説明

成形品トリム加工方法

【課題】金型修正を繰り返すことなく、トリム加工を行うことができる成形品トリム加工方法を得る。
【解決手段】製品設計CADデータに応じて作成した金型によりプレス成形して成形品4を作成し(S50〜S54)、成形品4の形状を3次元測定機6により3次元測定して成形品測定データを得る(S56)。製品設計CADデータと成形品測定データとに基づいて成形品4のトリムライン32,34を成形品測定データの座標系で作成し(S58)、レーザ切断機14上に載置した成形品4の取付姿勢を測定してトリムライン32,34をレーザ切断機14の座標系に変換し(S60,S62)、レーザ切断機14により成形品4をトリムライン32,34に基づいて切断する(S64)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形した成形品をトリムラインに沿って切断する成形品トリム加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1〜3にあるように、プレス成形により成形品を作成する際、板状の素材を絞り金型等により成形し、その後、トリム金型により不要な縁を切断している。更に、ピアス金型等により孔開け加工を施したり、防錆処理を行ったりしている。また、プレス成形する際、試し打ちを行い、金型修正を繰り返して、所定の成形精度を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−285748号公報
【特許文献2】特開2002−369284号公報
【特許文献3】特開2006−5458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした従来の方法では、それぞれの工程毎に金型を用意して、所定の成形精度を得るために、金型修正を繰り返す作業は膨大になる。例えば、絞り金型を修正した場合には、その後工程でのトリム金型をも修正しなければならず、大量生産する場合にはそれでもよいが、少量生産の場合には、各金型の修正作業が繁雑で、生産量にくらべて作業量が膨大すぎるという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、金型修正を繰り返すことなく、トリム加工を行うことができる成形品トリム加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
製品設計CADデータに応じて作成した金型によりプレス成形して成形品を作成し、
前記成形品の形状を3次元測定機により3次元測定して成形品測定データを得て、
前記製品設計CADデータと前記成形品測定データとに基づいて前記成形品のトリムラインを前記成形品測定データの座標系で作成し、
レーザ切断機上に載置した前記成形品の取付姿勢を測定して前記トリムラインを前記レーザ切断機の座標系に変換し、
前記レーザ切断機により前記成形品を前記トリムラインに基づいて切断することを特徴とする成形品トリム加工方法がそれである。
【0007】
前記成形品にマーカを取り付けて前記3次元測定機により前記マーカを含めて前記成形品を3次元測定すると共に、前記レーザ切断機上に前記成形品を前記マーカと共に載置し、前記マーカの測定により前記成形品の取付姿勢を測定して、前記トリムラインを前記レーザ切断機の座標系に変換するようにしてもよい。あるいは、前記レーザ切断機上に載置した前記成形品の取付姿勢を前記成形品で測定して前記トリムラインを前記レーザ切断機の座標系に変換するようにしてもよい。
【0008】
また、前記レーザ切断機に距離を測定するレーザセンサを取り付けて、前記成形品と前記レーザセンサとの相対的な平面上での移動に基づいて、前記レーザ切断機上に載置した前記成形品の取付姿勢を測定するようにしてもよい。更に、前記製品設計CADデータと前記成形品測定データとの形状を重ね合わせて、前記トリムラインを前記成形品測定データ上に作成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成形品トリム加工方法によると、トリム金型を用いずにトリム加工を行うことができ、しかも、レーザ切断機への取付姿勢に応じて、トリムラインをレーザ切断機の座標系に変換するので、金型修正を繰り返すことなく、トリム加工を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態としての成形品の説明図である。
【図2】本実施形態で用いた3次元測定機の概略構成を示す斜視図である。
【図3】本実施形態で用いたレーザ切断機の概略構成を示す斜視図である。
【図4】本実施形態の成形品トリム加工の工程順を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態の成形品を治具に固定した説明図である。
【図6】本実施形態のレーザ切断機での取付姿勢の測定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(イ)に示すように、1,2は左右対称の製品で、製品1,2は図示しないパソコン等からなるCADシステムを用いて製品設計が行われ、CADシステムにより製品設計CADデータが作成される。この製品設計CADデータに応じて、プレス成形用の図示しない金型が製作される。例えば、製品設計CADデータに基づいて、切削CAMデータが作成され、マシニングセンター等の切削機械により金型を作成する。
【0012】
本実施例では、左右対称の製品1,2の二個取りの金型が製作され、この金型をプレス機にセットして、この金型を用いてプレス成形することにより、図1(ロ)に示す成形品4が成形される。この成形品4をトリムライン32,34で切断することにより、製品1,2が得られる。トリムライン32,34は製品設計CADデータに含まれる製品1,2の外形形状から得られる。尚、成形品4は製品1,2の二個取りに限らず、どちらか一方の一個取りや三個以上の多数個取りでもよい。
【0013】
図2は本実施形態で用いる3次元測定機の概略構成を示す斜視図である。本実施形態の3次元測定機6は、成形品4の3次元形状を光学的に測定する形状測定器8を備え、この形状測定器8は、図示しないCCDカメラとフリンジプロジェクターと制御装置とを備えている。
【0014】
形状測定器8は、フリンジプロジェクターが複数の格子を成形品4の表面に投影し、CCDカメラがこの成形品4の外形形状に応じて変形した格子を撮像する。そして、この変形格子と基準格子とに基づいて、成形品4の3次元形状を測定し、成形品測定データを得るものである。
【0015】
3次元測定機6は、形状測定器8を直交するX,Y,Zの3方向に移動するマニプレータ10を備えており、テーブル12上に載置された成形品4を形状測定器8により3次元測定できるように構成されている。尚、3次元測定機6は、フリンジプロジェクターを用いたものに限らず、成形品4の形状を3次元測定できるものであればよく、レーザ光を成形品4に照射して、レーザ光により成形品4を走査し、その反射光を受光して、成形品4の形状を3次元測定するものでもよい。
【0016】
図3は本実施形態で用いるレーザ切断機の概略構成を示す斜視図である。本実施形態のレーザ切断機14は、いわゆる門型のもので、X方向に直線的に移動するテーブル16を備えると共に、門型のフレーム18上をY方向に直線的に移動する移動台20を備えている。移動台20はZ方向に移動し、移動台20にはレーザトーチ22が搭載され、レーザトーチ22を直交するX,Y,Zの3方向に移動して、レーザにより成形品4を切断できるように構成されている。
【0017】
次に、本実施形態の成形品トリム加工方法を工程順に、図4に示すフローチャートによって説明する。
まず、CADシステムを用いて製品設計が行われ、CADシステムにより製品1,2の製品設計CADデータが作成される(S50)。この製品設計CADデータに応じて、プレス成形用の図示しない金型が製作される(S52)。
【0018】
そして、この金型を用いて、成形品4がプレス成形により成形される(S54)。次に、この成形品4を3次元測定機6により3次元測定する(S56)。3次元測定機6による成形品4の成形品測定データは3次元測定機6の座標系の点群データとして得られる。
【0019】
3次元測定の際には、図5(イ)に示すように、成形品4を治具30に固定して、3次元測定機6のテーブル12に載置するようにしてもよい。治具30に成形品4を固定する際には、成形品4の外形形状を形状測定器8により測定できる姿勢となるように固定する。形状測定器8による成形品4の測定範囲にはトリムライン32,34の位置も含まれるように測定する。
【0020】
また、図5(ロ)に示すように、成形品4あるいは治具30に3個のマーカとしての基準球36〜38を取り付けてもよい。3個の基準球36〜38と成形品4とを形状測定器8により3次元測定できるように取り付ける。尚、マーカは基準球36〜38に限らず、3次元座標系を特定できればよく、1個の立体形状の峰や角を利用してもよい。
【0021】
次に、製品設計CADデータに基づいて、成形品4のトリムライン32,34を成形品測定データ上に転写する(S58)。作成された製品設計CADデータには、製品1,2の外縁のデータが含まれており、例えば、製品1,2の外縁がトリムライン32,34となる。トリムライン32,34に沿って成形品4を切断すれば、製品1,2を得ることができる。
【0022】
製品設計CADデータと成形品測定データとをパソコン上で重ね合わせ、形状がベストフィットする状態に重ね合わせて、製品設計CADデータに基づくトリムライン32,34を成形品測定データの座標系上に転写する。製品設計CADデータの座標系と成形品測定データの座標系とは異なるので、形状をベストフィットさせることで、両座標系の差を求めて、製品設計CADデータの座標系のトリムライン32,34を成形品測定データの座標系に変換する。尚、重ね合わせは、ベストフィットに限らず、製品1,2の形状の穴や突部等の特徴点の位置を合わせることにより行ってもよい。
【0023】
成形品4の成形品測定データに製品1,2の製品設計CADデータを重ね合わせた際に、重なり合う箇所の製品1,2の外縁をトリムライン32,34として得ることができる。成形品測定データは点群データであるので、製品1,2の外縁と重なり合う点群を抽出する。この点群を繋ぎ合わせて、直線と円弧とからなる近似したトリムライン32,34を成形品測定データと同一の座標系として得ることができる。尚、成形品測定データの点群データに転写する場合に限らず、重なり合う箇所の製品1,2の外縁に応じて、製品設計CADデータからトリムライン32,34を得るようにしてもよい。
【0024】
次に、成形品4を固定した治具30をレーザ切断機14のテーブル16に載置する。そして、レーザ切断機14上での成形品4の取付姿勢を測定する(S60)。取付姿勢の測定は、レーザ切断機14の移動台20にレーザセンサ40を取り付ける。レーザセンサ40はZ方向の距離を測定するセンサで、テーブル16と移動台20とをX,Y方向に移動して、テーブル16上を走査して、テーブル16上に載置した成形品4や基準球36〜38を測定する。
【0025】
成形品4や基準球36〜38の測定は、成形品4の概略形状や基準球36〜38の中心位置を測定できればよく、テーブル16をX方向に往復動させると共に移動台20をY方向に所定の間隔で移動して、図6(イ)に示すように、成形品4上をレーザセンサ40で走査する。レーザセンサ40で走査することにより、成形品4の概略形状を検出して、レーザ切断機14の座標系でのレーザ切断機14への成形品4の取付姿勢を測定する。
【0026】
あるいは、図6(ロ)に示すように、基準球36〜38上を同様に走査して、レーザ切断機14の座標系での基準球36〜38の中心位置の座標を検出して、成形品4の取付姿勢を測定する。尚、本実施形態では、治具30を用いているが、3次元測定機6やレーザ切断機14への載置に支障がなければ、治具30を用いる必要はない。
【0027】
取付姿勢を測定した後、トリムライン32,34の座標系を成形品測定データの座標系からレーザ切断機14の座標系に変換する(S62)。測定した取付姿勢に基づいて、成形品4の概略形状を検出したときには、成形品4の概略形状データと成形品測定データとを比較して、これらを重なり合わせることで、両座標系の差を求めて、成形品測定データの座標系のトリムライン32,34をレーザ切断機14の座標系に変換する。
【0028】
あるいは、基準球36〜38を用いたときには、レーザ切断機14上で検出した基準球36〜38の中心位置と、3次元測定機6上で測定した成形品測定データの基準球36〜38から算出した中心位置とを比較して、これらを重なり合わせることで、両座標系の差を求めて、成形品測定データの座標系のトリムライン32,34をレーザ切断機14の座標系に変換する。
【0029】
そして、このトリムライン32,34に沿ってレーザトーチ22を移動して、成形品4を切断するレーザ切断機14の制御コードを生成する。この制御コードに基づいて、レーザ切断機14を制御してトリム加工をして、成形品4をトリムライン32,34に沿って切断し、図1(イ)に示すように、製品1,2を得る(S64)。
【0030】
トリム加工した製品1,2の成形精度を測定して、精度が不十分であるときには(S66)、制御コードを修正して、トリムライン32,34を変更し、別の成形品4のトリム加工を行う(S68)。成形精度が十分であるときには、そのときの制御コードに基づいて、次の成形品4のトリム加工を行う。また、同時に、製品1,2に穴42,44等を加工する際には、同時に成形品にレーザ加工により、穴42,44等を加工してもよい。
【0031】
これにより、トリム金型を用いずにトリム加工を行うことができるので、絞り金型を修正した場合には、その後工程でのトリム金型を修正する必要がなく、特に、少量生産の場合に、金型修正を繰り返す必要がなく、作業量を低減できる。しかも、レーザ切断機14への取付姿勢に応じて、トリムライン32,34をレーザ切断機14の座標系に変換して、トリム加工するので、金型修正を繰り返すことなく、トリム加工を行うことができる。
【0032】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0033】
1,2…製品 4…成形品
6…3次元測定機 8…形状測定器
10…マニプレータ 12…テーブル
14…レーザ切断機 16…テーブル
18…フレーム 20…移動台
22…レーザトーチ 30…治具
32,34…トリムライン 36〜38…基準球
40…レーザセンサ 42,44…穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品設計CADデータに応じて作成した金型によりプレス成形して成形品を作成し、
前記成形品の形状を3次元測定機により3次元測定して成形品測定データを得て、
前記製品設計CADデータと前記成形品測定データとに基づいて前記成形品のトリムラインを前記成形品測定データの座標系で作成し、
レーザ切断機上に載置した前記成形品の取付姿勢を測定して前記トリムラインを前記レーザ切断機の座標系に変換し、
前記レーザ切断機により前記成形品を前記トリムラインに基づいて切断することを特徴とする成形品トリム加工方法。
【請求項2】
前記成形品にマーカを取り付けて前記3次元測定機により前記マーカを含めて前記成形品を3次元測定すると共に、前記レーザ切断機上に前記成形品を前記マーカと共に載置し、前記マーカの測定により前記成形品の取付姿勢を測定して、前記トリムラインを前記レーザ切断機の座標系に変換することを特徴とする請求項1に記載の成形品トリム加工方法。
【請求項3】
前記レーザ切断機上に載置した前記成形品の取付姿勢を前記成形品で測定して前記トリムラインを前記レーザ切断機の座標系に変換することを特徴とする請求項1に記載の成形品トリム加工方法。
【請求項4】
前記レーザ切断機に距離を測定するレーザセンサを取り付けて、前記成形品と前記レーザセンサとの相対的な平面上での移動に基づいて、前記レーザ切断機上に載置した前記成形品の取付姿勢を測定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の成形品トリム加工方法。
【請求項5】
前記製品設計CADデータと前記成形品測定データとの形状を重ね合わせて、前記トリムラインを前記成形品測定データ上に作成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の成形品トリム加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−20297(P2012−20297A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158153(P2010−158153)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000150213)株式会社オプトン (16)
【Fターム(参考)】