説明

成形同時転写用二軸延伸ポリエステルフィルム

【課題】 金型錆の発生を抑制し、精細な印刷が可能な成形同時転写用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 共押出法により得られる積層フィルムであって、少なくとも片側の表面を構成する層中に当該層を構成するポリエステルに対して0.1〜10重量%の帯電防止剤を含有し、フィルムの複屈折率(Δn)が0.040以下であり、フィルムの少なくとも片面に塗布層を有することを特徴とする成形同時転写用二軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気製品や自動車部品などの樹脂成形品を装飾するために用いられる成形同時加飾シートの支持体フィルムとして有用な成形同時転写用二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電化製品等の曲面を有するプラスチック成形品の加飾方法の一つとして、成形と同時に転写印刷を施す、いわゆるインモールド成形法が広く利用されている。インモールド成形法とは、あらかじめ離型層、インキ層、接着層等からなる印刷層を基材フィルムの上に積層させた転写シートを作成し、プラスチックの射出成形時の熱と圧力を利用して転写印刷する方法である。
【0003】
転写シートの支持体フィルムが静電気を帯びると、転写シートを製造する工程において印刷工程で図柄にヒゲが発生するトラブルや埃の付着により成形品に品質不良のトラブルを発生させる。
【0004】
従来、支持体フィルムの静電気を抑えるために、例えば特許文献1に記載されているようなカチオンポリマーを含有する塗布剤をフィルム表面に塗布することが行われてきたが、最近、帯電防止塗布層と接せる金型に点状の錆が発生し成形品の品質が低下する問題が発生している。錆発生の原因は必ずしも明確ではないが塗布層に帯電防止機能を持たせるために配合する帯電防止剤に含まれるハロゲン元素が原因となっている可能性が高い。
【特許文献1】特開2006−187951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであり、その解決課題は、金型錆の発生を抑制し、精細な印刷が可能な成形同時転写用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、共押出法により得られる積層フィルムであって、少なくとも片側の表面を構成する層中に当該層を構成するポリエステルに対して0.1〜10重量%の帯電防止剤を含有し、フィルムの複屈折率(Δn)が0.040以下であり、フィルムの少なくとも片面に塗布層を有することを特徴とする成形同時転写用二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンー2,6一ジカルボン酸等のような芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリ
コール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4一シクロヘキサンジメタノール等のようなグリコールとのエステルを主たる成分とするポリエステルである。当該ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接重合させて得られるほか、芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後、重縮合させる方法、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させる等の方法によっても得られる。当該ポリエステルの代表的なものとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6一ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ボリブチレンテレフタレート等が例示される。かかるポリエステルは、共重合されないホモポリマーであってもよく、またジカルボン酸成分の40モル%以下が主成分以外のジカルボン酸成分であり、ジオール成分の40モル%以下が主成分以外のジオール成分であるような共重合ポリエステルであってもよく、またそれらの混合物であってもよい。
【0009】
本発明のフィルムは、共押出積層フィルムであり、帯電防止剤を含有する共押出層を表層に有する。帯電防止剤の例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0010】
第一級アミン塩、第三級アミン、第四級アンモニウム化合物などのカチオン系のもの、硫化油、硫酸化アミド油、硫酸化エステル油、脂肪アルコール硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン系のもの、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪アミンまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、アルキルジエタノールアミンの脂肪酸エステル等の非イオン系のもの、カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等の両性系のものが挙げられる。なかでも帯電防止性能と透明性の観点でアルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸リチウム、アルキルベンゼンスルホン酸リチウムなどが好ましい。
【0011】
本発明のフィルムの帯電防止剤含有共押出層における帯電防止剤の含有量は、当該共押出層を構成するポリエステルに対し0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。帯電防止剤の量が少なすぎると十分な帯電防止機能が発揮されない、一方、帯電防止剤を、10重量%を超えて添加したポリエステル原料を作成することは困難である。
【0012】
また、帯電防止剤を含有する共押出層はフィルムの両面に設けることが好ましい、片面ではフィルムに帯電した静電気が逃げにくい。
【0013】
本発明のフィルムの表面固有抵抗は、通常1×1013Ω/□以下であり、好ましくは1×101210Ω/□以下である。表面固有抵抗が1×1013Ω/□を超えると、帯電防止性能が劣り、工程での不具合を改善できないことがある。
【0014】
本発明のフィルムの複屈折率△nは、0.040以下であり、より好ましくは0.030以下、さらに好ましくは0.020以下である。△nが0.040を超えると、フィルムのフィルム流れ方向(縦)と幅方向(横)の強度差が大きくなり、成形性が悪化する。
【0015】
また、本発明のフィルムの表面粗さRaは40nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは30nm以下、特に好ましくは20nm以下である。Raが40nmを超えると、表面粗さが印刷層に転写されて成形品の表面光沢が失われることがある。
【0016】
本発明において、フィルムの縦方向および横方向の180℃で5分間の熱収縮率は、通常3.0%以下、より好ましくは2.5%以下である。熱収縮率が3.0%を超えると、フィルムヘの印刷工程時や成形時のフィルム収縮により印刷歪みを生じる傾向があるため好ましくない。
【0017】
また、本発明のフィルムには、必要に応じてワックス、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。また、表面粗さに大きな影響を与えない程度であれば、平均粒径が0.1μm以下の不活性粒子を含有していてもよい。
【0018】
本発明のフィルムは、印刷層の離型層と接する表面に塗布層を有する。塗布層を有していない場合、印刷層の離型層と支持体フィルムの接着性が不足し、転写工程で離型層が支持体フィルムから剥がれ成形品に付着し、成形品外観品質を低下させてしまうことがある。
【0019】
この塗布層は、ポリマーおよび架橋剤を主成分として構成される。ポリマーは、水性ポリウレタン、水性ポリエステルおよび水性アクリル樹脂の少なくとも1つからなり、好ましくは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上、さらには40℃以上のものであり、さらに好ましくはポリウレタンの中でもポリエステルポリウレタンであり、カルボン酸残基を持ち、その少なくとも一部はアミンまたはアンモニアを用いて水性化されているものである。また架橋剤は、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられるが、塗布性、耐久接着性の点で、メラミン系樹脂が好ましい。
【0020】
また本発明のフィルムは、上述の塗布層の反対面に、アンチブロッキング性能を有する塗布層を有することが好ましい。アンチブロッキング層がないと支持体フィルムに印刷層を設けて成形同時加飾シートのロールを製造する工程で印刷層の最外面の接着層と支持体フィルムの表面が貼り付いてしまうことがある。このアンチブロッキング塗布層は、水分散可能なポリオレフィン系樹脂および架橋剤を主成分として構成されることが好ましい。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、次の(1)〜(5)に記載の化合物を基本骨
格として有する化合物を挙げることができる。
(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、4一メチル−1−ペンテン等のα一オレフィン系不飽和炭化水素の単独または共重合体からなるワックス、樹脂、ゴム状物。該当する化合物としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1一ブテン、ポリ−4一メチル−1一ペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1一ブテン共重合体、プロピレン−1一ブテン共重合体等が挙げられる。
(2)上記のα−オレフィンの2種以上と共役または非共役ジエンとのゴム状共重合体。該当する化合物としては、例えば、エチレン−プロピレン−ブダジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−1,5−ヘキサジエン共重合体、イソブテン−イソブレン共重合体等が挙げられる。
(3)上記のα−オレフィンと共役または非共役ジエンとの共重合体。該当する化合物としては、例えば、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−エチリデンノルボルネン共重合体等が挙げられる。
(4)上記のα−オレフィン(特にエチレン)と酢酸ビニルとの共重合体およびその完全もしくは部分ケン化物。
(5)上記のα−オレフィンの単独または共重合体に上記の共役もしくは非共役ジエンまたは酢酸ビニル等をグラフトさせたグラフト重合体およびその完全もしくは部分ケン化物。
【0022】
上記のポリオレフィン等を水に溶解または分散させ、かつ、凝集が起こらないように安定化させるためには、ポリオレフィン等の骨格に共重合またはグラフト等により、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基、ポリエーテル、アルキロールアミド基やそれらの塩類等の親水性基を有するビニル化合物を導入することが好ましい。特に親水性基を有するビニル化合物を導入することにより、水に分散または溶解したソープレスあるいは自己乳化型のポリオレフィン等が好ましい。
【0023】
また従来公知の界面活性剤を併用することもできるし、水溶性ポリエステル等の親水性ポリマーを分散化の際に共存させる方法も有効である。
【0024】
本発明で用いる架橋剤は、メラミン系、エポキシ系、アミド系、アクリルアミド系等の化合物、ポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、カルボジイミド化合物等が挙げられる。メラミン系架橋剤としては、アルキロールまたはアルコキシアルキロール化したメラミン系化合物であるメトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン等が例示され、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。エポキシ系架橋剤としては、水溶性あるいは水溶化率50%以上のエポキシ基を持つ化合物が例示される。
【0025】
また、上記塗布層には必要に応じ、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、殺菌剤、無機粒子、有機粒子を添加することができる。
【0026】
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコ一ター、グラビアコ一ター、ロッドコ一ター、エアドクターコ一ターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。塗布層は、ポリエステルフィルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面にのみ形成した場合、その反対面には必要に応じて上記の塗布層と異なる塗布層を形成して他の特性を付与することもできる。なお、塗布剤のフィルムヘの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
【0027】
塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さとして、通常0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.01μm未満の場合は、接着性やアンチブロッキング性が劣ることがある。一方、塗布層の厚さがO.5μmを超える場合は、塗布液の安定性が低下し、塗布ムラ等発生することがある。
【0028】
本発明のフィルムの厚さは、通常10〜200μmであり、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは10〜75μmである。
【0029】
次に本発明のフィルムの製造方法を具体的に説明するが、本発明の構成要件を満足する限り、以下の例示に特に限定されるものではない。
【0030】
本発明のフィルムを製造するときには、乾燥したポリエステルを押出機に供給し、各ポリエステルの融点以上の温度に加熱してそれぞれ溶融させる。次いで、Tダイから溶融シートとして押出す。続いて、溶融シートを回転冷却ドラム上でガラス転位温度未満にまで急冷し、非晶質の未延伸フィルムを得る。このとき、未延伸フィルムの平面性を向上させるために、静電印加密着法や液体塗布密着法等によって、未延伸フィルムと回転冷却ドラムとの密着性を向上させてもよい。そして、ロール延伸機を用いて、未延伸フィルムをその長手方向に延伸(縦延伸)することにより一軸延伸フィルムを得る。このときの延伸温度は、原料レジンのガラス転移温度(Tg)のマイナス10℃からプラス40℃の温度範囲
で延伸する。また、延伸倍率は、好ましくは2.5〜7.0倍、さらに好ましくは3.0〜6.0倍である。さらに、縦延伸を一段階のみで行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。次いで、易接着層を設けるためコーターにより水性塗布剤を塗布する。その後、テンターに導きテンター延伸機を用いて、一軸延伸フィルムをその幅方向に延伸(横延伸)することにより二軸延伸フィルムを得る。このときの延伸温度は、原料レジンのガラス転移温度(Tg)からプラス50℃の温度範囲で延伸する。また、延伸倍率は、好ましくは2.5〜7.0倍、さらに好ましくは3.5〜6.0倍である。さらに、横延伸を一段階のみで行ってもよいし、二段以上に分けて行ってもよい。また縦と横を同時に行う同時二軸延伸を行ってもよい。そして二軸延伸フィルムを熱処理することにより積層フィルムが製造される。このときの熱処理温度は、130〜250℃である。二軸延伸フィルムを熱処理するときには、二軸延伸フィルムに対して20%以内の弛緩を行ってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、金型錆の発生を抑制し、精細な印刷が可能な成形同時転写用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および本発明で用いた測定法および用語の定義は次のとおりである。
【0033】
(1)複屈折率(△n)
アタゴ製アッペ式屈折計を使用した。ヨウ化メチレンをマウントして、試料フィルムを測定面が下になるようにプリズムに密着させ、単色光ナトリウムD線(589nm)を光源として長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(それぞれNx、Ny、Nz)を測定した。得られた値から下記式により各層の複屈折率△nを求める。
△n=Nx−Ny
【0034】
(2)表面固有抵抗
横河ヒューレットパッカード社製の内側電極50mm径、外側電極70mm径の同心円型電極である16008Aを23℃、50%RHの雰囲気下で試料に設置し、100Vの電圧を印加し、同社製の高抵抗計である4329Aで試料の表面固有抵抗を測定する。
【0035】
(3)表面粗さ Ra
小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用い、JIS−B−0601−1982に準じて測定する。ただし、カットオフ値80μm、測定長2.5mmとする。
【0036】
(4)180℃フィルム収縮率
熱風循環炉(田葉井製作所製)を使用し、厚さ25μmの無張力状態のフィルムを180℃の雰囲気中で5分間熱処理し、フィルム縦方向および横方向の熱処理前後の長さを測定し、下記式にて計算し、5本ずつの試料についての平均値で表す。
熱収縮率(%)=(L−L)×100/L
(上記式中、Lは熱処理前のサンプル長さ(mm)、Lは熱処理後のサンプル長さ(mm)を表す)
なお、LがLよりも小さくなる場合(フィルムが膨張する場合)は、熱収縮率の値を−(マイナス)で表した。
【0037】
(4)離型層との接着性
フィルムの離型層形成面にメラミン樹脂を溶解した有機溶媒溶液を塗布し、乾燥厚み1μmの離型層を形成させ、ホットプレスにより金型に乗せて成形したときの離型層の状況を観察する。判定基準は以下のとおりである。
○:剥離なし
△:剥離した面積が10%以下
×:10%を超えて剥離
【0038】
(5)成形性
縦10cm、横10cm、最大深さ1.5cmの金型を用い、フィルムを真空および圧空にて金型内部に呼び成形した後、加熱した樹脂を射出して成形を行った。成型時のフィルム破断頻度によりフィルムの成形性を以下のように評価した。
○:フィルムの破断が全くない
△:時々フィルム破れが1〜2ヶ所発生し、長時間運転時に支障をきたすことがある
×:フィルム破れが頻発し、使用不可能
(6) 塗布層のハロゲン元素
蛍光X線測定装置((株)島津製作所製型式「XRF−1500」)を用いてFP法(Fundamental Parameter Method)により、ハロゲン元素のKα強度を測定した。
○:ハロゲン元素のKα強度ピークなし
×:ハロゲン元素のKα強度ピークあり
【0039】
次に実施例に使用するポリエステル原料について説明する。
・ポリエステルa
常法の重縮合で合成された極限粘度0.65、融点253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0040】
・ポリエステルb
常法の重縮合で合成された、平均粒子径2.5μmの非晶質シリカを0.9重量%含有する極限粘度0.66、融点253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0041】
・ポリエステルc
常法の重縮合で合成された、平均粒子径0.37μmの有機粒子を0.25重量%含有する極限粘度0.62、融点253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0042】
・ポリエステルd
常法の重縮合で合成された極限粘度0.68、融点253℃のポリエチレンテレフタレート樹脂にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを練り込み1.5重量%含有させたものである。
【0043】
・水性塗布剤1
水性塗布剤は下記(a)、(b)、(c)、(d)の化合物を47/20/30/3の重量比で混合した混合物である。
(a):テレフタル酸/イソフタル酸/5一ソジウムスルホイソフタル酸/エチレングリコール/1.4一ブタンジオール/ジエチレングリコールを各々28/20/2/35/10/5のモル比で反応させたポリエステル水分散体
(b):メチルメタクリレート/エチルアタリレート/アクリロニトリル/N−メチロールメタアクリルアミドを各々45/45/5/5のモル比で重合された重合物水分散体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
(c):メラミン系架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン)
(d):平均粒径0.06μmの酸化ケイ素の水分散体
【0044】
・水性塗布剤2
水性塗布剤は下記(a’)、(b’)、(c’)の化合物を65/5/30の重量比で混合した混合物である。
(a’):ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド
(b’):部分ケン化型ポリビニルアルコール(ケン化度:約88モル%)
(c’):メトキシメチロールメラミン(大目本インキ社製 ベッカミンJ1001)
【0045】
実施例1:
ポリエステルdが80重量%とポリエステルbが20重量%の混合物をベント付き2軸押出機(表層を形成)に供給し、ポリエステルaが100重量%を別のベント付き2軸押出機(中間層)に供給して溶融温度280℃で溶融したあと、各押出機からの溶融ポリマーをギヤポンプとフィルターを介してフィードブロックで合流させ、ダイを通してキャスティングドラムに引き取り2種3層の未延伸フィルムを得た。かくして得られた未延伸フィルムを縦延伸ロールに送り込み、まずフィルム温度83℃で3.5倍延伸した後、片面に易接着性の水性塗布剤1を塗布し、テンターに導き95℃で横方向に4.0倍延伸して二軸配向フィルムを得た。次いで、得られた二軸配向フィルムを熱固定ゾーンに導き、220℃で熱処理し、表1に記載した厚みのポリエステルフィルムを得た。
【0046】
実施例2:
ポリエステルbのかわりにポリエステルcを用いたほかは実施例1と同様にして、フィルムを得た。
【0047】
比較例1:
片面に水性塗布剤1を塗布しなかったほかは実施例1と同様にして、フィルムを得た。
【0048】
比較例2:
ポリエステルdのかわりにポリエステルaを用い、帯電防止性の水性塗布剤2を用いたほかは実施例1と同様にして、フィルムを得た。
【0049】
比較例3:
ポリエステルa90重量%とポリエステルb10重量%との混合物をベント付き2軸押出機に供給して溶融温度280℃で溶融したあと、溶融ポリマーをギヤポンプとフィルターを介して、ダイを通してキャスティングドラムに引き取り単層の未延伸フィルムを得た。かくして得られた未延伸フィルムを縦延伸ロールに送り込み、まずフィルム温度83℃で1.1倍延伸した後、テンターに導き95℃で横方向に4.0倍延伸して二軸配向フィルムを得た。次いで、得られた二軸配向フィルムを熱固定ゾーンに導き、220℃で熱処理し、表1に記載した厚みのポリエステルフィルムを得た。
【0050】
以上、得られた結果をまとめて下記表1に示す。
実施例1、2においては、離型層と接着性帯電防止効果に優れ、金型の錆が発生しにくいフィルムである。一方、比較例1は、易接着塗布層がないためアクリル樹脂離型層との易接着性に劣る。比較例2は、ハロゲンイオンを含む帯電防止性塗布層を用いているため、金型に錆が発生する可能性がある。比較例3は、複屈折率が大きく成形性に劣った。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のフィルムは、例えば電気製品や自動車部品などの樹脂成形品を装飾するために用いられる成形同時加飾シートの支持体フィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共押出法により得られる積層フィルムであって、少なくとも片側の表面を構成する層中に当該層を構成するポリエステルに対して0.1〜10重量%の帯電防止剤を含有し、フィルムの複屈折率(Δn)が0.040以下であり、フィルムの少なくとも片面に塗布層を有することを特徴とする成形同時転写用二軸延伸ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2008−246753(P2008−246753A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88948(P2007−88948)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】