成膜方法、及び成膜装置
【課題】液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させる成膜方法及び成膜装置を提供する。
【解決手段】+X方向に配列する複数のノズルの各々から対向する複数の目標点Tの各々に実質的に同じタイミングで液滴を着弾させることによって+Xに連続する液膜Fを形成する。各熱伝導部材26が、高伝導領域Rcと対向する加熱面12a上の位置に配設されて、加熱面12aからの熱量を、当接する基板Sの裏面に供給する。そして、+X方向における所定幅の両端部分と、+Y方向に沿う液膜Fの両端部分とがそれぞれ中間部分よりも低温になる温度分布を液膜Fに形成して液膜Fを乾燥する。
【解決手段】+X方向に配列する複数のノズルの各々から対向する複数の目標点Tの各々に実質的に同じタイミングで液滴を着弾させることによって+Xに連続する液膜Fを形成する。各熱伝導部材26が、高伝導領域Rcと対向する加熱面12a上の位置に配設されて、加熱面12aからの熱量を、当接する基板Sの裏面に供給する。そして、+X方向における所定幅の両端部分と、+Y方向に沿う液膜Fの両端部分とがそれぞれ中間部分よりも低温になる温度分布を液膜Fに形成して液膜Fを乾燥する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法、及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低温焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics )からなる多層基板は、優れた高周波特性と高い耐熱性を有するため、高周波モジュールの基板やICパッケージの基板等に広く利用される。LTCC多層基板に用いられる配線等の膜パターンの製造方法としては、生産性の向上と低コスト化とを図るために、インクジェット法が注目されている。インクジェット法は、配線材料を含む液状体を液滴にして吐出する液滴吐出ヘッドを用い、液滴吐出ヘッドと基板とを主走査方向に相対移動させながら液滴吐出ヘッドに液滴を吐出させる。配線材料を含む複数の液滴は、基板の主走査方向に沿って順に合一することにより、主走査方向に連続するライン状の液膜を形成する。インクジェット法は、このライン状の液膜を乾燥することによりパターンを形成する。
【0003】
特許文献1は、ライン状の液膜の表面に温度勾配を与え、主走査方向を挟んで両側にそれぞれ高温側の表面と低温側の表面を設ける。温度勾配を有する液膜は、自身の表面に表面張力の分布を形成し、内部にマランゴニ対流を発生させる。液膜の高温側の端部から流出する熱毛管流は、液膜に与えられる温度勾配によって、低温側の端部に届く前に基板に向けて下降する。この結果、低温側の端部には、マランゴニ対流の流路に含まれない配線材料が析出し、この析出する配線材料によって液膜の濡れ広がりがピン止めされる。一方、高温側の端部には、配線材料が対流によって運搬され続けるため、配線材料が析出し難くなる。そのため、液膜の乾燥が進むに連れて、液膜の高温側が低温側の端部に向けて収縮し、液膜の低温側の端部にのみ配線材料が析出する。この結果、液膜は、自身の幅よりも狭い線幅の配線パターンを形成する。
【0004】
上記インクジェット法は、液晶表示装置に利用される配向膜の成膜方法としても注目されている(例えば、特許文献2)。図10(a)、(b)と図11(a)、(b)は、それぞれ配向膜の成膜工程を模式的に示す平面図及び側面図である。配向膜の成膜工程においては、基板Sの上に液滴Dを吐出して液膜Fを形成する液滴吐出処理と、液膜Fに含まれる溶媒等を蒸発させて液膜Fを乾燥する乾燥処理とが行われる。
【0005】
図10に示すように、液滴吐出処理においては、基板Sの表面(以下単に、吐出面Saという。)に、上下方向に延びる複数の吐出領域Rが左右方向に連続して仮想分割される。液滴吐出ヘッド20は、最も左側の吐出領域Rの上から順に矢印方向に沿って移動し、配向膜材料を含む複数の液滴Dを各吐出領域Rの全体に吐出し、これにより複数の吐出領域Rの各々に帯状の液膜Fを形成する。すなわち、液滴吐出ヘッド20は、マルチスキャンにより各液膜Fを形成する。あるいは、図11に示すように、左右方向に配列する複数の液滴吐出ヘッド20が、それぞれ各吐出領域Rの全体にわたり液滴Dを吐出し、これにより複数の吐出領域Rの各々に液膜Fを形成する。すなわち、複数の液滴吐出ヘッド20は、シングルスキャンにより各液膜Fを形成する。複数の液膜Fの各々は、液滴吐出処理の処理時間の経過に伴い、それぞれ隣接する他の液膜Fと合一して基板Sの全体にわたり膜を形成する。
【特許文献1】特開2005−152758号公報
【特許文献2】特開2006−15271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記マルチスキャン方式を用いて膜を形成するとき、隣接する液膜Fの境界では、液滴Dの着弾するタイミングが、液滴吐出ヘッドの1回の走査時間分だけ異なる。また、上記シングルスキャン方式を用いる場合であっても、隣接する液膜Fの境界では、液滴Dの着弾するタイミングが、各液滴吐出ヘッド20の間の距離の走査時間分だけ異なる。
【0007】
各液膜Fの縁部(例えば、左右方向の両端部分Fe)においては、それぞれ単位容積当たりの表面積が大きくなるため、蒸発成分の蒸発確率が高くなり、液膜Fの乾燥速度を中央部分Fcの乾燥速度よりも速くする。この結果、液膜Fの両端部分Feでは、液状体の増粘によって自身の内部に配向膜材料の流動を発生させて、配向膜材料の濃度を局所的に高くしてしまう。この結果、合一した液膜Fを乾燥すると、乾燥後の膜には、各液膜Fの両端部分Feに膜厚段差(図10及び図11に示す濃淡)が形成されてしまう。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させる成膜方法及び成膜装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の成膜方法は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、前記対象物上の点列の各点に前記液滴を着弾させることによって前記点列上に液膜を形成する工程と、前記点列の列方向における所定幅の両端部分が前記列方向の中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を乾燥する工程とを有する。
【0010】
本発明の成膜方法によれば、列方向に沿う座標系において、液膜の両端部分は、中央部分に比べて低温になる分だけ、液状体の蒸発確率を低くする。したがって、液膜の両端部分は、膜材料の偏りを回避することができる。この結果、本発明の成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0011】
この成膜方法において、前記液膜を形成する工程は、前記列方向に配列する複数のノズルの各々から前記点列の各点に同じタイミングで前記液滴を着弾させることにより前記液膜を形成する。
【0012】
この成膜方法によれば、配列する複数のノズルからの液滴は、実質的に同じタイミングで着弾して、列方向に連続する液膜を形成する。そして、列方向に連続する液膜は、その両端部分が低温になる分だけ、膜厚均一性を向上する。したがって、配列する複数のノズルは、液滴の吐出タイミングを変更することなく、膜厚均一性を向上することができる。よって、この成膜方法は、膜厚均一性を、より簡便な構成の下で向上することができる。
【0013】
この成膜方法は、前記液膜を形成する工程が、前記列方向に配列する複数のノズルの各々から前記点列の各点に同じタイミングで前記液滴を着弾させるとともに、前記複数のノズルと前記対象物とを前記列方向と交差する方向に相対移動させることにより前記交差する方向に連続する液膜を形成し、前記液膜を乾燥する工程が、前記列方向における所定幅の両端部分と、前記交差する方向における所定幅の両端部分とが前記中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を乾燥する構成が好ましい。
【0014】
この成膜方法によれば、液膜の全周縁が、中央部分に比べて低温になる。したがって、液膜は、膜材料の偏りを全周縁にわたって回避させることができる。この結果、この成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
【0015】
この成膜方法は、前記液膜を乾燥する工程において、前記両端部分と前記中間部分との間が、それぞれ前記中間部分よりも高温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を
乾燥する構成が好ましい。
【0016】
この成膜方法によれば、液膜の両端部分の近傍は、中央部分に比べて高温になる分だけ、蒸発確率を高くする。したがって、両端部分の近傍の膜材料が、両端部分に流動し難くなる。よって、この成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
【0017】
本発明の成膜方法は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列に第一液膜を形成し、前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成する工程と、前記第一点列の座標系における前記第一膜の膜厚分布を計測する工程と、対象物上の第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列に第二液膜を形成する工程と、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に厚い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも低温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する工程とを有する。
【0018】
本発明の成膜方法によれば、第二液膜は、所定温度の乾燥により相対的に厚い膜になり得る座標の温度を、相対的に低温に補正する。したがって、第二液膜は、相対的に厚膜になり得る部分の蒸発確率を低くすることができ、膜材料の偏りを回避させることができる。よって、本発明の成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0019】
本発明の成膜方法は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列に第一液膜を形成し、前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成する工程と、前記第一点列の座標系における前記第一膜の膜厚分布を計測する工程と、対象物上の第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列に第二液膜を形成する工程と、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に薄い膜厚値の座標を、前記所定温度より高温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する工程とを有する。
【0020】
本発明の成膜方法によれば、第二液膜は、所定温度下の乾燥により相対的に薄い膜になり得る座標の温度を、相対的に高温に補正する。したがって、第二液膜は、相対的に膜になり得る部分の蒸発確率を低くすることができ、膜材料の偏りを回避させることができる。よって、本発明の成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0021】
本発明の成膜装置は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部とを有する成膜装置であって、前記液滴吐出ヘッドは、前記対象物上の点列の各点に前記液滴を着弾させることによって前記点列上に液膜を形成し、前記乾燥部は、前記列方向における所定幅の両端部分が前記列方向の中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成することにより前記対象物に前記膜を形成する。
【0022】
本発明の成膜装置によれば、乾燥部は、液膜の両端部分の温度を中央部分に比べて低くすることにより、両端部分の蒸発確率を低くする。したがって、液膜の両端部分は、膜材
料の偏りを回避することができる。この結果、本発明の成膜装置は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0023】
この成膜装置は、前記乾燥部が、前記対象物と対向する加熱面を有するヒータと、前記中間部分に対向する前記加熱面上の領域に配置されて、前記対象物と当接することにより、前記加熱面から受ける熱を前記中間部分に伝導する熱伝導部材とを有する構成であってもよい。
【0024】
この成膜装置によれば、乾燥部は、熱伝導部材を介する中央部分の加熱により、両端部分の温度を低くする。したがって、この成膜装置は、加熱面と対象物との間に熱伝導部材を挟入するだけで、膜材料の偏りを回避することができる。よって、この成膜装置は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、より簡単な構成の下で向上させることができる。
【0025】
この成膜装置において、前記乾燥部は、前記列方向に配列して前記対象物と熱的に接触する複数のヒータを有する。
この成膜装置によれば、列方向に配列される複数のヒータの各々が、両端部分と中間部分との間の温度差を形成する。したがって、成膜装置は、両端部分と中間部分との間の温度差を、異なるヒータにより形成するため、液膜に与える温度分布をより高い精度の下で形成することができる。
【0026】
本発明の成膜装置は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部と、前記液滴吐出ヘッドと前記乾燥部とを制御する制御部とを有する成膜装置であって、前記制御部は、前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列上に第一液膜を形成し、前記乾燥部を駆動して前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成し、前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上に第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列上に第二液膜を形成し、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記乾燥部を駆動して前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に厚い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも低温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する。
【0027】
本発明の成膜装置によれば、第二液膜は、所定温度の乾燥により相対的に厚い膜になり得る座標の温度を、相対的に低温に補正する。したがって、第二液膜は、相対的に厚膜になり得る部分の蒸発確率を低くすることができ、膜材料の偏りを回避させることができる。よって、本発明の成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0028】
本発明の成膜装置は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部と、前記液滴吐出ヘッドと前記乾燥部とを制御する制御部とを有する成膜装置であって、前記制御部が、前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列上に第一液膜を形成し、前記乾燥部を駆動して前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成し、前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上に第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列上に第二液膜を形成し、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記乾燥部を駆動して前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に薄い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも高温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する。
【0029】
本発明の成膜装置によれば、第二液膜は、所定温度の乾燥により相対的に薄い膜になり得る座標の温度を、相対的に低温に補正する。したがって、第二液膜は、相対的に厚膜になり得る部分の蒸発確率を低くすることができ、膜材料の偏りを回避させることができる。よって、本発明の成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第一実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。図1は、成膜装置としての液滴吐出装置10を示す斜視図である。
【0031】
図1において、液滴吐出装置10は、一つの方向に延びる基台11と、基台11の上に搭載されて基板Sを載置する基板ステージ12とを有する。基板ステージ12は、基板Sの一つの面を上に向けた状態で基板Sを位置決め固定して、基台11の長手方向に沿って基板Sを搬送する。基板Sとしては、グリーンシート、ガラス基板、シリコン基板、セラミック基板、樹脂フィルム等の基板が用いられる。
【0032】
本実施形態においては、基板Sの上面を吐出面Saという。吐出面Saは、所望の膜を形成するための面であり、液滴を着弾させるための位置を目標点として有する。基板Sが搬送される方向であって、図1において左上方向に向かう方向を+Y方向という。また、+Y方向と直交する方向であって、図1において右上方向に向かう方向を+X方向とし、基板Sの法線方向をZ方向という。
【0033】
液滴吐出装置10は、基台11を跨ぐ門型のガイド部材13と、ガイド部材13の上側に配設されるインクタンク14とを有する。インクタンク14は、液状体としてのインクIkを貯留するとともに、貯留するインクIkを所定圧力で導出する。インクIkとしては、膜材料としての配向膜材料を分散させた配向膜用インク、ITO(Indium Tin Oxide
)微粒子を分散させたITOインク等のインクが用いられる。
【0034】
ガイド部材13は、キャリッジ15を+X方向及び+X方向の反対方向(−X方向)に沿って移動可能に支持する。キャリッジ15は、液滴吐出ヘッド20を搭載して+X方向及び−X方向に沿って移動する。キャリッジ15は、基板Sが+Y方向に搬送されるときに+X方向あるいは−X方向に移動し、液滴吐出ヘッド20を目標点の搬送経路の上に配置する。なお、基板Sが+Y方向及び−Y方向に搬送される動作を、主走査という。また、液滴吐出ヘッド20が+X方向及び−X方向に搬送されて目標点の搬送経路の上に配置される動作を、副走査という。
【0035】
次に、液滴吐出ヘッド20について以下に説明する。図2は、液滴吐出ヘッド20を基板ステージ12から見た斜視図である。図3は、液滴吐出ヘッド20の内部を模式的に示す図である。図4は、液滴吐出ヘッド20を用いて吐出する液滴Dの吐出位置を示す平面図である。
【0036】
図2において、液滴吐出ヘッド20は、+X方向に延びるヘッド基板21と、ヘッド基板21に搭載されるヘッド本体22とを有する。ヘッド基板21は、キャリッジ15に位置決め固定されて、基板Sに対して+X方向及び−X方向に沿って移動する。ヘッド基板21は、その一側端に入力端子21aを有して、入力端子21aに入力される各種の駆動信号をヘッド本体22に出力する。
【0037】
ヘッド本体22は、基板Sと対向する側面の+X方向の略全幅にわたりi個(iは1以
上の整数)のノズルNを有する。各ノズルNは、それぞれZ方向に延びる円形孔であって、+X方向に沿って所定のピッチで形成される。ヘッド本体22は、例えば+X方向に沿って141μmのピッチで配列する180個のノズルNを有する。本実施形態においては、ノズルNの形成ピッチを、ノズルピッチDxとし、各ノズルNからなるノズル列の幅をノズル列幅Rwという。なお、図2では、ノズルNの配置を説明するためにノズルNの数量を簡略化して示す。
【0038】
図3において、ヘッド本体22は、ノズルNごとに、一つのキャビティ24と、該キャビティ24の内部に圧力を与える一つの圧力発生素子25とを有する。すなわち、ヘッド本体22は、ノズルNの数量と同じi個のキャビティ24と、i個の圧力発生素子25とを有する。各キャビティ24と各圧力発生素子25とは、それぞれノズルNの直上に配設されることにより、該ノズルNに対応付けられる。各キャビティ24は、それぞれ共通するインクタンク14に接続されてインクタンク14からのインクIkを収容し、連通するノズルNにインクIkを供給する。各ノズルNは、それぞれ連通するキャビティ24からのインクIkを受けて、自身の開口に気液界面(以下単に、メニスカスという。)Mを形成する。
【0039】
各圧力発生素子25は、それぞれ接続されるキャビティ24の内部に所定圧力を与えて、該キャビティ24の内部の圧力を増大及び減少させることにより、該キャビティ24に連通するノズルNのメニスカスMを振動させる。圧力発生素子25としては、例えばキャビティ24の容積を機械的に拡大及び縮小させる圧電素子、あるいはキャビティ24の温度を局所的に上昇及び下降させる抵抗加熱素子を用いることができる。
【0040】
吐出面Saの目標点Tが、選択されるノズルN(以下単に、選択ノズルという。)の直下に位置するとき、選択ノズルに連通するキャビティ24は、対応する圧力発生素子25の駆動力を受けることにより、選択ノズルのメニスカスMを振動させて、インクIkの一部を所定重量の液滴Dにして選択ノズルから吐出させる。ノズルNから吐出される液滴Dは、吐出面Saの法線に沿って飛行して目標点Tに着弾する。
【0041】
図4において、基板Sの吐出面Saは、一点鎖線に示すように、+Y方向に延びる複数の吐出領域Rを有する。各吐出領域Rは、それぞれ+X方向にノズル列幅Rwの幅を有する領域であり、ドットパターン格子SLによって仮想分割される。各ドットパターン格子SLにおいて、+Y方向の格子間隔と+X方向の格子間隔は、それぞれ液滴Dの吐出間隔によって規定される。例えば、各ドットパターン格子SLの+Y方向の格子間隔は、それぞれ液滴吐出ヘッド20の吐出周期と基板Sの主走査速度との積によって規定される。各ドットパターン格子SLの+X方向の格子間隔は、それぞれノズルピッチDxによって規定される。
【0042】
液滴Dを吐出するか否かの選択は、各ドットパターン格子SLの格子点ごとに規定される。本実施形態では、各吐出領域Rにおける全ての格子点が目標点Tとして選択される。なお、図4では、ドットパターン格子SLの位置を説明するため、ドットパターン格子SLの格子間隔を拡大して示す。
【0043】
液滴Dの吐出処理を実行するとき、液滴吐出ヘッド20の各ノズルNは、それぞれ+Y方向に連続する一群の目標点Tの延長線上に配置される。基板Sが主走査されるとき、液滴吐出ヘッド20の各ノズルNは、それぞれ+X方向に配列するi個の目標点Tに対して同じタイミングで対向する。すなわち、+X方向に配列するi個の目標点Tには、それぞれ実質的に同じタイミングで液滴Dが着弾する。着弾するi個の液滴Dは、列方向としての+X方向に沿って合一して+X方向に連続する液膜Fを形成する。なお、実質的に同じタイミングとは、+X方向に配列するi個の目標点Tにおいて、着弾するi個の液滴Dが
+X方向に連続する液膜を形成するタイミングであって、隣接する液滴Dの間の着弾タイミングの差異によって該液滴Dの間に膜厚段差を来たさないタイミングである。
【0044】
実質的に同じタイミングで着弾する一群の液滴D(i個の液滴D)は、後続する一群の液滴Dが順に−Y方向に着弾することにより、+Y方向に沿って延びる帯状の液膜Fを形成する。
【0045】
次に、基板ステージ12について以下に説明する。図5(a)、(b)は、それぞれ基板Sを載置する状態の基板ステージ12を示す平面図及び側断面である。
図5において、基板ステージ12は、基板ステージ12の全体を加熱するヒータHを有する。ヒータHは、液滴Dの吐出処理を実行するとき、所定の駆動信号を受けて基板ステージ12の上面(以下単に、加熱面12aという。)の全体を昇温して所定温度に維持する。基板ステージ12は、加熱面12aに複数の熱伝導部材26を有する。本実施形態においては、基板ステージ12、ヒータH、及び熱伝導部材26によって乾燥部が構成される。
【0046】
各熱伝導部材26は、それぞれ熱伝導性の高い金属材料からなる板部材であって、+Y方向に延びる帯状を呈する。各熱伝導部材26は、加熱面12aに対して配置変更を可能に位置決めされている。各熱伝導部材26の上面(以下単に、伝導面26aという。)は、それぞれ基板Sの裏面に対して熱的に高い結合を有する平滑面である。各熱伝導部材26は、それぞれ加熱面12aから受ける熱エネルギーを、自身の伝導面26aと当接する基板Sの領域に伝達する。熱伝導部材26の+X方向の幅は、それぞれノズル列幅Rwよりも若干小さい幅(以下単に、伝導幅Cwという。)を有する。各熱伝導部材26は、それぞれ基板Sを載置するとき、Z方向から見て、各吐出領域Rの内側に配設されて、これによって各吐出領域Rの+X方向及び−X方向の両端部分、+Y方向及び−Y方向の両端部分に、それぞれ伝導面26aから離間する領域を形成する。
【0047】
本実施形態においては、吐出領域Rであって、Z方向から見て伝導面26aと重畳する領域を、中間部分としての高伝導領域Rcという。また、吐出領域Rであって、高伝導領域Rcを除く領域を、すなわち高伝導領域Rcの全外周を囲う領域を、低伝導領域Reという。+X方向に連続するi個の目標点Tの内でj個(jは1以上の整数)の目標点Tは、それぞれ高伝導領域Rcに配置される。また、+X方向に連続するi個の目標点Tの内でi−j個の目標点Tは、それぞれ低伝導領域Reに配置される。
【0048】
液滴Dの吐出処理を実行するとき、加熱面12aは、ヒータHからの熱エネルギーを各熱伝導部材26に供給する。各熱伝導部材26は、それぞれ加熱面12aからの熱エネルギーを、伝導面26aと当接する基板Sに供給する。基板Sは、伝導面26aからの熱エネルギーを吸収して昇温する。なお、図5(b)においては、高温の領域に薄いグラデーションを付し、低温の領域に濃いグラデーションを付して示す。
【0049】
この際、基板Sの温度は、伝導面26aに近くなるほど高くなり、反対に、伝導面26aから離れるほど低くなる。各吐出領域Rにおいては、それぞれ伝導面26aに近い高伝導領域Rcが相対的に高温になり、反対に、伝導面26aから遠い低伝導領域Reが相対的に低温になる。各高伝導領域Rcは、それぞれ伝導面26aからの熱エネルギーを受けて、自身の上にあるインクIkに対して相対的に高い熱エネルギーを供給する。反対に、各低伝導領域Reは、それぞれ自身の上にあるインクIkに対して相対的に低い熱エネルギーを供給する。
【0050】
基板Sが主走査されるとき、液滴吐出ヘッド20は、+X方向に連続するi個の目標点Tに、すなわち高伝導領域Rcにあるj個の目標点Tと、低伝導領域Reにあるi−j個
の目標点Tとに、それぞれ同じタイミングで液滴Dを着弾させる。同じタイミングで着弾するi個の液滴Dは、+X方向に沿って合一して+X方向に連続する液膜Fを形成する。この際、i−j個の液滴Dにより形成される液膜Fにおいては、+X方向における両端部分が、中央部分に比べて、単位容積当たりの表面積を小さくする。一方、この液膜Fの両端部分は、液膜Fの中央部分に比べて、基板Sから受ける熱エネルギーを小さくするため、その温度を低くする。
【0051】
この結果、液膜Fの両端部分及び中央部分では、蒸発成分の蒸発確率が略同じになり、液膜Fの両端部分では、膜材料の流動が抑制される。したがって、液膜Fは、その膜材料の濃度を均一にすることができ、乾燥後の液膜Fは、両端部分における膜材料の流動を抑制する分だけ、均一な膜厚を呈する。
【0052】
なお、本発明において、高伝導領域Rc及び低伝導領域Reのサイズは、インクIkの材料、吐出面Saの表面状態、ヒータHの出力等に応じて適宜選択される。すなわち、高伝導領域Rc及び低伝導領域Reのサイズは、+X方向に沿う液膜Fの両端部分及び中央部分において蒸発確率を略同じにするように適宜選択される。
【0053】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置10の電気的構成を図5に従って説明する。図5は、液滴吐出装置10の電気的構成を示す電気ブロック回路図である。
図5において、制御部30は、CPU、ROM、RAM等を有する。制御部30は、ROMとRAMに格納される各種制御プログラムと各種データに従って、基板ステージ12を用いる基板Sの主走査、キャリッジ15を用いる液滴吐出ヘッド20の副走査、液滴吐出ヘッド20を用いる液滴吐出処理、及びヒータHを用いる液膜Fの乾燥処理を実行する。
【0054】
制御部30は、各種操作スイッチやディスプレイを有する入出力装置31に接続されて、入出力装置31から入力される各種信号を受信する。制御部30は、例えば入出力装置31から液滴吐出処理と乾燥処理を実行するための既定形式のプロセスデータIpを受信する。
【0055】
制御部30は、入出力装置31からのプロセスデータIpを受信すると、プロセスデータIpに所定の展開処理を施して、ドットパターンデータDPDを生成する。ドットパターンデータDPDは、ドットパターン格子SLの格子点の数量と同じビット長からなるデータであり、ドットパターン格子SLの格子点ごとに液滴Dを吐出するか否かを規定するデータである。すなわち、ドットパターンデータDPDは、各ビットの値(“0”もしくは“1”)に応じて圧力発生素子25のオンあるいはオフを規定するデータである。
【0056】
また、制御部30は、入出力装置31からのプロセスデータIpを受信すると、プロセスデータIpに所定の展開処理を施して、加熱面12aの目標温度に関するデータ(以下単に、目標温度データHCDという。)を格納する。
【0057】
制御部30は、基板検出装置32に接続されている。基板検出装置32は、基板Sの端縁を検出する撮像機能等を有する。制御部30は、基板検出装置32からの検出信号を受けて、液滴吐出ヘッド20に対する基板Sの相対位置、すなわち液滴吐出ヘッド20に対する各目標点Tの相対位置を演算する。
【0058】
制御部30は、基板ステージ駆動回路33に接続されて、基板ステージ駆動回路33に対応する制御信号を基板ステージ駆動回路33に入力する。基板ステージ駆動回路33は、制御部30からの制御信号に応答して、基板ステージ12を移動させるためのステージモータMSを正転又は逆転させる。基板ステージ駆動回路33は、ステージモータエンコ
ーダESからの検出信号を受信してステージモータMSの回転方向及び回転数を演算する。制御部30は、基板ステージ駆動回路33からの演算結果を用いて基板ステージ12の移動方向及び移動量を演算し、吐出面Saの目標点TがノズルNの直下に位置するか否かを判断する。制御部30は、各目標点TがノズルNの直下に位置するたびにタイミング信号LTを生成し、吐出ヘッド駆動回路35にタイミング信号LTを出力する。
【0059】
制御部30は、キャリッジ駆動回路34に接続されて、キャリッジ駆動回路34に対応する制御信号をキャリッジ駆動回路34に入力する。キャリッジ駆動回路34は、制御部30からの制御信号に応答して、キャリッジ15を移動させるためのキャリッジモータMCを正転又は逆転させる。キャリッジ駆動回路34は、キャリッジモータエンコーダECからの検出信号を受信してキャリッジモータMCの回転方向及び回転数を演算する。制御部30は、キャリッジ駆動回路34からの演算結果を用いてキャリッジ15の移動方向及び移動量を演算し、各目標点Tの主走査経路の上に各ノズルNを配置する。
【0060】
制御部30は、吐出ヘッド駆動回路35に接続されて、吐出ヘッド駆動回路35にタイミング信号LTと、圧力発生素子25を駆動するための駆動波形信号COMとを入力する。また、制御部30は、ドットパターンデータDPDをシリアル転送するためのシリアルパターンデータSIを生成し、吐出ヘッド駆動回路35にシリアルパターンデータSIをシリアル転送する。吐出ヘッド駆動回路35は、制御部30からのシリアルパターンデータSIを受信してシリアル/パラレル変換し、i個のノズルN、すなわちi個の圧力発生素子25の各々に対してドットパターンデータDPDの各ビット値を対応させたパラレルパターンデータを生成する。吐出ヘッド駆動回路35は、制御部30からのタイミング信号LTを受けるとき、パラレルパターンデータに基づいて吐出動作の選択される圧力発生素子25に駆動波形信号COMを供給する。本実施形態において、吐出ヘッド駆動回路35は、タイミング信号LTを受けるとき、全ての圧力発生素子25に駆動波形信号COMを供給する。これによって、制御部30は、+X方向に沿って連続する各目標点Tに、それぞれ実質的に同じタイミングで液滴Dを着弾させる。
【0061】
制御部30は、ヒータ駆動回路36に接続されている。制御部30は、目標温度データHCDを参照して、加熱面12aの温度を目標温度にするためのヒータ駆動信号SHを生成し、ヒータ駆動回路36にヒータ駆動信号SHを出力する。ヒータ駆動回路36は、制御部30からのヒータ駆動信号SHに応答してヒータHを通電して駆動させ、これによって加熱面12aを昇温して所定温度に維持する。
【0062】
次に、液滴吐出装置10を用いて成膜する方法について説明する。
まず、図1に示すように、基板ステージ12の上には、吐出面Saを上側にする基板Sが載置される。このとき、基板Sの+Y方向の端部は、ガイド部材13の−Y方向(+Y方向の反対方向)に配置される。制御部30は、入出力装置31からプロセスデータIpを受信すると、プロセスデータIpを用いてドットパターンデータDPD及び目標温度データHCDを生成して格納する。そして、制御部30は、目標温度データHCDを参照してヒータ駆動信号SHを生成し、ヒータ駆動回路36を介してヒータHを駆動する、すなわち加熱面12aの温度を目標温度に維持する。これによって、吐出領域Rにおいては、伝導面26aに近い高伝導領域Rcが相対的に高温になり、反対に、伝導面26aから遠い低伝導領域Reが相対的に低温になる。
【0063】
制御部30は、加熱面12aの温度が目標温度に到達すると、キャリッジ駆動回路34を介してキャリッジモータMCを駆動し、各目標点Tの主走査経路の上に各ノズルNを配置する。そして、制御部30は、基板ステージ駆動回路33を介してステージモータMSを駆動して基板Sの主走査を開始する。
【0064】
制御部30は、基板検出装置32からの検出信号を受けて液滴吐出ヘッド20に対する各目標点Tの相対位置を演算し、基板ステージ駆動回路からの演算結果を用いて、以降の相対位置を演算する。制御部30は、液滴吐出ヘッド20に対する各目標点Tの相対位置に基づいて、各目標点TがノズルNの直下にあるか否かを判断し、各目標点TがノズルNの直下に位置するたびにタイミング信号LTを生成して、吐出ヘッド駆動回路35にタイミング信号LTを出力する。すなわち、制御部30は、+X方向に連続するi個の目標点Tがi個のノズルNの直下に位置するたびに、該i個の目標点Tに対して、実質的に同じタイミングの下で液滴Dを着弾させる。同じタイミングで着弾するi個の液滴Dは、+X方向に沿って合一して+X方向に連続する液膜Fを形成する。
【0065】
この際、液膜Fの+X方向に沿う両端部分と中央部分が、それぞれ低伝導領域Reと高伝導領域Rcからの熱エネルギーを受ける、すなわち相対的に低温と高温の領域になる。この結果、液膜Fにおいては、+X方向に沿う蒸発確率が均一になるため、+X方向に沿う膜材料の濃度が均一になり、ひいては乾燥後の膜厚値が均一になる。
【0066】
以後、同様に、制御部30は、基板Sの主走査を繰り返し、+X方向に連続するi個の目標点Tがi個のノズルNの直下に位置するたびに、該i個の目標点Tに対して一斉に液滴Dを着弾させる。これによって、制御部30は、各液膜Fにおける膜材料の均一化を図ることができ、ひいては合一した液膜Fからなる膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0067】
次に、上記のように構成した第一実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記第一実施形態においては、基板Sの上に+X方向に沿って配列する複数の目標点Tの各々に液滴Dを着弾させることによって+Xに連続する液膜Fを形成する。そして、+X方向における所定幅の両端部分が+X方向における中間部分よりも低温になる温度分布を液膜Fに形成して液膜Fを乾燥する。
【0068】
したがって、+X方向に沿う座標系において、液膜Fの両端部分は、中央部分に比べて低温になる分だけ、インクIkの蒸発確率を低くする。この結果、液膜Fの両端部分は、膜材料の偏りを回避することができる。よって、上記実施形態の成膜方法は、液膜Fを乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0069】
(2)上記第一実施形態においては、+X方向に配列する複数のノズルNの各々から対向する複数の目標点Tの各々に実質的に同じタイミングで液滴Dを着弾させる。したがって、複数のノズルNからの液滴Dは、それぞれ各目標点Tに実質的に同じタイミングで着弾して、+X方向に連続する液膜Fを形成する。+X方向に連続する液膜Fは、その両端部分が低伝導領域Reからの熱エネルギーを受けて低温になる分だけ、膜厚均一性を向上することができる。この結果、複数のノズルNは、液滴Dの吐出タイミングを変更することなく、膜厚均一性を向上することができる。そのため、上記実施形態の成膜方法は、膜厚均一性を、より簡便な構成の下で向上することができる。
【0070】
(3)上記第一実施形態において、複数のノズルNと基板Sとを+Y方向に沿って相対移動させることにより、+Y方向に連続する液膜Fを形成する。そして、液膜Fを乾燥するとき、+X方向に沿う液膜Fの両端部分と、+Y方向に沿う液膜Fの両端部分とが、それぞれ中間部分よりも低温になる。したがって、液膜Fの全周縁が、中央部分に比べて低温になるため、液膜Fは、膜材料の偏りを全周縁にわたって回避させることができる。よって、上記実施形態の成膜方法は、液膜Fを乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
【0071】
(4)上記第一実施形態において、各熱伝導部材26が、高伝導領域Rcと対向する加
熱面12a上の位置に配設されて、加熱面12aからの熱量を、当接する基板Sの裏面に供給する。したがって、液滴吐出装置10は、加熱面12aと基板Sとの間に熱伝導部材26を挟入するだけで、膜材料の偏りを回避することができる。よって、液滴吐出装置10は、液膜Fを乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、より簡単な構成の下で向上させることができる。しかも、液滴吐出装置10は、各熱伝導部材26を着脱可能に配設するため、各熱伝導部材26の位置を変更するだけで、高伝導領域Rc及び低伝導領域Reの位置を変更させることができる。そのため、液滴吐出装置10は、吐出領域Rの設計変更に伴い、柔軟に対応することができる。
【0072】
(第二実施形態)
以下、本発明を具体化した第二実施形態について図7及び図8に従って説明する。第二実施形態は、本成膜処理の前にテスト成膜処理を実行して、基板Sに与える温度分布をテスト成膜処理の処理結果に基づいて変更するものであり、基板ステージ12と基板Sに与える温度分布を変更したものであるため、以下においては、この変更点について詳細に説明する。図7(a)は、基板ステージ12を示す側断面図である。
【0073】
図7(a)において、基板ステージ12の加熱面12aは、複数のヒータブロックHBを有する。複数のヒータブロックHBの各々は、それぞれ加熱面12aの+X方向、及び+Y方向(紙面と直交する方向)の全体にわたって最密に配置される。各ヒータブロックHBは、それぞれ所定の駆動信号に応答して独立的に駆動する熱源であり、駆動信号に応じた熱エネルギーを供給する。各ヒータブロックHBの上面は、それぞれ基板Sの裏面に対して熱的に高い結合を有する平滑面である。
【0074】
液滴Dの吐出処理を実行するとき、各ヒータブロックHBは、それぞれ所定の駆動信号を受けて、自身の上面と当接する基板Sの領域に、駆動信号に応じた熱エネルギーを供給する。基板Sは、各ヒータブロックHBからの熱エネルギーを吸収することにより、各ヒータブロックHBの発熱量に応じた温度分布を吐出面Saに形成する。すなわち、各ヒータブロックHBは、吐出面Saの面方向に沿って、所望する温度分布を形成する。本実施形態における温度分布は、テスト成膜処理に基づいて設定される。
【0075】
次に、吐出面Saに形成する温度分布について以下に説明する。図7(b)は、テスト成膜処理と本成膜処理の温度分布を示す。また、図7(c)は、テスト成膜処理と本成膜処理によって得られる膜厚分布を示す。
【0076】
テスト成膜処理において、液滴吐出装置10は、まず、加熱面12aの上にテスト成膜用の基板Sを載置する。次いで、液滴吐出装置10は、各ヒータブロックHBを駆動して吐出面Saに所定のテスト温度分布TBを形成する。テスト温度分布TBとは、各ヒータブロックHBの駆動信号に関連付けられる温度の分布であって、例えば図7(b)の破線に示すように、吐出面Saの略全体にわたり均一な温度で形成される温度分布である。
【0077】
液滴吐出装置10は、吐出面Saにテスト温度分布TBを形成すると、第一実施形態と同じく、吐出面Saの各目標点Tに液滴Dを吐出して各吐出領域Rに液膜Fを形成し、テスト温度分布TBの下で各液膜Fを乾燥する。本実施形態では、テスト成膜処理における各目標点Tを、それぞれテスト点という。
【0078】
各テスト点の座標は、それぞれ本成膜処理に用いる各目標点Tに関連付けられる座標であり、テスト成膜用の点列の座標系は、本成膜用の点列の座標系に変換できるものである。すなわち、各テスト点は、それぞれテスト点に着弾する液滴Dを本成膜処理における温度分布の下で乾燥するとき、本成膜処理によって実現される膜厚分布と同じ傾向の膜厚分布を実現する点である。なお、本実施形態におけるテスト点は、本成膜処理における目標
点Tと同じ座標である。
【0079】
液滴吐出装置10は、乾燥後の液膜Fを所定の膜厚測定装置へ搬送させて、テスト温度分布TBで得られる乾燥後の膜厚分布を計測させることによりテスト成膜処理を終了する。本実施形態では、テスト成膜処理で得られる膜厚分布を、テスト膜厚分布KBという。テスト膜厚分布KBとは、テスト点の座標系において測定される膜厚値の分布であり、例えば図7(b)の破線に示すように、吐出面Saの+X方向に沿って連続的に計測される膜厚値の分布である。
【0080】
本成膜処理において、液滴吐出装置10は、まず、加熱面12aの上に本成膜用の基板Sを載置する。次いで、液滴吐出装置10は、テスト膜厚分布KBに基づいて各ヒータブロックHBを駆動することにより、吐出面Saにおけるテスト温度分布TBを補正温度分布TCに変更する。
【0081】
すなわち、液滴吐出装置10は、テスト点の座標系を本成膜用の座標系に変換することにより、テスト膜厚分布KBを、本成膜の座標系における膜厚分布に変換する。なお、本実施形態においては、各テスト点の座標と各目標点Tの座標とが同じであるため、以降においては、テスト膜厚分布KBを、本成膜の座標系における膜厚分布として扱う。
【0082】
液滴吐出装置10は、変換されたテスト膜厚分布KB、すなわち本成膜の座標系における膜厚分布に基づき、相対的に厚い膜を有する座標を厚膜点として選択する。液滴吐出装置10は、吐出領域Rにおいて厚膜点を相対的に低温にするための温度分布を形成する。また、液滴吐出装置10は、テスト膜厚分布KBに基づき、目標点Tの座標系において相対的に薄い膜を有する座標を薄膜点として選択する。液滴吐出装置10は、吐出領域Rにおいて薄膜点を相対的に高温にするための温度分布を形成する。
【0083】
例えば、液滴吐出装置10は、図7(c)の破線に示すように、テスト膜厚分布KBに基づいて、相対的に厚い膜を有する座標Xe1,Xe2を厚膜点として選択する。また、液滴吐出装置10は、テスト膜厚分布KBに基づいて、相対的に薄い膜を有する座標Xm1,Xm2,Xm3を薄膜点として選択する。液滴吐出装置10は、図7(b)の実線に示すように、厚膜点(Xe1,Xe2)を相対的に低温にするための温度分布を形成し、かつ、薄膜点(Xm1,Xm2,Xm3)を相対的に高温にするための温度分布、すなわち補正温度分布TCを吐出面Saに形成する。
【0084】
液滴吐出装置10は、吐出面Saに補正温度分布TCを形成すると、第一実施形態と同じく、吐出面Saの各目標点Tに液滴Dを吐出して各吐出領域Rに液膜Fを形成し、補正温度分布TCの下で各液膜Fを乾燥する。これにより、液滴吐出装置10は、テスト成膜処理に基づいて得られる膜厚分布と温度分布の関係を、本成膜処理に反映させることができる。そのため、液滴吐出装置10は、図7(c)の実線に示すように、乾燥後の膜厚分布(本成膜膜厚分布KC)を、より均一にすることができる。
【0085】
次に、上記のように構成する第二実施形態の液滴吐出装置10の電気的構成を図8に従って説明する。
図8において、入出力装置31は、テスト成膜処理と本成膜処理とを選択するための選択スイッチを有する。制御部30は、入出力装置31からテスト成膜処理を選択するための選択信号が入力されるときにテスト成膜処理を実行する。また、制御部30は、入出力装置31から本成膜処理を選択するための選択信号が入力されるときに本成膜処理を実行する。
【0086】
制御部30は、入出力装置31から既定形式のプロセスデータIpを受信する。テスト
成膜処理を実行するとき、プロセスデータIpは、テスト温度分布TBとテスト点に関するデータを有する。また、本成膜処理を実行するとき、プロセスデータIpは、テスト温度分布TBとテスト膜厚分布KBに関するデータを有する。
【0087】
制御部30は、テスト成膜処理を実行するとき、入出力装置31からのプロセスデータIpに所定の展開処理を施して、テスト温度分布TBを形成するための各ヒータブロックHBの出力に関するデータを、目標温度データHCDとして生成する。制御部30は、目標温度データHCDを参照して、テスト温度分布TBを形成するためのヒータ駆動信号SHを生成して、ヒータ駆動回路36にヒータ駆動信号SHを出力する。ヒータ駆動回路36は、制御部30からのヒータ駆動信号SHに応答して各ヒータブロックHBを駆動させ、これによって吐出面Saにテスト温度分布TBを形成する。
【0088】
制御部30は、テスト成膜処理を実行するとき、入出力装置31からのプロセスデータIpに所定の展開処理を施して、各テスト点に液滴Dを吐出するためのドットパターンデータDPDを生成する。制御部30は、第一実施形態と同じく、ドットパターンデータDPDを用いて各テスト点に液滴Dを着弾させる。
【0089】
制御部30は、本成膜処理を実行するとき、入出力装置31からのプロセスデータIpに所定の展開処理を施して厚膜点と薄膜点を選択して補正温度分布TCに関するデータを目標温度データHCDとして生成する。すなわち、制御部30は、補正温度分布TCを形成するための各ヒータブロックHBの出力に関するデータを目標温度データHCDとして生成する。
【0090】
制御部30は、目標温度データHCDを参照して、補正温度分布TCを形成するためのヒータ駆動信号SHを生成し、ヒータ駆動回路36にヒータ駆動信号SHを出力する。ヒータ駆動回路36は、制御部30からのヒータ駆動信号SHに応答して各ヒータブロックHBを駆動させ、これによって吐出面Saに補正温度分布TCを形成する。
【0091】
次に、上記のように構成した第二実施形態の効果を以下に記載する。
(5)上記第二実施形態においては、テスト点の各々に液滴Dを着弾させて液膜Fを形成し、該液膜Fをテスト温度分布TBの下で乾燥することにより、テスト膜厚分布KBを得る、すなわちテスト成膜処理を実行する。そして、本成膜処理を実行するとき、目標点Tの各点に液滴Dを着弾させて液膜Fを形成し、該液膜Fを、テスト膜厚分布KBとテスト温度分布TBに基づいて形成する補正温度分布TCの下で乾燥する。
【0092】
したがって、本成膜処理における補正温度分布TCは、テスト温度分布TBの下の乾燥によって相対的に厚い膜になり得る座標を、相対的に低温に補正できる。また、テスト温度分布TBの下の乾燥により相対的に薄い膜になり得る座標を、相対的に高温に補正できる。よって、本成膜処理における液膜Fは、相対的に厚い膜になり得る部分の蒸発確率を低くすることができ、かつ、相対的に薄い膜になり得る部分の蒸発確率を高くすることができる。この結果、本成膜処理における液膜Fは、液滴Dからなる膜の膜厚均一性を、より確実に向上させることができる。
【0093】
(6)上記第二実施形態においては、+X方向における液膜Fの両端部分と中間部分との間が、補正温度分布TCによって、それぞれ中間部分よりも高温になる。したがって、液膜Fの両端部分の近傍は、中央部分に比べて高温になる分だけ、蒸発確率を高くする。よって、両端部分の近傍の膜材料が、両端部分に流動し難くなる。そのため、上記第二実施形態の成膜方法によれば、液膜Fを乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
【0094】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第一実施形態においては、加熱面12aと基板Sとの間に、熱伝導部材26が挟入される。これに限らず、例えば加熱面12aが凹凸形状を呈し、該凹部を低伝導領域Reとする構成であってもよい。
【0095】
・上記第一実施形態においては、伝導面26aが平面である。これに限らず、図9に示すように、伝導面26aを曲面にしてもよい。これによれば、吐出面Saにおける急峻な温度変化が抑えられる。
【0096】
・上記第一実施形態においては、隣接する熱伝導部材26の間の空間が中空である。これに限らず、例えば隣接する熱伝導部材26の間の空間は、空気や冷却水等の冷媒の流動より、低伝導領域Reの低温化を図る構成にしても良い。また、隣接する熱伝導部材26の間の空間は、熱伝導性の低い部材を有することにより、低伝導領域Reの低温化を図る構成にしても良い。あるいは、伝導面26aの領域にペルティエ素子の加熱部を配設し、上記空間の領域に該ペルティエ素子の冷却部を配設する構成でも良い。これらによれば、液滴吐出装置10は、低伝導領域Reの温度範囲を拡張させることができる。
【0097】
・上記実施形態においては、ノズル列の数量が一列であるが、これに限らず、ノズル列の数量は、2列以上であっても良い。
・上記実施形態においては、液滴吐出ヘッド20の数量が1つであるが、これに限らず、液滴吐出ヘッド20の数量は、2以上であっても良い。
【0098】
・上記実施形態において、ヒータHあるいはヒータブロックHBは、液滴Dを吐出するときに吐出領域Rを加熱する。これに限らず、例えばヒータHあるいはヒータブロックHBは、吐出領域Rに液膜Fが形成された後に、吐出領域Rを加熱する構成であっても良い。
【0099】
・上記実施形態において、液滴吐出装置10は、液滴吐出ヘッド20と乾燥部の双方を有する。これに限らず、液滴吐出装置10は、乾燥部を有しない構成であってもよく、この際、乾燥部(基板ステージ12、ヒータH、熱伝導部材26)を、別途、乾燥装置として構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】第一実施形態の液滴吐出装置を示す斜視図。
【図2】同じく、液滴吐出ヘッドを示す斜視図。
【図3】同じく、液滴吐出ヘッドの内部を示す側面図。
【図4】同じく、液滴の吐出位置を示す平面図。
【図5】(a)、(b)は、それぞれ第一実施形態の基板ステージを示す平面図、及び側断面図。
【図6】同じく、液滴吐出装置の電気的構成を示す電気ブロック回路図。
【図7】(a)、(b)、(c)は、それぞれ第二実施形態の基板ステージを示す側断面図、基板ステージの温度プロファイルを示す図、及び液膜の膜厚プロファイルを示す図。
【図8】同じく、液滴吐出装置の電気的構成を示す電気ブロック回路図。
【図9】変更例の基板ステージを示す側断面図。
【図10】(a)、(b)は、それぞれ従来例の液滴吐出処理を示す平面図、及び側断面図。
【図11】(a)、(b)は、それぞれ従来例の液滴吐出処理を示す平面図、及び側断面図。
【符号の説明】
【0101】
D…液滴、F…液膜、H…ヒータ、Ik…インク、N…ノズル、R…吐出領域、S…基板、Sa…吐出面、10…液滴吐出装置、20…液滴吐出ヘッド、26…熱伝導部材、30…制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法、及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低温焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics )からなる多層基板は、優れた高周波特性と高い耐熱性を有するため、高周波モジュールの基板やICパッケージの基板等に広く利用される。LTCC多層基板に用いられる配線等の膜パターンの製造方法としては、生産性の向上と低コスト化とを図るために、インクジェット法が注目されている。インクジェット法は、配線材料を含む液状体を液滴にして吐出する液滴吐出ヘッドを用い、液滴吐出ヘッドと基板とを主走査方向に相対移動させながら液滴吐出ヘッドに液滴を吐出させる。配線材料を含む複数の液滴は、基板の主走査方向に沿って順に合一することにより、主走査方向に連続するライン状の液膜を形成する。インクジェット法は、このライン状の液膜を乾燥することによりパターンを形成する。
【0003】
特許文献1は、ライン状の液膜の表面に温度勾配を与え、主走査方向を挟んで両側にそれぞれ高温側の表面と低温側の表面を設ける。温度勾配を有する液膜は、自身の表面に表面張力の分布を形成し、内部にマランゴニ対流を発生させる。液膜の高温側の端部から流出する熱毛管流は、液膜に与えられる温度勾配によって、低温側の端部に届く前に基板に向けて下降する。この結果、低温側の端部には、マランゴニ対流の流路に含まれない配線材料が析出し、この析出する配線材料によって液膜の濡れ広がりがピン止めされる。一方、高温側の端部には、配線材料が対流によって運搬され続けるため、配線材料が析出し難くなる。そのため、液膜の乾燥が進むに連れて、液膜の高温側が低温側の端部に向けて収縮し、液膜の低温側の端部にのみ配線材料が析出する。この結果、液膜は、自身の幅よりも狭い線幅の配線パターンを形成する。
【0004】
上記インクジェット法は、液晶表示装置に利用される配向膜の成膜方法としても注目されている(例えば、特許文献2)。図10(a)、(b)と図11(a)、(b)は、それぞれ配向膜の成膜工程を模式的に示す平面図及び側面図である。配向膜の成膜工程においては、基板Sの上に液滴Dを吐出して液膜Fを形成する液滴吐出処理と、液膜Fに含まれる溶媒等を蒸発させて液膜Fを乾燥する乾燥処理とが行われる。
【0005】
図10に示すように、液滴吐出処理においては、基板Sの表面(以下単に、吐出面Saという。)に、上下方向に延びる複数の吐出領域Rが左右方向に連続して仮想分割される。液滴吐出ヘッド20は、最も左側の吐出領域Rの上から順に矢印方向に沿って移動し、配向膜材料を含む複数の液滴Dを各吐出領域Rの全体に吐出し、これにより複数の吐出領域Rの各々に帯状の液膜Fを形成する。すなわち、液滴吐出ヘッド20は、マルチスキャンにより各液膜Fを形成する。あるいは、図11に示すように、左右方向に配列する複数の液滴吐出ヘッド20が、それぞれ各吐出領域Rの全体にわたり液滴Dを吐出し、これにより複数の吐出領域Rの各々に液膜Fを形成する。すなわち、複数の液滴吐出ヘッド20は、シングルスキャンにより各液膜Fを形成する。複数の液膜Fの各々は、液滴吐出処理の処理時間の経過に伴い、それぞれ隣接する他の液膜Fと合一して基板Sの全体にわたり膜を形成する。
【特許文献1】特開2005−152758号公報
【特許文献2】特開2006−15271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記マルチスキャン方式を用いて膜を形成するとき、隣接する液膜Fの境界では、液滴Dの着弾するタイミングが、液滴吐出ヘッドの1回の走査時間分だけ異なる。また、上記シングルスキャン方式を用いる場合であっても、隣接する液膜Fの境界では、液滴Dの着弾するタイミングが、各液滴吐出ヘッド20の間の距離の走査時間分だけ異なる。
【0007】
各液膜Fの縁部(例えば、左右方向の両端部分Fe)においては、それぞれ単位容積当たりの表面積が大きくなるため、蒸発成分の蒸発確率が高くなり、液膜Fの乾燥速度を中央部分Fcの乾燥速度よりも速くする。この結果、液膜Fの両端部分Feでは、液状体の増粘によって自身の内部に配向膜材料の流動を発生させて、配向膜材料の濃度を局所的に高くしてしまう。この結果、合一した液膜Fを乾燥すると、乾燥後の膜には、各液膜Fの両端部分Feに膜厚段差(図10及び図11に示す濃淡)が形成されてしまう。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させる成膜方法及び成膜装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の成膜方法は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、前記対象物上の点列の各点に前記液滴を着弾させることによって前記点列上に液膜を形成する工程と、前記点列の列方向における所定幅の両端部分が前記列方向の中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を乾燥する工程とを有する。
【0010】
本発明の成膜方法によれば、列方向に沿う座標系において、液膜の両端部分は、中央部分に比べて低温になる分だけ、液状体の蒸発確率を低くする。したがって、液膜の両端部分は、膜材料の偏りを回避することができる。この結果、本発明の成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0011】
この成膜方法において、前記液膜を形成する工程は、前記列方向に配列する複数のノズルの各々から前記点列の各点に同じタイミングで前記液滴を着弾させることにより前記液膜を形成する。
【0012】
この成膜方法によれば、配列する複数のノズルからの液滴は、実質的に同じタイミングで着弾して、列方向に連続する液膜を形成する。そして、列方向に連続する液膜は、その両端部分が低温になる分だけ、膜厚均一性を向上する。したがって、配列する複数のノズルは、液滴の吐出タイミングを変更することなく、膜厚均一性を向上することができる。よって、この成膜方法は、膜厚均一性を、より簡便な構成の下で向上することができる。
【0013】
この成膜方法は、前記液膜を形成する工程が、前記列方向に配列する複数のノズルの各々から前記点列の各点に同じタイミングで前記液滴を着弾させるとともに、前記複数のノズルと前記対象物とを前記列方向と交差する方向に相対移動させることにより前記交差する方向に連続する液膜を形成し、前記液膜を乾燥する工程が、前記列方向における所定幅の両端部分と、前記交差する方向における所定幅の両端部分とが前記中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を乾燥する構成が好ましい。
【0014】
この成膜方法によれば、液膜の全周縁が、中央部分に比べて低温になる。したがって、液膜は、膜材料の偏りを全周縁にわたって回避させることができる。この結果、この成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
【0015】
この成膜方法は、前記液膜を乾燥する工程において、前記両端部分と前記中間部分との間が、それぞれ前記中間部分よりも高温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を
乾燥する構成が好ましい。
【0016】
この成膜方法によれば、液膜の両端部分の近傍は、中央部分に比べて高温になる分だけ、蒸発確率を高くする。したがって、両端部分の近傍の膜材料が、両端部分に流動し難くなる。よって、この成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
【0017】
本発明の成膜方法は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列に第一液膜を形成し、前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成する工程と、前記第一点列の座標系における前記第一膜の膜厚分布を計測する工程と、対象物上の第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列に第二液膜を形成する工程と、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に厚い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも低温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する工程とを有する。
【0018】
本発明の成膜方法によれば、第二液膜は、所定温度の乾燥により相対的に厚い膜になり得る座標の温度を、相対的に低温に補正する。したがって、第二液膜は、相対的に厚膜になり得る部分の蒸発確率を低くすることができ、膜材料の偏りを回避させることができる。よって、本発明の成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0019】
本発明の成膜方法は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列に第一液膜を形成し、前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成する工程と、前記第一点列の座標系における前記第一膜の膜厚分布を計測する工程と、対象物上の第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列に第二液膜を形成する工程と、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に薄い膜厚値の座標を、前記所定温度より高温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する工程とを有する。
【0020】
本発明の成膜方法によれば、第二液膜は、所定温度下の乾燥により相対的に薄い膜になり得る座標の温度を、相対的に高温に補正する。したがって、第二液膜は、相対的に膜になり得る部分の蒸発確率を低くすることができ、膜材料の偏りを回避させることができる。よって、本発明の成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0021】
本発明の成膜装置は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部とを有する成膜装置であって、前記液滴吐出ヘッドは、前記対象物上の点列の各点に前記液滴を着弾させることによって前記点列上に液膜を形成し、前記乾燥部は、前記列方向における所定幅の両端部分が前記列方向の中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成することにより前記対象物に前記膜を形成する。
【0022】
本発明の成膜装置によれば、乾燥部は、液膜の両端部分の温度を中央部分に比べて低くすることにより、両端部分の蒸発確率を低くする。したがって、液膜の両端部分は、膜材
料の偏りを回避することができる。この結果、本発明の成膜装置は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0023】
この成膜装置は、前記乾燥部が、前記対象物と対向する加熱面を有するヒータと、前記中間部分に対向する前記加熱面上の領域に配置されて、前記対象物と当接することにより、前記加熱面から受ける熱を前記中間部分に伝導する熱伝導部材とを有する構成であってもよい。
【0024】
この成膜装置によれば、乾燥部は、熱伝導部材を介する中央部分の加熱により、両端部分の温度を低くする。したがって、この成膜装置は、加熱面と対象物との間に熱伝導部材を挟入するだけで、膜材料の偏りを回避することができる。よって、この成膜装置は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、より簡単な構成の下で向上させることができる。
【0025】
この成膜装置において、前記乾燥部は、前記列方向に配列して前記対象物と熱的に接触する複数のヒータを有する。
この成膜装置によれば、列方向に配列される複数のヒータの各々が、両端部分と中間部分との間の温度差を形成する。したがって、成膜装置は、両端部分と中間部分との間の温度差を、異なるヒータにより形成するため、液膜に与える温度分布をより高い精度の下で形成することができる。
【0026】
本発明の成膜装置は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部と、前記液滴吐出ヘッドと前記乾燥部とを制御する制御部とを有する成膜装置であって、前記制御部は、前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列上に第一液膜を形成し、前記乾燥部を駆動して前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成し、前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上に第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列上に第二液膜を形成し、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記乾燥部を駆動して前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に厚い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも低温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する。
【0027】
本発明の成膜装置によれば、第二液膜は、所定温度の乾燥により相対的に厚い膜になり得る座標の温度を、相対的に低温に補正する。したがって、第二液膜は、相対的に厚膜になり得る部分の蒸発確率を低くすることができ、膜材料の偏りを回避させることができる。よって、本発明の成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0028】
本発明の成膜装置は、膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部と、前記液滴吐出ヘッドと前記乾燥部とを制御する制御部とを有する成膜装置であって、前記制御部が、前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列上に第一液膜を形成し、前記乾燥部を駆動して前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成し、前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上に第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列上に第二液膜を形成し、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記乾燥部を駆動して前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に薄い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも高温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する。
【0029】
本発明の成膜装置によれば、第二液膜は、所定温度の乾燥により相対的に薄い膜になり得る座標の温度を、相対的に低温に補正する。したがって、第二液膜は、相対的に厚膜になり得る部分の蒸発確率を低くすることができ、膜材料の偏りを回避させることができる。よって、本発明の成膜方法は、液膜を乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第一実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。図1は、成膜装置としての液滴吐出装置10を示す斜視図である。
【0031】
図1において、液滴吐出装置10は、一つの方向に延びる基台11と、基台11の上に搭載されて基板Sを載置する基板ステージ12とを有する。基板ステージ12は、基板Sの一つの面を上に向けた状態で基板Sを位置決め固定して、基台11の長手方向に沿って基板Sを搬送する。基板Sとしては、グリーンシート、ガラス基板、シリコン基板、セラミック基板、樹脂フィルム等の基板が用いられる。
【0032】
本実施形態においては、基板Sの上面を吐出面Saという。吐出面Saは、所望の膜を形成するための面であり、液滴を着弾させるための位置を目標点として有する。基板Sが搬送される方向であって、図1において左上方向に向かう方向を+Y方向という。また、+Y方向と直交する方向であって、図1において右上方向に向かう方向を+X方向とし、基板Sの法線方向をZ方向という。
【0033】
液滴吐出装置10は、基台11を跨ぐ門型のガイド部材13と、ガイド部材13の上側に配設されるインクタンク14とを有する。インクタンク14は、液状体としてのインクIkを貯留するとともに、貯留するインクIkを所定圧力で導出する。インクIkとしては、膜材料としての配向膜材料を分散させた配向膜用インク、ITO(Indium Tin Oxide
)微粒子を分散させたITOインク等のインクが用いられる。
【0034】
ガイド部材13は、キャリッジ15を+X方向及び+X方向の反対方向(−X方向)に沿って移動可能に支持する。キャリッジ15は、液滴吐出ヘッド20を搭載して+X方向及び−X方向に沿って移動する。キャリッジ15は、基板Sが+Y方向に搬送されるときに+X方向あるいは−X方向に移動し、液滴吐出ヘッド20を目標点の搬送経路の上に配置する。なお、基板Sが+Y方向及び−Y方向に搬送される動作を、主走査という。また、液滴吐出ヘッド20が+X方向及び−X方向に搬送されて目標点の搬送経路の上に配置される動作を、副走査という。
【0035】
次に、液滴吐出ヘッド20について以下に説明する。図2は、液滴吐出ヘッド20を基板ステージ12から見た斜視図である。図3は、液滴吐出ヘッド20の内部を模式的に示す図である。図4は、液滴吐出ヘッド20を用いて吐出する液滴Dの吐出位置を示す平面図である。
【0036】
図2において、液滴吐出ヘッド20は、+X方向に延びるヘッド基板21と、ヘッド基板21に搭載されるヘッド本体22とを有する。ヘッド基板21は、キャリッジ15に位置決め固定されて、基板Sに対して+X方向及び−X方向に沿って移動する。ヘッド基板21は、その一側端に入力端子21aを有して、入力端子21aに入力される各種の駆動信号をヘッド本体22に出力する。
【0037】
ヘッド本体22は、基板Sと対向する側面の+X方向の略全幅にわたりi個(iは1以
上の整数)のノズルNを有する。各ノズルNは、それぞれZ方向に延びる円形孔であって、+X方向に沿って所定のピッチで形成される。ヘッド本体22は、例えば+X方向に沿って141μmのピッチで配列する180個のノズルNを有する。本実施形態においては、ノズルNの形成ピッチを、ノズルピッチDxとし、各ノズルNからなるノズル列の幅をノズル列幅Rwという。なお、図2では、ノズルNの配置を説明するためにノズルNの数量を簡略化して示す。
【0038】
図3において、ヘッド本体22は、ノズルNごとに、一つのキャビティ24と、該キャビティ24の内部に圧力を与える一つの圧力発生素子25とを有する。すなわち、ヘッド本体22は、ノズルNの数量と同じi個のキャビティ24と、i個の圧力発生素子25とを有する。各キャビティ24と各圧力発生素子25とは、それぞれノズルNの直上に配設されることにより、該ノズルNに対応付けられる。各キャビティ24は、それぞれ共通するインクタンク14に接続されてインクタンク14からのインクIkを収容し、連通するノズルNにインクIkを供給する。各ノズルNは、それぞれ連通するキャビティ24からのインクIkを受けて、自身の開口に気液界面(以下単に、メニスカスという。)Mを形成する。
【0039】
各圧力発生素子25は、それぞれ接続されるキャビティ24の内部に所定圧力を与えて、該キャビティ24の内部の圧力を増大及び減少させることにより、該キャビティ24に連通するノズルNのメニスカスMを振動させる。圧力発生素子25としては、例えばキャビティ24の容積を機械的に拡大及び縮小させる圧電素子、あるいはキャビティ24の温度を局所的に上昇及び下降させる抵抗加熱素子を用いることができる。
【0040】
吐出面Saの目標点Tが、選択されるノズルN(以下単に、選択ノズルという。)の直下に位置するとき、選択ノズルに連通するキャビティ24は、対応する圧力発生素子25の駆動力を受けることにより、選択ノズルのメニスカスMを振動させて、インクIkの一部を所定重量の液滴Dにして選択ノズルから吐出させる。ノズルNから吐出される液滴Dは、吐出面Saの法線に沿って飛行して目標点Tに着弾する。
【0041】
図4において、基板Sの吐出面Saは、一点鎖線に示すように、+Y方向に延びる複数の吐出領域Rを有する。各吐出領域Rは、それぞれ+X方向にノズル列幅Rwの幅を有する領域であり、ドットパターン格子SLによって仮想分割される。各ドットパターン格子SLにおいて、+Y方向の格子間隔と+X方向の格子間隔は、それぞれ液滴Dの吐出間隔によって規定される。例えば、各ドットパターン格子SLの+Y方向の格子間隔は、それぞれ液滴吐出ヘッド20の吐出周期と基板Sの主走査速度との積によって規定される。各ドットパターン格子SLの+X方向の格子間隔は、それぞれノズルピッチDxによって規定される。
【0042】
液滴Dを吐出するか否かの選択は、各ドットパターン格子SLの格子点ごとに規定される。本実施形態では、各吐出領域Rにおける全ての格子点が目標点Tとして選択される。なお、図4では、ドットパターン格子SLの位置を説明するため、ドットパターン格子SLの格子間隔を拡大して示す。
【0043】
液滴Dの吐出処理を実行するとき、液滴吐出ヘッド20の各ノズルNは、それぞれ+Y方向に連続する一群の目標点Tの延長線上に配置される。基板Sが主走査されるとき、液滴吐出ヘッド20の各ノズルNは、それぞれ+X方向に配列するi個の目標点Tに対して同じタイミングで対向する。すなわち、+X方向に配列するi個の目標点Tには、それぞれ実質的に同じタイミングで液滴Dが着弾する。着弾するi個の液滴Dは、列方向としての+X方向に沿って合一して+X方向に連続する液膜Fを形成する。なお、実質的に同じタイミングとは、+X方向に配列するi個の目標点Tにおいて、着弾するi個の液滴Dが
+X方向に連続する液膜を形成するタイミングであって、隣接する液滴Dの間の着弾タイミングの差異によって該液滴Dの間に膜厚段差を来たさないタイミングである。
【0044】
実質的に同じタイミングで着弾する一群の液滴D(i個の液滴D)は、後続する一群の液滴Dが順に−Y方向に着弾することにより、+Y方向に沿って延びる帯状の液膜Fを形成する。
【0045】
次に、基板ステージ12について以下に説明する。図5(a)、(b)は、それぞれ基板Sを載置する状態の基板ステージ12を示す平面図及び側断面である。
図5において、基板ステージ12は、基板ステージ12の全体を加熱するヒータHを有する。ヒータHは、液滴Dの吐出処理を実行するとき、所定の駆動信号を受けて基板ステージ12の上面(以下単に、加熱面12aという。)の全体を昇温して所定温度に維持する。基板ステージ12は、加熱面12aに複数の熱伝導部材26を有する。本実施形態においては、基板ステージ12、ヒータH、及び熱伝導部材26によって乾燥部が構成される。
【0046】
各熱伝導部材26は、それぞれ熱伝導性の高い金属材料からなる板部材であって、+Y方向に延びる帯状を呈する。各熱伝導部材26は、加熱面12aに対して配置変更を可能に位置決めされている。各熱伝導部材26の上面(以下単に、伝導面26aという。)は、それぞれ基板Sの裏面に対して熱的に高い結合を有する平滑面である。各熱伝導部材26は、それぞれ加熱面12aから受ける熱エネルギーを、自身の伝導面26aと当接する基板Sの領域に伝達する。熱伝導部材26の+X方向の幅は、それぞれノズル列幅Rwよりも若干小さい幅(以下単に、伝導幅Cwという。)を有する。各熱伝導部材26は、それぞれ基板Sを載置するとき、Z方向から見て、各吐出領域Rの内側に配設されて、これによって各吐出領域Rの+X方向及び−X方向の両端部分、+Y方向及び−Y方向の両端部分に、それぞれ伝導面26aから離間する領域を形成する。
【0047】
本実施形態においては、吐出領域Rであって、Z方向から見て伝導面26aと重畳する領域を、中間部分としての高伝導領域Rcという。また、吐出領域Rであって、高伝導領域Rcを除く領域を、すなわち高伝導領域Rcの全外周を囲う領域を、低伝導領域Reという。+X方向に連続するi個の目標点Tの内でj個(jは1以上の整数)の目標点Tは、それぞれ高伝導領域Rcに配置される。また、+X方向に連続するi個の目標点Tの内でi−j個の目標点Tは、それぞれ低伝導領域Reに配置される。
【0048】
液滴Dの吐出処理を実行するとき、加熱面12aは、ヒータHからの熱エネルギーを各熱伝導部材26に供給する。各熱伝導部材26は、それぞれ加熱面12aからの熱エネルギーを、伝導面26aと当接する基板Sに供給する。基板Sは、伝導面26aからの熱エネルギーを吸収して昇温する。なお、図5(b)においては、高温の領域に薄いグラデーションを付し、低温の領域に濃いグラデーションを付して示す。
【0049】
この際、基板Sの温度は、伝導面26aに近くなるほど高くなり、反対に、伝導面26aから離れるほど低くなる。各吐出領域Rにおいては、それぞれ伝導面26aに近い高伝導領域Rcが相対的に高温になり、反対に、伝導面26aから遠い低伝導領域Reが相対的に低温になる。各高伝導領域Rcは、それぞれ伝導面26aからの熱エネルギーを受けて、自身の上にあるインクIkに対して相対的に高い熱エネルギーを供給する。反対に、各低伝導領域Reは、それぞれ自身の上にあるインクIkに対して相対的に低い熱エネルギーを供給する。
【0050】
基板Sが主走査されるとき、液滴吐出ヘッド20は、+X方向に連続するi個の目標点Tに、すなわち高伝導領域Rcにあるj個の目標点Tと、低伝導領域Reにあるi−j個
の目標点Tとに、それぞれ同じタイミングで液滴Dを着弾させる。同じタイミングで着弾するi個の液滴Dは、+X方向に沿って合一して+X方向に連続する液膜Fを形成する。この際、i−j個の液滴Dにより形成される液膜Fにおいては、+X方向における両端部分が、中央部分に比べて、単位容積当たりの表面積を小さくする。一方、この液膜Fの両端部分は、液膜Fの中央部分に比べて、基板Sから受ける熱エネルギーを小さくするため、その温度を低くする。
【0051】
この結果、液膜Fの両端部分及び中央部分では、蒸発成分の蒸発確率が略同じになり、液膜Fの両端部分では、膜材料の流動が抑制される。したがって、液膜Fは、その膜材料の濃度を均一にすることができ、乾燥後の液膜Fは、両端部分における膜材料の流動を抑制する分だけ、均一な膜厚を呈する。
【0052】
なお、本発明において、高伝導領域Rc及び低伝導領域Reのサイズは、インクIkの材料、吐出面Saの表面状態、ヒータHの出力等に応じて適宜選択される。すなわち、高伝導領域Rc及び低伝導領域Reのサイズは、+X方向に沿う液膜Fの両端部分及び中央部分において蒸発確率を略同じにするように適宜選択される。
【0053】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置10の電気的構成を図5に従って説明する。図5は、液滴吐出装置10の電気的構成を示す電気ブロック回路図である。
図5において、制御部30は、CPU、ROM、RAM等を有する。制御部30は、ROMとRAMに格納される各種制御プログラムと各種データに従って、基板ステージ12を用いる基板Sの主走査、キャリッジ15を用いる液滴吐出ヘッド20の副走査、液滴吐出ヘッド20を用いる液滴吐出処理、及びヒータHを用いる液膜Fの乾燥処理を実行する。
【0054】
制御部30は、各種操作スイッチやディスプレイを有する入出力装置31に接続されて、入出力装置31から入力される各種信号を受信する。制御部30は、例えば入出力装置31から液滴吐出処理と乾燥処理を実行するための既定形式のプロセスデータIpを受信する。
【0055】
制御部30は、入出力装置31からのプロセスデータIpを受信すると、プロセスデータIpに所定の展開処理を施して、ドットパターンデータDPDを生成する。ドットパターンデータDPDは、ドットパターン格子SLの格子点の数量と同じビット長からなるデータであり、ドットパターン格子SLの格子点ごとに液滴Dを吐出するか否かを規定するデータである。すなわち、ドットパターンデータDPDは、各ビットの値(“0”もしくは“1”)に応じて圧力発生素子25のオンあるいはオフを規定するデータである。
【0056】
また、制御部30は、入出力装置31からのプロセスデータIpを受信すると、プロセスデータIpに所定の展開処理を施して、加熱面12aの目標温度に関するデータ(以下単に、目標温度データHCDという。)を格納する。
【0057】
制御部30は、基板検出装置32に接続されている。基板検出装置32は、基板Sの端縁を検出する撮像機能等を有する。制御部30は、基板検出装置32からの検出信号を受けて、液滴吐出ヘッド20に対する基板Sの相対位置、すなわち液滴吐出ヘッド20に対する各目標点Tの相対位置を演算する。
【0058】
制御部30は、基板ステージ駆動回路33に接続されて、基板ステージ駆動回路33に対応する制御信号を基板ステージ駆動回路33に入力する。基板ステージ駆動回路33は、制御部30からの制御信号に応答して、基板ステージ12を移動させるためのステージモータMSを正転又は逆転させる。基板ステージ駆動回路33は、ステージモータエンコ
ーダESからの検出信号を受信してステージモータMSの回転方向及び回転数を演算する。制御部30は、基板ステージ駆動回路33からの演算結果を用いて基板ステージ12の移動方向及び移動量を演算し、吐出面Saの目標点TがノズルNの直下に位置するか否かを判断する。制御部30は、各目標点TがノズルNの直下に位置するたびにタイミング信号LTを生成し、吐出ヘッド駆動回路35にタイミング信号LTを出力する。
【0059】
制御部30は、キャリッジ駆動回路34に接続されて、キャリッジ駆動回路34に対応する制御信号をキャリッジ駆動回路34に入力する。キャリッジ駆動回路34は、制御部30からの制御信号に応答して、キャリッジ15を移動させるためのキャリッジモータMCを正転又は逆転させる。キャリッジ駆動回路34は、キャリッジモータエンコーダECからの検出信号を受信してキャリッジモータMCの回転方向及び回転数を演算する。制御部30は、キャリッジ駆動回路34からの演算結果を用いてキャリッジ15の移動方向及び移動量を演算し、各目標点Tの主走査経路の上に各ノズルNを配置する。
【0060】
制御部30は、吐出ヘッド駆動回路35に接続されて、吐出ヘッド駆動回路35にタイミング信号LTと、圧力発生素子25を駆動するための駆動波形信号COMとを入力する。また、制御部30は、ドットパターンデータDPDをシリアル転送するためのシリアルパターンデータSIを生成し、吐出ヘッド駆動回路35にシリアルパターンデータSIをシリアル転送する。吐出ヘッド駆動回路35は、制御部30からのシリアルパターンデータSIを受信してシリアル/パラレル変換し、i個のノズルN、すなわちi個の圧力発生素子25の各々に対してドットパターンデータDPDの各ビット値を対応させたパラレルパターンデータを生成する。吐出ヘッド駆動回路35は、制御部30からのタイミング信号LTを受けるとき、パラレルパターンデータに基づいて吐出動作の選択される圧力発生素子25に駆動波形信号COMを供給する。本実施形態において、吐出ヘッド駆動回路35は、タイミング信号LTを受けるとき、全ての圧力発生素子25に駆動波形信号COMを供給する。これによって、制御部30は、+X方向に沿って連続する各目標点Tに、それぞれ実質的に同じタイミングで液滴Dを着弾させる。
【0061】
制御部30は、ヒータ駆動回路36に接続されている。制御部30は、目標温度データHCDを参照して、加熱面12aの温度を目標温度にするためのヒータ駆動信号SHを生成し、ヒータ駆動回路36にヒータ駆動信号SHを出力する。ヒータ駆動回路36は、制御部30からのヒータ駆動信号SHに応答してヒータHを通電して駆動させ、これによって加熱面12aを昇温して所定温度に維持する。
【0062】
次に、液滴吐出装置10を用いて成膜する方法について説明する。
まず、図1に示すように、基板ステージ12の上には、吐出面Saを上側にする基板Sが載置される。このとき、基板Sの+Y方向の端部は、ガイド部材13の−Y方向(+Y方向の反対方向)に配置される。制御部30は、入出力装置31からプロセスデータIpを受信すると、プロセスデータIpを用いてドットパターンデータDPD及び目標温度データHCDを生成して格納する。そして、制御部30は、目標温度データHCDを参照してヒータ駆動信号SHを生成し、ヒータ駆動回路36を介してヒータHを駆動する、すなわち加熱面12aの温度を目標温度に維持する。これによって、吐出領域Rにおいては、伝導面26aに近い高伝導領域Rcが相対的に高温になり、反対に、伝導面26aから遠い低伝導領域Reが相対的に低温になる。
【0063】
制御部30は、加熱面12aの温度が目標温度に到達すると、キャリッジ駆動回路34を介してキャリッジモータMCを駆動し、各目標点Tの主走査経路の上に各ノズルNを配置する。そして、制御部30は、基板ステージ駆動回路33を介してステージモータMSを駆動して基板Sの主走査を開始する。
【0064】
制御部30は、基板検出装置32からの検出信号を受けて液滴吐出ヘッド20に対する各目標点Tの相対位置を演算し、基板ステージ駆動回路からの演算結果を用いて、以降の相対位置を演算する。制御部30は、液滴吐出ヘッド20に対する各目標点Tの相対位置に基づいて、各目標点TがノズルNの直下にあるか否かを判断し、各目標点TがノズルNの直下に位置するたびにタイミング信号LTを生成して、吐出ヘッド駆動回路35にタイミング信号LTを出力する。すなわち、制御部30は、+X方向に連続するi個の目標点Tがi個のノズルNの直下に位置するたびに、該i個の目標点Tに対して、実質的に同じタイミングの下で液滴Dを着弾させる。同じタイミングで着弾するi個の液滴Dは、+X方向に沿って合一して+X方向に連続する液膜Fを形成する。
【0065】
この際、液膜Fの+X方向に沿う両端部分と中央部分が、それぞれ低伝導領域Reと高伝導領域Rcからの熱エネルギーを受ける、すなわち相対的に低温と高温の領域になる。この結果、液膜Fにおいては、+X方向に沿う蒸発確率が均一になるため、+X方向に沿う膜材料の濃度が均一になり、ひいては乾燥後の膜厚値が均一になる。
【0066】
以後、同様に、制御部30は、基板Sの主走査を繰り返し、+X方向に連続するi個の目標点Tがi個のノズルNの直下に位置するたびに、該i個の目標点Tに対して一斉に液滴Dを着弾させる。これによって、制御部30は、各液膜Fにおける膜材料の均一化を図ることができ、ひいては合一した液膜Fからなる膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0067】
次に、上記のように構成した第一実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記第一実施形態においては、基板Sの上に+X方向に沿って配列する複数の目標点Tの各々に液滴Dを着弾させることによって+Xに連続する液膜Fを形成する。そして、+X方向における所定幅の両端部分が+X方向における中間部分よりも低温になる温度分布を液膜Fに形成して液膜Fを乾燥する。
【0068】
したがって、+X方向に沿う座標系において、液膜Fの両端部分は、中央部分に比べて低温になる分だけ、インクIkの蒸発確率を低くする。この結果、液膜Fの両端部分は、膜材料の偏りを回避することができる。よって、上記実施形態の成膜方法は、液膜Fを乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0069】
(2)上記第一実施形態においては、+X方向に配列する複数のノズルNの各々から対向する複数の目標点Tの各々に実質的に同じタイミングで液滴Dを着弾させる。したがって、複数のノズルNからの液滴Dは、それぞれ各目標点Tに実質的に同じタイミングで着弾して、+X方向に連続する液膜Fを形成する。+X方向に連続する液膜Fは、その両端部分が低伝導領域Reからの熱エネルギーを受けて低温になる分だけ、膜厚均一性を向上することができる。この結果、複数のノズルNは、液滴Dの吐出タイミングを変更することなく、膜厚均一性を向上することができる。そのため、上記実施形態の成膜方法は、膜厚均一性を、より簡便な構成の下で向上することができる。
【0070】
(3)上記第一実施形態において、複数のノズルNと基板Sとを+Y方向に沿って相対移動させることにより、+Y方向に連続する液膜Fを形成する。そして、液膜Fを乾燥するとき、+X方向に沿う液膜Fの両端部分と、+Y方向に沿う液膜Fの両端部分とが、それぞれ中間部分よりも低温になる。したがって、液膜Fの全周縁が、中央部分に比べて低温になるため、液膜Fは、膜材料の偏りを全周縁にわたって回避させることができる。よって、上記実施形態の成膜方法は、液膜Fを乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
【0071】
(4)上記第一実施形態において、各熱伝導部材26が、高伝導領域Rcと対向する加
熱面12a上の位置に配設されて、加熱面12aからの熱量を、当接する基板Sの裏面に供給する。したがって、液滴吐出装置10は、加熱面12aと基板Sとの間に熱伝導部材26を挟入するだけで、膜材料の偏りを回避することができる。よって、液滴吐出装置10は、液膜Fを乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、より簡単な構成の下で向上させることができる。しかも、液滴吐出装置10は、各熱伝導部材26を着脱可能に配設するため、各熱伝導部材26の位置を変更するだけで、高伝導領域Rc及び低伝導領域Reの位置を変更させることができる。そのため、液滴吐出装置10は、吐出領域Rの設計変更に伴い、柔軟に対応することができる。
【0072】
(第二実施形態)
以下、本発明を具体化した第二実施形態について図7及び図8に従って説明する。第二実施形態は、本成膜処理の前にテスト成膜処理を実行して、基板Sに与える温度分布をテスト成膜処理の処理結果に基づいて変更するものであり、基板ステージ12と基板Sに与える温度分布を変更したものであるため、以下においては、この変更点について詳細に説明する。図7(a)は、基板ステージ12を示す側断面図である。
【0073】
図7(a)において、基板ステージ12の加熱面12aは、複数のヒータブロックHBを有する。複数のヒータブロックHBの各々は、それぞれ加熱面12aの+X方向、及び+Y方向(紙面と直交する方向)の全体にわたって最密に配置される。各ヒータブロックHBは、それぞれ所定の駆動信号に応答して独立的に駆動する熱源であり、駆動信号に応じた熱エネルギーを供給する。各ヒータブロックHBの上面は、それぞれ基板Sの裏面に対して熱的に高い結合を有する平滑面である。
【0074】
液滴Dの吐出処理を実行するとき、各ヒータブロックHBは、それぞれ所定の駆動信号を受けて、自身の上面と当接する基板Sの領域に、駆動信号に応じた熱エネルギーを供給する。基板Sは、各ヒータブロックHBからの熱エネルギーを吸収することにより、各ヒータブロックHBの発熱量に応じた温度分布を吐出面Saに形成する。すなわち、各ヒータブロックHBは、吐出面Saの面方向に沿って、所望する温度分布を形成する。本実施形態における温度分布は、テスト成膜処理に基づいて設定される。
【0075】
次に、吐出面Saに形成する温度分布について以下に説明する。図7(b)は、テスト成膜処理と本成膜処理の温度分布を示す。また、図7(c)は、テスト成膜処理と本成膜処理によって得られる膜厚分布を示す。
【0076】
テスト成膜処理において、液滴吐出装置10は、まず、加熱面12aの上にテスト成膜用の基板Sを載置する。次いで、液滴吐出装置10は、各ヒータブロックHBを駆動して吐出面Saに所定のテスト温度分布TBを形成する。テスト温度分布TBとは、各ヒータブロックHBの駆動信号に関連付けられる温度の分布であって、例えば図7(b)の破線に示すように、吐出面Saの略全体にわたり均一な温度で形成される温度分布である。
【0077】
液滴吐出装置10は、吐出面Saにテスト温度分布TBを形成すると、第一実施形態と同じく、吐出面Saの各目標点Tに液滴Dを吐出して各吐出領域Rに液膜Fを形成し、テスト温度分布TBの下で各液膜Fを乾燥する。本実施形態では、テスト成膜処理における各目標点Tを、それぞれテスト点という。
【0078】
各テスト点の座標は、それぞれ本成膜処理に用いる各目標点Tに関連付けられる座標であり、テスト成膜用の点列の座標系は、本成膜用の点列の座標系に変換できるものである。すなわち、各テスト点は、それぞれテスト点に着弾する液滴Dを本成膜処理における温度分布の下で乾燥するとき、本成膜処理によって実現される膜厚分布と同じ傾向の膜厚分布を実現する点である。なお、本実施形態におけるテスト点は、本成膜処理における目標
点Tと同じ座標である。
【0079】
液滴吐出装置10は、乾燥後の液膜Fを所定の膜厚測定装置へ搬送させて、テスト温度分布TBで得られる乾燥後の膜厚分布を計測させることによりテスト成膜処理を終了する。本実施形態では、テスト成膜処理で得られる膜厚分布を、テスト膜厚分布KBという。テスト膜厚分布KBとは、テスト点の座標系において測定される膜厚値の分布であり、例えば図7(b)の破線に示すように、吐出面Saの+X方向に沿って連続的に計測される膜厚値の分布である。
【0080】
本成膜処理において、液滴吐出装置10は、まず、加熱面12aの上に本成膜用の基板Sを載置する。次いで、液滴吐出装置10は、テスト膜厚分布KBに基づいて各ヒータブロックHBを駆動することにより、吐出面Saにおけるテスト温度分布TBを補正温度分布TCに変更する。
【0081】
すなわち、液滴吐出装置10は、テスト点の座標系を本成膜用の座標系に変換することにより、テスト膜厚分布KBを、本成膜の座標系における膜厚分布に変換する。なお、本実施形態においては、各テスト点の座標と各目標点Tの座標とが同じであるため、以降においては、テスト膜厚分布KBを、本成膜の座標系における膜厚分布として扱う。
【0082】
液滴吐出装置10は、変換されたテスト膜厚分布KB、すなわち本成膜の座標系における膜厚分布に基づき、相対的に厚い膜を有する座標を厚膜点として選択する。液滴吐出装置10は、吐出領域Rにおいて厚膜点を相対的に低温にするための温度分布を形成する。また、液滴吐出装置10は、テスト膜厚分布KBに基づき、目標点Tの座標系において相対的に薄い膜を有する座標を薄膜点として選択する。液滴吐出装置10は、吐出領域Rにおいて薄膜点を相対的に高温にするための温度分布を形成する。
【0083】
例えば、液滴吐出装置10は、図7(c)の破線に示すように、テスト膜厚分布KBに基づいて、相対的に厚い膜を有する座標Xe1,Xe2を厚膜点として選択する。また、液滴吐出装置10は、テスト膜厚分布KBに基づいて、相対的に薄い膜を有する座標Xm1,Xm2,Xm3を薄膜点として選択する。液滴吐出装置10は、図7(b)の実線に示すように、厚膜点(Xe1,Xe2)を相対的に低温にするための温度分布を形成し、かつ、薄膜点(Xm1,Xm2,Xm3)を相対的に高温にするための温度分布、すなわち補正温度分布TCを吐出面Saに形成する。
【0084】
液滴吐出装置10は、吐出面Saに補正温度分布TCを形成すると、第一実施形態と同じく、吐出面Saの各目標点Tに液滴Dを吐出して各吐出領域Rに液膜Fを形成し、補正温度分布TCの下で各液膜Fを乾燥する。これにより、液滴吐出装置10は、テスト成膜処理に基づいて得られる膜厚分布と温度分布の関係を、本成膜処理に反映させることができる。そのため、液滴吐出装置10は、図7(c)の実線に示すように、乾燥後の膜厚分布(本成膜膜厚分布KC)を、より均一にすることができる。
【0085】
次に、上記のように構成する第二実施形態の液滴吐出装置10の電気的構成を図8に従って説明する。
図8において、入出力装置31は、テスト成膜処理と本成膜処理とを選択するための選択スイッチを有する。制御部30は、入出力装置31からテスト成膜処理を選択するための選択信号が入力されるときにテスト成膜処理を実行する。また、制御部30は、入出力装置31から本成膜処理を選択するための選択信号が入力されるときに本成膜処理を実行する。
【0086】
制御部30は、入出力装置31から既定形式のプロセスデータIpを受信する。テスト
成膜処理を実行するとき、プロセスデータIpは、テスト温度分布TBとテスト点に関するデータを有する。また、本成膜処理を実行するとき、プロセスデータIpは、テスト温度分布TBとテスト膜厚分布KBに関するデータを有する。
【0087】
制御部30は、テスト成膜処理を実行するとき、入出力装置31からのプロセスデータIpに所定の展開処理を施して、テスト温度分布TBを形成するための各ヒータブロックHBの出力に関するデータを、目標温度データHCDとして生成する。制御部30は、目標温度データHCDを参照して、テスト温度分布TBを形成するためのヒータ駆動信号SHを生成して、ヒータ駆動回路36にヒータ駆動信号SHを出力する。ヒータ駆動回路36は、制御部30からのヒータ駆動信号SHに応答して各ヒータブロックHBを駆動させ、これによって吐出面Saにテスト温度分布TBを形成する。
【0088】
制御部30は、テスト成膜処理を実行するとき、入出力装置31からのプロセスデータIpに所定の展開処理を施して、各テスト点に液滴Dを吐出するためのドットパターンデータDPDを生成する。制御部30は、第一実施形態と同じく、ドットパターンデータDPDを用いて各テスト点に液滴Dを着弾させる。
【0089】
制御部30は、本成膜処理を実行するとき、入出力装置31からのプロセスデータIpに所定の展開処理を施して厚膜点と薄膜点を選択して補正温度分布TCに関するデータを目標温度データHCDとして生成する。すなわち、制御部30は、補正温度分布TCを形成するための各ヒータブロックHBの出力に関するデータを目標温度データHCDとして生成する。
【0090】
制御部30は、目標温度データHCDを参照して、補正温度分布TCを形成するためのヒータ駆動信号SHを生成し、ヒータ駆動回路36にヒータ駆動信号SHを出力する。ヒータ駆動回路36は、制御部30からのヒータ駆動信号SHに応答して各ヒータブロックHBを駆動させ、これによって吐出面Saに補正温度分布TCを形成する。
【0091】
次に、上記のように構成した第二実施形態の効果を以下に記載する。
(5)上記第二実施形態においては、テスト点の各々に液滴Dを着弾させて液膜Fを形成し、該液膜Fをテスト温度分布TBの下で乾燥することにより、テスト膜厚分布KBを得る、すなわちテスト成膜処理を実行する。そして、本成膜処理を実行するとき、目標点Tの各点に液滴Dを着弾させて液膜Fを形成し、該液膜Fを、テスト膜厚分布KBとテスト温度分布TBに基づいて形成する補正温度分布TCの下で乾燥する。
【0092】
したがって、本成膜処理における補正温度分布TCは、テスト温度分布TBの下の乾燥によって相対的に厚い膜になり得る座標を、相対的に低温に補正できる。また、テスト温度分布TBの下の乾燥により相対的に薄い膜になり得る座標を、相対的に高温に補正できる。よって、本成膜処理における液膜Fは、相対的に厚い膜になり得る部分の蒸発確率を低くすることができ、かつ、相対的に薄い膜になり得る部分の蒸発確率を高くすることができる。この結果、本成膜処理における液膜Fは、液滴Dからなる膜の膜厚均一性を、より確実に向上させることができる。
【0093】
(6)上記第二実施形態においては、+X方向における液膜Fの両端部分と中間部分との間が、補正温度分布TCによって、それぞれ中間部分よりも高温になる。したがって、液膜Fの両端部分の近傍は、中央部分に比べて高温になる分だけ、蒸発確率を高くする。よって、両端部分の近傍の膜材料が、両端部分に流動し難くなる。そのため、上記第二実施形態の成膜方法によれば、液膜Fを乾燥させて形成する膜の膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
【0094】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第一実施形態においては、加熱面12aと基板Sとの間に、熱伝導部材26が挟入される。これに限らず、例えば加熱面12aが凹凸形状を呈し、該凹部を低伝導領域Reとする構成であってもよい。
【0095】
・上記第一実施形態においては、伝導面26aが平面である。これに限らず、図9に示すように、伝導面26aを曲面にしてもよい。これによれば、吐出面Saにおける急峻な温度変化が抑えられる。
【0096】
・上記第一実施形態においては、隣接する熱伝導部材26の間の空間が中空である。これに限らず、例えば隣接する熱伝導部材26の間の空間は、空気や冷却水等の冷媒の流動より、低伝導領域Reの低温化を図る構成にしても良い。また、隣接する熱伝導部材26の間の空間は、熱伝導性の低い部材を有することにより、低伝導領域Reの低温化を図る構成にしても良い。あるいは、伝導面26aの領域にペルティエ素子の加熱部を配設し、上記空間の領域に該ペルティエ素子の冷却部を配設する構成でも良い。これらによれば、液滴吐出装置10は、低伝導領域Reの温度範囲を拡張させることができる。
【0097】
・上記実施形態においては、ノズル列の数量が一列であるが、これに限らず、ノズル列の数量は、2列以上であっても良い。
・上記実施形態においては、液滴吐出ヘッド20の数量が1つであるが、これに限らず、液滴吐出ヘッド20の数量は、2以上であっても良い。
【0098】
・上記実施形態において、ヒータHあるいはヒータブロックHBは、液滴Dを吐出するときに吐出領域Rを加熱する。これに限らず、例えばヒータHあるいはヒータブロックHBは、吐出領域Rに液膜Fが形成された後に、吐出領域Rを加熱する構成であっても良い。
【0099】
・上記実施形態において、液滴吐出装置10は、液滴吐出ヘッド20と乾燥部の双方を有する。これに限らず、液滴吐出装置10は、乾燥部を有しない構成であってもよく、この際、乾燥部(基板ステージ12、ヒータH、熱伝導部材26)を、別途、乾燥装置として構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】第一実施形態の液滴吐出装置を示す斜視図。
【図2】同じく、液滴吐出ヘッドを示す斜視図。
【図3】同じく、液滴吐出ヘッドの内部を示す側面図。
【図4】同じく、液滴の吐出位置を示す平面図。
【図5】(a)、(b)は、それぞれ第一実施形態の基板ステージを示す平面図、及び側断面図。
【図6】同じく、液滴吐出装置の電気的構成を示す電気ブロック回路図。
【図7】(a)、(b)、(c)は、それぞれ第二実施形態の基板ステージを示す側断面図、基板ステージの温度プロファイルを示す図、及び液膜の膜厚プロファイルを示す図。
【図8】同じく、液滴吐出装置の電気的構成を示す電気ブロック回路図。
【図9】変更例の基板ステージを示す側断面図。
【図10】(a)、(b)は、それぞれ従来例の液滴吐出処理を示す平面図、及び側断面図。
【図11】(a)、(b)は、それぞれ従来例の液滴吐出処理を示す平面図、及び側断面図。
【符号の説明】
【0101】
D…液滴、F…液膜、H…ヒータ、Ik…インク、N…ノズル、R…吐出領域、S…基板、Sa…吐出面、10…液滴吐出装置、20…液滴吐出ヘッド、26…熱伝導部材、30…制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、
前記対象物上の点列の各点に前記液滴を着弾させることによって前記点列上に液膜を形成する工程と、
前記点列の列方向における所定幅の両端部分が前記列方向の中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を乾燥する工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜方法であって、
前記液膜を形成する工程は、
前記列方向に配列する複数のノズルの各々から前記点列の各点に同じタイミングで前記液滴を着弾させることにより前記液膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成膜方法であって、
前記液膜を形成する工程は、
前記列方向に配列する複数のノズルの各々から前記点列の各点に同じタイミングで前記液滴を着弾させるとともに、前記複数のノズルと前記対象物とを前記列方向と交差する方向に相対移動させることにより前記交差する方向に連続する液膜を形成し、
前記液膜を乾燥する工程は、
前記列方向における所定幅の両端部分と、前記交差する方向における所定幅の両端部分とが前記中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を乾燥することを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の成膜方法であって、
前記液膜を乾燥する工程は、
前記両端部分と前記中間部分との間が、それぞれ前記中間部分よりも高温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を乾燥することを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、
対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列に第一液膜を形成し、前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成する工程と、
前記第一点列の座標系における前記第一膜の膜厚分布を計測する工程と、
対象物上の第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列に第二液膜を形成する工程と、
前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に厚い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも低温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、
対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列に第一液膜を形成し、前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成する工程と、
前記第一点列の座標系における前記第一膜の膜厚分布を計測する工程と、
対象物上の第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列に第二液膜を形成する工程と、
前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に薄い膜厚値の座標を、前記所定温度より高温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部とを有する成膜装置であって、
前記液滴吐出ヘッドは、前記対象物上の点列の各点に前記液滴を着弾させることによって前記点列上に液膜を形成し、
前記乾燥部は、前記列方向における所定幅の両端部分が前記列方向の中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成することにより前記対象物に前記膜を形成することを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項7に記載の成膜装置であって、
前記乾燥部は、
前記対象物と対向する加熱面を有するヒータと、
前記中間部分に対向する前記加熱面上の領域に配置されて、前記対象物と当接することにより、前記加熱面から受ける熱を前記中間部分に伝導する熱伝導部材と、
を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
請求項7に記載の成膜装置であって、
前記乾燥部は、
前記列方向に配列して前記対象物と熱的に接触する複数のヒータを有することを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部と、前記液滴吐出ヘッドと前記乾燥部とを制御する制御部とを有する成膜装置であって、
前記制御部は、
前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列上に第一液膜を形成し、前記乾燥部を駆動して前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成し、
前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上に第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列上に第二液膜を形成し、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記乾燥部を駆動して前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に厚い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも低温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥することを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部と、前記液滴吐出ヘッドと前記乾燥部とを制御する制御部とを有する成膜装置であって、
前記制御部は、
前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列上に第一液膜を形成し、前記乾燥部を駆動して前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成し、
前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上に第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列上に第二液膜を形成し、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標
系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記乾燥部を駆動して前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に薄い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも高温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥することを特徴とする成膜装置。
【請求項1】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、
前記対象物上の点列の各点に前記液滴を着弾させることによって前記点列上に液膜を形成する工程と、
前記点列の列方向における所定幅の両端部分が前記列方向の中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を乾燥する工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜方法であって、
前記液膜を形成する工程は、
前記列方向に配列する複数のノズルの各々から前記点列の各点に同じタイミングで前記液滴を着弾させることにより前記液膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成膜方法であって、
前記液膜を形成する工程は、
前記列方向に配列する複数のノズルの各々から前記点列の各点に同じタイミングで前記液滴を着弾させるとともに、前記複数のノズルと前記対象物とを前記列方向と交差する方向に相対移動させることにより前記交差する方向に連続する液膜を形成し、
前記液膜を乾燥する工程は、
前記列方向における所定幅の両端部分と、前記交差する方向における所定幅の両端部分とが前記中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を乾燥することを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の成膜方法であって、
前記液膜を乾燥する工程は、
前記両端部分と前記中間部分との間が、それぞれ前記中間部分よりも高温になる温度分布を前記液膜に形成して前記液膜を乾燥することを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、
対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列に第一液膜を形成し、前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成する工程と、
前記第一点列の座標系における前記第一膜の膜厚分布を計測する工程と、
対象物上の第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列に第二液膜を形成する工程と、
前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に厚い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも低温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出し、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する成膜方法であって、
対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列に第一液膜を形成し、前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成する工程と、
前記第一点列の座標系における前記第一膜の膜厚分布を計測する工程と、
対象物上の第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列に第二液膜を形成する工程と、
前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に薄い膜厚値の座標を、前記所定温度より高温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥する工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部とを有する成膜装置であって、
前記液滴吐出ヘッドは、前記対象物上の点列の各点に前記液滴を着弾させることによって前記点列上に液膜を形成し、
前記乾燥部は、前記列方向における所定幅の両端部分が前記列方向の中間部分よりも低温になる温度分布を前記液膜に形成することにより前記対象物に前記膜を形成することを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項7に記載の成膜装置であって、
前記乾燥部は、
前記対象物と対向する加熱面を有するヒータと、
前記中間部分に対向する前記加熱面上の領域に配置されて、前記対象物と当接することにより、前記加熱面から受ける熱を前記中間部分に伝導する熱伝導部材と、
を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
請求項7に記載の成膜装置であって、
前記乾燥部は、
前記列方向に配列して前記対象物と熱的に接触する複数のヒータを有することを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部と、前記液滴吐出ヘッドと前記乾燥部とを制御する制御部とを有する成膜装置であって、
前記制御部は、
前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列上に第一液膜を形成し、前記乾燥部を駆動して前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成し、
前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上に第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列上に第二液膜を形成し、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記乾燥部を駆動して前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に厚い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも低温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥することを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
膜材料を含む液状体を複数の液滴にして対象物に吐出する液滴吐出ヘッドと、前記対象物上の前記液状体を乾燥することにより前記対象物に膜を形成する乾燥部と、前記液滴吐出ヘッドと前記乾燥部とを制御する制御部とを有する成膜装置であって、
前記制御部は、
前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上の第一点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第一点列上に第一液膜を形成し、前記乾燥部を駆動して前記第一液膜を所定温度で乾燥することにより第一膜を形成し、
前記液滴吐出ヘッドを駆動して対象物上に第二点列の各点に前記液滴を着弾させることにより前記第二点列上に第二液膜を形成し、前記第一点列の座標系を前記第二点列の座標
系に変換することにより、前記第一膜の膜厚分布を前記第二点列の座標系における膜厚分布に変換し、前記乾燥部を駆動して前記第二点列の座標系における膜厚値の中で相対的に薄い膜厚値の座標を、前記所定温度よりも高温にする温度分布を前記第二液膜に形成して前記第二液膜を乾燥することを特徴とする成膜装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−34615(P2009−34615A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201979(P2007−201979)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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