説明

成膜方法、発光素子及び発光装置

【課題】支持基板上に形成した昇華温度が異なる2種以上の成膜材料を含む材料層を、加熱処理により被成膜基板上に成膜する方法において、昇華温度の異なる2種以上の成膜材料が濃度勾配を生じることなく成膜されることを課題の一つとする。
【解決手段】基板の一方の面上に形成される吸収層と、吸収層上に形成され、第1の成膜材料、第2の成膜材料及び下記数式(1)を満たす高分子化合物を含む材料層とを有する第1の基板の一方の面と、第2の基板の被成膜面とを対向させて配置し、第1の基板の他方の面側から加熱処理をすることで、第2の基板の被成膜面に第1の成膜材料と第2の成膜材料とを含む層を形成する成膜方法。


(式(1)中、Sは、高分子化合物のガラス転移温度(℃)を示し、Tは、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度(℃)のうち高い温度(℃)を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に膜を形成する成膜方法に関する。また、該成膜方法により作製した発光素子に関する。また、該発光素子を有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型軽量、高速応答性、直流低電圧駆動などの特徴を有する有機化合物を発光体として用いた発光素子は、次世代のフラットパネルディスプレイへの応用が期待されている。特に、発光素子をマトリクス状に配置した表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、視野角が広く視認性が優れる点に優位性があると考えられている。
【0003】
発光素子の発光機構は、一対の電極間にエレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence、以下ELとも記す)層を挟んで電圧を印加することにより、陰極から注入された電子及び陽極から注入された正孔がEL層の発光中心で再結合して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に緩和する際にエネルギーを放出して発光するといわれている。励起状態には一重項励起と三重項励起が知られ、発光はどちらの励起状態を経ても可能であると考えられている。
【0004】
発光素子を構成するEL層は、少なくとも発光層を有する。また、EL層は、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などを有する積層構造とすることもできる。
【0005】
また、EL層を形成するEL材料は低分子系(モノマー系)材料と高分子系(ポリマー系)材料に大別される。一般に、低分子系材料は蒸着法を用いて成膜され、高分子系材料はインクジェット法やスピンコート法などを用いて成膜されることが多い。
【0006】
蒸着法の場合に用いられる蒸着装置は、基板を設置する基板ホルダと、EL材料、つまり蒸着材料を封入したルツボ(または蒸着ボート)と、ルツボ内のEL材料を加熱するヒータと、昇華するEL材料の拡散を防止するシャッターとを有しており、ヒータにより加熱されたEL材料が昇華し、基板に成膜される構成となっている。
【0007】
しかし、実際には均一に膜を成膜するために、被成膜基板を回転させることや、基板とルツボとの間の距離を一定以上離すことが必要となる。また、複数のEL材料を用いてメタルマスクなどのシャドーマスクを介した塗り分けを行う場合には、異なる画素間の間隔を広く設計し、画素間に設けられる絶縁物からなる隔壁の幅を広くすることが必要となる。このため、発光素子を含む発光装置の高精細化(画素数の増大)及び小型化に伴う各表示画素ピッチの微細化が大きな課題となっている。また、同時に生産性の向上や低コスト化を図ることが要求されている。
【0008】
これに対して、熱転写により、発光素子のEL層を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、蒸着材料とバインダ材料の混合物で構成される材料層を有する蒸着源基板について記載されている。このような蒸着源基板を加熱処理することにより、蒸着材料層を被成膜基板に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−291352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ハロゲンランプやフラッシュランプなどの光源またはヒータなどの熱源を用いて、昇華温度が異なる2種類以上の成膜材料を含む材料層の熱転写を行うと、光源又は熱源による加熱時間が長いため昇華温度の低い材料から先に転写され、その後遅れて昇華温度の高い材料が転写されて被成膜基板に成膜される。そのため、被成膜基板上の蒸着材料層の内部には昇華温度の低い材料が多く含まれ、蒸着材料層の表面部には昇華温度の高い材料が多く含まれる。つまり、蒸着材料層中で、複数の成膜材料が均一に分散されず、濃度勾配が生じてしまう。
【0011】
このように、昇華温度の違いにより、被成膜基板上に濃度勾配のついた蒸着材料層が形成されると、発光色など発光素子の特性に悪影響を与える恐れがある。
【0012】
そこで本発明の一態様は、支持基板上に形成した昇華温度が異なる2種以上の成膜材料を含む材料層を、加熱処理により被成膜基板上に成膜する方法において、昇華温度の異なる2種以上の成膜材料が濃度勾配を生じることなく成膜されることを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、該成膜方法を用いて作製する発光素子の提供も課題の一つとする。また、本発明の一態様は、該発光素子を有する発光装置の提供も課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、少なくとも吸収層及び材料層を含み、該材料層には、少なくとも第1の成膜材料、第2の成膜材料及び下記数式(1)を満たす高分子化合物を含む成膜用基板を用い、材料層が形成された該成膜用基板の他方の面側から加熱処理をすることにより、加熱された材料層に含まれる第1の成膜材料及び第2の成膜材料が被成膜基板に成膜され、EL層を形成する成膜方法により解決することができる。
【0014】
【数1】

(式(1)中、Sは、高分子化合物のガラス転移温度(℃)を示し、Tは、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度(℃)のうち高い温度(℃)を示す)
【0015】
本発明の一態様は、基板の一方の面上に形成される吸収層と、吸収層上に形成され、第1の成膜材料、第2の成膜材料及び上記数式(1)を満たす高分子化合物を含む材料層とを有する第1の基板の一方の面と、第2の基板の被成膜面とを対向させて配置し、第1の基板の他方の面側から材料層に加熱処理をすることで、第2の基板の被成膜面に第1の成膜材料と第2の成膜材料とを含む層を形成する成膜方法である。
【0016】
また、本発明の一態様は、上記構成において、吸収層が、島状またはストライプ状に形成されている成膜方法である。
【0017】
また、本発明の一態様は、上記構成において、材料層は、島状またはストライプ状に形成されている成膜方法である。
【0018】
また、本発明の一態様は、上記構成において、第1の基板と吸収層との間に、開口部を有する反射層が形成されている成膜方法である。
【0019】
また、本発明の一態様は、上記構成において、反射層と吸収層との間に、反射層の開口部と重なる位置に開口部を有する断熱層を形成する成膜方法である。
【0020】
また、本発明の一態様は、上記構成において、吸収層と材料層との間に、保護層が形成されている成膜方法である。
【0021】
また、本発明の一態様は、上記構成において、高分子化合物としてシクロオレフィンポリマーを用いる成膜方法である。
【0022】
また、本発明の一態様は、上記構成において、材料層が、蒸着法、スパッタ法、スピンコート法、印刷法、液滴吐出法、スプレー法、滴下法、インクジェット法、ノズルプリンティング法又はディスペンス法により吸収層上に形成される成膜方法である。
【0023】
また、本発明の一態様は、上記構成において、加熱処理として、光源を用いて第1の基板の他方の面側から光を照射し、吸収層が光を吸収することで加熱される方式を用いる成膜方法である。
【0024】
また、本発明の一態様は、上記構成において、光源としてレーザ発振装置、フラッシュランプ又はハロゲンランプを用いる成膜方法である。
【0025】
また、本発明の一態様は、上記構成の成膜方法を用いて作製した発光素子である。また、本発明の一態様の発光素子を有する発光装置も本発明に含むものとする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様は、昇華温度が異なる2種以上の成膜材料を含む材料層を、加熱処理によって被成膜基板上に成膜しても、昇華温度の異なる2種以上の成膜材料が濃度勾配を生じることなく成膜される成膜方法を提供することができる。また、本発明の一態様は、該成膜方法を用いて、発光色などの特性が安定な発光素子を提供することができる。また、本発明の一態様は、該発光素子を有する信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一態様の成膜方法について説明する図。
【図2】本発明の一態様の成膜方法について説明する図。
【図3】本発明の一態様の成膜方法について説明する図。
【図4】発光素子の例を示す図。
【図5】パッシブマトリクス型の発光装置の例を示す図。
【図6】パッシブマトリクス型の発光装置の例を示す図。
【図7】アクティブマトリクス型の発光装置の例を示す図。
【図8】電子機器の例を示す図。
【図9】フォトルミネッセンススペクトルを示す図。
【図10】ToF−SIMSの結果を示す図。
【図11】ToF−SIMSの結果を示す図。
【図12】ToF−SIMSの結果を示す図。
【図13】フォトルミネッセンススペクトルを示す図。
【図14】フォトルミネッセンススペクトルを示す図。
【図15】フォトルミネッセンススペクトルを示す図。
【図16】フォトルミネッセンススペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の成膜方法について説明する。なお、本実施の形態では、本発明の一態様の成膜方法を利用して、発光素子のEL層を形成する場合について説明する。また、本実施の形態は、光源を用いて加熱処理を行う場合について説明する。図1(A)は本発明の一態様の成膜用基板を示す斜視図であり、図1(B)及び図1(C)は本発明の一態様の成膜方法についての概念を示す斜視図である。
【0030】
図1(A)において、支持基板である第1の基板101の一方の面上に吸収層103が形成されている。また、吸収層103上に、第1の成膜材料105a、第2の成膜材料105b及び高分子化合物105cを含む第1の材料層105が形成されている。
【0031】
図1(A)に示した成膜用基板の作製方法について説明する。
【0032】
はじめに、第1の基板101の一方の面上に吸収層103を形成する。第1の基板101は、吸収層、材料層などの支持基板であり、材料層を被成膜基板に成膜するために照射する光を透過する基板である。よって、第1の基板101は光の透過率が高い基板であることが好ましい。具体的には、第2の材料層を成膜するためにランプ光やレーザ光を用いる場合、第1の基板101として、それらの光を透過する基板を用いることが好ましい。第1の基板101としては、例えば、ガラス基板、石英基板、無機材料を含むプラスチック基板などを用いることができる。
【0033】
吸収層103は、第1の材料層105を加熱するために照射する光を吸収して、熱へと変換する層である。吸収層103は、照射される光に対して70%以下の低い反射率を有し、また、高い吸収率を有する材料で形成されていることが好ましい。また、吸収層103は、それ自体が熱によって変化しないように、耐熱性に優れた材料で形成されていることが好ましい。吸収層103に用いることができる材料としては、例えば、窒化チタン、窒化タンタル、窒化モリブデン、窒化タングステン、窒化クロム、窒化マンガンなどの金属窒化物や、モリブデン、チタン、タングステン、カーボンなどを用いることが好ましい。
【0034】
吸収層103は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法で、モリブデン、タンタル、チタン、タングステンなどのターゲット、またはこれらの合金を用いたターゲットを用い、吸収層103を形成することができる。また、吸収層103は一層に限らず複数の層により構成されていても良い。
【0035】
吸収層103の膜厚は、照射される光が透過しない膜厚であることが好ましい。材料によって異なるが、100nm以上2μm以下の膜厚であることが好ましい。特に、吸収層103の膜厚を100nm以上600nm以下とすることで、照射される光を効率良く吸収して発熱させることができる。
【0036】
なお、吸収層103は、第1の材料層105に含まれる第1の成膜材料105a及び第2の成膜材料105bが昇華温度まで加熱されるのであれば、照射する光の一部が透過しても良い。ただし、一部が透過する場合には、光が照射しても分解しない材料を、第1の材料層105に用いることが好ましい。
【0037】
次に、吸収層103上に、少なくとも第1の成膜材料105a、第2の成膜材料105b及び高分子化合物105cを含む第1の材料層105を形成する。第1の材料層105は、被成膜基板上に成膜する第1の成膜材料105a及び第2の成膜材料105bを含んで形成される層である。本実施の形態では第1の材料層105に第1の成膜材料105aと第2の成膜材料105bの二種を用いたが、第1の材料層105としては三種以上の成膜材料を用いることもできる。また、第1の材料層105は単層でも良いし、複数の層が積層されていても良い。
【0038】
第1の材料層105は、種々の方法により形成される。例えば、湿式法であるスピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、ノズルプリンティング法又は印刷法等を用いることができる。また、乾式法である真空蒸着法、スパッタリング法等を用いることができる。
【0039】
湿式法を用いて第1の材料層105を形成する場合には、所望の第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を溶媒に溶解あるいは分散させ、溶液あるいは分散液を調整すれば良い。溶媒は、第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を溶解あるいは分散させることができ、且つ第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、或いはクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、或いはシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、或いはキシレンなどの芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、或いは炭酸ジエチルなどのエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、或いはジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、或いはジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、又は水等を用いることができる。また、これら溶媒の複数種を混合して用いても良い。湿式法を用いることにより、材料の利用効率を高めることができ、製造コストを低減させることができる。
【0040】
なお、後の工程で被成膜基板である第2の基板107上に形成される第2の材料層109の膜厚は、支持基板である第1の基板上に形成された第1の材料層105に依存する。そのため、第1の材料層の膜厚を制御することにより、容易に被成膜基板である第2の基板107上に形成される第2の材料層109の膜厚を制御することができる。なお、第2の材料層の膜厚および均一性が保たれるのであれば、第1の材料層105は必ずしも均一の層である必要はない。例えば、微細な島状に形成されていてもよいし、凹凸を有する層状に形成されていてもよい。
【0041】
本実施の形態では、被成膜基板上に発光素子のEL層を形成するために、第1の材料層105に含まれる第1の成膜材料105aとして、発光物質を用い、かつ第2の成膜材料105bとして、発光物質を分散する有機化合物を用いる。
【0042】
発光物質としては、例えば蛍光を発光する蛍光性化合物や、燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0043】
発光物質としては、以下に示す燐光性化合物を用いることができる。ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))などが挙げられる。
【0044】
また、発光物質としては、以下に示す蛍光性化合物を用いることができる。例えば、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、9,10−ジフェニル−2−[N−フェニル−N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アミノ]アントラセン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン、(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,13−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙げられる。
【0045】
発光物質を分散する有機化合物としては、発光物質が蛍光性化合物の場合には、蛍光性化合物よりも一重項励起エネルギー(基底状態と一重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。また、発光物質が燐光性化合物の場合には、燐光性化合物よりも三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。
【0046】
発光物質を分散する有機化合物としては、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)などの複素環化合物、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物が挙げられる。また、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、9,10−ジフェニル−2−[N−フェニル−N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アミノ]アントラセン(略称:2PCAPA)、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、9−[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)などを挙げることができる。
【0047】
なお、第1の材料層105に含まれる成膜材料として、発光物質を分散させる有機化合物を2種類以上用いても良いし、有機化合物に分散される発光物質を2種類以上用いても良い。また、2種類以上の発光物質を分散させる有機化合物と2種類以上の発光物質を用いても良い。
【0048】
第1の材料層105に含まれる高分子化合物105cとしては、ガラス転移温度が下記数式(1)を満たす高分子化合物を用いる。さらに好ましくは、ガラス転移温度が下記数式(2)を満たす高分子化合物を用いる。なお、下記数式(1)(2)において、第1の成膜材料及び第2の成膜材料の昇華温度は同じ真空度(例えば真空度10−3Pa)で測定することとする。
【0049】
【数2】

(式(1)(2)中、Sは高分子化合物のガラス転移温度(℃)を示し、Tは、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度(℃)のうち高い温度(℃)を示す)
【0050】
高分子化合物のガラス転移温度が上記数式(1)、好ましくは上記数式(2)を満たす範囲であれば、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度のうち低い温度に達しても、昇華温度に達した成膜材料は第1の材料層から転写されにくい。これは、高分子化合物によって、第1の成膜材料及び第2の成膜材料が第1の材料層中で移動することを抑制されるためである。そして、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度のうち高い温度を超えると、第1の成膜材料及び第2の成膜材料は第1の材料層中を移動することが容易となり、被成膜基板上に転写される。よって、第1の成膜材料の転写と第2の成膜材料の転写に時間差が生じにくくなり、被成膜基板上に濃度勾配の少ないEL層を形成することができる。
【0051】
しかし、高分子化合物のガラス転移温度が上記数式(1)の範囲より低いと、第1の成膜材料及び第2の成膜材料は第1の材料層中で移動することを抑制されにくいため、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度のうち低い温度に達すると、昇華温度の低い成膜材料が先に転写され、その後、昇華温度の高い成膜材料が転写される。また、高分子化合物のガラス転移温度が上記数式(1)の範囲より高いと、第1の成膜材料及び第2の成膜材料の昇華温度のうち高い温度を越えた後も、第1の成膜材料及び第2の成膜材料は第1の材料層中で移動することが抑制され、転写が容易に行われなくなる。
【0052】
よって、高分子化合物105cとしては、ガラス転移温度が上記数式(1)、好ましくは上記数式(2)を満たす高分子化合物を用いる。なお、本実施の形態において、転写とは、第1の材料層に含まれる第1の成膜材料又は第2の成膜材料が、被成膜基板上に移されることを示す。
【0053】
第1の材料層105に含まれる高分子化合物105cとしては、シクロオレフィンポリマーが好ましい。シクロオレフィンポリマーは溶媒に溶けやすいため、被成膜基板に成膜した後、成膜用基板上に残った第1の成膜材料及び第2の成膜材料を含むシクロオレフィンポリマーを溶媒に再溶解することで、成膜用基板を再利用することが可能である。したがって、材料の消費量及びコストを抑えることができる。また、高分子化合物として、オレフィン、ビニル、アクリル又はポリイミド(PI)等を用いてもよいし、高分子材料のEL材料を用いても良い。高分子材料のEL材料としては、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)やポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)が挙げられる。また、エポキシ樹脂、アクリル樹脂やシロキサンのような架橋型ポリマーを用いても良い。なお、本明細書中において、高分子化合物とは、1種もしくは複数種の単量体(モノマー)による繰り返し構造を持つ重合体(ポリマー)を意味する。
【0054】
高分子化合物は粘度の調整が容易であるため、用途に応じて高分子化合物の溶液の粘度を自由に調整できる。例えば、液滴吐出法により第1の材料層105が形成される場合、高分子化合物の溶液の粘度を高めることで、被成膜面上に高分子化合物が拡がらず、微細なパターンを形成することができる。
【0055】
高分子化合物の溶液の粘度の調整は、高分子化合物の分子量を調整する、又は高分子化合物と溶媒の比率を変えることで実現することができる。一般に、高分子化合物の比率が高くなると、溶液の粘度が高くなる。
【0056】
また、本実施の形態では吸収層103及び第1の材料層105が第1の基板101の全面に形成された場合について説明したが、吸収層103及び第1の材料層105は選択的に形成されても良い。
【0057】
なお、本実施の形態では、第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含む材料層が形成された、被成膜基板と同程度の面積を有する支持基板を用いているが、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、被成膜基板と同程度の面積を有する支持基板でなくとも良い。
【0058】
次に、図1(B)に示すように、第1の基板101において、吸収層103及び第1の材料層105が形成された面に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板107を配置する。第2の基板107は加熱処理により所望の層が成膜される被成膜基板である。第2の基板107は、必要な耐熱性を有していて表面に絶縁性を有する基板であれば特定のものに限定されない。例えば、ガラス基板、石英基板、絶縁膜を形成したステンレス基板等が挙げられる。また、加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有するプラスチック基板を用いても良い。
【0059】
なお、図1には示していないが、ここでは本発明の一態様の成膜用基板を用いて発光素子のEL層を形成する場合について説明するため、第2の基板107上には、発光素子の一方の電極となる第1の電極層を有している。第1の電極層の端部は、絶縁物で覆われていることが好ましい。本実施の形態において、第1の電極層は、発光素子の陽極あるいは陰極となる電極を示している。
【0060】
第1の材料層105の表面と第2の基板107の表面は、距離dだけの間隔をとって配置される。ここで、距離dは、0mm以上2mm以下、好ましくは0mm以上0.05mm以下、さらに好ましくは0mm以上0.03mm以下とする。距離dを上記の範囲程度まで小さくすることで、第1の成膜材料及び第2の成膜材料の利用効率を向上させることができる。本実施の形態では、材料の利用効率を向上させるために、成膜用基板と被成膜基板の間隔を狭くしている(距離dを小さくなるように配置している)が、本実施の形態はこれに限定されるものではない。
【0061】
なお、距離dは、第1の基板上の第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含んだ第1の材料層の表面と、第2の基板の表面との距離で定義するものとする。ただし、第2の基板上に何らかの膜(例えば、電極として機能する導電膜又は隔壁等)が形成され、第2の基板表面に凹凸を有する場合、距離dは、第1の基板上の第1の材料層の表面と、第2の基板に形成された層の最表面、即ち、これらの膜(導電膜又は隔壁等)の表面との距離で定義するものとする。
【0062】
また、本実施の形態では被成膜基板が一である場合について説明したが、成膜用基板に対向するように複数の被成膜基板を並べて配置しても良い。この場合には複数の被成膜基板と成膜用基板の面積を同じ程度にする。成膜用基板に対して複数の被成膜基板を設けることで、複数の被成膜基板を同時に処理することができる。
【0063】
第1の材料層105の表面と、第2の基板107の被成膜面は互いに平行となるように配置することが好ましい。
【0064】
第1の基板101と第2の基板107は各々の表面が対向していればよく、これらの基板の水平面に対する角度は特に限定されない。即ち、本発明の一態様に用いる成膜装置はフェイスダウン方式でも良いし、フェイスアップ方式でも良いし、基板縦置き方式でも良い。
【0065】
そして、図1(C)に示すように、第1の基板101の裏面、すなわち第1の材料層105が形成された第1の基板101の他方の面側から加熱処理をすることにより、第1の材料層105中の、第1の成膜材料105a及び第2の成膜材料105bが、第2の基板107上に成膜される。これにより、第2の基板107上に、発光素子のEL層である第2の材料層109が形成される。加熱処理は、第1の基板101の全面を加熱するように行う。なお、第2の材料層109は、第1の材料層105の厚さよりも薄く形成される。また、第2の材料層109に、高分子化合物105cの分解物が混入することもある。よって、第2の材料層109に含まれる高分子化合物105cは分解物がEL層の特性に影響を及ぼさない材料であることが好ましい。
【0066】
本実施の形態において、加熱処理の温度は、第1の成膜材料及び第2の成膜材料の昇華温度を超えて、第1の成膜材料及び第2の成膜材料の昇華温度より50℃を超えない範囲で高く設定することが好ましい。また、第1の基板と第2の基板との距離、又は被成膜基板である第2の基板の材質と厚さによっては、熱源の輻射熱の影響を緩和するために、上記の温度範囲内で低めに設定しても良い。なお、ここで加熱処理の温度は第1の基板表面において計測したものである。
【0067】
また、第1の成膜材料及び第2の成膜材料の昇華温度のうち、最も高い昇華温度以上の温度となるよう、加熱処理を行うことが好ましい。この場合、昇華温度が最も高い成膜材料の昇華温度を超えて50℃までの温度範囲内で高めの温度に設定することが好ましいが、昇華温度が低い物質の分解温度、被成膜基板との距離、被成膜基板の材質及び厚さを考慮して、上記温度範囲内で低めの温度(ただし、昇華温度が最も高い物質の昇華温度以上とする)に設定しても良い。
【0068】
加熱処理は、ランプやレーザ発振装置により第1の基板101に光を照射する方法により行うことが好ましい。ランプやレーザ発振装置は、第1の基板101の裏面に光を照射できるように設置すれば良い。ここで、第1の基板101の裏面とは材料層が形成された面と対向する面をいう。
【0069】
ランプとしては、フラッシュランプ(キセノンフラッシュランプ、クリプトンフラッシュランプ等)、キセノンランプ、メタルハライドランプに代表される放電灯、ハロゲンランプ、タングステンランプに代表される発熱灯を用いることができる。フラッシュランプは短時間(0.1ミリ秒以上10ミリ秒以下)で非常に強度の高い光を繰り返し、大面積に照射することができるため、第1の基板101の面積にかかわらず、効率よく均一に加熱することができる。また、発光させる時間の間隔を変えることによって第1の基板101の加熱の制御もできる。また、フラッシュランプは寿命が長く、発光待機時の消費電力が低いため、ランニングコストを低く抑えることができる。また、フラッシュランプを用いることにより急加熱が容易となり、ヒータ等を用いた場合の上下機構やシャッター等を簡略化できる。従って、成膜装置を更に小型化できる。ただし、第1の基板101の材料に応じて加熱温度を調整できるように、フラッシュランプが上下移動できるような機構としても良い。
【0070】
また、ランプ以外の光源としては、レーザ発振装置を用いても良い。レーザ光としては、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。また、レーザ媒体が固体である固体レーザを用いると、メンテナンスフリーの状態を長く保てるという利点や、出力が比較的に安定している利点を有している。
【0071】
また、光照射による成膜は、減圧雰囲気下で行うことが好ましい。従って、成膜室内を5×10−3Pa以下、好ましくは10−4Pa以下の雰囲気とすることが好ましい。なお、本実施の形態では、光源を用いて加熱処理を行ったが、ヒータなどの熱源を用いて加熱処理を行っても良い。
【0072】
以上のように、本実施の形態に記載の成膜方法は、上記数式(1)、好ましくは上記数式(2)を満たす高分子化合物を第1の材料層に含むため、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度のうち、低い温度に達しても、昇華温度に達した成膜材料が第1の材料層から転写されにくい。そして、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度のうち高い温度を超えると、第1の成膜材料及び第2の成膜材料が第1の材料層中を移動することが容易となり、被成膜基板上に転写される。よって、第1の成膜材料の転写と第2の成膜材料の転写に時間差が生じにくくなり、被成膜基板上に濃度勾配の少ないEL層を形成することができる。
【0073】
なお、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0074】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の成膜方法について説明する。なお、本実施の形態では、本発明の一態様の成膜方法を用いて発光素子のEL層を形成する場合について説明する。なお、本実施の形態に示す成膜方法において、特に記載がない場合には、上記実施の形態と同様の材料及び作製方法によって行うものとする。
【0075】
図2には、第1の基板に反射層、断熱層及び保護層を形成する場合の一例を示している。図2(A)において、支持基板である第1の基板301の一方の面上に反射層302が選択的に形成されている。なお、反射層302は開口部312を有している。また、反射層302上に断熱層304が形成されている。なお、断熱層304は反射層302の有する開口部と重なる位置に開口部312が形成されている。また、反射層302及び断熱層304が形成された第1の基板301上に開口部を覆う吸収層303が形成されている。また、吸収層303上に、保護層306が形成されている。また、保護層306上に第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含む第1の材料層305が形成されている。
【0076】
なお、本明細書において、「重なる」とは、成膜用基板を構成する要素(例えば、反射層や吸収層等)同士が直接接して重なり合う場合だけでなく、間に別の層を介して重なり合う場合も含むものとする。
【0077】
図2(A)に示した成膜用基板の作製方法について以下に説明する。
【0078】
はじめに、第1の基板301の一方の面上に反射層302を選択的に形成する。反射層302は、第1の基板301に照射する光を反射して、反射層302と重なる領域に形成された第1の材料層305に、熱を与えないように遮断する層である。よって、反射層302は、照射する光に対して高い反射率を有する材料で形成されていることが好ましい。具体的には、反射層302は、照射される光に対して、反射率が85%以上、さらに好ましくは、反射率が90%以上の高い反射率を有する材料で形成されていることが好ましい。
【0079】
反射層302に用いることができる材料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、銅、アルミニウムを含む合金(例えば、アルミニウム−チタン合金、アルミニウム−ネオジム合金、アルミニウム−チタン合金)、または銀を含む合金(銀−ネオジム合金)などを用いることができる。
【0080】
なお、反射層302は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法などにより形成することができる。また、反射層302の膜厚は、材料により異なるが、100nm以上とすることが好ましい。100nm以上の膜厚とすることにより、照射した光が反射層302を透過することを抑制することができる。
【0081】
なお、第1の基板301に照射する光の波長により、反射層302に好適な材料の種類は変化する。また、反射層は一層に限らず複数の層により構成されていても良い。また、反射層を設けず第1の基板301上に直接吸収層303を形成しても良い。
【0082】
なお、反射層302と吸収層303の反射率は差が大きいほど好ましい。具体的には、照射する光の波長に対して、反射率の差が25%以上、より好ましくは30%以上であることが好ましい。
【0083】
また、反射層302に開口部を形成する際には種々な方法を用いることができるが、ドライエッチングを用いることが好ましい。ドライエッチングを用いることにより、開口部の側壁が鋭くなり、微細なパターンを成膜することができる。
【0084】
次に反射層302上に断熱層304を選択的に形成する。断熱層304は、反射層302と重なる領域に位置する第1の材料層305が加熱され昇華するのを抑制するための層である。断熱層304としては、例えば、酸化チタン、酸化珪素、酸化窒化珪素、酸化ジルコニウム、炭化チタン等を好ましく用いることができる。ただし断熱層304は、反射層302及び吸収層303に用いる材料よりも熱伝導率の低い材料を用いる。なお、本明細書において、酸化窒化物とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い物質である。
【0085】
断熱層304は、様々な方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、またはCVD法などにより形成することができる。また、断熱層の膜厚は、材料により異なるが、10nm以上2μm以下、好ましくは100nm以上600nm以下とすることができる。断熱層304を10nm以上2μm以下の膜厚とすることにより、反射層302が加熱された場合でも、反射層302の上に位置する第1の材料層に熱が伝導するのを遮断する効果を有する。
【0086】
また、断熱層304は、反射層302の開口部と重なる領域に開口部が形成されている。断熱層304のパターンを形成する際には、種々の方法を用いることができるが、ドライエッチングを用いることが好ましい。ドライエッチングを用いることにより、パターン形成された断熱層304の側壁が鋭くなり、微細なパターンを成膜することができる。
【0087】
なお、断熱層304と、反射層302のパターン形成を一度のエッチング工程によって行うと、断熱層304と反射層302に設けられる開口部の側壁をそろえることができ、より微細なパターンを成膜することができるため好ましい。
【0088】
また、本実施の形態において、断熱層304は反射層302と重なる位置のみに形成されているが、反射層302及び反射層302の開口部を覆って断熱層304を形成しても良い。この場合、断熱層304は可視光に対する透光性を有する必要がある。
【0089】
次に、断熱層304上に吸収層303を形成する。吸収層303は、実施の形態1で示した吸収層103と同様の材料を用いることができる。なお、吸収層303は選択的に形成しても良い。例えば、吸収層303を第1の基板301の全面に形成した後に、吸収層303をパターン形成して、反射層302及び断熱層304の開口部を覆うように島状にパターン形成する。この場合、全面に吸収層を形成する場合に比べ、吸収層内を面方向に熱が伝導することを防止できるため、より微細なEL層のパターン形成が可能となり、高性能な発光装置を実現することができる。
【0090】
次に、吸収層303上に保護層306を形成する。保護層306は、吸収層303に用いる物質が昇華し、被成膜基板上に形成するEL層に不純物として混入することを防ぐために形成する。また、保護層306は、吸収層303の酸化や変質、熱による変形を防止する。保護層306を形成することによって、吸収層303の劣化を防ぐことができるため、成膜用基板をより多く繰り返し利用することが可能である。したがって、材料の消費量及びコストを抑えることができる。保護層306としては、例えば、窒化珪素(SiNx)、窒化酸化珪素、酸化チタン、酸化珪素、酸化窒化珪素、酸化ジルコニウム、窒化チタン、炭化チタン、または酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)等により構成されている。保護層306の厚みは、吸収層303を良好に保護することができる程度であることが好ましく、例えば100nm程度とすることができる。なお、保護層306は設けなくても良い。また、保護層306は吸収層303と重なる部分に選択的に形成しても良い。
【0091】
次に、保護層306上に、第1の材料層305を形成する。第1の材料層305は、第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含む。第1の材料層305に含まれる第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物は、実施の形態1で示した構成を適用することができる。また、第1の材料層305は選択的に形成しても良い。ここで高分子化合物のガラス転移温度は、下記数式(1)を満たす。さらに好ましくは、ガラス転移温度が下記数式(2)を満たす高分子化合物を用いる。なお、下記数式(1)(2)において、第1の成膜材料及び第2の成膜材料の昇華温度は同じ真空度(例えば真空度10−3Pa)で測定することとする。
【0092】
【数2】

(式(1)(2)中、Sは高分子化合物のガラス転移温度(℃)を示し、Tは、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度(℃)のうち高い温度(℃)を示す)
【0093】
高分子化合物のガラス転移温度が上記数式(1)、好ましくは上記数式(2)を満たす範囲であれば、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度のうち低い温度に達しても、昇華温度に達した成膜材料は第1の材料層から転写されにくい。これは、高分子化合物によって、第1の成膜材料及び第2の成膜材料が第1の材料層中で移動することを抑制されるためである。そして、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度のうち高い温度を超えると、第1の成膜材料及び第2の成膜材料は第1の材料層中を移動することが容易となり、被成膜基板上に転写される。よって、第1の成膜材料の転写と第2の成膜材料の転写に時間差が生じにくくなり、被成膜基板上に濃度勾配の少ないEL層を形成することができる。
【0094】
しかし、高分子化合物のガラス転移温度が上記数式(1)の範囲より低いと、第1の成膜材料及び第2の成膜材料は第1の材料層中で移動することを抑制されにくいため、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度のうち低い温度に達すると、昇華温度の低い成膜材料が先に転写され、その後、昇華温度の高い成膜材料が転写される。また、高分子化合物のガラス転移温度が上記数式(1)の範囲より高いと、第1の成膜材料及び第2の成膜材料の昇華温度のうち高い温度を越えた後も、第1の成膜材料及び第2の成膜材料は第1の材料層中で移動することが抑制され、転写が容易に行われなくなる。
【0095】
よって、高分子化合物105cとしては、ガラス転移温度が上記数式(1)、好ましくは上記数式(2)を満たす高分子化合物を用いる。なお、本実施の形態において、転写とは、第1の材料層に含まれる第1の成膜材料又は第2の成膜材料が、被成膜基板上に移されることを示す。
【0096】
次に、図2(A)に示した成膜用基板を用いた成膜方法について、図2(B)及び(C)を用いて説明する。はじめに、図2(B)に示すように、第1の基板301において、第1の材料層305等が形成された面に対向する位置に、第2の基板307を配置する。なお、ここでは本発明の一態様の成膜用基板を用いて発光素子のEL層を形成する場合について説明するため、第2の基板307上には、発光素子の一方の電極となる第1の電極層308を有している。第1の電極層308の端部は、絶縁物311で覆われていることが好ましい。本実施の形態において、第1の電極層は、発光素子の陽極あるいは陰極となる電極を示している。
【0097】
第1の材料層305の表面と第2の基板307の表面は、距離dだけの間隔をとって配置される。ここで、距離dは、0mm以上2mm以下、好ましくは0mm以上0.05mm以下、さらに好ましくは0mm以上0.03mm以下とする。
【0098】
なお、距離dは、第1の基板上の第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含んだ第1の材料層の表面と、第2の基板の表面との距離で定義するものとする。ただし、第2の基板上に何らかの膜(例えば、電極として機能する導電膜又は隔壁等)が形成され、被成膜基板表面に凹凸を有する場合、距離dは、第1の基板上の第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含んだ第1の材料層の表面と、第2の基板に形成された層の最表面、即ち、これらの膜(導電膜又は隔壁等)の表面との距離で定義するものとする。
【0099】
そして、図2(C)のように、第1の基板301の裏面、すなわち材料層が形成された世第1の基板301の他方の面側から加熱処理することにより、第1の材料層305に含まれる第1の成膜材料及び第2の成膜材料が第2の基板307上に成膜される。これにより、第2の基板307上に、発光素子のEL層である第2の材料層309が選択的に形成される。
【0100】
本実施の形態において、例えばランプを光源として用いた場合、第1の基板301の裏面から照射された光310は、反射層302が形成された領域においては反射し、反射層302に設けられた開口部312においては透過して、開口部と重なる領域の吸収層303において吸収される。吸収された光が熱エネルギーへと変換されることで、当該領域の吸収層303と接する第1の材料層305が加熱され、第1の成膜材料及び第2の成膜材料が第2の基板上に成膜される。
【0101】
なお、第1の基板301に光310を照射した際に、吸収層303で発生した熱が面方向に伝導して吸収層に接する反射層302が加熱されることがある。また、反射率が85%以上の材料を用いて反射層302を形成したとしても、照射する光の熱量によっては、ある程度の熱の吸収がある。しかしながら、本実施の形態の成膜用基板は、反射層302と第1の材料層305との間に、熱伝導率の低い材料によって形成された断熱層304が設けられているため、反射層302が加熱された場合であっても、断熱層304において、第1の材料層305への熱の伝導を遮断することができる。これによって、選択的に、開口部312と重なる領域の第1の材料層305に含まれる第1の成膜材料及び第2の成膜材料を、被成膜基板上に成膜し、第2の材料層309として、所望のパターンのEL層を形成することができる。
【0102】
本実施の形態においては、第1の基板上に形成された材料層のうち、吸収層に接する領域を選択的に加熱するため、第1の材料層全面を加熱する場合と比較して、光を照射する時間は比較的短くて良い。例えば、ハロゲンランプを光源として用いた場合、500℃〜800℃を7〜15秒間程度保持することで、第1の材料層305のうち、反射層302及び断熱層304の開口部と重なる領域を加熱して第1の成膜材料及び第2の成膜材料を被成膜基板へと成膜することができる。
【0103】
なお、本実施の形態では、被成膜基板である第2の基板が、支持基板である第1の基板の下方に位置する場合を図示したが、本実施の形態はこれに限定されない。基板の設置する向きは適宜設定することができる。
【0104】
以上説明したように、第1の基板上に反射層及び断熱層を選択的に形成し、該第1の基板及び該断熱層上に、吸収層、保護層ならびに、第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含む材料層を形成した場合、第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含む材料層を選択的に加熱して、被成膜基板に成膜される第2の材料層のパターン形成を行うことが可能となる。
【0105】
さらに、本実施の形態に記載の成膜方法は、上記数式(1)、好ましくは上記数式(2)を満たす高分子化合物を第1の材料層に含むため、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度のうち、低い温度に達しても、昇華温度に達した成膜材料が第1の材料層から転写されにくい。これは、高分子化合物によって、第1の成膜材料及び第2の成膜材料が第1の材料層中で移動することを抑制されるためである。そして、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の昇華温度のうち高い温度を超えると、第1の成膜材料及び第2の成膜材料が第1の材料層中を移動することが容易となり、被成膜基板上に転写される。よって、第1の成膜材料の転写と第2の成膜材料の転写に時間差が生じにくくなり、被成膜基板上に濃度勾配の少ないEL層を形成することができる。
【0106】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0107】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2で説明した本発明の一態様の成膜方法で、成膜用基板を複数用いて発光素子のEL層を形成することにより、フルカラー表示が可能な発光装置の作製方法について説明する。
【0108】
実施の形態1及び実施の形態2では、1回の成膜工程で、被成膜基板である第2の基板上に形成された複数の電極上に、全て同一の材料からなるEL層を形成する場合について示したが、本実施の形態では、第2の基板上に形成された複数の電極上に、発光の異なる3種類のEL層のいずれかを形成する場合について説明する。
【0109】
まず、実施の形態2において図2(A)に示した成膜用基板を3枚用意する。ただし、それぞれの支持基板には発光の異なるEL層を形成するための第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含む材料層が形成されている。具体的には、赤色発光を示すEL層(EL層(R))を形成するための第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含む材料層(R)を有する成膜用基板(R)と、緑色発光を示すEL層(EL層(G))を形成するための第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含む材料層(G)を有する成膜用基板(G)と、青色発光を示すEL層(EL層(B))を形成するための第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含む材料層(B)を有する成膜用基板(B)とを用意する。
【0110】
また、実施の形態2において図2(B)に示した複数の第1の電極を有する被成膜基板を1枚用意する。なお、図3(B)に示したように、被成膜基板上の複数の第1の電極は、その端部が絶縁物414で覆われているため、発光領域は、第1の電極の一部であって、絶縁物と重ならずに露呈している領域に相当する。
【0111】
まず、1回目の成膜工程として、図2(B)と同様に被成膜基板と成膜用基板(R)とを重ね、位置合わせをする。なお、被成膜基板には、位置合わせ用のマーカを設けることが好ましい。また、成膜用基板(R)にも位置合わせ用のマーカを設けることが好ましい。なお、成膜用基板(R)には、吸収層や材料層等が設けられているため、位置合わせのマーカ周辺の吸収層や材料層等は予め除去しておくことが好ましい。
【0112】
そして、成膜用基板(R)の裏面(図2に示す反射層302、断熱層304、吸収層303、保護層306及び第1の材料層305が形成されていない面)側から光を照射する。吸収層が、照射された光を吸収して材料層(R)に熱を与えることで、材料層(R)に含まれる第1の成膜材料及び第2の成膜材料が加熱され、被成膜基板上の一部の第1の電極上にEL層(R)が形成する。そして、1回目の成膜を終えたら、成膜用基板(R)は、被成膜基板と離れた場所へ移動させる。
【0113】
次いで、2回目の成膜工程として、被成膜基板と成膜用基板(G)とを重ね、位置合わせをする。成膜用基板(G)には、1回目の成膜時で使用した成膜用基板(R)とは1画素分ずらして反射層の開口部が形成されている。
【0114】
そして、成膜用基板(G)の裏面(図2に示す反射層302、断熱層304、吸収層303、保護層306及び第1の材料層305が形成されていない面)側から光を照射する。吸収層が、照射された光を吸収して材料層(G)に熱を与えることで、材料層(G)に含まれる第1の成膜材料及び第2の成膜材料が加熱され、被成膜基板上の一部であって、1回目の成膜でEL層(R)が形成された第1の電極のとなりの第1の電極上にEL層(G)が形成する。そして、2回目の成膜を終えたら、成膜用基板(G)は、被成膜基板と離れた場所へ移動させる。
【0115】
次いで、3回目の成膜工程として、被成膜基板と成膜用基板(B)とを重ね、位置合わせをする。成膜用基板(B)には、1回目の成膜時に使用した成膜用基板(B)とは2画素分ずらして反射層の開口部が形成されている。
【0116】
そして、成膜用基板(B)の裏面(図2に示す反射層302、断熱層304、吸収層303、保護層306及び第1の材料層305が形成されていない面)側から光を照射する。この3回目の成膜を行う直前の様子が図3(A)の上面図に相当する。図3(A)において、反射層401は開口部402を有している。従って、成膜用基板(B)の反射層401の開口部402を透過した光は、断熱層を透過して、吸収層に吸収される。また、被成膜基板の成膜用基板(B)の開口部402と重なる領域には、第1の電極が形成されている。なお、図3(A)中に点線で示した領域の下方にある被成膜基板には、既に1回目の成膜により形成されたEL層(R)411と2回目の成膜により形成されたEL層(G)412が位置している。
【0117】
そして、3回目の成膜により、EL層(B)413が形成される。吸収層が、照射された光を吸収して材料層(B)に熱を与えることで、材料層(B)に含まれる第1の成膜材料及び第2の成膜材料が加熱され、被成膜基板上の一部であって、2回目の成膜でEL層(G)412が形成された第1の電極のとなりの第1の電極上にEL層(B)413が形成される。3回目の成膜を終えたら、成膜用基板(B)は、被成膜基板と離れた場所へ移動させる。
【0118】
こうしてEL層(R)411、EL層(G)412、EL層(B)413を一定の間隔をあけて同一の被成膜基板上に形成することができる(図3(B)参照)。そして、これらの膜上に第2の電極を形成することによって、発光素子を形成することができる。
【0119】
以上の工程で、同一基板上に異なる発光を示す発光素子が形成されることにより、フルカラー表示が可能な発光装置を形成することができる。
【0120】
図3では、成膜用基板に形成された反射層の開口部402の形状を矩形とした例を示したが、特に限定されず、ストライプ状の開口部としても良い。ストライプ状の開口部とした場合、同じ発光色となる発光領域の間にも成膜が行われるが、絶縁物414の上に形成されるため、絶縁物414と重なる部分は発光領域とはならない。
【0121】
また、画素の配列も特に限定されず、1つの画素形状を多角形、例えば六角形としても良い。なお、多角形の画素を形成するためには、多角形の開口部を有する反射層を有する成膜用基板を用いて成膜すれば良い。
【0122】
なお、本実施の形態では、発光の異なる3種類のEL層を形成するために3枚の成膜用基板を用いたが、1枚の成膜用基板に材料層(R)、材料層(G)及び材料層(B)を選択的に形成しても良い。この場合、被成膜基板と成膜用基板との位置合わせが一度のみで良く、材料の利用効率や生産性が高まるため好ましい。
【0123】
本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、本発明の一態様の成膜用基板に形成される材料層の膜厚を制御することによって、被成膜基板上に成膜される膜の膜厚を制御することができる。つまり、成膜用基板上に形成された材料層に含まれる第1の成膜材料及び第2の成膜材料を全て加熱することにより被成膜基板上に形成される膜が所望の膜厚となるように予め材料層の膜厚が制御されているため、被成膜基板上に成膜する際の膜厚モニタは不要となる。よって、膜厚モニタを利用した蒸着速度の調節を使用者が行う必要がなく、成膜工程を全自動化することが可能である。そのため、生産性の向上を図ることができる。
【0124】
また、本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、本発明の一態様の成膜方法を用いて作製することにより、成膜用基板上に形成された材料層に含まれる第1の成膜材料及び第2の成膜材料を、濃度勾配が生じることなく、被成膜基板上に成膜することができる。従って、本発明の一態様の成膜方法は、蒸着レート等の複雑な制御を行うことなく、昇華温度の異なる第1の成膜材料及び第2の成膜材料を含む層を、被成膜基板上に容易に精度良く成膜することができる。
【0125】
また、本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、本発明の一態様の成膜方法を用いて作製することにより、平坦でムラのない膜を成膜することが可能であり、また、微細なパターン形成が可能となるため、高精度な発光装置を得ることができる。
【0126】
さらに、本実施の形態に示すフルカラー表示が可能な発光装置の作製において、本発明の一態様の成膜方法を用いて作製することにより、所望の第1の成膜材料及び第2の成膜材料を無駄にすることなく、被成膜基板に成膜することが可能である。よって、第1の成膜材料及び第2の成膜材料の利用効率が向上し、製造コストの低減を図ることができる。また、成膜室内壁に第1の成膜材料及び第2の成膜材料が付着することも防止でき、成膜装置のメンテナンスを簡便にすることができる。
【0127】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1及び実施の形態2に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
【0128】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の成膜方法を適用して、発光素子及び発光装置を作製する方法について説明する。
【0129】
例えば、図4(A)、(B)に示す発光素子を作製することができる。図4(A)に示す発光素子は、基板901上に第1の電極902、発光層913のみで形成されたEL層903、第2の電極904が順に積層して設けられている。第1の電極902及び第2の電極904のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極から注入される正孔及び陰極から注入される電子がEL層903で再結合して、発光を得ることができる。本実施の形態において、第1の電極902は陽極として機能する電極であり、第2の電極904は陰極として機能する電極であるとする。
【0130】
また、図4(B)に示す発光素子は、図4(A)のEL層903が複数の層が積層された構造である場合を示しており、具体的には、第1の電極902側から正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、及び電子注入層915が順次設けられている。なお、EL層903は、図4(A)に示すように少なくとも発光層913を有していれば機能するため、これらの層を全て設ける必要はなく、必要に応じて適宜選択して設ければ良い。
【0131】
図4に示す基板901には、絶縁表面を有する基板または絶縁基板を適用する。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板又はサファイヤ基板等を用いることができる。
【0132】
また、第1の電極902及び第2の電極904は、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0133】
これらの材料は、通常スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。その他、ゾル−ゲル法などを応用して、インクジェット法、スピンコート法などにより作製しても良い。
【0134】
また、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金等を用いることができる。その他、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、及びマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、及びこれらを含む合金(アルミニウム、マグネシウムと銀との合金、アルミニウムとリチウムの合金)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属及びこれらを含む合金等を用いることもできる。
【0135】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。また、第1の電極902及び第2の電極904は、単層膜に限らず、積層膜で形成することもできる。
【0136】
なお、EL層903で発光する光を外部に取り出すため、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方、または両方が光を通過するように形成する。例えば、インジウム錫酸化物等の可視光に対する透光性を有する導電材料を用いて形成するか、或いは、銀、アルミニウム等を数nm乃至数十nmの厚さとなるように形成する。また、膜厚を薄くした銀、アルミニウムなどの金属薄膜と、ITO膜等の可視光に対する透光性を有する導電材料を用いた薄膜との積層構造とすることもできる。
【0137】
なお、本実施の形態で示す発光素子のEL層903(正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914又は電子注入層915)は、実施の形態1乃至実施の形態3で示した成膜方法を適用して形成してもよい。
【0138】
例えば、図4(A)に示す発光素子を形成する場合、実施の形態3で示した成膜用基板の材料層を、EL層903を形成する複数の材料で形成し、この成膜用基板を用いて基板901上の第1の電極902上にEL層903を形成する。そして、EL層903上に第2の電極904を形成することにより、図4(A)に示す発光素子を得ることができる。
【0139】
また、図4(B)に示す発光素子を形成する場合には、EL層903(正孔注入層911、正孔輸送層912、電子輸送層914、及び電子注入層915)のそれぞれの層を形成する複数の材料で形成された材料層を有する実施の形態1乃至実施の形態3で示した成膜用基板を各層毎に用意し、各層の成膜毎に異なる成膜用基板を用いて、上記実施の形態で示した方法により、基板901上の第1の電極902上にEL層903を形成する。そして、EL層903上に第2の電極904を形成することにより、図4(B)に示す発光素子を得ることができる。なお、この場合には、EL層903の全ての層に実施の形態1乃至実施の形態3で示した方法を用いても良いし、一部の層のみに実施の形態1乃至実施の形態3で示した方法を用いても良い。
【0140】
例えば、正孔注入層911としては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0141】
また、正孔注入層911として、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質を含む層を用いることができる。正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、キャリア密度が高く、正孔注入性に優れている。また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層を、陽極として機能する電極に接する正孔注入層として用いることにより、陽極として機能する電極材料の仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。
【0142】
正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質を含む層は、例えば、正孔輸送性の高い物質を含む層と電子受容性を示す物質を含む層とを積層することにより形成することができる。
【0143】
正孔注入層911に用いる電子受容性を示す物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族から第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0144】
正孔注入層911に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、オリゴマー、デンドリマー、ポリマーなど、種々の化合物を用いることができる。なお、正孔注入層に用いる正孔輸送性の高い物質としては、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いても良い。以下では、正孔注入層911に用いることのできる正孔の輸送性の高い物質を具体的に列挙する。
【0145】
正孔注入層911に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等を用いることができる。また、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0146】
正孔注入層911に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0147】
また、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチル−アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0148】
なお、正孔注入層911に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していても良い。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0149】
また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、正孔注入性だけでなく、正孔輸送性も優れているため、上述した正孔注入層911を正孔輸送層として用いても良い。
【0150】
また、正孔輸送層912は、正孔輸送性の高い物質を含む層であり、正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いても良い。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしても良い。
【0151】
電子輸送層914は、電子輸送性の高い物質を含む層であり、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ01)バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしても良い。
【0152】
また、電子注入層915としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を用いることができる。さらに、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属が組み合わされた層も使用できる。例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたものを用いることができる。なお、電子注入層として、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属を組み合わせた層を用いることは、第2の電極904からの電子注入が効率良く起こるためより好ましい。
【0153】
なお、EL層903は、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等を含む層と、発光層とを適宜組み合わせて構成すれば良い。
【0154】
EL層903で得られた発光は、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極902または第2の電極904のいずれか一方または両方は、可視光に対する透光性を有する電極である。第1の電極902のみが可視光に対する透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902を通って基板901側から取り出される。また、第2の電極904のみが可視光に対する透光性を有する電極である場合、光は第2の電極904を通って基板901と逆側から取り出される。第1の電極902及び第2の電極904がいずれも可視光に対する透光性を有する電極である場合、光は第1の電極902及び第2の電極904を通って、基板901側及び基板901と逆側の両方から取り出される。
【0155】
なお、図4では、陽極として機能する第1の電極902を基板901側に設けた構成について示したが、陰極として機能する第2の電極904を基板901側に設けても良い。
【0156】
また、EL層903の形成方法としては、実施の形態1で示した成膜方法を用いればよく、他の成膜方法と組み合わせても良い。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。乾式法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。また、湿式法としては、インクジェット法またはスピンコート法などが挙げられる。
【0157】
本実施の形態に係る発光素子は、本発明の一態様を適用したEL層の形成が可能であり、それにより、濃度勾配が少ない膜が効率よく形成される為、発光素子の特性向上のみならず、歩留まり向上やコストダウンを図ることができる。
【0158】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4で説明した発光素子を用いて形成される発光装置について説明する。
【0159】
まず、パッシブマトリクス型の発光装置について、図5を用いて説明することとする。
【0160】
パッシブマトリクス型(単純マトリクス型ともいう)の発光装置は、ストライプ状(帯状)に並列された複数の陽極と、ストライプ状に並列された複数の陰極とが互いに直交するように設けられており、その交差部に発光層が挟まれた構造となっている。従って、選択された(電圧が印加された)陽極と選択された陰極との交点にあたる画素が点灯することになる。
【0161】
図5(A)は、封止前における画素部の上面図を示す図であり、図5(A)中の鎖線A−A’で切断した断面図が図5(B)であり、鎖線B−B’で切断した断面図が図5(C)である。
【0162】
基板1001上には、下地絶縁層として絶縁層1004を形成する。なお、下地絶縁層が必要でなければ特に形成しなくとも良い。絶縁層1004上には、ストライプ状に複数の第1の電極1013が等間隔で配置されている。また、第1の電極1013上には、各画素に対応する開口部を有する隔壁1014が設けられ、開口部を有する隔壁1014は絶縁材料(感光性または非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテン)、またはSOG膜(例えば、アルキル基を含むSiOx膜))で構成されている。なお、各画素に対応する開口部が発光領域1021となる。
【0163】
開口部を有する隔壁1014上に、第1の電極1013と交差する互いに平行な複数の逆テーパ状の隔壁1022が設けられる。逆テーパ状の隔壁1022はフォトリソグラフィ法に従い、未露光部分がパターンとしてポジ型感光性樹脂を用い、パターンの下部がより多くエッチングされるように露光量または現像時間を調節することによって形成する。
【0164】
開口部を有する隔壁1014及び逆テーパ状の隔壁1022を合わせた高さは、EL層及び第2の電極1016の膜厚より大きくなるように設定する。これにより、複数の領域に分離されたEL層、具体的には赤色発光を示す材料で形成されたEL層(R)(1015R)、緑色発光を示す材料で形成されたEL層(G)(1015G)、青色発光を示す材料で形成されたEL層(B)(1015B)と、第2の電極1016とが形成される。なお、複数に分離された領域は、それぞれ電気的に独立している。
【0165】
第2の電極1016は、第1の電極1013と交差する方向に伸長する互いに平行なストライプ状の電極である。なお、逆テーパ状の隔壁1022上にもEL層及び第2の電極1016を形成する導電層の一部が形成されるが、EL層(R)(1015R)、EL層(G)(1015G)、EL層(B)(1015B)、及び第2の電極1016とは分断されている。なお、本実施の形態におけるEL層は、少なくとも発光層を含む層であって、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、又は電子注入層等を含んでいても良い。
【0166】
ここでは、EL層(R)(1015R)、EL層(G)(1015G)、EL層(B)(1015B)を選択的に形成し、3種類(赤(R)、青(G)、緑(B))の発光が得られるフルカラー表示可能な発光装置を形成する例を示している。なお、EL層(R)(1015R)、EL層(G)(1015G)、EL層(B)(1015B)は、それぞれ互いに平行なストライプパターンで形成されている。これらのEL層を形成するには、上記実施の形態1〜実施の形態3に示す成膜方法を適用すれば良い。
【0167】
また、必要であれば、封止缶や封止のためのガラス基板などの封止材を用いて封止する。ここでは、封止基板としてガラス基板を用い、シール材などの接着剤を用いて基板と封止基板とを貼り合わせ、シール材などの接着剤で囲まれた空間を密閉なものとしている。密閉された空間には、充填剤や、乾燥した不活性ガスを充填する。また、発光装置の信頼性を向上させるために、基板と封止材との間に乾燥剤などを封入しても良い。乾燥剤によって微量な水分が除去され、十分乾燥される。また、乾燥剤としては、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのようなアルカリ土類金属の酸化物のような化学吸着によって水分を吸収する物質を用いることが可能である。なお、他の乾燥剤として、ゼオライトやシリカゲル等の物理吸着によって水分を吸着する物質を用いても良い。
【0168】
ただし、発光素子を覆って接する封止材が設けられ、十分に外気と遮断されている場合には、乾燥剤は、特に設けなくとも良い。
【0169】
次に、図5に示したパッシブマトリクス型の発光装置にFPCなどを実装した場合の上面図を図6に示す。
【0170】
図6において、画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交するように交差している。
【0171】
ここで、図5における第1の電極1013が、図6の走査線1103に相当し、図5における第2の電極1016が、図6のデータ線1102に相当し、逆テーパ状の隔壁1022が隔壁1104に相当する。データ線1102と走査線1103の間にはEL層が挟まれており、領域1105で示される交差部が画素1つ分となる。
【0172】
なお、走査線1103は配線端で接続配線1108と電気的に接続され、接続配線1108が入力端子1107を介してFPC1109bに接続される。また、データ線は入力端子1106を介してFPC1109aに接続される。
【0173】
また、必要であれば、射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けても良い。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けても良い。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0174】
なお、図6では、駆動回路を基板上に設けない例を示したが、本発明は特に限定されず、基板上に駆動回路を有するICチップを実装させても良い。
【0175】
また、ICチップを実装させる場合、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをCOG方式によりそれぞれ実装する。COG方式以外の実装技術としてTCPやワイヤボンディング方式を用いて実装しても良い。TCPはTABテープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC、及び走査線側ICは、シリコン基板を用いたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板もしくはプラスチック基板上にTFTで駆動回路を形成したものであっても良い。また、片側に一つのICを設けた例を説明しているが、片側に複数個に分割して設けても構わない。
【0176】
次に、アクティブマトリクス型の発光装置の例について、図7を用いて説明する。なお、図7(A)は発光装置を示す上面図であり、図7(B)は図7(A)を鎖線A−A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置は、素子基板1210上に設けられた画素部1202と、駆動回路部(ソース側駆動回路)1201と、駆動回路部(ゲート側駆動回路)1203と、を有する。画素部1202、駆動回路部1201、及び駆動回路部1203は、シール材1205によって、素子基板1210と封止基板1204との間に封止されている。
【0177】
また、素子基板1210上には、駆動回路部1201、及び駆動回路部1203に外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、又はリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線1208が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC(フレキシブルプリントサーキット)1209を設ける例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0178】
次に、断面構造について図7(B)を用いて説明する。素子基板1210上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、ソース側駆動回路である駆動回路部1201と、画素部1202が示されている。
【0179】
駆動回路部1201はnチャネル型TFT1223とpチャネル型TFT1224とを組み合わせたCMOS回路が形成される例を示している。なお、駆動回路部を形成する回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に駆動回路を形成することもできる。
【0180】
また、画素部1202はスイッチング用TFT1211と、電流制御用TFT1212と電流制御用TFT1212の配線(ソース電極又はドレイン電極)に電気的に接続された第1の電極1213とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極1213の端部を覆って絶縁物1214が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。
【0181】
また、上層に積層形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物1214の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶縁物1214の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物1214の上端部に曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物1214として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができ、有機化合物に限らず無機化合物、例えば、酸化シリコン、酸窒化シリコン等、の両者を使用することができる。
【0182】
第1の電極1213上には、EL層1200及び第2の電極1216が積層形成されている。なお、第1の電極1213をITO膜とし、第1の電極1213と接続する電流制御用TFT1212の配線として窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層膜、或いは窒化チタン膜、アルミニウムを主成分とする膜、窒化チタン膜との積層膜を適用すると、配線としての抵抗も低く、ITO膜との良好なオーミックコンタクトがとれる。なお、ここでは図示しないが、第2の電極1216は外部入力端子であるFPC1209に電気的に接続されている。
【0183】
EL層1200は、少なくとも発光層が設けられており、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層又は電子注入層を適宜設ける構成とする。第1の電極1213、EL層1200及び第2の電極1216との積層構造で、発光素子1215が形成されている。
【0184】
また、図7(B)に示す断面図では発光素子1215を1つのみ図示しているが、画素部1202において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。画素部1202には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としても良い。
【0185】
さらにシール材1205で封止基板1204を素子基板1210と貼り合わせることにより、素子基板1210、封止基板1204、及びシール材1205で囲まれた空間1207に発光素子1215が備えられた構造になっている。なお、空間1207には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材1205で充填される構成も含むものとする。
【0186】
なお、シール材1205にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板1204に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0187】
以上のようにして、本発明の一態様を適用して発光装置を得ることができる。アクティブマトリクス型の発光装置は、TFTを作製するため、1枚あたりの製造コストが高くなりやすいが、本発明の一態様を適用することで、発光素子を形成する際の材料のロスを大幅に低減させることが可能である。よって、製造コストの低減を図ることができる。
【0188】
また、本発明の一態様を適用することで、発光素子を構成するEL層を容易に形成することができると共に、発光素子を有する発光装置を容易に作製することができる。また、平坦でムラのない膜の成膜や微細なパターン形成が可能となるため、高精細な発光装置を得ることができる。また、成膜時における光源として、熱量の大きなランプヒータ等を用いることができることからタクト時間の短縮が可能となり、発光装置の製造コストを低減させることができる。
【0189】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1〜実施の形態4に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
【0190】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様を適用した発光装置を用いて完成させた様々な電子機器および照明器具の一例について、図8を用いて説明する。
【0191】
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器および照明器具の具体例を図8に示す。
【0192】
図8(A)は、テレビジョン装置9100の一例を示している。テレビジョン装置9100は、筐体9101に表示部9103が組み込まれている。表示部9103により、映像を表示することが可能であり、発光装置を表示部9103に用いることができる。また、ここでは、スタンド9105により筐体9101を支持した構成を示している。
【0193】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0194】
なお、テレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0195】
図8(B)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、マウス9206等を含む。なお、コンピュータは、発光装置をその表示部9203に用いることにより作製される。
【0196】
図8(C)は携帯型遊技機であり、筐体9301と筐体9302の2つの筐体で構成されており、連結部9303により、開閉可能に連結されている。筐体9301には表示部9304が組み込まれ、筐体9302には表示部9305が組み込まれている。また、図8(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部9306、記録媒体挿入部9307、LEDランプ9308、入力手段(操作キー9309、接続端子9310、センサ9311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部9304および表示部9305の両方、または一方に発光装置を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図8(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図8(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0197】
図8(D)は、卓上照明器具であり、照明部9401、傘9402、可変アーム9403、支柱9404、台9405、電源9406を含む。なお、卓上照明器具は、発光装置を照明部9401に用いることにより作製される。なお、照明器具には天井固定型の照明器具または壁掛け型の照明器具なども含まれる。
【0198】
図8(E)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機9500は、筐体9501に組み込まれた表示部9502の他、操作ボタン9503、外部接続ポート9504、スピーカ9505、マイク9506などを備えている。なお、携帯電話機9500は、発光装置を表示部9502に用いることにより作製される。
【0199】
図8(E)に示す携帯電話機9500は、表示部9502を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを打つなどの操作は、表示部9502を指などで触れることにより行うことができる。
【0200】
表示部9502の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0201】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部9502を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部9502の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0202】
また、携帯電話機9500内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機9500の向き(縦か横か)を判断して、表示部9502の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0203】
また、画面モードの切り替えは、表示部9502を触れること、又は筐体9501の操作ボタン9503の操作により行われる。また、表示部9502に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0204】
また、入力モードにおいて、表示部9502の光センサで検出される信号を検知し、表示部9502のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0205】
表示部9502は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部9502に掌や指を触れることで、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0206】
以上のようにして、本発明の一態様の発光装置を適用して電子機器や照明器具を得ることができる。本発明の一態様の発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0207】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1〜実施の形態5に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
【実施例1】
【0208】
本実施例では本発明の一態様の成膜方法を用いて形成したEL層の一例について説明する。なお、本実施例で用いた物質の構造式を以下に示す。
【0209】
【化1】

【0210】
以下に本実施例で作製したEL層の構成例1、2及び比較例1、2の作製方法を示す。
【0211】
(構成例1)
支持基板である第1の基板としてガラス基板を用いた。第1の基板上に、吸収層としてTi膜を膜厚150nmで形成した。
【0212】
さらに吸収層上に湿式法を用いて第1の材料層を形成した。第1の材料層は、第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含む。第1の成膜材料として、9,10−ジフェニル−2−[N−フェニル−N−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)アミノ]アントラセン(略称:2PCAPA)を用いた。第2の成膜材料として、9−[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)を用いた。また、高分子化合物として、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)を用い、これらの材料を溶媒として用いるトルエン中に溶解させた。トルエン、PVK、CzPA及び2PCAPAの比率は、重量比で150:5:1:0.05(=トルエン:PVK:CzPA:2PCAPA)となるように調節した。第1の材料層の膜厚は150nmとした。なお、真空中(真空度10−3Pa)時のCzPAの昇華温度は210℃、2PCAPAの昇華温度は260℃である。また、PVKのガラス転移温度は200℃である。
【0213】
第1の材料層を成膜後、第1の材料層中に残ったトルエンを除去するために、真空雰囲気下で加熱処理を行った。具体的には、真空度1Pa、160℃で1時間、加熱した。
【0214】
次に、支持基板において、吸収層及び第1の材料層が形成された面に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板を配置した。第2の基板としてはガラス基板を用いた。このとき、第1の材料層の表面と被成膜基板の表面との距離dは100μmとして配置した。また、光照射による成膜は、減圧雰囲気下で行うことが好ましい。従って、成膜室内を真空度5×10−3Pa以下に保った。そして、成膜用基板の裏面、すなわち第1の材料層が形成された成膜用基板の他方の面側からハロゲンランプを9秒間照射することにより、第1の材料層を加熱し、被成膜基板上にEL層を形成した。
【0215】
(構成例2)
第1の材料層に用いる高分子化合物として、ガラス転移温度が285℃のシクロオレフィンポリマーを用いた以外は、構成例1と同様に作製した。つまり、第1の材料層は、第1の成膜材料としてCzPA、第2の成膜材料として2PCAPA、高分子化合物としてガラス転移温度が285℃のシクロオレフィンポリマー、溶媒としてトルエンを含む。第1の材料層の膜厚は150nmとし、第1の材料層中のトルエン、シクロオレフィンポリマー、CzPA及び2PCAPAの比率は、重量比で150:5:1:0.05(=トルエン:シクロオレフィンポリマー:CzPA:2PCAPA)となるように調節した。
【0216】
(比較例1)
真空蒸着法を用いて、CzPAと2PCAPAとを共蒸着することにより、被成膜基板であるガラス基板にEL層を形成した。このとき、成膜室内を真空度5×10−3Pa以下に保った。EL層の膜厚は30nmとし、EL層中のCzPAと2PCAPAの比率が重量比で1:0.05(=CzPA:2PCAPA)となるように調節した。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。
【0217】
(比較例2)
支持基板である第1の基板としてガラス基板を用いた。第1の基板上に、吸収層としてTi膜を膜厚150nmで形成した。
【0218】
さらに、真空蒸着法を用いて、CzPAと2PCAPAとを共蒸着することにより、吸収層上に第1の材料層を形成した。このとき、成膜室内を真空度5×10−3Pa以下に保った。EL層の膜厚は30nmとし、EL層中のCzPAと2PCAPAの比率が重量比で1:0.05(=CzPA:2PCAPA)となるように調節した。
【0219】
次に、支持基板において、吸収層及び第1の材料層が形成された面に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板を配置した。第2の基板としてはガラス基板を用いた。このとき、第1の材料層の表面と被成膜基板の表面との距離dは100μmとして配置した。また、成膜室内を真空度5×10−3Pa以下に保った。そして、成膜用基板の裏面、すなわち材料層が形成された成膜用基板の他方の面側からハロゲンランプを7秒間照射することにより、CzPA及び2PCAPAを加熱し、被成膜基板上にEL層を形成した。
【0220】
図9に構成例1、比較例1、比較例2のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを示す。また、図13に構成例2、比較例1,比較例2のPLスペクトルを示す。PLスペクトルは、励起波長の光を照射して、EL層から放出される光の波長と光の強度を表したスペクトルである。図9及び図13において、横軸は波長(nm)を、縦軸は規格化PL強度(任意単位)を表す。
【0221】
本実施例では、発光物質を分散させる有機化合物としてCzPA、発光物質として2PCAPAを用いた。真空中(真空度10−3Pa)時のCzPAの昇華温度は210℃、2PCAPAの昇華温度は260℃である。このため、210℃から260℃に昇温するのに時間差が生じると、CzPAが先に昇華して、後から2PCAPAが昇華する。
【0222】
図9において、比較例2のPLスペクトルは、450nm付近のピークと520nm付近のピークの2つのピークを有する。加熱処理により第1の材料層が昇温する過程で、昇華温度の低いCzPAが先に転写され、昇華温度の高い2PCAPAは後から転写される。よって、EL層中に濃度勾配ができるために2つのピークが発生する。つまり、比較例2のPLスペクトルにおいて、450nm付近のピークはCzPAによる発光であり、520nm付近のピークは2PCAPAによる発光である。なお、本実施例において、転写とは、第1の材料層に含まれる第1の成膜材料又は第2の成膜材料が、被成膜基板上に移されることを示す。
【0223】
一方、構成例1及び比較例1のPLスペクトルは、520nm付近に1つのピークを有する。比較例1は真空蒸着法により成膜しているため、比較例1のPLスペクトルは2PCAPAによる発光のピークを有する。構成例1は、第1の材料層にPVKが含まれており、CzPAの昇華温度に達しても、第1の材料層からCzPAは転写されにくい。これは、PVKによって、CzPAが第1の材料層中で移動することを抑制されるためである。よって、CzPAの転写と2PCAPAの転写に時間差が生じにくくなり、濃度勾配の少ない膜を被成膜基板上に形成できる。したがって、構成例1は、CzPAによる発光が抑制され、構成例1のPLスペクトルは2PCAPAによる発光のピークを有する。
【0224】
図13において、比較例1及び構成例2のPLスペクトルは、520nm付近に1つのピークを有する。構成例2より、第1の材料層に含む高分子化合物としてガラス転移温度が285℃のシクロオレフィンポリマーを用いても、CzPAの転写と2PCAPAの転写に時間差が生じにくくなり、濃度勾配の少ない膜を被成膜基板上に形成できることが示された。したがって、構成例2はCzPAによる発光が抑制され、構成例2のPLスペクトルは2PCAPAによる発光による発光のピークを有する。
【0225】
次いで、図10〜図12にToF−SIMS(Time of Flight−Secondary Ion Mass Spectrometry)のデータを示す。図10は構成例1、図11は比較例1、図12は比較例2のToF−SIMSデータである。このToF−SIMSデータは、サンプルを斜めに切削することで、EL層表面とEL層中の深さ方向の第1の成膜材料及び第2の成膜材料の濃度分布を測定したものである。図10〜図12において、横軸は測定位置(μm)、縦軸は二次イオン強度(counts/sec)である。
【0226】
図10において、EL層内部(領域A)にCzPA及び2PCAPAのピークが見られる。図10〜図12において、構成例1及び比較例1では、EL層内部(領域A)でCzPAと2PCAPAがほぼ一定の濃度で混在していることが示された。一方、比較例2では、CzPAのピークと2PCAPAのピークがずれており、EL層内部(領域A)ではCzPAの濃度が高く、EL層の表面である領域Bでは2PCAPAの濃度が高いということがわかる。これは昇華温度のより低いCzPAが先に転写してしまい、昇華温度がより高い2PCAPAがCzPAより遅れて転写したことを意味する。
【0227】
比較例2のように発光物質と発光物質を分散させる有機化合物が分離してしまうと、発光色などのEL特性に悪影響を与えてしまう。構成例1は第1の材料層にPVKを含むため、図10に示されるように、発光物質を分散させる有機化合物であるCzPAと発光物質である2PCAPAが、比較例2よりも良好な混合状態を保つことができる。これによりEL特性を向上させることができる。
【実施例2】
【0228】
本実施例では本発明の一態様の成膜方法を用いて形成したEL層の一例について説明する。
なお、本実施例で用いた物質の構造式を以下に示す。
【0229】
【化2】

【0230】
以下に、本実施例で作製したEL層の構成例3及び比較例3,4の作製方法を示す。
【0231】
(構成例3)
支持基板である第1の基板としてガラス基板を用いた。第1の基板上に、吸収層としてチタン(Ti)膜を膜厚150nmで形成した。
【0232】
さらに吸収層上に湿式法を用いて第1の材料層を形成した。第1の材料層は、第1の成膜材料、第2の成膜材料、第3の成膜材料及び高分子化合物を含む。第1の成膜材料として、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))を用いた。第2の成膜材料として、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)を用いた。第3の成膜材料として、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)を用いた。また、高分子化合物としてPVKを用い、これらの材料を溶媒として用いるクロロホルム中に溶解させた。クロロホルム、PVK、BAlq、NPB及びIr(tppr)(acac)の比率は、重量比で200:5:1:0.15:0.06(=クロロホルム:PVK:BAlq:NPB:Ir(tppr)(acac))となるように調節した。第1の材料層の膜厚は150nmとした。真空中(真空度10−3Pa)時のBAlqの昇華温度は213℃、NPBの昇華温度は250℃、Ir(tppr)(acac)の昇華温度は266℃である。
【0233】
第1の材料層を成膜後、第1の材料層中に残ったクロロホルムを除去するために、真空雰囲気下で加熱処理を行った。具体的には、真空度0.2Pa、80℃で1時間、加熱した。
【0234】
次に、支持基板において、吸収層及び第1の材料層が形成された面に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板を配置した。第2の基板としてはガラス基板を用いた。このとき、第1の材料層の表面と第2の基板の表面との距離dは100μmとした。また、成膜室内を真空度5×10−3Pa以下に保った。そして、第1の基板の裏面、すなわち材料層が形成された成膜用基板の他方の面側からハロゲンランプを9秒間照射することにより、BAlq、NPB及びIr(tppr)(acac)を加熱し、被成膜基板上にEL層を形成した。
【0235】
(比較例3)
真空蒸着法を用いて、BAlq、NPB及びIr(tppr)(acac)とを共蒸着することにより、被成膜基板であるガラス基板にEL層を形成した。このとき、成膜室内は真空度5×10−3Pa以下に保った。EL層の膜厚は30nmとし、EL層中のBAlq、NPB及びIr(tppr)(acac)の比率は、重量比で1:0.15:0.06(=BAlq:NPB:Ir(tppr)(acac))となるように調節した。
【0236】
(比較例4)
支持基板である第1の基板としてガラス基板を用いた。第1の基板上に、吸収層としてTi膜を膜厚150nmで形成した。
【0237】
さらに、真空蒸着法を用いて、BAlq、NPB及びIr(tppr)(acac)を共蒸着することにより、吸収層上に第1の材料層を形成した。このとき、成膜室内を真空度5×10−3Pa以下に保った。EL層の膜厚は30nmとし、EL層中のBAlq、NPB及びIr(tppr)(acac)の比率が重量比で1:0.15:0.06(=BAlq:NPB:Ir(tppr)(acac))となるように調節した。
【0238】
次に、支持基板において、吸収層及び第1の材料層が形成された面に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板を配置した。第2の基板としてはガラス基板を用いた。このとき、第1の材料層の表面と被成膜基板の表面との距離dは100μmとして配置した。また、成膜室内を真空度5×10−3Pa以下に保った。そして、成膜用基板の裏面、すなわち材料層が形成された成膜用基板の他方の面側からハロゲンランプを9秒間照射することにより、BAlq、NPB及びIr(tppr)(acac)を加熱し、被成膜基板上にEL層を形成した。
【0239】
図14に構成例3、比較例3、比較例4のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを示す。図14において、横軸は、波長(nm)を、縦軸は規格化PL強度(任意単位)を表す。
【0240】
本実施例では、発光物質を分散させる有機化合物として、BAlq、発光物質として、NPB及びIr(tppr)(acac)を用いる。真空中(真空度10−3Pa)時のBAlqの昇華温度は213℃、NPBの昇華温度は250℃、Ir(tppr)(acac)の昇華温度は266℃である。このため、213℃から266℃に昇温するのに時間差が生じると、BAlqがはじめに昇華して、次にNPBが昇華し、最後にIr(tppr)(acac)が昇華する。
【0241】
図14において、比較例4のPLスペクトルでは、500nm付近のピークと620nm付近のピークの2つのピークを有する。加熱処理により、第1の材料層が昇温する過程で、昇華温度の低いBAlqが先に転写され、次にNPB、最後にIr(tppr)(acac)が転写される。よって、EL層中に濃度勾配ができるために2つのピークが発生する。つまり、比較例2のPLスペクトルにおいて、500nm付近のピークは、BAlq及びNPBによる発光であり、620nm付近のピークは、Ir(tppr)(acac)による発光である。なお、本実施例において、転写とは、第1の材料層に含まれる第1の成膜材料、第2の成膜材料又は第3の成膜材料が、被成膜基板上に移されることを示す。
【0242】
一方、構成例3及び比較例3のPLスペクトルは、620nm付近に1つのピークを有する。比較例3は真空蒸着法により成膜しているため、比較例3のPLスペクトルは、Ir(tppr)(acac)による発光のピークを有する。構成例3は、第1の材料層にPVKが含まれており、BAlqの昇華温度に達しても、第1の材料層からBAlqは転写されにくい。これは、PVKによって、BAlqが第1の材料層中で移動することを抑制されるためである。よって、BAlq、NPB及びIr(tppr)(acac)の転写に時間差が生じにくくなり、濃度勾配の少ない膜を被成膜基板上に形成できる。したがって、構成例3は、BAlqとNPBによる発光が抑制され、構成例3のPLスペクトルはIr(tppr)(acac)による発光のピークを有する。
【実施例3】
【0243】
本実施例では本発明の一態様の成膜方法を用いて形成したEL層の一例について説明する。
なお、本実施例で用いた物質の構造式を以下に示す。
【0244】
【化3】

【0245】
以下に本実施例で作製したEL層の構成例4及び比較例5〜7の作製方法を示す。
【0246】
(構成例4)
支持基板である第1の基板としてガラス基板を用いた。第1の基板上に、吸収層としてTi膜を膜厚150nmで形成した。
【0247】
さらに吸収層上に第1の材料層を形成した。第1の材料層は、第1の成膜材料、第2の成膜材料及び高分子化合物を含む。第1の成膜材料として、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)を用いた。第2の成膜材料としてCzPAを用いた。また、高分子化合物として、ガラス転移温度が285℃のシクロオレフィンポリマーを用い、これらの材料を溶媒として用いるトルエン中に溶解させた。トルエン、PN285A、CzPA及びPCBAPAの比率は、重量比で150:5:1:0.1(=トルエン:シクロオレフィンポリマー:CzPA:PCBAPA)となるように調節した。第1の材料層の膜厚は150nmとした。真空中(真空度10−3Pa)でのPCBAPAの昇華温度は302℃である。
【0248】
第1の材料層を成膜後、第1の材料層中に残ったトルエンを除去するために、真空雰囲気下で加熱処理を行った。具体的には、真空度1Pa、160℃で1時間、加熱した。
【0249】
次に、支持基板において、吸収層及び第1の材料層が形成された面に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板を配置した。第2の基板としてはガラス基板を用いた。このとき、第1の材料層の表面と被成膜基板の表面との距離dは100μmとした。また、成膜室内は真空度5×10−3Pa以下に保った。そして、第1の基板の裏面、すなわち第1の材料層が形成された成膜用基板の他方の面側からハロゲンランプを9秒間照射することにより、第1の材料層を加熱し、被成膜基板上にEL層を形成した。
【0250】
(比較例5)
構成例4におけるシクロオレフィンポリマーの代わりに、PVKを用いた。つまり、第1の材料層に含まれる高分子化合物として、PVKを用いた以外は構成例4と同様に作製した。
【0251】
(比較例6)
真空蒸着法を用いて、CzPAとPCBAPAとを共蒸着することにより、被成膜基板であるガラス基板にEL層を形成した。また、成膜室内は、真空度5×10−3Pa以下に保った。EL層の膜厚は30nmとし、EL層中のCzPA及びPCBAPAの比率は、重量比で1:0.1(=CzPA:PCBAPA)となるように調節した。
【0252】
(比較例7)
支持基板である第1の基板としてガラス基板を用いた。第1の基板上に、吸収層としてTi膜を膜厚150nmで形成した。
【0253】
さらに、真空蒸着法を用いて、CzPAとPCBAPAとを共蒸着することにより、吸収層上に第1の材料層を形成した。このとき、成膜室内を真空度5×10−3Pa以下に保った。EL層の膜厚は30nmとし、EL層中のCzPAとPCBAPAの比率が重量比で1:0.1(=CzPA:PCBAPA)となるように調節した。
【0254】
次に、支持基板において、吸収層及び第1の材料層が形成された面に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板を配置した。第2の基板としてはガラス基板を用いた。このとき、第1の材料層の表面と被成膜基板の表面との距離dは100μmとして配置した。また、成膜室内を真空度5×10−3Pa以下に保った。そして、成膜用基板の裏面、すなわち第1の材料層が形成された成膜用基板の他方の面側からハロゲンランプを9秒間照射することにより、第1の材料層を加熱し、被成膜基板上にEL層を形成した。
【0255】
図15に、比較例5〜7のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを示す。また、図16に、構成例4、比較例6、比較例7のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを示す。図15及び図16において、横軸は波長(nm)を、縦軸は規格化PL強度(任意単位)を表す。
【0256】
本実施例では、発光物質を分散させる有機化合物として、CzPA、発光物質として、PCBAPAを用いる。真空中(真空度10−3Pa)でのCzPAの昇華温度は210℃、PCBAPAの昇華温度は302℃である。このため、210℃から302℃に昇温するのに時間差が生じると、CzPAが先にして、後からPCBAPAが昇華する。
【0257】
図15〜16において、比較例6のPLスペクトルは、460nm付近のピークを有している。比較例6は真空蒸着法により成膜しているため、比較例6のPLスペクトルはPCBAPAによる発光のピークを有する。
【0258】
一方、図15〜16において、比較例5及び比較例7のPLスペクトルでは、450nm付近にピークが発生している。比較例7のPLスペクトルでは、加熱処理により第1の材料層が昇温する過程で、昇華温度の低いCzPAが先に転写され、後から、PCBAPAが転写される。よって、EL層中に濃度勾配ができ、CzPAによる発光とPCBAPAによる発光が重なったピークを有する。
【0259】
また、比較例5において、PVKのガラス転移温度はPCBAPAの昇華温度に比べて100℃以上低い。よって、PCBAPAの昇華温度である302℃に達する前に、PVKが十分に軟化するため、CzPAは第1の材料層中を移動することができる。その結果、CzPAが先に被成膜基板上に転写されてしまう。そのため、比較例5は、EL層中に濃度勾配ができ、比較例5のPLスペクトルは、CzPAによる発光とPCBAPAによる発光が重なったピークを有する。なお、本実施例において、転写とは、第1の材料層に含まれる第1の成膜材料又は第2の成膜材料が、被成膜基板上に移されることを示す。
【0260】
図16において、構成例4のPLスペクトルは460nm付近にピークを有している。構成例4は、第1の材料層にガラス転移温度が285℃のシクロオレフィンポリマーが含まれており、CzPAの昇華温度に達しても、第1の材料層からCzPAは転写されにくい。これは、シクロオレフィンポリマーによって、CzPAが第1の材料層中で移動することを抑制されるためである。よって、CzPAの転写とPCBAPAの転写に時間差が生じにくくなり、濃度勾配の少ない膜を被成膜基板上に形成できる。したがって、構成例4は、CzPAによる発光が抑制され、構成例1のPLスペクトルはPCBAPAによる発光のピークを有する。
【符号の説明】
【0261】
101 第1の基板
103 吸収層
105 第1の材料層
105a 第1の成膜材料
105b 第2の成膜材料
107 第2の基板
109 第2の材料層
301 第1の基板
302 反射層
303 吸収層
304 断熱層
305 第1の材料層
306 保護層
307 第2の基板
308 電極層
309 第2の材料層
310 光
311 絶縁物
312 開口部
401 反射層
402 開口部
411 EL層(R)
412 EL層(G)
413 EL層(B)
414 絶縁物
901 基板
902 第1の電極
903 EL層
904 第2の電極
911 正孔注入層
912 正孔輸送層
913 発光層
914 電子輸送層
915 電子注入層
1001 基板
1004 絶縁層
1013 第1の電極
1014 隔壁
1016 第2の電極
1021 発光領域
1022 隔壁
1102 データ線
1103 走査線
1104 隔壁
1105 領域
1106 入力端子
1107 入力端子
1108 接続配線
1109a FPC
1109b FPC
1200 EL層
1201 駆動回路部(ソース側駆動回路)
1202 画素部
1203 駆動回路部(ゲート側駆動回路)
1204 封止基板
1205 シール材
1207 空間
1208 配線
1209 FPC
1210 素子基板
1211 スイッチング用TFT
1212 電流制御用TFT
1213 第1の電極
1214 絶縁物
1215 発光素子
1216 第2の電極
1223 nチャネル型TFT
1224 pチャネル型TFT
9100 テレビジョン装置
9101 筐体
9103 表示部
9105 スタンド
9107 表示部
9109 操作キー
9110 リモコン操作機
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 マウス
9301 筐体
9302 筐体
9303 連結部
9304 表示部
9305 表示部
9306 スピーカ部
9307 記録媒体挿入部
9308 LEDランプ
9309 操作キー
9310 接続端子
9311 センサ
9312 マイクロフォン
9401 照明部
9402 傘
9403 可変アーム
9404 支柱
9405 台
9406 電源
9500 携帯電話機
9501 筐体
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面上に形成される吸収層と、前記吸収層上に形成され、第1の成膜材料、第2の成膜材料及び下記数式(1)を満たす高分子化合物を含む材料層とを有する第1の基板の一方の面と、
第2の基板の被成膜面とを対向させて配置し、
前記第1の基板の他方の面側から前記材料層に加熱処理をすることで、前記第2の基板の前記被成膜面に前記第1の成膜材料と前記第2の成膜材料とを含む層を形成する成膜方法。
【数1】

(式(1)中、Sは高分子化合物のガラス転移温度(℃)を示し、Tは、第1の成膜材料又は第2の成膜材料の有する昇華温度のうち高い温度(℃)を示す)
【請求項2】
請求項1において、
前記吸収層は、島状またはストライプ状に形成されている成膜方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記材料層は、島状またはストライプ状に形成されている成膜方法。
【請求項4】
請求項1または請求項3において、
前記第1の基板と前記吸収層との間に、開口部を有する反射層が形成されている成膜方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記反射層と前記吸収層との間に、前記反射層の開口部と重なる位置に開口部を有する断熱層を形成する成膜方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、
前記吸収層と前記材料層との間に、保護層が形成されている成膜方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記高分子化合物としてシクロオレフィンポリマーを用いる成膜方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、
前記材料層は、蒸着法、スパッタ法、スピンコート法、印刷法、液滴吐出法、スプレー法、滴下法、インクジェット法、ノズルプリンティング法又はディスペンス法により前記吸収層上に形成される成膜方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記加熱処理は、光源を用いて前記第1の基板の他方の面側から光を照射し、前記吸収層が光を吸収することで加熱される方式を用いる成膜方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記光源としてレーザ発振装置、フラッシュランプ又はハロゲンランプを用いる成膜方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一に記載の成膜方法を用いて作製した発光素子。
【請求項12】
請求項11に記載の発光素子を有する発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−70774(P2011−70774A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218303(P2009−218303)
【出願日】平成21年9月23日(2009.9.23)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】