説明

成膜方法および記憶媒体

【課題】成膜原料としてコバルトカルボニルを用いてCo膜を成膜する場合に、段差被覆性が良好でかつ再現性高くCo膜を成膜することができる成膜方法を提供すること。
【解決手段】処理容器1内に単一原料として気体状のCo(CO)12を供給し、基板W上でCo(CO)12を熱分解させて基板W上にCo膜を成膜する。このとき、成膜原料として固体原料であるCo(CO)を用い、これをCo(CO)の分解開始温度未満の温度で気化させ、これにより生成された気体状のCo(CO)をCo(CO)12が安定に存在する温度にして気体状のCo(CO)12に変化させ、処理容器1内に供給する。または、成膜原料として固体原料であるCo(CO)12を用い、これを気化させて処理容器1内に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD法によりCo膜を成膜する成膜方法および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体デバイスの高速化、配線パターンの微細化等に呼応して、Alよりも導電性が高く、かつエレクトロマイグレーション耐性等も良好なCuが配線として注目されており、このような用途には電解メッキが用いられている。電解メッキによるCu配線のシードとしては、埋め込み性を向上させる観点から、従来のCuからCoへの変更が検討されている。また、Cu拡散バリア膜としてもCo膜を用いることが提案されている。
【0003】
Co膜の成膜方法としては、スパッタリングに代表される物理蒸着(PVD)法が多用されていたが、半導体デバイスの微細化にともなってステップカバレッジが悪いという欠点が顕在化している。
【0004】
そこで、Co膜の成膜方法として、Coを含む原料ガスの熱分解反応や、当該原料ガスの還元性ガスによる還元反応にて基板上にCo膜を成膜する化学蒸着(CVD)法が用いられつつある。このようなCVD法により成膜されたCo膜は、ステップカバレッジ(段差被覆性)が高く、細長く深いパターン内への成膜性に優れているため、微細なパターンへの追従性が高く、Cuメッキのシード層として好適である。
【0005】
CVD法によるCo膜については、成膜原料としてコバルトカルボニルであるCo(CO)を用い、これをチャンバー内に気相供給してチャンバー内に配置された基板上で熱分解させる方法が発表されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of The Electrochemical Society, 146(7) 2720-2724 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、原料としてCo(CO)を用いた場合には、Co(CO)の輸送中に重合反応を生じてCo(CO)12が生成され、Co(CO)とCo(CO)12の混合状態で供給されることがある。このように混合状態で原料が供給され、基板上でこれらが分解してCo膜が形成されると、Co膜の段差被覆性が十分ではなく、また、再現性高く成膜することが困難となることが判明した。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、成膜原料としてコバルトカルボニルを用いてCo膜を成膜する場合に、段差被覆性が良好でかつ再現性高くCo膜を成膜することができる成膜方法を提供することを課題とする。
また、そのような成膜方法を実行するためのプログラムを記憶した記憶媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、処理容器内に基板を配置し、前記処理容器内に単一原料として気体状のCo(CO)12を供給し、前記基板上でCo(CO)12を熱分解させて前記基板上にCo膜を成膜することを特徴とする成膜方法を提供する。
【0010】
このとき、成膜原料として固体原料であるCo(CO)を用い、これをCo(CO)の分解開始温度未満の温度で気化させ、これにより生成された気体状のCo(CO)をCo(CO)12が安定に存在する温度にして気体状のCo(CO)12に変化させ、前記処理容器内に供給するようにしてもよいし、成膜原料として固体原料であるCo(CO)12を用い、これを気化させて前記処理容器内に供給するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明は、コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記成膜方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、気体状のCo(CO)12が単一原料として基板に供給されることとなるので、Co(CO)とCo(CO)12の混合状態で供給される場合のような段差被覆性が不十分な状態や再現性が低い状態となることなく、段差被覆性が良好でかつ再現性高くCo膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る成膜方法を実施するための成膜装置の一例を示す略断面である。
【図2】Co膜を電解メッキによるCu配線のシードとして用いる場合のウエハの構造の一例を示す断面図である。
【図3】Co膜を電解メッキによるCu配線のシードとして用いる場合のウエハの構造の他の例を示す断面図である。
【図4】Co(CO)の減圧TGのチャートである。
【図5】Co(CO)のTG−DTAのチャートである。
【図6】図2の構造のウエハにシード膜としてCo膜を成膜し、さらに電解メッキによりホール内にCu配線を形成した状態を示す断面図である。
【図7】図3の構造のウエハにシード膜としてCo膜を成膜し、さらに電解メッキによりホール内にCu配線を形成した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
<本発明の成膜方法を実施するための成膜装置の構成例>
図1は、本発明の成膜方法を実施するための成膜装置の一例を示す略断面である。
この成膜装置100は、気密に構成された略円筒状のチャンバー1を有しており、その中には被処理基板である半導体ウエハWを水平に支持するためのサセプタ2が、後述する排気室の底部からその中央下部に達する円筒状の支持部材3により支持された状態で配置されている。このサセプタ2はAlN等のセラミックスからなっている。また、サセプタ2にはヒーター5が埋め込まれており、このヒーター5にはヒーター電源6が接続されている。一方、サセプタ2の上面近傍には熱電対7が設けられている。熱電対7の信号は後述する温度コントローラ60に伝送されるようになっている。そして、温度コントローラ60は熱電対7の信号に応じてヒーター電源6に指令を送信し、ヒーター5の加熱を制御してウエハWを所定の温度に制御するようになっている。なお、サセプタ2には3本のウエハ昇降ピン(図示せず)がサセプタ2の表面に対して突没可能に設けられており、ウエハWを搬送する際に、サセプタ2の表面から突出した状態にされる。
【0016】
チャンバー1の天壁1aには、円形の孔1bが形成されており、そこからチャンバー1内へ突出するようにシャワーヘッド10が嵌め込まれている。シャワーヘッド10は、後述するガス供給機構30から供給された成膜用のガスをチャンバー1内に吐出するためのものであり、その天板11には成膜原料ガスが導入されるガス導入口12が設けられている。シャワーヘッド10の内部にはガス拡散空間13が形成されており、シャワーヘッド10の底板14には多数のガス吐出孔15が設けられている。そして、ガス導入口12からガス拡散空間13に導入されたガスがガス吐出孔15からチャンバー1内に吐出されるようになっている。
【0017】
チャンバー1の底壁には、下方に向けて突出する排気室21が設けられている。排気室21の側面には排気管22が接続されており、この排気管22には真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気装置23が接続されている。そしてこの排気装置23を作動させることによりチャンバー1内を所定の真空度まで減圧することが可能となっている。
【0018】
チャンバー1の側壁には、ウエハ搬送室(図示せず)との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口24と、この搬入出口24を開閉するゲートバルブGとが設けられている。また、チャンバー1の壁部には、ヒーター26が設けられており、成膜処理の際にチャンバー1の内壁を加熱することが可能となっている。ヒーター26にはヒーター電源27から給電されるようになっている。
【0019】
ガス供給機構30は、成膜原料である固体状のコバルトカルボニルであるCo(CO)またはCo(CO)12を貯留する成膜原料容器31を有している。成膜原料容器31の周囲にはヒーター32が設けられ、これにより成膜原料であるコバルトカルボニルを加熱して気化するようになっている。ヒーター32にはヒーター電源48から給電されるようになっている。
【0020】
成膜原料容器31には、上方からガス導入配管33が挿入されている。ガス導入配管33にはバルブ34が介装されている。ガス導入配管33はCOガス配管35とキャリアガス配管36に分岐されており、COガス配管35にはCOガス供給源37が、キャリアガス配管36にはキャリアガス供給源38が接続されている。COガス配管35には流量制御器としてのマスフローコントローラ39およびその前後のバルブ40が介装されており、キャリアガス配管36には流量制御器としてのマスフローコントローラ41およびその前後のバルブ42が介装されている。キャリアガスとしてはArガスまたはNガスを好適に用いることができる。
【0021】
COガスは、気化したコバルトカルボニルの分解を抑制するために導入される。すなわち、コバルトカルボニルは分解されることによりCOを生成するが、成膜原料容器31にCOを供給してCO濃度を高くすることにより、コバルトカルボニルが分解してCOを生成する反応が抑制される。一方、キャリアガスは成膜原料容器31内で気化して生成されたコバルトカルボニルガスをチャンバー1に搬送するために導入される。なお、COガスにキャリアガスの機能を持たせてもよく、その場合には別途のキャリアガスは不要である。また、COガスは必須ではない。
【0022】
成膜原料容器31には、上方から成膜原料ガス供給配管43が挿入されており、成膜原料ガス供給配管43の他端はガス導入口12に接続されている。そして、ヒーター32により加熱されて気化されたコバルトカルボニルガスがキャリアガスにより成膜原料ガス供給配管43内を搬送されてガス導入口12を経てシャワーヘッド10へ供給される。成膜原料ガス供給配管43の周囲には、ヒーター44が設けられている。ヒーター44にはヒーター電源49から給電される。また、成膜原料ガス供給配管43には、流量調整バルブ45と、そのすぐ下流側の開閉バルブ46と、ガス導入口12の直近の開閉バルブ47とが設けられている。
【0023】
成膜原料ガス供給配管43のバルブ47の上流には、希釈ガス供給配管61が接続されている。希釈ガス配管61の他端には、希釈ガスとして例えばArガスまたはNガス等を供給する希釈ガス供給源62が接続されている。希釈ガス配管61には流量制御器としてのマスフローコントローラ63およびその前後のバルブ64が介装されている。なお、希釈ガスはパージガスや安定化ガスとしても機能する。
【0024】
上記チャンバー1の壁部には熱電対51が取り付けられ、上記成膜原料容器31内には熱電対52が取り付けられ、上記成膜原料ガス供給配管43には熱電対53が取り付けられており、これら熱電対51、52、53は温度コントローラ60に接続されている。上述した熱電対7も含めて、これら熱電対が検出した温度検出信号は温度コントローラ60に送られる。温度コントローラ60には上述のヒーター電源6、27、48、49が接続されている。そして、温度コントローラ60は、上述した熱電対7、51、52、53の検出信号に応じてヒーター電源6、27、48、49に制御信号を送り、ヒーター5、26、32、44によりサセプタ2の温度、チャンバー1の壁部の温度、成膜原料容器31内の温度、成膜原料ガス供給配管43内の温度を制御するようになっている。
【0025】
成膜装置100は制御部70を有し、この制御部70により各構成部、例えば温度コントローラ60、排気装置23、マスフローコントローラ、流量調整バルブ、バルブ等の制御等を行うようになっている。温度コントローラ60に関しては、温度コントローラ60により制御すべき部分の温度設定等を行う。この制御部70は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラ71と、ユーザーインターフェース72と、記憶部73とを有している。プロセスコントローラ71には成膜装置100の各構成部が電気的に接続されて制御される構成となっている。ユーザーインターフェース72は、プロセスコントローラ71に接続されており、オペレータが成膜装置100の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、成膜装置100の各構成部の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなっている。記憶部73もプロセスコントローラ71に接続されており、この記憶部73には、成膜装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ71の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムすなわち処理レシピや、各種データベース等が格納されている。処理レシピは記憶部73の中の記憶媒体(図示せず)に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスク等の固定的に設けられているものであってもよいし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0026】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース72からの指示等にて所定の処理レシピを記憶部73から呼び出してプロセスコントローラ71に実行させることで、プロセスコントローラ71の制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。
【0027】
<本発明の第1の実施形態に係る成膜方法>
次に、以上のように構成された成膜装置を用いて行われる本発明の第1の実施形態に係る成膜方法について説明する。
【0028】
本実施形態では、例えば、電解メッキによるCu配線のシードとして用いるCo膜を成膜する。Cu配線のシードとしてCo膜を用いる場合には、ウエハWとして、例えば図2、3に示すような構造のものを用いる。図2は、シリコン基板101に、下層の配線層103に達するホール102が形成され、全面に絶縁膜104が形成された構造であり、図3は、絶縁膜104の上にバリア膜105が形成された構造である。下層の配線層103としては、Al膜、W膜、Cu膜等を挙げることができる。絶縁膜104としては、SiO膜、SiOxCy系絶縁膜(x、yは正の数)、有機物系絶縁膜を用いることができる。バリア膜105としては、TiN/Tiの2層膜(上層がTiN膜)、Ti膜、TiN膜、Ta膜等を用いることができる。
【0029】
本実施形態においては、Co膜の成膜にあたって、成膜原料容器31内に、成膜原料として固体状のCo(CO)を装入した状態とし、さらに、チャンバー1内のサセプタ2の温度、およびチャンバー1の壁部の温度を成膜の際の温度に制御する。次いで、ゲートバルブGを開け、図示しない搬送装置により上記図2または図3の構造のウエハWをチャンバー1内に導入し、サセプタ2上に載置する。
【0030】
次いで、チャンバー1内を排気装置23により排気してチャンバー1内の圧力を133〜1333Pa(1〜10Torr)とし、ヒーター5によりサセプタ2を加熱してサセプタ2(半導体ウエハWの温度)の温度を好ましくは120〜300℃に制御する。
【0031】
そして、バルブ46を閉じバルブ47、64を開けて希釈ガス供給源62からチャンバー1内に希釈ガスを供給して安定化を行う。
【0032】
一方、ヒーター32により、成膜原料容器31をコバルトカルボニル(Co(CO))の分解開始温度未満の所定温度に厳密に温度制御しつつ加熱しておき、所定時間希釈ガスによる安定化を行った後、希釈ガスの供給を停止し、または所定流量で希釈ガスを供給したまま、COガスおよび/またはキャリアガスを成膜原料容器31に供給するとともに、バルブ46を開けて成膜原料容器31内で気化したCo(CO)ガスをキャリアガスにより成膜原料ガス供給配管43へ供給する。
【0033】
成膜原料ガス供給配管43ではヒーター44によりCo(CO)12が安定に存在する温度に加熱し、Co(CO)ガスをCo(CO)12ガスに変化させる。そして、Co(CO)12ガスは成膜原料ガス供給配管43内を搬送され、シャワーヘッド10を介してチャンバー1内に供給される。チャンバー1の壁部の温度もヒーター26によりCo(CO)12が安定に存在する温度に加熱する。
【0034】
チャンバー1内に供給されたCo(CO)12ガスは、サセプタ2内のヒーター5により所定温度に加熱されたウエハWの表面に至り、そこで熱分解してCo膜が形成される。
【0035】
このようにしてCo膜を成膜した後、パージ工程を行う。パージ工程では、成膜原料容器31へのキャリアガスの供給を停止してCo(CO)12ガスの供給を停止した後、排気装置23の真空ポンプを引き切り状態とし、希釈ガス供給源62から希釈ガスをパージガスとしてチャンバー1内に流してチャンバー1内をパージする。この場合に、できる限り迅速にチャンバー1内をパージする観点から、キャリアガスの供給は断続的に行うことが好ましい。
【0036】
パージ工程が終了後、ゲートバルブGを開け、図示しない搬送装置により、搬入出口24を介してウエハWを搬出する。これにより、1枚のウエハWの一連の工程が終了する。
【0037】
このようにして原料としてCo(CO)を用いてCo膜を成膜する際には、従来は、上述したようにCo(CO)が分解しない温度に制御して、Co(CO)ガスの状態でチャンバー1内に供給するようにしていたが、実際は、Co(CO)の一部が重合して気化してCo(CO)12となり、Co(CO)とCo(CO)12の混合状態で供給される。このように混合状態で供給されるとウエハW上で分解してCo膜を形成する際に、Co膜の段差被覆性が十分ではなく、また、再現性高く成膜することが困難となることが判明した。
【0038】
そこで、本実施形態では、上述したように、成膜原料容器31ではヒーター32によりCo(CO)の分解開始温度未満の所定温度に厳密に温度制御しつつ加熱しておきCo(CO)の分解を防止するとともに、成膜原料ガスをウエハWに輸送する過程では、Co(CO)12が安定に存在する温度に加熱し、Co(CO)ガスを積極的にCo(CO)12ガスに変化させ、Co(CO)12ガスを単一原料としてチャンバー1内に供給するようにする。すなわち、成膜原料ガス供給配管43ではヒーター44により、チャンバー1の壁部はヒーター26により、Co(CO)12ガスが安定に存在する温度に加熱する。
【0039】
そして、ウエハW上でCo(CO)12ガスが加熱されることにより、分解してCo膜が形成される。このようにほぼCo(CO)12ガスが単一原料として供給されるので、段差被覆性が低下したり、再現性が低下することが防止され、段差被覆性が良好でかつ再現性高くCo膜を成膜することができる。
【0040】
このとき、シャワーヘッド10を加熱するヒーターを設けて、そのヒーターにより同様の温度に加熱することが好ましい。なお、シャワーヘッド10を設けずにガス導入口12から直接チャンバー1内にCo(CO)12ガスを導入するようにしてもよい。
【0041】
成膜の際のウエハWの温度(成膜温度)に関しては、DTAで求めたCo(CO)ガスの分解終了温度が120℃であることから、120℃以上であればCo(CO)ガスをCoとCOに完全に分解させることができる。一方、300℃を超えるとCoが凝集してしまう。このため、成膜温度は120〜300℃が好ましい。
【0042】
Co(CO)ガスのような化合物の分解温度については、通常、DTA(示差熱分析)で把握され、DTAで求めたCo(CO)ガスの分解開始温度は51℃であり、この温度は、文献(THE MERCK 10th edition 3067.)に記載された分解開始である52℃と極めて近い。しかし、減圧TGによる重量変化から、より厳密に分解温度を把握したところ、図4に示すように、分解開始温度は45℃であった。この結果から判断すると、Co(CO)ガスの分解を抑制する観点から、成膜原料容器31の加熱温度を45℃未満に制御することが好ましい。下限は事実上室温となるので、室温以上45℃未満に制御することが好ましい。
【0043】
一方、Co(CO)は重合反応によりCo(CO)12を生成し、その際に2(CO)が脱離することが知られている。また、図5に示すCo(CO)のTG−DTAの結果より、100℃までに2(CO)が脱離し、その後、120℃まで重量減少がほとんど測定されないことから、2(CO)の脱離によりCo(CO)12が生成し、100〜120℃の間で安定な物質として存在すると考えられる。したがって、成膜原料容器31内でCo(CO)を気化させた後、ウエハWまで輸送する際の成膜原料ガスの温度は100〜120℃であることが好ましい。
【0044】
また、成膜原料容器31内でCo(CO)ガスをより分解し難くするためには、分解開始温度未満の温度に制御することに加えて、成膜原料容器31内にCOガスを導入することが好ましい。これにより、成膜原料容器31内のCO濃度が高くなり、Co(CO)の分解反応を抑制することができる。
【0045】
以上のようにして図2、3に示す構造のウエハWにシード膜としてCo膜106を形成した後、ホール102内に電解メッキでCu膜を形成し、CMPにより平坦化することによりCu配線107とすることにより、図6、7の構造を得る。
【0046】
なお、本実施形態のCo膜は、CVD−Cu膜の下地膜として用いることもできる。さらには、Cu拡散バリア膜や、コンタクト層として用いることもできる。Co膜をコンタクト層として用いる場合には、シリコン基板表面またはポリシリコン膜の表面に以上のようにしてCo膜を成膜した後、不活性ガス雰囲気または還元ガス雰囲気でシリサイド化のための熱処理を行う。この際の熱処理の温度は、450〜800℃が好ましい。
【0047】
<本発明の第2の実施形態に係る成膜方法>
次に、上記成膜装置を用いて行われる本発明の第2の実施形態に係る成膜方法について説明する。
【0048】
第1の実施形態では、成膜原料として固体状のコバルトカルボニルであるCo(CO)を用い、これを気化させ、気相中でCo(CO)12に反応させてウエハWに供給したが、本実施形態では、成膜原料容器31に収容する成膜原料として固体状のコバルトカルボニルであるCo(CO)12を用いている。すなわち、成膜原料容器31内でヒーター32により、Co(CO)12を気化させ、Co(CO)12ガスを気体状態に保ったまま加熱したウエハW上に供給し、Co膜を形成する。具体的には、成膜原料ガス供給配管43ではヒーター44により、チャンバー1の壁部はヒーター26により、Co(CO)12ガスを気体状態に保たれる温度に加熱する。Co成膜の際のウエハWの温度は第1の実施形態と同様120〜300℃であることが好ましい。
【0049】
本実施形態においても、ウエハW上にほぼCo(CO)12ガスが単一原料として供給され、ウエハ上で分解してCo膜が形成されるので、段差被覆性が低下したり、再現性が低下することが防止され、段差被覆性が良好でかつ再現性高くCo膜を成膜することができる。
【0050】
本実施形態では、固体原料としてCo(CO)12を用いるので、第1の実施形態のように成膜原料ガスの輸送中にガス反応を生じさせる必要がないので、第1の実施形態よりも装置構成を簡便にすることができる利点がある。ただし、Co(CO)12はCo(CO)よりも蒸気圧が高く気化しにくいため、扱いずらいとともに、供給量を増加することが困難である。これに対して、第1の実施形態では、成膜原料ガスの輸送中にガス反応を生じさせる必要があるため、温度制御を厳密にする必要があるため装置構成が複雑になるが、Co(CO)は気化しやすいため、取り扱いやすく、かつ供給量を増加できるという利点がある。
【0051】
<本発明の他の適用>
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、成膜装置は図1に示したものに限定されず、種々のものを適用可能である。また、成膜原料であるCo(CO)12の供給手法は上記実施形態の手法に限定する必要はなく、種々の方法を適用することができる。
【0052】
また、被処理基板として半導体ウエハを用いた場合を説明したが、これに限らず、フラットパネルディスプレイ(FPD)基板等の他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1;チャンバー
2;サセプタ
5;ヒーター
7;熱電対
10;シャワーヘッド
23;排気装置
30;ガス供給機構
31;成膜原料容器
37;COガス供給源
60;温度コントローラ
70;制御部
71;プロセスコントローラ
73;記憶部(記憶媒体)
W;半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に基板を配置し、前記処理容器内に単一原料として気体状のCo(CO)12を供給し、前記基板上でCo(CO)12を熱分解させて前記基板上にCo膜を成膜することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
成膜原料として固体原料であるCo(CO)を用い、これをCo(CO)の分解開始温度未満の温度で気化させ、これにより生成された気体状のCo(CO)をCo(CO)12が安定に存在する温度にして気体状のCo(CO)12に変化させ、前記処理容器内に供給することを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記Co(CO)を45℃未満の温度で気化させることを特徴とする請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記気体状のCo(CO)を100〜120℃に加熱して前記気体状のCo(CO)12に変化させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
成膜原料として固体原料であるCo(CO)12を用い、これを気化させて前記処理容器内に供給することを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項6】
基板の加熱温度を120〜300℃とすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記Co膜を成膜後、その上に電解メッキによりCuを堆積させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項8】
コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項7のいずれかの成膜方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−172251(P2012−172251A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38774(P2011−38774)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】