懸濁水のろ過装置及び方法
【課題】懸濁物質が付着したろ材の洗浄時に、剥離した懸濁物質を少ない水量で排出し、水回収率を高くすることができる新規洗浄方法を含むろ過装置及び方法を提供する。
【解決手段】懸濁物質を含む原水から懸濁物質を除去するろ過装置であって、懸濁物質を捕捉するろ材を充填してなるろ材層2と、当該ろ材層2の上部に原水を供給する原水導入管Aと、原水に微細気泡を導入する微細気泡発生装置4と、当該ろ材層2よりも下方に設けられている、処理水を集水する集水装置3と、当該集水装置3に空気を供給する空気供給管Dと、当該集水装置3から当該ろ材層2よりも上方の位置まで立ち上げられている、当該集水装置から処理水を排出する処理水流出管Fと、当該ろ材層2に洗浄水を上向流で通水する洗浄水導入管Eと、当該ろ材層2よりも上方から洗浄水を排出する洗浄水排出管Hと、を具備する。
【解決手段】懸濁物質を含む原水から懸濁物質を除去するろ過装置であって、懸濁物質を捕捉するろ材を充填してなるろ材層2と、当該ろ材層2の上部に原水を供給する原水導入管Aと、原水に微細気泡を導入する微細気泡発生装置4と、当該ろ材層2よりも下方に設けられている、処理水を集水する集水装置3と、当該集水装置3に空気を供給する空気供給管Dと、当該集水装置3から当該ろ材層2よりも上方の位置まで立ち上げられている、当該集水装置から処理水を排出する処理水流出管Fと、当該ろ材層2に洗浄水を上向流で通水する洗浄水導入管Eと、当該ろ材層2よりも上方から洗浄水を排出する洗浄水排出管Hと、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水、工場排水、用水、海水などの懸濁粒子を含有する懸濁水(以下「原水」ともいう。)の高速ろ過分離装置及び方法に関し、懸濁水中の懸濁粒子を高速度でろ過除去できる技術に関する。本発明は、特に下水処理施設に流入する下水の高速固液分離技術、又は、有機性の懸濁粒子を含有する合流式下水道の雨天時越流水(以下「CSO」と略称することもある。)又は各種産業排水の処理、用水処理、海水処理として極めて好適な革新技術である。
【0002】
合流式下水道における雨天時越流水(CSO)の公共用水域への汚濁負荷が大きな問題になっている。また、下水処理施設に流入する下水は、まず、最初沈殿池で沈殿分離された後、活性汚泥処理される。このとき、最初沈殿池におけるSS(固体懸濁物質)の除去率が悪いため、凝集剤を添加して凝集沈殿処理する例が北欧で普及している。しかし、この方法は、汚泥発生量が多く、凝集沈殿速度が小さく、大きな沈殿池を必要とする欠点がある。そのためCSO及び下水を極力コンパクトな設備で固液分離できる新技術が待望されている。
【0003】
また、下水の高度処理として、放流先の水質改善のために、或いは場内用水として再利用するために、二次処理水中の懸濁物質を除去する三次処理が行われている。この場合、処理水量が多いため、高速処理可能なろ過装置の提供が要望されている。
【0004】
従来、アンスラサイト、砂、例えば粒状プラスチックなどの各種粒状固体をろ材とするろ過法が検討されている。例えば、下水処理分野では、活性汚泥処理水のような比較的粒径の大きな懸濁物質を対象に、前述のアンスラサイト、砂などを用いてろ過を行うことが多い。この場合、排水の通水速度としては100〜500m/dで行うことが多い。
【0005】
また、通水速度を上げるために、ろ材粒径を大きくして目詰まりを少なくする場合があるが、この場合、SSの除去率が悪化してしまうなどの矛盾点が生じた。特に、下水などが含む有機性SSは粘着力が強いので、これら下水などを対象として、SS除去率は高く一方で目詰まりは少なく、と相反する要求を満足できる技術が要望されている。
【0006】
上記のビーズ系のろ材に代わる方法として、例えば、特公昭62−55885号公報や特開平10−305204号公報では、繊維長5〜50mmの有機繊維からなる短繊維を絡み合わせた多数の繊維塊をろ材として使用するろ過装置がある。このろ材を用いたろ過装置は、懸濁物質を含む排水を処理する際に、600m/d以上の高速でろ過を行うことができる。
【0007】
このような繊維ろ材は、ろ過工程で付着した懸濁物質を剥がす、いわゆる「逆洗」する場合には、ろ過塔内に洗浄水と空気の両者又はいずれかを供給することで繊維ろ材から懸濁物質を剥離させている。従来、この逆洗工程では、繊維ろ材を激しい流動状態に晒して繊維ろ材から懸濁物質を剥離し、剥離した懸濁物質を排出することにより、繊維ろ材のろ過性能を回復していた。しかしながら、繊維ろ材の汚れがひどい場合は、大量の洗浄水で洗い流さなければならず、水回収率(回収できた水量/ろ過した水量)が低くなる場合があり、水回収率の向上が課題として挙げられている。
【0008】
また、従来、海水或いは汽水を脱塩して、工業用水或いは飲用水を得る場合の脱塩方法として、逆浸透(RO)膜法、電気透析法又は電気式脱塩法、蒸発法などがあった。これらの技術を採用する場合には、予め海水或いは汽水に含まれている懸濁物質を除去する前処理が必要であり、凝集法、砂ろ過法、加圧浮上法、MF/UF膜法などが単独又は併用して使用されていた。
【0009】
たとえば、原水中の懸濁物質をろ過する前処理膜を有する前処理装置を逆浸透(RO)膜装置の前段に設ける淡水化装置が提案されている(特許文献3)。特許文献3においては、前処理膜として、UF膜(限外濾過膜)又はMF膜(精密濾過膜)等の分離膜を用いることが記載されている。しかし、昨今、海水或いは汽水に流入する都市下水などの影響により、懸濁物質のみならず、植物/植物プランクトン、船舶によるオイル、液中に溶解している有機物が、RO膜法、電気透析法、電気式脱塩法、蒸発法の運転、メンテナンス及びコストに大きな影響を与えることが顕在化してきた。特に、RO膜法、電気透析法及び電気式脱塩法などの膜を用いる脱塩法では脱塩膜表面に溶解している有機物が蓄積し、それらが生物学的繁殖によってスライム等として成長し、膜流速の低下、逆洗頻度の増加、膜寿命の減少などを引き起こしている。また、蒸発法においても、蒸発によって淡水側に移行する揮発成分による造水水質の悪化、有機物による伝熱面での効率低下など、コストパフォーマンス低下などを引き起こしている。これら原水中に溶解している有機物、オイル、各種プランクトンは、従来の砂ろ過法では除去できず、膜法を利用しても一部がリークし、膜の洗浄頻度、寿命等に悪影響を及ぼしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭62−55885号公報
【特許文献2】特開平10−305204号公報
【特許文献3】特開2011−31121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、簡単かつコンパクトな装置によって下水、各種廃水、用水、海水などの各種原水中の懸濁粒子を高速ろ過できる新技術を提供することを課題とする。特に、懸濁物質が付着したろ材の洗浄時に、剥離した懸濁物質を少ない水量で排出し、水回収率を高くすることができる新規洗浄方法を含むろ過装置及び方法を提供することにある。
【0012】
また、懸濁物質と有機物とを含む原水を処理する場合に、有機物がろ材に付着することを防止するろ過装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、懸濁物質を含む原水から懸濁物質を除去するろ過装置であって、懸濁物質を捕捉するろ材を充填してなるろ材層と、当該ろ材層の上部に原水を供給する原水導入管Aと、原水に微細気泡を導入する微細気泡発生装置と、当該ろ材層よりも下方に設けられている、処理水を集水する集水装置と、当該集水装置に空気を供給する空気供給管Dと、当該集水装置から当該ろ材層よりも上方の位置まで立ち上げられている、当該集水装置から処理水を排出する処理水流出管Fと、当該ろ材層に洗浄水を上向流で通水する洗浄水導入管Eと、当該ろ材層よりも上方から洗浄水を排出する洗浄水排出管Hと、を具備する、ろ過装置が提供される。
【0014】
さらに、前記ろ材層よりも上方に、フロス排出管Xを具備することが好ましい。
前記微細気泡発生装置は、前記ろ材層の上部に設けられた気液混合ノズルであることが好ましい。
【0015】
前記ろ過装置は、前記ろ材層及び前記集水装置を含むろ過部分と、当該ろ過部分の上流側に位置づけられ前記微細気泡発生装置を具備する微細気泡導入部分と、に区画されていてもよい。
【0016】
さらに、前記ろ材層の上流側に設けられている原水の濁度を計測する濁度計と、当該濁度計により計測される濁度に応じて前記微細気泡発生装置を制御する制御機構と、を具備する態様も含まれる。
【0017】
さらに、前記処理水流出管Fから前記原水導入管Aに接続されている処理水戻し管と、前記処理水流出管Fに設けられ、前記濁度計により計測される濁度に応じて処理水の流路を切り替える弁と、を具備することが好ましい。
【0018】
前記ろ材は、短繊維塊からなる繊維ろ材であることが好ましい。
前記ろ材は、好気性微生物を担持してなる生物膜ろ材でもよい。
本発明によれば、上記ろ過装置を用いて原水から懸濁物質を除去するろ過方法も提供される。ろ過方法は、
(1)懸濁物質を含む原水に微細気泡を導入する工程、
(2)微細気泡が導入された当該原水をろ材層の上部に導入して、下向流でろ材層を通過させて、ろ材層に懸濁物質を捕捉させる工程、
(3)懸濁物質が除去された処理水を集水装置に集水する工程、
(4)処理水流出管を介して処理水をろ過装置外部に排出する工程
を含む。
【0019】
工程(1)の微細気泡の導入は、原水の濁度に応じて制御されることが好ましい。
工程(1)において、原水の濁度に応じて原水に処理水を導入することがより好ましい。
【0020】
工程(1)において、微細気泡によって懸濁物質を浮上濃縮させ、浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置上部から排出してもよい。
また本発明によれば、上記ろ過装置の洗浄方法も提供される。洗浄方法は、
(5)原水の導入を停止し、空気供給管Dを介して集水装置に空気を供給し、空気を含む水中にろ材を流動させて、ろ材から懸濁物質を水中に剥離させる工程、
(6)空気供給管Dからの空気の供給を停止し、微細気泡発生装置を作動させて水中に微細気泡を注入して、ろ材から剥離した懸濁物質を浮上濃縮させる工程、及び
(7)洗浄水導入管Eから洗浄水を上向流で通水し、浮上濃縮した懸濁物質を含む水を洗浄水排出管Hから排出させる工程
を含む。
【0021】
工程(6)において、浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置上部から排出させてもよい。
工程(6)において、微細気泡を注入する水に、無機凝集剤を添加しておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のろ過装置及びろ過方法によれば、原水に導入する微細気泡によって原水中の懸濁物質が浮上濃縮されるため、ろ材に捕捉する懸濁物質の量を減少させることができ、ろ材の長寿命化に資する。特に、ろ材として生物膜を使用する場合には、ろ材に付着する有機物の量を減少させることができるため、スライムの発生を防止し、ろ過効率の向上に資する。
【0023】
原水に導入する微細気泡の量を原水の濁度によって制御するため、過不足なく微細気泡を導入し、好適な懸濁物質除去を達成することができる。濁度が高い場合には、多量の微細気泡を導入して、懸濁物質を浮上濃縮させて、ろ過装置上部から排出することで、ろ材の負荷を減少させ、ろ過層の逆洗頻度を削減し、ろ材の長寿命化に資する。
【0024】
また、本発明のろ材の洗浄方法によれば、ろ材の洗浄時に水中に導入する微細気泡によって、ろ材から剥離された懸濁物質を浮上濃縮させ、逆洗効果を向上させることができ、洗浄水量を減少させることができる。浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置上部から排出する態様では、さらに逆洗効果を向上させることができる。また、無機凝集剤を併用することで、懸濁物質の凝集が促進され、浮上濃縮による除去効率が向上する。
【0025】
本発明の洗浄方法を実施した後に再開するろ過方法では、ろ材に付着していた懸濁物質が除去されているため、長期にわたり懸濁物質の除去率を高く維持することができる。また、従来方法による水回収率(回収できた水量/ろ過水量)は繊維ろ材を用いた場合であっても95〜97%であったが、微細気泡導入による懸濁物質の浮上濃縮により、水回収率を99%以上に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の装置の一例を示すフロー構成図である。
【図2】図2は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図3】図3は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図4】図4は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図5】図5は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図6】図6は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図7】図7は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図8】図8は、比較例1で用いた装置のフロー構成図である。
【実施形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1に示すろ過装置1は、懸濁物質を捕捉するろ材を充填してなるろ材層2と、ろ材層2の上部に原水を供給する原水導入管Aと、原水に微細気泡を導入する微細気泡発生装置4と、ろ材層2よりも下方に設けられている処理水を集水する集水装置3と、集水装置3に空気を供給する空気供給管Dと、集水装置3からろ材層2よりも上方の位置まで立ち上げられている集水装置3から処理水を排出する処理水流出管Fと、ろ材層2に洗浄水を上向流で通水する洗浄水導入管Eと、ろ材層2よりも上方から洗浄水を排出する洗浄水排出管Hと、を具備する。微細気泡発生装置4は、気液混合ノズルであり、液体の導入管B及び気体の導入管Cが接続されている。気液混合ノズルの設置位置は、ろ材層2(通常は層高さが300〜2000mm)の上面と同じ位置とする。設置位置が、ろ材層2内であると微細気泡がろ材に付着し、剥離した懸濁物質の浮上濃縮が抑制される。また、反対に高すぎると、浮上濃縮できる割合が減少するので効率が低下する。集水装置3には、ろ材層2内の液を排出するための排出管Gが接続されている。排出管Gには弁Yが取り付けられている。集水装置3内に設けられた圧力計の指示値に応じて弁Yを開閉することで、ろ材層2の水位を調整する。
【0028】
図2に示すろ過装置は、図1に示すろ過装置1とほぼ同じ構成であるが、微細気泡発生装置4への液体導入管を原水導入管Bとした。図2に示す態様の変形例として、原水導入管Aを用いず、原水の全量を微細気泡発生装置4に導入して微細気泡を含んだ原水としてろ過層2に導入してもよい。
【0029】
図3に示すろ過装置は、基本構成は図1に示すろ過装置1と同じであるが、気液発生装置4を原水導入管Aに接続し、処理水と空気とを混合して発生させた微細気泡を原水に導入した後、ろ材層2に供給する構成とした。また、ろ材層2よりも上方に、浮上濃縮させた懸濁物質(以下「フロス」ともいう)の排出管であるフロス排出管Xが設けられている。ろ過装置には、フロス排出管Xよりも上方の位置に、原水の供給を均一にするために設けられた流路であるトラフが設けられている。また、処理水流出管Fには、バイパス管F−1と弁Zとが設けられている。
【0030】
図4に示すろ過装置は、フロス排出管Xをトラフよりも上方に位置づけた点で異なる以外は図3に示す構成と同じである。バイパス管F−1は、ろ過装置内の水位を調節するために設けられており、弁Zを閉じて処理水をバイパス管F−1に流すことで、ろ過装置内の水位をバイパス管F−1の高さまで上昇させることができる。バイパス管F−1の高さは、フロス排出管Xの高さ位置と一致する高さである。
【0031】
図5に示すろ過装置は、ろ材層2及び集水装置3を含むろ過部分1aと、ろ過部分1aの上流側に位置づけられ微細気泡発生装置4を具備する微細気泡導入部分1bと、に区画されている。微細気泡導入部分1bには原水導入管Aが接続され、微細気泡発生装置4には処理水導入管Bと空気導入管Cとが接続されている。微細気泡導入部分1bにおいて、気液混合により発生させた微細気泡を原水中に導入した後、ろ過部分1aに流入させ、ろ過する。ろ過部分1aと微細気泡導入部分1bとを区画する隔壁の高さよりも上方に、フロス排出管Xが設けられている。処理水流出管Fには、フロス排出管Xと一致する高さのバイパス管F−1と、処理水の流路を切り替える弁Zとが設けられており、ろ過部分1a内の水位をフロス排出管Xの位置まで上昇させることができる。
【0032】
図6に示すろ過装置は、微細気泡導入部分1b内の微細気泡発生装置4に導入される原水の濁度を測定する濁度計が設けられている点で異なる以外、図5に示す構成と同じである。濁度計で計測された濁度に基づいて、微細気泡発生装置4への空気の導入量を制御して、微細気泡の発生量を制御する。
【0033】
図7に示すろ過装置は、ろ過部分1a内に濁度計を設け、濁度計で計測された原水の濁度に基づいて、微細気泡導入部分1b内の微細気泡発生装置4に導入される処理水の量を制御する点で異なる以外、図6に示す構成と同じである。
【0034】
次に、図1〜7のろ過装置において共通する構成部材を説明する。
[微細気泡発生装置]
微細気泡発生装置4は、マイクロバブルを発生させる装置である。「マイクロバブル」とは、10〜数10μmの直径をもつ気泡であるが、必ずしもすべての気泡の直径がこの範囲に収まる必要はない。また、マイクロバブルよりも気泡が小さいナノバブルを発生させることができる発生器を用いても良いが、発生した気泡の大粒径側は上記の気泡径の範囲に入っていることが望ましい。マイクロバブル発生器は種々のものが提案されており、例えば、旋回液流式、スタティックミキサー式、エゼクター式、ベンチュリ式、加圧溶解式、極微細孔式、超音波付加中空針状ノズル、蒸気凝縮式などが挙げられる。例えば、エゼクター式では、気液混合ノズル内で、狭い通路を高速で通過する液流によって生じる負圧を利用してガスを吸引し、下流における管路の拡大により生じたキャビテーションによって吸引ガスが微細に粉砕される。加圧溶解式は、ガスと液との混相をポンプで昇圧(0.5〜1MPa程度)し、ガス成分を液中に過飽和まで溶解させる。加圧タンク内で未溶解気泡を浮上分離させパージする。過飽和液のみを減圧弁を経て常圧液中にフラッシュさせると、過飽和ガス成分が水中からマイクロバブルになって析出する(化学工学vol.71、No.3(2007))。このとき、気液の混合ノズルを通すとより微細な気泡を発生させることができる。
【0035】
気液の混合ノズルは、種々のものが提案されており、ノズル内で、段階的に管路を変化させたもの、管路に球状の障害物を設置したもの、スリットを用いるもの、遠心力によって発生した気体柱を突起物によって破砕するものなど、を採用することができる。
【0036】
[集水装置]
集水装置3は、砂利を敷き詰めたもの、有孔ブロック型、ホイラー型、ストレーナ型、ポーラスボトム型、多孔管型など任意のものを選択することができるが、特に、有孔ブロック型は、ブロックが軽く施工が容易であるので、ろ材の集水装置として好ましい。集水装置としては、トリラテラル(水ing株式会社製)を好適に用いることができる。
【0037】
[ろ材層]
ろ材層2には、ろ材が充填されている。ろ材の充填高さとしては、逆洗頻度を高めず、ろ材層上部のフリーボード部が極端に高くならないように設計するため300〜2000mm程度が好適である。ろ材としては、種々のろ材を使用することができ、砂、アンスラサイト、ガーネット、活性炭、造粒活性炭、人工ビーズ、短繊維塊からなる繊維ろ材などを挙げることができる。短繊維塊からなる繊維ろ材は、水回収率を著しく向上することができるので特に好ましい。また、これらのろ材表面に好気性微生物を固定させた生物膜を用いて、溶存有機物を除去することもできる。生物膜を用いる場合、通常の活性炭は破砕された状態で形状も大きさも不均一であるが、球状に加工された造粒活性炭は均一な形状と大きさとを有するため、微生物を均一に担持して均一な生物膜を形成しやすく、好適である。造粒活性炭は好ましくは0.5〜3.5mmの平均粒径を有することが好ましい。
【0038】
短繊維塊からなる繊維ろ材としては、種々の繊維ろ材を使用することができるが、特に下記製法によって製造された繊維ろ材が好適である。
(工程1)芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造の第1熱可塑性繊維と単一成分からなる第2熱可塑性繊維を混綿して形成した複合熱可塑性繊維、又は数種類の芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造の複合熱可塑性繊維を混綿して混綿体とする混綿工程
(工程2)該混綿体をロープ状のスライバーとするスライバー工程
(工程3)該スライバーに熱風を吹き掛け、該スライバーの一部を溶着させた溶着部を形成する溶着工程
(工程4)該溶着部を有するスライバーを切断する切断工程
以下それぞれの工程を説明する。
【0039】
(混綿工程)
混綿工程において、第1熱可塑性繊維は、芯鞘型複合繊維であり、芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造を有している。芯成分の材質としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維などが挙げられる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。これらの中でも、芯成分の材質は汎用性及び強度の観点からポリエステル繊維であることが好ましい。また、鞘成分の材質としては、ポリエステルと脂肪族化合物との共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等が用いられる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。これらの中でも、鞘成分の材質は、芯成分の材質がポリエステル繊維を使用している場合、同一成分を含有させるほうが、強度が優れるため、ポリエステルと脂肪族化合物との共重合体を用いることが好ましい。
【0040】
第1熱可塑性繊維の繊度は、1〜50dtexであることが好ましい。第1熱可塑性繊維の繊度が1dtex未満であると、繊度が上記範囲内にある場合と比較して、繊維間の空隙が小さくなりすぎ、一方、繊度が50dtexを超えると、繊維間の空隙が大きくなりすぎて、共に懸濁粒子を捕捉できなくなる恐れがある。
【0041】
また、混綿工程において、単一成分からなる第2熱可塑性繊維の材質としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維等が用いられる。これらの中でも、第2熱可塑性繊維の材質は汎用性、強度、及び水に沈みやすいといった観点から、ポリエステル繊維であることが好ましい。
【0042】
単一成分からなる第2熱可塑性繊維の繊度は、1〜50dtexであることが好ましい。第2熱可塑性繊維の繊度が1dtex未満であると、繊度が上記範囲内にある場合と比較して、繊維間の空隙が小さくなりすぎ、一方、繊度が50dtexを超えると、繊維間の空隙が大きくなりすぎて、共に懸濁粒子を捕捉できなくなる恐れがある。
【0043】
また、第2熱可塑性繊維の融点は、第1熱可塑性繊維の鞘成分の融点よりも高いほうが好ましく、且つ160〜250℃であることが好ましい。この場合、混綿して形成される複合熱可塑性繊維によるバインダー効果を発揮させて、繊維ろ材の形状を維持することができる。
【0044】
混綿工程においては、第1熱可塑性繊維の塊状物と、第2熱可塑性繊維の塊状物とを混合する。
このときの混合割合は、第1熱可塑性繊維1質量部に対し、第2熱可塑性繊維が1.5〜4質量部であることが好ましい。第2熱可塑性繊維の混合割合が1.5質量部未満であると、混合割合が上記範囲内にある場合と比較して、繊維ろ材の強度が不十分となる恐れがあり、第2熱可塑性繊維の混合割合が4質量部を超えると、混合割合が上記範囲内にある場合と比較して、複合熱可塑性繊維のバインダー効果が不十分となる恐れがある。
【0045】
数種類の芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造の複合熱可塑性繊維を混綿して混綿体とする場合は、それぞれの繊維がバインダーの働きをするので、よりほつれにくい混綿体とすることができる。混合割合は任意とするとことができるが、各複合熱可塑性繊維が持つ特性をいかすために、少なくともそれぞれが全量に対して1/3以上であることが望ましい。
【0046】
混綿工程においては、複数の繊維を混合させることで、繊維ろ材の表面の毛羽の長さや量を調整することが可能となる。これにより、得られる繊維ろ材は、懸濁粒子を効率良く捕集できるようになる。
【0047】
(スライバー工程)
スライバー工程は、混綿工程で得られた混綿体を、ロープ状のスライバーにする工程である。この工程は、混綿体を紡績用カード機にかけ薄い平面状のウェブとした後、練条機を通してドラフトし、ロープ状のスライバーにする工程である。
【0048】
ここで、「スライバー」とは、撚りをかけないロープ状にした繊維の束をいう。
スライバー工程においては、混綿体をドラフトして延伸しロープ状のスライバーとすることで、繊維方向が引き揃えられる。これにより、スライバーの引張り強度が向上するという利点がある。
【0049】
また、ロープ状のスライバーの直径は5〜20mmの範囲であることが好ましい。直径が5mm未満であると、繊維ろ材の幅が狭くなりろ過装置からろ材が流出しやすくなる欠点があり、直径が20mmを超えると、繊維ろ材自体が大きくなることで比表面積が減少し、水中の懸濁物質を捕捉するために必要な表面積が小さくなる欠点がある。
【0050】
(溶着工程)
溶着工程は、スライバーに熱風を吹き掛け、スライバー内の一部の繊維同士を溶着させた溶着スライバーとする工程である。
【0051】
溶着スライバーは、一部にスライバーの繊維同士を溶着させた溶着部が形成されている。これにより、得られる繊維ろ材は、ほつれが防止されると共に、長期間、摩耗に耐えうる耐久性を有することになる。「一部」とは定量的な表現をできるものではないが、溶着は芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造の第1熱可塑性繊維と単一成分からなる第2熱可塑性繊維の格子点で行われ、格子点が多いほどほつれにくくなる。数種類の芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造の複合熱可塑性繊維を混綿して混綿体とする場合は、それぞれの繊維がバインダーの働きをするので、よりほつれにくい混綿体とすることができる。
【0052】
また、通水時には水圧で繊維の間隙が埋められ、逆洗時には繊維の間隙が離れ効率良く懸濁粒子を脱離させることが可能となる。
かかる溶着工程において、熱風の温度は120〜180℃であることが好ましい。
【0053】
(切断工程)
切断工程は、溶着スライバーを連続的に溶着切断することにより全長が5〜20mmの繊維ろ材とする工程である。溶着切断の方法としては、熱刃による方法、超音波の振動による超音波切断が挙げられる。ここでは、熱刃による方法を記す。
【0054】
切断工程においては、溶着スライバーを長手方向に進行させると共に、十分に加熱された熱刃昇降移動させることにより、連続的に溶着スライバーが切断され、個々の扁平矩形状の繊維ろ材となる。繊維ろ材は、左右の縁が溶着されているので、カットによるほつれの発生が抑制される。
【0055】
溶着切断において、熱刃の温度は700℃以上であることが好ましい。この場合、溶着スライバーを瞬時にカットすると共に、溶着スライバーの縁を確実に溶着することができる。
【0056】
こうして短繊維塊からなる繊維ろ材が得られる。
[ろ過方法]
次に、本発明のろ過装置を用いるろ過方法を説明する。
(1)懸濁物質を含む原水に微細気泡が導入される。
図1及び図2に示すろ過装置では、ろ材層2の上部に設けられている気液混合ノズル(微細気泡発生装置)4から、ろ材層2に導入される直前の原水に微細気泡が導入される。図3及び図4に示すろ過装置では、原水導入管Aに空気と処理水を混合して微細気泡を発生させ原水に導入する。図5〜図7に示すろ過装置では、微細気泡導入部分1bにて、処理水と空気とを混合して微細気泡を発生させ原水に導入する。さらに、図6及び図7に示すろ過装置では、濁度計で測定した原水の濁度に応じて微細気泡の導入量を制御する。図6に示すろ過装置では、濁度に応じて空気の混合量を調節して微細気泡の導入量を制御する。図7に示すろ過装置では、濁度に応じて、処理水流出管Fの弁を制御して原水に戻す処理水の量を調節して微細気泡の導入量を制御する。また、図3〜図7に示すろ過装置では、原水に微細気泡を導入することで、懸濁物質が浮上濃縮してフロスが形成され、フロス排出管Xからフロスが排出される。このとき、原水に無機凝集剤を添加しておくと、懸濁物質の凝集が促進され、浮上濃縮するフロスが増加するので好ましい。
(2)微細気泡が導入された原水をろ材層2の上部に導入して、下向流でろ材層2を通過させて、ろ材層に懸濁物質を捕捉させる。ろ過工程における原水の通水速度は、500〜2000m/dの範囲が好適である。図3〜7に示すろ過装置では、処理水流出管Fに設けられたバイパス管F−1の設置高さによって、ろ過装置内の水位を調節できる。バイパス管F−1をろ過層2よりも上方のフロス排出管Xと同じ高さに設け、弁Zを閉じて処理水をバイパス管F−1に流すと、ろ過装置内の水位が上昇して、浮上濃縮したフロスをフロス排出管Xから排出することができ、ろ材による懸濁物質除去量を減少させることができる。このような態様での処理は濁度が高い原水の処理に有効である。
(3)懸濁物質が除去された処理水を集水装置3に集水する。
(4)処理水流出管Fを介して処理水をろ過装置外部に排出する。
【0057】
[洗浄方法]
ろ過処理を行うことで、ろ材の内部や表面に懸濁物質が付着し、ろ過性能が低下するため、定期的あるいはろ過抵抗の上昇を検出して洗浄する。
(5)原水の導入を停止し、空気供給管Dを介して集水装置3に空気を供給し、空気を含む水中にろ材を流動させて、ろ材から懸濁物質を水中に剥離させる。空気の通気速度及び通気時間は、ろ材に付着した懸濁物質が剥離するに十分であればよく、通常は、0.1〜5.0m/minの通気速度、3〜30分の通気時間で実施することができる。このとき、洗浄水排出管Hから洗浄水が流出しない程度に原水や洗浄水を供給すると、ろ材の流動空間が広がり、流動が良好で効果的に洗浄を行うことができる。
(6)空気供給管Dからの空気の供給を停止し、微細気泡発生装置4を作動させて水中に微細気泡を注入して、ろ材から剥離した懸濁物質を浮上濃縮させる。微細気泡を含む水(以下「微細気泡水」という)の供給量は、ろ材の0.1〜10倍(容量)程度が好適である。微細気泡水としては、原水、処理水、市水、用水等種々のものを用いることができるが、原水及び処理水が好適である。微細気泡を発生させる気体としては空気、窒素ガス、酸素ガス等種々のものを用いることができるが、空気が好適である。また、懸濁物質の凝集を促進するために、微細気泡水中にポリ塩化第二鉄やPACなどの無機凝集剤を添加することが好ましい。無機凝集剤の添加量は、特に限定されるものではないが、数mg/L〜数百mg/Lの範囲とすることが好適である。
(7)洗浄水導入管Eから洗浄水を上向流で通水し、浮上濃縮した懸濁物質を含む水を洗浄水排出管Hから排出させる。洗浄水の通水速度は0.1〜5.0m/min、通気時間は3〜30分が好適である。洗浄水としては、下水二次処理水、工業用水、雨水、懸濁物質の含有量が少ないろ過原水などを用いることができる。
【0058】
洗浄は、(5)〜(7)工程を複数回繰り返し行うことが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示す、繊維ろ材(密度90kg/m3)を20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するφ160mmのろ過装置を用いて、原水のろ過を行った。繊維ろ材は、真比重1.38であり、長さ10mm、幅7mmであった。繊維ろ材は、2種類の複合熱可塑性繊維を混綿したものであり、共に材質はポリエステルとした。
【0060】
原水の通水量は20m3/d、ろ材層2内の流速は1000m/dとし、処理水は処理水流出管Fから連続排出した。原水中のSS(懸濁物質)が繊維ろ材に捕捉されると、ろ過性能が落ちるため、12時ごとに逆洗工程を実施した。逆洗方法は、通気によって繊維ろ材に付着した懸濁物質を剥離したのち、微細気泡発生装置(オーラテック社製)を用いて気液混合ノズルからろ過層2上部に微細気泡液を供給し、剥離した懸濁物質を浮上濃縮した。その後、上向流で通水を行い、浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置から排出した。以上の操作を5回繰り返した。なお、用いた水量は、微細気泡液が0.5m/回(微細気泡液量,m3/ろ過装置断面積,m2)、通水による排出量が0.5m/回(排出水量,m3/ろ過装置断面積,m2)であったので、水回収率は99%であった。
【0061】
約1ヶ月後のろ過性能は、原水のSS濃度10mg/Lに対して処理水のSSは4mg/Lであった。処理性能は落ちることなく良好に処理がされた。
[実施例2]
図1に示す、φ0.6mmのアンスラサイトを20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するφ160mmのろ過装置を用いて、原水のろ過を行った。
【0062】
原水の通水量は7m3/d、ろ材層内の流速は350m/dとし、処理水は処理水流出管Fから連続排出した。原水中のSSがろ材に捕捉されると、ろ過性能が落ちるため、12時ごとに逆洗工程を実施した。逆洗方法は、通気によってろ材に付着した懸濁物質を剥離したのち、微細気泡発生装置(オーラテック社製)から微細気泡液を供給し、剥離した懸濁物質を浮上濃縮した。その後、上向流で通水を行い、浮上濃縮した懸濁物質を排出した。以上の操作を5回繰り返した。なお、用いた水量は、微細気泡液が0.5m/回、通水による排出量が0.5m/回で、あったので、水回収率は97.1%であった。
【0063】
約1ヶ月後のろ過性能は、原水のSS濃度10mg/Lに対して処理水のSSは2mg/Lであった。処理性能は落ちることなく良好に処理がされた。
[実施例3]
図2に示す、繊維ろ材(密度90kg/m3)を20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するφ160mmのろ過装置を用いて、原水のろ過を行った。原水の50%を気液混合ノズルを通して通水した以外、実施例1と同じとした。
【0064】
繊維ろ材は、真比重1.38であり、長さ10mm、幅7mmである。
原水の通水量は20m3/d(内10m3/dは気液混合ノズルを通して供給)、ろ材層内の流速は1000m/dとし、処理水は処理水流出管Fから連続排出した。原水中のSSが繊維ろ材に捕捉されると、ろ過性能が落ちるため、12時ごとに逆洗工程を実施した。逆洗方法は、まず、通水によってフロスを排出し、次いで、通気によって繊維ろ材に付着した懸濁物質を剥離したのち、微細気泡発生装置(オーラテック社製)から微細気泡液を供給し、剥離した懸濁物質を浮上濃縮した。その後、上向流で通水を行い、浮上濃縮した懸濁物質を排出した。以上の操作を4回繰り返した(フロスの排出は1回のみ)。なお、用いた水量は、微細気泡液が0.5m/回、通水による排出量が0.5m/回で、あったので、水回収率は99.2%であった。
【0065】
約1ヶ月後のろ過性能は、原水のSS濃度10mg/Lに対して処理水のSSは4mg/Lであった。処理性能は落ちることなく良好に処理がされた。
[比較例1]
図8に示す、繊維ろ材(密度90kg/m3)を20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するφ160mmのろ過装置を用いて、原水のろ過を行った。微細気泡を発生させる気液混合ノズルが無いこと以外は、実施例1と同じである。
【0066】
原水の通水量は20m3/d、ろ材層内の流速は1000m/dとし、処理水は処理水流出管Fから連続排出した。原水中のSSが繊維ろ材に捕捉されると、ろ過性能が落ちるため、12時ごとに逆洗工程を実施した。逆洗方法は、空気供給管Dから空気を供給して、SSが付着した繊維ろ材をゆらし、繊維ろ材から懸濁物質を剥離した。剥離した懸濁物質は排出管Gより排出した後、再度水張りを行なった。以上の操作を5回繰り返した。なお、1回当たりの水張り量は3m/回なので、水回収率は97%であった。
【0067】
約1ヶ月後のろ過性能は、原水のSS濃度10mg/Lに対して処理水のSSは5mg/Lであった。
[比較例2]
図8に示す、φ0.6mmのアンスラサイトを20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するφ160mmのろ過装置を用いて、原水のろ過を行った。微細気泡を発生させる気液混合ノズルが無いこと以外は、実施例2と同じである。
【0068】
原水の通水量は7m3/d、ろ材層内の流速は350m/dとし、処理水は処理水流出管Fから連続排出した。原水中のSSが繊維ろ材に捕捉されると、ろ過性能が落ちるため、12時ごとに逆洗工程を実施した。逆洗方法は、空気供給管Dから空気を供給して、SSが付着した繊維ろ材をゆらし、繊維ろ材から懸濁物質を剥離した。剥離した懸濁物質は排出管Gより排出した後、再度水張りを行なった。以上の操作を5回繰り返した。なお、1回当たりの水張り量は3m/回なので、水回収率91.4%であった。
【0069】
約1ヶ月後のろ過性能は、原水のSS濃度10mg/Lに対して処理水のSSは3mg/Lであった。
[実施例4]
図3に示す、造粒活性炭(水ing株式会社製「エバダイヤ」)を20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するろ過装置(断面積0.3m×0.6m)を用いて、海水のろ過を行った。海水に塩化第二鉄を3mg/L添加して原水とした。
【0070】
原水の通水量は7m3/d、ろ材層内の流速は350m/dとした。原水の濁度を濁度計により計測し、濁度が30NTUを超えると、気液混合ノズルから微細気泡を発生させ、弁Zを閉じて処理水を処理水流出管Fのバイパス管F−1に通した。濁度が30NTU以下の場合に、微細気泡の供給を停止し、弁Zを開き処理水を処理水流出管Fに通した。
【0071】
原水の濁度は5〜50NTUの範囲で変動したが、処理水濁度は常に5NTU以下であり、安定したろ過を行うことができた。水回収率は97%であった。
[比較例4]
常に、微細気泡を供給しなかった点を除いて実施例4と同様に海水をろ過処理した。
【0072】
原水の濁度は5〜50NTUの範囲で変動し、処理水濁度は1〜20NTUの範囲で変動した。実施例4と比較して、安定した処理水質を得ることができなかった。水回収率は92%であった。
【0073】
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0074】
【表1】
本発明の装置及び方法によれば、懸濁物質除去及び水回収率の双方が向上し、特に従来法の課題であった水回収率を従来法と比較すると、繊維ろ材の場合に97%から99%以上へと2%以上の向上、アンスラサイトの場合に91.4%から97.1%へと約6%の向上、造粒活性炭の場合に92%から97%へと5%の向上を確認できた。さらに、濁度に応じた微細気泡導入の制御及び無機凝集剤を添加した実施例4では、常時安定した懸濁物質除去効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のろ過装置及びろ過方法は、原水の懸濁物質除去処理として、また脱塩処理などの前処理として好適である。本発明の洗浄方法によりろ材の長寿命化が達成され、ろ過処理のコスト削減にも資する。
【符号の説明】
【0076】
1:ろ過装置、2:ろ材層、3:集水装置、4:微細気泡発生装置(気液混合ノズル)、A:原水導入管、B:液体導入管、C:気体導入管、D:空気供給管、E:洗浄水導入管、F:処理水流出管、F−1:バイパス管、G:排出管、H:洗浄水排出管、X:フロス排出管、Z:弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水、工場排水、用水、海水などの懸濁粒子を含有する懸濁水(以下「原水」ともいう。)の高速ろ過分離装置及び方法に関し、懸濁水中の懸濁粒子を高速度でろ過除去できる技術に関する。本発明は、特に下水処理施設に流入する下水の高速固液分離技術、又は、有機性の懸濁粒子を含有する合流式下水道の雨天時越流水(以下「CSO」と略称することもある。)又は各種産業排水の処理、用水処理、海水処理として極めて好適な革新技術である。
【0002】
合流式下水道における雨天時越流水(CSO)の公共用水域への汚濁負荷が大きな問題になっている。また、下水処理施設に流入する下水は、まず、最初沈殿池で沈殿分離された後、活性汚泥処理される。このとき、最初沈殿池におけるSS(固体懸濁物質)の除去率が悪いため、凝集剤を添加して凝集沈殿処理する例が北欧で普及している。しかし、この方法は、汚泥発生量が多く、凝集沈殿速度が小さく、大きな沈殿池を必要とする欠点がある。そのためCSO及び下水を極力コンパクトな設備で固液分離できる新技術が待望されている。
【0003】
また、下水の高度処理として、放流先の水質改善のために、或いは場内用水として再利用するために、二次処理水中の懸濁物質を除去する三次処理が行われている。この場合、処理水量が多いため、高速処理可能なろ過装置の提供が要望されている。
【0004】
従来、アンスラサイト、砂、例えば粒状プラスチックなどの各種粒状固体をろ材とするろ過法が検討されている。例えば、下水処理分野では、活性汚泥処理水のような比較的粒径の大きな懸濁物質を対象に、前述のアンスラサイト、砂などを用いてろ過を行うことが多い。この場合、排水の通水速度としては100〜500m/dで行うことが多い。
【0005】
また、通水速度を上げるために、ろ材粒径を大きくして目詰まりを少なくする場合があるが、この場合、SSの除去率が悪化してしまうなどの矛盾点が生じた。特に、下水などが含む有機性SSは粘着力が強いので、これら下水などを対象として、SS除去率は高く一方で目詰まりは少なく、と相反する要求を満足できる技術が要望されている。
【0006】
上記のビーズ系のろ材に代わる方法として、例えば、特公昭62−55885号公報や特開平10−305204号公報では、繊維長5〜50mmの有機繊維からなる短繊維を絡み合わせた多数の繊維塊をろ材として使用するろ過装置がある。このろ材を用いたろ過装置は、懸濁物質を含む排水を処理する際に、600m/d以上の高速でろ過を行うことができる。
【0007】
このような繊維ろ材は、ろ過工程で付着した懸濁物質を剥がす、いわゆる「逆洗」する場合には、ろ過塔内に洗浄水と空気の両者又はいずれかを供給することで繊維ろ材から懸濁物質を剥離させている。従来、この逆洗工程では、繊維ろ材を激しい流動状態に晒して繊維ろ材から懸濁物質を剥離し、剥離した懸濁物質を排出することにより、繊維ろ材のろ過性能を回復していた。しかしながら、繊維ろ材の汚れがひどい場合は、大量の洗浄水で洗い流さなければならず、水回収率(回収できた水量/ろ過した水量)が低くなる場合があり、水回収率の向上が課題として挙げられている。
【0008】
また、従来、海水或いは汽水を脱塩して、工業用水或いは飲用水を得る場合の脱塩方法として、逆浸透(RO)膜法、電気透析法又は電気式脱塩法、蒸発法などがあった。これらの技術を採用する場合には、予め海水或いは汽水に含まれている懸濁物質を除去する前処理が必要であり、凝集法、砂ろ過法、加圧浮上法、MF/UF膜法などが単独又は併用して使用されていた。
【0009】
たとえば、原水中の懸濁物質をろ過する前処理膜を有する前処理装置を逆浸透(RO)膜装置の前段に設ける淡水化装置が提案されている(特許文献3)。特許文献3においては、前処理膜として、UF膜(限外濾過膜)又はMF膜(精密濾過膜)等の分離膜を用いることが記載されている。しかし、昨今、海水或いは汽水に流入する都市下水などの影響により、懸濁物質のみならず、植物/植物プランクトン、船舶によるオイル、液中に溶解している有機物が、RO膜法、電気透析法、電気式脱塩法、蒸発法の運転、メンテナンス及びコストに大きな影響を与えることが顕在化してきた。特に、RO膜法、電気透析法及び電気式脱塩法などの膜を用いる脱塩法では脱塩膜表面に溶解している有機物が蓄積し、それらが生物学的繁殖によってスライム等として成長し、膜流速の低下、逆洗頻度の増加、膜寿命の減少などを引き起こしている。また、蒸発法においても、蒸発によって淡水側に移行する揮発成分による造水水質の悪化、有機物による伝熱面での効率低下など、コストパフォーマンス低下などを引き起こしている。これら原水中に溶解している有機物、オイル、各種プランクトンは、従来の砂ろ過法では除去できず、膜法を利用しても一部がリークし、膜の洗浄頻度、寿命等に悪影響を及ぼしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭62−55885号公報
【特許文献2】特開平10−305204号公報
【特許文献3】特開2011−31121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、簡単かつコンパクトな装置によって下水、各種廃水、用水、海水などの各種原水中の懸濁粒子を高速ろ過できる新技術を提供することを課題とする。特に、懸濁物質が付着したろ材の洗浄時に、剥離した懸濁物質を少ない水量で排出し、水回収率を高くすることができる新規洗浄方法を含むろ過装置及び方法を提供することにある。
【0012】
また、懸濁物質と有機物とを含む原水を処理する場合に、有機物がろ材に付着することを防止するろ過装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、懸濁物質を含む原水から懸濁物質を除去するろ過装置であって、懸濁物質を捕捉するろ材を充填してなるろ材層と、当該ろ材層の上部に原水を供給する原水導入管Aと、原水に微細気泡を導入する微細気泡発生装置と、当該ろ材層よりも下方に設けられている、処理水を集水する集水装置と、当該集水装置に空気を供給する空気供給管Dと、当該集水装置から当該ろ材層よりも上方の位置まで立ち上げられている、当該集水装置から処理水を排出する処理水流出管Fと、当該ろ材層に洗浄水を上向流で通水する洗浄水導入管Eと、当該ろ材層よりも上方から洗浄水を排出する洗浄水排出管Hと、を具備する、ろ過装置が提供される。
【0014】
さらに、前記ろ材層よりも上方に、フロス排出管Xを具備することが好ましい。
前記微細気泡発生装置は、前記ろ材層の上部に設けられた気液混合ノズルであることが好ましい。
【0015】
前記ろ過装置は、前記ろ材層及び前記集水装置を含むろ過部分と、当該ろ過部分の上流側に位置づけられ前記微細気泡発生装置を具備する微細気泡導入部分と、に区画されていてもよい。
【0016】
さらに、前記ろ材層の上流側に設けられている原水の濁度を計測する濁度計と、当該濁度計により計測される濁度に応じて前記微細気泡発生装置を制御する制御機構と、を具備する態様も含まれる。
【0017】
さらに、前記処理水流出管Fから前記原水導入管Aに接続されている処理水戻し管と、前記処理水流出管Fに設けられ、前記濁度計により計測される濁度に応じて処理水の流路を切り替える弁と、を具備することが好ましい。
【0018】
前記ろ材は、短繊維塊からなる繊維ろ材であることが好ましい。
前記ろ材は、好気性微生物を担持してなる生物膜ろ材でもよい。
本発明によれば、上記ろ過装置を用いて原水から懸濁物質を除去するろ過方法も提供される。ろ過方法は、
(1)懸濁物質を含む原水に微細気泡を導入する工程、
(2)微細気泡が導入された当該原水をろ材層の上部に導入して、下向流でろ材層を通過させて、ろ材層に懸濁物質を捕捉させる工程、
(3)懸濁物質が除去された処理水を集水装置に集水する工程、
(4)処理水流出管を介して処理水をろ過装置外部に排出する工程
を含む。
【0019】
工程(1)の微細気泡の導入は、原水の濁度に応じて制御されることが好ましい。
工程(1)において、原水の濁度に応じて原水に処理水を導入することがより好ましい。
【0020】
工程(1)において、微細気泡によって懸濁物質を浮上濃縮させ、浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置上部から排出してもよい。
また本発明によれば、上記ろ過装置の洗浄方法も提供される。洗浄方法は、
(5)原水の導入を停止し、空気供給管Dを介して集水装置に空気を供給し、空気を含む水中にろ材を流動させて、ろ材から懸濁物質を水中に剥離させる工程、
(6)空気供給管Dからの空気の供給を停止し、微細気泡発生装置を作動させて水中に微細気泡を注入して、ろ材から剥離した懸濁物質を浮上濃縮させる工程、及び
(7)洗浄水導入管Eから洗浄水を上向流で通水し、浮上濃縮した懸濁物質を含む水を洗浄水排出管Hから排出させる工程
を含む。
【0021】
工程(6)において、浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置上部から排出させてもよい。
工程(6)において、微細気泡を注入する水に、無機凝集剤を添加しておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のろ過装置及びろ過方法によれば、原水に導入する微細気泡によって原水中の懸濁物質が浮上濃縮されるため、ろ材に捕捉する懸濁物質の量を減少させることができ、ろ材の長寿命化に資する。特に、ろ材として生物膜を使用する場合には、ろ材に付着する有機物の量を減少させることができるため、スライムの発生を防止し、ろ過効率の向上に資する。
【0023】
原水に導入する微細気泡の量を原水の濁度によって制御するため、過不足なく微細気泡を導入し、好適な懸濁物質除去を達成することができる。濁度が高い場合には、多量の微細気泡を導入して、懸濁物質を浮上濃縮させて、ろ過装置上部から排出することで、ろ材の負荷を減少させ、ろ過層の逆洗頻度を削減し、ろ材の長寿命化に資する。
【0024】
また、本発明のろ材の洗浄方法によれば、ろ材の洗浄時に水中に導入する微細気泡によって、ろ材から剥離された懸濁物質を浮上濃縮させ、逆洗効果を向上させることができ、洗浄水量を減少させることができる。浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置上部から排出する態様では、さらに逆洗効果を向上させることができる。また、無機凝集剤を併用することで、懸濁物質の凝集が促進され、浮上濃縮による除去効率が向上する。
【0025】
本発明の洗浄方法を実施した後に再開するろ過方法では、ろ材に付着していた懸濁物質が除去されているため、長期にわたり懸濁物質の除去率を高く維持することができる。また、従来方法による水回収率(回収できた水量/ろ過水量)は繊維ろ材を用いた場合であっても95〜97%であったが、微細気泡導入による懸濁物質の浮上濃縮により、水回収率を99%以上に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の装置の一例を示すフロー構成図である。
【図2】図2は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図3】図3は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図4】図4は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図5】図5は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図6】図6は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図7】図7は、本発明の装置の他の例を示すフロー構成図である。
【図8】図8は、比較例1で用いた装置のフロー構成図である。
【実施形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1に示すろ過装置1は、懸濁物質を捕捉するろ材を充填してなるろ材層2と、ろ材層2の上部に原水を供給する原水導入管Aと、原水に微細気泡を導入する微細気泡発生装置4と、ろ材層2よりも下方に設けられている処理水を集水する集水装置3と、集水装置3に空気を供給する空気供給管Dと、集水装置3からろ材層2よりも上方の位置まで立ち上げられている集水装置3から処理水を排出する処理水流出管Fと、ろ材層2に洗浄水を上向流で通水する洗浄水導入管Eと、ろ材層2よりも上方から洗浄水を排出する洗浄水排出管Hと、を具備する。微細気泡発生装置4は、気液混合ノズルであり、液体の導入管B及び気体の導入管Cが接続されている。気液混合ノズルの設置位置は、ろ材層2(通常は層高さが300〜2000mm)の上面と同じ位置とする。設置位置が、ろ材層2内であると微細気泡がろ材に付着し、剥離した懸濁物質の浮上濃縮が抑制される。また、反対に高すぎると、浮上濃縮できる割合が減少するので効率が低下する。集水装置3には、ろ材層2内の液を排出するための排出管Gが接続されている。排出管Gには弁Yが取り付けられている。集水装置3内に設けられた圧力計の指示値に応じて弁Yを開閉することで、ろ材層2の水位を調整する。
【0028】
図2に示すろ過装置は、図1に示すろ過装置1とほぼ同じ構成であるが、微細気泡発生装置4への液体導入管を原水導入管Bとした。図2に示す態様の変形例として、原水導入管Aを用いず、原水の全量を微細気泡発生装置4に導入して微細気泡を含んだ原水としてろ過層2に導入してもよい。
【0029】
図3に示すろ過装置は、基本構成は図1に示すろ過装置1と同じであるが、気液発生装置4を原水導入管Aに接続し、処理水と空気とを混合して発生させた微細気泡を原水に導入した後、ろ材層2に供給する構成とした。また、ろ材層2よりも上方に、浮上濃縮させた懸濁物質(以下「フロス」ともいう)の排出管であるフロス排出管Xが設けられている。ろ過装置には、フロス排出管Xよりも上方の位置に、原水の供給を均一にするために設けられた流路であるトラフが設けられている。また、処理水流出管Fには、バイパス管F−1と弁Zとが設けられている。
【0030】
図4に示すろ過装置は、フロス排出管Xをトラフよりも上方に位置づけた点で異なる以外は図3に示す構成と同じである。バイパス管F−1は、ろ過装置内の水位を調節するために設けられており、弁Zを閉じて処理水をバイパス管F−1に流すことで、ろ過装置内の水位をバイパス管F−1の高さまで上昇させることができる。バイパス管F−1の高さは、フロス排出管Xの高さ位置と一致する高さである。
【0031】
図5に示すろ過装置は、ろ材層2及び集水装置3を含むろ過部分1aと、ろ過部分1aの上流側に位置づけられ微細気泡発生装置4を具備する微細気泡導入部分1bと、に区画されている。微細気泡導入部分1bには原水導入管Aが接続され、微細気泡発生装置4には処理水導入管Bと空気導入管Cとが接続されている。微細気泡導入部分1bにおいて、気液混合により発生させた微細気泡を原水中に導入した後、ろ過部分1aに流入させ、ろ過する。ろ過部分1aと微細気泡導入部分1bとを区画する隔壁の高さよりも上方に、フロス排出管Xが設けられている。処理水流出管Fには、フロス排出管Xと一致する高さのバイパス管F−1と、処理水の流路を切り替える弁Zとが設けられており、ろ過部分1a内の水位をフロス排出管Xの位置まで上昇させることができる。
【0032】
図6に示すろ過装置は、微細気泡導入部分1b内の微細気泡発生装置4に導入される原水の濁度を測定する濁度計が設けられている点で異なる以外、図5に示す構成と同じである。濁度計で計測された濁度に基づいて、微細気泡発生装置4への空気の導入量を制御して、微細気泡の発生量を制御する。
【0033】
図7に示すろ過装置は、ろ過部分1a内に濁度計を設け、濁度計で計測された原水の濁度に基づいて、微細気泡導入部分1b内の微細気泡発生装置4に導入される処理水の量を制御する点で異なる以外、図6に示す構成と同じである。
【0034】
次に、図1〜7のろ過装置において共通する構成部材を説明する。
[微細気泡発生装置]
微細気泡発生装置4は、マイクロバブルを発生させる装置である。「マイクロバブル」とは、10〜数10μmの直径をもつ気泡であるが、必ずしもすべての気泡の直径がこの範囲に収まる必要はない。また、マイクロバブルよりも気泡が小さいナノバブルを発生させることができる発生器を用いても良いが、発生した気泡の大粒径側は上記の気泡径の範囲に入っていることが望ましい。マイクロバブル発生器は種々のものが提案されており、例えば、旋回液流式、スタティックミキサー式、エゼクター式、ベンチュリ式、加圧溶解式、極微細孔式、超音波付加中空針状ノズル、蒸気凝縮式などが挙げられる。例えば、エゼクター式では、気液混合ノズル内で、狭い通路を高速で通過する液流によって生じる負圧を利用してガスを吸引し、下流における管路の拡大により生じたキャビテーションによって吸引ガスが微細に粉砕される。加圧溶解式は、ガスと液との混相をポンプで昇圧(0.5〜1MPa程度)し、ガス成分を液中に過飽和まで溶解させる。加圧タンク内で未溶解気泡を浮上分離させパージする。過飽和液のみを減圧弁を経て常圧液中にフラッシュさせると、過飽和ガス成分が水中からマイクロバブルになって析出する(化学工学vol.71、No.3(2007))。このとき、気液の混合ノズルを通すとより微細な気泡を発生させることができる。
【0035】
気液の混合ノズルは、種々のものが提案されており、ノズル内で、段階的に管路を変化させたもの、管路に球状の障害物を設置したもの、スリットを用いるもの、遠心力によって発生した気体柱を突起物によって破砕するものなど、を採用することができる。
【0036】
[集水装置]
集水装置3は、砂利を敷き詰めたもの、有孔ブロック型、ホイラー型、ストレーナ型、ポーラスボトム型、多孔管型など任意のものを選択することができるが、特に、有孔ブロック型は、ブロックが軽く施工が容易であるので、ろ材の集水装置として好ましい。集水装置としては、トリラテラル(水ing株式会社製)を好適に用いることができる。
【0037】
[ろ材層]
ろ材層2には、ろ材が充填されている。ろ材の充填高さとしては、逆洗頻度を高めず、ろ材層上部のフリーボード部が極端に高くならないように設計するため300〜2000mm程度が好適である。ろ材としては、種々のろ材を使用することができ、砂、アンスラサイト、ガーネット、活性炭、造粒活性炭、人工ビーズ、短繊維塊からなる繊維ろ材などを挙げることができる。短繊維塊からなる繊維ろ材は、水回収率を著しく向上することができるので特に好ましい。また、これらのろ材表面に好気性微生物を固定させた生物膜を用いて、溶存有機物を除去することもできる。生物膜を用いる場合、通常の活性炭は破砕された状態で形状も大きさも不均一であるが、球状に加工された造粒活性炭は均一な形状と大きさとを有するため、微生物を均一に担持して均一な生物膜を形成しやすく、好適である。造粒活性炭は好ましくは0.5〜3.5mmの平均粒径を有することが好ましい。
【0038】
短繊維塊からなる繊維ろ材としては、種々の繊維ろ材を使用することができるが、特に下記製法によって製造された繊維ろ材が好適である。
(工程1)芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造の第1熱可塑性繊維と単一成分からなる第2熱可塑性繊維を混綿して形成した複合熱可塑性繊維、又は数種類の芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造の複合熱可塑性繊維を混綿して混綿体とする混綿工程
(工程2)該混綿体をロープ状のスライバーとするスライバー工程
(工程3)該スライバーに熱風を吹き掛け、該スライバーの一部を溶着させた溶着部を形成する溶着工程
(工程4)該溶着部を有するスライバーを切断する切断工程
以下それぞれの工程を説明する。
【0039】
(混綿工程)
混綿工程において、第1熱可塑性繊維は、芯鞘型複合繊維であり、芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造を有している。芯成分の材質としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維などが挙げられる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。これらの中でも、芯成分の材質は汎用性及び強度の観点からポリエステル繊維であることが好ましい。また、鞘成分の材質としては、ポリエステルと脂肪族化合物との共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等が用いられる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。これらの中でも、鞘成分の材質は、芯成分の材質がポリエステル繊維を使用している場合、同一成分を含有させるほうが、強度が優れるため、ポリエステルと脂肪族化合物との共重合体を用いることが好ましい。
【0040】
第1熱可塑性繊維の繊度は、1〜50dtexであることが好ましい。第1熱可塑性繊維の繊度が1dtex未満であると、繊度が上記範囲内にある場合と比較して、繊維間の空隙が小さくなりすぎ、一方、繊度が50dtexを超えると、繊維間の空隙が大きくなりすぎて、共に懸濁粒子を捕捉できなくなる恐れがある。
【0041】
また、混綿工程において、単一成分からなる第2熱可塑性繊維の材質としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維等が用いられる。これらの中でも、第2熱可塑性繊維の材質は汎用性、強度、及び水に沈みやすいといった観点から、ポリエステル繊維であることが好ましい。
【0042】
単一成分からなる第2熱可塑性繊維の繊度は、1〜50dtexであることが好ましい。第2熱可塑性繊維の繊度が1dtex未満であると、繊度が上記範囲内にある場合と比較して、繊維間の空隙が小さくなりすぎ、一方、繊度が50dtexを超えると、繊維間の空隙が大きくなりすぎて、共に懸濁粒子を捕捉できなくなる恐れがある。
【0043】
また、第2熱可塑性繊維の融点は、第1熱可塑性繊維の鞘成分の融点よりも高いほうが好ましく、且つ160〜250℃であることが好ましい。この場合、混綿して形成される複合熱可塑性繊維によるバインダー効果を発揮させて、繊維ろ材の形状を維持することができる。
【0044】
混綿工程においては、第1熱可塑性繊維の塊状物と、第2熱可塑性繊維の塊状物とを混合する。
このときの混合割合は、第1熱可塑性繊維1質量部に対し、第2熱可塑性繊維が1.5〜4質量部であることが好ましい。第2熱可塑性繊維の混合割合が1.5質量部未満であると、混合割合が上記範囲内にある場合と比較して、繊維ろ材の強度が不十分となる恐れがあり、第2熱可塑性繊維の混合割合が4質量部を超えると、混合割合が上記範囲内にある場合と比較して、複合熱可塑性繊維のバインダー効果が不十分となる恐れがある。
【0045】
数種類の芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造の複合熱可塑性繊維を混綿して混綿体とする場合は、それぞれの繊維がバインダーの働きをするので、よりほつれにくい混綿体とすることができる。混合割合は任意とするとことができるが、各複合熱可塑性繊維が持つ特性をいかすために、少なくともそれぞれが全量に対して1/3以上であることが望ましい。
【0046】
混綿工程においては、複数の繊維を混合させることで、繊維ろ材の表面の毛羽の長さや量を調整することが可能となる。これにより、得られる繊維ろ材は、懸濁粒子を効率良く捕集できるようになる。
【0047】
(スライバー工程)
スライバー工程は、混綿工程で得られた混綿体を、ロープ状のスライバーにする工程である。この工程は、混綿体を紡績用カード機にかけ薄い平面状のウェブとした後、練条機を通してドラフトし、ロープ状のスライバーにする工程である。
【0048】
ここで、「スライバー」とは、撚りをかけないロープ状にした繊維の束をいう。
スライバー工程においては、混綿体をドラフトして延伸しロープ状のスライバーとすることで、繊維方向が引き揃えられる。これにより、スライバーの引張り強度が向上するという利点がある。
【0049】
また、ロープ状のスライバーの直径は5〜20mmの範囲であることが好ましい。直径が5mm未満であると、繊維ろ材の幅が狭くなりろ過装置からろ材が流出しやすくなる欠点があり、直径が20mmを超えると、繊維ろ材自体が大きくなることで比表面積が減少し、水中の懸濁物質を捕捉するために必要な表面積が小さくなる欠点がある。
【0050】
(溶着工程)
溶着工程は、スライバーに熱風を吹き掛け、スライバー内の一部の繊維同士を溶着させた溶着スライバーとする工程である。
【0051】
溶着スライバーは、一部にスライバーの繊維同士を溶着させた溶着部が形成されている。これにより、得られる繊維ろ材は、ほつれが防止されると共に、長期間、摩耗に耐えうる耐久性を有することになる。「一部」とは定量的な表現をできるものではないが、溶着は芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造の第1熱可塑性繊維と単一成分からなる第2熱可塑性繊維の格子点で行われ、格子点が多いほどほつれにくくなる。数種類の芯成分と鞘成分とからなる芯鞘構造の複合熱可塑性繊維を混綿して混綿体とする場合は、それぞれの繊維がバインダーの働きをするので、よりほつれにくい混綿体とすることができる。
【0052】
また、通水時には水圧で繊維の間隙が埋められ、逆洗時には繊維の間隙が離れ効率良く懸濁粒子を脱離させることが可能となる。
かかる溶着工程において、熱風の温度は120〜180℃であることが好ましい。
【0053】
(切断工程)
切断工程は、溶着スライバーを連続的に溶着切断することにより全長が5〜20mmの繊維ろ材とする工程である。溶着切断の方法としては、熱刃による方法、超音波の振動による超音波切断が挙げられる。ここでは、熱刃による方法を記す。
【0054】
切断工程においては、溶着スライバーを長手方向に進行させると共に、十分に加熱された熱刃昇降移動させることにより、連続的に溶着スライバーが切断され、個々の扁平矩形状の繊維ろ材となる。繊維ろ材は、左右の縁が溶着されているので、カットによるほつれの発生が抑制される。
【0055】
溶着切断において、熱刃の温度は700℃以上であることが好ましい。この場合、溶着スライバーを瞬時にカットすると共に、溶着スライバーの縁を確実に溶着することができる。
【0056】
こうして短繊維塊からなる繊維ろ材が得られる。
[ろ過方法]
次に、本発明のろ過装置を用いるろ過方法を説明する。
(1)懸濁物質を含む原水に微細気泡が導入される。
図1及び図2に示すろ過装置では、ろ材層2の上部に設けられている気液混合ノズル(微細気泡発生装置)4から、ろ材層2に導入される直前の原水に微細気泡が導入される。図3及び図4に示すろ過装置では、原水導入管Aに空気と処理水を混合して微細気泡を発生させ原水に導入する。図5〜図7に示すろ過装置では、微細気泡導入部分1bにて、処理水と空気とを混合して微細気泡を発生させ原水に導入する。さらに、図6及び図7に示すろ過装置では、濁度計で測定した原水の濁度に応じて微細気泡の導入量を制御する。図6に示すろ過装置では、濁度に応じて空気の混合量を調節して微細気泡の導入量を制御する。図7に示すろ過装置では、濁度に応じて、処理水流出管Fの弁を制御して原水に戻す処理水の量を調節して微細気泡の導入量を制御する。また、図3〜図7に示すろ過装置では、原水に微細気泡を導入することで、懸濁物質が浮上濃縮してフロスが形成され、フロス排出管Xからフロスが排出される。このとき、原水に無機凝集剤を添加しておくと、懸濁物質の凝集が促進され、浮上濃縮するフロスが増加するので好ましい。
(2)微細気泡が導入された原水をろ材層2の上部に導入して、下向流でろ材層2を通過させて、ろ材層に懸濁物質を捕捉させる。ろ過工程における原水の通水速度は、500〜2000m/dの範囲が好適である。図3〜7に示すろ過装置では、処理水流出管Fに設けられたバイパス管F−1の設置高さによって、ろ過装置内の水位を調節できる。バイパス管F−1をろ過層2よりも上方のフロス排出管Xと同じ高さに設け、弁Zを閉じて処理水をバイパス管F−1に流すと、ろ過装置内の水位が上昇して、浮上濃縮したフロスをフロス排出管Xから排出することができ、ろ材による懸濁物質除去量を減少させることができる。このような態様での処理は濁度が高い原水の処理に有効である。
(3)懸濁物質が除去された処理水を集水装置3に集水する。
(4)処理水流出管Fを介して処理水をろ過装置外部に排出する。
【0057】
[洗浄方法]
ろ過処理を行うことで、ろ材の内部や表面に懸濁物質が付着し、ろ過性能が低下するため、定期的あるいはろ過抵抗の上昇を検出して洗浄する。
(5)原水の導入を停止し、空気供給管Dを介して集水装置3に空気を供給し、空気を含む水中にろ材を流動させて、ろ材から懸濁物質を水中に剥離させる。空気の通気速度及び通気時間は、ろ材に付着した懸濁物質が剥離するに十分であればよく、通常は、0.1〜5.0m/minの通気速度、3〜30分の通気時間で実施することができる。このとき、洗浄水排出管Hから洗浄水が流出しない程度に原水や洗浄水を供給すると、ろ材の流動空間が広がり、流動が良好で効果的に洗浄を行うことができる。
(6)空気供給管Dからの空気の供給を停止し、微細気泡発生装置4を作動させて水中に微細気泡を注入して、ろ材から剥離した懸濁物質を浮上濃縮させる。微細気泡を含む水(以下「微細気泡水」という)の供給量は、ろ材の0.1〜10倍(容量)程度が好適である。微細気泡水としては、原水、処理水、市水、用水等種々のものを用いることができるが、原水及び処理水が好適である。微細気泡を発生させる気体としては空気、窒素ガス、酸素ガス等種々のものを用いることができるが、空気が好適である。また、懸濁物質の凝集を促進するために、微細気泡水中にポリ塩化第二鉄やPACなどの無機凝集剤を添加することが好ましい。無機凝集剤の添加量は、特に限定されるものではないが、数mg/L〜数百mg/Lの範囲とすることが好適である。
(7)洗浄水導入管Eから洗浄水を上向流で通水し、浮上濃縮した懸濁物質を含む水を洗浄水排出管Hから排出させる。洗浄水の通水速度は0.1〜5.0m/min、通気時間は3〜30分が好適である。洗浄水としては、下水二次処理水、工業用水、雨水、懸濁物質の含有量が少ないろ過原水などを用いることができる。
【0058】
洗浄は、(5)〜(7)工程を複数回繰り返し行うことが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示す、繊維ろ材(密度90kg/m3)を20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するφ160mmのろ過装置を用いて、原水のろ過を行った。繊維ろ材は、真比重1.38であり、長さ10mm、幅7mmであった。繊維ろ材は、2種類の複合熱可塑性繊維を混綿したものであり、共に材質はポリエステルとした。
【0060】
原水の通水量は20m3/d、ろ材層2内の流速は1000m/dとし、処理水は処理水流出管Fから連続排出した。原水中のSS(懸濁物質)が繊維ろ材に捕捉されると、ろ過性能が落ちるため、12時ごとに逆洗工程を実施した。逆洗方法は、通気によって繊維ろ材に付着した懸濁物質を剥離したのち、微細気泡発生装置(オーラテック社製)を用いて気液混合ノズルからろ過層2上部に微細気泡液を供給し、剥離した懸濁物質を浮上濃縮した。その後、上向流で通水を行い、浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置から排出した。以上の操作を5回繰り返した。なお、用いた水量は、微細気泡液が0.5m/回(微細気泡液量,m3/ろ過装置断面積,m2)、通水による排出量が0.5m/回(排出水量,m3/ろ過装置断面積,m2)であったので、水回収率は99%であった。
【0061】
約1ヶ月後のろ過性能は、原水のSS濃度10mg/Lに対して処理水のSSは4mg/Lであった。処理性能は落ちることなく良好に処理がされた。
[実施例2]
図1に示す、φ0.6mmのアンスラサイトを20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するφ160mmのろ過装置を用いて、原水のろ過を行った。
【0062】
原水の通水量は7m3/d、ろ材層内の流速は350m/dとし、処理水は処理水流出管Fから連続排出した。原水中のSSがろ材に捕捉されると、ろ過性能が落ちるため、12時ごとに逆洗工程を実施した。逆洗方法は、通気によってろ材に付着した懸濁物質を剥離したのち、微細気泡発生装置(オーラテック社製)から微細気泡液を供給し、剥離した懸濁物質を浮上濃縮した。その後、上向流で通水を行い、浮上濃縮した懸濁物質を排出した。以上の操作を5回繰り返した。なお、用いた水量は、微細気泡液が0.5m/回、通水による排出量が0.5m/回で、あったので、水回収率は97.1%であった。
【0063】
約1ヶ月後のろ過性能は、原水のSS濃度10mg/Lに対して処理水のSSは2mg/Lであった。処理性能は落ちることなく良好に処理がされた。
[実施例3]
図2に示す、繊維ろ材(密度90kg/m3)を20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するφ160mmのろ過装置を用いて、原水のろ過を行った。原水の50%を気液混合ノズルを通して通水した以外、実施例1と同じとした。
【0064】
繊維ろ材は、真比重1.38であり、長さ10mm、幅7mmである。
原水の通水量は20m3/d(内10m3/dは気液混合ノズルを通して供給)、ろ材層内の流速は1000m/dとし、処理水は処理水流出管Fから連続排出した。原水中のSSが繊維ろ材に捕捉されると、ろ過性能が落ちるため、12時ごとに逆洗工程を実施した。逆洗方法は、まず、通水によってフロスを排出し、次いで、通気によって繊維ろ材に付着した懸濁物質を剥離したのち、微細気泡発生装置(オーラテック社製)から微細気泡液を供給し、剥離した懸濁物質を浮上濃縮した。その後、上向流で通水を行い、浮上濃縮した懸濁物質を排出した。以上の操作を4回繰り返した(フロスの排出は1回のみ)。なお、用いた水量は、微細気泡液が0.5m/回、通水による排出量が0.5m/回で、あったので、水回収率は99.2%であった。
【0065】
約1ヶ月後のろ過性能は、原水のSS濃度10mg/Lに対して処理水のSSは4mg/Lであった。処理性能は落ちることなく良好に処理がされた。
[比較例1]
図8に示す、繊維ろ材(密度90kg/m3)を20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するφ160mmのろ過装置を用いて、原水のろ過を行った。微細気泡を発生させる気液混合ノズルが無いこと以外は、実施例1と同じである。
【0066】
原水の通水量は20m3/d、ろ材層内の流速は1000m/dとし、処理水は処理水流出管Fから連続排出した。原水中のSSが繊維ろ材に捕捉されると、ろ過性能が落ちるため、12時ごとに逆洗工程を実施した。逆洗方法は、空気供給管Dから空気を供給して、SSが付着した繊維ろ材をゆらし、繊維ろ材から懸濁物質を剥離した。剥離した懸濁物質は排出管Gより排出した後、再度水張りを行なった。以上の操作を5回繰り返した。なお、1回当たりの水張り量は3m/回なので、水回収率は97%であった。
【0067】
約1ヶ月後のろ過性能は、原水のSS濃度10mg/Lに対して処理水のSSは5mg/Lであった。
[比較例2]
図8に示す、φ0.6mmのアンスラサイトを20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するφ160mmのろ過装置を用いて、原水のろ過を行った。微細気泡を発生させる気液混合ノズルが無いこと以外は、実施例2と同じである。
【0068】
原水の通水量は7m3/d、ろ材層内の流速は350m/dとし、処理水は処理水流出管Fから連続排出した。原水中のSSが繊維ろ材に捕捉されると、ろ過性能が落ちるため、12時ごとに逆洗工程を実施した。逆洗方法は、空気供給管Dから空気を供給して、SSが付着した繊維ろ材をゆらし、繊維ろ材から懸濁物質を剥離した。剥離した懸濁物質は排出管Gより排出した後、再度水張りを行なった。以上の操作を5回繰り返した。なお、1回当たりの水張り量は3m/回なので、水回収率91.4%であった。
【0069】
約1ヶ月後のろ過性能は、原水のSS濃度10mg/Lに対して処理水のSSは3mg/Lであった。
[実施例4]
図3に示す、造粒活性炭(水ing株式会社製「エバダイヤ」)を20L分(見掛け容積)充填してなるろ材層を具備するろ過装置(断面積0.3m×0.6m)を用いて、海水のろ過を行った。海水に塩化第二鉄を3mg/L添加して原水とした。
【0070】
原水の通水量は7m3/d、ろ材層内の流速は350m/dとした。原水の濁度を濁度計により計測し、濁度が30NTUを超えると、気液混合ノズルから微細気泡を発生させ、弁Zを閉じて処理水を処理水流出管Fのバイパス管F−1に通した。濁度が30NTU以下の場合に、微細気泡の供給を停止し、弁Zを開き処理水を処理水流出管Fに通した。
【0071】
原水の濁度は5〜50NTUの範囲で変動したが、処理水濁度は常に5NTU以下であり、安定したろ過を行うことができた。水回収率は97%であった。
[比較例4]
常に、微細気泡を供給しなかった点を除いて実施例4と同様に海水をろ過処理した。
【0072】
原水の濁度は5〜50NTUの範囲で変動し、処理水濁度は1〜20NTUの範囲で変動した。実施例4と比較して、安定した処理水質を得ることができなかった。水回収率は92%であった。
【0073】
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0074】
【表1】
本発明の装置及び方法によれば、懸濁物質除去及び水回収率の双方が向上し、特に従来法の課題であった水回収率を従来法と比較すると、繊維ろ材の場合に97%から99%以上へと2%以上の向上、アンスラサイトの場合に91.4%から97.1%へと約6%の向上、造粒活性炭の場合に92%から97%へと5%の向上を確認できた。さらに、濁度に応じた微細気泡導入の制御及び無機凝集剤を添加した実施例4では、常時安定した懸濁物質除去効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のろ過装置及びろ過方法は、原水の懸濁物質除去処理として、また脱塩処理などの前処理として好適である。本発明の洗浄方法によりろ材の長寿命化が達成され、ろ過処理のコスト削減にも資する。
【符号の説明】
【0076】
1:ろ過装置、2:ろ材層、3:集水装置、4:微細気泡発生装置(気液混合ノズル)、A:原水導入管、B:液体導入管、C:気体導入管、D:空気供給管、E:洗浄水導入管、F:処理水流出管、F−1:バイパス管、G:排出管、H:洗浄水排出管、X:フロス排出管、Z:弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁物質を含む原水から懸濁物質を除去するろ過装置であって、
懸濁物質を捕捉するろ材を充填してなるろ材層と、
当該ろ材層の上部に原水を供給する原水導入管Aと、
原水に微細気泡を導入する微細気泡発生装置と、
当該ろ材層よりも下方に設けられている、処理水を集水する集水装置と、
当該集水装置に空気を供給する空気供給管Dと、
当該集水装置から当該ろ材層よりも上方の位置まで立ち上げられている、当該集水装置から処理水を排出する処理水流出管Fと、
当該ろ材層に洗浄水を上向流で通水する洗浄水導入管Eと、
当該ろ材層よりも上方から洗浄水を排出する洗浄水排出管Hと、
を具備する、ろ過装置。
【請求項2】
さらに、前記ろ材層よりも上方に、フロス排出管Xを具備する、請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記微細気泡発生装置は、前記ろ材層の上部に設けられた気液混合ノズルである、請求項1又は2に記載のろ過装置。
【請求項4】
前記ろ過装置は、前記ろ材層及び前記集水装置を含むろ過部分と、当該ろ過部分の上流側に位置づけられ前記微細気泡発生装置を具備する微細気泡導入部分と、に区画されている、請求項1又は2に記載のろ過装置。
【請求項5】
さらに、前記ろ材層の上流側に設けられている原水の濁度を計測する濁度計と、当該濁度計により計測される濁度に応じて前記微細気泡発生装置を制御する制御機構と、を具備する、請求項1〜4のいずれかに記載のろ過装置。
【請求項6】
さらに、前記処理水流出管Fから前記原水導入管Aに接続されている処理水戻し管と、前記処理水流出管Fに設けられ、前記濁度計により計測される濁度に応じて処理水の流路を切り替える弁と、を具備する、請求項5に記載のろ過装置。
【請求項7】
前記ろ材は、短繊維塊からなる繊維ろ材である、請求項1〜6のいずれかに記載のろ過装置。
【請求項8】
前記ろ材は、好気性微生物を担持してなる生物膜ろ材である、請求項1〜7のいずれかに記載のろ過装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のろ過装置を用いて原水から懸濁物質を除去するろ過方法であって、
(1)懸濁物質を含む原水に微細気泡を導入する工程、
(2)微細気泡が導入された当該原水をろ材層の上部に導入して、下向流でろ材層を通過させて、ろ材層に懸濁物質を捕捉させる工程、
(3)懸濁物質が除去された処理水を集水装置に集水する工程、
(4)処理水流出管を介して処理水をろ過装置外部に排出する工程
を含む、ろ過方法。
【請求項10】
工程(1)の微細気泡の導入は、原水の濁度に応じて制御される、請求項9に記載のろ過方法。
【請求項11】
工程(1)において、原水の濁度に応じて原水に処理水を導入する、請求項9又は10に記載のろ過方法。
【請求項12】
工程(1)において、微細気泡によって懸濁物質を浮上濃縮させ、浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置上部から排出する、請求項9〜11のいずれかに記載のろ過方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載のろ過装置の洗浄方法であって、
(5)原水の導入を停止し、空気供給管Dを介して集水装置に空気を供給し、空気を含む水中にろ材を流動させて、ろ材から懸濁物質を水中に剥離させる工程、
(6)空気供給管Dからの空気の供給を停止し、微細気泡発生装置を作動させて水中に微細気泡を注入して、ろ材から剥離した懸濁物質を浮上濃縮させる工程、及び
(7)洗浄水導入管Eから洗浄水を上向流で通水し、浮上濃縮した懸濁物質を含む水を洗浄水排出管Hから排出させる工程
を含む洗浄方法。
【請求項14】
工程(6)において、浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置上部から排出させる、請求項13に記載の洗浄方法。
【請求項15】
工程(6)において、微細気泡を注入する水に無機凝集剤を添加する、請求項13又は14に記載の洗浄方法。
【請求項1】
懸濁物質を含む原水から懸濁物質を除去するろ過装置であって、
懸濁物質を捕捉するろ材を充填してなるろ材層と、
当該ろ材層の上部に原水を供給する原水導入管Aと、
原水に微細気泡を導入する微細気泡発生装置と、
当該ろ材層よりも下方に設けられている、処理水を集水する集水装置と、
当該集水装置に空気を供給する空気供給管Dと、
当該集水装置から当該ろ材層よりも上方の位置まで立ち上げられている、当該集水装置から処理水を排出する処理水流出管Fと、
当該ろ材層に洗浄水を上向流で通水する洗浄水導入管Eと、
当該ろ材層よりも上方から洗浄水を排出する洗浄水排出管Hと、
を具備する、ろ過装置。
【請求項2】
さらに、前記ろ材層よりも上方に、フロス排出管Xを具備する、請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記微細気泡発生装置は、前記ろ材層の上部に設けられた気液混合ノズルである、請求項1又は2に記載のろ過装置。
【請求項4】
前記ろ過装置は、前記ろ材層及び前記集水装置を含むろ過部分と、当該ろ過部分の上流側に位置づけられ前記微細気泡発生装置を具備する微細気泡導入部分と、に区画されている、請求項1又は2に記載のろ過装置。
【請求項5】
さらに、前記ろ材層の上流側に設けられている原水の濁度を計測する濁度計と、当該濁度計により計測される濁度に応じて前記微細気泡発生装置を制御する制御機構と、を具備する、請求項1〜4のいずれかに記載のろ過装置。
【請求項6】
さらに、前記処理水流出管Fから前記原水導入管Aに接続されている処理水戻し管と、前記処理水流出管Fに設けられ、前記濁度計により計測される濁度に応じて処理水の流路を切り替える弁と、を具備する、請求項5に記載のろ過装置。
【請求項7】
前記ろ材は、短繊維塊からなる繊維ろ材である、請求項1〜6のいずれかに記載のろ過装置。
【請求項8】
前記ろ材は、好気性微生物を担持してなる生物膜ろ材である、請求項1〜7のいずれかに記載のろ過装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のろ過装置を用いて原水から懸濁物質を除去するろ過方法であって、
(1)懸濁物質を含む原水に微細気泡を導入する工程、
(2)微細気泡が導入された当該原水をろ材層の上部に導入して、下向流でろ材層を通過させて、ろ材層に懸濁物質を捕捉させる工程、
(3)懸濁物質が除去された処理水を集水装置に集水する工程、
(4)処理水流出管を介して処理水をろ過装置外部に排出する工程
を含む、ろ過方法。
【請求項10】
工程(1)の微細気泡の導入は、原水の濁度に応じて制御される、請求項9に記載のろ過方法。
【請求項11】
工程(1)において、原水の濁度に応じて原水に処理水を導入する、請求項9又は10に記載のろ過方法。
【請求項12】
工程(1)において、微細気泡によって懸濁物質を浮上濃縮させ、浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置上部から排出する、請求項9〜11のいずれかに記載のろ過方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載のろ過装置の洗浄方法であって、
(5)原水の導入を停止し、空気供給管Dを介して集水装置に空気を供給し、空気を含む水中にろ材を流動させて、ろ材から懸濁物質を水中に剥離させる工程、
(6)空気供給管Dからの空気の供給を停止し、微細気泡発生装置を作動させて水中に微細気泡を注入して、ろ材から剥離した懸濁物質を浮上濃縮させる工程、及び
(7)洗浄水導入管Eから洗浄水を上向流で通水し、浮上濃縮した懸濁物質を含む水を洗浄水排出管Hから排出させる工程
を含む洗浄方法。
【請求項14】
工程(6)において、浮上濃縮した懸濁物質をろ過装置上部から排出させる、請求項13に記載の洗浄方法。
【請求項15】
工程(6)において、微細気泡を注入する水に無機凝集剤を添加する、請求項13又は14に記載の洗浄方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−27862(P2013−27862A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102226(P2012−102226)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(591030651)水ing株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(591030651)水ing株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
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