説明

成膜用精密マスク、膜の形成方法、微細配線の形成方法、電気光学装置の製造方法

【課題】成膜用精密マスクを液状体に浸漬して乾燥するときにも、隣り合う梁が膠着せずに梁間の開口部の形状が維持される成膜用精密マスクを提供する。
【解決手段】単結晶シリコンからなる成膜用精密マスクにかかわり、所定の間隔をもって平行に配置され、1方向に長い開口部3を複数形成する第1の梁2と、第1の梁2と交差して配置される少なくとも一条の第2の梁4とを備え、第2の梁4によって区切られる開口部3の長さを開口長Lとするとき、複数の開口部3のうち開口長Lが最も長い開口部3の開口長Lが所定の値以下となるように第2の梁4が配置され、成膜用精密マスク1を液状体に浸漬して乾燥したときに、隣り合う第1の梁2が膠着しないように第2の梁4が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜用精密マスク、膜の形成方法、微細配線の形成方法、電気光学装置の製造方法にかかわり、特に洗浄可能な精密マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELと称す)の製造工程では微細なパターンを蒸着して形成するために成膜用精密マスクが用いられる。この成膜用精密マスクが特許文献1に開示されている。それによると、成膜用精密マスクは平行に所定の間隔をもって配置された第1の梁を備え、その第1の梁の間に複数の開口部が形成されている。開口部は幅が数十マイクロメートルで長さが数センチメートル以上の非常に細長い形状になっている。
【0003】
そして、第1の梁と交差して第2の梁が配置され、第1の梁の上面と第2の梁の下面が連結して配置されている。この第2の梁が補強材の役割を果たし、第1の梁が変形して開口部の形状が変形することを防止していた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−225071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第2の梁を有するマスクであっても、第1の梁の間隔がより狭くなると蒸着時やマスク洗浄後等において、隣り合う梁同士が固着してしまうことが問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかる成膜用精密マスクは、単結晶シリコンからなる成膜用精密マスクであって、所定の間隔をもって平行に配置され、1方向に長い開口部を複数形成する第1の梁と、前記第1の梁と交差して配置される少なくとも一条の第2の梁とを備え、前記第2の梁によって区切られる前記開口部の長さを開口長Lとするとき、複数の前記開口部のうち前記開口長Lが最も長い前記開口部の前記開口長Lが所定の値以下となるとなるように前記第2の梁が配置されていることを特徴とする。
【0008】
この成膜用精密マスクによれば、複数の開口部のうち開口長の長さが最も長い開口部の開口長が所定の値以下に設定されている。開口長が長く開口の幅が狭い成膜用精密マスクを液状体に浸漬して乾燥するとき、開口部に流入した液状体が徐々に蒸発する。このとき液状体の表面張力により隣り合う第1の梁が接近し、開口部の条件によっては接触する。そして、接触したまま液状体が乾燥するとき、隣り合う第1の梁が膠着することがある。
【0009】
本適用例において、開口長は成膜用精密マスクを液状体に浸漬して乾燥するときに第1の梁が膠着しない値に設定されている。従って、成膜用精密マスクを洗浄するために液状体に浸漬して乾燥するときにも、開口部の形状が維持される。その結果、成膜用精密マスクは洗浄した後も同じパターンの成膜用精密マスクとして機能させることができる。
【0010】
[適用例2]
上記適用例にかかる成膜用精密マスクにおいて、前記第1の梁の厚みである梁厚みTが10μm〜50μmの範囲にあり、前記開口部の幅である開口幅Dが10μm〜30μmの範囲にあるとき、前記開口部の長手方向における中心線と隣り合う前記開口部の中心線との間隔である開口間隔Pが80μm〜500μmの間では、前記開口間隔PをXμmとし、前記開口長Lの前記所定の値をYmmとするとき、Y≦6.8×lnX−21.8の条件を満たすことを特徴とする。
【0011】
この成膜用精密マスクによれば、梁厚みと開口幅とが所定の範囲に設定されている。そして、開口間隔が80μm〜500μmにおいて開口間隔と開口長との関係を示す条件が提示されている。この条件を満たすとき、成膜用精密マスクを液状体に浸漬して乾燥するときにも、隣り合う第1の梁が膠着しない為、開口部の形状を維持することができる。
【0012】
[適用例3]
上記適用例にかかる成膜用精密マスクにおいて、基体上に前記第1の梁、前記第2の梁の順に配置して、蒸着により前記開口部の形状に膜を形成するときに用いられ、前記第1の梁と少なくとも1条の前記第2の梁とを囲んで枠部が配置され、前記第1の梁の厚みと前記第2の梁の厚みとを加算した厚みは前記枠部の厚みより薄いことを特徴とする。
【0013】
この成膜用精密マスクによれば、基体上に開口部の形状の膜を形成するときに成膜用精密マスクが用いられる。そして、枠部は第1の梁及び第2の梁を囲んで配置されることにより、成膜用精密マスクの強度を保つ構造物として機能する。第2の梁は枠部と共に第1の梁の変形を防止する機能を有している。そして、第1の梁の厚みと第2の梁の厚みとを加算した厚みは枠部の厚みより薄く形成されている。従って、蒸着するときに膜を形成する材料が第1の梁と第2の梁を通過し易い為、膜を構成する材料を効率良く基体に付着させることができる。その結果、効率良く膜を形成することができる。
【0014】
[適用例4]
本適用例にかかる膜の形成方法であって、基体上に上記のいずれか一項に記載の成膜用精密マスクを重ねて前記基体の一部を遮蔽し、前記基体の遮蔽されていない場所に膜を形成することを特徴とする。
【0015】
この膜の形成方法によれば、基体と成膜用精密マスクとを重ねて開口部に膜を形成している。成膜用精密マスクを洗浄するときにも第1の梁が膠着しない為、開口部の形状が維持されている。従って、繰り返して所定の形状の膜を形成することができる。
【0016】
[適用例5]
本適用例にかかる微細配線の形成方法であって、上記に記載の膜の形成方法を用いて導電性の膜を形成することを特徴とする。
【0017】
この微細配線の形成方法によれば、成膜用精密マスクを洗浄するときにも、開口部の形状を維持できる成膜用精密マスクを用いて導電性の膜を形成している。従って、断線や配線間のショートのない微細配線を品質良く形成することができる。
【0018】
[適用例6]
本適用例にかかる電気光学装置の製造方法は、基板上に画素電極とEL発光層と対向電極とが積層された電気光学装置の製造方法であって、前記対向電極と電気的に接する低抵抗の補助配線を形成する配線工程を有し、上記に記載の微細配線の形成方法を用いて前記補助配線を形成することを特徴とする。
【0019】
この電気光学装置の製造方法によれば、対向電極と隣接して低抵抗の補助配線が形成される。補助配線が微細な配線のときにも補助配線は断線なく形成されるので、補助配線を介して対向電極と画素電極との間に確実に電流を流すことができる。その結果、EL発光層は品質良く発光できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本実施形態では、本発明の特徴的な成膜用精密マスクと、この成膜用精密マスクを製造する例と、この成膜用精密マスクを用いて膜を製造する例とについて図1〜図5に従って説明する。尚、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0021】
(第1の実施形態)
(成膜用精密マスク)
以下、実施形態について図面に従って説明する。図1(a)は成膜用精密マスクを示す概略斜視図である。図1(b)は成膜用精密マスクの断面図であり、図1(a)のA−A’における断面図である。図1(c)は成膜用精密マスクの断面図であり、図1(a)のB−B’における断面図である。図1(a)に示すように、成膜用精密マスク1は長方形の板状に形成されている。この成膜用精密マスク1の長手方向をX方向とし、X方向と直交する方向をY方向とする。そして、成膜用精密マスク1の厚さ方向をZ方向とする。
【0022】
成膜用精密マスク1はX方向に延在する複数の第1の梁2を備え、隣り合う第1の梁2の間にはX方向に長い開口部3が形成されている。第1の梁2のZ方向には第2の梁4が配置され、開口部3を跨いで配置されている。この第2の梁4は第1の梁2が延在するX方向に対して斜めに配置されている。第1の梁2、開口部3、第2の梁4の数は成膜用精密マスク1の仕様に合わせて設定すればよく、本実施形態では、例えば、第1の梁2は8条配置され、開口部3は7個配置されている。そして、第2の梁4は2条配置されている。第1の梁2及び第2の梁4を囲んで枠部5が配置され、枠部5の厚みは第1の梁2の厚みと第2の梁4の厚みとを加算した厚みより厚く形成されている。そして、成膜用精密マスク1の強度を保つ構造物として機能し、枠部5は第2の梁4と共に第1の梁2の変形を防止する機能を有している。
【0023】
成膜用精密マスク1は単結晶シリコンからなり、第1の梁2、第2の梁4、枠部5は一体形成されている。従って、第1の梁2、第2の梁4、枠部5はそれぞれ強固に接合されている。成膜用精密マスク1は単結晶シリコンをエッチングして形成されているので、エッチングし易い面を活用した形状に設計されている。従って、開口部3のX方向の面3a及び枠部5のX方向における内側の面5aはY方向に対して斜めに形成されている。さらに、第2の梁4もY方向に対して斜めに配置することにより、エッチングし易い形状に設計されている。
【0024】
図1(b)及び図1(c)に示すように、開口部3の開口幅Dは総て同じ幅に形成されている。さらに、開口部3の長手方向及び厚み方向における中心線3bと隣り合う開口部3の中心線3bとの間隔である開口間隔Pも総て同じ間隔に形成されている。第1の梁2の厚みである梁厚みTも総ての第1の梁2において同じ厚みとなっている。成膜用精密マスク1において、第1の梁2が配置されている側の面を裏面1aとし、裏面1aと反対側の面を表面1bとする。
【0025】
図2(a)は成膜用精密マスクの模式平面図である。図2(a)において、第2の梁4によって区切られる開口部3の長さを開口長Lとするとき、開口長Lは一様ではなく、開口部3の各場所により異なった長さになっている。
【0026】
(膠着調査)
成膜用精密マスク1を洗浄するとき、純水に浸漬した後、成膜用精密マスク1を乾燥する。乾燥する過程において、開口部3から純水が減少するにしたがい、純水の表面張力により隣り合う第1の梁2が接近し膠着することがある。そこで、第1の梁2、開口部3、第2の梁4の寸法を変えたときに膠着が生じるか否かについて調査を行った。
【0027】
成膜用精密マスク1の梁厚みTの範囲を10μm〜50μmとし、開口幅Dの範囲を10μm〜30μmとした。そして、開口間隔Pが80μm〜500μmの間において、開口間隔Pと開口長Lをかえるときに膠着が生じる開口長Lの長さとの関係を調査した。次に、膠着調査方法と調査結果とを説明する。図2(b)は膠着調査方法を示すフローチャートであり、図3は、膠着調査方法と調査結果とを説明するための図である。
【0028】
図2(b)において、ステップS1は、浸漬工程に相当し、成膜用精密マスクを純水に浸漬する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、乾燥工程に相当し、成膜用精密マスクを乾燥する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は、検査工程に相当し、膠着した第1の梁の有無を検査する工程である。以上の工程により第1の梁の膠着状況を調査する工程を終了する。
【0029】
次に、図3を用いて、図2(b)に示したステップと対応させて、検査方法を詳細に説明する。図3(a)はステップS1の浸漬工程に対応する図である。図3(a)に示すように、ステップS1において、水槽6内に液状体としての純水7を流入し、純水7を溜めておく。次に、純水7に成膜用精密マスク1を浸漬した後、成膜用精密マスク1を上下左右に揺動することにより、開口部3に純水7を流入させる。揺動回数は特に限定されず、例えば、本実施形態では上下左右共に20回を採用している。
【0030】
図3(b)はステップS2の乾燥工程に対応する図である。図3(b)に示すように、ステップS2において、マランゴニ乾燥装置8を使用する。マランゴニ乾燥装置8は乾燥室9を備えている。乾燥室9の内部において図中下側には水槽10が配置され、水槽10には純水7が配置されている。水槽10の図中左側には乾燥室9の内壁に昇降装置11が配置されている。この昇降装置11の右側には支持部12を介して載置台13が配置され、載置台13上に成膜用精密マスク1が立てて配置されている。そして、昇降装置11が成膜用精密マスク1を昇降することにより、成膜用精密マスク1を純水7の中に浸漬したり、純水7から出したりすることが可能になっている。
【0031】
成膜用精密マスク1上にはワーク固定部14が配置され、ワーク固定部14が成膜用精密マスク1を載置台13に押圧することにより、ワーク固定部14は成膜用精密マスク1を載置台13に固定している。純水7の水面上であって成膜用精密マスク1の両側には一対のノズル15が配置されている。ノズル15は配管16を介して蒸気発生装置17と接続されている。蒸気発生装置17はイソプロピルアルコールの蒸気18を発生させる装置であり、発生した蒸気18は配管16を介してノズル15に供給される。そして、ノズル15から成膜用精密マスク1に蒸気18を噴射することが可能になっている。
【0032】
乾燥工程では、まず、載置台13に濡れた状態の成膜用精密マスク1を配置し、ワーク固定部14により成膜用精密マスク1を固定する。次に、昇降装置11を駆動して成膜用精密マスク1を下降し、成膜用精密マスク1を純水7に浸漬させる。続いて、ノズル15から蒸気18を噴出しながら成膜用精密マスク1を徐々に上昇させる。このとき、蒸気18が純水7の界面にあたるように噴射する。純水7の界面ではイソプロピルアルコールが純水7の界面に侵入するので、イソプロピルアルコールの濃度が高くなる。その結果、純水7の界面ではマランゴニ対流が生じることにより、純水7が水槽10内に移動する。そして、引き上げられた成膜用精密マスク1からは純水7が除去される。成膜用精密マスク1が総て水槽10内の純水7から取り出された後、成膜用精密マスク1を載置台13から回収する。
【0033】
図3(c)はステップS3の検査工程に対応する図である。ステップS3の検査工程では、隣り合う第1の梁2の梁が膠着している場所があるかないかを確認する。そして、開口間隔P及び開口長Lの長さと膠着の有無を記録する。図3(c)において、横軸は開口間隔Pを示し、開口間隔Pの単位はμmとなっている。そして、左側より右側の方が長い値となっている。縦軸は開口長Lを示し単位はmmとなっている。そして、下側より上側の方が長い値となっている。丸点21は膠着が生じないときの分布を示し、バツ点22は膠着が生じたときの分布を示している。丸点21が分布する場所とバツ点22が分布する場所とは分離している。丸点21とバツ点22との境界となる曲線を膠着境界線23とするとき、開口長Lが膠着境界線23より短い非膠着領域24では第1の梁2の膠着が生じていない。膠着境界線23は式にて表され、開口間隔PをXμmとし、開口長Lの所定の値をYmmとするとき、Y=6.8×lnX−21.8で示される。従って、第1の梁2の膠着が生じない非膠着領域24の条件は、Y≦6.8×lnX−21.8で示される。
【0034】
成膜用精密マスク1における第1の梁2、開口部3、第2の梁4の条件は上述の条件から選定することにより第1の梁2の膠着が生じないようにすることが可能となる。例えば、本実施形態においては、梁厚みTを30μmとし、開口幅Dを10μmとした。そして、開口間隔Pを100μmとし、最も長い開口長Lを9mmに設定した。この条件は非膠着領域24に含まれる条件であり、乾燥工程において第1の梁2が膠着することを防止することができる。すなわち、成膜用精密マスクを洗浄するとき、成膜用精密マスクを洗浄液等の液状体に浸漬した後、乾燥することが多い。開口部の長手方向の長さが長く開口部の幅が狭い成膜用精密マスクを液状体に浸漬して乾燥するとき、開口部に流入した液状体が徐々に蒸発する。このとき液状体の表面張力により隣り合う第1の梁が接近し、開口部の条件によっては第1の梁同士が接触することがある。そして、接触したまま液状体が乾燥するとき、隣り合う第1の梁が膠着することがある。しかしながら、上記のような条件においては、乾燥工程において第1の梁2が膠着することを防止することができる。
【0035】
(膜の形成方法)
次に、図4〜図5を用いて、成膜用精密マスク1を用いて膜を形成する方法を説明する。図4及び図5は成膜用精密マスクを用いて膜を形成する方法を説明するための模式図である。図4(a)は膜が形成された基板を示す模式平面図である。図4(a)に示すように、成膜済基板25はシリコンからなる長方形の基体としての基板26に膜27が形成されている。基板26の長手方向をX方向とし、基板26の平面方向でX方向と直交する方向をY方向とする。基板26において、X方向と逆側の端を第1の端26aとし、X方向側の端を第2の端26bとする。膜27はX方向に延在して形成され、第1の端26aから第2の端26bにかけて形成されている。これから、成膜済基板25を製造する方法を説明する。
【0036】
図4(b)は第1マスク配置工程に対応する図である。図4(b)に示すように、基板26上に成膜用精密マスク1及び全遮蔽マスク28を並べて配置する。成膜用精密マスク1は裏面1aを基板26に密着して配置する。全遮蔽マスク28は所定の場所の全面を遮蔽するマスクであり、開口パターンのないマスクである。成膜用精密マスク1を第1の端26a側に配置し、全遮蔽マスク28を第2の端26b側に配置する。成膜用精密マスク1と全遮蔽マスク28とは密着して配置することにより、成膜用精密マスク1と全遮蔽マスク28との間に隙間がないようにする。このとき、基板26は成膜用精密マスク1の開口部3と対向する場所のみ露出することになる。
【0037】
図4(c)は蒸着工程に対応する図である。図4(c)に示すように、成膜用精密マスク1及び全遮蔽マスク28が配置された基板26を蒸着装置29に設置する。蒸着装置29は蒸着室30を備え、蒸着室30の外側には真空装置31を備えている。真空装置31は蒸着室30内の気体を蒸着室30の外に排出する装置であり、油回転型真空ポンプやクライオポンプ等のポンプを組み合わせて構成されている。
【0038】
蒸着室30の内部において図中下側の床30aには加熱装置32とターゲット33とが重ねて配置されている。ターゲット33は膜27を形成する材料により形成され、金属、無機物、有機物等の各種の素材を適用することができる。本実施形態では、例えば、アルミニウムを採用している。加熱装置32はターゲット33を加熱して気化させる装置である。蒸着室30の天井30bには一方向に移動するステージ34が配置され、ステージ34の下側には載置台35が配置されている。そして、載置台35の下面に成膜用精密マスク1及び全遮蔽マスク28が配置された基板26が配置される。載置台35は図示しないクランプ機構を備え、基板26を固定することが可能になっている。ステージ34の移動方向は成膜用精密マスク1の開口部3における長手方向であるX方向と同じ方向となっている。
【0039】
蒸着装置29の載置台35に基板26を配置して固定した後、真空装置31を駆動して蒸着室30内の気体を排出する。次に、加熱装置32を駆動してターゲット33を加熱し、ターゲット33を蒸発させる。続いて、ステージ34を駆動することにより、基板26を往復運動させて、所定の時間放置する。このとき、蒸発したターゲット33の材料が基板26に付着する。基板26は成膜用精密マスク1に覆われているので、開口部3により露出している場所のみ膜27が形成される。成膜用精密マスク1はX方向に往復運動する為、第2の梁4と対向する場所にも蒸発したターゲット33の材料が進入し易くなっており、膜27が形成される。次に、加熱装置32及びステージ34の駆動を停止し、基板26が冷却した後、蒸着室30内に気体を流入させる。
【0040】
図5は第2マスク配置工程に対応する図である。図5に示すように、基板26上に成膜用精密マスク1及び全遮蔽マスク28を並べて配置する。このとき、基板26の第1の端26a側に全遮蔽マスク28を配置し、第2の端26b側に成膜用精密マスク1を配置する。続いて、再度蒸着工程を行う。その結果、膜27は第1の端26aから第2の端26bまで形成される。そして、第1マスク配置工程と第2マスク配置工程とでは、基板26において第2の梁4と対向する場所が異なっている。従って、蒸着工程において、第2の梁4と対向する場所に膜27が形成され難い場合にも、蒸着工程を2回行うことにより、所定の膜厚を確保することができる。
【0041】
(マスクの製造方法)
次に、成膜用精密マスク1の製造方法について説明する。尚、マスクの製造方法は特開2004−225071号公報にて開示されているので、概要の説明をする。まず、(110)面方位単結晶シリコンウエハから長方形状の基板を切り出し、基板を洗浄した後、熱酸化により酸化シリコン(SiO2)からなるエッチング保護膜を基板の周囲に形成する。このエッチング保護膜は、熱酸化により酸化シリコンを形成する代わりに、CVD(Chemichal Vapor Deposition)により窒化シリコン膜を形成したり、スパッタにより金・クロム合金膜を形成してもよい。
【0042】
次に、エッチング保護膜が形成された基板の裏面1aに第1の梁2に仕切られた複数の開口部3に相当する形状をパターニングし、表面1bに第2の梁4に相当する形状をパターニングする。パターニングはフォトリソグラフィーを施すことによって行う。そしてパターニングした基板をフッ化水素酸とフッ化アンモニウムの混合液によりエッチングして開口部3、一対の第2の梁4の間、第2の梁4と面5aとの間の各部分のエッチング保護膜を除去する。そして、基板を水酸化カリウム水溶液によって異方性エッチングを行い、開口部3、一対の第2の梁4の間、第2の梁4と面5aとの間の各部分を形成する。水酸化カリウムによりウェットエッチングを行うと、酸化シリコンのない部分から(111)面を側面としてまっすぐにエッチングされる。尚、水酸化カリウム水溶液に代えてテトラメチル水酸化アンモニウム水溶液等の有機アルカリ水溶液によってエッチングしても良い。この場合でも水酸化カリウムと同様に異方性エッチングを行うことができる。
【0043】
開口部3が所定の深さに形成された後、裏面1aの開口部3において第2の梁4の形状に合わせてエッチング保護膜を形成する。そして、さらにエッチングを行い、開口部3を貫通させる。次に、第2の梁4における表面1bのエッチング保護膜を除去し、第2の梁4を所定の厚みになるまで表面1bからエッチングする。最後に、基板のエッチング保護膜を、緩衝フッ化水素溶液等により除去して成膜用精密マスク1が得られる。
【0044】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、開口長Lは成膜用精密マスク1を純水7に浸漬して乾燥するときに第1の梁2が膠着しない値に設定されている。従って、成膜用精密マスク1を洗浄するために純水7に浸漬して乾燥するときにも、開口部3の形状が維持される。その結果、成膜用精密マスク1は洗浄した後も同じパターンの成膜用精密マスク1として機能させることができる。
【0045】
(2)本実施形態によれば、梁厚みTと開口幅Dとが所定の範囲に設定されている。そして、開口間隔Pが80μm〜500μmにおいて開口間隔Pと開口長Lとの関係を示す条件が提示されている。この条件を満たすとき、成膜用精密マスク1を純水7に浸漬して乾燥するときにも、隣り合う第1の梁2が膠着しない為、開口部3の形状を維持することができる。
【0046】
(3)本実施形態によれば、第1の梁2の厚みと第2の梁4の厚みとを可能加算した厚みは枠部5の厚みより薄く形成されている。従って、蒸着するときに膜27を形成する材料が第1の梁2と第2の梁4を通過し易い為、膜27を構成する材料を効率良く基板26に付着させることができる。その結果、効率良く膜27を形成することができる。
【0047】
(4)本実施形態によれば、基板26と成膜用精密マスク1とを重ねて開口部3に膜27を形成している。成膜用精密マスク1を洗浄するときにも第1の梁2が膠着しない為、開口部3の形状が維持されている。従って、繰り返して所定の形状の膜27を形成することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、成膜用精密マスクの一実施形態について、図6を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、第2の梁4の形状が異なる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0049】
すなわち、本実施形態では、図6の成膜用精密マスクの模式平面図に示したように、成膜用精密マスク38は第1の梁2と交差して第2の梁39が配置されている。この第2の梁39は形状が鋸刃状であり、第1の梁2と直交するY方向に延在して形成されている。そして、各開口部3は開口長Lが略同じ長さとなっている。そして、梁厚みT、開口幅D、開口間隔P、開口長Lの各条件が第1の実施形態における条件と同じ条件となっている。従って、洗浄するときにも隣り合う第1の梁2が膠着しないようになっている。
【0050】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、開口長Lを同一の長さで長く設定することができる。従って、基板26に対して成膜用精密マスク38をX方向に移動して長い膜27を形成するときに、移動する成膜用精密マスク38の配置を設計し易くすることができる。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、上記の膜形成方法を応用して有機EL装置(ELECTRO LUMINESCENCE)を製造する一実施形態について図7を用いて説明する。まず、電気光学装置の1つである有機EL装置について説明する。図7は、有機EL装置の構造を示す概略分解斜視図である。
【0052】
図7に示すように、電気光学装置としての有機EL装置50は基板51を備え、基板51の上側には、絶縁膜52が形成されている。絶縁膜52上には、コンタクト電極53がマトリクス状に形成され、各コンタクト電極53と隣接する場所には、スイッチング機能を有するTFT素子54が形成されている。そして、TFT素子54のドレイン端子にコンタクト電極53が接続されている。
【0053】
各コンタクト電極53及びTFT素子54を囲むように、走査線55及びデータ線56が格子状に形成されている。そして、走査線55は、TFT素子54のゲート端子と接続され、データ線56は、TFT素子54のソース端子と接続されている。そして、コンタクト電極53、TFT素子54、走査線55、データ線56等からなる素子層57が形成されている。素子層57の上側には絶縁膜58が形成され、絶縁膜58の上側には、隔壁59が格子状に形成されている。
【0054】
隔壁59により形成される凹状領域の各底部には、画素電極60が形成され、画素電極60は、コンタクト電極53と電気的に接続されている。隔壁59に囲まれた領域を発光領域61と称し、この発光領域61は方形に形成されている。画素電極60及びY方向に延在する隔壁59の上面には、正孔輸送層62が形成され、正孔輸送層62の上面には、EL(ELECTRO LUMINESCENCE)発光層としての発光層63R,63G,63B等の発光層63が形成されている。そして、正孔輸送層62と発光層63とにより発光要素である機能層64が形成されている。発光層63Rは、赤色を発光する有機発光材料等により構成された発光層であり、発光層63Gは、緑色を発光する有機発光材料等により構成された発光層である。同様に、発光層63Bは、青色を発光する有機発光材料等により構成された発光層である。
【0055】
機能層64及び隔壁59の上側全面に渡って、光透過性を有する導電性材料等からなる対向電極としての陰極65が形成されている。本実施形態においては、陰極65は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)を採用している。陰極65の上面には、Y方向に延在する隔壁59と対向する場所に微細配線としての補助配線66が配置されている。補助配線66は低抵抗の配線であり、陰極65に電流を流す機能を備えている。陰極65の膜厚が薄いとき、陰極65を流れる電流の電気抵抗が大きくなる。このとき、補助配線66を経由して電流を流すことにより電圧降下を防止する。陰極65及び補助配線66の上面には光透過性を有する材料等からなる封止膜67が形成され、陰極65及び機能層64が空気中の酸素により酸化されることを防止している。
【0056】
画素電極60、機能層64、陰極65により発光素子68が構成されている。そして、画素電極60と陰極65との間に電圧を印加するとき、正孔輸送層62は正孔のみを流動する。そして、発光層63は、正孔輸送層62から供給される正孔と陰極65から供給される電子とが合体するときのエネルギにより、発光する性質を持っている。TFT素子54はスイッチング動作を行い機能層64にかける電圧をコントロールすることにより、発光層63が発光する光量を制御する。このように、発光層63が発光する光量を制御することにより画素毎に光量をコントロールする。そして、画素を明滅させることにより映像を表示させることができる。
【0057】
画素電極60は、TFT素子54のドレイン端子に電気的に接続されており、TFTを一定期間だけオン状態とすることにより、データ線56から供給される画素信号が各画素電極60に所定のタイミングで供給される。このようにして画素電極60に供給された所定レベルの画素信号の電圧レベルは、陰極65と画素電極60との間で保持され、画素信号の電圧レベルに応じて、発光層63R,63G,63Bが発光する光量が変化する。
【0058】
次に、有機EL装置50を製造する工程を説明する。先ず、基板51にコンタクト電極53やTFT素子54等の素子層57や絶縁膜58を形成する素子形成工程を行う。次に、隔壁59を形成する隔壁形成工程を行い、続いて、画素電極60を形成する電極形成工程を行う。次に、正孔輸送層62及び発光層63を形成する機能層形成工程を行う。正孔輸送層62及び発光層63は各層の材料を蒸着して形成する。
【0059】
次に、電極形成工程において陰極65を形成する。この工程ではスピンコート法、スパッタ法、蒸着法等の方法を用いて陰極65を形成した後、陰極65上に補助配線66を形成する。次に、配線工程にて補助配線66を形成する。補助配線66は蒸着法を用いてアルミニウム等の金属材料を含む層を形成する。続いて、封止膜形成工程において封止膜67を形成する。スピンコート法を用いて封止膜67の材料を塗布して乾燥することにより封止膜67を形成する。以上の工程により、有機EL装置50が完成する。
【0060】
陰極65上に補助配線66を形成する配線工程において、第1の実施形態と同様な方法を用いる。具体的には、陰極65が形成された基板51に成膜用精密マスク1または成膜用精密マスク38を重ねて、補助配線66の材料を蒸着する。次に、成膜用精密マスク1または成膜用精密マスク38を重ねる場所を順次変えて蒸着することにより補助配線66を形成する。
【0061】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、洗浄しても開口部3の形状を維持できる成膜用精密マスク1または成膜用精密マスク38を用いて導電性の膜を形成している。従って、断線や配線間のショートのない品質の良い補助配線66を形成することができる。
【0062】
(2)本実施形態によれば、陰極65と隣接して低抵抗の補助配線66が形成される。補助配線66が微細な配線のときにも補助配線66は断線なく形成されるので、補助配線66を介して陰極65と画素電極60との間に確実に電流を流すことができる。その結果、発光層63は品質良く発光できる。
【0063】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、梁厚みTの範囲を10μm〜50μmとしたが、梁厚みTの範囲は10μm〜30μmでも良い。梁厚みTを薄くすることにより、蒸着するときに膜を形成する材料が基板26に付着し易くすることができる。梁厚みTの範囲は20μm〜30μmがさらに好ましい。梁厚みTがこの範囲にあるとき第1の梁2の強度を確保できるので、破損し難くすることができる。
【0064】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、開口幅Dの範囲を10μm〜30μmとしたが、開口幅Dは10μm〜20μmでも良い。開口幅Dが狭いとき細い膜を形成することができる。開口幅Dは10μm〜15μmでも良い。さらに細いので、基板26の面積を有効活用することができる。
【0065】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、成膜用精密マスク1を純水7に浸漬した後、乾燥して第1の梁2の膠着状態を確認したが、浸漬する液状体は純水7に限らない。例えば、水の他に、イソプロピルアルコール、n−ブチルブチルアルコール、i−ブチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類を例示できる。他にも、トルエン、キシレン、クーペン系、n−パラフィン系、i−パラフィン系等の炭化水素系化合物を例示できる。他にも、セロアセ、エチセロ、メチセロ、ブチセロ等のグリコールエーテル系化合物や、アセトン等のケトン系化合物を例示できる。他にも、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、塩化メチレン、四塩化炭素、クロロホルム等の塩素系化合物も例示できる。他にも、フロン系化合物やアミン系化合物を採用しても良い。基板26に対して洗浄及び乾燥に適し、基板26に損傷を与えない液状体を選択するのが好ましい。これらの液状体を用いる場合においても、梁厚みT、開口幅D、開口間隔P、開口長Lにおいて上述の条件を満たす条件に設定することにより隣り合う第1の梁2が膠着することを防止できる。
【0066】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、乾燥工程にマランゴニ乾燥法を用いたが、他の乾燥方法を採用しても良い。スピン乾燥、真空乾燥、温風乾燥、加熱乾燥、イソプルピルアルコール蒸気乾燥、ロタゴニ乾燥等の乾燥方法から選択しても良い。これらの乾燥方法においても、梁厚みT、開口幅D、開口間隔P、開口長Lにおいて上述の条件を満たす条件に設定することにより隣り合う第1の梁2が膠着することを防止できる。
【0067】
(変形例5)
前記第1の実施形態では、成膜用精密マスク1を用いて基板26上に膜27を形成したが、基板26以外の物に膜27を形成しても良い。例えば、立方体や直方体の面に成膜用精密マスク1を用いて膜27を形成しても良い。この場合にも、成膜用精密マスク1を用いることにより、断線のない微細な膜を形成することができる。
【0068】
(変形例6)
前記第3の実施形態では、Y方向に延在する隔壁59と対向する陰極65上に補助配線66を形成したが、これに限らない。X方向に延在する隔壁59と対向する陰極65上に補助配線66を形成しても良い。設計し易いレイアウトにしても良い。さらに、X方向及びY方向に延在する隔壁59と対向する陰極65上に補助配線66を形成しても良い。補助配線66が多い方が電流を流しやすくなるので、電圧降下を低減することができる。尚、X方向とY方向との両方向に補助配線66を形成するとき、1方向ずつ補助配線66を形成することにより、成膜用精密マスク1を用いた補助配線66の形成が可能となる。この場合にも、成膜用精密マスク1もしくは成膜用精密マスク38を用いることにより、断線のない補助配線66を形成することができる。
【0069】
(変形例7)
前記第3の実施形態では、陰極65上に補助配線66を形成したが、隔壁59と陰極65との間に補助配線66を形成しても良い。図8(a)は有機EL装置を示す要部模式断面図である。図8(a)に示すように、隔壁59に区画された発光領域61に機能層64を形成した後、X方向に延在する隔壁59上に補助配線66を配置しても良い。そして、機能層64と補助配線66とを覆って陰極65を形成しても良い。この場合にも、成膜用精密マスク1もしくは成膜用精密マスク38を用いることにより、断線のない補助配線66を形成することができる。さらに、補助配線66はX方向に延在する隔壁59上に限らず、Y方向に方向に延在する隔壁59と対向する発光層63上に補助配線66を形成しても良い。さらに、補助配線66はX方向に延在する隔壁59上とY方向に方向に延在する隔壁59と対向する発光層63上との両方に配置しても良い。設計し易いレイアウトにしても良い。
【0070】
(変形例8)
前記変形例7では、機能層64と補助配線66とを覆って1つの膜である陰極65を配置したが、陰極65は発光領域61毎に分離しても良い。図8(b)は有機EL装置を示す要部模式断面図である。図8(b)に示すように、陰極65は発光領域61毎に分離して配置しても良い。さらに、陰極65はX方向に連結され、Y方向では隔壁59にて分離されていても良い。このとき、発光層63は同様に機能することができる。そして、この場合にも、成膜用精密マスク1もしくは成膜用精密マスク38を用いることにより、断線のない補助配線66を形成することができる。また、この内容は、第3の実施形態にも適用することができる。
【0071】
(変形例9)
前記第3の実施形態では、発光層63は有機発光材料等から形成されたが、発光層63は無機発光材料等から形成されても良い。このときにも、発光層63を機能させることができる。この場合にも、成膜用精密マスク1もしくは成膜用精密マスク38を用いることにより、断線のない補助配線66を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1の実施形態にかかわり、(a)は成膜用精密マスクを示す概略斜視図、(b)及び(c)は成膜用精密マスクの断面図。
【図2】(a)は成膜用精密マスクの模式平面図、(b)は膠着調査方法を示すフローチャート。
【図3】膠着調査方法と調査結果とを説明するための図。
【図4】成膜用精密マスクを用いて膜を形成する方法を説明するための模式図。
【図5】成膜用精密マスクを用いて膜を形成する方法を説明するための模式図。
【図6】第2の実施形態にかかわる成膜用精密マスクの模式平面図。
【図7】第3の実施形態にかかわる有機EL装置の構造を示す概略分解斜視図。
【図8】変形例にかかわる有機EL装置を示す要部模式断面図。
【符号の説明】
【0073】
1,38…成膜用精密マスク、2…第1の梁、3…開口部、4…第2の梁、5…枠部、7…液状体としての純水、26…基体としての基板、27…膜、50…電気光学装置としての有機EL装置、60…画素電極、63…EL発光層としての発光層、65…対向電極としての陰極、66…微細配線としての補助配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンからなる成膜用精密マスクであって、
所定の間隔をもって平行に配置され、1方向に長い開口部を複数形成する第1の梁と、
前記第1の梁と交差して配置される少なくとも一条の第2の梁とを備え、
前記第2の梁によって区切られる前記開口部の長さを開口長Lとするとき、複数の前記開口部のうち前記開口長Lが最も長い前記開口部の前記開口長Lが所定の値以下となるように前記第2の梁が配置されていることを特徴とする成膜用精密マスク。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜用精密マスクであって、
前記第1の梁の厚みである梁厚みTが10μm〜50μmの範囲にあり、
前記開口部の幅である開口幅Dが10μm〜30μmの範囲にあるとき、
前記開口部の長手方向における中心線と隣り合う前記開口部の中心線との間隔である開口間隔Pが80μm〜500μmの間では、
前記開口間隔PをXμmとし、前記開口長Lの前記所定の値をYmmとするとき、
Y≦6.8×lnX−21.8の条件を満たすことを特徴とする成膜用精密マスク。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜用精密マスクであって、
基体上に前記第1の梁、前記第2の梁の順に配置して、蒸着により前記開口部の形状に膜を形成するときに用いられ、
前記第1の梁と少なくとも1条の前記第2の梁とを囲んで枠部が配置され、
前記第1の梁の厚みと前記第2の梁の厚みとを加算した厚みは前記枠部の厚みより薄いことを特徴とする成膜用精密マスク。
【請求項4】
基体上に請求項1〜3のいずれか一項に記載の成膜用精密マスクを重ねて前記基体の一部を遮蔽し、前記基体の遮蔽されていない場所に膜を形成することを特徴とする膜の形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の膜の形成方法を用いて導電性の膜を形成することを特徴とする微細配線の形成方法。
【請求項6】
基板上に画素電極とEL発光層と対向電極とが積層された電気光学装置の製造方法であって、
前記対向電極と電気的に接する低抵抗の補助配線を形成する配線工程を有し、
請求項5に記載の微細配線の形成方法を用いて前記補助配線を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−37586(P2010−37586A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200456(P2008−200456)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】