY4とし、各可変容量素子の容量値X1〜X4,Y1〜Y4の変化分をΔX1〜ΔX4,ΔY1〜ΔY4とすると、各軸の角速度及び加速度は以下の演算式から物理量を導き出すことができる。なお、具体的な原理については、別途後述する。また、可変容量素子Ca1〜Ca8のうち、1以上の任意の可変容量素子を示すときには可変容量素子Caと呼ぶことがある。
X軸角速度:(ΔY1+ΔY2)-(ΔY3+ΔY4)
Y軸角速度:(ΔX1+ΔX2)-(ΔX3+ΔX4)
Z軸角速度:(ΔX1-ΔX2)-(ΔX3-ΔX4) + (ΔY1-ΔY2)-(ΔY3-ΔY4)
X軸加速度:(ΔY1-ΔY2)+(ΔY3-ΔY4)
Y軸加速度:(ΔX1-ΔX2)+(ΔX3-ΔX4)
Z軸加速度:(ΔX1+ΔX2+ΔX3+ΔX4+ΔY1+ΔY2+ΔY3+ΔY4)
【0029】
検出回路は、一端が共通に接続された各可変容量素子Ca1〜Ca8及び固定容量素子Cdの他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号(以下、「検出用パルス信号」とする。)を印加する検出用パルス信号印加部と、位相差を有する検出用パルス信号が印加された可変容量素子Ca間、又は固定容量素子Cdと可変容量素子Caとの間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを備えている。
【0030】
この慣性検出部で検出する容量値の差分は、固定容量素子Cdの容量値(ここでは、容量値をWとする。)と各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値X1〜X4,Y1〜Y4のそれぞれの差分とすることにより、各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の変化分であるΔX1〜ΔX4,ΔY1〜ΔY4を検出する。すなわち、検出用パルス信号印加部は、固定容量素子Cdと各可変容量素子Caとにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を各可変容量素子Caに対応して順次印加し、慣性検出部は、共通に接続された容量素子Ca,Cdの一端の電圧から各可変容量素子Caの容量値の変化分を検出する。例えば、固定容量素子Cdと各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値X1〜X4,Y1〜Y4とが初期状態(可変ブロックが振動していない状態)で同一の容量値であり、かつ検出用パルス信号が同一の電圧振幅値であるとき、W-(X1+ΔX1)=ΔX1,W-(X2+ΔX2)=ΔX2,・・・となり、各可変容量素子Caの容量値の変化分ΔX1,ΔX2,・・・が検出される。このように各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の変化分を検出することによって、上述した構造体に印加される3軸の角速度や3軸加速度を検出することができる。
【0031】
また、可変容量素子Ca1〜Ca8のうち加算する可変容量素子Caの容量値と、減算する可変容量素子Caの容量値との差分を検出するようにしてもよい。例えば、X軸方向の角速度を検出するときには、最初に可変容量素子Ca5,Ca6に検出用パルス信号を印加し、次に、可変容量素子Ca7,Ca8に極性を反転した検出用パルス信号を印加することによって、(ΔY1+ΔY2)-(ΔY3+ΔY4)を検出する。また、Y軸方向の角速度を検出するときには、最初に可変容量素子Ca1,Ca2に検出用パルス信号を印加し、次に可変容量素子Ca3,Ca4に極性を反転した検出用パルス信号を印加することによって、(ΔX1+ΔX2)-(ΔX3+ΔX4)を算出する。
【0032】
ここで、Z軸方向の加速度を検出する場合、(ΔX1+ΔX2+ΔX3+ΔX4+ΔY1+ΔY2+ΔY3+ΔY4)を検出する必要があることから、全ての可変容量素子Ca1〜Ca8の静電容量を加算することになる。そこで、最初に固定容量素子Cdに検出用パルス信号を印加し、次に全ての可変容量素子Ca1〜Ca8に極性を反転した検出用パルス信号を印加するようにする。
【0033】
このように、検出用パルス信号印加部は、可変容量素子Ca1〜Ca8のうち加算するものと減算するものの両方があるときには、可変容量素子のみに異なるタイミングで互いに極性の反転した検出用パルス信号を順次印加し、可変容量素子Ca1〜Ca8のうち加算するもの或いは減算するものしかないときには、固定容量素子Cdと可変容量素子Caとに異なるタイミングで互いに極性の反転した検出用パルス信号を順次印加するようにしており、これにより、慣性検出部は、可変容量素子の容量値の加算及び減算を行って、後段の演算処理を省き、簡単な構成で各検出軸(XYZの3軸)の加速度及び各検出軸(XYZの3軸)の角速度の物理量に応じた信号を容易に検出することができる。
【0034】
ところで、構造体における容量素子Ca1〜Ca8,Cdの個体差によるその容量値のばらつきによって慣性検出部のDCオフセットが生じる。そこで、本実施形態における検出回路の検出用パルス信号印加部では、各容量素子へ印加する検出用パルス信号のそれぞれの振幅を調整することによってこのDCオフセットを調整する。その結果、慣性検出部のダイナミックレンジを大きくすることなく、角速度及び加速度を高精度に検出することができる。
【0035】
また、検出回路には、可変ブロックを変位させ往復振動させるため駆動パルス信号を出力する駆動回路を有しており、検出用パルス信号印加部はこの駆動パルス信号に同期したタイミングで可変容量素子Caや固定容量素子Cdへ検出用パルス信号を出力して、角速度及び加速度を検出するようにしている。
【0036】
検出用パルス信号印加部からの検出用パルス信号の出力は、可変ブロックの変位速度が最大となる時のその前後所定期間内に行うようにすることとする。これにより、慣性検出部の出力から可変ブロックの変位速度が最大のときに容量素子の容量値の差分を取り出すための回路(例えば、同期検波回路)を省略することができる。また、消費電力の低減も図ることができる。しかも、可変ブロックの変位速度が最大となるときにコリオリ力が最大となることから、角速度を精度よく検出することができる。
【0037】
また、加速度を検出するための検出用パルス信号の出力については、上記期間に行わずに、可変ブロックの変位速度が最小(コリオリ力が最小となる付近)となる時の前後所定期間内に行うようにすることにより、S/N比を改善し、加速度の検出を高精度に行うことができる。なお、S/Nが問題にならない場合には、加速度の検出するための検出用パルス信号の出力を可変ブロックの変位速度が最大のときに行うようにしてもよい。
【0038】
また、検出回路には、可変ブロックの変位位置及び最大変位量を検出する可変ブロック変位検出回路(変位検出部の一例に相当)を備えている。上記4つの可変ブロックのうち少なくとも振動方向が互いに直交する2つの可変ブロックには電極が形成されており、この電極と対向する位置に所定の間隙をもって設けられた変位検出電極との間で可変容量素子(以下、「可変容量素子Cf1,Cf2」とする。変位検出用可変容量素子の一例に相当)が形成される。可変ブロック変位検出回路は、この可変容量素子Cf1,Cf2の一端を共通に接続し、その他端のそれぞれへ互いに極性が異なる変位検出用パルス信号を変位検出用パルス信号印加部から交互に印加することによって、共通に接続された可変容量素子Cf1,Cf2の一端の電圧からこれらの可変容量素子Cf1、Cf2の容量値の差分を検出して、可変ブロックの変位を検出するようにしている。
【0039】
そして、上記駆動回路は、この可変ブロック変位検出回路によって検出された可変ブロックの変位位置及び最大変位量に基づいて駆動パルス信号を生成して、可変ブロックへ印加する。これにより、可変ブロックを自励振動させるようにしている。
【0040】
また、可変ブロック変位検出回路は、可変ブロックの変位量が最大付近(最大となる時の前後所定期間)で変位検出用パルス信号を印加するようにしており、これにより、省電力化を図ると共に、精度よく可変ブロックの変位を検出することができる。特に、変位検出用パルス信号を常時印加し、これにより得られる可変ブロックの変位の情報から可変ブロックの変位量が最大となる付近のポイントの情報を検出する回路に比べて、振幅を取り出すために必要だったバンドパスフィルタ等が不要となり、回路を簡素化できる。
【0041】
ところで、検出用パルス信号印加部が駆動パルス信号に同期したタイミングで検出用パルス信号を出力して、駆動パルス信号のエッジと検出用パルス信号のエッジとが同じタイミングになると、駆動パルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのエッジ部分の高周波成分が、寄生容量を介して慣性検出部などにノイズとして影響を及ぼす恐れがある。
【0042】
そこで、本実施形態における検出用パルス信号印加部において、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ付近では、検出用パルス信号を所定周期分(例えば、1周期分或いは2周期分)だけ出力せずにマスクするようにする。これにより、駆動パルス信号のエッジ部分による慣性検出部などへのノイズの影響を抑制することが可能となる。
【0043】
また、検出用パルス信号印加部は駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時に検出用パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジとならないように、駆動パルス信号又は検出用パルス信号の位相をシフトする位相シフト回路を設けるといった簡単な構成で、上記と同様の効果を得ることができる。
【0044】
以下、さらに本実施形態における慣性センサの具体的な一例を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態における慣性センサの全体構成図、図2は本実施形態における慣性センサの構成を説明するための図である。
【0045】
本実施形態における慣性センサ1は、3軸の角速度及び3軸の加速度を検出する機能を有している。この慣性センサ1は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれるデバイスで構成され、図1に示すように、印加される慣性力に応じて内部の状態が変化する構造体2と、当該構造体2の内部の状態を検出して慣性センサ1に加わる慣性力を検出する検出回路3(本発明の検出装置の一例に相当)と、この検出回路3を載置した構造体2を載置する基部4とを備えている。なお、構造体2と検出回路3との間の配線、及び検出回路3と基部4との間の配線は、ワイヤボンディングなどによって行われている。また、慣性センサ1は、BGA(Ball Grid Array)パッケージにより構成され、基部4の下部(構造体2の載置側とは反対側)にはバンプが格子状に配置されるが、LGA(Land Grid Array)パッケージを採用してもよい。
【0046】
構造体2は、図1及び図2に示すように、SOI(Silicon on Insulator)基板で形成され、慣性力に応じて内部の状態が変化する可動体(振動子)が形成されたセンサ基板5と、Si(Silicon)基板で形成され、センサ基板5の一側面に対向する電極(後述する検出電極、駆動モニタ電極など)が配置された検出基板6と、同様にSi(Silicon)基板で形成され、センサ基板5の他側面に対向するキャップ基板7を有している。また、センサ基板5は、検出基板6とキャップ基板7とにより挟まれ、その内部が減圧状態で封止される。
【0047】
以上のように構成される慣性センサ1について、構造体2、検出回路3の順に具体的に図面を参照して説明する。
【0048】
(構造体2の構成について)
この構造体2について、図3を参照してさらに具体的に説明する。図3は慣性センサ1の構造体2を説明するための図であり、センサ基板5の平面レイアウトを示している。
【0049】
図3に示すように、構造体2のセンサ基板5は、変位可能な可変ブロック12(12a〜12d)、各可変ブロック12を所定方向に往復振動させる駆動電極13(13a〜13d)、固定ブロック14等を備えている。
【0050】
可変ブロック12は、センサ基板5のX軸上とY軸上のそれぞれに、1組ずつ原点Oに関し互いに対称な位置に配置される。すなわち、可変ブロック12aと12cとは、センサ基板5のY軸上に原点Oに関し互いに対称な位置に配置され、可変ブロック12bと12dとは、センサ基板5のX軸上に原点Oに関し互いに対称な位置に配置される。
【0051】
そして、可変ブロック12aと12cとは、駆動電極13aと13cによりそれぞれY軸方向に往復振動し、可変ブロック12bと12dとは、駆動電極13bと13dによりそれぞれX方向に往復振動する。
【0052】
このように、本実施形態における慣性センサ1の構造体2は、センサ基板5のX軸上とY軸上のそれぞれに、原点Oに関し互いに対称な位置に、1組ずつの可変ブロック12(12bと12d,12aと12c)を配置し、X軸上とY軸上で、可変ブロック12b,12dと可変ブロック12a,12cとが、直交する向きに往復振動するような基準振動を与えるものである。この基準振動は、角速度を検出するために行われるものであり、このようなX軸、Y軸の反位相振動のほか、原点Oを中心に回転方向に振動させる回転振動がある。
【0053】
ここで、各可変ブロック12a〜12dについて、図4を参照して説明する。図4(a)は、可変ブロック12の平面レイアウト図を示し、図4(b)は図4(a)中のA−A’線断面図を示す図である。なお、この図4においては可変ブロック12a〜12dのうち可変ブロック12aを例に挙げて説明する。
【0054】
図4(a),(b)に示すように、可変ブロック12aは、支持部21aに一端側が支持された弾性支持梁22a(22a1〜22a6)と、各弾性支持梁22aの他端側に支持された可動体23aとを備えており、この可動体23aは原点Oを中心としたY軸に対して対称な形状に形成される。
【0055】
支持部21a、弾性支持梁22a及び可動体23aは、例えばSOI基板を使用して形成されている。このSOI基板は、下層より、ベースシリコン層31、絶縁層(一例としてBOX層)32、シリコン活性層33を積層したものである。
【0056】
支持部21a及び可動体23aは、ベースシリコン層31、絶縁層32、シリコン活性層33の3層で形成され、弾性支持梁22aはシリコン活性層33で形成されている。従って、可動体23は、シリコン活性層33の弾性支持梁22a(22a1〜22a6)によって、吊り下げられるように支持されることになり、Z軸に平行な方向及びY軸を中心とした回転方向に自由度を有するものとなっている。なお、可動体23aは可変ブロック12aの振動方向(Y軸方向)には剛性が高く、振動方向に垂直な方向(X軸方向)には剛性が低くなるような状態で支持部21aに固定される。
【0057】
可変ブロック12aでは、X軸方向に力が加わると可動体23aが傾き、その傾きを検出することによって、慣性センサ1へ加わる慣性力を検出することができる。またZ軸方向に慣性力が加わった場合は、可動体23がZ軸方向に変位し、その変位量を検出することで慣性力を検出することができる。
【0058】
また、可変ブロック12b〜12dも可変ブロック12aと同様の構成をしており、各可動体23b〜23d(図示せず)の変位量を検出することで、X軸、Y軸、Z軸方向に加わった慣性力を検出することができる。
【0059】
本実施形態における慣性センサ1では、可動体23a〜23dにおける、X軸方向、Y軸方向の傾きやZ軸方向の変位を検出する方法として、半導体プロセスでイオン注入法等により比較的容易に形成できる静電検出を採用している。
【0060】
ここで、慣性センサ1における可動体23a〜23dの変位の検出方法について図面を参照して具体的に説明する。図5及び図6は可動体23a〜23dと検出基板6との関係を示す図である。なお、図5は可変ブロック12a,12cの可動体23a,23cと検出基板6との関係を示す図であり、図6は可変ブロック12b,12dの可動体23b,23dと検出基板6との関係を示す図である。
【0061】
図5(a),(b)に示すように、可動体23a(23c)の上部(シリコン活性層33側)に配置される検出基板6には、可動体23a(23c)と対向する面に、例えば2枚の検出電極42a,43a(42c,43c)が可動体23a(23c)と所定の間隙をもって形成されている。これにより、検出電極42a(42c)と可動体23a(23c)との間、及び検出電極43a(43c)と可動体23a(23c)との間でそれぞれ可変容量素子が形成される。なお、この検出電極42a,43aは、原点Oを中心としたY軸に対して対称な位置に形成される。また、シリコン活性層33は電極として機能する。
【0062】
そして、図5(c)に示すように、検出電極42a(42c)と可動体23a(23c)により形成される可変容量素子と検出電極43a(43c)と可動体23a(23c)により形成される可変容量素子との容量差を検出することでX軸方向の傾きを検出することができる。
【0063】
また、図5(d)に示すように、検出電極42a(42c)と可動体23a(23c)により形成される可変容量素子と検出電極43a(43c)と可動体23a(23c)により形成される可変容量素子との容量和を検出することでZ軸方向の変位を検出することができる。
【0064】
また、可動体23b(23d)も可動体23a(23c)と同様に構成される。すなわち、図6(a),(b)に示すように、可動体23bの上部(シリコン活性層33側)に配置される検出基板6には、可動体23b(23d)と対向する面に、例えば2枚の検出電極42b,43b(42d,43d)が可動体23b(23d)と所定の間隙をもって形成されている。これにより、検出電極42b(42d)と可動体23b(23d)との間、及び検出電極43b(43d)と可動体23b(23d)との間でそれぞれ可変容量素子が形成される。
【0065】
そして、図6(c)に示すように、検出電極42b(42d)と可動体23b(23d)により形成される可変容量素子と検出電極43b(43d)と可動体23b(23d)により形成される可変容量素子との容量差を検出することでY軸方向の傾きを検出することができる。また、図6(d)に示すように、検出電極42b(42d)と可動体23b(23d)により形成される可変容量素子と検出電極43b(43d)と可動体23b(23d)により形成される可変容量素子との容量和を検出することでZ軸方向の変位を検出することができる。
【0066】
以上のように、可動体23a,23cと検出電極42a,43a,42c,43cとによりX軸方向及びZ軸方向に加わる印加力を検出することができ、また、可動体23b,23dと検出電極42b,43b,42d,43dとによりY軸方向及びZ軸方向に加わる印加力を検出することができる。従って、可動体23a,23cを用いることにより、X軸方向及びZ軸方向に加わる加速度を検出することが可能となり、また、可動体23b,23dを用いることにより、Y軸方向及びZ軸方向に加わる加速度を検出することが可能となる。このようにセンサ基板5上に配置された各可変ブロック12a〜12dは、複数軸の検出軸をもち、そのうち1つの検出軸は基準振動と垂直方向であるような構造を持つものである。
【0067】
ここで、可変ブロック12a〜12dの基準振動(X軸、Y軸の反位相振動)について、図面を参照して説明する。図7は、本実施形態におけるセンサ基板5の平面レイアウト図(可変ブロック12a〜12dのみ抽出)である。
【0068】
図7(a)に示すように、慣性センサ1は、センサ基板5のX軸上とY軸上のそれぞれに、原点Oに関し互いに対称な位置に、1組ずつの可変ブロック12(12aと12c,12bと12d)を配置し、X軸上とY軸上で、可変ブロック12(12a,12c)と可変ブロック12(12b,12d)とが、直交する向きに往復振動するような基準振動を与えるものである。
【0069】
そして、図7(b)に示すように、Y軸上の可変ブロック12a,12cが原点Oから遠ざかる方向に振動するとき、X軸の可変ブロック12b,12dは、原点Oに近づく方向に振動する。また、図7(c)に示すように、Y軸上の可変ブロック12a,12cが原点Oに近づく方向に振動するとき、X軸の可変ブロック12b,12dは、原点Oから遠ざかる方向に振動する。このような振動は、センサ基板5の共振モードを最適化することで実現できる。
【0070】
駆動力の印加は、静電力、圧電素子、電磁力等の手段があるが、半導体製造プロセスで形成することが比較的容易なものとしては、静電力を使ったものがある。本実施形態における慣性センサ1では、静電力を用いて可変ブロック12a〜12dに駆動する例を挙げて説明する。なお、上述した図7においては、可動体23aと検出電極42a,43aとの間で形成される可変容量素子Ca7,Ca8(後述の図9参照)の容量値をそれぞれY3,Y4とし、可動体23bと検出電極42b,43bとの間で形成される可変容量素子Ca3,Ca4(後述の図9参照)の容量値をそれぞれX3,X4とし、可動体23cと検出電極42c,43cとの間で形成される可変容量素子Ca5,Ca6(後述の図9参照)の容量値をそれぞれY1,Y2とし、可動体23dと検出電極42d,43dとの間で形成される可変容量素子Ca1,Ca2(後述の図9参照)の容量値をそれぞれX1,X2としている。
【0071】
上述したように本実施形態における慣性センサ1では、可変ブロック12(12a〜12d)に対向させた位置にそれぞれ駆動電極13(13a〜13d)を配置している。可変ブロック12(12a〜12d)と駆動電極13(13a〜13d)との間隔は、数μmから数十μmの間隔をおいており、その駆動電極13と可変ブロック12との間に共振を励起する周波数の電圧を印加することで可変ブロック12(12a〜12d)を往復振動させることができる。十分な駆動力を確保するために、駆動電極13のような平行板電極(図3参照)の代わりに櫛歯電極を用いることも可能である。
【0072】
このように、可変ブロック12a,12cと12b,12dとをそれぞれ反位相で振動させるのは、3軸方向の角速度の検出に必要な2軸方向の基準振動を行わせるためである。
【0073】
また、本実施形態における慣性センサ1では、図8(a),(b)に示すように、可変ブロック12a,12bの位置を検出するための駆動モニタ電極52a,52bが検出基板6に配置される。図8は可変ブロックと駆動モニタ電極との関係を説明するための図である。そして、可変ブロック12a,12bと駆動モニタ電極52a,52bとの間でそれぞれ可変容量素子Cf1,Cf2(後述する図9参照。変位検出用可変容量素子の一例に相当)が形成され、この可変容量素子Cf1,Cf2の容量値を検出することによって、可変ブロック12a,12bが変位した位置の検出が可能となっている。
【0074】
(角速度と加速度の検出原理)
本実施形態における慣性センサ1における角速度と加速度の検出原理を、以下に説明する。
【0075】
まず、角速度の検出原理について説明する。ある質量を持った物体が、Z軸方向に往復運動をするような振動をしているときに、Z軸に鉛直な方向、例えばX軸に角速度ωの回転運動を行うと、Y軸方向にコリオリ力Fが発生し、Y軸に角速度ωの回転運動を行うと、X軸方向にコリオリ力Fが発生する。
【0076】
この現象は、フーコーの振り子として古くから知られている力学現象であり、発生するコリオリ力Fは、F=2m・v・ωで表される。ここで、mは物体の質量、vは物体の運動についての瞬時の速度、ωは物体の瞬時の角速度である。
【0077】
このコリオリ力は、振動に対して垂直な向きに発生するので、その原理上、振動方向にはコリオリ力は発生しない。従って、従来の振動型角速度検出装置では、1軸振動で最大で2軸までの角速度しか検出できないか、2次元に楕円運動(2軸同時に振動と同等)させることで3軸方向に検出可能にするかであった。
【0078】
本実施形態における慣性センサ1では、上述したように基準振動を与えた複数の可変ブロック12a〜12dによって、3軸の角速度と3軸の加速度を検出することが可能となっている。
【0079】
前記図7(b)に示すように、X軸上の可変ブロック12b,12dが原点O方向へ移動する時、Y軸上の可変ブロック12a,12cは、原点Oから遠ざかるように移動する。この時、X軸まわりに角速度Ωが印加されるとY軸上の2個の可変ブロック12a,12cにはZ軸方向にコリオリ力F=2mAωΩが印加される。Aは基準振動の最大振幅、ωは基準振動の周波数、mは可変ブロック12の可動体23の質量である。Y軸上の2つの可変ブロック12a,12cは、X軸周りの角速度に対し、逆方向(反位相)に振動しているので、コリオリ力の向きは、Z軸方向で逆向きである。この2つ可変ブロック12a,12cで検出される容量値の差分をとればX軸まわりの角速度が検出できる。
【0080】
ここで、上述のように各検出電極42,43(42a〜42d,43a〜43d)と可動体23(23a〜23d)により形成される可変容量素子の初期状態の容量値(可動体23に慣性力が加わらないときの容量値)をX1〜X4,Y1〜Y4とし、可動体23に慣性力が加わったときの可変容量素子の容量値を(X1+ΔX1)〜(X4+ΔX4),(Y1+ΔY1)〜(Y4+ΔY4)とすると、X軸まわりの角速度Ωxは以下の式(1)で表すことができる。なお、Axは係数である。また、可変容量素子Ca5〜Ca8の初期状態の容量値Y1〜Y4は同一であるものとする。
Ωx=Ax{(ΔY1+ΔY2)−(ΔY3+ΔY4)} ・・・(1)
【0081】
Y軸まわりの角速度についてもX軸上の2つの可変ブロック12b,12dのZ軸方向の変位を検出することにより、同様に検出できる。すなわち、Y軸まわりの角速度Ωyは以下の式(2)で表すことができる。なお、Ayは係数である。また、可変容量素子Ca1〜Ca4の初期状態の容量値X1〜X4は同一であるものとする。
Ωy=Ay{(ΔX1+ΔX2)−(ΔX3+ΔX4)} ・・・(2)
【0082】
また、Z軸まわりの角速度は次のように検出することができる。すなわち、Z軸まわりの角速度が印加されると、各可変ブロック12a〜12dの各可動体23a〜23d(前記図3参照)は、それぞれZ軸と直行する方向にコリオリ力を受け、各可変ブロック12a〜12dはZ軸と直交する方向に傾く。この傾きによる変位は、X軸,Y軸の各軸上、2つの可変ブロック12aと12cが逆向きであり、可変ブロック12bと12dが逆向きなので、その差分を検出すれば、Z軸周りの角速度が検出できる。4個の可変ブロック12a〜12dのうち、反位相となる2つ以上可変ブロックの差分をとればよいが、ここでは精度を向上させるため、4個の可変ブロック12a〜12dを使ってZ軸周りの角速度を検出することとしている。
【0083】
従って、Z軸まわりの角速度Ωzは、以下の式(3)で表すことができる。なお、Azは係数である。また、各可変容量素子Ca1〜Ca8の初期状態の容量値X1〜X4,Y1〜Y4は同一であるものとする。
Ωz=Az[{(ΔX1−ΔX2)−(ΔX3−ΔX4)}
+{(ΔY1−ΔY2)−(ΔY3−ΔY4)}] ・・・(3)
【0084】
次に加速度の検出について説明する。X軸方向に加速度が印加された場合、Y軸上の2つの可変ブロック12a,12cの可動体23a,23cがX軸方向に傾く。従って、可変ブロック12aにおける可変容量素子Ca5,Ca6の容量値の差分と可変ブロック12dにおける可変容量素子Ca7,Ca8の容量値の差分との和をとれば、加速度となる。すなわち、X軸方向に加速度axは、以下の式(4)で表すことができる。なお、Bxは係数である。また、可変容量素子Ca5〜Ca8の初期状態の容量値Y1〜Y4は同一であるものとする。
ax=Bx{(ΔY1−ΔY2)+(ΔY3−ΔY4)} ・・・(4)
【0085】
また、Y軸方向に加速度が印加された場合、X軸上の2つの可変ブロック12b,12dの可動体23b,23dがY軸方向に傾く。従って、X軸同様に、可変ブロック12bにおける可変容量素子Ca3,Ca4の容量値の差分と可変ブロック12dにおける可変容量素子Ca1,Ca2の容量値の差分との総和をとることで、Y軸方向成分の加速度を検出できる。すなわち、Y軸方向に加速度ayは、以下の式(5)で表すことができる。なお、Byは係数である。また、可変容量素子Ca1〜Ca4の初期状態の容量値X1〜X4は同一であるものとする。
ay=By{(ΔX1−ΔX2)+(ΔX3−ΔX4)} ・・・(5)
【0086】
また、Z軸方向に加速度が印加された場合は、4つの可変ブロック12a〜12dの全ての可動体23a〜23dが、同一方向に平行移動するので、その総容量変化、もしくは、最低1つの可変ブロック、例えば可変ブロック12dにおける可変容量素子Ca1,Ca2の容量変化(ΔX1+ΔX2等)を検出することでZ軸方向の加速度を検出できる。総容量変化で検出する場合、Z軸方向に加速度azは、以下の式(6)で表すことができる。なお、Bzは係数である。また、可変容量素子Ca1〜Ca8の初期状態の容量値X1〜X4,Y1〜Y4は同一であるものとする。
az=Bz(ΔX1+ΔX2+ΔX3+ΔX4+ΔY1+ΔY2+ΔY3+ΔY4)
・・・(6)
【0087】
(検出回路について)
次に、検出回路3について図面を参照して説明する。図9は本実施形態における慣性センサ1の電気ブロック図を示す。
【0088】
検出回路3は、図9に示すように、構造体2の状態を検出して、慣性センサ1に加わる角速度及び加速度を検出する検出制御部60と、駆動電極13a〜13dへ交流信号を印加して可変ブロック12a〜12dを往復振動させ、また、可変ブロック12a,12bの動作に基づいて駆動電極13a〜13dへ印加する前記駆動パルス信号を生成し、さらに、可変ブロック12a,12bの動作に基づいてクロック信号CLKを生成し、検出制御部60へ当該クロック信号CLKを供給する駆動制御部61とを備えている。
【0089】
(検出部について)
まず、検出制御部60について説明する。この検出制御部60は、駆動制御部61から出力されるクロック信号CLKから互いに位相が反転した2つのパルス信号CLKa,CLKbを生成する位相器100と、一端が共通に接続された容量素子Ca1〜Ca8,Cd,Cf1,Cf2の各他端の電極(検出電極44,42a〜42d,43a〜43d及び駆動モニタ電極52a,52b)に印加する検出用パルス信号をパルス信号CLKa,CLKbに基づいて生成するカウンタ回路101と、カウンタ回路101から出力される信号をそれぞれ増幅するバッファ回路102と、容量素子Ca1〜Ca8,Cd,Cf1,Cf2の一端の電極に接続され、所定の容量値の容量素子C10で負帰還回路を構成するチャージポンプ(C/P)回路103と、このチャージポンプ回路103の出力信号を検出用パルス信号に同期したタイミングでサンプルホールドを行うサンプルホールド(S/H)回路104と、このサンプルホールド回路104の出力信号を増幅する増幅回路105と、この増幅回路105の出力信号をデジタル変換するアナログ/デジタル変換器106と、アナログ/デジタル変換器106の出力をデジタル処理するデジタル処理部109とを有している。なお、可変容量素子Ca1〜Ca8は上述のように検出電極42,43と可動体23とにより形成される可変容量素子であり、固定容量素子Cdは検出電極44と固定ブロック14とにより形成される容量値が一定の容量素子であり、可変容量素子Cf1,Cf2は可変ブロック12a,12bと駆動モニタ電極52a,52bとにより形成される可変容量素子である。また、位相器100、カウンタ回路101、バッファ回路102及び後述する検波ウィンド生成器107、デジタル/アナログ変換器110、記憶部111により、一端が共通に接続された各可変容量素子Ca1〜Ca8及び固定容量素子Cdの他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を印加する検出用パルス信号印加部が構成される。また、チャージポンプ(C/P)回路103、サンプルホールド(S/H)回路104、増幅回路105、アナログ/デジタル変換器106、デジタル処理部109により慣性検出部が構成される。
【0090】
また、検出制御部60は、構造体2への検出用パルス信号の印加を制御する検波ウィンド生成器107を有している。この検波ウィンド生成器107は、スイッチ群108を制御することによって、特定の期間だけ構造体2の容量素子Ca,Cdへ検出用パルス信号を印加(間欠印加)するようにしている。スイッチ群108は、カウンタ回路101からそれぞれ出力される検出用パルス信号と基準電圧Vrefのうちいずれかを選択してバッファ回路102へ印加するように構成されている。この検波ウィンド生成器107は、クロック信号CLKを入力して動作し、さらに後述するPLL120から入力される振幅検波パルス及びタイミング検波パルスに基づいて、スイッチ群108を制御する。すなわち、PLL120から振幅検波パルス及びタイミング検波パルスが入力されている期間に、スイッチ群108を制御して、検出用パルス信号を構造体2へ印加するようにしている。
【0091】
ここで、検出制御部60においては、バッファ回路102から各検出電極に印加する検出用パルス信号のタイミングについて説明する。本実施形態における検出制御部60では、第1動作モード及び第2動作モードの2種類の動作モードを選択することができ、以下それぞれについて具体的に説明する。
【0092】
(第1動作モード)
まず、第1動作モードについて図面を参照して説明する。図10及び図11は第1動作モード時における構造体2の各検出電極(44,42a〜42d,43a〜43d)に印加される検出用パルス信号のタイミングを示す図である。
【0093】
この第1動作モードでは、固定容量である固定容量素子Cdの検出電極44へは連続的な検出用パルス信号を印加し、その他の可変容量素子Ca1〜Ca8の検出電極42d,43d,42b,43b,42a,43a,42c,43cには、それぞれ位相をずらして時分割に検出用パルス信号を印加する。
【0094】
すなわち、図10に示すように、信号CLKaにより生成される検出用パルス信号(以下、「正相の検出用パルス信号」と呼ぶことがある。)が固定容量素子Cdの検出電極44へ印加され、信号CLKbにより生成される検出用パルス信号(以下、「逆相の検出用パルス信号」と呼ぶことがある。)が順次可変容量素子Ca1〜Ca8の検出電極42a〜42d,43a〜43dへ印加される。なお、固定容量素子Cdへ印加される検出用パルス信号と可変容量素子Ca1〜Ca8へ印加される検出用パルス信号の極性は互いに反転してカウンタ回路101から出力される。
【0095】
ここで、チャージポンプ回路103は、オペアンプAMP10と、このオペアンプAMP10の反転入力端子と出力端子との間に接続された容量素子C10及びスイッチSW10とを備えており、オペアンプAMP10の非反転入力端子は基準電圧Vrefに接続される。
【0096】
そして、可変容量素子Ca1〜Ca8のいずれかに検出用パルス信号が印加される毎に、検出用パルス信号が印加された可変容量素子Caの容量値と固定容量素子Cdの容量値との差分に応じた電圧がオペアンプAMP10から出力されることになる。
【0097】
従って、チャージポンプ回路103からは順次可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の初期値からの差分に応じた電圧の信号が出力されることになる。そして、チャージポンプ回路103の出力は、サンプルホールド回路104で順次一時的に保持され、当該保持された電圧が増幅回路105により増幅されてアナログ/デジタル変換器106へ出力される。アナログ/デジタル変換器106では、順次可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の初期値からの差分に応じた電圧をデジタル化して出力する。
【0098】
このようにアナログ/デジタル変換器106から出力された信号は、デジタル処理部109に入力される。当該デジタル処理部109は、上述した式(1)〜(6)をそれぞれ演算する演算器を備えており、3軸(X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向)の加速度、及び3軸(X軸まわり、Y軸まわり及びZ軸まわり)の角速度を検出する。
【0099】
ところで、検出する容量素子Ca1〜Ca8,Cdの容量値は構造体2の個体差によってばらつきがある。従って、そのように個体差のある2つの可変容量素子をチャージポンプ回路103で検出すると出力のオフセット値が異なってくることから、角速度及び加速度を高精度に検出することができない虞がある。
【0100】
そこで、本実施形態における検出制御部60では、バッファ回路102で出力する正相及び逆相の検出用パルス信号の電圧値のバランスを調整するようにしている。すなわち、図11に示すように、検出電極44,42a〜42d,43a〜43dごとに、印加する検出用パルス信号の電圧値を調整する。
【0101】
検出制御部60には、デジタル/アナログ変換器110と記憶部111とを有しており、カウンタ回路101からの信号に基づいて、記憶部111から各検出用パルス信号の振幅情報が読み出されてデジタル/アナログ変換器110へ入力され、アナログ変換されてバッファ回路102の各バッファから出力される検出用パルス信号の振幅が制御される。
【0102】
この各検出用パルス信号の振幅情報は、慣性センサ1製造時に構造体2の固体差に応じて記憶部111に記憶されるものであるが、各可変ブロック12a〜12dを往復振動させていないときに、構造体2に形成された各容量素子Ca1〜Ca8,Cdに検出用パルス信号を入力し、これらの容量素子の容量値を計測して、その結果に基づいて調整すべき振幅量を前記振幅情報として記憶部111に記憶してもよい。なお、PLL回路129は、その内部の発振周波数に下限値が設定されており、各可変ブロック12a〜12dを往復振動させていないときでも、クロック信号CLKを出力することができるようにしている。そのため、本実施形態における検出回路3では、各可変ブロック12a〜12dを往復振動させていないときでも、各容量素子Ca1〜Ca8,Cdの容量値を検出することが可能となっている。
【0103】
ここで、チャージポンプ回路103及びサンプルホールド回路104の動作について図面を参照して具体的に説明する。図12はチャージポンプ回路及びサンプルホールド回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0104】
図12に示すように、検出電極44(図12(c)参照)に検出用パルス信号が印加される前にチャージポンプ回路103はリセット状態(スイッチSW10が短絡状態)となる。その後、検出電極44への検出用パルス信号の印加が行われ、この印加が終了する前に、チャージポンプ回路103のリセット状態が解除(スイッチSW10が開放状態)となり、チャージポンプ回路103が動作状態となる。
【0105】
次に、検出電極44への検出用パルス信号の印加が終了し、検出電極42d(43d,42b)に検出用パルス信号が印加された後、サンプルホールド回路104が所定期間だけサンプルホールド動作を開始(スイッチSW11を短絡状態)して、チャージポンプ回路103からの出力電圧を保持する。
【0106】
このようにチャージポンプ回路103は、容量素子C10をディスチャージするリセットを行った後、検出電極44(固定容量素子Cd)を接続し、その後、各検出電極42d,43d,42b,・・・(可変容量素子Ca1,Ca2,Ca3,・・・)に接続することによって、これらの容量素子の容量差を検出する。
【0107】
例えば、固定容量素子Cdと可変容量素子Ca1との容量値の差分を検出するとき、チャージポンプ回路103の出力電圧Voutは、以下の式(7)で表すことができる。なお、Vdは固定容量素子Cdに印加される検出用パルス信号の電圧値、Vaは可変容量素子Ca1に印加される検出用パルス信号の電圧値とする。
【0108】
【数1】
【0109】
上記式(7)において、Cd=Cd+ΔCd,Ca1=Ca1+ΔCa1とすると、以下の式(8)で表すことができる。なお、可変容量素子Ca1は慣性力によって変化するが、固定容量素子Cdは固定容量でありことから、ΔCd=0である。
【0110】
【数2】
【0111】
ここで、固定容量素子Cd及び可変容量素子Ca1へ印加される検出用パルス信号は、カウンタ回路101によって生成されるものであり、各検出用パルス信号の電圧は基本的に絶対値が同一の電圧値とし、慣性センサ1へ慣性力が加えられていないときの可変容量素子Ca1の容量値と固定容量素子Cdの容量値を同一とすると、上記式(8)の前段の式{(VdCd−VaCa1)/Cf}を0とすることができる。このとき、チャージポンプ回路103の出力電圧Voutは、以下の式(9)で表すことができる。
【0112】
【数3】
【0113】
上記式(9)から分かるように、チャージポンプ回路103の出力電圧Voutは、可変容量素子Ca1の容量値の変化分ΔCa1に応じた電圧となり、検出のダイナミックレンジを大きくとることができることから、高精度に角速度及び加速度を検出することができる。
【0114】
ここで、角速度及び加速度の検出タイミングを説明する。図13は角速度及び加速度の検出タイミングを説明するための図である。
【0115】
本実施形態における慣性センサ1は、図13に示すように、コリオリ力(図13(c))が最大付近となる期間(コリオリ力が最大となる時点の前後所定期間内。換言すれば可変ブロック12(図13(b))の変位速度が最大付近となる期間。)で角速度の検出(図13(d))を行い、可変ブロック12の変位位置が初期状態の位置から最大(最大変位量となる位置)付近となる期間(可変ブロック12の変位速度が最小となる時点の前後所定期間内。換言すればコリオリ力が最小となる時点の前後所定期間内。)で加速度の検出(図13(e))を行うようにしており、検波ウィンド生成器107によってスイッチ群108を制御することによって、これらの期間(図13(d)、(e))に構造体2へ検出用パルス信号が印加されるようにしている。すなわち、スイッチ群108の各スイッチを、カウンタ回路101とバッファ回路102との間を短絡するように検波ウィンド生成器107からスイッチ群108へ振幅検波パルス(図13(g))及びタイミング検波パルス(図13(h))を出力することによって行う(振幅検波パルス及びタイミング検波パルスがHighレベルのときに、カウンタ回路101とバッファ回路102との間が短絡する)。
【0116】
コリオリ力が最大付近となる期間に角速度の検出を行うのは、角速度による変位が最大となるためであり、これにより、精度よく角速度の検出を行うことができ、S/N比を改善することができる。また、可変ブロック12の変位位置が最大付近となる期間で加速度の検出を行うのは、この期間はコリオリ力が最小付近となる期間であり、これにより、精度よく加速度の検出を行うことができ、S/N比を改善することができる。
【0117】
このように、構成することによって、検出用パルス信号を構造体2へ常時印加しておく必要がなくなり、また、チャージポンプ回路103から出力される信号のなかから、コリオリ力が最大となる期間ものや可変ブロック12の変位位置が最大となる期間のものを抽出するといった処理も必要なくなることから、処理及び構成を複雑にせずに済む。
【0118】
なお、上述においては、コリオリ力が最大付近となる期間に、角速度の検出を行い、コリオリ力が最小付近となる期間に、加速度の検出を行うようにしたが、一般に加速度印加による変位量に比べ角速度印加による変位量は、40〜80dB程度小さくなる。従って、このような場合には、コリオリ力が最大付近となる期間に、角速度の検出と加速度の検出とを行うようにしてもよい。
【0119】
(第2動作モード)
次に、第2動作モードについて図面を参照して説明する。図14は第2動作モード時における構造体2の各検出電極(44,42a〜42d,43a〜43d)に印加される検出用パルス信号のタイミングを示す図である。
【0120】
この第2動作モードでは、第1動作モードにおいてデジタル処理部109で行っていた各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の変化分を用いた加算及び減算(上記式(1)〜(6))を、以下のように検出用パルス信号をカウンタ回路101から出力することにより、デジタル処理部109での加算処理及び減算処理を不要とする動作モードである。
【0121】
すなわち、可変容量素子Ca1〜Ca8のうち容量値を加算する可変容量素子Caの検出電極と、容量値を減算する可変容量素子Caの検出電極とに位相をずらして極性の異なる正相及び逆相の検出用パルス信号を印加することによって、角速度や加速度に応じた出力をチャージポンプ回路103から出力するものである。
【0122】
例えば、X軸の加速度を検出する場合、図14(A)に示すように、コリオリ力が最小付近となる期間で、可変容量素子Ca5,Ca7に正相の検出用パルス信号を印加した後、可変容量素子Ca6,Ca8に逆相で極性の異なる検出用パルス信号を印加することで、X軸の加速度axに応じた電圧{(Y1−Y2)+(Y3−Y4)}(上記式(4)参照)の信号をチャージポンプ回路103から出力することができる。従って、第1動作モードのようにデジタル処理部109において{(Y1−Y2)+(Y3−Y4)}を演算する必要がなく、処理負荷を軽減することができ、デジタル処理部109の回路構成も簡易化することができる。図14(A)に示すように、Y軸の加速度を検出する場合も同様に処理することができる。
【0123】
また、Z軸の加速度を検出する場合、図14(A)に示すように、固定容量素子Cdに正相の検出用パルス信号を印加した後、可変容量素子Ca1〜Ca8に逆相で極性の異なる検出用パルス信号を印加することで、X軸の加速度axに応じた電圧{X1+X2+X3+X4+Y1+Y2+Y3+Y4}(上記式(6)参照)の信号をチャージポンプ回路103から出力することができる。このように、式(6)のように可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値の加算しかない場合(換言すれば、減算がない場合)、固定容量素子Cdに検出用パルス信号を印加することによって、実現している。なお、このとき、各可変容量素子Ca1〜Ca8の容量値とこれらに印加する検出用パルス信号の電圧振幅値との積算値の総和と、固定容量素子Cdの容量値とこの固定容量素子Cdに印加する検出用パルス信号の電圧振幅値との積算値とが同等になるように設定することが望ましい。例えば、各可変容量素子Ca1〜Ca8と固定容量素子Cdの容量値を同等とし、各可変容量素子Ca1〜Ca8へ印加する検出用パルス信号の電圧振幅値を同等とすると、固定容量素子Cdに印加する検出用パルス信号の電圧振幅値は、可変容量素子Ca1〜Ca8に印加する検出用パルス信号の電圧振幅値の8倍とすることが望ましい。検出用パルス信号の電圧振幅値は、後述するようにバッファ回路102により調整されるものであり、このバッファ回路102は後述するデジタル/アナログ(D/A)変換器110から出力される信号に基づいて、検出用パルス信号の電圧振幅値を変更する。
【0124】
また、X軸の角速度を検出する場合、コリオリ力が最大付近となる期間で、図14(B)に示すように、可変容量素子Ca5,Ca6に正相の検出用パルス信号を印加した後、可変容量素子Ca7,Ca8に逆相で極性の異なる検出用パルス信号を印加することで、X軸の加速度axに応じた電圧{(Y1+Y2)−(Y3+Y4)}(上記式(1)参照)の信号をチャージポンプ回路103から出力することができる。従って、第1動作モードのようにデジタル処理部109において{(Y1+Y2)−(Y3+Y4)}を演算する必要がなく、処理負荷を軽減することができ、デジタル処理部109の回路構成も簡易化することができる。図14(B)に示すように、Y軸やZ軸の加速度を検出する場合も同様に処理することができる。
【0125】
チャージポンプ回路103の出力は、サンプルホールド回路104で順次一時的に保持され、当該保持された電圧が増幅回路105により増幅されてアナログ/デジタル変換器106へ出力される。アナログ/デジタル変換器106では、増幅回路105からの出力に基づいて、3軸の加速度及び3軸の角速度を検出する。
【0126】
このように第2動作モードでは、各軸の上記演算式(1)〜(6)に基づき、容量値を加算する可変容量素子Caの電極には同相の検出用パルス信号を、その加算値から容量値を減算する可変容量素子Caの電極には位相の異なる逆相かつ極性の異なる検出用パルス信号を印加し、また、減算する可変容量素子Caの電極がない場合には、固定電極に同相検出用パルス信号を、加算する可変容量素子Caの電極には位相の異なる逆相かつ極性の異なる検出用パルス信号を印加して、チャージポンプ回路103により検出を行うものである。
【0127】
これにより、上記演算式(1)〜(6)に基づいた演算をデジタル処理部109において演算する必要がなく、処理負荷を軽減することができ、デジタル処理部109の回路構成も簡易化することができる。
【0128】
なお、第1動作モードと同様に、バッファ回路102で出力する検出用パルス信号の正相、逆相の電圧値のバランスを調整するようにしている。すなわち、検出電極44,42a〜42d,43a〜43dごとに、印加する検出用パルス信号の電圧値を調整するようにしている。これにより、構造体2における容量素子Ca1〜Ca8,Cdの個体差によるその容量値ばらつきによって生じるチャージポンプ回路103のオフセット値を調整して、角速度及び加速度を高精度に検出することができる。なお、正相の検出用パルス信号を印加する可変容量素子Caの各容量値と印加する検出用パルス信号の電圧振幅値との積算値の総和と、逆相の検出用パルス信号を印加する可変容量素子Caの各容量値と印加する逆相の検出用パルス信号の電圧振幅値との積算値の総和とが同等になるように設定することが望ましい。
【0129】
また、上述のように角速度の検出をコリオリ力が最大付近となる期間に行い、加速度の検出をコリオリ力が最小付近となる期間に行うようにするのではなく、図15に示すように、コリオリ力が最大付近となる期間に、角速度の検出と加速度の検出を行うようにしてもよい。図15は第2動作モード時における構造体2の各検出電極(44,42a〜42d,43a〜43d)に印加される検出用パルス信号の別のタイミングを示す図である。
【0130】
(駆動制御部61の構成について)
次に、駆動制御部61の構成について図9を参照して具体的に説明する。駆動制御部61は、図9に示すように、チャージポンプ(C/P)回路120、サンプルホールド(S/H)回路121、ピーク検波器122、タイミング検波器123、オートゲインコントロール(AGC)回路124、ドライバ回路125を有しており、これらの回路が駆動回路として機能し、以下のように可変ブロック12a,12bの往復振動の変位幅が一定となるように制御される。なお、チャージポンプ(C/P)回路120、サンプルホールド(S/H)回路121、ピーク検波器122、タイミング検波器123などにより変位検出部が構成される。
【0131】
すなわち、チャージポンプ回路120において、可変ブロック12a,12bの変位位置に基づいて容量値が変化する可変容量素子Cf1とCf2の容量値の差分が検出される(このチャージポンプ回路120はチャージポンプ回路103と同様の動作を行う回路であり、2つの容量素子の容量値の差分を検出する)。このチャージポンプ回路120の出力はサンプルホールド回路121によって検出用パルス信号に同期したタイミングで順次サンプルホールドされてピーク検波器122及びタイミング検波器123へ出力される。
【0132】
ピーク検波器122では、サンプルホールド回路121から出力される信号の最大値を検出して出力し、タイミング検波器123では、サンプルホールド回路121から出力される信号のゼロクロス点(可変ブロック12a,12bの変位が初期状態となり、コリオリ力が最大となる点)を検出して当該検出タイミングの前後所定期間において立ち上がり又は立ち下がりの変化点を有するタイミング検出信号を出力する。なお、タイミング検波器123は基準電圧Vrefを閾値とするコンパレータなどによって構成される。
【0133】
オートゲインコントロール(AGC)回路124はピーク検波器122からの出力に基づいて、可変ブロック12a,12bの往復振動の変位幅を一定に保つように調整する信号をドライバ回路125へ供給する。ドライバ回路125はタイミング検波器123から出力されるタイミング検波パルスに基づいて、可変ブロック12a〜12dの変位量が最大となる時の前後所定期間において、オートゲインコントロール回路124からの信号を電力増幅した駆動パルス信号を駆動電極13a〜13dへ供給する。なお、ドライバ回路125は互いに位相が反転した駆動パルス信号を駆動電極13a,13cと駆動電極13b,13dとにそれぞれ出力することによって、駆動電極13a,13cと駆動電極13b,13dとを反位相で振動させる。なお、この振動の周波数は、例えば、2k〜10kHzの範囲とする。
【0134】
以上のように、可変ブロック12a,12bの変位状態に応じた信号を駆動電極13a〜13dへ印加して各可変ブロック12a〜12dを自励振動させている。
【0135】
また、駆動制御部61は、図9に示すように、PLL回路129、モニタ検波ウィンド生成器126、スイッチ群127及びバッファ回路128をさらに備えている。
【0136】
PLL回路129は、タイミング検波器123から出力されるタイミング検波信号に基づいて、各可変ブロック12a〜12dの振動に同期したタイミング検波信号を逓倍したクロック信号CLKを生成して、当該クロック信号CLKを出力すると共に、タイミング検波信号を出力する。そして、モニタ検波ウィンド生成器126は、PLL回路129から入力されるクロック信号CLKとタイミング検波信号に基づき、コリオリ力が最大付近となる期間(図16(d)参照)に、アクティブ(ここでは、Highレベル)となる変位検出用パルス信号(図16(e)参照)を出力する。ここで、図16は、構造体2の駆動モニタ電極52a,52bに印加される変位検出用パルス信号のタイミングを説明するための図である。
【0137】
スイッチ群127は、カウンタ回路101から出力される検出用パルス信号及び基準電圧Vrefのうちいずれかを選択して駆動モニタ電極52a,52bに出力するものであり、モニタ検波ウィンド生成器126から出力された変位検出用パルス信号によって制御され、この変位検出用パルス信号がアクティブ(ここでは、Highレベル)の期間(図16(e)参照)でのみ、変位検出用パルス信号をカウンタ回路101から出力する。このように出力された変位検出用パルス信号は、バッファ回路128でそれぞれ増幅されて駆動モニタ電極52a,52bへ印加される。
【0138】
このように各可変ブロック12a〜12dの変位検出は、各可変ブロック12a〜12dの変位量が最大となる位置近傍で52a,52bに変位検出用パルス信号を印加することにより行うようにしており、これにより精度よく可変ブロック12a〜12dの変位を検出することができる。なお、モニタ検波ウィンド生成器126、スイッチ群127及びバッファ回路128により変位検出用パルス信号印加部が構成される。
【0139】
以上のように本実施形態における慣性センサ1では、ウィンド制限を行って容量素子Ca1〜Ca8,Cdに検出用パルス信号を印加することとしたが、このようなウィンド制御を行わずに、従来用いられていた駆動信号に同期した同期検波回路等を併用して、検出用パルス信号を継続して印加するようにしてもよい。
【0140】
すなわち、上述においては、検波ウィンド生成器107により、所定期間(コリオリ力が最大付近となる期間やコリオリ力が最小付近となる期間)だけ構造体2へ検出用パルス信号を印加するようにしたが、このようなウィンド制御を行わずに、例えば、図17に示すようなタイミングで容量素子Ca1〜Ca8,Cdに検出用パルス信号を継続して印加するようにしてもよい。図17は構造体2の各検出電極(44,42a〜42d,43a〜43d)に印加される検出用パルス信号の他のタイミングを示す図である。なお、検出用パルス信号の周波数は、例えば、ドライバ回路125から出力する駆動パルス信号の周波数の16倍〜128倍程度の周波数で動作させる。また、Z軸の加速度の検出は、{ΔX1+ΔX4+ΔY2+ΔY3}とする演算を用いているが、上述したように{ΔX1+ΔX2+ΔX3+ΔX4+ΔY1+ΔY2+ΔY3+ΔY4}としてもよい。
【0141】
次に、ドライバ回路125から出力される駆動パルス信号と構造体2へ印加される検出用パルス信号の位相関係を説明する。図18は本実施形態における駆動パルス信号と検出用パルス信号の位相関係を説明するための図である。
【0142】
上述したように、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時のタイミングで立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジとなる検出用パルス信号が出力されると、駆動パルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのエッジ部分の高周波成分が、寄生容量を介して検出制御部60内の回路などにノイズとして影響を及ぼす恐れがある。
【0143】
そこで、本実施形態における検出制御部60において、図18(a)に示すように、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ付近では、カウンタ回路101は、検出用パルス信号を所定周期分(例えば、1周期分或いは2周期分)だけ出力せずにマスクするようにする。これにより、駆動パルス信号のエッジ部分による検出制御部60内の回路などへのノイズの影響を抑制することが可能となる。
【0144】
また、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時に検出用パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジとならないように、検出制御部60に、駆動パルス信号又は検出用パルス信号の位相をシフトするための位相シフト回路を設けることにより、図18(b)に示すように、駆動パルス信号と検出用パルス信号の立ち上がり又は立ち下がりエッジが同時に発生しないようにすることができ、上記の場合(図18(a))と同様の効果を得ることができる。しかも、検出用パルス信号をマスクすることがないため容量素子の容量値の検出回数が減ることがない。例えば、検出制御部60において、位相器100の前段にクロック信号CLKする位相シフト回路を設け、この位相シフト回路によって位相をシフトしたクロック信号CLKを位相器100に入力して、駆動パルス信号と検出用パルス信号の立ち上がり又は立ち下がりエッジが同時に発生しないようにする。なお、駆動パルス信号と検出用パルス信号は同期しているので、駆動パルス信号と検出用パルス信号の位相関係は一定となる。
【0145】
以上のように本実施形態における慣性センサ1では、印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し、可変ブロックが所定方向に往復振動可能な構造体と、この構造体内に形成される容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出回路とを備えており、3軸の角速度及び3軸の加速度を検出することを可能としている。
【0146】
また、可変ブロック12を反位相で駆動することで、加速度外乱をキャンセルし、高精度に角速度を検出できる。さらに、反位相モードの場合、検出変位に遠心力等の不要な外乱変位が入らず、検出のダイナミックレンジが大きくとれ、高精度な角速度と加速度とを検出できる慣性センサが実現できる。なお、この慣性センサ1は、ロボットの機構制御、入力インターフェース、ビデオカメラやスチルカメラの手ブレ補正、落下防止手段等に適用することができる。
【0147】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0148】
例えば、上記本実施形態では、第1動作モード及び第2動作モードの2種類の動作モードを選択するようにしたが、いずれか一つの動作のみしかできないように構成してもよい。
【0149】
また、上述の実施形態においては、容量素子Ca1〜Ca8,Cdを一つのチャージポンプ回路に接続したが、複数のチャージポンプ回路に分けて接続するようにしてもよい。この場合、サンプルホールド回路や増幅回路もチャージポンプ回路に応じた数を設ける。
【0150】
また、検波ウィンド生成器やスイッチ群を設けてウィンド制御することとしたが、図17に示すように検出用パルス信号を継続して出力するときには、可変ブロックが初期状態に対する変位位置の方向に応じて、増幅回路でサンプルホールド回路の出力を反転増幅するのか非反転増幅するのかを切り替え(増幅回路とサンプルホールド回路との間にスイッチを設けて切り替え)、デジタル処理部によってコリオリ力が最大付近となると期間の信号に基づいて角速度の検出を行い、コリオリ力が最小付近となる期間の信号に基づいて加速度の検出を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本実施形態における慣性センサの全体構成図である。
【図2】本実施形態における慣性センサの構成を説明するための図である。
【図3】本実施形態における慣性センサの構造体を説明するための図である。
【図4】(a)は、可変ブロックの平面レイアウト図、(b)は(a)中のA−A’線断面図を示す図である。
【図5】可変ブロックの可動体と検出基板との関係を示す図である。
【図6】可変ブロックの可動体と検出基板との関係を示す図である。
【図7】本実施形態におけるセンサ基板の平面レイアウト図である。
【図8】可変ブロックと駆動モニタ電極との関係を説明するための図である。
【図9】本実施形態における慣性センサの電気ブロック図である。
【図10】第1動作モード時における構造体の各検出電極に印加される検出用パルス信号のタイミングを示す図である。
【図11】第1動作モード時における構造体の各検出電極に印加される検出用パルス信号のタイミングを示す図である。
【図12】チャージポンプ回路及びサンプルホールド回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図13】角速度及び加速度の検出タイミングを説明するための図である。
【図14】第2動作モード時における構造体の各検出電極に印加される検出用パルス信号のタイミングを示す図である。
【図15】第2動作モード時における構造体の各検出電極に印加される検出用パルス信号の別のタイミングを示す図である。
【図16】構造体の駆動モニタ電極に印加される変位検出用パルス信号のタイミングを説明するための図である。
【図17】構造体の各検出電極に印加される検出用パルス信号の他のタイミングを示す図である。
【図18】駆動パルス信号と検出用パルス信号との位相関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0152】
1 慣性センサ
2 構造体
3 検出回路(検出装置の一例)
4 基部
5 センサ基板
6 検出基板
7 キャップ基板
12(12a〜12d)可動ブロック
13(13a〜13d) 駆動電極
14 固定ブロック
42a〜42d、43a〜43d 検出電極
52a、52b 駆動モニタ電極
60 慣性検出部
61 動作制御部
103,120 チャージポンプ回路
104,121 サンプルホールド回路
105 増幅回路
106 アナログ/デジタル変換器
107 検波ウィンド生成器
108、126 スイッチ群
109 デジタル処理部
110 デジタル/アナログ変換器
111 記憶部
123 タイミング検波器
124 オートゲインコントロール回路
125 ドライバ回路
126 モニタ検波ウィンド生成器
129 PLL回路
Ca1〜Ca8 可変容量素子
Cd 固定容量素子
Cf1、Cf2 可変容量素子(変位検出用可変容量素子の一例)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し前記可変ブロックが所定方向に往復振動する構造体の前記容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出装置において、
前記可変ブロックを変位させる駆動パルス信号を出力する駆動回路と、
その一端が共通に接続された各前記可変容量素子及び前記固定容量素子の他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を前記駆動パルス信号に同期したタイミングで印加する検出用パルス信号印加部と、
位相差を有する前記検出用パルス信号が印加された前記可変容量素子間、又は前記固定容量素子と前記可変容量素子との間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを有することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記検出用パルス信号印加部は、前記固定容量素子と2以上の前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、2以上の前記可変容量素子と他の2以上の前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、
前記慣性検出部は、前記検出用パルス信号によって前記複数の可変容量素子の容量値の加算及び減算を行って、前記印加される慣性力のうち各検出軸の角速度及び各検出軸の加速度に応じた信号をそれぞれ出力することを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出用パルス信号印加部は、前記固定容量素子と各前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、
前記慣性検出部は、前記検出用パルス信号によって各前記可変容量素子の容量値の変化分を検出することを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記検出用パルス信号印加部は、前記検出用パルス信号の電圧振幅を、当該検出用パルス信号を印加する容量素子に応じて切り替えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位速度が最大となる時のその前後所定期間内に角速度を検出するための検出用パルス信号を前記容量素子へ印加し、前記可変ブロックの変位速度が最小となる時のその前後所定期間内に加速度を検出するための検出用パルス信号を前記容量素子へ印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位速度が最大となる時のその前後所定期間内に検出用パルス信号を前記容量素子へ印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記可変ブロックとこの可変ブロックに対向して設けられた電極とにより形成される変位検出用可変容量素子と、
前記変位検出用可変容量素子に変位検出用パルス信号を印加する変位検出用パルス信号印加部と、
前記変位検出用パルス信号印加部により印加される変位検出用パルス信号によって検出される前記変位検出用可変容量素子の容量値から前記可変ブロックの変位状態を検出する変位検出部を有し、
前記変位検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位量が最大となる時の前後所定期間に前記変位検出用パルス信号を前記変位検出用可変容量素子へ印加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記検出用パルス信号印加部は、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時には、検出用パルス信号の前記容量素子への印加を行わないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記検出用パルス信号印加部は、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時に、検出用パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジとならないように、前記検出用パルス信号又は駆動パルス信号の位相をシフトするシフト回路を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し前記可変ブロックが所定方向に往復振動する構造体と、当該構造体の前記容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出装置とを有する慣性センサにおいて、
前記検出装置は、
前記可変ブロックを変位させる駆動パルス信号を出力する駆動回路と、
その一端が共通に接続された各前記可変容量素子及び前記固定容量素子の他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を前記駆動パルス信号に同期したタイミングで印加する検出用パルス信号印加部と、
位相差を有する前記検出用パルス信号が印加された前記可変容量素子間、又は前記固定容量素子と前記可変容量素子との間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを有することを特徴とする慣性センサ。
【請求項1】
印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し前記可変ブロックが所定方向に往復振動する構造体の前記容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出装置において、
前記可変ブロックを変位させる駆動パルス信号を出力する駆動回路と、
その一端が共通に接続された各前記可変容量素子及び前記固定容量素子の他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を前記駆動パルス信号に同期したタイミングで印加する検出用パルス信号印加部と、
位相差を有する前記検出用パルス信号が印加された前記可変容量素子間、又は前記固定容量素子と前記可変容量素子との間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを有することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記検出用パルス信号印加部は、前記固定容量素子と2以上の前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、2以上の前記可変容量素子と他の2以上の前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、
前記慣性検出部は、前記検出用パルス信号によって前記複数の可変容量素子の容量値の加算及び減算を行って、前記印加される慣性力のうち各検出軸の角速度及び各検出軸の加速度に応じた信号をそれぞれ出力することを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出用パルス信号印加部は、前記固定容量素子と各前記可変容量素子とにそれぞれ極性の異なる検出用パルス信号を順次印加し、
前記慣性検出部は、前記検出用パルス信号によって各前記可変容量素子の容量値の変化分を検出することを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記検出用パルス信号印加部は、前記検出用パルス信号の電圧振幅を、当該検出用パルス信号を印加する容量素子に応じて切り替えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位速度が最大となる時のその前後所定期間内に角速度を検出するための検出用パルス信号を前記容量素子へ印加し、前記可変ブロックの変位速度が最小となる時のその前後所定期間内に加速度を検出するための検出用パルス信号を前記容量素子へ印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位速度が最大となる時のその前後所定期間内に検出用パルス信号を前記容量素子へ印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記可変ブロックとこの可変ブロックに対向して設けられた電極とにより形成される変位検出用可変容量素子と、
前記変位検出用可変容量素子に変位検出用パルス信号を印加する変位検出用パルス信号印加部と、
前記変位検出用パルス信号印加部により印加される変位検出用パルス信号によって検出される前記変位検出用可変容量素子の容量値から前記可変ブロックの変位状態を検出する変位検出部を有し、
前記変位検出用パルス信号印加部は、前記可変ブロックの変位量が最大となる時の前後所定期間に前記変位検出用パルス信号を前記変位検出用可変容量素子へ印加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記検出用パルス信号印加部は、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時には、検出用パルス信号の前記容量素子への印加を行わないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記検出用パルス信号印加部は、駆動パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ時に、検出用パルス信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジとならないように、前記検出用パルス信号又は駆動パルス信号の位相をシフトするシフト回路を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
印加される慣性力に応じて容量値が変化する可変容量素子が形成される複数の可変ブロックと固定の容量値である固定容量素子が形成される固定ブロックとを有し前記可変ブロックが所定方向に往復振動する構造体と、当該構造体の前記容量素子の容量値に基づいて前記印加される慣性力の値を検出する検出装置とを有する慣性センサにおいて、
前記検出装置は、
前記可変ブロックを変位させる駆動パルス信号を出力する駆動回路と、
その一端が共通に接続された各前記可変容量素子及び前記固定容量素子の他端にそれぞれ所定の位相差を持った複数相の検出用パルス信号を前記駆動パルス信号に同期したタイミングで印加する検出用パルス信号印加部と、
位相差を有する前記検出用パルス信号が印加された前記可変容量素子間、又は前記固定容量素子と前記可変容量素子との間の容量値の差分を検出し、当該差分に基づいて前記印加される慣性力を検出する慣性検出部とを有することを特徴とする慣性センサ。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
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【公開番号】特開2009−128135(P2009−128135A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302297(P2007−302297)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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